画像表示装置及び画像表示方法
【課題】医師が効率よく読影診断を行うことを可能とする。
【解決手段】画像表示装置は、検査対象物の画像中、所定数の画素で構成される表示対象領域を少なくとも拡大して拡大画像を作成する拡大画像作成部52と、前記拡大画像を画面上に表示する画像表示部34と、前記画像表示部34が前記画面上に前記拡大画像を移動させながら表示する際に、前記画面上での前記拡大画像の移動速度を設定する移動速度設定部42とを有し、前記移動速度設定部42は、前記表示対象領域中の画素の情報に基づいて前記移動速度を変更する。
【解決手段】画像表示装置は、検査対象物の画像中、所定数の画素で構成される表示対象領域を少なくとも拡大して拡大画像を作成する拡大画像作成部52と、前記拡大画像を画面上に表示する画像表示部34と、前記画像表示部34が前記画面上に前記拡大画像を移動させながら表示する際に、前記画面上での前記拡大画像の移動速度を設定する移動速度設定部42とを有し、前記移動速度設定部42は、前記表示対象領域中の画素の情報に基づいて前記移動速度を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の画像の一部を拡大して画面上に表示させる画像表示装置及び画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、撮影装置により予め撮影された検査対象物の画像の一部を拡大して画面上に表示し、該画面上に表示された拡大画像を医師が丹念に見ることにより、前記検査対象物中の異常箇所(例えば、マンモ内の病変部位)を見つけることが広く行われている。
【0003】
特許文献1には、医師によるマウスの操作に起因して、画像中の関心領域のみを画面上に拡大表示させることが提案されている。しかしながら、特許文献1の技術では、医師がマウスを操作する必要があるので、該医師の作業負担が増大する。
【0004】
そこで、特許文献2には、マンモの画像中、拡大表示を行う領域を自動的に設定し、該マンモの形状に合わせて前記領域を自動的に移動させることにより、画面上に前記領域に応じた拡大画像を移動させながら表示することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−38433号公報
【特許文献2】特開平8−186762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、検査対象物がマンモである場合に、該マンモの画像中、乳腺が集中する領域は画素の濃度が比較的低く、前記マンモの画像が二値化画像であれば、前記領域は全体的に白色の画像領域となる。また、前記マンモの病変部位(石灰化組織や腫瘤)も白色で表示される。従って、前記乳腺が集中する領域に前記病変部位が存在すれば、正常部位の乳腺と異常箇所の病変部位との見分けがつきにくいので、医師は、長時間かけて前記領域の拡大画像を読影する必要がある。一方、前記乳腺が少ない領域(脂肪分が多く存在する領域)では、画素の濃度が比較的高く、全体的に黒色の画像領域となる。従って、医師は、前記乳腺が少ない領域では、短時間で異常箇所の特定を行うことが可能である。
【0007】
このように、検査対象物の画像中の画素に関わる情報(例えば、画素の濃度)に応じて、画面上に表示される拡大画面の移動速度を変更することができれば、医師は、異常箇所の発見等の読影診断を効率よく行うことができる。
【0008】
しかしながら、前述したように、特許文献1の技術では、医師自身がマウスを操作して関心領域(表示対象領域)を画面上に拡大表示させる必要があるので、該医師の作業負担が増大する。
【0009】
また、特許文献2の技術では、画面上に表示された拡大画像を一定の移動速度で移動させているので、医師は、乳腺が集中する領域内の異常箇所を見逃すおそれがあり、効率よく読影診断を行うことができない。
【0010】
本発明は、前記の課題に鑑みなされたものであり、医師が効率よく読影診断を行うことを可能とする画像表示装置及び画像表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る画像表示装置は、検査対象物の画像中、所定数の画素で構成される表示対象領域を少なくとも拡大して拡大画像を作成する拡大画像作成部と、前記拡大画像を画面上に表示する画像表示部と、前記画像表示部が前記画面上に前記拡大画像を移動させながら表示する際に、前記画面上での前記拡大画像の移動速度を設定する移動速度設定部とを有し、前記移動速度設定部は、前記表示対象領域中の画素の情報に基づいて前記移動速度を変更することを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る画像表示方法は、検査対象物の画像中、所定数の画素を表示対象領域として構成し、拡大画像作成部により少なくとも前記表示対象領域を拡大して拡大画像を作成し、画像表示部の画面上に前記拡大画像を移動させながら表示する場合に、移動速度設定部により前記表示対象領域中の画素の情報に基づいて前記画面上での前記拡大画像の移動速度を変更することを特徴としている。
【0013】
これらの発明によれば、前記移動速度設定部が前記表示対象領域中の画素の情報に基づいて前記移動速度を変更するようにしたので、医師は、前記画面上を移動する前記拡大画像を見ながら、前記検査対象物中の異常箇所の発見等の読影診断を効率よく行うことが可能となる。
【0014】
ここで、前記画素の情報は、前記画素の濃度、又は、前記検査対象物の画像中の異常箇所であり、前記移動速度設定部は、前記画素の濃度に基づいて前記移動速度を変更するか、あるいは、該画素が前記異常箇所に該当したときに前記移動速度を変更することが好ましい。
【0015】
これにより、前記異常箇所に対応する画素の濃度、あるいは、前記異常箇所に対応する画素に基づいて、前記移動速度を変更することが可能となるので、前記拡大画像に対する読影診断が一層容易なものとなる。
【0016】
また、前記画素の情報が前記画素の濃度であり、前記表示対象領域に設定された所定の走査経路に沿って前記画像表示部が前記画面上で前記拡大画像を移動させる場合に、前記移動速度設定部は、前記走査経路に沿った方向に前記濃度が小さくなるほど前記移動速度を遅くさせるか、前記走査経路に沿った方向での前記濃度の位置変化の絶対値が大きくなるほど前記移動速度を遅くさせるか、あるいは、前記位置変化の前記走査経路に沿った方向での微分の絶対値が大きくなるほど前記移動速度を遅くさせる。
【0017】
これにより、前記異常箇所に対応する画素が存在する表示対象領域を拡大した拡大画像を前記画面上に表示させたときに、前記画面上での前記拡大画像の移動速度が遅くなるので、医師は、前記移動速度が遅くなった前記拡大画像を慎重に見ながら前記異常箇所を確実に見つけることができる。この結果、乳腺が集中する領域に病変部位が存在する場合でも、該領域中の前記病変部位を確実に見つけることが可能となる。
【0018】
一方、前記画像表示装置が前記検査対象物の画像に基づいて前記異常箇所を検出する異常箇所検出部をさらに有する場合に、前記移動速度設定部は、前記表示対象領域が前記異常箇所を含むときに前記移動速度を遅くさせてもよい。
【0019】
この場合でも、前記画面上での拡大画像の移動速度が遅くなるので、医師は、前記移動速度が遅くなった前記拡大画像を慎重に見ながら前記異常箇所を確実に見つけることができる。
【0020】
また、前記画像表示装置は、前記表示対象領域から前記拡大画像への拡大率を設定する拡大率設定部をさらに有し、前記拡大率設定部は、前記表示対象領域を構成する前記画素の情報に基づいて前記拡大率を変更し、前記拡大画像作成部は、前記表示対象領域を前記拡大率で拡大することにより前記拡大画像を作成することが好ましい。
【0021】
これにより、前記拡大画像に対する読影診断が一層容易なものとなる。
【0022】
この場合、前記拡大率設定部は、前記画素の濃度に基づいて前記拡大率を変更するか、あるいは、該画素が前記異常箇所に該当したときに前記拡大率を変更することが好ましい。
【0023】
これにより、前記異常箇所を含む前記表示対象領域に応じた拡大画像を大きく拡大して画面上に表示することができるので、前記異常箇所を確実に見つけることが可能となる。
【0024】
また、前記画素の情報が前記画素の濃度であり、前記表示対象領域に設定された所定の走査経路に沿って前記画像表示部が前記画面上で前記拡大画像を移動させる場合に、前記拡大率設定部は、前記走査経路に沿った方向に前記濃度が小さくなるほど前記拡大率を大きくさせるか、前記走査経路に沿った方向での前記濃度の位置変化の絶対値が大きくなるほど前記拡大率を大きくさせるか、あるいは、前記位置変化の前記走査経路に沿った方向での微分の絶対値が大きくなるほど前記拡大率を大きくさせる。
【0025】
これにより、前記異常箇所に対応する画素が存在する表示対象領域を大きく拡大して前記画面上に表示させることで、医師は、大きく拡大された拡大画像を慎重に見ながら前記異常箇所を容易に見つけることができる。この結果、乳腺が集中する領域に病変部位が存在する場合でも、該領域中の前記病変部位を確実に見つけることが可能となる。
【0026】
一方、前記画像表示装置が前記検査対象物の画像に基づいて前記異常箇所を検出する異常箇所検出部をさらに有する場合に、前記拡大率設定部は、前記表示対象領域が前記異常箇所を含むときに前記拡大率を大きくさせることが好ましい。
【0027】
この場合でも、拡大画像をより大きく表示させることができるので、医師は、より大きく表示された前記拡大画像を慎重に見ながら前記異常箇所を見つけることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、移動速度設定部が表示対象領域中の画素の情報に基づいて画面上での拡大画像の移動速度を変更するようにしたので、医師は、前記画面上を移動する前記拡大画像を見ながら、検査対象物中の異常箇所の発見等の読影診断を効率よく行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係る画像表示装置が適用された画像表示システムのブロック図である。
【図2】図1の画像処理手段のブロック図である。
【図3】図3Aは、マンモの画像の説明図であり、図3Bは、図3Aのマンモの画像を模式的に図示した説明図である。
【図4】図3Aのマンモの画像を4つの表示対象領域に分割した説明図である。
【図5】図3Aのマンモの画像を9つの表示対象領域に分割した説明図である。
【図6】図3Aのマンモの画像を4つの表示対象領域に分割した説明図である。
【図7】図7Aは、図4の矢印の方向に各表示対象領域を走査したときの平均画素値(平均濃度)の変化を示すグラフであり、図7Bは、図4の矢印の方向に各表示対象領域を走査するときの走査速度の変化を示すグラフである。
【図8】図1の画像出力手段の画面上に表示されるマンモの拡大画像の一例を示す説明図である。
【図9】図1の画像出力手段の画面上に表示されるマンモの拡大画像の一例を示す説明図である。
【図10】図1の画像出力手段の画面上に表示されるマンモの拡大画像の一例を示す説明図である。
【図11】図2の画像処理手段での処理を示すフローチャートである。
【図12】図2の画像処理手段での処理の一部を説明するためのフローチャートである。
【図13】図2の画像処理手段での処理の一部を説明するためのフローチャートである。
【図14】図2の画像処理手段での処理の一部を説明するためのフローチャートである。
【図15】図2の画像処理手段での処理の一部を説明するためのフローチャートである。
【図16】図2の画像処理手段での処理の一部を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る画像表示装置について、画面表示方法との関係で、好適な実施形態を、図1〜図16を参照しながら説明する。
