界面活性剤の評価方法
【課題】
洗浄力および生体からの脱離性に優れた界面活性剤、または界面活性剤を含有する洗浄剤または化粧料の汎用的で簡便で精度の高い評価方法を提供することである。
【解決手段】
対象とする界面活性剤やそれを含有する洗浄剤または化粧料を、可逆変性タンパク質と混合し、得られた水溶液をゲルろ過クロマトグラフィーに供し、天然状態のタンパク質を定量することにより、生体からの脱離性に優れた界面活性剤かどうかを汎用的で簡便で精度よく識別できることを見出し、発明を完成させることに成功した。
洗浄力および生体からの脱離性に優れた界面活性剤、または界面活性剤を含有する洗浄剤または化粧料の汎用的で簡便で精度の高い評価方法を提供することである。
【解決手段】
対象とする界面活性剤やそれを含有する洗浄剤または化粧料を、可逆変性タンパク質と混合し、得られた水溶液をゲルろ過クロマトグラフィーに供し、天然状態のタンパク質を定量することにより、生体からの脱離性に優れた界面活性剤かどうかを汎用的で簡便で精度よく識別できることを見出し、発明を完成させることに成功した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体からの脱離性に優れた界面活性剤の評価方法、及びその方法によって選別された界面活性剤、更に、それを含有する洗浄剤または化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
香粧品分野において、各種界面活性剤は、主に洗浄成分として配合されているが、製品によっては、皮膚や毛髪に残留した界面活性剤が生体成分、特に酵素やタンパク質に対し変性、不活性化等の悪影響を与え、障害の原因となることが懸念されている。消費者の安全性や環境に対する関心が高まるなか、十分な洗浄効果は保持しつつ、使用後には皮膚や毛髪から容易に脱離して残留しにくい、いわゆるマイルド界面活性剤、またはそれを含有する洗浄剤または化粧料の開発に対する要請や期待がますます強くなってきている。
【0003】
たとえば、汎用界面活性剤ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(LES)の洗浄工程における人間の皮膚への残留を妨げる又は減少するための方法が開示されている(特許文献1)。しかし、その試験方法は、特定の界面活性剤の皮膚における残留量を測定するものであり、再現性ある信頼のおける結果を得るためには高度な専門性が要求されるので、必ずしも汎用な方法と言えるものではなかった。
【0004】
従来、界面活性剤やこれを含有する洗浄剤または化粧料の刺激性や安全性を評価する方法としては、ヒトパッチ試験、ドレイズ皮膚一次刺激試験、眼粘膜刺激性試験といった、ヒトや実験動物を用いるin vivo試験のほか、細胞毒性試験、タンパク質変性試験、溶血変性試験、分化阻害試験、透過性試験などの皮膚や細胞に対するダメージを指標とするin vitro試験が行われていた(非特許文献1)。しかし、こうした評価系を動かすためには、高度の専門性を有する研究者により、専用設備を備えなければならず、汎用性、簡便性に優れているとは必ずしも言えるものではなかった。
【0005】
また、最近では動物愛護の観点から、in vivo試験の置き換えとして、in vitro試験の開発が活発に行われており、多くの試験法が提案されている。
【0006】
タンパク質の天然構造を失わせたり、タンパク質の活性を損なわせる特性の強い界面活性剤が、より強い皮膚刺激性を示すとの考えに基づき、皮膚に局在する特定の酵素活性への界面活性剤の影響(活性低下)をex vivoで評価する方法が知られている(非特許文献2)。しかしながら、この方法はヒトの皮膚組織そのものを用いる試験であり、試験技法の習熟が必要なこと、試験材料であるヒト組織の採取に労力を要すること、多量の検体を一度に評価することはきわめて困難なこと等から、必ずしも汎用的な試験法とは言い難かった。
【0007】
in vitro法として界面活性剤によるタンパク質変性作用をゲルろ過クロマトグラフィーで観察する試みも報告されている(非特許文献3)。しかしながら、界面活性剤が添加された時のタンパク質の構造状態の違いを、報告された条件のクロマトグラフィーで観察することは原理的に困難であり、得られた結果だけをもって界面活性剤のもつタンパク質変性作用と解釈することは困難と考えられた。
【0008】
また、タンパク質高次構造をほとんど変化させないはずの界面活性剤「Nonidet P-40」がウイルスに対して殺作用を示すことが知られているようにタンパク質変性作用だけを指標に生体への障害性度合いを正確に評価できるまでには至っていない現状があった(非特許文献4)。
【0009】
このような現状のもと、生体からの脱離性に優れた界面活性剤、または界面活性剤を含有する洗浄剤または化粧料等を、汎用的で簡便でかつ精度の高い評価方法が切に望まれていた。
【特許文献1】特表2002-523428
【非特許文献1】Fregrance Journal 8, 67-73,(1994)
【非特許文献2】International journal of cosmetic science, 26, 245-253(2004)
【非特許文献3】J. Soc. Cosmet. Chem. Japan, 18, 96-105 (1984)
【非特許文献4】「よくわかる洗剤の話」 合同出版 p65 (1988)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
洗浄力および生体からの脱離性に優れた界面活性剤、または界面活性剤を含有する洗浄剤または化粧料の汎用的で簡便で精度の高い評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討の結果、対象とする界面活性剤を、可逆変性タンパク質と混合し、得られた水溶液をゲルろ過クロマトグラフィーに供し、天然状態のタンパク質を定量することにより、生体からの脱離性に優れた界面活性剤かどうかを汎用的で簡便に精度高く識別できることを見出し、発明を完成させることに成功した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1] 可逆変性タンパク質を用いることを特徴とする、界面活性剤の評価方法。
[2] 更に、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いることを特徴とする、[1]記載の界面活性剤の評価方法。
[3] 下記工程を有することを特徴とする、[1]または[2]のいずれかに記載の界面活性剤の評価方法。
工程1) 対象界面活性剤と可逆変性タンパク質とを混合する工程
工程2) ゲルろ過クロマトグラフィーにより、天然状態のタンパク質を定量する工程
工程3) 天然状態のタンパク質回収率の高い界面活性剤を選別する工程
[4] 下記工程を有することを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の界面活性剤の評価方法。
工程4) 対象界面活性剤と可逆変性タンパク質と生体吸着性物質とを混合する工程
工程5) ゲルろ過クロマトグラフィーにより可逆変性タンパク質と生体吸着性物質共存の保持時間(A)を測定する工程
工程6) 保持時間(A)が生体吸着性物質変性タンパク質の保持時間(B)より長時間であるものを選別する工程。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の界面活性剤の評価方法により選別されることを特徴とする、界面活性剤。
[6] [5]に記載の界面活性剤を含有することを特徴とする、洗浄剤または化粧料。
【発明の効果】
【0013】
対象とする界面活性剤を、可逆変性タンパク質と混合し、得られた水溶液をゲルろ過クロマトグラフィーに供し、天然状態のタンパク質を定量することにより、洗浄力に優れ生体からの脱離性に優れた界面活性剤かどうかを汎用的に簡便かつ精度よく識別できることを見出し、発明を完成させることに成功した。このことによって、生体吸着性の高い物質のタンパク質からの脱離性を改善できる、優れた界面活性剤の汎用的で簡便で精度の高い検索が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の評価方法について、以下の工程毎に順次説明する。
工程1) 対象界面活性剤と可逆変性タンパク質とを混合する工程
工程2) ゲルろ過クロマトグラフィーにより、天然状態のタンパク質を定量する工程
工程3) 天然状態のタンパク質回収率の高い界面活性剤を選別する工程
工程4) 対象界面活性剤と可逆変性タンパク質と生体吸着性物質とを混合する工程
工程5) ゲルろ過クロマトグラフィーにより可逆変性タンパク質と生体吸着性物質共存の保持時間(A)を測定する工程
工程6) 保持時間(A)が生体吸着性物質変性タンパク質の保持時間(B)より長時間であるものを選別する工程。
【0015】
本発明の工程1)について説明する。本発明の工程1)は、対象界面活性剤と可逆変性タンパク質とを、pH、温度、時間を制御し混合する工程である。
【0016】
本発明の工程1)で使用される対象界面活性剤は、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられ、単独でも2種類以上の界面活性剤を混合しても使用することができる。また、本発明の評価方法に影響を与えない範囲で共存物質は存在させて構わない。具体的には、湿潤剤、シリコーン化合物、高分子物質(高分子化合物)、アルコール類、紫外線吸収剤、色素、顔料、ビタミン、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、防腐剤、殺菌剤、抗炎症剤、pH調整剤、パール化剤、核酸、酵素、天然抽出物等の化粧品原料基準、化粧品種別配合成分規格、医薬部原料規格、日本薬局方、食品添加物公定書記載の原料等が挙げられる。
