説明

画像表示装置

【課題】偽色を抑制するとともに解像感を高める。
【解決手段】本発明の画像表示装置1は、配列された複数の画素により構成された画像を表示画面に表示可能であり、画像の画素は互いに波長が異なる色光に対応した複数のサブ画素により構成されており、表示画面に表示された表示画像の1画素を構成する複数のサブ画素のうちの少なくとも1つのサブ画素が他のサブ画素と異なる位置に表示される。表示画像を観察する観察者の表示画像に対する画角1°の範囲で画素の配列方向に並ぶ画素数が20ピクセル以上になるように、表示画像のサイズを変更するサイズ変更部7を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像表示装置の1つとしてプロジェクターが知られている。プロジェクターは、設置が容易であることや、大画面の画像を表示可能であること等の特長を有している。従来のプロジェクターとして、例えば特許文献1に開示されている構成のものがある。
【0003】
特許文献1のプロジェクターは、光源、色分離光学系、3つの液晶ライトバルブ、色合成光学系、および投射レンズを備えている。光源から射出された光は、色分離光学系により、赤、緑、青の色光に分離される。3種の色光の各々は、対応する液晶ライトバルブに入射して変調される。変調された3種の色光は、色合成光学系により互いの画素の位置がスクリーン上で一致するように合成される。合成された光が投射レンズによりスクリーンに投射されることにより、カラー画像が表示される。
【0004】
ところで、プロジェクターには、表示画像の高解像化が期待されている。液晶ライトバルブ等の光変調素子により形成された画像を表示する場合に、表示画像の画素数は、通常は光変調素子の画素数と同じになる。光変調素子を高解像度にすると、表示画像も高解像度になるが、製造コストが著しく増加してしまう。
【0005】
光変調素子を高解像度にしなくとも高解像度の表示画像が得られる技術として、特許文献2に開示されている技術が挙げられる。特許文献2の画像表示装置では、赤画像、緑画像、青画像のうちの1つ(例えば緑画像)の画素が、他の色画像の画素とずれた位置に表示される。緑画像の画素の輝度が、赤画像や青画像の画素の輝度と独立して認識され、見かけ上の画素数が増えることにより解像感が高められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−150487号公報
【特許文献2】特開2009−116216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の技術によれば、装置コストの高騰を招くことなく表示画像の解像感を高めることができるが、表示画像に偽色(色づき)を生じて画像品質が低下することがある。これは、表示画像のサイズや視聴者からスクリーンまでの距離等の条件によって、画素の位置のずれが画素の色の違いにより認識されるためと考えられる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑み成されたものであって、偽色の発生を抑制しつつ解像感を高めることが可能な画像表示装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記の目的を達成するために以下の手段を採用している。
本発明の画像表示装置は、配列された複数の画素により構成された画像を表示画面に表示可能であり、前記画像の画素は互いに波長が異なる色光に対応した複数のサブ画素により構成されており、前記表示画面に表示された表示画像の複数の画素の各々を構成する前記複数のサブ画素のうちの少なくとも1つのサブ画素が他のサブ画素と異なる位置に表示される、画像表示装置であって、前記表示画像に対する観察者の画角の1°の範囲で前記画素の配列方向に並ぶ画素数が20ピクセル以上になるように、前記表示画像のサイズを変更するサイズ変更部を備えていることを特徴とする。
【0010】
本願発明者は、色を区別可能な解像度が、輝度を区別可能な解像度と異なることに着目し、官能評価実験を行って人間の視覚特性について調査した。その詳細については後に説明するが、調査結果から画角1°の範囲で画素の配列方向に並ぶ画素数が20ピクセル以上であれば、輝度の区別は可能であるものの色の区別ができなくなることという知見を得た。以下の説明で、画角1°の範囲で画素の配列方向に並ぶ画素数を表示解像度(単位はピクセル/°)と称すことがある。
【0011】
本発明の画像表示装置によれば、表示解像度が上記の条件を満たすようにサイズ変更部が表示画像のサイズを変更するので、表示画像において位置がずれているサブ画素の各々の輝度が認識され、かつ表示画像のサブ画素の位置ずれによる色のずれが認識されなくなる。このようにして、偽色の発生を抑制しつつ解像感を高めることができる。
【0012】
本発明に係る画像表示装置は、代表的な態様として以下のような態様をとりえる。
【0013】
前記複数のサブ画素の各々に対応する色光を射出する照明系と、前記照明系から射出された複数の色光の各々を変調する光変調素子を含んだ複数の光変調素子と、前記複数の光変調素子により変調された色光を合成する色合成光学系と、前記色合成光学系により合成された色光が示す画像に対する表示画像の倍率を変更するズームレンズ機構を含み該表示画像を前記表示画面に投射する投射光学系と、を備え、前記サイズ変更部は、前記観察者と前記表示画面との間の視距離、前記投射光学系の投射距離、および前記表示画像の画素数に基づいて前記倍率を求め、該倍率に基づいて前記ズームレンズ機構を制御するとよい。
【0014】
このようにすれば、照明系から射出された複数の色光が、色光ごとに複数の光変調素子により変調された後に色合成光学系により合成され、合成された色光が投射光学系により投射されて表示画像が表示される。サイズ変更部が、視距離、投射距離、および表示画像の画素数に基づいて倍率を求め、倍率に基づいてズームレンズ機構を制御するので、表示画像のサイズを上記の条件を満たすように高精度に制御することができる。
