説明

異サイズ導体共用圧縮スリーブ並びにそれを備えた圧縮端子及び導体接続管

【課題】1サイズの圧縮スリーブを異なるサイズの導体に共用できるようにして、圧縮スリーブのサイズの種類を減らす。
【解決手段】圧縮スリーブ2を小径圧縮スリーブ部2aと大径圧縮スリーブ部2bとで構成する。小径圧縮スリーブ部2aの内外径は、公称断面積が隣り合う小径側2サイズの導体のどちらを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定し、大径圧縮スリーブ部2bの内外径は、公称断面積が隣り合っていて前記小径側2サイズの導体よりも公称断面積が大きい大径側2サイズの導体のどちらを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定する。これにより1サイズの圧縮スリーブ2を4サイズの導体に共用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルの導体の端部に取り付けられる圧縮端子や電力ケーブルの導体同士を接続する導体接続管などで導体圧縮部を構成する圧縮スリーブに関し、特に公称断面積が異なる複数サイズの導体を個別に圧縮接続できる異サイズ導体共用圧縮スリーブと、それを備えた圧縮端子及び導体接続管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルの導体の端部に取り付けられる圧縮端子は、導体の端部を圧縮接続する圧縮スリーブと機器の端子等に締め付け接続される平板部とを一体に形成したものである(特許文献1)。また電力ケーブルの導体同士を接続する導体接続管は、一方の導体を挿入して圧縮接続する第一の圧縮スリーブと他方の導体を挿入して圧縮接続する第二の圧縮スリーブとを導体挿入口を互いに反対方向に向けて一体に形成したものである(特許文献2)。これらの圧縮端子や導体接続管の圧縮接続部を構成する圧縮スリーブは従来、導体サイズと1対1で対応するように内外径寸法が定められていた。
【0003】
従来の電力ケーブル用導体と圧縮スリーブと六角圧縮ダイスのサイズの関係を表1に示す。表1の導体の公称断面積A、直径P、圧縮スリーブの外径D、内径d、六角圧縮ダイスの対角寸法T、圧縮後断面積Hは図5のとおりである。また圧縮率は、圧縮率=1−H/(S+A)で求められる。
【0004】
【表1】

【0005】
なお、JISには公称断面積30mm2、50mm2、80mm2、125mm2の導体も規定されているが、これらの導体は実際には使用されていないので、表1では除外してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−161392号公報
【特許文献2】特開2009−106014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の圧縮スリーブは、導体サイズ毎に内外径寸法が設定されているため、異なるサイズの導体を圧縮接続することができない。例えば、38mm2用の圧縮スリーブで22mm2の導体を圧縮接続すると、圧縮率が0.007程度となり、圧縮不足で所要の機械的・電気的性能を得ることができない。同様に、100mm2用の圧縮スリーブで60mm2の導体を圧縮接続すると、圧縮率が0.021程度となり、やはり所要の機械的・電気的性能を確保することができない。なお、所要の機械的・電気的性能を確保するためには、圧縮率は、最低でも0.06(6%)以上、好ましくは0.1(10%)以上必要とされている。このように従来は、圧縮スリーブが導体のサイズ毎に用意されているため、圧縮スリーブのサイズの種類が多くなり、製造や在庫管理に手間がかかるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、1サイズの圧縮スリーブを異なるサイズの導体に共用できるようにして、圧縮スリーブのサイズの種類を減らすことができる異サイズ導体共用圧縮スリーブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る異サイズ導体共用圧縮スリーブの第一のタイプは、内外径が、公称断面積が隣り合う複数サイズの導体のいずれを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る異サイズ導体共用圧縮スリーブの第二のタイプは、小径圧縮スリーブ部と、それより内外径が大きい大径圧縮スリーブ部とが、大径圧縮スリーブ部が導体挿入口側に位置し、小径圧縮スリーブ部が大径圧縮スリーブ部の奧側に位置するように一体に形成されており、これにより公称断面積が異なるサイズの導体を個別に圧縮接続できるようになっていることを特徴とするものである。