【0017】
本発明の工程1)で使用される可逆変性を示すタンパク質とは、高次構造の変性と再生過程が、短時間に行われる高い可逆性を有する水溶性タンパク質のことを意味し、酵素活性を持つものも使用することができる。短時間に行われるとは、変性状態から天然状態を誘起する溶媒環境に移送されたとき、通常は0.001秒〜数秒ですばやく構造の再構成されることを意味する。本発明においては、後に述べる分析方法(ゲルろ過クロマトグラフィー)の保持時間の分解能よりも短い時間である必要から、0.001秒〜6秒で再構成されることが更に望ましい。特に、単一ドメインであり、23 ℃で安定、比較的小さく、水溶性が高く、かつ構造変性状態からの再生過程に要する時間が上記の時間よりも短く、界面活性剤の脱離が不十分などの構造再構成過程の障害が発生した場合は、その障害度合いを反映して水溶性の会合体を容易に形成するようなタンパク質が本発明の評価方法に最適である。構造再構成過程の障害には、界面活性剤の脱離がタンパク質の再生過程に要する時間より長いこと、界面活性剤の脱離が分子全体で均一に進行しないこと、分子のどこかに偏って残留すること、などが考えられる。本発明で使用されるタンパク質は、これら障害の存在を示してくれるものであれば良い。
【0018】
可逆変性を示すタンパク質としては、具体的には、天然のジスルフィド結合を保ったヒトインターロイキン6、成長ホルモン、リゾチーム等が挙げられる。そのなかでヒトインターロイキン6は、分子量が約21 kDaと比較的小さなタンパク質であり水溶性が高く、室温で安定であり、分子内ジスルフィド結合を2個有し、この結合が還元・開裂されない限り、高濃度の変性剤、界面活性剤、有機溶剤などへの暴露による構造変性と希釈による再生過程の可逆性の十分高い、かつ変性状態からの構造再構成過程が障害されると水溶性の会合体を形成しやすいという観点から特に好ましい。
【0019】
本発明の工程1)で使用される可逆変性タンパク質の濃度はタンパク質の種類、分析方法や注入量にもよるが、ゲルろ過クロマトグラフィーの分析が実施できる濃度域であれば支障はなければ特に限定はなく、混合液の粘度上昇や沈殿が生じず再現性、定量性よく分析を行うという観点で、1〜2000 μg/mlが好ましく、5〜1000μg/mlがより好ましく、20〜500 μg/mlが特に好ましい。
【0020】
本発明の工程1)で使用される溶媒は、可逆変性タンパク質および対象の界面活性剤を溶解させることが可能であり、そのままゲルろ過クロマトグラフィーに供することができるものであれば特に制限はなく、通常は水が使用される。可逆変性タンパク質が影響を受けにくいという観点で、緩衝液が好ましい。水の由来は、精製水、イオン交換水、市水、蒸留水、等が上げられ、特に制限はない。緩衝液に使用される塩も特に制限はなく、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グリシンなどアミノ酸が挙げられるが、通常用いられるpH領域を広くコントロールできることからリン酸緩衝液が特に好ましい。緩衝液溶液のpHとしては、可逆変性タンパク質が天然構造を維持し続ける領域であれば特に制限は無く、用いる可逆変性タンパク質の特性によって適宜設定できるが、可逆変性タンパク質ではpH5〜9が好ましく、6〜8がより好ましい。
【0021】
本発明の工程1)で使用される対象界面活性剤の濃度はゲルろ過クロマトグラフィーの分析に支障の無い範囲であれば、特に限定はなく、タンパク質を変性状態に導くという観点で、0.001〜10 wt.%が好ましく、0.01〜5 wt.%がより好ましく、0.05〜3 wt.%が特に好ましい。
【0022】
本発明の工程1)における混合方法は、混合が完結すれば特に制限はない。より簡便で工程2)にも使用できるという観点で、対象界面活性剤、可逆変性タンパク質、溶媒をポリプロピレン製の分析用チューブに入れて、チューブミキサーなどを用い振とうさせる方法が好ましい。
【0023】
本発明の工程1)における混合温度は、特に制限はないが、通常0〜80 ℃が使用される。0 ℃より低温では溶液の凝固性あるいは粘凋性が高まってしまい、80 ℃よりも高温では可逆変性タンパク質の熱変性の可能性が高まり好ましくない。可逆変性タンパク質と対象界面活性剤との混合が速やかに進行するという観点で、10〜40 ℃が好ましく、15〜35 ℃がより好ましい。
【0024】
本発明の工程1)における混合時間は、特に制限はないが、通常10分〜48時間が使用される10分より短時間では混合が不十分になる可能性があり、48時間よりも長時間では分析の簡便性が損なわれてしまう。可逆変性タンパク質と対象界面活性剤との混合が十分であり、オートサンプラーシステムで簡便に分析できるという観点で、1〜30時間が好ましく、5〜20時間がより好ましく、8〜16時間が特に好ましい。
【0025】
本発明の工程2)について説明する。本発明の工程2)は、工程1)で混合させた可逆変性タンパク質をゲルろ過クロマトグラフィーに供し、界面活性剤をタンパク質から脱離させることで、界面活性剤を急速に希釈したことと同じ環境変化を与え、タンパク質に構造再構成を促すその検出された溶出ピークのピークエリアを用いて、試験サンプル中の天然状態のタンパク質量を定量する工程である。
【0026】
本発明の工程2)で使用されるゲルろ過クロマトグラフィー用のカラムの種類は、その担体がタンパク質との特異的な相互作用をほとんど有さず、ゲルろ過クロマトグラフィーカラム中での可逆変性タンパク質の構造再構成過程に影響を与えないものであればよい。具体的には、ポリスチレン、ビニルアルコール等の人工高分子や高度架橋アガロースとデキストランの多糖系カラム、シリカゲル等を使用することができる。ペプチドやタンパク質に適し分離性能の高いという観点で、多糖系カラムであるスーパーデックス75HR10/30(アマシャム バイオサイエンス社)が好ましい。
【0027】
工程2)において用いるゲルろ過クロマトグラフィーのpHは、あらかじめタンパク質が会合や変性をおこさず安定な領域であれば特に制限はない。具体的には、緩衝液を用いて、pH5〜9にすることが好ましく、pH6〜8がさらに好ましい。緩衝液に使用される塩も特に制限はなく、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グリシンなどが挙げられる。
【0028】
本発明の工程2)におけるゲルろ過カラムクロマトグラフィーのカラム温度は、特に制限なく、一定に保たれていれば問題ないが、通常5〜80 ℃が使用される。0 ℃より低温では溶離液の凝固性あるいは粘凋性が高まってしまい、80 ℃よりも高温では可逆変性タンパク質の変性の可能性が高まり好ましくない。カラム中での可逆変性タンパク質の構造再構成が速やかに進行するという観点で、10〜40 ℃が好ましく、15〜35 ℃がより好ましい。
【0029】
本発明の工程2)においてゲルろ過カラムクロマトグラフィーの注入量は、評価するタンパク質の含量、吸光係数などを考慮し適宜設定できる。評価の再現性の観点から、通常10 〜 100μLが好ましく、20 〜 40 μLを供することがより好ましい。
【0030】
本発明の工程2)におけるゲルろ過カラムクロマトグラフィーの分析時間は、特に制限はないが、通常1分〜2時間が使用される。1分より短時間ではカラム内での分離性が不十分になる可能性があり、2時間よりも長時間では分析の簡便性が損なわれてしまう。簡便でかつ再現性高く分析が行えるという観点で、5分〜1時間が好ましく、5分〜30分がより好ましく、10分〜30分が特に好ましい。
【0031】
本発明の工程2)におけるゲルろ過カラムクロマトグラフィーの検出方法としては、タンパク質を定量できるものであれば特に制限はなく、具体的には、紫外吸収検出方法、屈折率検出方法、光散乱検出方法などが挙げられる。感度が高く、汎用性に優れるという観点で、220 nmや280 nmを用いた紫外吸収検出方法が好ましい。
【0032】
本発明の工程3)について説明する。本発明の工程3)は、工程2)で定量した結果から、天然状態のタンパク質回収率の高い、脱離性に優れた界面活性剤を選別する工程である。
【0033】
本発明の工程3)において観察されるピークの形状と構造との関係について説明する。可溶性タンパク質の水溶液に添加した界面活性剤がゲルろ過クロマトグラフィーによって迅速にかつ分子全体から均等に脱離されるなら、可逆変性タンパク質のすべては天然状態の分子量に一致する保持時間に単一のピークとして確認される。一方、界面活性剤が容易に脱離されないなら、天然状態の分子量の位置に確認されるピークは減少し、その代わりに会合体の分子量の位置にピークが観察される。この天然状態と会合体のピークの比率を比べることにより、界面活性剤の脱離の容易さを判断できる。つまり、天然状態の比率が高いほど脱離が容易であり、会合体の比率が高いほど脱離が不十分と解釈される。また、会合体のピークが複雑な構成を示すほど、界面活性剤の脱離が統一的に進行しないことを意味する。
【0034】
天然状態のタンパク質の定量方法は、予めそしてタンパク質と混合していた界面活性剤をタンパク質から脱離させることで、界面活性剤を急速に希釈したことと同じ環境変化を与え、タンパク質に構造再構成を促すその検出された溶出ピークのピークエリアを用いて、試験サンプル中の天然状態のタンパク質量を定量することができる。具体的には天然状態のタンパク質量は、ピークエリアを比較することによる外部標準定量法により換算され、使用した可逆変性タンパク質量に対する重量100分率により回収率が求められる。
【0035】