【0015】
前記複数の画素の各々を構成する前記複数のサブ画素のうちで最も人間の視感度が高い色光に対応するサブ画素が、他のサブ画素とずれた位置に表示されるとよい。
このようにすれば、視感度が高い色光に対応するサブ画素の輝度が視認されやすくなり、表示画像の解像度を効果的に高めることができる。
【0016】
前記複数の画素の各々を構成する前記複数のサブ画素の少なくとも1つが、他の画素を構成するサブ画素間に配置されるとよい。
このようにすれば、画素間の隙間を減らすことができ、表示画像の解像度を効果的に高めることができる。
【0017】
前記サイズ変更部は、前記視距離および前記投射距離を検出し、この検出結果に基づいて前記倍率を求めてもよい。
【0018】
このようにすれば、検出された視距離および投射距離を用いて倍率を求めるので、視距離や投射距離の変化に応じて、表示画像のサイズを自動的に制御することができる。
【0019】
前記サイズ変更部は、使用者から入力された前記視距離を示すデータおよび前記投射距離を示すデータに基づいて前記倍率を求めてもよい。
【0020】
このようにすれば、視距離を示すデータの入力値、および投射距離を示すデータの入力値に基づいて倍率を求めるので、視距離や投射距離を検出するセンサーを設ける必要性が低くなり、画像表示装置の構成をシンプルにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は画素ずらしによる画像表示方法の概念図、(b)は表示画面での画素配列の一例を示す図である。
【図2】第1実施形態のプロジェクターの概略構成を示す模式図である。
【図3】(a)、(b)は画素ずれを生じさせる構成例を示す図である。
【図4】プロジェクター、表示画面および観察者の視点の位置関係を示す図である。
【図5】画像を表示するときのプロジェクターの処理フローを示す図である。
【図6】視距離に対する解像感の主観評価指標値の実験結果を示すグラフである。
【図7】第2実施形態におけるサイズ変更部の構成を示す図である。
【図8】使用環境と関連付けられた視距離の例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。説明に用いる図面において、特徴的な部分を分かりやすく示すために、図面中の構造の寸法や縮尺を実際の構造に対して異ならせている場合がある。また、実施形態において同様の構成要素については、同じ符号を付して図示し、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0023】
[第1実施形態]
図1(a)は画素ずらしによる画像表示方法の概念図、(b)は表示画面での画素配列の一例を示す図である。
図1(a)に示すようにプロジェクター1は、色光L1〜L3をスクリーン等の表示画面Sに投射する。色光L1〜L3は、互いに波長が異なっており、互いに独立して変調されている。例えば、色光L1が赤の色光であり、色光L2が緑の色光、色光L3が青の色光である。プロジェクター1から射出された後の色光ごとの光路に着目すると、本実施形態では色光L1の光路が色光L3の光路と略一致しており、色光L2の光路が色光L1、L3の光路からずれている。
【0024】
表示画面Sには、色光L1により第1の色画像B1が表示され、色光L2により第2の色画像B2が、色光L3により第3の色画像B3がそれぞれ表示される。第1〜第3の色画像B1〜B3が合わさって、カラーの表示画像Bが表示される。色光L2の光路が色光L1、L3の光路からずれていることにより、第2の色画像B2は、第1、第3の色画像B1、B3と異なる位置に表示される。
【0025】
図1(b)に示すように表示画像Bは、複数の画素Pを含んでいる。複数の画素Pの各々は、赤の色光に対応するサブ画素P1、緑の色光に対応するサブ画素P2、および青の色光に対応するサブ画素P3を含んでいる。サブ画素P1は、色光L1により表示され、サブ画素P2は色光L2により、またサブ画素P3は色光L3により、それぞれ表示される。
【0026】
同じ画素Pに属するサブ画素P1〜P3の表示画面S上での表示位置に着目すると、本実施形態では、サブ画素P1がサブ画素P3と略同じ位置に表示され、サブ画素P2は、サブ画素P1、P3と異なる位置に表示される。サブ画素P1〜P3は、いずれも二次元的(X方向およびY方向)に配列されている。1つの画素Pが一組のサブ画素P1〜P3により構成されるので、複数の画素Pは二次元的(X方向およびY方向)に配列されていることになる。例えば、X方向が水平走査方向であり、Y方向が垂直走査方向である。
【0027】
本実施形態では、1つの画素Pに属するサブ画素P2は、この画素Pに属するサブ画素P1、P3の一部と重なっているとともに、この画素Pに隣接する他の画素Pに属するサブ画素P1、P3の一部と重なっている。画素Pの配列方向の各々(X方向またはY方向)におけるサブ画素P2のピッチは、サブ画素P1、P3のピッチと略同じになっている。画素Pの配列方向(X方向またはY方向)において、サブ画素P1、P3に対するサブ画素P2の位置のずれ量は、この方向におけるサブ画素のピッチの略半分になっている。
【0028】
プロジェクター1により表示された表示画像Bは、サブ画素P2の輝度がサブ画素P1、P3の輝度と別に識別され、3つのサブ画素を1つの画素としたときの画素数よりも高解像度の画像として観察される。
【0029】
赤、緑、青の色光のうちで、最も人間の視感度(人間の錐体細胞の光吸収率)が高い色光は緑の色光である。緑の色光に対応するサブ画素P2の位置が他のサブ画素P1、P3の位置からずれているので、効果的に解像感を高めることができる。また、サブ画素P2が隣の画素Pと重なるようにずれているので、画素Pの間の隙間を観察されにくくなり、特にサブ画素P2の位置のずれ量がサブ画素のピッチの略半分になっているので、解像感を効果的に高めることができる。
