説明

画像表示装置および画像表示方法

【課題】サブフィールド発光型の画像表示装置において、画面内の物体の動きが一様でない場合の偽色を抑制し、動画擬似輪郭と動画ぼやけの両方を改善すること。
【解決手段】動きベクトル検出部11はフレーム間の画素の動きベクトルを検出し、ヒストグラムカウント部12は動きベクトルの分布をフレーム毎に求める。画素位置切替え部15は、再構成対象画素を終点とする動きベクトルと演算式を用いて発光データの取得先を示す画素位置ベクトルXiを算出して出力する。その際、動きベクトルの分布がフレーム内で一様でない場合は、輝度情報を参照して、再構成対象画素と取得先の画素との輝度差が閾値以下となるまで、画素位置ベクトルXiを再構成対象画素に近付けるように修正して新たな画素位置ベクトルYiを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示において1フレーム(または1フィールド)を複数に時分割して階調表示を行う画像表示装置および画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1つのフレームを輝度の重みの異なる複数の画面(以下、これらをサブフィールド(SF)と呼ぶ)に時間方向に分割し、各サブフィールドにおける発光、非発光を制御することで、1フレームの画像を表示する表示装置では、動画像を表示時に動画擬似輪郭と呼ばれる階調の乱れや動画ぼやけが発生し、表示品位を損ねるという問題がある。これは、動く物体を人間の目が追従するために発生することが知られている。
【0003】
この動画擬似輪郭の発生を防止するため、特許文献1には、フレーム間、もしくはフィールド間の表示データより動きベクトルを検出し、表示データの各サブフィールドの発光位置を、その動きベクトルから算出した視線パス上の各サブフィールドの画素位置へ補正する方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、動きベクトルとサブフィールドの発光重心位置から、現在画素の各サブフィールドがどこの画素から来るのかを示すドラッグする座標を計算し、サブフィールドを再符号化する方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献3は、液晶型表示装置等のホールド型表示装置において、動きボケ抑制の画像処理に用いる動きベクトルの補正に関するもので、注目画素とその周辺の画素における動きベクトルの候補のうち頻度が最も高い動きベクトル候補を注目画素の動きベクトルとして決定すること、また、注目画素周辺の輝度の変化の度合いに基づいて動きベクトルを補正することが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−211848号公報
【特許文献2】特開2002−123211号公報
【特許文献3】特開2005−160015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1,2の技術によれば、画面全体が同一方向に動く場合など、動きベクトルが既知の場合においては動画擬似輪郭を効果的に除去することが可能である。また上記特許文献3の技術によれば、周囲と調和の取れた動きベクトルを検出することで、ホールド型表示装置における人間の追従視に起因する動きボケを抑制することができると述べられている。しかしながら、この技術は、動きベクトルを実際の動きの大きさよりも大幅に大きく補正する場合があり、本発明者らは、この技術によっても、画面全体の動きが一様でない場合には、画面全体が同一方向に動く場合と同様に、動きベクトルを用いて補正を行うと新たに擬似輪郭が発生するという問題を発見した。
【0008】
すなわち、画面内の物体毎に動きベクトルを求めてサブフィールドの発光位置を補正しているため、各物体内にさまざまな方向や大きさの動きベクトルが検出された場合、その動きベクトルを用いてサブフィールドの発光位置を補正すると、移動物体の周辺領域の画素の色変化が大きくなり、偽色が発生してしまう。
【0009】
また、移動物体の周辺領域の画素の大きな色変化を抑えるようにサブフィールドの発光位置を補正すると、動画ぼやけの改善効果が小さいという課題があった。
【0010】
まず、図12は、サブフィールドを用いて階調を表現する表示装置の階調表現方法について説明する図である。1つのフレームをN個のサブフィールドから構成し、各サブフィールドでは、例えば2のN乗などの重み付けを行う。この例では、輝度の小さい側から、2の0乗、2の1乗、…、2の(N−1)乗と重み付けをしている。1フレーム期間の開始側から、SF1、SF2、…、SFNと呼ぶ。ここでは、N=8の例である。表示装置では、このサブフィールドの発光、非発光を複数選択することにより、1フレーム内の階調を表現している。そして、人間の網膜が感じる輝度は、複数発光したサブフィールドの輝度の和である。
【0011】
ここで、サブフィールドの発光が時間的に異なるため、動画像内の動く物体を人間の目が追従し、1フレーム内の隣接する画素の発光サブフィールドの位置が大きく変化した場合、動画擬似輪郭が発生する。
【0012】
図13は、動画擬似輪郭の発生メカニズムの一例を示す。垂直方向が時間、水平方向が画素位置を表し、サブフィールド数Nが8で、水平方向は、左方向に1画素で1ずつ輝度が高い一連の画素を表示する場合を示す。
【0013】
図13(a)は、当該一連の画素表示が、2番目のフレーム期間において、1番目のフレーム期間よりも2画素右方向に移動している場合である。ここで、図に示す輝度が127、128、129の画素は、本来、静止画の状態であれば人間の目には、それぞれ127、128、129の輝度に見える。
【0014】
しかし動画の場合、図に示す矢印のように、画像の移動に視線が追従する。これにより、人間の目に認識されるサブフィールドの発光期間が静止画の場合とは異なることになる。(a)の例では、静止画のとき輝度が127、128、129の画素が、動画表示には、輝度が127、0、129の画素として人間の目に認識される。このように、本来表示されないはずの輝度0の画素を、人間の目が認識してしまう。
【0015】
また、図13(b)に示すように、一連の画素表示が、2番目のフィールド期間において、1番目のフィールド期間よりも2画素左方向に移動している場合は、静止画のとき輝度が126、127、128の画素が、動画表示には、輝度が126、255、128の画素として人間の目に認識される。このように、本来表示されないはずの輝度255の画素を、人間の目が認識してしまう。これが動画擬似輪郭発生のメカニズムである。
【0016】
