説明

画像読取り装置

【課題】異常の発生で装置を停止させる場合、清掃部材や残留原稿にダメージを生じさせることなく、清掃部材がホームポジションへ復帰するようにした画像読取り装置を得る。
【解決手段】自動原稿搬送装置にて原稿を読取りガラス40の直上で搬送しつつ読取り位置Aで原稿画像を光学的に読み取る画像読取り装置。読取りガラス40上の直上には、ブラシ状の清掃部材45が読取り位置Aに対向して正逆回転可能に配置されている。清掃部材45は原稿搬送方向Bの下流側へ正転して読取りガラス40上を清掃する。装置の異常が検出されると、原稿搬送及び清掃動作が停止され、残留原稿の搬送停止位置あるいは清掃部材45の回転停止位置に応じて、清掃部材45を残留原稿に干渉しないように正転又は逆転させてホームポジションに復帰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取り装置、特に、複写機やスキャナなどにおいて画像入力装置として用いられるシートスルー方式の画像読取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、原稿の画像を光学的に読み取る画像読取り装置としては、プラテンガラス上に載置した原稿の画像を読み取るプラテンセット方式と、原稿を1枚ずつ搬送し、搬送途中において原稿の画像を読み取るシートスルー方式が、それぞれ単独であるいは併用されていた。シートスルー方式は、小型化、低コスト、低騒音、画像読取りの高速化、ひいてはプリントの高生産性に利点を有し、モノクロ複写機やカラー複写機においては画像読取り装置の主流となっている。
【0003】
シートスルー方式の場合、画像読取り位置は定位置、即ち、透明部材(長尺状の読取りガラス)上に固定され、読取りガラスを介して搬送される原稿の画像面に読取り光学系の焦点を合わせる構成のため、読取りガラス上に付着したごみや残留したごみなどの異物の影響を受けやすく、異物により遮光された部分は読取り画像において筋状の画像ノイズとなる。原稿が紙であると、炭酸カルシウムなどの紙に含まれる填料や繊維などの微小異物が読取りガラスに付着する不具合が避けられない。
【0004】
かかる問題点を解決するため、従来、読み取った画像を処理する過程で、画像上のごみを検出してユーザに警告を発する、画像処理として筋状のノイズを消去する、又は、読取りガラスを移動させて連続してごみを読み取らないようにする、などの対策が講じられていた。しかし、これらの対策では読取りガラス上にごみが堆積してしまうことを解消することはできず、最終的にはサービスマンが読取りガラス面を清掃する必要が生じている。
【0005】
また、特許文献1に示されているように、弾性を有する清掃部材を読取り位置で回転させて読取りガラス上を清掃するようにした画像読取り装置が提案されている。このように、清掃部材を回転させる方式は、清掃時間が短くて済むので、搬送される原稿と原稿との間で動作させることができ、画像の読取り生産性に有利である。
【0006】
しかし、複数枚の原稿を連続して搬送させつつ、そのインターバルで清掃動作を行うため、原稿の詰まりなどの異常が発生して装置が停止した場合、清掃部材が読取りガラスに接触した清掃状態で停止することが生じ得る。この状態で読取り装置の原稿搬送路を開放すると、清掃部材が外部に露出することになる。それゆえ、ユーザが残留原稿を取り出す際に清掃部材に不用意に触れ、清掃部材がダメージを受けるおそれがある。
【0007】
そこで、異常発生時には清掃部材をホームポジションに復帰させてから装置を停止させることが望ましい。しかし、このような装置の停止制御を実行する場合であっても、残留原稿の停止位置によってはホームポジションへ復帰しようとする清掃部材が残留原稿の先端又は後端に干渉し、原稿や清掃部材がダメージを受けるおそれがある。特許文献1にはこの課題解決については言及されていない。
【特許文献1】特開2000−270152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、異常の発生で装置を停止させる場合、清掃部材や残留原稿にダメージを生じさせることなく、清掃部材がホームポジションへ復帰するようにした画像読取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明の第1の形態である画像読取り装置は、
