説明

画像読取り装置および画像形成装置

【課題】精度よく画像データを読取ることができる画像読取り装置を提供する。
【解決手段】画像読取り装置は、CCDからの出力信号を補正する(S13)。具体的には、出力信号のゲインの値を増大して補正する。このとき、出力信号のゲインの値を決定する(S14)。そして、決定されたゲインの値が所定の値よりも小さいか否かを判断する(S15)。所定の値より大きいと判断した場合(S15において、NO)、制御部は、電圧供給部からの冷陰極ランプに供給する供給電圧を大きくするよう調整する(S16)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像読取り装置および画像形成装置に関し、特に原稿に光源から光を照射し、その反射光から原稿の画像データを読取る画像読取り装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、原稿をADF(Auto Document Feeder)等の搬送部材で読取り位置まで搬送し、搬送された原稿の画像データをCCD(Charge Coupled Device)等により読取ることができる画像読取り装置が具備されているものがある。画像読取り装置は、搬送された原稿に光源から光を照射し、その反射光をCCDにより受光する。CCDは、受光した反射光からセンサ出力電圧としてアナログ信号を出力する。出力されたアナログ信号は、AD(Analog Digital)変換器にてデジタル信号に変換される。
【0003】
反射光の光量は、CCDの感度や周囲温度等に応じて変化する。そうすると、各画像読取り装置によって、読取りの精度が異なるため、形成される画像の精度が画像形成装置の個体間でバラつきを生じる虞がある。したがって、画像読取り装置は、CCDから出力される出力信号を、周囲温度等に起因する出力信号の差を是正するように補正する。例えば、出力信号のゲインの値や出力信号のオフセットの値を補正する。
【0004】
また、光量を補正する画像読取り装置に関する技術が、特開平6−164837号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1によると、画像読取り装置は、光源を点灯させる点灯電圧が所定の電圧以下となるように、点灯電圧を調整する。そして、点灯電圧が所定の電圧より大きい場合は、点灯電圧を小さくすると共に、出力信号のゲインの値を補正することにより光源の光量を補正している。
【特許文献1】特開平6−164837号公報(段落番号0005〜0006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によると、点灯電圧の調整に合わせて出力信号のゲインの値を補正する。ここで、出力信号の補正における補正値が増大すると、出力信号に含まれるノイズも増加することになる。そうすると、画像読取り装置は、精度よく画像データを読取ることができなくなる虞がある。特に光源として、冷陰極ランプを使用する場合には、その傾向が顕著となる。また、このような画像読取り装置を具備する画像形成装置は、例えば、形成する画像の階調性が滑らかでなくなり、精度よく画像を形成できなくなる虞がある。
【0006】
この発明の目的は、精度よく画像データを読取ることができる画像読取り装置を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、精度よく画像を形成することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る画像読取り装置は、原稿に光を照射する冷陰極ランプと、冷陰極ランプに電圧を供給する電圧供給部と、冷陰極ランプから照射され原稿で反射した反射光を受光して信号を出力する光電変換素子と、出力された信号を補正する補正手段と、補正手段による補正が、所定の条件を具備しているか否かを判断する判断手段と、判断手段により所定の条件を具備しないと判断した場合に、電圧供給部からの供給電圧を調整する電圧調整手段とを備える。
【0009】
一実施形態として、補正手段は、信号のゲインの値を補正し、判断手段は、ゲインの値が所定の値よりも小さいか否かを判断する。
【0010】
他の実施形態として、補正手段は、信号のオフセットの値を補正し、判断手段は、オフセットの値が所定の値よりも小さいか否かを判断する。
【0011】
さらに他の実施形態として、光電変換素子は、CCDである。
【0012】