本発明の目的は、上記課題を鑑み、サブフィールド発光型の画像表示装置において、画面内の物体の動きが一様でない場合の偽色を抑制し、動画擬似輪郭と動画ぼやけの両方を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、入力した画像の1フレームを複数のサブフィールド期間に分割し、フレーム間の対応する画素の動きベクトルに応じて、複数のサブフィールド期間の各期間における発光データを再構成する画像表示装置であって、入力画像を複数のサブフィールドの発光データに変換するサブフィールド変換部と、入力画像についてフレーム間の画素の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、検出した動きベクトルの分布をフレーム毎に求めるヒストグラムカウント部と、入力画像から各画素の輝度情報を算出する輝度情報算出部と、検出した動きベクトルのうち、再構成対象フレーム内の再構成対象画素を終点とする動きベクトルを選択し、選択した動きベクトルから所定の演算式を用いて発光データを再構成するためのデータの取得先を示す画素位置ベクトルを算出して出力する画素位置切替え部と、サブフィールド変換部から出力された再構成対象フレーム内の各画素のサブフィールドの発光データを、画素位置切替え部から出力された画素位置ベクトルが示す再構成対象フレーム内の画素の対応するサブフィールドの発光データを用いて再構成するサブフィールド再構成部と、サブフィールド再構成部から出力されるサブフィールドの発光データを用いて画像を表示する画像表示部とを備え、画素位置切替え部は、ヒストグラムカウント部で求めた動きベクトルの分布と輝度情報算出部が算出した輝度情報に応じて、算出した画素位置ベクトルをフレーム毎に修正して出力する。
【0018】
ここに画素位置切替え部は、ヒストグラムカウント部で求めた動きベクトルの分布がフレーム内で一様な場合は、算出した画素位置ベクトルXiを出力し、動きベクトルの分布がフレーム内で一様でない場合は、輝度情報算出部が算出した輝度情報を参照して、画素位置ベクトルXiが示す画素と再構成対象画素との輝度差が閾値以下となる画素が出現するまで、算出した画素位置ベクトルXiを再構成対象画素に近付けるように修正して新たな画素位置ベクトルYiを出力する。
【0019】
さらに、ヒストグラムカウント部にて求めた動きベクトルの分布に基づき、動きベクトル検出部にて検出した動きベクトルVを他の動きベクトルに補正する動きベクトル補正部を備え、動きベクトル補正部は、ヒストグラムカウント部で求めた動きベクトルの分布がフレーム内で一様な場合は、動きベクトル検出部にて検出したフレーム内の各動きベクトルVを、フレーム内でカウント値Nnが最大となる0以外の動きベクトルの値Vmにて置き換え、動きベクトルの分布がフレーム内で一様でない場合は、検出した動きベクトルVをそのまま用いる。
【0020】
本発明は、入力した画像の1フレームを複数のサブフィールド期間に分割し、フレーム間の対応する画素の動きベクトルに応じて、複数のサブフィールド期間の各期間における発光データを再構成する画像表示方法であって、入力画像を複数のサブフィールドの発光データに変換するステップと、入力画像についてフレーム間の画素の動きベクトルを検出するステップと、検出した動きベクトルの分布をフレーム毎に求めるステップと、入力画像から各画素の輝度情報を算出するステップと、検出した動きベクトルのうち、再構成対象フレーム内の再構成対象画素を終点とする動きベクトルを選択し、選択した動きベクトルから所定の演算式を用いて発光データを再構成するためのデータの取得先を示す画素位置ベクトルを算出し、動きベクトルの分布と輝度情報に応じて、算出した画素位置ベクトルをフレーム毎に修正して出力するステップと、再構成対象フレーム内の各画素のサブフィールドの発光データを、画素位置ベクトルが示す再構成対象フレーム内の画素の対応するサブフィールドの発光データを用いて再構成するステップと、サブフィールドの発光データを用いて画像を表示するステップとを備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、画面内の物体の動きが一様でない場合の偽色を抑制しつつ、擬似輪郭と動画ぼやけを低減する。従って、画質の劣化のない良質の画像を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の各実施例を、図面を参照して説明する。各図面において、同一の符号が付されている構成要素は同一の機能を有することとする。以下の記載において、「サブフィールド」との記載は「サブフィールド期間」という意味も含む。また、「サブフィールドの発光」という記載は「サブフィールド期間における画素の発光」という意味も含む。また、以下の記載または図面において、単に動きベクトルの値として、スカラー量が記載されている場合は、2次元ベクトルのうち、水平方向の動き量について例示したものとする。例えば、単に「6」と表記した場合は、表示画面の水平方向をx、垂直方向をyとした場合の動きベクトルが(x,y)=(+6,0)であることを示す。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の第1の実施例に係る画像表示装置を示すブロック図である。画像表示装置1の構成は、入力部10、動きベクトル検出部11、ヒストグラムカウント部12、サブフィールド変換部13、輝度情報算出部14、画素位置切替え部15、サブフィールド再構成部16、画像表示部17、制御部18を備えている。
【0024】
各部の動作を説明する。入力部10には動画像データが入力される。例えば入力部は、TV放送用のチューナー、画像入力端子、ネットワーク接続端子などを備える。入力部10では、入力された動画像データに従来技術の変換処理等を行い、変換処理後の表示データを動きベクトル検出部11に対して出力する。
【0025】
動きベクトル検出部11では、対象フレームの表示データと、対象フレームより時間的に前のフレームの表示データとを比較することで、対象フレームの各画素を終点とする動きベクトルV(符号101)を検出する。この動きベクトルから、物体の移動の速さと移動方向の情報が得られる。ここで、ある画素の動きベクトルの水平成分をVx、垂直成分をVyとしたとき、その画素の動きベクトルをV=(Vx,Vy)と表す。動きベクトルを検出するための動き検出技術や動き推定技術等に関しては、MPEG符号化処理等で用いられている周知の技術を適用できるので、ここでは説明を省略する。
【0026】
ヒストグラムカウント部12では、動きベクトル検出部11により検出された動きベクトルV(101)について、水平成分Vxおよび垂直成分Vy毎にその出現度数をカウントし、動きベクトルの分布(ヒストグラム情報)102を出力する。ヒストグラムは、ある領域内にそれぞれの成分を有する動きベクトルが何個存在するかを分布図で示したものである。そして、動きベクトルの分布がある特定の動きベクトルに集中している場合、その特定の動きベクトルに「偏り」が生じていると表現することにする。すなわち、特定の動きベクトルに「偏り」が生じているということは、その領域内の画像の動きは一様であることを意味する。
