説明

画像表示装置

【課題】低コストで、単位画素当たりの電流値を低減すること。
【解決手段】電流注入により発光する有機EL素子と、有機EL素子に流れる電流の値を制御し、有機EL素子の輝度を制御する薄膜トランジスタとを備え、単位画素エリアである画素エリア111において、有機EL素子が平面的に複数(第1発光エリア12に対応する有機EL素子、第2発光エリア13に対応する有機EL素子)に分割され、複数の有機EL素子は、電気的に直列に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、有機EL(Electronic Luminescent)素子を用いた画像表示装置に関するものであり、特に、低コストで、単位画素当たりの電流値を低減することができる画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、発光層に注入された正孔と電子とが発光再結合することによって光を生じる機能を有する有機EL素子を用いた画像表示装置が提案されている。
【0003】
かかる画像表示装置は、例えば、行列状に配置された複数の画素回路と、複数の画素回路に対して、複数の信号線を介して後述する輝度信号を供給する信号線駆動回路と、画素回路に対して、複数の走査線を介して輝度信号を供給する画素回路を選択するための走査信号を供給する走査線駆動回路とを備える。
【0004】
図9は、従来の画像表示装置1の構成を示す側面図である。同図に示した画像表示装置1は、ガラス基板2の上に、アノード金属層3、発光層41、接続層51、発光層42、接続層52、発光層43およびカソード金属層6が順次積層された構成とされている。アノード金属層3とカソード金属層6との間には、図示しない制御回路の制御に基づいて、電源7が接続される。発光層41〜43のそれぞれは、上述した有機EL素子に対応しており、電気的に直列接続されている。
【0005】
上記構成において、アノード金属層3とカソード金属層6とが電源7に接続されると、発光層41〜43がそれぞれ発光する。このように、従来の画像表示装置1は、複数の発光層41〜43を接続層51および52を介して積層することにより、単位画素当たりの輝度を高め、単位画素当たりの電流値を低減する構成とされている。
【0006】
【非特許文献1】A.Matsumoto et al., IDW'03,pp.1285
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の画像表示装置1では、複数の発光層41〜43を積層することにより、単位画素当たりの輝度を高め、単位画素当たりの電流値を低減することができるという利点を有しているが、積層数の増加に伴って、製造プロセスも増加し、コストが高くつくという欠点を有している。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストで、単位画素当たりの電流値を低減することができる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、単位画素エリアにおいて、電流注入により発光する発光手段が平面的に複数に分割され、該分割された発光手段は、電気的に直列に接続されていること、を特徴とする。
【0010】
また、本発明は、電流注入により発光する発光手段と、前記発光手段に流れる電流の値を制御し、前記発光手段の輝度を制御する制御手段とを備えた画像表示装置であって、単位画素エリアにおいて、前記発光手段が平面的に複数に分割され、該分割された発光手段は、電気的に直列に接続されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単位画素エリアにおいて、電流注入により発光する発光手段を平面的に複数に分割し、該分割された発光手段を、電気的に直列に接続することとしたので、従来のように、複数の発光手段を積層する場合に比して、製造プロセスが簡単になり、低コストで、単位画素当たりの電流値を低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる画像表示装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明にかかる実施例1による画像表示装置10の構成を示す平面図である。図2は、図1に示したA1−A1線視断面図である。図3は、図1に示したB1−B1線視断面図である。
【0014】
図1に示した画像表示装置10は、マトリクス状に配された複数の画素エリア111〜11n、・・・を有しており、前述した有機EL素子により発光する表示装置である。これらの画素エリア111〜11n、・・・のそれぞれは、1画素に対応しており、同層に隣接して形成されかつ電気的に直列に接続されている。この画像表示装置10は、周知の蒸着や印刷の技術により製造される。
【0015】
具体的には、画素エリア111は、第1発光エリア12および第2発光エリア13という2つの発光エリアを有している。これらの第1発光エリア12および第2発光エリア13の発光面積は、略等しい。第1発光エリア12と第2発光エリア13との間には、凹状のビア14、ビア15およびビア16が形成されている。これらのビア14、ビア15およびビア16は、層間接続に用いられるビアである。また、画素エリア111においては、電流は、同図に示した経路Xを流れる。