この発明の他の局面においては、画像形成装置は、上記のいずれかに記載の画像読取り装置と、画像を形成する画像形成部とを含む。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、画像読取り装置は、光電変換素子から出力される信号の補正が所定の条件を具備しない場合に、冷陰極ランプへの供給電圧を調整する。そうすると、調整された供給電圧で冷陰極ランプから光を原稿に照射し、その光に基づいて、光電変換素子から出力される信号を所定の条件を具備するように補正することができる。したがって、補正値の増大による読取り精度の劣化を防止することができる。その結果、精度よく画像データを読取ることができる。
【0014】
また、この発明に係る画像形成装置は、上記した画像読取り装置を含むため、精度よく画像データを読取ることができ、その結果、精度よく画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る画像形成装置の模式図である。図1を参照して、画像形成装置11は、画像形成装置11全体を制御する制御部(図示せず)と、セットされた原稿を自動的に搬送して、原稿の画像データを読取る画像読取り装置12と、画像形成装置11におけるユーザとのインターフェイスとなる操作・表示部を備えたスキャナ部13と、スキャナ部13の下部に設けられ、スキャナ部13や画像読取り装置12で読取られた画像データから、その画像を形成する画像形成部14と、画像形成部14の下部に設けられ、出力時に使用される各サイズの用紙を収納する複数の用紙収納部15a、15b、15cとを備える。画像形成部14は、スキャナ部13や画像読取り装置12で読取られた画像データを基に、感光体(図示せず)上に静電潜像を形成し、トナー等の現像剤により可視化して、用紙収納部15a等から搬送された用紙に出力する。
【0016】
次に、画像形成装置11に含まれる画像読取り装置12の具体的な構成について説明する。図2は、画像読取り装置12を示す概略図である。図2を参照して、画像読取り装置12は、原稿に光を照射する冷陰極ランプ32と、冷陰極ランプ32に電圧を供給する電圧供給部33と、冷陰極ランプ32から照射され原稿で反射した反射光を受光して信号を出力する光電変換素子としてのCCD21と、CCD21より出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器34と、原稿をCCD21の読取り位置まで搬送する搬送部材とを備える。
【0017】
冷陰極ランプ32は、読取りガラス30を介して原稿に光を照射する。電圧供給部33は、冷陰極ランプ32に電圧を供給する。これにより、冷陰極ランプ32は、光を照射する。電圧供給部33としては、例えば、インバータ等が挙げられ、その供給電圧は可変である。
【0018】
CCD21は、冷陰極ランプ32から照射され原稿で反射した反射光を受光する。そして、受光した反射光からセンサ出力電圧としてアナログ信号を出力する。出力されたアナログ信号は、AD変換器34にてデジタル信号に変換される。このようにして、画像読取り装置12は、原稿の画像データを読取る。
【0019】
搬送部材は、載置台31に載せられ、セットされた原稿を順次供給するピックアップローラ23と、読取られる原稿を一枚ごとに分離する分離ローラ24と、原稿をCCD21の読取り位置まで搬送する搬送ローラ25、26、27a、27bと、読取られた原稿を排紙する排紙ローラ28と、搬送ローラ25等によって搬送された原稿を案内する上ガイド部材29a、下ガイド部材29bとを含む。
【0020】
画像形成装置11に備えられる制御部は、CCD21から出力された出力信号を補正する。具体的には、出力信号のゲインの値および出力信号のオフセットの値を補正する。ここで、出力信号のゲインの値とは、出力信号を増幅して補正する際の増幅値である。また、出力信号のオフセットの値とは、出力信号の基準を調整して補正する際の調整値である。補正は、実際に出力された出力信号を目標とする出力信号に補正する。Vを目標とする出力信号、Vを実際に出力された出力信号、gを出力信号のゲインの値、oを出力信号のオフセットの値とすると、V=V×g+oという式を満たすように出力信号を補正する。ここで、ゲインの値gおよびオフセットの値oは可変であって、目標の出力信号Vと実際の出力信号Vとの差によって決定される。
【0021】
