説明

画像検索装置及び画像検索方法

【課題】多数のデータ画像、特に圧縮画像に対して高速検索を行える画像検索装置および方法を提供する。
【解決手段】 基準画像を記憶する基準画像記憶装置2と、データ画像を記憶するデータ画像記憶装置5と、基準画像記憶装置2に記憶された基準画像に含まれるすべての画素の輝度値の最大値Cmax及び最小値Cminの間の区間(基準レンジ)を決定する基準レンジ決定手段3と、データ画像記憶装置5に記憶されたデータ画像について、当該データ画像に含まれる画素集合の一部(標本データ画素集合)を抽出する標本データ画素集合抽出手段7と、前記標本データ画素集合と前記基準レンジの関係が所定の要件を満足する場合に、当該データ画像を候補画像とする候補画像決定手段4と、前記候補画像と前記基準画像との詳細比較を行って、前記基準画像と同一又は類似の画像を選出する画像選出手段8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のデータ画像の中から、基準画像と同一又は類似する画像を検索する画像検索装置及び画像検索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の画像データの中から基準画像と同一の画像データを探し出す画像検索が、各種のアプリケーションで必要とされる。圧縮画像(例えば、特許文献1、非特許文献1)についても同様である。従来の圧縮画像の画像検索では、圧縮画像を元の画像データに戻して(復号して)、復号された画像データと基準画像のデータとを画素単位で比較するパターンマッチングによって行われる。復号処理や画素単位のパターンマッチングは長時間を要する。そして、圧縮画像の画像検索、特に、大量の画像から検索を行うような場合、検索時間が膨大となる。そのため、圧縮画像の画像検索の高速化が課題となる。
【0003】
この課題を解決するため、すべての画像データについて粗検索を行い候補画像データを抽出し、抽出された候補画像データにつき詳細検索を行い、その結果を出力する画像検索技術が各種提案されている。
【0004】
例えば、特許文献2には、離散コサイン変換(DCT)されてバッファに格納された画像データに対し、可変長復号処理と逆量子化処理を行い、さらに前記処理後の画像データから直流成分のみを分離し、この直流成分に基づいて検索を行って、検索条件を満たす画像データを抽出する第1マッチング処理を行い、前記抽出された画像データをビットマップによる画像データに復元し、前記復元された画像データについてパターンマッチングをおこなう第2マッチング処理を行い、マッチしたデータ画像を検索結果として出力する画像検索方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、まず、階調分解能の低い色ヒストグラムに基づき類似度を判定する粗検索により検索画像が存在する可能性のある候補領域を求め、次に候補領域内で階調分解能の高い色ヒストグラムに基づく類似度を判定する詳細検索を行って検索画像の存在する領域を検出する画像検出装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−312693号公報
【特許文献2】特開平9−44519号公報
【特許文献3】特開2002−150287号公報
【非特許文献1】鎌田清一郎,「ヒルベルト走査を利用した濃淡画像の情報圧縮に関する考察」,電子情報通信学会論文誌,Vol.J80-D-II,No.2,pp.426-433,1997年2月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2及び特許文献3に記載の発明は、粗検索と詳細検索の2段階の検索を行うことにより、すべての画像データに対して詳細検索を行うことによる時間の損失を回避し、画像検索の高速化を図っている。しかし、次のような理由で、これらの発明による画像検索の高速化には限界がある。すなわち、特許文献2に記載の発明は、第1マッチッング処理(粗検索)の前の段階で、すべての画像データについて、可変長復号処理と逆量子化処理及び直流成分分離の処理を行っている。従って、これらの処理の為の時間が、画像検索全体の処理時間を長くする。また、特許文献3に記載の発明は、粗検索の段階において、色ヒストグラムの作成と色ヒストグラムに基づく類似度判定を行っている。従って、粗検索に長時間を要する。
【0007】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、多数のデータ画像、特に圧縮画像に対して、高速検索を行える画像検索装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像検索装置の第1の構成は、複数のデータ画像の中から、基準画像と同一又は類似の画像を検索する画像検索装置において、前記基準画像を記憶する基準画像記憶手段と、前記データ画像を記憶するデータ画像記憶手段と、前記基準画像記憶手段に記憶された前記基準画像に含まれるすべての画素の輝度値の最大値Cmax及び最小値Cminの間の区間[Cmax,Cmin](以下、「基準レンジ」という。)を決定する基準レンジ決定手段と、前記データ画像記憶手段に記憶された前記データ画像について、当該データ画像に含まれる画素集合の一部(以下「標本データ画素集合」という。)