【0011】
この第二のタイプの異サイズ導体共用圧縮スリーブの小径圧縮スリーブ部又は大径圧縮スリーブ部は、その内外径を、前記第一のタイプの異サイズ導体共用圧縮スリーブの内外径と同様な大きさに設定することができる。
【0012】
本発明に係る異サイズ導体共用圧縮スリーブの第三のタイプは、
小径圧縮スリーブ部と、それより内外径が大きい大径圧縮スリーブ部とが、大径圧縮スリーブ部が導体挿入口側に位置し、小径圧縮スリーブ部が大径圧縮スリーブ部の奧側に位置するように一体に形成されており、
小径圧縮スリーブ部は、内外径が、公称断面積が隣り合う小径側2サイズの導体のどちらを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定されており、
大径圧縮スリーブ部は、内外径が、公称断面積が隣り合っていて前記小径側2サイズの導体よりも公称断面積が大きい大径側2サイズの導体のどちらを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定されており、
これにより公称断面積が異なる4サイズの導体を個別に圧縮接続できるようになっていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る異サイズ導体共用圧縮スリーブの第四のタイプは、
小径圧縮スリーブ部と、それより内外径が大きい大径圧縮スリーブ部とが、大径圧縮スリーブ部が導体挿入口側に位置し、小径圧縮スリーブ部が大径圧縮スリーブ部の奧側に位置するように一体に形成されており、
小径圧縮スリーブ部は、内外径が、1サイズの導体だけを挿入して圧縮接続できる大きさに設定されており、
大径圧縮スリーブ部は、内外径が、公称断面積が隣り合っていて前記1サイズの導体よりも公称断面積が大きい2サイズの導体のどちらを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定されており、
これにより公称断面積が異なる3サイズの導体を個別に圧縮接続できるようになっていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る異サイズ導体共用圧縮スリーブの第五のタイプは、
小径圧縮スリーブ部と、それより内外径が大きい大径圧縮スリーブ部とが、大径圧縮スリーブ部が導体挿入口側に位置し、小径圧縮スリーブ部が大径圧縮スリーブ部の奧側に位置するように一体に形成されており、
小径圧縮スリーブ部は、内外径が、公称断面積が隣り合う2サイズの導体のどちらを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定されており、
大径圧縮スリーブ部は、内外径が、前記2サイズの導体よりも公称断面積が大きい1サイズの導体だけを挿入して圧縮接続できる大きさに設定されており、
これにより公称断面積が異なる3サイズの導体を個別に圧縮接続できるようになっていることを特徴とするものである。
【0015】
前記第二ないし第五のタイプの異サイズ導体共用圧縮スリーブは、大径圧縮スリーブ部と小径圧縮スリーブ部の間の内外周面のうち少なくとも内周面が大径圧縮スリーブ部から小径圧縮スリーブ部に向けて徐々に縮径するテーパー状に形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明に係る圧縮端子は、導体を挿入して圧縮接続する圧縮スリーブと、機器の端子に締め付け接続される平板部とが一体に形成されているものであって、前記圧縮スリーブが前記第一ないし第五のいずれかのタイプの異サイズ導体共用圧縮スリーブで構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明に係る導体接続管は、一方の導体を挿入して