ここで、出力信号を補正する場合について説明する。図3は、出力信号のゲインの値を決定して出力信号を補正する場合における制御部の動作を示すフローチャートである。図1〜図3を参照して、まず、画像読取り装置12を含む画像形成装置11の電源が投入され、CCD21からの出力信号の補正が開始される(図3において、ステップS11、以下、ステップを省略する)。制御部は、読取りガラス30上にセットされた白基準となる原稿に、冷陰極ランプ32から光を照射する。CCD21は、その反射光を受光し、出力信号を出力する(S12)。
【0022】
そうすると、制御部は、CCD21からの出力信号を補正する(S13)。具体的には、上記した式を満たさない場合、出力信号を増幅する。すなわち、ゲインの値を増大させる。この場合、目標とする出力信号よりS12において実際に出力された出力信号が小さい程、ゲインの値をより増大させる。ここで、制御部は、補正手段として作動する。そして、ゲインの値を決定する(S14)。
【0023】
そうすると、S13における補正が、所定の条件を具備しているか否かを判断する。すなわち、決定されたゲインの値が所定の値よりも小さいか否かを判断する(S15)。ここで、制御部は、判断手段として作動する。
【0024】
そうすると、所定の条件を具備しない、すなわち、所定の値より大きいと判断した場合(S15において、NO)、制御部は、電圧供給部33から冷陰極ランプ32に供給する供給電圧を大きくするよう調整する(S16)。ここで、制御部および電圧供給部33は、電圧調整手段として作動する。
【0025】
そして、供給電圧が調整された冷陰極ランプ32からの光を白基準となる原稿に再度照射し、その反射光を受光する。そして、S12において出力信号を再度出力すると、S13において出力信号を再度補正し、S14においてゲインの値を決定する。そうすると、ここでは、S16において供給電圧を大きくしたため、決定されたゲインの値は所定の値より小さくなる(S15おいて、YES)。そうすると、出力信号のゲインの値の決定を終了する。
【0026】
図4は、出力信号のオフセットの値を決定して出力信号を補正する場合における制御部の動作を示すフローチャートである。図1、図2および図4を参照して、CCD21からの出力信号の補正が開始されると(S21)、制御部は、読取りガラス30上にセットされた黒基準となる原稿に、冷陰極ランプ32から光を照射する。CCD21は、その反射光を受光し、出力信号を出力する(S22)。
【0027】
そうすると、制御部は、CCD21からの出力信号を補正する(S23)。具体的には、上記した式を満たさない場合、出力信号の基準を調整する。すなわち、オフセットの値を増大させる。この場合、目標とする出力信号よりS22において実際に出力された出力信号が小さい程、オフセットの値をより増大させる。そして、オフセットの値を決定する(S24)。
【0028】
そうすると、決定されたオフセットの値が所定の値より大きいと判断した場合(S25において、NO)、制御部は、電圧供給部33から冷陰極ランプ32に供給する供給電圧を大きくするよう調整する(S26)。
【0029】
そして、供給電圧が調整された冷陰極ランプ32からの光を黒基準となる原稿に再度照射し、その反射光を受光する。そして、S22において出力信号を再度出力すると、S23において出力信号を再度補正し、S24においてオフセットの値を決定する。そうすると、ここでは、S26において供給電圧を大きくしたため、決定されたオフセットの値は所定の値より小さくなる(S25おいて、YES)。そうすると、出力信号のオフセットの値の決定を終了し、出力信号の補正を終了する。
【0030】
こうすることにより、画像読取り装置12は、CCD21から出力される出力信号の補正が所定の条件を具備しない場合、すなわち、出力信号のゲインの値または出力信号のオフセットの値のいずれかが所定の値より大きい場合に、冷陰極ランプ32への供給電圧を調整する。そうすると、調整された供給電圧で冷陰極ランプ32から光を原稿に照射し、その光に基づいて、出力信号のゲインの値または出力信号のオフセットの値を所定の値より小さくするように補正することができる。したがって、補正値の増大による読取り精度の劣化を防止することができる。その結果、精度よく画像データを読取ることができる。
【0031】
また、画像形成装置11は、このような画像読取り装置12を含むため、精度よく画像データを読取ることができ、その結果、精度よく画像を形成することができる。
【0032】
なお、上記の実施の形態においては、決定されたゲインの値またはオフセットの値のいずれかが所定の値より大きい場合に、電圧供給部33からの供給電圧を大きくするよう調整する例を説明したが、これに限らず、他の条件であってもよい。例えば、決定されたゲインの値およびオフセットの値の両方の値が所定の値より大きい場合に、供給電圧を大きくするよう調整してもよい。
