説明

画像記録装置及び画像記録装置のインク温度制御方法

【課題】画像記録時の消費電力の増加を抑えると共に、画像記録時に画像記録に最適なインク温度に制御することができる画像記録装置及び画像記録装置のインク温度制御方法を提供する。
【解決手段】記録データに基づいてインクを吐出し、記録媒体に画像を記録する画像記録装置であって、上記記録データに基づく記憶媒体へのインク吐出率を解析する記録データ解析部と、上記インクの温度を検出するインク温度検出部と、記憶媒体へのインク吐出率と上記インク温度に基づいて、インクを加温し、又はインクを冷却し、インクの温度を画像記録最適温度に調整する制御部と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙やフィルム等の記録媒体に画像を記録する画像記録装置に関し、特に画像記録装置に使用するインク温度を制御する画像記録装置及び画像記録装置のインク温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録装置として、例えばインクジェット方式のフルライン型のカラープリンタ装置が知られている。このような画像記録装置では、記録媒体が搬送される搬送方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に、インク吐出のための複数のノズルを形成した記録ヘッドが、副走査方向に離間して、インク色毎に配設されている。そして、画像記録を行う記録媒体を記録ヘッドに備えている複数のノズルに対向配置させ、ノズルから各色のインクを記録媒体に吐出させることによって、文字や画像を記録する。
【0003】
このような画像記録装置に使用されるインクは、温度によって粘性が変化するため、インク温度の違いで、インク滴の形状や吐出量が異なる。インク滴の形状や吐出量のばらつきは、インクの粘性変化が小さい場合には殆ど問題にならない。しかし、インクの粘性変化が大きい場合には、記録媒体上に記録処理された画像の記録品質が劣化し、例えば濃度ムラや色差が目立つようになる。
【0004】
また、インク温度が記録処理可能な所定の温度範囲外であると、ノズルからのインクの吐出が不安定となり、ノズルから吐出されて記録媒体に着弾して定着する主インク滴の他に、想定されない小さなインク滴や、インクが噴霧状に吐出される状態となったインクミストなどが発生し、画像記録装置の内部を汚す。
【0005】
さらに、例えばインクの温度が所定の温度範囲よりも上昇し過ぎた場合、インクの物性が変化することもある。そのため、このような画像記録装置では、ノズルからのインク吐出を安定化させるため、インク温度を所定の温度範囲内に調整する必要がある。
【0006】
例えば、特許文献1には、インクジェットプリンタのインク温度調整方法が開示されている。この特許文献1の技術によれば、印刷時に印字信号が印加されるノズル(使用ノズル)に対しては、インク温度制御用のプレヒートパルスを含んだ駆動信号を印加し、印字信号が印加されないノズル(不使用ノズル)に対しては、インクが吐出しない程度の駆動パルスを印加することによってヘッド内温度分布の偏りを軽減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−156256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術では、使用ノズル及び不使用ノズルの全てを駆動するため、インク吐出を行うノズルのみを駆動する通常の画像記録処理に比べて消費電力が増加する。特に、複数ヘッド又は複数色で同時に駆動を行う場合には消費電力の増加が顕著となり、電源容量を増加する必要があり、装置のコストアップの原因となる。
【0009】
そこで、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、記録データから解析したインク吐出率やインク温度をもとに、インク加温のためにインクを吐出しない程度の駆動を行うノズルを選択することによって、画像記録時の消費電力の増加を抑えると共に、インク温度を最適な温度に制御する画像記録装置及び画像記録装置のインク温度制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の態様のひとつである画像記録装置は、記録データに基づいてインクを吐出し、記録媒体に画像を記録する画像記録装置であって、上記記録データに基づく記憶媒体へのインク吐出率を解析する記録データ解析部と、インクの温度を検出するインク温度検出部と、上記記憶媒体へのインク吐出率とインク温度に基づいて、インクを加温し、又はインクを冷却し、インクの温度を画像記録最適温度に調整する制御部と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の別の態様のひとつである画像記録装置のインク温度制御方法は、記録データに基づいてインクを吐出し、記録媒体に画像を記録する画像記録装置の制御方法であって、上記記録データに基づく記憶媒体へのインク吐出率を解析する記録データ解析処理と、インクの温度を検出するインク温度検出処理と、上記記憶媒体へのインク吐出率とインク温度に基づいて、インクを加温し、又はインクを冷却し、インクの温度を画像記録最適温度に調整するインク温度制御処理と、を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、画像記録時の消費電力の増加を抑え、インク温度を画像記録に最適な温度に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る画像記録装置の概念図である。
【図2】本実施形態に係る画像記録装置における給送部、搬送機構、画像記録部、及び回収部の配置例を示す図である。
【図3】本実施形態の処理動作を説明するフローチャート。
【図4】本実施形態の処理を説明する図であり、記録色が1色である場合の例を説明する図である。
【図5】インク温度と加温不要インク吐出率Dtとの関係を示すテーブルである。
【図6】本実施形態の処理を説明する図であり、記録色が2色である場合の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る画像記録装置の概念図である。また、図2は、本実施形態に係る画像記録装置における給送部、搬送機構、画像記録部、及び回収部の配置例を示す図である。尚、両図において、記録ヘッドにインクを補給するインク補給部や、記録ヘッドの回復処理を行う回復部等の通常の画像記録装置が備えられている構成は図示を省略している。
【0015】
本実施形態の画像記録装置1は、記録媒体を給送する給送部2、給送部2から受け渡された記録媒体を搬送する搬送機構3、記録媒体に画像を記録する画像記録部4、画像記録された記録媒体を排出格納する回収部5、画像記録装置1全体の制御を行う制御部6で構成されている。また、本実施形態の画像記録装置1は、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4種類の色のインクを使用して記録媒体に画像記録を行なう。
【0016】
給送部2は、シート状の記録媒体8を収容する給送トレイ2a、給送トレイ2aに収容された最上面の記録媒体8に当接して1枚ずつ取り出し、搬送機構3に受け渡す給送駆動部2b、給送された記録媒体8を検知する給送媒体検出部2cで構成されている。
給送トレイ2aは、所謂給送カセットで構成され、給送駆動部2bは、例えば給送ローラで構成されている。また、給送媒体検出部2cは、例えば光学式の透過型センサや、光学式の反射型センサ、静電容量型センサ等で構成され、給紙される記録媒体8の先端を検出する。
【0017】
搬送機構3は、図2に示すように、搬送面が複数の記録ヘッド17のインク吐出口に対向して設けられている。搬送機構3のフレーム内には、副走査方向に離間して駆動ローラ9、従動ローラA10、及び従動ローラB14、駆動ローラ9を回転させる搬送駆動部11が配置され、上記駆動ローラ9、従動ローラA10、及び従動ローラB14には無端の搬送ベルト12が回転可能に架設されている。また、搬送機構3のフレーム内には、搬送情報生成部13、及び不図示の吸引ファンが設けられている。搬送情報生成部13は、記録ヘッドよりも搬送方向上流で従動ローラA10の同軸に設けられている。搬送情報生成部13は、例えばエンコーダを備えており、搬送ベルト12の回転状態を検出し、搬送タイミング等の搬送情報として、エンコーダパルスを生成する。尚、不図示の吸引ファンには負圧を発生させ、搬送ベルト12上に記録媒体8を吸着させて搬送する。
【0018】
画像記録部4は、記録ヘッド駆動部16、記録ヘッド17、及びインク温度検出部18で構成され、記録媒体8が搬送経路を搬送される過程で、複数のノズルを有する記録ヘッド17−1至乃17−4から記録媒体8にインクを吐出して記録処理を行う。なお、1色当たりの記録ヘッド17が複数で構成される場合には、記録ヘッド駆動部16、及びインク温度検出部18も、記録ヘッド17と同じ数で構成される。
