説明

異常検知装置

【課題】被監視者の異常の発生を動体検知によって判定する異常検知装置において、誤判定を回避することが可能な異常検知装置を得る。
【解決手段】異常検知装置は、監視空間内に存在する被監視者の動作を検知する動体センサ7と、動体センサ7が被監視者の動作を検知しない時間が所定時間以上継続した場合に、被監視者が動作を起こすように所定の誘導処理を実行する誘導処理部22と、誘導処理部22が誘導処理を実行した後にも動体センサ7が被監視者の動作を検知しない場合に、被監視者に異常が発生していると判定する異常判定処理部23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検知装置に関し、特に、浴室やトイレ等の密室内において被監視者に発生した卒倒等の健康異常を検知する異常検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、赤外線センサを用いた人体検知装置が開示されている。この人体検知装置は、赤外線センサを用いて被監視者の動きを検知し、被監視者の動きが一旦検知された後、予め設定された所定時間以上継続して動きが検知されない場合に、被監視者に異常事態が発生したと判定して監視者にその旨を報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−76272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された人体検知装置によると、例えば、被監視者が浴槽内でゆっくり寛いでいる場合であっても、不動姿勢の状態が所定時間以上継続すると、異常事態が発生したと誤判定されて監視者への報知が行われてしまう。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、被監視者の異常の発生を動体検知によって判定する異常検知装置において、誤判定を回避することが可能な異常検知装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る異常検知装置は、監視空間内に存在する被監視者の動作を検知する動体検知手段と、前記動体検知手段が前記被監視者の動作を検知しない時間が所定時間以上継続した場合に、前記被監視者が動作を起こすように所定の誘導処理を実行する誘導手段と、前記誘導手段が前記誘導処理を実行した後にも前記動体検知手段が前記被監視者の動作を検知しない場合に、前記被監視者に異常が発生していると判定する異常判定手段とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
第1の態様に係る異常検知装置によれば、誘導手段は、動体検知手段が被監視者の動作を検知しない時間が所定時間以上継続した場合に、被監視者が動作を起こすように所定の誘導処理を実行する。従って、この誘導処理に対して被監視者が動作を起こした場合には、動体検知手段がその動作を検知することにより、異常判定手段は被監視者に異常が発生していないと判定することができる。一方、誘導処理に対して被監視者が動作を起こさないことにより動体検知手段がその動作を検知しない場合には、異常判定手段は被監視者に異常が発生していると判定することができる。このように、動体検知手段が被監視者の動作を検知しない時間が所定時間以上継続した場合であっても、異常が発生していると直ちに判定するのではなく、まずは誘導処理によって被監視者に動作を促し、それによってもなお動体検知手段が動作を検知しない場合に異常と判定することにより、異常判定手段における誤判定の発生を回避することが可能となる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る異常検知装置は、第1の態様に係る異常検知装置において特に、前記監視空間内における前記被監視者の存在を検出する存在検出手段をさらに備え、前記存在検出手段が前記被監視者の存在を検出していることを条件として、前記誘導手段
は前記誘導処理を実行することを特徴とするものである。
【0009】
第2の態様に係る異常検知装置によれば、誘導手段は、存在検出手段が監視空間内における被監視者の存在を検出していることを条件として、誘導処理を実行する。従って、監視空間内に被監視者が存在していない場合には、誘導処理は実行されない。その結果、監視空間内に被監視者が存在していないことが原因で動体検知手段が動作を検知しない場合に、誘導手段が誤って誘導処理を実行し、異常判定手段が誤って異常の発生を判定する事態を回避することが可能となる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る異常検知装置は、第2の態様に係る異常検知装置において特に、前記存在検出手段は、前記監視空間の照明機器の点灯状態又は消灯状態を検出する状態検出手段と、前記監視空間のドアの開閉動作を検出する開閉検出手段とを有し、前記状態検出手段が前記照明機器の点灯状態を検出し、かつ、前記開閉検出手段が前記ドアの開閉動作を検出したことにより、前記存在検出手段は前記監視空間内における前記被監視者の存在を検出することを特徴とするものである。
