説明

界面活性剤化合物およびその使用

【課題】環境汚染のないエアロゾル製剤を提供する。
【解決手段】 粒子状の薬剤と、1種以上のフルオロカーボン噴射剤もしくは水素含有フルオロカーボン噴射剤と、一般式(I)[式中、Aは、n個の式Bの基で置換されている直鎖C1-16アルキルを表し;nは、1〜3の整数を表し;Bは、独立してC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-、C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-O-またはC1-4アルキルC0-6アルキレン-O-を表し;ここで、少なくとも1つの式Bの置換基は、少なくとも1個のフッ素原子を含み、それぞれのC1-4フルオロアルキル-部分は1個以上のフッ素原子を含むが連続する過フッ素化された炭素原子を3個以下しか含まない]の化合物またはその塩もしくは溶媒和物とを含むエアロゾル医薬製剤。また、本発明には、式(I)の化合物および式(I)の定義の範囲内にある特定の新規な化合物の使用も包含される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入による薬剤の投与に使用するための、新規な界面活性剤およびそのエアロゾル製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬の投与にエアロゾルを使用することは、数十年にわたって知られている。そうしたエアロゾルは一般に、薬剤と、1種以上のクロロフルオロカーボン噴射剤と、界面活性剤もしくは共溶媒(例えばエタノール)とを含む。最も一般的に使用されている医薬用のエアロゾル噴射剤は、噴射剤11(CCl3F)および/または噴射剤114(CF2ClCF2Cl)と噴射剤12(CCl2F2)である。しかし、これらの噴射剤は、現在では、成層圏オゾン層の分解を引き起こすと考えられており、したがって、いわゆる「オゾン層にやさしい」噴射剤を使用する医薬用のエアロゾル製剤を提供することが必要になってきた。
【0003】
通常のクロロフルオロカーボンと比較してオゾン層破壊作用を低く抑えると考えられている1つのクラスの噴射剤としては、フルオロカーボンおよび水素含有クロロフルオロカーボンが含まれ、そのような噴射剤系を使用する多くの医薬用エアロゾル製剤が、例えば欧州特許第0372777号、国際特許出願91/04011号、国際公開第91/11173号、国際公開第91/11495号および国際公開第91/14422号に開示されている。これらの特許出願は全て、医薬を投与するための加圧式エアロゾルの製造に関するものであり、新規なクラスの噴射剤の使用に付随する問題、特には調製した医薬製剤に付随する安定性の問題を克服しようとするものである。これらの特許出願は全て、オゾン層破壊の可能性をできるだけ抑えるために、アルコール、アルカン、ジメルチルエーテル、界面活性剤(フッ素化および非フッ素化界面活性剤、カルボン酸、ポリエトキシレートなどを含む)などの1種以上のアジュバントと、更に通常のクロロフルオロカーボン噴射剤とを少量添加することを提案している。
【0004】
MDIから患者へ送達される所定投与量のエアロゾル医薬は、製造元が要求する仕様に常に合致し、FDAや他の管理当局の要件を遵守することが必須である。すなわち、缶から供給される1回毎の投与量は、公差限度内で同じでなければならない。したがって、製剤は、定量噴射バルブ(metered valve)を作動させる時点で、投与される量の全体にわたって実質的に均一であることが重要である。また、懸濁液の濃度が、長期保存した場合に実質的に変化しないことも重要である。
【0005】
特に重要なことは、懸濁液のFPM(微粒子質量)が保存の際に有意に低下しないことである。何故ならば、FPMは、各投与量からの肺の治療部位に到達する薬剤の量の尺度だからである。
【0006】
懸濁製剤の場合、微粒の凝集を調節して懸濁液の分散性に影響を与えるために、フッ素化界面活性剤を用いて、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(P134a)または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパン(P227)などのフルオロカーボン噴射剤中で微細化した薬剤懸濁液を安定化することが可能であることが当技術分野で十分に立証されている。例えば、米国特許第4352789号、米国特許第5126123号、米国特許第5376359号、米国特許出願第09/580008号、国際公開第91/11173号、国際公開第91/14422号、国際公開第92/00062号および国際公開第96/09816号を参照されたい。
【0007】
国際公開第92/00061号には、フルオロカーボン噴射剤と共に使用するための非フッ素化界面活性剤が開示されている。12,12,13,13,13-ペンタフルオロトリデカン酸(CF3CF2(CH2)10COOH)などのパーフルオロアルキル末端セグメントを有する特定の長鎖アルカン酸は、J. Org. Chem. (1962) 27, 4491-4498 (Braceら)に開示されている。これらの化合物は、水系では界面活性剤特性を有すると述べられているが、加圧式エアロゾル製剤に使用した場合の安定性については全く言及されていない。
【0008】
12,12,12-トリフルオロドデカン酸(CF3(CH2)10COOH)などのトリフルオロメチル化有機分子の製造方法は、J. Org. Chem. (1984) 49, 2826-2827 (Muller), J. Fluorine Chem. (1999) 93, 107-115 (Graupeら)、およびフランス国特許出願第2,613,357号(Atochem)に記載されている。
【0009】
18,18,18-トリフルオロオクタデカン酸などのトリフルオロメチル末端を有する特定の長鎖アルカン酸、およびLangmuir-Blodgettフィルムの製造におけるそれらの使用は、J. Am. Chem. Soc. (1999) 121, 10554-10562 (Guら)に記載されている。
【0010】
特定のフッ素化アルキルおよびアルコキシ酸化合物は、次の文献に開示されている。
【0011】
J. Mol. Struct. 485-486, 373-384, 1999 Publisher Elsevier Science;
国際出願第9821177号;
欧州特許出願第264080号;
J. Pharm. Sci., 75 (10), 987-91, 1986;
Mitsui Petrochemical Industries Ltd, 日本国:日本国特許第58196247号;
欧州特許出願第021739号;
Daikin Kogyo Co. Ltd, 日本国:日本国特許第57018730号;
J. Phys. Chem, 86 (II), 1982, 2047-9;
J. Fluorine Chem. 12 (6), 471-9, 1978;
ACS Symp. Ser., 688 (Cellulose Derivatives) 315-331, 1998. Publisher American Chemical Society;
UKR. Khim. 2h (Russian編). 44(10), 1057-9, 1978;
J. Chem, Soc., C (22), 2332-2, 1967;
米国特許第6271422号;
Ind. Eng. Chem., Prod. Res. Develop, II (I), 88-91, 1972;
米国特許第3997072号。
【発明の開示】
【0012】
驚くべきことに、本発明者らは、ここに、良好な界面活性剤特性を有する特定のグループの新規な低フッ素含量化合物が新規なエアロゾル医薬製剤の製造に使用することができ、そして、薬物の沈降を低減することによるエアロゾル製剤の安定化の改善、送達される投薬量の再現性の向上という点で有利であることを見出した。更に、本発明の化合物は、フルオロカーボン噴射剤または水素含有クロロフルオロカーボン噴射剤またはそれらの混合物に対して十分に可溶性であり、エタノールなどの極性溶剤を使用しなくても済む。
【0013】
したがって、1つの態様において、本発明は、粒子状の薬剤と、1種以上のフルオロカーボン噴射剤もしくは水素含有クロロフルオロカーボン噴射剤と、一般式(I):
【0014】
【化1】

【0015】
[式中、
Aは、n個の式Bの基で置換されている直鎖C1-16アルキレンを表し;
nは、1〜3の整数を表し;
Bは、独立して、C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-、C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-O-またはC1-4アルキルC0-6アルキレン-O-を表し;
ここで、少なくとも1つの式Bの置換基は、少なくとも1個のフッ素原子を含み、それぞれのC1-4フルオロアルキル部分は、1種以上のフッ素原子を含むが、連続する過フッ素化された炭素原子を3個以下しか含まない]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物とを含むエアロゾル医薬製剤を提供する。
【0016】
1つの実施形態では、好ましくは、Aは、n個の式Bの基で置換されているC1-12アルキレン、特にC3-12アルキレン、特にはC6-10アルキレン、最も特にはC9もしくはC10アルキレンを表す。
【0017】
このn個のB基は、直鎖C1-16アルキレン部に沿ったいずれの場所に位置していてもよい。B基が末端のCH2-に位置していない場合、この炭素は3個の水素を有すると理解される。好ましくは、B基は、C1-16アルキレン部の末端の炭素に位置する。好ましくは、末端の炭素に位置するB基は、C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-およびC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-O-から選択される。B内のC1-4フルオロアルキル部分およびC1-4アルキル部分は、分岐状でも直鎖状でもよい。B内のC0-6アルキレン部分は、分岐状でも直鎖状でもよいが、好ましくは直鎖状である。
【0018】
好ましくは、それぞれのC1-4フルオロアルキル-部分は、少なくとも2個のフッ素原子、特には3〜5個のフッ素原子を含む。
【0019】
更に好ましくは、基BのC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-は、CF2HC0-9アルキレン-、CF3C0-9アルキレン-、CF3CF2C0-8アルキレン、(CF3)2CHC0-7アルキレン-または(CF3)3CC0-6アルキレン-、特にはCF3-またはCF3CF2-を表す。
【0020】
また、更に好ましくは、基BのC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-O-は、CF3C0-9アルキレン-O-、CF3CF2C0-8アルキレン-O-、(CF3)3CC0-6アルキレン-O-、CF2HC0-9アルキレン-O-または(CF3)2CHC0-7アルキレン-O-を表す。
【0021】
好ましくは、基B内のC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-、C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-O-またはC1-4アルキルC0-6アルキレン-O-のC0-6アルキレン部分は、C0-2アルキレン、特にはC0-1アルキレンを表す。
【0022】
更に好ましくは、Bは、C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-、特にC1-4フルオロアルキルC0-2アルキレン、更に特にC1-4フルオロアルキルC0-1アルキレン、特にはC1-4フルオロアルキルを表す。
【0023】
本発明は、式中でnが2または3を表す、分岐状の式(I)の化合物を包含する。好ましくは、nは、1または2、特には1を表す。
【0024】
特に、一般式(Ia):
【0025】
【化2】

