説明

画質制御装置及び液晶表示装置

【課題】環境条件が変化する場合であっても表示品質の低下を防止することが可能な画質制御装置及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】光学特性に含水量依存性を有する光学フィルムが表示面に装着もしくは内蔵され、入力された駆動信号に従って画像表示を行う表示パネル(液晶パネル)10の画質を制御する画質制御装置に、含水量に関連する水分情報を検出する水分検出センサ21、22と、水分検出センサが検出した水分情報と含水量の変化に起因して表示パネルに生じる画質変化もしくはその画質変化を補正するための補正値との対応関係を示す情報が予め保持されている補正テーブル(テーブルデータ記録部)40と、水分検出センサが検出した水分情報と補正テーブルが保持している内容とに基づいて、表示パネルに与える駆動信号を補正する駆動信号補正部(制御部)30とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画質制御装置及び液晶表示装置に関し、特に表示特性の補償などの目的で光学フィルムを備えた液晶表示装置などに利用される技術である。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶表示装置は、一般的に液晶セル、直線偏光板、光学補償フィルム及び駆動回路により構成される。また、透過型の液晶表示装置の場合、2枚の偏光板をクロスニコル状態で液晶セルの両側に配置し、1枚又は複数枚の光学補償フィルムを液晶セルと偏光板との間に配置する。反射型の液晶表示装置の場合には、反射板、液晶セル、1枚の光学補償フィルム、1枚の偏光板の順に配置する。偏光板は透明保護膜と偏光膜とからなる。なお、偏光板の透明保護膜を光学補償フィルムとした楕円偏光板とすることもある。液晶セルは、棒状液晶性分子と、それを封入するための2枚の基板と、棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層とからなる。
【0003】
液晶セルについては、棒状液晶性分子の配向状態が違う様々な種類のものが存在している。すなわち、透過型の液晶セルについては、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Luquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Band)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)があり、反射型の液晶セルについては、TN、HAN(Hybrid Aligned Nematic)、GH(Guest-Host)のような形式(表示モード)のものが提案されている。
【0004】
透過型の液晶表示装置の場合、液晶セルの上下の偏光板のうち、バックライト側の偏光板は光源からの光を一部吸収し、液晶セルに入射する光を直線偏光に変換する。出射側の偏光板は液晶セルを通過した光のうち、透過軸に平行な偏光成分を通過させ、吸収軸方向の偏光成分を吸収する。光学補償フィルムは、不要な画像着色を解消し、視野角を拡大するために、偏光板と液晶セルとの間に配置され、偏光板による直線偏光を楕円偏光に変換する。すなわち、直線偏光板と光学補償フィルムとで楕円偏光板となる。光学補償フィルムとしては、延伸複屈折ポリマーフィルムをはじめとして、透明支持体上に円盤状化合物、又は液晶性分子から形成された光学異方性層を有する光学補償フィルムが一般に使用されている。光学補償フィルムの光学的性質は、液晶セルの光学的性質、具体的には上記のような表示モードの違いに応じて決定され、様々な表示モードに対応した様々な特性の光学補償フィルムが提案されている。
【0005】
ところで、液晶表示装置などの表示装置については従来より様々な制御技術が提案されている。例えば、特許文献1においては、表示特性の1つであるコントラストを制御するために、温度センサを用いて環境温度を検出し、検出された環境温度に応じて液晶表示器の電極に印加する電圧を自動的に調整することを提案している。すなわち、最適なコントラストが得られる時の印加電圧が環境温度に応じて変化する事実を考慮して、温度変化によりコントラストが変化しないように印加電圧を制御している。
【特許文献1】特開平5−127609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように検出した環境温度に応じて印加電圧を制御するだけでは、望ましい表示品質が得られない場合も多い。具体例について以下に説明する。
近年、液晶表示装置はますます大型化が進み、これに伴って特に黒色を表示している状態において、表示のための画像信号とは無関係に、表示画面の上下、左右の端部、又は四隅方向に光が漏れる現象が顕著になる傾向がある。つまり、表示画像とは無関係に特定の視野方向に光が漏れているために、大型の液晶表示装置では著しい表示品位の低下が生じる場合がある。また、特に光学補償フィルムを備えたOCB表示モードの液晶表示装置の場合には、環境条件の違いによって色味変化が生じたり、最適な黒色を得るために必要な印加電圧の値に変動が生じることが判明している。このような表示品位の低下については、検出した環境温度に応じて印加電圧を制御するだけでは解決できないのが実情である。
本発明は、環境条件が変化する場合であっても、表示品質の低下を防止することが可能な画質制御装置及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 光学特性に含水量依存性を有する光学フィルムが表示面に装着もしくは内蔵され、入力された駆動信号に従って画像表示を行う表示パネルの画質を制御する画質制御装置であって、
前記光学フィルム、前記表示パネルの周囲環境の少なくとも一方に対して、含水量に関連する水分情報を検出する水分検出センサと、
少なくとも前記水分検出センサが検出した水分情報と、前記含水量の変化に起因して前記表示パネルに生じる画質変化もしくはその画質変化を補正するための補正値との対応関係を示す情報が予め保持されている補正テーブルと、
前記水分検出センサが検出した水分情報と前記補正テーブルが保持している内容とに基づいて、前記表示パネルに与える駆動信号を補正する駆動信号補正部と、を備えた画質制御装置。
【0008】
