説明

画像読取装置、画像形成装置、画像読取方法

【課題】複数の光源を順に点灯させてカラー画像データを読み取る画像読取装置において読み取られるカラー画像データについて輝度の再現性を高めること。
【解決手段】R(赤)、G(緑)、B(青)の光を照射するLED光源31R、31G、31Bを順次点灯させたときにラインセンサー33から出力されるRデータ、Gデータ、Bデータ(第1画像データ)を取得すると共に、LED光源31、31G、31Rを同時に点灯させたときにラインセンサー33から出力されるY1データ(第2画像データ)を取得し、そのRデータ、Gデータ、Bデータ、Y1データに基づいてカラー画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる色の光を照射する複数の光源を順次点灯させて原稿からカラー画像データを読み取る画像読取装置、画像形成装置、及び画像読取方法に関し、特に、そのカラー画像データの読取画質の向上を図る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、R(赤)、G(緑)、B(青)に対応する3色の光源(LED等)を順次点灯させ、その際にラインセンサーで受光される受光データをそれぞれRデータ、Gデータ、Bデータとして読み取ることによりカラー画像データを取得する光源切替方式の画像読取装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この種の画像読取装置では、1ラインごとにRGB各色の光源を順に点灯させて画像データを読み取るためカラー画像データの読取時間が遅くなるが、一つのラインセンサーを用いてカラー画像データを取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−344696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人間の感覚では、輝度に対する感度が色に対する感度よりも高いことが知られている。そのため、画像読取装置で読み取られるカラー画像データについて、人間が感覚的に得る画像品質を向上させるためには、そのカラー画像データにおける輝度の再現性を高めることが重要である。
また、上述の画像読取装置においてRGBの光源各々の点灯時間を短縮すれば、カラー画像データの読取処理の高速化を図ることができる。しかしながら、RGBの光源各々の点灯時間を短縮すると、ラインセンサーへの入射光量が低下するため、読み取ったカラー画像データにおける輝度の再現性が低くなるという問題が生じる。
従って、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の光源を順に点灯させてカラー画像データを読み取る画像読取装置において読み取られるカラー画像データについて輝度の再現性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は、以下の(1)〜(5)の構成要素を備えてなることを特徴とする画像読取装置として構成される。
(1)異なる色の光を照射する複数の光源。
(2)前記光源各々から照射された光を受光して画像データを出力する撮像素子。
(3)前記複数の光源を順次点灯させたときに前記撮像素子から出力される第1画像データを取得する第1読取手段。
(4)前記複数の光源を同時に点灯させたときに前記撮像素子から出力される第2画像データを取得する第2読取手段。
(5)前記第1画像データ及び前記第2画像データに基づいてカラー画像データを生成するカラー画像生成手段。
【0006】
本発明によれば、前記複数の光源を同時に点灯させることにより、前記複数の光源を個別に点灯させた場合に比べて前記撮像素子への入射光量を増加させた状態で、前記第2画像データが取得される。そのため、前記第1画像データ及び前記第2画像データに基づいてカラー画像データを生成することにより、前記第1画像データにおける輝度レベルの不足分を前記第2画像データで補い、前記カラー画像データにおける輝度の再現性を高めることが可能となる。従って、前記画像読取装置で読み取られるカラー画像データについて、人間が感覚的に得る画像品質を高めることができる。例えば、前記第1読取手段による前記光源各々の点灯時間の短縮による輝度レベルの不足分を前記第2画像データで補うことが可能であるため、画像品質の低下を抑制しつつカラー画像データの読取時間を短縮することも可能である。