【0033】
また、上記の実施の形態においては、目標とする出力信号より実際に出力された出力信号が小さい程、出力信号のゲインの値をより増大させる例について説明したが、目標とする出力信号より実際に出力された出力信号が大きい場合にも適用できる。具体的には、目標とする出力信号より実際に出力された出力信号が大きい場合に、出力信号のゲインの値を1未満の値とする。そして、供給電圧を小さくするよう調整する。
【0034】
また、出力信号のオフセットの値を増大させる場合においても同様に、目標とする出力信号より実際に出力された出力信号が大きい場合にも適用できる。具体的には、目標とする出力信号より実際に出力された出力信号が大きい場合に、出力信号のオフセットの値を0未満の値とする。そして、供給電圧を小さくするよう調整する。
【0035】
また、上記の実施の形態においては、CCD21からの出力信号を補正する場合に、まずゲインの値を決定し、次にオフセットの値を決定する例について説明したが、まずオフセットの値を決定し、次にゲインの値を決定してもよい。
【0036】
また、上記の実施の形態においては、光電変換素子は、CCD21とする例を説明したが、これに限らず、CIS(Contact Image Sensor:密着型イメージセンサ)であってもよい。
【0037】
また、上記の実施の形態においては、制御部は、画像形成装置11に備えられる構成の例について説明したが、これに限らず、画像読取り装置12に備えられる構成としてもよい。
【0038】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の一実施形態に係る画像形成装置の模式図である。
【図2】画像読取り装置を示す概略図である。
【図3】出力信号のゲインの値を決定して出力信号を補正する場合における制御部の動作を示すフローチャートである。
【図4】出力信号のオフセットの値を決定して出力信号を補正する場合における制御部の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
11 画像形成装置、12 画像読取り装置、13 スキャナ部、14 画像形成部、15a,15b,15c 用紙収納部、21 CCD、23 ピックアップローラ、24 分離ローラ、25,26,27a,27b 搬送ローラ、28 排紙ローラ、29a 上ガイド部材、29b 下ガイド部材、30 読取りガラス、31 載置台、32 冷陰極ランプ、33 電圧供給部、34 AD変換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿に光を照射する冷陰極ランプと、
前記冷陰極ランプに電圧を供給する電圧供給部と、
前記冷陰極ランプから照射され前記原稿で反射した反射光を受光して信号を出力する光電変換素子と、
前記出力された信号を補正する補正手段と、
前記補正手段による補正が、所定の条件を具備しているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記所定の条件を具備しないと判断した場合に、前記電圧供給部からの供給電圧を調整する電圧調整手段とを備える、画像読取り装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記信号のゲインの値を補正し、
前記判断手段は、前記ゲインの値が所定の値よりも小さいか否かを判断する、請求項1に記載の画像読取り装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記信号のオフセットの値を補正し、
前記判断手段は、前記オフセットの値が所定の値よりも小さいか否かを判断する、請求項1または2に記載の画像読取り装置。
【請求項4】
前記光電変換素子は、CCDである、請求項1〜3のいずれかに記載の画像読取り装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の画像読取り装置と、
画像を形成する画像形成部とを含む、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−164890(P2009−164890A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−566(P2008−566)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】