この画質制御装置によれば、表示パネルの使用環境の変化によって生じる表示品質の低下を防止することが可能である。例えば、OCB表示モードの液晶表示パネルに用いられる光学フィルム(位相差フィルム)については、温湿度の変化に伴って光学特性が変化することが確認されている。また、前述の液晶表示装置における光漏れの現象については、例えば湿度60%以上の高い湿度の状態に保管された液晶表示装置が、湿度の低い環境に移された際に発生する。また、光漏れ現象の顕著な状態は、低湿度の環境下から再び高湿度の環境に移行すると徐々に回復することが確認されている。このような状況から、光漏れ現象については、2枚のクロスニコルに配置された偏光膜に挟持された偏光板を構成するフィルム材料の吸湿や放湿に伴う光弾性変形によって引き起こされていると考えられる。従って、表示パネルが使用される環境における湿度、あるいは表示パネルの光学フィルム内部の含水率に応じて発生すると予想される光学特性の変化を相殺するように制御を行うことで、光学フィルムの光学特性の変化を補償し、表示品質の低下を防止できる。
【0009】
(2) (1)記載の画質制御装置であって、前記水分検出センサは、前記表示パネルの周囲環境に関する湿度を検出する湿度センサを含む画質制御装置。
【0010】
この画質制御装置によれば、前記水分検出センサを用いて前記表示パネルの周囲環境に関する湿度を検出できるので、この湿度変化に伴って発生すると予想される光学補償フィルムの光学特性の変化を補償し、表示品質の低下を防止できる。
【0011】
(3) (1)記載の画質制御装置であって、前記水分検出センサは、前記表示パネルが具備する光学補償フィルムの内部の含水率を検出する含水率センサを含む画質制御装置。
【0012】
この画質制御装置によれば、前記水分検出センサを用いて前記表示パネルに備わった光学補償フィルムの内部の含水率を検出できるので、この含水率の変化に伴って発生すると予想される光学補償フィルムの光学特性の変化を補償し、表示品質の低下を防止できる。
【0013】
(4) (1)〜(3)のいずれか1項記載の画質制御装置であって、互いに独立した複数の前記水分検出センサを前記表示パネルの互いに異なる箇所に配置した画質制御装置。
【0014】
この画質制御装置によれば、複数の水分検出センサを用いて、前記表示パネル上の複数領域のそれぞれについて水分情報を検出できる。従って、特に大型の表示パネルを利用する場合のように、表示パネル上の領域毎に湿度あるいは含水率が異なるような状況であっても、領域毎に適正な補正値を算出し、表示パネルの全領域に渡って表示品質の低下を防止可能になる。
【0015】
(5) (1)〜(4)のいずれか1項記載の画質制御装置を備えた液晶表示装置。
【0016】
この液晶表示装置によれば、前述のように、液晶表示パネルが使用される環境における湿度、あるいは液晶表示パネルの光学補償フィルム内部の含水率に応じて発生すると予想される光学特性の変化を相殺するように制御を行うことで、光学特性の変化を補償し、表示品質の低下を防止できる。
【0017】
(6) (5)記載の液晶表示装置であって、前記光学フィルムとして、光学補償用の位相差フィルムを用いた液晶表示装置。
【0018】
この液晶表示装置によれば、位相差フィルムを用いることにより、液晶表示パネルの視野角特性等を改善できる。また、位相差フィルムの含水率の変化に伴って発生する光学特性の変化は、前述の制御により補償できる。
【0019】
(7) (5)又は(6)記載の液晶表示装置であって、前記駆動信号補正部は、少なくとも前記表示パネルの液晶層に電気光学効果を生じさせる駆動電圧信号を、前記水分検出センサが検出した水分情報と前記補正テーブルが保持している内容とに基づいて補正する液晶表示装置。
【0020】
この液晶表示装置によれば、環境湿度等の変化に伴って発生する前記光学フィルムの光学特性の変化を補償できる。すなわち、液晶表示パネルの電極間に印加する駆動電圧信号の電圧を調整することにより、液晶分子の配向状態が調整され、液晶層を通過する光の透過率等が変化するので、前記光学フィルムの光学特性の変化を相殺できる。
【0021】
(8) (5)又は(6)記載の液晶表示装置であって、
前記表示パネルの表示側の表面とは反対の裏面側から照明光を照射するバックライトを含み、
前記駆動信号補正部は、少なくとも前記バックライトの発光輝度を、前記水分検出センサが検出した水分情報と前記補正テーブルが保持している内容とに基づいて補正する液晶表示装置。
【0022】
この液晶表示装置によれば、環境湿度等の変化に伴って発生する前記光学フィルムの光学特性の変化を補償できる。すなわち、液晶表示パネルを裏面から照明する照明光の輝度を調整することにより、液晶層を通過する光の強度が変化するので、前記光学フィルムの光学特性の変化を相殺できる。
【0023】
(9) (5)〜(8)のいずれか1項記載の液晶表示装置であって、
前記表示パネルは複数の基本色成分のそれぞれの光の透過又は反射を制御するためのカラーフィルタ部を備え、
前記駆動信号補正部は、少なくとも前記表示パネルの液晶層に電気光学効果を生じさせる駆動電圧信号を、前記複数の基本色成分のそれぞれについて独立に、前記水分検出センサが検出した水分情報と前記補正テーブルが保持している内容とに基づいて補正する液晶表示装置。
【0024】
この液晶表示装置によれば、複数の基本色成分(R色、G色、B色等)のそれぞれについて独立に駆動電圧信号を補正するので、複数の基本色成分間で駆動電圧のバランスを調整することができ、より高品質の表示が実現する。
【0025】
(10) (5)〜(8)のいずれか1項記載の液晶表示装置であって、前記表示パネルが、OCBモード(Optically Compensated Bend mode)液晶表示パネルである液晶表示装置。
【0026】
この液晶表示装置によれば、OCBモードの液晶表示パネルを用いるので、極めて高い表示応答速度が得られる。また、OCBモードの液晶表示パネルであっては、液晶分子のベンド配向が上下対象構造であるため、画面を見る角度による液晶層の屈折量変化を自己補償し、表示の視野角依存性を低減できる。また、このようなベンド配向が持っている視野角特性を引き出し、均一で高画質な視野角特性を得るために用いる必要のある光学フィルムについては、含水率の変化によって光学特性が大きく変化する可能性があるが、表示パネルが使用される環境における湿度、あるいは表示パネルの光学補償フィルム内部の含水率に応じて発生すると予想される光学特性の変化を相殺するように制御を行うことで、光学特性の変化を補償し、表示品質の低下を防止できる。
【0027】
(11) 前記表示パネルを複数のブロックに分割して該ブロック毎に駆動信号を独立して印加する液晶表示装置であって、
前記水分検出センサが前記表示パネルの複数箇所に配置され、各水分検出センサからの含水量検出値に基づいて前記表示パネル内の含水量マップを作成し、