原稿を1枚ずつ送り出し、読取り位置を通過させる原稿搬送手段と、
前記読取り位置を搬送される原稿の画像を光学的に読み取る読取り手段と、
前記読取り位置を搬送される原稿と前記読取り手段との間に配置された透明部材と、
前記透明部材の原稿通過面を摺擦して清掃する弾性変形可能な清掃部材と、
前記清掃部材を原稿搬送方向の上流側から下流側へと正転又は逆転させる駆動手段と、
前記清掃部材の回転及び他の部材の駆動を制御する制御手段と、
装置の異常が検出されたとき、原稿の搬送停止位置を検出する第1の検出手段と、
前記清掃部材がホームポジションに位置しているか否かを検出する第2の検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、装置の異常が検出されると原稿搬送及び清掃動作を停止させ、前記第1の検出手段で検出された残留原稿の搬送停止位置に応じて前記清掃部材をホームポジションに復帰させる回転方向を決定して該ホームポジションに復帰させること、
を特徴とする。
【0010】
本発明に係る第2の形態である画像読取り装置は、
原稿を1枚ずつ送り出し、読取り位置を通過させる原稿搬送手段と、
前記読取り位置を搬送される原稿の画像を光学的に読み取る読取り手段と、
前記読取り位置を搬送される原稿と前記読取り手段との間に配置された透明部材と、
前記透明部材の原稿通過面を摺擦して清掃する弾性変形可能な清掃部材と、
前記清掃部材を原稿搬送方向の上流側から下流側へと正転又は逆転させる駆動手段と、
前記清掃部材の回転及び他の部材の駆動を制御する制御手段と、
装置の異常が検出されたとき、前記清掃部材の回転停止位置を検出する第1の検出手段と、
前記清掃部材がホームポジションに位置しているか否かを検出する第2の検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、装置の異常が検出されると原稿搬送及び清掃動作を停止させ、前記第1の検出手段で検出された前記清掃部材の回転停止位置に応じて清掃部材をホームポジションに復帰させる回転方向を決定して該ホームポジションに復帰させること、
を特徴とする。
【0011】
異常が発生して原稿搬送及び清掃動作を停止させた場合、以下の三つの状態が生じ得る。(1)残留原稿の先端が清掃部材の動作軌跡内又はその近傍にある状態での停止、(2)残留原稿の後端が清掃部材の動作軌跡内又はその近傍にある状態での停止、(3)残留原稿が読取り位置を覆う状態での停止。
【0012】
(3)の状態では清掃部材は動作しておらずホームポジションにあるため、特別な制御は不要である。(1)又は(2)の状態では清掃部材のホームポジションに復帰する方向によっては原稿又は清掃部材がダメージを受けるおそれがある。そこで、第1の形態にあっては、残留原稿の搬送停止位置に応じて清掃部材をホームポジションに復帰させる回転方向を決定して該ホームポジションに復帰させる。また、第2の形態にあっては、清掃部材の回転停止位置に応じて清掃部材をホームポジションに復帰させる回転方向を決定して該ホームポジションに復帰させる。これにて、清掃部材のホームポジションへの復帰時に原稿又は清掃部材がダメージを受けることが未然に防止される。
【0013】
より具体的には、第1の形態にあっては、残留原稿の先端が清掃部材の動作軌跡内又はその近傍で停止している場合には清掃部材を原稿搬送方向に回転させてホームポジションに復帰させ、残留原稿の後端が清掃部材の動作軌跡内又はその近傍で停止している場合には清掃部材を原稿搬送方向とは逆方向に回転させてホームポジションに復帰させる。第2の形態にあっては、清掃部材が読取り位置より上流側で停止している場合には清掃部材を原稿搬送方向に回転させてホームポジションに復帰させ、清掃部材が読取り位置より下流側で停止している場合には清掃部材を原稿搬送方向とは逆方向に回転させてホームポジションに復帰させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る画像読取り装置の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図面において、同一部品及び同一部分には同じ符号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