【0030】
詳しくは後述するが、観察者の表示画像Bに対する画角1°の範囲で画素Pの配列方向に並ぶ画素数が20個以上、すなわち表示解像度が20(ピクセル/°)以上になるように、表示画像Bのサイズが制御されている。これにより、サブ画素P1、P3と、サブ画素P2とで色の違いが識別されなくなり、偽色の発生を抑制可能になっている。
【0031】
次に、プロジェクター1の構成例について説明する。図2は、第1実施形態のプロジェクター1の概略構成を示す模式図である。
図2に示すようにプロジェクター1は、照明系2、色分離光学系3、複数の光変調素子4、色合成光学系5、投射光学系6、およびサイズ変更部7を含んでいる。複数の光変調素子4として、第1の光変調素子4a、第2の光変調素子4b、および第3の光変調素子4cが設けられている。
【0032】
プロジェクター1は、概略すると以下のように動作する。照明系2から射出された光Lは、色分離光学系3により複数の色光L1〜L3に分離される。色分離光学系3により分離された複数の色光L1〜L3は、色光ごとに異なる光変調素子4に入射し、色光ごとに光変調素子4により変調される。光変調素子4により変調された複数の色光L1〜L3は、色合成光学系5に入射して進行方向が揃えられる。色合成光学系5から射出された色光L1〜L3は、投射光学系6により表示画面Sに投射される。投射光学系6は、サイズ変更部7により指定されたズームの倍率で表示画像Bを拡大または縮小可能なズームレンズ機構61を含んでいる。サイズ変更部7は、偽色の発生を抑制すべくズームレンズ機構61のズームの倍率を制御する。
【0033】
次に、プロジェクター1の構成要素について詳しく説明する。
照明系2は、光源21、第1のレンズアレイ22、第2のレンズアレイ23、偏光変換素子24、および重畳レンズ25を有している。照明系2を構成する構成要素は、光源21の光軸20に沿って配列されている。
【0034】
光源21は、光源ランプ211および放物面リフレクター212を有している。光源ランプ211から放射された光Lは、放物面リフレクター212によって一方向に反射されて略平行な光線束となる。光源ランプ211は、例えばメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ等により構成される。また、放物面リフレクター212の代わりに楕円リフレクター、球面リフレクター等によりリフレクターを構成してもよい。リフレクターの形状に応じて、リフレクターから射出された光を平行化する平行化レンズが用いられることがある。
【0035】
第1のレンズアレイ22は、光源21の光軸20に略直交する面に配列された複数のレンズ要素221を有している。第2のレンズアレイ23は、レンズ要素221と同様に複数のレンズ要素231を有している。レンズ要素221、231は、例えばマトリックス状に配列されており、光軸20に直交する平面での平面形状が、光変調素子4の被照明領域と相似形状(ここでは、略矩形)になっている。被照明領域は、光変調素子4において複数の変調要素が配列された領域の全体を含む領域である。
【0036】
偏光変換素子24は、複数の偏光変換ユニット241を有している。偏光変換ユニット241は、その詳細な構造を図示しないが、偏光ビームスプリッター膜(以下、PBS膜という)、1/2位相板および反射ミラーを有している。
【0037】
レンズ要素221は、レンズ要素231と1対1で対応している。レンズ要素231は、偏光変換ユニット241と1対1で対応している。互いに対応関係にあるレンズ要素221、231および偏光変換ユニット241は、光軸20と略平行な軸に沿って並んでいる。
【0038】
光源21から射出された光Lは、第1のレンズアレイ22の複数のレンズ要素221に空間的に分かれて入射し、レンズ要素221に入射した分割光線束ごとに集光される。レンズ要素221により集光された分割光線束は、このレンズ要素221と対応するレンズ要素231に結像する。すなわち、第2のレンズアレイ23の複数のレンズ要素231の各々に二次光源像が形成される。レンズ要素231に形成された二次光源像からの光は、このレンズ要素231に対応する偏光変換ユニット241に入射する。
【0039】
偏光変換ユニット241に入射した光は、PBS膜に対するP偏光とS偏光とに分離される。分離された一方の偏光は、反射ミラーで反射した後に1/2位相板を通り、他方の偏光と偏光状態が揃えられる。複数の偏光変換ユニット241の各々から射出された光(分割光線束)は、重畳レンズ25に入射して屈折し、光変調素子4の被照明領域に重畳される。複数の分割光線束の各々が被照明領域の略全域を照明することにより、複数の分割光線束の照度分布が平均化され、被照明領域での照度が均一化される。
【0040】
色分離光学系3は、ダイクロイックミラー31、32、ミラー33〜35、フィールドレンズ36a〜36c、リレーレンズ37、38を含んでいる。ダイクロイックミラー31、32は、例えばガラス表面に誘電体多層膜を積層したものである。ダイクロイックミラー31、32は、所定の波長帯域の色光を選択的に反射させ、それ以外の波長帯域の色光を透過させる特性を有している。ここでは、ダイクロイックミラー31は、緑の色光L2と青の色光L3とを反射させ、赤の色光L1を透過させる。ダイクロイックミラー32は、緑の色光L2を反射させ、青の色光L3を透過させる。
【0041】
照明系2から射出された光Lは、ダイクロイックミラー31に入射する。光Lのうちの赤の色光L1は、ダイクロイックミラー31を通ってミラー33に入射し、ミラー33で反射してフィールドレンズ36aに入射する。赤の色光L1は、フィールドレンズ36aにより平行化された後に、第1の光変調素子4aに入射する。