【0019】
記録ヘッド駆動部16は、制御部6からの記録データに基づく制御信号により、記録ヘッド17の各ノズルを個々に駆動する駆動信号を記録ヘッド17に出力する。記録ヘッド17はインクを吐出する複数のノズルが直線的に、且つ設計に基づく最大記録媒体幅を越える長さに配列され、駆動信号により当該ノズルを個々に吐出制御可能な構成である。
【0020】
インク温度検出部18は、記録ヘッド17内のインク温度を検出するものであり、例えばサーミスタで構成されている。
回収部5は収納トレイ19a、排出駆動部19b、及び排出媒体検出部19cを備えている。収納トレイ19aは、排出された記録媒体8を収容する容器であり、所謂トレイ等で構成される。
【0021】
排出駆動部19bは、搬送機構3により搬送された記録媒体8を排出するものであり、例えば排出ローラで構成される。また、排出媒体検出部19cは、例えば光学式の透過型センサや、光学式の反射型センサ、静電容量型センサ等で構成され、排出された記録媒体8の後端を検出する。なお、排出媒体検出部19cが、記録媒体8の先端を検出するように構成してもよい。
【0022】
制御部6は、制御機能及び演算機能を有するMPU(Micro Processor Unit:演算処理装置)からなる図示しない処理回路と、制御プログラムを格納すると共に、装置の制御に関する設定値等を保存する図示しない不揮発性メモリと、画像記録情報を一時的に記憶する例えばRAM(Random Access Memory)である記憶部21と、を有している。制御部6は、MPUが制御プログラムを不揮発性メモリから読み出して実行することにより、画像記録装置1の各構成要素の制御を行う。このとき、制御部6は、インク温度制御部22、及び記録データ解析部23としても機能する。
【0023】
なお、MPUに制御プログラムを実行させることで制御部6をインク温度制御部22、及び記録データ解析部23として機能させる代わりに、MPUによって制御される信号処理回路(ハードウェア)としてインク温度制御部22、及び記録データ解析部23を構成してもよい。
【0024】
また、制御部6は、給送部2、搬送機構3、画像記録部4、及び回収部5をそれぞれ制御し、記録媒体8への記録処理を行わせる。
インク温度制御部22は、前述のインク温度検出部18によって検出されたインク温度に応じて、記録ヘッド17内のインク温度を制御する。例えば、インク温度検出部18によって検出された温度が、記録品質を保つ最低温度より低いとき、インク温度制御部22は、インクを吐出しない程度の駆動信号を記録ヘッド駆動部16に通知する。記録ヘッド駆動部16は、通知された駆動信号に基づいて記録ヘッド17のノズルをインクが吐出しない程度に駆動する。なお、この動作をインク加温動作で示し、このインク加温動作によって、記録ヘッド17、及び記録ヘッド17内のインクを加温し、インク温度を上昇させる。
【0025】
逆に、インク温度検出部18で検出した温度が、記録品質を保つ最高温度より高いとき、インク温度制御部22は、図示しないインク冷却部を駆動する。なお、この動作をインク冷却動作で示し、このインク冷却動作によって、記録ヘッド17、及び記録ヘッド17内のインク温度を低下させる。
【0026】
なお、インク温度検出部18で検出したインク温度に応じてインク加温動作、またはインク冷却動作のいずれかを行なうことをインク温度調整動作という。
一方、上位装置24は、本実施形態に係る画像記録装置1の外部機器として、例えばLAN(Local Area Network)等を介して画像記録装置1に接続されている。この上位装置24は、本実施形態に係る画像記録装置1に記録処理を行わせるユーザによって操作されるコンピュータに相当し、本実施形態に係る画像記録装置1に対し、記録処理に関する情報としてジョブ情報を通知する。
【0027】
このジョブ情報には、記録媒体8に画像記録処理を行う際の記録データ、使用する記録ヘッド17の色情報、記録媒体8のサイズ、記録媒体8に記録処理を行う際の主走査方向、及び副走査方向における余白値の指定情報、記録処理を行う記録媒体8の枚数指定情報等の各種情報を含む。制御部6は、上位装置24から通知されたジョブ情報を受け取ると、このジョブ情報を画像記録情報として記憶部21に記憶する。
【0028】