ここに、 前記複数の光源がR(赤)、G(緑)、B(青)に対応する3つの光源であり、前記第1画像データがRGBデータあることが考えられる。この場合、前記カラー画像生成手段は、前記第1画像データをYUVデータ(輝度色差信号)に変換した後、前記変換後のYUVデータのY値を前記第2画像データに基づいて補正するものであることが考えられる。
また、前記第2読取手段は、R:G:B=0.509:1.000:0.194の輝度比率で前記3つの光源を同時に点灯させるものであることが考えられる。これにより、前記第2読取手段により取得された前記第2画像データをYUVデータのY値としてそのまま用いることが可能となる。なお、前記輝度比率は、RGBデータをYUVデータに変換する際に用いられる後述の変換式(11)に基づいて算出した値である。
さらに、前記カラー画像生成手段は、前記第1画像データから変換した後の前記YUVデータのY値と前記第2画像データとの単純平均値又は加重平均値を補正後のY値とすることが考えられる。これにより、カラー画像データにおけるノイズ成分を抑制してS/Nの高いカラー画像データを取得することができる。
ところで、本発明は、前記画像読取装置を備えてなる画像形成装置の発明として捉えてもよい。
また、本発明は、画像読取装置で実行される画像読取方法の発明として捉えてもよい。即ち、異なる色の光を照射する複数の光源と前記光源各々から照射された光を受光して画像データを出力する撮像素子とを備えてなる画像読取装置で実行される画像読取方法であって、前記複数の光源を順次点灯させたときに前記撮像素子から出力される第1画像データを取得すると共に、前記複数の光源を同時に点灯させたときに前記撮像素子から出力される第2画像データを取得し、前記第1画像データ及び前記第2画像データに基づいてカラー画像データを生成することを特徴とする画像読取方法を本発明として捉えることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の光源を順に点灯させてカラー画像データを読み取る画像読取装置において読み取られるカラー画像データについて輝度の再現性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係るカラースキャナーXの概略構成を示す模式図。
【図2】CIS3の概略構成を示す要部模式図。
【図3】カラースキャン処理の手順の一例を示すフローチャートを示す図。
【図4】1ライン分の画像読取処理の手順の一例を示すフローチャートを示す図。
【図5】カラースキャン処理の実行時の動作を説明するための要部模式図。
【図6】カラースキャン処理の実行時のタイムチャートの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0010】
<カラースキャナーX>
まず、図1を参照しつつ、本発明の実施の形態に係るカラースキャナーX(画像読取装置の一例)の概略構成について説明する。
図1に示すように、前記カラースキャナーXは、大別すると装置本体1及び前記装置本体1の上方に配置されたADF(自動原稿送り装置)2を備えている。ところで、本発明は、前記カラースキャナーXを備えた、或いは前記カラースキャナーXと同様の画像読取機能を有する複写機、ファクシミリ装置、プリンター、及び複合機などの画像形成装置にも適用することができる。また、前記ADF2を有さない所謂フラットベッドスキャナと称される画像読取装置も本発明に係る画像読取装置の一例である。前記フラットベッドスキャナでは、前記装置本体1の読取機構として後述のCIS3を用いた読取機構が設けられる。
【0011】
前記装置本体1は、コンタクトガラス21、光源ユニット23、ミラー43、44、光学レンズ45、CCD(Charge Coupled Device)46、及び制御部40などを備えている。
前記制御部40は、CPU、ROM、RAM、及びEEPROMなどを有している。前記制御部40は、前記ROMに格納された所定の制御プログラムに従った処理を前記CPUで実行することにより前記カラースキャナーXを統括的に制御する。なお、前記制御部40は、集積回路(ASIC)などの電子回路で構成されたものであってもよい。
前記コンタクトガラス21は、前記装置本体1の上面に設けられており、前記カラースキャナーXの画像読取対象となる原稿Pが載置される透明な原稿台である。