(画像読取り装置、図1及び図2参照)
図1に示すように、本発明の一実施例である画像読取り装置10は、図示しないプラテンガラス上に載置された原稿の画像を読み取るプラテンセット方式と、自動原稿搬送装置20にて搬送される原稿を読み取るシートスルー方式とを備え、読取り光学系(スキャナ)50が設置されている。
【0016】
読取り光学系50は、それ自体周知のものであって、ランプ53と、ミラー54,55,56と、図示しない結像レンズと、撮像部(CCDカラーラインセンサ)58とで構成されている。プラテンセット方式での原稿画像の読取りを行うため、ランプ53とミラー54は第1スライダ51に搭載され、ミラー55,56は第2スライダ52に搭載され、それぞれ副走査方向Yに移動可能である。シートスルー方式による原稿画像の読取りは、光学系50を図1に示す読取り位置Aに静止させた状態で行われる。
【0017】
自動原稿搬送装置20は、原稿載置トレイ21と、ピックアップローラ22と、給紙ローラ23a及び捌きローラ23bと、レジストローラ24と、読取り部ローラ25,26と、排出部ローラ27,28と、原稿排出トレイ29とで構成されている。また、読取り位置Aには透明部材(以下、読取りガラス40と記す)が設置されている。
【0018】
さらに、本実施例において、図2に示すように、読取りガラス40の直上を画像面が読取りガラス40とは接触しないように原稿をガイドするガイドシート41が、読取りガラス40の搬送方向Bの上流側に設置されている。読取りガラス40上に搬送されてきた原稿がこのガイドシート41上を滑ってガイドされることにより、該原稿は画像面が読取りガラス40の表面に対して非接触の状態で搬送される。
【0019】
原稿が読取りガラス40に接触して搬送されると、原稿に付着している粘着性異物(粘着テープや糊などの粘着物、修整液塊やボールペンのインク塊、消しゴムの粉など)が読取りガラス40上に転写、付着される。原稿を読取りガラス40に非接触で搬送することにより、このような異物の転写、付着を未然に防止できる。勿論、本実施例では、粘着性異物が読取りガラス40に付着したとしても以下に説明する清掃部材45によって排除することが可能である。
【0020】
なお、このような非接触搬送は、前記ガイドシート41を設ける以外に、読取り部ローラ25,26によって原稿を一定の曲率で湾曲させながら搬送することによって達成される。
【0021】
また、本実施例では、両面に画像が形成されている原稿を表裏反転させて再度読取り位置Aを通過させて表裏の画像を連続的に読み取ることも可能である。このような原稿の両面読取り機構については周知であり、その説明は省略する。
【0022】
(清掃部材、図2〜図5参照)
図2に示すように、読取りガラス40の読取り位置Aに対向してブラシ状の清掃部材45が回転可能に配置されている。また、清掃部材45に対して原稿搬送方向Bの下流側にはたき部材46が配置されている。清掃部材45は、軸部材45aの平坦な面に弾性変形可能な清掃ブラシ45bを搬送方向Bとは直交する方向にライン状に固定したもので、モータM1(図5参照)によって所定のタイミング、速度で正転又は逆転駆動される。また、軸部材45aの清掃ブラシ45bとは対向する外周面には、シェーディング補正のために、白基準判別部材(白色フィルム)45cを貼着してもよい。
【0023】
清掃ブラシ45bは、例えば、長さ6mm、2D(デニール)程度の導電性(11.5LogΩ)のポリイミド樹脂を、幅5mm、長さ309mmに植毛したもので、読取りガラス40を摺擦する際の食い込み量は1.5mm、圧力は6Nに設定されている。
【0024】
はたき部材46は、位置固定されており、清掃ブラシ45bが読取りガラス40上を摺擦した後に清掃ブラシ45bで捕獲した異物をはたき落す。
【0025】
