説明

画像記録装置、画像記録装置の制御方法

【課題】不必要な電力を消費することなく、スループットの低下や記録品質の劣化を回避する画像記録装置及び画像記録装置制御方法を提供するものである。
【解決手段】記録媒体を搬送する搬送部が上記記録媒体を搬送する過程で複数のノズルから画像データに基づいてインクを吐出させて上記記録媒体上に記録処理を行う画像記録装置であって、上記インクの温度を検出するインク温度検出部と、検出されたインク温度と、予め定められた規定温度とを比較判断するインク温度比較部を有するインク温度制御部とを備え、インク温度制御部は、上記インク温度比較部の比較結果に基づき、非記録ノズルに対してインク吐出が生じない程度の駆動信号を印加する加温駆動ノズル範囲を決定し、記録動作中に、上記加温駆動ノズル範囲内の非記録ノズルに対してインク吐出が生じない程度の駆動信号を印加することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像記録技術に関し、特に画像記録装置、及び画像記録装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録装置として、例えばインクジェット方式のフルライン型のプリンタ装置が知られている。このプリンタ装置では、記録媒体が搬送される搬送方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に、インクを吐出するための複数のノズルを形成した記録ヘッドが設けられている。
【0003】
一方、このようなプリンタ装置に使用されるインクは、一般的に温度が低下すると粘度が増大する傾向にある。インク粘度はインクの吐出特性に影響を及ぼすため、良好な記録画像を得るためには、適正なインク温度範囲で画像記録を行う必要がある。さらに、記録ヘッド内のインク温度に偏りがある状態で記録を行うと記録画像に濃度むらが生じることになり、従って記録ヘッド内のインク温度は均一に保つ必要がある。
【0004】
そこで、一般的にはヒータや冷却ファンなどを使用してインク温度の制御を行っている。また、ヒータや冷却ファン以外にも、非記録ノズルに対してインク吐出を生じない程度の駆動信号を印加する、所謂加温駆動を行うことによってノズル部や駆動回路の発熱によりインクを加温する技術も一般的に知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ラインヘッドにおいて、不必要な電力を消費しないために、全ての非記録ノズルに対して加温駆動するのではなく、用紙幅を検出し、用紙幅内の非記録ノズルに対してのみ、加温駆動を行う技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−72079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、インク経路が循環型である場合には、記録ヘッド内のインク温度は均一化される。このことから、単に記録中にインク温度が記録動作可能温度より低下してしまうことを防ぐことを目的として、特許文献1の技術を用いて、非記録ノズルに対して加温駆動する場合は、不必要な電力を消費するばかりか、不必要にインク温度を上昇させてしまう可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、不必要に電力を消費することなく、また不必要にインク温度を上昇させることなく、記録中にインク温度が記録動作可能温度より低下してしまうことによるスループットの低下や記録品質の劣化を回避することが可能な画像記録装置、及び画像記録装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の態様のひとつである画像記録装置は、記録媒体を搬送する搬送部と、複数のノズルによって形成されたノズル列を前記記録媒体の搬送方向に対して直交する方向に複数配設して成る少なくとも1つの記録ユニットとを有し、前記搬送部が前記記録媒体を搬送する過程で前記複数のノズルから画像データに基づいてインクを吐出させて前記記録媒体上に記録処理を行う画像記録装置において、前記インクの温度を検出するインク温度検出部と、前記検出されたインク温度と、予め定められた規定温度とを比較判断するインク温度比較部を有するインク温度制御部とを備え、該インク温度制御部は、前記インク温度比較部の比較結果に基づき、非記録ノズルに対してインク吐出が生じない程度の駆動信号を印加する加温駆動ノズル範囲を決定し、記録動作中に、前記加温駆動ノズル範囲内の非記録ノズルに対してインク吐出が生じない程度の駆動信号を印加することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の別の態様のひとつである画像記録装置のインク