画像記録装置
【課題】着弾した液滴による紙伸びに起因する記録解像度の劣化を低減する画像記録装置の提供。
【解決手段】記録紙2が装填されるトレイと、トレイに装填された記録紙2を搬送する記録紙搬送手段と、搬送される記録紙2に向けてインクを吐出する複数のノズルが直線状に配列され、当該ノズルの配列方向が記録紙2の搬送方向に対して直交するように配列されたラインヘッド6と、を具備し、ラインヘッド6からインクを吐出する際に、記録紙2の繊維方向をラインヘッド6のノズルの配列方向に一致させた。
【解決手段】記録紙2が装填されるトレイと、トレイに装填された記録紙2を搬送する記録紙搬送手段と、搬送される記録紙2に向けてインクを吐出する複数のノズルが直線状に配列され、当該ノズルの配列方向が記録紙2の搬送方向に対して直交するように配列されたラインヘッド6と、を具備し、ラインヘッド6からインクを吐出する際に、記録紙2の繊維方向をラインヘッド6のノズルの配列方向に一致させた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出するライン型記録ヘッドにより、記録媒体に画像を記録する際に、紙伸びに考慮し高解像度の画像記録を行う画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数のノズルが列状に配置されて、記録媒体の幅を超える記録領域(ノズル列)を有するフルライン型記録ヘッドを用いて、搬送される記録媒体に画像を記録するインクジェットプリンタが知られている。また、このフルライン型記録ヘッドに対して、それぞれに記録媒体の幅以下の記録領域を持つ短尺記録ヘッドを記録媒体の幅以上となるように交互に千鳥状に配置して構成するライン型記録ヘッドがある。
【0003】
これらの記録ヘッドを用いるインクジェットプリンタでは、より一層の高解像度化が要求されている。しかし、画像を形成する画素と同じピッチで、ノズル(記録素子)を配列する必要のあるインクジェットプリンタにおいては、最終的に得たい画素のピッチと同じピッチでノズルを形成することは困難であった。そこで、特許文献1に開示されるように、最終的に得たい画素のピッチのN倍のピッチでノズルを配列し、ラインヘッドをノズルの配列方向に1/NずつN回移動して画像形成を繰り返すことにより、ノズルの解像度に対してN倍の解像度の画像を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−94755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、記録媒体上の同一の記録領域に対して、複数回に分けて記録(印刷)を行うと、先に記録したインクドットのインク滴によって紙伸びが生じ、後から記録するインクドットが、先に記録したインクドットの位置に対して、所望の相対的関係(即ち、隣接又は重なり)を有した位置に着弾せずに、位置ずれが生じていた。即ち、記録プロセスを複数のラインヘッドにより分けて行うと、先のインク吐出から後続するインク吐出との間には、時間差が生じる。先に吐出されて媒体上に着弾したインク滴は、後続するインク滴が紙面に着弾するまでの間に媒体内に浸透する。インクの浸透は紙伸びを生じさせている。この紙伸びに起因して、インク滴の着弾に位置ずれが生じていた。この位置ずれは、特に水性インクを用いたときに顕著となる。
【0006】
水性インクに対応する記録媒体としては、セルロースを含む記録紙等が採用されていることが多い。通常、セルロースに水分を浸透させると膨潤が生じ、サイズが大きくなるように変化する。従って、記録紙に水性インクを用いると、液滴の浸透に伴う紙伸びが大きく、記録解像度の劣化が著しく目立つようになる。
インクの性質や液量にもよるが、水分を飽和させたときの、記録紙の伸び率は、0.1〜3.0%程度となっている。
【0007】
ライン型記録ヘッドにより記録する場合は、記録紙の飽和吸水量に比較すると、一般に、インクの液量は少ないので伸び量は数10μm程度のオーダーとなる。例えば、記録解像度 600dpiにおけるドット間隔(画素間隔)は、25.4mm/600=42μm程度であるから、媒体が複数のヘッドを通過する間に、数10μm程度の紙伸びがあると、紙面上のドット間隔は乱れることになる。その結果、形成されたドットの位置にずれが生じて、インクドットが形成されない下地部分が発生する、即ち、記録紙の伸びに起因する白筋(印刷解像度の劣化)が顕著となる。
【0008】
この紙伸びによるインクドットの位置ずれは、記録解像度を高くするほど相対的に大きくなり顕著な問題となる。しかし、元々、記録媒体側の変形に起因するため、ノズルの加工精度を向上させたとしても、有効な改善を図ることができない。
そこで本発明は、記録媒体の性質に応じた画像記録を行い、着弾した液滴による紙伸びに起因する記録解像度の劣化を低減する画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態のインクジェットプリンタは、記録紙が装填されるトレイと、前記トレイに装填された前記記録紙を搬送する記録紙搬送手段と、前記搬送される前記記録紙に向けてインクを吐出する複数のノズルが直線状に配列され、当該ノズルの配列方向が前記記録紙の搬送方向に対して直交するように配置されたインクジェットヘッドと、を具備し、前記記録紙に向けて、前記インクジェットヘッドから前記インクを吐出する際に、前記記録紙の繊維方向を前記インクジェットヘッドの前記ノズルの配列方向に一致させる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、記録媒体の性質に応じた画像記録を行い、着弾した液滴による紙伸びに起因する記録解像度の劣化を低減する画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る画像装置として、インクジェットプリンタの構成例を示す図である。
【図2】図2(a)及び(b)は、記録紙の梱包状態を示し、図2(c)は、縦目記録紙における紙目の概念を示し、図2(d)は、横目記録紙の紙目の概念を示している。
【図3】図3(a)は、記録紙の装填を指示する画面を示す図、図3(b)は、記録紙の型番の設定画面を示す図、図3(c)は、縦目記録紙の装填の確認画面を示す図である。
【図4】図4(a)は、横目記録紙の装填の確認画面を示す図、図4(b)は、設定された記録条件を示すスタート画面を示す図、図4(c)は、上段トレイに装填した記録紙の再装填を指示する画面を示す図である。
【図5】図5は、上段トレイを上から見た内部の構成を示す図である。
【図6】図6(a)は、トレイに装填する縦目記録紙の向きとスライダ調整位置を示す図、図6(b)は、トレイに装填する横目記録紙の向きとスライダ調整位置を示す図である。
【図7】図7は、第1の実施形態のプリンタにおける記録開始までの動作について説明するためのメインフローチャートである。
【図8】図8は、上段トレイ確認のサブルーチンについて説明するためのフローチャートである。
【図9】図9は、用紙検出処理のサブルーチンについて説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は、記録紙種設定処理のサブルーチンについて説明するためのフローチャートである。
【図11】図11は、記録紙の繊維方向及びノズル列方向処理のサブルーチンについて説明するためのフローチャートである。
【図12】図12は、報知処理のサブルーチンについて説明するためのフローチャートである。
【図13】図13は、本実施形態のプリンタに設けられた制御部の構成を示すブロック図である。
【図14】図14は、印字率から紙伸び率を求めるテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、本実施形態の画像記録装置に用いられる記録媒体の性質について説明する。記録媒体として、一般的に使用されている記録紙(又はコピー記録紙)に用いられているカット紙は、製造工程に起因して生じる紙目(繊維(セルロース)の向き)がある。図2(c)に示すように、製造時に、カット紙の長手方向と繊維の向きが平行であるとき、縦目(T目)と称している。一方、カット紙の長手方向と繊維の向きが垂直となっているとき、横目(Y目)と称されている。
【0013】
これらの記録紙は、吸水すると、繊維の向き(矢印方向)には伸びにくく、直交する向きには伸びやすい特徴がある。記録紙の種別や紙厚等により異なるが、繊維方向の記録紙の伸縮率は、最大0.1〜0.5%程度であり、それと直交方向では、最大2〜3%程度であり、縦目と横目では、2〜10倍ほど伸び率が異なっている。但し、これらの数値は、最大値(完全に塗らしたとき)であり、実際の水性インクを用いたインクジェット記録では、このままの数値となるわけではない。ライン型記録ヘッドによる水性インクの印刷による場合は、記録紙の飽和吸水量に比較すると、記録紙に着弾するインクの液量は少ないため、実際の伸び量は数10μm程度のオーダーと想定される。
【0014】
以下に説明する実施形態においては、水性インクを用いて画像記録する際に、画像記録装置におけるノズル配列方向と、記録紙の繊維方向(紙目方向)との関係に着目し、これらの向きが互いに平行となるように合わせ込むことにより、記録紙に対するノズル列方向を平行な方向になるように配置して、紙伸びによる画像劣化を防止させる。
以下に説明する本発明の実施形態では、ノズル配列方向と、記録紙の繊維方向(紙目方向)との関係に着目し、画像記録時には互いに平行方向となる位置関係を持たせることにより、ノズル配列方向と平行な方向における紙伸びによる画像の劣化を抑制させる画像記録装置を提案する。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1乃至図12を参照して、第1の実施形態の画像記録装置について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る画像装置の一例となる複数のフルライン型記録ヘッド(以下、ラインヘッドと称する)を搭載したインクジェットプリンタ(以下、プリンタと称する)の概略的な構成を示す図である。また、記録媒体として、記録紙を一例としている。
【0016】
本実施形態のプリンタ1は、記録紙2を供給する記録紙供給機構3と、記録紙2を保持して搬送する搬送機構4と、画像が記録された記録紙2を排出し収容する収容機構5と、記録紙2に画像を記録する複数のラインヘッド6(6C,6K,6M,6Y)が設けられた記録ヘッド部6と、ユーザによる操作により種々の設定等を行う入力部7と、設定された情報や装置の動作状況等を表示するモニタ部8と、ライン型記録ヘッド6にインクを供給するインク供給部9と、装置全体を制御する制御部10と、ラインヘッド6を移動させるヘッド移動機構20と、により構成される。これらの構成部位は、図示しない装置フレーム内に配置されている。
【0017】
