説明

画像表示装置

【課題】熱抵抗が十分小さく、かつ熱抵抗の変化のない画像表示パネル駆動モジュールを備えた画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示パネルに接続されるフレキシブル配線基板52と、フレキシブル配線基板52に搭載されかつ画像表示パネルの電極を駆動するICチップ53と、フレキシブル配線基板52に接着されかつICチップ53を配置する凹部62が設けられた放熱板60とを備え、放熱板60に放熱板60の外周部と凹部62とをつなぐ溝64を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイ装置などの画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示パネルとして代表的なプラズマディスプレイパネル(以下、単に「パネル」と略記する)を用いたプラズマディスプレイ装置は、視野角が広く大画面化が容易であり、かつ自発光型であり画像表示品質が高いこと等から大画面画像表示装置の主流となりつつある。
【0003】
パネルは、対向配置された前面板と背面板との間に多数の放電セルが形成されている。前面板は、1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極対が前面ガラス基板上に互いに平行に複数対形成され、それら表示電極対を覆うように誘電体層および保護層が形成されている。背面板は、背面ガラス基板上に複数の平行なデータ電極と、それらを覆うように誘電体層と、さらにその上にデータ電極と平行に複数の隔壁とがそれぞれ形成され、誘電体層の表面と隔壁の側面とに蛍光体層が形成されている。そして、表示電極対とデータ電極とが立体交差するように前面板と背面板とが対向配置されて密封され、内部の放電空間には、例えばキセノンを含む放電ガスが封入されている。ここで表示電極対とデータ電極との対向する部分に放電セルが形成される。
【0004】
このようなパネルを用いてプラズマディスプレイ装置を構成するために、パネルには、各電極に駆動電圧を印加するためのフレキシブル配線基板(以下、「FPC」と略記する)が接続される。特にデータ電極に駆動電圧を印加するためのデータ電極用FPCには、データ電極のそれぞれを駆動するためのデータ電極駆動用ICチップ(以下、単に「ICチップ」と略記する)が搭載されている。このように電極を駆動する機能を備えたものを画像表示パネル駆動モジュール(以下、単に「モジュール」と略記する)と呼ぶ。データ電極用のモジュールには、ICチップの出力端子とデータ電極とを接続するための出力配線、およびICチップの入力端子と駆動回路部分とを接続するための入力配線が形成されており、出力配線はパネルのデータ電極の電極引出部のそれぞれに異方導電性接着材等を介して電気的に接続される。
【0005】
ここで、データ電極を駆動するICチップは温度が高くなるので、熱抵抗が十分小さくなるように考慮して実装する必要がある。そこで、このICチップを搭載したモジュールとして、放熱のための放熱板を取付けた構造が開示されている。そしてその放熱板にはICチップが嵌り込む凹部が設けられており、かつその凹部に熱伝導性部材を充填することにより小さな熱抵抗を実現することができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−338706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成のモジュールを用いても、使用している間にICチップと放熱板との間に剥離が発生し、熱抵抗が大きくなることがあるといった課題があった。本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、熱抵抗が十分小さくかつ熱抵抗の変化のない信頼性の高いモジュールを備えた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像表示装置は、画像表示パネルに接続されるFPCと、FPCに搭載されかつ画像表示パネルの電極を駆動するICチップと、FPCに接着されかつICチップを配置する凹部が設けられた放熱板とを備え、放熱板に放熱板の外周部と凹部とをつなぐ溝を設けたことを特徴とする。この構成により、熱抵抗が十分小さくかつ熱抵抗の変化のない信頼性の高いモジュールを備えた画像表示装置を提供することができる。
【0008】
また本発明の画像表示装置は、放熱板の凹部に放熱板とICチップとの隙間を埋める熱伝導性部材を充填してもよい。この構成により、小さな熱抵抗を実現することができる。
【0009】
また本発明において、放熱板の外周部と凹部とをつなぐ溝は、少なくとも1つの屈曲部を有していることが望ましい。この構成によれば、塵等が仮に開口部から溝に入った場合であっても凹部まで入り込むのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱抵抗が十分小さくかつ熱抵抗の変化のない信頼性の高いモジュールを備えた画像表示装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態による画像表示装置について、プラズマディスプレイ装置を例にとって、図面を用いて説明する。