【0031】
先ず、本実施形態に係る画像表示装置14を組み込んだ画像表示システム10について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0032】
画像表示システム10は、放射線画像撮影装置12と画像表示装置14とを備える。
【0033】
放射線画像撮影装置12は、撮影台16と、撮影台16に対して被検体(被写体)のマンモ(検査対象物)18を圧迫して保持する圧迫板20と、圧迫保持されたマンモ18に対して放射線22を照射する放射線源24と、撮影台16内に収容され、マンモ18を透過した放射線22を検出して放射線画像に変換する固体検出器(放射線検出器)26とを有する。なお、放射線画像撮影装置12は、例えば、特許文献2のマンモグラフィ装置を用いればよく、この明細書では、その具体的な構成に関する説明を省略する。
【0034】
一方、画像表示装置14は、例えば、放射線画像撮影装置12に具備されるコンピュータや、医療機関に備えられ、且つ、医師又は放射線技師が操作するコンソールやパーソナルコンピュータにより実現されるものであり、固体検出器26から出力された放射線画像を記憶する画像情報記憶手段28と、医師又は放射線技師が所定の指示内容を入力するためのキーボード、タッチパネル(仮想キーボード)、マウス、特殊グローブ等の入力手段32と、入力手段32からの指示内容に従って、又は、自動的に、画像情報記憶手段28に記憶された放射線画像を読み出し、読み出した前記放射線画像に対して所定の画像処理を行う画像処理手段30と、画像処理後の放射線画像を外部に出力するディスプレイ等の画像出力手段(画像表示部)34とを有する。
【0035】
なお、画像処理手段30において行われる前記画像処理とは、後述するように、前記放射線画像の一部を拡大して拡大画像を作成し、画像出力手段34の画面上で該拡大画像を自動的に移動させつつ表示させるための一連の処理を含む。
【0036】
画像処理手段30は、図2に示すように、走査範囲設定部36、濃度算出領域設定部38、平均濃度算出部40、走査速度算出部(移動速度設定部)42、走査速度記憶部44、拡大率算出部(拡大率設定部)46、拡大率記憶部48、病変部位検出部(異常箇所検出部)50、及び、出力画像作成部(拡大画像作成部)52を有する。
【0037】
ここで、画像処理手段30内の各構成要素の詳細な説明に先立ち、画像情報記憶手段28に記憶されている放射線画像について、図3A及び図3Bを参照しながら説明する。
【0038】
画像情報記憶手段28(図1参照)には、図3Aに示すマンモ18の放射線画像(二値化画像)が記憶されている。図3Bは、図3Aの放射線画像を模式的に図示した説明図である。
【0039】
前記放射線画像において、被検体60のマンモ62(マンモ18)には、乳腺が集中する領域64が写り込んでいる。この領域64は、画素の濃度(画素値)が比較的低い白色の画像領域である。また、マンモ62に病変部位(石灰化組織や腫瘤)が存在する場合、該病変部位も白色で表示される。従って、前記乳腺が集中する領域64に前記病変部位が存在すれば、正常部位である乳腺と、異常箇所である病変部位との見分けがつきにくい。従って、領域64を拡大した拡大画像が画像出力手段34の画面上に表示された場合に、医師は、前記画面上に表示された領域64を長時間かけて読影する必要がある。
【0040】
なお、マンモ62中、前記乳腺が比較的少ない領域(脂肪分が多く存在する領域)では、画素の濃度が比較的高く、黒色の画像領域となる。従って、このような画像領域の拡大画像が画像出力手段34の画面上に表示された場合に、医師は、前記画面上に表示された前記画像領域を短時間で読影し、異常箇所の特定を行うことが可能である。
【0041】
そこで、画像処理手段30では、画像情報記憶手段28から図3A(図3B)の放射線画像を読み出し、読み出した放射線画像の一部を拡大して拡大画像を作成し、作成した拡大画像を画像出力手段34の画面上で移動させつつ表示させるために必要な画像処理を行う。
【0042】
具体的に、走査範囲設定部36は、画像情報記憶手段28から読み出した放射線画像(図3A参照)を、図4〜図6に示すように、所定数の画素により構成される複数の表示対象領域66A〜66D、68A〜68I、70A〜70Dに分割し、分割した表示対象領域66A〜66D、68A〜68I、70A〜70Dについて、拡大画像を作成する順番を決定する。
【0043】
ここで、図4〜図6中、破線の矢印は、拡大画像を作成するための走査経路であり、この走査経路に沿って、表示対象領域66A〜66D、68A〜68I、70A〜70D内の各画素に対し画像処理を施すことにより、拡大画像を作成することができる。
【0044】
従って、走査範囲設定部36は、表示対象領域と走査経路とを決定した時点で、前記放射線画像中の全ての表示対象領域と走査経路とを濃度算出領域設定部38に通知する。
【0045】
図4は、放射線画像を4つの表示対象領域66A〜66Dに分割し、破線の矢印の方向に従って、表示対象領域66A→表示対象領域66B→表示対象領域66C→表示対象領域66Dの順番に拡大画像を作成する場合を示している。
【0046】
図5は、放射線画像を9つの表示対象領域68A〜68Iに分割し、表示対象領域68A→表示対象領域68B→…→表示対象領域68H→表示対象領域68Iの順番に拡大画像を作成する場合を示している。
【0047】
図6は、放射線画像を4つの表示対象領域70A〜70Dに分割し、表示対象領域70A→表示対象領域70B→表示対象領域70C→表示対象領域70Dの順番に拡大画像を作成する場合を示す。
【0048】
なお、走査範囲設定部36は、図4〜図6の例に限定されることはなく、画像処理手段30内で拡大画像を作成することができるのであれば、いかなる表示対象領域及び走査経路を設定することが可能である。
【0049】
また、走査範囲設定部36における表示対象領域及び走査経路の設定は、走査範囲設定部36が自動的に行ってもよいし、あるいは、画像出力手段34の画面上に図3Aの放射線画像を表示させ、該放射線画像を視認した医師又は放射線技師が入力手段32を操作して、表示対象領域及び走査経路を示す指示内容を入力し、入力された指示内容に従って設定してもよい。
【0050】
図2の濃度算出領域設定部38は、走査範囲設定部36において決定された全ての表示対象領域及び走査経路が通知されたときに、前記走査経路に沿って各表示対象領域の拡大画像を順に作成するように、平均濃度算出部40、走査速度算出部42、拡大率算出部46、病変部位検出部50及び出力画像作成部52を制御する。
【0051】
具体的に、図4の表示対象領域66A〜66D及び走査経路が通知された場合、濃度算出領域設定部38は、前記走査経路に従って、下記(A)〜(D)の順番に各表示対象領域66A〜66D及び走査経路を平均濃度算出部40、走査速度算出部42、拡大率算出部46、病変部位検出部50及び出力画像作成部52に通知することにより、表示対象領域66A〜66Dの拡大画像を順に作成するように制御する。
【0052】
(A)表示対象領域66A及び該表示対象領域66A内の走査経路を通知することにより表示対象領域66Aの拡大画像を作成させる。
【0053】
(B)表示対象領域66B及び該表示対象領域66B内の走査経路を通知することにより表示対象領域66Bの拡大画像を作成させる。
【0054】
(C)表示対象領域66C及び該表示対象領域66C内の走査経路を通知することにより表示対象領域66Cの拡大画像を作成させる。
【0055】
(D)表示対象領域66D及び該表示対象領域66D内の走査経路を通知することにより表示対象領域66Dの拡大画像を作成させる。
【0056】
図2の平均濃度算出部40は、濃度算出領域設定部38から通知された1つの表示対象領域中、該表示対象領域内の走査経路に直交する方向(1つの列又は行)に沿って配置された複数の画素の濃度の平均値(画素値の平均値としての平均濃度q)を算出し、この平均濃度qの算出を前記走査経路に沿って、前記表示対象領域内の全ての画素の列又は行について行い、算出された各平均濃度qを走査速度算出部42、拡大率算出部46及び病変部位検出部50に出力する。
【0057】
走査速度記憶部44には、出力画像作成部52が表示対象領域の拡大画像を作成し、画像出力手段34が画面上に前記拡大画像を表示する際に、該画面に対する前記拡大画像の走査速度(移動速度)vの基準値(基準速度)が記憶されている。
【0058】
走査速度算出部42は、走査速度記憶部44から基準速度を読み出し、読み出した基準速度を拡大画像の走査速度vとして出力画像作成部52に出力するか、あるいは、平均濃度算出部40から入力された平均濃度qに基づいて、基準速度を変更し、変更後の速度を走査速度vとして出力画像作成部52に出力する。
【0059】
具体的に、走査速度算出部42は、下記の(a)〜(c)のいずれか1つの方法に従って走査速度vの算出処理(変更処理)を行う。
【0060】
(a)走査速度算出部42は、走査経路に沿った方向(x方向)で平均濃度qが小さくなるほど走査速度vを遅くさせる。
【0061】
この場合、走査速度vと平均濃度qとの関係は、下記の(1)式及び(2)式で表わされる。
v=f(q) (1)
dv/dq=d{f(q)}/dq>0 (2)
【0062】
なお、(1)式及び(2)式において、fは任意の関数を示す。
【0063】
(b)走査速度算出部42は、x方向に沿った平均濃度qの位置変化(微分)の絶対値が大きくなるほど走査速度vを遅くさせる。
【0064】
この場合、平均濃度qの位置変化をrとしたときに、走査速度v、平均濃度q、位置x及び位置変化rの関係は、下記の(3)式〜(5)式で表わされる。
r=dq/dx (3)
v=f(r) (4)
|dv/dr|=|d{f(r)}/dr|<0 (5)
【0065】
(c)走査速度算出部42は、位置変化rのx方向に沿った微分の絶対値が大きくなるほど走査速度vを遅くさせる。
【0066】
この場合、位置変化rの微分をsとしたときに、走査速度v、平均濃度q、位置x、位置変化r及び位置変化の微分sの関係は、下記の(6)式〜(8)式で表わされる。
s=dr/dx=d2q/dx2 (6)
v=f(s) (7)
|dv/ds|=|d{f(s)}/ds|<0 (8)
【0067】
なお、図7A及び図7Bは、一例として、図4に示す表示対象領域66A〜66Dと走査経路とについて、上記(b)の方法に従って、平均濃度q(平均画素値)に基づき走査速度vを算出した場合を図示したものである。
【0068】
図2の拡大率記憶部48には、出力画像作成部52が表示対象領域を拡大して拡大画像を作成する際の前記表示対象領域から前記拡大画像への拡大率mの基準値(基準拡大率)が記憶されている。
【0069】
拡大率算出部46は、拡大率記憶部48から基準拡大率を読み出し、読み出した基準拡大率を拡大率mとして走査速度算出部42及び出力画像作成部52に出力するか、あるいは、平均濃度算出部40から入力された平均濃度qに基づいて基準拡大率を変更し、変更後の拡大率を拡大率mとして走査速度算出部42及び出力画像作成部52に出力する。
【0070】
具体的に、拡大率算出部46は、下記の(d)〜(f)のいずれか1つの方法に従って拡大率mの変更処理を行う。
【0071】
(d)拡大率算出部46は、x方向に沿って平均濃度qが小さくなるほど拡大率mを大きくさせる。
【0072】
この場合、拡大率m及び平均濃度qの関係は、下記の(9)式及び(10)式で表わされる。
m=f(q) (9)
dm/dq=d{f(q)}/dq<0 (10)
【0073】
(e)拡大率算出部46は、平均濃度qの位置変化rの絶対値が大きくなるほど拡大率mを大きくさせる。
【0074】