【0026】
[式中、
mは、1〜16の範囲の整数を表し;
R1aは、C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-またはC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-O-を表し、
ここで、それぞれのC1-4フルオロアルキル部分は、1個以上のフッ素原子を含むが、連続する過フッ素化された炭素原子を3個以下しか含まない]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を含む、エアロゾル医薬製剤が提供される。
【0027】
本発明の1つの態様において、好ましくは、R1aは、C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン、特にはC1-4フルオロアルキル(例えば、少なくとも3個のフッ素原子、例えば3〜5個のフッ素原子を含むもの)、特にはCF3-またはCF3CF2-を表す。
【0028】
好ましくは、この態様において、mは、3〜12の範囲の整数、特には6〜10または8〜12、特には9または10を表す。
【0029】
更に特には、本発明には、式(Ib):
【0030】
【化3】

【0031】
[式中、
n1は、1〜9の整数を表し;
n2は、1〜8の整数を表し;
R2は、C1-2フルオロアルキルを表し、但し、この部分は1個以上のフッ素原子を含む]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を含む、エアロゾル医薬製剤が包含される。
【0032】
好ましくは、R2は3〜5個のフッ素原子を含み、特にCF3またはCF3CF2を表す。
【0033】
好ましくは、n1は1〜6、特に1〜5の範囲の整数、特には1を表す。
【0034】
好ましくは、n2は、1〜6、特に3〜6の範囲の整数、特には3または6を表す。
【0035】
また、定量噴霧式吸入器における使用に適合させたエアロゾル医薬懸濁製剤における懸濁化剤としての、式(I)の化合物の使用も提供される。
【0036】
特定の式(I)の化合物は新規である。したがって、本発明の更に別の態様として、12,12,13,13,13-ペンタフルオロトリデカン酸(CF3CF2(CH2)10COOH)または12,12,12-トリフルオロドデカン酸(CF3(CH2)10COOH)ではない、式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物が提供される。
【0037】
好ましくは、式(I)の化合物において、C1-4フルオロアルキル部分は、3〜5個のフッ素原子を含み、特には、ここで、フッ素原子は隣接する炭素原子に位置し、特にはCF3-またはCF3CF2-である。
【0038】
好ましくは、これらの化合物について、nは1を表す。
【0039】
好ましくは、Bは、部分AのC1-16アルキレン部の末端の炭素に位置する。
【0040】
一般式(Ia′):
【0041】
【化4】

【0042】
[式中、
mは、1〜16の整数を表し;
R1a’は、C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-またはC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-O-を表し、ここで、それぞれのC1-4フルオロアルキル部分は、少なくとも3個のフッ素原子を含むが、連続する過フッ素化された炭素原子を3個以下しか含まず、但し、
(i)R1a’がC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレンを表す場合、式(Ia′)の化合物は、次のもの以外のものを表し:
CF3CF2(CH2)10COOH;
CF3(CH2)qCOOH;
F2CHCF2CF2CH2COOH;
CF3CHFCF2(CH2)rCOOH;
CF3CH(CH3)CH2COOH
CF3CH(CH3)(CH2)3COOH;
CF3CH(CH2CH2)CH2COOH;または
CF3CH2CH(CH3)CH2COOH
[上記の式において、qは10または16の整数を表し;rは3〜5または11を表す];
(ii)R1a’がC1-4 フルオロアルキルC0-6アルキレン-O-を表す場合、式(Ia′)の化合物は、次のもの以外のものを表す:
CF3CH2O(CH2)yCOOH;
CF3(CH2)2O(CH2)2COOH
F2CH(CF2)3CH2O(CH2)2COOH;
F2CH(CF2)3CH2OCH2COOH;
CF3CH(CH3)O(CH2)2COOH
(CF3)2CHOCH2COOH;
CF3CH2CH2OCH2COOH;
CF3OCH2COOH;
F2CHCF2CH2OCH2COOH;または
CF3C(F)HCF2CH2OCH2CH2COOH
[上記の式において、yは1、10または15の整数を表す]]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物である、好ましい一連の本発明による新規な化合物が提供される。
【0043】
好ましくは、mは、3〜12、特には6〜10の範囲の整数、特には9または10を表す。等しく好ましくは、式中、mが、C7-9アルキレンまたはC11-15アルキレン、更に好ましくはC8、C9、C11またはC12アルキレン、特にはC9またはC11アルキレンを表す。
【0044】
好ましくは、R1a’は、C1-4フルオロアルキル-またはC1-4フルオロアルキル-O-を表す。
【0045】
更に好ましくは、 R1a’は、CF2H-C0-2アルキレン-、CF3C0-2アルキレン-、CF3CF2C0-2アルキレン-、(CF3)2CHC0-1アルキレン-、(CF3)3C-、CF2HC0-2アルキレン-O-、(CF3)3C-O-、(CF3)2CHC0-1アルキレン-O-、CF3C0-2アルキレン-O-またはCF3CF2C0-2アルキレン-O-を表す。
【0046】
特に好ましいR1a’の基は、CF2H、CF3、CF3CF2、CF3CF2CH2、(CF3)2CHおよび(CF3)3Cから選択され、特にはCF3およびCF3CF2から選択される。
【0047】
上記の一連の式(Ia′)の化合物の第1の好ましいサブセットにおいて、一般式(Iaa):
【0048】
【化5】

【0049】
[式中、
mは、1〜16の整数を表し;
R1aaは、CF3またはCF3CF2を表す]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物が提供される。
【0050】
この第1のシリーズにおいて、好ましくは、mは、7〜9または11〜15の範囲の整数、特には8、9、11または12、特には9または11を表す。
【0051】
上記の一連の式(Ia′)の化合物の第2の好ましいサブセットにおいて、式(Ib′):
【0052】
【化6】

