異なるトポグラフィを有する表面と環境との相互作用を分析するハイスループットスクリーニング方法および装置
本発明は、物質の表面と環境との相互作用を分析するハイスループットスクリーニング方法に向けられる。本発明のスクリーニング方法は、該物質を含み、かつ少なくとも一部が異なるトポグラフィを有する多数のユニットを有するマイクロアレイを提供し、該多数のユニットの少なくとも一部を、前記環境と接触させ、1以上の前記ユニットと前記環境との相互作用について前記マイクロアレイをスクリーニングすることを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質表面とその環境との相互作用を分析するハイスループットスクリーニング方法、およびハイスループットスクリーニングを実行するための装置に向けられる。
【背景技術】
【0002】
従来、臨床用途に使用することができる物質の広範囲に及ぶ調査が存在した。臨床用途に幅広く使用される物質の重要な例は、チタン製インプラント、アマルガム歯科インプラント、およびプラスチック心臓弁である。ほとんどの物質の使用を成功させる鍵は、それらの生物学的不活性、すなわち物質と周囲組織との最小限の相互作用であった。
【0003】
これらの有利な特性にもかかわらず、正常組織の完全修復が理想的な治療であると一般的に認められている。好ましいアプローチは、機械的支持を一時的にもたらすことができるが、最終的に分解して、修復された正常組織に場所をあける物質を埋め込むことである。説明に役立つ実例は、分解可能な縫合糸である。創傷治癒後、縫合糸はもはや必要とされず、分解する。分解可能な多くのポリマシステムが適用可能である。骨再建などの特定の分野では、分解可能なセラミック材、およびポリマ/セラミック複合体も用いられている。
【0004】
骨および軟骨外科手術の分野において、分解可能なインプラントがさらに好ましい。この分野の主な外科治療は、骨または代用骨と連結させる金属医療インプラントの使用に依拠している。このインプラントは、良好な臨床結果を得るために、骨組織にうまく組込まれなければならない。過去数十年の間に、この領域において大きな進展および結果が達成されてきたが、長期間の関節置換術を成功させるには、時間とともに緩むインプラントは引き続き大きな問題である。現行の物質では、より大きな骨欠損の橋渡しを達成すること、および長期間の安定性をそれだけで維持することは、できない。これらの問題を解決するための、患者自身から取出した骨移植片の使用は、15〜30パーセントの比較的高いドナー部位の罹患率が付随する。人工股関節置換手術を受けた患者の20%もが、最初の外科手術の10〜15年以内にプロテーゼ周りの骨損失を来たし、脊椎固定手術においては患者の20〜30%が、不充分な固定を得ている。さらに、近未来の患者人口は、かなりの数の若年患者を含むであろうから、長期間の無菌性インプラント弛緩に関する問題が劇的に増加すると予測される。
【0005】
体内でのインプラントの生体適合性/生体統合性は、伝統的に医学、表面科学、物質科学、および分子生物工学に属するプロセスを含んでおり、きわめて複雑である。インプラントが体内に挿入された後の数ミリ秒以内に、生理学的液体由来の水、たんぱく、および他の生体分子から成る生体層が、インプラント表面に形成される。周囲組織由来の細胞が、インプラント周りの領域へ移動する。インプラント表面の特性は、細胞との相互作用に強く影響を及ぼす。したがって、生体適合性を最適化するには、インプラント表面の細胞生物学的特性に及ぼす影響が、非常に重要である。加えて、細胞の特性、たとえばシグナル分子によって細胞外基質を介して通信することができる細胞の能力は、良好な生体適合性にとって重要である。これらの機構のすべてが、組織のインプラントに対する反応に寄与しており、インプラントが患者の骨において充分な機械的強度によってうまく固定されているか、または、最終的に無菌性弛緩および手術の失敗をもたらすであろうインプラントに対する炎症反応が生じているか、を決定する。
【0006】
医療装置またはインプラントの物質と、その周辺組織または細胞との相互作用は、表面トポグラフィを調整することによって、改善することができるということが一般的に認められている(国際公開第2006/114098号参照)。
【0007】
表面トポグラフィは、たとえば細胞配向、細胞接着および増殖、ならびに/または細胞分化に影響を及ぼし得ることが示されてきた。
【0008】
細胞配向は、たとえば腱修復(Curtis et al. Eur. Cell Mater. 2005年,9,50−57)および心筋細胞配向(Deutsch et al. J. Biomed. Mater. Res. B 2000年,53(3),267−275)について記載されたような生体物質で生成されたパターンによって制御することができる。近年、本発明者らも、マイクロパターンポリマ設計による、C2C12マウスのプレ筋芽細胞およびMC3T3マウスのプレ骨芽細胞のアライメントを実証した(Papenburg et al. Biomaterials 2007年,28(11),1998−2009)。
【0009】
物質への細胞の接着は、物質と、隣接する骨組織との接触を強化するので、たとえば骨の外科手術の分野において、所望の特性であり得る。反対に、接着は、人工大動脈弁が埋め込まれる場合などの他の用途においては、不所望となり得る。細胞接着は、文献において広く記載されるような生体物質表面のトポロジ設計によって、制御することができる(たとえばDen Braber et al. J. Biomed. Mater. Res. A 1998年,40(2),291−300;Van Kooten et al. J. Biomed. Mater. Res. B 1998年,43(1),1−14;およびThapa et al. J. Biomed. Mater. Res. A 2003年,67(4),1374−1383参照)。たとえば、表面粗さが、細胞表面受容体のインテグリンファミリの特性に影響を及ぼす(Luthen et al. Biomaterials 2005年,26(15),2423−2440)。加えて、本発明者らは、近年、ヒト間葉幹細胞の増殖に及ぼすポリマ繊維径および表面トポグラフィの影響を記載した(Moroni et al. Biomaterials 2006年,27(28),4911−4922)。
【0010】
さらに、表面トポグラフィは、細胞分化に影響を及ぼし得る。細胞の発生運命決定に及ぼす細胞形状の影響を研究するために、幾何学的に規定された形状への細胞パターニングが広く使用されてきた(Chen et al. Science 1997年,276(5317),1425−1428)。細胞形状が幹細胞の分化を制御することができることを説明する古典的な実験において、異なる大きさの接着表面のパッチを生成するために、マイクロパターニングが使用された(McBeath et al. 2004年,6(4),483−495)。小パッチ上で増殖したヒト間葉幹細胞群(hMSCs)は、丸いままであり、脂肪細胞に選択的に分化したが、大パッチ上で増殖したhMSCsは、広がって骨芽細胞に分化した。この考え方に従えば、細胞形態を操作することができる生体物質は、細胞分化を潜在的に制御することができるだろう。生体物質研究の分野にとっての難題は、所望の用途に適したトポグラフィを規定することにある。
【0011】
しかし、現在まで、医療装置のその周囲組織との表面トポグラフィを介した相互作用を操作するための生体物質の設計は、少数の変化によって特徴づけられる、主に合理的設計または試行錯誤を通して、実行されてきた。
【0012】
インプラントおよび医療器具における使用のための生体物質が、試行錯誤の設計にさらされる。他の多くの用途においても、物質とその環境との相互作用が、物質の有効性および/または適合性に重要な役割を果たしている。ほとんどの場合、物質のトポグラフィは、このような相互作用の重要な要因である。というのも、物質はその環境と、表面トポグラフィを介して接触しているからである。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、膨大な数の変異のハイスループットスクリーニングを可能とする、トポグラフィのライブラリと特定の環境との相互作用を分析するスクリーニング方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、物質および表面トポグラフィの、細胞および/または組織親和性のハイスループットスクリーニング方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、利用中に、ステント、縫合糸、およびペースメーカなどの、人体と接触する医療装置の製造に使用することができる材料のスクリーニング方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、生体臨床医学、薬剤学、腫瘍学、再生医学、神経学、および家庭用品において使用される、物質および/またはトポグラフィの適合性を分析するハイスループットスクリーニング方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、軟骨および/または代用骨として使用されるのに適した物質のスクリーニング方法を提供することである。
【0018】
これらの目的の1つ以上は、少なくとも一部が異なるトポグラフィを有する多数のユニットを有するマイクロアレイを用いることによって、達成することができるということが分かった。
【0019】
したがって、第1の態様において、本発明は、物質の表面と環境との相互作用を分析するハイスループットスクリーニング方法であって、
該物質を含み、かつ少なくとも一部が異なるトポグラフィを有する多数のユニットを有するマイクロアレイを提供し、
該多数のユニットの少なくとも一部を、前記環境と接触させ、
1以上の前記ユニットと前記環境との相互作用について前記マイクロアレイをスクリーニングすることを含む方法に向けられる。
【0020】
本発明者らは、本発明に従えば、膨大な量の異なる物質および/または異なる表面トポグラフィを、環境との具体的な相互作用についてスクリーニングすることが可能であることを発見した。本発明は、良い候補を見出すために、潜在力のある物質および表面トポグラフィの迅速かつ効率的なスクリーニングを可能とする。この候補は、より詳細に調査することができる。たとえば、これは、利用中に細胞、細胞培養物および/または組織に接触する、医療装置およびインプラントの改良の莫大な可能性を広げる。
【0021】
本発明の方法に従えば、種々の環境が可能である。環境は例えば、組織、細胞、複合分子混合物(体液、土壌、海水、空気、細胞溶解物、器官または全有機体、老廃物、尿、糞便など)を含み得る。しかし、環境は特定の分子を含むことも可能である。環境が細胞、複合分子混合物または特定の分子を含む場合、本発明は、マイクロアレイを、前記細胞、前記複合分子混合物または前記特定の分子とそれぞれ接触させることを含む。
【0022】
物質の構造および/または表面特性を有利に変動させることによって、日常的な物質(生体物質など)を、単にトポグラフィを変化させるだけで、利用することができる。ゆえに、込み入った組み換えたんぱくまたは複雑な化学的構造は、必要とされない。物質トポグラフィの戦略的設計は、環境との相互作用を改良することができる。
【0023】
一実施形態において、マイクロアッセイは、生体適合性ポリマなどの生体適合性物質を含む。物質は、生分解性である。生分解性ポリマの適した例は、ポリエチレンオキシド/ポリブチレンテレフタレートコポリマ(PEO/PBT)、ポリ(乳酸)(PLA)およびポリ(グリコール酸)(PGA)などのポリエステルファミリおよびこれらのコポリマのポリマ、ポリラクトン(ポリ(ε−カプロラクトン)など)、ポリカーボネート(トリメチレンカーボネートなど)、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ならびにこれらの誘導体、を含む(Gunatillake et al.,Eur. Cell Mater. 2003年,5,1−16)。コポリマおよび/または異なるポリマの混合物を、本発明のマイクロアレイにおいて使用することもできる。
【0024】
マイクロアレイにおいて含むことができる他の適切な物質は、セラミックス、半導体、金属、金属酸化物、金属窒化物、合金、ポリマ/セラミック複合体、炭素、ならびにこれらのコポリマおよび/または混合物、を含む。必要に応じて、これらの物質を、適切なポリマと組合わすことができる。
【0025】
マイクロアレイは、多数のトポグラフィックユニットを含む。トポグラフィックユニットの量は、広範囲に変動することができる。トポグラフィックユニットの量は多いので、1つのバッチにおいて細胞適合性について大量のトポグラフィックユニットをスクリーニングすることができるということが有利である。たとえば、マイクロアレイは、少なくとも100のトポグラフィックユニット、好ましくは少なくとも10000のトポグラフィックユニット、より好ましくは少なくとも30000のトポグラフィックユニット、を含むことができる。トポグラフィックユニット量の上限は、実際上の理由で、約300000のトポグラフィックユニット、または250000のトポグラフィックユニットであるが、本質的に制限されない。このことは、国際公開第02/02794号と対照的である。ここに言及される本発明は、96,384または1536のウェルを有する装置に限定される。さらに、本発明は、異なる幾何形状の熱絶縁ウェルを有する。本発明は、同じ幾何形状を有し、均一に変動可能なウェルを有する。
【0026】
単一のトポグラフィックユニットの大きさは、用途に応じて変動可能である。単一のトポグラフィックユニットは、例えば、500〜25000μm2、または1000〜10000μm2などの、100〜50000μm2以上の表面積を有する。
【0027】
ユニットの少なくとも一部のトポグラフィは、たとえば表面多孔性、表面粗さ、および/または形状において、異なり得る。本発明の重要な態様は、表面フィーチャを設計することができること、および加工のプロセスが、設計されたトポグラフィを再生するように充分に制御されること、である。これは、ポリマの混合によって異なる表面粗さを生成するのに、微細加工ではなく組合せ化学が利用される方法を記載する、米国特許出願公開第2006/0240058号と対照的である。この出願において、表面トポロジの幾何形状は、制御することができない。ユニットの表面多孔性は、20〜70%などの、0〜90%の範囲で変動し得る。孔は、1nm〜50μmなどの、50μm以下の平均細孔径を有し得る。表面粗さは、5〜50ナノメートルから5〜10μmの範囲で変動してよい。ユニットの少なくとも一部の疎水性/親水性も、変動し得る。さらに、ユニットの少なくとも一部に、特定の官能基を表面に付与することが可能である。