このような構成において、供給機構3は、複数の記録紙をそれぞれに収容する上段トレイ13及び下段トレイ14と、1枚ずつ取り出した記録紙2を搬送機構4へ導くガイド部材15とで構成される。搬送機構4は、記録紙2を吸着保持して搬送するドラム16と、ドラム16に保持された記録紙2の端部(先端、後端)を検出する記録紙検出センサ17と、図示しないローラ等とにより構成される。ドラム16は、制御部10に駆動制御される図示しない駆動モータにより回転軸16aを中心として回転される。さらに、ドラム16の回転軸16aには、その回転と連動するように、エンコーダ51が設けられている。このエンコーダ51は、ドラム16の回転角に応じた信号(A相、B相)を制御部10に出力する。制御部10は、この信号をモニタすることで、回転角及び回転速度、回転方向のいずれについても検出できる。
【0018】
収容機構5は、ドラム16に近接するように設けられ、ドラム16の円筒の外周面に張り付いた記録紙2を剥がし取る剥離爪18と、取り出された記録紙1を収容する排出トレイ19とで構成される。
ラインヘッド6は、記録紙幅を越える長さの記録領域(ノズル列長)を有し、例えば、300dpiの解像度を有している。ラインヘッド6は、ドラム16の外周面に沿って且つ、所定間隔を空けてノズル面6aが対向するように、各ラインヘッド6C,6K,6M及び6Yが図示しないフレームに取り付けられている。ここでは、4色のインクを用いる4つのラインヘッドを用いた構成例であるが、限定されるものではなく、インク色の数に応じて増減することもできる。これらのインクは、各色のインクボトルから(図示せず)インク色毎に独立して設けられたインク供給経路(図示せず)を介して供給される。
【0019】
ラインヘッド6は、主として、インク供給経路からインクが供給されるインク室と、複数のノズルが列状に形成されたノズルプレート(ノズル面)と、インク室に連通してノズル毎に設けられた圧電素子と、で構成される。この構成において、圧電素子は、インク室から供給されたインクをノズルから吐出させる。
【0020】
ヘッド移動機構20は、ラインヘッド6を搬送機構4による記録紙2の搬送方向(ドラム16の回転軸方向)と直交する方向(主走査方向)にノズル面6aに列状に形成された複数のノズル6b間のノズルピッチ(約84μm)の1/2に相当する距離(42μm)を移動させる。このヘッド移動機構20によって、ドラム16の回転毎(画像の記録毎)に、ラインヘッド6をドラム16の回転軸方向に微小量移動させることで、600dpiの解像度の画像記録を実現する。
【0021】
また、入力部7は、タッチパネル及びキースイッチ等からなり、装置の外装部分に露呈するように設けられている。モニタ部8は、例えば、液晶表示装置からなり、入力部7によるユーザからの指示内容と、装置の設定情報及び動作状況(警告表示を含む)を表示する。尚、タッチパネルは、モニタ部8の液晶画面上に設けられている。ユーザがタッチパネルに触れることで、使用する記録紙の型番等を選択して設定できるようになっている。また、インク切れ、記録紙切れ等の警告は、液晶画面の表示を通じて、ユーザに知らせる。
【0022】
本実施形態の画像記録装置において、さらに、制御部9は、例えばLAN等のネットワーク11を介してパーソナルコンピュータなどの外部機器12が接続され、画像情報等(印刷情報及び印刷コマンド等)が入力される。ユーザが記録を行う画像情報又は文書情報を外部機器12からネットワーク11を通じてプリンタ1に送信する。これらの情報を受信した後、トレイに格納された記録紙が搬送されてドラム上で帯電吸着され、記録ヘッドより各色の水性のインク滴が記録紙上に吐出され、印刷物が取り出せるようになっている。
【0023】
また、詳細は後述するが、プリンタ1は、前述した紙伸びによる画質の劣化を補正する機能として、高画質モードを有している。高画質モード1には、ON(選択)とOFF(非選択)の状態があり、プリンタ1の入力部7により選択されて設定され、モニタ部8に、高画質モードの設定状態が表示される。
高画質モードが選択(ON)されていた場合、ユーザが、後述する所定の手順に従って記録紙を装填すると、プリンタ1内部において、紙伸び補正が実行される。一方、高画質モード1が非選択(OFF)の場合は、高画質モード2は選択されない。
【0024】
次に、本実施形態のプリンタの操作について説明する。
a.ユーザがプリンタ1に電源を投入する。電源が投入されると、プリンタ1は、初期設定を行い、インクの残量の有無、記録紙の有無等を検出し、さらに画像記録が可能か否かのチェックを行い、記録開始可能であることを示唆するスタート画面を表示する。一方、記録開始ができない場合には、そのプリンタ1の現在の状態を警告表示する。
【0025】
b.記録紙2を装填する手順に移行する。
[記録紙の残量チェック]
プリンタ1は、トレイ13,14内に装填された記録紙2の残量を図示しない記録紙残量センサにより検出を行う。この検出結果において、トレイ13,14に記録紙2の残量が無い場合には、モニタ部8の画面にトレイ13,14に記録紙2を補充することを促す文字又はマークが表示される。図4(a)は、横目記録紙の装填の確認画面表示例を示す。
【0026】
[記録紙の装填及び設定]
ユーザは、モニタ部8に表示される記録紙補充の表示を確認し、記録紙2が無くなったトレイに対して、記録紙2を装填する。図2(a),(b)には、本実施形態のプリンタ1で使用する指定の記録紙の梱包31と、梱包31に貼付される記録紙サイズや型番等の印刷された外装ラベル32,33の2例を示している。このうち、型番は、記録紙2における紙厚、縦目・横目、コート紙/普通紙等の相違を識別するための、固有の文字列である。尚、図2(c)には、縦目記録紙(T)の概念を示し、図2(d)には、横目記録紙(Y)の概念を示している。これらのうち、縦目記録紙(T)は、記録紙の長手方向と繊維方向が一致している。横目記録紙(Y)は記録紙の短手方向と繊維方向が一致している。
【0027】
一般に、記録紙の曲がりやすさは、繊維方向により異なるため、記録紙の選択により記録(印刷)後・製本後の仕上がりが異なる。また、この縦目・横目記録紙は、加工工程及び流通量が異なるため、購入価格が異なることがある。
従って、ユーザは、印刷物の仕上がり、製本時の綴じ(糸かがり綴じ、無線綴じ、網代綴じ、平綴じ)、記録紙の購入価格等を考慮して、縦目記録紙(T)、横目記録紙(Y)を任意に選択できるようになっている。
【0028】
以下、上段トレイ13に記録紙2を装填する例について説明する。
図5は、上段トレイ13を上から見た内部の構成を示している。尚、下段トレイ14についても同様であり、説明は省略する。
上段トレイ13内には、周辺の三方からに囲むように、中央方向の摺動する3つのスライダ(規制板)41,42,43が連動するように設けられている。いずれかの1つのスライダを位置Yと位置Tの間で摺動させると、残りの2つのスライダも同時に摺動するようになっている。スライダ41,42,43の位置を動かすことで、位置Yと位置Tを選択できる。これにより、装填する記録紙2のサイズに応じて、記録紙2の向き及び位置を規制する。
【0029】
また、上段トレイ13の底面には、表示シール44が貼り付けられており、記録紙2を縦置き、又は横置きするように、向きのガイド表示が付けられている。ユーザは、購入した記録紙2の種別(縦目記録紙又は、横目記録紙)に応じて、スライダ41,42,43の位置(位置T、位置Y)を調整して記録紙2を装填する。例えば、図2(a)に示したように、縦目記録紙(T)を使用する場合、記録紙2の外装ラベル32の記載内容に合わせて、図6(a)に示すように、上段トレイ13内の各スライダ41,42,43を位置Tに調整した後、記録紙長手方向がY軸方向となるように記録紙2を装填する。
【0030】
また、図2(b)に示したように、横目記録紙(Y)を使用する場合、記録紙2の外装ラベル32の記載内容に合わせて、図6(b)に示すように、上段トレイ13内のスライダ41,42,43を位置Yに調整したのち、記録紙短手方向がX軸方向となるように記録紙2を装填する。尚、図5及び図6(a),(b)には、後述の説明のため、プリンタ内におけるラインヘッド6のノズル面6aに形成されているノズル列6bを記載している。
【0031】
ユーザが上段トレイ13に記録紙2を装填し、上段トレイ13をプリンタ1の本体内に収納すると、トレイ近傍に設けられた複数個の図示しないセンサにより、上段トレイ13の開閉の状態、再度の記録紙2の残量の有無、スライダ41,42,43の各位置(位置T又は位置Y)が検出され、プリンタ1は、上段トレイ13に装填された記録紙2の向きやサイズを判別する。その結果、モニタ部8は、図4(b)に示すスタート画面へ移行し、上段トレイ13に装填された記録紙2の種別を確認するための設定情報が表示される。
【0032】
[記録紙の種別の設定]
図3(b)は、上段トレイ13に記録紙2を装填して、上段トレイ13を閉じたとき、モニタ部8に表示される記録紙2の型番の選択を促す設定情報を表示する画面例を示している。記録紙2の型番は、記録紙2の種別、サイズ、紙目の向きに対応した固有の文字列からなる。記録紙2の装填後、ユーザは、記録紙2の型番を示すボタンを、モニタ部8の画面に重置される透明タッチパネルからなる入力部7上でタッチ入力すると、図3(c)に示すように、縦目記録紙・横目記録紙等の記録紙2の型番に応じた確認画面が表示される。この例では、入力部7上でユーザが型番「XT4003」をタッチ入力した場合に表示される確認画面を示している。また、図3(d)は、入力部8上でユーザが型番「XY40004」をタッチ入力した場合に表示される確認画面を示している。
【0033】
この後、ユーザは、図3(c)及び図3(d)に示すように、モニタ部8上で、上段トレイ13内に装填した記録紙2の種別(縦目か横目か)が購入した記録紙2の外装ラベル32の表示通りか否かを確認し、正しい場合には入力部7の「OK」ボタン部分にタッチして入力する。この入力に従い、プリンタ1は、記録開始可能な状態に設定されると共に、高画質モードが設定(ON)される。尚、装填した記録紙2が指定外であって、ユーザが縦目・横目が分からない等の場合は、図3(a)に示す「キャンセル」ボタンを選択する。この場合も、プリンタ1は、記録開始可能な状態に設定されるが、印刷モードが高画質モードではなく、通常画質モードに設定される。
【0034】
ユーザは、モニタ部8に表示される図3(b)に示す画面において、入力部7によるタッチ入力で記録紙2の種別の設定を行うと、プリンタ1は、選択された記録紙2の種別を制御部10内に設けた図示しない不揮発メモリにアクセスする。即ち、選択した型番に応じ、予め不揮発メモリに記録された記録紙2の種別に対応したテーブルを参照して、画像記録動作の際には、記録紙のサイズ、縦目記録紙又は横目記録紙の種別を読み出して維持する。この記録紙2の種別の情報は、詳細は後述するように、高画質モードの判定に用いられる。
【0035】
本実施形態では、ユーザの手動入力による設定であったが、これに限定されるものではなく、例えば、バーコード入力を利用する。即ち、入力部7にバーコード読み取り装置を組み込み、且つ外装ラベルに表記される文字記号情報と同じ情報をバーコードとして並記することで実現できる。バーコード入力を用いることで、ユーザの入力ミスを防止でき、且つ入力にかかる手間を簡素化することができる。
【0036】
