説明

界面活性剤を含有する組成物における親油性活性材料の堆積

本発明は、重質液体洗剤(HDL)、濯ぎサイクル用布柔軟剤(RCFS)、シャンプー、ヘアコンディショナ、シャワージェル、クレンジング製品等の、少なくとも1つの界面活性剤を含有するリンスオフ用途の製品に組み込むことができ、且つ表面上への、香料、良好な芳香物質、フレーバー、及び他の揮発性化合物のような親油性活性材料の堆積を高める制御放出性キャリア系に関する。香料組成物は、ケイ素含有材料を含むシェル内にカプセル封入され、該シェルの平均直径サイズが30マイクロメートル未満である。香料組成物を含有する界面活性剤組成物を洗い流して香料を次第に放出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重質液体洗剤(heavy duty liquids)(HDL)、濯ぎサイクル用布柔軟剤(RCFS)、シャンプー、ヘアコンディショナ、シャワージェル、クレンジング製品等の、少なくとも1つの界面活性剤を含有するリンスオフ用途の製品に組み込むことができ、且つ表面上への、香料、良好な芳香物質、フレーバー、及び他の揮発性化合物のような親油性活性材料の堆積を高める制御放出性キャリア系に関する。
【0002】
本発明はまた、親油性活性材料の堆積が改善された、界面活性剤をベースとした組成物、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ウォッシュオフ用途で用いられる現行の界面活性剤を含有する配合物に関する重大な問題は、処理すべき表面上への親油性活性材料の堆積が芳しくないことである。洗濯用洗剤組成物及び布柔軟剤組成物等の典型的なファブリックケア製品は0.5重量%〜1重量%の香料を含有する。
【0004】
特許文献1は、布地上に残留物として残る香料の量が、出発製品に含まれる香料の元の量の1%に過ぎない可能性があることを開示している。
【0005】
理論に縛られるものではないが、一般的に親油性(油)活性材料、特に香料はいわゆるミセル化プロセスにおいて界面活性剤のミセルによって迅速に可溶化すると考えられる。このミセル化プロセスの結果として、活性材料のほんのわずかしか処理すべき表面上に堆積しない。親油性活性材料の多くが濯ぎ水において洗い流される。例えば、アニオン性−非イオン性混合界面活性剤系によって幾らかの合成芳香物質を可溶化することに対処する非特許文献1を参照されたい。
【0006】
香料の堆積を高める従来の方法は、香料を、コンディショナー組成物に含まれる界面活性剤、特にカチオン性界面活性剤と混和させることである。代替的な手段は、例えば特許文献2に記載されているような、香料を両親媒性ポリマーと混和させることによる固体粒子の調製を含む。
【0007】
特許文献3及び特許文献4は、ワックス粒子に芳香物質を組み込むことを示している。
【0008】
特許文献5は、脂肪成分とソルビタンエステルのような固体界面活性剤とを含む洗濯用洗剤に組み込まれるような、持続性が改善された、香料を含有する固体粒子を製造する方法を開示している。
【0009】
特許文献6は、皮膚、髪及び布を対象として送達されるような、ワックス又はポリマーマトリックス中で固溶体形態の生理活性組成物を記載している。
【0010】
特許文献7(Seok)は、加水分解触媒を含有する水溶液にテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を溶解して、加水分解度を制御し、且つ親水性又は親油性をもたらす工程と、コア材料、及びゲル化剤として適切な量のアミノプロピルトリアルコキシシラン(APS)を溶液中に添加する工程と、得られる溶液をコア材料の極性と反対の極性を有する溶液に乳化及び分散させて、ゾル・ゲル反応を介してコア材料をシリカシェルで被覆することによってマイクロカプセル化する工程とを含む、シリカマイクロカプセルを製造する方法を記載している。実施例8では、脂溶性芳香物質をカプセル封入することを主張している。
【0011】
特許文献8は、メラミン又はポリジメチルシロキサン形態のシェルを有するマイクロカプセルを含有する織物物品を記載しており、この活性生成物は芳香物質であり得る。カプセル封入は典型的に現場(in situ)重合によってなされる。
【0012】
特許文献9は、親油性の化粧用、化学的、生物学的又は薬学的に活性な材料組成物を水反応性ケイ素化合物と混合すること、及び剪断しながら少なくとも1つの界面活性剤の存在下で水性媒体中に混合物を乳化させ、それにより、活性材料組成物のコアがケイ素をベースとした網目構造ポリマーのシェルで囲まれたマイクロカプセルの水性懸濁液を生成することによって、該材料組成物をカプセル封入する別の現場重合プロセスを記載している。ポリシロキサンシェルは好ましくは、テトラエトキシシラン(TEOS)等のテトラアルコキシアルキルシラン又はトリアルコキシアルキルシランの縮合によって生成される。好ましい活性材料は日焼け防止剤(sunscreen)である。
【0013】
特許文献10は、マイクロカプセルを製造する方法を記載しており、この場合、水不溶性前駆物質とコア材料とを含む油性相を水中に乳化させる。その後、適切な剪断条件及び温度条件を適用してマイクロカプセルを形成する。
【0014】
これまでに記載されているゾル・ゲルプロセス又は現場重合プロセスによると、TEOS等の前駆物質及び活性成分を直接一緒に混合し、少量の水の存在下で乳化させた後に、TEOSを現場重合させている。一方、コア・シェルプロセスでは、初めに活性成分の水性エマルジョンを生成し、その後、剪断しながらTEOSを連続水性相に添加し、「ex−situ」重合を行う。本明細書の実施例に示すように、ゾル・ゲルプロセスにより得られるマイクロカプセルは、コア・シェルマイクロカプセルよりも低い安定性を有する傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第6,051,540号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0,469,228号明細書
【特許文献3】米国特許第4,152,272号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0,346,034号明細書
【特許文献5】米国特許第5,506,201号明細書
【特許文献6】米国特許第6,042,792号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2004/0256748号明細書
【特許文献8】仏国特許第2858637号明細書
【特許文献9】英国特許第2416524号明細書
【特許文献10】国際公開第2005/009604号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Yoshikazu Tokuoka et al.(Langmuir 1995, 11, 725-729)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ここで、本発明者等は、シリケートシェルによる油性活性材料のコアシェルカプセル封入によって、配合物に含まれる界面活性剤によるそれらのミセル化が妨げられ得ることを見出した。その結果として、ウォッシュオフ用途における表面上への親油性活性材料の有意に改善された堆積が観察された。
【0018】
本明細書中、「シリケートシェル」という用語は、ケイ素含有材料、好ましくはアルコキシシランの加水分解及び縮合から得られるケイ素含有材料から得られるシェル材料を指す。
