説明

界面活性剤組成物

【課題】本発明の目的は、生分解性及び界面活性能に優れた界面活性剤組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明の界面活性剤組成物は、下記の一般式(1)
【化1】


(式中、Rは、炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基を表わす。)
で表される化合物のアルキレンオキシド付加物からなる界面活性剤を必須成分として含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール系化合物よりなり、生分解性に優れ、界面活性能にも優れた界面活性剤を必須成分として含有してなる界面活性剤組成物、及びそれを利用した洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、乳化、分散、洗浄、湿潤、起泡等の幅広い性能を有している。それらの諸性能を利用して、従来から繊維をはじめとし、紙、ゴム、プラスチック、金属、塗料、顔料、土木建築等あらゆる分野に利用されてきた。これらの産業に利用される界面活性剤の中で、ノニルフェノールのアルキレンオキシド付加物は、高性能で低価格ということもあり、現在最も多量に使用されている界面活性剤の一つである。しかし、ノニルフェノールは生分解性が悪い物質であるため、各産業界ではノニルフェノールのアルキレンオキシドに代わる、代替界面活性剤の探索が行われてきた。
【0003】
そこで、天然油脂から誘導される天然アルコールに代表される、脂肪族アルコールを利用した界面活性剤を使用する方法が知られている。例えば、特許文献1には、界面活性剤原料として使用される、ヨウ素価が110を越え、140以下であり、曇点が15℃以下であることを特徴とする不飽和アルコール(請求項1);不飽和アルコール原料油脂が、大豆油、菜種油、サフラワー油、トウモロコシ油、綿実油、ひまわり油、米糠油及び亜麻仁油からなる群から選ばれる植物系油脂の少なくとも1種である請求項1に記載の不飽和アルコール(請求項2)が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ヨウ素価が40〜140の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物(A)を必須成分として含有することを特徴とする重合用界面活性剤(請求項1);不飽和アルコールが、ヤシ油、パームカーネル油、パーム油、オリーブ油、大豆油、菜種油、サフラワー油、トウモロコシ油、綿実油、ひまわり油、米糠油及び亜麻仁油から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の重合用界面活性剤(請求項5)が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−335714号公報 特許請求の範囲
【特許文献2】特開2004−002644号公報 特許請求の範囲
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、こうした脂肪族アルコールを使用した界面活性剤は、ノニルフェノールと比較して、生分解性は良好であるが、界面活性剤としての基本的性能、例えば、乳化力、分散力、洗浄力、湿潤力、起泡力等に劣るという問題があった。
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、生分解性及び界面活性能に優れた界面活性剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者等は鋭意検討した結果、特定の構造を持つ化合物のアルキレンオキシド付加物が、生分解性及び界面活性能に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基を表わす。)
で表される化合物のアルキレンオキシド付加物からなる界面活性剤を必須成分として含有することを特徴とする界面活性剤組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果は、従来から使用されてきた、ノニルフェノールのアルキレンオキシド付加物と同等の界面活性能を持ち、且つ生分解性が良好な界面活性剤組成物を提供したことにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の界面活性剤組成物において、一般式(1)で表される化合物のRは、炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基を表し、例えば、オクチル基、2−エチルヘキシル基、2級オクチル基、ノニル基、2級ノニル基、デシル基、2級デシル基、ウンデシル