を抽出する標本データ画素集合抽出手段と、前記標本データ画素集合に属する画素の輝度が前記基準レンジとの関係において所定の要件を満足する場合に、当該データ画像を候補画像として決定する候補画像決定手段と、前記候補画像と前記基準画像との詳細比較を行うことにより、前記基準画像と同一又は類似の画像を選出する画像選出手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、データ画像に含まれる画素集合の一部(標本データ画素集合)に属する画素の輝度が、基準画像に含まれるすべての画素の輝度値の最大値Cmax及び最小値Cminの間の区間[Cmax,Cmin](「基準レンジ」)との関係において所定の要件を満足する場合に、データ画像を候補画像として決定し、候補画像と基準画像との詳細比較を行うことにより、基準画像と同一又は類似の画像を選出する。これにより、多数のデータ画像の中から少数の候補画像を短時間で選出し、少数の候補画像と基準画像の間で詳細比較を行うので、画像検索の高速化が図られる。
【0010】
本発明の画像検索装置の第2の構成は、前記第1の構成において、前記データ画像記憶手段に記憶された前記データ画像から、その一部を部分データ画像として抽出する部分データ画像抽出手段を備え、前記標本データ画素集合抽出手段は、前記部分データ画像について、当該部分データ画像に含まれる画素集合の一部を標本データ画素集合として抽出し、前記候補画像決定手段は、前記標本データ画素集合に属する画素の輝度が前記基準レンジとの関係において所定の要件を満足する場合に、当該部分データ画像を候補画像として決定することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、部分データ画像抽出手段は、データ画像の一部を部分データ画像として抽出する。これにより、基準画像と同一又は類似の部分を含むデータ画像を検索することができる。
【0012】
本発明の画像検索装置の第3の構成は、前記第1又は第2の構成において、前記候補画像決定手段は、前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の前記基準レンジに属する比率が所定の閾値以上である場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定することを特徴とする。
【0013】
本発明の画像検索装置の第4の構成は、前記第1又は2の構成において、前記候補画像決定手段は、前記標本データ画素集合に属するすべての画素の輝度が前記基準レンジに属する場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定することを特徴とする。
【0014】
本発明の画像検索装置の第5の構成は、前記第1又は2の構成において、前記候補画像決定手段は、前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の前記基準レンジに属する比率が80%以上である場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定することを特徴とする。
【0015】
前記第3乃至第5の構成によれば、候補画像決定手段は、標本データ画素集合に属する画素の輝度が基準レンジに属する比率が所定の閾値以上である場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定する。これにより、基準レンジに属する画素の比率を基準に候補画像を決定するので、候補画像決定の計算が更に単純になり、候補画像の決定に要する時間をさらに短縮できる。また、閾値を加減することにより、画像検索の対象や目的に応じて、候補画像決定のメッシュの粗さを加減することができる。
【0016】
本発明の画像検索装置の第6の構成は、前記候補画像決定手段は、前記第1又は第2の構成において、前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の平均値Cmeanが前記基準レンジに属する場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、候補画像決定手段は、前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の平均値Cmeanが基準レンジに属する場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像に決定する。これにより、候補画像決定の条件を緩和できる。従って、基準画像と同一又は類似とされるデータ画像が、誤って、候補画像から排除される虞が減少し、画像検索の精度が向上する。
【0018】
本発明の画像検索装置の第7の構成は、前記第1又は第2の構成において、前記候補画像決定手段は、前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の平均値Cmeanと標準偏差σに対し、Cmean+σ及びCmean−σが前記基準レンジに属する場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、候補画像決定手段は、標本データ画素集合に属する画素の輝度の平均値Cmeanと標準偏差σに対して、Cmean+σ及びCmean−σの両方が基準レンジに属する場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定する。これにより、候補画像決定の条件を緩和できるので、基準画像と同一又は類似とされるデータ画像が、誤って、候補画像から排除される虞が減少し、画像検索の精度が向上する。