【0019】
本明細書中、「親油性活性材料」という用語は、芳香物質組成物等の香料、臭気マスキング剤、及びそれらの混合物のような嗅覚(olfactive)成分、並びに上記のものに関する前駆物質を指す。以下の説明では、香料という用語は、親油性嗅覚化合物又は前駆物質を含有する任意の材料又は組成物を示すのに用いられる。
【0020】
この活性材料は通常、様々な嗅覚分子の配合物であり、例えばδ−ダマスコン及びβ−ダマスコン、ベンズアルデヒド、ベンジルアセテート、ベルジルアセテート、ヘキシルシンナムアルデヒド;アルデヒド、例えば、C8、C10、C11ウンデシレンアルデヒド、C12ラウリンアルデヒド、C12MNA;イオノンβ(ionone beta)、バンガロール、マンザネート(manzanate)、OTBCA、イソ・E・スーパー(iso E super)、テトラヒドロリナロール(tetra hydro Linalol)、フェニルエチル2フェニルアセテート2(phenyl ethyl 2 phenylacetate 2)、メントール、リナロール(linalol)、リナリルアセテート、カンファー、ユーカリプトール、テルピニルアセテート、ケファリス(kephalis)、アンブロフィクス(ambrofix)、インドール、アネトール、サンダロール(sandalore)、バニリン、クマリンオイゲノール、リラール(lilal)、ヒドロキシシトロネラール、メチルパンプルムース、ゲラニトリル、ヘジオン(hedione)、ジャスミンcis(jasmine cis)、フィキソリド(fixolide)、ガラクソリド(galaxolide)、メチンアントラニレート(methym anthranilate:メチルアントラニレート)、ゲラニオール、シトロネロール、ガルデノール(gardenol)、トリシダル(tricydal)、フェニルエチルアルコール、フェニルアセトアルデヒド、ピラローン(pyralone)、カロン(calone);ラベンダー、ラヴァンジン・グロッソ、ローズマリー、ユーカリ、アルテシミア(artesimia:アルテミシア)、クラリセージ、スターアニス、バジル、クミン、シトロネラ、レモングラス、レモン、ベルガモット、イエローマンダリン、オレンジ、ライム、イランイラン、ガルバナム、マリーゴールド、ペパーミント、スペアミント、ネロリ、プチグレン、オレンジフラワー、オリバナム、ローズ、ゼラニウム、カッシア、ナツメグ、ブラックペッパー、ジュニパー、コリアンダー、サンダルウッド、シダーウッド、ベチバー、パチョリ、オークモス、パイン、フォーカス(focus)、セロリシード、キャロットシードからの天然油;並びに、ジャコウネコ、ペルーバルサム、バニラ、トンカ豆、シスタス、ジャスミン、チュベローズ、ミモザ、ブラックカラント・バド(blackcurrant buds)、オスマンサス、バイオレットリーフ、オレンジフラワー及びローズ・ド・メイ(rose de mai)からの抽出物であるが、化合物のこのリストに限定されるものではない。
【0021】
「マイクロカプセル」という用語は、粒径が最大1mmであるカプセルを意味するため、粒径が1マイクロメートル〜1mmであるマイクロカプセル、及び粒径が1マイクロメートル未満であるナノカプセルを含む。
【0022】
リンスオフ用途の例は、洗濯、布の柔軟化、洗髪、髪のコンディショニング、クレンジング、シャワー洗浄等であり得る。
【0023】
[関連技術の記載]
幾つかのコア・シェルマイクロカプセル懸濁液、及びコア・シェルマイクロカプセルを製造する様々な方法が、欧州特許第0934773号明細書、欧州特許第0941761号明細書、米国特許第6,303,149号明細書、国際公開第03/066209号パンフレット、特許文献10及び特許文献9に記載されている。国際公開第03/066209号パンフレットは、香料又は芳香物質をカプセル封入し得ることについて言及している。
【0024】
シクロデキストリンによるマイクロカプセル封入錯体及びマイクロ包摂錯体は、揮発性を低減させ、安定性を改善させ且つ徐放性をもたらすのに用いられてきた。しかしながら、シクロデキストリンを水中に注ぐとすぐさま香料が放出され、これにより、例えばランドリーケアにおける制御放出系としてのそれらの使用が制限される(例えば、米国特許第5,094,761号明細書、同第5,207,33号明細書、同第5,232,612号明細書、同第5,234,611号明細書、同第5,236,615号明細書、同第5,102,564号明細書、及び同第5,234,610号明細書)。
【0025】
米国特許第7,119,060号明細書は、布柔軟剤、洗濯用洗剤、濯ぎ用製品(rinse added products)、及び、香料性能を高める他のファブリックケア製品等の液体、並びに乾燥顆粒又は乾燥粉末のファブリックケア製品に組み込むことができる制御送達系(CDS)を記載している。CDSは、粒子が布上に付着することを助けるカチオン性の布柔軟剤と併せて疎水性カチオン電荷を増強させる作用物質を含む、実質的に球状の固形粒子である。粒子はマトリックスタイプのマイクロカプセルであり、マトリックスを形成するポリマーは疎水性である。
【0026】
芳香物質の堆積の改善は、重合プロセス中におけるラテックスへの組込みを介して記載されている(例えば、欧州特許出願公開第0,617,051号明細書、特公昭63/122796号公報、及び国際公開第98/28396号)。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、リンスオフ用途に用いられる、少なくとも1つの界面活性剤と、親油性活性材料コア及びシェル、好ましくはシリケート又はケイ素含有高分子シェルを有するコア・シェルマイクロカプセルとを含有する組成物を提供する。活性材料は、マイクロカプセルが壊れると放出される芳香物質又は香料である。
【0028】
国際公開第03/066209号はその19パラグラフで、芳香物質をカプセル封入する場合には、芳香物質が放出されるようにシェルは破壊可能なものでなければならないと説明している。したがって、大きな粒子の方がより小さな粒子よりも容易に破壊可能であるため、直径が少なくとも10マイクロメートル、例えば50マイクロメートル又はそれ以上である大きな粒子が好ましい。同様に、米国特許第7119060号明細書はその第8欄で、「粒子からの香料の透過速度は粒径に比例し、そのため、粒子が小さいほど、香料が放出される速度が速くなる。好ましくは、香料を含有する粒子の粒径は約50ミクロン〜200ミクロンの範囲内である」と述べている。
【0029】
このため、大きいコア・シェル粒子によって、芳香物質を放出する破壊可能なシェルの提供がさらに可能になると考えられていた。これに反して、本発明者等は驚くべきことに、小さいサイズの微小粒子を用いることでより良好な香料拡散効果を得ることができることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0030】
好ましくは、マイクロカプセルの平均直径サイズは、30マイクロメートル未満、好ましくは20マイクロメートル未満、例えば、0.5マイクロメートル〜20マイクロメートルの範囲、より好ましくは、1マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲、例えば1.5マイクロメートル〜7マイクロメートルの範囲である。
【0031】
マイクロカプセルの直径サイズは、顕微鏡を用いて、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)の下でサンプルを検査することによって評価することができる。
