説明

画像表示装置、ゲームプログラム、ゲーム制御方法

【課題】画像表示装置の観察者が、実際には存在しない立体像に対してあたかも直接的に操作を行えるかのような感覚を得ることができる画像表示装置、ゲームプログラム、ゲーム制御方法を提供する。
【解決手段】画像表示装置としてのゲーム装置1は、液晶モニタ3aに視差画像ImL,ImRを表示する画像表示手段と、視差画像の観察者によって表示画面と観察者との間に認識される立体像VRの仮想的な空間座標を算出する第1座標算出手段と、観察者の操作対象である操作体30の空間座標を算出する第2座標算出手段とを備える。ゲーム装置1はまた、算出された立体像の少なくとも1点の空間座標と、算出された操作体30の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になったときに、視差画像、または視差画像以外の液晶モニタ3a上の画像の少なくとも一方の変化を伴う所定のイベントを発生させるイベント発生手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元の視差画像を表示して観察者に仮想的な立体像を認識させ、その仮想的な立体像を利用した情報処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2次元の視差画像を表示して観察者に仮想的な立体像を認識させる技術が知られている。例えば、特許文献1には、空間変調素子に右目用画像および左目用画像を表示し、プレイヤ(観察者)の画像から得られた顔半面像を照明用図形表示装置に表示し、その顔半面像を照明として、レンズにより、右目用画像または左目用画像をそのプレイヤの右目または左目のみに観察させるようにした、画像表示装置としての立体画像ゲーム装置が開示されている。この装置によれば、プレイヤに立体画像(立体像)を認識させるのに左右の眼へそれぞれの画像を振り分ける作用を有する専用の眼鏡が不要となる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−222866公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の装置によれば、専用の眼鏡を装着することなく立体像を観察者に認識させることができるものの、従来、立体像に対して直接操作を行なえるかのような感覚を得ることができるような装置は存在しなかった。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、画像表示装置の観察者が、実際には存在しない立体像に対してあたかも直接的に操作を行う感覚を得ることができる画像表示装置、ゲームプログラム、ゲーム制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明1に係る画像表示装置は、以下の構成を備えた装置である。
(1)表示画面に視差画像を表示する画像表示手段。
(2)視差画像の観察者によって表示画面と観察者との間に認識される立体像の仮想的な空間座標を算出する第1座標算出手段。
(3)観察者の操作対象である操作体の空間座標を算出する第2座標算出手段。
(4)第1座標算出手段によって算出された立体像の少なくとも1点の空間座標と、第2座標算出手段によって算出された操作体の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になったときに、上記視差画像、または上記視差画像以外の表示画面上の画像の少なくとも一方の変化を伴う所定のイベントを発生させるイベント発生手段。
【0007】
この画像表示装置では、画像表示手段によって表示画面に視差画像が表示される。この視差画像を見た観察者が、視差画像のうち左目用画像を観察者の左目のみで見つつ視差画像のうち右目用画像を観察者の右目で見ることで、観察者にとって観察者と表示画面の間の仮想的な立体像の存在が認識される。第1座標算出手段は、その立体像の仮想的な空間座標を算出する。
この画像表示装置では、観察者が、立体像に対する操作対象である操作体を有していることが予定されている。この操作体は、例えば細長い棒状のペン等、観察者とは別個の物理的な実体であってもよく、代替的に例えば観察者の手または指等、観察者の一部である物理的な実体であってもよい。そして、第2座標算出手段は、上記操作体の空間座標を算出する。
【0008】
この画像表示装置では、イベント発生手段は、第1座標算出手段によって算出された立体像の少なくとも1点の空間座標と、第2座標算出手段によって算出された操作体の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になったときに、上記視差画像、または上記視差画像以外の表示画面上の画像の少なくとも一方の変化を伴う所定のイベントを発生させる。つまり、イベント発生手段は、観察者の操作対象である操作体と、観察者に認識される立体像とが十分に接近、または接触していると判断されるときに、所定のイベントを発生させる。この所定のイベントは、上記視差画像、または上記視差画像以外の表示画面上の画像の少なくとも一方の変化を伴うもの、すなわち、観察者に認識される立体像、および/または、表示画面上の2次元画像の変化を伴うものであり、その変化は観察者が視認できるものとなっている。そのため、この画像表示装置によれば、観察者は、実際には存在しない立体像に対してあたかも直接的に操作を行なえるかのような感覚を味わうことができる。
【0009】
例えば、この画像表示装置を、プレイヤに仮想的に認識される立体像を対象としてプレイヤが操作を行うゲームの進行を制御するゲーム装置に適用した場合を想定する。そのようなゲームの進行は例えば、プレイヤに認識される立体像に対してプレイヤがあたかも操作体(例えばペン等)を接触させること、あるいは十分に接近させることの動機付けをプレイヤに付与することで行われる。そして、ゲーム装置のイベント発生手段は、プレイヤに動機付けを付与するために、立体像に対応する視差画像、または当該視差画像以外の表示画面上の2次元画像の少なくとも一方の変化を伴う所定のイベントを発生させるようにしてもよい。この場合、所定のイベントとしては、操作体が接触あるいは十分に接近した立体像に対応する視差画像の消失、変形、拡大縮小、移動速度の変化(つまり、立体像の消失、変形、拡大縮小、移動速度の変化)、新たな立体像に対応する視差画像の出現(つまり、立体像の出現)、あるいは表示画面上のポイント表示の変化(プレイヤが獲得したポイント数の増加)等が挙げられる。このように、この画像表示装置をゲーム装置に適用した場合、プレイヤは、立体像に対してあたかも直接的な操作を行えるかのような感覚をもってゲームを進行させることができる。すなわち、立体的な操作感覚を伴う新たなゲームの興趣性をもたらすことができる。
【0010】
発明2に係る画像表示装置は、発明1に記載の画像表示装置において、以下の構成をさらに備えた装置である。
(5)視差画像が表示される前に、当該視差画像によって認識される仮想的な立体像が観察者から見て操作体と重複し、かつ、操作体が仮想的な立体像と表示画面との間に位置するようになると判定される場合には、予め視差画像を表示しないように画像表示手段を制御する第1制御手段。
【0011】
この画像表示装置では、第1制御手段は、視差画像が表示される前に、当該視差画像によって認識される仮想的な立体像が観察者から見て操作体と重複し、かつ、操作体が仮想的な立体像と表示画面との間に位置するようになると判定される場合には、予め視差画像を表示しないように画像表示手段を制御する。つまり、観察者から見て、観察者に認識される立体像の仮想的な空間位置よりも裏側に操作体が存在するという位置関係になる場合には、立体像によって観察者から操作体が不自然に見えることになる。具体的には、操作体のうち、立体像と重なった部分のみが、立体像の手前(観察者側)に浮き出て見える。そこで、第1制御手段は、かかる不自然な見え方を予め防止するため、上記位置関係となるような視差画像を予め表示しないように画像表示手段を制御する。これにより、操作体による立体像に対する操作感覚をより自然なものとすることができる。
【0012】
発明3に係る画像表示装置は、発明1または2に記載の画像表示装置において、以下の構成をさらに備えた装置である。
(6)操作体が、観察者から見て立体像と重複し、かつ立体像と表示画面の間の位置に移動した場合には、その立体像に対応する視差画像を表示しないように画像表示手段を制御する第2制御手段。
【0013】
この画像表示装置では、第2制御手段は、操作体が、観察者から見て立体像と重複し、かつ立体像と表示画面の間の位置に移動した場合には、その立体像に対応する視差画像を表示しないように画像表示手段を制御する。つまり、操作体が移動した結果として、その操作体が、観察者から見て、観察者に認識される立体像の仮想的な空間位置よりも裏側に存在するという位置関係になる場合には、立体像によって観察者から操作体が不自然に見えることになる。具体的には、操作体のうち、立体像と重なった部分のみが、立体像の手前(観察者側)に浮き出て見える。そこで、第2制御手段は、かかる不自然な見え方を防止するため、上記位置関係となるような位置に操作体が移動した場合には、立体像に対応する視差画像を表示しないように画像表示手段を制御する。すなわち、立体像自体を消してしまうことによって、不自然な表示を回避している。これにより、操作体による立体像に対する操作感覚をより自然なものとすることができる。
【0014】
発明4に係る画像表示装置は、発明1または2に記載の画像表示装置において、以下の構成をさらに備えた装置である。