他の入力手法としては、記録紙の端部に紫外光により読み取れる透明インクにより型番を印刷しておき、プリンタ1内のトレイ上方に紫外光を照射し、記載されている情報を読み取るセンサを配置する。この構成により、ユーザが引き出したトレイにその記録紙を装填し、トレイを戻すだけで、記録紙の型番がプリンタ1に読み込まれて設定される。即ち、記録紙を装填しただけで、図3(c)又は図3(d)に示す確認画面まで移行させることができる。よって、従来のプリンタの取り扱いと比較しても、記録紙の装填ミス発生時の再装填以外は、ユーザに求められる手間は無い。
【0037】
次に、記録紙2が装填されて、ユーザによる設定が完了すると、後述するように、高画質モードがONとなり、記録が可能な状態となる。高画質モードがONとなっているとき、ネットワーク11を通じて外部機器12の印刷画面が表示され、且つ図4(b)に示すように、モニタ部8の画面上には、「高画質モード」が表示される。以後、高画質モードの設定状態であれば、外部機器12からプリンタ1に、印刷ジョブ(画像データ及び記録コマンド)をネットワーク11経由で送信すると、プリンタ1は高画質モードで、記録紙2に画像記録を実行する。つまり、上述した紙伸びの影響を補正する機能が働き、ユーザは所望の印刷物を得ることができる。
【0038】
[記録紙の種別の再設定]
例えば、ユーザが記録紙の種別設定を行わなかった場合、記録紙種が分からない場合、トレイ内のスライダの向きを間違えた場合、記録紙種別の入力とスライダの設定(実際に装填されている記録紙サイズ、向き)が一致しない場合には、高画質モードはONとはならない。そこで、適切な記録紙2の型番等の情報を入力部7へ再入力することにより、「高画質モード」をONとすることができ、高画質モードによる記録が可能となる。この場合入力部7には、再設定ボタンを設ける。
【0039】
次に、第1の実施形態に係るプリンタにおける記録動作について、より詳細に説明する。図7は、プリンタ1による全体的な画像記録動作を説明するためのフローチャートである。
まず、ユーザがプリンタ1の電源を投入する(ステップS1)。この投入により、プリンタ内の各構成部位が起動して、メモリの初期化や各種センサの出力が確認されて、初期設定が行われる(ステップS2)。この初期設定時に、インク不足等があれば、インクを補充するようにモニタ部8に表示されて、ユーザに適切な作業を行うように促している。
【0040】
次に、上段トレイ13及び下段トレイ14における記録紙2の残量が確認され(ステップS3、ステップS4)、その残量が不足と判定されなければ、記録開始可能状態となり(ステップS5)、スタート画面を表示させる。
【0041】
次に図8に示すフローチャートを参照して、図7に示した上段トレイ13の動作におけるサブルーチンについて説明する。尚、下段トレイ14における動作も上段トレイ13における動作と同等であり、その説明を省略する。また、図7及び図8では、エラー処理については省略している。例えば、一定時間以上、開放しているトレイを閉じなかった等の異常操作が生じた場合には、これらのルーチンを抜けて、モニタ部8に、予め定めたエラー画面を表示して警告し、ユーザに適切な処理を促す。
【0042】
図7に示した上段トレイ13の確認のステップに入ると、図8に示すように、まず、パラメータの設定が行われる(ステップS11)。即ち、上段トレイ13に収容される記録紙2のサイズや、その装填の向き(TY1、TY2)等のパラメータが初期化される(TY1=0、TY2=0及びMODE1=0)。
【0043】
次に、記録紙検出処理が実施される(ステップS12)。即ち、トレイの開閉を検出し、トレイが閉じられていることを確認したときにプリンタは記録紙サイズ及び装填の向きを検出する。その後、記録紙種設定処理が行われる(ステップS13)。即ち、記録紙の型番の入力をユーザに促し、ユーザから入力され記録紙2の型番を元に、制御部10に搭載される不揮発性メモリに設けられたテーブルを参照して、記録紙の紙目(繊維)の向きを認識し、装填された記録紙2が縦目記録紙又は横目記録紙かを設定する。
【0044】
次に、繊維方向・ノズル列方向判定処理を行う(ステップS14)。即ち、前述した記録紙検出処理と型番の入力情報から、装填されている記録紙2の繊維方向を認識する。この繊維方向がY軸方向(ノズル列の配列方向)と一致する場合は(YES)、MODE1として、「1(一致する)」の戻り値を得て、高画質モードをONに設定し(ステップS16)、メインルーチンにリターンする(ステップS17)。
【0045】
一方、一致しない場合は(NO)、MODE1として「0(一致しない)」の戻り値を得て、報知処理(ステップS15)を行う。この報知処理は、ユーザの入力を取得し、ユーザからの入力がキャンセル(0)された場合は、ステップS17に移行して、リターンする。一方、ユーザからの入力が記録紙種の再設定(1)である場合は、ステップS13に戻り、記録紙種設定処理を行う。さらに、ユーザが記録紙再装填(2)を選択した場合は、ステップS12に戻り、記録紙検出処理を行う。
【0046】
次に、図9に示すフローチャートを参照して、図8に示したステップS12の記録紙検出処理の動作におけるサブルーチンについて説明する。ここでは、上段トレイ13を例として説明し、同等の動作を行う下段トレイ14の説明は省略する。
【0047】
まず、上段トレイ13の開閉状態を検出する(ステップS21)。上段トレイ13が開状態のままであれば、ユーザにより上段トレイ13が閉じられるまで待機する。次に、上段トレイ13が閉じられると、記録紙2の残量及び、スライダ41,42,43の各位置情報を取得する(ステップS22)。これらの情報から、記録紙2のサイズと装填された記録紙の向きを検出する。
【0048】
次に、装填された記録紙2がどの向きで配置されているか、即ち、縦目記録紙の配置か否かを判定する(ステップS23)。この判定で、縦目記録紙の配置である場合は(YES)、フラグをTY1=1に設定し(ステップS25)、メインルーチンにリターンする。一方、縦目記録紙の配置ではない場合は(NO)、フラグをTY1=2に設定し(ステップS24)、リターンする。
【0049】
次に、図10に示すフローチャートを参照して、図8に示したステップS13の記録紙種設定処理の動作におけるサブルーチンについて説明する。
記録紙種設定処理においては、まず、図3(b)に示すような型番の入力画面を表示する(ステップS31)。この入力画面を表示して、ユーザによる入力を待機する(ステップS32)。
【0050】
ユーザの入力が終了すると、入力された記録紙の型番を元に不揮発メモリのテーブルを参照して、予め記憶された情報に基づき、装填された記録紙2が縦目記録紙又は横目記録紙かの判別を行う(ステップS33)。その後、記録紙の確認画面を表示する(ステップS34)。上記判定で、例えば、上部トレイ13に縦目記録紙を装填し、入力部7により縦目記録紙を型番として入力した場合には、図3(c)に示す確認画面がモニタ部8に表示される。即ち、ステップS33で確認した縦目記録紙又は、横目記録紙の種別に応じて、図3(c)又は図3(d)に示すような確認画面をそれぞれ表示してユーザによる入力を待機する。
【0051】
その後、ユーザにより確認のためのOKボタンが押された場合は、入力が正常であったとして、高画質モードに設定される条件で、メインルーチンにリターンする。一方、認められず、OKボタンが押されず、所定時間が経過した場合には、高画質モードの記録を止めたものとして、通常モードに設定される条件でメインルーチンにリターンする。
【0052】
次に、図11に示すフローチャートを参照して、図8に示したステップS14の繊維方向・ノズル列方向判定処理の判定動作におけるサブルーチンについて説明する。
この判定では、前述したフラグTY1及びTY2が適切に入力され(TY1>0、TY2>0)、なお且つ、両者が一致しているか否かを判定する(ステップS41)。この判定において、TY1>0且つ、TY1=TY2である場合、即ち、ユーザによる入力がなされており、記録紙2の紙目がラインヘッド6のノズル列方向と一致している場合は(YES)、図8のステップS16に移行して、MODE1に値1が設定され、高画質モードがONに設定される。それ他以外の場合は(NO)、図8のステップS15に移行して、MODE1に値0が設定され、報知処理が実行される。
【0053】
次に、図12に示すフローチャートを参照して、図8に示したステップS15の報知処理の判定動作におけるサブルーチンについて説明する。
この報知処理においては、まず、図4(c)に示すような報知画面が表示される(ステップS51)。即ち、図4(c)に示した報知画面により、ユーザがその対応について入力可能な状態とする。
【0054】
次に、ユーザの入力を検出する(ステップS52)。ユーザの入力があった場合は、選択された設定を保持する。即ち、画面上で「キャンセル」を選択した場合は、フラグに値0が設定され、ステップS17へリターンする(ステップS54)。また、「型番を入力しなおす」を選択した場合は、フラグに値1が設定され、記録紙種設定処理(ステップS13)へリターンする(ステップS55)。
【0055】
また、「記録紙を入れなおす」を選択した場合は、フラグに値2が設定され、その対処方法、例えば、「記録紙の装填方向が間違っています。」が表示される。ユーザは、該当するトレイを引き出し、記録紙の縦横の装填方向を逆になるように入れ替えて、トレイ13を元に戻す。この入れ替え作業が終了した後、ステップS12へリターンして、記録紙検出処理に戻る。これにより、図8に示すように、繊維方向とノズル列方向が一致しない場合は、ユーザに報知がされ、記録紙の型番の再設定や記録紙の再装填が促されることになる。
【0056】
図13は、本実施形態のプリンタ1に設けられた制御部10の構成を示すブロック図である。
制御部10は、画像メモリ53と、画像信号生成回路54と、ヘッド駆動回路55と、ヘッド移動回路56と、紙伸び補正回路57とで構成される。さらに、ラインヘッド16の搬送方向上流側でドラムの近傍に配置され、記録紙の端部(先端及び後端)を検出する記録紙検出センサ17が設けられている。また、ネットワーク11を介して外部機器12と制御部10とで信号(画像データ等)の送受を行うためのインターフェース52が設けられている。画像メモリ53は、例えば、書き換え可能なフラッシュメモリやRAM等の半導体メモリにより構成される。画像メモリ53は、インターフェース52を介して入力した画像データを記憶する。
【0057】
画像信号生成回路54は、画像メモリ53より読み出された画像データからラインヘッド6を駆動させるための画像信号を生成する。具体的には、画像信号生成回路54は、不揮発メモリを備え、その不揮発メモリに予め記録された図14に示すような記録紙の種別毎に、紙伸び量を求めるためのテーブルが設けられている。このテーブルを参照して、記録される各ページの画像メモリの輝度値情報から、使用する印字率(ページあたりのインクの吐出量)を求める。さらに印字率から、対応する紙伸び量(β1)を求め、紙伸び補正回路57に伝達する。図14に示す紙伸び量を求めるテーブルは、例えば、印字率α1が20%であるとき、テーブルを上段から参照していき、搬送方向の紙伸び量β1=0.2%と判定する。