清掃部材45は、図3(A)に示すように、清掃ブラシ45bが上方を向いた状態をホームポジションとして待機しており、このホームポジションから原稿搬送方向の上流側から下流側へと矢印c方向に正転を開始する。その後、ブラシ45bの先端が読取りガラス40の表面を摺擦し(図3(B),(C)参照)、読取りガラス40上の異物を捕獲し、異物を読取り位置Aから排除する。その後、ブラシ45bははたき部材46に接触し、前記ホームポジションに戻る。
【0026】
捕獲した異物ははたき部材46によってブラシ45bからはたき出され、読取りガラス40上を搬送される原稿に巻き込まれて装置10の外部へ排出される。これにて、読取りガラス40の表面(特に、読取り位置A)及びブラシ45bが常時清浄な状態に保たれ、ブラシ45bにて読取りガラス40上から回収した異物が読取りガラス40に再付着することはなく、読み取った画像に筋状のノイズが発生することを防止できる。なお、ブラシ45bからはたきだされた異物を図示しない吸引手段によって吸引除去してもよい。
【0027】
そして、ブラシ45bは、導電性を有し、グランドに接続されている。それゆえ、読取りガラス40上の異物を静電的に吸着して効率よく回収することができる。
【0028】
ここで、清掃ブラシ45bの先端部分の形状について図4を参照して説明する。図4(A)は第1例を示し、各ブラシ毛の先端部分は回転軌跡Fの接線Cまでの同じ長さに揃えられている。図4(B)は第2例を示し、各ブラシ毛の先端部分は回転軌跡Fに揃えられている。図4(C)は第3例を示し、各ブラシ毛の先端部分は接線Cと角度θをなす直線までの長さとされている。図4(D)は第4例を示し、ブラシ毛は二つの束45d,45eからなり、ブラシ束45dは接線Cまでの長さを有し、ブラシ束45eの先端部分は回転軌跡Fに沿って線状に斜めにカットされている。
【0029】
図4(B),(C),(D)に示す例にあっては、ブラシ45bが回転して読取りガラス40上を摺擦したときに、各ブラシ毛の先端部分が回転軌跡Fから飛び出すことがなく、ブラシ45bの読取りガラス40への接地量、接地圧を一定に保つことができる。
【0030】
ところで、前記清掃部材45による読取りガラス40の清掃、即ち、読取り位置Aにおける清掃部材45の正転は、ブラシ45bが読取り位置Aを搬送される原稿と干渉しない任意のタイミングで行われる。本実施例では、以下に説明するように、基本的には、先行する原稿と次の原稿との間に清掃部材45を1回正転させる。勿論、読取りジョブが開始される直前、あるいは、終了した直後に清掃を行うようにしてもよい。また、読取り枚数が任意の値に達したときに清掃するようにしてもよい。
【0031】
清掃部材45を常時一方向に正転駆動して読取りガラス40上を清掃していると、長期にわたる使用によりブラシ45bの先端が回転方向に湾曲する変形を生じ、清掃機能が劣化するおそれがある。この変形を矯正するために、清掃部材45を任意のタイミングで逆転させてもよい。この逆転にて、清掃ブラシ45bがはたき部材46や読取りガラス40に逆方向に摺擦して逆方向の変形力を受け、変形を矯正され、長期にわたって良好な清掃機能が維持される。
【0032】
次に、清掃部材45の駆動手段について図5を参照して説明する。軸部材45aの一端部に固定したスプロケット31は清掃モータM1の出力用スプロケット32にタイミングベルト33を介して連結されている。清掃モータM1は正逆回転駆動可能なステッピングモータである。
【0033】
また、スプロケット31には円弧状の突片35が取り付けられ、該突片35を検出するホームポジションセンサSE2が配置されている。センサSE2が突片35の端部35aを検出したとき、清掃ブラシ45bがホームポジションに位置していることが検出される。
【0034】
(制御部、図6参照)
画像読取り装置10の制御部について図6を参照して説明する。制御部はCPU60を中心として構成され、CPU60はプログラムなどを格納したROM61、RAM62、メモリ63を内蔵している。CPU60に入力される情報は、読取り位置Aの上流側に配置した原稿センサSE1(図2参照)からの原稿先端及び後端の検出信号、清掃部材45のホームポジションセンサSE2からの検出信号などである。また、CPU60は各種ローラなどの原稿搬送系や清掃モータM1などを制御する。
【0035】
(異常検出、原稿位置及び清掃部材の回転位置の検出)