【0032】
マイクロカプセルのシェルの厚みは好ましくは以下の物理的関係により求められる。
【0033】
シェルの厚み(nm)=((Dv0.5/2)−(Dv0.5/2×(ペイロード(Payload)/100)1/3))×1000
Dv0.5はマイクロメートル単位で表される。
ペイロード=コア材料体積×100/(コア材料体積+シェル体積)
コア材料体積=コア材料重量/コア材料の密度
シェル体積=シェル重量/2
【0034】
ここで指定される粒径の測定は、Malvern Instruments Ltd., UKからの「Mastersizer 2000」を用いたレーザー回折法によりなされ、上記粒径に関するさらなる情報は、例えば、"Basic principles of particle size analytics", Dr. Alan Rawle, Malvern Instruments Limited, WR14 1XZ, UK及び"Manual of Malvern particle size analyser"に見ることができる。ユーザーマニュアル番号MNA0096、1.0号(1994年11月)について特定の言及がなされている。本願に示される全粒径は、特に記述もなく又は明らかなものでなければ、D(v、0.5)に従う平均粒径であり、Malvern Mastersizerを用いて測定される。
【0035】
好ましくは、粒径分布が小さく、例えば、粒子の少なくとも80%が、Dv0.5値の50%〜200%から構成されるDvを有する。例えば、マイクロカプセルは、Dv0.1=5マイクロメートル、Dv0.5=10マイクロメートル、及びDv0.9=20マイクロメートルを有する。
【0036】
堆積助剤材料はコア・シェルマイクロカプセルと併せて用いて、対象表面上へのコア・シェルマイクロカプセルの堆積を改善することができる。好ましくは、堆積助剤材料はカチオン性である。材料の1つの好ましい種は、グアーヒドロキシプロピルトリアンモニウムクロリド(RhodiaからJaguarという商品名で市販されている)等のカチオン性グアーガム誘導体である。特に好ましくは、カチオン性基の置換度が低く且つ粘度が高いJaguar C13Sである。本発明に有用な他の堆積助剤は、
第四級アンモニウム化合物、
ポリビニルアミン、
ポリアルキレンイミン、
ポリ第四級アンモニウム化合物である。
【0037】
本発明の一態様によれば、カプセル封入された香料組成物の水性懸濁液であって、香料組成物のコアがケイ素をベースとした網目構造ポリマーのシェルで囲まれたマイクロカプセルを含み、マイクロカプセル中の香料組成物と、ケイ素をベースとした網目構造ポリマーシェルとの重量比が、少なくとも1.5:1であり、且つ懸濁液がカチオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含有することを特徴とする、カプセル封入された香料組成物の水性懸濁液が提供される。
【0038】
本発明者等は、液体分散体中の液体を表すのには「エマルジョン」、及び液体分散体中の固体を表すのには「懸濁液」という用語を用いている。したがって、本発明者等は、マイクロカプセルの分散体を懸濁液とみなしている。しかしながら、最終的な分散に目を向けると、それは視認しにくく、即ち、懸濁液とエマルジョンとの識別が不可能な場合があることを理解されたい。
【0039】
好ましくは、マイクロカプセルのシェルを作製するのにテトラアルコキシシラン化合物が用いられる。テトラエトキシシラン(TEOS)等のテトラアルコキシシランは、モノマー形態で又は液体部分縮合物として用いることができる。テトラアルコキシシランは、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのSi−OH基又はケイ素に結合した加水分解性基を有する1つ又は複数の他の水反応性ケイ素化合物、例えば、メチルトリメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン、又はアルキルトリアルコキシシランの液体縮合物と併せて用いることができる。加水分解性基は、例えば、ケイ素に結合したアルコキシ基又はアシルオキシ基であり得る。テトラアルコキシシラン又は他のシラン中のアルキル基及びアルコキシ基は好ましくは、1個〜4個の炭素原子、最も好ましくは1個又は2個の炭素原子を含有する。テトラアルコキシシラン、及び用いられる場合には他の水反応性ケイ素化合物は、加水分解及び縮合して、親油性活性材料組成物の乳化液滴の周囲に、網目構造ポリマー、即ちケイ素をベースとした材料の三次元網目構造を形成する。水反応性ケイ素化合物は好ましくは、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは90%〜100%のテトラアルコキシシランで構成される。本発明者等は、不透過性マイクロカプセルを形成するのに、例えば、SiO4/2単位から実質的に成る三次元網目構造を形成するのに、テトラアルコキシシランが最も有効なケイ素化合物であり得ることを見出した。
【0040】
例えば、乳化プロセス中に剪断、キャビテーション(cavitation)又は圧力を増大させることによって小さい粒径に有利に働き得る。以下の説明から分かるように、小さい油液滴サイズに有利に働く他の手段を用いてもよい。
【0041】
香料組成物は、乳化される時点で液体であり、通常、周囲温度で液体である。香料組成物は、未希釈の液体活性材料であっても、親油性溶媒、好ましくは不揮発性溶媒中に少なくとも1つの香料を含有する溶液、又は油中水型エマルジョン、又は親油性懸濁液であってもよい。固体活性香料材料は、それらの融点が100℃を大きく下回る場合には乳化する前に融解する可能性もある。
【0042】
親油性活性材料組成物は、好ましくは界面活性剤を利用して水性媒体中に乳化される。
【0043】
界面活性剤は最も好ましくは、カチオン性界面活性剤又は両性界面活性剤であり、これは容易に正のゼータ電位のエマルジョンを形成する。本発明者等は、正のゼータ電位によって、親油性活性材料組成物の乳化液滴の界面におけるテトラアルコキシシランの縮合及び重合が促され、より不透過性のマイクロカプセルがもたらされることを見出した。非イオン性界面活性剤を用いてもよく、例えば、カチオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を最大で等量の非イオン性界面活性剤と混合することができる。
【0044】
親油性活性材料の水性エマルジョン中の界面活性剤の濃度は、エマルジョンの0.01重量%〜10重量%であり得るが、好ましくは少なくとも0.02重量%且つ2重量%未満、最も好ましくは0.05重量%〜1.5重量%、特に0.2重量%〜1.0重量%である。一般的に、親油性活性材料の乳化及びアルコキシシランとの反応中における少量の界面活性剤の使用によって、マイクロカプセルからの親油性活性材料の拡散又は浸出に対してより強い耐性を示すマイクロカプセルがもたらされる。
【0045】
マイクロカプセルの懸濁液への界面活性剤のその後の添加は、マイクロカプセルからの親油性活性材料の拡散又は浸出に対する影響が小さいか、又は全く影響がない。
【0046】
エマルジョン中の油相と水性相との重量比は一般的に、40:1〜1:50であり得るが、特にマイクロカプセルのエマルジョンを形成する場合には、水性相の割合が大きいほど経済的に不利である。通常、油相と水性相との重量比は2:1〜1:3である。活性材料組成物の粘性が高ければ、油相を、界面活性剤及び少量、例えば油相に基づき2.5重量%〜10重量%の水と混合して油中水型エマルジョンを形成し、これを剪断しながら水中油型エマルジョンに転化させる転相プロセスを用いることができる。その後、さらに水を添加して、エマルジョンを要求される濃度まで希釈してもよい。