基、2級ウンデシル基、ドデシル基、2級ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、2級トリデシル基、テトラデシル基、2級テトラデシル基、ヘキサデシル基、2級ヘキサデシル基、ステアリル基、エイコシル基、2−ブチルオクチル基、2−ブチルデシル基、2−ヘキシルオクチル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルデシル基、2−ヘキシルドデシル基、2−オクチルドデシル基、モノメチル分枝−イソステアリル基等のアルキル基;オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、オレイル基等のアルケニル基が挙げられる。
【0011】
これらの脂肪族炭化水素基の中でも、炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数12〜18のアルキル基又はアルケニル基がより好ましく、炭素数15のアルキル基又はアルケニル基が更に好ましく、下記一般式(2)が最も好ましい。
【化2】

(式中、Rは、炭素数15の脂肪族炭化水素基を表す。)
【0012】
一般式(1)で表される化合物は、生分解性という観点から、天然物から得られるものが好ましい。これらの天然物として最も良く知られているものは、カシューナッツの殻に含まれる液体成分である。ウルシ科の植物であるカシューの木の種子は、固い殻に覆われ、殻の中身のやわらかい部分をカシューナッツとして食用に用いている。これらの殻の中には、一般式(1)で表される化合物を主成分とする液体が入っていることが知られている。カシューナッツの殻に含まれるこれらの液体は、カシューナッツ殻液と呼ばれ、カシューナッツの殻の下部にあり、殻が開けられると同時に放出されるものである。
【0013】
このカシューナッツ殻液は、一般式(2)で表される化合物が約70質量%、一般式(3)及び(4)がそれぞれ、約20質量%、約10質量%程度の混合物であることが知られている。この3種類の化合物のR、R及びRは、炭素数15のアルキル基及びアルケニル基の混合物である。
【化3】

(式中、Rは、炭素数15の脂肪族炭化水素基を表す。)
【化4】

(式中、Rは、炭素数15の脂肪族炭化水素基を表す。)
【0014】
一般式(2)、(3)、(4)の混合物であるカシューナッツ殻液に、アルキレンオキシドを付加する時はそのまま付加してもよいし、蒸留等によって一般式(2)及び/又は(3)の化合物を除去した後に付加してもよい。
【0015】
本発明の界面活性剤組成物は、一般式(1)で表される化合物のアルキレンオキシド付加物が、界面活性剤組成物全体の50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が最も好ましい。一般式(1)で表される化合物のアルキレンオキシド付加物が、界面活性剤組成物全体の50質量%未満の場合、界面活性剤としての基本的な機能がノニルフェノールのアルキレンオキシド付加物に比べて劣る場合があるために好ましくない。
【0016】
一般式(1)で表される化合物に付加するアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが挙げられ、付加させるアルキレンオキシドの重合形態は限定されず、1種類のアルキレンオキサイド等の単独重合、2種類以上のアルキレンオキサイド等のランダム共重合、ブロック共重合又はランダム/ブロック共重合等であってよい。なお、アルキレンオキシドは、一般式(1)で表される化合物の−OH基及び/または−COOH基に付加される。
【0017】
これらのアルキレンオキシドの種類やその付加モル数は、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、洗浄剤や乳化剤、分散剤等の水性媒体に使用する場合には、エチレンオキシドを主に使用するのが好ましく、付加するアルキレンオキシド中のエチレンオキシドの付加量は、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上が特に好ましく、80モル%以上が最も好ましい。また、潤滑油等の非水性媒体に使用する場合にはプロピレンオキシドやブチレンオキシド等を使用するのが好ましい。
【0018】
なお、アルキレンオキシドの付加モル数は、洗浄剤等の用途では、5〜20モルが好ましく、6〜18モルが更に好ましく、8〜15モルが最も好ましいが、乳化剤や分散剤等として用いる場合には、10〜100モルが好ましく、15〜80モルが更に好ましく、20〜50モルが最も好ましい。
【0019】