【0058】
ヘッド駆動回路55は、画像信号に基づき、ラインヘッド6を駆動して、記録紙2に画像データに対応したインク滴を吐出して画像を記録する。ヘッド移動回路56は、ヘッド移動機構20の駆動制御を行い、記録動作中でノズルからインクが不吐出の期間中にラインヘッド6をノズルピッチ以下の距離を微小移動する。即ち、ノズルピッチ内で複数回、例えば、1/2ピッチの1回(2パス)の移動を行うことで、300dpi相当のノズルピッチのラインヘッド6を用いて600dpi相当の高解像度の画像を記録することができる。前述したエンコーダ51により得られた出力(エンコーダ信号)は、紙伸び補正回路57を経由して、ヘッド駆動回路55に伝達される。
【0059】
紙伸び補正回路57は、高画質モードがONのときは、以下に述べるようにエンコーダ信号のタイミングを遅らせてタイミング信号として出力する。高画質モードがOFFの場合は、エンコーダ信号をそのままタイミング信号として、ヘッド駆動回路55に伝達する。
【0060】
図1に示すドラム16の外周面に記録紙2が搬送されるとき、記録紙検出センサ17により、記録紙2の先端が検出される。すると、図10に示すように、記録紙検出信号(ドラム16上に記録紙2が搬送されたタイミング、記録紙2の先端位置)が紙伸び補正回路57に入力される。
【0061】
さらに、エンコーダ51が出力したエンコーダ信号は、紙伸び補正回路57に入力される。図3に示すドラム16の半径等の機械的寸法によるパラメータは、予め装置設計から分かっているので、紙伸び補正回路57において、エンコーダ信号と記録紙搬入のタイミングから、ドラム面上に吸着保持された記録紙2の位置が得られる。
【0062】
紙伸び補正回路57は、ドラム16上に記録紙2が搬送されてから、記録紙2がドラムを1周回る間は、エンコーダ信号をそのまま、タイミング信号として、ヘッド駆動回路55に伝達される。
記録紙2は、ドラム16の回転による搬送が2周目となると、ヘッド移動回路56の指示によって、ヘッド移動機構20は、ラインヘッド6がドラム回転軸方向に1/2ピッチを移動する。同時に、紙伸び補正回路57は、エンコーダ信号を、紙伸び程度の時間遅れを持たせて出力する。例えば、図14において、紙伸び量β1が0.2%と判定された場合は、前述した画像信号生成回路54から、パルス幅を0.2%遅らせた信号をタイミング信号として、ヘッド駆動回路55に伝達する。
【0063】
ヘッド駆動回路55は、遅延のタイミング信号に応じて、画像メモリ53から記録紙幅に対応する1行分の画像データを読み出し、ラインヘッド6に駆動信号(画像信号)を送る。ラインヘッド6は、ノズルを複数形成されたノズルプレート及びノズル穴に対応するように加工された圧電素子を有する。圧電素子近傍にはインクが供給されている。ヘッドは1行分の画像データに応じた電圧信号を印加されると、対応するノズル位置に相当する圧電素子部分が変形する。これにより、1行分に対応する画像データに対応して、各ノズル部から、インク滴を吐出する。
【0064】
以上のように、1周目に比較して2周目におけるタイミング信号の周期を長くすることで、2回目の記録面における画像長は、紙伸びの比率に応じて長くなる。従って、紙伸び補正回路57により、1周目の着弾により膨潤した記録紙長の影響は、2周目には、画像長を長くすることで、補正されて搬送方向の解像度は、改善される。
また、2周目には、上述したように、ラインヘッドをノズル列方向に1/2ノズル間隔シフトする。従って、ノズル列方向については、600dpiの解像度が得られる。
【0065】
[本実施形態が使用する記録紙の説明]
本実施形態が使用する記録紙について、詳細に説明する。ここでは、A4サイズの記録紙を例としている。
一般に、記録紙の特性として、膨潤した際の記録紙の伸びは、紙目方向は小さく、紙目に垂直方向は大きい。繊維方向と垂直方向の伸び量で比較すると、1:2〜1:10程度の数値となる。従って、記録紙の最大伸び量は、紙目に対して垂直方向が支配的となる。
【0066】
図6(a)、(b)に示したように、第1の実施形態によれば、高画質モードがONのとき、記録紙2の紙目は、ラインヘッドのノズル列方向即ち、Y軸方向と平行となるよう設定している。従って、この設定であれば、記録紙2の主たる伸びは、記録紙の搬送方向となる。搬送方向における記録紙の伸びの影響による画質の劣化は、紙伸び補正回路によって記録タイミングを調整することによって補正できる。
【0067】
また、ノズル列方向については、紙伸び量は1/2〜1/10となり、ノズル間隔に比較すると小さな値であって、実質的には、白筋の発生をなくすことができる。従って、トレイ内の記録紙の方向を紙目に基づき設定することにより、ノズル列方向の記録紙の伸びの影響が格段に改善される。
記録紙2は、インクジェットプリンタ記録紙の例を挙げたが、普通紙等であっても紙伸びによる画質の劣化が改善するため、良好に使用できる。また、薄口記録紙、厚口記録紙等であってもよい。この場合、媒体の伸び量が異なるため、型番による選択画面により設定するようにすると、なお好適である。
【0068】
以上説明したように、本実施形態における高画質モードによる記録は、ユーザが装填した記録紙2に応じて、記録中の、特にノズル列方向における紙伸びの影響を回避し、高画質の画像を記録することができる。即ち、水性インクの浸透による主たる紙伸びが記録紙の搬送方向となり、補正しにくいノズル列方向における紙伸びを抑えることができるため、高画質のフルカラー画像を得ることができる。さらに、高画質モードが設定(ON)されているとき、プリンタ1は記録紙2のサイズ・向き、種別に応じ、記録紙2が搬送機構4からラインヘッド6に至るタイミング信号を補正することで、水性インクの浸透によって生じた記録紙の搬送方向における紙伸びによる画質悪化を抑制でき、高画質のフルカラー画像を得ることができる。尚、高画質モードが非設定(OFF)となっているとき、タイミング信号の補正は実施されない。よって、本実施形態によれば、ノズル列方向及び搬送方向のいずれにおいても、白筋等の記録(印刷)解像度の劣化のない画像記録を行うプリンタを提供することができる。
【0069】
第1の実施形態の変形例について説明する。
ラインヘッド6のノズル列方向に対しても、ドラム16の回転数即ち、最初の画像記録からの経過時間に従って画像長を微調整するとさらに有用である。即ち、ラインヘッドのノズル間隔は、ノズル加工時に決まるため、画像記録時に微調整はできない。例えば、図14に示す紙伸び量β1のように、ノズル列方向についても、記録紙の伸び量を判定できる。ノズル列方向においても、記録される画像の画像データを微調整すると、解像度は改善することができないものの、色ずれの影響を外観上、改善することができ、さらに良好である。
【0070】
また、本実施形態においては、記録紙装填時の紙目方向の設定は、ユーザによって行われる。しかしながら、トレイ内部近傍に、エリアセンサを取り付けて紙目方向の検出を自動的に行う形態としてもよい。さらに、インク色は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色の例を挙げて説明したが、必ずしも限定されるものではなく、例えば、ホワイト、ライトシアン、ライトマゼンタ等を、さらに追加してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…インクジェットプリンタ、2…記録紙、3…記録紙供給機構、4…搬送機構、5…収容機構、6,6C,6K,6M,6Y…ラインヘッド、6a…ノズル面、7…入力部、8…モニタ部、9…インク供給部、10…制御部、11…ネットワーク、12…外部機器、13…上段トレイ、14…下段トレイ、15…ガイド部材、16…ドラム、16a…回転軸、17…記録紙検出センサ、18…剥離爪、19…排出トレイ、20…ヘッド移動機構、31…梱包、32,33…外装ラベル、41,42,43…スライダ(規制板)、51…エンコーダ、52…インターフェース、53…画像メモリ、54…画像信号生成回路、55…ヘッド駆動回路、56…ヘッド移動回路、57…紙伸び補正回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出するライン型記録ヘッドにより、記録媒体に画像を記録する際に、紙伸びに考慮し高解像度の画像記録を行う画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数のノズルが列状に配置されて、記録媒体の幅を超える記録領域(ノズル列)を有するフルライン型記録ヘッドを用いて、搬送される記録媒体に画像を記録するインクジェットプリンタが知られている。また、このフルライン型記録ヘッドに対して、それぞれに記録媒体の幅以下の記録領域を持つ短尺記録ヘッドを記録媒体の幅以上となるように交互に千鳥状に配置して構成するライン型記録ヘッドがある。
【0003】
これらの記録ヘッドを用いるインクジェットプリンタでは、より一層の高解像度化が要求されている。しかし、画像を形成する画素と同じピッチで、ノズル(記録素子)を配列する必要のあるインクジェットプリンタにおいては、最終的に得たい画素のピッチと同じピッチでノズルを形成することは困難であった。そこで、特許文献1に開示されるように、最終的に得たい画素のピッチのN倍のピッチでノズルを配列し、ラインヘッドをノズルの配列方向に1/NずつN回移動して画像形成を繰り返すことにより、ノズルの解像度に対してN倍の解像度の画像を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−94755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、記録媒体上の同一の記録領域に対して、複数回に分けて記録(印刷)を行うと、先に記録したインクドットのインク滴によって紙伸びが生じ、後から記録するインクドットが、先に記録したインクドットの位置に対して、所望の相対的関係(即ち、隣接又は重なり)を有した位置に着弾せずに、位置ずれが生じていた。即ち、記録プロセスを複数のラインヘッドにより分けて行うと、先のインク吐出から後続するインク吐出との間には、時間差が生じる。先に吐出されて媒体上に着弾したインク滴は、後続するインク滴が紙面に着弾するまでの間に媒体内に浸透する。インクの浸透は紙伸びを生じさせている。この紙伸びに起因して、インク滴の着弾に位置ずれが生じていた。この位置ずれは、特に水性インクを用いたときに顕著となる。
【0006】
水性インクに対応する記録媒体としては、セルロースを含む記録紙等が採用されていることが多い。通常、セルロースに水分を浸透させると膨潤が生じ、サイズが大きくなるように変化する。従って、記録紙に水性インクを用いると、液滴の浸透に伴う紙伸びが大きく、記録解像度の劣化が著しく目立つようになる。
インクの性質や液量にもよるが、水分を飽和させたときの、記録紙の伸び率は、0.1〜3.0%程度となっている。
【0007】
