説明

画像読取装置

【課題】 原稿を読取部に搬送した時に、原稿に付着したゴミや埃等によって、読取部と対向するガイド部材の面に傷を付けることを防止し、原稿の自重を本体部側に作用させて、原稿を読取面に当接させ、適正な原稿の読み取りを行なうことができることを課題とする。
【解決手段】 原稿Pに記載されたデータを読み取る読取手段110を備えた本体部10と、原稿Pを読取手段110の読取面に搬送する搬送手段30とを有し、本体部10と対向する位置には、原稿Pの浮き上がりを受けるガイド部材210が設けられ、ガイド部材210は、読取面と対向する面に凹部40が形成されるとともに、ガイド部材210を読取面に対して適宜の隙間を保つようにする付勢手段50が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、普通紙、コート紙、フィルム等の原稿を読み取る画像読取装置に関するものであり、特に用紙搬送型の画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿読取装置の具体的な構成として特許文献1に開示されたものがある。この構成は、〔図1〕、〔図4〕、〔図5〕および〔図6〕に示すように、自重で原稿を読取面16に加圧するようにシェーディング板44を、揺動可能に支持する。
【0003】
この構成の下、原稿が読取面16を通過する時、原稿はシェーディング板44の自重により加圧され、読取面16に密着する。一方、厚手の原稿が読取面16を通過する時、シェーディング板44は、原稿からの押上力から逃げる方向に回転し、シェーディング板44が押し上がった位置からシェーディング板44の自重により加圧され、読取面16に密着する。
【特許文献1】特開平5−91243号公報(〔0004〕から〔0005〕、図1、図4、図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記構成は、原稿を読み取る時に、読取面16と対向するシェーディング板44の面が接触した状態となり、シェーディング板33と対向する原稿の面に付着したゴミや埃等により、このシェーディング板44の面に傷がつき、適正なシェーディング補正を行なうことができなくなる可能性が高く、原稿の適正な読み取りを行なうことができないおそれがあった。
【0005】
また、読み込む原稿に折り目が付いていたり、腰が強く浮き上がった部分があったりする場合、シェーディング板44の自重で、この折り目のエッジ部分や浮き上がり部分を押し潰すことができない。このため、読取面16において、原稿は浮いた状態のままとなり、適正な読取を行なうことができないおそれがある。特に、折り目が搬送方向についている場合は、顕著となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明は、原稿に記載されたデータを読み取る読取手段を備えた本体部と、原稿を前記読取手段の読取面に搬送する搬送手段とを有し、本体部と対向する位置には、原稿の浮き上がりを受けるガイド部材が設けられ、ガイド部材は、読取面と対向する面に凹部が形成されるとともに、ガイド部材を読取面に対して適宜の隙間を保つようにする付勢手段が設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2においては、凹部は、シェーディング補正を行う時に光源の光を受けることを特徴とする。さらに、請求項3においては、付勢手段には、付勢手段の付勢力を切り換える切換手段が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、原稿に記載されたデータを読み取る読取手段を備えた本体部と、原稿を前記読取手段の読取面に搬送する搬送手段とを有し、本体部と対向する位置に、原稿の浮き上がりを受けるガイド部材を設け、ガイド部材には、読取面と対向する面に凹部を形成するとともに、ガイド部材を読取面に対して適宜の隙間を保つようにする付勢手段を設けることにより、原稿を読取部に搬送した時に、原稿に付着したゴミや埃等によって、読取部と対向するガイド部材の面に傷を付けることを防止し、原稿の自重を本体部側に作用させて、原稿を読取面に当接させ、適正な原稿の読み取りを行なうことができる。
【0009】
また、請求項2では、凹部でシェーディング補正を行う時に光源の光を受ける構成とすることにより、凹部の面に傷をつけることはなく、適正なシェーディング補正を行なうことができる。さらに請求項3では、付勢手段の付勢力を切り換える切換手段を設けることにより、付勢手段を介して、原稿を浮き上がらせる力(付勢力)をガイド部材で受け、原稿の浮き上がりを防止し、適正な読取を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に、本発明の画像読取装置の概略図の一例を示す。この画像処理装置は、LEDプリンタ等の印字出力装置に接続可能なイメージスキャナとして適用したものを示す。もちろん、スキャナ部とプリンタ部が一体となった複写機においても適用される。