この場合、拡大率m及び位置変化rの関係は、下記の(11)式及び(12)式で表わされる。
m=f(r) (11)
|dm/dr|=|d{f(r)}/dr|>0 (12)
【0075】
(f)拡大率算出部46は、位置変化rの微分sが大きくなるほど拡大率mを大きくさせる。
【0076】
この場合、拡大率m及び位置変化rの微分sの関係は、下記の(13)式及び(14)式で表わされる。
m=f(s) (13)
|dm/ds|=|d{f(s)}/ds|>0 (14)
【0077】
そして、走査速度算出部42は、拡大率算出部46から基準拡大率が入力された場合には、基準速度、あるいは、上記の(a)〜(c)によって算出した走査速度を走査速度vとして出力画像作成部52に出力する。また、拡大率算出部46から基準拡大率とは異なる拡大率mが入力された場合に、走査速度算出部42は、基準速度、あるいは、上記の(a)〜(c)によって算出した走査速度を、拡大率mに応じて補正し、補正後の走査速度v(走査速度v´)を出力画像作成部52に出力する。
【0078】
病変部位検出部50は、濃度算出領域設定部38から通知された表示対象領域について、公知のCAD(Computer Aided Diagnosis)解析により自動的に解析して、病変部位(異常箇所)と疑われる部分に該当する画素領域を検出し(例えば、特許第3881265号公報、特許第4142273号公報及び特許第4184842号公報参照)、検出した画素領域の情報を走査速度算出部42、拡大率算出部46及び出力画像作成部52に出力する。この場合、病変部位検出部50は、平均濃度算出部40が算出した平均濃度qの値や、画像情報記憶手段28に記憶された、被検体のマンモ18の過去の放射線画像も参照しながら、病変部位と疑われる部分を検出することが望ましい。
【0079】
従って、走査速度算出部42は、病変部位検出部50から前記画素領域の情報が入力された場合に、(g)の方法に従って走査速度vの変更処理を行う。
【0080】
(g)走査速度算出部42は、病変部位検出部50から前記画素領域の情報が入力された場合には、走査速度vを遅くさせる。
【0081】
また、拡大率算出部46は、病変部位検出部50から前記画素領域の情報が入力された場合に、(h)の方法に従って拡大率mの変更処理を行う。
【0082】
(h)拡大率算出部46は、病変部位検出部50から前記画素領域の情報が入力された場合には、拡大率mを大きくさせる。
【0083】
出力画像作成部52は、濃度算出領域設定部38から通知された表示対象領域と、拡大率算出部46から通知された拡大率mとを用いて、画像情報記憶手段28から読み出した放射線画像中の前記表示対象領域を拡大率mで拡大して拡大画像を作成し、作成した拡大画像と、走査速度算出部42から通知された走査速度vとを画像出力手段34に出力する。
【0084】
また、画像出力手段34の画面上に表示される拡大画像が、前記放射線画像中、どの領域を拡大した画像であるのかを医師が把握したい場合もある。そこで、出力画像作成部52は、前記放射線画像を縮小した縮小画像を作成し、前記拡大画像に前記縮小画像をオーバーラップさせた新たな画像を作成し、この新たな画像と走査速度vとを共に画像出力手段34に出力してもよい。
【0085】
さらに、病変部位検出部50から病変部位に関わる画素領域の情報が通知されたときに、出力画像作成部52は、前記拡大画像に当該画素領域を示すマーク等を付与する処理も併せて行い、マークが付与された拡大画像と走査速度vとを画像出力手段34に出力してもよい。
【0086】
なお、出力画像作成部52は、前記拡大画像を作成しない場合には、前記放射線画像を画像出力手段34に出力する。
【0087】
また、出力画像作成部52は、1つの表示対象領域を拡大して拡大画像を作成し、作成した1つの拡大画像と走査速度vとを画像出力手段34に出力してもよいし、あるいは、全ての表示対象領域に対して拡大画像の作成処理をそれぞれ行い、各拡大画像を結合した1つの新たな画像と各走査速度vとを画像出力手段34に出力してもよい。
【0088】
画像出力手段34は、出力画像作成部52から入力された拡大画像を画面上に表示すると共に、前記画面上で前記拡大画像を走査速度vで移動させる。
【0089】
図8〜図10は、図4〜図6の表示対象領域66A〜66D、68A〜68I、70A〜70D及び走査経路に対応する拡大画像72の画面表示をそれぞれ図示した説明図である。
【0090】
この場合、画面上には、拡大画像72が走査速度vで移動しつつ大きく表示され、一方で、画面の右下には、放射線画像の縮小画像76が固定表示されている。この場合、拡大画像72には、走査経路や表示対象領域の境界も図示されている。また、縮小画像76内には、現在、画面上に現在表示されている拡大画像72の範囲を示す枠74も表示されている。
【0091】
本実施形態に係る画像表示装置14及び画像表示システム10は、以上のように構成され且つ機能するものであり、次に、画像表示装置14の動作(画像表示方法)について、図11〜図16のフローチャートも参照しながら説明する。
【0092】
ここでは、画像表示装置14が自動的に拡大画像の作成処理及び表示処理を行う場合について説明する。また、この動作説明では、出力画像作成部52は、全ての表示対象領域に対する拡大画像の作成を完了した後に、各拡大画像及び走査速度vを画像出力手段34に出力するものとする。なお、図11〜図16は、濃度算出領域設定部38、平均濃度算出部40、走査速度算出部42、拡大率算出部46及び病変部位検出部50によって行われる、走査速度v及び拡大率mの変更処理を説明するためのフローチャートである。
【0093】
先ず、画像処理手段30(図1及び図2参照)が画像情報記憶手段28に記憶された放射線画像を読み出したときに、走査範囲設定部36は、前記放射線画像を複数の表示対象領域に分割すると共に走査経路を決定し、決定した各表示対象領域及び走査経路を濃度算出領域設定部38に通知する。
【0094】
ステップS1において、濃度算出領域設定部38は、走査範囲設定部36から各表示対象領域及び走査経路が通知されたときに、走査経路上、最初の表示対象領域と該表示対象領域中の走査経路とを平均濃度算出部40、走査速度算出部42、拡大率算出部46、病変部位検出部50及び出力画像作成部52に通知する。
【0095】
ステップS2において、平均濃度算出部40は、濃度算出領域設定部38から通知された最初の表示対象領域について、x方向(走査経路に沿った方向)に直交する方向に配置された各画素の濃度の平均濃度qを算出し、該平均濃度qの算出をx方向に沿って、前記表示対象領域内の全ての画素の列又は行について行い、算出された各平均濃度qを走査速度算出部42、拡大率算出部46及び病変部位検出部50に出力する。
【0096】
次のステップS3において、走査速度算出部42は、上記(a)〜(c)のいずれか1つの方法に従って、平均濃度算出部40から入力された平均濃度qに基づき基準速度を変更し、変更後の速度を走査速度vとして出力画像作成部52に出力する。
【0097】
濃度算出領域設定部38は、平均濃度算出部40、走査速度算出部42、拡大率算出部46及び病変部位検出部50が、通知済みの表示対象領域及び走査経路に対して所定の処理を完了したか否かを監視している。
【0098】
従って、濃度算出領域設定部38は、次のステップS4において、全ての表示対象領域及び走査経路に対する走査速度vの算出処理や拡大率mの算出処理を完了したか否かを判定する。
【0099】
この場合、濃度算出領域設定部38は、ステップS1において最初の表示対象領域と走査経路とを平均濃度算出部40、走査速度算出部42、拡大率算出部46、病変部位検出部50及び出力画像作成部52に既に通知しているので、最初の表示対象領域及び走査経路に対する処理は完了したものの、2番目以降の表示対象領域及び走査経路に対する処理が完了していないと判断して(ステップS4:NO)、ステップS1に戻り、次に、2番目の表示対象領域と走査経路とを平均濃度算出部40、走査速度算出部42、拡大率算出部46、病変部位検出部50及び出力画像作成部52に通知して、ステップS2及びS3の処理を再度行わせる。
【0100】
このようにして、2番目以降の表示対象領域及び走査経路に対するステップS1〜S3の処理を順次行わせて、全ての表示対象領域と走査経路とについてステップS1〜S3の処理が全て完了したときに(ステップS4:YES)、濃度算出領域設定部38は、上述の監視を終了する。
【0101】
上記の説明は、拡大率mが基準拡大率であるときの走査速度vの算出処理であるが、平均濃度qに応じて拡大率mを変更する場合、画像処理手段30内では、図12に示す処理がさらに行われる。
【0102】
すなわち、ステップS5において、拡大率算出部46は、上記の(d)〜(f)のいずれか1つの方法に従って、拡大率mを変更させるべきか(大きくさせるべきか)否かを判定し、拡大率mを大きくすべきと判定した場合には(ステップS5:YES)、次のステップS6において、(d)〜(f)のいずれか1つの方法を用いて、平均濃度qに応じた拡大率mを算出する。
【0103】
拡大率算出部46は、算出した拡大率mを走査速度算出部42及び出力画像作成部52に通知し、次のステップS7において、走査速度算出部42は、算出した走査速度vを、拡大率算出部46から通知された拡大率mに応じた走査速度v´に補正(変換)し、補正後の走査速度v´を出力画像作成部52に出力する。
【0104】
なお、ステップS5において、拡大率mが変更不要であると判定した場合、すなわち、拡大率mを基準拡大率に維持すべきと判定した場合に(ステップS5:NO)、拡大率算出部46は、基準拡大率を拡大率mとして走査速度算出部42及び出力画像作成部52に通知し、走査速度算出部42は、算出した走査速度vを出力画像作成部52に出力する。
【0105】
また、図12に示す拡大率mの変更処理を行った場合、当該変更処理の対象となった表示対象領域以外の表示対象領域については、基準拡大率とすべき場合もある。すなわち、現在の表示対象領域について拡大率mを変更し、続くステップS4の判定処理の結果、ステップS1に戻って次の表示対象領域に対する走査速度vの算出処理を実行する場合、前回の拡大率mが維持されていれば、走査速度算出部42は、この前回の拡大率mに基づいて、次の表示対象領域の拡大画像の走査速度vを算出するおそれがある。
【0106】
そこで、ステップS4でNOと判定された場合に、濃度算出領域設定部38は、図13のステップS8において、拡大率mが変更されているか否かを判定し、前回の拡大率mが維持されていれば(ステップS8:YES)、拡大率mを基準拡大率に戻すように拡大率算出部46を制御する。この結果、次のステップS9において、拡大率算出部46は、拡大率記憶部48から基準拡大率を読み出して、拡大率mを前記基準拡大率に戻す(リセットする)。従って、濃度算出領域設定部38は、ステップS9の完了後、ステップS1に戻って次の表示対象領域に対する走査速度vの算出処理等を確実且つ正確に実行させることが可能となる。
【0107】
また、病変部位検出部50が病変の疑いのある画素領域を検出した場合における、走査速度vの変更処理や、拡大率mの変更処理は、次に説明する図14及び図15のフローチャートに従って実行される。
【0108】
すなわち、図14のステップS10において、病変部位検出部50は、表示対象領域中、病変の疑いのある画素領域が存在するか否かを判定し、病変の疑いのある画素領域が存在する場合には(ステップS10:YES)、当該画素領域の情報を走査速度算出部42に通知する。
【0109】
ステップS11において、走査速度算出部42は、病変部位検出部50から画素領域の情報が通知されたときに、上記の(g)に従って、走査速度vを低速に変更し、低速となった走査速度vを出力画像作成部52に通知する。
【0110】