【0047】
カチオン性界面活性剤の例としては、水酸化第四級アンモニウム、例えば、水酸化オクチルトリメチルアンモニウム、水酸化ドデシルトリメチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモ
ニウム、水酸化オクチルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化デシルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化ジドデシルジメチルアンモニウム、水酸化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、水酸化タロートリメチルアンモニウム及び水酸化ココトリメチルアンモニウム、並びにこれらの材料の対応する塩;脂肪アミン及び脂肪酸アミド及びそれらの誘導体;塩基性ピリジニウム化合物;ベンズイミダゾリン及びポリプロパノールポリエタノールアミンの第四級アンモニウム塩基が挙げられる。マイクロカプセルのカチオン性エマルジョンは、エマルジョンからのマイクロカプセルの堆積を増大させ、また髪及び皮膚の両方に対する持続性を上げる。
【0048】
好適な両性界面活性剤の例としては、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシサルフェート、ココベタイン、ココアミド酢酸ナトリウム、ココジメチルベタイン、N−ココ−3−アミノ酪酸及びイミダゾリニウムカルボキシル化合物が挙げられる。
【0049】
上記界面活性剤は、個々に用いても組み合わせて用いてもよい。
【0050】
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリエチレングリコール長鎖(12−14C)アルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタンエーテル、ポリオキシアルキレンアルコキシレートエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、エチレングリコールプロピレングリコールコポリマー;ポリビニルアルコール;及びアルキルポリサッカライド、例えば、米国特許第5,035,832号明細書に記載されているような構造R1−O−(R2O)m−(G)nの材料(式中、Riは、直鎖若しくは分枝状アルキル基、直鎖若しくは分枝状アルケニル基、又はアルキルフェニル基を表し、R2はアルキレン基を表し、Gは低糖を表し、mは0又は正の整数を示し、nは正の整数を表す)が挙げられる。
【0051】
エマルジョンの連続相は、水と、アルコール又はラクタム等の水混和性有機溶媒との混合物であってもよいが、但し、連続相は親油性活性材料と混和性でないものとする。親油性活性材料のエマルジョンの粒径は、例えば、ホモジナイザ若しくはマイクロフルイダイザ、又はソノレータ(超音波ミキサ)等の大きな剪断を加える装置において、水反応性ケイ素化合物の添加前に小さくすることができる。エマルジョンは代替的に転相によって調製することもできる。
【0052】
生成されるマイクロカプセルの粒径は一般的に、出発(starting)エマルジョンの粒径に対応し、例えば、0.1マイクロメートル〜30マイクロメートルの範囲内であり得る。
【0053】
エマルジョンの水性相は好ましくは、増粘剤、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ベントナイトクレイ、セルロース誘導体、特にカルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロースエーテル、軽度に架橋されたアクリルポリマー、加工デンプン、アルギネート又はキサンタンガムを含有して、生成中又はそれ以後にエマルジョンからマイクロカプセルが沈降することを抑制する。増粘剤は、テトラアルコキシシランの添加前にエマルジョンに添加する。テトラアルコキシシランの添加前のエマルジョンへのポリビニルピロリドンの添加によって、ほとんどの粒径のマイクロカプセルに関して、マイクロカプセルからの親油性材料の拡散に対してより強い耐性を示すマイクロカプセルの形成が促される。
【0054】
テトラアルコキシシラン、及び用いられる場合には他の水反応性ケイ素化合物は、未希釈の液体として又は有機溶媒溶液として、若しくはエマルジョン形態で活性材料組成物のエマルジョンに添加することができる。テトラアルコキシシラン及びエマルジョンは一般的に、添加中及び続く縮合中に剪断しながら混合され、乳化液滴の表面上にケイ素をベースとしたポリマーシェルを形成する。混合は例えば攪拌によるものであるが、テトラアルコキシシランの添加中又はテトラアルコキシシランの添加後のいずれかで且つマイクロカプセルの形成が完了する前に、例えばSilberson(商標)ミキサ等のロータ及びステータ型のミキサにおいてエマルジョン及びテトラアルコキシシランを高剪断にかけることが好ましい。
【0055】
テトラアルコキシシランの添加後直ちに高剪断混合することが好ましい。これにより、マイクロカプセルの粒径が小さくなり、エマルジョン液滴の界面における実質的に全てのテトラアルコキシシランの重合が促されると思われる。
【0056】
縮合反応は酸性、中性又は塩基性のpHで行うことができる。縮合反応は一般的に、周囲温度及び周囲圧力で実施されるが、高温、例えば最大95℃、及び高圧又は減圧、例えば真空下で実施して縮合反応中に生成される揮発性アルコールを抜き取ることもできる。活性材料組成物と水反応性ケイ素化合物との重量比は好ましくは少なくとも0.5:1であり、多くの場合、少なくとも1.5:1、例えば、2:1〜9:1であり得る。より小さいマイクロカプセル、例えばマイクロエマルジョンから形成されるものほど一般的に、水反応性ケイ素化合物に対する活性材料組成物の比率が小さい。
【0057】
多くの用途に関して、例えば異なる媒体中へのその後の分散のために、懸濁液からマイクロカプセルを回収することが好ましいことがある。カプセル封入された香料は、例えば、好ましくは製剤中の香料の含量が0.1重量%〜10重量%となるような割合で水系製剤中に分散させてもよい。代替的に、マイクロカプセルを、任意に界面活性剤及び/又はポリマー等の添加剤と共に、有機溶媒中に再度分散させてもよい。マイクロカプセルの回収は、任意の既知の液体除去技法によって、例えば、噴霧乾燥、噴霧冷却、濾過、炉乾燥又は凍結乾燥によって達成することができる。
【0058】
カプセル封入された生成物は、水反応性金属アルコキシ化合物又は水反応性金属アシルオキシ化合物を用いて後処理することができる。金属化合物は、水と即座に反応するというよりも水中で徐々に加水分解するものとし、ケイ素、チタン、ジルコニウム又はバナジウムの化合物等の、周期律表のIVB群、IVA群又はVA群の化合物が好適である。水反応性金属アルコキシ化合物又は水反応性金属アシルオキシ化合物は、例えば、マイクロカプセルのシェルを固め、且つ/又はそれらをより不透過性とすることができる。反応性金属アルコキシ化合物又は反応性金属アシルオキシ化合物は、例えば、アルコキシシラン又はアシルオキシシラン、特にメチルトリエトキシシラン若しくはイソブチルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン、又はトリス(ジメチルハイドロジェンシリルオキシ)n−オクチルシラン等のSi−H官能基を有するシラン、又は代替的に、チタンアルコキシド(アルキルチタネート)であり得る。