回収率は、界面活性剤の濃度、タンパク質の種類・濃度、温度、pHの影響を受けるため、対象界面活性剤の微妙な差を知るためには適宜適正な領域を選択しうるものである。例えば、2 wt.%の界面活性剤水溶液中に、426 μg/mlのヒトインターロイキン6を添加し、23 ℃にて12時間混合した場合、目的を達成しうる界面活性剤は、通常回収率が40 〜100 %の範囲で得られてくる。以上の評価においては、40 %未満では、生体への吸着性が大きすぎるため適さず、100 %を越えるものは分析誤差と見なされる。以上の評価において生体に対して脱離性の優れた界面活性剤効果的に見出すという観点で、回収率は80〜100 %が好ましく、90〜100 %がより好ましい。
【0036】
本発明の工程4)ついて説明する。工程4)は、対象界面活性剤を、可逆変性タンパク質に対して吸着性を強固に示し変性効果をもたらす生体吸着性物質と、可逆変性タンパク質と共に混合し、pH、温度、時間を制御することによって混合する工程である。
【0037】
本発明の工程4)で使用される対象界面活性剤の種類、濃度、等は、工程1)で説明したものを使用することができる。
【0038】
本発明の工程4)における可逆変性タンパク質の種類、濃度、等は、工程1)で説明したものを使用することができる。
【0039】
本発明の工程4)における溶媒の種類、濃度、等は、工程1)で説明したものを使用することができる。
【0040】
本発明の工程4)における混合の方法、温度、時間、等は、工程1)で説明したものを使用することができる。
【0041】
本発明における工程4)でいう、生体吸着性物質とは、生体に対して吸着性を強固に示すため、希釈操作によっても生体に吸着し、強い変性効果をもたらす物質のことを意味する。本発明の工程1)から3)の工程を用いた場合には、2 wt.%の界面活性剤水溶液中に426 μg/mlのヒトインターロイキン6を添加し、23 ℃にて12時間混合する条件で分析した場合に、天然型の10 %未満の界面活性剤のことを意味する。具体的には、汎用界面活性剤である、ラウリルエーテル硫酸塩(LES)が生体吸着物質の一例である。
【0042】
本発明における工程4)における、生体吸着性物質と対象界面活性剤との混合比(重量比)は、ゲルろ過クロマトグラフィー分析に支障がなければ特に制限はないが、生体吸着物質/対象界面活性剤で示すと、1/200〜200/1が好ましく、1/100〜100/1がより好ましく、1/40〜40/1が特に好ましい。
【0043】
本発明の工程5)について説明する。工程5)は、工程2)と同様に行われ、工程4)で混合した試験サンプルをゲルろ過クロマトグラフィーに供し、タンパク質に由来する最もエリアの大きなピークの混合時間(A)を測定する工程である。
【0044】
本発明の工程5)で記載されているゲルろ過クロマトグラフィーのカラム種類、pH、カラム温度、注入量、分析時間、検出方法、等は、工程2)で説明したものを使用することができる。
【0045】
本発明の工程5)に記載されている保持時間とは、通常のクロマトグラフィーで定義されるとおり、試験サンプル注入後、評価する可逆変性タンパク質が溶出されるまでに要した時間である。保持時間については、可逆変性タンパク質に由来するピークのうち、最もエリアの大きなピークのピークトップ時間であり、通常の検出器により算出されるものを利用してよい。
【0046】
本発明の工程6)は、生体吸着性物質とタンパク質を混合した場合のゲルろ過クロマトグラフィーで確認できるタンパク質に由来する最もエリアの大きなピークの保持時間(A)と生体吸着性物質と対象界面活性剤を混合した場合のゲルろ過クロマトグラフィーで確認できる保持時間(B)の差を確認する工程である。
【0047】
本発明の工程6)における保持時間(B)とは、工程4)に記載した生体吸着変性物質を添加した場合におけるゲルろ過クロマトグラフィーで得られる保持時間のことである。この場合、保持時間(A)と単純に比較し、保持時間が長いものを選別する。保持時間の差は少しでも長ければ良い。ゲルろ過クロマトグラフィーの保持時間の誤差範囲よりも優位に長いという観点で、0.1分以上でかつ、天然状態の保持時間以下が好ましい。例えば、生体吸着性物質として、1.5 wt.%のLES水溶液中に426 μg/mlのヒトインターロイキン6を添加し、23 ℃にて12時間混合した場合に得られた保持時間(A)、と1.5 wt.%のLESと1.5 wt%の対象界面活性剤水溶液中に426 μg/mlのヒトインターロイキン6を添加し、23 ℃にて12時間混合した場合が好ましい。また、同じ保持時間を示す場合には、ピーク形状に肩が見られたり、分離しかかっていたり、等の変動が少ないものの方が好ましい。なお、保持時間の延長を示さない場合は、生体吸着性物質よりも生体吸着性が不十分な場合と、生体吸着性物質よりも早い生体吸着性を示すものの生体脱離性が不十分な場合の2つが考えられる。
【0048】
本発明において、工程1),2),3)を行うことによって、生体に対して脱離性の優れた界面活性剤を選別、評価することができる方法である。さらに工程4),5),6)を行うことによって、特定の生体吸着性界面活性剤に比べて、生体に早く結合する界面活性剤を選別、評価することができる方法である。
【0049】
そして、これら2種類の評価方法を組み合わせることにより、特定の生体吸着性物質に比べて、生体と早く結びつき、分析条件の希釈効果により、生体からの脱離性に優れた界面活性剤を選別することができる。
本発明の方法は、界面活性剤の選別、評価のための方法であるが、界面活性剤に限らず、各種物質の評価方法としても使用可能である。
【0050】
本発明の二つの方法を組み合わせた評価方法は、細胞毒性評価(MTT法)に対して0.8以上の高い相関性を示す、簡便ながらも精度の高い方法である。
【0051】
さらに、本発明の工程1)から6)を通して得られた評価結果、と既存の刺激性や安全性を評価する方法であるヒトパッチ試験、ドレイズ皮膚一次刺激試験、眼粘膜刺激性試験といったin vivo試験のほか、細胞毒性試験、タンパク質変性試験、溶血変性試験、分化阻害試験、透過性試験といったin vitro試験などの結果とあわせることにより、更に総合的に精度の高い評価をすることも可能である。
【0052】
本発明の評価方法により選別された界面活性剤は、各種洗浄剤または化粧料としては使用することができる。その剤型には特別の制限がなく、乳化系、溶液系、可溶化系、粉末分散系、水−油二層系、水−油−粉末三層系等、どのような剤型であっても構わない。たとえば、シャンプー、リンス、香料、香水、コロン、ヘアートニック、ヘアコンデイショナー、ヘアメイク、ヘアークリーム、ポマード、育毛料、その他毛髪用化粧料、アイシャドウ、白粉、クリーム、口紅、乳液、その他の化粧料基剤やボデイーソープ、洗顔剤、化粧料洗剤、石鹸、皿洗い洗剤、洗濯用洗剤、ソフナー、消毒用洗剤、防臭洗剤、芳香剤、消臭剤、防臭剤、マスキング剤、制汗剤、入浴剤、ファーニチアケア、殺菌剤、消毒剤、殺虫剤、漂白剤等が挙げられる。
【0053】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0054】
以下、比較例及び実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0055】
<汎用界面活性剤 LESを用いた評価>
工程1)
0.5 mlのエッペンドルフチューブ(ポリプロピレン製;エンペンドルフ社)に下記表1に従い、各成分を入れ、試験サンプルを調整した。下記表2には各試験サンプルに含まれる、各内容成分の最終濃度を記載した。調整された試験サンプルはすべてを23 ℃にて12時間混合した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
工程2) 上記工程1)で混合した各試験サンプルのゲルろ過クロマトグラフィーによる分析は以下の通りで行った。
溶離液:0.1 M リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)
カラム:スーパーデックス 75 HR 10/30(アマシャム バイオサイエンス社製)
流速:0.8 mL/min
温度:23 ℃
負荷量:20 μl
検出:紫外吸収(280 nm)
【0059】
工程3)として、界面活性剤2 wt.%添加時の天然状態ヒトインターロイキン6の回収率を確認した。
【0060】
【表3】
【0061】
表3に示したように、0.1, 0.5, 1.0, 2.0 wt.%とLESの添加濃度を上昇させるに伴い、ヒトインターロイキン6天然状態の回収率が大幅に減少し、2 wt.%添加時においては天然状態のインターロイキン6の回収率は0%であった。以上の結果、LESのヒトインターロイキン6からの脱離性は極めて低く、生体吸着性が極めて高いと判断できた。LESは皮膚への残留性による皮膚刺激性を示すことが知られているが、本評価において、ヒトインターロイキン6にも吸着性を示すことがわかった。以上のとおり、皮膚等の生体への残留性の原因となる界面活性剤の吸着特性を、ゲルろ過クロマトグラフィーで簡便に予見できることが示された。
【実施例2】
【0062】
<各種界面活性剤単独系における評価>
各種界面活性剤についても、実施例1と同様に界面活性剤としての評価を行った。
工程1) 0.5 mlのエッペンドルフチューブ(ポリプロピレン製;エンペンドルフ社)に下記表4に従い、各成分を入れ、試験サンプルを調整した。下記表5には各試験サンプルに含まれる、内容成分の最終濃度を記載した。調整された試験サンプルはすべてを23 ℃にて12時間混合した。
【0063】