【0016】
つぎに、図2および図3を参照して、画像表示装置10の断面構成について説明する。図2に示した画像表示装置10において、ガラス基板17の上には、スイッチング素子等を有する回路層18と、絶縁材料からなる平坦化絶縁膜19とが積層されている。平坦化絶縁膜19の表面には、アノード金属層20、アノード金属層21、アノード金属層22および絶縁膜23が形成されている。
【0017】
図2において、アノード金属層20は、第1発光エリア12(有機EL層25)におけるアノードである。アノード金属層21は、ビア15(図3参照)に対応する位置に形成されている。このアノード金属層21は、第2発光エリア13(有機EL層26)におけるアノードである。アノード金属層22は、ビア14(図2参照)に対応する位置に形成されている。絶縁膜23は、アノード金属層20およびアノード金属層21を覆うように形成されている(図3参照)。
【0018】
有機EL層25は、注入された正孔と電子とが発光再結合することによって、第1発光エリア12で光を生じさせる発光層である。カソード金属層27は、有機EL層25、絶縁膜23およびアノード金属層21の表面に形成されており、第1発光エリア12(有機EL層25)におけるカソードである。このカソード金属層27は、ビア14でアノード金属層21に電気的に接続されている。これらのアノード金属層20、有機EL層25およびカソード金属層27は、第1発光エリア12における有機EL素子に対応している。
【0019】
有機EL層26は、注入された正孔と電子とが発光再結合することによって、第2発光エリア13で光を生じさせる発光層である。カソード金属層28は、有機EL層26の表面に形成されており、第2発光エリア13(有機EL層26)におけるカソードである。これらのアノード金属層21、有機EL層26およびカソード金属層28は、第2発光エリア13における有機EL素子に対応している。第2発光エリア13は、第1発光エリア12と発光面積が略等しく(第1発光エリア12の発光面積の90%〜110%の範囲内)設定されており、これによって第1発光エリア12及び第2発光エリア13のいずれか一方の電流密度が極端に大きくなることはなく、両発光手段を長期にわたり良好に機能させることができる。
【0020】
カソード分離絶縁膜29は、絶縁膜23の表面に形成されている。このカソード分離絶縁膜29の表面には、有機EL層30およびカソード金属層31が形成されている。但し、カソード金属層31および有機EL層30は製造プロセス上形成されるものであって、発光に一切寄与しない。
【0021】
このように、画像表示装置10の画素エリア111においては、第1発光エリア12における有機EL素子(アノード金属層20、有機EL層25およびカソード金属層27)と、第2発光エリア13における有機EL素子(アノード金属層21、有機EL層26およびカソード金属層28)とが同層に隣接して形成されかつ電気的に直列に接続されている。
【0022】
上記構成においては、図2に示したアノード金属層20→有機EL層25→カソード金属層27→アノード金属層22→図3に示したアノード金属層21→有機EL層26→カソード金属層28という経路Xを電流が流れることにより、有機EL層25(第1発光エリア12)および有機EL層26(第2発光エリア13)の双方が同時に発光する。
【0023】
以上説明したように、実施例1によれば、画素エリア111(単位画素エリア)において、電流注入により発光する有機EL素子を平面的に複数に分割し、分割された有機EL素子を電気的に直列に接続することとしたので、従来のように、複数の発光層(図9参照)を積層する場合に比して、製造プロセスが簡単になり、低コストで、単位画素当たりの電流値を低減することができる。
【実施例2】
【0024】
さて、前述した実施例1においては、凹状のビア(ビア14:図2参照)を介して、第1発光エリア12のカソード(カソード金属層27)と、第2発光エリア13のアノード(アノード金属層21)とを接続する構成例について説明したが、ビアに代えて、ビアに比して平坦なパッドを介して、アノードとカソードとを接続する構成例としてもよい。以下では、この構成例を実施例2として説明する。
【0025】
図4は、本発明にかかる実施例2による画像表示装置40の構成を示す平面図である。図5は、図4に示したA2−A2線視断面図である。
【0026】
図4に示した画像表示装置40は、マトリクス状に配された複数の画素エリア411〜41n、・・・を有しており、前述した有機EL素子により発光する表示装置である。これらの画素エリア411〜41n、・・・のそれぞれは、1画素に対応しており、同層に隣接して形成されかつ電気的に直列に接続されている。この画像表示装置40は、周知の蒸着や印刷の技術により製造される。
【0027】