温度制御方法は、記録媒体を搬送する搬送部と、複数のノズルによって形成されたノズル列を前記記録媒体の搬送方向に対して直交する方向に複数配設して成る少なくとも1つの記録ユニットとを有し、前記搬送部が前記記録媒体を搬送する過程で前記複数のノズルから画像データに基づいてインクを吐出させて前記記録媒体上に記録処理を行う画像記録装置の制御方法において、前記インクの温度を検出するインク温度検出処理と、前記検出されたインク温度と、予め定められた規定温度とを比較判断するインク温度比較処理を含むインク温度制御処理とを行い、該インク温度制御処理は、前記インク温度比較処理の比較結果に基づき、非記録ノズルに対してインク吐出が生じない程度の駆動信号を印加する加温駆動ノズル範囲を決定し、記録動作中に、前記加温駆動ノズル範囲内の非記録ノズルに対してインク吐出が生じない程度の駆動信号を印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不必要な電力消費やインク温度上昇を抑えて、記録中にインク温度が記録動作可能温度より低下し、記録動作が一旦停止してしまうことによるスループットの低下や記録品質の低下を回避する画像記録装置及び画像記録装置の制御方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る画像記録装置の概念的なブロック構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像記録装置の配置例を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像記録装置の記録ユニットおよびインク循環経路を模式的に示す図である。
【図4】インク温度とインク粘度を概念的に示す図である。
【図5】単位時間当たりのインク吐出数Nと第1の加温駆動ノズル範囲を示す図である。
【図6】単位時間当たりのインク温度変化ΔTと第2の加温駆動ノズル範囲を示す図である。
【図7】(a)は、1つのノズル列からなる記録ユニットと加温駆動ノズル範囲を模式的に示す図であり、(b)は、複数のノズル列からなる記録ユニットと加温駆動ノズル範囲を模式的に示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係るインク温度制御処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る画像記録装置の概念的なブロック構成図である。また、図2は、本実施形態に係る画像記録装置の配置例を模式的に示す図である。
【0014】
なお、図2に示す矢印は、X方向が主走査方向(記録媒体の搬送方向に対して直交する方向)を示し、Y方向が副走査方向(記録媒体の搬送方向)を示し、Z方向がXY平面に直交する方向を示す。
【0015】
本実施形態に係る画像記録装置1は、給送部2と、媒体検出部3と、インク循環部4と、インク温度調節部5と、搬送部6と、画像記録部7と、制御部8と、を少なくとも備える。ここで、給送部2は記録媒体10の搬送経路の最上流側に少なくとも1つ配設され、搬送部6は、給送部2より搬送経路の下流側に配設されている。また、媒体検出部3は画像記録部7の上流側に配設され、画像記録部7は搬送部6に対向配置されている。
【0016】
給送部2は、少なくとも1つの給送トレイ11と、給送機構12とを備える。給送機構12は、ピックアップローラ12aと、レジストレーションローラ対12bとを備える。ここで、ピックアップローラ12aは、給送トレイ11の上方に配設され、レジストレーションローラ対12bは、このピックアップローラ12aの搬送経路の下流側に配設されている。
【0017】
給送トレイ11には、記録媒体10が複数枚積載して収納されている。給送部2は制御部8の指示により、給送トレイ11に積載収納された記録媒体10を、ピックアップローラ12aを駆動させて1枚ずつ搬送経路の下流側へ給送させる。ピックアップローラ12aにより給送された記録媒体10は、レジストレーションローラ対12bにより斜行を矯正された後、搬送部6へ給送される。
【0018】
搬送部6は、例えば従動ローラ14bと、駆動ローラ14aとの間に搬送部材15である無端ベルトを架設して構成されている。さらに、この無端ベルトの内側上方には、複数の孔を有する不図示のプラテンと、更にこのプラテンの下方に不図示の吸引ファンとを備える構成である。
【0019】
ここで、従動ローラ14bの回転軸には搬送情報生成部16が接続されており、駆動ローラ14aの回転軸には搬送駆動部17が接続されている。なお、搬送情報生成部16は、例えばロータリエンコーダにより構成されている。また、搬送駆動部17は制御部8の指示により駆動される、例えばモータである。
【0020】