【0053】
[式中、
n1は、1〜9の整数を表し;
n2は、1〜8の整数を表し;
R2’は、C1-2フルオロアルキルを表し、但し、この部分は1個以上のフッ素原子を含む]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物が提供される。
【0054】
好ましくは、n1は、1〜6、特には1〜5、特には1を表す。
【0055】
好ましくは、n2は、1〜6、特に3〜6、特には3、更に特には6を表す。
【0056】
好ましくは、R2’は、-CF3または-CF2CF3、更に好ましくは-CF2CF3を表す。
【0057】
一般に、式(Ib′)の化合物においてR2’がCF3を表す場合、特に関心が持たれる化合物は、式中でn1が3〜9の範囲の整数を表し、n2が3〜8の範囲の整数を表すものである。
【0058】
一般に、式(Ib′)の化合物においてR2’がCF3CF2を表す場合、特に関心が持たれる化合物は、式中でn1が1〜9の範囲の整数を表し、n2が1〜8の範囲の整数を表すものである。
【0059】
好適な塩としては、ナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属塩、ならびにtert-ブチルアンモニウムなどの第三級アルキルアンモニウム塩が挙げられる。
【0060】
好ましくは、式(I)、(I′)、(Ia)、(Ia′)、(Iaa)、(Ib)および(Ib′)の化合物は、遊離の酸として存在する。
【0061】
式(I)の化合物は、1つ以上のキラル中心を含むことができる。式(I)の化合物は、式(I)の化合物の全ての光学異性体、およびそれらのラセミ混合物を含むそれらの混合物を包含すると理解されよう。
【0062】
本発明の製剤の調製に用いられる式(I)の化合物は、薬剤の量に対して低濃度でエアロゾル懸濁製剤の有効な安定化剤となる。したがって、用いられる式(I)の化合物の量は、望ましくは薬剤に対して0.05%〜20% w/w、特には0.5%〜10% w/w、更に特には0.5%〜5% w/wの範囲である。
【0063】
粒子状(例えば微細化されている)の薬剤の粒径は、エアロゾル製剤の投与の際に実質的に全ての医薬が肺または鼻腔に吸入されるものとすべきであり、したがって、100ミクロン未満、望ましくは20ミクロン未満であり、好ましくは1〜10ミクロン(例えば1〜5ミクロン)の範囲の空気力学的質量中央径(mass median aerodynamic diameter)(MMAD)を有する。
【0064】
最終的なエアロゾル製剤は、望ましくは、製剤の総重量に対して0.005〜10% w/w、好ましくは0.005〜5% w/w、特には0.01〜1.0% w/wの薬剤を含む。
【0065】
本発明によるエアロゾル製剤において投与可能な薬剤としては、吸入療法に有用なあらゆる薬剤が含まれ、選択した噴射剤に対して実質的に完全に不溶性の形態とすることができる。したがって、適切な薬剤は、例えば、コデイン、ジヒドロモルヒネ、エルゴタミン、フェンタニルもしくはモルヒネなどの鎮痛剤;ジルチアゼムなどの狭心症治療製剤;クロモグリク酸塩(例えばナトリウム塩として)、ケトチフェンもしくはネドクロミル(例えばナトリウム塩として)などの抗アレルギー剤;セファロスポリン、ペニシリン、ストレプトマイシン、スルホンアミド、テトラサイクリンおよびペンタミジンなどの抗感染剤;メタピリレンなどの抗ヒスタミン剤;ベクロメタゾン(例えばジプロピオン酸エステルとして)、フルチカゾン(例えばプロピオン酸エステルとして)、フルニソリド、ブデソニド、ロフレポニド(rofleponide)、モメタゾンフロエート、シクレソニド、トリアムシノロンアセトニドまたは6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-17α-プロピオニルオキシ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-(2-オキソ-テトラヒドロ-フラン-3-イル)エステルなどの抗炎症剤;ノスカピンなどの鎮咳剤;アルブテロール(例えば遊離塩基もしくは硫酸塩として)、サルメテロール(例えばキシナホ酸塩として)、エフェドリン、アドレナリン、フェノテロール(例えば臭化水素酸塩として)、ホルモテロール(例えばフマル酸塩として)、イソプレナリン、メタプロテレノール、フェニルエフリン、フェニルプロパノールアミン、ピルブテロール(例えば酢酸塩として)、レプロテロール(例えば塩酸塩として)、リミテロール、テルブタリン(例えば硫酸塩として)、イソエタリン、ツロブテロール、4-ヒドロキシ-7-[2-[[2-[[3-(2-フェニルエトキシ)プロピル]スルホニル]エチル]アミノ]エチル-2(3H)-ベンゾチア-ゾロンなどの気管支拡張剤;アミロライドなどの利尿剤;イプラトロピウム(例えば臭化物として)、チオトロピウム、アトロピンもしくはオキシトロピウムなどの抗コリン剤;コルチゾン、ヒドロコルチゾンもしくはプレドニゾロンなどのホルモン;アミノフィリン、コリンテオフィリネート、リシンテオフィリネートもしくはテオフィリンなどのキサンチン;インスリンもしくはグルカゴンなどの治療用タンパク質もしくはペプチドから選択できる。それが適当である場合、薬剤の活性および/もしくは安定性を最適にするため、かつ/または噴射剤中での薬剤の溶解性をできるだけ低くするために、薬剤は塩(例えば、アルカリ金属塩もしくはアミン塩として、または酸付加塩として)、またはエステル(例えば低級アルキルエステル)、または溶媒和物(例えば水和物)の形態で使用できることは当業者には明らかであろう。更に、それが適当である場合、薬剤は、例えばR-アルブテロール、R-サルメテロールまたはRR-ホルモテロールなどの純粋な異性体の形態で使用できることも、当業者には明らかであろう。
【0066】
本発明によるエアロゾル製剤を用いて投与するための特に好ましい薬剤としては、吸入療法による喘息、COPDまたは鼻炎などの呼吸系障害の治療に使用される抗アレルギー剤、気管支拡張剤および抗炎症ステロイドが含まれ、例えば、クロモグリク酸塩(例えばナトリウム塩として)、アルブテロール(例えば遊離塩基または硫酸塩として)、サルメテロール(例えばキシナホ酸塩として)、ホルモテロール(例えばフマル酸塩として)、テルブタリン(例えば硫酸塩として)、レプロテロール(例えば塩酸塩として)、ベクロメタゾンエステル(例えばジプロピオン酸エステルとして)、フルチカゾンエステル(例えばプロピオン酸エステルとして)が挙げられる。サルメテロール(特にサルメテロールキシナホエート)、アルブテロールスルフェート、フルチカゾンプロピオネート、ベクロメタゾンジプロピオネート、ならびにそれらの生理学的に許容される塩および溶媒和物が特に好ましい。
【0067】
当業者であれば、本発明によるエアロゾル製剤は、所望により、2種以上の活性成分の組合せを含むことができることが理解されるであろう。したがって、好適な組合せとしては、抗炎症ステロイド(例えばベクロメタゾンエステル)と組み合わせた気管支拡張剤(例えば、アルブテロールまたはイソプレナリン);抗アレルギー剤(例えばクロモグリク酸塩)と組み合わせた気管支拡張剤が挙げられる。また、代表的な組合せとしては、エフェドリンとテオフィリン;フェノテロールとイプラトロピウム(例えば臭化物として);イソエタリンとフェニルエフリン;イプラトリピウム(例えば臭化物として)とサルメテロール(特にキシナホ酸塩として); アルブテロール(例えば遊離塩基または硫酸塩として)とベクロメタゾンエステル(例えばジプロピオン酸エステルとして);ブデソニドとホルモテロール(例えばフマル酸塩として)(これは特に関心が持たれる);ならびにサルメテロール(特にキシナホ酸塩として)とフルチカゾンエステル(例えばプロピオン酸エステルとして)(これもまた特に関心が持たれる)が挙げられる。
【0068】
本発明において使用するための噴射剤は、それらを噴射剤として有効なものにするのに十分な蒸気圧を有するあらゆるフルオロカーボンまたは水素含有クロロフルオロカーボンまたはそれらの混合物とすることができる。好ましくは、この噴射剤は、薬剤に対して非溶媒である。好適な噴射剤としては、例えば、CH2ClF、CClF2CHClF、CF3CHClF、CHF2CClF2、CHClFCHF2、CF3CH2ClおよびCClF2CH3などのC1-4水素含有クロロフルオロカーボン;CHF2CHF2、CF3CH2F、CHF2CH3およびCF3CHFCF3などのC1-4水素含有フルオロカーボン;ならびにCF3CF3 およびCF3CF2CF3などのパーフルオロカーボンが挙げられる。
【0069】
フルオロカーボンまたは水素含有クロロフルオロカーボンの混合物が用いられる場合、それらは、上記で特定した化合物の混合物とすることができ、好ましくは、CHClF2、CH2F2およびCF3CH3などの他のフルオロカーボンまたは水素含有クロロフルオロカーボンとの二成分混合物とすることができる。噴射剤として特に好ましいものは、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(CF3CH2F)および1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパン(CF3CHFCF3)などのC1-4水素含有フルオロカーボン、またはそれらの混合物である。1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134a)または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパン(HFA227)などの単一のフルオロカーボンまたは水素含有クロロフルオロカーボン、特には1,1,1,2-テトラフルオロエタンを噴射剤として使用することが好ましい。
【0070】
本発明の製剤は、モントリオール議定書に含まれる、成層圏オゾン層の破壊を引き起こす化合物を含まないことが望ましい。特に、本製剤は、CCl3F、CCl2F2およびCF3CCl3などのクロロフルオロカーボンを実質的に含まないことが望ましい。
【0071】
所望により、噴射剤は、更に、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタンおよびイソペンタンなどの飽和炭化水素、またはジメチルエーテルなどのジアルキルエーテルのような揮発性アジュバントを含むことができる。一般に、噴射剤の50% w/w以下、例えば1〜30% w/wが揮発性炭化水素から構成され得る。しかし、実質的に揮発性アジュバントを含まない製剤が好ましい。特定の場合には、適当量の水を含むことが望ましいこともあり、これは噴射剤の誘電特性を変える上で有利となり得る。
【0072】
所望により本発明による製剤に加えることが可能な極性アジュバントとしては、例えば、エタノール、イソプロパノールおよびプロピレングリコールなどのC2-6脂肪族アルコールおよび多価アルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、エタノールが用いられる。一般に、極性アジュバントはほんの少量(例えば0.05〜3.0% w/w)しか必要とされず、5% w/w過剰な量を使用すると、不利にも、薬剤を溶解させてしまう傾向がある。製剤は、好ましくは、1% w/w未満(例えば約0.1% w/w)の極性アジュバントを含む。極性は、例えば、欧州特許出願第0327777号に記載されている方法により測定できる。
【0073】
しかし、式(I)の化合物はフルオロカーボン噴射剤または水素含有クロロフルオロカーボン噴射剤に対して十分に可溶性なので、極性アジュバントは使用しなくても済む。このことは有利である。何故ならば、極性アジュバント(特にエタノール)は、あらゆる患者群への使用には適さないからである。極性アジュバントを使用しなくても済む、式(I)の化合物を含む製剤が好ましい。
【0074】
1種以上の一般式(I)の化合物に加えて、本発明による製剤は、場合により、エアロゾル医薬製剤の分野で慣用に使用されている1種以上の更に別の成分を含むことができる。そのようなオプションの成分としては、限定するものではないが、味マスキング剤、糖、緩衝化剤、抗酸化剤、水および化学的安定化剤が挙げられる。
【0075】
本発明の特に好ましい実施形態は、本質的に、1種以上の粒子状の薬剤と、1種以上のフルオロカーボン噴射剤もしくは水素含有クロロフルオロカーボン噴射剤と、1種以上の式(I)、(Ia)もしくは(Ib)の化合物とからなるエアロゾル医薬製剤を提供する。
【0076】
本発明の更に別の実施形態は、定量噴霧式吸入器のような、上記で記載したエアロゾル製剤を収容する、噴射剤を液体として維持するのに必要な圧力に耐えることができる密閉式容器である。
【0077】
「定量噴霧式吸入器」またはMDIという用語は、缶、その缶を覆う固定キャップ(secured cap)、およびそのキャップに適合させた製剤定量噴射バルブを備えた器具を意味する。MDIシステムには、適切なチャネリング装置が備わっている。適切なチャネリング装置は、例えば、バルブアクチュエーター、および薬剤がそこを通って充填缶から定量噴射バルブを経て患者の鼻もしくは口へと送達される、マウスピースアクチュエーターのような円筒形もしくは円錐形の導管(passage)を備える。
【0078】
本発明の1つの態様として、式(I)の化合物の製造方法であって、
(A1)ハロゲン化誘導体を還元剤と反応させる;例えば式(Ia)[式中、R1aはC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-を表し、mは2〜16の整数を表す]の化合物の製造においては、式(IIa):
【0079】
【化7】