具体的には、画素エリア411は、第1発光エリア42および第2発光エリア43という2つの発光エリアを有している。第1発光エリア42と第2発光エリア43との間には、パッド44、ビア45およびパッド46が形成されている。これらのパッド44およびパッド46では、アノードとカソードとが接続される。
【0028】
つぎに、図5を参照して、画像表示装置40の断面構成について説明する。図5に示した画像表示装置40において、ガラス基板47の上には、スイッチング素子等を有する回路層48と、絶縁材料からなる平坦化絶縁膜49とが積層されている。平坦化絶縁膜49の表面には、アノード金属層50、アノード金属層51および絶縁膜52が形成されている。
【0029】
アノード金属層50は、第1発光エリア42(有機EL層53)におけるアノードである。アノード金属層51は、第2発光エリア43(有機EL層54)におけるアノードである。絶縁膜52は、カソード金属層55もしくはカソード金属層56と、アノード金属層50もしくはアノード金属層51とが、有機層53、54の形成領域外で短絡しないように形成されている。
【0030】
有機EL層53は、注入された正孔と電子とが発光再結合することによって、第1発光エリア42で光を生じさせる発光層である。カソード金属層55は、有機EL層53、絶縁膜52およびアノード金属層51の表面に形成されており、第1発光エリア42(有機EL層53)におけるカソードである。このカソード金属層55は、パッド44でアノード金属層51に電気的に接続されている。このパッド44は、回路層48を被覆する平坦化絶縁膜49上に存在している。これらのアノード金属層50、有機EL層53およびカソード金属層55は、第1発光エリア42における有機EL素子に対応している。
【0031】
有機EL層54は、注入された正孔と電子とが発光再結合することによって、第2発光エリア43で光を生じさせる発光層である。カソード金属層56は、有機EL層54の表面に形成されており、第2発光エリア43(有機EL層54)におけるカソードである。これらのアノード金属層51、有機EL層54およびカソード金属層56は、第2発光エリア43における有機EL素子に対応している。
【0032】
カソード分離絶縁膜57は、絶縁膜52の表面に形成されている。このカソード分離絶縁膜57の表面には、有機EL層58およびカソード金属層59が形成されている。但し、有機EL層58およびカソード金属層59は製造プロセス上形成されるものであって、発光に一切寄与しない。
【0033】
このように、画像表示装置40の画素エリア411においては、実施例1と同様にして、第1発光エリア42における有機EL素子(アノード金属層50、有機EL層53およびカソード金属層55)と、第2発光エリア43における有機EL素子(アノード金属層51、有機EL層54およびカソード金属層56)とが同層に隣接して形成されかつ電気的に直列に接続されている。また、第1発光エリア42と第2発光エリア43とがビアを介さずにパッド44を介して電気的に接続されているため、単位画素エリアに形成するビアの数の増加を抑えることができ、発光エリアを広く維持することが可能となる。
【0034】
上記構成においては、図5に示したアノード金属層50→有機EL層53→カソード金属層55→アノード金属層51→有機EL層54→カソード金属層56という経路Y(図4参照)を電流が流れることにより、有機EL層53(第1発光エリア42)および有機EL層54(第2発光エリア43)の双方が同時に発光する。
【0035】
以上説明したように、実施例2によれば、実施例1と同様の効果を奏する。
【実施例3】
【0036】
さて、前述した実施例1および2においては、具体的な回路への適用例について、言及しなかったが、図6〜図8に示した回路に適用してもよい。以下では、この適用例を実施例3として説明する。図6に示した回路は、画像表示装置における1画素に対応しており、走査線S60およびデータ線D60に接続された薄膜トランジスタ60と、薄膜トランジスタ61と、第1有機EL素子62と、第2有機EL素子63とから構成されている。同回路は、ドレイン接地型の回路である。
【0037】
第1有機EL素子62および第2有機EL素子63は、直列に接続されており、図1に示した第1発光エリア12の有機EL素子および第2発光エリア13の有機EL素子に対応している。または、第1有機EL素子62および第2有機EL素子63は、直列に接続されており、図4に示した第1発光エリア42の有機EL素子および第2発光エリア43の有機EL素子に対応している。薄膜トランジスタ61は、第1有機EL素子62および第2有機EL素子63を流れる電流の量を制御し、第1有機EL素子62および第2有機EL素子63の輝度を変化させる。
【0038】
また、図7に示した回路は、画像表示装置における1画素に対応しており、走査線S70およびデータ線D70に接続された薄膜トランジスタ70と、薄膜トランジスタ71と、第1有機EL素子72と、第2有機EL素子73とから構成されている。同回路は、ソース接地型の回路である。
【0039】