【0011】
第3の態様に係る異常検知装置によれば、状態検出手段が照明機器の点灯状態を検出し、かつ、開閉検出手段がドアの開閉動作を検出したことにより、存在検出手段は監視空間内における被監視者の存在を検出する。従って、照明機器は点灯されたがドアが開閉されなかった場合や、ドアは開閉されたが照明機器が点灯されなかった場合には、存在検出手段は監視空間内に被監視者が存在しないことを正確に検出することが可能となる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る異常検知装置は、第3の態様に係る異常検知装置において特に、前記存在検出手段は、前記開閉検出手段が前記ドアの開閉動作を検出した場合に、前記監視空間からの退出の際には前記照明機器を消灯すべきことを前記被監視者に対して報知する報知手段をさらに有することを特徴とするものである。
【0013】
第4の態様に係る異常検知装置によれば、報知手段は、開閉検出手段がドアの開閉動作を検出した場合に、監視空間からの退出の際には照明機器を消灯すべきことを被監視者に対して報知する。従って、照明機器が点灯されたままの状態で被監視者が監視空間から退出することを回避できるため、誘導手段が誤って誘導処理を実行し、異常判定手段が誤って異常の発生を判定する事態を回避することが可能となる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る異常検知装置は、第2〜第4のいずれか一つの態様に係る異常検知装置において特に、前記存在検出手段が前記被監視者の存在の検出を開始してから、所定時間が経過した後にも、前記存在検出手段が前記被監視者の存在の検出を終了しない場合に、前記被監視者に対して所定の応答動作を要求する応答要求手段をさらに備え、前記異常判定手段はさらに、前記応答要求手段による要求に対して前記応答動作が実行されない場合に、前記被監視者に異常が発生していると判定することを特徴とするものである。
【0015】
第5の態様に係る異常検知装置によれば、応答要求手段は、存在検出手段が被監視者の存在の検出を開始してから、所定時間が経過した後にも、存在検出手段が被監視者の存在の検出を終了しない場合に、被監視者に対して所定の応答動作を要求する。そして、異常判定手段は、応答要求手段による要求に対して応答動作が実行されない場合に、被監視者に異常が発生していると判定する。従って、例えば浴室内においてシャワーが使用状態のまま被監視者が卒倒した場合のように、動体検知手段が動作を検知していることにより異常判定手段が異常の発生を検出できない場合であっても、応答要求に対して応答動作が実行されないことにより、異常判定手段は被監視者に異常が発生していると判定することが可能となる。
【0016】
本発明の第6の態様に係る異常検知装置は、第1〜第5のいずれか一つの態様に係る異常検知装置において特に、前記動体検知手段はドップラーセンサを有することを特徴とするものである。
【0017】
第6の態様に係る異常検知装置によれば、動体検知手段はドップラーセンサを有する。赤外線センサとは異なりドップラーセンサは湯気や熱には反応しないため、異常検知装置を浴室内に設置する場合には、動体検知手段としての利用に好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被監視者の異常の発生を動体検知によって判定する異常検知装置において、誤判定を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る異常検知装置の全体構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】異常検知制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】警報制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る異常検知装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る異常検知装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る異常検知装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る異常検知装置の全体構成を模式的に示すブロック図である。