画像読取り装置10の異常は主に搬送される原稿の詰まりによって生じる。原稿詰まりは、センサSE1など搬送経路に配置した各種原稿検出センサによって原稿を検出し、その検出タイミングをタイマとの組み合わせで検出され、この種の検出手段は周知であり、詳細な説明は省略する。装置10の異常が検出されると、原稿搬送及び清掃動作が停止され、かつ、清掃部材45をホームポジションへ復帰させる。この制御については以下に詳述する。
【0036】
異常発生時における原稿の搬送停止位置は、センサSE1の原稿先端又は後端の検出タイミングとタイマとの組み合わせで検出することができる。また、異常発生時における清掃部材45の回転停止位置は、ステッピングモータである清掃モータM1の駆動パルス数をカウントすることで検出することができる。
【0037】
(清掃部材の動作と原稿の搬送状態、図7参照)
ここで、清掃部材45の動作と原稿の搬送状態について、図7を参照して説明する。図7(A)に示すように、清掃部材45は、先行原稿D1と次原稿D2とのインターバルEで正転駆動される。また、清掃動作をしていないときには、清掃部材45はブラシ45bが上方を向いたホームポジションで待機している。原稿D1の後端がセンサSE1を通過して所定時間経過後に、清掃部材45が原稿D1の後端に干渉しないように、清掃部材45が正転を開始する。そして、図7(B)に示すように、清掃部材45は次原稿D2の先端が読取り位置Aに到達するまでに、清掃部材45が原稿D2の先端に干渉しないように、正転を完了する。
【0038】
(原稿の停止位置と清掃部材の位置関係、図8参照)
原稿の搬送速度が高速であったり、搬送間隔(図7(A)に示すインターバルE)が短い場合、清掃部材45の正転動作開始タイミングを早める必要がある。図8(A)に示すように、先行原稿D1の後端が読取り位置Aを抜けた直後から、場合によっては先行原稿D1の後端が読取り位置Aを抜ける直前から、清掃部材45の正転動作を開始する必要がある。
【0039】
ここで、清掃部材45が清掃動作(正転)を開始して、ブラシ45bの先端が読取りガラス40上に接触を開始してから接触が終了するまでの領域を動作軌跡Nとする。清掃動作開始直後において、図8(B)に示すように、先行原稿D1の後端が動作軌跡N内又はその近傍にある状態のとき、装置10における異常発生が検出されると、原稿搬送及び清掃動作がこの状態で停止される。ここで、清掃部材をホームポジションに復帰させるのに正転方向に回転させると、ブラシ45bの先端が原稿D1の後端を引っ掛けることになり、原稿D1又はブラシ45bがダメージを受けるおそれがある。このような状態では、清掃部材45を逆転させてホームポジションに復帰させる。
【0040】
一方、清掃動作終了直前において、図8(C)に示すように、次原稿D2の先端が動作軌跡N又はその近傍に到達している状態のとき、装置10における異常発生が検出されると、原稿搬送及び清掃動作がこの状態で停止される。ここでは、前記とは逆に清掃部材45を正転させてホームポジションに復帰させることにより、ブラシ45bが原稿D2の先端と干渉することがなくなる。
【0041】
原稿D1に関しては、その後端が前記動作軌跡Nから抜けたか否かを検出することによって清掃部材45をホームポジションに復帰させる回転方向を決定することができる。即ち、原稿D1の後端がセンサSE1を通過して図8(A)に示す搬送長L1+L2の距離を移動していなければ、原稿D1の後端は動作軌跡N内にあると判断する。このときは、清掃部材45を逆転させてホームポジションに復帰させる。なお、搬送長L1はセンサSE1の検出点から読取り位置Aまでの搬送距離であり、搬送長L2は読取り位置Aから動作軌跡Nの終端までの搬送距離である。
【0042】
原稿D1の後端停止位置の検出は、実際には、原稿D1の後端がセンサSE1を通過したタイミングからタイマを動作させて時間で検出する。即ち、原稿搬送速度をVとしたとき、原稿D1の後端が動作軌跡Nを抜ける時間Tは、T=(L1+L2)/Vである。従って、原稿D1の後端がセンサSE1を通過して時間Tが経過していなければ、原稿D1の後端は動作軌跡Nに留まっているので、清掃部材45を逆転させてホームポジションに復帰させる。一方、原稿D1の後端がセンサSE1を通過して時間Tが経過したのであれば、原稿D1の後端は動作軌跡Nを抜けているので、清掃部材45を正転させてホームポジションに復帰させる。