ライン型記録ヘッドにより記録する場合は、記録紙の飽和吸水量に比較すると、一般に、インクの液量は少ないので伸び量は数10μm程度のオーダーとなる。例えば、記録解像度 600dpiにおけるドット間隔(画素間隔)は、25.4mm/600=42μm程度であるから、媒体が複数のヘッドを通過する間に、数10μm程度の紙伸びがあると、紙面上のドット間隔は乱れることになる。その結果、形成されたドットの位置にずれが生じて、インクドットが形成されない下地部分が発生する、即ち、記録紙の伸びに起因する白筋(印刷解像度の劣化)が顕著となる。
【0008】
この紙伸びによるインクドットの位置ずれは、記録解像度を高くするほど相対的に大きくなり顕著な問題となる。しかし、元々、記録媒体側の変形に起因するため、ノズルの加工精度を向上させたとしても、有効な改善を図ることができない。
そこで本発明は、記録媒体の性質に応じた画像記録を行い、着弾した液滴による紙伸びに起因する記録解像度の劣化を低減する画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態のインクジェットプリンタは、記録紙が装填されるトレイと、前記トレイに装填された前記記録紙を搬送する記録紙搬送手段と、前記搬送される前記記録紙に向けてインクを吐出する複数のノズルが直線状に配列され、当該ノズルの配列方向が前記記録紙の搬送方向に対して直交するように配置されたインクジェットヘッドと、を具備し、前記記録紙に向けて、前記インクジェットヘッドから前記インクを吐出する際に、前記記録紙の繊維方向を前記インクジェットヘッドの前記ノズルの配列方向に一致させる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、記録媒体の性質に応じた画像記録を行い、着弾した液滴による紙伸びに起因する記録解像度の劣化を低減する画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る画像装置として、インクジェットプリンタの構成例を示す図である。
【図2】図2(a)及び(b)は、記録紙の梱包状態を示し、図2(c)は、縦目記録紙における紙目の概念を示し、図2(d)は、横目記録紙の紙目の概念を示している。
【図3】図3(a)は、記録紙の装填を指示する画面を示す図、図3(b)は、記録紙の型番の設定画面を示す図、図3(c)は、縦目記録紙の装填の確認画面を示す図である。
【図4】図4(a)は、横目記録紙の装填の確認画面を示す図、図4(b)は、設定された記録条件を示すスタート画面を示す図、図4(c)は、上段トレイに装填した記録紙の再装填を指示する画面を示す図である。
【図5】図5は、上段トレイを上から見た内部の構成を示す図である。
【図6】図6(a)は、トレイに装填する縦目記録紙の向きとスライダ調整位置を示す図、図6(b)は、トレイに装填する横目記録紙の向きとスライダ調整位置を示す図である。
【図7】図7は、第1の実施形態のプリンタにおける記録開始までの動作について説明するためのメインフローチャートである。
【図8】図8は、上段トレイ確認のサブルーチンについて説明するためのフローチャートである。
【図9】図9は、用紙検出処理のサブルーチンについて説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は、記録紙種設定処理のサブルーチンについて説明するためのフローチャートである。
【図11】図11は、記録紙の繊維方向及びノズル列方向処理のサブルーチンについて説明するためのフローチャートである。
【図12】図12は、報知処理のサブルーチンについて説明するためのフローチャートである。
【図13】図13は、本実施形態のプリンタに設けられた制御部の構成を示すブロック図である。
【図14】図14は、印字率から紙伸び率を求めるテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、本実施形態の画像記録装置に用いられる記録媒体の性質について説明する。記録媒体として、一般的に使用されている記録紙(又はコピー記録紙)に用いられているカット紙は、製造工程に起因して生じる紙目(繊維(セルロース)の向き)がある。図2(c)に示すように、製造時に、カット紙の長手方向と繊維の向きが平行であるとき、縦目(T目)と称している。一方、カット紙の長手方向と繊維の向きが垂直となっているとき、横目(Y目)と称されている。
【0013】
これらの記録紙は、吸水すると、繊維の向き(矢印方向)には伸びにくく、直交する向きには伸びやすい特徴がある。記録紙の種別や紙厚等により異なるが、繊維方向の記録紙の伸縮率は、最大0.1〜0.5%程度であり、それと直交方向では、最大2〜3%程度であり、縦目と横目では、2〜10倍ほど伸び率が異なっている。但し、これらの数値は、最大値(完全に塗らしたとき)であり、実際の水性インクを用いたインクジェット記録では、このままの数値となるわけではない。ライン型記録ヘッドによる水性インクの印刷による場合は、記録紙の飽和吸水量に比較すると、記録紙に着弾するインクの液量は少ないため、実際の伸び量は数10μm程度のオーダーと想定される。
【0014】
以下に説明する実施形態においては、水性インクを用いて画像記録する際に、画像記録装置におけるノズル配列方向と、記録紙の繊維方向(紙目方向)との関係に着目し、これらの向きが互いに平行となるように合わせ込むことにより、記録紙に対するノズル列方向を平行な方向になるように配置して、紙伸びによる画像劣化を防止させる。
以下に説明する本発明の実施形態では、ノズル配列方向と、記録紙の繊維方向(紙目方向)との関係に着目し、画像記録時には互いに平行方向となる位置関係を持たせることにより、ノズル配列方向と平行な方向における紙伸びによる画像の劣化を抑制させる画像記録装置を提案する。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1乃至図12を参照して、第1の実施形態の画像記録装置について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る画像装置の一例となる複数のフルライン型記録ヘッド(以下、ラインヘッドと称する)を搭載したインクジェットプリンタ(以下、プリンタと称する)の概略的な構成を示す図である。また、記録媒体として、記録紙を一例としている。
【0016】
本実施形態のプリンタ1は、記録紙2を供給する記録紙供給機構3と、記録紙2を保持して搬送する搬送機構4と、画像が記録された記録紙2を排出し収容する収容機構5と、記録紙2に画像を記録する複数のラインヘッド6(6C,6K,6M,6Y)が設けられた記録ヘッド部6と、ユーザによる操作により種々の設定等を行う入力部7と、設定された情報や装置の動作状況等を表示するモニタ部8と、ライン型記録ヘッド6にインクを供給するインク供給部9と、装置全体を制御する制御部10と、ラインヘッド6を移動させるヘッド移動機構20と、により構成される。これらの構成部位は、図示しない装置フレーム内に配置されている。
【0017】
このような構成において、供給機構3は、複数の記録紙をそれぞれに収容する上段トレイ13及び下段トレイ14と、1枚ずつ取り出した記録紙2を搬送機構4へ導くガイド部材15とで構成される。搬送機構4は、記録紙2を吸着保持して搬送するドラム16と、ドラム16に保持された記録紙2の端部(先端、後端)を検出する記録紙検出センサ17と、図示しないローラ等とにより構成される。ドラム16は、制御部10に駆動制御される図示しない駆動モータにより回転軸16aを中心として回転される。さらに、ドラム16の回転軸16aには、その回転と連動するように、エンコーダ51が設けられている。このエンコーダ51は、ドラム16の回転角に応じた信号(A相、B相)を制御部10に出力する。制御部10は、この信号をモニタすることで、回転角及び回転速度、回転方向のいずれについても検出できる。
【0018】
収容機構5は、ドラム16に近接するように設けられ、ドラム16の円筒の外周面に張り付いた記録紙2を剥がし取る剥離爪18と、取り出された記録紙1を収容する排出トレイ19とで構成される。
ラインヘッド6は、記録紙幅を越える長さの記録領域(ノズル列長)を有し、例えば、300dpiの解像度を有している。ラインヘッド6は、ドラム16の外周面に沿って且つ、所定間隔を空けてノズル面6aが対向するように、各ラインヘッド6C,6K,6M及び6Yが図示しないフレームに取り付けられている。ここでは、4色のインクを用いる4つのラインヘッドを用いた構成例であるが、限定されるものではなく、インク色の数に応じて増減することもできる。これらのインクは、各色のインクボトルから(図示せず)インク色毎に独立して設けられたインク供給経路(図示せず)を介して供給される。
【0019】
ラインヘッド6は、主として、インク供給経路からインクが供給されるインク室と、複数のノズルが列状に形成されたノズルプレート(ノズル面)と、インク室に連通してノズル毎に設けられた圧電素子と、で構成される。この構成において、圧電素子は、インク室から供給されたインクをノズルから吐出させる。
【0020】
ヘッド移動機構20は、ラインヘッド6を搬送機構4による記録紙2の搬送方向(ドラム16の回転軸方向)と直交する方向(主走査方向)にノズル面6aに列状に形成された複数のノズル6b間のノズルピッチ(約84μm)の1/2に相当する距離(42μm)を移動させる。このヘッド移動機構20によって、ドラム16の回転毎(画像の記録毎)に、ラインヘッド6をドラム16の回転軸方向に微小量移動させることで、600dpiの解像度の画像記録を実現する。
【0021】
また、入力部7は、タッチパネル及びキースイッチ等からなり、装置の外装部分に露呈するように設けられている。モニタ部8は、例えば、液晶表示装置からなり、入力部7によるユーザからの指示内容と、装置の設定情報及び動作状況(警告表示を含む)を表示する。尚、タッチパネルは、モニタ部8の液晶画面上に設けられている。ユーザがタッチパネルに触れることで、使用する記録紙の型番等を選択して設定できるようになっている。また、インク切れ、記録紙切れ等の警告は、液晶画面の表示を通じて、ユーザに知らせる。
【0022】
本実施形態の画像記録装置において、さらに、制御部9は、例えばLAN等のネットワーク11を介してパーソナルコンピュータなどの外部機器12が接続され、画像情報等(印刷情報及び印刷コマンド等)が入力される。ユーザが記録を行う画像情報又は文書情報を外部機器12からネットワーク11を通じてプリンタ1に送信する。これらの情報を受信した後、トレイに格納された記録紙が搬送されてドラム上で帯電吸着され、記録ヘッドより各色の水性のインク滴が記録紙上に吐出され、印刷物が取り出せるようになっている。
【0023】
また、詳細は後述するが、プリンタ1は、前述した紙伸びによる画質の劣化を補正する機能として、高画質モードを有している。高画質モード1には、ON(選択)とOFF(非選択)の状態があり、プリンタ1の入力部7により選択されて設定され、モニタ部8に、高画質モードの設定状態が表示される。
高画質モードが選択(ON)されていた場合、ユーザが、後述する所定の手順に従って記録紙を装填すると、プリンタ1内部において、紙伸び補正が実行される。一方、高画質モード1が非選択(OFF)の場合は、高画質モード2は選択されない。
【0024】