記録データ解析部23は、記憶部21に記憶されたジョブ情報に含まれる記録データに基づいて、各色1ページのインク吐出率を算出する。記録データにはインクを吐出することを示す情報(以下、インク吐出情報で示す)、又はインクを吐出しないことを示す情報(以下、インク不吐出情報で示す)のそれぞれが含まれており、それらの情報を基に、記録媒体8上に適宜インクを吐出して画像記録を行う。なお、ここで言うインク吐出率とは、上記インク吐出情報とインク不吐出情報の割合であり、インク吐出率が高いほど、1ページ内で駆動されるノズル数が多くなる。このインク吐出率の情報は、インク温度を制御するために使用する。
【0029】
なお、本実施形態において、制御部6の不揮発性メモリから制御部6のMPUに所定の制御プログラムを読み出させて実行させることにより、制御部6はインク温度制御部22として機能する。同様に、制御部6の不揮発性メモリから制御部6のMPUに所定の制御プログラムを読み出させて実行させることにより、制御部6は記録データ解析部23として機能する。
【0030】
以上の画像記録装置1の構成において、以下に上記上位装置24から送信される印刷データに基づいて記録媒体8への記録処理を説明する。
上位装置24から印刷データを含むジョブ情報が送信されると、制御部6は搬送機構3の搬送駆動部11を制御して駆動ローラ9を回動させ、搬送ベルト12を図2に示す矢印方向に回転させる。さらに、制御部6は給送部2を制御して、給送トレイ2aから記録媒体8を1枚ずつ給送駆動部2bにピックアップさせ、搬送機構3側に給紙する。
【0031】
その後、記録媒体8の先端が、給送部2の下流側にある給送媒体検出部2cに検出されると、給送媒体検出部2cからエッジ信号が出力される。このエッジ信号を制御部6が受信し、当該エッジ信号を、記録処理タイミングを生成するためのトリガ信号として利用し、記録処理を進める。その後、記録媒体8は搬送ベルト12に吸着されながら画像記録部4の直下を搬送される。
【0032】
ところで、搬送情報生成部13で生成されるエンコーダパルス信号は搬送情報であるが、記録ヘッド17により画像記録される際の同期信号としてもこの信号は用いられる。制御部6は、ノズルからのインクの吐出を開始するタイミングをパルス数として予め不揮発性メモリで記憶している。制御部6は、このパルス数が、搬送情報生成部13により生成されたエンコーダパルスと一致したタイミングで画像記録部4を制御して、搬送ベルト12上に吸着されている記録媒体8へ、記録ヘッド17のノズルよりインクを吐出させる。
【0033】
このようにして記録処理がされた記録媒体8は、搬送機構3の下流側に設けられた排出駆動部19bに挟持されて下流側に搬送される。その後、記録媒体8の後端部が排出媒体検出部19cによりエッジ検出が行なわれ、収納トレイ19aに排出される。
【0034】
次に、本実施形態におけるインク温度の制御について説明する。
画像記録装置1に使用されるインクは、温度によって粘性が変化し、インク温度の違いによって、インク滴の形状や吐出量が異なり、記録品質に影響を与えることについては前述の通りである。このため、画像記録に適したインク温度域にて画像記録を行なう必要がある。
【0035】
本実施形態では、記録品質を保持できるインク最低温度を画像記録可能最低温度Tpminとし、記録品質を保持できるインク最高温度を画像記録可能最高温度Tpmaxとし、画像記録可能最低温度Tpminと画像記録可能最高温度Tpmaxの中間値を画像記録最適温度Tpとし、上記Tpmin〜Tpmaxのインク温度範囲を画像記録可能温度域とし、インク温度を制御するものである。
【0036】
先ず、画像記録装置1を起動し、インク温度検出部18からのインク温度の情報に基づいてインク温度調整動作を行なう。例えば、インク温度検出部18で取得したインク温度Tが画像記録可能最低温度Tpminに近づくまでは、インクを加温する必要がある。この場合、制御部6は、インクを加温するため、前述のインク加温動作を実行し、インク温度Tを画像記録最適温度Tpに近づける。
【0037】
また、インク温度検出部18で取得したインク温度Tが画像記録可能最高温度Tpmaxに近づいた場合、又は画像記録可能最高温度Tpmaxより高い場合、インクを冷却する必要がある。この場合、制御部6は、インクを冷却するため、前述のようにインク冷却動作を実行し、インク温度Tを画像記録最適温度Tpに近づける。
【0038】
本実施形態の画像記憶装置1においては、上記のようにインク温度が画像記録可能温度域になるように、先ずインク温度調整動作を実行する。
次に、画像記録装置1が画像記録処理中に行うインク温度制御について説明する。
