説明

画像形成装置

【課題】給紙トレイ、排紙トレイ、アクセスカバーという3部品の構成において、装置の高さ方向寸法の抑制、給紙信頼性の向上、前記3部品の開閉操作性の向上などが課題である。
【解決手段】この画像形成装置は、シートに画像を形成する画像形成部を内蔵し、該画像形成部に対して外部からのアクセスを可能にする開口を有する筐体1と、筐体1の一側部に回動可能に支持され、前記開口を遮蔽するアクセスカバー10と、前記一側部に回動可能に支持され、前記画像形成部で画像が形成される前のシートを載置する給紙トレイ3と、アクセスカバー10に回動可能に支持され、前記画像形成部で画像が形成された後のシートを載置する排紙トトレイ7と、を有する。給紙トレイ3の回転支点とアクセスカバー10の回転支点は同軸上に配置され、且つ、排紙トレイ7の回転支点はアクセスカバー10の回転支点に対してシフトして配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に印刷後のシートを支持するための排出シートトレイにおいて、装置内の印刷部へ供給するシートを載置する供給シートトレイ、インクタンク交換のためのアクセスドアとの位置関係を維持することができる排出シートトレイの構成に関する。
【0002】
なお本明細書では、印刷されるシートが紙である場合を説明するが、当該シートは紙以外の記録可能なシート状記録媒体であればよい。また紙を例にとって以下の説明を行うとき、供給シートトレイは給紙トレイ、排出シートトレイは排紙トレイと呼ぶことにする。
【背景技術】
【0003】
カラープリンタなどの画像形成装置には、装置前面に未印刷のシートを積載するための給紙トレイが設けられ、排紙口の近傍に印刷済のシートを積載するための排紙トレイが設けられているものがある。また、印刷するための記録ヘッドとインクタンクを着脱するために開閉可能なアクセスドアが排紙トレイの上部に位置するものが多く知られている。
【0004】
たとえば、特許文献1においては、記録装置の筐体に給紙トレイと排紙トレイの回転ヒンジが形成され、閉状態において、排紙トレイは筐体内に収納され、給紙トレイは内部を遮蔽状態に保持するための蓋として機能するという開示がある。特に両方のトレイが筐体の同一面側に収納されることにより、占有スペースの少ない記録装置を実現するとしている。この形態の場合、筐体の一つの面側に位置する給紙トレイからシートが装置内の印刷部へ供給され、印刷後のシートはUターンして、再び給紙トレイと同じ筐体の面側に位置する排紙トレイへ送出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−119096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなUターン状の給排紙形態の場合、排紙されたシートが給紙トレイ上のシートに触れると、給紙抵抗の増大やばらつきが大きくなり不送りや重送といった給紙不良をおこすおそれがある。そのために給紙トレイ上に載置されたシートと排紙トレイ上に載置されるシートとを確実に隔離しなければならない。
【0007】
また、装置の前面側一方向のみでのアクセスによるシート操作に加えて、記録ヘッドとインクタンクの着脱動作を行うために、開閉可能なアクセスカバーが必要である。しかしながら、これら給紙トレイ、排紙トレイ、アクセスカバーの3部品の個別開閉操作は煩雑となり、操作の前後関係を生じさせると、操作者の誤操作などが発生しやすくなる。
【0008】
さらに、個別部品の開閉動作が相互に干渉せずに行われるために部品や間隙を大きくとっておく必要が生じ、装置の大型化やコストアップを招くことが懸念される。
【0009】
本発明の目的は上述した課題を解決することである。その一例は、給紙トレイ、排紙トレイおよびアクセスカバーという3部品の構成において、装置高さ方向寸法の抑制、給紙信頼性の向上、前記3部品の開閉操作性の向上などである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様による画像形成装置は、シートに画像を形成する画像形成部を内蔵し、該画像形成部に対して外部からのアクセスを可能にする開口を有する筐体と、前記筐体の一側部に回動可能に支持され、前記開口を遮蔽するアクセスカバーと、前記一側部に回動可能に支持され、前記画像形成部で画像が形成される前のシートを載置する供給シートトレイと、前記アクセスカバーに回動可能に支持され、前記画像形成部で画像が形成された後のシートを載置する排出シートトレイと、を有し、