アルキレンオキシドを付加する方法は、公知の方法をいずれも使用ことができる。最も一般的な方法としては、例えば、触媒の存在下、0.03MPa〜1MPaの圧力下、50℃〜180℃で反応する方法であるが、反応温度は70℃〜160℃が好ましく、80℃〜150℃が更に好ましい。反応温度が50℃以下になると、反応速度が遅くなるため反応が終結しない場合があり、反応温度が180℃を超えると、着色等の問題が生じる場合がある。また、圧力が0.03MPaより低いと、反応装置内に入れることのできるアルキレンオキシドの量が少なすぎて、反応時間がかかってしまう場合があり、1MPaを超えると、反応装置内のアルキレンオキシドの量が多くなり、反応を制御することが困難になる場合があるために好ましくない。
【0020】
使用できる触媒としては、例えば、硫酸やトルエンスルフォン酸などの強酸;四塩化チタン、塩化ハフニウム、塩化ジルコニウム、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、塩化鉄、塩化スズ、フッ化硼素等の金属ハロゲン化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ソヂウムメチラート、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、アルコラート物、炭酸塩;酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ナトリウム等の金属酸化物;テトライソプロピルチタネート、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド等の有機金属化合物が挙げられる。
【0021】
本発明の界面活性剤組成物は、例えば、衣料用洗浄剤、食器用洗浄剤、住居用洗浄剤、トイレ用洗浄剤、人体用洗浄剤、工業用洗浄剤、各種樹脂の乳化分散剤、反応性乳化分散剤、アスファルト乳化剤、無機粉体分散剤、潤滑剤等の用途に用いることができるが、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分と併用することができる。その他の成分としては、例えば、その他の界面活性剤、アルカリ剤、ビルダー、溶剤、酸化防止剤、殺菌剤等が挙げられる。
【0022】
その他の界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、モノ−,ジ−或いはトリ−アルキル燐酸エステル塩、アルキル又はヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルアミドエーテル硫酸エステル塩、N−アルキルアミドアルカノール硫酸エステル塩、アシルザルコシネート、N−アシルタウライド、N−アシル−N−メチルタウライド、脂肪酸モノグリセライド硫酸エステル塩、アシルアミノ酸塩、アルキルイミノジカルボン酸塩、二級アミド型N−アシルアミノ酸塩、酒石酸アルキルアミド、リンゴ酸アルキルアミド、クエン酸アルキルアミド等のアニオン界面活性剤;高級アルコールエトキシレート、蔗糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グルコキシド、アルキル(ポリ)グリセリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸モノ或いは、ジ−アルカノールアミド、脂肪酸2,3−ジヒドロキシプロピルアミド、脂肪酸ポリオキシエチレンアミド、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、メチル或いはエチルグルコキシド脂肪酸エステル、アシルグルカミド等の非イオン界面活性剤;モノ或いはジアルキル四級アンモニウム塩、エーテル基或いはエステル基或いはアミド基を含有するモノ或いはジアルキル四級アンモニウム塩、或いはこれらの塩酸塩、硫酸塩、有機酸塩等のカチオン界面活性剤;カルボキシベタイン、スルホベタイン、ホスホベタイン、アミドアミノ酸、イミダゾリニウムベタイン系界面活性剤等の両性界面活性剤が挙げられる。これらその他の界面活性剤は、生分解性の面から、なるべく天然系の原料を使用したものを使うのが好ましく、その使用量は一般式(1)で示される界面活性剤100質量部に対して100質量部未満、好ましくは70質量部未満である。100質量部を超えると、ノニルフェノールのアルキレンオキシド付加物と同等の界面活性能という、本発明の効果が表れない場合がある。
【0023】
また、アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化化合物;オルト珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム等の珪酸ナトリウム類;オルソ珪酸カリウム、メタ珪酸カリウム等の珪酸カリウム類;オルソリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等のリン酸ナトリウム類;オルソリン酸カリウム、トリポリリン酸カリウム等のリン酸カリウム類;ゼオライト、炭酸ナトリウム、アンモニア水等が挙げられる。これらのアルカリ剤は、本発明の界面活性剤組成物中に0.1〜40質量%、好ましくは0.2〜30質量%になるよう添加することができる。