【0080】
[式中、カルボン酸基は保護されており、R1aはC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-を表し、Xはハロゲンを表し、tは0〜14の範囲の整数である]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物またはその誘導体を還元剤と反応させ、必要であれば、続いてそのカルボン酸を脱保護する;または
(A2)C=C二重結合を含む対応する化合物を還元する;例えば式(Ia)[式中、R1aはC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-を表し、mは2〜16の整数を表す]の化合物の製造においては、式(IIIa):
【0081】
【化8】

【0082】
[式中、カルボン酸基は保護されており、R1aは上記で定義されているものと同じであり、tは0〜14の範囲の整数である]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物またはその誘導体を還元剤と反応させ、必要であれば、続いてそのカルボン酸を脱保護する、あるいは、式(Ia)[式中、R1aはC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-を表し、mは3〜16の整数を表す]の化合物の製造においては、式(IVa):
【0083】
【化9】

【0084】
[式中、カルボン酸基は保護されており、R1aはプロセス(A1)で定義されているものと同じであり、sは0〜13の範囲の整数である]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物またはその誘導体を還元剤と反応させ、必要であれば、続いてそのカルボン酸を脱保護する;または
(A3)対応するアルコールをカルボン酸へと酸化する;例えば式(Ia)の化合物の製造においては、式(Va):
【0085】
【化10】

【0086】
[式中、R1aおよびmは、式(Ia)の化合物について上記で定義されているものと同じである]
の化合物を、対応するカルボン酸へと酸化する;または
(A4)対応する式(I)[式中、カルボン酸はマスキングされている]の化合物を遊離のカルボン酸へと変換する;例えば式(Ia)の化合物の製造においては、式(VIa):
【0087】
【化11】

【0088】
[式中、R1aおよびmは、式(Ia)の化合物について上記で定義されているものと同じであり、R2aは、シアノ、アセタールもしくは-C=CH2などのマスキングされた酸である部分を表す]
の化合物を、例えば加水分解、加水分解と酸化、または酸化的開裂により、対応するカルボン酸へと変換する;または
(A5)有機金属試薬により炭素−炭素結合を作製して式(I)の化合物を形成する;例えば式(Ia)[式中、R1aおよびmは、式(Ia)の化合物について上記で定義されているものと同じである]の化合物の製造においては、式(VIIa):
【0089】
【化12】

【0090】
[式中、R1aは上記で定義されているものと同じであり、m1は0〜16の範囲の整数を表し、Cuは銅を表し、Liはリチウムを表す]
の化合物を、式(VIIIa):
【0091】
【化13】

【0092】
[式中、カルボン酸は保護されており、m2は1〜16の整数を表し、L1は脱離基を表す]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物またはその誘導体と反応させ、必要であれば、続いてそのカルボン酸を脱保護する、但し、m1+m2は1〜16の範囲の整数を表す、あるいは、式(Ia)[式中、R1aおよびmは、式(Ia)の化合物について上記で定義されているものと同じである]の化合物の製造においては、式(IXa):
【0093】
【化14】

【0094】
[式中、R1aおよびmは、式(Ia)の化合物について上記で定義されているものと同じであり、Mgはマグネシウムを表し、Xはハロゲンを表す]
の化合物を二酸化炭素と反応させる;
(A6)式(Xa):
C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-OH (Xa)
の化合物を、脱離基を含む化合物と反応させることにより、式(I)[式中、Bは、式C1-4フルオロアルキル-C0-6アルキレン-O-の基を表す]の化合物を製造する;例えば式(Ia)[式中、R1aは、C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-O-を表し、mは1〜16の整数を表す]の化合物の製造においては、式(Xa)のアルコールまたは対応するそのアニオンを、式(VIIIa)[式中、カルボン酸は保護されている]の化合物またはその塩もしくは溶媒和物またはその誘導体と反応させる;または
(A7)式(Xb):
C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-L2 (Xb)
[式中、L2は脱離基を表す]
の化合物をアルコールと反応させることにより、式(I)[式中、Bは、式C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-O-の基を表す]の化合物を製造する;例えば式(Ia)[式中、R1aはC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-O-を表し、mは1〜16の整数を表す]の化合物の製造においては、式(Xb)の化合物を、式(XIa):
【0095】
【化15】

【0096】
[式中、カルボン酸は保護されており、mは式(Ia)の化合物について上記で定義されているものと同じである]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物またはその誘導体と反応させる;または
(A8)上記で定義されている式(Xa)の化合物を上記で定義されている式(VIIIa)の化合物と反応させることにより、式(I)[式中、Bは、式C1-4フルオロアルキル-C0-6アルキレン-O-の基を表す]の化合物を製造し;
(A9)保護されている式(I)の化合物を脱保護する
ことを含む上記方法も提供される。
【0097】
プロセス(A1)において、カルボン酸は、好ましくは、例えばC1-4アルキルエステルまたはベンジルエステルなどのエステルとして保護されている。保護基(例えばカルボン酸についてのもの)の例およびそれらの除去手段は、Theodora GreenおよびPeter G.M Wuts(John Wiley and Sons Inc 1999)による「Protecting Groups In Organic Synthesis」に見ることができる。好適なカルボン酸保護基としては、限定するものではないが、カルボン酸エステル、例えばエチルエステル、アリールエステル(例えばベンジルエステル)が挙げられる。
【0098】
保護基は、酸または塩基を触媒とする加水分解または還元、例えば接触水素化により除去できる。カルボン酸がベンジルエステルとして保護されている場合、その保護基は、例えば接触水素化により除去できる。カルボン酸がC1-4アルキルエステルとして保護されている場合、その保護基は、例えば塩基加水分解により除去できる。
【0099】
プロセス(A1)において、「還元剤」という用語は、当業者により十分理解される用語であり、水素化ホウ素化合物やアルカリ金属水素化ホウ素化合物などの水素化物供給物質を挙げることができるが、接触水素化における水素も含まれ、その場合、パラジウム担持炭素などの適切な触媒が使用できる。
【0100】
他の適切な水素化物供給物質としては、酢酸などの溶媒中のトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素テトラブチルアンモニウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、ポリマー結合水素化ホウ素化合物または水素化ホウ素ナトリウム(ここで、トリアセトキシ水素化ホウ素はin situで形成される)、ジボラン、または錯体金属水素化物が挙げられる。
【0101】
一般に、反応は、例えばテトラヒドロフラン(THF)またはジクロロメタン(DCM)などの不活性溶媒中で、例えば−10〜50℃(例えば0℃)などの非極限条件下で、窒素などの不活性雰囲気下にて行われる。J Fluorine Chem(1999)93, 107-115(Graupeら)またはJ Org. Chem.(1962)27, 4491-4498(Braceら)に記載されているように、Xがヨウ素を表す場合、Znが還元剤として使用できる。しかし、後者の方法を用いる場合、式(I)の化合物の完全な変換を確実にするために、接触水素化が必要な場合がある。何故ならば、式(IIIa)および/または(IVa)の化合物が存在する可能性があるからである。
【0102】
接触水素化は、プロセス(A1)の場合に好ましい。
【0103】
プロセス(A1)で使用するために上記で記載されているものと同様の接触水素化条件が、プロセス(A2)における使用に適する。
【0104】
プロセス(A3)において、強い酸化剤を用いて第一級アルコールを対応するカルボン酸へと酸化する方法は、当業者には周知である。好適な試薬としては、クロム酸、酸化クロム(VI)、過マンガン酸塩(例えば過マンガン酸カリウム)、および硝酸が挙げられる。プロセス(A2)での使用には、過マンガン酸塩が好ましく、特には過マンガン酸カリウムである。
【0105】
この酸化は通常、THFや水などの不活性溶媒中で、または溶媒として試薬のうちの1つを用いて、0〜100℃(例えば75℃)などの非極限条件下で、窒素などの不活性雰囲気中にて行われる。
【0106】
プロセス(A4)では、マスキングされたカルボン酸基は、通常は、他の官能基が分子に導入された後の合成の後の段階で遊離カルボン酸へと容易に変換可能な部分である。
【0107】
対応する遊離カルボン酸を形成するためのシアノ基の加水分解は、塩酸水溶液、硝酸水溶液または硫酸水溶液などの酸水溶液を溶媒として用いて行うことができ、その場合、酸は溶媒として作用する。塩酸水溶液と酢酸との酸混合物が使用でき、その場合、酢酸は溶媒である。このタイプの反応は、-10〜50℃(例えば室温)などの非極限条件下で行うことができる。カルボン酸がアセタールとしてマスキングされている場合、通常の条件下での加水分解と同時に、またはその後で、慣用の方法による酸化を行うことができる。
【0108】
あるいはまた、カルボン酸基が二重結合としてマスキングされている場合、それは、水などの溶媒中で非極限条件下にて、過マンガン酸カリウムまたは三酸化クロムなどの酸過マンガン酸塩または酸二クロム酸塩による酸化的開裂により遊離カルボン酸へと変換できる。過マンガン酸カリウムは、HIO4またはNaIO4などの試薬と共に使用できる(Advanced Organic Chemistry Reactions Mechanisms and Structures 第4版, Jerry March 1181頁)。これらの反応において、遊離カルボン酸の炭素鎖長は、開裂されていない二重結合を含む化合物の鎖長よりも少なくとも炭素1個分だけ短い。したがって、適当な出発物質を選択する際には、このことを考慮に入れることが重要である。
【0109】
プロセス(A5)のように有機金属試薬(organo-metallo reagents)を用いるプロセスは、通常、THFなどの不活性で実質的に無水の溶媒中で、窒素などの不活性雰囲気中にて、-10〜50℃(例えば0℃)などの非極限温度で行われる。好ましくは、カルボン酸基は、反応の間、例えばカルボン酸エステルとして保護される。
【0110】
L1についての好適な脱離基としては、例えば、クロロ、ブロモおよびヨードなどのハロゲン、-Oトリフリル、-Oトシルおよび-Oメシルが挙げられる。
【0111】
プロセス(A6)は、通常、THFまたはDMFなどの不活性溶媒中で、非求核性もしくは立体的に込みあった塩基(例えばHunigの塩基または水素化物)などの塩基の存在下で(アルコキシドを試薬として用いて)、-10〜50℃(例えば室温)などの非極限温度にて行われる。試薬が、例えばナトリウムアルコキシドなどのアルコキシドである場合、対応するアルコールを溶媒として用いることができる。二重結合がアルキレン鎖に沿ってどの場所に位置していても、この反応を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
【0112】
好ましくは、式(VIIIa)の化合物中のカルボン酸部分は、プロセス(A5)または(A6)において保護される。好適な保護基としては、プロセス(A1)について上記で記載されているものが挙げられる。
【0113】
プロセス(A7)は、求核的置換に適する条件下で行われ、これは当業者には周知である。
【0114】
プロセス(A8)は、プロセス(A6)について上記で記載されているものと同様の条件下で行うことができる。
【0115】
プロセス(A9)による保護基およびそれらを除去するための手段の例は、上記のプロセス(A1)に述べてある。
【0116】
L2についての好適な脱離基としては、L1について上記で記載されているものが挙げられる。
【0117】
式(IIa)[式中、R1aはC1-4フルオロアルキルC1-6アルキレン-を表し、tは0〜14の整数を表す]の化合物の製造方法は、式(XIIa):
R1a−X (XIIa)
[式中、R1aはC1-4フルオロアルキレンC0-6アルキレン-を表し、Xはハロゲンを表す]の化合物を、式(XIIIa):
【0118】
【化16】