光Lのうちの緑の色光L2と青の色光L3は、ダイクロイックミラー31で反射して、ダイクロイックミラー32に入射する。緑の色光L2は、ダイクロイックミラー32で反射してフィールドレンズ36bに入射する。緑の色光L2は、フィールドレンズ36bにより平行化された後に、第2の光変調素子4bに入射する。
ダイクロイックミラー32を通った青の色光L3は、リレーレンズ37を通りミラー34で反射した後、リレーレンズ38を通りミラー35で反射してフィールドレンズ36cに入射する。青の色光L3は、フィールドレンズ36cにより平行化された後に、第3の光変調素子4cに入射する。
【0042】
光変調素子4は、複数の変調要素が配列された空間光変調素子により構成される。複数の変調要素は、互いに独立して入射光をスイッチングすることが可能なものである。空間光変調素子としては、例えば透過型の液晶ライトバルブや、反射型の液晶ライトバルブ、変調要素としてのMEMSミラーが配列されたデジタルミラーデバイス(以下、DMDという)等が挙げられる。本実施形態の光変調素子4は、複数の変調要素が二次元的に配列された透過型の液晶ライトバルブにより構成されている。
【0043】
光変調素子4は、表示すべき画像のデータを含んだ画像信号を供給するPC等の信号源(図示略)と電気的に接続されている。光変調素子4は、供給された画像信号に基づいて、入射光を変調要素ごとに変調して画像を形成する。第1の光変調素子4aは、赤色画像を形成し、第2の光変調素子4bは緑色画像を、第3の光変調素子4cは青色画像を、それぞれ形成する。
【0044】
画素ずらしの対象となる緑の色光L2を変調する第2の光変調素子4bには、レンダリング処理等により補正された補正画像データが供給される。補正画像データを生成するには、例えば、サブ画素の位置が揃っている場合の緑画像のデータを用いて、ずれた位置ごとのサブ画素の階調値を補間法等により求める。
【0045】
色合成光学系5は、ダイクロイックプリズム等により構成される。ダイクロイックプリズムは、4つの三角柱プリズムが互いに貼り合わされた構造になっている。三角柱プリズムにおいて貼り合わされる面は、ダイクロイックプリズムの内面になる。ダイクロイックプリズムの内面に、赤の色光L1が反射し緑の色光L2が透過するミラー面と、青の色光L3が反射し緑の色光L2が透過するミラー面とが互いに直交して形成されている。
【0046】
ダイクロイックプリズムに入射した緑の色光L2は、ミラー面を通ってそのまま射出される。ダイクロイックプリズムに入射した赤の色光L1および青の色光L3は、ミラー面で選択的に反射あるいは透過して、緑の色光L2の射出方向と略同じ方向に射出される。このようにして3種の色光の光線束が重ね合わされて合成される。
【0047】
本実施形態では、表示画面S上にて、緑の色光L2が示すサブ画素P2の位置が、赤の色光L1が示すサブ画素P1の位置および青の色光L2が示すサブ画素P3の位置からずれるように、ダイクロイックプリズムに対する第1〜第3の光変調素子4a〜4cの相対位置が調整されている。
【0048】
図3(a)、(b)は画素ずれを生じさせる構成例を示す図である。
図3(a)に示す第1の構成例では、色合成光学系5に対する第2の光変調素子4bの相対位置を変化させる移動部41が設けられている。移動部41は、第2の光変調素子4bに画像データが供給されるタイミングと同期して制御され、画素ずらしを行うタイミングで第2の光変調素子4bを移動させる。第2の光変調素子4bの位置が変化すると、第2の光変調素子4bから射出される緑の色光L2の光路が変化し、色合成光学系5から射出された段階で、色光L2の光路が色光L1、L3の光路からずれるようになる。なお、画素ずれが生じるように、第1〜第3の光変調素子4a〜4cの位置が調整されて固定されていてもよい。
【0049】
図3(b)に示す第2の構成例では、光学素子42および移動部43が設けられている。光学素子42は、第2の光変調素子4bと色合成光学系5との間の光路に配置されている。光学素子42は、例えば表裏両面が略平行な透明平板により構成される。移動部43は、光学素子42を変位させ、第2の光変調素子4bと色合成光学系5との間の光路(色光L2の主光線の進行方向)が光学素子42の法線方向と角度を変化させる。この角度を変化させると、光学素子42から射出後の色光L2の光路が、光学素子42に入射前の光路から平行にシフトし、色合成光学系5から射出された状態で、色光L2の光路が色光L1、L3の光路からずれるようになる。
【0050】
画素ずれを生じさせる構成については、第1、第2の構成例に限定されない。例えば、光変調素子としてDMDを採用する場合には、画素ずらしの対象の色光を反射させる場合と、画素ずらしの対象外の色光を反射させる場合とでMEMSミラーの振幅を異ならせることにより画素ずれを生じさせることができる。
【0051】
画素ずらしにおけるサブ画素P1〜P3の位置関係についても、特に限定されない。例えば、3つのサブ画素の位置がいずれも一致しない配置であってもよいし、2つのサブ画素の位置が一致しており、これら2つのサブ画素に対して残りの1つのサブ画素の位置がずれていてもよい。また、サブ画素がずれている方向については、画素の2つの配列方向の一方にずれていてもよいし、一方および他方にずれていてもよい。
【0052】
第1〜第3の色光によるサブ画素の位置が揃っている第1の表示モードと、第1〜第3の色光によるサブ画素の位置が互いにずれている第2の表示モードを切替えて、画像を表示することもできる。例えば、1フレームの表示期間を、第1の表示モードによる表示期間と第2の表示モードによる表示期間とに分割することも可能である。
【0053】
図2の説明に戻り、投射光学系6は、ズームレンズ機構61を含んでいる。投射光学系6は、第1〜第3の光変調素子4a〜4cにより形成された画像を、指定されたズームの倍率で拡大または縮小して投射する。ズームレンズ機構61は、例えば1以上のレンズ62、レンズ62を移動させる移動部63を含んでいる。