【0027】
サブフィールド変換部13では、入力画像を複数のサブフィールドの発光データに変換する。輝度情報算出部14では、入力部10に入力した映像データから輝度情報103を算出する。
【0028】
画素位置切替え部15では、対象画素の各サブフィールドを再配置するために、再構成前のサブフィールドの画素を示す画素位置ベクトルを計算する。その際、動きベクトル検出部11で検出した動きベクトル101、ヒストグラムカウント部12で求めた動きベクトルの分布(ヒストグラム情報)102、及び輝度情報算出部14で算出した輝度情報103を用いる。スレッショルド値(閾値)S(符号104)とスレッショルド値(閾値)T(符号105)は、動きベクトルの分布が一様であるか否かを判定するために用いる。
【0029】
画素位置切替え部15は、まず、動きベクトル検出部11で検出した動きベクトル101を入力し、演算式を用いて画素位置ベクトルXiを計算する。次に、輝度情報算出部14が算出した輝度情報103を用いて、画素位置ベクトルXiが示す画素と再構成対象画素との輝度差を判定し、輝度差が閾値より大きい場合には輝度差が閾値以下となる新たな画素位置ベクトルYiを求める。さらに、ヒストグラムカウント部12で求めた動きベクトルの分布102をフレーム毎に判定し、分布が一様な場合には画素位置ベクトルXiを、一様でない場合には画素位置ベクトルYiを切替えて出力する。
【0030】
サブフィールド再構成部16は、サブフィールド変換部13が出力するサブフィールドデータのうち、画素位置切替え部15でフレーム毎に切替えて出力した画素位置ベクトルが示す画素のサブフィールドの発光データを取得する。取得した発光データを再構成対象のサブフィールドに配置して再構成を行う。これを各サブフィールドについて繰り返すことにより、1画素毎にサブフィールドを再構成し、サブフィールド変換部13が出力したサブフィールドデータを再構成する。
【0031】
画像表示部17は、点灯および消灯などの発光動作を行う複数の画素を有し、サブフィールド再構成部16で求めたサブフィールドデータに基づいて、各画素の点灯または消灯を制御し画像を表示する。制御部18は、表示装置内の各要素に接続される。表示装置の各要素の動作は、上述した各構成要素の自律的な動作、又は制御部18の指示により動作する。
【0032】
このように本実施例の画像表示装置1では、画素位置切替え部15は、ヒストグラムカウント部12で求めた動きベクトルの分布により、画素位置ベクトルXiとYiをフレーム毎に適切に切替えて出力する。これに従いサブフィールド再構成部16は、フレーム毎に画素位置ベクトルXiもしくはYiを切替えて再構成対象の画素のサブフィールドを再構成することを特徴とする。
【0033】
以下、各部の構成と動作を詳細に説明する。
図2は、ヒストグラムカウント部12にて作成した動きベクトルのヒストグラムの一例を説明する図である。
【0034】
(a)は表示画面の一例で、ほぼ静止した背景Aに対し物体Bが水平方向に移動しているような場合を想定する。(b)はこのような画面に対して得られる、画面内の動きベクトルのヒストグラムである。横軸は水平成分の大きさVx、縦軸はカウント数Nnである。カウント数Nnは偏りの強度を表すもので、この図では、特定の動きベクトルVx=0(カウント数Nn=10)と、Vx=3(Nn=20)に偏った分布を示している。ここで、Vx=0は静止している背景Aの画像、Vx=3は移動している物体Bの画像に対応しているのは言うまでもない。最大カウント数Nm=20で、そのときの動きベクトルVm=3である。また、物体Bの大きさが大きくなるに従って、Vx=3のカウント数Nnが増大し、偏りの強度が大きくなる。言い換えれば、画面に対する物体の大きさは、偏りの強度として現われる。そこで、カウント値Nnのスレッショルド値S(104)を設け、偏りの強度を評価する指標とする。
【0035】
(c)のヒストグラムは偏りが大きい例であり、画面内の物体もしくは画面全体がほぼ一定方向に一様に移動している場合を示す。一方(d)のヒストグラムは偏りが小さい例であり、画面全体の物体の動きが一様でない場合を示す。
【0036】
本実施例で用いる動きベクトル値Vは、再構成対象フレームと対象フレームよりも時間的に前のフレーム間の動きベクトルのうち、時間的に前のフレームの画素を始点とし、再構成対象フレームにおける再構成対象画素を終点とする動きベクトルを用いる。なお、画素位置ベクトルを算出した結果が小数精度である場合は、これを四捨五入、切捨て、切上げなどの処理により整数精度とした画素位置ベクトルを用いてもよい。また、小数精度のまま使用しても構わない。以下の実施例では、切捨てにより整数化している。
【0037】
図3は、画素位置切替え部15の内部構成を示す図である。画素位置ベクトルXi算出部151は、動きベクトル検出部11で検出した動きベクトルのうちの対象フレームの再構成対象画素を終点とする動きベクトルV(101)、サブフィールドの数や番号を入力し、演算式を用いて画素位置ベクトルXiの算出を行う。画素位置ベクトルYi算出部152は、輝度情報算出部14が算出した輝度情報103を用いて、算出した画素位置ベクトルXiが示す画素と再構成対象画素との輝度差を判定し、輝度差が閾値より大きい場合には輝度差が閾値以下となる画素が出現するまで、算出した画素位置ベクトルXiを再構成対象画素に近付けるように修正して新たな画素位置ベクトルYiを算出する。
【0038】
動きベクトル分布判定部153は、ヒストグラムカウント部12で求めた動きベクトルの分布(ヒストグラム情報)102により、フレーム毎に画素位置ベクトルXiもしくはYiを切替えて出力する。このとき判定用の閾値として、カウント数Nnのスレッショルド値S(104)と、カウント数Nnがスレッショルド値S以上となる動きベクトルの数(種類)Wのスレッショルド値T(105)を与えておく。ヒストグラムカウント部12から入力したヒストグラムデータ102を解析し、カウント数Nnがスレッショルド値S以上となる動きベクトルの数Wを求める。動きベクトルの偏りが大きければ、Wの値は小さくなる。さらに動きベクトルの数Wをスレッショルド値Tと比較する。W≦Tの場合には画素位置ベクトルXiを出力し、W>Tの場合には画素位置ベクトルYiを出力する。
【0039】
例えば、図2(c)の場合、S=10とすればW=2であり、T=3とすればW≦Tとなるので、画素位置ベクトルXiを出力する。一方図2(d)の場合には、W=5であり、W>Tとなるので、画素位置ベクトルYiを出力する。このように、画面内の動きベクトルの偏りが大きい場合には、演算式で求めた画素位置ベクトルXiを出力し、偏りが小さい場合には、輝度差が閾値以下となるように修正した画素位置ベクトルYiを用いる。
【0040】