【0119】
[式中、カルボン酸は保護されており、tは0〜14の範囲の整数を表す]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物またはその誘導体と反応させることを含む。
【0120】
式(IIa)の化合物を製造するための上記で記載した方法は、フリーラジカル条件下、例えば過酸化物(過酸化ベンジルなど)または2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)の存在下で、0〜100℃(例えば70℃)などの非極限温度にて行うことができる。アルキレン試薬は、溶媒として作用する。好適な反応条件の更なる詳細は、J Org. Chem.(1962)27, 4491-4498(Braceら)を参照して得ることができ、この文献では、式(XIIa)の化合物としてトリフルオロヨードメタンを使用することが説明されている。また、式(IIa)[式中、Xはハロゲンを表す]の化合物は、対応する式(IIIa)の化合物から、例えばハロゲン化水素酸で処理することによっても製造できる。
【0121】
式(IIIa)の化合物は、例えば、プロセス(A1)について上記で記載した酢酸亜鉛法を用いて、またはアルコール溶媒中のKOHを用いて、式(IIa)の化合物からハロゲンXを脱離することにより製造できる。あるいはまた、二重結合は、Wittig反応または当業者に周知の方法を用いたアルコールの脱水を用いて必要とする二重結合を形成することによって形成できる。アルコールは、例えば濃酸を用いて脱水できる。
【0122】
同様の方法を用いて、式(IVa)の化合物を製造できる。
【0123】
式(Va)の化合物のアルコール部分は、アルケンから、例えばジボランの存在下などでヒドロホウ素化し、続いて過酸化水素および水酸化物で処理することにより製造できる。
【0124】
あるいはまた、式(Va)の化合物は、上記で記載したものと同様の方法により、式(IIa)、(IIIa)または(IVa)の化合物と同様の化合物を還元することにより製造できるが、ここで、その分子は、カルボン酸部分ではなく、保護またはマスキングされたアルコールを含む。
【0125】
マスキングされたアルコールは、合成の後の段階でアルコールへと容易に変換できる基であり、例えばエーテルが挙げられる。
【0126】
式(VIa)[式中、カルボン酸は、シアノ基としてマスキングされている]の化合物は、式(XIVa):
【0127】
【化17】

【0128】
[式中、R1aは上記で定義されているものと同じであり、mは1〜16を表し、L3は脱離基を表す]
の化合物を、シアン化物求核剤(例えばシアン化ナトリウムから作製されるもの)と反応させることにより製造できる。
【0129】
そのような反応の好適な条件は、当業者であれば十分に判っている。カルボン酸がアルケンとしてマスキングされている場合、二重結合は、例えば上記で定義されている式(Va)の化合物の脱水により製造できる。アセタールは、酸触媒の存在下で、対応するアルデヒドをアルコールと反応させることにより製造できる。
【0130】
他の式(VIa)の化合物は、公知の方法により製造できる。
【0131】
式(VIIa)の化合物は、エーテルなどの不活性で実質的に無水の溶媒中で、-10〜30℃(例えば0℃)などの非極限温度にて、2モル等量の式(IXb):
【0132】
【化18】