【0059】
反応性金属アルコキシ化合物又は反応性金属アシルオキシ化合物は、基材、特に織物基材への付着を促す有機官能性基を有し得、例えば、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランである。マイクロカプセルは、反応性金属アルコキシ化合物又は反応性金属アシルオキシ化合物、例えばアルコキシシランを用いて後処理し、例えばカプセル表面をより疎水性又はより親水性にすることによって、それらの物理特性及び/又は化学特性を変えることができる。例えば、オクチルトリエトキシシラン等の長鎖アルキル基を有するシランとの反応によってマイクロカプセル表面をより疎水性にすることができる。化学反応の代替案として、マイクロカプセルを、その表面特性を変える材料で被覆してもよい。表面処理は、懸濁液中のマイクロカプセル上又は分離された固体マイクロカプセル上で実施することができる。
【0060】
香料をカプセル封入する場合には、放出速度を制御することが好ましい場合があり、これは、界面活性剤の量、テトラアルコキシシラン及び任意にトリアルコキシシランの量、並びに粒径を調節することによって達成することができる。
【0061】
本発明は、カプセル封入された香料組成物を含む香料キャリア系であって、該香料組成物が、ケイ素含有材料を含むシェル内にカプセル封入され、該シェルの平均直径サイズが30マイクロメートル未満である、カプセル封入された香料組成物を含む香料キャリア系を提供する。好ましくは、シェルの平均直径サイズが20マイクロメートル未満である。より好ましくは、シェルの平均直径サイズが少なくとも0.5マイクロメートルである。例えば、シェルの平均直径サイズが1マイクロメートル〜10マイクロメートルで構成され、より好ましくは、シェルの平均直径サイズが1.5マイクロメートル〜7マイクロメートルで構成される。
【0062】
シェルは、好ましくは1つ又は複数のアルコキシシラン化合物の重合生成物、好ましくはテトラアルコキシシランの乳化重合生成物である。
【0063】
本発明はまた、香料キャリア系を含有し、以下「界面活性剤組成物」、例えばリンスオフ組成物と呼ばれる、界面活性剤を含有する組成物を提供する。界面活性剤組成物は、布柔軟剤、洗濯用液体洗剤、濯ぎ用製品、乾燥機用布柔軟剤製品、しわ取り用(ironing-added)製品、ヘアコンディショナ、シャンプー、セッケン、食器洗浄用製品及びシャワージェルから選択することができる。界面活性剤組成物は、好ましくは、第四級アンモニウム化合物、ポリビニルアミン、ポリアルキレンイミン、及びポリ第四級アンモニウム化合物の少なくとも1つから選択されるのが好ましい堆積助剤材料を含有する。より好ましくは、堆積助剤材料は、カチオン性グアーガム誘導体、好ましくはグアーヒドロキシプロピルトリアンモニウムハライドである。
【0064】
本発明はまた、基材に香料を送達する方法であって、上述の界面活性剤組成物によって該基材を処理し、該界面活性剤組成物を洗い流して香料を次第に放出させる、方法を提供する。
【実施例】
【0065】
芳香物質送達評価のための洗濯機試験及びパネル試験(欧州製洗濯機)
【0066】
初めに、4枚のタオル及び5枚の枕カバー(合計1kg)を洗濯し(商業用洗剤粉末を用いて95℃で、その後、洗剤粉末を用いずに95℃で、その後、洗剤粉末を用いて95℃で、最後に洗剤粉末を用いずに95℃で)、表面処理剤を除去する。これらの布を、洗浄サイクルの洗濯物(load)として用いる。
布の処理:
洗濯物:4枚の小さいタオル及び5枚の枕カバー(合計1kg)を交互に(枕カバー、小さいタオル、枕カバー)洗濯機に入れる。
洗剤:
液体洗剤HDL1(下記組成物を参照)を洗濯機(Miele W934)のおよそ中央に配置されている投与ボール(dosing ball)に添加する。RCFSを試験する場合には、芳香物質を含まない液体洗剤HDL1を用い、機械の引出し(drawer:投入口)に芳香物質入りRCFSを添加する。
洗浄プログラム:40℃における短い洗浄プログラム、濯ぎ、回転速度:600rpm、12リットルの軟水の手動添加。
タオルを24時間自然乾燥させる。
乾燥後、タオルを折り畳み、それらを棚に入れた後に、パネルは芳香強度の評価を開始することが可能である。
パネル試験:
パネル試験はタオルのみを用いて行う。枕カバーは試験しない。それらは洗濯物として用いたに過ぎないからである。
洗浄サイクル直後に、濡れタオルからの芳香強度を評価する。
シリーズ毎に少なくとも2枚のタオルを比較し、降順に等級分けする。
各シリーズは少なくとも1週間毎日匂いを嗅ぐ必要がある。
タオルは毎日取り替える。例えば、1回目に用いたタオルを、積み重なった山(pile)の一番下から取られる2回目のタオルと取り替え、この1回目に用いたタオルは、残りのタオルによって作られる積み重なった山の一番上に置かれる。3日目には、積み重なった山の一番下に置かれたタオルが、2日間のうちにパネリストによって用いられたタオルに取って替わる。
ここで、液体洗剤又は濯ぎサイクル用布柔軟剤のいずれかから送達される芳香物質は、これら2つの製品の組成物である:
HDL1組成物:
Dehydol LT 7 7.3%(w/w)
Maranil Pasta 55 17.7%(w/w)
水 適量
RCFS:16%のエステルクアット(KaoからのLT1)を含有する。既定量の芳香物質を含有する12gのこの配合物を濯ぎサイクル用の引出しに添加する。
【0067】
以下の実施例によって本願を例示する。これらの実施例は例示的なものであり、決して本発明の範囲を限定するように意図されるものではない。
【0068】
実施例1
35.01gのd−ダマスコン(δ−ダマスコン)(BLH)を、0.20gのパレス−3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤と0.11gのセチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)カチオン性界面活性剤とを含有する64.39gの水中に乳化させた。この粗いエマルジョンをロータ/ステータミキサIKA Ultra−Turax T 25 Basicによって13500rpmで90秒間乳化させた。5%のTEOSを攪拌しながらエマルジョンに添加し、マイクロカプセルの粗いエマルジョンを生成した。平均体積粒径(Dv0.5)が4.4マイクロメートル(μm)であるマイクロカプセルが懸濁液中に作製され、このシェルの厚みは13.9nmであった。
【0069】
懸濁液を、55gの重質液体洗剤(HDL1)に添加し、プロペラを用いて300rpmで30分間混合して、0.75%(w/w)のカプセル封入されたd−ダマスコン濃度を得た。この組成物を24時間静置した。
【0070】
洗浄は上記の手法に従って実施した。
【0071】
9人のうち8人のパネリストが、純粋なd−ダマスコンで処理した濡れタオル(コントロール)に対して、d−ダマスコンマイクロカプセルで処理した濡れタオルからの香りの方がより強力であると判定した。
【0072】
実施例2
実施例1に記載の手法に従い、d−ダマスコンをカプセル封入し、幾らかのJaguar C13Sと一緒に液体洗剤(HDL1)に入れて、1.5%の芳香物質濃度を得た。
【0073】
その後、この配合物を、1.5%の遊離した芳香物質のみを含有する液体洗剤と比較した。
【0074】
【表1】