前記ブロック毎に前記含水量マップから対応するブロック位置の代表含水量を求め、該代表含水量に対応する補正値データを前記補正テーブルからそれぞれ決定し、該決定した補正値データを前記ブロック毎の駆動信号に重畳して前記各ブロックをそれぞれ表示駆動する液晶表示装置。
【0028】
この液晶表示装置によれば、前記表示パネルの領域毎に独立した状態で駆動信号を補正できるので、より品質の高い表示が可能になる。従って、特に大型の表示パネルを利用する場合のように、表示パネル上の領域毎に湿度あるいは含水率が異なるような状況であっても、領域毎に適正な補正値を算出し、領域毎に独立した補正値を用いて駆動信号を制御することにより、表示パネルの全領域に渡って表示品質の低下を防止可能になる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明の画質制御装置及び液晶表示装置によれば、表示パネルが使用される環境における湿度、あるいは表示パネルの光学補償フィルム内部の含水率に応じて発生すると予想される光学特性の変化を相殺するように制御を行うことで、光学特性の変化を補償し、表示品質の低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る画質制御装置及び液晶表示装置の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は第1の実施の形態における液晶表示装置の主要部の構成を示すブロック図である。
第1の実施の形態では、図1に示すような構成の液晶表示装置に本発明を適用する場合を想定している。この液晶表示装置100は、主に、液晶パネル10と、含水率センサ21と、湿度センサ22と、温度センサ23と、制御部30と、テーブルデータ記録部40と、電圧制御部50と、LCDドライバ60とを備えている。
【0031】
なお、液晶表示装置に使用される光学フィルムは、特に湿度によって光学特性が左右されるため、温度センサ23については、その使用を選択的に切り替えてもよい。また、含水率センサ21及び湿度センサ22については、いずれか一方を備えるだけでも本発明を実施できるが、湿度センサ22だけを用いる場合と比べると、含水率センサ21だけを用いる方がより高精度の補正制御が可能になる。
【0032】
液晶パネル10は、水平方向(X)及び垂直方向(Y)の各軸に沿う方向に一定の間隔で二次元配列になるように配置された多数の液晶セル(10a)で構成されている。それぞれの液晶セル10aは、図2に示すような構造になっている。この例では、OCBモードの液晶セル10aで構成された液晶パネル10を想定している。勿論、OCBモード以外の液晶セルで構成される液晶パネルを用いる場合であっても本発明は適用可能である。
【0033】
図2は図1に示す液晶パネルに含まれている多数の液晶セルの1つの構成を示す斜視図である。この液晶セル10aは、厚み方向に並べて配置された偏光板11と、液晶セル基板12と、液晶層13と、液晶セル基板15と、光学補償フィルム16と、偏光板17とを備えている。
【0034】
この液晶セル10aは透過型であり、液晶セル10aの裏面側から入射する光(照明光)のうち一部分がこれを透過して表示面側に出射され、これが1つの画素として人間の目に映る。裏面側に配置されている偏光板11の偏光軸の方向と表示面側に配置されている偏光板17の偏光軸の方向とは図2に示すように互いに直交するクロスニコル状態となっている。
【0035】
また、カラー画像の表示を可能にするために、液晶セル基板12上にはカラーフィルタ層12aが形成してある。すなわち、カラーフィルタ層12aは、色の3原色である赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色成分に相当する波長の光だけを透過する3色の独立した光学フィルタ部を備えており、裏面側から入射する光の成分を、R、G、Bの各色成分に分光してから液晶層13に入射させる。従って、各液晶セル10aの表示面側に画素として現れる光の色成分を選択することができ、フルカラー画像を表示できる。
【0036】
液晶層13には多数の液晶分子14が含まれている。これらの液晶分子14は、図2に示すように弓なり状態に配向(ベンド配向)される。ベンド配向された液晶分子14に対して電圧を印加すると、弓のしなり度合いが変化するため、この液晶層13を通過する光の透過率が変化し、液晶パネル10の表示面側に現れる光量、すなわち画素の明るさが変化する。現実には、OCBモードの液晶セル10aの表示動作はノーマリーホワイトであり、液晶分子14に電圧を印加しない状態では光透過率が高く、電圧を印加すると光透過率が下がり黒色になる。勿論、印加する電圧の調整で明るさの階調も表現でき、黒色の表示特性を制御することもできる。なお、例えばVAモードの液晶パネルの場合には、動作がノーマリーブラックなので黒色は制御できない。
【0037】
このような構造のOCBモードの液晶セル10aについては、液晶分子14がベンド配向されており、弓のしなりに似た液晶分子14の動きが配向変化の加速効果を生み出し、その結果、他のモードの液晶パネルと比べて格段に速い応答速度が得られる。また、ベンド配向は上下対称な構造になっているため、視聴者が画面を見る角度の違いに応じた液晶層13の屈折量変化を自己補償することになり、表示特性の視聴者が画面を見る方向に対する依存性を低減できる。但し、OCBモードの液晶セル10aが持っている本来の表示特性を十分に引き出すためには、液晶セル10aに適した光学補償フィルム16を用いて光学特性を補償する必要がある。
【0038】
光学補償フィルム16については、位相差フィルムであり、液晶パネル10の画面表示における画像着色を解消し、視野角を拡大するために設けてあり、偏光板11の透過によって直線偏光になった光を楕円偏光に変換する。
【0039】
光学補償フィルム16を構成する材料については、例えばセルロースエステルフィルムを用いることが想定される。また、この光学補償フィルム16の面内レターデーション値(Re)については0〜70nm以下であることが好ましい。より好ましくは0〜30nm以下であり、より好ましくは0〜10nm以下である。膜厚方向のレターデーション値(Rth)は、400nm以下であることが好ましく、10〜200nmであることが好ましく、更に30〜150nmであることが好ましい。
【0040】
尚、レターデーション値(Re)、(Rth)は自動複屈折率計を用いて測定することが出来る。例えば、下記の方法によりKOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて求めることが出来る。
【0041】
