説明

異常検出装置、異常検出方法、及び異常検出プログラム

【課題】電流センサや電圧センサの異常を検知する。
【解決手段】異常検知部200は、電流センサ36により検出された二次電池30の充放電電流Iと二次電池30の電池電圧Vとを読み出し、二次電池30の起電力Eと内部抵抗rとに基づいて推定電池電圧Vsを演算し、電池電圧Vと推定電池電圧Vsとの差分が所定の閾値より大きく、充放電電流Iが所定の許容範囲外の場合、電流センサ36の異常と判定し、その差分が所定の閾値より大きく、充放電電流Iが所定の許容範囲以内の場合には、電圧センサ34の異常と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサや電圧センサの異常を検知する異常検出装置に関し、特に、二次電池に流れる電流を検知する電流センサや二次電池の電池電圧を検知する電圧センサの異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機により車両駆動力を得ている電気自動車やハイブリッド自動車は、二次電池を搭載し、この二次電池に蓄えられた電力により電動機を駆動している。このような電気自動車は、回生制動、すなわち、車両制動時に電動機を発電機として機能させ、車両の運動エネルギを電気エネルギに変換することにより制動する機能を備えている。ここで変換された電気エネルギは二次電池に蓄えられ、加速を行う時などに再利用される。
【0003】
二次電池は過放電、過充電を行うと電池性能を劣化させることになるため、二次電池の充電状態(SOC;state of charge)を把握し充放電を調節する必要がある。こうした二次電池のSOCを検出する装置としては、二次電池の端子電圧に基づいて検出する方法が周知である。しかし、端子電圧は電流によって変化することから、近年では、電圧センサと電流センサとを備え、端子電圧と電流との双方によりSOCを検出する装置が開発されている。
【0004】
上述のような装置において、電流センサに異常が発生した場合には、二次電池のSOCを算出することができないことになり、二次電池に放電、充電の制御を適切に行えないことになる。そのため、電流センサを備えたSOCの検出装置には、電流センサの異常を検出する装置が備えられている。
【0005】
特許文献1には、電流センサにより検出される電流値が略値0を指示し続けている間に、電圧センサにより検出された電圧が所定時間内に所定値以上の変動率で所定回数以上に亘って上昇かつ降下したときに、電流センサを異常と判定する検出装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、二次電池のSOCに基づいて定まる係数kを、電流センサにて検出した充放電電流に乗じて予想電圧変化を取得し、その予想電圧変化を、電圧センサの実際の検出結果から求めた端子間電圧の変化と比較し、その差分量が所定範囲を超えている場合に、センサの異常があるとして報知する検出装置が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−206221号公報
【特許文献2】特開2003−68366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、電流センサの異常原因として、電流センサが備える電源ラインや信号ラインの不具合がある。
【0009】
例えば、これらのラインが完全に断線している場合には、電流センサにより検知される電流値は、継続的に閾値以上の電流値を示す。よって、このようなライン断線による異常の場合には、電流センサにより検知される電流値が所定期間を超えて継続的に閾値以上であることを検知すれば、異常と検知することができる。
【0010】
一方、電流センサの異常原因としては、電流センサの各種ラインが瞬間断線(ルーズコンタクト)の状態の場合もある。このような場合、電流センサにより検知される電流値は不安定のため、所定期間の電流値を検知しても、その電流値は、閾値を超える場合もあるし、閾値を超えない場合もある。よって、瞬間断線の異常は、電流値が所定期間を超えて継続的に閾値以上であることを検知するだけでは、検知できない。
【0011】
加えて、ハイブリッド自動車などに搭載される二次電池の場合、電流センサに異常がない場合にも、電流センサにより検知される電流値は短期間、閾値を超えることがある。よって、電流値が所定の閾値を短期間超えたとしても必ずしも電流センサの異常とは限らない。
【0012】