前記読取ユニット23は、LED光源41及びミラー42を備えており、不図示のモーターによって図1における左右方向(以下「副走査方向」という)へ移動可能に構成されている。前記LED光源41は、図1において奥行き方向(以下「主走査方向」という)に沿って配列された多数の白色LEDを備えており、前記コンタクトガラス21上の読取位置22に1ライン分の白色光を照射する。前記ミラー42は、前記読取位置22にある原稿P又は後述の原稿押さえ15で反射した後の光を前記ミラー43に向けて反射させる。そして、前記ミラー42で反射した光は、前記ミラー43、44によって前記光学レンズ45に導かれる。前記光学レンズ45は、入射した光を集光して前記CCD46に入射させる。前記CCD46は、前記光学レンズ45から入射される光の受光量に応じた画像信号を前記原稿Pの1ライン分の画像データとして前記制御部40に入力する。
このように構成された前記装置本体1によるカラー画像データの読取処理などについては従来と異なるところがないためその説明を省略する。なお、本実施の形態では、撮像素子として前記CCD46を用いた例について説明するが、前記CCD46よりも焦点距離の短い密着型のイメージセンサー(CIS:Contact Image Sensor)を用いてもよい。
【0012】
一方、前記ADF2は、原稿セット部13、複数の搬送ローラー14、原稿押さえ15、排紙部16、及びCIS3などを備えている。前記ADF2は、前記搬送ローラー14各々を不図示のモーターで駆動させることにより、前記原稿セット部13にセットされた原稿Pを、前記CIS3の対向箇所及び前記コンタクトガラス21上の読取位置22を通過させて前記排紙部16まで搬送させる。
前記原稿押さえ15は、前記コンタクトガラス21上の読取位置22の上方に原稿Pが通過できる間隔を隔てた位置に設けられている。前記原稿押さえ15は、主走査方向に長尺状を成しており、その下面(コンタクトガラス21側の面)には白色のシートが貼り付けられている。なお、前記シートは、前記装置本体1における白基準データを取得する際に用いられる。
【0013】
前記CIS3は、前記ADF2で搬送される原稿Pの裏面から画像データを読み取る密着型のイメージセンサーである。従って、前記カラースキャナーXでは、前記装置本体1及び前記CIS3によって、前記ADF2による原稿Pの搬送中にその原稿Pの表面及び裏面のカラー画像データを取得することができる。本実施の形態に係る前記カラースキャナーXは、前記CIS3を用いて行われるカラー画像データの読取処理に特徴を有しており、以下、この点について説明する。
ここに、図2は、前記CIS3の概略構成を示す要部模式図である。図2に示すように、前記CIS3は、コンタクトガラス30、白色光源31、レンズ32、ラインセンサー33(撮像素子の一例)、及びこれらを収容するユニット筐体(不図示)などを備えている。
【0014】
前記白色光源31は、R(赤)の光を照射するLED光源31R、G(緑)の光を照射するLED光源31G、及びB(青)の光を照射するLED光源31Bを有している。前記白色光源31は、前記LED光源31R、31G、31Bを同時に点灯させることにより白色光を照射する。また、前記LED光源31R、31G、31Bは個別にも点灯可能である。なお、前記LED光源31R、31G、31B各々の点灯制御は、例えば前記制御部40又は不図示のLEDドライバ回路によって行われる。
また、前記CIS3には、前記LED光源31R、31G、31Bからの光を、主走査方向全域に対応する幅の光に拡散して原稿Pに照射する導光部材(不図示)が設けられている。なお、前記LED光源31R、31G、31B各々が、主走査方向に配列された多数のLEDを有する構成も考えられる。
前記レンズ32は、例えば棒状のレンズを用いたロッドレンズアレイであり、前記原稿Pから反射した光を前記ラインセンサー33に正立像として結像させる。
前記ラインセンサー33は、入射される光を電気信号に変換する多数の光電変換素子が主走査方向に配列されたCMOSイメージセンサーである。そして、前記ラインセンサー33は、前記LED光源31R、31G、31Bから照射された光を受光すると、その受光量に応じた画像データを前記制御部40に出力する。なお、前記ラインセンサー33に代えてCCDなどの他の撮像素子を有する構成であってもよい。