上記Re、Rthとは、23℃、55%RHの環境下、波長590nmにおいて測定したリターデーションであるが、下記説明は波長λにおける面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションRe(λ)、Rth(λ)の測定方法を表す。
【0042】
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
【0043】
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
【0044】
【数1】

---式(1)
【0045】
注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
式(1)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dはフィルムの膜厚を表す
【0046】

Rth=((nx+ny)/2 - nz)× d --- 式(2)
【0047】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
【0048】
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx-nz)/(nx-ny)が更に算出される。
【0049】
また、光学補償フィルム16の遅相軸はフィルムの幅手方向±1°若しくは長尺方向±1°にあることが好ましい。
【0050】
図3は図1に示す液晶表示装置に設けられた含水率センサの取り付け状態を示す斜視図である。
図1に示す液晶表示装置に設けられた含水率センサ21は、図3に示すように液晶パネル10の表面に装着された、電気抵抗を利用する抵抗式含水率計である。含水率センサ21は、針状の電極18を有しており、この電極18が偏光板を突き抜けて光学補償フィルム16に接触するように取り付けられている。これにより、液晶パネル10内部の光学補償フィルム16の内部に含まれている水分の含水量(水分量)を検出する。含水率センサ21としては、上記のような電気式含水率計(抵抗式含水率計)の他、高周波式含水率計、あるいは、加熱型、誘電型、電磁波型、熱伝導型など様々な種類のセンサが利用可能である。
【0051】
このような含水率センサ21を使用することにより、環境湿度では把握できない光学補償フィルム16そのものの含水量を直接測定することができるので、光学補償フィルム16に特性変化が生じるような状況の変化を、遅延なくかつ正確に検出できる。
【0052】
図1に示す液晶表示装置に設けられた湿度センサ22については、液晶パネル10の使用環境における湿度(環境湿度)を検出するためのセンサであり、液晶パネル10の筐体内部もしくは外部に設置される。但し、液晶パネル10筐体内部の光学補償フィルム16が実際に使用される環境における湿度は、液晶パネル10の近傍に設置されるバックライト(図示せず)の発熱の影響を受けやすく、液晶パネル10から離れた場所の湿度との間に大きな差が生じる場合もあるので、液晶パネル10の筐体内部に湿度センサ22を設置する方が望ましい。
【0053】
制御部30は、マイクロプロセッサなどの様々な制御要素によって構成されており、図1に示す液晶表示装置の全体の様々な制御を実施する。例えば、制御部30は含水率センサ21、湿度センサ22、温度センサ23の検出値を定期的に取り込んで含水量、湿度、温度などを常時把握したり、その結果に応じて液晶パネル10の表示特性を制御するための補正値を取得したり、取得した補正値を電圧制御部50に与えたりする。
【0054】
テーブルデータ記録部40は、制御部30がアクセス可能なメモリ(ROMまたはRAM)で構成されており、光学補償フィルム16の含水量変化に伴う光学特性の変化を補償するために必要なデータ群で構成される補正テーブルが予め記憶されている。
【0055】
電圧制御部50は、液晶パネル10のR色の画素の液晶セル10aに印加すべき電圧を決定するR電圧駆動部と、G色の画素の液晶セル10aに印加すべき電圧を決定するG電圧駆動部と、B色の画素の液晶セル10aに印加すべき電圧を決定するB電圧駆動部とを備えており、R、G、Bの色成分毎に独立に制御部30から入力される駆動信号に従って、各色成分の電圧を決定する。
【0056】
制御部30は、含水率センサ21及び湿度センサ22の少なくとも一方が検出した結果により得られる水分量の情報とテーブルデータ記録部40の補正テーブルの内容とに従って、R、G、Bの色成分毎に独立した補正値を求め、これらの補正値に基づいた駆動信号を電圧制御部50に与える。
【0057】
LCDドライバ60は、電圧制御部50がR、G、Bの色成分毎に決定した電圧に従って、液晶パネル10に設けられた多数の液晶セル10aのそれぞれの電極に、R、G、Bの色成分毎に独立した駆動電圧を印加する。
【0058】
例えば、含水量の変化に伴って光学補償フィルム16に特性変化が生じると、液晶パネル10で黒色を表示する場合であってもR、G、Bのいずれかの光が表示面に現れ、純粋な黒色とは異なる色味が現れる可能性がある。しかし、R、G、Bの色成分毎に独立に印加電圧を補正することにより、常に色味のない黒色を表示可能になる。
【0059】
図1に示す液晶パネル10における駆動電圧と光透過率との関係の具体例が図4に示されている。すなわち、液晶パネル10の各液晶セル10aは、液晶セルを挟んで設けた電極間に電圧を印加することによって発生する電界により、液晶層13に電気光学効果を生じさせ、これにより光の透過率を調整して階調を表現したり、透過率に関するスイッチングを行う。
【0060】
この例では、各液晶セル10aはOCBモードであり、電圧印加により黒表示となるノーマリーホワイトの素子である。従って、黒表示時にR、G、B各色で透過率が0%になるように駆動電圧を調整する必要がある。0%より透過率が少しでも高くなると、黒表示であっても、色味を帯びた黒色となる。
【0061】
湿度が変化すると光学補償フィルム16の光学特性(レターデーション)が変化し、その影響を受けて黒色表示時であっても、R、G、Bのいずれかの光が液晶パネル10の表示面に現れ、純粋な黒色とは異なる色味が現れることがある。
【0062】
しかし、図1に示すように含水率センサ21又は湿度センサ22が検出した情報に基づいて、R、G、Bの印加電圧を独立に制御し、「フィードバック制御」により、光学補償フィルム16の特性変化相当の補正を行うことにより、黒色の色味をなくすことができる。
【0063】