なお、ステップS10において、病変部位検出部50が病変の疑いのある画素領域を発見できなかった場合には(ステップS10:NO)、病変部位検出部50から走査速度算出部42に対して画素領域の情報が通知されることはないので、走査速度算出部42は、自己が算出した走査速度vを出力画像作成部52に通知する。
【0111】
また、図14に代えて、図15のフローチャートを実行してもよい。
【0112】
図15のステップS12において、病変部位検出部50は、表示対象領域中、病変の疑いのある画素領域が存在するか否かを判定し、病変の疑いのある画素領域が存在する場合には(ステップS12:YES)、当該画素領域の情報を走査速度算出部42及び拡大率算出部46に通知する。
【0113】
ステップS13において、拡大率算出部46は、病変部位検出部50から画素領域の情報が通知されたときに、上記の(h)に従って、拡大率mを大きくし、大きくなった拡大率mを走査速度算出部42に通知する。
【0114】
ステップS14において、走査速度算出部42は、病変部位検出部50から画素領域の情報が通知され、且つ、拡大率算出部46から拡大率mが通知されたときに、自己が算出した走査速度vを拡大率mに応じた走査速度v´に補正し、補正後の走査速度v´を出力画像作成部52に通知する。
【0115】
なお、ステップS12において、病変部位検出部50が病変の疑いのある画素領域を発見できなかった場合には(ステップS12:NO)、病変部位検出部50から走査速度算出部42及び拡大率算出部46に対して画素領域の情報が通知されることはないので、走査速度算出部42は、自己が算出した走査速度vを出力画像作成部52に通知し、一方で、拡大率算出部46は、自己が算出した拡大率mを走査速度算出部42及び出力画像作成部52に出力し、走査速度算出部42は、自己が算出した走査速度v(v´)を出力画像作成部52に通知する。
【0116】
また、図13の場合と同様に、図14及び図15の処理によって走査速度vや拡大率mが変更された場合には、走査速度v(v´)や拡大率mを基準速度や基準拡大率に戻す処理が実行される。
【0117】
具体的に、ステップS4でNOと判定した後のステップS15において、濃度算出領域設定部38は、走査速度v(v´)や拡大率mが変更された状態であるか否かを判定し、前回の走査速度v(v´)や拡大率mが維持されていれば(ステップS15:YES)、走査速度v(v´)を基準速度に戻すと共に、拡大率mを基準拡大率に戻すように走査速度算出部42や拡大率算出部46を制御する。この結果、次のステップS16において、走査速度算出部42は、走査速度記憶部44から基準速度を読み出して、走査速度v(v´)を基準速度に戻し、一方で、拡大率算出部46は、拡大率記憶部48から基準拡大率を読み出して、拡大率mを前記基準拡大率に戻す。従って、濃度算出領域設定部38は、ステップS16の完了後、ステップS1に戻って次の表示対象領域に対する走査速度vの算出処理等を実行させることができる。
【0118】
出力画像作成部52は、表示対象領域を上述のように算出された各拡大率mで拡大して拡大画像をそれぞれ作成し、作成した各拡大画像と、該各拡大画像に応じた走査速度v(v´)とを画像出力手段34に出力する。画像出力手段34は、画面上で拡大画像を走査速度v(v´)で移動させながら表示させる。
【0119】
以上説明したように、本実施形態に係る画像表示装置14、画像表示システム10及び画像表示方法によれば、走査速度算出部42が表示対象領域中の画素の情報に基づいて走査速度vを変更するので、医師は、画像出力手段34の画面上を自動的に移動する拡大画像を見ながら、マンモ62中の異常箇所の発見等の読影診断を効率よく行うことが可能となる。
【0120】
すなわち、従来、医師は、マウスを使ったマニュアル操作によって画面上で拡大画像を移動させながら読影診断を行うか、あるいは、画素の情報に関わりなく、一定速度で移動する拡大画像を見ながら読影診断を行っていたので、読影診断に関わる医師の作業負担が増大すると共に、異常箇所(病変部位)の発見を見逃すおそれがあった。
【0121】
これに対して、本実施形態では、画素の情報を利用して走査速度vが変更され、変更された走査速度vによって拡大画像が画面上を自動的に移動するので、医師にとっては、異常箇所の発見が容易なものとなって、読影診断がし易くなるという顕著な効果が得られる。
【0122】
また、医師が入力手段32を操作して拡大画像の移動に関わる指示内容(表示対象領域及び走査経路を指示する情報)を入力するだけで、画像処理手段30の内部で走査速度v等が算出され、画像出力手段34の画面上に拡大画像が走査速度vに従って移動表示されるので、医師の作業負担も軽減することができる。
【0123】
この場合、走査速度算出部42は、画素の情報としての画素の濃度、あるいは、異常箇所に対応する画素領域の情報に基づいて、走査速度vを変更するので、拡大画像に対する読影診断が一層容易なものとなる。
【0124】
また、異常箇所に対応する画素が存在する表示対象領域を拡大した拡大画像を画面上に表示させる場合に、走査速度算出部42は、当該画面上で拡大画像が遅く移動するように走査速度vを設定するので、医師は、走査速度vが遅くなった拡大画像を慎重に見ながら異常箇所を確実に見つけることができる。
【0125】
この場合、病変部位検出部50が表示対象領域中の病変の疑いのある画素領域を走査速度算出部42に通知するので、走査速度算出部42は、拡大画像の走査速度vを確実に遅く設定することができる。
【0126】
つまり、本実施形態では、異常箇所を含む表示対象領域の拡大画像については、画面上で遅く移動させ、一方で、異常箇所が存在しない表示対象領域の拡大画像については、画面上で速く移動させる。
【0127】
このように、異常箇所の有無に応じて走査速度vが変化するので、乳腺が集中する領域64に病変部位が存在する場合でも、該領域64中の病変部位を確実に見つけることが可能となる。
【0128】
さらに、拡大率算出部46は、表示対象領域を構成する画素の情報に基づいて拡大率mを変更するので、拡大画像に対する読影診断を一層容易なものとすることができる。
【0129】
この場合、拡大率算出部46は、画素の濃度に基づいて拡大率mを変更するか、あるいは、該画素が異常箇所に該当したときに拡大率mを変更するので、異常箇所を含む表示対象領域に応じた拡大画像を大きく拡大して画面上に表示することで、医師は、異常箇所を確実に見つけることが可能となる。
【0130】
また、異常箇所に対応する画素が存在する表示対象領域について、拡大率mを大きく設定して、拡大画像をより拡大して画面上に表示させることで、医師は、大きく拡大された拡大画像を慎重に見ながら異常箇所を容易に見つけることができる。
【0131】
この場合、病変部位検出部50が表示対象領域中の病変の疑いのある画素領域を拡大率算出部46に通知するので、拡大率算出部46は、拡大率mを確実に大きく設定することができる。
【0132】
つまり、本実施形態では、異常箇所を含む表示対象領域の拡大画像については、画面上でより大きく表示させ、一方で、異常箇所が存在しない表示対象領域の拡大画像については、画面上で通常の拡大率で表示させる。
【0133】
このように、異常箇所の有無に応じて拡大率mが変化するので、乳腺が集中する領域64に病変部位が存在する場合でも、該領域64中の病変部位を確実に見つけることが可能となる。
【0134】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0135】
10…画像表示システム
14…画像表示装置
30…画像処理手段
34…画像出力手段
36…走査範囲設定部
38…濃度算出領域設定部
40…平均濃度算出部
42…走査速度算出部
46…拡大率算出部
50…病変部位検出部
52…出力画像作成部
62…マンモ
64…領域
66A〜66D、68A〜68I、70A〜70D…表示対象領域
72…拡大画像
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の画像の一部を拡大して画面上に表示させる画像表示装置及び画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、撮影装置により予め撮影された検査対象物の画像の一部を拡大して画面上に表示し、該画面上に表示された拡大画像を医師が丹念に見ることにより、前記検査対象物中の異常箇所(例えば、マンモ内の病変部位)を見つけることが広く行われている。
【0003】
特許文献1には、医師によるマウスの操作に起因して、画像中の関心領域のみを画面上に拡大表示させることが提案されている。しかしながら、特許文献1の技術では、医師がマウスを操作する必要があるので、該医師の作業負担が増大する。
【0004】
そこで、特許文献2には、マンモの画像中、拡大表示を行う領域を自動的に設定し、該マンモの形状に合わせて前記領域を自動的に移動させることにより、画面上に前記領域に応じた拡大画像を移動させながら表示することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−38433号公報
【特許文献2】特開平8−186762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、検査対象物がマンモである場合に、該マンモの画像中、乳腺が集中する領域は画素の濃度が比較的低く、前記マンモの画像が二値化画像であれば、前記領域は全体的に白色の画像領域となる。また、前記マンモの病変部位(石灰化組織や腫瘤)も白色で表示される。従って、前記乳腺が集中する領域に前記病変部位が存在すれば、正常部位の乳腺と異常箇所の病変部位との見分けがつきにくいので、医師は、長時間かけて前記領域の拡大画像を読影する必要がある。一方、前記乳腺が少ない領域(脂肪分が多く存在する領域)では、画素の濃度が比較的高く、全体的に黒色の画像領域となる。従って、医師は、前記乳腺が少ない領域では、短時間で異常箇所の特定を行うことが可能である。
【0007】
このように、検査対象物の画像中の画素に関わる情報(例えば、画素の濃度)に応じて、画面上に表示される拡大画面の移動速度を変更することができれば、医師は、異常箇所の発見等の読影診断を効率よく行うことができる。
【0008】
しかしながら、前述したように、特許文献1の技術では、医師自身がマウスを操作して関心領域(表示対象領域)を画面上に拡大表示させる必要があるので、該医師の作業負担が増大する。
【0009】
また、特許文献2の技術では、画面上に表示された拡大画像を一定の移動速度で移動させているので、医師は、乳腺が集中する領域内の異常箇所を見逃すおそれがあり、効率よく読影診断を行うことができない。
【0010】
本発明は、前記の課題に鑑みなされたものであり、医師が効率よく読影診断を行うことを可能とする画像表示装置及び画像表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る画像表示装置は、検査対象物の画像中、所定数の画素で構成される表示対象領域を少なくとも拡大して拡大画像を作成する拡大画像作成部と、前記拡大画像を画面上に表示する画像表示部と、前記画像表示部が前記画面上に前記拡大画像を移動させながら表示する際に、前記画面上での前記拡大画像の移動速度を設定する移動速度設定部とを有し、前記移動速度設定部は、前記表示対象領域中の画素の情報に基づいて前記移動速度を変更することを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る画像表示方法は、検査対象物の画像中、所定数の画素を表示対象領域として構成し、拡大画像作成部により少なくとも前記表示対象領域を拡大して拡大画像を作成し、画像表示部の画面上に前記拡大画像を移動させながら表示する場合に、移動速度設定部により前記表示対象領域中の画素の情報に基づいて前記画面上での前記拡大画像の移動速度を変更することを特徴としている。