【0133】
[式中、R1aは上記で定義されているものと同じであり、m1は0〜16の範囲の整数を表し、Liはリチウム金属を表す]
の化合物をハロゲン化銅(I)と反応させることにより製造できる。
【0134】
式(VIIIa)の化合物は、対応する式(XIa)の化合物から、例えば、当業者に周知の条件下で該アルコールを臭化水素酸または塩化チオニルまたはパラ-トルエンスルホン酸などのハロゲン化剤と反応させることにより、該アルコールを好適な脱離基へ変換することにより製造できる。そのアルコールを好適な脱離基へと変換するためには、反応の間にカルボン酸を保護することが必要な場合もある。
【0135】
式(IXa)の化合物は、THFなどの不活性で実質的に無水の溶媒中で、-10〜30℃(例えば0℃)などの非極限温度にて、式(XIVa)[式中、L3はクロロ、ブロモまたはヨードを表す]の化合物をマグネシウム金属と反応させることにより製造できる。
【0136】
式(IXb)の化合物は、式(IXa)の化合物の製造について上記で記載したものと同様の方法により、式(XIVa)の化合物から、リチウム金属を用いて製造できる。
【0137】
式(XIIIa)の化合物は、当業者に周知の条件下で、アルコールを脱水して末端の二重結合を形成することにより、あるいはWittig反応を用いて製造できる。
【0138】
式(XIVa)の化合物は、式(Va)の化合物から、例えば当業者に周知の条件下で該アルコールを臭化水素酸または塩化チオニルまたはパラ-トルエンスルホン酸などのハロゲン化剤と反応させることにより、該アルコールを好適な脱離基へと変換することによって製造できる。
【0139】
式(Xa)、(Xb)、(XIa)および(XIIa)の化合物は、公知であるか、あるいは公知の方法により製造することができる。
【0140】
他の式(I)の化合物およびそれらの中間体は、上記で記載したものと同様の方法により、またはそれ自体公知である慣用の方法により製造できる。
【0141】
特定の中間体は新規であり、本発明の1つの態様を構成している。
【0142】
更に、1種以上の式(I)の化合物を含む製剤の調製方法は、本発明の1つの態様を構成している。
【0143】
本発明の製剤は、適当な容器の中で、例えば超音波処理または高剪断混合装置により、選択した噴射剤中に薬剤と式(I)の化合物を分散させることにより調製できる。この方法は、望ましくは、湿度が制御された条件下で行われる。
【0144】
本発明によるエアロゾル製剤の化学的および物理的安定性ならびに薬学的な許容性は、当業者に周知の方法により測定できる。したがって、例えば、成分の化学的安定性は、例えばその製品を長期間保存した後で、HPLCアッセイにより測定できる。物理的安定性のデータは、他の慣用の分析法から、例えば漏れ試験、バルブ送達アッセイ(valve delivery assay)(平均ショット重量/操作)、投与量再現性アッセイ(活性成分/操作)および噴霧分散分析により得ることができる。
【0145】
本発明によるエアロゾル製剤の懸濁液安定性は、慣用の方法により、例えば、背面光散乱装置を用いて凝集粒径分布を測定すること、またはカスケード衝突もしくは「ツインインピンジャー(twin impinger)」分析法により粒径分布を測定することにより測定できる。本明細書中で使用される「ツインインピンジャー」アッセイについて言及する場合、British Pharmacopaeia 1988, A204-207頁, Appendix XVII Cで定義されているように、「装置Aを用いた加圧式吸入物における放出投与量の沈着の測定」を意味する。こうした方法により、エアロゾル製剤の「呼吸性分率(respirable fraction)」(治療域に到達可能な粒径範囲)が測定できる。「呼吸性分率」を測定するのに用いられる1つの方法は、「微粒子分率(fine particle fraction)」を参照することによるものであり、これは、上記で記載したツインインピンジャー法を用いて1回の操作当たり送達される活性成分の総量に対するパーセンテージとして表される、下部衝突チャンバーに回収された活性成分の量である。
【0146】
MDIの缶は、一般に、使用される噴射剤の蒸気圧に耐えることができる容器を備え、例えばプラスチック製もしくはプラスチックでコーティングされたガラス瓶、好ましくは金属製の缶(例えばアルミニウムもしくはその合金)が挙げられ、それらは、場合により、陽極酸化仕上げ、ラッカー塗装、および/またはプラスチックコーティングされていてもよい(例えば、国際公開第96/32099号を、参照により本明細書に組み入れる;そこでは、内側表面の一部または全体が、場合により1種以上の非フルオロカーボンポリマーと組み合わせた1種以上のフルオロカーボンポリマーでコーティングされている)。その容器は定量噴射バルブで閉じられる。キャップは、超音波溶接、ネジ嵌合または圧着により缶に固定することができる。本明細書で教示されるMDIは、当業界の方法(例えば、Byron, 上記および国際公開第96/32099号を参照)により製造できる。好ましくは、この缶は、キャップアセンブリによりキャップと固定され、ここで、薬物定量噴射バルブはそのキャップに適合させてあり、そのキャップは所定の位置に圧着される。
【0147】
定量噴射バルブは、1回の操作当たり一定量の製剤を送達するように設計されており、該バルブからの噴射剤の漏れを防止するためのガスケットが組み込まれている。このガスケットは、例えば低密度ポリエチレン、クロロブチル、黒色および白色のブタジエン-アクリロニトリルゴム、EPDMゴム、ブチルゴムならびにネオプレンなどの任意の適切なエラストマー性材料からなるものとすることができる。好適なバルブは、Valois(フランス)(例えば、DF10、DF30、DF60)、Bespak plc(英国)(例えば、BK300、BK357)および3M-Neotechnic Ltd(英国)(例えば、Spraymiser(商標))などのエアロゾル産業で良く知られている製造元から販売されている。
【0148】
本発明の更に別の態様は、上記の製剤をMDIに充填する方法を含む。
【0149】
エアロゾル医薬品製造の当業者に周知の慣用のバルク製造方法および装置は、充填済み缶の商業的製造のための大規模バッチの製造に用いることができる。したがって、例えば1つのバルク製造方法では、定量噴射バルブをアルミニウム製の缶に圧着させて、空の缶を形成する。粒子状の薬剤を充填容器に入れ、液化した噴射剤を、本界面活性剤を含有する液化した噴射剤と共にその充填容器から製造容器へと加圧充填する。充填装置に再循環させる前に、この薬剤懸濁液を混合し、次に、その薬剤懸濁液の一部を定量噴射バルブを通して缶に充填する。
【0150】
別の方法では、液化製剤の一部を、製剤が確実に揮発しないようにするのに十分低温の条件下で開いている缶に添加し、次に、定量噴射バルブをその缶に圧着する。
【0151】
典型的には、医薬として使用するために製造されたバッチでは、充填が済んだ缶はそれぞれ、重量をチェックし、バッチ番号を印し、放出試験を行うまで保管用トレイに詰める。
【0152】
充填が済んだ缶はそれぞれ、好都合には、使用前に適当なチャネリング装置に固定して、薬剤を患者の肺または鼻腔へ投与するための定量噴霧式吸入器システムを形成する。定量噴霧式吸入器は、1回の操作(すなわち「1回の吹付け」)当たり一定の単位投与量(例えば1回の吹付け当たり10〜5000ミクロングラムの範囲)の薬剤を送達するように設計される。
【0153】
薬剤の投与は、軽症の、それほど重症でない、または重症の急性または慢性の症状の治療、あるいは予防目的の治療に適用できる。正確な投与量は、患者の年齢や症状、使用される特定の粒子状の薬剤、および投与頻度に応じて決定され、最終的には担当医師の裁量に委ねられることが理解されよう。薬剤の組合せが使用される場合、その組合せの各成分の投与量は、一般には、各成分が単独で使用される場合のものとすることができる。典型的には、投与は、1日当たり1回以上、例えば1〜8回にわたり、各回当たり、例えば1、2、3または4回吹き付けるものとすることができる。
【0154】
好適な日用量は、疾患の重篤度に応じて、例えば、50〜200マイクログラムのサルメテロール、100〜1000マイクログラムのアルブテロール、50〜2000マイクログラムのフルチカゾンプロピオネート、または100〜2000マイクログラムのベクロメタゾンジプロピオネートとすることができる。
【0155】
したがって、例えば、1回毎のバルブ操作で、25マイクログラムのサルメテロール、100マイクログラムのアルブテロール、25、50、125もしくは250マイクログラムのフルチカゾンプロピオネート、または50、100、200もしくは250マイクログラムのベクロメタゾンジプロピオネートが送達できる。サルメテロールとフルチカゾンプロピオネートとの組合せであるセレタイド(Seretide;商標)の投与量は、通常、対応する個々の薬剤成分について用いられるものとすることができる。典型的には、定量噴霧式吸入器において使用するためのそれぞれの充填済みの缶は、薬剤の一定投与量または吹付けの60、100、120、160または240回分を含む。
【0156】
他の薬剤についての適切な投薬レジメンは、当業者であれば知っているか、あるいは容易に知ることができる。
【0157】
上記で記載した式(I)の化合物の、特に医薬製剤の製造における使用;上記で記載した製剤の、例えば呼吸系障害を治療もしくは予防するための吸入療法における使用;ならびに定量噴霧式吸入器システムの、呼吸系障害の治療もしくは予防における使用は、全て、本発明の別の態様である。
【0158】
本発明の更に別の態様は、有効量の本明細書で記載されている製剤を吸入により投与することを含む、例えば喘息などの呼吸系障害の治療方法を包含する。
【0159】
以下の非限定的な実施例は、本発明の説明に役立つ。
実施例
概略的な分析条件
電子衝突GCMSは、HP7673AオートサンプラーおよびカラムHP5 5% フェニルメチルシロキサン30m×0.25mm×0.25μmを備えるHPGC1800A GCDで行った。勾配:15℃/分で60〜300℃に温度を上昇。全体の運転時間はスプリットレス注入で15分とし、キャリアガスは1ml/分のヘリウムとした。
【0160】
マススペクトルは、HP5989A Engineマススペクトロメーターで、正のサーモスプレーイオン化を用いて行った。
実施例1
11,11,12,12,12-ペンタフルオロドデカン酸)メチルデカ-2-エノエート
メタノール(400ml)中の9-デカン酸(40g)の撹拌溶液に濃硫酸S.G 1.84(0.5ml)を添加し、反応物を撹拌し、3時間にわたり還流加熱した。反応混合物を20℃まで放置冷却し、水(50ml)に注ぎ、次にジエチルエーテル(3回×200ml)で抽出した。エーテル抽出物を1つに合わせ、乾燥し、溶剤を減圧下で除去して、標題化合物を淡黄色の油状物(42g)として得た。
【0161】
GC/MS - 202 m/z [MNH4+]、保持時間7.18分。
(b)メチル11,11,12,12,12-ペンタフルオロ-9-ヨードドデカノエート
パーフルオロエチルヨージド(5.1ml)をカーディストラップ(cardice trap)を用いて濃縮し、工程(a)からの生成物(5g)およびベンゾイルパーオキシド(0.12g)が入っている高圧ハスタロイ(hastalloy)容器に素早く移した。この反応容器を70℃で3時間加熱した。反応混合物を20℃まで放置冷却し、過剰なパーフルオロエチルヨージドを減圧下で除去して、標題化合物を淡黄色の油状物(10.94g)として得た。
【0162】
GC/MS - 448 m/z [MNH4+]、保持時間8.95分。
(c)メチル11,11,12,12,12-ペンタフルオロドデカノエート
酢酸(15ml)中の工程(b)からの生成物(2.5g)の撹拌溶液に亜鉛粉末(0.75g)を添加し、反応物を20℃で17時間撹拌した。次に、反応混合物をセライトパッドで濾過した。濾液から溶剤を減圧下で除去して暗橙色の残渣を得て、これを酢酸エチル(20ml)と水(20ml)とで分配した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(10ml)で洗浄し、乾燥し、溶剤を減圧下で除去して、標題化合物を暗赤色の油状物(1.66g)として得た。脱離副生成物:生成物がそれぞれ1:6の混合物が生じた。
【0163】
GC/MS - 322 m/z [MNH4+]、保持時間7.49分。
(d)メチル11,11,12,12,12-ペンタフルオロドデカノエート
エタノール(16ml)中の工程(c)の生成物(1.6g)の撹拌溶液にパラジウム触媒(炭素に10%担持させたもの、デグサ(degussa)タイプ、0.24g)を添加した。反応物を20℃で60psiにて17時間撹拌した。次に、反応混合物をセライトパッドで濾過し、濾液を減圧下で蒸発させて、標題化合物を暗橙色の油状物(1.5g)として得た。GC/MS - 322 m/z [MNH4+]、保持時間7.49分。
(e)11,11,12,12,12-ペンタフルオロドデカン酸
メタノール:水(25ml:12ml)中に工程(d)の生成物が2:1(生成物:メタノール/水)である撹拌溶液に水酸化ナトリウムペレット(0.8g)を添加した。反応物を1時間にわたり還流加熱した。反応混合物を20℃まで冷却した後、溶剤を減圧下で除去した。残渣を濃塩酸を用いてpH 1まで酸性化し、次に酢酸エチルと水とで分配した。1つに合わせた有機抽出物を乾燥し、溶剤を減圧下で除去して、標題化合物を白色の結晶物(1g)として得た。
【0164】
GCMS - 308 m/z [MNH4+]、保持時間7.99分。
【0165】
実施例1について上記で示したものと同様の方法により製造可能な他の化合物:
実施例2
13,13,13-トリフルオロトリデカン酸
この化合物の製造は、工程(a)でウンデシレン酸の試薬および工程(b)で2-ヨード-1,1,1-トリフルオロエタンの試薬を用いた以外は、実施例1の合成と同様とした。
【0166】
GC-MS - 269 m/z [MH+]、保持時間8.59分 (メタン付加物)。
実施例3
12,12,12-トリフルオロドデカン酸
この化合物の製造は、工程(b)で2-ヨード-1,1,1-トリフルオロエタンの試薬を用いた以外は、実施例1の合成と同様とした。
【0167】
GC-MS - 255 m/z [MH+]、保持時間8.31分 (メタン付加物)。
実施例4
12,12,13,13,13-ペンタフルオロトリデカン酸
この化合物の製造は、工程(a)でウンデシレン酸の試薬を用いた以外は、実施例1の合成と同様とした。
【0168】
GC-MS - 322 m/z [MNH4+]、保持時間8.20分。
実施例5
[(7,7,8,8,8-ペンタフルオロオクチル)オキシ]酢酸
テトラヒドロフラン(10ml)中の6-(ペンタフルオロエチル)ヘキサン-1-オール(500mg)の撹拌溶液に水素化ナトリウム(鉱油中の60%分散液;118mg)を添加し、反応物を20℃で30分間撹拌した。ブロモ酢酸エチル(379mg)を添加し、反応物を更に3時間撹拌した。エタノール(3ml)の添加により反応を停止させ、続いて30分間撹拌し、次に2M水酸化ナトリウム(3ml)を添加し、反応物を更に2時間撹拌した。反応混合物をジクロロメタン(100ml)と水(100ml)とで分配した。水層を2M塩酸の添加によりpH 1まで酸性化し、次にジクロロメタン(3回×100ml)で抽出した。1つに合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を減圧下で除去して、標題化合物を白色の固体(250mg)として得た。
【0169】
マススペクトルm/z 296 [MNH4+]
Rf 0.15(200:20:1のジクロロメタン:メタノール:880アンモニア溶液)。
【0170】
実施例5について上記に示したものと同様の方法により製造可能な他の化合物:
実施例6
(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ)酢酸
この化合物の製造は、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノールの試薬を用いた以外は、実施例5の合成と同様とした。
【0171】
マススペクトル m/z 226 [MNH4+]
Rf 0.15 (100:15:1のジクロロメタン:メタノール:880アンモニア溶液)。
実施例7
[(4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)オキシ]酢酸
この化合物の製造は、4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンタン-1-オールの試薬を使用した以外は、実施例5の合成と同様とした。
【0172】
マススペクトル m/z 254 [MNH4+]
Rf 0.15 (100:12:1のジクロロメタン:メタノール:880アンモニア溶液)。
実施例8
6-[(4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)オキシ]ヘキサン酸
a)エチル6-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}ヘキサノエート
ジクロロメタン(5ml)中のエチル-6-ヒドロキシヘキサノエート(2g)およびトリエチルアミン(1.5ml)の撹拌溶液にp-トルエンスルホニルクロライド(2.6g)を添加し、反応物を20℃で18時間撹拌した。反応混合物をジクロロメタン(250ml)で希釈し、水(250ml)および食塩水(100ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を減圧下で除去した。シリカゲル(Biotage)でのカラムクロマトグラフィーにより、シクロヘキサン中の18%酢酸エチルで溶出させて精製して、標題化合物を白色の固体(3g)として得た。
【0173】
マススペクトル m/z 332 [MNH4+]。
b)エチル6-[(4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)オキシ]ヘキサノエート
テトラヒドロフラン(10ml)中の工程(a)の生成物(500mg)および4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンタン-1-オール(284mg)の撹拌溶液にカリウムtert-ブトキシド(テトラヒドロフラン中で1M;1.6ml)を添加し、反応物を20℃で2時間撹拌した。追加量のカリウムtert-ブトキシド(テトラヒドロフラン中で1M;1.6ml)を添加し、反応物を更に18時間撹拌した。エタノール(5ml)を添加し、反応物を30分間撹拌した。反応混合物をジクロロメタン(300ml)と水(300ml)とで分配した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を減圧下で除去した。シリカゲル(5gのBond Elutカートリッジ)でのカラムクロマトグラフィーにより、シクロヘキサン中の20%酢酸エチルで溶出させて精製して、標題化合物を透明な油状物(100mg)として得た。
【0174】
マススペクトル m/z 338 [MNH4+]。
c)6-[(4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)オキシ]ヘキサン酸
1,4-ジオキサン(5ml)中の工程(b)の生成物の撹拌溶液に0.1M水酸化ナトリウム溶液(5ml)を添加し、反応物を20℃で4時間撹拌した。反応容量を減圧下で50%減らし、次に水(50ml)とジクロロメタン(50ml)とで分配した。水層を、2M塩酸の添加によりpH 1まで酸性化し、次にジクロロメタン(3回×50ml)で抽出した。1つに合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を減圧下で除去して、標題化合物を白色の固体(30mg)として得た。
【0175】
マススペクトル m/z 310 [MNH4+]
Rf 0.17 (200:20:1のジクロロメタン:メタノール:880アンモニア溶液)。
実験データ
サンプルの調製
1回の操作当たり25μgの強度のHFA 134a中のサルメテロールキシナホエート製剤、および10%w/w(薬剤に対して)の適切な式(I)の界面活性剤化合物は、サルメテロールキシナホエート(5.8mg)、HFA 134a(12g)および適切な化合物(0.58mg)を用いて調製した。対照は、界面活性剤を添加しないものとして調製した。
【0176】
表1に、上記で記載したようにして調製したサンプル製剤についての、Galai CIS-100粒径アナライザーを用いた画像解析により測定した平均粒径のデータを示す。この測定では、粒径は、対象物と面積が等しい円の等価粒径として表す。平均(mean)とは、4回の測定値の平均である。粒径の測定値は、懸濁液を加圧セルに移し、サンプルを顕微鏡対物レンズにより剪断下でビデオで画像撮影することにより得た。等価粒径は、対象物と面積が等しい円の直径として定義される。
【式1】
【0177】