前記供給シートトレイの回転支点と前記アクセスカバーの回転支点は同軸上に配置され、且つ、前記排出シートトレイの回転支点は前記アクセスカバーの回転支点に対してシフトして配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シート供給の信頼性を向上し、装置の小型化および操作性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態例に係る収納状態を示す画像形成装置の斜視図。
【図2】本発明の実施形態例に係る画像形成状態を示す画像形成装置の斜視図。
【図3】本発明の実施形態例に係るメンテナンス状態を示す画像形成装置の斜視図。
【図4】本発明の実施形態例に係る収納状態を示す画像形成装置の断面図。
【図5】本発明の実施形態例に係る画像形成状態を示す画像形成装置の断面図。
【図6】本発明の実施形態例に係るメンテナンス状態を示す画像形成装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態例に係る収納状態を示す画像形成装置の斜視図であり、図4はこの状態を示す断面図である。同じく、図2は本発明の実施形態例に係る画像形成状態を示す画像形成装置の斜視図であり、図5はこの状態を示す断面図である。図3は本発明の実施形態例に係るメンテナンス状態を示す画像形成装置の斜視図であり、図6はこの状態を示す断面図である。
【0015】
図1と図4においては、画像形成装置に画像読取装置を備えた場合を例示し、筐体1には原稿載置時に開閉する原稿カバー2と、画像形成時(印刷時)に開状態とする給紙トレイ3(供給シートトレイ)とを有している。
【0016】
給紙トレイ3は筐体1内の給紙トレイ回転支点31を中心に図4の図示矢印A方向に回動可能になっている。また、シート(本明細書では紙)に画像を記録(印刷)するための記録ヘッドと該記録ヘッドへ供給するインク等の記録液を収容するインクタンクを脱着する動作を行うために、開閉可能なアクセスカバー10が筐体1内のアクセスカバー回転支点11を中心に図4の図示矢印A方向に回動可能になっている。給紙トレイ回転支点31とアクセスカバー回転支点11は同軸上に配設されている。
【0017】
なお、アクセスカバー10は、筐体内に内蔵される画像形成部(上記記録ヘッドおよびインクタンク等)に対して外部からのアクセスを可能にする筐体1の開口を遮断し、アクセス時に開口を開くことが可能に筐体1の一側部に回動可能に支持されている。
【0018】
また記録後の用紙を載置する排紙トレイ7(排出シートトレイ)はアクセスカバー10上の排紙トレイ回転支点71を中心に図4の図示矢印C方向に回動可能になっている。排紙トレイ回転支点71は、同軸上にある給紙トレイ回転支点31とアクセスカバー回転支点11に対してシフトして設けられている。
【0019】
排紙サブトレイ9(排出シートサブトレイ)はインクカートリッジ101/102による画像形成領域で記録用紙を支持するプラテン25に配設された排紙サブトレイ回転支点91を中心に図4の図示矢印E方向ないしはF方向に回動可能となっている。
【0020】
図2と図5においては、各部が開いた状態を示している。給紙トレイ3の給紙方向の大きさを拡げる給紙延長トレイ5(供給シート延長トレイ)、および記録済み用紙の排出時にその先端が落下することを防止するためのストッパ6が、給紙トレイ3の先端から使用状態に延在した状態となっている。また排紙トレイ7からは排紙延長トレイ8(排出シート延長トレイ)が図2の図示矢印G方向に延伸した状態となっている。排紙延長トレイ8は排紙トレイ7の排紙方向の長さ(シート排出方向長さ)を拡げるために排紙トレイ7の先端に係止される。排紙トレイ7の幅方向(トレイ7における排紙方向と直交する方向)の一部には排紙トレイ支持部72が形成されている。排紙トレイ支持部72は、給紙トレイ3から凸状に形成された給紙トレイ基準面32上に当接することで排紙トレイ3の回動を規制している。
【0021】
さらに、排紙トレイ回転支点71と排紙ローラ24の間にできうる間隙に用紙の先端が突入することを防止するための排紙サブトレイ9が図5の図示矢印E方向に回動し、その先端が排紙トレイ7上に当接することで、前記間隙を遮蔽しながら張架することができる。このため、排紙サブトレイ9の排紙方向長さは、排紙トレイ回転支点71と排紙サブトレイ回転支点91との間の距離より長くなっている。