また、前記ADF2には、前記CIS3の対向箇所に白基準ローラー3Aが配置されている。これにより、前記CIS3による原稿Pの画像読み取り時には、原稿Pが前記白基準ローラー3Aで押圧されて前記CIS3のコンタクトガラス30に密着した状態となる。また、前記白基準ローラー3Aは、その表面全体が一様に白色であって、前記CIS3における白基準データを取得するために用いられる。
【0015】
<カラースキャン処理>
そして、前記カラースキャナーXでは、前記CIS3で原稿Pの裏面からカラー画像データを読み取るために、後述のカラースキャン処理(図3参照)が前記制御部40によって実行され。具体的に、前記制御部40は、前記原稿Pを前記ADF2で搬送させつつ、前記原稿Pの1ラインごとに前記LED光源31R、31G、31Bを切り替えて順次点灯させ、その際に前記ラインセンサー33で受光される受光データをRデータ、Gデータ、Bデータとして読み取ることによりカラー画像データを取得する。
以下、図3のフローチャートを参照しつつ、前記制御部40で実行される原稿Pの裏面についてのカラースキャン処理について説明する。ここに、S1、S2、・・・は処理手順(ステップ)番号を表している。また、当該カラースキャン処理における各処理工程を実行することによりカラー画像データを取得する方法が本発明に係る画像読取方法である。なお、前記装置本体1による原稿Pの表面のカラースキャン処理については従来と異なるところがないため、ここでは説明を省略する。
【0016】
(ステップS1)
まず、ステップS1において、前記制御部40は、原稿Pの裏面についてのカラースキャン処理の開始要求を待ち受ける(S1のNo側)。例えば、例えば原稿Pについて両面のカラースキャン処理の要求操作が不図示の操作表示部に対してなされた場合、前記制御部40は、原稿Pの裏面についてのカラースキャン処理の開始要求があったと判断し(S1のYes側)、処理をステップS2に移行させる。
【0017】
(ステップS2)
次にステップS2において、前記制御部40は、前記CIS3による画像読取処理で用いる白基準データを取得するための処理を実行する。このとき、前記制御部40は、前記CIS3の前記LED光源31R、31G、31Bを個別に点灯させた場合と、前記LED光源31R、31G、31Bの全てを同時に点灯させた場合との合計4パターンで、前記白基準ローラー3Aの画像データを白基準データとして読み取る。
具体的に、前記制御部40は、図5(a)に示すように前記LED光源31Rのみを点灯させ、そのときの前記ラインセンサー33からの出力をR基準データとして取得する。同じく、前記制御部40は、図5(b)に示すように前記LED光源31Gのみを点灯させ、そのときの前記ラインセンサー33からの出力をG基準データとして取得する。また、前記制御部40は、図5(c)に示すように前記LED光源31Bのみを点灯させ、そのときの前記ラインセンサー33からの出力をB基準データとして取得する。さらに、前記制御部40は、図5(d)に示すように前記LED光源31R、31G、31Bの全てを同時に点灯させ、そのときの前記ラインセンサー33からの出力をY基準データとして取得する。
ここで、前記制御部40は、前記LED光源31R、31G、31Bを同時に点灯させるとき、LED光源31R:LED光源31G:LED光源31B=0.509:1.000:0.194の輝度比率で前記LED光源31R、31G、31Bを点灯させる。この輝度比率の値は、RGBデータをYUVデータ(輝度色差信号)に変換する際のY値の算出式(Y=0.299R+0.587G+0.114B)からGを基準(1.000)に換算した値である。これにより、前記LED光源31R、31G、31Bを同時に点灯させた場合に得られた前記Y基準データを、そのままYUVデータにおけるY値と同様に扱うことができる。
【0018】
(ステップS3)
そして、ステップS3において、前記制御部40は、前記ADF2の前記搬送ローラー14の駆動を制御し、前記CIS3及び前記白基準ローラー3Aの間を所定速度で通過するように前記原稿Pを搬送させる。前記所定速度は、前記CIS3による1ライン分の画像データの読み取りが行われる間(図4のS41〜S48)に前記原稿Pが1ライン分だけ移動する速度として予め定められている。
【0019】
(ステップS4)
続くステップS4において、前記制御部40は1ライン分の画像読取処理を実行する。ここに、図4〜図6は1ライン分の画像読取処理を説明するための図である。なお、S41、S42、・・・は処理手順(ステップ)番号を表している。