【0013】
これらの発明によれば、前記移動速度設定部が前記表示対象領域中の画素の情報に基づいて前記移動速度を変更するようにしたので、医師は、前記画面上を移動する前記拡大画像を見ながら、前記検査対象物中の異常箇所の発見等の読影診断を効率よく行うことが可能となる。
【0014】
ここで、前記画素の情報は、前記画素の濃度、又は、前記検査対象物の画像中の異常箇所であり、前記移動速度設定部は、前記画素の濃度に基づいて前記移動速度を変更するか、あるいは、該画素が前記異常箇所に該当したときに前記移動速度を変更することが好ましい。
【0015】
これにより、前記異常箇所に対応する画素の濃度、あるいは、前記異常箇所に対応する画素に基づいて、前記移動速度を変更することが可能となるので、前記拡大画像に対する読影診断が一層容易なものとなる。
【0016】
また、前記画素の情報が前記画素の濃度であり、前記表示対象領域に設定された所定の走査経路に沿って前記画像表示部が前記画面上で前記拡大画像を移動させる場合に、前記移動速度設定部は、前記走査経路に沿った方向に前記濃度が小さくなるほど前記移動速度を遅くさせるか、前記走査経路に沿った方向での前記濃度の位置変化の絶対値が大きくなるほど前記移動速度を遅くさせるか、あるいは、前記位置変化の前記走査経路に沿った方向での微分の絶対値が大きくなるほど前記移動速度を遅くさせる。
【0017】
これにより、前記異常箇所に対応する画素が存在する表示対象領域を拡大した拡大画像を前記画面上に表示させたときに、前記画面上での前記拡大画像の移動速度が遅くなるので、医師は、前記移動速度が遅くなった前記拡大画像を慎重に見ながら前記異常箇所を確実に見つけることができる。この結果、乳腺が集中する領域に病変部位が存在する場合でも、該領域中の前記病変部位を確実に見つけることが可能となる。
【0018】
一方、前記画像表示装置が前記検査対象物の画像に基づいて前記異常箇所を検出する異常箇所検出部をさらに有する場合に、前記移動速度設定部は、前記表示対象領域が前記異常箇所を含むときに前記移動速度を遅くさせてもよい。
【0019】
この場合でも、前記画面上での拡大画像の移動速度が遅くなるので、医師は、前記移動速度が遅くなった前記拡大画像を慎重に見ながら前記異常箇所を確実に見つけることができる。
【0020】
また、前記画像表示装置は、前記表示対象領域から前記拡大画像への拡大率を設定する拡大率設定部をさらに有し、前記拡大率設定部は、前記表示対象領域を構成する前記画素の情報に基づいて前記拡大率を変更し、前記拡大画像作成部は、前記表示対象領域を前記拡大率で拡大することにより前記拡大画像を作成することが好ましい。
【0021】
これにより、前記拡大画像に対する読影診断が一層容易なものとなる。
【0022】
この場合、前記拡大率設定部は、前記画素の濃度に基づいて前記拡大率を変更するか、あるいは、該画素が前記異常箇所に該当したときに前記拡大率を変更することが好ましい。
【0023】
これにより、前記異常箇所を含む前記表示対象領域に応じた拡大画像を大きく拡大して画面上に表示することができるので、前記異常箇所を確実に見つけることが可能となる。
【0024】
また、前記画素の情報が前記画素の濃度であり、前記表示対象領域に設定された所定の走査経路に沿って前記画像表示部が前記画面上で前記拡大画像を移動させる場合に、前記拡大率設定部は、前記走査経路に沿った方向に前記濃度が小さくなるほど前記拡大率を大きくさせるか、前記走査経路に沿った方向での前記濃度の位置変化の絶対値が大きくなるほど前記拡大率を大きくさせるか、あるいは、前記位置変化の前記走査経路に沿った方向での微分の絶対値が大きくなるほど前記拡大率を大きくさせる。
【0025】
これにより、前記異常箇所に対応する画素が存在する表示対象領域を大きく拡大して前記画面上に表示させることで、医師は、大きく拡大された拡大画像を慎重に見ながら前記異常箇所を容易に見つけることができる。この結果、乳腺が集中する領域に病変部位が存在する場合でも、該領域中の前記病変部位を確実に見つけることが可能となる。
【0026】
一方、前記画像表示装置が前記検査対象物の画像に基づいて前記異常箇所を検出する異常箇所検出部をさらに有する場合に、前記拡大率設定部は、前記表示対象領域が前記異常箇所を含むときに前記拡大率を大きくさせることが好ましい。
【0027】
この場合でも、拡大画像をより大きく表示させることができるので、医師は、より大きく表示された前記拡大画像を慎重に見ながら前記異常箇所を見つけることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、移動速度設定部が表示対象領域中の画素の情報に基づいて画面上での拡大画像の移動速度を変更するようにしたので、医師は、前記画面上を移動する前記拡大画像を見ながら、検査対象物中の異常箇所の発見等の読影診断を効率よく行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係る画像表示装置が適用された画像表示システムのブロック図である。
【図2】図1の画像処理手段のブロック図である。
【図3】図3Aは、マンモの画像の説明図であり、図3Bは、図3Aのマンモの画像を模式的に図示した説明図である。
【図4】図3Aのマンモの画像を4つの表示対象領域に分割した説明図である。
【図5】図3Aのマンモの画像を9つの表示対象領域に分割した説明図である。
【図6】図3Aのマンモの画像を4つの表示対象領域に分割した説明図である。
【図7】図7Aは、図4の矢印の方向に各表示対象領域を走査したときの平均画素値(平均濃度)の変化を示すグラフであり、図7Bは、図4の矢印の方向に各表示対象領域を走査するときの走査速度の変化を示すグラフである。
【図8】図1の画像出力手段の画面上に表示されるマンモの拡大画像の一例を示す説明図である。
【図9】図1の画像出力手段の画面上に表示されるマンモの拡大画像の一例を示す説明図である。
【図10】図1の画像出力手段の画面上に表示されるマンモの拡大画像の一例を示す説明図である。
【図11】図2の画像処理手段での処理を示すフローチャートである。
【図12】図2の画像処理手段での処理の一部を説明するためのフローチャートである。
【図13】図2の画像処理手段での処理の一部を説明するためのフローチャートである。
【図14】図2の画像処理手段での処理の一部を説明するためのフローチャートである。
【図15】図2の画像処理手段での処理の一部を説明するためのフローチャートである。
【図16】図2の画像処理手段での処理の一部を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る画像表示装置について、画面表示方法との関係で、好適な実施形態を、図1〜図16を参照しながら説明する。
【0031】
先ず、本実施形態に係る画像表示装置14を組み込んだ画像表示システム10について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0032】
画像表示システム10は、放射線画像撮影装置12と画像表示装置14とを備える。
【0033】
放射線画像撮影装置12は、撮影台16と、撮影台16に対して被検体(被写体)のマンモ(検査対象物)18を圧迫して保持する圧迫板20と、圧迫保持されたマンモ18に対して放射線22を照射する放射線源24と、撮影台16内に収容され、マンモ18を透過した放射線22を検出して放射線画像に変換する固体検出器(放射線検出器)26とを有する。なお、放射線画像撮影装置12は、例えば、特許文献2のマンモグラフィ装置を用いればよく、この明細書では、その具体的な構成に関する説明を省略する。
【0034】
一方、画像表示装置14は、例えば、放射線画像撮影装置12に具備されるコンピュータや、医療機関に備えられ、且つ、医師又は放射線技師が操作するコンソールやパーソナルコンピュータにより実現されるものであり、固体検出器26から出力された放射線画像を記憶する画像情報記憶手段28と、医師又は放射線技師が所定の指示内容を入力するためのキーボード、タッチパネル(仮想キーボード)、マウス、特殊グローブ等の入力手段32と、入力手段32からの指示内容に従って、又は、自動的に、画像情報記憶手段28に記憶された放射線画像を読み出し、読み出した前記放射線画像に対して所定の画像処理を行う画像処理手段30と、画像処理後の放射線画像を外部に出力するディスプレイ等の画像出力手段(画像表示部)34とを有する。
【0035】
なお、画像処理手段30において行われる前記画像処理とは、後述するように、前記放射線画像の一部を拡大して拡大画像を作成し、画像出力手段34の画面上で該拡大画像を自動的に移動させつつ表示させるための一連の処理を含む。
【0036】
画像処理手段30は、図2に示すように、走査範囲設定部36、濃度算出領域設定部38、平均濃度算出部40、走査速度算出部(移動速度設定部)42、走査速度記憶部44、拡大率算出部(拡大率設定部)46、拡大率記憶部48、病変部位検出部(異常箇所検出部)50、及び、出力画像作成部(拡大画像作成部)52を有する。
【0037】
ここで、画像処理手段30内の各構成要素の詳細な説明に先立ち、画像情報記憶手段28に記憶されている放射線画像について、図3A及び図3Bを参照しながら説明する。
【0038】
画像情報記憶手段28(図1参照)には、図3Aに示すマンモ18の放射線画像(二値化画像)が記憶されている。図3Bは、図3Aの放射線画像を模式的に図示した説明図である。
【0039】
前記放射線画像において、被検体60のマンモ62(マンモ18)には、乳腺が集中する領域64が写り込んでいる。この領域64は、画素の濃度(画素値)が比較的低い白色の画像領域である。また、マンモ62に病変部位(石灰化組織や腫瘤)が存在する場合、該病変部位も白色で表示される。従って、前記乳腺が集中する領域64に前記病変部位が存在すれば、正常部位である乳腺と、異常箇所である病変部位との見分けがつきにくい。従って、領域64を拡大した拡大画像が画像出力手段34の画面上に表示された場合に、医師は、前記画面上に表示された領域64を長時間かけて読影する必要がある。
【0040】
なお、マンモ62中、前記乳腺が比較的少ない領域(脂肪分が多く存在する領域)では、画素の濃度が比較的高く、黒色の画像領域となる。従って、このような画像領域の拡大画像が画像出力手段34の画面上に表示された場合に、医師は、前記画面上に表示された前記画像領域を短時間で読影し、異常箇所の特定を行うことが可能である。
【0041】
そこで、画像処理手段30では、画像情報記憶手段28から図3A(図3B)の放射線画像を読み出し、読み出した放射線画像の一部を拡大して拡大画像を作成し、作成した拡大画像を画像出力手段34の画面上で移動させつつ表示させるために必要な画像処理を行う。
【0042】
具体的に、走査範囲設定部36は、画像情報記憶手段28から読み出した放射線画像(図3A参照)を、図4〜図6に示すように、所定数の画素により構成される複数の表示対象領域66A〜66D、68A〜68I、70A〜70Dに分割し、分割した表示対象領域66A〜66D、68A〜68I、70A〜70Dについて、拡大画像を作成する順番を決定する。
【0043】
ここで、図4〜図6中、破線の矢印は、拡大画像を作成するための走査経路であり、この走査経路に沿って、表示対象領域66A〜66D、68A〜68I、70A〜70D内の各画素に対し画像処理を施すことにより、拡大画像を作成することができる。
【0044】
従って、走査範囲設定部36は、表示対象領域と走査経路とを決定した時点で、前記放射線画像中の全ての表示対象領域と走査経路とを濃度算出領域設定部38に通知する。