図1に示す液晶パネル10に設けた光学補償フィルム16の光学特性と湿度との関係の具体例を図5に示した。すなわち、図5に示すように光学補償フィルム16の光学特性の1つである膜厚方向のリターデーション値(Rth)は、透過しようとする光の波長(R、G、B等の違い)に応じてそれぞれ異なり、更に湿度に応じて変動する。従って、湿度等が変化すると、光学補償フィルム16のリターデーション値(Rth)が変化し、液晶パネル10を透過しようとする光に影響する位相差が波長毎にそれぞれ変化し、表示面側に現れる光の光量に変化が生じる。その結果、黒色を表示させようとしたときに、表示面側にR、G、Bの少なくとも1つの光成分がわずかに現れ、しかもR、G、B間の光量バランスが崩れているため色味が現れ、例えば本来の黒色の代わりに赤みを帯びた黒色が表示される場合がある。従って、光学補償フィルム16の水分量の変化に応じて発生する光学特性の変化を補償する必要がある。
【0064】
図1に示す液晶表示装置のテーブルデータ記録部40上に設けられた補正テーブル45の具体的な構成例が図6に示されている。図6に示すように、補正テーブル45には、光学補償フィルム(位相差フィルム)16の材質(TAC(トリアセチルセルロース)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等)毎にそれぞれ独立したテーブル45a、45b、・・・が用意してある。また、それぞれのテーブルには、R色に関する補正データを保持するR色補正部451と、G色に関する補正データを保持するG色補正部452と、B色に関する補正データを保持するB色補正部453とが設けられている。
【0065】
R色補正部451は、液晶パネル10で正しい黒色を表示しようとする場合にR色の液晶セル10aの電極に印加すべき適正な電圧を表す値(黒表示設定電圧)と含水量との関係を表す予め決定されたデータ群(様々な含水量の各々に対応付けられた黒表示設定電圧のデータ群)を保持している。同様にG色補正部452は、液晶パネル10で正しい黒色を表示しようとする場合にG色の液晶セル10aの電極に印加すべき適正な電圧を表す値(黒表示設定電圧)と含水量との関係を表す予め決定されたデータ群を保持している。B色補正部453は、液晶パネル10で正しい黒色を表示しようとする場合にB色の液晶セル10aの電極に印加すべき適正な電圧を表す値(黒表示設定電圧)と含水量との関係を表す予め決定されたデータ群を保持している。
【0066】
従って、図1に示す制御部30は、含水率センサ21及び湿度センサ22の少なくとも一方が検出した値から求められる含水量を用いて、補正テーブル45のR色補正部451からR色の駆動電圧VbRを補正値として求め、G色補正部452からG色の駆動電圧VbGを補正値として求め、B色補正部453からB色の駆動電圧VbBを補正値として求める。これらの駆動電圧VbR、VbG、VbBを電圧制御部50に与えることにより、湿度変化等とは無関係に正しい黒色を液晶パネル10で表示できる。
【0067】
実際に画像等を液晶パネル10で表示しようとする場合には、表示すべき画像の各画素の色及び明るさに対応するR、G、B各色の階調データに補正値である駆動電圧VbR、VbG、VbBを重畳あるいは加算した形で電圧制御部50に与える。これにより正しい色相で画像等を表示できる。
【0068】
但し、液晶パネル10で正しい黒色を表示しようとする場合に各色の液晶セル10aの電極に印加すべき適正な電圧と含水量との関係は、実際に使用する光学補償フィルム16の特性、特にそれを構成する材料の材質に応じて大きく変化する。従って、制御部30は、液晶パネル10に実際に装着されている光学補償フィルム16の材質に関する情報を事前に取得しておき、例えば材質がTACである場合には補正テーブル45内のテーブル45aを選択し、材質がPETである場合には補正テーブル45内のテーブル45bを選択し使用する。従って、様々な特性の光学補償フィルム16に対して含水量に関する補正を正しく行うことができる。
【0069】
なお、図6に示した補正テーブル45では、黒表示設定電圧と含水量との関係が直線的な変化を示す場合を想定しているが、曲線的に変化する特性であっても各テーブルに記憶するデータの内容を変更するだけでそのまま対応できる。
【0070】
図1に示す液晶表示装置の湿度変化に対する補償制御の性能を確認するために、以下に説明するような実験を行った。その結果を図7に示した。図7は図1に示す液晶表示装置における湿度変化と補償制御のオンオフに応じた表示品質の変化を示すグラフである。
【0071】
まず、環境温度25℃、環境湿度10%の第1の状態から、環境湿度60%の第2の状態に変化した場合の位相差フィルムの光学特性の変化を調べた。その結果、第1の状態から第2の状態への環境変化に対して、位相差フィルムの光学特性であるRe値が5、Rth値が約23変化することが分かった。そこで、実験的に求めた光学特性値に基づいて、図1に示す液晶表示装置の表示性能の変化をシミュレーションにより見積もった。具体的には、基準装置として「シンテック(株)」製のLCDマスターを用い、黒色表示時の色味変化をu'v' 色度図上の値として算出した。なお、CIE1931xy色度図からu'v'色度図への変換は次式により行うことができる。
u'=4x/(−2x+12y+3)
v'=9y/(−2x+12y+3)
【0072】
R、G、B各色の電極への印加電圧を一定とし、環境湿度が10%である第1の状態で極角60度における正面からの黒色味変化は、Δu'v' の全方位角の和が「0.118」であった。また、第1の状態から環境湿度が60%である第2の状態に移行した。その結果、第2の状態では極角60度における正面からの黒色味変化は、Δu'v' の全方位角の和が「0.136」であった。つまり、湿度が変化して位相差フィルムの光学特性が変化すると、黒色味の視野角に対する依存性が増大するので表示品質は低下する。そこで、黒色味の視野角に対する依存性を低減するために、第3の状態として、第2の状態と同様の条件で、前述のような含水量に対する補償制御を実施した。具体的には、R、G、B各色の電極へ印加する電圧の電圧バランスを「1:1:1」から最適な「0.97:1.00:1.03」に変更した。その結果、極角60度における正面からの黒色味変化は、Δu'v'の全方位角の和が「0.062」になった。つまり、前記第2の状態から第3の状態に移行することで、黒色味の視野角に対する依存性が低減されることが確認できた。従って、含水量のパラメータに応じて、R、G、B各色の電極へ印加する電圧のバランスを最適化するように補償制御を実施することは、黒色味の視野角に対する依存性を減らす上で非常に有効である。
【0073】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の画質制御装置及び液晶表示装置に関する他の実施の形態について、図8及び図9を参照して以下に説明する。