各種界面活性剤は、アニオン型界面活性剤であるLS-11、ラウロイル‐N‐Me‐タウリンナトリウム(AMT)、ラウロイルサルコシンナトリウム(NL-SAR)、ココイルイセチオン酸ナトリウム(SCI)、ラウリルスルホコハク酸ジナトリウム(SSC)、ラウレススルホコハク酸ジナトリウム(SSC(EO))、モノアルキルリン酸ナトリウム(MAP)、両性型であるラウロイルイミダゾリン(Lau-イミダゾリン)、ココイルイミダゾリン(Coco-イミダゾリン)、ココアミドプロピルベタイン(CAPB)およびノニオン型であるアルキルグルコシド(APG)のを用い、各5 wt.%水溶液を予め調整しておいた。
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
工程2)の分析条件は、実施例1に記載したものと同様に行った。
【0067】
工程3) として界面活性剤2 wt.%添加時の天然状態ヒトインターロイキン6の回収率を確認した。
【0068】
【表6】
【0069】
表6に示すように、LS-11、APGでは添加濃度に関係なく、ほぼ定量的に天然状態のヒトインターロイキン6が回収され、2 wt.%添加時においても90 %以上の高い回収率を示した。このように、両界面活性剤は実施例1に示したLESの場合に比べ、ヒトインターロイキン6に残留することなく、極めて脱離性の優れた界面活性剤であることがわかった。
【0070】
AMT、NL-SAR、Lau-イミダゾリンについて検討した結果、ゲルろ過クロマトグラフィー分析において0.1〜2.0 wt.%の界面活性剤の添加濃度依存的にヒトインターロイキン6天然状態の回収率が低下し、2 wt.%添加時の天然状態インターロイキン6の回収率は、35〜40 %であった。前述のLS-11、APGに比べると、この3種の界面活性剤はヒトインターロイキン6からの脱離性が劣るが、脱離性が比較的良好であることがわかった。評価サンプル中の天然状態ヒトインターロイキン6が減少したことから、それらがヒトインターロイキン6に結合することは明らかであるが、脱離性に劣っていることが分かった。
【0071】
表6に示したとおり、SCI、SSC、SSC(EO)、MAP、LES、Coco-イミダゾリン、CAPBでは、実施例1に示したLESと同様に、界面活性剤の添加量依存的なヒトインターロイキン6天然状態の回収率低下を確認し、いずれも2 wt.%添加時の天然状態インターロイキン6の回収率はいずれも0〜22 %を下回った。これらは評価サンプル中の天然状態ヒトインターロイキン6の減少したことから、ヒトインターロイキン6に結合することは明らかであるが、LS-11、APGなどに比べると、ヒトインターロイキン6からの脱離性に大きく劣っていることが分かった。
【実施例3】
【0072】
<汎用界面活性剤LESとLS-11またはAPG混合系における評価>
実施例2に記載したように、本発明の工程3での評価で見出されたLS-11またはAPGを対象界面活性剤とし、可逆変性タンパク質としてインターロイキン6、生体吸着性物質としてLESを用い、工程4以降の評価を進めた。
【0073】
工程4)として0.5 mlのエッペンドルフチューブ(ポリプロピレン製;エンペンドルフ社)に下記表9に従い、各成分を入れ、試験サンプルを調整した。下記表10には各試験サンプルに含まれる、成分の最終濃度を記載した。調整された試験サンプルはすべてを23 ℃にて12時間混合した。
【0074】
表7に LESとLS-11またはAPGを用いた試験サンプル調整順序を示した。
【表7】
【0075】
【表8】
【0076】
工程5)は、実施1記載の工程2)と同様に分析を行い、ピーク保持時間を確認した。
【0077】
【表9】
保持時間の差 = (LES1.5 wt.%添加時と各濃度のLS-11またはAPG添加混合時のヒトインターロイキン6の保持時間) - (LES1.5 wt.%添加時のヒトインターロイキン-6の保持時間)
【0078】
工程6)として各評価サンプルのヒトインターロイキン6のピーク保持時間から、LESを1.5 wt.%単独で添加した評価サンプル(実施例1、表1)のヒトインターロイキン6保持時間を差し引いた値(保持時間差)をまとめ表9に示した。表から明らかなようにLS-11をLESに混合すると、その添加量に依存して保持時間差が拡大されることがわかった。これは、LESの不完全な脱離によって形成されたヒトインターロイキン6の会合度が、共に添加されたLS-11によって緩和され、少しずつ天然状態ヒトインターロイキン6に近づいていったことを意味した。この事実により、LESとLS-11を併せて添加することにより、LESの生体からの脱離性を改善、すなわち、LESの残留吸着性を緩和し得ることがわかった。一方、表5に示されたとおり、LESと共に添加されたAPGは、その添加濃度依存的にヒトインターロイキン6会合体の保持時間差を拡大させることはなく、すなわち、LESのヒトインターロイキン6からの脱離性に一切影響を与えなかった。このことは、APGが生体からの脱離性には優れるものの、APGの生体への吸着性が乏しく、すなわち界面活性剤としての能力が十分ではないことを意味するため、評価対象外とした。
【実施例4】
【0079】
<界面活性剤単独系における評価結果と細胞毒性(MTT法)の評価結果の関係>
LS-11、Lau-イミダゾリン、Coco-イミダゾリン、SSC(EO)、SCI、APG、SSCについてヒト正常繊維芽細胞(ヒトファイブロブラスト:クラボウ製)の細胞毒性を測定し、細胞の50%生存率を示す濃度により細胞に対する毒性の強度を確認した。
【0080】
評価した細胞はヒト正常繊維芽細胞(ヒトファイブロブラスト)を用い、細胞はDMEM培地(10 %FBS(fetal bovine serum)含有)で維持継代した。96穴培養プレートにヒト正常繊維芽細胞を3×104(cells/well)を播種し、5 %CO2、37 ℃、飽和水蒸気下、24時間インキュベーションを行った。培地吸引後、各濃度の被験物質サンプルをDMEMで溶解し、各ウェルに200 μlずつ添加し、さらに上記と同様の条件下24時間のインキュベーションを行った。24時間後各ウェルの被験物質含有DMEMを吸引後、DMEMにて1回洗浄した。次に、MTT溶液(0.5 mg/ml in DMEM)を各ウェルに200μlづつ添加し、2時間のインキュベーション後、MTT溶液を除いた。その後、40 mM塩酸酸性イソプロパノール溶液を添加し、マイクロプレートミキサーで5分間振動させた。96穴マイクロプレートリーダーを用い570 nmの吸光度を測定(655 nmをバックとして差し引く)し、被験物質を添加していないウェルを100 %細胞が生存しているとし、被験物質の細胞生存率を求めた。
【0081】
細胞毒性評価(MTT法)による50 %生存率を示した各界面活性剤濃度を図1、と表10に示した。
【表10】
【0082】
図2、表11には、実施例2に示した各界面活性剤2 wt.%添加時の各ゲルろ過クロマトグラフィーによる天然状態ヒトインターロイキン6の回収率の結果のなかで、細胞毒性評価を実施した、LS-11、Lau-イミダゾリン、Coco-イミダゾリン、SSC(EO)、SCI、SSCの結果を再掲した。
【0083】
【表11】
【0084】
表10、図1に示した細胞毒性評価(MTT法)による50 %生存率を示した界面活性剤濃度(wt.%)の関係と表11、図2に示した本発明の工程1)から3)で得られた各界面活性剤のゲルろ過クロマトグラフィーによる2 wt.%添加時のヒトインターロイキン6の天然状態回収率を比較した。その結果、表10と図1に示したとおり、細胞毒性評価と本発明による評価結果には相関性が認められ、積率相関係数として0.8638を得た。すなわち、本発明の工程1)から6)を通じた界面活性剤の評価結果は、細胞毒性評価(MTT法)による50 %生存率と極めて良好な相関性を示したため、本発明が精度の高い方法であることが分かった。
【実施例5】
【0085】
【表12】
【0086】
表12には、本発明の工程1)から6)を通しえられた界面活性剤であるLS-11を用いた液体ハンドソープ処方を示した。
【産業上の利用可能性】
【0087】
洗浄力および生体からの脱離性に優れた界面活性剤の汎用的で簡便かつ精度の高い評価方法を提供することができた。更に、こうして選別された界面活性剤を含有する洗浄剤または化粧料を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】細胞毒性評価(MTT法)による50 %生存率を示した界面活性剤濃度の関係を表した説明図である。
【図2】各界面活性剤、2 wt.%添加時のゲルろ過クロマトグラフィーによる天然状態ヒトインターロイキン6の回収率を表した説明図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体からの脱離性に優れた界面活性剤の評価方法、及びその方法によって選別された界面活性剤、更に、それを含有する洗浄剤または化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
香粧品分野において、各種界面活性剤は、主に洗浄成分として配合されているが、製品によっては、皮膚や毛髪に残留した界面活性剤が生体成分、特に酵素やタンパク質に対し変性、不活性化等の悪影響を与え、障害の原因となることが懸念されている。消費者の安全性や環境に対する関心が高まるなか、十分な洗浄効果は保持しつつ、使用後には皮膚や毛髪から容易に脱離して残留しにくい、いわゆるマイルド界面活性剤、またはそれを含有する洗浄剤または化粧料の開発に対する要請や期待がますます強くなってきている。
【0003】
たとえば、汎用界面活性剤ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(LES)の洗浄工程における人間の皮膚への残留を妨げる又は減少するための方法が開示されている(特許文献1)。しかし、その試験方法は、特定の界面活性剤の皮膚における残留量を測定するものであり、再現性ある信頼のおける結果を得るためには高度な専門性が要求されるので、必ずしも汎用な方法と言えるものではなかった。