第1有機EL素子72および第2有機EL素子73は、直列に接続されており、図1に示した第1発光エリア12の有機EL素子および第2発光エリア13の有機EL素子に対応している。または、第1有機EL素子72および第2有機EL素子73は、直列に接続されており、図4に示した第1発光エリア42の有機EL素子および第2発光エリア43の有機EL素子に対応している。薄膜トランジスタ71は、第1有機EL素子72および第2有機EL素子73を流れる電流の量を制御し、第1有機EL素子72および第2有機EL素子73の輝度を変化させる。
【0040】
また、図8に示した回路は、画素の選択時に即時発光するパッシブ制御型の画像表示装置に対応しており、m本の走査線S1〜Smと、n本のデータ線D1〜Dnと、これらの各交点にそれぞれ設けられた1対の有機EL素子8011および8111、・・・、有機EL素子80mnおよび81mnとから構成されている。
【0041】
1対の有機EL素子8011および8111、・・・、有機EL素子80mnおよび81mnのそれぞれは、直列に接続されており、図1に示した第1発光エリア12の有機EL素子および第2発光エリア13の有機EL素子に対応している。または、1対の有機EL素子8011および8111、・・・、有機EL素子80mnおよび81mnのそれぞれは、図4に示した第1発光エリア42の有機EL素子および第2発光エリア43の有機EL素子に対応している。
【0042】
以上説明したように、実施例3によれば、実施例1と同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明にかかる画像表示装置は、低コスト化、単位画素当たりの電流値の低減に対して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明にかかる実施例1による画像表示装置10の構成を示す平面図である。
【図2】図1に示したA1−A1線視断面図である。
【図3】図1に示したB1−B1線視断面図である。
【図4】本発明にかかる実施例2による画像表示装置40の構成を示す平面図である。
【図5】図4に示したA2−A2線視断面図である。
【図6】本発明にかかる実施例3による回路例1を示す図である。
【図7】本発明にかかる実施例3による回路例2を示す図である。
【図8】本発明にかかる実施例3による回路例3を示す図である。
【図9】従来の画像表示装置1の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 画像表示装置
12 第1発光エリア
13 第2発光エリア
14 ビア
20 アノード金属層
21 アノード金属層
25 有機EL層
26 有機EL層
27 カソード金属層
28 カソード金属層
40 画像表示装置
42 第1発光エリア
43 第2発光エリア
44 パッド
50 アノード金属層
51 アノード金属層
53 有機EL層
54 有機EL層
55 カソード金属層
56 カソード金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位画素エリアにおいて、電流注入により発光する発光手段が平面的に複数に分割され、該分割された発光手段は、電気的に直列に接続されていること、
を特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
電流注入により発光する発光手段と、前記発光手段に流れる電流の値を制御し、前記発光手段の輝度を制御する制御手段とを備えた画像表示装置であって、
単位画素エリアにおいて、前記発光手段が平面的に複数に分割され、該分割された発光手段は、電気的に直列に接続されていること、
を特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、薄膜トランジスタであることを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記発光手段は、有機EL素子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の画像表示装置。
【請求項5】
分割された複数の発光手段は、ビアを介して直列に接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の画像表示装置。
【請求項6】
分割された複数の発光手段は、パッドを介して直列に接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記発光手段は、絶縁膜に被覆された回路層を有する基板上に形成されており、前記パッドは、前記絶縁膜上に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
分割された複数の発光手段の発光面積は、略等しいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−10986(P2006−10986A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186965(P2004−186965)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【出願人】(599142729)奇美電子股▲ふん▼有限公司 (19)
【Fターム(参考)】