【図8】異常検知制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る異常検知装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0021】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る異常検知装置の全体構成を模式的に示すブロック図である。図1に示すように、監視空間である浴室1には、浴室1に入退室するためのドア2と、ドア2の開閉動作を検出するドアセンサ3と、音声を出力するスピーカ4と、浴室1内を照明する照明機器5と、照明機器5の点灯状態又は消灯状態を検出する光センサ6と、浴室1内に存在する被監視者の動作を検知する動体センサ7と、浴室1内の音声を集音するマイク8とが設置されている。
【0022】
動体センサ7は、例えば、マイクロ波領域の電波を利用したドップラーセンサを含んで構成されている。ドップラーセンサは、送信機から対象物に向けて所定周波数の電波を送信し、対象物からの反射波を受信機によって受信する。対象物が移動している場合にはドップラー効果によって反射波の周波数がシフトするため、送信電波の周波数と受信電波の周波数とを比較することによって、対象物が移動しているか否かを検出することができる。
【0023】
ドアセンサ3、スピーカ4、照明機器5、光センサ6、動体センサ7、及びマイク8は
、異常検知制御装置9に接続されている。異常検知制御装置9は、警報制御装置10に接続されている。警報制御装置10は、宅内スピーカ11及び通信装置12に接続されている。通信装置12は、IP網等の宅外の通信ネットワーク13に接続されている。
【0024】
図2は、異常検知制御装置9の機能構成を示すブロック図である。図2の接続関係で示すように、異常検知制御装置9は、存在判定処理部20、報知処理部21、誘導処理部22、異常判定処理部23、応答要求処理部24、及びタイマ30〜32を有して構成されている。各処理部の機能の詳細については後述する。
【0025】
図3は、警報制御装置10の機能構成を示すブロック図である。図3の接続関係で示すように、警報制御装置10は、解除スイッチ40、一次警報処理部41、二次警報処理部42、及びタイマ50を有して構成されている。各処理部の機能の詳細については後述する。
【0026】
図4〜6は、本実施の形態に係る異常検知装置における処理の流れを示すフローチャートである。以下、図1〜6を参照して、本実施の形態に係る異常検知装置の動作について説明する。
【0027】
まずステップS01において存在判定処理部20は、光センサ6から入力される信号に基づいて、照明機器5が点灯状態であるか消灯状態であるかを判定する。なお、光センサ6を用いる代わりに、照明機器5への給電の有無を検出することによって、照明機器5の状態を判定してもよい。
【0028】
照明機器5が点灯状態である場合(つまりステップS01における判定結果が「YES」である場合)は、次にステップS02において存在判定処理部20は、ドアセンサ3から入力される信号に基づいて、ドア2が開閉されたか否かを判定する。
【0029】
ドア2の開閉動作が検出された場合(つまりステップS02における判定結果が「YES」である場合)は、存在判定処理部20は浴室1内に被監視者が存在していると判定し、次にステップS03において報知処理部21は、浴室1からの退出の際には照明機器5を消灯すべきことを被監視者に指示する音声メッセージを、スピーカ4から出力する。
【0030】
なお、照明機器5が消灯状態である場合、又はドア2の開閉動作が検出されなかった場合(つまりステップS01又はステップS02における判定結果が「NO」である場合)は、存在判定処理部20は浴室1内に被監視者が存在していないと判定し、ステップS01に戻って上記と同様の処理が繰り返される。
【0031】
タイマ30には、所定の時間(例えば30秒)が予め設定されている。ステップS04において誘導処理部22は、ステップS02でドア2の開閉動作が検出されたことをトリガとして、タイマ30のカウントダウン動作を開始する。
【0032】