(7)操作体が、観察者から見て立体像と重複し、かつ立体像と表示画面の間の位置に移動した場合には、その立体像に対応する視差画像を、視差画像に対応する立体像が観察者から見て操作体と重複しない位置に移動するように画像表示手段を制御する第3制御手段。
【0015】
この画像表示装置では、第3制御手段は、操作体が、観察者から見て立体像と重複し、かつ立体像と表示画面の間の位置に移動した場合には、その立体像に対応する視差画像を、視差画像に対応する立体像が観察者から見て操作体と重複しない位置に移動するように画像表示手段を制御する。つまり、操作体が移動した結果として、その操作体が、観察者から見て、観察者に認識される立体像の仮想的な空間位置よりも裏側に存在するという位置関係になる場合には、立体像によって観察者から操作体が不自然に見えることになる。具体的には、操作体のうち、立体像と重なった部分のみが、立体像の手前(観察者側)に浮き出て見える。そこで、第3制御手段は、かかる不自然な見え方を防止するため、上記位置関係となるような位置に操作体が移動した場合には、立体像に対応する視差画像を上記位置関係とならない位置に移動するように画像表示手段を制御する。すなわち、立体像の位置を操作体から離れるように移動させることによって、不自然な表示を回避している。これにより、操作体による立体像に対する操作感覚をより自然なものとすることができる。
【0016】
発明5に係る画像表示装置は、発明1〜4のいずれかに記載の画像表示装置において、以下の構成をさらに備えた装置である。
(8)操作体が実質的に移動していない状態で、立体像の少なくとも1点の空間座標と、操作体の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になったときには、所定のイベントの発生を禁止するようにイベント発生手段を制御する第4制御手段。
【0017】
この画像表示装置では、第4制御手段は、操作体が実質的に移動していない状態で、立体像の少なくとも1点の空間座標と、操作体の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になったときには、所定のイベントの発生を禁止するようにイベント発生手段を制御する。操作体が実質的に移動していない状態では、観察者には、自身が認識する立体像に対して操作体を近付けようとする積極的な意思が欠如していると考えられる。そこで、かかる場合には、立体像の少なくとも1点の空間座標と、操作体の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になる、つまり、両者が十分に接近していると判断される場合であっても、第4制御手段は、イベント発生手段によるイベントの発生を禁止するようにする。これにより、観察者による積極的な意思によるものではなく、偶然に操作体と立体像が接近した場合のイベントの発生を阻止でき、イベントの発生の実効性を高めることができる。
【0018】
例えば、この画像表示装置を、プレイヤに仮想的に認識される立体像を対象としてプレイヤが操作を行うゲームの進行を制御するゲーム装置に適用した場合を想定する。そのようなゲームの進行は例えば、プレイヤに認識される立体像に対してプレイヤがあたかも操作体を接触させること、あるいは十分に接近させることの動機付けをプレイヤに付与することで行われる。そして、ゲーム装置のイベント発生手段は、プレイヤに動機付けを付与するために、立体像に対応する視差画像、または当該視差画像以外の表示画面上の2次元画像の少なくとも一方の変化を伴う所定のイベント(例えば、立体像の消失、立体像の出現、プレイヤが獲得したポイント数の増加等)を発生させるようにしてもよい。ここで、プレイヤが操作体を移動させていないのにも関わらず偶然に立体像と操作体が接触あるいは十分に接近したことをもってイベントを発生させたとすれば、プレイヤの適切な操作を伴わずにイベントを発生させることになり、ゲームの興趣性を低下させることにもなる。そこで、第4制御手段によって、プレイヤの適切な操作を伴わずにイベントを発生させるという不適切なイベント発生を防止する。
【0019】
発明6に係る画像表示装置は、発明1〜5のいずれかに記載の画像表示装置において、以下の構成をさらに備えた装置である。
(9)第1座標算出手段は、観察者と表示画面の間の第1の距離と、観察者の瞳孔間の距離として予め設定される第2の距離と、視差画像を構成する左目用画像と右目用画像のずれ量とに基づいて、その視差画像に対応する立体像の仮想的な空間座標を算出すること。(10)第2座標算出手段は、1または一対の撮像手段によって得られる操作体の像の色および/または形状に基づいて、操作体の空間座標を算出すること。
【0020】
この画像表示装置では、表示画面に表示される視差画像によって観察者に立体像を認識させるための観察者の位置、つまり表示画面から観察者までの距離が所定の第1の距離となっている。換言すれば、画像表示装置の表示画面上の視差画像を見てその視差画像に対応する立体像を適切に認識するために、画像表示装置の観察者は、表示画面から所定の第1の距離だけ離間した位置で表示画面を見ることが予定されている。そして、第1座標算出手段は、上記第1の距離と、観察者の瞳孔間の距離として予め設定される第2の距離と、視差画像を構成する左画像と右画像のずれ量とに基づいて、例えば表示画面と同一平面上の任意の位置を基準とした、その視差画像に対応する立体像の仮想的な空間座標を算出する。
【0021】
この画像表示装置では、画像表示装置内に内蔵されている1または一対の撮像手段、あるいは画像表示装置と電気的に接続される外部の1または一対の撮像手段が、操作体を含む画像を取得する。そして、第2座標算出手段は、撮像手段によって得られる操作体の像の色および/または形状に基づいて、例えば撮像手段の焦点位置を基準とした、操作体の空間座標を算出する。ここで、操作体の像の色は、1または一対の撮像手段によって得られる画像の中から素早く操作体の像を特定し、かつ操作体のうち空間座標の算出範囲を一部の領域に限定して処理の負荷を軽減するために利用されうる。
【0022】
この画像表示装置によれば、表示画面に対する観察者の位置が予定され、それによって観察者と表示画面の間で観察者によって認識される立体像の仮想的な空間位置が一意に定まる。そして、表示画面に対する観察者の位置を予定しておくことで、観察者が専用眼鏡を装着することなしに立体像を認識できるように、画像表示装置の表示態様が設定される。そのような表示態様として例えば、パララックスバリア方式(視差バリア方式),レンティキュラ方式の視差画像の表示態様が挙げられる。この画像表示装置によれば、観察者は、実際には存在しない立体像に対する直接的な操作を、煩わしい専用眼鏡を装着することなく快適に行うことができる。
【0023】
発明7に係る画像表示装置は、発明1〜6のいずれかに記載の画像表示装置において、以下の構成をさらに備えた装置である。
(11)操作体の先端部は、先端部以外の部位とは異なる色および/または形状で構成されていること。
(12)イベント発生手段は、第1座標算出手段によって算出された立体像の少なくとも1点の空間座標と、第2座標算出手段によって算出された操作体の先端部の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になったときに、所定のイベントを発生させること。
【0024】
この画像表示装置では、観察者が、操作体の先端部を、観察者が認識する立体像に対して近付ける動作を行うことが予定されている。その操作体は、先端部以外の部位とは異なる色および/または形状で構成されるようにしている。かかる操作体の色および形状として様々なものが考えられるが、例えば、操作体を全体として細長い棒状のペンとした場合、先端部のみを先鋭形状とし、先端部以外の部分を棒状としてもよい。あるいは、先端部のみをパターン認識しやすい任意の形状、例えば星型形状などとしてもよい。また、先端部のみを赤色とし、先端部以外の部分を白色としてもよい。このとき、第2座標算出手段は、操作体の先端部の少なくとも1点の空間座標を算出するが、操作体の先端部が先端部以外の部位とは異なる色および/または形状で構成されているため、操作体の位置を素早く特定できる、あるいは操作体の中で空間座標の算出対象の領域を限定することができ、空間座標の算出処理の負荷を軽減できるようになっている。そして、イベント発生手段は、立体像の少なくとも1点の空間座標と、操作体の先端部の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になったときに、所定のイベントを発生させる。この画像表示装置によれば、空間座標の算出処理の負荷を軽減され、処理の高速化を図ることができる。
【0025】
発明8に係るゲームプログラムは、プレイヤに仮想的に認識される立体像を対象としてプレイヤが操作を行うゲームを実現可能なコンピュータに、以下の機能を実現させるためのゲームプログラムである。
(13)表示画面に視差画像を表示する画像表示機能。
(14)視差画像を観察するプレイヤによって表示画面とプレイヤとの間に認識される立体像の仮想的な空間座標を算出する第1座標算出機能。
(15)プレイヤの操作対象である操作体の空間座標を算出する第2座標算出機能。
(16)第1座標算出機能によって算出された立体像の少なくとも1点の空間座標と、第2座標算出機能によって算出された操作体の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になったときに、上記視差画像、または上記視差画像以外の表示画面上の画像の少なくとも一方の変化を伴う所定のイベントを発生させるイベント発生機能。