圧縮接続する第一の圧縮スリーブと、他方の導体を挿入して圧縮接続する第二の圧縮スリーブとが、導体挿入口を互いに反対方向に向けて一体に形成されているものであって、前記第一の圧縮スリーブ及び第二の圧縮スリーブが前記第一ないし第五のいずれかのタイプの異サイズ導体共用圧縮スリーブで構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、1サイズの圧縮スリーブを公称断面積の異なる複数サイズの導体に共用できるので、圧縮スリーブのサイズの種類を大幅に減らすことができ、圧縮スリーブの製造や在庫管理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例を説明するための圧縮端子を示す半分切開平面図。
【図2】本発明の他の実施例を説明するための導体接続管を示す半分切開平面図。
【図3】本発明のさらに他の実施例を説明するための圧縮端子を示す半分切開平面図。
【図4】本発明のさらに他の実施例を説明するための導体接続管を示す半分切開平面図。
【図5】圧縮スリーブに導体を挿入して圧縮する前と圧縮した後の状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0020】
<実施例1> 図1は本発明の一実施例を説明するための圧縮端子を示す。この圧縮端子1は、電力ケーブルの導体の端部等に取り付けられるもので、導体の端部を圧縮接続する圧縮スリーブ2と、機器の端子等に締め付け接続される平板部3とを一体に形成したものである。
【0021】
この圧縮端子の圧縮スリーブ2は、公称断面積が隣り合う(実際に使用されていない公称断面積は除く)2サイズの導体を個別に圧縮接続できるように内外径が設定されている。例えば、公称断面積22mm2の導体(直径5.5mm)を圧縮接続する従来の圧縮スリーブは内径d=6.0mm、外径D=14mmであり、公称断面積38mm2の導体(直径7.3mm)を圧縮接続する従来の圧縮スリーブは内径d=7.8mm、外径D=14mmであるが(表1参照)、この圧縮スリーブ2は、公称断面積22mm2と38mm2の導体の圧縮接続に共用するため、内径d=8.2mm、外径D=16.5mmに設定した。内径dは上記2サイズの導体を挿入して圧縮することが可能な(大きすぎない)大きさであり、外径Dはその内径dで公称断面積が小さい方の導体(直径5.5mm)を圧縮したときにも所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率が確保できる大きさである。内径dは38mm2JCAA銅管圧縮端子のスリーブ内径と同じである。外径Dは対角寸法16mmの六角圧縮ダイスで圧縮する通常のスリーブ外径16mmよりも0.5mm大きくして圧縮率を高めている。
【0022】
この圧縮スリーブ2に公称断面積22mm2の導体を挿入して対角寸法16mmの六角圧縮ダイスで圧縮すると、圧縮率は9.1%となる。圧縮率は最低6%、目標10%とされているので、問題ないレベルである。圧縮後の引張試験(導体引き抜き抵抗力測定)では約20kgf/mm2の結果が得られた。これは下限値7kgf/mm2の約3倍の値である。また電気抵抗測定、通電温度上昇試験の結果も合格レベルであった。
【0023】
また、この圧縮スリーブ2に公称断面積38mm2の導体を挿入して対角寸法16mmの六角圧縮ダイスで圧縮すると、圧縮率は16.4%となる。公称断面積22mm2の導体の場合より圧縮率が高くなるので、機械的・電気的性能は問題ない。
【0024】
次に、図1のような圧縮端子の圧縮スリーブ2を、公称断面積60mm2と100mm2の導体の圧縮接続に共用する場合について説明する。公称断面積60mm2の導体(直径9.3mm)を圧縮接続する従来の圧縮スリーブは内径d=9.8mm、外径D=19mmであり、公称断面積100mm2の導体(直径12.0mm)を圧縮接続する従来の圧縮スリーブは内径d=12.6mm、外径D=23mmであるが(表1参照)、この圧縮スリーブ2は、公称断面積60mm2と100mm2の導体の圧縮接続に共用するため、内径d=13.0mm、外径D=19.0mmに設定した。内径dは上記2サイズの導体を挿入して圧縮することが可能な(大きすぎない)大きさであり、外径Dはその内径dで公称断面積が小さい方の導体(直径9.3mm)を圧縮したときにも所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率が確保できる大きさである。外径D=19.0mmは、公称断面積60mm2用のJCAA銅管圧縮端子及びJIS圧縮端子のスリーブ外径寸法と同じである。