【0043】
(制御例1、図9参照)
ここで、原稿の後端停止位置を検出することにより清掃部材45の復帰回転方向を決定する制御例1について図9を参照して説明する。
【0044】
装置10で異常が検出されると(ステップS1)、原稿搬送及び清掃動作を停止させ(ステップS2)、清掃部材45がホームポジションにあるか否かをセンサSE2によって検出する。ホームポジションにあれば(ステップS3でYES)、制御はそのまま終了する。一方、ホームポジションになければ(ステップS3でNO)、前述したようにセンサSE1からの後端検出信号とタイマとの組み合わせで原稿の後端停止位置を判定する。原稿後端が動作軌跡N内で停止していれば(ステップS4でYES)、干渉を避けるために清掃部材45を逆転させる(ステップS5)。原稿後端が動作軌跡N内で停止していなければ(ステップS4でNO)、干渉を避けるために清掃部材45を正転させる(ステップS6)。そして、清掃部材45がセンサSE2によってホームポジションに復帰したことを確認のうえ(ステップS7でYES)、装置10を停止させる(ステップS8)。
【0045】
なお、次原稿の先端が動作軌跡N内で停止している場合、清掃部材45のホームポジションへの復帰は干渉を避けるために正転させる必要がある。実際には、ステップS4での判定で先行原稿の後端が動作軌跡N内になければ、いずれの場合であっても清掃部材45を正転させてホームポジションに復帰させて問題はない。この場合、仮に次原稿の先端が動作軌跡N内で残留していても、正転であれば清掃部材45による次原稿への干渉は避けられる。
【0046】
また、図8(B)に示したように、清掃動作開始直後において、清掃部材45が読取り位置Aよりも上流側に位置している場合、先行原稿D1の後端は動作軌跡N又はその近傍に位置している。従って、異常発生時に清掃部材45が上流側で停止している場合には清掃部材45を逆転させてホームポジションに復帰させればよい。一方、図8(C)に示したように、清掃動作終了直前において、清掃部材45が読取り位置Aよりも下流側に位置している場合、次原稿D2の先端が動作軌跡N又はその近傍に位置している。従って、異常発生時に清掃部材45が下流側で停止している場合には清掃部材45を正転させてホームポジションに復帰させればよい。
【0047】
(制御例2、図10参照)
ここで、清掃部材45の回転停止位置を検出することにより清掃部材45の復帰回転方向を決定する制御例2について図10を参照して説明する。清掃部材45の回転停止位置は前述のように清掃モータM1の駆動パルス数をカウントすることにより検出することができる。
【0048】
まず、装置10で異常が検出されると(ステップS11)、原稿搬送及び清掃動作を停止させ(ステップS12)、清掃部材45がホームポジションにあるか否かをセンサSE2によって検出する。ホームポジションにあれば(ステップS13でYES)、制御はそのまま終了する。一方、ホームポジションになければ(ステップS13でNO)、清掃部材45の回転停止位置を検出する。停止位置が読取り位置Aの上流側であれば(ステップS14でYES)、干渉を避けるために清掃部材45を逆転させる(ステップS15)。停止位置が読取り位置Aの下流側であれば(ステップS14でNO)、干渉を避けるために清掃部材45を正転させる(ステップS16)。そして、清掃部材45がセンサSE2によってホームポジションに復帰したことを確認のうえ(ステップS17でYES)、装置10を停止させる(ステップS18)。
【0049】
(制御例3、図11参照)
ところで、図11に示すように、清掃部材45が読取り位置Aで停止する場合がある。この場合、図11(A)に示すように、先行原稿D1の後端が動作軌跡N又はその近傍で停止していれば、清掃部材45を逆転させてホームポジションに復帰させる。一方、図11(B)に示すように、次原稿D2の先端が動作軌跡N又はその近傍で停止していれば、清掃部材45を正転させてホームポジションに復帰させる。
【0050】
(制御例4、図12参照)
次に、原稿の先端停止位置を検出することにより清掃部材45の復帰回転方向を決定する制御例4について図12を参照して説明する。