【0026】
コンピュータは、例えば家庭用ゲーム機、業務用ゲーム機、携帯用ゲーム機、携帯電話機、携帯情報端末、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ホームサーバ等である。また、このゲームプログラムは、DVD−ROMやCD−ROM等のコンピュータが読み取り可能な情報記憶媒体に格納されてもよい。
【0027】
発明9に係るゲーム制御方法は、プレイヤに仮想的に認識される立体像を対象としてプレイヤが操作を行うゲームの進行を制御するゲーム装置におけるゲーム制御方法であって、以下の各ステップを備える。
(17)表示画面に視差画像を表示する画像表示ステップ。
(18)視差画像を観察するプレイヤによって表示画面とプレイヤとの間に認識される立体像の仮想的な空間座標を算出する第1座標算出ステップ。
(19)プレイヤの操作対象である操作体の空間座標を算出する第2座標算出ステップ。(20)第1座標算出ステップによって算出された立体像の少なくとも1点の空間座標と、第2座標算出ステップによって算出された操作体の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になったときに、上記視差画像、または上記視差画像以外の前記表示画面上の画像の少なくとも一方の変化を伴う所定のイベントを発生させるイベント発生ステップ。
【発明の効果】
【0028】
本発明の画像表示装置、ゲームプログラム、ゲーム制御方法によれば、画像表示装置の観察者が、実際には存在しない立体像に対してあたかも直接的に操作を行えるかのような感覚を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施形態のゲーム装置の外観とプレイヤとを示す図。
【図2】第1の実施形態のゲーム装置の構成を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態のゲーム装置において実行されるゲームの一例を説明するための図。
【図4】第1の実施形態のゲーム装置において実行されるゲームの一例を説明するための図。
【図5】第1の実施形態のゲーム装置で主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図。
【図6】第1の実施形態のゲーム装置において、プレイヤに認識される立体像の仮想的な空間座標の算出方法を説明するための図。
【図7】第1の実施形態のゲーム装置において、操作体の空間座標の算出方法を説明するための図。
【図8】第1の実施形態において例示するゲームの主要な処理フローを示す図。
【図9】第2の実施形態のゲーム装置の構成を示すブロック図。
【図10】第2の実施形態のゲーム装置において、プレイヤに不自然に映るときの操作体と立体像との位置関係を示す図。
【図11】第3の実施形態のゲーム装置の外観とプレイヤとを示す図。
【図12】第3の実施形態のゲーム装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(1)第1の実施形態
(1−1)ゲーム装置の構成と動作
図1は、本発明の画像表示装置の一実施形態としてのゲーム装置1の外観とゲーム装置1のプレイヤとを示している。ゲーム装置1は、観察者としてのプレイヤに仮想的に認識される立体像を対象としてプレイヤが操作を行うゲームの進行を制御するゲーム装置である。図2は、本実施形態のゲーム装置1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態のゲーム装置1の前面部には、表示装置3の液晶モニタ3a(表示画面)が設けられる。液晶モニタ3aの下方には、撮像対象をプレイヤの方に向けた左撮像部20Lと右撮像部20Rの撮像用レンズが平行等位に配置されている。この左撮像部20Lと右撮像部20Rは、後述するステレオ計測のために設けられている。なお、図1に示した例では、各撮像部がゲーム装置1に内蔵された形態で示しているが、別体の撮像装置が設けられ、その撮像装置がゲーム装置1内の制御装置10と電気的に接続される形態であってもよい。各撮像部で得られたフレーム単位の画像のデータは逐次、制御装置10のCPU11へ送出される。
【0031】
図1には図示していないが、プレイヤの操作入力を受け入れるための1または複数の釦がゲーム装置1に設けられうる。そのような釦として、例えばゲーム装置1を起動するための電源釦、ゲーム装置1に設定されているいずれかのアプリケーションプログラムを動作させるための選択用釦等が含まれてよい。図2に示した入力部4には、ゲーム装置1に設けられた1または複数の釦、およびその釦に対する押下入力あるいは操作入力を検出するためのインタフェース回路が含まれる。
図2における記憶媒体装着部5(図1では不図示)は、例えばゲーム装置1の筐体に設けられ記憶媒体17を受け入れるためのスロット、および記憶媒体17からデータを読み出し、あるいは記憶媒体17にデータを書き込むためのインタフェース回路を備えうる。記憶媒体17は、例えばフラッシュメモリを内蔵したカード型記憶媒体、光ディスク等のディスク状記憶媒体などである。
【0032】
図2を参照すると、本実施形態のゲーム装置1の制御装置10は、ゲームプログラムの実行や、ゲームプログラムの実行に伴う信号転送処理およびデータ処理を行うために設けられている。制御装置10は主として、CPU(Central Processing Unit)11、RO
M(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、画像処理回路14およびサウンド処理回路15を含む。制御装置10の各部は、入力部4、左撮像部20L、右撮像部20Rおよび記憶媒体装着部5とバス16を介して、信号を転送可能に接続される。
【0033】
CPU11は、ゲームプログラムの命令を解釈し、その命令に応じた各種のデータ処理を行う。
画像処理回路14は、主に、画像データの生成加工処理を行う。例えば、画像処理回路14は、2次元の画像の重ね合わせ演算やαブレンディング等の透過演算、各種の飽和演算を行う。本実施形態では特に、画像処理回路14は、プレイヤに仮想的な立体像を認識させるための視差画像の生成および表示を行う。また、画像処理回路14は、描画すべき画像データをフレーム毎にバッファリングする機能(いわゆるVRAMとしての機能)を備える。
【0034】
記憶媒体17には、例えば、ゲームプログラムや、ゲームプログラムで使用される各種データを格納するために設けられている。記憶媒体17から読み出された各種データは、RAM13に一時的に格納される。また、RAM13にはゲームの進行に必要なデータが格納され、CPU11によって逐次更新・削除・追加されうる。
【0035】
表示装置3は、主に、画像処理回路14によって生成される画像(視差画像を含む。)のデータや、記憶媒体17から読み出される画像(視差画像を含む。)のデータなどを、液晶モニタ3aに画像として出力するために設けられている。なお、以下の説明では、単に「画像」というときには、立体像をプレイヤに認識させるための視差画像と、液晶モニタ3a上で直接プレイヤに視認させるための2次元画像の両方を含む。表示装置3の液晶モニタ3aは、例えばLCD(Liquid Cristal Display)モニタであり、画像のデータに基づき、マトリクス状の画素単位で設けられる薄膜トランジスタを水平駆動および垂直駆動することで画像が表示される。
【0036】
本実施形態のゲーム装置1では、プレイヤが立体像用の専用眼鏡を装着することなしに立体像を認識することができるような方式で視差画像が表示されることが好ましい。そのような表示態様としては例えば、パララックスバリア方式(視差バリア方式)、レンティキュラ方式の視差画像の表示態様が挙げられる。
パララックスバリア方式は表示画面(液晶パネル)上に微細なスリットを設ける方式であり、レンティキュラ方式は表示画面上に多数の微小な半円筒状のレンズからなるレンティキュラレンズを設ける方式である。これらの方法では、スリットや半円筒状のレンズにより、観察者(ここではプレイヤ)の左右の目によって見る角度(視線角度)に応じて、画像上の異なる位置が見える。すなわち、左右の目の位置に対応する各視点から見た画像(立体視差のある画像)を垂直に分割して、適切な位置に配置することにより、右目と左目に個別の画像(立体視差のある画像)を見せることができ、立体画像を得ることができる。
【0037】
例えば図1を参照すると、本実施形態のゲーム装置1の液晶モニタ3aには、視差画像を構成する左目用画像ImLおよび右目用画像ImRが表示される。このとき、プレイヤの左目には、視差画像のうち左目用画像ImLのみを見ることができ、プレイヤの右目には、視差画像のうち右目用画像ImRのみを見ることができる。その結果、観察者の目には、プレイヤと表示画面の間の仮想的な立体像VRの存在が認識されることになる。
【0038】
サウンド処理回路15は、主に、記憶媒体17から読み出される音声データ、及び/又は自ら生成した音声データを、音声としてスピーカ22から出力するために設けられている。サウンド処理回路15には、例えば圧縮音声データをデコードするデコード回路、デコードした音声信号を増幅する増幅回路などが含まれうる。
【0039】