【0054】
移動部63は、例えばリニアアクチュエータ等により構成され、レンズ62をズームの倍率に応じた距離だけ移動させる。これにより、結像位置を同一面に保ちつつ、投射光学系6の焦点距離を変化させることができる。ズームレンズ機構61としては、複数のレンズが一体として移動する光学補正式のものや、複数のレンズが互いに連携して移動する機械補正式のもの、電子補正式を併用したもの等を採用することができる。
【0055】
サイズ変更部7は、視距離センサー71、投射距離センサー72、および演算部73を含んでいる。サイズ変更部7は、概略すると以下のように動作する。視距離センサー71は、表示画面Sと観察者との間の距離である視距離を検出する。投射距離センサー72は、投射距離を検出する。演算部73は、視距離センサー71により検出された視距離、投射距離センサー72により検出された投射距離、表示画像Bの画素数に基づいて、ズームレンズ機構61のズームの倍率を決定する。表示画像Bの画素数は、光変調素子4あたりの変調要素の数により定まり、既知の値である。サイズ変更部7は、決定したズームの倍率となるようにズームレンズ機構61を制御する。
【0056】
視距離センサー71は、観察者と表示画面Sとの間の視距離を検出し、検出結果を演算部73に出力する。視距離センサー71の構成について特に限定されない。視距離センサー71としては、例えば下記の第1〜第3の視距離センサーを用いることができる。
【0057】
第1の視距離センサーは、発光部、受光部、および演算部により構成される。発光部は、観察者が直接的に操作することにより赤外光等の光を発するものであり、例えばプロジェクター1を操作するためのリモコン等に併設される。受光部は、例えばプロジェクター本体に設けられ、発光部から発せられた光を受けて、この光の強度やこの光が発せられた方向を検出し、検出結果を演算部に出力する。この検出結果に基づいて、視距離センサー71の演算部は、プロジェクター本体と観察者との距離を算出し、プロジェクター本体と表示画面Sとの間の距離(投射距離)を加味して、観察者と表示画面Sとの間の距離(視距離)を算出する。
【0058】
第2の視距離センサーは、例えばCCDカメラ等の撮像部および演算部により構成される。撮像部は、プロジェクター本体から離れた位置に設けられて、例えば表示画面Sと観察者とを俯瞰的に撮影する。演算部は、撮像部による撮像画像にパターン認証などの処理を施して、表示画面Sの位置および観察者の位置を検出し、撮像部の設置位置を加味して、上記の視距離を算出する。第1、第2の視距離センサーでは光学的に観察者の位置を検出しているが、超音波や電波等により観察者の位置を検出してもよい。
【0059】
第3の視距離センサーは、表示画面Sに併設される第1の位置検出部、観察者が操作するリモコン等に併設される第2の位置検出部、および演算部により構成される。第1、第2の位置検出部は、例えばGPS等により構成される。演算部は、第1の位置検出部から出力される表示画面Sの位置情報と、第2の位置検出部から出力される観察者の位置情報とに基づいて視距離を検出する。
第1〜第3の視距離センサーの演算部は、演算部73と共通化されていてもよい。
【0060】
投射距離センサー72は、例えばCCDカメラ等により表示画像Bを撮像して表示画像Bのピントを判定し、ピントが合っているときの投射光学系6の焦点距離に基づいて、投射距離を検出する。投射距離センサーとしては、表示画面Sに向けて例えば赤外光を射出し、表示画面Sで反射した赤外光を受光するとともにその強度を検出して、検出された強度により投射距離を算出するアクティブ型のものであってもよい。投射光学系に、オートフォーカス機構を含む場合には、オートフォーカス機構の一部または全部を利用して投射距離を検出することができる。
【0061】
上記の第2の例の視距離センサーを採用する場合には、視距離センサーを投射距離センサーとして用いることもできる。また、上記の第3の例の視距離センサーを採用する場合に、プロジェクター本体に第3の位置検出部を設けておき、第1、第3の位置検出部の検出結果を比較することにより投射距離を求めるようにしてもよい。
【0062】
なお、投射光学系6の光学特性が既知であるので、投射光学系6により投射された光の結像面と投射光学系6との距離は既知である。通常は、ピントが合った状態でプロジェクターが使用されるので、結像面と投射光学系6との間の距離を投射距離として用いることもできる。
【0063】
次に、プロジェクター1において表示画像のサイズを変更する仕組みについて説明する。図4は、プロジェクター1、表示画面S、および観察者の視点Vの位置関係を示す平面図、図5は画像を表示するときのプロジェクターの処理フローを概略して示す図である。
【0064】
図4中の符号dは、画素の1つの配列方向(例えばX方向)での表示画像Bのサイズを示し、符号dは視距離を、符号dは投射距離を、符号θは画角をそれぞれ示す。サイズd[m]は、投射光学系6のズームの倍率、および投射距離d[m]より定まる。画角θ[°]は、下記の式(1)で表される。
θ=360/π×arctan(d/2d) ・・・式(1)
X方向に並ぶ画素数がN個(Nは正の整数)であるとすると、X方向で画角1°に含まれる画素数、すなわち表示解像度はN/θ[ピクセル/°]になる。表示解像度は、画素ピッチから求めることもでき、画素ピッチに相当する画角の逆数が、表示解像度になる。
【0065】
図2に示した演算部73は、表示解像度(N/θ)が、20以上60以下の範囲から選択される固定値または可変値の設定値になる画角θ(以下、最適画角という)を算出する。式(1)に示したように画角θはサイズdの関数であり、サイズdはズームの倍率の関数である。演算部73は、画角θが最適画角となるズームの倍率を算出し、算出したズームの倍率(以下、最適倍率という)になるようにズームレンズ機構61を制御する。