【0028】
ユニットのすべてまたは一部は、マイクロアレイの表面によって規定される平面内に、1以上の寸法の、マイクロメートルまたはナノメートルスケールのフィーチャを含むことができる。ここで使用される用語「マイクロメートルスケール」は、1〜1000μmの範囲の長さスケールに言及することを意味する。ここで使用される用語「ナノメートルスケール」は、1〜1000nm、特に1〜100nmの範囲の長さスケールに言及することを意味する。フィーチャはたとえば、マイクロアレイの表面から延在する突起などの構造的フィーチャであり得る。突起は、円形突起(たとえば円または楕円)、および多角形、三角形、矩形、正方形、六角形、星形、平行四辺形などの角を含む形状を有する突起などの、異なる断面幾何形状を有することが可能である。トポグラフィックユニットのさらなる形状が、たとえば、参照によって本明細書に組込まれる国際公開第2006/114098号において見ることができる。マイクロアッセイのトポグラフィックユニットは、完全に人工的であってよく、または自然において観察される表面構造を模倣してもよい。
【0029】
フィーチャは、1〜5μm、5〜10μm、10〜25μm、25〜50μmまたは50〜100μmの範囲などの、1〜100μmの少なくとも1つの側方向に、側寸法を有し得る。好ましくは、少なくとも1つの側寸法は、1〜10μmの範囲にある。フィーチャの断面積内のあらゆる点から、断面積の端までの最短距離は、好ましくは最大20μm、より好ましくは最大10μm、さらに好ましくは最大5μm、たとえば最大2μmである。
【0030】
あらゆるマイクロメートルスケールのフィーチャとその最近傍との間の最大距離、または間隙は、1〜5μm、5〜10μm、10〜15μm、15〜20μm、20〜30μm、または30〜50μmの範囲などの、1〜50μmの少なくとも1つの側方向に、側寸法を有し得る。好ましくは、側方向におけるフィーチャとその最近傍との最大距離は、好ましくは最大30μm、より好ましくは最大10μm、さらに好ましくは最大5μm、たとえば最大2μmである。
【0031】
フィーチャの深さ/高さ、すなわちマイクロアレイの表面から突出する方向のフィーチャの線寸法は、ナノメートルまたはマイクロメートルスケールであり得る。ゆえに、フィーチャは少なくとも1nmの高さ/深さを有してよい。高さ/深さは、50μm、または100μmでさえあり得る。したがって、フィーチャは、50〜100nm、100〜500nm、500〜1000nm、1〜2μm、2〜5μm、5〜10μm、10〜20μm、20〜30μm、30〜40μm、または40〜50μmの範囲などの、1nm〜50μmの範囲の高さ/深さを有し得る。いくつかの実施形態において、すべてのフィーチャは実質的に同じ高さを有するが、他の実施形態において、フィーチャは異なる高さを有してよい。
【0032】
環境が細胞を含む場合、1またはそれ以上の細胞を個々のユニットに与え、細胞を比較的粗い表面に配置させることが可能であるが、細胞を、細胞寸法に対する、突起の相対寸法および/または表面粗さに応じて、特定の形状のウェルに配置させることも可能であるウェルの場合、異なるウェル内に細胞を保つこと、および細胞がウェルのリッジを超えて広がるのを回避すること、が重要である。これは、たとえば、フィーチャを、細胞接着性もしくは反発性たんぱくで、および/または予測される形状の内部もしくは上に細胞を押し付ける化学物質で、コーティングすることによって、制御することができる。このようなたんぱくおよび/または化学物質は、ステンシル技術および/またはマイクロフルイディクスを用いて、付与することができる(Dusseiller et al,Lab Chip 2005年,5(12),1387−1392参照)。加えて、ウェルのリッジの寸法および/またはアスペクト比も、細胞付着の制御に寄与し得る。
【0033】
フィーチャの上面および/または側面は、実質的に扁平であり得るが、表面がナノメートルスケールでフィーチャを含む、マイクロメートルスケールのフィーチャを有することも可能である。これは、マイクロメートルスケールおよびナノメートルスケールでのトポグラフィの相乗効果を可能にさせる。
【0034】
多数のユニットは、マイクロアレイ全体にわたって規則的に分配されるのが好ましい。このことは、たとえば細胞のマイクロアレイへの塗布および細胞のスクリーニングといった、多数のユニットの環境との接触およびスクリーニングを促進することができる。しかし、マイクロアレイ全体にわたるユニットのランダムな分配も可能である。
【0035】
本発明のマイクロアレイは、当該技術において知られる方法によって製造することができる。
【0036】
マイクロアレイを製造する方法の例は、フォトリソグラフィおよびエッチングを組合わせる古典的な微細加工である。電子ビームエッチングを金属(シリコン)表面に直接適用することができる。これらの技術は、マイクロメートルスケールでの高度に複雑な構造体の製造を可能とする。しかし、この技術はバルクを製造するシリコンまたはシリコンベースの物質を要求するので、物質の選択が制限される。随意的に、これらの物質の、特定の環境との接触を増大させるために、コーティングなどのポストプロセシング工程を実行することができる。コーティングは、例えば、たんぱく、シラン、炭素、コラーゲン、およびバイオポリマ(ヘパリン、ヒアルロナンなど)などを含み得る。物質の性質にあまり制限されない他のエッチング技術は、マイクロパターンポリマに利用することができる気体プラズマエッチング、および構造化ポリマを直接加工するために光重合プロセスとして使用することができる(マイクロ)ステレオリソグラフィ、である。
【0037】
マイクロアレイを製造する方法の他の例は、熱エンボス加工またはソフトリソグラフィなどの複製方法である。これらの方法は、古典的な微細加工よりも広い範囲の物質を許容する。熱エンボス加工は、融解物から処理することができる物質を用いるが、ソフトリソグラフィは、ポリ(ジメチル)−シロキサン(PDMS)などのエラストマを主に使用する。ソフトリソグラフィにおいて、足場表面にインクマイクロパターンを作成するためにスタンプを生じさせる。続いて、インクのない表面部分にコーティングが施される。ソフトリソグラフィによる正確なパターニングのために、剛表面が好ましい。
【0038】
マイクロアレイを作製する簡易な方法は、鋳込みによる膜作製方法である。物質(ポリマ、セラミック、ポリマ/セラミック複合体またはポリマ混合物など)を適切な溶媒に溶解させることによって、溶液が調製される。溶液は、構造化表面/鋳型(通常、従来のクリーンルーム技術によって準備する)に鋳込みされ、溶媒蒸発のために静置する。その結果、表面のレプリカを物質に再生する(たとえばM. Mulder, Basic principles of
Membrane Technology, 第2版、オランダ、ドルドレヒト、Kluwer academic publishers, 1996年参照)。
【0039】
少なくとも一部が(たとえば、細胞への養分拡散のための組織工学の分野において興味深い)異なる多孔性を有する多数のユニットを含むマイクロアレイは、相分離プロセスを用いて製造することができる。マイクロアレイの製造に適した相分離プロセスは、参照によって本明細書に組込まれる国際公開第02/43937号に記載されている。
【0040】
相分離マイクロ成形(PSμM)は、合成膜の製作において主に使用される相分離プロセスに基づく複製技術である。このプロセスは、非常に広範囲のポリマを対象とする。PSμMにおいて、相分離は、マイクロ〜サブマイクロメートルスケールでの構造体の複製と組合わされる(国際公開第02/43937号参照)。第一に、マイクロ〜ナノ構造化マスタ鋳型を、マイクロエレクトロニクスおよびフォトリソグラフィに由来する周知の技術に基づいて、作製する。その後、所望のポリマ溶液が、マスタに鋳込みされる。相分離は、たとえば、溶媒と混和するポリマの非溶媒に、鋳込みされるポリマ溶液を入れることによって(液体誘導相分離)、または温度の低下によって(温度誘導相分離)、誘導することができる。相分離は、マスタ鋳型のマイクロ〜ナノサイズの三次元構造に鋳込みされたポリマを、凝固させる。その後、ポリマの微細構造体が、マスタ鋳型から放出され得る。ポリマ濃度は、たとえば1〜20重量%であり得る。このプロセスにおいて使用される溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、ジオキサン、クロロホルム、アセトン、トルエン、アルカンおよびベンゼンを含み得る。このプロセスにおいて用いられる非溶媒は、水、アルコール、アルカン、ジエチルエーテルなどを含み得る。温度の低下は、通常、ポリマのTc未満の温度低下であり、たとえば、10℃以上の低下であり得る。
【0041】
生じるポリマフィルムは、ポリマ溶液および非溶媒の組成に応じて、相分離後に固有の多孔性を示し、多孔性の微細構造化ポリマをもたらし得る。さらに、この技術は、ポリマ物質にだけでなく、熱分解または焼成などのポストプロセシングを用いる(セラミックス、金属または炭素などの)無機物質にも、トポグラフィのフィーチャを準備するのに使用することができる。これを達成するのに可能性のある方法は、ポリマおよびセラミックの混合溶液を取り、それを沈殿物とするものである。随意的に、ポリマを、温度処理によって焼き尽くし、同時にセラミックを焼成することができる。
【0042】
少なくとも一部のトポグラフィックユニットには、ペプチド、たんぱく、糖類、抗原、抗体、DNA、RNA、脂質、および/または成長ホルモンなどの生物活性化合物を付与することが可能である。1またはそれ以上のこのような生物活性化合物の存在、および生物活性化合物の環境(細胞など)との相互作用は、物質に指示的特性を加えることによって、たとえば創傷治癒反応を誘導するのに、利用することができる。例として、Arg−Gly−Aspアミノ酸配列は、接着受容体のインテグリンファミリと相互作用することが知られており、ポリエチレングリコール(PEG)などの非接着表面の、Arg−Gly−Aspペプチドによるコーティングは、細胞の結合および拡散を強く改善する。代わりに、BMP2およびIGF−1などの骨形成に関与する組み換えたんぱくが、組織再生の制御された放出戦略に用いられる(たとえばChen et al.,Growth Factors 2004年,22(4),233−241およびLutolf et al.,Nat. Biotechnol. 2005年,23(1),47−55参照)。
【0043】
一実施形態において、多数のユニットの少なくとも一部が接触する環境は、細胞を含む。細胞は有利には、(全能細胞、多能性細胞または多分化能幹細胞などの)幹細胞であり得る。なぜなら、この細胞は、自己複製し、特殊化した細胞を生じさせる能力を有するからである。しかし、他の細胞型も適用可能である。軟骨および骨の用途に、間葉幹細胞が非常に適している。なぜなら、この細胞は、骨および軟骨のすべての細胞型を産生することができるからである。間葉幹細胞は好ましくはヒトのものである。ヒト間葉幹細胞は、骨髄に由来し得る。好ましい実施形態において、細胞が使用される。多数のユニットの少なくとも一部の、細胞との接触は、単細胞によってin vitroで実行することができるが、たとえばマイクロアレイをin vitroで組織培養物に埋め込むことも、またはマイクロアレイをin vivoで埋め込むことでさえも、可能である。最後の可能性の例は、内皮付着をin vivoでスクリーニングすることができる多数のトポグラフィが付与されるステントである。
【0044】
細胞培養において生じる変異を考慮して、少なくとも10回、好ましくは少なくとも100回など、同じ培養物の細胞で物質およびそのトポグラフィを2度以上スクリーニングすることが推奨される。加えて、以下の実施例において説明するように、各TopoUnit(フィーチャセット)は、各TopoChip上で少なくとも4回繰返すことができる。
【0045】
本発明の特別な実施形態に従えば、マイクロアレイ上の多数のトポグラフィックユニットの少なくとも一部は、自然発生的な細胞型、および/または遺伝子工学を用いるなどした改変細胞型を含む、骨を形成することができるあらゆる種類の細胞であり得る、骨形成細胞である。
【0046】
環境の、マイクロアレイ上の多数のトポグラフィックユニットの少なくとも一部との局所的接触が、マイクロフルイディクスによって実現することができる。このことは、たとえば、マイクロアレイ上の細胞の位置調整を許容する。実行されるアレイに応じて、トポグラフィックユニットあたりの細胞数は、ユニットあたり1細胞に至るまで変動させることができる。
【0047】
さらに、環境が細胞を含む場合、顕微鏡技術を用いてマイクロアレイ上へ置いた後に細胞の位置および数を判定するために、細胞の核の染色(たとえばヘキスト染色)または細胞骨格の染色(たとえばファロイジン染色)を利用することが有利であり得る。これらの染色は、どのユニットが細胞を有するか、どのユニットが細胞を有していないか、およびどのユニットが2以上の細胞を有しているか、を示すことができる。
【0048】
実行されるスクリーニングに応じて、多数のユニットは、マイクロアレイのスクリーニング前に、ある期間、環境にさらされる。たとえば、物質への細胞付着が評価される場合、スクリーニング前の数時間の暴露で充分であるが、遺伝子発現が分析される場合、1日または2日などのより長い期間が所望される。
【0049】
1以上のトポグラフィックユニットと環境との相互作用は、あらゆる測定可能な物理的、化学的、および/または生物学的相互作用を含み得る。このような相互作用の例は、化学反応、スペクトルシフト、水素結合、受容体−リガンド相互作用、電子移動、エネルギ移動、接着、静電相互作用、ファンデルワールス結合、親水性/疎水性相互作用、双極子間相互作用、抗原−抗体結合、特定の細胞挙動(細胞配向、細胞接着、細胞増殖、細胞分化、および/または1以上のたんぱくの発現など)を含む。
【0050】
特定の細胞挙動は、たとえば、骨形成系統または軟骨形成系統に特異的な分化などの、細胞の系統特異的分化などの、細胞の分化を含み得る。
【0051】
検出目的で、1以上のトポグラフィックユニットと環境との相互作用は、たとえば1以上の発光たんぱくの発現による、(蛍光または燐光などの)光放出を含むことが有利であり得る。本発明の好ましい実施形態に従って、相互作用は、1以上の骨特異的プロモータ(BSP、オステオカルシン、コラーゲンI型、および/またはOSE1など)、および/または1以上の軟骨特異的プロモータ(コラーゲン2型、COMP、およびコラーゲンX型など)の制御下にある1以上の蛍光たんぱくの発現を含む。相互作用は、特定のたんぱくの放射性標識同位体の発現も含み得る。