画像記録装置1の周辺温度がインクの画像記録可能温度域であれば、特に記録ヘッド17内のインク温度に影響はないが、例えば画像記録装置1の周辺温度がインクの画像記録可能温度域より下、つまり低温環境である場合には、記録ヘッド17内のインクは冷やされることになる。
【0039】
記録データはインク吐出情報又はインク不吐出情報であり、インクを吐出するノズルとインクを吐出しないノズルがある。記録ヘッド17のノズルは、インクを吐出する際の駆動によって熱エネルギーが発生し、結果としてインクを加温することになる。そのため、インクを吐出するノズル数が多いと、よりインクが加温されることになる。
このため、インク吐出率が高い色のインクは、加温されて画像記録可能温度域を保つことができるが、インク吐出率が低い色のインクは、十分な加温効果が得られず、画像記録可能最低温度Tpminを下回る可能性もある。
【0040】
そこで、画像記録中においても、記録データ解析部23において記録データを解析した結果、インク吐出率が低い色については、該当色の記録ヘッド17において、インクが吐出しない程度に駆動することで、インクを加温することができる。以後、これを画像記録時インク加温動作で示す。
【0041】
なお、画像記録装置1の周辺温度がインクの画像記録可能温度域より高い場合や、インク吐出率が高く、画像記録による記録ヘッド17のノズル駆動により、インク温度が画像記録可能最高温度Tpmaxに近づいてきた場合には、インクを吐出しないノズルは駆動させずにインク冷却動作を実行する。
【0042】
図3は、上記処理を説明するフローチャートであり、不揮発性メモリに予め格納しておいた制御プログラムをMPUが読み出して実行することにより実現されるものである。制御部6は、この制御プログラムをMPUが実行することで、インク温度制御部22、及び記録データ解析部23として機能する。
【0043】
先ず、制御部6は上位装置24からジョブ情報が通知されると、記録データ解析部23にて1ページ毎のインク吐出率を算出する(ステップ(以下、Sで示す)1)。
次に、制御部6はインク温度が画像記録最適温度Tp以下であるか判断する(S2)。具体的には、画像記録部4のインク温度検出部18が検出するインク温度の情報を読み出し、前述の画像記録最適温度Tpと比較する。
【0044】
ここで、インク温度が画像記録最適温度Tpより高ければ(S2がNO)、インク温度制御部22がインク冷却動作停止中であるか判断し(S3)、インク冷却動作停止中であれば(S3がYES)、インク冷却動作を開始する(S4)。すなわち、インク温度が画像記録最適温度Tpより高温であると、画像記録動作によりインク温度が画像記録可能最高温度Tpmaxに近づくので、インクを吐出しないノズルは駆動させずにインク冷却動作を実行する。したがって、この時インク冷却動作停止中でなければ(S3がNO)、インク温度制御部22のインク冷却動作を維持させる。
【0045】
一方、インク温度が画像記録最適温度Tp以下であれば(S2がYES)、更にインク吐出率が所定値以下であるか判断する(S5)。ここで、インク吐出率が所定値より大きければ(S5がNO)、画像記録時インク加温動作を実行中であるか判断し(S6)、インク加温動作実行中であれば(S6がYES)、インク加温動作を停止させる(S7)。すなわち、インク吐出率が所定値より大きいと、インクが加温されて前述のように画像記録可能温度域を保持できるのでインク加温動作を停止させる。したがって、この時インク加温動作実行中でなければ(S6がNO)、インク温度制御部22による上記制御状態を維持させる。
【0046】
次に、上記判断(S5)において、インク吐出率が所定値以下であれば(S5がYES)、更にインク吐出率が最終ページまで全て0%であるか判断する(S8)。すなわち、インク吐出率が最終ページまで全て0%であれば(S8がYES)、以後画像記録部4による記録処理が行なわれる可能性がないので、画像記録時インク加温動作を実行中であるか判断し(S6)、画像記録時インク加温動作実行中であれば(S6がYES)、画像記録時インク加温動作を停止させる(S7)。
【0047】
一方、インク吐出率が最終ページまで全て0%でなければ(S8がNO)、画像記録時インク加温動作が停止中であるか判断し(S9)、画像記録時インク加温動作停止中であれば(S9がYES)、画像記録時インク加温動作を開始させる(S10)。すなわち、この場合インク吐出率が所定値以下であり、前述のようにインク吐出率が低い色のインクには、十分な加温効果が得られず、画像記録可能最低温度Tpminを下回る可能性があるので画像記録時インク加温動作を行なわせる。したがって、この時画像記録時インク加温動作停止中でなければ(S9がNO)、インク温度制御部22の画像記録時インク加温動作を維持させる。