次に、本実施形態のプリンタの操作について説明する。
a.ユーザがプリンタ1に電源を投入する。電源が投入されると、プリンタ1は、初期設定を行い、インクの残量の有無、記録紙の有無等を検出し、さらに画像記録が可能か否かのチェックを行い、記録開始可能であることを示唆するスタート画面を表示する。一方、記録開始ができない場合には、そのプリンタ1の現在の状態を警告表示する。
【0025】
b.記録紙2を装填する手順に移行する。
[記録紙の残量チェック]
プリンタ1は、トレイ13,14内に装填された記録紙2の残量を図示しない記録紙残量センサにより検出を行う。この検出結果において、トレイ13,14に記録紙2の残量が無い場合には、モニタ部8の画面にトレイ13,14に記録紙2を補充することを促す文字又はマークが表示される。図4(a)は、横目記録紙の装填の確認画面表示例を示す。
【0026】
[記録紙の装填及び設定]
ユーザは、モニタ部8に表示される記録紙補充の表示を確認し、記録紙2が無くなったトレイに対して、記録紙2を装填する。図2(a),(b)には、本実施形態のプリンタ1で使用する指定の記録紙の梱包31と、梱包31に貼付される記録紙サイズや型番等の印刷された外装ラベル32,33の2例を示している。このうち、型番は、記録紙2における紙厚、縦目・横目、コート紙/普通紙等の相違を識別するための、固有の文字列である。尚、図2(c)には、縦目記録紙(T)の概念を示し、図2(d)には、横目記録紙(Y)の概念を示している。これらのうち、縦目記録紙(T)は、記録紙の長手方向と繊維方向が一致している。横目記録紙(Y)は記録紙の短手方向と繊維方向が一致している。
【0027】
一般に、記録紙の曲がりやすさは、繊維方向により異なるため、記録紙の選択により記録(印刷)後・製本後の仕上がりが異なる。また、この縦目・横目記録紙は、加工工程及び流通量が異なるため、購入価格が異なることがある。
従って、ユーザは、印刷物の仕上がり、製本時の綴じ(糸かがり綴じ、無線綴じ、網代綴じ、平綴じ)、記録紙の購入価格等を考慮して、縦目記録紙(T)、横目記録紙(Y)を任意に選択できるようになっている。
【0028】
以下、上段トレイ13に記録紙2を装填する例について説明する。
図5は、上段トレイ13を上から見た内部の構成を示している。尚、下段トレイ14についても同様であり、説明は省略する。
上段トレイ13内には、周辺の三方からに囲むように、中央方向の摺動する3つのスライダ(規制板)41,42,43が連動するように設けられている。いずれかの1つのスライダを位置Yと位置Tの間で摺動させると、残りの2つのスライダも同時に摺動するようになっている。スライダ41,42,43の位置を動かすことで、位置Yと位置Tを選択できる。これにより、装填する記録紙2のサイズに応じて、記録紙2の向き及び位置を規制する。
【0029】
また、上段トレイ13の底面には、表示シール44が貼り付けられており、記録紙2を縦置き、又は横置きするように、向きのガイド表示が付けられている。ユーザは、購入した記録紙2の種別(縦目記録紙又は、横目記録紙)に応じて、スライダ41,42,43の位置(位置T、位置Y)を調整して記録紙2を装填する。例えば、図2(a)に示したように、縦目記録紙(T)を使用する場合、記録紙2の外装ラベル32の記載内容に合わせて、図6(a)に示すように、上段トレイ13内の各スライダ41,42,43を位置Tに調整した後、記録紙長手方向がY軸方向となるように記録紙2を装填する。
【0030】
また、図2(b)に示したように、横目記録紙(Y)を使用する場合、記録紙2の外装ラベル32の記載内容に合わせて、図6(b)に示すように、上段トレイ13内のスライダ41,42,43を位置Yに調整したのち、記録紙短手方向がX軸方向となるように記録紙2を装填する。尚、図5及び図6(a),(b)には、後述の説明のため、プリンタ内におけるラインヘッド6のノズル面6aに形成されているノズル列6bを記載している。
【0031】
ユーザが上段トレイ13に記録紙2を装填し、上段トレイ13をプリンタ1の本体内に収納すると、トレイ近傍に設けられた複数個の図示しないセンサにより、上段トレイ13の開閉の状態、再度の記録紙2の残量の有無、スライダ41,42,43の各位置(位置T又は位置Y)が検出され、プリンタ1は、上段トレイ13に装填された記録紙2の向きやサイズを判別する。その結果、モニタ部8は、図4(b)に示すスタート画面へ移行し、上段トレイ13に装填された記録紙2の種別を確認するための設定情報が表示される。
【0032】
[記録紙の種別の設定]
図3(b)は、上段トレイ13に記録紙2を装填して、上段トレイ13を閉じたとき、モニタ部8に表示される記録紙2の型番の選択を促す設定情報を表示する画面例を示している。記録紙2の型番は、記録紙2の種別、サイズ、紙目の向きに対応した固有の文字列からなる。記録紙2の装填後、ユーザは、記録紙2の型番を示すボタンを、モニタ部8の画面に重置される透明タッチパネルからなる入力部7上でタッチ入力すると、図3(c)に示すように、縦目記録紙・横目記録紙等の記録紙2の型番に応じた確認画面が表示される。この例では、入力部7上でユーザが型番「XT4003」をタッチ入力した場合に表示される確認画面を示している。また、図3(d)は、入力部8上でユーザが型番「XY40004」をタッチ入力した場合に表示される確認画面を示している。
【0033】
この後、ユーザは、図3(c)及び図3(d)に示すように、モニタ部8上で、上段トレイ13内に装填した記録紙2の種別(縦目か横目か)が購入した記録紙2の外装ラベル32の表示通りか否かを確認し、正しい場合には入力部7の「OK」ボタン部分にタッチして入力する。この入力に従い、プリンタ1は、記録開始可能な状態に設定されると共に、高画質モードが設定(ON)される。尚、装填した記録紙2が指定外であって、ユーザが縦目・横目が分からない等の場合は、図3(a)に示す「キャンセル」ボタンを選択する。この場合も、プリンタ1は、記録開始可能な状態に設定されるが、印刷モードが高画質モードではなく、通常画質モードに設定される。
【0034】
ユーザは、モニタ部8に表示される図3(b)に示す画面において、入力部7によるタッチ入力で記録紙2の種別の設定を行うと、プリンタ1は、選択された記録紙2の種別を制御部10内に設けた図示しない不揮発メモリにアクセスする。即ち、選択した型番に応じ、予め不揮発メモリに記録された記録紙2の種別に対応したテーブルを参照して、画像記録動作の際には、記録紙のサイズ、縦目記録紙又は横目記録紙の種別を読み出して維持する。この記録紙2の種別の情報は、詳細は後述するように、高画質モードの判定に用いられる。
【0035】
本実施形態では、ユーザの手動入力による設定であったが、これに限定されるものではなく、例えば、バーコード入力を利用する。即ち、入力部7にバーコード読み取り装置を組み込み、且つ外装ラベルに表記される文字記号情報と同じ情報をバーコードとして並記することで実現できる。バーコード入力を用いることで、ユーザの入力ミスを防止でき、且つ入力にかかる手間を簡素化することができる。
【0036】
他の入力手法としては、記録紙の端部に紫外光により読み取れる透明インクにより型番を印刷しておき、プリンタ1内のトレイ上方に紫外光を照射し、記載されている情報を読み取るセンサを配置する。この構成により、ユーザが引き出したトレイにその記録紙を装填し、トレイを戻すだけで、記録紙の型番がプリンタ1に読み込まれて設定される。即ち、記録紙を装填しただけで、図3(c)又は図3(d)に示す確認画面まで移行させることができる。よって、従来のプリンタの取り扱いと比較しても、記録紙の装填ミス発生時の再装填以外は、ユーザに求められる手間は無い。
【0037】
次に、記録紙2が装填されて、ユーザによる設定が完了すると、後述するように、高画質モードがONとなり、記録が可能な状態となる。高画質モードがONとなっているとき、ネットワーク11を通じて外部機器12の印刷画面が表示され、且つ図4(b)に示すように、モニタ部8の画面上には、「高画質モード」が表示される。以後、高画質モードの設定状態であれば、外部機器12からプリンタ1に、印刷ジョブ(画像データ及び記録コマンド)をネットワーク11経由で送信すると、プリンタ1は高画質モードで、記録紙2に画像記録を実行する。つまり、上述した紙伸びの影響を補正する機能が働き、ユーザは所望の印刷物を得ることができる。
【0038】
[記録紙の種別の再設定]
例えば、ユーザが記録紙の種別設定を行わなかった場合、記録紙種が分からない場合、トレイ内のスライダの向きを間違えた場合、記録紙種別の入力とスライダの設定(実際に装填されている記録紙サイズ、向き)が一致しない場合には、高画質モードはONとはならない。そこで、適切な記録紙2の型番等の情報を入力部7へ再入力することにより、「高画質モード」をONとすることができ、高画質モードによる記録が可能となる。この場合入力部7には、再設定ボタンを設ける。
【0039】
次に、第1の実施形態に係るプリンタにおける記録動作について、より詳細に説明する。図7は、プリンタ1による全体的な画像記録動作を説明するためのフローチャートである。
まず、ユーザがプリンタ1の電源を投入する(ステップS1)。この投入により、プリンタ内の各構成部位が起動して、メモリの初期化や各種センサの出力が確認されて、初期設定が行われる(ステップS2)。この初期設定時に、インク不足等があれば、インクを補充するようにモニタ部8に表示されて、ユーザに適切な作業を行うように促している。
【0040】
次に、上段トレイ13及び下段トレイ14における記録紙2の残量が確認され(ステップS3、ステップS4)、その残量が不足と判定されなければ、記録開始可能状態となり(ステップS5)、スタート画面を表示させる。
【0041】
次に図8に示すフローチャートを参照して、図7に示した上段トレイ13の動作におけるサブルーチンについて説明する。尚、下段トレイ14における動作も上段トレイ13における動作と同等であり、その説明を省略する。また、図7及び図8では、エラー処理については省略している。例えば、一定時間以上、開放しているトレイを閉じなかった等の異常操作が生じた場合には、これらのルーチンを抜けて、モニタ部8に、予め定めたエラー画面を表示して警告し、ユーザに適切な処理を促す。
【0042】
図7に示した上段トレイ13の確認のステップに入ると、図8に示すように、まず、パラメータの設定が行われる(ステップS11)。即ち、上段トレイ13に収容される記録紙2のサイズや、その装填の向き(TY1、TY2)等のパラメータが初期化される(TY1=0、TY2=0及びMODE1=0)。
【0043】
次に、記録紙検出処理が実施される(ステップS12)。即ち、トレイの開閉を検出し、トレイが閉じられていることを確認したときにプリンタは記録紙サイズ及び装填の向きを検出する。その後、記録紙種設定処理が行われる(ステップS13)。即ち、記録紙の型番の入力をユーザに促し、ユーザから入力され記録紙2の型番を元に、制御部10に搭載される不揮発性メモリに設けられたテーブルを参照して、記録紙の紙目(繊維)の向きを認識し、装填された記録紙2が縦目記録紙又は横目記録紙かを設定する。
【0044】