【0025】
この圧縮スリーブ2に公称断面積60mm2の導体を挿入して対角寸法16mmの六角圧縮ダイスで圧縮すると、圧縮率は21.1%となる。圧縮率は目標とされる10%を超えているので、問題ないレベルである。圧縮後の引張試験(導体引き抜き抵抗力測定)では約20kgf/mm2の結果が得られた。また電気抵抗測定、通電温度上昇試験の結果も合格レベルであった。圧縮率21.1%はかなり高い値であるが、圧縮が出来ていて機械的・電気的性能を満足するので問題はない。
【0026】
また、この圧縮スリーブ2に公称断面積100mm2の導体を挿入して対角寸法19mmの六角圧縮ダイスで圧縮すると、圧縮率は6.5%となる。この圧縮率は低めであるが、下限値6%を上回っているので、機械的・電気的性能は問題ない。圧縮後の引張試験の結果も60mm2の場合と同様であった。また電気抵抗測定、通電温度上昇試験の結果も合格レベルであった。
【0027】
次に、公称断面積150mm2(直径14.7mm)と200mm2(直径17.2mm)の導体の圧縮接続に共用する圧縮スリーブを検討した。この圧縮スリーブは、内径d=17.9mm、外径D=33.0mmに設定した。この圧縮スリーブに公称断面積150mm2の導体を挿入して対角寸法32mmの六角圧縮ダイスで圧縮すると、圧縮率は11.7%となる。また、この圧縮スリーブに公称断面積200mm2の導体を挿入して対角寸法32mmの六角圧縮ダイスで圧縮すると、圧縮率は17.2%となる。これらの圧縮率は、圧縮接続部の機械的・電気的性能を十分満足する値である。
【0028】
次に、公称断面積250mm2(直径19.0mm)と325mm2(直径21.7mm)の導体の圧縮接続に共用する圧縮スリーブを検討した。この圧縮スリーブは、内径d=22.5mm、外径D=39.0mmに設定した。この圧縮スリーブに公称断面積250mm2の導体を挿入して対角寸法38mmの六角圧縮ダイスで圧縮すると、圧縮率は10.4%となる。また、この圧縮スリーブに公称断面積325mm2の導体を挿入して対角寸法38mmの六角圧縮ダイスで圧縮すると、圧縮率は16.4%となる。これらの圧縮率は、圧縮接続部の機械的・電気的性能を十分満足する値である。
【0029】
次に、公称断面積400mm2(直径24.1mm)と500mm2(直径26.9mm)の導体の圧縮接続に共用する圧縮スリーブを検討した。この圧縮スリーブは、内径d=27.5mm、外径D=48.0mmに設定した。この圧縮スリーブに公称断面積400mm2の導体を挿入して対角寸法47.0mmの六角圧縮ダイスで圧縮すると、圧縮率は11.2%となる。また、この圧縮スリーブに公称断面積500mm2の導体を挿入して対角寸法47.0mmの六角圧縮ダイスで圧縮すると、圧縮率は16.4%となる。これらの圧縮率は、圧縮接続部の機械的・電気的性能を十分満足する値である。
【0030】
以上の、導体サイズに対する圧縮スリーブと六角圧縮ダイスのサイズの関係をまとめると表2のとおりである。
【0031】
【表2】

【0032】
以上の実施例から明らかなとおり、1サイズの圧縮スリーブ2で公称断面積が異なる2サイズの導体を圧縮接続できるので、従来に比べ、圧縮端子1のサイズの種類を半減することができる。
【0033】
<実施例2> 図2は本発明の他の実施例を説明するための導体接続管を示す。この導体接続管4は、一方の導体の端部を圧縮接続する第一の圧縮スリーブ2Aと他方の導体を圧縮接続する第二の圧縮スリーブ2Bとを、導体挿入口が互いに反対方向を向くように一体に形成したものである。圧縮スリーブ2A、2Bの奧には導体が突き当たる壁5(環状突起でも可)が形成されている。このような導体接続管4の圧縮スリーブ2A、2Bについても、実施例1で説明した圧縮端子1の圧縮スリーブ2と同じ内外径をそのまま適用できる。
【0034】
すなわち、圧縮スリーブ2A、2Bをそれぞれ、