図8は第2の実施の形態における液晶表示装置の主要部の構成を示すブロック図である。図9は図8に示す液晶表示装置における含水量のマッピングの例を示す模式図である。
第2の実施の形態の基本的な構造及び基本的な制御の内容については第1の実施の形態と同様である。構造や動作が同じ部分については以下の説明を省略する。
【0074】
図8に示す液晶表示装置の液晶パネル10Bにおいては、表示領域が水平方向(X)及び垂直方向(Y)のそれぞれの軸方向に対して複数に区画され、互いに独立に制御可能な複数の領域(A11、A12、A13、A14、A21、A22、A23、A24、A31、A32、A33、A34)が形成されている。これらの区画された領域(ブロック)については、各電極へ印加する電圧を領域毎に独立に制御できる構造になっている。これらの各領域の選択については、複数の区分されたラインセレクタ70の制御により行うことができる。
【0075】
また、図8に示す液晶表示装置200には複数の含水率センサ21(1)〜21(14)が液晶パネル10B上の互いに異なる箇所に設けてある。これらの含水率センサ21を配置する位置については、図8に示すように表示を妨げないように液晶パネル10B周囲の縁部に割り当ててある。各含水率センサ21が配置された位置は、最終的な液晶表示装置の製品においては化粧板で隠れる箇所である。なお、液晶パネル10Bに設ける含水率センサ21の数については、必要に応じて増減してもよい。
【0076】
例えば、大型の液晶表示パネルなどの場合、パネルの場所の違いによってそれぞれの環境湿度や含水量が大きく変化する可能性がある。そのため、単一のセンサだけでは正しい含水量等を検出できない場合がある。そこで、図8に示す液晶表示装置のように、液晶パネル10B上の複数箇所にそれぞれ独立した含水率センサ21を設置することで、より正確な含水量を場所毎に検出したり、パネル全体の平均的な含水量を検出することも可能になる。また、パネルの場所毎に含水量が大きく異なるような場合であっても、区画された領域毎に独立した補償制御を実施できるので、パネルの全体に渡って正確な補償を行うことができる。
【0077】
図8に示す液晶表示装置における制御内容の具体例を図9に示した。すなわち、図8の制御部30Bは、複数の含水率センサ21がそれぞれ検出した含水量の検出値に基づき、液晶パネル10Bのパネル全体に渡る各領域の含水量の分布状況を表す含水量マップ201を作成する。例えば、複数の含水率センサ21が検出した含水量と各センサが設置されている位置の情報とに基づき、含水量の最大値や最小値を検出し、適宜な解析処理を実施することで、パネル上の含水量に関する分布状況を把握することができる。図9に示す例では、パネルの右下隅の含水量が大きく、パネルの左上隅に向かうに従って含水量が低下するような分布状況になっている。
【0078】
次に、この含水量マップ201を用いて、制御部30Bは区画された領域毎に独立に印加電圧の補償制御を実施する。すなわち、独立に制御可能な領域(ブロック)毎に、その位置と含水量マップ201上の位置との対応関係(図9の中段の制御例を参照)を調べ、対応する含水量の情報を含水量マップ201から取得する。含水量マップ201上の含水量が異なる複数箇所と1つの領域の位置とが対応関係にある場合には、同じ1つの領域に含まれる面積の比率が大きい1つの含水量を選択するか、あるいは面積の比率と複数の含水量とに基づいて計算で求められる平均的な含水量を該当する領域に割り当てても良い。
【0079】
そして、制御部30Bは、図8に示すテーブルデータ記録部40Bに記憶されている補正テーブルを参照し、含水量に対応するR、G、B各色の印加電圧の補正値を取得する。そして、該当する領域の場所を特定する情報とともに、取得した補正値を駆動信号として電圧制御部50Bに与える。
【0080】
図9に示した制御例では、液晶パネル10B上の区画された領域A11に印加電圧V1を表す黒色の補正値が割り当てられ、同様に領域A22に印加電圧V2を表す黒色の補正値が割り当てられ、領域A23に印加電圧V3を表す黒色の補正値が割り当てられ、領域A34に印加電圧V4を表す黒色の補正値が割り当てられる場合を想定している。
なお、液晶パネル10B上の区画される領域の数については必要に応じて増減しても良い。
【0081】
(第3の実施の形態)
本発明の画質制御装置及び液晶表示装置に関する他の実施の形態について、図10を参照して以下に説明する。
図10は温度と望ましい印加電圧との関係を示すグラフである。
第3の実施の形態の基本的な構造及び基本的な制御の内容については第1の実施の形態と同様である。但し、第3の実施の形態では液晶表示装置が使用される環境の温度に応じた補正制御が追加されている。
【0082】
すなわち、液晶パネル10及び光学補償フィルム16の温度依存性を補償するために、図1に示されている温度センサ23を用いて、液晶パネル10の内部もしくはその近傍における温度を検出し、制御部30は温度センサ23が検出した温度に応じて補正制御を実施する。
【0083】
なお、液晶表示装置においては照明装置として用いられるバックライト等の発熱の影響を受けやすいので、温度センサ23を配置する場所については、液晶パネル10の周辺部よりも液晶パネル10の内部の方が望ましい。
【0084】
実際には、液晶パネル10で黒色を表示するために最適な印加電圧(黒表示設定電圧)VbTは、図10に示すように環境温度に応じて変化する傾向がある。そこで、図10に示すような液晶パネル10及び光学補償フィルム16の温度依存性に関するパラメータを事前に把握して、R、G、Bの色毎に独立した定数として制御部30の内部に保持しておく。そして、制御部30は温度センサ23が検出した現在の温度Tと基準温度(例えば25°C)との差分ΔTとそれ自身が保持している定数とに基づいて次式の計算を行い、R、G、Bの色毎に駆動電圧(各液晶セル10aの電極間に印加する電圧)を補正する。
【0085】
=Vb+kΔT
=Vb+kΔT
=Vb+kΔT
ただし、
Vb,Vb,Vb:温度補償前(含水量補償後)の各色の印加電圧
,k,k:各色の定数(図10の特性の傾きに相当)
,V,V:温度補償後の各色の印加電圧
【0086】
このようにして温度補償された電圧V、V、Vを各液晶セル10aの電極間に印加することにより、光学補償フィルム16の含水量に応じた補正だけでなく、温度の違いに応じた補正も行うことができる。
【0087】
(第4の実施の形態)
本発明の画質制御装置及び液晶表示装置に関するもう1つの実施の形態について、図11を参照しながら以下に説明する。
図11はバックライトの構成例を示す断面図である。
【0088】