【0022】
図5において記録時の紙搬送(シート搬送)について動作説明を行う。まず給紙トレイ3上には複数枚の用紙201が載置され、不図示のピックアップ手段により最上面の一枚の用紙201から給紙される。さらに、図示矢印L方向に形成されたUターン状経路に沿って、記録中の用紙202の位置まで搬送ローラ22とピンチローラ21のローラ対、ならびに拍車ローラ23、排紙ローラ24のローラ対により搬送され、排紙トレイ7側へ排紙されていく。
【0023】
用紙202ではプラテン25上の記録形成領域において、インクカートリッジ101/102により記録形成がなされる。排紙にあたっては、用紙202の先端が排紙ローラ24の通過後に自重で垂れ下がっても排紙サブトレイ9により支持され、排紙トレイ7、排紙延長トレイ8上に排出されていく。このとき、排紙延長トレイ8の最先端位置は給紙トレイ3上の用紙201の一端(給紙方向に対して後ろ側の端部)の位置と略一致しているか、または、その用紙201の後端よりもさらに排紙方向へ延びている。
【0024】
本願の画像形成装置は以上のような構成となっているため、排紙される用紙202が給紙前の用紙201上に影響を及ぼすことなく、給紙容量を満たすための必要最小限高さ205を確保できる。特に、図2に示したように給紙トレイ3上の給紙トレイ基準面32と排紙トレイ支持部72が直接当接するので、使用状態の排紙トレイ7の装置高さ方向の位置精度を高めることができる。さらに、排紙トレイ回転支点71と排紙サブトレイ回転支点91との間隔よりも排紙サブトレイ9の排紙方向長さを大きくすることで、排紙ローラ24から排出される用紙202の先端を排紙トレイ7上に確実に遷移させることが可能となっている。
【0025】
図3と図6においては、記録ヘッドとインクタンクの着脱を行うときに使用するアクセスカバー10が開いた状態を示している。この状態において、それまで遮蔽されていた記録形成部(すなわちプラテン25とインクカートリッジ101/102が配設された装置内の部位)に対してアクセスが可能となる。たとえばインクカートリッジ101/102の交換作業ができるようになる。その際、排紙トレイ7は排紙トレイ回転支点71がアクセスカバー10上に形成されているため、アクセスカバー10の回動動作に伴って、排紙トレイ回転支点71が図6の図示矢印A方向に回動しながら、排紙トレイ7自体が図6の図示矢印K方向に回動する。また、その際、図2に示した排紙トレイ支持部72は、矢印G/H方向で給紙トレイ基準面32に対して重畳する長さがアクセスカバー回転支点11と排紙トレイ回転支点71との間隔(図5参照)より短く設定されているため、アクセスカバー10の図示矢印A方向の回動動作に伴い、重畳部が徐々に減少し、排紙トレイ7自体の排紙トレイ回転支点71中心の回動動作を阻害せず、アクセスカバー10、給紙トレイ3および排紙トレイ7の図示する開状態を達成できる。このとき、排紙サブトレイ9は図6の図示矢印E方向に回動し、筐体1と当接することで、図6の図示矢印Jの回動位置にて回動停止となる。
【0026】
本構成により、アクセスカバー10の開閉動作を他のトレイ(給紙トレイ3,排紙トレイ7等)の動作に対して、独立して行うことができる。さらに、給紙トレイ回転支点31とアクセスカバー回転支点11は同軸上に配置されている。そのため、給紙トレイ3を図6の図示矢印B方向に回動すると、この回動に同期して給紙トレイ3と排紙トレイ7が相互に干渉することなく、両者が同期して回動が可能となる。よって、アクセスカバー10、給紙トレイ3および排紙トレイ7をすべて統一された単一の動作で、図1に示したように閉状態にすることができる。なお、本明細書において「同軸上」とは完全に、回転支点が一致している形態に限らず、実質的に同軸とみなせる程度にずれがある形態も含む意味とする。
【0027】
本実施形態例では画像形成装置には画像読取装置(スキャナー)を載置した、いわゆる複合機を事例として紹介しているが、画像形成のみの単能機であっても本発明の効果に変わりはない。
【0028】
また、本実施形態例では、排紙サブトレイ回転支点91をプラテン25上に配設したが、筐体1上に配設しても本発明の効果は同様に得られるものである。
【0029】
また、排紙延長トレイ8および給紙延長トレイ5においては、その部品構成数や延長方式の違いによる本発明の効果は同様に得られるものである。
【0030】