まず、前記制御部40は、図5(a)に示すように前記LED光源31Rのみを点灯させ(S41)、そのときの前記ラインセンサー33からの出力をRデータとして取得する(S42)。このとき、前記制御部40は、前記ステップS2で取得された前記R基準データを基準とする比率に基づいて前記Rデータを算出する。
同じく、前記制御部40は、図5(b)に示すように前記LED光源31Gのみを点灯させ(S43)、そのときの前記ラインセンサー33からの出力をGデータとして取得する(S44)。このとき、前記制御部40は、前記ステップS2で取得された前記G基準データを基準とする比率に基づいて前記Gデータを算出する。
続いて、前記制御部40は、図5(c)に示すように前記LED光源31Bのみを点灯させ(S45)、そのときの前記ラインセンサー33からの出力をBデータとして取得する(S46)。このとき、前記制御部40は、前記ステップS2で取得された前記B基準データを基準とする比率に基づいて前記Bデータを算出する。
ここに、前記ステップS41〜S46において前記LED光源31R、31G、31Bを順次点灯させたときに前記ラインセンサー33から出力される前記Rデータ、前記Gデータ、及び前記Bデータ(第1画像データに相当)を取得するときの前記制御部40が第1読取手段に相当し、前記ステップS41〜S46が第1読取工程に相当する。
【0020】
その後、前記制御部40は、図5(d)に示すように前記LED光源31R、31G、31Bを同時に点灯させ(S47)、そのときの前記ラインセンサー33からの出力をYUVデータのY値に対応するY1データ(第2画像データに相当)として取得する(S48)。このとき、前記制御部40は、前記ステップS2で取得された前記Y基準データを基準とする比率に基づいて前記Y1データを算出する。ここに、前記Y1データを取得するときの前記制御部40が第2読取手段に相当し、前記ステップS47〜S48が第2読取工程に相当する。
ここで、前記制御部40は、前記LED光源31R、31G、31Bを同時に点灯させるとき、LED光源31R:LED光源31G:LED光源31B=0.509:1.000:0.194の輝度比率で前記LED光源31R、31G、31Bを点灯させる。これは、RGBデータをYUVデータに変換する際のY値の算出式(Y=0.299R+0.587G+0.114B)からGを基準(1.000)に換算した値である。これにより、前記LED光源31R、31G、31Bを同時に点灯させた場合に得られた前記Y1データを、そのままYUVデータにおけるY値と同様に扱うことができる。
従って、図6に示すように、前記カラースキャナーXでは、1ライン分の画像読み取り期間内に、前記LED光源31Rのみが点灯する期間Tr、前記LED光源31Gのみが点灯する期間Tg、前記LED光源31Bのみが点灯する期間Tb、前記LED光源31R、31G、31Bが全て点灯する期間Taが含まれる。なお、前記ステップS4における前記LED光源31R、31G、31Bの個別点灯及び全点灯の順番はここで例示したものに限らない。
【0021】
(ステップS5)
次に、ステップS5において、前記制御部40は、前記ステップS4で取得されたRデータ、Gデータ、Bデータ(以下、「RGBデータ」という)を、以下の変換式(11)〜(13)に基づいてYUVデータに変換する。
Y= 0.299R+0.587G+0.114B ・・・(11)
U=−0.169R−0.331G+0.500B ・・・(12)
V= 0.500R−0.419G−0.081B ・・・(13)
【0022】
(ステップS6)
続いて、ステップS6において、前記制御部40は、前記ステップS5における変換後のYUVデータのY値を、前記ステップS4で取得された前記Y1データに基づいて補正する。具体的に、前記制御部40は、前記ステップS5における変換後のYUVデータのY値と前記Y1データとの単純平均値Y’を算出し(Y’=(Y+Y1)/2)、その算出された単純平均値Y’を補正後のY値とする。
このように、前記制御部40は、前記ステップS5〜S6において、前記ステップS4で取得されたRGBデータ(第1画像データに相当)及び前記ステップS4で取得されたY1データ(第2画像データに相当)に基づいて、カラー画像データであるY’UVデータを生成する。ここに、係る処理を実行するときの前記制御部40がカラー画像生成手段に相当し、前記ステップS5〜S6がカラー画像生成工程に相当する。