次に、繊維方向・ノズル列方向判定処理を行う(ステップS14)。即ち、前述した記録紙検出処理と型番の入力情報から、装填されている記録紙2の繊維方向を認識する。この繊維方向がY軸方向(ノズル列の配列方向)と一致する場合は(YES)、MODE1として、「1(一致する)」の戻り値を得て、高画質モードをONに設定し(ステップS16)、メインルーチンにリターンする(ステップS17)。
【0045】
一方、一致しない場合は(NO)、MODE1として「0(一致しない)」の戻り値を得て、報知処理(ステップS15)を行う。この報知処理は、ユーザの入力を取得し、ユーザからの入力がキャンセル(0)された場合は、ステップS17に移行して、リターンする。一方、ユーザからの入力が記録紙種の再設定(1)である場合は、ステップS13に戻り、記録紙種設定処理を行う。さらに、ユーザが記録紙再装填(2)を選択した場合は、ステップS12に戻り、記録紙検出処理を行う。
【0046】
次に、図9に示すフローチャートを参照して、図8に示したステップS12の記録紙検出処理の動作におけるサブルーチンについて説明する。ここでは、上段トレイ13を例として説明し、同等の動作を行う下段トレイ14の説明は省略する。
【0047】
まず、上段トレイ13の開閉状態を検出する(ステップS21)。上段トレイ13が開状態のままであれば、ユーザにより上段トレイ13が閉じられるまで待機する。次に、上段トレイ13が閉じられると、記録紙2の残量及び、スライダ41,42,43の各位置情報を取得する(ステップS22)。これらの情報から、記録紙2のサイズと装填された記録紙の向きを検出する。
【0048】
次に、装填された記録紙2がどの向きで配置されているか、即ち、縦目記録紙の配置か否かを判定する(ステップS23)。この判定で、縦目記録紙の配置である場合は(YES)、フラグをTY1=1に設定し(ステップS25)、メインルーチンにリターンする。一方、縦目記録紙の配置ではない場合は(NO)、フラグをTY1=2に設定し(ステップS24)、リターンする。
【0049】
次に、図10に示すフローチャートを参照して、図8に示したステップS13の記録紙種設定処理の動作におけるサブルーチンについて説明する。
記録紙種設定処理においては、まず、図3(b)に示すような型番の入力画面を表示する(ステップS31)。この入力画面を表示して、ユーザによる入力を待機する(ステップS32)。
【0050】
ユーザの入力が終了すると、入力された記録紙の型番を元に不揮発メモリのテーブルを参照して、予め記憶された情報に基づき、装填された記録紙2が縦目記録紙又は横目記録紙かの判別を行う(ステップS33)。その後、記録紙の確認画面を表示する(ステップS34)。上記判定で、例えば、上部トレイ13に縦目記録紙を装填し、入力部7により縦目記録紙を型番として入力した場合には、図3(c)に示す確認画面がモニタ部8に表示される。即ち、ステップS33で確認した縦目記録紙又は、横目記録紙の種別に応じて、図3(c)又は図3(d)に示すような確認画面をそれぞれ表示してユーザによる入力を待機する。
【0051】
その後、ユーザにより確認のためのOKボタンが押された場合は、入力が正常であったとして、高画質モードに設定される条件で、メインルーチンにリターンする。一方、認められず、OKボタンが押されず、所定時間が経過した場合には、高画質モードの記録を止めたものとして、通常モードに設定される条件でメインルーチンにリターンする。
【0052】
次に、図11に示すフローチャートを参照して、図8に示したステップS14の繊維方向・ノズル列方向判定処理の判定動作におけるサブルーチンについて説明する。
この判定では、前述したフラグTY1及びTY2が適切に入力され(TY1>0、TY2>0)、なお且つ、両者が一致しているか否かを判定する(ステップS41)。この判定において、TY1>0且つ、TY1=TY2である場合、即ち、ユーザによる入力がなされており、記録紙2の紙目がラインヘッド6のノズル列方向と一致している場合は(YES)、図8のステップS16に移行して、MODE1に値1が設定され、高画質モードがONに設定される。それ他以外の場合は(NO)、図8のステップS15に移行して、MODE1に値0が設定され、報知処理が実行される。
【0053】
次に、図12に示すフローチャートを参照して、図8に示したステップS15の報知処理の判定動作におけるサブルーチンについて説明する。
この報知処理においては、まず、図4(c)に示すような報知画面が表示される(ステップS51)。即ち、図4(c)に示した報知画面により、ユーザがその対応について入力可能な状態とする。
【0054】
次に、ユーザの入力を検出する(ステップS52)。ユーザの入力があった場合は、選択された設定を保持する。即ち、画面上で「キャンセル」を選択した場合は、フラグに値0が設定され、ステップS17へリターンする(ステップS54)。また、「型番を入力しなおす」を選択した場合は、フラグに値1が設定され、記録紙種設定処理(ステップS13)へリターンする(ステップS55)。
【0055】
また、「記録紙を入れなおす」を選択した場合は、フラグに値2が設定され、その対処方法、例えば、「記録紙の装填方向が間違っています。」が表示される。ユーザは、該当するトレイを引き出し、記録紙の縦横の装填方向を逆になるように入れ替えて、トレイ13を元に戻す。この入れ替え作業が終了した後、ステップS12へリターンして、記録紙検出処理に戻る。これにより、図8に示すように、繊維方向とノズル列方向が一致しない場合は、ユーザに報知がされ、記録紙の型番の再設定や記録紙の再装填が促されることになる。
【0056】
図13は、本実施形態のプリンタ1に設けられた制御部10の構成を示すブロック図である。
制御部10は、画像メモリ53と、画像信号生成回路54と、ヘッド駆動回路55と、ヘッド移動回路56と、紙伸び補正回路57とで構成される。さらに、ラインヘッド16の搬送方向上流側でドラムの近傍に配置され、記録紙の端部(先端及び後端)を検出する記録紙検出センサ17が設けられている。また、ネットワーク11を介して外部機器12と制御部10とで信号(画像データ等)の送受を行うためのインターフェース52が設けられている。画像メモリ53は、例えば、書き換え可能なフラッシュメモリやRAM等の半導体メモリにより構成される。画像メモリ53は、インターフェース52を介して入力した画像データを記憶する。
【0057】
画像信号生成回路54は、画像メモリ53より読み出された画像データからラインヘッド6を駆動させるための画像信号を生成する。具体的には、画像信号生成回路54は、不揮発メモリを備え、その不揮発メモリに予め記録された図14に示すような記録紙の種別毎に、紙伸び量を求めるためのテーブルが設けられている。このテーブルを参照して、記録される各ページの画像メモリの輝度値情報から、使用する印字率(ページあたりのインクの吐出量)を求める。さらに印字率から、対応する紙伸び量(β1)を求め、紙伸び補正回路57に伝達する。図14に示す紙伸び量を求めるテーブルは、例えば、印字率α1が20%であるとき、テーブルを上段から参照していき、搬送方向の紙伸び量β1=0.2%と判定する。
【0058】
ヘッド駆動回路55は、画像信号に基づき、ラインヘッド6を駆動して、記録紙2に画像データに対応したインク滴を吐出して画像を記録する。ヘッド移動回路56は、ヘッド移動機構20の駆動制御を行い、記録動作中でノズルからインクが不吐出の期間中にラインヘッド6をノズルピッチ以下の距離を微小移動する。即ち、ノズルピッチ内で複数回、例えば、1/2ピッチの1回(2パス)の移動を行うことで、300dpi相当のノズルピッチのラインヘッド6を用いて600dpi相当の高解像度の画像を記録することができる。前述したエンコーダ51により得られた出力(エンコーダ信号)は、紙伸び補正回路57を経由して、ヘッド駆動回路55に伝達される。
【0059】
紙伸び補正回路57は、高画質モードがONのときは、以下に述べるようにエンコーダ信号のタイミングを遅らせてタイミング信号として出力する。高画質モードがOFFの場合は、エンコーダ信号をそのままタイミング信号として、ヘッド駆動回路55に伝達する。
【0060】
図1に示すドラム16の外周面に記録紙2が搬送されるとき、記録紙検出センサ17により、記録紙2の先端が検出される。すると、図10に示すように、記録紙検出信号(ドラム16上に記録紙2が搬送されたタイミング、記録紙2の先端位置)が紙伸び補正回路57に入力される。
【0061】
さらに、エンコーダ51が出力したエンコーダ信号は、紙伸び補正回路57に入力される。図3に示すドラム16の半径等の機械的寸法によるパラメータは、予め装置設計から分かっているので、紙伸び補正回路57において、エンコーダ信号と記録紙搬入のタイミングから、ドラム面上に吸着保持された記録紙2の位置が得られる。
【0062】
紙伸び補正回路57は、ドラム16上に記録紙2が搬送されてから、記録紙2がドラムを1周回る間は、エンコーダ信号をそのまま、タイミング信号として、ヘッド駆動回路55に伝達される。
記録紙2は、ドラム16の回転による搬送が2周目となると、ヘッド移動回路56の指示によって、ヘッド移動機構20は、ラインヘッド6がドラム回転軸方向に1/2ピッチを移動する。同時に、紙伸び補正回路57は、エンコーダ信号を、紙伸び程度の時間遅れを持たせて出力する。例えば、図14において、紙伸び量β1が0.2%と判定された場合は、前述した画像信号生成回路54から、パルス幅を0.2%遅らせた信号をタイミング信号として、ヘッド駆動回路55に伝達する。
【0063】
ヘッド駆動回路55は、遅延のタイミング信号に応じて、画像メモリ53から記録紙幅に対応する1行分の画像データを読み出し、ラインヘッド6に駆動信号(画像信号)を送る。ラインヘッド6は、ノズルを複数形成されたノズルプレート及びノズル穴に対応するように加工された圧電素子を有する。圧電素子近傍にはインクが供給されている。ヘッドは1行分の画像データに応じた電圧信号を印加されると、対応するノズル位置に相当する圧電素子部分が変形する。これにより、1行分に対応する画像データに対応して、各ノズル部から、インク滴を吐出する。
【0064】
以上のように、1周目に比較して2周目におけるタイミング信号の周期を長くすることで、2回目の記録面における画像長は、紙伸びの比率に応じて長くなる。従って、紙伸び補正回路57により、1周目の着弾により膨潤した記録紙長の影響は、2周目には、画像長を長くすることで、補正されて搬送方向の解像度は、改善される。
また、2周目には、上述したように、ラインヘッドをノズル列方向に1/2ノズル間隔シフトする。従って、ノズル列方向については、600dpiの解像度が得られる。
【0065】
[本実施形態が使用する記録紙の説明]
本実施形態が使用する記録紙について、詳細に説明する。ここでは、A4サイズの記録紙を例としている。
一般に、記録紙の特性として、膨潤した際の記録紙の伸びは、紙目方向は小さく、紙目に垂直方向は大きい。繊維方向と垂直方向の伸び量で比較すると、1:2〜1:10程度の数値となる。従って、記録紙の最大伸び量は、紙目に対して垂直方向が支配的となる。
【0066】