ここで、スレッショルド値Sは人間の視覚特性から適宜設定する。例えば面積比で領域の20〜50%に設定するのが好ましい。また、移動物体が複数個あってそれらの速度が異なる場合や、単一物体であるが速度が分布しているときなどは、移動速度を平均化し物体全体が平均速度で移動しているものとみなして、最大カウント値Nmと特定の動きベクトルVmを求めるようにすれば良い。また、スレッショルド値Tは、カウント数Nnがスレッショルド値S以上の映像内で大きな割合を占める領域の数であり、例えば、2〜6に設定するのが好ましい。
【0041】
図4は、画素位置切替え部15にて画素位置ベクトルを切替えて出力するフローチャートを示す図である。以下の処理はフレーム毎に行う。
【0042】
ステップ111では、動きベクトル検出部11で検出した動きベクトルVを用いて、各サブフィールドi(i=1〜N)の画素位置ベクトルXi(x,y)を求める。Xi(x,y)は再構成対象の画素位置(x,y)を基準としたときの、取得先となる再構成前の各サブフィールドの画素位置ベクトルであり、数式(1)により演算する。以下、画素位置ベクトルを簡単にXiと記述する。
Xi=−V×(i−C)/N (1)
ここで、iは再構成を行うサブフィールドの番号、Cは1〜Nの間の任意の値、Nは1フレームを構成するサブフィールド数である。なおCは、サブフィールド変換部13から出力された発光データを再構成対象画素のサブフィールドにそのまま用いるサブフィールド(固定サブフィールド)の番号であり、Cを1〜Nの間の値を選択することで、サブフィールドCを基点とした様々なサブフィールドの再構成を実現できる。
【0043】
ステップ112では、ヒストグラムカウント部12から取得したヒストグラムデータを解析し、カウント数Nnがスレッショルド値S以上となる動きベクトルの数Wを求める。
ステップ113では、動きベクトルの数Wをスレッショルド値Tと比較する。比較の結果、W≦Tの場合にはステップ114に進み、ステップ111にて求めた画素位置ベクトルXiを出力する。比較の結果、W>Tの場合には、ステップ115に進む。
【0044】
ステップ115では、iに一番重みの大きいサブフィールド番号Nを代入する。ステップ116では、jに比較の開始であるiを代入する。
【0045】
ステップ117では、輝度情報算出部14から輝度情報を取得し、ステップ111にて求めた画素位置ベクトルXi(即ち、Xj)が示す画素と再構成対象画素の輝度差を閾値と比較する。ここで輝度差判定に用いる閾値は、例えば256階調表示における輝度差を略20程度に設定するのが好ましい。
【0046】
判定の結果、輝度差≦閾値である場合は、ステップ118へ進み、ステップ111にて求めた画素位置ベクトルXjを画素位置ベクトルYiに代入する。輝度差>閾値の場合は、ステップ119へ進み、求めた画素位置ベクトルXjを修正する。
【0047】
ステップ119では、j>Cか否かを判定する。j>Cならば、ステップ120にてjから1を減算する。また、ステップ119にてj>C以外ならば、ステップ121にて、jに1を加算する。この減算または加算は、いずれもjを固定サブフィールド番号C側に近付けるように修正する。その結果、修正後のjに対応する画素位置ベクトルXjは、固定サブフィールド番号C側に近い位置座標を表す値(即ち、ベクトル値の小さな値)に変更される。
【0048】
jを変更後ステップ117に戻り、修正した画素位置ベクトルXjが示す画素と再構成対象画素との輝度差を判定する。そして、輝度差≦閾値の条件が成り立つまで、前記ステップ119からステップ121までの処理を繰り返す。この修正処理は、輝度差が閾値以下となる画素が出現するまで、画素位置ベクトルXjを再構成対象画素に徐々に近付けるものである。輝度差≦閾値になれば、前記ステップ118にて、修正した画素位置ベクトルXjを画素位置ベクトルYiに代入する。
【0049】
ステップ122にて、サブフィールドiを更新し、ステップ116へ戻り次のサブフィールドiについて画素位置ベクトルYiを求める。ステップ123にて、全てのサブフィールドiについて画素位置ベクトルYiを求めたことを確認すると、ステップ124にて、画素位置ベクトルYiを出力する。
【0050】
以上のようにして、動きベクトルの分布を参照し、画面内の動きベクトルの偏りの大きさに応じて画素位置ベクトルXiとYiを切替えて出力する。
【0051】
なお、図4のフローチャートでは、動きベクトルにより求めた画素位置ベクトルXiの中から画素位置ベクトルYiを求めたが、再構成対象画素に近付けるように画素位置ベクトルを修正する方法であれば、他の方法でもよい。
【0052】
次に、本実施例におけるサブフィールドの再構成の具体例を、動きベクトルの分布に応じて図5と図6に分けて示す。
【0053】
図5は、動きベクトルの分布の偏りが大きい場合(一様な場合)について、サブフィールドの再構成の一例を示す図である。これは、前記図2(c)のように、スレッショルド値S以上となる動きベクトルの数Wが小さく、画面内の物体もしくは画面全体がある一定方向に一様に移動している場合である。この場合は、画素位置切替え部15は演算した画素位置ベクトルXiをそのまま出力してサブフィールドを再構成する。
【0054】
図5(a)は再構成前のサブフィールドの構成を示す。図で横軸は画素の水平位置、縦軸は時間で、サブフィールド数N=6の場合の表示データを表す。ここでは、再構成対象の画素である例えば画素nを終点とする動きベクトルの始点の画素は、画素nを基準とした相対位置として水平方向に−6の位置にあるとする。すなわち、当該動きベクトルのベクトル値Vは+6である。
【0055】
図5(b)は、画素nの各サブフィールドについての再構成結果を示す。この場合、取得する再構成前の各サブフィールドの画素位置を、再構成対象の画素を基準として前記数式(1)により求める。なお、Cは1からNまでの任意の値であるが、本実施例ではC=4とした。演算の結果、画素位置ベクトルXiはそれぞれ、SF1が3、SF2が2、SF3が1、SF4が0、SF5が−1、SF6が−2となる。
【0056】
そして、図4のステップ113の判定でW≦Tであるので、ステップ114に進みこれらのXiの値をそのまま用いる。従って、矢印5001〜5006が示すように、SF1は画素(n+3)から、SF2は画素(n+2)から、SF3は画素(n+1)から、SF4は元の画素n、SF5は画素(n−1)から、SF6は画素(n−2)からサブフィールドの発光データを取得する。このようにして、再構成対象画素nの各サブフィールドの発光データを再構成する。
【0057】
図5(c)は、全ての再構成対象画素(n−2)から(n+3)について、発光データの再構成の結果を示す。ここでは、再構成対象のフレーム上におけるそれぞれの画素を終点とする動きベクトルのベクトル値Vが、いずれも同じ+6である場合としている。上記画素nの場合と同様に、再構成対象画素の各サブフィールドについて数式(1)を用いて画素位置ベクトルXiを算出する。そして画素位置ベクトルXiが示す画素のサブフィールドにより、画素(n−2)から画素(n+3)の各サブフィールドを再構成する。この結果として、静止画において同一の画素に配置されていた複数のサブフィールド(図5において同一の模様で示されたサブフィールド)が、各画素の再構成後は視線パス5010上に並ぶ。