【0023】
(ステップS7)
そして、ステップS7において、前記制御部40は、前記ステップS6で算出されたY’UVデータを、以下の変換数(21)〜(23)に基づいてRGBデータに逆変換する。これにより、前記制御部40は、前記Y1データで補正されて輝度レベルの不足が補われたRGBデータをカラー画像データとして取得する。なお、前記カラースキャナーXにおけるカラー画像データの読取結果としてYUV形式の出力を行う場合には、前記制御部40は、当該ステップS7を省略し、前記Y’UVデータをそのままカラー画像データとして出力する。
R=Y’+1.402V ・・・(21)
G=Y’−0.344U−0.714V ・・・(22)
B=Y’+1.772U ・・・(23)
【0024】
(ステップS8)
その後、前記制御部40は、前記ステップS1で要求されたカラースキャン処理の読取対象の原稿Pの全ライン分の画像データの読取が終了するまでの間(S8のNo側)、前記ステップS4〜S7の処理を繰り返し実行する。一方、前記制御部40は、原稿Pの全ライン分の画像データの読取が終了したと判断すると(S8のYes側)、一連の当該カラースキャン処理を終了させ、処理をステップS1に戻す。
なお、前記ステップS4及び前記ステップS5〜S7は、前記制御部40によって並列処理されてもよく、又は異なる2つの制御主体(ASICなど)により並列して実行されてもよい。例えば、前記CIS3により読み取られる1ラインごとのカラー画像データを順に所定の画像メモリに蓄積する第1の制御部(ASICなど)と、前記所定の画像メモリから前記カラー画像データを順に読み出して前記ステップS5〜S7の処理を実行する第2の制御部(ASICなど)とを備える構成が考えられる。
【0025】
以上説明したように、前記カラースキャナーXでは、前記LED光源31R、31G、31Bを順次点灯させたときに読み取られた1ライン分のRGBデータにおける輝度レベルを、前記LED光源31R、31G、31Bを同時に点灯させたときに読み取られたY1データに基づいて補正したカラー画像データ(Y’UVデータ)を取得することができる。
ここで、前記Y1データは、前記LED光源31R、31G、31Bを同時に点灯させることにより、前記LED光源31R、31G、31Bを個別に点灯させた場合に比べて前記ラインセンサー33への入射光量を増加させた状態で取得されたものである。そのため、前記Y1データに基づいて前記RGBデータの輝度レベルを補正することでカラー画像データにおける輝度の再現性を高めることができ、前記カラー画像データについて、人間が感覚的に得る画像品質を高めることができる。さらに、前記カラースキャナーXでは、前記RGBデータから変換した後のYUVデータにおけるY値と前記Y1データとの単純平均値Y’を補正後のY値として採用しているため、ノイズ成分が抑制されたS/Nの高いカラー画像データを取得することができる。
また、前記カラースキャナーXでは、前記LED光源31R、31G、31B各々の点灯時間の短縮に起因する輝度レベルの不足を前記Y1データによって補うことができる。そのため、前記LED光源31R、31G、31B各々の点灯時間と前記LED光源31R、31G、31Bの同時点灯時間との合計が、前記LED光源31R、31G、31Bの同時点灯を行わない従来の前記LED光源31R、31G、31B各々の点灯時間の合計より短くなるように設定しても、読み取られるカラー画像データの画像品質の低下を抑制することが可能である。逆説すれば、カラー画像データの画像品質を低下させることなく、カラー画像データの読み取り時間を短縮することも可能である。
【0026】
なお、本実施の形態では、前記ステップS6において、前記ステップS5における変換後のYUVデータのY値と前記ステップS4で取得されたY1データとの単純平均値Y’を補正後のY値として採用する場合を例に挙げたがこれに限らない。