【0020】
本発明の画像検索装置の第8の構成は、前記第1乃至第7のいずれかの構成において、前記画像選出手段は、前記候補画像の画素値ヒストグラムと前記基準画像の画素値ヒストグラムとの差分を算出し、前記差分が所定の閾値より小さい場合に、当該候補画像を前記基準画像と同一又は類似の画像に選出することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、画像選出手段は、候補画像の画素値ヒストグラムと基準画像の画素値ヒストグラムとのの差分を算出し、その差分が所定の閾値より小さい場合に、当該候補画像を基準画像と同一又は類似の画像に選出する。これにより、比較的簡易な演算で画像選出を行えるので、画像検索をさらに、高速かつ精度よく行うことができる。
【0022】
本発明の画像検索装置の第9の構成は、前記第1乃至第8のいずれかの構成において、前記データ画像はランレングス符号化された圧縮画像であって、前記標本データ画素集合抽出手段は、当該データ画像又は当該部分データ画像の全部又は一部のランの輝度の代表値の集合を前記標本データ画素集合として抽出することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、標本データ画素集合抽出手段は、ランレングス符号化されたデータ画像の全部又は一部のランの輝度の代表値の集合を標本データ画素集合として抽出する。これにより、標本データ画素集合の抽出が容易になるので、画像検索をさらに、高速かつ精度よく行うことができる。
【0024】
本発明の画像検索方法の第1の構成は、複数のデータ画像の中から、基準画像と同一又は類似の画像を検索する画像検索方法であって、基準画像記憶手段に記憶された前記基準画像に含まれるすべての画素の輝度値の最大値Cmax及び最小値Cminの間の区間[Cmax,Cmin](以下、「基準レンジ」という。)を決定する基準レンジ決定ステップ、データ画像記憶手段に記憶された前記データ画像について、当該データ画像に含まれる画素集合の一部(以下「標本データ画素集合」という。)を抽出する標本データ画素集合抽出ステップ、前記標本データ画素集合に属する画素の輝度が前記基準レンジとの関係において所定の要件を満足する場合に、当該データ画像を候補画像として決定する候補画像決定ステップ、及び、前記候補画像と前記基準画像との詳細比較を行うことにより、前記基準画像と同一又は類似の画像を選出する画像選出ステップ、を有することを特徴とする。
【0025】
本発明の画像検索方法の第2の構成は、前記第1の構成において、前記データ画像記憶手段に記憶された前記データ画像から、その一部を部分データ画像として抽出する部分データ画像抽出ステップを備え、前記標本データ画素集合抽出ステップにおいては、前記部分データ画像について、当該部分データ画像に含まれる画素集合の一部を標本データ画素集合として抽出し、前記候補画像決定ステップにおいては、前記標本データ画素集合に属する画素の輝度が前記基準レンジとの関係において所定の要件を満足する場合に、当該部分データ画像を候補画像として決定することを特徴とする。
【0026】
本発明の画像検索方法の第3の構成は、前記第1又は第2の構成において、前記候補画像決定ステップにおいては、前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の前記基準レンジに属する比率が所定の閾値以上である場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定することを特徴とする。
【0027】
本発明の画像検索方法の第4の構成は、前記第1又は2の構成において、前記候補画像決定ステップにおいては、前記標本データ画素集合に属するすべての画素の輝度が前記基準レンジに属する場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定することを特徴とする。
【0028】
本発明の画像検索方法の第5の構成は、前記第1又は2の構成において、前記候補画像決定ステップにおいては、前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の前記基準レンジに属する比率が80%以上である場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定することを特徴とする。
【0029】
本発明の画像検索方法の第6の構成は、前記第1又は第2の構成において、前記候補画像決定ステップにおいては、前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の平均値Cmeanが前記基準レンジに属する場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定することを特徴とする。
【0030】