【0052】
1以上のトポグラフィックユニットと環境との相互作用は、適切な検出手段を用いて検出することができる。実施例は、発光たんぱく(たとえば緑色蛍光たんぱくおよび関連たんぱく、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼなど)または発光抗体によってもたらされるなどした光信号の検出を含む。光信号は、たとえば、蛍光寿命画像化、および電荷結合素子カメラを用いる発光画像化などから由来する技術を含む顕微鏡法(蛍光顕微鏡法など)を用いることによって、検出することができる。
【0053】
本発明の好ましい実施形態に従って、相互作用は、細胞挙動における変化を表す1以上の調節DNA要素の制御下にある1以上の蛍光たんぱくの発現を含む。実施例は、(BSP、オステオカルシン、コラーゲンI型、および/またはOSE1などの)骨特異的遺伝子のプロモータ、および/または(コラーゲン2型、COMP、およびコラーゲンX型などの)1以上の軟骨特異的プロモータ、を含む。
【0054】
加えて、1以上のトポグラフィックユニットと環境との相互作用は、蛍光または他の方法での標識抗体を用いる免疫組織化学を用いて、観測することができる。相互作用は、遺伝子発現のレベルで観測することもでき、そのために、in situハイブリダイゼーション、およびポリメラーゼ連鎖反応などの様々な技術を利用することができる。ゲノム変化は、蛍光in situハイブリダイゼーションを用いて視覚化することができる。
【0055】
表面の、その環境に及ぼす影響を測定するパラメータは、他の光学的画像化スペクトルを用いることができる。たとえば、核磁気共鳴(NMR)を環境から得ることができ、そのために、NMRベースの画像化のために使用される量子ドットおよび他の分子物質などのプローブを使用することができる。さらに、環境の分子構造を可視化するのに、ラマンイメージングおよび赤外線分光学などの分光イメージングを利用することができる。光学顕微鏡法は、(たとえば表面上で増殖した細胞または組織の)形態学的特徴を検出するのに使用することができる。これは、たとえば、増殖、アポトーシス、付着などの事項の細胞生物学的情報をもたらすことができる。
【0056】
他の検出方法は、原子間力顕微鏡法、電子顕微鏡法、走査型プローブ顕微鏡法、走査型近接場光学顕微鏡法、X線光電子顕微鏡法、X線微量分析、X線回折、および/または表面プラズモン共鳴を含む。
【0057】
トポグラフィックユニットと細胞との相互作用についてマイクロアッセイスクリーニングするために、細胞を蛍光レポータで遺伝子操作することができる。蛍光レポータは、レンチウイルス技術を用いて細胞に導入することができる。たとえば、単細胞レベルで骨または軟骨細胞分化を検出するために、hMSCを蛍光レポータ構築で遺伝子操作することができる。レポータの骨および軟骨特異的発現を確立するために、骨または軟骨のいずれかの組織において独自に活性であるが、非分化hMSCで活性のないプロモータの制御下に、蛍光たんぱくを置くことができる。骨系統について、プロモータは、BSP、オステオカルシン、コラーゲンI型、OSE1から成る骨特異的プロモータの群から選ぶことができる。軟骨系統について、プロモータは、コラーゲン2型、COMP、コラーゲンX型から成る軟骨特異的プロモータの群から選ぶことができる。蛍光たんぱくは、その後、たとえば共焦点レーザ走査顕微鏡法で検出することができる。
【0058】
マイクロアレイスクリーニングの結果は、環境との異なる相互作用を有し得る多数のトポグラフィックユニットである。これらのユニットのフィーチャは、大きな表面上に産生することができ、物質/環境相互作用は、qPCR、レポータアッセイ、生化学アッセイなどの分子生物学的技術のアレイを用いて、さらに詳細に分析することができる。
【0059】
さらなる態様において、本発明は、物質の表面と環境との相互作用のハイスループットスクリーニングを実行する装置であって、
前記物質を含み、少なくとも一部が異なるトポグラフィを有する多数のユニットを有するマイクロアレイと、
前記マイクロアレイを前記環境と接触させる接触手段と、
1以上の前記ユニットと前記環境との相互作用を観測する検出手段と、を含む装置に向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1の設計のマイクロアレイ(TopoChip)の図。
【図2】鋳型の典型的なSEM写真。(a),(b):ポリマシートにピラーをもたらすネガティブフィーチャを有する鋳型。(c)、(d):ポリマシートにピットをもたらすポジティブフィーチャを有する鋳型。各フィールドは100×100μmである。
【図3】フィーチャを有するPLLA TopoChipの典型的なSEM写真。(a),(b):ピットを有するTopoChip。(c),(d):ピラーを有するTopoChip。(e),(f):ピット(e)およびピラー(f)を有するTopoChipの断面。各フィールドは100×100μmである。備考:図3bのTopoChipは図2dの鋳型の反転複写である。(g):リン酸カルシウムで被覆したTopoChipの典型的なSEM写真。(h):チタニウムがスパッタされたTopoChipの典型的なSEM写真。
【図4】細胞播種装置のアセンブリ。
【図5】連続流用アタッチメントを有する改良播種装置。
【図6】トランスジェニックチャイニーズハムスタ卵巣細胞系による均一高密度細胞播種。
【図7】トランスジェニックチャイニーズハムスタ卵巣細胞系の低密度(TopoUnitあたりおおよそ8〜12細胞)播種の蛍光顕微鏡画像。
【図8a】マウス胚性幹細胞を播種したTopoChipであって、AlexaFluor 488ファロイジンで染色し、Genepix pro 4200ALマイクロアレイスキャナを用いて撮像したTopoChip。
【図8b】不死化ヒト間葉幹細胞を播種したTopoChipであって、AlexaFluor 488ファロイジンで染色し、BD Pathway 435で撮像したTopoChip。
【図8c】コンピュータによる自動細胞分析中のセグメンテーションの典型的な写真。
【図9−1】(a):TopoUnit間の細胞の度数分布。
【図9−2】(b)〜(e):不死化ヒト間葉幹細胞の均一な分布を描く細胞播種直後のTopoChipのランダムな光学顕微鏡写真。(f):TopoUnitあたりの陽性細胞数。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明を、以下の非限定の実施例によって説明する。
実施例1
マイクロアレイ(TopoChip)の作製
TopoChipを、マイクロパターニングされた鋳型へのポリマ溶液の溶媒鋳込みによって作製し、これが、鋳型マイクロパターンの反転複写を組込んだポリマシートとなった。トランスジェニックチャイニーズハムスタ卵巣細胞としてマウスES細胞を培養し、蛍光顕微鏡法で分析した。
【0062】
マスク設計および鋳型製作
マイクロパターニングされた鋳型を製作するために、投影マスクを用いて、扁平なシリコンウエハにマイクロパターンがエッチングされる、シリコンマイクロマッチング技術を適用した。
【0063】
投影マスク設計は、市販のソフトウェアCIeWin layout editor version 4.0(WieWeb Software、オランダ、ヘンゲロ)を用いて描いた。クロムマスクを書くために、設計をレーザシステム内にインポートした。このマスクを用いて、パターンを、扁平なシリコンウエハに存在するフォトレジスト層上に投影し、現像後、パターンをフォトレジストに作った。
【0064】
TopoChip鋳型を、2つの工程で製作した。第一に、乾式エッチングによってTopoUnitの壁を作った。第二に、湿式化学エッチングによってフィーチャをもたらした。
【0065】
第1の設計において、異なるパターンをフィーチャリングする100×100μmのフィールド(TopoUnit)を有する、2×2cmのチップを設計した。TopoUnit間のリッジ幅は10μmであった。以下のパターンフィーチャを含めた。
・正方形
・三角形
・円
・八角形
・5点星形
【0066】
これらのフィーチャの寸法を、体系的に2つの範囲にスケールアップした。第1の範囲は、表面粗さを増大させるために細胞サイズ(1〜20μm)以内であり、第2の範囲は、細胞を制限するために細胞サイズ(10〜100μm)を上回った。粗さを増大させるためのフィーチャは、以下の寸法:1,2,3,5,10および20μm、を含んだ。細胞を制限するためのフィーチャは、寸法:10,20,30,40,70および100μm、を含んだ。これらの寸法すべては、特定の範囲内で相互に組合わされて、対称的および非対称的なフィーチャ(すなわち、正方形〜矩形、または円〜楕円)をもたらした。
【0067】
フィーチャ間の間隙について、フィーチャ寸法について同じ値を選び、これをその特定の範囲内ですべてのフィーチャ寸法の組合せに適用した。各TopoUnitは、たった1つのパラメータセット(フィーチャタイプ、寸法、および間隙)のみを有するフィーチャを含んだ。各パラメータセットは、12または13回繰返した。この設計の説明について、図1を参照されたい。トポグラフィのフィーチャの非対称的な、および/またはランダムな配置が、細胞挙動に影響を及ぼし得ることが分かっていたので、各TopoUnitにおいてランダムなパターンを設計するためのアルゴリズムも開発した。TopoChipのスクリーニングから集めた情報は、チップの新たな設計の生成用のより進化的なアルゴリズムを開発するための入力として使用することができる。
【0068】
隆起(「ピラー」)および窪み(「ピット」)双方のフィーチャを得るために、同じマスクを用いて2つの鋳型を製作した。(ポリマチップにおいて)ピラーを生成するために、ネガティブのフォトレジストを用い、(ポリマチップにおいて)ピットを生成するために、ポジティブのフォトレジストを用いた。鋳型のSEMピクチャについて、図2を参照されたい。
【0069】
TopoChipを改良するために、TopoChipの第2の設計を描いた。第2の設計は、3μm以上のフィーチャを含んだ。高い分解範囲での制限を考慮するのに加えて、種々の新たなフィーチャを、既存のフィーチャにおける変異と同様に、含めた。さらに、エッチングプロセスを適合させた。
【0070】
第2の設計において、ここでも2×2cmのチップを設計した。この設計において、TopoUnitは90×90μmであった。TopoUnit間のリッジ幅を10μmに維持して、1つのチップ内に総数40000のTopoUnitをもたらした。以下のパターンフィーチャを含めた。
・正方形
・三角形
・円
・楕円
・5点星形
・六角形
・3点星形
・半月形
・角が取られた円(「パックマン」)
・コントロールとしての、空のフィールド
【0071】
粗さを増大させる範囲内に含まれる寸法は、3,5,7,10,15および20μmであった。細胞を制限するためのフィーチャは、寸法:20,30,40,50,65および80μm、を含んだ。ここでも、これらの寸法すべては、特定の範囲内で相互に組合わされて、対称的および非対称的なフィーチャをもたらした。
【0072】
粗さを増大させる範囲の場合、フィーチャ寸法について同じ値を、フィーチャ間の間隙に選んだ。細胞を制限するための範囲について、以下の間隙値:5,10,15,20,25および30μm、を含んだ。各間隙値を、特定の範囲内でフィーチャ寸法の組合せ毎に適用した。
【0073】
さらに、今まで記載した「完全」フィーチャの隣に、各フィーチャタイプの「凹み」バージョンも描いた。すなわち、フィーチャは、フィーチャの内側に凹み間隙を生成するために、内側に、オリジナルの50%である第2の類似のフィーチャを組込んだ。
【0074】
第2の設計において、ポジティブ(「ピラー」)およびネガティブ(「ピット」)の双方のフィーチャを、パターンの反転によって、1つの設計内に描き、両タイプのフィーチャを有する1つの鋳型を作成することができた。
【0075】
各TopoUnitは、たった1つのパラメータセットを有するフィーチャを含んだ(フィーチャのタイプ、寸法、および間隙、完全または窪みフィーチャ、ピラーまたはピット)。各パラメータセットを4回繰返した。
【0076】
TopoChip製作
ポリ(L−乳酸)(PLLA)(Mw:267000gmol−1)を、クロロホルム(Merck、分析品質)に溶解させ、10重量%の溶液を得た。溶液を、250〜1000μmの種々の初期鋳込み厚さ(di)の、マイクロパターン化した鋳型に鋳込みした。プロセス可能性を支持して、500μmのdiを選択し、基準として、生じた最終厚さ(df)は約50/80μm(フィーチャなし/フィーチャあり)であり、示される結果は、別に述べられなければ、この厚さのシートである。
【0077】
溶媒を蒸発させて、ポリマの固化をもたらした。鋳型マイクロパターンの反転複写を組込んだ、生じた濃厚ポリマシートは、Milli−Q水中で少なくとも1時間湿らせた後、鋳型から解放することができた。続いて、シートを徹底的にMilli−Q水中で最低1日洗浄し、制御雰囲気において乾燥させた(T=19〜20℃)。
【0078】
溶媒鋳込みおよび蒸発が、TopoChip製作の成功をもたらす。フィーチャの高い複写品質をPLLAについて観察した。ポリマTopoChipのSEMピクチャについて、図3を参照されたい。しかし、第2のTopoChip設計を組込んだ鋳型でTopoChipを製作しなかった。
【0079】
TopoChipの細胞播種
マウスES細胞の培養
マウス胚性幹細胞系IB10を、Smith et al.(Dev. Biol. 1987年,121(1),1−9)に記載されるように培養した。手短に、細胞を、ゼラチンコーティングされた組織培養フラスコ上に、5000〜10000細胞/cm2の密度でプレーティングした。マウスES細胞を、4.5mg/mlのD−グルコース、10%のウシ胎仔血清(mES細胞培養用に選択されたバッチ、Greiner)、0.1mMの非必須アミノ酸(NEAA、
Sigma)、4mMのL−グルタミン(Invitrogen)、100U/mlのペニシリン(
Invitrogen)、100μg/mlのストレプトマイシン(Invitrogen)および50%のバッファロラット肝細胞馴化mES増殖培地を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Biowhittaker)から成る50%のmES増殖培地において培養した。使用に先立ち、1000U/mlの白血病抑制因子(Esgro、Chemicon International)および50μMの2−メルカプトエタノール(Gibco)を培地に付加した。細胞を、37℃の加湿した5%CO2インキュベータで増殖させ、コンフルエントに達する前に0.05%のトリプシン/EDTAで継代した。