【0058】
図6は、動きベクトルの分布の偏りが小さい場合(一様でない場合)について、サブフィールドの再構成の一例を示す図である。これは、前記図2(d)のように、スレッショルド値S以上となる動きベクトルの数Wが大きく、画面内の物体が不均一に移動している場合である。この場合は、画素位置切替部15は演算した画素位置ベクトルXiを画素位置ベクトルYiに修正して出力し、サブフィールドを再構成する。このとき、画素間の輝度差≦閾値の場合には、画素位置ベクトルYiはXiと同じ値になる。本実施例では、輝度差>閾値を含む場合、即ち類似色領域以外(例えば、エッジ付近の領域等)での各サブフィールドの再構成について説明する。
【0059】
図6(a)は再構成前のサブフィールドの構成を示す。この場合、画素(n−3)と(n−2)の間では輝度差>閾値であり、他の画素間では輝度差≦閾値とする。この場合も、再構成対象の画素である例えば画素(n−1)を終点とする動きベクトルのベクトル値Vが+6とする。
【0060】
図6(b)は、画素(n−1)の各サブフィールドの再構成結果を示す。まず、前記数式(1)を用いて、画素(n−1)の各サブフィールドについて画素位置ベクトルXiを演算する。演算の結果、画素位置ベクトルXi(即ち、Xj)はそれぞれ、SF1が3、SF2が2、SF3が1、SF4が0、SF5が−1、SF6が−2となる。
【0061】
次に、図4のステップ113の判定で、W>Tであるので、ステップ115以降に進む。ステップ117では、各サブフィールドについて輝度差の判定を行う。例えばj=6のとき、SF6に対するXjは−2であるので、画素(n−3)と(n−1)の輝度差を判定する。上記したように画素(n−3)と(n−1)の間の輝度差>閾値であるため、ステップ119へ進み、ステップ120にてjから1を減算して、j=5に変更する。次に、ステップ117へ戻り、SF5に対するXjは−1であるので、画素(n−2)と画素(n−1)の輝度差を判定する。画素(n−2)と(n−1)の間の輝度差≦閾値であるので、ステップ118に進み、求めたSF5の画素位置ベクトルXjの値−1を画素位置ベクトルYiに代入する。他のSFについても同様に輝度差を判定する。SF1からSF5については輝度差≦閾値であるので、画素位置ベクトルYiは上記画素位置ベクトルXjの値を代入する。そしてステップ124にて、求めた各画素位置ベクトルYiを出力する。
【0062】
従って、図6(b)の矢印6001〜6006が示すようにサブフィールドの発光データを取得する。この中でSF6は、画素(n−3)ではなく、再構成対象画素(n−1)により近い画素(n−2)から発光データを取得する。このようにして、再構成対象画素(n−1)の各サブフィールドの発光データを再構成する。
【0063】
図6(c)は、全ての再構成対象画素(n−2)から(n+3)について、発光データの再構成の結果を示す。このとき、再構成対象のフレーム上における画素(n−2)から(n+3)までの各画素を終点とする動きベクトルのベクトル値Vが、いずれも同じ+6である場合としている。また、画素(n−4)から(n−3)までの各画素を終点とする動きベクトルのベクトル値Vが、いずれも同じ+4である場合としている。上記画素(n−1)の場合と同様に、図4のフローチャートを用いて画素位置ベクトルYiを算出する。そして求めた画素位置ベクトルYiが示す画素のサブフィールドにより、画素(n−2)から画素(n+3)の各サブフィールドを再構成する。この結果、類似色領域内の各画素の再構成後は視線パス6010上に並ぶだけでなく、サブフィールドの再構成の取得先は類似色のサブフィールドのみであり、大きく異なる色のサブフィールドを取得することがない。よって、従来技術の問題である類似色領域以外でも偽色は発生せず、擬似輪郭を抑制することが可能となる。
【0064】
ここで、本実施例の画像表示により、従来の課題がいかに解決されるかについて図7〜図9で説明する。
【0065】
図7は、比較のために、動画擬似輪郭を防止する従来のサブフィールドの補正方法を説明する図である。横軸を画素の水平位置、縦軸を時間とし、サブフィールド数N=6の場合の表示データを表したものである。
図7(a)は、再構成前のサブフィールドの構成を示す。ここで、表示データの画素(n−2)のサブフィールドの発光状態遷移について説明する。
【0066】
図7(b)は、動画像表示時において、表示データが水平方向に6画素分、即ちベクトル値+6で移動した場合の補正結果を示す。画素(n−2)の各サブフィールドの発光データは、矢印7002〜7006に示すように移動して再構成する。実際に網膜に認識される発光サブフィールドは、2斜線で挟まれた範囲(視線パス7010)である。この補正によれば、仮に静止画であるとするときに同一の画素に配置される複数のサブフィールドの発光位置を、視線パス内の画素位置のサブフィールドの発光位置に変えることで、動画擬似輪郭を補正することができる。
【0067】
図7(c)は、従来のサブフィールドの補正方法の課題として、動きベクトルが一様でない場合に一部の画素にサブフィールドが再設定されないことを説明する図である。ここでは、画素(n−4)〜(n−3)が水平方向に4画素、画素(n−2)〜(n+3)が水平方向に6画素移動した場合の、従来方法による補正結果を示す。図で枠線の領域7011のように、サブフィールドが再設定されない部分(サブフィールドが発光しない部分)が発生する。
【0068】
このように従来の補正方法によれば、画面内の物体の動きが一様でない場合に、サブフィールドが設定されない画素が発生し、画質が劣化する。すなわち、画素の輝度が大きく変化し、画像内に存在しない輝度の異なる画素で構成された偽色が発生してしまう。
【0069】
これに対し本実施例の表示方法では、再構成対象の画素を終点とする動きベクトルを求め、それぞれのサブフィールドについて再設定を行う。これにより、サブフィールドが再設定されない画素が発生するのを防止することができる。
【0070】
これに対し、図8と図9は、本実施例によるサブフィールドの補正方法の効果を説明する図である。
【0071】
図8は、各画素の動きベクトルが一様な場合で、本実施例の画素位置ベクトルXiに従い補正する方法を示す。
図8(a)は、再構成前のサブフィールドの構成である。動きベクトル値は全ての画素で+6とする。また、画素(n−3)と画素(n−2)間では輝度差>閾値とする。
【0072】