本発明の画像検索方法の第7の構成は、前記第1又は第2の構成において、前記候補画像決定ステップにおいては、前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の平均値Cmean及び標準偏差σに対して、Cmean+σ及びCmean−σが前記基準レンジに属する場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定することを特徴とする。
【0031】
本発明の画像検索方法の第8の構成は、前記第1乃至第7のいずれかの構成において、前記画像選出ステップにおいては、前記候補画像の画素値ヒストグラムと前記基準画像の画素値ヒストグラムとの差分を算出して、前記差分が所定の閾値より小さい場合に、当該候補画像を前記基準画像と同一又は類似の画像に選出することを特徴とする。
【0032】
本発明の画像検索方法の第9の構成は、前記第1乃至第8のいずれかの構成において、前記データ画像はランレングス符号化された圧縮画像であって、前記標本データ画素集合抽出ステップにおいては、当該データ画像又は当該部分データ画像の全部又は一部のランの輝度の代表値の集合を前記標本データ画素集合として抽出することを特徴とする。
【0033】
本発明のプログラムは、前記第1乃至第9の構成の画像検索方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明は、標本データ画素集合に属する画素の輝度と基準レンジとの関係において所定の要件を満足するデータ画像を候補画像に決定するので、候補画像決定のアルゴリズムが単純になる。そのため、本発明には、候補画像の決定に要する時間が短時間ですみ、画像検索を高速化する効果がある。したがって、本発明は、多数のデータ画像の中から、基準画像と同一又は類似のデータ画像を検索する高速画像検索装置及び方法として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0036】
図1は、本発明の実施例1に係る画像検索装置を備えた微粒子判別装置の構成を表すブロック図である。
【0037】
画像検索装置1は、基準画像記憶手段2、基準レンジ決定手段3、候補画像決定手段4、データ画像記憶手段5、部分データ画像抽出手段6、標本データ画素集合抽出手段7、及び画像選出手段8を備えている。
【0038】
本実施例の微粒子判別装置は、判別対象の微粒子をCCDカメラ11で撮像して得られた微粒子の画像を画像検索装置1に入力し、微粒子の画像と類似する画像をデータ画像記憶手段5に記憶されている微粒子のデータ画像と照合することにより、微粒子の種類を判別して、その結果を出力装置12に出力する装置である。なお、出力装置12は、ディスプレイ装置や印刷装置に限られるものではなく、磁気ディスクなどの外部記憶装置、ネットワーク上に出力する通信インタフェース等を使用してもよい。
【0039】
CCDカメラ11により撮像された微粒子の画像は、AD変換器13によりデジタル化され、フレーム・メモリ14に一時的に記憶される。フレーム・メモリ14に記憶された画像の中から判別対象の微粒子が写った部分が領域抽出手段15によって抽出され、基準画像として基準画像記憶手段2に保存される。
【0040】
基準レンジ決定手段3は、基準画像記憶手段2から読み出した基準画像に含まれるすべての画素の輝度値の最大値Cmax及び最小値Cminを抽出して、基準レンジ[Cmax,Cmin]を決定し、候補画像決定手段4に出力する。
【0041】
データ画像記憶手段5は、復数の微粒子のデータ画像がランレングス符号化された圧縮画像データの形で記憶されており、微粒子の標本の画像データベースとして機能する。なお、このランレングス符号化の詳細に関しては後述する。
【0042】
部分データ画像抽出手段6は、データ画像記憶手段5から読み出したデータ画像を部分データ画像に分割して標本データ画素集合抽出手段7に出力する。
【0043】
標本データ画素集合抽出手段7は、部分データ画像抽出手段6から入力された部分データ画像に含まれる画素集合の一部(標本データ画素集合)を抽出し、候補画像決定手段4に出力する。なお、標本データ画素集合を抽出する方法については、後述する。
【0044】
候補画像決定手段4は、標本データ画素集合抽出手段7から入力された標本データ画素集合に属する画素の輝度が、基準レンジ決定手段3から入力された基準レンジとの関係において所定の要件を満す場合に、部分データ画像を候補画像として決定する。なお、所定の要件については、後述する。
【0045】
画像選出手段8は、候補画像決定手段4で候補画像とされた部分データ画像と基準画像との詳細比較を行うことにより、基準画像と同一又は類似の部分データ画像を選出して、その結果を出力装置12に出力する。なお、詳細比較の方法については、後述する。
【0046】
なお、本実施例の画像検索装置1は、LSIチップとしてハードウェア的に構成してもよいが、汎用のコンピュータにプログラムをロードすることによって各構成部分を機能モジュールとして構成してもよい。
【0047】
(ランレングス符号化圧縮アルゴリズム)
データ画像記憶手段5に記憶された微粒子のデータ画像は、原画像データの各画素の画素値を量子化するとともに、各ランにおいて当該ランに対応する原画像データの画素値の分散が所定の閾値Γ以下となるようにランレングスを決定することによりランレングス符号化されたものである。以下に、その圧縮アルゴリズムの一例を簡単に説明する。なお、この圧縮アルゴリズムについては、特許文献1又は非特許文献1に詳細に記載されている。