【0080】
640000の細胞を、2つのチャンバスライド(Lab-tekチャンバスライド、Nalge
Nunc International)に配置した2×2cmのTopoChip上に播種した。チャンバスライドの内側に、Viton 75, Compound 51414ガスケット(Eriks、オランダ)を用いて、チップを固定した。
【0081】
細胞播種の均一性を達成するために、播種装置を、Park et al.(Lab Chip 2006年,6(8),988−994)に記載される技術で製作した。ポリメチルメタクリレートのマイクロマシニングによって装置を製作した。播種装置は、TopoChipの配置に対して0.1mmの溝を含む。これはまた、入口容器および出口容器を有する(図4参照)。
【0082】
細胞の養分を維持するために、流速140μl/minを用いる培地流のための入口および出口を(図5に示されるように)含めることで播種装置を改良することによって、培地の連続的な層流を達成することができる。
【0083】
トランスジェニックチャイニーズハムスタ卵巣細胞
マイクロアレイスキャナベースの画像化を試験するために、構成的活性化プロモータCMVの制御下でGFPを発現するチャイニーズハムスタ卵巣細胞を用いた。細胞を、DMEM、10%のFBSおよび100U/mlのペニシリン(Invitrogen)、100μg/mlのストレプトマイシン(Invitrogen)を用いる組織培養フラスコ内で、培養した。
【0084】
種々の濃度の細胞を、播種装置を用いてTopoChip上に播種し、蛍光顕微鏡を用いて播種の均一性を調べるために、播種1時間後にチップを画像化した。
【0085】
マウスES細胞培養およびトランスジェニックチャイニーズハムスタ卵巣細胞
図6および図7は、この技術を用いてTopoUnitにおいて均一な細胞播種密度が達成されることを示す。図8は、マイクロアレイスキャナを用いる蛍光アッセイによって、
TopoChipのハイスループットスクリーニングを実行することができることを実証する。マウス胚性幹細胞による実験は、この細胞が、表面フィーチャにおける体系的変動および秩序変動への細胞骨格形状の変化に反応することを示す。
【0086】
実施例2
TopoChipの製作
トポグラフィを、フォトリソグラフィおよびエッチングを用いてシリコンマスタの2cm×2cm領域に作成した。設計は、TopoUnitと呼ばれる90μm×90μm平方領域に分配された表面トポグラフィにおける約8000の変動から成った。各TopoUnitを4回繰返し、残りを空白のTopoUnitで満たすことによって最終的に40000のTopoUnitでTopoChipを構成した。Obducat Hotエンボシング/Nano Imprintツール(Obducat AB、スウェーデン)を用いて、熱エンボス加工を行った。シリコンマスタを被覆するインプリンティングシステムにPLAシートを搭載することによって、ポリママイクロパターン化チップを産生した。チャンバを閉鎖するとインプリンティングが進むので、プレスを、マスタおよびマスタ材料の下層の一片の双方と接触させた。3MPa圧力のインプリンティング力を加える前に、PLAのTg(60℃)を20℃超える80℃までマスタ−ポリマ−基板サンドイッチを加熱した。600秒の所定のエンボス加工時間後、加えた力を維持しながら、そのTg未満の38℃まで温度を下げた。この温度に達すると、圧力を解放した。その後、マスタをポリマから手作業で分離させる前に、ポリマを、室温にまで徐々に冷却させた。
【0087】
細胞培養
不死化ヒト間葉幹細胞系を細胞培養実験に用いた。細胞を、最小必須培地(αMEM、
Life Technologies)、10%のFBS(Cambrex)、2mMのL−グルタミン(Life
Technologies)、100ユニット/mlのペニシリン(Life Technologies)、および10μg/mlのストレプトマイシン(Life Technologies)から成る培地において培養した。細胞を、37℃の加湿した5%CO2インキュベータで増殖させ、コンフルエントに達する前に0.05%のトリプシン/EDTAで継代した。TopoChip上に播種するために細胞を用いる24時間前に、フラスコの培地を、FBSを欠いた培地で置き換えて、細胞を餓死させ、細胞周期をG0期に同期させた。
【0088】
1.8×106を、特注のPMMA播種装置に配置した2cm×2cmTopoChip上に播種し、蓋を閉めると、チップの表面の全体にわたって細胞が等しく分布した。細胞を沈下させ、2時間付着させ、その後、播種装置を、蠕動ポンプを用いて100μl/minの割合で培地の連続かん流にさらした。
【0089】
免疫染色
培養の8時間後、細胞をPBSで洗浄し、4重量%のパラホルムアルデヒドで15分間室温にて固定した。その後、細胞をPBSで再度洗浄し、0.01%のTriton-X 100溶液で4分間透過処理した。サンプルをPBSで再度すすぎ、3%のウシ血清アルブミンで30分間ブロッキングした。その後、サンプルを、ヒトKi−67(sc-15402、SantaCruz Biotechnology, Inc.)に抗する1:200希釈の一次抗体と、加湿チャンバにおいて2時間インキュベートした。サンプルを洗浄し、その後、1:1000の二次ヤギ抗ウサギAlexa 488(Molecular Probes)合成抗体と、暗所の加湿チャンバにおいて1時間インキュベートした。サンプルを再度洗浄し、1:40のA lexa 568 Phalloidin(Molecular
Probes)および1μg/mlのDAPIで20分間染色した。
【0090】
画像化
サンプルの画像化を、共焦点ハイコンテントスクリーニングシステム(BD Pathway 435)を用いて行った。手短に言えば、3プローブサイクルでマクロを作成することによって、チップ全体のモンタージュ画像を作った。
【0091】
画像分析
CellProfilerソフトウェアを用いて画像分析を行った。手短に言えば、画像化後に得たモンタージュ画像を.png形式に変換した。その後、画像を、グリッドアルゴリズムを含む特注のパイプラインを通して走らせて、TopoUnitを識別した。その後、DAPIおよびAlexa 488の画像を用いて、細胞数、およびTopoUnitあたりの増殖細胞数を定量化した。
【0092】
結果
熱エンボス加工によって産生されたTopoChipは、多数の複写にわたって一貫性のある、よく規定された表面トポグラフィを有した。加えて、顕著なトポグラフィパターン化されたフィールドの正確なアレイが、細胞挙動の自動ハイスループット分析を実行可能とした。TopoUnitの端から端にわたって、細胞を均一に分布させることができた。図9aは、
TopoUnit間の細胞の度数分布を示す。手短に言えば、80%を超えるTopoUnitは、6〜14の細胞で満たされた。さらに、Ki-67抗体染色について画像を分析し、1467TopoUnitの領域全体にわたってTopoUnitあたりのKi-67陽性細胞数を定量化することができた。これらの結果は、本技術の有効性および実行可能性を説明するものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質表面とその環境との相互作用を分析するハイスループットスクリーニング方法、およびハイスループットスクリーニングを実行するための装置に向けられる。
【背景技術】
【0002】
従来、臨床用途に使用することができる物質の広範囲に及ぶ調査が存在した。臨床用途に幅広く使用される物質の重要な例は、チタン製インプラント、アマルガム歯科インプラント、およびプラスチック心臓弁である。ほとんどの物質の使用を成功させる鍵は、それらの生物学的不活性、すなわち物質と周囲組織との最小限の相互作用であった。
【0003】
これらの有利な特性にもかかわらず、正常組織の完全修復が理想的な治療であると一般的に認められている。好ましいアプローチは、機械的支持を一時的にもたらすことができるが、最終的に分解して、修復された正常組織に場所をあける物質を埋め込むことである。説明に役立つ実例は、分解可能な縫合糸である。創傷治癒後、縫合糸はもはや必要とされず、分解する。分解可能な多くのポリマシステムが適用可能である。骨再建などの特定の分野では、分解可能なセラミック材、およびポリマ/セラミック複合体も用いられている。
【0004】
骨および軟骨外科手術の分野において、分解可能なインプラントがさらに好ましい。この分野の主な外科治療は、骨または代用骨と連結させる金属医療インプラントの使用に依拠している。このインプラントは、良好な臨床結果を得るために、骨組織にうまく組込まれなければならない。過去数十年の間に、この領域において大きな進展および結果が達成されてきたが、長期間の関節置換術を成功させるには、時間とともに緩むインプラントは引き続き大きな問題である。現行の物質では、より大きな骨欠損の橋渡しを達成すること、および長期間の安定性をそれだけで維持することは、できない。これらの問題を解決するための、患者自身から取出した骨移植片の使用は、15〜30パーセントの比較的高いドナー部位の罹患率が付随する。人工股関節置換手術を受けた患者の20%もが、最初の外科手術の10〜15年以内にプロテーゼ周りの骨損失を来たし、脊椎固定手術においては患者の20〜30%が、不充分な固定を得ている。さらに、近未来の患者人口は、かなりの数の若年患者を含むであろうから、長期間の無菌性インプラント弛緩に関する問題が劇的に増加すると予測される。
【0005】
体内でのインプラントの生体適合性/生体統合性は、伝統的に医学、表面科学、物質科学、および分子生物工学に属するプロセスを含んでおり、きわめて複雑である。インプラントが体内に挿入された後の数ミリ秒以内に、生理学的液体由来の水、たんぱく、および他の生体分子から成る生体層が、インプラント表面に形成される。周囲組織由来の細胞が、インプラント周りの領域へ移動する。インプラント表面の特性は、細胞との相互作用に強く影響を及ぼす。したがって、生体適合性を最適化するには、インプラント表面の細胞生物学的特性に及ぼす影響が、非常に重要である。加えて、細胞の特性、たとえばシグナル分子によって細胞外基質を介して通信することができる細胞の能力は、良好な生体適合性にとって重要である。これらの機構のすべてが、組織のインプラントに対する反応に寄与しており、インプラントが患者の骨において充分な機械的強度によってうまく固定されているか、または、最終的に無菌性弛緩および手術の失敗をもたらすであろうインプラントに対する炎症反応が生じているか、を決定する。
【0006】
医療装置またはインプラントの物質と、その周辺組織または細胞との相互作用は、表面トポグラフィを調整することによって、改善することができるということが一般的に認められている(国際公開第2006/114098号参照)。
【0007】
表面トポグラフィは、たとえば細胞配向、細胞接着および増殖、ならびに/または細胞分化に影響を及ぼし得ることが示されてきた。
【0008】
細胞配向は、たとえば腱修復(Curtis et al. Eur. Cell Mater. 2005年,9,50−57)および心筋細胞配向(Deutsch et al. J. Biomed. Mater. Res. B 2000年,53(3),267−275)について記載されたような生体物質で生成されたパターンによって制御することができる。近年、本発明者らも、マイクロパターンポリマ設計による、C2C12マウスのプレ筋芽細胞およびMC3T3マウスのプレ骨芽細胞のアライメントを実証した(Papenburg et al. Biomaterials 2007年,28(11),1998−2009)。
【0009】
物質への細胞の接着は、物質と、隣接する骨組織との接触を強化するので、たとえば骨の外科手術の分野において、所望の特性であり得る。反対に、接着は、人工大動脈弁が埋め込まれる場合などの他の用途においては、不所望となり得る。細胞接着は、文献において広く記載されるような生体物質表面のトポロジ設計によって、制御することができる(たとえばDen Braber et al. J. Biomed. Mater. Res. A 1998年,40(2),291−300;Van Kooten et al. J. Biomed. Mater. Res. B 1998年,43(1),1−14;およびThapa et al. J. Biomed. Mater. Res. A 2003年,67(4),1374−1383参照)。たとえば、表面粗さが、細胞表面受容体のインテグリンファミリの特性に影響を及ぼす(Luthen et al. Biomaterials 2005年,26(15),2423−2440)。加えて、本発明者らは、近年、ヒト間葉幹細胞の増殖に及ぼすポリマ繊維径および表面トポグラフィの影響を記載した(Moroni et al. Biomaterials 2006年,27(28),4911−4922)。
【0010】
さらに、表面トポグラフィは、細胞分化に影響を及ぼし得る。細胞の発生運命決定に及ぼす細胞形状の影響を研究するために、幾何学的に規定された形状への細胞パターニングが広く使用されてきた(Chen et al. Science 1997年,276(5317),1425−1428)。細胞形状が幹細胞の分化を制御することができることを説明する古典的な実験において、異なる大きさの接着表面のパッチを生成するために、マイクロパターニングが使用された(McBeath et al. 2004年,6(4),483−495)。小パッチ上で増殖したヒト間葉幹細胞群(hMSCs)は、丸いままであり、脂肪細胞に選択的に分化したが、大パッチ上で増殖したhMSCsは、広がって骨芽細胞に分化した。この考え方に従えば、細胞形態を操作することができる生体物質は、細胞分化を潜在的に制御することができるだろう。生体物質研究の分野にとっての難題は、所望の用途に適したトポグラフィを規定することにある。
【0011】
しかし、現在まで、医療装置のその周囲組織との表面トポグラフィを介した相互作用を操作するための生体物質の設計は、少数の変化によって特徴づけられる、主に合理的設計または試行錯誤を通して、実行されてきた。
【0012】