上で説明した実施形態例に基づく本願発明によれば、記録後に排出される用紙202が給紙トレイ3上の用紙201と不可触となることにより、給紙にかかる抵抗を一定に保持できるため、給紙の信頼性を向上することができる。
【0031】
また、装置筐体に対して開いた状態の給紙トレイ3と同様に開いた排紙トレイ7を直接当接させることで、給紙トレイ3上の用紙201の載置空間を最小限に維持できるため、装置全体の高さ方向寸法を抑制して装置の小型化を図ることができる。また、装置筐体に対して給紙トレイ3を閉じる動作を行うと、合わせて、排紙トレイ7とアクセスカバー10を同時に閉状態とできるため、操作者の操作をわかりやすく容易に行えるようにできる。
【符号の説明】
【0032】
1 筐体
3 給紙トレイ(供給シートトレイ)
7 排紙トレイ(排出シートトレイ)
8 排紙延長トレイ(排出シート延長トレイ)
9 排紙サブトレイ(排出シートサブトレイ)
10 アクセスカバー
11 アクセスカバーの回転支点
31 給紙トレイの回転支点
32 給紙トレイ基準面
71 排紙トレイの回転支点
72 排紙トレイ支持部
91 排紙サブトレイの回転支点
101,102 インクカートリッジ
201 シート(記録前の用紙)
202 シート(記録後の用紙)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成部を内蔵し、該画像形成部に対して外部からのアクセスを可能にする開口を有する筐体と、
前記筐体の一側部に回動可能に支持され、前記開口を遮蔽するアクセスカバーと、
前記一側部に回動可能に支持され、前記画像形成部で画像が形成される前のシートを載置する供給シートトレイと、
前記アクセスカバーに回動可能に支持され、前記画像形成部で画像が形成された後のシートを載置する排出シートトレイと、
を有し、
前記供給シートトレイの回転支点と前記アクセスカバーの回転支点は同軸上に配置され、且つ、前記排出シートトレイの回転支点は前記アクセスカバーの回転支点に対してシフトして配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記供給シートトレイに形成された基準面と、前記排出シートトレイに形成され前記基準面を支持するための支持部とを備え、前記一側部から前記供給シートトレイを開いた状態において前記一側部から前記排出シートトレイを開いたときに前記基準面に前記支持部が支持されることで、該排出シートトレイの回動位置が規制されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成部はシートに画像を形成するときに該シートを支持するプラテンを含んでおり、
前記画像形成装置は、前記プラテンに回動可能に支持された排出シートサブトレイを備え、前記一側部から前記排出シートトレイを開いた状態において該排出シートトレイに前記排出シートサブトレイが支持されることで、該排出シートサブトレイの回動位置が規制されることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記支持部と前記基準面が重畳する長さが、前記アクセスカバーの回転支点と前記排出シートトレイの回転支点との間の距離より短いことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記排出シートサブトレイのシート排出方向長さは、前記排出シートトレイの回転支点と前記排出シートサブトレイの回転支点との間の距離より長いことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記排出シートトレイには該排出シートトレイのシート排出方向長さを拡げる排出シート延長トレイが係止され、前記一側部から前記排出シートトレイを開いた状態において前記排出シート延長トレイの先端は、前記一側部から開いた状態の前記供給シートトレイに載置されるシートにおける排出方向側の端部の位置に一致しているか、該端部よりも排出方向側に位置することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−39797(P2013−39797A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179611(P2011−179611)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】