図8(b)は、本実施例の画素位置ベクトルXiによる画素(n−1)のサブフィールドの補正例である。数式(1)を用いて、各再構成対象画素の各サブフィールドの画素位置ベクトルXiを算出する。動きベクトルが一様であるので、画素間の輝度差による修正は行わない。そして、この画素位置ベクトルXiに従い、矢印8001〜8006で示すように各サブフィールドの発光データを取得して再構成する。
【0073】
図8(c)は、画素位置ベクトルXiを用いて、全ての画素についてサブフィールドを再構成した結果である。このとき、枠線の領域8011内のサブフィールドも、すべて再設定されることになる。さらに、図8(c)に示すように、各画素の動きベクトルが一様であり、同じ補正量で各画素のサブフィールドを補正するため偽色は発生せず、動画ぼやけと擬似輪郭を抑制することが可能となる。
【0074】
図9は、各画素の動きベクトルが一様でない場合で、本実施例の画素位置ベクトルYiに従い補正する方法を示す。
図9(a)は、再構成前のサブフィールドの構成である。動きベクトルは、画素(n−4)〜(n−3)において+4、画素(n−2)〜(n+3)において+6とする。また、画素(n−3)と画素(n−2)間では輝度差>閾値であり、他の画素間では輝度差≦閾値とする。
【0075】
図9(b)は、本実施例の画素位置ベクトルYiによる画素(n−1)のサブフィールドの補正例である。数式(1)を用いて、各再構成対象画素の各サブフィールドの画素位置ベクトルXiを算出する。次に、図4のフローチャートにより、サブフィールドを取得する画素と再構成対象画素の輝度差≦閾値を満たす画素位置ベクトルXjを求め、その画素位置ベクトルXjを画素位置ベクトルYiに代入する。この例では、サブフィールドSF6の取得位置が、矢印9006で示すように画素(n−3)から(n−2)に修正される。
【0076】
図9(c)は、上記の画素位置ベクトルYiを用いて、全ての画素についてサブフィールドを再構成した結果である。このとき、枠線の領域9011内のサブフィールドも、すべて再設定されることになる。さらに、図9(c)に示すように、輝度差が大きい領域では、サブフィールドの再構成の対象は類似色のサブフィールドのみであり、大きく異なる色のサブフィールドを取得しないため、画面内の物体の動きが一様でない場合も偽色は発生せず、擬似輪郭を抑制することが可能となる。
【0077】
以上の方法によって、1つの対象フレームを1の新たなフレームとして再構成することができる。対象フレームを変えながら当該処理を繰り返すことにより、新たな複数のフレームを生成して画像を表示する。その際、動きベクトルの分布により、フレーム毎に適切に画素位置ベクトルを切替え、その画素位置ベクトルを用いてサブフィールドの補正量を設定する。すなわち、図8(c)や図9(c)をフレーム毎に切替えて表示することで、偽色の発生を抑制し、動画ぼやけと擬似輪郭の両方を低減することが可能となる。
【0078】
本実施例によれば、動きベクトルによる視線パスを考慮したサブフィールドの再構成が実現でき、動画ぼやけや動画擬似輪郭の発生を抑制できる。また、画面内の物体の動きが一様でない場合、サブフィールドの再構成の対象は類似色のサブフィールドのみであり、大きく異なる色のサブフィールドを取得しないため、偽色は発生せず、擬似輪郭を抑制することが可能となる。また、画面内の物体もしくは画面全体が同一方向に動く場合、サブフィールドの再構成の対象は類似色以外のサブフィールドも含まれるため、動画ぼやけと擬似輪郭の両方を抑制することが可能となる。そして、動きベクトルの分布に応じて、フレーム毎にサブフィールドの補正方法を切替えることで、偽色の発生を抑制し、動画ぼやけと擬似輪郭の両方を低減することが可能となる。
【実施例2】
【0079】
図10は、本発明の第2の実施例に係る画像表示装置を示すブロック図である。本実施例の画像表示装置1は、前記実施例1(図1)の構成に、動きベクトル補正部19を追加した構成である。
【0080】
動きベクトル補正部19は、動きベクトル検出部11で検出した動きベクトルV(符号101)を、フレーム内の動きベクトルの分布状態に応じて他の動きベクトルV’(符号101’)に置き換える補正を行う。この場合、ヒストグラムカウント部12で求めたヒストグラム情報102を参照して、補正の要否を判定する。
【0081】
画素位置切替え部15は、対象画素の各サブフィールドを再配置するために、動きベクトル補正部19で補正された動きベクトル101’を用いて再構成前のサブフィールドの画素を示す画素位置ベクトルを計算する。その際、ヒストグラムカウント部12で求めたヒストグラム情報102、及び輝度情報算出部14で算出した輝度情報103を参照する。
【0082】
スレッショルド値S(符号104)とスレッショルド値T(符号105)は、動きベクトル補正部19と画素位置切替え部15にて判定のために用いる閾値である。動きベクトル補正部19と画素位置切替え部15以外の各部の動作は、実施例1と同様の動作であるので説明を省略する。
【0083】
このように、本実施例の画像表示装置1では、ヒストグラムカウント部12で求めた動きベクトルの分布により、動きベクトル補正部19で各映像に適した動きベクトルの補正を行い、画素位置切替え部15で前記補正した動きベクトル用いて、画素位置ベクトルXiとYiを求め、フレーム毎に切替えて画素位置ベクトルXiもしくはYiを出力し、サブフィールド再構成部16で前記切替えて出力した画素位置ベクトルXiもしくはYiを用いて再構成対象の画素のサブフィールドを再構成することを特徴とする。
【0084】
図11は、動きベクトル補正部19の内部構成の一例を示す図である。動きベクトル補正部19は、ヒストグラムカウント部12から動きベクトルの分布(ヒストグラム情報)102を取得し、スレッショルド値S(104)とスレッショルド値T(105)とで比較し、動きベクトル検出部11で検出した動きベクトル値V(101)を置き換える補正を行う。
【0085】
レジスタ191は、ヒストグラムカウント部12からヒストグラム情報102を取得し、カウント値Nnの最大値Nmを保持する。レジスタ192は、最大カウント値Nmを与える特定の動きベクトルの値Vmを保持する。
【0086】
比較補正部193は、最大カウント値Nmをスレッショルド値S(104)と比較する。そして、最大カウント値Nmがスレッショルド値S以上となる場合には、動きベクトル検出部11で検出した該当領域(ヒストグラムをカウントした領域)の0以外の動きベクトルV(101)を、特定の動きベクトルVmにて置き換える補正(Vn=Vm)を行う。但し、動きベクトルVmより小さな値の動きベクトルは置き換えず、図2(c)のV1とV2に示す値が小さくても近傍Lの範囲内のベクトルは、Vmに置き換える。動きベクトル値の水平成分Vx、垂直成分Vyについて、それぞれの近傍Lは1以下とすることが望ましい。最大カウント値Nmがスレッショルド値Sよりも小さい場合には、動きベクトル検出部11で検出した動きベクトル値Vの置き換えをしない(Vn=V)。