搬送部6は、制御部8の指示により、給送部2から給送された記録媒体10を吸引ファンの駆動により搬送部材15の無端ベルト上に吸着保持した状態で、搬送駆動部17が無端ベルトを回動させることにより、記録媒体10を搬送経路の下流側へ搬送する。なお、このとき、搬送情報生成部16におけるロータリエンコーダは、記録媒体10の搬送情報として、無端ベルトの移動量、即ち記録媒体10の搬送量に対応するパルス信号を生成して制御部8へ通知する。
【0021】
媒体検出部3は、搬送部6により搬送される記録媒体10の先端及び後端位置を検出し、当該検出情報を制御部8へ通知する。
画像記録部7は、インク温度検出部22、22−1−1乃至22−n−mと、ノズル列駆動部23、23−1−1乃至23−n−mと、ノズル列24、24−1−1乃至24−n−mと、を有する記録ユニット21、21−1乃至21−nを備える。なお、上記符号n、mは、共に2≦n、2≦mの整数で、nが記録ユニット21の個数に対応し、mがノズル列24の個数に対応する。
【0022】
また、画像記録装置1がカラー対応の画像記録部7を備える場合、記録ユニット21−1乃至21−nを、例えば記録媒体10の搬送方向に沿って、記録ユニットK(ブラック)21−1、記録ユニットC(シアン)21−2、記録ユニットM(マゼンタ)21−3、及び記録ユニットY(イエロ)21−4の順に配設する。
【0023】
図3は、記録ユニット21−1を例に記録ユニットの構成を説明する図である。なお、インクタンク19(19−1)へは適宜インク補給部13(13−1)からインクの補給が行われる。インク経路20(20−1)は、インクタンク19(19−1)から、記録ユニット21(21−1)の共通インク室25(25−1−1〜25−1−m)を通って、インクタンク19(19−1)に戻る循環経路である。
【0024】
インク循環部4(4−1)は、インク経路20(20−1)の経路中に配設され、制御部8の指令により駆動することで、インクを循環させる。なお、インク循環部4(4−1)は、例えばポンプで構成されている。
【0025】
インク温度調節部5(5−1)は、記録ユニット21の近傍のインク経路20(20−1)に接するように配置されている。インク温度調節部5(5−1)は、例えば前述のヒータや冷却ファンにより構成されている。インク温度検出部22−1−1乃至22−1−mは、対応する共通インク室25−1−1乃至25−1−m内に配置され、インク温度を検出し、検出情報を制御部8へ通知する。
【0026】
ノズル列駆動部23−1−1乃至23−1−mは、ノズル列24−1−1乃至24−1−mの個数に対応して記録ユニット21−1に配設させている。また、ノズル列駆動部23−1−1乃至23−1−mは、制御部8の指令により、ノズル列24−1−1乃至24−1−mが有する複数のノズルを駆動させてインク吐出を行わせる。
【0027】
また、ノズル列駆動部23−1−1乃至23−1−mは、制御部8の指令により、加温駆動ノズル範囲に設定されたノズルの内、非吐出ノズルに対してインク吐出が生じない程度の駆動信号を印加する。なお、本例においては、ノズル列24−1−1乃至24−1−mは、例えば複数のインク室内に貯えられたインクを、インク室毎に設けられた圧電素子(PZT)の変形による容積変化で吐出させる方式のものを用いて構成する。
【0028】
尚、上記説明では、記録ユニット21−1の例で説明したが、他の記録ユニット21−2乃至21−nにおいても、同様の構成である。
制御部8は、本実施形態に係る動作処理を含む画像記録装置1全体の統括制御を行う。制御部8は、制御機能及び演算機能を有する例えばMicro Processor Unit(MPU)と制御プログラムを記憶するRead Only Memory(ROM)やMPUのワークメモリとなるRandom Access Memory(RAM)等とからなる処理回路と、画像記録装置1の制御に関する設定値等を記憶しておく不挿発性メモリを少なくとも有する。
【0029】
制御部8は、各種の設定値等を予め記憶しておく記憶部31と、インク温度制御部32とを少なくとも備える。なお、制御部8では、記憶部31を例えば不揮発性メモリにより構成する。また、制御部8では、制御プログラムを例えばROMに予め記憶させておく構成とし、この制御プログラムをMPUに読み出させて実行させることにより、インク温度制御部32として機能させる。
【0030】
なお、記憶部31における不揮発性メモリには、媒体検出部3の検出位置から記録ユニット21の複数のノズル形成位置までの離間距離に対応する情報が記憶されており、具体的には前述の搬送情報生成部16におけるロータリエンコーダのパルス信号数の累積値に換算して予め記憶されている。例えば、記録ユニット21−1を例に説明すると、この離間距離に対応する情報は、記録媒体10の先端部が媒体検出部3の検出位置から記録ユニット21−1の複数のノズル形成位置まで搬送された際に搬送情報生成部16におけるロータリエンコーダが生成するパルス信号数の累積値になる。