インプラントおよび医療器具における使用のための生体物質が、試行錯誤の設計にさらされる。他の多くの用途においても、物質とその環境との相互作用が、物質の有効性および/または適合性に重要な役割を果たしている。ほとんどの場合、物質のトポグラフィは、このような相互作用の重要な要因である。というのも、物質はその環境と、表面トポグラフィを介して接触しているからである。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、膨大な数の変異のハイスループットスクリーニングを可能とする、トポグラフィのライブラリと特定の環境との相互作用を分析するスクリーニング方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、物質および表面トポグラフィの、細胞および/または組織親和性のハイスループットスクリーニング方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、利用中に、ステント、縫合糸、およびペースメーカなどの、人体と接触する医療装置の製造に使用することができる材料のスクリーニング方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、生体臨床医学、薬剤学、腫瘍学、再生医学、神経学、および家庭用品において使用される、物質および/またはトポグラフィの適合性を分析するハイスループットスクリーニング方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、軟骨および/または代用骨として使用されるのに適した物質のスクリーニング方法を提供することである。
【0018】
これらの目的の1つ以上は、少なくとも一部が異なるトポグラフィを有する多数のユニットを有するマイクロアレイを用いることによって、達成することができるということが分かった。
【0019】
したがって、第1の態様において、本発明は、物質の表面と環境との相互作用を分析するハイスループットスクリーニング方法であって、
該物質を含み、かつ少なくとも一部が異なるトポグラフィを有する多数のユニットを有するマイクロアレイを提供し、
該多数のユニットの少なくとも一部を、前記環境と接触させ、
1以上の前記ユニットと前記環境との相互作用について前記マイクロアレイをスクリーニングすることを含む方法に向けられる。
【0020】
本発明者らは、本発明に従えば、膨大な量の異なる物質および/または異なる表面トポグラフィを、環境との具体的な相互作用についてスクリーニングすることが可能であることを発見した。本発明は、良い候補を見出すために、潜在力のある物質および表面トポグラフィの迅速かつ効率的なスクリーニングを可能とする。この候補は、より詳細に調査することができる。たとえば、これは、利用中に細胞、細胞培養物および/または組織に接触する、医療装置およびインプラントの改良の莫大な可能性を広げる。
【0021】
本発明の方法に従えば、種々の環境が可能である。環境は例えば、組織、細胞、複合分子混合物(体液、土壌、海水、空気、細胞溶解物、器官または全有機体、老廃物、尿、糞便など)を含み得る。しかし、環境は特定の分子を含むことも可能である。環境が細胞、複合分子混合物または特定の分子を含む場合、本発明は、マイクロアレイを、前記細胞、前記複合分子混合物または前記特定の分子とそれぞれ接触させることを含む。
【0022】
物質の構造および/または表面特性を有利に変動させることによって、日常的な物質(生体物質など)を、単にトポグラフィを変化させるだけで、利用することができる。ゆえに、込み入った組み換えたんぱくまたは複雑な化学的構造は、必要とされない。物質トポグラフィの戦略的設計は、環境との相互作用を改良することができる。
【0023】
一実施形態において、マイクロアッセイは、生体適合性ポリマなどの生体適合性物質を含む。物質は、生分解性である。生分解性ポリマの適した例は、ポリエチレンオキシド/ポリブチレンテレフタレートコポリマ(PEO/PBT)、ポリ(乳酸)(PLA)およびポリ(グリコール酸)(PGA)などのポリエステルファミリおよびこれらのコポリマのポリマ、ポリラクトン(ポリ(ε−カプロラクトン)など)、ポリカーボネート(トリメチレンカーボネートなど)、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ならびにこれらの誘導体、を含む(Gunatillake et al.,Eur. Cell Mater. 2003年,5,1−16)。コポリマおよび/または異なるポリマの混合物を、本発明のマイクロアレイにおいて使用することもできる。
【0024】
マイクロアレイにおいて含むことができる他の適切な物質は、セラミックス、半導体、金属、金属酸化物、金属窒化物、合金、ポリマ/セラミック複合体、炭素、ならびにこれらのコポリマおよび/または混合物、を含む。必要に応じて、これらの物質を、適切なポリマと組合わすことができる。
【0025】
マイクロアレイは、多数のトポグラフィックユニットを含む。トポグラフィックユニットの量は、広範囲に変動することができる。トポグラフィックユニットの量は多いので、1つのバッチにおいて細胞適合性について大量のトポグラフィックユニットをスクリーニングすることができるということが有利である。たとえば、マイクロアレイは、少なくとも100のトポグラフィックユニット、好ましくは少なくとも10000のトポグラフィックユニット、より好ましくは少なくとも30000のトポグラフィックユニット、を含むことができる。トポグラフィックユニット量の上限は、実際上の理由で、約300000のトポグラフィックユニット、または250000のトポグラフィックユニットであるが、本質的に制限されない。このことは、国際公開第02/02794号と対照的である。ここに言及される本発明は、96,384または1536のウェルを有する装置に限定される。さらに、本発明は、異なる幾何形状の熱絶縁ウェルを有する。本発明は、同じ幾何形状を有し、均一に変動可能なウェルを有する。
【0026】
単一のトポグラフィックユニットの大きさは、用途に応じて変動可能である。単一のトポグラフィックユニットは、例えば、500〜25000μm2、または1000〜10000μm2などの、100〜50000μm2以上の表面積を有する。
【0027】
ユニットの少なくとも一部のトポグラフィは、たとえば表面多孔性、表面粗さ、および/または形状において、異なり得る。本発明の重要な態様は、表面フィーチャを設計することができること、および加工のプロセスが、設計されたトポグラフィを再生するように充分に制御されること、である。これは、ポリマの混合によって異なる表面粗さを生成するのに、微細加工ではなく組合せ化学が利用される方法を記載する、米国特許出願公開第2006/0240058号と対照的である。この出願において、表面トポロジの幾何形状は、制御することができない。ユニットの表面多孔性は、20〜70%などの、0〜90%の範囲で変動し得る。孔は、1nm〜50μmなどの、50μm以下の平均細孔径を有し得る。表面粗さは、5〜50ナノメートルから5〜10μmの範囲で変動してよい。ユニットの少なくとも一部の疎水性/親水性も、変動し得る。さらに、ユニットの少なくとも一部に、特定の官能基を表面に付与することが可能である。
【0028】
ユニットのすべてまたは一部は、マイクロアレイの表面によって規定される平面内に、1以上の寸法の、マイクロメートルまたはナノメートルスケールのフィーチャを含むことができる。ここで使用される用語「マイクロメートルスケール」は、1〜1000μmの範囲の長さスケールに言及することを意味する。ここで使用される用語「ナノメートルスケール」は、1〜1000nm、特に1〜100nmの範囲の長さスケールに言及することを意味する。フィーチャはたとえば、マイクロアレイの表面から延在する突起などの構造的フィーチャであり得る。突起は、円形突起(たとえば円または楕円)、および多角形、三角形、矩形、正方形、六角形、星形、平行四辺形などの角を含む形状を有する突起などの、異なる断面幾何形状を有することが可能である。トポグラフィックユニットのさらなる形状が、たとえば、参照によって本明細書に組込まれる国際公開第2006/114098号において見ることができる。マイクロアッセイのトポグラフィックユニットは、完全に人工的であってよく、または自然において観察される表面構造を模倣してもよい。
【0029】
フィーチャは、1〜5μm、5〜10μm、10〜25μm、25〜50μmまたは50〜100μmの範囲などの、1〜100μmの少なくとも1つの側方向に、側寸法を有し得る。好ましくは、少なくとも1つの側寸法は、1〜10μmの範囲にある。フィーチャの断面積内のあらゆる点から、断面積の端までの最短距離は、好ましくは最大20μm、より好ましくは最大10μm、さらに好ましくは最大5μm、たとえば最大2μmである。
【0030】
あらゆるマイクロメートルスケールのフィーチャとその最近傍との間の最大距離、または間隙は、1〜5μm、5〜10μm、10〜15μm、15〜20μm、20〜30μm、または30〜50μmの範囲などの、1〜50μmの少なくとも1つの側方向に、側寸法を有し得る。好ましくは、側方向におけるフィーチャとその最近傍との最大距離は、好ましくは最大30μm、より好ましくは最大10μm、さらに好ましくは最大5μm、たとえば最大2μmである。
【0031】
フィーチャの深さ/高さ、すなわちマイクロアレイの表面から突出する方向のフィーチャの線寸法は、ナノメートルまたはマイクロメートルスケールであり得る。ゆえに、フィーチャは少なくとも1nmの高さ/深さを有してよい。高さ/深さは、50μm、または100μmでさえあり得る。したがって、フィーチャは、50〜100nm、100〜500nm、500〜1000nm、1〜2μm、2〜5μm、5〜10μm、10〜20μm、20〜30μm、30〜40μm、または40〜50μmの範囲などの、1nm〜50μmの範囲の高さ/深さを有し得る。いくつかの実施形態において、すべてのフィーチャは実質的に同じ高さを有するが、他の実施形態において、フィーチャは異なる高さを有してよい。
【0032】
環境が細胞を含む場合、1またはそれ以上の細胞を個々のユニットに与え、細胞を比較的粗い表面に配置させることが可能であるが、細胞を、細胞寸法に対する、突起の相対寸法および/または表面粗さに応じて、特定の形状のウェルに配置させることも可能であるウェルの場合、異なるウェル内に細胞を保つこと、および細胞がウェルのリッジを超えて広がるのを回避すること、が重要である。これは、たとえば、フィーチャを、細胞接着性もしくは反発性たんぱくで、および/または予測される形状の内部もしくは上に細胞を押し付ける化学物質で、コーティングすることによって、制御することができる。このようなたんぱくおよび/または化学物質は、ステンシル技術および/またはマイクロフルイディクスを用いて、付与することができる(Dusseiller et al,Lab Chip 2005年,5(12),1387−1392参照)。加えて、ウェルのリッジの寸法および/またはアスペクト比も、細胞付着の制御に寄与し得る。
【0033】
フィーチャの上面および/または側面は、実質的に扁平であり得るが、表面がナノメートルスケールでフィーチャを含む、マイクロメートルスケールのフィーチャを有することも可能である。これは、マイクロメートルスケールおよびナノメートルスケールでのトポグラフィの相乗効果を可能にさせる。
【0034】
多数のユニットは、マイクロアレイ全体にわたって規則的に分配されるのが好ましい。このことは、たとえば細胞のマイクロアレイへの塗布および細胞のスクリーニングといった、多数のユニットの環境との接触およびスクリーニングを促進することができる。しかし、マイクロアレイ全体にわたるユニットのランダムな分配も可能である。
【0035】
本発明のマイクロアレイは、当該技術において知られる方法によって製造することができる。
【0036】
マイクロアレイを製造する方法の例は、フォトリソグラフィおよびエッチングを組合わせる古典的な微細加工である。電子ビームエッチングを金属(シリコン)表面に直接適用することができる。これらの技術は、マイクロメートルスケールでの高度に複雑な構造体の製造を可能とする。しかし、この技術はバルクを製造するシリコンまたはシリコンベースの物質を要求するので、物質の選択が制限される。随意的に、これらの物質の、特定の環境との接触を増大させるために、コーティングなどのポストプロセシング工程を実行することができる。コーティングは、例えば、たんぱく、シラン、炭素、コラーゲン、およびバイオポリマ(ヘパリン、ヒアルロナンなど)などを含み得る。物質の性質にあまり制限されない他のエッチング技術は、マイクロパターンポリマに利用することができる気体プラズマエッチング、および構造化ポリマを直接加工するために光重合プロセスとして使用することができる(マイクロ)ステレオリソグラフィ、である。
【0037】
マイクロアレイを製造する方法の他の例は、熱エンボス加工またはソフトリソグラフィなどの複製方法である。これらの方法は、古典的な微細加工よりも広い範囲の物質を許容する。熱エンボス加工は、融解物から処理することができる物質を用いるが、ソフトリソグラフィは、ポリ(ジメチル)−シロキサン(PDMS)などのエラストマを主に使用する。ソフトリソグラフィにおいて、足場表面にインクマイクロパターンを作成するためにスタンプを生じさせる。続いて、インクのない表面部分にコーティングが施される。ソフトリソグラフィによる正確なパターニングのために、剛表面が好ましい。
【0038】
マイクロアレイを作製する簡易な方法は、鋳込みによる膜作製方法である。物質(ポリマ、セラミック、ポリマ/セラミック複合体またはポリマ混合物など)を適切な溶媒に溶解させることによって、溶液が調製される。溶液は、構造化表面/鋳型(通常、従来のクリーンルーム技術によって準備する)に鋳込みされ、溶媒蒸発のために静置する。その結果、表面のレプリカを物質に再生する(たとえばM. Mulder, Basic principles of
Membrane Technology, 第2版、オランダ、ドルドレヒト、Kluwer academic publishers, 1996年参照)。
【0039】
少なくとも一部が(たとえば、細胞への養分拡散のための組織工学の分野において興味深い)異なる多孔性を有する多数のユニットを含むマイクロアレイは、相分離プロセスを用いて製造することができる。マイクロアレイの製造に適した相分離プロセスは、参照によって本明細書に組込まれる国際公開第02/43937号に記載されている。
【0040】