【0011】
このイメージスキャナは、例えばA0サイズまでの大判用紙サイズの原稿を読み取り可能なスキャナであり、原稿Pに記載されたデータを読み取る本体部10と、矢印a方向に持ち上げることが可能な上蓋20と、原稿Pを搬送する搬送手段30とにより構成される。なお、原稿Pに記載されたデータとは、イメージや文字、またはこれらが含まれたものをさす。
【0012】
本体部10は、読取手段110と、読取手段110を挟むように配設された送りローラ120aと搬送ローラ120bとからなる。読取手段110は、縮小光学系であり、第1ミラー111と、第2ミラー112と、第3ミラー113と、反射板Rと、投撮レンズ115と、撮像素子(L1、L2、L3・・・)がライン状に配設されたイメージセンサ119と、光源116と、固定台114とからなる。
【0013】
固定台114には、原稿に反射させた光源116の光をイメージセンサに到達させるために、第1ミラー111、第2ミラー112、第3ミラー113が所定の角度を持って配置されている。このようなミラーの配置により、光源116の光の経路を折り曲げて装置の小型化を図っている。
【0014】
このような構成により、原稿に反射させた光源116の光は、第1ミラー111、第2ミラー112、第3ミラー113を介して、投撮レンズ115で集光し、イメージセンサ119で読み込まれる。
【0015】
なお、この実施の形態において、読取手段110は、縮小光学系であるが、これに限定されることはなく、図2に示すように、赤色フィルタ付センサ121と、緑色フィルタ付センサ122と、青色フィルタ付センサ123と、固定台114と、レンズ115と、光源116とにより構成してもよい。
【0016】
また、この構成において、赤色フィルタ付ラインセンサ121、緑色フィルタ付ラインセンサ122および青色フィルタ付ラインセンサ123は、固定台114により取り付けられている。さらに、各センサは、レンズ115により集光された光源116によって照射された原稿Pの反射を、コンタクトガラス117を透して読み取る複数の半導体センサ素子がライン状に配設されている。
【0017】
上蓋20は、原稿挿入側から前部押えローラ220、ガイド部材210および後部押えローラ230がこの順番で配設されている。上蓋20の原稿挿入側には把持部240が設けられ、さらに、これと反対側の後端部21が本体部10に軸支されている。これにより、上蓋20は、把持部240を矢印a方向に持ち上げることにより、コンタクトガラス117等の読取面を開放することができる。また、原稿Pの先端が最初に到達するガイド部材210側には、規制部118が配置されている。規制部118は、一端がコンタクトガラス117側に傾いて、上蓋20に取り付けられている。
【0018】
また、上蓋20を元の位置に復帰させた時(図1の状態)に、原稿挿入側に配置された前部押えローラ220は送りローラ120aと対向する位置に取り付けられ、原稿排出側に配置された後部押えローラ230は搬送ローラ120bと対向する位置に取り付けられている。
【0019】
送りローラ120aは、前部押えローラ220に接した状態で回転させることにより、挿入された原稿Pをコンタクトガラス117上、すなわち読み取り位置(読取面)に搬送するローラである。これら、送りローラ120aと前部押えローラ220、後部押えローラ230と搬送ローラ120bにより搬送手段30が構成される。
【0020】
ガイド部材210は、読取面に搬送された原稿Pの浮き上がりを防止するものであり、コンタクトガラス117の真上から覆うように、設けられている。
【0021】
また、具体的に、ガイド部材210は、白色の薄板材を組み合わせたもの、または一体形成したものであり原稿Pの先端が最初に到達するガイド部材210部位には、スムーズに読取面へ搬送できるように周面が円弧状に形成された導入部211が設けられている。
【0022】
さらに、コンタクトガラス117と対向するガイド部材210の面には、凹部40が形成されている。凹部40は、シェーディング補正を行なう時に光源116から照射された光を受ける。凹部40の凹み部分以外の平面部212は、コンタクトガラス117に対して所定の間隔を保って配置されている。なお、コンタクトガラス117と平面部212との間隔は、読み込む原稿Pの厚さと略同一となるように設定されている。
【0023】