【0031】
制御部8は、例えば搬送中の記録媒体10の先端部を検出したことで媒体検出部3が出力する検出情報をトリガとして、搬送情報生成部16におけるロータリエンコーダが生成するパルス信号数の累積を開始し、この累積値が、当該制御部8の不揮発性メモリに予め記憶させていた値である、記録ユニット21の複数のノズル形成位置に対応するパルス信号数の累積値と一致したとき、記録ユニット21を制御して記録処理を行わせる。制御部8によるこの制御により、搬送部6が記録媒体10を搬送する過程で、記録ユニット21の複数のノズルからインクが吐出されて記録媒体10上に記録処理が行われる。
【0032】
また、記憶部31には後述する単位時間当たりのインク吐出数Nに対する第1の加温駆動ノズル範囲のテーブル情報や、単位時間当たりのインク温度変化ΔTに対する第2の加温駆動ノズル範囲のテーブル情報も記憶されている。
【0033】
上位装置33は、本実施形態の画像記録装置1の外部機器として、例えばLocal Area Network(LAN)等を介して接続される。この上位装置33は、本実施形態の画像記録装置1に記録処理を行わせるユーザのコンピュータに相当し、本実施形態の画像記録装置1に対し、記録処理に関する情報としてジョブ情報を送信する。
【0034】
次に、画像記録装置1において行われる、規定電力Wを超えないように、規定温度Tc以下にインク温度を下げないためのインク温度制御部32が行うインク温度制御処理について説明する。
【0035】
図4は、インク温度とインク粘度の関係を模式的に示す図である。一般的にインク温度が下がると粘度が大きくなる。インク粘度はインクの吐出特性に影響を及ぼすため、良好な記録画像を得るためには、適正なインク温度範囲で画像記録を行う必要がある。本例において、記録可能温度範囲をTminからTmaxとする。記録を開始する際に、インク温度が記録可能温度範囲外の場合、インク温度制御部32は、インク温度調節部5を作動させることで、記録開始温度範囲であるTa以上かつTb以下に、インク温度を調節する必要がある。
【0036】
また、インク温度制御部32は、インク温度調節部5と併用して、ノズル列駆動部23により、ノズル列24に対して加温駆動することによって、インク温度を加温することも可能である。本例では、記録を開始した直後にインク温度が記録可能温度範囲外になってしまうことを防ぐ目的で、記録可能温度範囲の内側に記録開始温度範囲を設定している。これらの温度の大小関係は、Tmin ≦ Ta < Tb ≦ Tmaxであり、記録可能温度範囲と記録開始温度範囲が等しくてもよい。また、図示していないが、規定温度Tcは、Tmin < Tc < Tmax の関係にある。
【0037】
図5は、単位時間当たりのインク吐出数Nと第1の加温駆動ノズル範囲の関係を示した図である。第1の加温駆動ノズル範囲は、単位時間当たりのインク吐出数Nのとき、最大消費電力W以下になるように、定められた加温駆動ノズル範囲である。記憶部31は、図5に示す情報を予め記憶している。
【0038】
また、図6は単位時間当たりのインク温度変化ΔTと第2の加温駆動ノズル範囲の関係を示した図であり、ΔT1とΔT5との変化率の関係はΔT1>ΔT5である。第2の加温駆動ノズル範囲は、インク温度が規定温度Tc以下であり、かつ単位時間当たりのインク温度変化ΔTのとき、インク温度Tc以下ならないように、定められた加温駆動ノズル範囲である。すなわち、ΔT≧ΔT1の場合は温度変化率が一番大きいので、加温駆動のノズル範囲は、一番加温効果のあるL6となる。
記憶部31は、図6に示す情報を予め記憶している。なお、図5及び図6において、加温駆動ノズル範囲で説明したが、範囲ではなく加温駆動ノズル数としてもよい。
【0039】
図7は、インク温度制御部32により設定される加温駆動ノズル範囲とノズル列24の関係を模式的に示す図である。図7(a)は記録ユニット21が1つのノズル列で形成される場合を示しており、図7(b)は記録ニット21が6つのノズル列で形成されている場合を示している。例えば、図7(a)の場合、インク温度制御部32によって、加温駆動ノズル範囲がL3と設定された場合、ノズル列24−1のL3の範囲内の非吐出ノズルに対して、インク吐出が生じない程度の駆動信号を印加する。また、図7(b)の場合、インク温度制御部32によって、加温駆動ノズル範囲がL3と設定された場合、L3の範囲内(ノズル列24−1−1乃至24−1−3内)の非吐出ノズルに対して、インク吐出が生じない程度の駆動信号を印加する。
【0040】
次に、本実施形態のインク温度の制御方法について図8に示すフローチャートを用いて説明する。