【0024】
更に、ビルダーとしては、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸等のアルカリ金属塩もしくは低級アミン塩等のポリカルボン酸類;ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸等のアルカリ金属塩もしくは低級アミン塩等のアミノカルボン酸類;リンゴ酸、クエン酸、グリコン酸、グルコヘプトン酸等のアルカリ金属塩もしくは低級アミン塩等のオキシカルボン酸類等が挙げられる。これらのビルダーは、本発明の界面活性剤組成物中に0.1〜40質量%、好ましくは0.2〜30質量%になるよう添加することができる。
【0025】
また、溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が挙げられる。中でも、安全性の高いアルコール類を使用することが好ましい。これらの溶剤は、本発明の界面活性剤組成物中に0.5〜40質量%、好ましくは1〜30質量%になるよう添加することができる。
【0026】
更に、酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、本発明の界面活性剤組成物中に0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%になるよう添加することができる。
【0027】
また、殺菌剤としては、例えば、上記界面活性剤で挙げた4級アンモニウム塩類;メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルパラベン等のパラベン類;フェノール、クレゾール、サリチル酸等のフェノール類;モノグリセリンアルキルエステル、モノグリセリンアルキルエーテル、オクタンジオール、デカンジオール等のジオール類等が挙げられる。これらの殺菌剤は、本発明の界面活性剤組成物中に0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%になるよう添加することができる。
【0028】
次に、本発明の洗浄剤組成物は、上記の本発明の界面活性剤組成物と上記アルカリ剤からなるものである。これらのアルカリ剤は、本発明の界面活性剤組成物中に0.1〜40質量%になるよう添加することが好ましく、0.2〜30質量部添加するのがより好ましく、0.2〜10質量部添加するのが更に好ましい。
【0029】
本発明の洗浄剤組成物は、衣料用洗浄剤、食器用洗浄剤、住居用洗浄剤、トイレ用洗浄剤、人体用洗浄剤、工業用洗浄剤等の用途に用いることができるが、中でも工業用洗浄剤としての利用が最も好ましい。工業用洗浄剤として被洗浄物品としては特に制限されないが、例えば、金属部品、非金属部品、電子部品、精密機器部品、ガラス製品、レンズ等の洗浄に好適に用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の実施例中、「部」及び「%」は特に記載が無い限り質量基準である。EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基をそれぞれ表わし、アルキレンオキシドの付加モル数は、原料成分1モルあたりの数値とする。
常法にて実施例1〜9及び比較例1〜8の界面活性剤組成物を合成し、以下の実験に使用した。なお、各界面活性剤組成物の構造は表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
これらの本発明品および比較品について、表面張力、生分解性、浸透性の試験結果を表2−1に示す。また、本発明品2と比較品2、5について乳化試験を実施し、得られた結果を表2−2に示す。なお、実験方法は以下の通りである。
・表面張力は、25℃ 0.1%水溶液についてウイルヘルミ法によって測定した。
・生分解性は、JIS K0102に準拠し、BOD5を測定した。植種として市販の混合菌(SYBRON CHEMICALS INC. BI-CHEM BOD Seed)を希釈水500mlに溶解して植種液とした。用いた希釈水は水1リットルに対して、SYBRON CHEMICALS INC.より市販されている、希釈用調整試薬A液、B液、C液、D液の4種類を、それぞれ1ml加えてpH7.2に調整したものである。なお、NDは測定限界の10ppm未満であることを示し、数値が高いほど生分解性がよい。