【0045】
図4は、放射線画像を4つの表示対象領域66A〜66Dに分割し、破線の矢印の方向に従って、表示対象領域66A→表示対象領域66B→表示対象領域66C→表示対象領域66Dの順番に拡大画像を作成する場合を示している。
【0046】
図5は、放射線画像を9つの表示対象領域68A〜68Iに分割し、表示対象領域68A→表示対象領域68B→…→表示対象領域68H→表示対象領域68Iの順番に拡大画像を作成する場合を示している。
【0047】
図6は、放射線画像を4つの表示対象領域70A〜70Dに分割し、表示対象領域70A→表示対象領域70B→表示対象領域70C→表示対象領域70Dの順番に拡大画像を作成する場合を示す。
【0048】
なお、走査範囲設定部36は、図4〜図6の例に限定されることはなく、画像処理手段30内で拡大画像を作成することができるのであれば、いかなる表示対象領域及び走査経路を設定することが可能である。
【0049】
また、走査範囲設定部36における表示対象領域及び走査経路の設定は、走査範囲設定部36が自動的に行ってもよいし、あるいは、画像出力手段34の画面上に図3Aの放射線画像を表示させ、該放射線画像を視認した医師又は放射線技師が入力手段32を操作して、表示対象領域及び走査経路を示す指示内容を入力し、入力された指示内容に従って設定してもよい。
【0050】
図2の濃度算出領域設定部38は、走査範囲設定部36において決定された全ての表示対象領域及び走査経路が通知されたときに、前記走査経路に沿って各表示対象領域の拡大画像を順に作成するように、平均濃度算出部40、走査速度算出部42、拡大率算出部46、病変部位検出部50及び出力画像作成部52を制御する。
【0051】
具体的に、図4の表示対象領域66A〜66D及び走査経路が通知された場合、濃度算出領域設定部38は、前記走査経路に従って、下記(A)〜(D)の順番に各表示対象領域66A〜66D及び走査経路を平均濃度算出部40、走査速度算出部42、拡大率算出部46、病変部位検出部50及び出力画像作成部52に通知することにより、表示対象領域66A〜66Dの拡大画像を順に作成するように制御する。
【0052】
(A)表示対象領域66A及び該表示対象領域66A内の走査経路を通知することにより表示対象領域66Aの拡大画像を作成させる。
【0053】
(B)表示対象領域66B及び該表示対象領域66B内の走査経路を通知することにより表示対象領域66Bの拡大画像を作成させる。
【0054】
(C)表示対象領域66C及び該表示対象領域66C内の走査経路を通知することにより表示対象領域66Cの拡大画像を作成させる。
【0055】
(D)表示対象領域66D及び該表示対象領域66D内の走査経路を通知することにより表示対象領域66Dの拡大画像を作成させる。
【0056】
図2の平均濃度算出部40は、濃度算出領域設定部38から通知された1つの表示対象領域中、該表示対象領域内の走査経路に直交する方向(1つの列又は行)に沿って配置された複数の画素の濃度の平均値(画素値の平均値としての平均濃度q)を算出し、この平均濃度qの算出を前記走査経路に沿って、前記表示対象領域内の全ての画素の列又は行について行い、算出された各平均濃度qを走査速度算出部42、拡大率算出部46及び病変部位検出部50に出力する。
【0057】
走査速度記憶部44には、出力画像作成部52が表示対象領域の拡大画像を作成し、画像出力手段34が画面上に前記拡大画像を表示する際に、該画面に対する前記拡大画像の走査速度(移動速度)vの基準値(基準速度)が記憶されている。
【0058】
走査速度算出部42は、走査速度記憶部44から基準速度を読み出し、読み出した基準速度を拡大画像の走査速度vとして出力画像作成部52に出力するか、あるいは、平均濃度算出部40から入力された平均濃度qに基づいて、基準速度を変更し、変更後の速度を走査速度vとして出力画像作成部52に出力する。
【0059】
具体的に、走査速度算出部42は、下記の(a)〜(c)のいずれか1つの方法に従って走査速度vの算出処理(変更処理)を行う。
【0060】
(a)走査速度算出部42は、走査経路に沿った方向(x方向)で平均濃度qが小さくなるほど走査速度vを遅くさせる。
【0061】
この場合、走査速度vと平均濃度qとの関係は、下記の(1)式及び(2)式で表わされる。
v=f(q) (1)
dv/dq=d{f(q)}/dq>0 (2)
【0062】
なお、(1)式及び(2)式において、fは任意の関数を示す。
【0063】
(b)走査速度算出部42は、x方向に沿った平均濃度qの位置変化(微分)の絶対値が大きくなるほど走査速度vを遅くさせる。
【0064】
この場合、平均濃度qの位置変化をrとしたときに、走査速度v、平均濃度q、位置x及び位置変化rの関係は、下記の(3)式〜(5)式で表わされる。
r=dq/dx (3)
v=f(r) (4)
|dv/dr|=|d{f(r)}/dr|<0 (5)
【0065】
(c)走査速度算出部42は、位置変化rのx方向に沿った微分の絶対値が大きくなるほど走査速度vを遅くさせる。
【0066】
この場合、位置変化rの微分をsとしたときに、走査速度v、平均濃度q、位置x、位置変化r及び位置変化の微分sの関係は、下記の(6)式〜(8)式で表わされる。
s=dr/dx=d2q/dx2 (6)
v=f(s) (7)
|dv/ds|=|d{f(s)}/ds|<0 (8)
【0067】
なお、図7A及び図7Bは、一例として、図4に示す表示対象領域66A〜66Dと走査経路とについて、上記(b)の方法に従って、平均濃度q(平均画素値)に基づき走査速度vを算出した場合を図示したものである。
【0068】
図2の拡大率記憶部48には、出力画像作成部52が表示対象領域を拡大して拡大画像を作成する際の前記表示対象領域から前記拡大画像への拡大率mの基準値(基準拡大率)が記憶されている。
【0069】
拡大率算出部46は、拡大率記憶部48から基準拡大率を読み出し、読み出した基準拡大率を拡大率mとして走査速度算出部42及び出力画像作成部52に出力するか、あるいは、平均濃度算出部40から入力された平均濃度qに基づいて基準拡大率を変更し、変更後の拡大率を拡大率mとして走査速度算出部42及び出力画像作成部52に出力する。
【0070】
具体的に、拡大率算出部46は、下記の(d)〜(f)のいずれか1つの方法に従って拡大率mの変更処理を行う。
【0071】
(d)拡大率算出部46は、x方向に沿って平均濃度qが小さくなるほど拡大率mを大きくさせる。
【0072】
この場合、拡大率m及び平均濃度qの関係は、下記の(9)式及び(10)式で表わされる。
m=f(q) (9)
dm/dq=d{f(q)}/dq<0 (10)
【0073】
(e)拡大率算出部46は、平均濃度qの位置変化rの絶対値が大きくなるほど拡大率mを大きくさせる。
【0074】
この場合、拡大率m及び位置変化rの関係は、下記の(11)式及び(12)式で表わされる。
m=f(r) (11)
|dm/dr|=|d{f(r)}/dr|>0 (12)
【0075】
(f)拡大率算出部46は、位置変化rの微分sが大きくなるほど拡大率mを大きくさせる。
【0076】
この場合、拡大率m及び位置変化rの微分sの関係は、下記の(13)式及び(14)式で表わされる。
m=f(s) (13)
|dm/ds|=|d{f(s)}/ds|>0 (14)
【0077】
そして、走査速度算出部42は、拡大率算出部46から基準拡大率が入力された場合には、基準速度、あるいは、上記の(a)〜(c)によって算出した走査速度を走査速度vとして出力画像作成部52に出力する。また、拡大率算出部46から基準拡大率とは異なる拡大率mが入力された場合に、走査速度算出部42は、基準速度、あるいは、上記の(a)〜(c)によって算出した走査速度を、拡大率mに応じて補正し、補正後の走査速度v(走査速度v´)を出力画像作成部52に出力する。
【0078】
病変部位検出部50は、濃度算出領域設定部38から通知された表示対象領域について、公知のCAD(Computer Aided Diagnosis)解析により自動的に解析して、病変部位(異常箇所)と疑われる部分に該当する画素領域を検出し(例えば、特許第3881265号公報、特許第4142273号公報及び特許第4184842号公報参照)、検出した画素領域の情報を走査速度算出部42、拡大率算出部46及び出力画像作成部52に出力する。この場合、病変部位検出部50は、平均濃度算出部40が算出した平均濃度qの値や、画像情報記憶手段28に記憶された、被検体のマンモ18の過去の放射線画像も参照しながら、病変部位と疑われる部分を検出することが望ましい。
【0079】
従って、走査速度算出部42は、病変部位検出部50から前記画素領域の情報が入力された場合に、(g)の方法に従って走査速度vの変更処理を行う。
【0080】
(g)走査速度算出部42は、病変部位検出部50から前記画素領域の情報が入力された場合には、走査速度vを遅くさせる。
【0081】
また、拡大率算出部46は、病変部位検出部50から前記画素領域の情報が入力された場合に、(h)の方法に従って拡大率mの変更処理を行う。
【0082】
(h)拡大率算出部46は、病変部位検出部50から前記画素領域の情報が入力された場合には、拡大率mを大きくさせる。
【0083】
出力画像作成部52は、濃度算出領域設定部38から通知された表示対象領域と、拡大率算出部46から通知された拡大率mとを用いて、画像情報記憶手段28から読み出した放射線画像中の前記表示対象領域を拡大率mで拡大して拡大画像を作成し、作成した拡大画像と、走査速度算出部42から通知された走査速度vとを画像出力手段34に出力する。
【0084】
また、画像出力手段34の画面上に表示される拡大画像が、前記放射線画像中、どの領域を拡大した画像であるのかを医師が把握したい場合もある。そこで、出力画像作成部52は、前記放射線画像を縮小した縮小画像を作成し、前記拡大画像に前記縮小画像をオーバーラップさせた新たな画像を作成し、この新たな画像と走査速度vとを共に画像出力手段34に出力してもよい。
【0085】
さらに、病変部位検出部50から病変部位に関わる画素領域の情報が通知されたときに、出力画像作成部52は、前記拡大画像に当該画素領域を示すマーク等を付与する処理も併せて行い、マークが付与された拡大画像と走査速度vとを画像出力手段34に出力してもよい。
【0086】
なお、出力画像作成部52は、前記拡大画像を作成しない場合には、前記放射線画像を画像出力手段34に出力する。
【0087】
また、出力画像作成部52は、1つの表示対象領域を拡大して拡大画像を作成し、作成した1つの拡大画像と走査速度vとを画像出力手段34に出力してもよいし、あるいは、全ての表示対象領域に対して拡大画像の作成処理をそれぞれ行い、各拡大画像を結合した1つの新たな画像と各走査速度vとを画像出力手段34に出力してもよい。
【0088】
画像出力手段34は、出力画像作成部52から入力された拡大画像を画面上に表示すると共に、前記画面上で前記拡大画像を走査速度vで移動させる。
【0089】
図8〜図10は、図4〜図6の表示対象領域66A〜66D、68A〜68I、70A〜70D及び走査経路に対応する拡大画像72の画面表示をそれぞれ図示した説明図である。
【0090】
この場合、画面上には、拡大画像72が走査速度vで移動しつつ大きく表示され、一方で、画面の右下には、放射線画像の縮小画像76が固定表示されている。この場合、拡大画像72には、走査経路や表示対象領域の境界も図示されている。また、縮小画像76内には、現在、画面上に現在表示されている拡大画像72の範囲を示す枠74も表示されている。
【0091】
本実施形態に係る画像表示装置14及び画像表示システム10は、以上のように構成され且つ機能するものであり、次に、画像表示装置14の動作(画像表示方法)について、図11〜図16のフローチャートも参照しながら説明する。