相分離マイクロ成形(PSμM)は、合成膜の製作において主に使用される相分離プロセスに基づく複製技術である。このプロセスは、非常に広範囲のポリマを対象とする。PSμMにおいて、相分離は、マイクロ〜サブマイクロメートルスケールでの構造体の複製と組合わされる(国際公開第02/43937号参照)。第一に、マイクロ〜ナノ構造化マスタ鋳型を、マイクロエレクトロニクスおよびフォトリソグラフィに由来する周知の技術に基づいて、作製する。その後、所望のポリマ溶液が、マスタに鋳込みされる。相分離は、たとえば、溶媒と混和するポリマの非溶媒に、鋳込みされるポリマ溶液を入れることによって(液体誘導相分離)、または温度の低下によって(温度誘導相分離)、誘導することができる。相分離は、マスタ鋳型のマイクロ〜ナノサイズの三次元構造に鋳込みされたポリマを、凝固させる。その後、ポリマの微細構造体が、マスタ鋳型から放出され得る。ポリマ濃度は、たとえば1〜20重量%であり得る。このプロセスにおいて使用される溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、ジオキサン、クロロホルム、アセトン、トルエン、アルカンおよびベンゼンを含み得る。このプロセスにおいて用いられる非溶媒は、水、アルコール、アルカン、ジエチルエーテルなどを含み得る。温度の低下は、通常、ポリマのTc未満の温度低下であり、たとえば、10℃以上の低下であり得る。
【0041】
生じるポリマフィルムは、ポリマ溶液および非溶媒の組成に応じて、相分離後に固有の多孔性を示し、多孔性の微細構造化ポリマをもたらし得る。さらに、この技術は、ポリマ物質にだけでなく、熱分解または焼成などのポストプロセシングを用いる(セラミックス、金属または炭素などの)無機物質にも、トポグラフィのフィーチャを準備するのに使用することができる。これを達成するのに可能性のある方法は、ポリマおよびセラミックの混合溶液を取り、それを沈殿物とするものである。随意的に、ポリマを、温度処理によって焼き尽くし、同時にセラミックを焼成することができる。
【0042】
少なくとも一部のトポグラフィックユニットには、ペプチド、たんぱく、糖類、抗原、抗体、DNA、RNA、脂質、および/または成長ホルモンなどの生物活性化合物を付与することが可能である。1またはそれ以上のこのような生物活性化合物の存在、および生物活性化合物の環境(細胞など)との相互作用は、物質に指示的特性を加えることによって、たとえば創傷治癒反応を誘導するのに、利用することができる。例として、Arg−Gly−Aspアミノ酸配列は、接着受容体のインテグリンファミリと相互作用することが知られており、ポリエチレングリコール(PEG)などの非接着表面の、Arg−Gly−Aspペプチドによるコーティングは、細胞の結合および拡散を強く改善する。代わりに、BMP2およびIGF−1などの骨形成に関与する組み換えたんぱくが、組織再生の制御された放出戦略に用いられる(たとえばChen et al.,Growth Factors 2004年,22(4),233−241およびLutolf et al.,Nat. Biotechnol. 2005年,23(1),47−55参照)。
【0043】
一実施形態において、多数のユニットの少なくとも一部が接触する環境は、細胞を含む。細胞は有利には、(全能細胞、多能性細胞または多分化能幹細胞などの)幹細胞であり得る。なぜなら、この細胞は、自己複製し、特殊化した細胞を生じさせる能力を有するからである。しかし、他の細胞型も適用可能である。軟骨および骨の用途に、間葉幹細胞が非常に適している。なぜなら、この細胞は、骨および軟骨のすべての細胞型を産生することができるからである。間葉幹細胞は好ましくはヒトのものである。ヒト間葉幹細胞は、骨髄に由来し得る。好ましい実施形態において、細胞が使用される。多数のユニットの少なくとも一部の、細胞との接触は、単細胞によってin vitroで実行することができるが、たとえばマイクロアレイをin vitroで組織培養物に埋め込むことも、またはマイクロアレイをin vivoで埋め込むことでさえも、可能である。最後の可能性の例は、内皮付着をin vivoでスクリーニングすることができる多数のトポグラフィが付与されるステントである。
【0044】
細胞培養において生じる変異を考慮して、少なくとも10回、好ましくは少なくとも100回など、同じ培養物の細胞で物質およびそのトポグラフィを2度以上スクリーニングすることが推奨される。加えて、以下の実施例において説明するように、各TopoUnit(フィーチャセット)は、各TopoChip上で少なくとも4回繰返すことができる。
【0045】
本発明の特別な実施形態に従えば、マイクロアレイ上の多数のトポグラフィックユニットの少なくとも一部は、自然発生的な細胞型、および/または遺伝子工学を用いるなどした改変細胞型を含む、骨を形成することができるあらゆる種類の細胞であり得る、骨形成細胞である。
【0046】
環境の、マイクロアレイ上の多数のトポグラフィックユニットの少なくとも一部との局所的接触が、マイクロフルイディクスによって実現することができる。このことは、たとえば、マイクロアレイ上の細胞の位置調整を許容する。実行されるアレイに応じて、トポグラフィックユニットあたりの細胞数は、ユニットあたり1細胞に至るまで変動させることができる。
【0047】
さらに、環境が細胞を含む場合、顕微鏡技術を用いてマイクロアレイ上へ置いた後に細胞の位置および数を判定するために、細胞の核の染色(たとえばヘキスト染色)または細胞骨格の染色(たとえばファロイジン染色)を利用することが有利であり得る。これらの染色は、どのユニットが細胞を有するか、どのユニットが細胞を有していないか、およびどのユニットが2以上の細胞を有しているか、を示すことができる。
【0048】
実行されるスクリーニングに応じて、多数のユニットは、マイクロアレイのスクリーニング前に、ある期間、環境にさらされる。たとえば、物質への細胞付着が評価される場合、スクリーニング前の数時間の暴露で充分であるが、遺伝子発現が分析される場合、1日または2日などのより長い期間が所望される。
【0049】
1以上のトポグラフィックユニットと環境との相互作用は、あらゆる測定可能な物理的、化学的、および/または生物学的相互作用を含み得る。このような相互作用の例は、化学反応、スペクトルシフト、水素結合、受容体−リガンド相互作用、電子移動、エネルギ移動、接着、静電相互作用、ファンデルワールス結合、親水性/疎水性相互作用、双極子間相互作用、抗原−抗体結合、特定の細胞挙動(細胞配向、細胞接着、細胞増殖、細胞分化、および/または1以上のたんぱくの発現など)を含む。
【0050】
特定の細胞挙動は、たとえば、骨形成系統または軟骨形成系統に特異的な分化などの、細胞の系統特異的分化などの、細胞の分化を含み得る。
【0051】
検出目的で、1以上のトポグラフィックユニットと環境との相互作用は、たとえば1以上の発光たんぱくの発現による、(蛍光または燐光などの)光放出を含むことが有利であり得る。本発明の好ましい実施形態に従って、相互作用は、1以上の骨特異的プロモータ(BSP、オステオカルシン、コラーゲンI型、および/またはOSE1など)、および/または1以上の軟骨特異的プロモータ(コラーゲン2型、COMP、およびコラーゲンX型など)の制御下にある1以上の蛍光たんぱくの発現を含む。相互作用は、特定のたんぱくの放射性標識同位体の発現も含み得る。
【0052】
1以上のトポグラフィックユニットと環境との相互作用は、適切な検出手段を用いて検出することができる。実施例は、発光たんぱく(たとえば緑色蛍光たんぱくおよび関連たんぱく、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼなど)または発光抗体によってもたらされるなどした光信号の検出を含む。光信号は、たとえば、蛍光寿命画像化、および電荷結合素子カメラを用いる発光画像化などから由来する技術を含む顕微鏡法(蛍光顕微鏡法など)を用いることによって、検出することができる。
【0053】
本発明の好ましい実施形態に従って、相互作用は、細胞挙動における変化を表す1以上の調節DNA要素の制御下にある1以上の蛍光たんぱくの発現を含む。実施例は、(BSP、オステオカルシン、コラーゲンI型、および/またはOSE1などの)骨特異的遺伝子のプロモータ、および/または(コラーゲン2型、COMP、およびコラーゲンX型などの)1以上の軟骨特異的プロモータ、を含む。
【0054】
加えて、1以上のトポグラフィックユニットと環境との相互作用は、蛍光または他の方法での標識抗体を用いる免疫組織化学を用いて、観測することができる。相互作用は、遺伝子発現のレベルで観測することもでき、そのために、in situハイブリダイゼーション、およびポリメラーゼ連鎖反応などの様々な技術を利用することができる。ゲノム変化は、蛍光in situハイブリダイゼーションを用いて視覚化することができる。
【0055】
表面の、その環境に及ぼす影響を測定するパラメータは、他の光学的画像化スペクトルを用いることができる。たとえば、核磁気共鳴(NMR)を環境から得ることができ、そのために、NMRベースの画像化のために使用される量子ドットおよび他の分子物質などのプローブを使用することができる。さらに、環境の分子構造を可視化するのに、ラマンイメージングおよび赤外線分光学などの分光イメージングを利用することができる。光学顕微鏡法は、(たとえば表面上で増殖した細胞または組織の)形態学的特徴を検出するのに使用することができる。これは、たとえば、増殖、アポトーシス、付着などの事項の細胞生物学的情報をもたらすことができる。
【0056】
他の検出方法は、原子間力顕微鏡法、電子顕微鏡法、走査型プローブ顕微鏡法、走査型近接場光学顕微鏡法、X線光電子顕微鏡法、X線微量分析、X線回折、および/または表面プラズモン共鳴を含む。
【0057】
トポグラフィックユニットと細胞との相互作用についてマイクロアッセイスクリーニングするために、細胞を蛍光レポータで遺伝子操作することができる。蛍光レポータは、レンチウイルス技術を用いて細胞に導入することができる。たとえば、単細胞レベルで骨または軟骨細胞分化を検出するために、hMSCを蛍光レポータ構築で遺伝子操作することができる。レポータの骨および軟骨特異的発現を確立するために、骨または軟骨のいずれかの組織において独自に活性であるが、非分化hMSCで活性のないプロモータの制御下に、蛍光たんぱくを置くことができる。骨系統について、プロモータは、BSP、オステオカルシン、コラーゲンI型、OSE1から成る骨特異的プロモータの群から選ぶことができる。軟骨系統について、プロモータは、コラーゲン2型、COMP、コラーゲンX型から成る軟骨特異的プロモータの群から選ぶことができる。蛍光たんぱくは、その後、たとえば共焦点レーザ走査顕微鏡法で検出することができる。
【0058】
マイクロアレイスクリーニングの結果は、環境との異なる相互作用を有し得る多数のトポグラフィックユニットである。これらのユニットのフィーチャは、大きな表面上に産生することができ、物質/環境相互作用は、qPCR、レポータアッセイ、生化学アッセイなどの分子生物学的技術のアレイを用いて、さらに詳細に分析することができる。
【0059】
さらなる態様において、本発明は、物質の表面と環境との相互作用のハイスループットスクリーニングを実行する装置であって、
前記物質を含み、少なくとも一部が異なるトポグラフィを有する多数のユニットを有するマイクロアレイと、
前記マイクロアレイを前記環境と接触させる接触手段と、
1以上の前記ユニットと前記環境との相互作用を観測する検出手段と、を含む装置に向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1の設計のマイクロアレイ(TopoChip)の図。
【図2】鋳型の典型的なSEM写真。(a),(b):ポリマシートにピラーをもたらすネガティブフィーチャを有する鋳型。(c)、(d):ポリマシートにピットをもたらすポジティブフィーチャを有する鋳型。各フィールドは100×100μmである。
【図3】フィーチャを有するPLLA TopoChipの典型的なSEM写真。(a),(b):ピットを有するTopoChip。(c),(d):ピラーを有するTopoChip。(e),(f):ピット(e)およびピラー(f)を有するTopoChipの断面。各フィールドは100×100μmである。備考:図3bのTopoChipは図2dの鋳型の反転複写である。(g):リン酸カルシウムで被覆したTopoChipの典型的なSEM写真。(h):チタニウムがスパッタされたTopoChipの典型的なSEM写真。
【図4】細胞播種装置のアセンブリ。
【図5】連続流用アタッチメントを有する改良播種装置。
【図6】トランスジェニックチャイニーズハムスタ卵巣細胞系による均一高密度細胞播種。
【図7】トランスジェニックチャイニーズハムスタ卵巣細胞系の低密度(TopoUnitあたりおおよそ8〜12細胞)播種の蛍光顕微鏡画像。
【図8a】マウス胚性幹細胞を播種したTopoChipであって、AlexaFluor 488ファロイジンで染色し、Genepix pro 4200ALマイクロアレイスキャナを用いて撮像したTopoChip。
【図8b】不死化ヒト間葉幹細胞を播種したTopoChipであって、AlexaFluor 488ファロイジンで染色し、BD Pathway 435で撮像したTopoChip。
【図8c】コンピュータによる自動細胞分析中のセグメンテーションの典型的な写真。
【図9−1】(a):TopoUnit間の細胞の度数分布。
【図9−2】(b)〜(e):不死化ヒト間葉幹細胞の均一な分布を描く細胞播種直後のTopoChipのランダムな光学顕微鏡写真。(f):TopoUnitあたりの陽性細胞数。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明を、以下の非限定の実施例によって説明する。
実施例1
マイクロアレイ(TopoChip)の作製
TopoChipを、マイクロパターニングされた鋳型へのポリマ溶液の溶媒鋳込みによって作製し、これが、鋳型マイクロパターンの反転複写を組込んだポリマシートとなった。トランスジェニックチャイニーズハムスタ卵巣細胞としてマウスES細胞を培養し、蛍光顕微鏡法で分析した。
【0062】
マスク設計および鋳型製作
マイクロパターニングされた鋳型を製作するために、投影マスクを用いて、扁平なシリコンウエハにマイクロパターンがエッチングされる、シリコンマイクロマッチング技術を適用した。
【0063】
投影マスク設計は、市販のソフトウェアCIeWin layout editor version 4.0(WieWeb Software、オランダ、ヘンゲロ)を用いて描いた。クロムマスクを書くために、設計をレーザシステム内にインポートした。このマスクを用いて、パターンを、扁平なシリコンウエハに存在するフォトレジスト層上に投影し、現像後、パターンをフォトレジストに作った。
【0064】
TopoChip鋳型を、2つの工程で製作した。第一に、乾式エッチングによってTopoUnitの壁を作った。第二に、湿式化学エッチングによってフィーチャをもたらした。
【0065】
第1の設計において、異なるパターンをフィーチャリングする100×100μmのフィールド(TopoUnit)を有する、2×2cmのチップを設計した。TopoUnit間のリッジ幅は10μmであった。以下のパターンフィーチャを含めた。
・正方形
・三角形
・円