上記の各特許文献に示された異常検知装置においても、瞬間的に所定の閾値を超える電流値を電流センサが検知した場合に、その電流値が正常の電流センサによって検知されたものなのか、瞬間断線状態の電流センサによって誤って検知されたものなのかを区別することを考慮していない。
【0013】
本発明は、瞬間断線による電流センサの異常を検知することが可能な異常検知装置を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る異常検出装置は、二次電池に流れる充放電電流を検出する電流センサ及び前記二次電池の電池電圧を検出する電圧センサの少なくとも一方の異常を検出する異常検出装置において、前記電流センサにより検出された前記二次電池の充放電電流Iを少なくともパラメータとして、前記二次電池の起電力Eを演算する起電力演算部と、前記起電力と前記二次電池の内部抵抗rとに基づいて推定電池電圧Vsを演算する推定電圧演算部と、前記電圧センサにより検出された二次電池の電池電圧Vと前記推定電池電圧Vsとを比較し、その差分量が所定の閾値より大きい場合に、前記電流センサもしくは前記電圧センサの少なくとも一方が異常であると判定する異常判定部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る異常検出装置の1つの態様によれば、前記異常判定部は、前記差分量が所定の閾値より大きい場合であって、前記電流センサにより検出された前記二次電池の充放電電流Iが所定の許容範囲外の場合には、前記電流センサの異常であると判定することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る異常検出装置の1つの態様によれば、前記異常判定部は、前記差分量が所定の閾値より大きい場合であって、前記電流センサにより検出された前記二次電池の充放電電流Iが所定の許容範囲以内の場合には、前記電圧センサの異常であると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、二次電池の電流を検知する電流センサや二次電池の電池電圧を検知する電圧センサの異常を検知することができる。
【0018】
また、本発明の1つの態様によれば、例えば、瞬間的に所定の閾値を超える電流値を電流センサが検知した場合に、その電流値が正常の電流センサによって検知されたものなのか、瞬間断線状態の電流センサによって誤って検知されたものなのかを区別して、瞬間断線状態の場合に電流センサの異常として検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態1と称す)について、ハイブリッド電気自動車を例に、図面を参照して説明する。なお、実施形態1において説明する異常検知部は、ハイブリッド電気自動車以外の他の電気自動車を含め、電流センサを搭載する各種装置に実装可能である。
【0020】
図1は、実施形態1に係るハイブリッド電気自動車の概略構成を示す図である。
【0021】
図1において、電池電子制御ユニット(以下、電池ECUと称す)20は、二次電池30から電池電圧、充放電電流、電池温度などの情報を受けて、二次電池30のSOCを算出し、算出したSOCや電池電圧、電池温度などの情報をハイブリッド電子制御ユニット(以下、HV−ECUと称す)40に送信する。さらに、電池ECU20は、その内部に、電流センサ36の異常を検知する異常検知部200を備える。異常検知部200の詳細については後述する。HV−ECU40は、インバータ50、駆動力分配機構56、エンジン60を制御する。
【0022】
二次電池30は、電池ブロックを直列に接続して構成される。電池ブロックはそれぞれ、2個の電池モジュールを電気的に直列接続して構成されており、更に、各電池モジュールは、6個の単電池を電気的に直列に接続して構成されている。各単電池としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等を用いることができる。なお、電池ブロック、電池モジュール、単電池の数は特に限定されるものではない。二次電池の構成も上記した例に限定されるものではない。二次電池30は、具体的には、ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池などである。
【0023】
二次電池30は、リレー38、インバータ50を介してモータジェネレータ(M/G)52に接続される。モータジェネレータ52は、遊星ギア機構を含む駆動力分配機構56を介してエンジン(内燃機関)60と接続される。
【0024】