【0012】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態に用いるパネルの要部を示す分解斜視図である。パネル10は、ガラス製の前面基板21と背面基板31とを対向配置して、その間に放電空間を形成するように構成されている。前面基板21上には表示電極対28を構成する走査電極22と維持電極23とが互いに平行に対をなして複数形成されている。そして、走査電極22および維持電極23を覆うように誘電体層24が形成され、誘電体層24上には保護層25が形成されている。また、背面基板31上には複数のデータ電極32が形成され、そのデータ電極32を覆うように誘電体層33が形成されている。誘電体層33上には井桁状の隔壁34が設けられている。また、誘電体層33の表面および隔壁34の側面に蛍光体層35が設けられている。そして、走査電極22および維持電極23とデータ電極32とが交差する方向に前面基板21と背面基板31とを対向配置しており、その間に形成される放電空間には、放電ガスとして、例えばネオンとキセノンの混合ガスが封入されている。なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
【0013】
図2は本発明の実施の形態に用いるパネル10の電極配列図である。行方向に長いn本の走査電極22およびn本の維持電極23が配列され、列方向に長いm本のデータ電極32が配列されている。そして、1対の走査電極22および維持電極23と1つのデータ電極32とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。
【0014】
図3は本発明の実施の形態に用いるパネル10の外観を模式的に示す平面図であり、図3(a)はパネル10を背面基板31側から見た図であり、図3(b)は前面基板21側から見た図である。パネル10の前面基板21および背面基板31は矩形状であり長辺と短辺を有している。図3(a)に示すように、前面基板21の短辺左側には走査電極用の電極引出部43が形成されている。電極引出部43のそれぞれはn本の走査電極22のそれぞれに接続されている。また、前面基板21の短辺右側には維持電極用の電極引出部42が形成されている。電極引出部42のそれぞれはn本の維持電極23のそれぞれに接続されている。この電極引出部42、43はそれぞれ複数のブロックに分かれており、各々のブロックには維持電極用FPCおよび走査電極用FPCが接続される。また図3(b)に示すように、背面基板31の長辺下側にはデータ電極用の電極引出部44が形成されている。電極引出部44のそれぞれはm本のデータ電極32のそれぞれに接続されている。この電極引出部44も複数のブロックに分かれており、各々のブロックにはデータ電極32を駆動するためのモジュールが接続される。
【0015】
図4は本発明の実施の形態におけるモジュールの詳細を示す図であり、図4(a)は平面図、図4(b)は側面図、図4(c)は分解斜視図、図4(d)はICチップを含む面における断面図である。モジュール50は、フレキシブルな屈曲性を有するポリイミド樹脂フィルム等からなるデータ電極用のFPC52にデータ電極32を駆動するためのICチップ53が搭載されている。ICチップ53には入出力端子としてAu等からなる突起電極が設けられており、その突起電極をFPC52の開口部51に露出した配線部分に共晶接続することにより実装されている。そして、ICチップ53を覆うようにエポキシ樹脂等の樹脂54を充填し、機械的なダメージからICチップを保護している。
【0016】
また、FPC52の一方にはICチップ53の出力部に接続された複数の出力端子57が形成されている。この出力端子57は、パネル10のデータ電極用の電極引出部44のそれぞれに異方導電性接着材等を用いて接続するためのものである。FPC52のもう一方にはICチップ53の入力部に接続された入力端子59が形成されている。この入力端子59は、モジュール50の駆動回路基板に接続するためのものである。
【0017】
また、FPC52の樹脂54が塗布された面の反対側にはICチップ53の放熱のための放熱板60が耐熱性の両面接着テープ等により接着されている。放熱板60には、ICチップ53が嵌り込む凹部62が設けられており、その凹部62にICチップ53が配置されるとともに、熱伝導性コンパウンドや熱伝導性接着剤等の熱伝導性部材69が充填されている。また放熱板60には、凹部62から放熱板60の側面にまで伸びた溝64が設けられている。本実施の形態においては、溝64は、2つの凹部62を結ぶ溝と、その溝の中間点から放熱板60の側面に垂直に伸びる溝とで構成されている。また、この放熱板60には、プラズマディスプレイ装置のシャーシ部材等にモジュール50を固定するためのネジ穴68が設けられている。
【0018】
つぎに、本実施の形態において、放熱板60に溝64を設けた理由について説明する。データ電極用のICチップ53は、多くのデータ電極32を駆動するため温度が上昇する。仮に放熱板60に溝64が設けられていないと仮定すると、ICチップ53が配置されている凹部62は閉空間となり内部に空気が閉じ込められる。一方、画像表示時においては、ICチップ53の温度が上昇する。すると、閉じ込められた空気が膨張して内部の気圧が高くなるので、ICチップ53を放熱板60から離す方向の力が加わることになる。このような力が繰り返しICチップ53に加わると、ICチップ53が放熱板60から剥離して熱抵抗が大きくなる可能性がある。
【0019】
しかしながら、本実施の形態においては、上述したように、凹部62から放熱板60の側面にまで伸びた溝64が設けられている。そのために、凹部62内部に空気が閉じ込められることはなく、ICチップ53の温度が変化して凹部62内部の空気が膨張または収縮しても凹部62内部の気圧の変化はなく、ICチップ53に力が加わらないので、ICチップ53が放熱板60から剥離することなく、熱抵抗が大きくなるおそれがない。
【0020】