・八角形
・5点星形
【0066】
これらのフィーチャの寸法を、体系的に2つの範囲にスケールアップした。第1の範囲は、表面粗さを増大させるために細胞サイズ(1〜20μm)以内であり、第2の範囲は、細胞を制限するために細胞サイズ(10〜100μm)を上回った。粗さを増大させるためのフィーチャは、以下の寸法:1,2,3,5,10および20μm、を含んだ。細胞を制限するためのフィーチャは、寸法:10,20,30,40,70および100μm、を含んだ。これらの寸法すべては、特定の範囲内で相互に組合わされて、対称的および非対称的なフィーチャ(すなわち、正方形〜矩形、または円〜楕円)をもたらした。
【0067】
フィーチャ間の間隙について、フィーチャ寸法について同じ値を選び、これをその特定の範囲内ですべてのフィーチャ寸法の組合せに適用した。各TopoUnitは、たった1つのパラメータセット(フィーチャタイプ、寸法、および間隙)のみを有するフィーチャを含んだ。各パラメータセットは、12または13回繰返した。この設計の説明について、図1を参照されたい。トポグラフィのフィーチャの非対称的な、および/またはランダムな配置が、細胞挙動に影響を及ぼし得ることが分かっていたので、各TopoUnitにおいてランダムなパターンを設計するためのアルゴリズムも開発した。TopoChipのスクリーニングから集めた情報は、チップの新たな設計の生成用のより進化的なアルゴリズムを開発するための入力として使用することができる。
【0068】
隆起(「ピラー」)および窪み(「ピット」)双方のフィーチャを得るために、同じマスクを用いて2つの鋳型を製作した。(ポリマチップにおいて)ピラーを生成するために、ネガティブのフォトレジストを用い、(ポリマチップにおいて)ピットを生成するために、ポジティブのフォトレジストを用いた。鋳型のSEMピクチャについて、図2を参照されたい。
【0069】
TopoChipを改良するために、TopoChipの第2の設計を描いた。第2の設計は、3μm以上のフィーチャを含んだ。高い分解範囲での制限を考慮するのに加えて、種々の新たなフィーチャを、既存のフィーチャにおける変異と同様に、含めた。さらに、エッチングプロセスを適合させた。
【0070】
第2の設計において、ここでも2×2cmのチップを設計した。この設計において、TopoUnitは90×90μmであった。TopoUnit間のリッジ幅を10μmに維持して、1つのチップ内に総数40000のTopoUnitをもたらした。以下のパターンフィーチャを含めた。
・正方形
・三角形
・円
・楕円
・5点星形
・六角形
・3点星形
・半月形
・角が取られた円(「パックマン」)
・コントロールとしての、空のフィールド
【0071】
粗さを増大させる範囲内に含まれる寸法は、3,5,7,10,15および20μmであった。細胞を制限するためのフィーチャは、寸法:20,30,40,50,65および80μm、を含んだ。ここでも、これらの寸法すべては、特定の範囲内で相互に組合わされて、対称的および非対称的なフィーチャをもたらした。
【0072】
粗さを増大させる範囲の場合、フィーチャ寸法について同じ値を、フィーチャ間の間隙に選んだ。細胞を制限するための範囲について、以下の間隙値:5,10,15,20,25および30μm、を含んだ。各間隙値を、特定の範囲内でフィーチャ寸法の組合せ毎に適用した。
【0073】
さらに、今まで記載した「完全」フィーチャの隣に、各フィーチャタイプの「凹み」バージョンも描いた。すなわち、フィーチャは、フィーチャの内側に凹み間隙を生成するために、内側に、オリジナルの50%である第2の類似のフィーチャを組込んだ。
【0074】
第2の設計において、ポジティブ(「ピラー」)およびネガティブ(「ピット」)の双方のフィーチャを、パターンの反転によって、1つの設計内に描き、両タイプのフィーチャを有する1つの鋳型を作成することができた。
【0075】
各TopoUnitは、たった1つのパラメータセットを有するフィーチャを含んだ(フィーチャのタイプ、寸法、および間隙、完全または窪みフィーチャ、ピラーまたはピット)。各パラメータセットを4回繰返した。
【0076】
TopoChip製作
ポリ(L−乳酸)(PLLA)(Mw:267000gmol−1)を、クロロホルム(Merck、分析品質)に溶解させ、10重量%の溶液を得た。溶液を、250〜1000μmの種々の初期鋳込み厚さ(di)の、マイクロパターン化した鋳型に鋳込みした。プロセス可能性を支持して、500μmのdiを選択し、基準として、生じた最終厚さ(df)は約50/80μm(フィーチャなし/フィーチャあり)であり、示される結果は、別に述べられなければ、この厚さのシートである。
【0077】
溶媒を蒸発させて、ポリマの固化をもたらした。鋳型マイクロパターンの反転複写を組込んだ、生じた濃厚ポリマシートは、Milli−Q水中で少なくとも1時間湿らせた後、鋳型から解放することができた。続いて、シートを徹底的にMilli−Q水中で最低1日洗浄し、制御雰囲気において乾燥させた(T=19〜20℃)。
【0078】
溶媒鋳込みおよび蒸発が、TopoChip製作の成功をもたらす。フィーチャの高い複写品質をPLLAについて観察した。ポリマTopoChipのSEMピクチャについて、図3を参照されたい。しかし、第2のTopoChip設計を組込んだ鋳型でTopoChipを製作しなかった。
【0079】
TopoChipの細胞播種
マウスES細胞の培養
マウス胚性幹細胞系IB10を、Smith et al.(Dev. Biol. 1987年,121(1),1−9)に記載されるように培養した。手短に、細胞を、ゼラチンコーティングされた組織培養フラスコ上に、5000〜10000細胞/cm2の密度でプレーティングした。マウスES細胞を、4.5mg/mlのD−グルコース、10%のウシ胎仔血清(mES細胞培養用に選択されたバッチ、Greiner)、0.1mMの非必須アミノ酸(NEAA、
Sigma)、4mMのL−グルタミン(Invitrogen)、100U/mlのペニシリン(
Invitrogen)、100μg/mlのストレプトマイシン(Invitrogen)および50%のバッファロラット肝細胞馴化mES増殖培地を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Biowhittaker)から成る50%のmES増殖培地において培養した。使用に先立ち、1000U/mlの白血病抑制因子(Esgro、Chemicon International)および50μMの2−メルカプトエタノール(Gibco)を培地に付加した。細胞を、37℃の加湿した5%CO2インキュベータで増殖させ、コンフルエントに達する前に0.05%のトリプシン/EDTAで継代した。
【0080】
640000の細胞を、2つのチャンバスライド(Lab-tekチャンバスライド、Nalge
Nunc International)に配置した2×2cmのTopoChip上に播種した。チャンバスライドの内側に、Viton 75, Compound 51414ガスケット(Eriks、オランダ)を用いて、チップを固定した。
【0081】
細胞播種の均一性を達成するために、播種装置を、Park et al.(Lab Chip 2006年,6(8),988−994)に記載される技術で製作した。ポリメチルメタクリレートのマイクロマシニングによって装置を製作した。播種装置は、TopoChipの配置に対して0.1mmの溝を含む。これはまた、入口容器および出口容器を有する(図4参照)。
【0082】
細胞の養分を維持するために、流速140μl/minを用いる培地流のための入口および出口を(図5に示されるように)含めることで播種装置を改良することによって、培地の連続的な層流を達成することができる。
【0083】
トランスジェニックチャイニーズハムスタ卵巣細胞
マイクロアレイスキャナベースの画像化を試験するために、構成的活性化プロモータCMVの制御下でGFPを発現するチャイニーズハムスタ卵巣細胞を用いた。細胞を、DMEM、10%のFBSおよび100U/mlのペニシリン(Invitrogen)、100μg/mlのストレプトマイシン(Invitrogen)を用いる組織培養フラスコ内で、培養した。
【0084】
種々の濃度の細胞を、播種装置を用いてTopoChip上に播種し、蛍光顕微鏡を用いて播種の均一性を調べるために、播種1時間後にチップを画像化した。
【0085】
マウスES細胞培養およびトランスジェニックチャイニーズハムスタ卵巣細胞
図6および図7は、この技術を用いてTopoUnitにおいて均一な細胞播種密度が達成されることを示す。図8は、マイクロアレイスキャナを用いる蛍光アッセイによって、
TopoChipのハイスループットスクリーニングを実行することができることを実証する。マウス胚性幹細胞による実験は、この細胞が、表面フィーチャにおける体系的変動および秩序変動への細胞骨格形状の変化に反応することを示す。
【0086】
実施例2
TopoChipの製作
トポグラフィを、フォトリソグラフィおよびエッチングを用いてシリコンマスタの2cm×2cm領域に作成した。設計は、TopoUnitと呼ばれる90μm×90μm平方領域に分配された表面トポグラフィにおける約8000の変動から成った。各TopoUnitを4回繰返し、残りを空白のTopoUnitで満たすことによって最終的に40000のTopoUnitでTopoChipを構成した。Obducat Hotエンボシング/Nano Imprintツール(Obducat AB、スウェーデン)を用いて、熱エンボス加工を行った。シリコンマスタを被覆するインプリンティングシステムにPLAシートを搭載することによって、ポリママイクロパターン化チップを産生した。チャンバを閉鎖するとインプリンティングが進むので、プレスを、マスタおよびマスタ材料の下層の一片の双方と接触させた。3MPa圧力のインプリンティング力を加える前に、PLAのTg(60℃)を20℃超える80℃までマスタ−ポリマ−基板サンドイッチを加熱した。600秒の所定のエンボス加工時間後、加えた力を維持しながら、そのTg未満の38℃まで温度を下げた。この温度に達すると、圧力を解放した。その後、マスタをポリマから手作業で分離させる前に、ポリマを、室温にまで徐々に冷却させた。
【0087】
細胞培養
不死化ヒト間葉幹細胞系を細胞培養実験に用いた。細胞を、最小必須培地(αMEM、
Life Technologies)、10%のFBS(Cambrex)、2mMのL−グルタミン(Life
Technologies)、100ユニット/mlのペニシリン(Life Technologies)、および10μg/mlのストレプトマイシン(Life Technologies)から成る培地において培養した。細胞を、37℃の加湿した5%CO2インキュベータで増殖させ、コンフルエントに達する前に0.05%のトリプシン/EDTAで継代した。TopoChip上に播種するために細胞を用いる24時間前に、フラスコの培地を、FBSを欠いた培地で置き換えて、細胞を餓死させ、細胞周期をG0期に同期させた。
【0088】
1.8×106を、特注のPMMA播種装置に配置した2cm×2cmTopoChip上に播種し、蓋を閉めると、チップの表面の全体にわたって細胞が等しく分布した。細胞を沈下させ、2時間付着させ、その後、播種装置を、蠕動ポンプを用いて100μl/minの割合で培地の連続かん流にさらした。
【0089】
免疫染色
培養の8時間後、細胞をPBSで洗浄し、4重量%のパラホルムアルデヒドで15分間室温にて固定した。その後、細胞をPBSで再度洗浄し、0.01%のTriton-X 100溶液で4分間透過処理した。サンプルをPBSで再度すすぎ、3%のウシ血清アルブミンで30分間ブロッキングした。その後、サンプルを、ヒトKi−67(sc-15402、SantaCruz Biotechnology, Inc.)に抗する1:200希釈の一次抗体と、加湿チャンバにおいて2時間インキュベートした。サンプルを洗浄し、その後、1:1000の二次ヤギ抗ウサギAlexa 488(Molecular Probes)合成抗体と、暗所の加湿チャンバにおいて1時間インキュベートした。サンプルを再度洗浄し、1:40のA lexa 568 Phalloidin(Molecular
Probes)および1μg/mlのDAPIで20分間染色した。
【0090】
画像化
サンプルの画像化を、共焦点ハイコンテントスクリーニングシステム(BD Pathway 435)を用いて行った。手短に言えば、3プローブサイクルでマクロを作成することによって、チップ全体のモンタージュ画像を作った。
【0091】
画像分析
CellProfilerソフトウェアを用いて画像分析を行った。手短に言えば、画像化後に得たモンタージュ画像を.png形式に変換した。その後、画像を、グリッドアルゴリズムを含む特注のパイプラインを通して走らせて、TopoUnitを識別した。その後、DAPIおよびAlexa 488の画像を用いて、細胞数、およびTopoUnitあたりの増殖細胞数を定量化した。
【0092】
結果
熱エンボス加工によって産生されたTopoChipは、多数の複写にわたって一貫性のある、よく規定された表面トポグラフィを有した。加えて、顕著なトポグラフィパターン化されたフィールドの正確なアレイが、細胞挙動の自動ハイスループット分析を実行可能とした。TopoUnitの端から端にわたって、細胞を均一に分布させることができた。図9aは、
TopoUnit間の細胞の度数分布を示す。手短に言えば、80%を超えるTopoUnitは、6〜14の細胞で満たされた。さらに、Ki-67抗体染色について画像を分析し、1467TopoUnitの領域全体にわたってTopoUnitあたりのKi-67陽性細胞数を定量化することができた。これらの結果は、本技術の有効性および実行可能性を説明するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質の表面と環境との相互作用を分析するハイスループットスクリーニング方法であって、
該物質を含み、かつ少なくとも一部が異なるトポグラフィを有する多数のユニットを有するマイクロアレイを提供し、
該多数のユニットの少なくとも一部を、前記環境と接触させ、
1以上の前記ユニットと前記環境との相互作用について前記マイクロアレイをスクリーニングすることを含むことを特徴とするハイスループットスクリーニング方法。
【請求項2】
前記環境は、組織、細胞、複合分子混合物(体液、土壌、海水、空気、細胞溶解物、器官または全有機体、老廃物、尿、糞便など)または特定の分子を含むことを特徴とする請求項1記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項3】