制御部8は、先ず上位装置33から送信された印刷ジョブが有るか否か判断する(ステップ(以下、Sで示す)1)。ここで、上位装置33から印刷ジョブが送信されていない場合、上位装置33から印刷ジョブが送信されるのを待つ(S1がNO)。一方、上位装置33から印刷ジョブが送信されていれば(S1がYES)、画像記録装置1には印刷ジョブが入力しており、以下の処理を行う。
【0041】
すなわち、画像記録装置1はインク温度を制御するために以下の制御処理を行う。この制御処理は、前述の制御部8のROMに予め記憶させておいた制御プログラムをMPUが読み出して実行することにより実現されるものであり、制御部8はこの制御プログラムをMPUが実行することで、インク温度制御部32として機能する。
【0042】
先ず、制御部8はインク温度情報をインク温度検出部22−1−1乃至22−n−mから取得し、このインク温度情報が前述の記憶部31に記憶された記録開始温度範囲内(Ta〜Tb)であるか否か判断する(S2)。この判断はインク温度検出部22−1−1乃至22−n−mで取得した全てのインク温度情報が記憶部31に記憶された記録開始温度範囲内(Ta〜Tb)であるか否かを判断するものであり、インク温度検出部22−1−1乃至22−n−mから取得した全てのインク温度情報が記録開始温度範囲内(Ta〜Tb)である場合(S2がYES)、記録媒体10の搬送を開始し(S3)、記録媒体10への画像記録処理を開始する(S4)。
【0043】
一方、インク温度検出部22−1−1乃至22−n−mから取得したインク温度情報が記録開始温度範囲内(Ta〜Tb)ではない場合(S2がNO)、制御部8はインク温度調節部5に対してインクを加温若しくは冷却させる指示を行う(S5)。この指示により、インク温度調節部5はヒータ若しくは冷却ファンを使用してインク温度が記録開始温度範囲内(Ta〜Tb)になるように調節する。
【0044】
その後、インク温度が記録開始温度範囲(Ta〜Tb)に調整されると、上記のように記録媒体10の搬送を開始し(S3)、記録媒体10への画像記録処理を開始する(S4)。
【0045】
次に、上記記録処理を行っている間、全てのインク温度が記録可能温度範囲内(Tmin〜Tmax)であるか否か判断する(S6)。この判断は記憶部31に予め記憶させておいた上記記録可能温度範囲(Tmin〜Tmax)の情報を参照して行う。すなわち、制御部8はインク温度情報をインク温度検出部22−1−1乃至22−n−mから取得し、このインク温度情報が上記記録可能温度範囲内(Tmin〜Tmax)であるか否か判断し、インク温度検出部22−1−1乃至22−n−mから取得した全てのインク温度情報が記録可能温度範囲内(Tmin〜Tmax)でないと判断すると(S6がNO)、記録処理を停止し(S7)、記録媒体10の搬送処理を停止する(S8)。そして、前述の処理(S5、S2〜S4、S6)を行い、判断(S6)がYESになるまで上記処理を繰り返す。
【0046】
一方、インク温度検出部22−1−1乃至22−n−mから取得した全てのインク温度情報が記録可能温度範囲内(Tmin〜Tmax)であると判断すると(S6がYES)、次に全てのインク温度情報が規定温度Tb以下であるか否か判断する(S9)。このインク温度Tbは前述のように、記録開始温度の上限値であり、全てのインク温度情報がTb以下ではない場合(S9がNO)、インク温度を冷却する(S10)。一方、全てのインク温度情報がTb以下である場合(S9がYES)、記録処理を継続できるインク温度であり、判断(S11)に移行する。
【0047】
判断(S11)は、インク温度が規定温度Tc以上であるか否かを判断する処理である。この規定温度Tcは、記録開始温度の下限値であるTaに近い温度であり、インク温度が規定温度Tc以上である場合、画像記録処理に最適なインク温度である。但し、この場合、前の処理においてインク温度が記録開始温度の上限値Tb以下であることが条件であることは勿論である。
【0048】
したがって、インク温度が規定温度Tc以上である場合(S11がYES)、画像記録処理を継続する。一方、インク温度が規定温度Tc以下である場合(S11がNO)、上位装置33から転送される画像データの単位時間当たりのインク吐出数Nを算出し(S12)、この単位時間当たりのインク吐出数Nと、予め記憶部31に記憶しておいた、図5に示す加温駆動ノズル範囲のテーブルから第1の加温駆動ノズル範囲を決定する(S13)。
【0049】
前述のように、図5に示すテーブルは最大消費電力がW以下になるように単位時間当たりのインク吐出数Nに対する加温駆動ノズル範囲が設定されており、このテーブルに従って単位時間当たりのインク吐出数Nに対する加温駆動ノズル範囲を設定することによって、最大消費電力Wを維持しつつインクの加温駆動を行う。
【0050】