なお、図1を参照すると、プレイヤの操作対象である操作体30が示される。操作体30は、プレイヤが立体像VRに対する操作を行うために使用される。この操作体30は、本実施形態のゲーム装置1の前面部に設けられる左撮像部20Lおよび右撮像部20Rによる撮像対象となる。操作体30の材質、形状および/または色は問わないが、後述する左撮像部20Lおよび右撮像部20Rによるステレオ計測において、その計測範囲を限定して処理負荷を軽減する目的で、操作体30の先端部を、先端部以外の部位とは異なる色および/または形状で構成されるようにすることが好ましい。例えば、図1に示すように、操作体30を全体として細長い棒状のペンとした場合には、先端部のみを先鋭形状とし、先端部以外の部位を棒状としてもよい。あるいは、先端部のみをパターン認識しやすい任意の形状、例えば星型形状などとしてもよい。また、先端部のみを赤色とし、先端部以外の部位を白色としてもよい。
【0040】
(1−2)ゲーム装置において実行されるゲームの例
次に、本実施形態のゲーム装置1において実行されるゲームとして、プレイヤに仮想的に認識される立体像を対象としてプレイヤが操作を行うゲームの一例について、図3および図4を参照して説明する。図3は、このゲームにおいて、液晶モニタ3aを見たプレイヤに認識される立体像を、時間の経過とともに(a),(b),(c)の順で例示する図である。図4は、このゲームにおいて、プレイヤによる操作と、その操作によって生ずるイベントの一例を、時間の経過とともに(a),(b),(c)の順で示す図である。
【0041】
先ず図3を参照すると、このゲームでは、液晶モニタ3a上に複数の視差画像を表示し、これによってプレイヤには、液晶モニタ3aと自身の間に各視差画像に対応した複数の立体像VR1〜5の存在が認識される。ここでは、プレイヤに認識される各立体像は、球形のものを例として挙げている。各視差画像は時間の経過に伴って移動して表示され、それによりプレイヤは、球形の各立体像が空間上であたかも移動しているかのように認識することになる。球形の各立体像は、任意のタイミングで出現して移動を開始し、出現してから時間が経過するにつれて、その大きさが小さくなっていき、出現してから所定の時間が経過すると消失する。例えば、図3の(a)の時点では、複数の立体像VR1〜5が矢印の方向に移動している。図3の(b)の時点では、複数の立体像VR1〜5はすべて存在するが、(a)の時点と比較して位置を移動し、かつその大きさが小さくなっている。図3の(c)の時点になると、立体像VR3が消失し、新たに立体像VR6が出現する。
なお、図3に示す液晶モニタ3aには、プレイヤに与えられたプレイ時間(TIME)、プレイヤが獲得したポイント(POINT)をそれぞれ表示するための表示領域101、102が示されている。
【0042】
このゲームでは、プレイヤが認識している仮想的な立体像に対して、操作体30が接触した、あるいは十分に接近したと判断された場合に、所定のイベントが生ずるようになっている。その所定のイベントの例としては、操作体30を接触した、あるいは十分に接近したと判断された立体像に対応する視差画像の消失(つまり、立体像の消失)、新たな立体像に対応する視差画像の出現(つまり、立体像の出現)、あるいは表示画面上のポイント表示の変化(プレイヤが獲得したポイント数の増加)等である。例えば、このゲームは、プレイヤに与えられた所定のプレイ時間の間に(例えば、図3に表示されているTIMEが0になるまでに)、操作体30とできるだけ多くの立体像とを接触、あるいは十分に接近させることによってできるだけ多くの立体像を消失させることを、複数のプレイヤの間で競うゲームであってよい。
【0043】
図4は、プレイヤの操作体30による立体像VRに対する操作を時系列に沿って示している。図4の(a)の時点では、プレイヤは、自身が認識する立体像VRに向けて操作体30を移動させているが、操作体30と立体像VRの距離が閾値より大きく、イベントが生じない。(b)の時点では、プレイヤは、自身が認識する立体像VRに向けて操作体30をさらに移動させているが、未だ操作体30と立体像VRの距離が閾値より大きく、イベントが生じない。(c)の時点になると、操作体30と立体像VRの距離が閾値以下となり、立体像に対して操作体30が接触した、あるいは十分に接近したと判断される。それによってあたかも立体像VRが爆発して消失したかのように、液晶モニタ3a上に表示される視差画像の変化を伴うイベントが発生する例が示される。さらに発生するイベントとして、図3に示した表示領域102内に表示されるポイントの変化(例えば、図3に表示されているPOINTの値の増加)が行われてもよい。
【0044】
(1−3)ゲーム装置における各機能の概要
以下では、ゲーム装置1で実現される機能について、図3および図4を参照して説明したゲームをゲーム装置1が実行する場合に言及しつつ説明する。図5は、本実施形態のゲーム装置1において制御装置10で主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図である。
【0045】
ゲーム進行手段51は、プレイヤによるゲームプログラムの実行指示入力(あるいはゲームプログラムの選択入力)に応じて、ゲームの進行に必要なデータの設定等を含むゲーム環境を整える機能を備える。ゲーム進行手段51では、ゲームプログラムが記録媒体17からRAM13にロードされてCPU11により実行されると、オブジェクトやキャラクタを含む各種のデータが、記録媒体17からRAM13へ転送される。
ゲーム進行手段51は、RAM13内のオブジェクトのデータを基に、オブジェクトをゲーム空間内に配置しうる。
ゲーム進行手段51は、ゲームの進行に応じて、プレイヤに対して与えられるプレイ時間の管理、プレイヤのポイントの管理、プレイの状況あるいはプレイヤの入力部4に対する入力に応じた表示処理等を行う機能を備えている。
【0046】
画像表示手段52は、ゲーム装置1の表示画面である液晶モニタ3aに視差画像を表示する機能を備える。この画像表示手段52では、画像処理回路14は、画像処理回路14は、CPU11から指示されるタイミング、CPU11から指示される液晶モニタ3a上の位置に視差画像を表示する。図3に示したゲームの例では、CPU11は、複数の視差画像の各々に対して個別に、視差画像の出現タイミング、出現後の視差画像の軌跡、出現後の視差画像の形状変化、視差画像の消失タイミング、視差画像のうち左目用画像と右目用画像の間のずれ量(つまり、プレイヤが認識する立体像の奥行き方向の位置の設定)等を画像処理回路14に指示する。画像処理回路14は、CPU11からの指示に基づいて、視差画像を含むフレーム単位の画像のデータを逐次生成し、表示装置3へ出力する。表示装置3では、画像処理回路14から入力する画像のデータを基に、画像を液晶モニタ3aへ表示出力する。
【0047】
第1座標算出手段53は、視差画像の観察者であるプレイヤによって認識される立体像の仮想的な空間座標を算出する機能を備える。つまり、視差画像を見たプレイヤがその視差画像に含まれる左目用画像および右目用画像を視認することで、プレイヤには、プレイヤと表示画面の間の仮想的な立体像の存在が認識される。第1座標算出手段は、その立体像の仮想的な空間座標を算出する。以下、立体像の仮想的な空間座標を算出方法の具体例について、図6を参照して説明する。
【0048】
図6は、プレイヤに認識される立体像の仮想的な空間座標の算出方法を説明するための図であり、図中、d、D、P、Lを以下のように定義する。
d:視差画像の左目用画像ImLと右目用画像ImRの間のずれ量
D:プレイヤと液晶モニタ3a(視差画像の表示面)の間の距離(第1の距離)
P:プレイヤの瞳孔間の距離(第2の距離)
L:液晶モニタ3aから立体像VRまでの距離
【0049】
このとき、L/d=(D−L)/Pが成立するため、CPU11は、以下の式(E1)に従って距離Lを算出する。
L=d/(P+d)×D …(E1)
【0050】
ここで、表示装置3が前述したパララックスバリア方式(視差バリア方式)、レンティキュラ方式の視差画像の表示態様を採る場合には、プレイヤが液晶モニタ3a上の視差画像に基づいて仮想的な立体像を適切に認識するための、液晶モニタ3aからプレイヤまでの距離Dは、ほぼ固定値であると考えてよい。換言すれば、上記表示態様を採る場合には、ゲーム装置1のプレイヤは、液晶モニタ3aから所定の上記距離Dだけ離間した位置で液晶モニタ3aを見ることが予定されている。このような場合には、上記式(E1)の演算において距離Dを固定値として設定してよい。
また、プレイヤの瞳孔間の距離Pは、プレイヤ毎に大きく変動する値ではないため、上記式(E1)の演算に当たっては、予め設定された固定値でよい。
視差画像の左目用画像ImLと右目用画像ImRの間のずれ量であるdは、プレイヤが認識する立体像の奥行き方向の位置の設定のために、CPU11によって逐次設定されており、その設定値が上記式(E1)の演算においてもそのまま利用される。
【0051】
なお、上記式(E1)の算出方法では、プレイヤの視点の上下方向の位置に応じてプレイヤに認識される仮想的な立体像VRの上下方向の空間位置も変化することになるが、ゲーム装置1に設けられる液晶モニタ3aの位置に応じてプレイヤの視点位置はほぼ固定位置であると考えてよい。そこで、上記式(E1)によって算出するに当たって、プレイヤの両目の瞳孔の空間位置は予め決定された所定値とすることができる。
【0052】