【0048】
まず、2次元の原画像の画像データ(以下「原画像データ」という。)を走査して1次元の原画像データとする。この1次元化された原画像データを{xi ; i=1,2,…,N}と記す。ここで、Nは原画像データの画素数である。
【0049】
次に、この1次元化された原画像データに対して、以下のような再帰的な2分割処理を実行する。
【0050】
まず、区間lの1次元画素列を{xi ; i=1,2,…,N}とする。区間lを区間lと区間lに分割する。区間l,l,lの平均値は、それぞれ式(1),式(2),式(3)により表される。但し、区間lの画素数をNとする。
【0051】
【数1】

【0052】
再帰的な2分割を行う上で、区間l,l,lの累積自乗誤差を、それぞれe,e,eとすると、これらは式(4),式(5),式(6)により表される。
【0053】
【数2】

【0054】
二分割点は、次の評価式が最小となるN(1<N<N)とする。
【0055】
【数3】

【0056】
この2分割操作を、Evalが所定の閾値Γ以下且つNがNmax以下となるまで再帰的に繰り返して行う。
【0057】
以上のようなアルゴリズムにより、1次元化された原画像データは複数の区間に分割される。分割された各区間をランとし、その区間(ラン)における画素の平均値をそのランにおける画素値としてランレングス符号化を行う。このランレングス符号化によって、1次元化された原画像データは、各ランにおいて画素値が量子化され、各ランにおいて当該ランに対応する原画像データの画素値の分散が所定の閾値Γ以下となる。
【0058】
次に、本実施例に係る微粒子判別装置について、その動作を説明する。図2は、本発明の実施例1に係る画像検索方法を説明するフローチャートである。以下、このフローチャートに付したステップ番号と、図1に付した符号を引用して説明する。ここでは、画像検索の例として、131072(=512×256)画素から構成されるデータ画像の中から、256(=16×16)画素からなる基準画像と同一の部分データ画像を検索する場合を考える。
【0059】
(ステップ1)基準レンジ決定手段3は、基準画像記憶手段2から基準画像を読み出す。
【0060】
(ステップ2)基準レンジ決定手段3は、基準画像の基準レンジを決定し、候補画像決定手段4に出力する。
【0061】
(ステップ3)部分データ画像抽出手段6は、データ画像記憶手段5からデータ画像を読み出す。
【0062】
(ステップ4)部分データ画像抽出手段6は、データ画像を16×16画素からなる512個の部分データ画像に分割して、標本データ画素集合抽出手段7に逐次出力する。
【0063】
(ステップ5)すべての部分データ画像の検索が終わっていれば、ステップ10に進み、そうでなければ、ステップ6に進み、部分データ画像の検索を続ける。
【0064】
(ステップ6)標本データ画素集合抽出手段7は、部分データ画像に含まれる画素集合の一部(標本データ画素集合)を抽出して候補画像決定手段4に出力する。ここでは、標本データ画素集合抽出手段7は、部分データ画像から25個の画素を選び、それぞれの輝度値C1,C2,‥‥C25を求める。つまり部分画像に含まれる256個の画素の約10%をサンプリングする。この25個の画素は、特定の規則(例えば、256個の画素の配列から10個置きに拾い出すなど)あるいはパターンに従って抽出する。
【0065】
(ステップ7)候補画像決定手段4は、標本データ画素集合に属する画素の輝度{C1,C2,‥‥C25}が基準レンジに属する比率が所定の閾値以上である場合に、部分データ画像(N)を候補画像に決定する。そして、ステップ8に進み、詳細検索を行う。それ以外の場合はステップ5に戻る。
【0066】
(ステップ8)画像選出手段8は、候補画像と基準画像の詳細比較を行い。両者が同一又は類似とされればステップ9に進み、同一でも類似でもなければステップ5に戻る。
【0067】
(ステップ9)画像選出手段8は、基準画像と同一また類似とされた部分データ画像を出力装置12に表示して終了する。
【0068】
(ステップ10)画像選出手段8は、基準画像と同一又は類似の部分画像が存在しない旨を出力装置12に表示して終了する。
【0069】
ここで、「基準レンジ」とはステップ7において、候補画像を選出するための画素値の区間であり、基準画像に含まれるすべての画素の輝度値の最大値Cmax及び最小値Cminの間の区間[Cmax,Cmin]である。
【0070】
また、ステップ7において、候補画像を決定するための「閾値」を100%とすると、条件が厳しすぎて、詳細検索をすれば同一又は類似とされるデータ画像が粗検索で誤って排除されてしまう場合がある。そこで、「閾値」を100%未満の値、例えば80%に設定し、標本データ画素集合に属する画素の輝度{C1,C2,‥‥C25}の内、20点以上の輝度値が「基準レンジ」の区間に存在することを候補画像選抜の要件にしてもよい。
【0071】
また、候補画像決定の要件は、検索の目的、条件に応じて選ばれる。例えば、標本データ画素集合に属する画素の輝度{C1,C2,‥‥C25}の平均値Cmeanが「基準レンジ」の区間に存在すること、あるいは、標本データ画素集合に属する画素の輝度{C1,C2,‥‥C25}の平均値Cmeanと標準偏差σを算出して、Cmean+σ及びCmean−σの両方が「基準レンジ」の区間に属することを候補画像選抜の要件にしてもよい。