【0092】
ここでは、画像表示装置14が自動的に拡大画像の作成処理及び表示処理を行う場合について説明する。また、この動作説明では、出力画像作成部52は、全ての表示対象領域に対する拡大画像の作成を完了した後に、各拡大画像及び走査速度vを画像出力手段34に出力するものとする。なお、図11〜図16は、濃度算出領域設定部38、平均濃度算出部40、走査速度算出部42、拡大率算出部46及び病変部位検出部50によって行われる、走査速度v及び拡大率mの変更処理を説明するためのフローチャートである。
【0093】
先ず、画像処理手段30(図1及び図2参照)が画像情報記憶手段28に記憶された放射線画像を読み出したときに、走査範囲設定部36は、前記放射線画像を複数の表示対象領域に分割すると共に走査経路を決定し、決定した各表示対象領域及び走査経路を濃度算出領域設定部38に通知する。
【0094】
ステップS1において、濃度算出領域設定部38は、走査範囲設定部36から各表示対象領域及び走査経路が通知されたときに、走査経路上、最初の表示対象領域と該表示対象領域中の走査経路とを平均濃度算出部40、走査速度算出部42、拡大率算出部46、病変部位検出部50及び出力画像作成部52に通知する。
【0095】
ステップS2において、平均濃度算出部40は、濃度算出領域設定部38から通知された最初の表示対象領域について、x方向(走査経路に沿った方向)に直交する方向に配置された各画素の濃度の平均濃度qを算出し、該平均濃度qの算出をx方向に沿って、前記表示対象領域内の全ての画素の列又は行について行い、算出された各平均濃度qを走査速度算出部42、拡大率算出部46及び病変部位検出部50に出力する。
【0096】
次のステップS3において、走査速度算出部42は、上記(a)〜(c)のいずれか1つの方法に従って、平均濃度算出部40から入力された平均濃度qに基づき基準速度を変更し、変更後の速度を走査速度vとして出力画像作成部52に出力する。
【0097】
濃度算出領域設定部38は、平均濃度算出部40、走査速度算出部42、拡大率算出部46及び病変部位検出部50が、通知済みの表示対象領域及び走査経路に対して所定の処理を完了したか否かを監視している。
【0098】
従って、濃度算出領域設定部38は、次のステップS4において、全ての表示対象領域及び走査経路に対する走査速度vの算出処理や拡大率mの算出処理を完了したか否かを判定する。
【0099】
この場合、濃度算出領域設定部38は、ステップS1において最初の表示対象領域と走査経路とを平均濃度算出部40、走査速度算出部42、拡大率算出部46、病変部位検出部50及び出力画像作成部52に既に通知しているので、最初の表示対象領域及び走査経路に対する処理は完了したものの、2番目以降の表示対象領域及び走査経路に対する処理が完了していないと判断して(ステップS4:NO)、ステップS1に戻り、次に、2番目の表示対象領域と走査経路とを平均濃度算出部40、走査速度算出部42、拡大率算出部46、病変部位検出部50及び出力画像作成部52に通知して、ステップS2及びS3の処理を再度行わせる。
【0100】
このようにして、2番目以降の表示対象領域及び走査経路に対するステップS1〜S3の処理を順次行わせて、全ての表示対象領域と走査経路とについてステップS1〜S3の処理が全て完了したときに(ステップS4:YES)、濃度算出領域設定部38は、上述の監視を終了する。
【0101】
上記の説明は、拡大率mが基準拡大率であるときの走査速度vの算出処理であるが、平均濃度qに応じて拡大率mを変更する場合、画像処理手段30内では、図12に示す処理がさらに行われる。
【0102】
すなわち、ステップS5において、拡大率算出部46は、上記の(d)〜(f)のいずれか1つの方法に従って、拡大率mを変更させるべきか(大きくさせるべきか)否かを判定し、拡大率mを大きくすべきと判定した場合には(ステップS5:YES)、次のステップS6において、(d)〜(f)のいずれか1つの方法を用いて、平均濃度qに応じた拡大率mを算出する。
【0103】
拡大率算出部46は、算出した拡大率mを走査速度算出部42及び出力画像作成部52に通知し、次のステップS7において、走査速度算出部42は、算出した走査速度vを、拡大率算出部46から通知された拡大率mに応じた走査速度v´に補正(変換)し、補正後の走査速度v´を出力画像作成部52に出力する。
【0104】
なお、ステップS5において、拡大率mが変更不要であると判定した場合、すなわち、拡大率mを基準拡大率に維持すべきと判定した場合に(ステップS5:NO)、拡大率算出部46は、基準拡大率を拡大率mとして走査速度算出部42及び出力画像作成部52に通知し、走査速度算出部42は、算出した走査速度vを出力画像作成部52に出力する。
【0105】
また、図12に示す拡大率mの変更処理を行った場合、当該変更処理の対象となった表示対象領域以外の表示対象領域については、基準拡大率とすべき場合もある。すなわち、現在の表示対象領域について拡大率mを変更し、続くステップS4の判定処理の結果、ステップS1に戻って次の表示対象領域に対する走査速度vの算出処理を実行する場合、前回の拡大率mが維持されていれば、走査速度算出部42は、この前回の拡大率mに基づいて、次の表示対象領域の拡大画像の走査速度vを算出するおそれがある。
【0106】
そこで、ステップS4でNOと判定された場合に、濃度算出領域設定部38は、図13のステップS8において、拡大率mが変更されているか否かを判定し、前回の拡大率mが維持されていれば(ステップS8:YES)、拡大率mを基準拡大率に戻すように拡大率算出部46を制御する。この結果、次のステップS9において、拡大率算出部46は、拡大率記憶部48から基準拡大率を読み出して、拡大率mを前記基準拡大率に戻す(リセットする)。従って、濃度算出領域設定部38は、ステップS9の完了後、ステップS1に戻って次の表示対象領域に対する走査速度vの算出処理等を確実且つ正確に実行させることが可能となる。
【0107】
また、病変部位検出部50が病変の疑いのある画素領域を検出した場合における、走査速度vの変更処理や、拡大率mの変更処理は、次に説明する図14及び図15のフローチャートに従って実行される。
【0108】
すなわち、図14のステップS10において、病変部位検出部50は、表示対象領域中、病変の疑いのある画素領域が存在するか否かを判定し、病変の疑いのある画素領域が存在する場合には(ステップS10:YES)、当該画素領域の情報を走査速度算出部42に通知する。
【0109】
ステップS11において、走査速度算出部42は、病変部位検出部50から画素領域の情報が通知されたときに、上記の(g)に従って、走査速度vを低速に変更し、低速となった走査速度vを出力画像作成部52に通知する。
【0110】
なお、ステップS10において、病変部位検出部50が病変の疑いのある画素領域を発見できなかった場合には(ステップS10:NO)、病変部位検出部50から走査速度算出部42に対して画素領域の情報が通知されることはないので、走査速度算出部42は、自己が算出した走査速度vを出力画像作成部52に通知する。
【0111】
また、図14に代えて、図15のフローチャートを実行してもよい。
【0112】
図15のステップS12において、病変部位検出部50は、表示対象領域中、病変の疑いのある画素領域が存在するか否かを判定し、病変の疑いのある画素領域が存在する場合には(ステップS12:YES)、当該画素領域の情報を走査速度算出部42及び拡大率算出部46に通知する。
【0113】
ステップS13において、拡大率算出部46は、病変部位検出部50から画素領域の情報が通知されたときに、上記の(h)に従って、拡大率mを大きくし、大きくなった拡大率mを走査速度算出部42に通知する。
【0114】
ステップS14において、走査速度算出部42は、病変部位検出部50から画素領域の情報が通知され、且つ、拡大率算出部46から拡大率mが通知されたときに、自己が算出した走査速度vを拡大率mに応じた走査速度v´に補正し、補正後の走査速度v´を出力画像作成部52に通知する。
【0115】
なお、ステップS12において、病変部位検出部50が病変の疑いのある画素領域を発見できなかった場合には(ステップS12:NO)、病変部位検出部50から走査速度算出部42及び拡大率算出部46に対して画素領域の情報が通知されることはないので、走査速度算出部42は、自己が算出した走査速度vを出力画像作成部52に通知し、一方で、拡大率算出部46は、自己が算出した拡大率mを走査速度算出部42及び出力画像作成部52に出力し、走査速度算出部42は、自己が算出した走査速度v(v´)を出力画像作成部52に通知する。
【0116】
また、図13の場合と同様に、図14及び図15の処理によって走査速度vや拡大率mが変更された場合には、走査速度v(v´)や拡大率mを基準速度や基準拡大率に戻す処理が実行される。
【0117】
具体的に、ステップS4でNOと判定した後のステップS15において、濃度算出領域設定部38は、走査速度v(v´)や拡大率mが変更された状態であるか否かを判定し、前回の走査速度v(v´)や拡大率mが維持されていれば(ステップS15:YES)、走査速度v(v´)を基準速度に戻すと共に、拡大率mを基準拡大率に戻すように走査速度算出部42や拡大率算出部46を制御する。この結果、次のステップS16において、走査速度算出部42は、走査速度記憶部44から基準速度を読み出して、走査速度v(v´)を基準速度に戻し、一方で、拡大率算出部46は、拡大率記憶部48から基準拡大率を読み出して、拡大率mを前記基準拡大率に戻す。従って、濃度算出領域設定部38は、ステップS16の完了後、ステップS1に戻って次の表示対象領域に対する走査速度vの算出処理等を実行させることができる。
【0118】
出力画像作成部52は、表示対象領域を上述のように算出された各拡大率mで拡大して拡大画像をそれぞれ作成し、作成した各拡大画像と、該各拡大画像に応じた走査速度v(v´)とを画像出力手段34に出力する。画像出力手段34は、画面上で拡大画像を走査速度v(v´)で移動させながら表示させる。
【0119】
以上説明したように、本実施形態に係る画像表示装置14、画像表示システム10及び画像表示方法によれば、走査速度算出部42が表示対象領域中の画素の情報に基づいて走査速度vを変更するので、医師は、画像出力手段34の画面上を自動的に移動する拡大画像を見ながら、マンモ62中の異常箇所の発見等の読影診断を効率よく行うことが可能となる。
【0120】
すなわち、従来、医師は、マウスを使ったマニュアル操作によって画面上で拡大画像を移動させながら読影診断を行うか、あるいは、画素の情報に関わりなく、一定速度で移動する拡大画像を見ながら読影診断を行っていたので、読影診断に関わる医師の作業負担が増大すると共に、異常箇所(病変部位)の発見を見逃すおそれがあった。
【0121】
これに対して、本実施形態では、画素の情報を利用して走査速度vが変更され、変更された走査速度vによって拡大画像が画面上を自動的に移動するので、医師にとっては、異常箇所の発見が容易なものとなって、読影診断がし易くなるという顕著な効果が得られる。
【0122】
また、医師が入力手段32を操作して拡大画像の移動に関わる指示内容(表示対象領域及び走査経路を指示する情報)を入力するだけで、画像処理手段30の内部で走査速度v等が算出され、画像出力手段34の画面上に拡大画像が走査速度vに従って移動表示されるので、医師の作業負担も軽減することができる。
【0123】
この場合、走査速度算出部42は、画素の情報としての画素の濃度、あるいは、異常箇所に対応する画素領域の情報に基づいて、走査速度vを変更するので、拡大画像に対する読影診断が一層容易なものとなる。
【0124】