【0048】
その後、上記処理を繰り返し、インク温度を画像記録可能最低温度Tpmin〜画像記録可能最高温度Tpmaxに保持しつつ記録処理を継続し(S11がNO、S2〜S11)、画像記録処理が終了すると(S11がYES)、インク温度の制御処理を終了する。
次に、本実施形態における画像記録中のインク温度制御での消費電力の抑制について説明する。
【0049】
前述のように、インク吐出率が低い色については、該当色の記録ヘッド17内のインク吐出しないノズルを、インクが吐出しない程度に駆動し、インクを加温することを説明した。しかし、この場合記録ヘッド17内の全ノズルが駆動することになり、消費電力は大きくなる。特に、フルカラー記録の場合、消費電力が大きくなる。例えば、4色を使用したフルカラー記録の場合、画像記録時にインク加温動作のため、記録ヘッド17内の全ノズルを駆動することになり、最も消費電力が大きくなる。
【0050】
そこで、インク吐出率に応じて画像記録時のインク加温動作を切り換えて駆動する。すなわち、記録データ解析部23において記録データを解析した結果、インク吐出率が高ければ、画像記録によるノズル駆動にてインクが十分に加温される。したがって、画像記憶時のインク加温動作を実行しないようにする。逆に、記録データ解析部23において記録データを解析した結果、インク吐出率が低ければ、画像記録によるノズル駆動だけではインク加温が不十分となるため、インク吐出率が低い色の記録ヘッド17については、インク吐出しない程度に駆動を行う。このように制御することによって、不必要なインク加温のノズル駆動を抑えることができ、画像記録装置1全体での消費電力を抑えることができる。
【0051】
図4は上記処理を説明する図であり、例えば1色のみの画像記録時におけるインク加温動作を説明する。同図に示す説明では、5ページの画像記録を行っており、インク吐出率が、1ページ目から順に、例えば50%、30%、80%、20%、40%の例である。
また、同図において、画像記録の際のノズル駆動によってインクが十分に加温することができるインク吐出率を加温不要インク吐出率Dtとする。
【0052】
ここで、加温不要インク吐出率Dtは、インク温度に応じて変更する。例えばインク温度が前述の画像記録可能最低温度Tpminに近い温度であれば100%に近い値とし、インク加温で駆動させるノズル数を増やし、加温し易く制御し、インク温度を画像記録最適温度Tpに早めに近づける。一方、インク温度が画像記録最適温度Tpに近い温度(ただし、インク温度は画像記録最適温度Tp未満)であれば0%に近い値とし、インク加温で駆動させるノズル数を減らし、あまり加温しないように制御し、インク温度が画像記録最適温度Tpを超えないように制御する。
【0053】
上記条件に基づいて、例えば加温不要インク吐出率Dtが70%に設定された場合について、図4に示す例を説明する。先ず、1ページ目の場合、画像記録動作におけるインク吐出率は50%であり、加温不要インク吐出率Dtが上記のように70%に設定されているから、不足する20(70−50)%を上記インク加温動作によって補う。また、2ページ目の場合、画像記録動作におけるインク吐出率は30%であり、加温不要インク吐出率Dtが70%であるから、不足する40(70−30)%を上記インク加温動作によって補う。また、3ページ目の場合、画像記録動作におけるインク吐出率は80%であり、加温不要インク吐出率Dtが70%であるからから、インク加温動作は行なわない。
【0054】
以下同様に、4ページ目の場合、画像記録動作におけるインク吐出率は20%であり、不足する50(70−20)%を上記インク加温動作によって補い、5ページ目の場合、画像記録動作におけるインク吐出率は40%であり、不足する30(70−40)%を上記インク加温動作によって補う。
【0055】
以上のようにインク温度を制御することにより、不必要なインク加温動作を行なうことがなく、インク温度を制御する際の消費電力を抑えることができる。
【0056】
図5はインク温度と加温不要インク吐出率Dtとの関係を示すテーブルである。同図に示す例は、画像記録可能最低温度Tpminから画像記録最適温度Tpまでを複数のインク温度域で区切り、それぞれのインク温度域に対して加温不要インク吐出率Dt1〜Dt4を設定したものである。なお、各インク温度域に対する加温不要インク吐出率Dt1〜Dt4は、インクの温度特性、例えば加温に対するインク温度上昇度などのデータに基づいて予め、設定することができる。