また、温度センサ32は、二次電池30の少なくとも1箇所に設けられ、二次電池30の電池温度Tを所定の周期(例えば、100ms)で検知する。温度センサ32を複数設ける場合、温度センサ32は、例えば、比較的温度が近い複数の電池ブロックを1つのグループとして、あるいはいずれの電池ブロックとも比較的温度差がある1つの電池ブロックを1つのグループとして、グループごとに1つずつ配置される。グループ分けは、事前の実験等によって各電池ブロックの温度を測定することによって行えばよい。
【0025】
また、電圧センサ34は、電池ブロックごとに設けられ、各電池ブロックの端子電圧Vbを所定の周期(例えば、100ms)で検知する。電池ECU20は、電圧センサ34から出力された各電池ブロックの端子電圧Vbを合計することで二次電池30全体の電池電圧Vを算出する。
【0026】
電流センサ36は、ホール素子を用いた非接触型の電流センサである。電流センサ36は、電池ECU20から電力供給を受けるための電源ラインL1と、信号を電池ECU20へ出力するための信号ラインL2と、グランドラインL3とを備える。二次電池に流れる電流が流れると、電流センサ36は、その電流の大きさに応じたホール電圧を電池ECU20に信号ラインL2を介して出力する。電池ECU20は、図2に示すようなホール電圧と充放電電流との関係を示すマップを保持し、そのマップを参照することで、入力されたホール電圧に対応する電流を特定し、その特定した電流を充放電電流Iとして検知する。なお、電池ECU20は、例えば、充電時をマイナス、放電時をプラスとして充放電電流Iを検知する。
【0027】
温度センサ32、電圧センサ34、電流センサ36から出力された温度情報、電池電圧情報、充放電電流情報は、それぞれ電池ECU20に入力され、電池ECU20は、各センサから入力された各情報に基づいて二次電池30のSOCを算出する。つまり、電池ECU20が二次電池のSOCを算出する際に、各センサが出力する情報は重要であり、各センサが故障していると、電池ECU20は二次電池30のSOCを正確に算出することができない。また、そのようなSOCに基づいて二次電池30の充放電を継続すると、二次電池30の電池性能を劣化させるおそれがある。そのため、各センサの異常を早期に検知することが好ましい。
【0028】
そこで、実施形態1では、上記の通り、二次電池30のSOCを算出する際に重要なパラメータの1つである充放電電流を検出する電流センサ36の異常を検知するために、電池ECU20は、その内部に、異常検知部200を有する。
【0029】
例えば、電流センサ36が備える電源ラインL1や信号ラインL2が断線した場合、信号ラインL2から電池ECU20へ入力されるホール電圧はゼロを示す。ホール電圧がゼロの場合、図2に示す通り、電池ECU20が検知する充放電電流Iは、例えば、−250Aという大電流となる。二次電池30は、上記の通り、例えば、ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池などであり、通常の充放電制御では、電池劣化のおそれがあるため、長期間に亘って、そのような大電流が流れるような制御は行わない。そこで、従来、二次電池30の充放電制御が正常に行われているにも拘わらず、所定期間を超えて、所定の許容範囲外の充放電電流Iを電流センサ36が検知している場合、たとえば、ホール電圧がゼロを示す信号を電流センサ36が出力している場合、電池ECU20は、電流センサ36の異常として検知していた。
【0030】
一方、電源ラインL1や信号ラインL2が瞬間断線の場合には、電流センサ36は瞬間的にホール電圧がゼロを示す信号を出力するが、所定期間に亘って継続してそのような信号を出力しない。よって、従来の異常検知の条件では、瞬間断線の異常を検知できない。また、ハイブリッド自動車などに搭載される二次電池の場合、通常、長期間に亘って大電流が流れることはないが、瞬間的には大電流が流れることはある。したがって、ホール電圧がゼロを示す信号を電流センサ36が出力したとしても、一概に瞬間断線による異常であると検知することはできない。
【0031】
そこで、実施形態1では、以下の手順により、異常検知部200は、電源ライン、信号ライン、グランドラインなどの瞬間断線により電流センサ36が正確な電流値を検出していないことを検知する。
【0032】