【0051】
ここでは、センサSE1によって原稿の先端が検出されると(ステップS21でYES)、タイマをスタートさせる(ステップS22)。そして、装置10で異常が検出されると(ステップS23)、原稿搬送及び清掃動作を停止させ(ステップS24)、清掃部材45がホームポジションにあるか否かをセンサSE2によって検出する。ホームポジションにあれば(ステップS25でYES)、制御はそのまま終了する。一方、ホームポジションになければ(ステップS25でNO)、タイマのカウント値と時間Tとを比較する。
【0052】
時間Tとは、原稿の先端がセンサSE1から動作軌跡Nを抜けるまでの(L1+L2)/Vである(L1,L2に関しては図8(A)参照)。タイマカウント値が時間T以上であれば(ステップS26でYES)、原稿先端は動作軌跡Nを抜けているので清掃部材45を逆転させる(ステップS27)。タイマカウント値が時間T内であれば(ステップS26でNO)、原稿先端は動作軌跡Nに位置しているので清掃部材45を正転させる(ステップS28)。そして、清掃部材45がセンサSE2によってホームポジションに復帰したことを確認のうえ(ステップS29でYES)、装置10を停止させる(ステップS30)。
【0053】
(制御例5、図13及び図14参照)
この制御例5は、前記センサSE1に代えて、図13に示すように、読取り位置Aの上流側及び下流側に動作軌跡Nに近接して原稿検出センサSE1A,SE1Bを配置し、該センサSE1A,SE1Bの原稿先端検出信号に基づいて清掃部材45のホームポジションへの復帰回転方向を決める。
【0054】
具体的には、図14に示すように、上流側のセンサSE1Aによって原稿の先端が検出され(ステップS31でYES)、その後、装置10で異常が検出されると(ステップS32)、原稿搬送及び清掃動作を停止させ(ステップS33)、清掃部材45がホームポジションにあるか否かをセンサSE2によって検出する。ホームポジションにあれば(ステップS34でYES)、制御はそのまま終了する。一方、ホームポジションになければ(ステップS34でNO)、下流側のセンサSE1Bにて原稿の先端が検出されたか否かを判定する。
【0055】
検出されていれば(ステップS35でYES)、原稿の先端は動作軌跡Nを抜けているので清掃部材45を逆転させる(ステップS36)。検出されなければ(ステップS35でNO)、原稿の先端は動作軌跡Nに位置しているので清掃部材45を正転させる(ステップS37)。そして、清掃部材45がセンサSE2によってホームポジションに復帰したことを確認のうえ(ステップS38でYES)、装置10を停止させる(ステップS39)。
【0056】
(他の実施例)
なお、本発明に係る画像読取り装置は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0057】
例えば、前記実施例では、原稿を読取りガラスに対して非接触で搬送するようにしているが、必ずしも非接触で搬送する必要はない。また、清掃部材に対するはたき部材は、その構成、動作において任意であり、省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る画像読取り装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図2】画像読取り位置の近辺を示す断面図である。
【図3】清掃部材による読取りガラスの清掃動作を示す説明図である。
【図4】清掃部材の種々のブラシ形状を示す説明図である。
【図5】清掃部材の駆動手段を示す斜視図である。
【図6】画像読取り装置の制御部を示すブロック図である。
【図7】清掃部材の動作と原稿の搬送状態を示す説明図である。
【図8】原稿の停止位置と清掃部材の位置関係を示す説明図である。
【図9】制御例1を示すフローチャート図である。
【図10】制御例2を示すフローチャート図である。
【図11】制御例3を示す説明図である。
【図12】制御例4を示すフローチャート図である。
【図13】制御例5を示す説明図である。
【図14】制御例5を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0059】