公称断面積22mm2と38mm2の導体の圧縮接続に共用するときは、圧縮スリーブ2A、2Bの内径dを8.2mm、外径Dを16.5mmに設定し、
公称断面積60mm2と100mm2の導体の圧縮接続に共用するときは、圧縮スリーブ2A、2Bの内径dを13.0mm、外径Dを19.0mmに設定し、
公称断面積150mm2と200mm2の導体の圧縮接続に共用するときは、圧縮スリーブ2A、2Bの内径dを17.9mm、外径Dを33.0mmに設定し、
公称断面積250mm2と325mm2の導体の圧縮接続に共用するときは、圧縮スリーブ2A、2Bの内径dを22.5mm、外径Dを39.0mmに設定し、
公称断面積400mm2と500mm2の導体の圧縮接続に共用するときは、圧縮スリーブ2A、2Bの内径dを27.5mm、外径Dを48.0mmに設定する。
【0035】
このようにすれば、1サイズの圧縮スリーブ2A、2Bでそれぞれ公称断面積が異なる2サイズの導体を圧縮接続できるので、従来に比べ、導体接続管4のサイズの種類を半減することができる。
【0036】
<実施例3> 図3は本発明のさらに他の実施例を説明するための圧縮端子を示す。この圧縮端子6は、圧縮スリーブ2と平板部3を一体に形成したものであるが、圧縮スリーブ2が、小径圧縮スリーブ部2aと、それより内外径が大きい大径圧縮スリーブ部2bとを一体に形成したものからなる点が、実施例1の圧縮端子1と異なる。大径圧縮スリーブ部2bは圧縮スリーブ2の導体挿入口側に位置し、小径圧縮スリーブ部2aは大径圧縮スリーブ部2bの奧側に位置している。小径圧縮スリーブ部2aは公称断面積が隣り合う(実際に使用されていない公称断面積は除く)小径側2サイズの導体を圧縮接続する部分であり、大径圧縮スリーブ部2bは公称断面積が隣り合っていて(実際に使用されていない公称断面積は除く)上記小径側2サイズの導体よりも公称断面積が大きい大径側2サイズの導体を圧縮接続する部分である。
【0037】
小径圧縮スリーブ部2aは、内外径が、公称断面積が隣り合う小径側2サイズの導体のどちらを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定されている。
【0038】
大径圧縮スリーブ部2bは、内外径が、公称断面積が隣り合っていて前記小径側2サイズの導体よりも公称断面積が大きい大径側2サイズの導体のどちらを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定されている。
【0039】
これにより、この圧縮端子6の圧縮スリーブ2は公称断面積が異なる小径側2サイズ、大径側2サイズ、計4サイズの導体を個別に圧縮接続できるようになっている。
【0040】
また、大径圧縮スリーブ部2bと小径圧縮スリーブ部2aの間の内外周面は大径圧縮スリーブ部2bから小径圧縮スリーブ部2aに向けて徐々に縮径するテーパー状に形成されている。これは、圧縮スリーブ2の導体挿入口から大径圧縮スリーブ部2bを経て小径圧縮スリーブ部2aに挿入する導体を、途中で引っ掛かることなくスムーズに挿入できるようにするためである。
【0041】
この圧縮端子6は、小径圧縮スリーブ部2aの内外径を、例えば内径d=8.2mm、外径D=16.5mmに設定すると、小径圧縮スリーブ部2aで公称断面積22mm2と38mm2の導体を圧縮接続することができる。また、大径圧縮スリーブ部2bの内外径を、内径d=13.0mm、外径D=19.0mmに設定すると、大径圧縮スリーブ部2bで公称断面積60mm2と100mm2の導体を圧縮接続することができる。したがって、1サイズの圧縮スリーブ2で、公称断面積22mm2、38mm2、60mm2、100mm2の4サイズの導体を圧縮接続することができる。なお、小径圧縮スリーブ部2aの長さ(内径が一様な部分の長さ)は20mm、大径圧縮スリーブ部2bの長さ(同)は25mmとした。
【0042】
また、この圧縮端子6は、小径圧縮スリーブ部2aの内外径を、例えば内径d=17.9mm、外径D=33.0mmに設定すると、小径圧縮スリーブ部2aで公称断面積150mm2と200mm2の導体を圧縮接続することができる。また、大径圧縮スリーブ部2bの内外径を、内径d=22.5mm、外径D=39.0mmに設定すると、公称断面積250mm2と325mm2の導体を圧縮接続することができる。したがって、1サイズの圧縮スリーブ2で、公称断面積150mm2、200mm2、250mm2、325mm2の4サイズの導体を圧縮接続することができる。