【0178】
平均等価粒径は、数、長さまたは容積により加重することができる。例えば、等価粒径がx、yおよびzである3つの粒子の場合は、以下のようになる。
【式2】
【0179】

【0180】
データから、本発明による式(I)の化合物が、懸濁液安定化特性を有し、したがって、薬剤粒子の凝集を防止できることが示される。このことは、実施例5で記載した化合物を製剤に加えた場合に平均粒径(「平均長さ加重粒径」)が有意に低下したことからも判る。更に、データ範囲の分散の尺度である標準偏差および相対標準偏差は、上記の界面活性剤化合物を含む製剤では、対照と比較して有利にも低下している。
【0181】
【表1】

【0182】
Andersenカスケード衝突
Andersonカスケード衝突装置を用いて得られるプロフィールは、肺の治療標的に到達する見込みのある薬剤の比率の尺度である微粒子質量分率などのエアロゾル医薬製剤の特定の特性を分析するのに使用できる。
含量均一性
製剤(その製造は上記で記載されている)の含量均一性を、使用を通しての投与量試験(dose through use testing)により評価した。試験は、1つの吸入器当たり10缶について、「使用開始時」(BoU)および「使用終了時」(EoU)に行った。各吸入器をプライミングした後(4回の噴霧分を捨てる)、1回目および2回目の作動分(BoU)を回収した。次に、自動化された方法を用いて各吸入器の次の116回分を噴霧して捨て、119回目および120回目の作動分(EoU)を回収した。
【0183】
まず、(サンプル調製の後で)含量均一性の評価を行った。結果を、表2に、10個の吸入器についての2回のBoU作動分の平均(10個の吸入器について1回目+2回目)およびその10個の吸入器についての2回のEoU作動分の平均(同じ10個の吸入器について119回目+120回目)として、%相対標準偏差(%RSD)と共に示す。
【0184】
データから、実施例5の界面活性剤化合物の存在下では、使用の開始時に回収した投与量と終了時に回収した投与量との差が小さくなっていることが判る。対照では、使用の開始時から終了時までに5.5μgの上昇が見られる。しかし、上記の界面活性剤化合物の存在下では、有利にも、この上昇は1.8μgまで低下している。また、試験した10個の吸入器について、特にEoUの結果において%RSDも低下しており、これは、缶同士の再現性が改善されていることを示している。したがって、上記の界面活性剤の存在は、試験した吸入器の含量均一性を改善する。
【0185】
【表2】

【0186】
本開示内容は、単に説明のためのものであり、本発明は、当業者の通常の技術知識の範囲に含まれるその改変形態、異形態および改善形態を包含するものであると理解されよう。
【0187】
本明細書およびその後の特許請求の範囲の全体を通して、文脈から特にそうではないと判断されない限り、「含む(comprise)」という言葉ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などの変形表現は、記載されている整数もしくは工程、または整数の群を含意し、任意の他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を除外するものではないと理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(Ia):
【化1】

[式中、
mは、1〜16の範囲の整数を表し;
R1aは、C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-またはC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-O-を表し、
ここで、それぞれのC1-4フルオロアルキル部分は、1個以上のフッ素原子を含むが、連続する過フッ素化された炭素原子を3個以下しか含まない]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を含む、エアロゾル医薬製剤。
【請求項2】
R1aがC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレンを表す、請求項1に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項3】
R1aがC1-4フルオロアルキルを表す、請求項2に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項4】
R1aがCF3またはCF3CF2を表す、請求項3に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項5】
mが3〜12の範囲の整数を表す、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項6】
mが8〜12の範囲の整数を表す、請求項5に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項7】
mが9または10の範囲の整数を表す、請求項6に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項8】
式(Ia)の化合物が:
11,11,12,12,12-ペンタフルオロドデカン酸;
13,13,13-トリフルオロトリデカン酸;
12,12,12-トリフルオロドデカン酸;
12,12,13,13,13-ペンタフルオロトリデカン酸;
またはそれらの中のいずれか一つの塩もしくは溶媒和物
である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項9】
式(Ia)の化合物が11,11,12,12,12-ペンタフルオロドデカン酸またはその塩である、請求項8に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項10】
式(Iaa):
【化2】