次にステップS05において誘導処理部22は、動体センサ7から入力される信号に基づいて、浴室1内における被監視者の動作を検知する。動体センサ7が被監視者の動作を検知した場合(つまりステップS05における判定結果が「YES」である場合)は、次にステップS11において誘導処理部22は、タイマ30をリセットする。その後、ステップS04に戻って上記と同様の処理が繰り返される。
【0033】
一方、動体センサ7が被監視者の動作を検知しない場合(つまりステップS05における判定結果が「NO」である場合)は、タイマ30のカウントダウン動作が継続されることにより、ステップS06においてタイマ30の値がやがてゼロになる。
【0034】
するとステップS07において誘導処理部22は、被監視者が何らかの動作を起こすように所定の誘導処理を実行する。例えば、被監視者の安全を確認するための音声メッセージや、所定のアラーム音又は音楽等を、スピーカ4から出力する。あるいは、照明機器5を制御することにより、照明を点滅させたり、又は照明の光量を一時的に暗くする。
【0035】
タイマ31には、所定の時間(例えば10秒)が予め設定されている。ステップS08において異常判定処理部23は、ステップS07で誘導処理部22が誘導処理の実行を開始したことをトリガとして、タイマ31のカウントダウン動作を開始する。
【0036】
次にステップS09において異常判定処理部23は、動体センサ7から入力される信号に基づいて、浴室1内における被監視者の動作を検知する。誘導処理に反応して被監視者が動作し、動体センサ7がその動作を検知した場合(つまりステップS09における判定結果が「YES」である場合)は、次にステップS11において、誘導処理部22はタイマ30をリセットし、異常判定処理部23はタイマ31をリセットする。その後、ステップS04に戻って上記と同様の処理が繰り返される。
【0037】
一方、誘導処理を実行した後にも動体センサ7が被監視者の動作を検知しない場合(つまりステップS09における判定結果が「NO」である場合)は、タイマ31のカウントダウン動作が継続されることにより、ステップS10においてタイマ31の値がやがてゼロになる。
【0038】
するとステップS17において一次警報処理部41は、浴室1内で被監視者に異常が発生していることを宅内の監視者に報知するための所定の音声メッセージ又はアラーム音を、宅内スピーカ11から出力する。
【0039】
また、タイマ50には、所定の時間(例えば1分)が予め設定されている。ステップS18において一次警報処理部41は、ステップS17で宅内スピーカ11からの音声メッセージ等の出力が開始されたことをトリガとして、タイマ50のカウントダウン動作を開始する。
【0040】
次にステップS19において一次警報処理部41は、監視者によって解除スイッチ40が押下されたか否かを判定する。被監視者に異常が発生していないことを確認した場合や、浴室1からの退出時に照明機器5の消灯を怠ったことに起因する誤警報である場合には、監視者は解除スイッチ40を押下する。解除スイッチ40が押下された場合(つまりステップS19における判定結果が「YES」である場合)は、一次警報処理部41は、宅内スピーカ11からの音声メッセージ等の出力を停止し、処理を終了する。
【0041】
一方、解除スイッチ40が押下されない場合(つまりステップS19における判定結果が「NO」である場合)は、タイマ50のカウントダウン動作が継続されることにより、ステップS20においてタイマ50の値がやがてゼロになる。
【0042】
するとステップS21において二次警報処理部42は、緊急アラームを宅内スピーカ11から出力するとともに、通信装置12及び通信ネットワーク13を介して宅外の監視サイト(例えば、別居の家族、介護サービスの契約会社、又はセキュリティサービスの契約会社)に対して異常事態の発生を通報する。
【0043】
図2,5の説明に戻り、タイマ32には、平均的な入浴時間(例えば20分)が予め設定されている。ステップS12において応答要求処理部24は、ステップS02でドア2の開閉動作が検出されたことをトリガとして、タイマ32のカウントダウン動作を開始す
る。
【0044】
被監視者が入浴後に浴室1から退出して照明機器5を消灯状態としない限り、タイマ32のカウントダウン動作が継続される。ステップS13においてタイマ32の値がゼロになると、次にステップS14において応答要求処理部24は、被監視者に対して応答動作を要求するための所定の応答要求処理を実行する。例えば、マイク8に向かって何らかの返答を指示するための所定の音声メッセージを、スピーカ4から出力する。
【0045】