第1座標算出手段53では、CPU11が逐次(フレーム単位で)、上記式(E1)の演算を行うことによって、視差画像の表示面(液晶モニタ3aの表示面)の所定の位置を基準として、プレイヤに認識される立体像VRの仮想的な空間座標を算出する。例えば、視差画像の表示面の所定の位置を原点とし、その表示面をX−Y平面、その原点からプレイヤに向かう軸を+Z軸として定義すれば、CPU11は、時々刻々と変化する視差画像の左目用画像ImLおよび右目用画像ImRの中心位置(この例では、ほぼ円形状の中心位置)のXおよびY座標を把握しており、逐次上記式(E1)の算出結果として立体像VRの中心位置のZ座標を算出している。そのため、図6に示した幾何学的条件から、原点を基準とした立体像VRのX、YおよびZ座標を算出することができる。また、立体像VRは、視差画像の左目用画像ImLと右目用画像ImRを投影したものであるため、立体像VRの大きさは左目用画像ImLと右目用画像ImRと同一半径の球形と考えてよい。以上から、表示面の所定の位置を原点とした、プレイヤに認識される球形の立体像VRの表面上の任意の点の仮想的な空間座標を算出することができる。
【0053】
第2座標算出手段54は、プレイヤの操作対象である操作体30の空間座標を算出する機能を備える。第2座標算出手段54では、CPU11が、左撮像部20Lと右撮像部20Rからそれぞれ、逐次(フレーム単位で)取得する左画像と右画像に基づいて、公知のステレオ計測によって操作体30の空間座標を算出する。以下、操作体30の空間座標を算出方法(3次元情報取得手法)について、図7を参照して説明する。
【0054】
図7は、操作体30の空間座標の算出方法を説明するための図であり、操作体30または操作体30の一部(例えば先端部)が四角錐である場合を例としている。
ステレオ計測による3次元情報取得手法は、異なる視点から対象物体の画像を取得し、各視点の位置関係と各画像の見え方の違いから対象物体の3次元情報を得るというものである。図7において、fLは左撮像部20Lの焦点位置を示し、fRは右撮像部20Rの焦点位置を示す。
本実施形態のゲーム装置1では、撮像用レンズが平行等位に配置された左撮像部20Lと右撮像部20Rからの2つの画像(左画像、右画像)を取得し、その中の1つの画像、例えば左画像を基準画像とする。そして、図7に示す例では、計測対象の操作体30上の点A,Bに対応する、基準画像(左画像)の座標上での位置AL,BL(点A,Bが左撮像部20Lに投影された点)と、右画像の座標上での位置AR,BR(点A,Bが右撮像部20Rに投影された点)との差(視差)と、左右の焦点位置fL,fRとから三角測量の原理に基づいて、点A,Bの空間座標を算出する。例えば、操作体30のA点の空間座標を算出する場合、CPU11は、A点の左画像に対応する位置ALと、A点の右画像に対応するARと、既知の焦点位置fL,fRとに基づいて、例えば焦点位置fL,fRのいずれかを基準としたA点の空間座標を算出する。
通常、ステレオ視による3次元情報の取得を行う場合、1つの基準となる画像上の点が、その他の画像上のどの点に対応しているかを対応点探索(マッチング演算)によって認識する。そして、一方の画像上にある点に対して、その対応点は、他方の画像内のある直線上に存在する。一般に、この直線をエピポーラ線(Epipolar Line)と呼ぶ。本実施形態のゲーム装置1では、図1に示したように、左撮像部20Lと右撮像部20Rの撮像用レンズが平行等位に配置されているため、エピポーラ線が水平となり、水平方向の一次元探索でマッチングをとることができる。
【0055】
第2座標算出手段54では、CPU11が逐次(フレーム単位で)、操作体30を構成する各点の空間座標を、上述したステレオ計測によって算出する。なお、このとき算出される操作体30の空間座標の原点は、第1座標算出手段53で算出される立体像の空間座標の原点と一致させておくことが好ましい。第1座標算出手段53において原点とした表示面上の所定の位置と、左撮像部20Lおよび右撮像部20Rの各焦点位置との位置関係は固定であるため、そのような座標変換処理は容易に行うことができることは言うまでもない。
【0056】
上述したステレオ計測では、左画像および右画像の中から素早く操作体30に対応する像を特定することが好ましい。また、上述したステレオ計測における対応点検索の処理の負荷は、検索対象となる点が多くなるにつれて計算量が大きくなる。そこで、左画像および右画像の中から素早く操作体30の像を特定し、かつ操作体30のうち空間座標の算出範囲を限定して対応点検索の処理の負荷を軽減するために、操作体30の像の色が利用されるようにしてもよい。例えば、操作体30の先端部のみを赤色とし、先端部以外の部位を白色とした場合、左画像および右画像における輝度情報に基づいて各画像内における操作体30の像を素早く特定できるとともに、操作体30の空間座標の算出範囲を限定することが可能となり、より高速な処理が実現できる。
【0057】
イベント発生手段55は、第1座標算出手段53によって算出された立体像の少なくとも1点の空間座標と、第2座標算出手段54によって算出された操作体30の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になったときに、視差画像、または視差画像以外の液晶モニタ3a上の画像の少なくとも一方の変化を伴う所定のイベントを発生させる機能を備える。ここで、所定の閾値は、本実施形態のゲーム装置1が実行するゲームの種類、あるいはイベントの発生有無について適切な遊びを設けるために適宜設定しうる。
【0058】
イベント発生手段55は、プレイヤの操作対象である操作体30と、プレイヤに認識される立体像とが十分に接近していると判断されるときに、所定のイベントを発生させる。イベント発生手段55では、CPU11が逐次(フレーム単位で)、所定の原点を基準として、プレイヤによって認識される立体像の各点(例えば、図3に示した球状の立体像であればその表面の複数の代表点)の仮想的な空間座標の算出結果と、操作体30の各点の空間座標の算出結果とを比較し、両者の点間の距離を算出する。そしてCPU11は、算出した距離を所定の閾値と比較し、算出した距離が所定の閾値以下となったと判断した場合には、所定のイベントを発生させるための表示上の制御を行う。
【0059】
この所定のイベントは、液晶モニタ3a上の視差画像、または視差画像以外の液晶モニタ3a上の画像の少なくとも一方の変化を伴うもの、すなわち、プレイヤに認識される立体像、および/または、液晶モニタ3a上の2次元画像の変化を伴うものであり、その変化はプレイヤが視認できるものとなっている。例えば、図4に示した例では、CPU11は、所定のイベントとして、あたかも立体像VRが爆発して消失したかのように、液晶モニタ3a上に表示される視差画像の変化がなされるように画像処理回路14を制御しうる。また、CPU11は、所定のイベントとして、図3に示した表示領域102内に表示されるポイントの変化、つまりポイント数の増加が行われるように、画像処理回路14を制御しうる。所定のイベントは、実行されるゲームの内容に応じて任意に設定され、例えば、操作体30が接触あるいは十分に接近した立体像に対応する視差画像の消失、変形、拡大縮小、移動速度の変化(つまり、立体像の消失、変形、拡大縮小、移動速度の変化)、新たな立体像に対応する視差画像の出現(つまり、立体像の出現)を伴うものであってもよい。ここで、移動速度の変化とは、例えば、移動している立体像の速度が上がる、あるいは低下する、停止するという場合、または逆に、停止していた立体像が移動を開始するという場合も含む。
【0060】
本実施形態のゲーム装置1では、イベント発生手段55によって、プレイヤの操作対象である操作体30と、プレイヤに認識される立体像とが十分に接近していると判断されるときには所定のイベントが行われるので、ゲーム装置1のプレイヤは、表示上の変化を伴う所定のイベントが発生することを期待して、あるいは所定のイベントが発生することを目指して、操作対象である操作体30を積極的に、自身が認識する立体像に近付けようとすることになる。この場合、図3に示したようにプレイヤに認識される立体像が移動していると、プレイヤが操作体30を立体像に近付けることに対してプレイヤの技量を要することとなって、ゲームの設定上好ましい。このとき、プレイヤは、実際には存在しない立体像に対してあたかも直接的に操作を行えるかのような感覚を味わいながらゲームを進行させることができる。すなわち、立体的な操作感覚を伴う新たなゲームの興趣性をもたらすことができる。
【0061】
(1−4)ゲームの主要な処理のフロー
次に、図3および図4を参照して例示したゲームを実行するときの、本実施形態のゲーム装置1における主要な処理フローの一例について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0062】
ここでは先ず、ゲームプログラムの他、各オブジェクト等の各種データが記録媒体17からRAM13にロードされ、RAM13に格納される(ステップS100)。ロードされたゲームプログラムをCPU11が解釈すると先ず、ゲーム進行手段51が実行される。ゲーム進行手段51は、RAM13内のオブジェクトのデータを参照し、オブジェクトを所定の位置に配置したゲーム空間を設定する(ステップS102)。
次に、ゲーム進行手段51は、プレイ開始命令を発行すると(ステップS104)、これ以降、ゲームの進行に応じて、プレイヤに対して与えられるプレイ時間の管理、プレイヤのポイントの管理、プレイの状況あるいはプレイヤの入力部4に対する入力に応じた表示処理等を開始する。さらに、プレイ開始命令の発行に伴い、画像表示手段52が視差画像の表示を開始する(ステップS106)。より具体的には、画像表示手段52は、複数の球形の立体像が任意のタイミングで出現して移動を開始し、出現してから時間が経過するにつれてその大きさが小さくなっていき、出現してから所定の時間が経過すると消失するように、立体像に対応する複数の視差画像を液晶モニタ3a上に表示させる。