さらに、制御部8は単位時間当たりのインク温度変化量ΔTと、予め記憶部31に記憶させた、前述の図6に示すテーブルを参照して、第2の加温駆動ノズル範囲を決定する(S14)。すなわち、単位時間当たりのインク温度変化量ΔTと第2の加温駆動ノズル範囲の関係を示したテーブルをもとに、第2の加温駆動ノズル数範囲を決定し、第1と第2の加温駆動ノズル範囲を比較し、小さい方の加温駆動ノズル範囲内の非吐出ノズルに対して加温駆動を行う(S15)。
【0051】
以上のようにして、本例ではインク温度が規定温度Tc以下である場合、第1の加温駆動ノズル範囲、又は第2の加温駆動ノズル範囲の中で、非吐出ノズルに対して加温駆動を行い、インク温度制御を行う構成である。なお、上記例では第1の加温駆動ノズル範囲、及び第2の加温駆動ノズル範囲の小さい方のノズル範囲の非吐出ノズルに対して加温駆動を行ったが、処理(S12、S13)のみを行い、第1の加温駆動ノズル範囲のみを使用するように構成してもよく、又処理(S14)のみを行い、第2の加温駆動ノズル範囲のみを使用するように構成してもよい。
【0052】
その後、記録処理が終了したか否か判断し(S16)、記録処理が全て終了したと判断した場合(S16がYES)、後続ジョブが有るか更に判断し(S17)、後続ジョブも無ければ(S17がNO)、記録媒体10の搬送を停止する(S18)。一方、記録処理が全て終了していない場合(S16がNO)、処理(S6)に戻ってインク温度の制御処理を継続し、後続ジョブが有る場合には(S17がYES)、後続ジョブに対して同様のインク温度の制御処理を行う。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る画像記録装置1によれば、不必要な電力を消費することなく、また不必要にインク温度を上昇させることなく、記録中にインク温度が記録動作可能温度より低下してしまうことによるスループットの低下や記録品質の劣化を回避することができる。
【0054】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、本発明は、前述した実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明をなすことができる。例えば本発明は、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良いし、更には各実施形態の異なる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 画像記録装置
2 給送部
3 記録媒体検出部
4 インク循環部
5 インク温度調節部
6 搬送部
7 画像記録部
8 制御部
10 記録媒体
11 給送トレイ
12 給送機構
12a ピックアップローラ
12b レジストレーションローラ対
13,13−1乃至13−n インク補給部
14a 駆動ローラ
14b 従動ローラ
15 搬送部材
16 搬送情報生成部
17 搬送駆動部
19,19−1乃至19−n インクタンク
21,21−1乃至21−n 記録ユニット
22,22−1−1乃至22−n−m インク温度検出部
23,23−1−1乃至23−n−m ノズル列駆動部
24,24−1−1乃至24−n−m ノズル列
25,25−1−1乃至25−n−m 共通インク室
31 記憶部
32 インク温度制御部
33 上位装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送部と、複数のノズルによって形成されたノズル列を前記記録媒体の搬送方向に対して直交する方向に複数配設して成る少なくとも1つの記録ユニットとを有し、前記搬送部が前記記録媒体を搬送する過程で前記複数のノズルから画像データに基づいてインクを吐出させて前記記録媒体上に記録処理を行う画像記録装置において、
前記インクの温度を検出するインク温度検出部と、
前記検出されたインク温度と、予め定められた規定温度とを比較判断するインク温度比較部を有するインク温度制御部とを備え、
該インク温度制御部は、前記インク温度比較部の比較結果に基づき、非記録ノズルに対してインク吐出が生じない程度の駆動信号を印加する加温駆動ノズル範囲を決定し、