【0004】
従来、界面活性剤やこれを含有する洗浄剤または化粧料の刺激性や安全性を評価する方法としては、ヒトパッチ試験、ドレイズ皮膚一次刺激試験、眼粘膜刺激性試験といった、ヒトや実験動物を用いるin vivo試験のほか、細胞毒性試験、タンパク質変性試験、溶血変性試験、分化阻害試験、透過性試験などの皮膚や細胞に対するダメージを指標とするin vitro試験が行われていた(非特許文献1)。しかし、こうした評価系を動かすためには、高度の専門性を有する研究者により、専用設備を備えなければならず、汎用性、簡便性に優れているとは必ずしも言えるものではなかった。
【0005】
また、最近では動物愛護の観点から、in vivo試験の置き換えとして、in vitro試験の開発が活発に行われており、多くの試験法が提案されている。
【0006】
タンパク質の天然構造を失わせたり、タンパク質の活性を損なわせる特性の強い界面活性剤が、より強い皮膚刺激性を示すとの考えに基づき、皮膚に局在する特定の酵素活性への界面活性剤の影響(活性低下)をex vivoで評価する方法が知られている(非特許文献2)。しかしながら、この方法はヒトの皮膚組織そのものを用いる試験であり、試験技法の習熟が必要なこと、試験材料であるヒト組織の採取に労力を要すること、多量の検体を一度に評価することはきわめて困難なこと等から、必ずしも汎用的な試験法とは言い難かった。
【0007】
in vitro法として界面活性剤によるタンパク質変性作用をゲルろ過クロマトグラフィーで観察する試みも報告されている(非特許文献3)。しかしながら、界面活性剤が添加された時のタンパク質の構造状態の違いを、報告された条件のクロマトグラフィーで観察することは原理的に困難であり、得られた結果だけをもって界面活性剤のもつタンパク質変性作用と解釈することは困難と考えられた。
【0008】
また、タンパク質高次構造をほとんど変化させないはずの界面活性剤「Nonidet P-40」がウイルスに対して殺作用を示すことが知られているようにタンパク質変性作用だけを指標に生体への障害性度合いを正確に評価できるまでには至っていない現状があった(非特許文献4)。
【0009】
このような現状のもと、生体からの脱離性に優れた界面活性剤、または界面活性剤を含有する洗浄剤または化粧料等を、汎用的で簡便でかつ精度の高い評価方法が切に望まれていた。
【特許文献1】特表2002-523428
【非特許文献1】Fregrance Journal 8, 67-73,(1994)
【非特許文献2】International journal of cosmetic science, 26, 245-253(2004)
【非特許文献3】J. Soc. Cosmet. Chem. Japan, 18, 96-105 (1984)
【非特許文献4】「よくわかる洗剤の話」 合同出版 p65 (1988)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
洗浄力および生体からの脱離性に優れた界面活性剤、または界面活性剤を含有する洗浄剤または化粧料の汎用的で簡便で精度の高い評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討の結果、対象とする界面活性剤を、可逆変性タンパク質と混合し、得られた水溶液をゲルろ過クロマトグラフィーに供し、天然状態のタンパク質を定量することにより、生体からの脱離性に優れた界面活性剤かどうかを汎用的で簡便に精度高く識別できることを見出し、発明を完成させることに成功した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1] 可逆変性タンパク質を用いることを特徴とする、界面活性剤の評価方法。
[2] 更に、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いることを特徴とする、[1]記載の界面活性剤の評価方法。
[3] 下記工程を有することを特徴とする、[1]または[2]のいずれかに記載の界面活性剤の評価方法。
工程1) 対象界面活性剤と可逆変性タンパク質とを混合する工程
工程2) ゲルろ過クロマトグラフィーにより、天然状態のタンパク質を定量する工程
工程3) 天然状態のタンパク質回収率の高い界面活性剤を選別する工程
[4] 下記工程を有することを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の界面活性剤の評価方法。
工程4) 対象界面活性剤と可逆変性タンパク質と生体吸着性物質とを混合する工程
工程5) ゲルろ過クロマトグラフィーにより可逆変性タンパク質と生体吸着性物質共存の保持時間(A)を測定する工程
工程6) 保持時間(A)が生体吸着性物質変性タンパク質の保持時間(B)より長時間であるものを選別する工程。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の界面活性剤の評価方法により選別されることを特徴とする、界面活性剤。
[6] [5]に記載の界面活性剤を含有することを特徴とする、洗浄剤または化粧料。
【発明の効果】
【0013】
対象とする界面活性剤を、可逆変性タンパク質と混合し、得られた水溶液をゲルろ過クロマトグラフィーに供し、天然状態のタンパク質を定量することにより、洗浄力に優れ生体からの脱離性に優れた界面活性剤かどうかを汎用的に簡便かつ精度よく識別できることを見出し、発明を完成させることに成功した。このことによって、生体吸着性の高い物質のタンパク質からの脱離性を改善できる、優れた界面活性剤の汎用的で簡便で精度の高い検索が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の評価方法について、以下の工程毎に順次説明する。
工程1) 対象界面活性剤と可逆変性タンパク質とを混合する工程
工程2) ゲルろ過クロマトグラフィーにより、天然状態のタンパク質を定量する工程
工程3) 天然状態のタンパク質回収率の高い界面活性剤を選別する工程
工程4) 対象界面活性剤と可逆変性タンパク質と生体吸着性物質とを混合する工程
工程5) ゲルろ過クロマトグラフィーにより可逆変性タンパク質と生体吸着性物質共存の保持時間(A)を測定する工程
工程6) 保持時間(A)が生体吸着性物質変性タンパク質の保持時間(B)より長時間であるものを選別する工程。
【0015】
本発明の工程1)について説明する。本発明の工程1)は、対象界面活性剤と可逆変性タンパク質とを、pH、温度、時間を制御し混合する工程である。
【0016】
本発明の工程1)で使用される対象界面活性剤は、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられ、単独でも2種類以上の界面活性剤を混合しても使用することができる。また、本発明の評価方法に影響を与えない範囲で共存物質は存在させて構わない。具体的には、湿潤剤、シリコーン化合物、高分子物質(高分子化合物)、アルコール類、紫外線吸収剤、色素、顔料、ビタミン、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、防腐剤、殺菌剤、抗炎症剤、pH調整剤、パール化剤、核酸、酵素、天然抽出物等の化粧品原料基準、化粧品種別配合成分規格、医薬部原料規格、日本薬局方、食品添加物公定書記載の原料等が挙げられる。
【0017】
本発明の工程1)で使用される可逆変性を示すタンパク質とは、高次構造の変性と再生過程が、短時間に行われる高い可逆性を有する水溶性タンパク質のことを意味し、酵素活性を持つものも使用することができる。短時間に行われるとは、変性状態から天然状態を誘起する溶媒環境に移送されたとき、通常は0.001秒〜数秒ですばやく構造の再構成されることを意味する。本発明においては、後に述べる分析方法(ゲルろ過クロマトグラフィー)の保持時間の分解能よりも短い時間である必要から、0.001秒〜6秒で再構成されることが更に望ましい。特に、単一ドメインであり、23 ℃で安定、比較的小さく、水溶性が高く、かつ構造変性状態からの再生過程に要する時間が上記の時間よりも短く、界面活性剤の脱離が不十分などの構造再構成過程の障害が発生した場合は、その障害度合いを反映して水溶性の会合体を容易に形成するようなタンパク質が本発明の評価方法に最適である。構造再構成過程の障害には、界面活性剤の脱離がタンパク質の再生過程に要する時間より長いこと、界面活性剤の脱離が分子全体で均一に進行しないこと、分子のどこかに偏って残留すること、などが考えられる。本発明で使用されるタンパク質は、これら障害の存在を示してくれるものであれば良い。
【0018】
可逆変性を示すタンパク質としては、具体的には、天然のジスルフィド結合を保ったヒトインターロイキン6、成長ホルモン、リゾチーム等が挙げられる。そのなかでヒトインターロイキン6は、分子量が約21 kDaと比較的小さなタンパク質であり水溶性が高く、室温で安定であり、分子内ジスルフィド結合を2個有し、この結合が還元・開裂されない限り、高濃度の変性剤、界面活性剤、有機溶剤などへの暴露による構造変性と希釈による再生過程の可逆性の十分高い、かつ変性状態からの構造再構成過程が障害されると水溶性の会合体を形成しやすいという観点から特に好ましい。
【0019】
本発明の工程1)で使用される可逆変性タンパク質の濃度はタンパク質の種類、分析方法や注入量にもよるが、ゲルろ過クロマトグラフィーの分析が実施できる濃度域であれば支障はなければ特に限定はなく、混合液の粘度上昇や沈殿が生じず再現性、定量性よく分析を行うという観点で、1〜2000 μg/mlが好ましく、5〜1000μg/mlがより好ましく、20〜500 μg/mlが特に好ましい。