次にステップS15において応答要求処理部24は、マイク8によって集音される音声信号の音圧レベルの変化を検出することにより、被監視者からの応答の有無を監視する。被監視者からの応答が検出された場合(つまりステップS15における判定結果が「YES」である場合)は、次にステップS16においてタイマ32の値に所定時間(例えば5分)を追加する。その後、ステップS12以降の処理が繰り返される。
【0046】
一方、被監視者からの応答が検出されなかった場合(つまりステップS15における判定結果が「NO」である場合)は、上述したステップS17以降の処理が実行される。
【0047】
このように本実施の形態に係る異常検知装置によれば、誘導処理部22は、動体センサ7が被監視者の動作を検知しない時間が所定時間以上継続した場合に、被監視者が動作を起こすように所定の誘導処理を実行する。従って、この誘導処理に対して被監視者が動作を起こした場合には、動体センサ7がその動作を検知することにより、異常判定処理部23は被監視者に異常が発生していないと判定することができる。一方、誘導処理に対して被監視者が動作を起こさないことにより動体センサ7がその動作を検知しない場合には、異常判定処理部23は被監視者に異常が発生していると判定することができる。このように、動体センサ7が被監視者の動作を検知しない時間が所定時間以上継続した場合であっても、異常が発生していると直ちに判定するのではなく、まずは誘導処理によって被監視者に動作を促し、それによってもなお動体センサ7が動作を検知しない場合に異常と判定することにより、異常判定処理部23における誤判定の発生を回避することが可能となる。
【0048】
また、本実施の形態に係る異常検知装置によれば、誘導処理部22は、存在判定処理部20が浴室1内における被監視者の存在を検出していることを条件として、誘導処理を実行する。従って、浴室1内に被監視者が存在していない場合には、誘導処理は実行されない。その結果、浴室1内に被監視者が存在していないことが原因で動体センサ7が動作を検知しない場合に、誘導処理部22が誤って誘導処理を実行し、異常判定処理部23が誤って異常の発生を判定する事態を回避することが可能となる。
【0049】
また、本実施の形態に係る異常検知装置によれば、光センサ6(状態検出手段)が照明機器5の点灯状態を検出し、かつ、ドアセンサ3(開閉検出手段)がドア2の開閉動作を検出したことにより、存在判定処理部20は浴室1内における被監視者の存在を検出する。従って、照明機器5は点灯されたがドア2が開閉されなかった場合や、ドア2は開閉されたが照明機器5が点灯されなかった場合には、存在判定処理部20は浴室1内に被監視者が存在しないことを正確に検出することが可能となる。
【0050】
また、本実施の形態に係る異常検知装置によれば、報知処理部21は、ドアセンサ3がドア2の開閉動作を検出した場合に、浴室1からの退出の際には照明機器5を消灯すべきことを被監視者に対して報知する。従って、照明機器5が点灯されたままの状態で被監視者が浴室1から退出することを回避できるため、誘導処理部22が誤って誘導処理を実行し、異常判定処理部23が誤って異常の発生を判定する事態を回避することが可能となる。
【0051】
また、本実施の形態に係る異常検知装置によれば、応答要求処理部24は、存在判定処理部20が被監視者の存在の検出を開始してから、所定時間が経過した後にも、存在判定処理部20が被監視者の存在の検出を終了しない場合に、被監視者に対して所定の応答動作を要求する。そして、異常判定処理部23は、応答要求処理部24による要求に対して応答動作が実行されない場合に、被監視者に異常が発生していると判定する。従って、例えば浴室1内においてシャワーが使用状態のまま被監視者が卒倒した場合のように、動体センサ7が動作を検知していることにより異常判定処理部23が異常の発生を検出できない場合であっても、応答要求に対して応答動作が実行されないことにより、異常判定処理部23は被監視者に異常が発生していると判定することが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態に係る異常検知装置によれば、動体センサ7はドップラーセンサを有する。赤外線センサとは異なりドップラーセンサは湯気や熱には反応しないため、異常検知装置を浴室1内に設置する場合には、動体センサ7としての利用に好適である。
【0053】
<第2の実施の形態>
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る異常検知装置の全体構成を模式的に示すブロック図である。本実施の形態に係る異常検知装置は、上記第1の実施の形態に係る異常検知装置の構成を簡略化して、例えばトイレ60内における異常状態の検知に適用したものである。図7に示すように、監視空間であるトイレ60には、トイレ60に入退室するためのドア2と、トイレ60内を照明する照明機器5と、照明機器5の点灯状態又は消灯状態を検出する光センサ6と、トイレ60内に存在する被監視者の動作を検知する動体センサ7とが設置されている。