異常検知部200は、起電力演算部202と、内部抵抗演算部204と、推定電圧演算部と、異常判定部208とを備える。起電力演算部202は、二次電池30の充放電電流Iなどに基づいて二次電池30の起電力Eを演算する。内部抵抗演算部204は、例えば、二次電池30の充放電電流Iや二次電池30の電池電圧Vなどに基づいて二次電池30の内部抵抗rを演算する。さらに、推定電圧演算部206は、起電力Eと内部抵抗rとに基づいて二次電池30の推定電池電圧Vsを演算する。加えて、異常判定部208は、推定電池電圧Vsと、電圧センサ34により検出された電池電圧Vとを比較し、その差分量に基づいて電流センサ36の異常判定を行う。なお、各部の処理の詳細については後述する。
【0033】
以下、異常検知部200が電流センサ36の異常を検知する処理手順について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。異常検知部200は、例えば、予め定められた周期で、図2に示すフローチャートの処理を実行する。
【0034】
まず、異常検知部200は、電池ECU20の内部に備えられるメモリなどから、電流センサ36が検知した充放電電流Iを読み出し(S100)、その充放電電流Iが所定の許容範囲内(例えば、−250A<I<250A)か否かを判定する(S102)。判定の結果、所定の許容範囲内の場合には(ステップS102の判定結果が、肯定「Y」)、異常検知部200は、処理を終了する。一方、所定の許容範囲外の場合(ステップS102の判定結果が、否定「N」)、異常検知部200は、さらに電圧センサ34が検知した電池電圧Vを読み出し(S104)、二次電池30の起電力E及び内部抵抗rとを算出する(S106)。
【0035】
なお、起電力Eや内部抵抗rは、周知の方法で算出すればよい。例えば、起電力Eは、以下のように算出する。
【0036】
すなわち、異常検知部200は、所定期間(例えば、60sec)に電池電圧Vと充放電電流Iとのペアデータを複数個取得して記憶し、そのペアデータから、回帰分析により1次の近似直線(電圧V−電流I近似直線)を求め、V−I近似直線のV切片を電池電圧V0(無負荷電圧)として求める。また、充放電電流Iの積算値∫Iを計算し、電池温度T、電池電圧V0、電流積算値∫Iの関数から電池の分極電圧Vpを求め、電池電圧V0から分極電圧Vpを減算して、電池の起電力Eを求める。
【0037】
一方、内部抵抗rは、例えば、上記の電圧V−電流I近似直線の傾きを求めることで、算出することができる。また、内部抵抗rは、電池温度Tに応じて変化するため、電池温度Tと内部抵抗rとの関係を示すマップを予め実験等により作成しておき、そのマップを参照して、電池温度Tに対応する内部抵抗rを特定することで、求めてもよい。
【0038】
さらに、ステップS102で読み出した今回の充放電電流I及び電池電圧Vのほかに、前回各センサが検知した充放電電流I’及び電池電圧V’に基づいて内部抵抗rを求めてもよい。より具体的には、各充放電電流及び電池電圧は、次式(1)、(2)により表される。
V =E −Ir ・・・(1)
V’=E’−I’r’ ・・・(2)
【0039】
ここで、各センサの測定周期は、短期間(例えば、100ms)であるため、E=E’、r=r’と近似できる。よって、式(1)と式(2)とから内部抵抗rを求めるための式(3)を導出できる。
r=−(V−V’)/(I−I’) ・・・(3)
【0040】
さて、上記の通り、二次電池30の起電力E及び内部抵抗rを算出した後、異常検知部200は、充放電電流I、起電力E及び内部抵抗rに基づいて推定電池電圧Vsを算出する(S108)。つまり、Vs=E−Irを演算する。次いで、異常検知部200は、電流センサ36が検知した充放電電流Iに基づいて算出された推定電池電圧Vsと実測値である電池電圧Vとを比較して、その差分量に基づいて電流センサ36の異常を判定する。より具体的には、異常検知部200は、推定電池電圧Vsと実測値である電池電圧Vとの差分が、所定の異常検出閾値kを超えているか否かを判定し(S110)、所定の異常検出閾値kを超えている場合には、電流センサ36が異常であるとして、異常報知を行う(S112)。
【0041】
二次電池30は、上記の通り内部抵抗rが存在するため、電流センサ36で検知された充放電電流Iが実際に二次電池30に流れた場合の電池電圧と、二次電池30に流れなかった場合の電池電圧とは異なる。実際に二次電池30に充放電電流Iが流れた場合には、充放電電流Iに基づいて演算された推定電池電圧Vsと、電圧センサ34で検出された電池電圧Vとは、ほぼ一致する。一方、二次電池30に充放電電流Iが実際には流れていない場合には、それらは一致しない。つまり、電流センサ36で検知された充放電電流Iが誤っている可能性がある。そこで、実施形態1では、充放電電流Iが所定の許容範囲外で、かつ推定電池電圧Vsと電池電圧Vとの差分が所定の異常検出閾値kを超えている場合は、電流センサ36が検知した充放電電流Iは、実際に二次電池30に流れたことにより検知されたのではなく、ラインの瞬間断線により検知されたものであると判断して、異常検知部200は、電流センサ36の異常であると判定する。