【0043】
このように、実施例3によれば、1サイズの圧縮スリーブ2でそれぞれ公称断面積が異なる4サイズの導体を圧縮接続できるので、従来に比べ、圧縮端子のサイズの種類を4分の1に減らすことができる。
【0044】
<実施例4> 図4は本発明のさらに他の実施例を説明するための導体接続管を示す。この導体接続管7は、一方の導体の端部を圧縮接続する第一の圧縮スリーブ2Aと他方の導体を圧縮接続する第二の圧縮スリーブ2Bとを、導体挿入口が互いに反対方向を向くように一体に形成したものであるが、第一の圧縮スリーブ2Aは、小径圧縮スリーブ部2Aaと、それより内外径が大きい大径圧縮スリーブ部2Abとで構成され、第二の圧縮スリーブ2Bも同様に、小径圧縮スリーブ部2Baと、それより内外径が大きい大径圧縮スリーブ部2Bbとで構成されている点が、実施例2の導体接続管4と異なる。大径圧縮スリーブ部2Ab、2Bbはそれぞれ導体挿入口側に位置し、小径圧縮スリーブ部2Aa、2Baはそれぞれ大径圧縮スリーブ部2Ab、2Bbの奧側に位置している点、大径圧縮スリーブ部2Ab、2Bbと小径圧縮スリーブ部2Aa、2Baの間の内外周面が大径圧縮スリーブ部2Ab、2Bbから小径圧縮スリーブ部2Aa、2Baに向けて徐々に縮径するテーパー状に形成されている点は実施例3で説明した圧縮端子6の圧縮スリーブ2と同じである。また、圧縮スリーブ2A、2Bの奧には導体が突き当たる壁(又は環状突起)5が形成されている点は実施例2の導体接続管2と同じである。
【0045】
このような導体接続管7の第一の圧縮スリーブ2A及び第二の圧縮スリーブ2Bについても、実施例3で説明した圧縮端子6の圧縮スリーブ2と同じ内外径をそのまま適用できる。
【0046】
すなわち、第一の圧縮スリーブ2A及び第二の圧縮スリーブ2Bの小径圧縮スリーブ部2Aa、2Baをそれぞれ、公称断面積22mm2と38mm2の導体の圧縮接続に共用するときは、小径圧縮スリーブ部2Aa、2Baの内径dを8.2mm、外径Dを16.5mmに設定し、第一の圧縮スリーブ2A及び第二の圧縮スリーブ2Bの大径圧縮スリーブ部2Ab、2Bbをそれぞれ、公称断面積60mm2と100mm2の導体の圧縮接続に共用するときは、大径圧縮スリーブ部2Ab、2Bbの内径dを13.0mm、外径Dを19.0mmに設定する。
【0047】
また、第一の圧縮スリーブ2A及び第二の圧縮スリーブ2Bの小径圧縮スリーブ部2Aa、2Baをそれぞれ、公称断面積150mm2と200mm2の導体の圧縮接続に共用するときは、小径圧縮スリーブ部2Aa、2Baの内径dを17.9mm、外径Dを33.0mmに設定し、第一の圧縮スリーブ2A及び第二の圧縮スリーブ2Bの大径圧縮スリーブ部2Ab、2Bbをそれぞれ、公称断面積250mm2と325mm2の導体の圧縮接続に共用するときは、大径圧縮スリーブ部2Ab、2Bbの内径dを22.5mm、外径Dを39.0mmに設定する。
【0048】
このようにすれば、1サイズの圧縮スリーブ2A、2Bでそれぞれ公称断面積が異なる4サイズの導体を圧縮接続できるので、従来に比べ、公称断面積22mm2〜325mm2の範囲の導体接続管のサイズの種類を4分の1に減らすことができる。
【0049】
<実施例5> 図3の圧縮端子6において、小径圧縮スリーブ部2aの内外径を、1サイズの導体だけを挿入して圧縮接続できる大きさに設定し、大径圧縮スリーブ部2bの内外径を、公称断面積が隣り合っていて前記1サイズの導体よりも公称断面積が大きい2サイズの導体のどちらを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定すれば、公称断面積が異なる3サイズの導体を個別に圧縮接続できる圧縮端子を構成することができる。
【0050】
<実施例6> 図3の圧縮端子6において、小径圧縮スリーブ部2aの内外径を、公称断面積が隣り合う2サイズの導体のどちらを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定し、大径圧縮スリーブ部2bの内外径を、前記2サイズの導体よりも公称断面積が大きい1サイズの導体だけを挿入して圧縮接続できる大きさに設定することによっても、公称断面積が異なる3サイズの導体を個別に圧縮接続できる圧縮端子を構成することができる。