・浸透性は、直径1インチ(2.54cm)に打ち抜いたキャンバスを、0.1質量%の界面活性剤溶液中に、ろ過板のないグーチ漏斗を逆さにして抑え、界面活性剤溶液中に保持する。キャンバスは濡れると漏斗を離れて沈むので、その時までの時間を測定した。時間が早いほど浸透性は良好である。
・乳化試験では、界面活性剤3質量%、塩化カルシウム0.5質量%、針入度80/100のアスファルト40質量%(残部は水道水)をコロイドミルで乳化した時の乳化状態について示した。また、乳化物の安定性は、40℃の高温槽に1週間入れた後の乳化状態を目視で観察した。
【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
本発明品の界面活性剤組成物は、他の芳香族系の非イオン界面活性剤と同等の界面活性能を示し、生分解性の良い天然アルコール系の非イオン界面活性剤と同等の生分解性を示す。更に、乳化剤として使用したときは、他の芳香族系の非イオン界面活性剤や天然アルコール系の非イオン界面活性剤より良好な性能を示した。
【0036】
次に、本発明品1〜9及び比較品1〜8の界面活性剤組成物を用いて、以下の組成の洗浄剤組成物を作成し、洗浄力の評価を行った。結果を表4に示す。
<洗浄力試験1:浸漬試験>
アルカリ洗浄剤処方
本発明品又は比較品の界面活性剤組成物 9%
クエン酸三ナトリウム 3%
水酸化ナトリウム(40%水溶液) 4%
水 残部
【0037】
上記処方のアルカリ洗浄組成物について、以下の方法で試験した。
(1)下記に示す人工汚れ約1gを10cm角のガラス板に均一に塗布し、24時間放置した。
人工汚れ:マーガリン50部/小麦粉52部/オレイン酸2部
(2)上記アルカリ洗浄剤の0.2%水溶液を調整して、汚れが付着したガラス板を浸漬し、5分後に超音波洗浄を30秒間行った。
(3)ガラス板を取り出し、溜め水で数回すすいだ後、水を切って風乾してその表面状態を観察した。
評価は以下のとおり5段階で行った。
5 : 汚れの残留が無く清浄な表面である。
4 : 汚れの残留はほとんどないが、すすぎ性に劣る。
3 : 全面積の5%未満の汚れが残留する。
2 : 全面積の5〜10%の汚れが残留する。
1 : ほとんど洗浄できていない。
【0038】
<洗浄力試験2:金属洗浄試験>
洗浄剤処方
本発明品又は比較品の界面活性剤組成物 0.02%
メタケイ酸ナトリウム 0.18%
水 残部
【0039】
上記洗浄剤組成物について、縦10cm、横10cm、厚さ2mmのステンレス製のテストピースに、マシン油約100mgを付着させて汚染テストピースとして、以下の要領で洗浄力試験を行った。上記洗浄剤組成物に、汚染テストピースを、25℃、3分間浸漬させて、その後105℃で2時間乾燥させた。マシン油の洗浄率は、以下の式により算定した。
洗浄率(%)=100×(Ms−Mw)/(Ms−M
Mo:テストピースの質量
Ms:汚染テストピースの洗浄前の質量
Mw:汚染テストピースの洗浄後の質量
【0040】
【表4】

【0041】
本発明品の界面活性剤組成物を配合した洗浄剤は、生分解性の悪い芳香族系の非イオン界面活性剤と同等の洗浄力を示し、生分解性の良い天然アルコール系の非イオン界面活性剤より洗浄力は良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の界面活性剤組成物は、例えば、衣料用洗浄剤、食器用洗浄剤、住居用洗浄剤、トイレ用洗浄剤、人体用洗浄剤、工業用洗浄剤、各種樹脂の乳化分散剤、反応性乳化分散剤、アスファルト乳化剤、無機粉体分散剤、潤滑剤等の用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基を表わす。)
で表される化合物のアルキレンオキシド付加物からなる界面活性剤を必須成分として含有することを特徴とする界面活性剤組成物。
【請求項2】
一般式(1)のRが、炭素数15の脂肪族炭化水素基である、請求項1記載の界面活性剤組成物。
【請求項3】
アルキレンオキシド中にエチレンオキシドが50モル%以上ある、請求項1または2記載の界面活性剤組成物。
【請求項4】
一般式(1)の化合物が、カシューナッツの殻から取り出されたものである、請求項1ないし3のいずれか1項記載の界面活性剤組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の界面活性剤組成物とアルカリ剤を併用してなることを特徴とする洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2006−83270(P2006−83270A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268487(P2004−268487)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】