【0057】
なお、図5に示したテーブルは、記憶部21に予め登録される。制御部6は、画像記録動作時、インク加温動作を実行する際、インク温度に応じて、記憶部21に登録された上記テーブルから、最適な加温不要インク吐出率Dtを選択して使用する。
また、加温不要インク吐出率Dtは、色ごとに異なる値に設定してもよい。さらに、図5では、インク温度域を4区分としているが、4区分に限定されるものではない。
【0058】
なお、図4に示す例では、各ページの記録動作タイミングに合わせて、画像記録時インク加温動作を実行している。そのため、記録動作を実行していないタイミング、所謂逐次搬送される記録媒体と記憶媒体との間隔(ページ間ギャップ)では、同様に画像記録時インク加温動作も実行していない。
【0059】
図6は、例えば2色での画像記録時におけるインク加温動作を説明する。
この場合も、5ページの画像記録を行なう例であり、記録色1のインク吐出率が、1ページ目から順に、例えば前述と同じ50%、30%、80%、20%、40%であり、記録色2のインク吐出率が、1ページ目から順に、例えば0%、0%、30%、50%、0%である。
【0060】
したがって、記録色1の場合、上記と同様1ページ目では不足する20%を上記インク加温動作によって補い、2ページ目では不足する40%をインク加温動作によって補い、3ページ目ではインク加温動作を行なわず、4ページ目では不足する50%をインク加温動作によって補い、5ページ目では不足する30%をインク加温動作によって補う。
【0061】
一方、記録色2の場合、1ページ目では不足する70(70−0)%を上記インク加温動作によって補い、2ページ目でも同様に不足する70%をインク加温動作によって補い、3ページ目では不足する40(70−30)%をインク加温動作によって補い、4ページ目では不足する20(70−50)%をインク加温動作によって補い、5ページ目ではインク加温動作を行なわない。
【0062】
このようにインク温度を制御することにより、不必要なインク加温動作を行なうことがなく、インク温度を制御する際の消費電力を抑えることができる。また、最後の5ページ目においてインク加温動作を行なわない理由は、記録色2による画像記録が行なわれないため、インク加温動作も行なわず、更に消費電力を抑える構成である。
【0063】
また、記録色2においては、3ページ目から画像記録を行なうが、1ページ目からインク加温動作を実行することで、インク温度を画像記録可能温度域に維持することができる。
【0064】
なお、上記処理において、画像記録に使用しない色があれば、その色に対してはインク温度調整動作を実行しないということもできる。例えば、記録データ解析部23にて該当ジョブのインク吐出率を算出した際、シアン、イエローのインク吐出率が全ページにおいて0%の場合、シアン、イエローの記録ヘッドからはインク吐出されないので、画像記録結果には影響を与えない。この場合、シアン、イエローの各インク温度は無視でき、温度制御を実行することなく、消費電力を更に抑えることができる。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、画像記録時のインク温度調整動作時に各ページのインク吐出率、更に色ごとにインク加温動作の実行可否を判断することで、インク温度を制御すると共に、画像記録動作時の消費電力を抑えることができる。
【0066】
なお、上記実施形態では、ページ間ギャップでは画像記録時インク加温動作を実行していないが、例えばインク温度が画像記録可能最低温度Tpminに近い温度である場合には、ページ間ギャップにおいても画像記録時インク加温動作を実行してもよい。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜組み合わせることで種々の実施形態を形成できる。例えば、上記実施形態に示される全体構成から幾つかの構成要素を削除してもよい。
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、実施の段階では、その要否を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【符号の説明】
【0068】
1 画像記録装置
2 給送部
2a 給送トレイ
2b 給送駆動部
2c 給送媒体検出部
3 搬送機構
4 画像記録部