前記相互作用は、化学反応、スペクトルシフト、水素結合、受容体−リガンド相互作用、電子移動、エネルギ移動、接着、静電相互作用、ファンデルワールス結合、親水性/疎水性相互作用、双極子間相互作用、抗原−抗体結合、および/または特定の細胞挙動を含むことを特徴とする請求項1記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項4】
前記特定の細胞挙動は、細胞配向、細胞接着、細胞増殖、細胞分化、および/または1以上のたんぱくの発現を含むことを特徴とする請求項2記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項5】
前記物質は、生分解性および/または生体適合性物質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項6】
前記物質は、ポリエチレンオキシド/ポリブチレンテレフタレートコポリマ、ポリエステルファミリおよびこれらのコポリマのポリマ、ポリラクトン、ポリカーボネート、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ならびにこれらのコポリマおよび/または混合物から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項7】
前記物質は、セラミックス、ポリマ/セラミック複合体、炭素、ならびにこれらの混合物および/または複合体から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項8】
前記マイクロアレイは、少なくとも100のトポグラフィックユニット、好ましくは少なくとも10000のトポグラフィックユニット、より好ましくは少なくとも30000のユニット、たとえば40000〜300000のユニットを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項9】
前記マイクロアレイ内の単一のトポグラフィックユニットの表面積は、100〜50000μm2、たとえば500〜25000μm2、または1000〜10000μm2の範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項10】
前記多数のユニットは、1nm〜100μmの範囲、好ましくは50nm〜50μmの範囲の前記マイクロアレイの表面に垂直な寸法を有する構造的フィーチャを含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項11】
前記ユニットの少なくとも一部のトポグラフィは、表面多孔性、表面粗さ、疎水性および/または形状において異なることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項12】
前記ユニットの少なくとも一部には、ペプチド、たんぱく、糖類、抗原、抗体、DNA、RNA、脂質、および/または成長ホルモンなどの生物活性化合物が付与されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項13】
前記環境は、幹細胞、好ましくは間葉幹細胞、より好ましくはヒト間葉幹細胞を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項14】
前記相互作用は、前記環境において構成される細胞の系統特異的分化を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項15】
前記分化は、骨形成系統または軟骨形成系統に特異的であることを特徴とする請求項13記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項16】
前記相互作用は、1以上の蛍光たんぱくの発現を含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項17】
前記1以上の蛍光たんぱくは、1以上の骨特異的プロモータおよび/またはい以上の軟骨特異的プロモータの制御下にあることを特徴とする請求項12記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項18】
前記1以上の骨特異的プロモータは、BSP、オステオカルシン、コラーゲンI型およびOSE1から成る群から選ばれることを特徴とする請求項13記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項19】
前記1以上の軟骨特異的プロモータは、コラーゲン2型、COMPおよびコラーゲンX型から成る群から選ばれることを特徴とする請求項13記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項20】
前記スクリーニングは、蛍光寿命画像化、および発光画像化などから由来する技術を含む顕微鏡法(蛍光顕微鏡法など)、免疫組織化学、in situハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応、蛍光in situハイブリダイゼーション、核磁気共鳴、ラマンイメージング、赤外線分光学、原子間力顕微鏡法、電子顕微鏡法、走査型プローブ顕微鏡法、走査型近接場光学顕微鏡法、X線光電子顕微鏡法、X線微量分析、X線回折、および表面プラズモン共鳴から成る群から選ばれる1以上を含むことを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項21】
物質の表面と環境との相互作用のハイスループットスクリーニングを実行する装置であって、
前記物質を含み、少なくとも一部が異なるトポグラフィを有する多数のユニットを有するマイクロアレイと、
前記マイクロアレイを前記環境と接触させる接触手段と、
1以上の前記ユニットと前記環境との相互作用を観測する検出手段と、を含むことを特徴とする装置。
【請求項1】
物質の表面と環境との相互作用を分析するハイスループットスクリーニング方法であって、
該物質を含み、かつ少なくとも一部が異なるトポグラフィを有する多数のユニットを有するマイクロアレイを提供し、
該多数のユニットの少なくとも一部を、前記環境と接触させ、
1以上の前記ユニットと前記環境との相互作用について前記マイクロアレイをスクリーニングすることを含むことを特徴とするハイスループットスクリーニング方法。
【請求項2】
前記環境は、組織、細胞、複合分子混合物(体液、土壌、海水、空気、細胞溶解物、器官または全有機体、老廃物、尿、糞便など)または特定の分子を含むことを特徴とする請求項1記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項3】
前記相互作用は、化学反応、スペクトルシフト、水素結合、受容体−リガンド相互作用、電子移動、エネルギ移動、接着、静電相互作用、ファンデルワールス結合、親水性/疎水性相互作用、双極子間相互作用、抗原−抗体結合、および/または特定の細胞挙動を含むことを特徴とする請求項1記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項4】
前記特定の細胞挙動は、細胞配向、細胞接着、細胞増殖、細胞分化、および/または1以上のたんぱくの発現を含むことを特徴とする請求項2記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項5】
前記物質は、生分解性および/または生体適合性物質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項6】
前記物質は、ポリエチレンオキシド/ポリブチレンテレフタレートコポリマ、ポリエステルファミリおよびこれらのコポリマのポリマ、ポリラクトン、ポリカーボネート、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ならびにこれらのコポリマおよび/または混合物から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項7】
前記物質は、セラミックス、ポリマ/セラミック複合体、炭素、ならびにこれらの混合物および/または複合体から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項8】
前記マイクロアレイは、少なくとも100のトポグラフィックユニット、好ましくは少なくとも10000のトポグラフィックユニット、より好ましくは少なくとも30000のユニット、たとえば40000〜300000のユニットを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項9】
前記マイクロアレイ内の単一のトポグラフィックユニットの表面積は、100〜50000μm2、たとえば500〜25000μm2、または1000〜10000μm2の範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項10】
前記多数のユニットは、1nm〜100μmの範囲、好ましくは50nm〜50μmの範囲の前記マイクロアレイの表面に垂直な寸法を有する構造的フィーチャを含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項11】
前記ユニットの少なくとも一部のトポグラフィは、表面多孔性、表面粗さ、疎水性および/または形状において異なることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項12】
前記ユニットの少なくとも一部には、ペプチド、たんぱく、糖類、抗原、抗体、DNA、RNA、脂質、および/または成長ホルモンなどの生物活性化合物が付与されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項13】
前記環境は、幹細胞、好ましくは間葉幹細胞、より好ましくはヒト間葉幹細胞を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項14】
前記相互作用は、前記環境において構成される細胞の系統特異的分化を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項15】
前記分化は、骨形成系統または軟骨形成系統に特異的であることを特徴とする請求項13記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項16】
前記相互作用は、1以上の蛍光たんぱくの発現を含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項17】
前記1以上の蛍光たんぱくは、1以上の骨特異的プロモータおよび/またはい以上の軟骨特異的プロモータの制御下にあることを特徴とする請求項12記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項18】
前記1以上の骨特異的プロモータは、BSP、オステオカルシン、コラーゲンI型およびOSE1から成る群から選ばれることを特徴とする請求項13記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項19】
前記1以上の軟骨特異的プロモータは、コラーゲン2型、COMPおよびコラーゲンX型から成る群から選ばれることを特徴とする請求項13記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項20】
前記スクリーニングは、蛍光寿命画像化、および発光画像化などから由来する技術を含む顕微鏡法(蛍光顕微鏡法など)、免疫組織化学、in situハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応、蛍光in situハイブリダイゼーション、核磁気共鳴、ラマンイメージング、赤外線分光学、原子間力顕微鏡法、電子顕微鏡法、走査型プローブ顕微鏡法、走査型近接場光学顕微鏡法、X線光電子顕微鏡法、X線微量分析、X線回折、および表面プラズモン共鳴から成る群から選ばれる1以上を含むことを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項21】
物質の表面と環境との相互作用のハイスループットスクリーニングを実行する装置であって、
前記物質を含み、少なくとも一部が異なるトポグラフィを有する多数のユニットを有するマイクロアレイと、
前記マイクロアレイを前記環境と接触させる接触手段と、
1以上の前記ユニットと前記環境との相互作用を観測する検出手段と、を含むことを特徴とする装置。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図3f】
【図3g】
【図3h】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9−1】
【図9−2】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図3f】
【図3g】
【図3h】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9−1】
【図9−2】
【公表番号】特表2011−503539(P2011−503539A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531977(P2010−531977)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050686
【国際公開番号】WO2009/058015
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510123127)ユニフェルシテイト トゥヴェンテ (1)
【氏名又は名称原語表記】Universiteit Twente
【住所又は居所原語表記】Drienerlolaan 5,Enschede The Netherlands
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050686
【国際公開番号】WO2009/058015
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510123127)ユニフェルシテイト トゥヴェンテ (1)
【氏名又は名称原語表記】Universiteit Twente
【住所又は居所原語表記】Drienerlolaan 5,Enschede The Netherlands
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]