【0020】
本発明の工程1)で使用される溶媒は、可逆変性タンパク質および対象の界面活性剤を溶解させることが可能であり、そのままゲルろ過クロマトグラフィーに供することができるものであれば特に制限はなく、通常は水が使用される。可逆変性タンパク質が影響を受けにくいという観点で、緩衝液が好ましい。水の由来は、精製水、イオン交換水、市水、蒸留水、等が上げられ、特に制限はない。緩衝液に使用される塩も特に制限はなく、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グリシンなどアミノ酸が挙げられるが、通常用いられるpH領域を広くコントロールできることからリン酸緩衝液が特に好ましい。緩衝液溶液のpHとしては、可逆変性タンパク質が天然構造を維持し続ける領域であれば特に制限は無く、用いる可逆変性タンパク質の特性によって適宜設定できるが、可逆変性タンパク質ではpH5〜9が好ましく、6〜8がより好ましい。
【0021】
本発明の工程1)で使用される対象界面活性剤の濃度はゲルろ過クロマトグラフィーの分析に支障の無い範囲であれば、特に限定はなく、タンパク質を変性状態に導くという観点で、0.001〜10 wt.%が好ましく、0.01〜5 wt.%がより好ましく、0.05〜3 wt.%が特に好ましい。
【0022】
本発明の工程1)における混合方法は、混合が完結すれば特に制限はない。より簡便で工程2)にも使用できるという観点で、対象界面活性剤、可逆変性タンパク質、溶媒をポリプロピレン製の分析用チューブに入れて、チューブミキサーなどを用い振とうさせる方法が好ましい。
【0023】
本発明の工程1)における混合温度は、特に制限はないが、通常0〜80 ℃が使用される。0 ℃より低温では溶液の凝固性あるいは粘凋性が高まってしまい、80 ℃よりも高温では可逆変性タンパク質の熱変性の可能性が高まり好ましくない。可逆変性タンパク質と対象界面活性剤との混合が速やかに進行するという観点で、10〜40 ℃が好ましく、15〜35 ℃がより好ましい。
【0024】
本発明の工程1)における混合時間は、特に制限はないが、通常10分〜48時間が使用される10分より短時間では混合が不十分になる可能性があり、48時間よりも長時間では分析の簡便性が損なわれてしまう。可逆変性タンパク質と対象界面活性剤との混合が十分であり、オートサンプラーシステムで簡便に分析できるという観点で、1〜30時間が好ましく、5〜20時間がより好ましく、8〜16時間が特に好ましい。
【0025】
本発明の工程2)について説明する。本発明の工程2)は、工程1)で混合させた可逆変性タンパク質をゲルろ過クロマトグラフィーに供し、界面活性剤をタンパク質から脱離させることで、界面活性剤を急速に希釈したことと同じ環境変化を与え、タンパク質に構造再構成を促すその検出された溶出ピークのピークエリアを用いて、試験サンプル中の天然状態のタンパク質量を定量する工程である。
【0026】
本発明の工程2)で使用されるゲルろ過クロマトグラフィー用のカラムの種類は、その担体がタンパク質との特異的な相互作用をほとんど有さず、ゲルろ過クロマトグラフィーカラム中での可逆変性タンパク質の構造再構成過程に影響を与えないものであればよい。具体的には、ポリスチレン、ビニルアルコール等の人工高分子や高度架橋アガロースとデキストランの多糖系カラム、シリカゲル等を使用することができる。ペプチドやタンパク質に適し分離性能の高いという観点で、多糖系カラムであるスーパーデックス75HR10/30(アマシャム バイオサイエンス社)が好ましい。
【0027】
工程2)において用いるゲルろ過クロマトグラフィーのpHは、あらかじめタンパク質が会合や変性をおこさず安定な領域であれば特に制限はない。具体的には、緩衝液を用いて、pH5〜9にすることが好ましく、pH6〜8がさらに好ましい。緩衝液に使用される塩も特に制限はなく、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グリシンなどが挙げられる。
【0028】
本発明の工程2)におけるゲルろ過カラムクロマトグラフィーのカラム温度は、特に制限なく、一定に保たれていれば問題ないが、通常5〜80 ℃が使用される。0 ℃より低温では溶離液の凝固性あるいは粘凋性が高まってしまい、80 ℃よりも高温では可逆変性タンパク質の変性の可能性が高まり好ましくない。カラム中での可逆変性タンパク質の構造再構成が速やかに進行するという観点で、10〜40 ℃が好ましく、15〜35 ℃がより好ましい。
【0029】
本発明の工程2)においてゲルろ過カラムクロマトグラフィーの注入量は、評価するタンパク質の含量、吸光係数などを考慮し適宜設定できる。評価の再現性の観点から、通常10 〜 100μLが好ましく、20 〜 40 μLを供することがより好ましい。
【0030】
本発明の工程2)におけるゲルろ過カラムクロマトグラフィーの分析時間は、特に制限はないが、通常1分〜2時間が使用される。1分より短時間ではカラム内での分離性が不十分になる可能性があり、2時間よりも長時間では分析の簡便性が損なわれてしまう。簡便でかつ再現性高く分析が行えるという観点で、5分〜1時間が好ましく、5分〜30分がより好ましく、10分〜30分が特に好ましい。
【0031】
本発明の工程2)におけるゲルろ過カラムクロマトグラフィーの検出方法としては、タンパク質を定量できるものであれば特に制限はなく、具体的には、紫外吸収検出方法、屈折率検出方法、光散乱検出方法などが挙げられる。感度が高く、汎用性に優れるという観点で、220 nmや280 nmを用いた紫外吸収検出方法が好ましい。
【0032】
本発明の工程3)について説明する。本発明の工程3)は、工程2)で定量した結果から、天然状態のタンパク質回収率の高い、脱離性に優れた界面活性剤を選別する工程である。
【0033】
本発明の工程3)において観察されるピークの形状と構造との関係について説明する。可溶性タンパク質の水溶液に添加した界面活性剤がゲルろ過クロマトグラフィーによって迅速にかつ分子全体から均等に脱離されるなら、可逆変性タンパク質のすべては天然状態の分子量に一致する保持時間に単一のピークとして確認される。一方、界面活性剤が容易に脱離されないなら、天然状態の分子量の位置に確認されるピークは減少し、その代わりに会合体の分子量の位置にピークが観察される。この天然状態と会合体のピークの比率を比べることにより、界面活性剤の脱離の容易さを判断できる。つまり、天然状態の比率が高いほど脱離が容易であり、会合体の比率が高いほど脱離が不十分と解釈される。また、会合体のピークが複雑な構成を示すほど、界面活性剤の脱離が統一的に進行しないことを意味する。
【0034】
天然状態のタンパク質の定量方法は、予めそしてタンパク質と混合していた界面活性剤をタンパク質から脱離させることで、界面活性剤を急速に希釈したことと同じ環境変化を与え、タンパク質に構造再構成を促すその検出された溶出ピークのピークエリアを用いて、試験サンプル中の天然状態のタンパク質量を定量することができる。具体的には天然状態のタンパク質量は、ピークエリアを比較することによる外部標準定量法により換算され、使用した可逆変性タンパク質量に対する重量100分率により回収率が求められる。
【0035】
回収率は、界面活性剤の濃度、タンパク質の種類・濃度、温度、pHの影響を受けるため、対象界面活性剤の微妙な差を知るためには適宜適正な領域を選択しうるものである。例えば、2 wt.%の界面活性剤水溶液中に、426 μg/mlのヒトインターロイキン6を添加し、23 ℃にて12時間混合した場合、目的を達成しうる界面活性剤は、通常回収率が40 〜100 %の範囲で得られてくる。以上の評価においては、40 %未満では、生体への吸着性が大きすぎるため適さず、100 %を越えるものは分析誤差と見なされる。以上の評価において生体に対して脱離性の優れた界面活性剤効果的に見出すという観点で、回収率は80〜100 %が好ましく、90〜100 %がより好ましい。
【0036】
本発明の工程4)ついて説明する。工程4)は、対象界面活性剤を、可逆変性タンパク質に対して吸着性を強固に示し変性効果をもたらす生体吸着性物質と、可逆変性タンパク質と共に混合し、pH、温度、時間を制御することによって混合する工程である。
【0037】
本発明の工程4)で使用される対象界面活性剤の種類、濃度、等は、工程1)で説明したものを使用することができる。
【0038】
本発明の工程4)における可逆変性タンパク質の種類、濃度、等は、工程1)で説明したものを使用することができる。
【0039】
本発明の工程4)における溶媒の種類、濃度、等は、工程1)で説明したものを使用することができる。
【0040】
本発明の工程4)における混合の方法、温度、時間、等は、工程1)で説明したものを使用することができる。
【0041】
本発明における工程4)でいう、生体吸着性物質とは、生体に対して吸着性を強固に示すため、希釈操作によっても生体に吸着し、強い変性効果をもたらす物質のことを意味する。本発明の工程1)から3)の工程を用いた場合には、2 wt.%の界面活性剤水溶液中に426 μg/mlのヒトインターロイキン6を添加し、23 ℃にて12時間混合する条件で分析した場合に、天然型の10 %未満の界面活性剤のことを意味する。具体的には、汎用界面活性剤である、ラウリルエーテル硫酸塩(LES)が生体吸着物質の一例である。
【0042】
本発明における工程4)における、生体吸着性物質と対象界面活性剤との混合比(重量比)は、ゲルろ過クロマトグラフィー分析に支障がなければ特に制限はないが、生体吸着物質/対象界面活性剤で示すと、1/200〜200/1が好ましく、1/100〜100/1がより好ましく、1/40〜40/1が特に好ましい。
【0043】