第4の実施の形態は、図1と同様に構成された液晶表示装置に本発明を適用する場合を想定している。但し、第1の実施の形態では含水量の変化に応じた光学特性の補償を液晶セル10aの印加電圧を制御することで実現しているのに対し、第4の実施の形態では照明装置であるバックライト80の発光強度を制御することで含水量の変化を補償するように制御部30が制御を実施する。
【0089】
バックライト80は、図11に示すように構成されている。図11(a)はバックライト80をその厚み方向に分解した状態の斜視図を表し、図11(b)はバックライト80の厚み方向の断面を表し、図11(c)はバックライト80内の一部の領域における発光ダイオード82のレイアウトを示している。
【0090】
図11(a)、(b)に示すように、バックライト80は、下方に配置される回路基板81と上方に配置される光拡散板83とで構成されており、回路基板81上には多数の発光ダイオード82が光軸を上側に向けて配置されている。これらの発光ダイオード82の中には、R色を発光する素子と、G色を発光する素子と、B色を発光する素子とが含まれており、例えば図11(c)に示すように各色の発光ダイオード82がレイアウトされている。
【0091】
また、R、G、B各色の発光ダイオード82はそれぞれ独立して発光強度を制御可能に構成されている。そのため、R、G、B各色の合成により白色の照明光を出射することもでき、R、G、B各色の発光強度のバランスを調整することにより照明光の色相を調整することもできる。
【0092】
また、回路基板81の全体は水平方向(X)及び垂直方向(Y)の各軸方向について複数に区分され、複数の領域84(1)、84(2)、84(3)、84(4)、・・・が形成されている。それぞれの領域84には、図11(c)に示すようにR、G、B各色を含む複数個(RGB各色について同数)の発光ダイオード82が含まれている。各色の多数の発光ダイオード82については、領域84(1)、84(2)、84(3)、84(4)、・・・のそれぞれについて独立に発光強度を制御可能になっているが、第4の実施の形態では領域84(1)、84(2)、84(3)、84(4)、・・・の全てについて同じ条件で色毎に各発光ダイオード82を制御している。各領域84(1)、84(2)、84(3)、84(4)、・・・の大きさについては、必要に応じて適宜決定することができる。
【0093】
バックライト80が上記構造になっているので、バックライト80の照明光を発生するR、G、B各色の発光ダイオード82の発光強度を独立に制御することにより、液晶パネル10の電極間に印加する駆動電圧をR、G、B独立に制御する場合と同様の結果が得られる。そこで、第4の実施の形態の制御部30は、液晶パネル10の電極間に印加する駆動電圧をR、G、B独立に制御する代わりに、バックライト80のR、G、B各色の発光ダイオード82の発光強度を独立に制御する。つまり、図1に示す含水率センサ21及び湿度センサ22の少なくとも一方の検出結果により特定される光学補償フィルム16の含水量に基づき、前述補正テーブル45からR、G、B各色の補正値を取得し、この補正値に従って、バックライト80のR、G、B各色の発光ダイオード82の発光強度を独立に制御する。
【0094】
そのため、第4の実施の形態では液晶パネル10の電極間に印加する駆動電圧に関する補償制御は省略しているが、第1の実施の形態と同様の制御結果が得られる。すなわち、光学補償フィルム16の含水量が変化する場合であっても、含水量の変化によって光学補償フィルム16に生じる光学特性の変化に相当する分をバックライト80の制御により補償するので、常時適正な黒色の表示が可能になる。
【0095】
(第5の実施の形態)
本発明の画質制御装置及び液晶表示装置に関する他の実施の形態について、図12を参照して説明する。
図12は第5の実施の形態における液晶表示装置の主要部の構成を示すブロック図である。
第5の実施の形態の液晶表示装置の基本的な構成及び動作は第2の実施の形態と同様である。また、第4の実施の形態と同様のバックライト80を照明装置として利用している。
【0096】
第2の実施の形態と同様に、本液晶表示装置300における液晶パネル10Bの表示面の側方部分には、互いに異なる位置に配置された複数の含水率センサ21が装着されている。また、図12に示すように、液晶パネル10Bの下方には第4の実施の形態と同様の構成を有するバックライト80が照明装置として配置されている。
【0097】
複数の含水率センサ21がそれぞれ検出する含水量の情報は制御部30Cに入力される。制御部30Cは、各含水率センサ21の検出した含水量とそれぞれの位置とに基づいて、前述のような含水量の分布状況を表すマップ(図9参照)を作成し、マップ上の領域毎に、テーブルデータ記録部40Cが保持している補正テーブル45の内容に基づき、含水量からR、G、B各色の補正値を取得し、これらの補正値を該当する領域の位置を特定する情報と共に駆動信号としてバックライト駆動部92に与える。従って、バックライト80上の発光ダイオード82は、区分された領域84(1)、84(2)、84(3)、・・・毎に、更にR、G、B各色独立に前記補正値に応じて制御される。
【0098】
なお、第5の実施の形態では液晶パネル10Bの電極に印加する駆動電圧については補正制御を実施せず、バックライト80の各発光ダイオード82の発光強度のみを制御しているが、液晶パネル10Bの駆動電圧について第2の実施の形態と同様に補正制御を実施し、同時にバックライト80についても上記のような補正制御を行うように動作を変更しても良い。その場合には、制御部30Cが含水量に基づいて補正テーブル45から得られた補正値を含む駆動信号をLCD駆動部91及びバックライト駆動部92の双方に与えるように制御すればよい。
【0099】
第5の実施の形態では、液晶パネル10B上の領域毎に含水量の分布状況を検出すると共に、複数の領域のそれぞれについて独立に補正制御を実施できるので、例えば大型の液晶表示装置のように、液晶パネル10B上の領域毎に含水量が均一でない場合であっても、含水量が異なる領域毎に区別してそれぞれ適正な補償制御を行うことができ、常時適正な黒色の表示が可能になる。
【0100】