【0066】
表示解像度(N/θ)を小さくすると、表示画像Bのサイズdが大きくなる。本実施形態では、表示解像度(N/θ)の設定値を上記の範囲の下限値である20にしており、上記の条件を満たす範囲で表示画像Bのサイズを最大化することができる。
【0067】
図5に示すように、画像を表示するには、視距離センサー71により視距離を測定する(ステップS11)。また、投射距離センサー72により投射距離を測定する(ステップS12)。そして、視距離センサー71の測定結果および投射距離センサー72の測定結果を用いて、演算部73により表示画像Bが投射光学系6のズームの最適倍率を算出する(ステップS13)。そして、演算部73によりズームレンズ機構61を制御して、最適倍率になるように表示画像サイズを拡大または縮小する(ステップS14)。そして、光変調素子4に画像データを供給して画像を形成させる(ステップS15)。形成された画像が、投射光学系6により最適倍率で投射され、最適なサイズの表示画像Bが表示される。
【0068】
視距離dに応じて投射光学系6のズームの倍率が調整された状態で画像を表示すると、観察者は、表示画像Bのサブ画素単位での色の区別ができなくなり、画素ずれによる偽色の発生が認識されなくなる。画素の2つの配列方向で画素ピッチが異なる場合には、画素ピッチの小さい方向において上記の条件を満たすことにより、偽色の発生を抑制する効果が得られる。画素ピッチが大きい方向において上記の条件を満たすことにより、偽色の発生を抑制する効果が高められる。
【0069】
なお、画像を表示するたびに最適倍率を算出する必要はなく、観察者や他のユーザー等のプロジェクターの使用者の指令により最適倍率を算出するようにしてもよい。また、常に偽色を抑制するように自動的に表示画像のサイズを変更するのではなく、偽色を抑制する表示モードと、使用者の指定するサイズで画像を表示する表示モードとが切替可能になっていてもよい。
【0070】
以下、表示解像度(N/θ)と画質との関係について調査した結果について説明する。
調査方法としては、被験者に表示画像を鑑賞させてこの表示画像の画質を総合的に評価させる主観評価法を採用し、国際規格のITU−R BT.500に規定されているDSCQS法(二重刺激連続品質尺度法)に準拠させた。主観評価法の国際規格では、被験者として15名以上の非専門家を選定すること、評価対象を正常視力、正常色覚で正しく判断する能力を有する者を選定すること、誤差の少ない安定した評価が可能な者を選択することが定められており、これらの条件を満たすようにした。
【0071】
実験方法の概要は、下記の通りである。
表示画面上に、本発明を適用した実施例の画像と、比較例の画像とを並べて表示して1つの評価画像とした。実施例の画像は、画素の配列方向の2方向にて緑のサブ画素をサブ画素のピッチの略半分ずらした画像である。比較例の画像は、画素ずらしを行っていない画像である。実施例では、比較例の画像と同じ元画像のデータに対して、レンダリング処理を施したデータにより、緑のサブ画素の位置と階調値を整合させた画像を表示させた。被験者ごとに複数の評価画像を観察させ、評価画像ごとに実施例の画質および比較例の画質を、1.0(非常に悪い)〜5.0(非常によい)の範囲の評価値として評価させた。
【0072】
実施例と比較例とで画像の並びをランダムに変更して、変更前後の評価画像をそれぞれ評価させた。また、評価画像に加えて、同じ画像(例えば画素ずらしを行っていない画像)を2つ並べたダミーの評価画像に対して評価させ、この結果を被験者の評価の安定性や評価誤差の判定に供した。次の評価画像を観察させる前に、グレー画像を観察させる機会を設けて、前の評価画像に対する印象が次の評価画像に対する印象に影響を及ぼさないように留意した。
【0073】
画質は、解像性、鮮鋭性、細線再現性、シャギーの有無、モアレの有無等の要素を含んだ総合的な解像感として評価させた。偽色が観察されると色のにじみ等により画質の評価が低くなると考えられ、偽色の発生の有無が評価結果に反映されると考えられる。被験者ごとに、視距離を異ならせて同様の実験を行った。すなわち、表示画像のサイズを固定しつつ視距離を異ならせることにより、画角1°に含まれる画素数を変化させた。
【0074】
実験条件は、下記のように設定した。
偽色の発生を確認する予備実験を行って、偽色が明確に認識される視距離を避けて、視距離を変化させる範囲を選定した。視距離は、1m、2m、3mの3段階とした。投射距離は3.54mとし、表示画像のサイズは対角75インチとした。表示画像全体の画素数は、1920×1080(フルHD形式)とした。表示画像のうちで、略半分が実施例の画像であり、残りの半分が比較例の画像である。評価画像として、風景画、人物画、静物画の3種類の画像を供した。
【0075】
実験結果を下記のようにして解析した。
まず、得られた評価値を0〜100(%)に正規化し、実施例の画像と比較例の画像とで正規化した評価値の差分を求めた。被験者ごとの評価値を被験者全体の評価値の平均と比較して、被験者の信頼性を判定した。被験者全体の平均と著しく異なる評価を行っている被験者については、その評価値を異常値として除去した。そして、異常値を除いたデータについて、評価値の平均値と標準偏差を算出した。この平均値を心理評価値とし、また標準偏差から評価値の95%信頼区間を算出した。心理評価値と信頼区間から、有意差を判定した。
【0076】
図6は、視距離に対する解像感の主観評価指標値を示すグラフであり、上記の実験、解析の結果に基づくものである。図6のグラフの横軸は、視距離[m]であり、図6に視距離に相当する表示解像度[ピクセル/°]を併記した。縦軸は、比較例に対する実施例の主観評価指標値[%]を示している。主観評価指標値は、画質の低下を正の値として示す相対値であり、主観評価指標値が負でありその絶対値が大きくなるほど、実施例の画質が比較例の画質よりも高く感じられたことを示す。