本発明の工程5)について説明する。工程5)は、工程2)と同様に行われ、工程4)で混合した試験サンプルをゲルろ過クロマトグラフィーに供し、タンパク質に由来する最もエリアの大きなピークの混合時間(A)を測定する工程である。
【0044】
本発明の工程5)で記載されているゲルろ過クロマトグラフィーのカラム種類、pH、カラム温度、注入量、分析時間、検出方法、等は、工程2)で説明したものを使用することができる。
【0045】
本発明の工程5)に記載されている保持時間とは、通常のクロマトグラフィーで定義されるとおり、試験サンプル注入後、評価する可逆変性タンパク質が溶出されるまでに要した時間である。保持時間については、可逆変性タンパク質に由来するピークのうち、最もエリアの大きなピークのピークトップ時間であり、通常の検出器により算出されるものを利用してよい。
【0046】
本発明の工程6)は、生体吸着性物質とタンパク質を混合した場合のゲルろ過クロマトグラフィーで確認できるタンパク質に由来する最もエリアの大きなピークの保持時間(A)と生体吸着性物質と対象界面活性剤を混合した場合のゲルろ過クロマトグラフィーで確認できる保持時間(B)の差を確認する工程である。
【0047】
本発明の工程6)における保持時間(B)とは、工程4)に記載した生体吸着変性物質を添加した場合におけるゲルろ過クロマトグラフィーで得られる保持時間のことである。この場合、保持時間(A)と単純に比較し、保持時間が長いものを選別する。保持時間の差は少しでも長ければ良い。ゲルろ過クロマトグラフィーの保持時間の誤差範囲よりも優位に長いという観点で、0.1分以上でかつ、天然状態の保持時間以下が好ましい。例えば、生体吸着性物質として、1.5 wt.%のLES水溶液中に426 μg/mlのヒトインターロイキン6を添加し、23 ℃にて12時間混合した場合に得られた保持時間(A)、と1.5 wt.%のLESと1.5 wt%の対象界面活性剤水溶液中に426 μg/mlのヒトインターロイキン6を添加し、23 ℃にて12時間混合した場合が好ましい。また、同じ保持時間を示す場合には、ピーク形状に肩が見られたり、分離しかかっていたり、等の変動が少ないものの方が好ましい。なお、保持時間の延長を示さない場合は、生体吸着性物質よりも生体吸着性が不十分な場合と、生体吸着性物質よりも早い生体吸着性を示すものの生体脱離性が不十分な場合の2つが考えられる。
【0048】
本発明において、工程1),2),3)を行うことによって、生体に対して脱離性の優れた界面活性剤を選別、評価することができる方法である。さらに工程4),5),6)を行うことによって、特定の生体吸着性界面活性剤に比べて、生体に早く結合する界面活性剤を選別、評価することができる方法である。
【0049】
そして、これら2種類の評価方法を組み合わせることにより、特定の生体吸着性物質に比べて、生体と早く結びつき、分析条件の希釈効果により、生体からの脱離性に優れた界面活性剤を選別することができる。
本発明の方法は、界面活性剤の選別、評価のための方法であるが、界面活性剤に限らず、各種物質の評価方法としても使用可能である。
【0050】
本発明の二つの方法を組み合わせた評価方法は、細胞毒性評価(MTT法)に対して0.8以上の高い相関性を示す、簡便ながらも精度の高い方法である。
【0051】
さらに、本発明の工程1)から6)を通して得られた評価結果、と既存の刺激性や安全性を評価する方法であるヒトパッチ試験、ドレイズ皮膚一次刺激試験、眼粘膜刺激性試験といったin vivo試験のほか、細胞毒性試験、タンパク質変性試験、溶血変性試験、分化阻害試験、透過性試験といったin vitro試験などの結果とあわせることにより、更に総合的に精度の高い評価をすることも可能である。
【0052】
本発明の評価方法により選別された界面活性剤は、各種洗浄剤または化粧料としては使用することができる。その剤型には特別の制限がなく、乳化系、溶液系、可溶化系、粉末分散系、水−油二層系、水−油−粉末三層系等、どのような剤型であっても構わない。たとえば、シャンプー、リンス、香料、香水、コロン、ヘアートニック、ヘアコンデイショナー、ヘアメイク、ヘアークリーム、ポマード、育毛料、その他毛髪用化粧料、アイシャドウ、白粉、クリーム、口紅、乳液、その他の化粧料基剤やボデイーソープ、洗顔剤、化粧料洗剤、石鹸、皿洗い洗剤、洗濯用洗剤、ソフナー、消毒用洗剤、防臭洗剤、芳香剤、消臭剤、防臭剤、マスキング剤、制汗剤、入浴剤、ファーニチアケア、殺菌剤、消毒剤、殺虫剤、漂白剤等が挙げられる。
【0053】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0054】
以下、比較例及び実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0055】
<汎用界面活性剤 LESを用いた評価>
工程1)
0.5 mlのエッペンドルフチューブ(ポリプロピレン製;エンペンドルフ社)に下記表1に従い、各成分を入れ、試験サンプルを調整した。下記表2には各試験サンプルに含まれる、各内容成分の最終濃度を記載した。調整された試験サンプルはすべてを23 ℃にて12時間混合した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
工程2) 上記工程1)で混合した各試験サンプルのゲルろ過クロマトグラフィーによる分析は以下の通りで行った。
溶離液:0.1 M リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)
カラム:スーパーデックス 75 HR 10/30(アマシャム バイオサイエンス社製)
流速:0.8 mL/min
温度:23 ℃
負荷量:20 μl
検出:紫外吸収(280 nm)
【0059】
工程3)として、界面活性剤2 wt.%添加時の天然状態ヒトインターロイキン6の回収率を確認した。
【0060】
【表3】
【0061】
表3に示したように、0.1, 0.5, 1.0, 2.0 wt.%とLESの添加濃度を上昇させるに伴い、ヒトインターロイキン6天然状態の回収率が大幅に減少し、2 wt.%添加時においては天然状態のインターロイキン6の回収率は0%であった。以上の結果、LESのヒトインターロイキン6からの脱離性は極めて低く、生体吸着性が極めて高いと判断できた。LESは皮膚への残留性による皮膚刺激性を示すことが知られているが、本評価において、ヒトインターロイキン6にも吸着性を示すことがわかった。以上のとおり、皮膚等の生体への残留性の原因となる界面活性剤の吸着特性を、ゲルろ過クロマトグラフィーで簡便に予見できることが示された。
【実施例2】
【0062】
<各種界面活性剤単独系における評価>
各種界面活性剤についても、実施例1と同様に界面活性剤としての評価を行った。
工程1) 0.5 mlのエッペンドルフチューブ(ポリプロピレン製;エンペンドルフ社)に下記表4に従い、各成分を入れ、試験サンプルを調整した。下記表5には各試験サンプルに含まれる、内容成分の最終濃度を記載した。調整された試験サンプルはすべてを23 ℃にて12時間混合した。
【0063】
各種界面活性剤は、アニオン型界面活性剤であるLS-11、ラウロイル‐N‐Me‐タウリンナトリウム(AMT)、ラウロイルサルコシンナトリウム(NL-SAR)、ココイルイセチオン酸ナトリウム(SCI)、ラウリルスルホコハク酸ジナトリウム(SSC)、ラウレススルホコハク酸ジナトリウム(SSC(EO))、モノアルキルリン酸ナトリウム(MAP)、両性型であるラウロイルイミダゾリン(Lau-イミダゾリン)、ココイルイミダゾリン(Coco-イミダゾリン)、ココアミドプロピルベタイン(CAPB)およびノニオン型であるアルキルグルコシド(APG)のを用い、各5 wt.%水溶液を予め調整しておいた。
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
工程2)の分析条件は、実施例1に記載したものと同様に行った。
【0067】
工程3) として界面活性剤2 wt.%添加時の天然状態ヒトインターロイキン6の回収率を確認した。
【0068】
【表6】
【0069】
表6に示すように、LS-11、APGでは添加濃度に関係なく、ほぼ定量的に天然状態のヒトインターロイキン6が回収され、2 wt.%添加時においても90 %以上の高い回収率を示した。このように、両界面活性剤は実施例1に示したLESの場合に比べ、ヒトインターロイキン6に残留することなく、極めて脱離性の優れた界面活性剤であることがわかった。
【0070】
AMT、NL-SAR、Lau-イミダゾリンについて検討した結果、ゲルろ過クロマトグラフィー分析において0.1〜2.0 wt.%の界面活性剤の添加濃度依存的にヒトインターロイキン6天然状態の回収率が低下し、2 wt.%添加時の天然状態インターロイキン6の回収率は、35〜40 %であった。前述のLS-11、APGに比べると、この3種の界面活性剤はヒトインターロイキン6からの脱離性が劣るが、脱離性が比較的良好であることがわかった。評価サンプル中の天然状態ヒトインターロイキン6が減少したことから、それらがヒトインターロイキン6に結合することは明らかであるが、脱離性に劣っていることが分かった。
【0071】
表6に示したとおり、SCI、SSC、SSC(EO)、MAP、LES、Coco-イミダゾリン、CAPBでは、実施例1に示したLESと同様に、界面活性剤の添加量依存的なヒトインターロイキン6天然状態の回収率低下を確認し、いずれも2 wt.%添加時の天然状態インターロイキン6の回収率はいずれも0〜22 %を下回った。これらは評価サンプル中の天然状態ヒトインターロイキン6の減少したことから、ヒトインターロイキン6に結合することは明らかであるが、LS-11、APGなどに比べると、ヒトインターロイキン6からの脱離性に大きく劣っていることが分かった。