5 回収部
6 制御部
8 記録媒体
9 駆動ローラ
10 従動ローラA
11 搬送駆動部
12 搬送ベルト
13 搬送情報生成部
14 従動ローラB
16 記録ヘッド駆動部
17、17−1〜17−4 記録ヘッド
18 インク温度検出部
19a 収納トレイ
19b 排出駆動部
19c 排出媒体検出部
21 記憶部
22 インク温度制御部
23 記録データ解析部
24 上位装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録データに基づいてインクを吐出し、記録媒体に画像を記録する画像記録装置において、
前記記録データに基づく前記記録媒体へのインク吐出率を解析する記録データ解析部と、
前記インクの温度を検出するインク温度検出部と、
前記記録媒体への前記インク吐出率と前記インク温度に基づいて、前記インクを加温し、又は前記インクを冷却し、前記インクの温度を画像記録最適温度に調整する制御部と、
を有することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記インク温度が前記画像記録最適温度以下であり、前記記録媒体への前記インク吐出率が所定値以下であるとき、前記制御部は前記インクを加温し、前記インク温度が前記画像記録最適温度以下であり、前記記録媒体への前記インク吐出率が所定値より大きいときには、前記制御部は前記インクの加温を行なわず、前記インク温度が前記画像記録最適温度より高いときには、前記制御部は前記インクを冷却することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記インクの加温動作は前記記録データに基づく非駆動のノズルに対して、前記インクを吐出させない駆動を行なうことを特徴とする請求項1、又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記インク温度に基づいて前記加温動作が不要である場合のインク吐出率を設定し、該加温不要インク吐出率と前記インク吐出率とを比較し、前記非駆動のノズルからの前記インクを吐出させない駆動レベルを決定することを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記加温不要インク吐出率と前記インク吐出率とを比較し、該インク吐出率が前記加温不要インク吐出率より低いとき、該インク吐出率を補うレベルの駆動を前記非駆動のノズルに行うことを特徴とする請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記記録データ解析部、前記インク温度検出部、及び制御部は、色毎に設定され、前記記録媒体への色毎の前記インク吐出率と色毎の前記インク温度に基づいて、色毎に前記インクを加温し、又は前記インクを冷却し、前記インクの温度を画像記録最適温度に調整することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項7】
記録データに基づいてインクを吐出し、記録媒体に画像を記録する画像記録装置の制御方法において、
前記記録データに基づく前記記録媒体への前記インク吐出率を解析する記録データ解析処理と、
前記インクの温度を検出するインク温度検出処理と、
前記記録媒体への前記インク吐出率と前記インク温度に基づいて、前記インクを加温し、又は前記インクを冷却し、前記インクの温度を画像記録最適温度に調整する制御処理と、
を行なうことを特徴とする画像記録装置のインク温度制御方法。
【請求項8】
前記インクの加温動作は非駆動のノズルから前記インクを吐出させない駆動を行なうことを特徴とする請求項7に記載の画像記録装置のインク温度制御方法。
【請求項9】
前記記録データ解析処理、前記インク温度検出処理、及び制御処理は、色毎に行なわれ、
前記記録媒体への色毎の前記インク吐出率と色毎の前記インク温度に基づいて、色毎に前記インクを加温し、又は前記インクを冷却し、前記インクの温度を画像記録最適温度に調整することを特徴とする請求項7記載の画像記録装置のインク温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−86421(P2012−86421A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234170(P2010−234170)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】