【0054】
照明機器5、光センサ6、及び動体センサ7は、異常検知制御装置9に接続されている。異常検知制御装置9は、警報制御装置10に接続されている。警報制御装置10は、宅内スピーカ11及び通信装置12に接続されている。通信装置12は、通信ネットワーク13に接続されている。
【0055】
図8は、異常検知制御装置9の機能構成を示すブロック図である。図8の接続関係で示すように、異常検知制御装置9は、存在判定処理部20、誘導処理部22、異常判定処理部23、及びタイマ30,31を有して構成されている。各処理部の機能の詳細については後述する。
【0056】
本実施の形態に係る警報制御装置10の構成及び動作は、上記第1の実施の形態と同様であるため、重複した説明は省略する。
【0057】
図9は、本実施の形態に係る異常検知装置における処理の流れを示すフローチャートである。以下、図7〜9を参照して、本実施の形態に係る異常検知装置の動作について説明する。
【0058】
まずステップS31において存在判定処理部20は、光センサ6から入力される信号に基づいて、照明機器5が点灯状態であるか消灯状態であるかを判定する。なお、光センサ6を用いる代わりに、照明機器5への給電の有無を検出することによって、照明機器5の状態を判定してもよい。
【0059】
照明機器5が点灯状態である場合(つまりステップS31における判定結果が「YES」である場合)は、次にステップS32において存在判定処理部20は、動体センサ7から入力される信号に基づいて、動体センサ7がトイレ60内で動体を検知するか否かを判定する。
【0060】
動体センサ7によって動体が検知された場合(つまりステップS32における判定結果が「YES」である場合)は、存在判定処理部20はトイレ60内に被監視者が存在していると判定する。
【0061】
なお、照明機器5が消灯状態である場合、又は動体センサ7によって動体が検知されなかった場合(つまりステップS31又はステップS32における判定結果が「NO」である場合)は、存在判定処理部20はトイレ60内に被監視者が存在していないと判定し、ステップS31に戻って上記と同様の処理が繰り返される。
【0062】
タイマ30には、所定の時間(例えば30秒)が予め設定されている。ステップS33において誘導処理部22は、ステップS32で動体が検知されたことをトリガとして、タイマ30のカウントダウン動作を開始する。
【0063】
次にステップS34において誘導処理部22は、動体センサ7から入力される信号に基づいて、トイレ60内における被監視者の動作を検知する。動体センサ7が被監視者の動作を検知した場合(つまりステップS34における判定結果が「YES」である場合)は、次にステップS40において誘導処理部22は、タイマ30をリセットする。その後、ステップS33に戻って上記と同様の処理が繰り返される。
【0064】
一方、動体センサ7が被監視者の動作を検知しない場合(つまりステップS34における判定結果が「NO」である場合)は、タイマ30のカウントダウン動作が継続されることにより、ステップS35においてタイマ30の値がやがてゼロになる。
【0065】
するとステップS36において誘導処理部22は、被監視者が何らかの動作を起こすように所定の誘導処理を実行する。例えば、照明機器5を制御することにより、照明を点滅させたり、又は照明の光量を一時的に暗くする。
【0066】
タイマ31には、所定の時間(例えば10秒)が予め設定されている。ステップS37において異常判定処理部23は、ステップS36で誘導処理部22が誘導処理の実行を開始したことをトリガとして、タイマ31のカウントダウン動作を開始する。
【0067】
次にステップS38において異常判定処理部23は、動体センサ7から入力される信号に基づいて、トイレ60内における被監視者の動作を検知する。誘導処理に反応して被監視者が動作し、動体センサ7がその動作を検知した場合(つまりステップS38における判定結果が「YES」である場合)は、次にステップS40において、誘導処理部22はタイマ30をリセットし、異常判定処理部23はタイマ31をリセットする。その後、ステップS33に戻って上記と同様の処理が繰り返される。
【0068】