また、ガイド部材210には、付勢手段50が設けられている。付勢手段50は、コンタクトガラス117と平面部212との間が一定の間隔となるように、バネ等によりガイド部材210をコンタクトガラス117側に付勢させ、原稿挿入側から搬送されてきた原稿Pの浮き上がり力を防止するものである。また、付勢手段50は、原稿Pの特性によって、付勢手段50の付勢力を調整する調整手段60が設けられている。
【0024】
この調整手段60は、取付板(図示せず)に取り付けられたレバー60を操作することにより、図示しない調整機構を介して、段階的に付勢手段50の付勢力を切り換えるようになっている。なお、先に述べた原稿Pの特性とは、例えば、原稿のサイズ(長尺、不定形、定形等)、原稿の材質(普通紙、コート紙、光沢紙等)、厚さおよび原稿の折り曲げの有無等がある。
【0025】
次に、本発明の画像読取装置の作用について説明する。先ず、原稿Pを原挿入側にセットする前に、通常に原稿Pを読み込む場合には、上蓋20を開けて、図3に示すようにレバー60を操作する。
【0026】
これは、後に述べるが、原稿Pの先端がガイド部材210に進入し、原稿Pの先端がガイド部材210の導入部211に突き当たった時、その付勢力を付勢手段50で吸収して、読取部側へスムーズに移動することができるようにするためである。この後、上蓋20を閉じて、原稿Pを原稿挿入側にセットし、原稿Pの搬送を開始する。
【0027】
図4(a)に示すように、原稿Pの先端が上(上蓋20側)に反った状態でガイド部材210側に搬送されてくると、規制部118により、原稿Pの先端は、コンタクトガラス117側に向くように規制される。さらに、原稿Pを繰り出すと、図4(b)に示すように、原稿Pの先端は、ガイド部材210の導入部211に突き当たる。
【0028】
この時、ガイド部材210は、原稿Pの先端部位に作用する付勢力を受け、原稿Pの先端をコンタクトガラス117側に向くようにガイドされ、原稿Pの先端部位の浮き上がりが防止される。これと同時に、原稿Pの先端部位は、自重によりコンタクトガラス117に対し、当接するようになる。この後、原稿Pは、搬送手段30により、原稿Pの先端が凹部40に接することなく、順次、読取面に搬送され、原稿Pに記載されたデータを読み取る。
【0029】
また、原稿Pの先端がコンタクトガラス117側に向かなくとも、規制部118および導入部211により、原稿Pの反り上がり部分は規制される。図5に示すように原稿Pの反り上がり部分(突出量)は、原稿Pの読み取りに影響を与えないほどごく僅かとなる。
【0030】
さらに、この状態において、原稿Pの先端は、平面部212の下面に僅かにこする程度で、殆ど接することはない。したがって、平板部の下面よりも入り込んでいる凹部40は、原稿Pの先端は接することはない。この結果、原稿Pの先端が反り上がった状態で、原稿Pが読取部に搬送されたとしても、凹部40に接することはなく、凹部40に傷が付くことが防止され、適正なシェーディング補正を行なうことができる。
【0031】
次に、折り目が入った原稿Pを読み込む場合について説明する。折り目が入った原稿Pを読み込む場合は、図6に示すようにレバー60を操作して、付勢手段50の付勢力を強くする。これは、付勢手段50の付勢力を通常の原稿Pで設定した場合、次のようなことが生じる。
【0032】
通常の原稿Pの読み込みで述べたように、原稿Pの先端がガイド部材210に進入させ、原稿Pの先端がガイド部材210の導入部211に突き当て、その付勢力を付勢手段50で吸収して、読取部側へスムーズに移動する。さらに、原稿Pの搬送を続けると、原稿Pを折った部分が移動してくる。
【0033】
この原稿Pが折られた突出部分、すなわちエッジ部分に付勢力が集中するため、先に述べた浮き上がり部分の付勢力よりも、付勢力が強くなる。この状態で、ガイド部材210の導入部211に突き当たると、通常の原稿Pで設定された付勢手段50の付勢力は、エッジ部分に付勢力に打ち負け、ガイド部材210は、上蓋20側にシフトする。
【0034】
この結果、規制部118と打ち負かされた付勢手段50の付勢力とにより、原稿Pのエッジ部分の突出量を抑えたとしても、エッジ部分をコンタクトガラス117に当接することはできず、図7に示すように、エッジ部分に光を投射した部分の光の像は、各撮造素子C1、C2、C3・・・(図においてはCCD)間において、破線で示すようにずれが生じ、途切れた状態で読み込まれる。
【0035】
また、図2に示すような、赤色フィルタ付センサ121と、緑フィルタ付センサ122と、青フィルタ付センサ123と、固定台114と、レンズ115と、光源116で構成したものでは、原稿Pのエッジ(折り曲げ)部分近傍は、読み取りを行なうとぼやけてしまい、正確に原稿Pを読み取ることができない。この図7において、原稿は手前側に向かって搬送する。
【0036】
