説明

異常診断装置および異常診断方法

【課題】車軸軸受および車輪の振動を解析して高精度に異常診断を行う。
【解決手段】振動センサからの信号の周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて車軸軸受および車輪の異常診断を行なう。その際、比較すべきピーク値を示す周波数と異常を示す周波数との差が許容誤差の範囲内であるか否かによって一致するか否かを比較し、当該許容誤差を周波数の関数として予め設定した許容誤差関数により規定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両等に用いられる転動装置(車軸軸受、歯車または車輪など)の異常診断装置および異常診断方法に関し、特に、転動装置(車軸軸受、歯車または車輪など)の異常の有無や前兆、或いはその異常部位を特定する異常診断装置および異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の回転部品は、一定期間使用した後に、車軸軸受やその他の回転部品について、損傷や摩耗等の異常の有無が定期的に検査される。この定期的な検査は、回転部品が組み込まれた機械装置を分解することにより行なわれ、回転部品に発生した損傷や摩耗は、作業者が目視による検査により発見するようにしている。そして、検査で発見される主な欠陥としては、軸受の場合、異物の噛み込み等によって生ずる圧痕、転がり疲れによる剥離、その他の摩耗等、歯車の場合には、歯部の欠損や摩耗等、車輪の場合には、転動面の欠損や摩耗があり、いずれの場合も新品にはない凹凸や摩耗等が発見されれば、新品に交換される。
【0003】
しかし、機械設備全体を分解して、作業者が目視で検査する方法では、装置から回転体や摺動部材を取り外す分解作業や、検査済みの回転体や摺動部材を再度装置に組込み直す組込み作業に多大な労力がかかり、装置の保守コストに大幅な増大を招くという問題があった。
【0004】
また、組立て直す際に検査前にはなかった打痕を回転体や摺動部材につけてしまう等、検査自体が回転体や摺動部材の欠陥を生む原因となる可能性があった。また、限られた時間内で多数の軸受を目視で検査するため、欠陥を見落とす可能性が残るという問題もあった。さらに、この欠陥の程度の判断も個人差があり実質的には欠陥がなくても部品交換が行なわれるため、無駄なコストがかかることにもなる。
【0005】
そこで、回転部品が組み込まれた機械装置を分解することなく、実稼動状態で回転部品の異常診断を行なう様々な方法が提案された(例えば、特許文献1〜3参照)。最も、一般的なものとしては、特許文献1に記載されるように、軸受部に加速度計を設置し、軸受部の振動加速度を計測し、更に、この信号にFFT(高速フーリエ変換)処理を行なって振動発生周波数成分の信号を抽出して診断を行なう方法が知られている。
【0006】
また、鉄道車両の車輪の転動面において、ブレーキの誤動作等による車輪のロックや滑走によるレールとの摩擦・摩耗によって生じるフラットと呼ぶ平坦部の検出方法としても種々提案されている(例えば、特許文献4〜6参照)。特に特許文献4、7では、振動センサや回転測定装置等により鉄道車両車輪、および列車が通過する線路の欠陥状態を検出する装置について提案している。
【特許文献1】特開2002−22617号公報
【特許文献2】特開2003−202276号公報
【特許文献3】特開2004−257836号公報
【特許文献4】特表平9−500452号公報
【特許文献5】特開平4−148839号公報
【特許文献6】特表2003−535755号公報
【特許文献7】米国特許第5433111号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献4、7に記載の欠陥状態の検出装置では、周波数分析による異常診断精度が悪いため、異常振動が車輪のフラットによるものか、車軸軸受によるのか、あるいは線路または他の異常によるものなのかを識別できないという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、転動装置の異常振動を検出して、その異常振動がどの部品によるものかを高精度に特定することができる異常診断装置および異常診断方法を提供することにある。さらに、車軸軸受または車輪の振動を検出する振動センサの出力信号から車軸軸受および車輪の異常振動を検出して、その異常振動が車輪のフラットによるものか、車軸軸受によるのかを高精度に特定することができる鉄道車両用の異常診断装置および異常診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、下記の構成により達成される。
(1) 転動装置の振動を検出する振動センサと、
前記振動センサからの信号の周波数分布を求め、その周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う診断処理部とを備えた異常診断装置において、
前記診断処理部は、
比較すべき前記ピーク値を示す周波数と前記異常を示す周波数との差が許容誤差の範囲内であるか否かによって一致するか否かを比較し、当該許容誤差を周波数の関数として予め設定した許容誤差関数により規定することを特徴とする異常診断装置。
本明細書において、転動装置とは、回転装置または直動装置を意味し、回転装置の範疇には転がり軸受や軸受装置が含まれ、直動装置の範疇にはボールねじやリニアガイドが含まれる。
(2) 転動装置の振動を検出する振動センサと、
前記振動センサからの信号の周波数分布を求め、その周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに比較して両周波数の一致度として点数化し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う診断処理部と、
前記一致度の計算回数Nと前記一致度のN回に亘る計算結果に対する基準合計点数Pとを記憶した、外部から書き換え可能な設定値記憶部とを備え、
前記診断処理部は、
前記設定値記憶部から値N、Pを逐次読み出し、前記一致度をN回求めることにより一致度合計点数を求め、当該N回における該一致度合計点数と基準合計点数Pとを比較することにより異常診断を行うことを特徴とする異常診断装置。
(3) 転動装置の振動を検出する振動センサと、
前記振動センサからの信号の周波数分布を求め、その周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う診断処理部と、
前記ピーク値の閾値を決める値Kを記憶した、外部から書き換え可能な設定値記憶部とを備え、
前記診断処理部は、
前記設定値記憶部から値Kを読み出し、該値Kにより決まる閾値以上のピーク値を示す周波数を求めることを特徴とする異常診断装置。
(4) (2)または(3)記載の異常診断装置において、前記設定値記憶部に記憶される前記値N、PまたはKは、前記転動装置の異常の種類または部品によって異なることを特徴とする異常診断装置。
(5) 転動装置の振動を検出する振動センサと、