【0077】
図6に示すように、表示解像度が20以上60以下の範囲で、評価画像1〜3のいずれについても、実施例の画質は比較例の画質よりも優れていると評価されており、この表示解像度の範囲で画素ずらしにより解像感が高められることが分かる。
【0078】
表示解像度が高くなるにつれて、主観評価指標値の絶対値は単調に減少して0に漸近している。これは、表示解像度が高くなるにつれて画素サイズが小さくなり、位置をずらしたサブ画素の輝度がサブ画素単位では区別できなくなるためと考えられる。すなわち、画素ずらしによる見かけ上の画素数の増分が減ることにより、実施例と比較例とで解像感が変わらなくなると考えられる。このことから、解像感を効果的に高めるため、また表示画像のサイズを最大化するためには、表示解像度を20にすればよいことが分かる。
【0079】
ところで、偽色が発生すると偽色がノイズとなり画質が低下すると考えられる。仮に、表示解像度が20以上60以下の範囲で偽色が発生していたとすると、偽色が発生しなくなる表示解像度付近で主観評価指標値が下に凸となり極小値を示すと考えられる。図7のグラフで主観評価指標値の絶対値は、表示解像度の増加とともに単調減少しており、表示解像度が20であるときに最大値になっているので、表示解像度が20で偽色が発生していないと考えられる。また、表示解像度が高くなるほど偽色が発生する可能性が低くなることから、表示解像度が20以上であれば偽色の発生が抑制されると考えられ、予備実験の結果の正当性が確認された。
【0080】
以上のような構成のプロジェクター1にあっては、表示画像Bのサブ画素P2の輝度がサブ画素P1、P3の輝度と別に識別され、表示画像Bの解像感が高められる。赤、緑、青の色光のうちで最も人間の視感度が高い緑の色光に対応するサブ画素P2の位置が他のサブ画素P1、P3の位置からずれているので、効果的に解像感が高められる。サブ画素P2が隣の画素Pと重なるようにずれており、特にサブ画素P2の位置のずれ量がサブ画素のピッチの略半分になっているので、解像感が効果的に高められる。
【0081】
また、画角1°の範囲で画素Pの配列方向に並ぶ画素数、すなわち表示解像度が20以上になるように、表示画像Bのサイズが制御されるので、サブ画素P1、P3とサブ画素P2の色の違いがサブ画素単位では識別されなくなり、偽色の発生が実質的に抑制される。特に、表示解像度が20にしているので、解像感を効果的に高めるとともに表示画像のサイズを最大化することができる。
【0082】
以上のように、光変調素子4の変調要素の数を増やさなくとも偽色の発生を抑制しつつ解像感が得られるので、光変調素子4のコストを下げることが可能になり、低コストでありながら高品質な表示画像が得られるプロジェクター1にすることができる。また、3種の色光の光路を揃えて時分割で画素ずらしによる表示を行う場合と比較して、光路を変化させる機構をシンプルにすることができる。
【0083】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のプロジェクターについて説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、サイズ変更部が、使用者から入力された視距離を示すデータおよび投射距離を示すデータに基づいて投射光学系6のズームの倍率を求める点である。
【0084】
図7は第2実施形態におけるサイズ変更部8の構成図、図8は使用環境と関連付けられた視距離の例を示す表である。
図7に示すようにサイズ変更部8は、入力部81、演算部82、および記憶部83を含んでいる。入力部81は、観察者や観察者以外のユーザー等のプロジェクターの使用者から、視距離を示すデータの入力および投射距離を示すデータの入力を受け付ける。視距離を示すデータや投射距離を示すデータは、例えば、実際の視距離や投射距離を示す数値である。本実施形態では、使用者が表示モードを選択して入力する形態で、実質的に、視距離を示すデータおよび投射距離を示すデータが入力された状態になるように、サイズ変更部8が構成されている。
【0085】
一般にプロジェクターは、使用する用途や使用環境が想定されて設計されており、推奨される投射距離や視距離はカタログ等に記載されている。図8の表1に示すように、使用環境により使用空間サイズの基準値が概ね定まり、使用空間サイズの基準値により視距離の基準値が概ね定まる。見やすい表示画像のサイズは、概ね視距離により定まることが知られており、表示画像のサイズから投射距離の基準値が概ね定まる。
【0086】
記憶部83は、例えば不揮発メモリー等により構成され、記憶部83に視距離の基準値および投射距離の基準値が、表示モードと関連付けられて格納されている。記憶部83に記憶されている表示モードを示すデータは、例えば図示略の表示パネルに画像として表示され、使用者はプロジェクターの用途や使用環境に応じて表示モードを選択し、選択した表示モードを入力部81に入力する。演算部82は、使用者の入力結果を受けて、対象となる表示モードに関連付けられた視距離の基準値および投射距離の基準値を記憶部83から読み出す。そして、演算部82は、視距離の基準値および投射距離の基準値を、実際の視距離あるいは投射距離であるとして、第1実施形態と同様にして投射光学系6のズームの倍率を算出する。そして、演算部82は、算出されたズームの倍率となるようにズームレンズ機構61を制御する。これにより、偽色の発生を抑制するように、表示画像Bのサイズが変更される。
【0087】
第2実施形態のプロジェクターにあっては、第1実施形態と同様の理由により、低コストでありながら、偽色の発生を抑制しつつ解像感が得られる画像を表示可能になっている。また、視距離を測定するセンサーや投射距離を測定するセンサーを省くことが可能になり、シンプルな構成のプロジェクターにすることができる。