【0072】
また、標本データ画素集合は、ランレングス符号化されたデータ画像のすべて又は一部のランの輝度の代表値(量子化された輝度値)の集合を用いてもよい。
【0073】
また、ステップ8の候補画像と基準画像の詳細比較においては、候補画像の輝度ヒストグラムデータと、基準画像のヒストグラムデータの差分Sを算出し、差分Sが所定の閾値より小さければ、両者は同一又は類似とされる。なお、候補画像のヒストグラムデータをH(x)、基準画像のヒストグラムデータをH(x)とすると、差分Sは式(8)により表される。但し、x,xは画素値を表す。
【0074】
【数4】

【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施例1に係る画像検索装置を備えた微粒子判別装置の構成を表すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係る画像検索方法を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1 画像検索装置
2 基準画像記憶手段
3 基準レンジ決定手段
4 候補画像決定手段
5 データ画像記憶手段
6 部分データ画像抽出手段
7 標本データ画素集合抽出手段
8 画像選出手段
11 CCDカメラ
12 出力装置
13 AD変換器
14 フレーム・メモリ
15 領域抽出手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデータ画像の中から、基準画像と同一又は類似の画像を検索する画像検索装置において、
前記基準画像を記憶する基準画像記憶手段と、
前記データ画像を記憶するデータ画像記憶手段と、
前記基準画像記憶手段に記憶された前記基準画像に含まれるすべての画素の輝度値の最大値Cmax及び最小値Cminの間の区間[Cmax,Cmin](以下、「基準レンジ」という。)を決定する基準レンジ決定手段と、
前記データ画像記憶手段に記憶された前記データ画像について、当該データ画像に含まれる画素集合の一部(以下「標本データ画素集合」という。)を抽出する標本データ画素集合抽出手段と、
前記標本データ画素集合に属する画素の輝度が前記基準レンジとの関係において所定の要件を満足する場合に、当該データ画像を候補画像として決定する候補画像決定手段と、
前記候補画像と前記基準画像との詳細比較を行うことにより、前記基準画像と同一又は類似の画像を選出する画像選出手段と、
を備えていることを特徴とする画像検索装置。
【請求項2】
前記データ画像記憶手段に記憶された前記データ画像から、その一部を部分データ画像として抽出する部分データ画像抽出手段を備え、
前記標本データ画素集合抽出手段は、前記部分データ画像について、当該部分データ画像に含まれる画素集合の一部を標本データ画素集合として抽出し、
前記候補画像決定手段は、前記標本データ画素集合に属する画素の輝度が前記基準レンジとの関係において所定の要件を満足する場合に、当該部分データ画像を候補画像として決定すること
を特徴とする請求項1に記載の画像検索装置。
【請求項3】
前記候補画像決定手段は、
前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の前記基準レンジに属する比率が所定の閾値以上である場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の画像検索装置。
【請求項4】
前記候補画像決定手段は、
前記標本データ画素集合に属するすべての画素の輝度が前記基準レンジに属する場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の画像検索装置。
【請求項5】
前記候補画像決定手段は、
前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の前記基準レンジに属する比率が80%以上である場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の画像検索装置。
【請求項6】
前記候補画像決定手段は、
前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の平均値Cmeanが前記基準レンジに属する場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の画像検索装置。
【請求項7】
前記候補画像決定手段は、
前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の平均値Cmean及び標準偏差σに対し、Cmean+σ及びCmean−σが前記基準レンジに属する場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の画像検索装置。
【請求項8】
前記画像選出手段は、
前記候補画像の画素値ヒストグラムと前記基準画像の画素値ヒストグラムとの差分を算出し、前記差分が所定の閾値より小さい場合に、当該候補画像を前記基準画像と同一又は類似の画像に選出すること
を特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の画像検索装置。