【実施例3】
【0072】
<汎用界面活性剤LESとLS-11またはAPG混合系における評価>
実施例2に記載したように、本発明の工程3での評価で見出されたLS-11またはAPGを対象界面活性剤とし、可逆変性タンパク質としてインターロイキン6、生体吸着性物質としてLESを用い、工程4以降の評価を進めた。
【0073】
工程4)として0.5 mlのエッペンドルフチューブ(ポリプロピレン製;エンペンドルフ社)に下記表9に従い、各成分を入れ、試験サンプルを調整した。下記表10には各試験サンプルに含まれる、成分の最終濃度を記載した。調整された試験サンプルはすべてを23 ℃にて12時間混合した。
【0074】
表7に LESとLS-11またはAPGを用いた試験サンプル調整順序を示した。
【表7】
【0075】
【表8】
【0076】
工程5)は、実施1記載の工程2)と同様に分析を行い、ピーク保持時間を確認した。
【0077】
【表9】
保持時間の差 = (LES1.5 wt.%添加時と各濃度のLS-11またはAPG添加混合時のヒトインターロイキン6の保持時間) - (LES1.5 wt.%添加時のヒトインターロイキン-6の保持時間)
【0078】
工程6)として各評価サンプルのヒトインターロイキン6のピーク保持時間から、LESを1.5 wt.%単独で添加した評価サンプル(実施例1、表1)のヒトインターロイキン6保持時間を差し引いた値(保持時間差)をまとめ表9に示した。表から明らかなようにLS-11をLESに混合すると、その添加量に依存して保持時間差が拡大されることがわかった。これは、LESの不完全な脱離によって形成されたヒトインターロイキン6の会合度が、共に添加されたLS-11によって緩和され、少しずつ天然状態ヒトインターロイキン6に近づいていったことを意味した。この事実により、LESとLS-11を併せて添加することにより、LESの生体からの脱離性を改善、すなわち、LESの残留吸着性を緩和し得ることがわかった。一方、表5に示されたとおり、LESと共に添加されたAPGは、その添加濃度依存的にヒトインターロイキン6会合体の保持時間差を拡大させることはなく、すなわち、LESのヒトインターロイキン6からの脱離性に一切影響を与えなかった。このことは、APGが生体からの脱離性には優れるものの、APGの生体への吸着性が乏しく、すなわち界面活性剤としての能力が十分ではないことを意味するため、評価対象外とした。
【実施例4】
【0079】
<界面活性剤単独系における評価結果と細胞毒性(MTT法)の評価結果の関係>
LS-11、Lau-イミダゾリン、Coco-イミダゾリン、SSC(EO)、SCI、APG、SSCについてヒト正常繊維芽細胞(ヒトファイブロブラスト:クラボウ製)の細胞毒性を測定し、細胞の50%生存率を示す濃度により細胞に対する毒性の強度を確認した。
【0080】
評価した細胞はヒト正常繊維芽細胞(ヒトファイブロブラスト)を用い、細胞はDMEM培地(10 %FBS(fetal bovine serum)含有)で維持継代した。96穴培養プレートにヒト正常繊維芽細胞を3×104(cells/well)を播種し、5 %CO2、37 ℃、飽和水蒸気下、24時間インキュベーションを行った。培地吸引後、各濃度の被験物質サンプルをDMEMで溶解し、各ウェルに200 μlずつ添加し、さらに上記と同様の条件下24時間のインキュベーションを行った。24時間後各ウェルの被験物質含有DMEMを吸引後、DMEMにて1回洗浄した。次に、MTT溶液(0.5 mg/ml in DMEM)を各ウェルに200μlづつ添加し、2時間のインキュベーション後、MTT溶液を除いた。その後、40 mM塩酸酸性イソプロパノール溶液を添加し、マイクロプレートミキサーで5分間振動させた。96穴マイクロプレートリーダーを用い570 nmの吸光度を測定(655 nmをバックとして差し引く)し、被験物質を添加していないウェルを100 %細胞が生存しているとし、被験物質の細胞生存率を求めた。
【0081】
細胞毒性評価(MTT法)による50 %生存率を示した各界面活性剤濃度を図1、と表10に示した。
【表10】
【0082】
図2、表11には、実施例2に示した各界面活性剤2 wt.%添加時の各ゲルろ過クロマトグラフィーによる天然状態ヒトインターロイキン6の回収率の結果のなかで、細胞毒性評価を実施した、LS-11、Lau-イミダゾリン、Coco-イミダゾリン、SSC(EO)、SCI、SSCの結果を再掲した。
【0083】
【表11】
【0084】
表10、図1に示した細胞毒性評価(MTT法)による50 %生存率を示した界面活性剤濃度(wt.%)の関係と表11、図2に示した本発明の工程1)から3)で得られた各界面活性剤のゲルろ過クロマトグラフィーによる2 wt.%添加時のヒトインターロイキン6の天然状態回収率を比較した。その結果、表10と図1に示したとおり、細胞毒性評価と本発明による評価結果には相関性が認められ、積率相関係数として0.8638を得た。すなわち、本発明の工程1)から6)を通じた界面活性剤の評価結果は、細胞毒性評価(MTT法)による50 %生存率と極めて良好な相関性を示したため、本発明が精度の高い方法であることが分かった。
【実施例5】
【0085】
【表12】
【0086】
表12には、本発明の工程1)から6)を通しえられた界面活性剤であるLS-11を用いた液体ハンドソープ処方を示した。
【産業上の利用可能性】
【0087】
洗浄力および生体からの脱離性に優れた界面活性剤の汎用的で簡便かつ精度の高い評価方法を提供することができた。更に、こうして選別された界面活性剤を含有する洗浄剤または化粧料を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】細胞毒性評価(MTT法)による50 %生存率を示した界面活性剤濃度の関係を表した説明図である。
【図2】各界面活性剤、2 wt.%添加時のゲルろ過クロマトグラフィーによる天然状態ヒトインターロイキン6の回収率を表した説明図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可逆変性タンパク質を用いることを特徴とする、界面活性剤の評価方法。
【請求項2】
更に、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いることを特徴とする、請求項1記載の界面活性剤の評価方法。
【請求項3】
下記工程を有することを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の界面活性剤の評価方法。
工程1) 対象界面活性剤と可逆変性タンパク質とを混合する工程
工程2) ゲルろ過クロマトグラフィーにより、天然状態のタンパク質を定量する工程
工程3) 天然状態のタンパク質回収率の高い界面活性剤を選別する工程
【請求項4】
下記工程を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の界面活性剤の評価方法。
工程4) 対象界面活性剤と可逆変性タンパク質と生体吸着性物質とを混合する工程
工程5) ゲルろ過クロマトグラフィーにより可逆変性タンパク質と生体吸着性物質共存の保持時間(A)を測定する工程
工程6) 保持時間(A)が生体吸着性物質変性タンパク質の保持時間(B)より長時間であるものを選別する工程。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の界面活性剤の評価方法により選別されることを特徴とする、界面活性剤。
【請求項6】
請求項5に記載の界面活性剤を含有することを特徴とする、洗浄剤または化粧料。
【請求項1】
可逆変性タンパク質を用いることを特徴とする、界面活性剤の評価方法。
【請求項2】
更に、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いることを特徴とする、請求項1記載の界面活性剤の評価方法。
【請求項3】
下記工程を有することを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の界面活性剤の評価方法。
工程1) 対象界面活性剤と可逆変性タンパク質とを混合する工程
工程2) ゲルろ過クロマトグラフィーにより、天然状態のタンパク質を定量する工程
工程3) 天然状態のタンパク質回収率の高い界面活性剤を選別する工程
【請求項4】
下記工程を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の界面活性剤の評価方法。
工程4) 対象界面活性剤と可逆変性タンパク質と生体吸着性物質とを混合する工程
工程5) ゲルろ過クロマトグラフィーにより可逆変性タンパク質と生体吸着性物質共存の保持時間(A)を測定する工程
工程6) 保持時間(A)が生体吸着性物質変性タンパク質の保持時間(B)より長時間であるものを選別する工程。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の界面活性剤の評価方法により選別されることを特徴とする、界面活性剤。
【請求項6】
請求項5に記載の界面活性剤を含有することを特徴とする、洗浄剤または化粧料。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2006−292686(P2006−292686A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117461(P2005−117461)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】
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