【0063】
また、プレイ開始命令の発行に伴い、左撮像部20Lおよび右撮像部20Rが液晶モニタ3aの前方の画像(左画像および右画像)の取得を開始し(ステップS108)、フレーム単位で順次、CPU11へ画像を送出する。
【0064】
ステップS106で視差画像の表示が開始されると、第1座標算出手段53は、プレイヤによって認識される複数の球状の立体像の各々に対して、その表面上の複数の点(例えば、予め設定された代表点)における仮想的な空間座標(ここでは「P1」とする。)を算出する(ステップS110)。ここでは、第1座標算出手段53が、フレーム単位で変化する視差画像の位置、視差画像を構成する左目用画像および右目用画像のずれ量に応じて逐次、上記式(E1)に基づいて、球状の各立体像の中心位置を算出し、その中心位置に対して所定の半径(円形の視差画像の半径と同じ)の球の表面の仮想的な空間座標P1が算出される。
次に、第2座標算出手段54は、ステップS108においてフレーム単位で逐次取得する左撮像部20Lおよび右撮像部20Rからの左画像および右画像に基づいて、ステレオ計測を行い、操作体30の各点の空間座標(ここでは「P2」とする。)を算出する(ステップS112)。ここでは、前述したように、操作体30の点が左画像と右画像に投影された点と、左右の焦点位置fL,fRとから三角測量の原理に基づいて、操作体30の点の空間座標が算出される。このとき、後述するステップS114での判定のために、ステップS110で算出される空間座標の原点と、ステップS112で算出される空間座標の原点とを一致させる処理を行っておくのがよい。
【0065】
このゲームは、例えば、プレイヤに与えられた所定のプレイ時間の間に、操作体30をできるだけ多くの立体像と接触、あるいは十分に接近させることを競うゲームであって、移動する立体像に対してタイミングを合わせて操作体30を立体像に接触、あるいは十分に接近させることの動機付けがプレイヤに与えられることが想定されている。そして、イベント発生手段55は、ステップS110で算出された球状の各立体像の各点における仮想的な空間座標P1と、ステップS112で算出された操作体30の各点の空間座標P2との距離を算出し、その距離を所定の閾値と比較する(ステップS114)。その結果、算出した距離が所定の閾値以下であると判断した場合、すなわち、プレイヤが操作体30を、プレイヤに認識されているいずれかの立体像(つまり、液晶モニタ3aに表示中の視差画像によって認識される立体像)と十分に接近していると判断した場合には、イベント発生手段55は、該当する立体像に対応する視差画像を変化させることを含む所定のイベントを発生させる(ステップS116)。所定のイベントに含まれる視差画像の変化の一例としては、図4に例示したように、あたかも立体像VRが爆発して消失したかのように、視差画像を変化させることが挙げられる。さらに、発生するイベントとしては、図3に示した表示領域102内に表示されるポイントの変化、つまりプレイヤが獲得したポイント数の増加が行われてもよい。以上のように、このゲームでは、所定のプレイ時間内に、操作体30を立体像と接触、あるいは十分に接近させて消失させ、そのようにして消失させた立体像の数が競われる。このとき、プレイヤは、実際には存在しない立体像に対してあたかも直接的に操作を行えるかのような感覚を味わいながらゲームを進行させることができる。すなわち、立体的な操作感覚を伴う新たなゲームの興趣性をもたらすことができる。
【0066】
(2)第2の実施形態
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態では、特記しない限り、ゲーム装置の構成及び動作、ゲーム装置によって実行される各手段、ゲームの主要な処理のフローは、第1の実施形態で説明したものと同様である。
【0067】
図9は、本実施形態の制御装置10で主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図である。図9に示す機能ブロック図は、図2に示したものと比較すると、第1制御手段56、第2制御手段57、第3制御手段58および第4制御手段59が追加された点で異なる。なお、便宜上、図2に示す本実施形態の制御装置10では、第1制御手段56、第2制御手段57、第3制御手段58および第4制御手段59のすべてを含む構成となっているが、かかる構成に限られない。第1制御手段56、第2制御手段57、第3制御手段58または第4制御手段59の少なくともいずれかの手段を備えていればよい。
【0068】
第1制御手段56は、視差画像が表示される前に、当該視差画像によって認識される仮想的な立体像がプレイヤから見て操作体30と重複し、かつ、操作体30が仮想的な立体像と液晶モニタ3aとの間に位置するようになると判定される場合には、予め視差画像を表示しないように画像表示手段52を制御する機能を備える。
【0069】
図10は、視差画像(左目用画像ImL、右目用画像ImR)によって認識される仮想的な立体像がプレイヤから見て操作体30と重複し、かつ、操作体30が仮想的な立体像VRと液晶モニタ3aとの間に位置する状態を示す図であり、(a)はその状態を示す平面図、(b)はプレイヤの視点から立体像VRおよび操作体30を眺めた図である。図10に示すように、視差画像によって認識される仮想的な立体像VRがプレイヤから見て操作体30と重複し、かつ、操作体30が仮想的な立体像VRと液晶モニタ3aとの間に位置する状態となる場合、すなわち、プレイヤに認識される立体像VRの仮想的な空間位置よりも裏側に操作体30が存在するという位置関係になる場合には、プレイヤから見て操作体30が立体像VRを通して不自然に映ることになる。具体的には、図10(b)の斜線で示した操作体30の先端部のみが、立体像VRの手前(プレイヤ側)に浮き出て見える。この理由は、操作体30は現実に存在する物体であるのに対して、立体像VRは現実には存在せず、人間の脳内で構成される仮想の存在であることから、図10(a)からも明らかな通り、操作体30が、視差画像と人間の目との間のラインを切ることになり、操作体30によって立体像VRの一部が構成されなくなるためである。そこで、第1制御手段56は、かかる不自然な表示を予め防止するため、上記位置関係となるような視差画像を予め表示しないように画像表示手段52を制御する。これにより、操作体による立体像に対する操作性をより自然なものとすることができる。
【0070】
具体的には、第1制御手段56では、以下の処理を行う。
CPU11は、フレーム単位で逐次算出される操作体30の各点の空間座標を算出する。そしてCPU11は、第1座標算出手段53において立体像VRの仮想的な空間位置を算出するときの前提としたプレイヤの両目の瞳孔の空間位置(既知の位置)から見た、操作体30の各点の空間座標の液晶モニタ3aにおける投影位置を算出する。この投影位置は、プレイヤから見た操作体30の液晶モニタ3a上の位置であり、これによってプレイヤから見た操作体30の液晶モニタ3a上の領域(以下、「投影領域」という。)が画定される。CPU11はさらに、液晶モニタ3aにおいて、逐次算出する操作体30の投影領域内に視差画像を表示させないようにするか、操作体30の投影領域内に視差画像を表示させる場合には、プレイヤから見て立体像VRの裏側に操作体30が位置しないように、視差画像の左目用画像と右目用画像の間のずれ量(図6のd)を調整する。つまり、操作体30の各点の空間座標が分かっているため、操作体30よりも液晶モニタ3a側に立体像VRが認識されるように、表示される視差画像の左目用画像と右目用画像の間のずれ量を調整する。
【0071】
第2制御手段57は、操作体30が、プレイヤから見て立体像と重複し、かつ立体像と液晶モニタ3aの間の位置に移動した場合には、その立体像に対応する視差画像を表示しないように画像表示手段52を制御する。
【0072】
上述したように、操作体30が移動した結果として、操作体30が、プレイヤから見て、プレイヤに認識される立体像の仮想的な空間位置よりも裏側に存在するという位置関係(図10に示した位置関係)になる場合には、プレイヤから見える操作体30が立体像によって不自然な表示となる。具体的には、操作体30のうち、立体像と重なった部分のみが、立体像の手前(プレイヤ側)に浮き出て見える。そこで、第2制御手段57は、かかる不自然な表示を予め防止するため、上記位置関係となるような位置に操作体30が移動した場合には、立体像に対応する視差画像を表示しないように画像表示手段52を制御する。すなわち、立体像自体を消してしまうことによって、不自然な表示を回避している。これにより、操作体30による立体像に対する操作性をより自然なものとすることができる。
【0073】
具体的には、第2制御手段57では、以下の処理を行う。
CPU11は、フレーム単位で逐次算出される操作体30の各点の空間座標を算出する。そしてCPU11は、第1座標算出手段53において立体像の仮想的な空間位置を算出するときの前提としたプレイヤの両目の瞳孔の空間位置(既知の位置)から見た、操作体30の各点の空間座標の液晶モニタ3aにおける投影位置を算出する。この投影位置は、プレイヤから見た操作体30の液晶モニタ3a上の位置であり、これによってプレイヤから見た操作体30の液晶モニタ3a上の投影領域が画定される。CPU11は操作体30の投影領域を逐次モニタしている。そして、この投影領域内に視差画像が移動し、かつ、その視差画像によって第1座標算出手段53により算出される立体像の仮想的な空間位置が、操作体30よりもプレイヤ側にあると判断した場合には、その視差画像の表示を禁止する。