【請求項9】
前記データ画像はランレングス符号化された圧縮画像であって、
前記標本データ画素集合抽出手段は、
当該データ画像又は当該部分データ画像の全部又は一部のランの輝度の代表値の集合を前記標本データ画素集合として抽出すること
を特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の画像検索装置。
【請求項10】
複数のデータ画像の中から、基準画像と同一又は類似の画像を検索する画像検索方法であって、
基準画像記憶手段に記憶された前記基準画像に含まれるすべての画素の輝度値の最大値Cmax及び最小値Cminの間の区間[Cmax,Cmin](以下、「基準レンジ」という。)を決定する基準レンジ決定ステップ、
データ画像記憶手段に記憶された前記データ画像について、当該データ画像に含まれる画素集合の一部(以下「標本データ画素集合」という。)を抽出する標本データ画素集合抽出ステップ、
前記標本データ画素集合に属する画素の輝度が前記基準レンジとの関係において所定の要件を満足する場合に、当該データ画像を候補画像として決定する候補画像決定ステップ、
及び、前記候補画像と前記基準画像との詳細比較を行うことにより、前記基準画像と同一又は類似の画像を選出する画像選出ステップ、
を有することを特徴とする画像検索方法。
【請求項11】
前記データ画像記憶手段に記憶された前記データ画像から、その一部を部分データ画像として抽出する部分データ画像抽出ステップを備え、
前記標本データ画素集合抽出ステップにおいては、前記部分データ画像について、当該部分データ画像に含まれる画素集合の一部を標本データ画素集合として抽出し、
前記候補画像決定ステップにおいては、前記標本データ画素集合に属する画素の輝度が前記基準レンジとの関係において所定の要件を満足する場合に、当該部分データ画像を候補画像として決定すること
を特徴とする請求項10に記載の画像検索方法。
【請求項12】
前記候補画像決定ステップにおいては、
前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の前記基準レンジに属する比率が所定の閾値以上である場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定すること
を特徴とする請求項10又は11に記載の画像検索方法。
【請求項13】
前記候補画像決定ステップにおいては、
前記標本データ画素集合に属するすべての画素の輝度が前記基準レンジに属する場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定すること
を特徴とする請求項10又は11に記載の画像検索方法。
【請求項14】
前記候補画像決定ステップにおいては、
前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の前記基準レンジに属する比率が80%以上である場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定すること
を特徴とする請求項10又は11に記載の画像検索方法。
【請求項15】
前記候補画像決定ステップにおいては、
前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の平均値Cmeanが前記基準レンジに属する場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定すること
を特徴とする請求項10又は11に記載の画像検索ステップ。
【請求項16】
前記候補画像決定ステップにおいては、
前記標本データ画素集合に属する画素の輝度の平均値Cmean及び標準偏差σに対し、Cmean+σ及びCmean−σが前記基準レンジに属する場合に、当該データ画像又は当該部分データ画像を候補画像として決定すること
を特徴とする請求項10又は11に記載の画像検索方法。
【請求項17】
前記画像選出ステップにおいては、
前記候補画像の画素値ヒストグラムと前記基準画像の画素値ヒストグラムとの差分を算出し、前記差分が所定の閾値より小さい場合に、当該候補画像を前記基準画像と同一又は類似の画像に選出することを特徴とする請求項10乃至16のいずれかに記載の画像検索方法。
【請求項18】
前記データ画像はランレングス符号化された圧縮画像であって、
前記標本データ画素集合抽出ステップにおいては、
当該データ画像又は当該部分データ画像の全部又は一部のランの輝度の代表値の集合を前記標本データ画素集合として抽出することを特徴とする請求項10乃至17のいずれかに記載の画像検索方法。
【請求項19】
請求項10乃至18のいずれかに記載の画像検索方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−139608(P2006−139608A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329564(P2004−329564)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(802000031)財団法人北九州産業学術推進機構 (187)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】