このため、折り目が入った原稿Pを読み込む場合は、原稿Pの折り目を読み込むことができるようにするため、付勢手段50の付勢力を強くする。図8(a)に示すように、付勢手段50の付勢力を設定した後、上蓋20を閉じて、原稿Pを原稿挿入側にセットし、原稿Pの搬送を開始する。
【0037】
この後、図8(b)に示すように、原稿Pが上蓋20側に折った状態でガイド部材210側に搬送されてくると、規制部118により、原稿Pの折り曲げ部分は潰され、折り曲げ部分の突出量が小さくなる。さらに、原稿Pを繰り出すと、原稿Pの先端はガイド部材210の導入部211に突き当たる。
【0038】
この時、付勢手段50の付勢力は、原稿Pのエッジ(折り曲げ)部分に生じる付勢力に打ち勝ち、付勢手段50の付勢力によって、ガイド部材210は、導入部211を介して、原稿Pのエッジ(折り曲げ)部分を押さえ付け、さらに原稿Pのエッジ(折り曲げ)部分が潰され、図8(c)コンタクトガラス117に当接した状態となる。
【0039】
この状態で原稿Pは、搬送手段30により徐々に読取面側に移動する。この間、光源116が照射される平面部212の部分は凹部40に形成されているため、原稿Pのエッジ(折り曲げ)部分は、凹部40に当接しない状態で移動する。この結果、シェーディング補正を行なう時に光源116から照射された光を受ける平面部212の部分に傷をつけることなく、原稿Pの読み取りを行なうことができる。
【0040】
なお、この実施の形態において、原稿Pが折られている場合に、付勢手段50の付勢力を通常よりも強い付勢力に切り換えているが、これに限定されることはなく、腰の強い原稿Pを読み込む場合など、原稿Pの付勢力が強くガイド部材210で押さえ込むことができない場合に、適用しても良い。
【0041】
また、先に述べた説明で、原稿は搬送方向に向かって上方に折り曲がっていたが、下方に折り曲がったものであっても同様の効果が得られる。さらに、搬送方向に対し垂直方向に浮き上がりが生じたものであっても、同じ効果を得られる。
【0042】
以上のように、ガイド部材210に、読取面と対向する面に凹部40を形成し、さらに、ガイド部材210に原稿Pの浮き上がり力を受ける付勢手段50を設け、付勢手段50の付勢力により、ガイド部材210を読取面に対して適宜の隙間を保つようにすることにより、原稿Pを読取部に搬送した時に、原稿Pに付着したゴミや埃等によって、読取部と対向するガイド部材210の面(凹部40)に傷を付けることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の画像読取装置の断面概略図。
【図2】読取手段の他の実施例を示す図。
【図3】付勢手段の付勢力を調整手段(レバー)により調整する図。
【図4】原稿の搬送状態を示す図であり、(a)は上方に沿った原稿がコンタクトガラス側に搬送されている状態であり、(b)はこの原稿がガイド部材に突き当たり、原稿の先端部位が矯正される図である。
【図5】原稿の先端が図5に状態から読取面に搬送される状態を示す要部拡大図。
【図6】図2の状態から調整手段(レバー)を操作して付勢手段の付勢力を切り換える図。
【図7】折り曲げた原稿が読み取られ、イメージセンサの撮像素子に検出された状態を示す図。
【図8】(a)は折り曲げた原稿を読取面に搬送する説明をするための概略図であり、(b)は断面A_Aから見た図であり、(c)は断面B_Bから見た図である
【符号の説明】
【0044】
10 本体部
20 上蓋
30 搬送手段
40 凹部
50 付勢手段
60 調整手段
P 原稿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿に記載されたデータを読み取る読取手段を備えた本体部と、前記原稿を前記読取手段の読取面に搬送する搬送手段とを有し、
前記本体部と対向する位置には、前記原稿の浮き上がりを受けるガイド部材が設けられ、
前記ガイド部材は、前記読取面と対向する面に凹部が形成されるとともに、前記ガイド部材を前記読取面に対して適宜の隙間を保つようにする付勢手段が設けられていることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記凹部は、シェーディング補正を行う時に光源の光を受けることを特徴とする請求項1記載の画像読取装置
【請求項3】
前記付勢手段には、前記付勢手段の付勢力を切り換える切換手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−186430(P2006−186430A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374978(P2004−374978)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(000165136)桂川電機株式会社 (66)
【Fターム(参考)】