【0075】
タオルが濡れているとき及び貯蔵の2日後まで、パネリストの多くは、芳香物質がカプセル封入されている場合に芳香強度がより高かったと認識した。
【0076】
実施例3
実施例1に記載の手法に従い、d−ダマスコンをカプセル封入し、幾らかのJaguar C13Sと一緒に液体洗剤(HDL1)に入れて、0.75%の芳香物質濃度を得た。その後、この配合物を、1.5%の遊離した芳香物質のみを含有する液体洗剤と比較した。
【0077】
【表2】

【0078】
タオルが濡れているとき又は貯蔵の3日後まで、パネリストは、芳香物質がカプセル封入されている場合に芳香強度がより高かったと認識した。
【0079】
実施例4
実施例1に記載の手法に従い、d−ダマスコンをカプセル封入し、幾らかのJaguar C13Sと一緒に液体洗剤(HDL1)に入れて、0.75%の芳香物質濃度を得た。その後、この配合物を、0.75%の遊離した芳香物質のみを含有する液体洗剤と比較した。
【0080】
【表3】

【0081】
タオルが濡れているとき及び貯蔵の10日後であっても、パネリストは、芳香物質がカプセル封入されている場合に芳香強度がより高かったと認識した。
【0082】
実施例5
実施例1に記載の手法に従い、d−ダマスコンをカプセル封入し、濯ぎ用布柔軟剤に入れて、1.5%の芳香物質濃度を得た。その後、この配合物を、1.5%の遊離した芳香物質のみを含有する濯ぎ用布柔軟剤と比較した。
【0083】
【表4】

【0084】
明らかにRCFSから送達される場合、芳香物質は、配合物中で遊離しているときよりもカプセル封入されているほうがより強力である。
【0085】
実施例6
実施例1に記載の手法に従い、d−ダマスコンをカプセル封入し、濯ぎ用布柔軟剤に入れて、0.5%の芳香物質濃度を得た。その後、この配合物を、1%の遊離した芳香物質のみを含有する濯ぎ用布柔軟剤と比較した。
【0086】
【表5】

【0087】
14日後には、6人のうち6人のパネリストが、初めに存在する芳香物質量が2分の1になったとしても、カプセル封入された芳香物質の強度の方が遊離した芳香物質よりも高かったと認識した。
【0088】
実施例7
実施例1に記載の手法に従い、「Fraicheur des Sommets」(Mane Company製)をカプセル封入し、濯ぎ用布柔軟剤に入れて、1.5%の芳香物質濃度を得た。その後、この配合物を、1.5%の遊離した芳香物質のみを含有する濯ぎ用布柔軟剤と比較した。
【0089】
【表6】

【0090】
ここでもまた、カプセル封入によって9日を超える間芳香強度が維持された。
【0091】
比較例1
実施例1に記載の手法に従い、ロータ/ステータミキサIKA Ultra−Turax T 25 Basicの代わりにミキサIKA Eurostar Digitalを用いることにより2000rpmでd−ダマスコンをカプセル封入して、より大きな粒径を得た。
【0092】
カプセル封入したd−ダマスコンを、幾らかのJaguar C13Sと一緒に液体洗剤(HDL1)に入れて、0.75%の芳香物質濃度を得た。その後、この配合物を、0.75%の遊離した芳香物質のみを含有する液体洗剤と比較した。
【0093】
【表7】