[式中、
mは、1〜16の整数を表し;
R1aaは、CF3またはCF3CF2を表し;
R1aaがCF3のときは、mが7〜9または11〜15である]
を有する化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項11】
R1aaが、CF3CF2を表し、mが7〜9または11〜15を表す、請求項10に記載の式(Iaa)の化合物。
【請求項12】
mが9または11を表す、請求項11に記載の式(Iaa)の化合物。
【請求項13】
11,11,12,12,12-ペンタフルオロドデカン酸;または13,13,13-トリフルオロトリデカン酸またはそれらのいずれかの塩である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の式(Iaa)の化合物。
【請求項14】
定量噴霧式吸入器における使用に適合させたエアロゾル医薬懸濁剤における懸濁化剤としての、請求項1に記載の式(1a)の化合物の使用。
【請求項15】
式(Ib):
【化3】

[式中、
n1は、1〜9の整数を表し;
n2は、1〜8の整数を表し;
R2は、C1-2フルオロアルキルを表し、但し、この部分は1個以上のフッ素原子を含む]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を含む、エアロゾル医薬製剤。
【請求項16】
R2がCF3またはCF3CF2を表す、請求項15に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項17】
n2が1〜6を表す、請求項15または16に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項18】
n2が3〜6を表す、請求項17に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項19】
n2が6を表す、請求項17に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項20】
n1が1〜6を表す、請求項15〜19のいずれか一項に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項21】
n1が1を表す、請求項20に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項22】
式(Ib)の化合物が、
[(7,7,8,8,8-ペンタフルオロオクチル)オキシ]酢酸;
(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ)酢酸;
[(4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)オキシ]酢酸;
6-[(4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)オキシ]ヘキサン酸;
またはそれらの中のいずれか一つの塩もしくは溶媒和物
である、請求項15に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項23】
式(Ib)の化合物が[(7,7,8,8,8-ペンタフルオロオクチル)オキシ]酢酸またはその塩もしくは溶媒和物である、請求項22に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項24】
式(I)の化合物が遊離酸として存在する、請求項15〜23のいずれか一項に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項25】
フルオロカーボン噴射剤が、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパン、またはそれらの混合物から選択される、請求項15〜24のいずれか一項に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項26】
噴射剤が1,1,1,2-テトラフルオロエタンである、請求項25に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項27】
粒子状の薬剤が、アルブテロールもしくはその生理学的に許容される塩、フルチカゾンプロピオネートもしくはその生理学的に許容される溶媒和物、サルメテロールもしくはその生理学的に許容される塩から選択される、請求項15〜26のいずれか一項に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項28】
更にもう1種の薬剤を含む、請求項15〜27のいずれか一項に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項29】
サルメテロールもしくはその生理学的に許容される塩とフルチカゾンプロピオネートもしくはその生理学的に許容される溶媒和物とを組み合わせて含む、請求項28に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項30】
場合により他の粒子状の薬剤と組み合わせた粒子状の薬剤と、フルオロカーボン噴射剤もしくは水素含有フルオロカーボン噴射剤とを含む、請求項15〜29のいずれか一項に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項31】
式(Ib′):
【化4】

[式中、
n1は、1〜9の整数を表し;
n2は、1〜8の整数を表し;
R2’は、C1-2フルオロアルキルを表し、但し、この部分は1個以上のフッ素原子を含む]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項32】
R2’が、CF3を表し;
n1が、3〜9の整数を表し;
n2が、3〜8の範囲の整数を表す、
請求項31に記載の式(Ib′)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項33】
R2’が、CF3CF2を表し;
n1が、1〜9の整数を表し;
n2が、1〜8の範囲を整数を表す、
請求項31に記載の式(Ib′)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項34】
n2が1〜6を表す、請求項31に記載の式(Ib′)の化合物。
【請求項35】
n1が1〜6を表す、請求項31または33に記載の式(Ib′)の化合物。
【請求項36】
[(7,7,8,8,8-ペンタフルオロオクチル)オキシ]酢酸;
(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ)酢酸;
[(4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)オキシ]酢酸;
6-[(4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)オキシ]ヘキサン酸;またはそれらの中のいずれか一つの塩もしくは溶媒和物である、請求項31に記載の式(Ib′)の化合物。
【請求項37】
[(7,7,8,8,8-ペンタフルオロオクチル)オキシ]酢酸またはその塩もしくは溶媒和物である、請求項36に記載の化合物。
【請求項38】
定量噴霧式吸入器における使用に適合させたエアロゾル医薬懸濁剤における懸濁化剤としての、請求項15に記載の式(1b)の化合物の使用。
【請求項39】
請求項1に記載の式(Ia)の化合物の製造方法であって、
(A1)ハロゲン化誘導体を還元剤と反応させる;例えば式(Ia)[式中、R1aはC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-を表し、mは2〜16の整数を表す]の化合物の製造においては、式(IIa):
【化5】

[式中、カルボン酸基は保護されており、R1aはC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-を表し、Xはハロゲンを表し、tは0〜14の範囲の整数である]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物またはその誘導体を還元剤と反応させ、必要であれば、続いてそのカルボン酸を脱保護する;または
(A2)C=C二重結合を含む対応する化合物を還元する;例えば式(Ia)[式中、R1aはC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-を表し、mは2〜16の整数を表す]の化合物の製造においては、式(IIIa):
【化6】

[式中、カルボン酸基は保護されており、R1aは上記で定義されているものと同じであり、tは0〜14の範囲の整数である]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物またはその誘導体を還元剤と反応させ、必要であれば、続いてそのカルボン酸を脱保護する、あるいは、式(Ia)[式中、R1aはC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-を表し、mは3〜16の整数を表す]の化合物の製造においては、式(IVa):
【化7】

[式中、カルボン酸基は保護されており、R1aはプロセス(A1)で定義されているものと同じであり、sは0〜13の範囲の整数である]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物またはその誘導体を還元剤と反応させ、必要であれば、続いてそのカルボン酸を脱保護する;または
(A3)対応するアルコールをカルボン酸へと酸化する;例えば式(Ia)の化合物の製造においては、式(Va):
【化8】

[式中、R1aおよびmは、式(Ia)の化合物について上記で定義されているものと同じである]
の化合物を、対応するカルボン酸へと酸化する;または
(A4)対応する式(I)[式中、カルボン酸はマスキングされている]の化合物を遊離のカルボン酸へと変換する;例えば式(Ia)の化合物の製造においては、式(VIa):
【化9】

[式中、R1aおよびmは、式(Ia)の化合物について上記で定義されているものと同じであり、R2aは、シアノ、アセタールもしくは-C=CH2などのマスキングされた酸である部分を表す]
の化合物を、例えば加水分解、加水分解と酸化、または酸化的開裂により、対応するカルボン酸へと変換する;または
(A5)有機金属試薬により炭素−炭素結合を作製して式(I)の化合物を形成する;例えば式(Ia)[式中、R1aおよびmは、式(Ia)の化合物について上記で定義されているものと同じである]の化合物の製造においては、式(VIIa):
【化10】

[式中、R1aは上記で定義されているものと同じであり、m1は0〜16の範囲の整数を表し、Cuは銅を表し、Liはリチウムを表す]
の化合物を、式(VIIIa):
【化11】

[式中、カルボン酸は保護されており、m2は1〜16の整数を表し、L1は脱離基を表す]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物またはその誘導体と反応させ、必要であれば、続いてそのカルボン酸を脱保護する、但し、m1+m2は1〜16の範囲の整数を表す、あるいは、式(Ia)[式中、R1aおよびmは、式(Ia)の化合物について上記で定義されているものと同じである]の化合物の製造においては、式(IXa):
【化12】

[式中、R1aおよびmは、式(Ia)の化合物について上記で定義されているものと同じであり、Mgはマグネシウムを表し、Xはハロゲンを表す]
の化合物を二酸化炭素と反応させる;
(A6)式(Xa):
C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-OH (Xa)
の化合物を、脱離基を含む化合物と反応させることにより、式(I)[式中、Bは、式C1-4フルオロアルキル-C0-6アルキレン-O-の基を表す]の化合物を製造する;例えば式(Ia)[式中、R1aは、C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-O-を表し、mは1〜16の整数を表す]の化合物の製造においては、式(Xa)のアルコールまたは対応するそのアニオンを、式(VIIIa)[式中、カルボン酸は保護されている]の化合物またはその塩もしくは溶媒和物またはその誘導体と反応させる;または
(A7)式(Xb):
C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-L2 (Xb)
[式中、L2は脱離基を表す]
の化合物をアルコールと反応させることにより、式(I)[式中、Bは、式C1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-O-の基を表す]の化合物を製造する;例えば式(Ia)[式中、R1aはC1-4フルオロアルキルC0-6アルキレン-O-を表し、mは1〜16の整数を表す]の化合物の製造においては、式(Xb)の化合物を、式(XIa):
【化13】

[式中、カルボン酸は保護されており、mは式(Ia)の化合物について上記で定義されているものと同じである]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物またはその誘導体と反応させる;または
(A8)上記で定義されている式(Xa)の化合物を上記で定義されている式(VIIIa)の化合物と反応させることにより、式(I)[式中、Bは、式C1-4フルオロアルキル-C0-6アルキレン-O-の基を表す]の化合物を製造し;
(A9)保護されている式(I)の化合物を脱保護する
ことを含む上記方法。

【公開番号】特開2006−8695(P2006−8695A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206725(P2005−206725)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【分割の表示】特願2003−518614(P2003−518614)の分割
【原出願日】平成14年8月2日(2002.8.2)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】