【0088】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲内で多様な変形が可能である。例えば、上記の実施形態では、三板式のプロジェクターを例に説明しているが、単板式のプロジェクターであってもよい。単板式のプロジェクターは、1つの光変調素子により2以上の色光を変調するものである。単板式のプロジェクターとしては、マイクロレンズアレイを通して赤、緑、青の色光を含んだ光を光変調素子に入射させ、マイクロレンズアレイにより3種の色光を変調要素ごとに空間的に振り分けるものが挙げられる。
【0089】
上記の実施形態では、観察者が1人である例を用いて説明しているが、観察者が複数である場合に本発明を適用することもできる。例えば、複数の観察者の各々の視距離を検出し、最も視距離が短いすなわち画角1°あたりの画素数が最少の観察者を基準にして、表示画像のサイズを制御するようにしてもよい。また、複数の観察者の視距離の分布に基づいて公知の重み付け評価等を行うことにより、偽色を抑制する効果が複数の観察者で最適化されるように、表示画像のサイズを制御するようにしてもよい。また、プロジェクター1の用途等に応じて、複数の観察者の視点をいずれかの視点で代表させて表示画像のサイズを制御するようにしてもよい。
本発明は、ヘッドマウントディスプレイやビューファインダー、直視型の表示パネル等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1・・・プロジェクター、2・・・照明系、3・・・色分離光学系、
4・・・光変調素子、4a・・・第1の光変調素子、4b・・・第2の光変調素子、
4c・・・第3の光変調素子、5・・・色合成光学系、6・・・投射光学系、
7、8・・・サイズ変更部、20・・・光軸、21・・・光源、
22・・・第1のレンズアレイ、23・・・第2のレンズアレイ、
24・・・偏光変換素子、25・・・重畳レンズ、
31、32・・・ダイクロイックミラー、33〜35・・・ミラー、
36a〜36c・・・フィールドレンズ、37、38・・・リレーレンズ、
41・・・移動部、42・・・光学素子、43・・・移動部、
61・・・ズームレンズ機構、62・・・レンズ、63・・・移動部、
71・・・視距離センサー、72・・・投射距離センサー、73・・・演算部、
81・・・入力部、82・・・演算部、83・・・記憶部、211・・・光源ランプ、
212・・・放物面リフレクター、221、231・・・レンズ要素、
241・・・偏光変換ユニット、B・・・表示画像、B1・・・第1の色画像、
B2・・・第2の色画像、B3・・・第3の色画像、L・・・光、L1・・・赤の色光、L2・・・緑の色光、L3・・・青の色光、P・・・画素、P1〜P3・・・サブ画素、
S・・・表示画面、V・・・視点、d・・・表示画像のサイズ、d・・・視距離、
・・・投射距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列された複数の画素により構成された画像を表示画面に表示可能であり、前記画像の画素は互いに波長が異なる色光に対応した複数のサブ画素により構成されており、前記表示画面に表示された表示画像の複数の画素の各々を構成する前記複数のサブ画素のうちの少なくとも1つのサブ画素が他のサブ画素と異なる位置に表示される、画像表示装置であって、
前記表示画像に対する観察者の画角の1°の範囲で前記画素の配列方向に並ぶ画素数が20ピクセル以上になるように、前記表示画像のサイズを変更するサイズ変更部を備えていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記複数のサブ画素の各々に対応する色光を射出する照明系と、
前記照明系から射出された複数の色光の各々を変調する光変調素子を含んだ複数の光変調素子と、
前記複数の光変調素子により変調された色光を合成する色合成光学系と、
前記色合成光学系により合成された色光が示す画像に対する表示画像の倍率を変更するズームレンズ機構を含み該表示画像を前記表示画面に投射する投射光学系と、
を備え、
前記サイズ変更部は、前記観察者と前記表示画面との間の視距離、前記投射光学系の投射距離、および前記表示画像の画素数に基づいて前記倍率を求め、該倍率に基づいて前記ズームレンズ機構を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記複数の画素の各々を構成する前記複数のサブ画素のうちで最も人間の視感度が高い色光に対応するサブ画素が、他のサブ画素とずれた位置に表示されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記複数の画素の各々を構成する前記複数のサブ画素の少なくとも1つが、他の画素を構成するサブ画素間に配置されること特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記サイズ変更部は、前記視距離および前記投射距離を検出し、この検出結果に基づいて前記倍率を求めることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記サイズ変更部は、使用者から入力された前記視距離を示すデータおよび前記投射距離を示すデータに基づいて前記倍率を求めることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−174993(P2011−174993A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37279(P2010−37279)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】