【0051】
<実施例7> 図3の圧縮端子6において、小径圧縮スリーブ部2aの内外径を、1サイズの導体だけを挿入して圧縮接続できる大きさに設定し、大径圧縮スリーブ部2bの内外径を、前記1サイズの導体よりも公称断面積が大きい1サイズの導体だけを挿入して圧縮接続できる大きさに設定することによっても、公称断面積が異なる2サイズの導体を個別に圧縮接続できる圧縮端子を構成することができる。
【0052】
<実施例8> 図4の導体接続管7において、小径圧縮スリーブ部2Aa、2Baの内外径を、1サイズの導体だけを挿入して圧縮接続できる大きさに設定し、大径圧縮スリーブ部2Ab、2Bbの内外径を、公称断面積が隣り合っていて前記1サイズの導体よりも公称断面積が大きい2サイズの導体のどちらを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定すれば、公称断面積が異なる3サイズの導体を個別に圧縮接続できる導体接続管を構成することができる。
【0053】
<実施例9> 図4の導体接続管7において、小径圧縮スリーブ部2Aa、2Baの内径を、公称断面積が隣り合う2サイズの導体のどちらを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定し、大径圧縮スリーブ部2Ab、2Bbの内外径を、前記2サイズの導体よりも公称断面積が大きい1サイズの導体だけを挿入して圧縮接続できる大きさに設定することによっても、公称断面積が異なる3サイズの導体を個別に圧縮接続できる導体接続管を構成することができる。
【0054】
<実施例10> 図4の導体接続管7において、小径圧縮スリーブ部2Aa、2Baの内外径を、1サイズの導体だけを挿入して圧縮接続できる大きさに設定し、大径圧縮スリーブ部2Ab、2Bbの内外径を、前記1サイズの導体よりも公称断面積が大きい1サイズの導体だけを挿入して圧縮接続できる大きさに設定すれば、公称断面積が異なる2サイズの導体を個別に圧縮接続できる導体接続管を構成することができる。
【0055】
<その他の実施例> 図3及び図4には、圧縮スリーブ部を小径圧縮スリーブ部と大径圧縮スリーブ部の2段に設けた異サイズ導体共用圧縮スリーブを示したが、圧縮スリーブは、小径圧縮スリーブ部と大径圧縮スリーブ部の間に両者の中間の径の圧縮スリーブ部を設けたものであってもよい。
また、前記実施例では、圧縮スリーブ部の内外径の大きさを適切に設定して複数サイズの導体を圧縮接続できるようにした異サイズ導体共用圧縮スリーブとして、内外径を、公称断面積が隣り合う2サイズの導体のいずれを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定したものを示したが、可能であれば3サイズ以上の導体のいずれを挿入しても必要な圧縮率を確保できる大きさに設定してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1、6:圧縮端子
2、2A、2B:圧縮スリーブ
2a:小径圧縮スリーブ部
2b:大径圧縮スリーブ部
3:平板部
4、7:導体接続管
5:壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外径が、公称断面積が隣り合う複数サイズの導体のいずれを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定されていることを特徴とする異サイズ導体共用圧縮スリーブ。
【請求項2】
小径圧縮スリーブ部と、それより内外径が大きい大径圧縮スリーブ部とが、大径圧縮スリーブ部が導体挿入口側に位置し、小径圧縮スリーブ部が大径圧縮スリーブ部の奧側に位置するように一体に形成されており、これにより公称断面積が異なるサイズの導体を個別に圧縮接続できるようになっていることを特徴とする異サイズ導体共用圧縮スリーブ。
【請求項3】