【0042】
以上、実施形態1によれば、瞬間断線による電流センサ36の異常を検知することができる。
【0043】
続いて、実施形態2について説明する。実施形態2では、充放電電流Iが所定の許容範囲以内で、かつ、推定電池電圧Vsと電池電圧Vとの差分が所定の異常検出閾値kを超えている場合には、異常判定部200が、電圧センサ34の異常であると判定する点で、上記の実施形態1とは異なる。
【0044】
図4は、実施形態2における異常検知部200が電流センサ36もしくは電圧センサ34の異常を検知する処理手順を示すフローチャートである。以下、図4を参照して、実施形態2における異常検知部200の処理手順について説明する。なお、異常検知部200は、上記の実施形態1と同様に、例えば、予め定められた周期で、図4に示すフローチャートの処理を実行する。
【0045】
異常判定部200は、充放電電流I、電池電圧Vをそれぞれ電池ECU20の内部に備えられるメモリなどから読み出す(S200、S202)。次いで、実施形態1と同様に、異常判定部200は、二次電池30の起電力Eおよび内部抵抗rとを算出し(S204)、さらに起電力Eおよび内部抵抗rに基づいて二次電池30の推定電池電圧Vsを算出する(S206)。続いて、異常判定部200は、推定電池電圧Vsと実測値である電池電圧Vとの差分が、所定の異常検出閾値kを超えているか否かを判定する(S208)。判定の結果、所定の異常検出閾値kを超えている場合には(ステップS208の判定結果が、否定「N」)、さらに、異常判定部200は、充放電電流Iが所定の許容範囲以内(例えば、−250A<I<250A)か否かを判定する(S210)。
【0046】
判定の結果、充放電電流Iが所定の許容範囲外の場合には(ステップS210の判定結果が、否定「N」)、上記の実施形態1と同様に、電流センサ36の異常報知を行う(S212)。
【0047】
一方、判定の結果、充放電電流Iが所定の許容範囲以内の場合には(ステップS210の判定結果が、肯定「Y」)、推定電池電圧Vsではなく、実測値である電池電圧Vが異常である、つまり、電圧センサの異常であるとして、電圧センサの異常報知を行う(S214)。
【0048】
以上、実施形態2によれば、瞬間断線による電流センサ36の異常を検知することができるだけでなく、電圧センサ34の異常を検知することもできる。
【0049】
なお、異常検知部200は、マイクロコンピュータに図3や図4に示す各種処理を具現化させる異常検出プログラムをインストールし、この異常検出プログラムを実行することによって実現することができる。
【0050】
すなわち、マイクロコンピュータはCPU、ROM、RAM、EEPROM等の各種メモリ、通信バス及びインタフェースを有し、予めファームウェアとしてROMに格納された異常検出プログラムを読み出してCPUが順次実行する。例えば、図3に示す処理を行うための異常検出プログラムを実行すると、CPUは、インタフェースを介して電流センサから入力しメモリに記憶された充放電電流Iを読み出し、充放電電流Iが所定の許容範囲内か否かを判定する。さらに、CPUは、充放電電流Iが所定の許容範囲外の場合、インタフェースを介して電圧センサから入力しメモリに記憶された電池電圧Vを読み出し、二次電池30の起電力Eと内部抵抗rの演算を行う。次いで、CPUは、起電力Eと内部抵抗rとに基づいて推定電池電圧Vsを演算し、推定電池電圧Vsと実測値である電池電圧Vとの差分が、所定の異常検出閾値kを超えている場合、電流センサの異常と判定する。
【0051】
また、図4に示す処理を行うための異常検出プログラムを実行すると、CPUは、インタフェースを介して電圧センサおよび電流センサから入力しメモリに記憶された電池電圧V及び充放電電流Iを読み出し、二次電池30の起電力Eと内部抵抗rの演算を行う。次いで、CPUは、起電力Eと内部抵抗rとに基づいて推定電池電圧Vsを演算し、推定電池電圧Vsと実測値である電池電圧Vとの差分が所定の異常検出閾値kを超えているか否かを判定する。さらに、所定の異常検出閾値kを超えている場合、CPUは、充放電電流Iが所定の許容範囲以内か否を判定し、所定の許容範囲以内の場合には、電圧センサの異常と判定し、所定の許容範囲外の場合には、電流センサの異常と判定する。
【0052】