図5は、本発明の実施の形態におけるモジュールの放熱板60の詳細を示す図である。図5(a)に示したように、溝64は、2つの凹部62を結ぶ溝64aと、その溝64aの中間点から放熱板60の側面に垂直に伸びる溝64bとで構成され、FPC52を接着したときに開口部67が形成される。溝64の形状は本実施の形態においてはT字状に形成されているが、この形状に限定されるものではなく、凹部62内部に空気が閉じ込められることがないように、凹部62から放熱板60の側面にまで伸びる形状であればよい。例えば、図5(b)に示したように、凹部62と開口部67とを屈曲した曲線でつなぐ形状の溝65でもよく、また図5(c)に示したように、凹部62毎に放熱板60の側面にまで伸びた溝66を独立に設けた形状であってもよい。なお、図5(a)、図5(b)、図5(c)に示したように、凹部62と溝の開口部67との間に少なくとも1つの屈曲部を有するように溝部が形成されているが、この屈曲部を有することにより、塵等が仮に開口部67から溝に入った場合であっても凹部62まで入り込むのを防ぐことができる。
【0021】
また、溝64の開口部67は放熱板60の側面の任意の位置に設けてもよいが、実装する向きを考慮して、ごみ等が付着しにくい位置に設けることが好ましい。
【0022】
図6は、本発明の実施の形態におけるモジュール50が実装されたプラズマディスプレイ装置の一例を示す図である。図6(a)は、プラズマディスプレイ装置100の構成を示す図であり、パネル10と、モジュール50の駆動回路基板120と、回路基板120を取り付けたシャーシ部材110と、これらを収納する前面枠130およびバックカバー140とを示している。なお、図面を煩雑にしないために、パネル保護板、熱伝導シート、シャーシ補強部材等は示していない。また電源回路ブロック、走査電極・維持電極駆動回路、タイミング発生回路等も省略している。パネル10に取り付けられたそれぞれのモジュール50の入力端子59は、回路基板120に設けられたカプラ125のそれぞれに接続される。図6(b)は、モジュール50の入力端子59が回路基板120のカプラ125に接続された様子をバックカバー140側から見た拡大図である。
【0023】
本実施の形態においては、パネル10の下側に接続されたモジュール50のFPC52をシャーシ部材110を越えて折り返し、モジュール50の入力端子59が回路基板120のカプラ125に接続されている。このとき図6(b)に破線で示したように、溝64の開口部67が下向きになるようにモジュール50は実装される。したがって、開口部67に埃等が付着することがなく溝64が塞がる心配がない。このように、溝64の開口部67はモジュール50の実装される向きを考慮して、ごみ等が付着しにくい位置に設けることが好ましい。
【0024】
なお、本実施の形態においては、データ電極用の電極引出部44は背面基板31の長辺下側に形成されており、モジュール50もパネル10の下側に接続されているものとして説明したが、データ電極用の電極引出部44がパネル10の長辺上側に形成されている場合には、モジュール50もパネル10の上側に接続すればよく、このときのモジュール50の実装形態を考慮して、溝64の開口部67が下向きになる等、塵等の付着しにくい位置にモジュール50の開口部67を形成すればよい。
【0025】
また、本実施の形態においては、1つのモジュール50に2個のデータ電極駆動用のICチップ53が実装されている図面を用いて説明したが、1つのモジュールに1個または3個以上のICチップが実装されていてもよく、その場合には、ICチップの数に対応した凹部のそれぞれから放熱板の外周部までをつなぐ溝部を設ければよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、熱抵抗が十分小さくかつ熱抵抗の変化のない信頼性の高いモジュールを備えたプラズマディスプレイ装置などの画像表示装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に用いるパネルの要部を示す分解斜視図
【図2】同パネルの電極配列図
【図3】同パネルの外観を模式的に示す平面図
【図4】本発明の実施の形態におけるモジュールの詳細を示す図
【図5】同モジュールの放熱板の詳細を示す図
【図6】同モジュールが実装されたプラズマディスプレイ装置の一例を示す図
【符号の説明】
【0028】
10 パネル
21 前面基板
22 走査電極
23 維持電極
28 表示電極対
31 背面基板
32 データ電極
42 (維持電極用の)電極引出部
43 (走査電極用の)電極引出部
44 (データ電極用の)電極引出部
50 モジュール
51 (FPCの)開口部
52 (データ電極用の)FPC
53 ICチップ
54 樹脂
57 出力端子
59 入力端子
60 放熱板
62 凹部
64,64a,64b,65,66 溝
67 開口部
68 ネジ穴
69 熱伝導性部材
100 プラズマディスプレイ装置
110 シャーシ部材
120 駆動回路基板
125 カプラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示パネルに接続されるフレキシブル配線基板と、
前記フレキシブル配線基板に搭載されかつ前記画像表示パネルの電極を駆動するICチップと、
前記フレキシブル配線基板に接着されかつ前記ICチップを配置する凹部が設けられた放熱板とを備え、
前記放熱板に、前記放熱板の外周部と前記凹部とをつなぐ溝を設けたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記放熱板の前記凹部に、前記放熱板と前記ICチップとの隙間を埋める熱伝導性部材を充填したことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記放熱板の外周部と前記凹部とをつなぐ溝は、少なくとも1つの屈曲部を有していることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−333838(P2007−333838A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163134(P2006−163134)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】