請求項2記載の異サイズ導体共用圧縮スリーブにおいて、小径圧縮スリーブ部の内外径又は大径圧縮スリーブ部の内外径が、公称断面積が隣り合う複数サイズの導体のいずれを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定されていることを特徴とする異サイズ導体共用圧縮スリーブ。
【請求項4】
小径圧縮スリーブ部と、それより内外径が大きい大径圧縮スリーブ部とが、大径圧縮スリーブ部が導体挿入口側に位置し、小径圧縮スリーブ部が大径圧縮スリーブ部の奧側に位置するように一体に形成されており、
小径圧縮スリーブ部は、内外径が、公称断面積が隣り合う小径側2サイズの導体のどちらを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定されており、
大径圧縮スリーブ部は、内外径が、公称断面積が隣り合っていて前記小径側2サイズの導体よりも公称断面積が大きい大径側2サイズの導体のどちらを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定されており、
これにより公称断面積が異なる4サイズの導体を個別に圧縮接続できるようになっていることを特徴とする異サイズ導体共用圧縮スリーブ。
【請求項5】
小径圧縮スリーブ部と、それより内外径が大きい大径圧縮スリーブ部とが、大径圧縮スリーブ部が導体挿入口側に位置し、小径圧縮スリーブ部が大径圧縮スリーブ部の奧側に位置するように一体に形成されており、
小径圧縮スリーブ部は、内外径が、1サイズの導体だけを挿入して圧縮接続できる大きさに設定されており、
大径圧縮スリーブ部は、内外径が、公称断面積が隣り合っていて前記1サイズの導体よりも公称断面積が大きい2サイズの導体のどちらを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定されており、
これにより公称断面積が異なる3サイズの導体を個別に圧縮接続できるようになっていることを特徴とする異サイズ導体共用圧縮スリーブ。
【請求項6】
小径圧縮スリーブ部と、それより内外径が大きい大径圧縮スリーブ部とが、大径圧縮スリーブ部が導体挿入口側に位置し、小径圧縮スリーブ部が大径圧縮スリーブ部の奧側に位置するように一体に形成されており、
小径圧縮スリーブ部は、内外径が、公称断面積が隣り合う2サイズの導体のどちらを挿入して圧縮しても所要の機械的・電気的性能を得るのに必要な圧縮率を確保できる大きさに設定されており、
大径圧縮スリーブ部は、内外径が、前記2サイズの導体よりも公称断面積が大きい1サイズの導体だけを挿入して圧縮接続できる大きさに設定されており、
これにより公称断面積が異なる3サイズの導体を個別に圧縮接続できるようになっていることを特徴とする異サイズ導体共用圧縮スリーブ。
【請求項7】
大径圧縮スリーブ部と小径圧縮スリーブ部の間の内外周面のうち少なくとも内周面が大径圧縮スリーブ部から小径圧縮スリーブ部に向けて徐々に縮径するテーパー状に形成されていることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の異サイズ導体共用圧縮スリーブ。
【請求項8】
導体を挿入して圧縮接続する圧縮スリーブと、機器の端子に締め付け接続される平板部とが一体に形成された圧縮接続において、前記圧縮スリーブが請求項1〜7のいずれかに記載の異サイズ導体共用圧縮スリーブで構成されていることを特徴とする圧縮端子。
【請求項9】
一方の導体を挿入して圧縮接続する第一の圧縮スリーブと、他方の導体を挿入して圧縮接続する第二の圧縮スリーブとが、導体挿入口を互いに反対方向に向けて一体に形成された導体接続管において、前記第一の圧縮スリーブ及び第二の圧縮スリーブが請求項1〜7のいずれかに記載の異サイズ導体共用圧縮スリーブで構成されていることを特徴とする導体接続管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−243705(P2012−243705A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115511(P2011−115511)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000139872)株式会社井上製作所 (13)
【Fターム(参考)】