また、異常箇所に対応する画素が存在する表示対象領域を拡大した拡大画像を画面上に表示させる場合に、走査速度算出部42は、当該画面上で拡大画像が遅く移動するように走査速度vを設定するので、医師は、走査速度vが遅くなった拡大画像を慎重に見ながら異常箇所を確実に見つけることができる。
【0125】
この場合、病変部位検出部50が表示対象領域中の病変の疑いのある画素領域を走査速度算出部42に通知するので、走査速度算出部42は、拡大画像の走査速度vを確実に遅く設定することができる。
【0126】
つまり、本実施形態では、異常箇所を含む表示対象領域の拡大画像については、画面上で遅く移動させ、一方で、異常箇所が存在しない表示対象領域の拡大画像については、画面上で速く移動させる。
【0127】
このように、異常箇所の有無に応じて走査速度vが変化するので、乳腺が集中する領域64に病変部位が存在する場合でも、該領域64中の病変部位を確実に見つけることが可能となる。
【0128】
さらに、拡大率算出部46は、表示対象領域を構成する画素の情報に基づいて拡大率mを変更するので、拡大画像に対する読影診断を一層容易なものとすることができる。
【0129】
この場合、拡大率算出部46は、画素の濃度に基づいて拡大率mを変更するか、あるいは、該画素が異常箇所に該当したときに拡大率mを変更するので、異常箇所を含む表示対象領域に応じた拡大画像を大きく拡大して画面上に表示することで、医師は、異常箇所を確実に見つけることが可能となる。
【0130】
また、異常箇所に対応する画素が存在する表示対象領域について、拡大率mを大きく設定して、拡大画像をより拡大して画面上に表示させることで、医師は、大きく拡大された拡大画像を慎重に見ながら異常箇所を容易に見つけることができる。
【0131】
この場合、病変部位検出部50が表示対象領域中の病変の疑いのある画素領域を拡大率算出部46に通知するので、拡大率算出部46は、拡大率mを確実に大きく設定することができる。
【0132】
つまり、本実施形態では、異常箇所を含む表示対象領域の拡大画像については、画面上でより大きく表示させ、一方で、異常箇所が存在しない表示対象領域の拡大画像については、画面上で通常の拡大率で表示させる。
【0133】
このように、異常箇所の有無に応じて拡大率mが変化するので、乳腺が集中する領域64に病変部位が存在する場合でも、該領域64中の病変部位を確実に見つけることが可能となる。
【0134】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0135】
10…画像表示システム
14…画像表示装置
30…画像処理手段
34…画像出力手段
36…走査範囲設定部
38…濃度算出領域設定部
40…平均濃度算出部
42…走査速度算出部
46…拡大率算出部
50…病変部位検出部
52…出力画像作成部
62…マンモ
64…領域
66A〜66D、68A〜68I、70A〜70D…表示対象領域
72…拡大画像
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の画像中、所定数の画素で構成される表示対象領域を少なくとも拡大して拡大画像を作成する拡大画像作成部と、
前記拡大画像を画面上に表示する画像表示部と、
前記画像表示部が前記画面上に前記拡大画像を移動させながら表示する際に、前記画面上での前記拡大画像の移動速度を設定する移動速度設定部と、
を有し、
前記移動速度設定部は、前記表示対象領域中の画素の情報に基づいて前記移動速度を変更することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記画素の情報は、前記画素の濃度、又は、前記検査対象物の画像中の異常箇所であり、
前記移動速度設定部は、前記画素の濃度に基づいて前記移動速度を変更するか、あるいは、該画素が前記異常箇所に該当したときに前記移動速度を変更することを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記画素の情報が前記画素の濃度であり、前記表示対象領域に設定された所定の走査経路に沿って前記画像表示部が前記画面上で前記拡大画像を移動させる場合に、
前記移動速度設定部は、
前記走査経路に沿った方向に前記濃度が小さくなるほど前記移動速度を遅くさせるか、
前記走査経路に沿った方向での前記濃度の位置変化の絶対値が大きくなるほど前記移動速度を遅くさせるか、
あるいは、前記位置変化の前記走査経路に沿った方向での微分の絶対値が大きくなるほど前記移動速度を遅くさせることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項2記載の装置において、
前記検査対象物の画像に基づいて前記異常箇所を検出する異常箇所検出部をさらに有し、
前記移動速度設定部は、前記表示対象領域が前記異常箇所を含むときに前記移動速度を遅くさせることを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の装置において、
前記表示対象領域から前記拡大画像への拡大率を設定する拡大率設定部をさらに有し、
前記拡大率設定部は、前記表示対象領域を構成する前記画素の情報に基づいて前記拡大率を変更し、
前記拡大画像作成部は、前記表示対象領域を前記拡大率で拡大することにより前記拡大画像を作成することを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、
前記拡大率設定部は、前記画素の濃度に基づいて前記拡大率を変更するか、あるいは、該画素が前記異常箇所に該当したときに前記拡大率を変更することを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、
前記画素の情報が前記画素の濃度であり、前記表示対象領域に設定された所定の走査経路に沿って前記画像表示部が前記画面上で前記拡大画像を移動させる場合に、
前記拡大率設定部は、
前記走査経路に沿った方向に前記濃度が小さくなるほど前記拡大率を大きくさせるか、
前記走査経路に沿った方向での前記濃度の位置変化の絶対値が大きくなるほど前記拡大率を大きくさせるか、
あるいは、前記位置変化の前記走査経路に沿った方向での微分の絶対値が大きくなるほど前記拡大率を大きくさせることを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
請求項6記載の装置において、
前記検査対象物の画像に基づいて前記異常箇所を検出する異常箇所検出部をさらに有し、
前記拡大率設定部は、前記表示対象領域が前記異常箇所を含むときに前記拡大率を大きくさせることを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
検査対象物の画像中、所定数の画素を表示対象領域として構成し、拡大画像作成部により少なくとも前記表示対象領域を拡大して拡大画像を作成し、画像表示部の画面上に前記拡大画像を移動させながら表示する場合に、
移動速度設定部により前記表示対象領域中の画素の情報に基づいて前記画面上での前記拡大画像の移動速度を変更することを特徴とする画像表示方法。
【請求項1】
検査対象物の画像中、所定数の画素で構成される表示対象領域を少なくとも拡大して拡大画像を作成する拡大画像作成部と、
前記拡大画像を画面上に表示する画像表示部と、
前記画像表示部が前記画面上に前記拡大画像を移動させながら表示する際に、前記画面上での前記拡大画像の移動速度を設定する移動速度設定部と、
を有し、
前記移動速度設定部は、前記表示対象領域中の画素の情報に基づいて前記移動速度を変更することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記画素の情報は、前記画素の濃度、又は、前記検査対象物の画像中の異常箇所であり、
前記移動速度設定部は、前記画素の濃度に基づいて前記移動速度を変更するか、あるいは、該画素が前記異常箇所に該当したときに前記移動速度を変更することを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記画素の情報が前記画素の濃度であり、前記表示対象領域に設定された所定の走査経路に沿って前記画像表示部が前記画面上で前記拡大画像を移動させる場合に、
前記移動速度設定部は、
前記走査経路に沿った方向に前記濃度が小さくなるほど前記移動速度を遅くさせるか、
前記走査経路に沿った方向での前記濃度の位置変化の絶対値が大きくなるほど前記移動速度を遅くさせるか、
あるいは、前記位置変化の前記走査経路に沿った方向での微分の絶対値が大きくなるほど前記移動速度を遅くさせることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項2記載の装置において、
前記検査対象物の画像に基づいて前記異常箇所を検出する異常箇所検出部をさらに有し、
前記移動速度設定部は、前記表示対象領域が前記異常箇所を含むときに前記移動速度を遅くさせることを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の装置において、
前記表示対象領域から前記拡大画像への拡大率を設定する拡大率設定部をさらに有し、
前記拡大率設定部は、前記表示対象領域を構成する前記画素の情報に基づいて前記拡大率を変更し、
前記拡大画像作成部は、前記表示対象領域を前記拡大率で拡大することにより前記拡大画像を作成することを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、
前記拡大率設定部は、前記画素の濃度に基づいて前記拡大率を変更するか、あるいは、該画素が前記異常箇所に該当したときに前記拡大率を変更することを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、
前記画素の情報が前記画素の濃度であり、前記表示対象領域に設定された所定の走査経路に沿って前記画像表示部が前記画面上で前記拡大画像を移動させる場合に、
前記拡大率設定部は、
前記走査経路に沿った方向に前記濃度が小さくなるほど前記拡大率を大きくさせるか、
前記走査経路に沿った方向での前記濃度の位置変化の絶対値が大きくなるほど前記拡大率を大きくさせるか、
あるいは、前記位置変化の前記走査経路に沿った方向での微分の絶対値が大きくなるほど前記拡大率を大きくさせることを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
請求項6記載の装置において、
前記検査対象物の画像に基づいて前記異常箇所を検出する異常箇所検出部をさらに有し、
前記拡大率設定部は、前記表示対象領域が前記異常箇所を含むときに前記拡大率を大きくさせることを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
検査対象物の画像中、所定数の画素を表示対象領域として構成し、拡大画像作成部により少なくとも前記表示対象領域を拡大して拡大画像を作成し、画像表示部の画面上に前記拡大画像を移動させながら表示する場合に、
移動速度設定部により前記表示対象領域中の画素の情報に基づいて前記画面上での前記拡大画像の移動速度を変更することを特徴とする画像表示方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−72381(P2011−72381A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224634(P2009−224634)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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