10…画像読取り装置
20…自動原稿搬送装置
40…読取りガラス
45…清掃部材
45b…清掃ブラシ
50…読取り光学系
60…CPU
M1…清掃モータ
A…読取り位置
B…原稿搬送方向
D1,D2…原稿
N…動作軌跡
SE1,SE1A,SE1B…原稿センサ
SE2…ホームポジションセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を1枚ずつ送り出し、読取り位置を通過させる原稿搬送手段と、
前記読取り位置を搬送される原稿の画像を光学的に読み取る読取り手段と、
前記読取り位置を搬送される原稿と前記読取り手段との間に配置された透明部材と、
前記透明部材の原稿通過面を摺擦して清掃する弾性変形可能な清掃部材と、
前記清掃部材を原稿搬送方向の上流側から下流側へと正転又は逆転させる駆動手段と、
前記清掃部材の回転及び他の部材の駆動を制御する制御手段と、
装置の異常が検出されたとき、原稿の搬送停止位置を検出する第1の検出手段と、
前記清掃部材がホームポジションに位置しているか否かを検出する第2の検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、装置の異常が検出されると原稿搬送及び清掃動作を停止させ、前記第1の検出手段で検出された残留原稿の搬送停止位置に応じて前記清掃部材をホームポジションに復帰させる回転方向を決定して該ホームポジションに復帰させること、
を特徴とする画像読取り装置。
【請求項2】
前記制御手段は、残留原稿の先端が前記清掃部材の動作軌跡内又はその近傍で停止している場合には清掃部材を原稿搬送方向に回転させてホームポジションに復帰させ、残留原稿の後端が前記清掃部材の動作軌跡内又はその近傍で停止している場合には清掃部材を原稿搬送方向とは逆方向に回転させてホームポジションに復帰させること、を特徴とする請求項1に記載の画像読取り装置。
【請求項3】
原稿を1枚ずつ送り出し、読取り位置を通過させる原稿搬送手段と、
前記読取り位置を搬送される原稿の画像を光学的に読み取る読取り手段と、
前記読取り位置を搬送される原稿と前記読取り手段との間に配置された透明部材と、
前記透明部材の原稿通過面を摺擦して清掃する弾性変形可能な清掃部材と、
前記清掃部材を原稿搬送方向の上流側から下流側へと正転又は逆転させる駆動手段と、
前記清掃部材の回転及び他の部材の駆動を制御する制御手段と、
装置の異常が検出されたとき、前記清掃部材の回転停止位置を検出する第1の検出手段と、
前記清掃部材がホームポジションに位置しているか否かを検出する第2の検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、装置の異常が検出されると原稿搬送及び清掃動作を停止させ、前記第1の検出手段で検出された前記清掃部材の回転停止位置に応じて清掃部材をホームポジションに復帰させる回転方向を決定して該ホームポジションに復帰させること、
を特徴とする画像読取り装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記清掃部材が前記読取り位置より上流側で停止している場合には清掃部材を原稿搬送方向に回転させてホームポジションに復帰させ、前記清掃部材が前記読取り位置より下流側で停止している場合には清掃部材を原稿搬送方向とは逆方向に回転させてホームポジションに復帰させること、を特徴とする請求項3に記載の画像読取り装置。
【請求項5】
前記清掃部材はブラシであり、該ブラシの少なくとも前記透明部材と接触する部分は透明部材より剛性が弱く接触によって弾性変形すること、を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像読取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−89851(P2010−89851A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258613(P2008−258613)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】