【0074】
第3制御手段58は、操作体30が、プレイヤから見て立体像と重複し、かつ立体像と液晶モニタ3aの間の位置に移動した場合には、その立体像に対応する視差画像を、視差画像に対応する立体像がプレイヤから見て操作体30と重複しない位置に移動するように画像表示手段52を制御する。
【0075】
上述したように、操作体30が移動した結果として、操作体30が、プレイヤから見て、プレイヤに認識される立体像の仮想的な空間位置よりも裏側に操作体30が存在するという位置関係になる場合には、プレイヤから見える操作体30が立体像によって不自然な表示となる。具体的には、操作体30のうち、立体像と重なった部分のみが、立体像の手前(プレイヤ側)に浮き出て見える。そこで、第3制御手段58は、かかる不自然な表示を予め防止するため、上記位置関係となるような位置に操作体30が移動した場合には、立体像に対応する視差画像を上記位置関係とならない位置に移動するように画像表示手段52を制御する。すなわち、立体像の位置を操作体から離れるように移動させることによって、不自然な表示を回避している。これにより、操作体30による立体像に対する操作性をより自然なものとすることができる。
【0076】
具体的には、第3制御手段58では、以下の処理を行う。
CPU11は、フレーム単位で逐次算出される操作体30の各点の空間座標を算出する。そしてCPU11は、第1座標算出手段53において立体像の仮想的な空間位置を算出するときの前提としたプレイヤの両目の瞳孔の空間位置(既知の位置)から見た、操作体30の各点の空間座標の液晶モニタ3aにおける投影位置を算出する。この投影位置は、プレイヤから見た操作体30の液晶モニタ3a上の位置であり、これによってプレイヤから見た操作体30の液晶モニタ3a上の投影領域が画定される。CPU11は操作体30の投影領域を逐次モニタしている。そして、この投影領域内に視差画像が移動し、かつ、その視差画像によって第1座標算出手段53により算出される立体像の仮想的な空間位置が、操作体30よりもプレイヤ側にあると判断した場合には、その視差画像を、液晶モニタ3a上の投影領域以外の領域に移動させるように画像処理回路14を指示する。
【0077】
第4制御手段59は、操作体30が実質的に移動していない状態で、立体像の少なくとも1点の空間座標と、操作体30の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になったときには、所定のイベントの発生を禁止するようにイベント発生手段55を制御する。
【0078】
操作体30が実質的に移動していない状態では、プレイヤには、自身が認識する立体像に対して操作体30を近付けようとする積極的な意思が欠如していると考えられる。そこで、かかる場合には、立体像の少なくとも1点の空間座標と、操作体30の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になる、つまり、両者が十分に接近していると判断される場合であっても、第4制御手段59は、イベント発生手段55によるイベントの発生を禁止するようにする。これにより、プレイヤによる積極的な意思によるものではなく、偶然に操作体と立体像が接近した場合のイベントの発生を阻止でき、イベントの発生の実効性を高めることができる。
【0079】
例えば、図3および図4を参照して説明したゲームの場合、プレイヤが操作体30を移動させていないのにも関わらず偶然に立体像と操作体30が接触あるいは十分に接近したこと(つまり、移動する立体像が静止する操作体30に十分に接近したこと)をもって立体像の消失あるいはポイントの獲得が行われたとすれば、プレイヤの適切な操作を伴わずに立体像VRの消失あるいはポイントの獲得を生じさせることになり、ゲームの興趣性を低下させることにもなる。そこで、第4制御手段59は、プレイヤの適切な操作を伴わずにイベントを発生させるという不適切なイベント発生を防止するようにする。
【0080】
具体的には、第4制御手段59では、以下の処理を行う。
CPU11は、第2座標算出手段54によって逐次算出される、操作体30を構成する各点の空間座標に基づいて、操作体30の移動速度をフレーム単位で算出する。つまり、1フレーム期間の間の操作体30の座標変化に基づいて、操作体30の移動速度が逐次算出される。そして、操作体30と、プレイヤに認識される立体像とが十分に接近していると判断された時点において、操作体30の移動速度が所定の閾値以上であれば、所定のイベントを発生させることをイベント発生手段55に対して許可する。また、その時点において、操作体30の移動速度が所定の閾値よりも小さい場合には、所定のイベントを発生させることをイベント発生手段55に対して許可しないようにする。
【0081】
(3)第3の実施形態
以下、第3の実施形態について説明する。
図11は、本発明の画像表示装置の別の実施形態としてのゲーム装置2の外観と、ゲーム装置2のプレイヤとを示している。ゲーム装置2は、図1に示したゲーム装置1と同様、プレイヤに仮想的に認識される立体像を対象としてプレイヤが操作を行うゲームの進行を制御するゲーム装置であるが、ゲーム装置1とは異なり、比較的小型の携帯型ゲーム装置として想定されている。図12は、本実施形態のゲーム装置2の構成を示すブロック図である。なお、図12に示すブロック図中、図2に示したものと同一の構成については、概ね同一符号を付して重複説明を省略するが、図2に示したものと同一符号であっても図2に示したものと異なる機能を備えるものについては、その異なる部分について以下説明する。
【0082】
図11に示すように、本実施形態のゲーム装置2は、上部筐体2aと下部筐体2bを備え、上部筐体2aと下部筐体2bとは、互いに開閉自在に連結されている。本実施形態のゲーム装置2の表示装置3には、上部筐体2aに設けられた上部液晶モニタ3aと、下部筐体2bに設けられた下部液晶モニタ3bとが含まれる。
入力部4は、プレイヤの操作入力を受け入れるための複数の釦を含む。図11に示す釦の筐体に対する配置例によれば、この複数の釦は下部筐体2bに設けられており、下部液晶モニタ3bよりも左側に配置された十字状の方向指示釦4a、下部液晶モニタ3bよりも右側に配置されたセレクト釦4b、スタート釦4cおよび複数の指示釦4dを含む。入力部4には、図示しない電源釦も含みうる。
図11に示すように、上部液晶モニタ3aには、それぞれ左目用画像ImLおよび右目用画像ImRからなる1または複数の視差画像が表示され、この視差画像を見たプレイヤには、プレイヤと上部液晶モニタ3aの間に立体像VRの存在が認識される。
【0083】
本実施形態のゲーム装置2では前述したゲーム装置1と異なり、上部筐体2aにおいて上部液晶モニタ3aの下方の中央近傍に、撮像対象をプレイヤの方に向けた単一の撮像部20の撮影用レンズが配置されている。すなわち、本実施形態のゲーム装置2では、ゲーム装置1と異なり、単一の撮像部20により取得した画像に基づいて、ステレオ計測を用いずに操作体30の空間座標を特定する。なお、図11に示した例では、撮像部20がゲーム装置2に内蔵された形態で示しているが、別体の撮像装置が設けられ、その撮像装置がゲーム装置2内の制御装置10と電気的に接続される形態であってもよい。撮像部20で得られたフレーム単位の画像のデータは逐次、制御装置10のCPU11へ送出される。
【0084】
第1、第2の実施形態で参照した図5、図9の機能ブロック図中の各手段は、図11および図12に示したゲーム装置2の構成によっても実現される。ここで、本実施形態のゲーム装置2のハードウエア上の構成上、図1および図2に示したゲーム装置1のそれとの主要な相違点は、撮像部が単一である点にある。そこで、以下では、本実施形態において、単一の撮像部を用いて第2座標算出手段54が如何にして実行されるかについて説明する。図5および図9に示した手段のうち、第2座標算出手段54以外の各手段は、操作体30の空間座標の算出とは無関係であるか、あるいはいったん操作体30の空間座標が算出されれば第1の実施形態で述べた方法と同様にして実現されうることは明白であるため、ここでは、かかる手段の重複説明を省略する。
【0085】
単一画像を用いた物体(本実施形態では、操作体30)の位置特定方法は様々な公知の技術が知られており、ここでは如何なる公知の技術を適用してもよい。そのような技術を開示した公知の文献の一例として、特開平5−157518号公報を挙げることができる。同文献による物体の位置特定方法は概ね、以下のとおりである。先ず取得した画像のエッジ検出結果に基づいて、対象となる物体の特徴点の画像内の位置を特定する。次に、物体の特徴点あるいは特徴部の位置が特定されると、取得した画像上における物体の特徴点の2次元座標を、物体の特徴点の実空間(3次元空間)上の座標へ変換する。この座標変換に当たって、特徴部の画像内における大きさ、画像の倍率、撮像角、撮像部の位置等のパラメータが参照される。
本実施形態において、取得した画像の中から操作体30の形状を特定する場合には、上述したようなエッジ検出結果と、予め操作体30の形状として記録した複数の形状を基にしたパターン認識結果とを組み合わせてもよい。また、取得した画像内において操作体30の一部(例えば先端部)を他の部位と異なる特殊な形状とすることが、容易に操作体30の特徴部を特定できる点で好ましい。この場合には、操作体30の先端部が特徴部となる。さらに好ましくは、その先端部を他の部位と異なる色とすることで、取得した画像中の輝度情報から操作体30の特徴部を容易かつ高速に特定できる。