【0087】
切替え部194は、ヒストグラム情報102を用いて、スレッショルド値S以上となる動きベクトルの数Wを求める。次に、動きベクトルの数Wをスレッショルド値Tと比較する。そして、W≦Tの場合には、比較補正部193にて補正した動きベクトルVnを新たな動きベクトルV’(符号101’)として画素位置切替え部15に出力する。W>Tの場合には、動きベクトル検出部11にて検出した動きベクトルVをそのまま動きベクトルV’(101’)として出力する。
【0088】
すなわち、画面内の物体もしくは画面全体が一様に移動している場合には、ばらつきを抑えた動きベクトルVnに全て置き換えて出力する。また、画面内の物体の動きが一様でない場合には、動きベクトル検出部11にて検出した動きベクトルVをそのまま出力する。
【0089】
例えば前記図2(c)の場合には、最大カウント値Nm=30であり、スレッショルド値Sを10とすれば、Nm≧Sとなるから、画面全体の動きベクトルをVn=Vm(Vx=3)に補正する。次に、Nn≧Sとなるベクトル数W=2(Vx=2と3)であり、スレッショルド値Tを3とすればW≦Tとなる。従って、動きベクトルV’としてVn=Vm(Vx=3)を画素位置切替え部15に出力する。ちなみに前記図2(d)の場合には、W=5>Tとなるので、動きベクトルVをそのまま出力する。
【0090】
画素位置切替え部15の動作は、実施例1と同様であり、フレーム毎に切替えて画素位置ベクトルXiもしくはYiを出力する。ただし、動きベクトルV’として、VnもしくはVが入力される。すなわち、W≦Tの場合には、動きベクトル補正部19からばらつきを抑えた動きベクトルV’(=Vn)が入力し、画素位置ベクトルXiを出力する。W>Tの場合には、動きベクトル補正部19から動きベクトルV’(=V)が入力し、輝度情報103を用いてXiを修正し、画素位置ベクトルYiを出力する。
【0091】
サブフィールド再構成部16では、画素位置切替え部15から出力される画素位置ベクトルXiまたはYiを用いて、サブフィールドを再構成する。
【0092】
このように、本実施例の画像表示装置1では、ヒストグラムカウント部12で求めた動きベクトルの分布により、動きベクトル補正部19で各映像に適した動きベクトルの補正を行う。画素位置切替え部15は、前記補正した動きベクトルを用いて画素位置ベクトルXiとYiを求め、フレーム毎に切替えて画素位置ベクトルXiもしくはYiを出力することを特徴とする。
【0093】
従って、画面内の物体もしくは画面全体が同一方向に移動する映像に対して、動画ぼやけと動画擬似輪郭を大幅に低減することが可能となる。また、画面内の物体の動きが一様でない映像に対して、偽色の発生を抑制し、動画擬似輪郭を低減することが可能となる。そして、フレーム毎に前記画素位置ベクトルXiとYiを選択し、サブフィールドの補正方法を切替えることで、映像に適した動画ぼやけ改善と動画擬似輪郭低減が可能となる。
【0094】
本実施例によれば、動きベクトルによる視線パスを考慮したサブフィールドの再構成が実現でき、動画ぼやけや動画擬似輪郭の発生を抑制できる。また、画面内の物体の動きが一様でない場合、サブフィールドの再構成の対象は類似色のサブフィールドのみであり、大きく異なる色のサブフィールドを取得しないため、偽色は発生せず、擬似輪郭を抑制することが可能となる。また、画面内の物体もしくは画面全体が同一方向に動く場合、ばらつきを押さえた動きベクトルを用いてサブフィールドの再構成を行うことにより、領域内の補正が均一となるため、動画ぼやけと擬似輪郭の両方をより低減することが可能となる。また、動きベクトルの分布により、フレーム毎にサブフィールドの補正方法を切替えることで、偽色の発生を抑制し、動画ぼやけと擬似輪郭の両方を低減することが可能となる。
【0095】
以上説明した本発明の各実施例によれば、いずれの場合も、より好適に画質の劣化を防止する。なお、上記各実施例において、次のような特有の効果を有する。実施例1は、フレーム毎にサブフィールド補正方法を切替えることで、映像に適した補正が実現可能となり、偽色の発生を抑止して、動画ぼやけと動画擬似輪郭の両方を低減する。第2の実施例は、フレーム毎にサブフィールド補正方法を切替え、ばらつきを抑えた動きベクトルを用いてサブフィールドを補正することで、画面内の物体もしくは画面全体がある程度同一方向に移動する映像の動画ぼやけと動画擬似輪郭を大幅に低減する。
【0096】
さらに上記各実施例においては、次のような変形が可能である。
上記各実施例において、動きベクトルの分布(ヒストグラム)を用いて、フレーム毎にサブフィールドの補正方法を切替える例を説明したが、例えば、動きベクトルの大きさや、輝度値や色等のヒストグラムを用いて切替えてもよい。
【0097】
動きベクトルに関して、例として水平方向の移動のみを伴う1次元の値を用いて説明したが、2次元の値であってもよい。サブフィールド数は6の場合について説明したが、サブフィールド数が6以外の場合であってもよい。
各実施例の画素位置切替え部15で判定する輝度差は、映像のRGBデータから算出した輝度値の差を用いてもよい。また、R、G、Bの個々のデータの差を用いてもよい。
【0098】
また、以上説明した各図、各方法等の実施例のいずれを組み合わせても、本発明の一実施の形態となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1の実施例に係る画像表示装置を示すブロック図。
【図2】動きベクトルのヒストグラムの一例を説明する図。
【図3】画素位置切替え部15の内部構成を示す図。
【図4】各サブフィールドの画素位置ベクトルを求めるフローチャート。
【図5】サブフィールドの再構成の一例を示す図(動きベクトルが一様な場合)。
【図6】サブフィールドの再構成の一例を示す図(動きベクトルが一様でない場合)。
【図7】従来のサブフィールドの補正方法を説明する図。
【図8】本実施例によるサブフィールドの補正方法の効果を説明する図(動きベクトルが一様な場合)。
【図9】本実施例によるサブフィールドの補正方法の効果を説明する図(動きベクトルが一様でない場合)。
【図10】本発明の第2の実施例に係る画像表示装置を示すブロック図。
【図11】動きベクトル補正部19の内部構成の一例を示す図。
【図12】サブフィールドを用いた階調表現方法を説明する図。
【図13】動画擬似輪郭の発生メカニズムの一例を示す図。
【符号の説明】
【0100】
1…画像表示装置、10…入力部、11…動きベクトル検出部、12…ヒストグラムカウント部、13…サブフィールド変換部、14…輝度情報算出部、15…画素位置切替え部、16…サブフィールド再構成部、17…画像表示部、18…制御部、19…動きベクトル補正部、193…比較補正部、194…切替え部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した画像の1フレームを複数のサブフィールド期間に分割し、フレーム間の対応する画素の動きベクトルに応じて、該複数のサブフィールド期間の各期間における発光データを再構成する画像表示装置において、