なお、液晶パネル10B上で区分された各領域(A11、A12、A13、・・・)の大きさと、バックライト80上で区分された各領域(84(1)、84(2)、84(3)、・・・)の大きさとの関係については、互いに同等の大きさに形成し、図12に示すように前者の領域と後者の領域とが1対1で対応するような位置関係になるように構成しても良いし、両者の大きさが異なるように各領域を形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上のように、本発明は湿度変化等によって光学補償フィルムに発生する光学特性の変化を補償することができるので、光学補償フィルムを備えた液晶パネルを使用する液晶表示装置や、それの画質を制御するための画質制御装置に本発明を適用することにより、様々な使用環境の違いにかかわらず、常に画質の低下を防止でき、例えば適正な黒色を表示するための性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】第1の実施の形態における液晶表示装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す液晶パネルに含まれている多数の液晶セルの1つの構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示す液晶表示装置に設けられた含水率センサの取り付け状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示す液晶パネルにおける駆動電圧と光透過率との関係を示すグラフである。
【図5】図1に示す液晶パネルに設けた光学補償フィルムに関する光の波長毎に発生する位相差と湿度との関係を示すグラフである。
【図6】図1に示す液晶表示装置に設けられた補正テーブルの構成例を示す模式図である。
【図7】図1に示す液晶表示装置における湿度変化と補償制御のオンオフに応じた表示品質の変化を示すグラフである。
【図8】第2の実施の形態における液晶表示装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図9】図8に示す液晶表示装置における含水量のマッピングの例を示す模式図である。
【図10】温度と望ましい印加電圧との関係を示すグラフである。
【図11】バックライトの構成例を示す断面図である。
【図12】第5の実施の形態における液晶表示装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0103】
10,10B 液晶パネル
10a 液晶セル
11 偏光板
12 液晶セル基板
12a カラーフィルタ層
13 液晶層
14 液晶分子
15 液晶セル基板
16 光学補償フィルム
17 偏光板
21 含水率センサ
22 湿度センサ
23 温度センサ
30,30B,30C 制御部
40,40B,40C テーブルデータ記録部
45 補正テーブル
45a,45b テーブル
50,50B 電圧制御部
60,60B LCDドライバ
70 ラインセレクタ
80 バックライト
81 回路基板
82 発光ダイオード
83 光拡散板
84 分割された領域
91 LCD駆動部
92 バックライト駆動部
100,200,300 液晶表示装置
201 含水量マップ
451 R色補正部
452 G色補正部
453 B色補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学特性に含水量依存性を有する光学フィルムが表示面に装着もしくは内蔵され、入力された駆動信号に従って画像表示を行う表示パネルの画質を制御する画質制御装置であって、
前記光学フィルム、前記表示パネルの周囲環境の少なくとも一方に対して、含水量に関連する水分情報を検出する水分検出センサと、
少なくとも前記水分検出センサが検出した水分情報と、前記含水量の変化に起因して前記表示パネルに生じる画質変化もしくはその画質変化を補正するための補正値との対応関係を示す情報が予め保持されている補正テーブルと、
前記水分検出センサが検出した水分情報と前記補正テーブルが保持している内容とに基づいて、前記表示パネルに与える駆動信号を補正する駆動信号補正部と、を備えた画質制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の画質制御装置であって、前記水分検出センサは、前記表示パネルの周囲環境に関する湿度を検出する湿度センサを含む画質制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の画質制御装置であって、前記水分検出センサは、前記表示パネルが具備する光学補償フィルムの内部の含水率を検出する含水率センサを含む画質制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の画質制御装置であって、互いに独立した複数の前記水分検出センサを前記表示パネルの互いに異なる箇所に配置した画質制御装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の画質制御装置を備えた液晶表示装置。
【請求項6】
請求項5記載の液晶表示装置であって、前記光学フィルムとして、光学補償用の位相差フィルムを用いた液晶表示装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6記載の液晶表示装置であって、前記駆動信号補正部は、少なくとも前記表示パネルの液晶層に電気光学効果を生じさせる駆動電圧信号を、前記水分検出センサが検出した水分情報と前記補正テーブルが保持している内容とに基づいて補正する液晶表示装置。
【請求項8】
請求項5又は請求項6記載の液晶表示装置であって、
前記表示パネルの表示側の表面とは反対の裏面側から照明光を照射するバックライトを含み、
前記駆動信号補正部は、少なくとも前記バックライトの発光輝度を、前記水分検出センサが検出した水分情報と前記補正テーブルが保持している内容とに基づいて補正する液晶表示装置。
【請求項9】
請求項5〜請求項8のいずれか1項記載の液晶表示装置であって、
前記表示パネルは複数の基本色成分のそれぞれの光の透過又は反射を制御するためのカラーフィルタ部を備え、
前記駆動信号補正部は、少なくとも前記表示パネルの液晶層に電気光学効果を生じさせる駆動電圧信号を、前記複数の基本色成分のそれぞれについて独立に、前記水分検出センサが検出した水分情報と前記補正テーブルが保持している内容とに基づいて補正する液晶表示装置。
【請求項10】
請求項5〜請求項8のいずれか1項記載の液晶表示装置であって、前記表示パネルが、OCBモード(Optically Compensated Bend mode)液晶表示パネルである液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−262002(P2008−262002A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104145(P2007−104145)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】