【0086】
以上、本発明の複数の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されない。また、各実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。
【0087】
例えば、上述した各実施形態では、操作体30が、細長い棒状のペン等の、プレイヤとは別個の物理的な実体である場合について説明してきたが、これに限られない。操作体は、プレイヤの指や手等のプレイヤの一部である物理的な実体であってもよい。例えば操作体をプレイヤの手とする場合には、ゲーム装置の撮像部から取得した画像のうち肌色の輝度情報のピクセルの中から手の形状認識を行うアルゴリズムを実装することで、操作体としての手の位置を上記画像から取得することができる。この画像中の手の位置から操作体としての手の空間座標を算出すればよい。
【0088】
上述した各実施形態では、本発明の画像表示装置がゲーム装置に適用される場合を中心に説明してきたが、ゲーム装置以外の用途に適用できることは言うまでもない。例えば、本発明の画像表示装置のゲーム装置以外の用途として、観察者と表示画面の間に認識される立体像に対する擬似的な入力操作を観察者が行う方式で画像表示装置に対して観察者が入力を行うようにした、入力装置として機能させてもよい。
【0089】
上述した各実施形態では、図3および図4に示したゲームを例として説明したが、当該ゲームは本発明の適用例を示す単なる一例に過ぎず、本発明は様々なアプリケーションに適用しうることは言うまでもない。すなわち、本発明の画像表示装置としてのゲーム装置が実行するゲームとして、図3および図4に例示したゲーム以外に、プレイヤが操作体によってプレイヤに認識される立体像を直接的に操作する行為を伴うゲームであればゲームの種類は問わない。
例えば、立体像として認識される動物(ペット)に対して操作体としてのタッチペンをプレイヤが接触する行為(擬似的に撫でる行為)を行うことで、立体像としての動物が所定の動作を行うように認識されるように、立体像としての動物に対応する視差画像を変化させるようにさせたコミュニケーションゲームとしてもよい。
また、立体像として認識されるボールに対して操作体としてのタッチペンをバットに見立ててプレイヤが接触する行為(擬似的に打撃する行為)を行うことで、立体像としてのボールが移動するように認識されるように、立体像としてのボールに対応する視差画像を変化させるようにさせた野球ゲームとしてもよい。
立体像として認識される宝箱に対して操作体としてのタッチペンをプレイヤが接触する行為(擬似的に宝箱を選択し、開く行為)を行うことで、立体像としての宝箱が開くように認識されるように、立体像としての宝箱に対応する視差画像を変化させる動作を含むロールプレイングゲームとしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1,2…ゲーム装置
3…表示装置
3a…液晶モニタ,上部液晶モニタ
3b…下部液晶モニタ
4…入力部
5…記憶媒体装着部
10…制御装置
11…CPU
12…ROM
13…RAM
14…画像処理回路
15…サウンド処理回路
16…バス
17…記憶媒体
20…撮像部
20L…左撮像部
20R…右撮像部
22…スピーカ
51…ゲーム進行手段
52…画像表示手段
53…第1座標算出手段
54…第2座標算出手段
55…イベント発生手段
56…第1制御手段
57…第2制御手段
58…第3制御手段
59…第4制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面に視差画像を表示する画像表示手段と、
前記視差画像の観察者によって前記表示画面と前記観察者との間に認識される立体像の仮想的な空間座標を算出する第1座標算出手段と、
前記観察者の操作対象である操作体の空間座標を算出する第2座標算出手段と、
前記第1座標算出手段によって算出された立体像の少なくとも1点の空間座標と、前記第2座標算出手段によって算出された操作体の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になったときに、前記視差画像、または前記視差画像以外の前記表示画面上の画像の少なくとも一方の変化を伴う所定のイベントを発生させるイベント発生手段と、
を備えた画像表示装置。
【請求項2】
視差画像が表示される前に、当該視差画像によって認識される仮想的な立体像が前記観察者から見て前記操作体と重複し、かつ、前記操作体が前記仮想的な立体像と前記表示画面との間に位置するようになると判定される場合には、予め前記視差画像を表示しないように前記画像表示手段を制御する第1制御手段、をさらに備えたことを特徴とする、
請求項1に記載された画像表示装置。
【請求項3】
前記操作体が、前記観察者から見て前記立体像と重複し、かつ前記立体像と前記表示画面の間の位置に移動した場合には、その立体像に対応する視差画像を表示しないように前記画像表示手段を制御する第2制御手段、をさらに備えたことを特徴とする、
請求項1または2に記載された画像表示装置。
【請求項4】
前記操作体が、前記観察者から見て前記立体像と重複し、かつ前記立体像と前記表示画面の間の位置に移動した場合には、その立体像に対応する視差画像を、視差画像に対応する立体像が観察者から見て操作体と重複しない位置に移動するように前記画像表示手段を制御する第3制御手段、をさらに備えたことを特徴とする、
請求項1または2に記載された画像表示装置。
【請求項5】
前記操作体が実質的に移動していない状態で、前記立体像の少なくとも1点の空間座標と、前記操作体の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になったときには、前記所定のイベントの発生を禁止するように前記イベント発生手段を制御する第4制御手段、をさらに備えたことを特徴とする、
請求項1〜4のいずれかに記載された画像表示装置。
【請求項6】
前記第1座標算出手段は、前記観察者と前記表示画面の間の第1の距離と、観察者の瞳孔間の距離として予め設定される第2の距離と、視差画像を構成する左目用画像と右目用画像のずれ量とに基づいて、その視差画像に対応する立体像の仮想的な空間座標を算出し、
前記第2座標算出手段は、1または一対の撮像手段によって得られる前記操作体の像の色および/または形状に基づいて、操作体の空間座標を算出することを特徴とする、
請求項1〜5のいずれかに記載された画像表示装置。
【請求項7】
前記操作体の先端部は、先端部以外の部位とは異なる色および/または形状で構成されており、
前記イベント発生手段は、前記第1座標算出手段によって算出された立体像の少なくとも1点の空間座標と、前記第2座標算出手段によって算出された操作体の先端部の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になったときに、前記所定のイベントを発生させることを特徴とする、
請求項1〜6のいずれかに記載された画像表示装置。
【請求項8】
プレイヤに仮想的に認識される立体像を対象としてプレイヤが操作を行うゲームを実現可能なコンピュータに、
表示画面に視差画像を表示する画像表示機能と、
前記視差画像を観察するプレイヤによって前記表示画面と前記プレイヤとの間に認識される立体像の仮想的な空間座標を算出する第1座標算出機能と、
前記プレイヤの操作対象である操作体の空間座標を算出する第2座標算出機能と、
前記第1座標算出機能によって算出された立体像の少なくとも1点の空間座標と、前記第2座標算出機能によって算出された操作体の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になったときに、前記視差画像、または前記視差画像以外の前記表示画面上の画像の少なくとも一方の変化を伴う所定のイベントを発生させるイベント発生機能と、
を実現させるためのゲームプログラム。
【請求項9】
プレイヤに仮想的に認識される立体像を対象としてプレイヤが操作を行うゲームの進行を制御するゲーム装置におけるゲーム制御方法であって、
表示画面に視差画像を表示する画像表示ステップと、
前記視差画像を観察するプレイヤによって前記表示画面と前記プレイヤとの間に認識される立体像の仮想的な空間座標を算出する第1座標算出ステップと、
前記プレイヤの操作対象である操作体の空間座標を算出する第2座標算出ステップと、
前記第1座標算出ステップによって算出された立体像の少なくとも1点の空間座標と、前記第2座標算出ステップによって算出された操作体の少なくとも1点の空間座標との間の距離が所定の閾値以下になったときに、前記視差画像、または前記視差画像以外の前記表示画面上の画像の少なくとも一方の変化を伴う所定のイベントを発生させるイベント発生ステップと、
を備えたゲーム制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−106005(P2012−106005A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−12782(P2012−12782)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【分割の表示】特願2010−240334(P2010−240334)の分割
【原出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(506113602)株式会社コナミデジタルエンタテインメント (1,441)
【Fターム(参考)】