入力画像を複数のサブフィールドの発光データに変換するサブフィールド変換部と、
入力画像についてフレーム間の画素の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、
上記検出した動きベクトルの分布をフレーム毎に求めるヒストグラムカウント部と、
入力画像から各画素の輝度情報を算出する輝度情報算出部と、
上記検出した動きベクトルのうち、再構成対象フレーム内の再構成対象画素を終点とする動きベクトルを選択し、選択した動きベクトルから所定の演算式を用いて発光データを再構成するためのデータの取得先を示す画素位置ベクトルを算出して出力する画素位置切替え部と、
上記サブフィールド変換部から出力された再構成対象フレーム内の各画素のサブフィールドの発光データを、上記画素位置切替え部から出力された画素位置ベクトルが示す再構成対象フレーム内の画素の対応するサブフィールドの発光データを用いて再構成するサブフィールド再構成部と、
該サブフィールド再構成部から出力されるサブフィールドの発光データを用いて画像を表示する画像表示部とを備え、
上記画素位置切替え部は、上記ヒストグラムカウント部で求めた動きベクトルの分布と上記輝度情報算出部が算出した輝度情報に応じて、上記算出した画素位置ベクトルをフレーム毎に修正して出力することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記画素位置切替え部は、前記ヒストグラムカウント部で求めた動きベクトルの分布がフレーム内で一様な場合は、前記算出した画素位置ベクトルXiを出力し、動きベクトルの分布がフレーム内で一様でない場合は、前記輝度情報算出部が算出した輝度情報を参照して、上記画素位置ベクトルXiが示す画素と再構成対象画素との輝度差が閾値以下となる画素が出現するまで、算出した画素位置ベクトルXiを再構成対象画素に近付けるように修正して新たな画素位置ベクトルYiを出力することを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像表示装置において、
前記ヒストグラムカウント部にて求めた動きベクトルの分布に基づき、前記動きベクトル検出部にて検出した動きベクトルVを他の動きベクトルに補正する動きベクトル補正部を備え、
該動きベクトル補正部は、前記ヒストグラムカウント部で求めた動きベクトルの分布がフレーム内で一様な場合は、前記動きベクトル検出部にて検出したフレーム内の各動きベクトルVを、フレーム内でカウント値Nnが最大となる0以外の動きベクトルの値Vmにて置き換え、動きベクトルの分布がフレーム内で一様でない場合は、検出した動きベクトルVをそのまま用いることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の画像表示装置において、
前記画素位置切替え部は、前記ヒストグラムカウント部で求めた動きベクトルのヒストグラムを参照し、カウント数Nnが閾値S以上となる動きベクトル数Wを求め、該動きベクトル数Wが閾値T以下の場合には動きベクトルの分布が一様であり、該動きベクトル数Wが閾値Tより大きい場合には動きベクトルの分布が一様でないと判定することを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
入力した画像の1フレームを複数のサブフィールド期間に分割し、フレーム間の対応する画素の動きベクトルに応じて、該複数のサブフィールド期間の各期間における発光データを再構成する画像表示方法において、
入力画像を複数のサブフィールドの発光データに変換するステップと、
入力画像についてフレーム間の画素の動きベクトルを検出するステップと、
上記検出した動きベクトルの分布をフレーム毎に求めるステップと、
入力画像から各画素の輝度情報を算出するステップと、
上記検出した動きベクトルのうち、再構成対象フレーム内の再構成対象画素を終点とする動きベクトルを選択し、選択した動きベクトルから所定の演算式を用いて発光データを再構成するためのデータの取得先を示す画素位置ベクトルを算出し、上記動きベクトルの分布と上記輝度情報に応じて、上記算出した画素位置ベクトルをフレーム毎に修正して出力するステップと、
再構成対象フレーム内の各画素のサブフィールドの発光データを、上記画素位置ベクトルが示す再構成対象フレーム内の画素の対応するサブフィールドの発光データを用いて再構成するステップと、
該サブフィールドの発光データを用いて画像を表示するステップと、
を備えることを特徴とする画像表示方法。
【請求項6】
請求項5に記載の画像表示方法において、
前記画素位置ベクトルを出力するステップは、前記動きベクトルの分布がフレーム内で一様な場合は、前記算出した画素位置ベクトルXiを出力し、動きベクトルの分布がフレーム内で一様でない場合は、前記輝度情報を参照して、上記画素位置ベクトルXiが示す画素と再構成対象画素との輝度差が閾値以下となる画素が出現するまで、算出した画素位置ベクトルXiを再構成対象画素に近付けるように修正して新たな画素位置ベクトルYiを出力することを特徴とする画像表示方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の画像表示方法において、
前記動きベクトルの分布に基づき前記検出した動きベクトルVを他の動きベクトルに補正するステップを備え、
該動きベクトルを補正するステップでは、前記動きベクトルの分布がフレーム内で一様な場合は、前記検出したフレーム内の各動きベクトルVをフレーム内でカウント値Nnが最大となる0以外の動きベクトルの値Vmにて置き換え、動きベクトルの分布がフレーム内で一様でない場合は、検出した動きベクトルVをそのまま用いることを特徴とする画像表示方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の画像表示方法において、
前記画素位置ベクトルを出力するステップでは、前記動きベクトルのヒストグラムを参照しカウント数Nnが閾値S以上となる動きベクトル数Wを求め、該動きベクトル数Wが閾値T以下の場合には動きベクトルの分布が一様であり、該動きベクトル数Wが閾値Tより大きい場合には動きベクトルの分布が一様でないと判定することを特徴とする画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−258343(P2009−258343A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106539(P2008−106539)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】