例えば、前記制御部40は、前記ステップS6において、前記ステップS5における変換後のYUVデータのY値と前記ステップS4で取得されたY1データとの加重平均値を算出することも考えられる。例えば、この加重平均値の算出時における重み付けは、輝度再現性を高める場合には前記Y1データの比重を大きくなるように設定し、S/Nの改善を図る場合には同じ比率に近くなるように設定しておくことが考えられる。具体的に、前記Y1データのS/Nが前記RGBデータから得られたY値のS/Nの3倍であること(Y1データのノイズ成分が1/3であること)が既知である場合には、前記RGBデータから得られたY値及び前記Y1データの加重平均値における重み付けを1:3として、前記Y1データの重みを大きくすることでS/Nの改善を図ることが考えられる。なお、前記ステップ5における変換後のYUVデータのY値を前記ステップS4で取得されたY1データに置き換えることも他の実施例として考えられる。
また、前記制御部40が、前記ステップS5〜S7の間に、前記Y’UVデータにおけるU値及びV値を補正する構成も他の実施例として考えられる。具体的に、前記制御部40は、前記Y’UVデータにおける各画素のU値を、その画素に隣接する1画素又は複数画素のU値と平均化することが考えられる。なお、前記Y’UVデータにおけるV値についても同様である。これにより、前記Y’UVデータにおける色信号のバラツキを抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
1 :装置本体
13:原稿セット部
14:搬送ローラー
15:原稿押さえ
16:排紙部
2 :ADF
21:コンタクトガラス
22:読取位置
23:読取ユニット
3 :CIS
30:コンタクトガラス
31:白色光源
31R:LED光源
31G:LED光源
31B:LED光源
32:レンズ
33:ラインセンサー(撮像素子の一例)
40:制御部
41:LED光源
42〜44:ミラー
45:光学レンズ
46:CCD
X :カラースキャナー(画像読取装置の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる色の光を照射する複数の光源と、
前記光源各々から照射された光を受光して画像データを出力する撮像素子と、
前記複数の光源を順次点灯させたときに前記撮像素子から出力される第1画像データを取得する第1読取手段と、
前記複数の光源を同時に点灯させたときに前記撮像素子から出力される第2画像データを取得する第2読取手段と、
前記第1画像データ及び前記第2画像データに基づいてカラー画像データを生成するカラー画像生成手段と、
を備えてなることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記複数の光源がR(赤)、G(緑)、B(青)に対応する3つの光源であり、前記第1画像データがRGBデータあって、
前記カラー画像生成手段は、前記第1画像データをYUVデータに変換した後、前記変換後のYUVデータのY値を前記第2画像データに基づいて補正するものである請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記第2読取手段は、R:G:B=0.509:1.000:0.194の輝度比率で前記3つの光源を同時に点灯させるものである請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記カラー画像生成手段は、前記第1画像データから変換した後の前記YUVデータのY値と前記第2画像データとの単純平均値又は加重平均値を補正後のY値とするものである請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の画像読取装置を備えてなる画像形成装置。
【請求項6】
異なる色の光を照射する複数の光源と前記光源各々から照射された光を受光して画像データを出力する撮像素子とを備えてなる画像読取装置で実行される画像読取方法であって、
前記複数の光源を順次点灯させたときに前記撮像素子から出力される第1画像データを取得する第1読取工程と、
前記複数の光源を同時に点灯させたときに前記撮像素子から出力される第2画像データを取得する第2読取工程と、
前記第1画像データ及び前記第2画像データに基づいてカラー画像データを生成するカラー画像生成工程と、
を実行することを特徴とする画像読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−74429(P2013−74429A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211363(P2011−211363)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】