記録動作中に、前記加温駆動ノズル範囲内の非記録ノズルに対してインク吐出が生じない程度の駆動信号を印加することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記インク温度制御部は、予め設定された規定電力を超えないように決定される第1の加温駆動ノズル範囲を設定することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記インク温度制御部は、予め設定された規定電力を超えないように決定され、前記インク温度と単位時間当たりのインク温度変化量により決定される第2の加温駆動ノズル範囲を設定することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記インク温度制御部は、予め設定された規定電力を超えないように決定される第1の加温駆動ノズル範囲と、前記インク温度と単位時間当たりのインク温度変化量により決定される第2の加温駆動ノズル範囲とを備え、前記インク温度制御部は前記第1の加温駆動ノズル範囲と前記第2の加温駆動ノズル範囲とを比較し、前記範囲の小さい方を加温駆動ノズル範囲に決定することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記インク温度制御部は、前記画像データから単位時間当たりのインク吐出数を求め、予め設定された消費電力に基づく単位時間当たりのインク吐出数と前記加温駆動ノズル範囲の関係を示したテーブルを参照することにより、前記第1の加温駆動ノズル範囲を決定することを特徴とする請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記インク温度制御部は、単位時間当たりのインク温度変化量と加温ノズル数範囲の関係を示したテーブルを参照することにより、前記第2の加温駆動ノズル範囲を決定することを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記記録ユニットに接続されるインク経路内にインク循環機能を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記ノズルは、圧電素子の容積変化によってインク吐出を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記インク温度制御部は、前記加温駆動ノズル範囲の代わりに、加温駆動するノズル数を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項10】
記録媒体を搬送する搬送部と、複数のノズルによって形成されたノズル列を前記記録媒体の搬送方向に対して直交する方向に複数配設して成る少なくとも1つの記録ユニットとを有し、前記搬送部が前記記録媒体を搬送する過程で前記複数のノズルから画像データに基づいてインクを吐出させて前記記録媒体上に記録処理を行う画像記録装置のインク温度制御方法において、
前記インクの温度を検出するインク温度検出処理と、
前記検出されたインク温度と、予め定められた規定温度とを比較判断するインク温度比較処理を含むインク温度制御処理とを行い、
該インク温度制御処理は、前記インク温度比較処理の比較結果に基づき、非記録ノズルに対してインク吐出が生じない程度の駆動信号を印加する加温駆動ノズル範囲を決定し、
記録動作中に、前記加温駆動ノズル範囲内の非記録ノズルに対してインク吐出が生じない程度の駆動信号を印加することを特徴とする画像記録装置の制御方法。
【請求項11】
前記インク温度制御処理は、予め設定された規定電力を超えないように決定される第1の加温駆動ノズル範囲と、前記インク温度と単位時間当たりのインク温度変化量により決定される第2の加温駆動ノズル範囲とを設定し、前記インク温度制御処理は前記第1の加温駆動ノズル範囲と前記第2の加温駆動ノズル範囲とを比較し、前記範囲の小さい方を加温駆動ノズル範囲に決定することを特徴とする請求項10に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項12】
前記インク温度制御処理は、前記画像データから単位時間当たりのインク吐出数を求め、予め設定された消費電力に基づく単位時間当たりのインク吐出数と前記加温駆動ノズル範囲の関係を示したテーブルを参照することにより、前記加温駆動ノズル範囲を決定することを特徴とする請求項10に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項13】
前記インク温度制御処理は、単位時間当たりのインク温度変化量と加温ノズル数範囲の関係を示したテーブルを参照することにより、前記第2の加温駆動ノズル範囲を決定することを特徴とする請求項11に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項14】
前記インク温度制御処理は、前記加温駆動ノズル範囲の代わりに、加温駆動するノズル数を決定することを特徴とする請求項10に記載の画像記録装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−274489(P2010−274489A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128173(P2009−128173)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】