図6(a)、(b)に示したように、第1の実施形態によれば、高画質モードがONのとき、記録紙2の紙目は、ラインヘッドのノズル列方向即ち、Y軸方向と平行となるよう設定している。従って、この設定であれば、記録紙2の主たる伸びは、記録紙の搬送方向となる。搬送方向における記録紙の伸びの影響による画質の劣化は、紙伸び補正回路によって記録タイミングを調整することによって補正できる。
【0067】
また、ノズル列方向については、紙伸び量は1/2〜1/10となり、ノズル間隔に比較すると小さな値であって、実質的には、白筋の発生をなくすことができる。従って、トレイ内の記録紙の方向を紙目に基づき設定することにより、ノズル列方向の記録紙の伸びの影響が格段に改善される。
記録紙2は、インクジェットプリンタ記録紙の例を挙げたが、普通紙等であっても紙伸びによる画質の劣化が改善するため、良好に使用できる。また、薄口記録紙、厚口記録紙等であってもよい。この場合、媒体の伸び量が異なるため、型番による選択画面により設定するようにすると、なお好適である。
【0068】
以上説明したように、本実施形態における高画質モードによる記録は、ユーザが装填した記録紙2に応じて、記録中の、特にノズル列方向における紙伸びの影響を回避し、高画質の画像を記録することができる。即ち、水性インクの浸透による主たる紙伸びが記録紙の搬送方向となり、補正しにくいノズル列方向における紙伸びを抑えることができるため、高画質のフルカラー画像を得ることができる。さらに、高画質モードが設定(ON)されているとき、プリンタ1は記録紙2のサイズ・向き、種別に応じ、記録紙2が搬送機構4からラインヘッド6に至るタイミング信号を補正することで、水性インクの浸透によって生じた記録紙の搬送方向における紙伸びによる画質悪化を抑制でき、高画質のフルカラー画像を得ることができる。尚、高画質モードが非設定(OFF)となっているとき、タイミング信号の補正は実施されない。よって、本実施形態によれば、ノズル列方向及び搬送方向のいずれにおいても、白筋等の記録(印刷)解像度の劣化のない画像記録を行うプリンタを提供することができる。
【0069】
第1の実施形態の変形例について説明する。
ラインヘッド6のノズル列方向に対しても、ドラム16の回転数即ち、最初の画像記録からの経過時間に従って画像長を微調整するとさらに有用である。即ち、ラインヘッドのノズル間隔は、ノズル加工時に決まるため、画像記録時に微調整はできない。例えば、図14に示す紙伸び量β1のように、ノズル列方向についても、記録紙の伸び量を判定できる。ノズル列方向においても、記録される画像の画像データを微調整すると、解像度は改善することができないものの、色ずれの影響を外観上、改善することができ、さらに良好である。
【0070】
また、本実施形態においては、記録紙装填時の紙目方向の設定は、ユーザによって行われる。しかしながら、トレイ内部近傍に、エリアセンサを取り付けて紙目方向の検出を自動的に行う形態としてもよい。さらに、インク色は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色の例を挙げて説明したが、必ずしも限定されるものではなく、例えば、ホワイト、ライトシアン、ライトマゼンタ等を、さらに追加してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…インクジェットプリンタ、2…記録紙、3…記録紙供給機構、4…搬送機構、5…収容機構、6,6C,6K,6M,6Y…ラインヘッド、6a…ノズル面、7…入力部、8…モニタ部、9…インク供給部、10…制御部、11…ネットワーク、12…外部機器、13…上段トレイ、14…下段トレイ、15…ガイド部材、16…ドラム、16a…回転軸、17…記録紙検出センサ、18…剥離爪、19…排出トレイ、20…ヘッド移動機構、31…梱包、32,33…外装ラベル、41,42,43…スライダ(規制板)、51…エンコーダ、52…インターフェース、53…画像メモリ、54…画像信号生成回路、55…ヘッド駆動回路、56…ヘッド移動回路、57…紙伸び補正回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙が装填されるトレイと、
前記トレイに装填された前記記録紙を搬送する記録紙搬送手段と、
前記搬送される前記記録紙に向けてインクを吐出する複数のノズルが直線状に配列され、当該ノズルの配列方向が前記記録紙の搬送方向に対して直交するように配置されたインクジェットヘッドと、
を具備し、
前記記録紙に向けて、前記インクジェットヘッドから前記インクを吐出する際に、前記記録紙の繊維方向を前記インクジェットヘッドの前記ノズルの配列方向に一致させることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記インクジェットプリンタにおいて、
前記記録紙に向けて、前記インクジェットヘッドから前記インクを吐出する際に、前記記録紙の繊維方向が前記インクジェットヘッドの前記ノズルの配列方向に一致するような、前記トレイへの前記記録紙の装填を手引きする報知手段を有することを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記記録紙固有の記録紙種別情報が操作入力される入力部と、
前記トレイ内に装填された前記記録紙の向きを検出する記録紙向き検出部と、
前記入力操作部から入力された記録紙種別情報と、前記記録紙向き検出部からのトレイ内の記録紙向き情報とから、当該トレイ内の記録紙が搬送され、当該記録紙に向けてインクジェットヘッドからインクを吐出する際に、前記記録紙種別情報として入力された記録紙の繊維方向が前記インクジェットヘッドのノズル配列方向に一致するか否かを判定する判定手段と、
を、さらに具備し、
前記報知手段は、前記判定手段によって、記録紙の繊維方向が前記インクジェットヘッドの前記ノズルの配列方向に一致しないと判定されたならば、前記トレイ内の記録紙の向きを変更するように促すことを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
さらに、摺動可能で前記トレイ内に装填された前記記録紙の端部に当てつけ、当該トレイ内における前記記録紙の向きを規定する規制板を具備し、
前記記録紙向き検出部は、前記規制板の設置位置を検出することで前記トレイ内における記録紙の向きを検出することを特徴とする請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記記録紙向き検出部から出力された信号に応じて、前記記録紙に記録する画像の画像長が増大するように、前記インクジェットヘッドからのインク吐出タイミングを変更する制御部を具備することを特徴とする請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記報知手段は、前記トレイ内に装填される前記記録紙の向きを知らしめる第1の表示部を含むことを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記報知手段は、前記トレイ内に装填される前記記録紙の端部に当てつけることで、当該トレイ内における記録紙の向きを規定する規制板の設置位置を知らしめる第2の表示部を含むことを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項1】
記録紙が装填されるトレイと、
前記トレイに装填された前記記録紙を搬送する記録紙搬送手段と、
前記搬送される前記記録紙に向けてインクを吐出する複数のノズルが直線状に配列され、当該ノズルの配列方向が前記記録紙の搬送方向に対して直交するように配置されたインクジェットヘッドと、
を具備し、
前記記録紙に向けて、前記インクジェットヘッドから前記インクを吐出する際に、前記記録紙の繊維方向を前記インクジェットヘッドの前記ノズルの配列方向に一致させることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記インクジェットプリンタにおいて、
前記記録紙に向けて、前記インクジェットヘッドから前記インクを吐出する際に、前記記録紙の繊維方向が前記インクジェットヘッドの前記ノズルの配列方向に一致するような、前記トレイへの前記記録紙の装填を手引きする報知手段を有することを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記記録紙固有の記録紙種別情報が操作入力される入力部と、
前記トレイ内に装填された前記記録紙の向きを検出する記録紙向き検出部と、
前記入力操作部から入力された記録紙種別情報と、前記記録紙向き検出部からのトレイ内の記録紙向き情報とから、当該トレイ内の記録紙が搬送され、当該記録紙に向けてインクジェットヘッドからインクを吐出する際に、前記記録紙種別情報として入力された記録紙の繊維方向が前記インクジェットヘッドのノズル配列方向に一致するか否かを判定する判定手段と、
を、さらに具備し、
前記報知手段は、前記判定手段によって、記録紙の繊維方向が前記インクジェットヘッドの前記ノズルの配列方向に一致しないと判定されたならば、前記トレイ内の記録紙の向きを変更するように促すことを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
さらに、摺動可能で前記トレイ内に装填された前記記録紙の端部に当てつけ、当該トレイ内における前記記録紙の向きを規定する規制板を具備し、
前記記録紙向き検出部は、前記規制板の設置位置を検出することで前記トレイ内における記録紙の向きを検出することを特徴とする請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記記録紙向き検出部から出力された信号に応じて、前記記録紙に記録する画像の画像長が増大するように、前記インクジェットヘッドからのインク吐出タイミングを変更する制御部を具備することを特徴とする請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記報知手段は、前記トレイ内に装填される前記記録紙の向きを知らしめる第1の表示部を含むことを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記報知手段は、前記トレイ内に装填される前記記録紙の端部に当てつけることで、当該トレイ内における記録紙の向きを規定する規制板の設置位置を知らしめる第2の表示部を含むことを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図4】
【図5】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−86443(P2012−86443A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234632(P2010−234632)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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