【0094】
このような大きなマイクロカプセルに関して、パネリストは、芳香強度が遊離した芳香物質よりも高いとはほとんど認識しなかった。この場合、カプセル封入プロセスによりもたらされる利点は、カプセル封入プロセスに関連する労力及びコストとはかりにかけると極めて少ない。
【0095】
以下の実施例8〜実施例12及び比較例2では、完全に配合した液体洗剤又は濯ぎサイクル用布柔軟剤を40℃において4週間貯蔵した後ではあるが、同じ実験を実施した。
【0096】
実施例8
実施例1に記載の手法に従い、d−ダマスコンをカプセル封入し、幾らかのJaguar C13Sと一緒に液体洗剤(HDL1)に入れて、1.5%の芳香物質濃度を得た。その後、この配合物を、1.5%の遊離した芳香物質のみを含有する液体洗剤と比較した。
【0097】
【表8】

【0098】
40℃における4週間の貯蔵後も性能は維持された。
【0099】
実施例9
実施例1に記載の手法に従い、「Fraicheur des Sommets」をカプセル封入し、幾らかのJaguar C13Sと一緒に液体洗剤(HDL1)に入れて、0.4%の芳香物質濃度を得た。その後、この配合物を、0.4%の遊離した芳香物質のみを含有する液体洗剤と比較した。
【0100】
【表9】

【0101】
40℃における4週間の貯蔵後も性能は維持された。
【0102】
実施例10
実施例1に記載の手法に従い、d−ダマスコンをカプセル封入し、濯ぎ用布柔軟剤に入れて、1.5%の芳香物質濃度を得た。その後、この配合物を、1.5%の遊離した芳香物質のみを含有する濯ぎ用布柔軟剤と比較した。
【0103】
【表10】

【0104】
濯ぎサイクル用布柔軟剤での40℃における4週間の貯蔵後も性能は維持された。
【0105】
実施例11
実施例1に記載の手法に従い、「Fraicheur des Sommets」をカプセル封入し、濯ぎ用布柔軟剤に入れて、1.5%の芳香物質濃度を得た。その後、この配合物を、1.5%の遊離した芳香物質のみを含有する濯ぎ用布柔軟剤と比較した。
【0106】
【表11】

【0107】
実施例12
実施例1に記載の手法に従い、d−ダマスコンをカプセル封入し、幾らかのJaguar C13Sと一緒に液体洗剤(HDL1)に入れて、0.75%の芳香物質濃度を得た。その後、この配合物を、0.75%の遊離した芳香物質のみを含有する液体洗剤と比較した。
【0108】
【表12】

【0109】
40℃における4週間の貯蔵後も良好な性能は維持された。
【0110】
比較例2
実施例1に記載の手法に従い、ロータ/ステータミキサIKA Ultra−Turax T 25 Basicの代わりにミキサIKA Eurostar Digitalを用いることにより2000rpmでd−ダマスコンをカプセル封入して、より大きな粒径を得た。
【0111】
カプセル封入した芳香物質を、幾らかのJaguar C13Sと一緒に液体洗剤(HDL1)に入れて、0.75%の芳香物質濃度を得た。その後、この配合物を、0.75%の遊離した芳香物質のみを含有する液体洗剤と比較した。
【0112】
【表13】

【0113】
このHDL用途では、1日後、6日後及び7日後に示されるように、比較例2の大きいマイクロカプセルにより得られる性能が、実施例12の小さいマイクロカプセルにより得られる性能よりも有意に小さい。
【0114】
実施例13:シャワージェル
【0115】
【表14】

【0116】
マイクロカプセルの粒径Dv0.5は4.3マイクロメートルであった。
【0117】
芳香物質(Mane−Fraicheur des sommets)0.5%の基本のシャワージェルに関してパネル試験(9人)を行った。対照シャワージェル(遊離した芳香物質)で片腕を、コア・シェルを含有するシャワージェルでもう一方の腕を洗浄するようにパネリストに求めた。その後、パネリストに最も強力な香気を有する腕を、洗浄直後(濡れている状態)、2分後、30分後、その後1時間毎に(それらが匂わなくなるまで)記録させた。結果から、濡れている状態、並びに1時間後及び2時間後に関する統計学的差異が示された:
洗浄直後(濡れている状態):対照シャワージェルに対して7/9のパネリスト(信頼性99%)
1時間後、カプセル封入された芳香物質を有するシャワージェルに対して7/9のパネリスト(信頼性99%)
2時間後、カプセル封入された芳香物質を有するシャワージェルに対して6/9のパネリスト(信頼性95%)
【0118】
これらの結果から、初めは遊離した芳香物質が最も強力であるが、その後直ちに、カプセル封入された香料がより良好な結果をもたらすことが示された。
【0119】
実施例14
35.01gのd−ダマスコン(BLH)を、0.20gのパレス−3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤と、0.11gのセチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)カチオン性界面活性剤とを含有する64.39gの水中に乳化させた。この粗いエマルジョンをロータ/ステータミキサIKA Ultra−Turax T 25 Basicによって13500rpmで90秒間乳化させた。5%のTEOSを攪拌しながらエマルジョンに添加し、マイクロカプセルの粗いエマルジョンを生成した。平均体積粒径(Dv0.5)が21.6ミクロン(μm)であるマイクロカプセルが懸濁液中に作製され、このシェルの厚みは134nmであった。
【0120】
懸濁液を、幾らかのJaguar C13Sと一緒に55gの重質液体洗剤(HDL1)に添加し、プロペラを用いて300rpmで30分間混合して、0.75%(w/w)のカプセル封入されたd−ダマスコン濃度を得た。この組成物を24時間静置した。その後、この配合物を、1.5%の遊離した芳香物質のみを含有する液体洗剤と比較した。
【0121】
【表15】