また、上記の実施形態1や実施形態2では、電池ECU20が、異常検出部200として機能する例について説明したが、HV−ECU40など他のユニットを異常検出部200として機能させても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施形態1に係るハイブリッド電気自動車の概略構成を示す図である。
【図2】電流センサから出力されるホール電圧と、検知対象を流れる電流値との関係を示す図である。
【図3】実施形態1に係る異常検知部が実行する異常検知の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】実施形態2に係る異常検知部が実行する異常検知の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
20 電池ECU、30 二次電池、32 温度センサ、34 電圧センサ、36 電流センサ、38 リレー、50 インバータ、52 モータジェネレータ、56 駆動力分配機構、60 エンジン、200 異常検知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池に流れる充放電電流を検出する電流センサ及び前記二次電池の電池電圧を検出する電圧センサの少なくとも一方の異常を検出する異常検出装置において、
前記電流センサにより検出された前記二次電池の充放電電流Iを少なくともパラメータとして、前記二次電池の起電力Eを演算する起電力演算部と、
前記起電力と前記二次電池の内部抵抗rとに基づいて推定電池電圧Vsを演算する推定電圧演算部と、
前記電圧センサにより検出された二次電池の電池電圧Vと前記推定電池電圧Vsとを比較し、その差分量が所定の閾値より大きい場合に、前記電流センサもしくは前記電圧センサの少なくとも一方が異常であると判定する異常判定部と、
を備える異常検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検出装置において、
前記異常判定部は、
前記差分量が所定の閾値より大きい場合であって、前記電流センサにより検出された前記二次電池の充放電電流Iが所定の許容範囲外の場合には、前記電流センサの異常であると判定する、
ことを特徴とする異常検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の異常検出装置において、
前記異常判定部は、
前記差分量が所定の閾値より大きい場合であって、前記電流センサにより検出された前記二次電池の充放電電流Iが所定の許容範囲以内の場合には、前記電圧センサの異常であると判定する、
ことを特徴とする異常検出装置。
【請求項4】
二次電池に流れる充放電電流を検出する電流センサ及び前記二次電池の電池電圧を検出する電圧センサの少なくとも一方の異常を検出する異常検出方法において、
前記電流センサにより検出された前記二次電池の充放電電流Iを少なくともパラメータとして、前記二次電池の起電力Eを演算し、
前記起電力と前記二次電池の内部抵抗rとに基づいて推定電池電圧Vsを演算し、
前記電圧センサにより検出された二次電池の電池電圧Vと前記推定電池電圧Vsとを比較し、その差分量が所定の閾値より大きい場合に、前記電流センサもしくは前記電圧センサの少なくとも一方が異常であると判定する、
ことを特徴とする異常検出方法。
【請求項5】
二次電池に流れる電流を検出する電流センサの異常を検出する処理をコンピュータに実行させるための異常検出プログラムであって、
前記処理は、
前記電流センサにより検出された前記二次電池の充放電電流Iを少なくともパラメータとして、前記二次電池の起電力Eを演算し、
前記起電力と前記二次電池の内部抵抗rとに基づいて推定電池電圧Vsを演算し、
前記電圧センサにより検出された二次電池の電池電圧Vと前記推定電池電圧Vsとを比較し、その差分量が所定の閾値より大きい場合に、前記電流センサもしくは前記電圧センサの少なくとも一方が異常であると判定する処理を含む、
ことを特徴とする異常検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−135310(P2008−135310A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321133(P2006−321133)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(399107063)パナソニックEVエナジー株式会社 (193)
【Fターム(参考)】