一方、誘導処理を実行した後にも動体センサ7が被監視者の動作を検知しない場合(つまりステップS38における判定結果が「NO」である場合)は、タイマ31のカウントダウン動作が継続されることにより、ステップS39においてタイマ31の値がやがてゼロになる。
【0069】
その後は上記第1の実施の形態と同様に、図6に示したステップS17以降の処理が警報制御装置10によって実行される。
【0070】
このように本実施の形態に係る異常検知装置によれば、誘導処理部22は、動体センサ7が被監視者の動作を検知しない時間が所定時間以上継続した場合に、被監視者が動作を起こすように所定の誘導処理を実行する。従って、この誘導処理に対して被監視者が動作
を起こした場合には、動体センサ7がその動作を検知することにより、異常判定処理部23は被監視者に異常が発生していないと判定することができる。一方、誘導処理に対して被監視者が動作を起こさないことにより動体センサ7がその動作を検知しない場合には、異常判定処理部23は被監視者に異常が発生していると判定することができる。このように、動体センサ7が被監視者の動作を検知しない時間が所定時間以上継続した場合であっても、異常が発生していると直ちに判定するのではなく、まずは誘導処理によって被監視者に動作を促し、それによってもなお動体センサ7が動作を検知しない場合に異常と判定することにより、異常判定処理部23における誤判定の発生を回避することが可能となる。
【0071】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
1 浴室
2 ドア
3 ドアセンサ
4 スピーカ
5 照明機器
6 光センサ
7 動体センサ
8 マイク
9 異常検知制御装置
10 警報制御装置
20 存在判定処理部
21 報知処理部
22 誘導処理部
23 異常判定処理部
24 応答要求処理部
30〜32 タイマ
40 解除スイッチ
41 一次警報処理部
42 二次警報処理部
50 タイマ
60 トイレ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視空間内に存在する被監視者の動作を検知する動体検知手段と、
前記動体検知手段が前記被監視者の動作を検知しない時間が所定時間以上継続した場合に、前記被監視者が動作を起こすように所定の誘導処理を実行する誘導手段と、
前記誘導手段が前記誘導処理を実行した後にも前記動体検知手段が前記被監視者の動作を検知しない場合に、前記被監視者に異常が発生していると判定する異常判定手段と
を備える、異常検知装置。
【請求項2】
前記監視空間内における前記被監視者の存在を検出する存在検出手段をさらに備え、
前記存在検出手段が前記被監視者の存在を検出していることを条件として、前記誘導手段は前記誘導処理を実行する、請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
前記存在検出手段は、
前記監視空間の照明機器の点灯状態又は消灯状態を検出する状態検出手段と、
前記監視空間のドアの開閉動作を検出する開閉検出手段と
を有し、
前記状態検出手段が前記照明機器の点灯状態を検出し、かつ、前記開閉検出手段が前記ドアの開閉動作を検出したことにより、前記存在検出手段は前記監視空間内における前記被監視者の存在を検出する、請求項2に記載の異常検知装置。
【請求項4】
前記存在検出手段は、
前記開閉検出手段が前記ドアの開閉動作を検出した場合に、前記監視空間からの退出の際には前記照明機器を消灯すべきことを前記被監視者に対して報知する報知手段
をさらに有する、請求項3に記載の異常検知装置。
【請求項5】
前記存在検出手段が前記被監視者の存在の検出を開始してから、所定時間が経過した後にも、前記存在検出手段が前記被監視者の存在の検出を終了しない場合に、前記被監視者に対して所定の応答動作を要求する応答要求手段
をさらに備え、
前記異常判定手段はさらに、前記応答要求手段による要求に対して前記応答動作が実行されない場合に、前記被監視者に異常が発生していると判定する、請求項2〜4のいずれか一つに記載の異常検知装置。
【請求項6】
前記動体検知手段はドップラーセンサを有する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の異常検知装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−218164(P2010−218164A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63477(P2009−63477)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】