【0122】
実施例15
35.01gのd−ダマスコン(BLH)を、0.20gのパレス−3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤と、0.11gのセチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)カチオン性界面活性剤とを含有する64.39gの水中に乳化させた。この粗いエマルジョンをロータ/ステータミキサIKA Ultra−Turax T 25 Basicによって13500rpmで90秒間乳化させた。5%のTEOSを攪拌しながらエマルジョンに添加し、マイクロカプセルの粗いエマルジョンを生成した。平均体積粒径(Dv0.5)が7.6ミクロン(μm)であるマイクロカプセルが懸濁液中に作製され、このシェルの厚みは47nmであった。
【0123】
懸濁液を、幾らかのJaguar C13Sと一緒に55gの重質液体洗剤(HDL1)に添加し、プロペラを用いて300rpmで30分間混合して、0.75%(w/w)のカプセル封入されたd−ダマスコン濃度を得た。この組成物を24時間静置した。その後、この配合物を、1.5%の遊離した芳香物質のみを含有する液体洗剤と比較した。
【0124】
【表16】

【0125】
実施例14及び実施例15を比較することによって、大きいマイクロカプセルサイズ(21.6マイクロメートル)が、δダマスコンを含有するマイクロカプセルで処理されたタオルを選ぶ可能性のあるパネリストの人数を減らすことに結び付くことが示された。言い換えると、これらの結果から、好ましいマイクロカプセルサイズはより小さいサイズの範囲、好ましくは20マイクロメートル未満のものであることが確認された。
【0126】
実施例16(ゾル・ゲルプロセス)
35.01gのd−ダマスコン(BLH)を5grのTEOSと混合し、0.20gのパレス−3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤と、0.11gのセチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)カチオン性界面活性剤とを含有する64.39gの水中に乳化させた。この粗いエマルジョンをロータ/ステータミキサIKA Ultra−Turax T 25 Basicによって13500rpmで90秒間乳化させた。平均体積粒径(Dv0.5)が5.0ミクロン(μm)であるマイクロカプセルが懸濁液中に作製され、このシェルの厚みは31nmであった。
【0127】
懸濁液を、幾らかのJaguar C13Sと一緒に55gの重質液体洗剤(HDL1)に添加し、プロペラを用いて300rpmで30分間混合して、0.75%(w/w)のカプセル封入されたd−ダマスコン濃度を得た。この組成物を24時間静置した。その後、この配合物を、1.5%の遊離した芳香物質のみを含有する液体洗剤と比較した。
【0128】
【表17】

【0129】
この実施例から、活性成分をTEOSで直接乳化させるゾル・ゲルプロセスが、TEOSを組込む前に活性成分を乳化させるコア・シェルプロセスよりも芳しくない性能をもたらすことが示された。
【0130】
比較例 特許文献7のようなゾルゲルプロセス
116gのTEOSのうち、初めに16gをHCl 10gの0.01M水溶液に18分かけてゆっくりと添加し、残りを6分かけて添加した。この反応混合物を72分間攪拌して、透明な溶液を得た。この溶液を50℃の温度で蒸発させて、反応中に副生成物により生成されるエタノールを除去した。得られた溶液は、親油性のコア材料のための透明な粘性の前駆物質溶液であった。コア材料として20重量部のδダマスコンを、前駆物質溶液に溶解させた。別個の容器内の1重量部のトリトンX−100を約1000rpmの速度で攪拌し、水溶液と比較される上記で調製された20重量部のエマルジョン溶液を、ここに添加し、W/Oエマルジョンを生成した。反応混合物を10分間反応させて2時間放置した後に、底に沈殿する粒子を濾過し、幾らかのJaguar C13Sと一緒に重質液体洗剤(HDL1)に添加し、プロペラを用いて300rpmで30分間混合して、0.75%(w/w)のカプセル封入されたd−ダマスコン濃度を得た。凝集体が迅速に(rapid)HDL製剤の底に沈殿するため、この組成物は均質なものではなかった。
【0131】
この不安定な製剤は適切に試験することができない。
【0132】
このようなゾルゲルプロセスによって作製されるマイクロカプセルは、洗剤を含有する組成物と相溶性でなかった。それゆえ、正確な性能測定は不可能であった。
【0133】
不均質なブレンド及び結晶粒子のため、粒径分布は測定しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル封入された香料組成物を含む香料キャリア系であって、該香料組成物が、水性媒体中に香料化合物のエマルジョンを含有し、且つケイ素含有材料を含むシェル内にカプセル封入され、該シェルの平均直径サイズが30マイクロメートル未満である、カプセル封入された香料組成物を含む香料キャリア系。
【請求項2】
前記シェルの平均直径サイズが20マイクロメートル未満である、請求項1に記載の香料キャリア系。
【請求項3】
前記シェルの平均直径サイズが少なくとも0.5マイクロメートルである、請求項1又は2に記載の香料キャリア系。
【請求項4】
前記シェルの平均直径サイズが1マイクロメートル〜10マイクロメートルで構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の香料キャリア系。
【請求項5】
前記シェルの平均直径サイズが1.5マイクロメートル〜7マイクロメートルで構成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の香料キャリア系。
【請求項6】
前記シェルが、1つ又は複数のアルコキシシラン化合物の重合生成物、好ましくはテトラアルコキシシランの乳化重合生成物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の香料キャリア系。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の香料キャリア系を含有する、界面活性剤を含有する組成物。
【請求項8】
リンスオフ組成物である、請求項7に記載の界面活性剤組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤組成物が、布柔軟剤、洗濯用液体洗剤、濯ぎ用製品、乾燥機用布柔軟剤製品、しわ取り用製品、ヘアコンディショナ、シャンプー、セッケン、食器洗浄用製品及びシャワージェルから選択される、請求項7又は8に記載の界面活性剤組成物。
【請求項10】
前記界面活性剤組成物が、堆積助剤材料を含有し、好ましくは、第四級アンモニウム化合物、ポリビニルアミン、ポリアルキレンイミン、及びポリ第四級アンモニウム化合物の少なくとも1つから選択される、請求項7〜9のいずれか一項に記載の界面活性剤組成物。
【請求項11】
前記堆積助剤材料が、カチオン性グアーガム誘導体、好ましくはグアーヒドロキシプロピルトリアンモニウムハライドである、請求項10に記載の界面活性剤組成物。
【請求項12】
基材に香料を送達する方法であって、請求項7〜11のいずれか一項に記載の界面活性剤組成物によって該基材を処理し、該界面活性剤組成物を洗い流して該香料を次第に放出させる、基材に香料を送達する方法。

【公表番号】特表2011−517323(P2011−517323A)
【公表日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−548020(P2010−548020)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001349
【国際公開番号】WO2009/106318
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】