前記振動センサからの信号の周波数分布を求め、その周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う診断処理部とを備えた異常診断装置において、
前記診断処理部は、
前記振動センサからの信号の所定の期間における振幅の平均的値が所定の基準値を下回る場合には、その周波数分布に含まれる前記ピーク値を示す周波数と前記異常を示す周波数との、一致するか否かの比較を無効化することを特徴とする異常診断装置。
(6) 転動装置の振動を検出する振動センサと、
前記振動センサからの信号の周波数分布を求め、その周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う診断処理部とを備えた異常診断装置において、
前記診断処理部は、
前記転動装置の回転速度または移動速度に応じて、前記振動センサからの信号の増幅利得を調整することを特徴とする異常診断装置。
(7) (1)〜(6)のいずれかに記載の異常診断装置において、前記転動装置は鉄道車両用の車軸軸受、歯車または車輪のいずれかであることを特徴とする異常診断装置。
(8) 転動装置の振動を振動センサで検出し、当該振動センサからの信号の周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う異常診断方法において、
比較すべき前記ピーク値を示す周波数と前記異常を示す周波数との差が許容誤差の範囲内であるか否かによって一致するか否かを比較し、当該許容誤差を周波数の関数として予め設定した許容誤差関数により規定するようにしたことを特徴とする異常診断装置方法。
(9) 転動装置の振動を振動センサで検出し、当該振動センサからの信号の周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに比較して両周波数の一致度として点数化し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う異常診断方法において、
前記一致度の計算回数Nと前記一致度のN回に亘る計算結果に対する基準合計点数Pとを外部から書き換え可能な設定値記憶手段に記憶しておき、
前記設定値記憶手段から値N、Pを逐次読み出して、前記一致度を連続してN回行うことにより一致度合計点数を求め、当該N回における該一致度合計点数と基準合計点数Pとを比較することにより異常診断を行うようにしたことを特徴とする異常診断方法。
(10) 転動装置の振動を振動センサで検出し、当該振動センサからの信号の周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う異常診断方法において、
前記ピーク値の閾値を決める値Kを外部から書き換え可能な設定値記憶手段に記憶しておき、
前記設定値記憶部から値Kを逐次読み出して、該値Kにより決まる閾値以上のピーク値を示す周波数を求めるようにしたことを特徴とする異常診断方法。
(11) (9)または(10)記載の異常診断方法において、前記設定値記憶手段に記憶される前記値N、PまたはKは、前記転動装置の異常の種類または部品によって異なることを特徴とする異常診断方法。
(12) 転動装置の振動を振動センサで検出し、当該振動センサからの信号の周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う異常診断方法において、
前記転動装置が発する振動の所定の期間における振幅の平均的値が所定の基準値を下回る場合には、その周波数分布に含まれる前記ピーク値を示す周波数と前記異常を示す周波数分布との、一致するか否かの比較を無効化することを特徴とする異常診断方法。
(13) 転動装置の振動を振動センサで検出し、当該振動センサからの信号の周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う異常診断方法において、
前記転動装置の回転速度または移動速度に応じて、前記振動センサからの信号の増幅利得を調整するようにしたことを特徴とする異常診断方法。
(14) (8)〜(13)のいずれかに記載の異常診断方法において、前記転動装置は鉄道車両用の車軸軸受、歯車または車輪のいずれかであることを特徴とする異常診断方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の異常診断装置によれば、下記(I)〜(V)の効果が得られる。
(I)転動装置の振動を振動センサで検出し、当該振動センサからの信号の周波数分布を求め、その周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う際、比較すべき前記ピーク値を示す周波数と前記異常を示す周波数との差が許容誤差の範囲内であるか否かによって一致するか否かを比較し、当該許容誤差を周波数の関数として予め設定した許容誤差関数により規定するので、転動装置の異常診断を極めて高精度に実施できる。
(II)転動装置の振動を振動センサで検出し、当該振動センサからの信号の周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに比較して両周波数の一致度として点数化し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う際、前記一致度の計算回数Nと前記一致度のN回に亘る計算結果に対する基準合計点数Pとを外部から書き換え可能な設定値記憶手段に記憶しておき、前記設定値記憶手段から値Nと値Pを逐次読み出して、前記一致度を連続してN回行うことにより一致度合計点数を求め、当該N回における該一致度合計点数と基準合計点数Pとを比較することにより異常診断を行うので、転動装置の異常診断を極めて高精度に実施できる。また、値Nと値Pを外部から設定変更できるので、状況に応じて診断精度を柔軟に変更できる。
(III)転動装置の振動を振動センサで検出し、当該振動センサからの信号の周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う際、前記ピーク値の閾値を決める値Kを外部から書き換え可能な設定値記憶手段に記憶しておき、前記設定値記憶部から値Kを読み出し、該値Kにより決まる閾値以上のピーク値を示す周波数を求めるので、転動装置の異常診断を極めて高精度に実施できる。また、該値Kを外部から設定変更できるので、状況に応じて閾値を柔軟に変更できる。
(IV)転動装置の振動を振動センサで検出し、当該振動センサからの信号の周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否か比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う際、前記振動センサからの信号の所定の期間における振幅の平均的値が所定の基準値を下回る場合には、その周波数分布に含まれる前記ピーク値を示す周波数と前記異常を示す周波数との、一致するか否かの比較を無効化するので、転動装置の異常診断を極めて高精度に実施できる。
(V)転動装置の振動を振動センサで検出し、当該振動センサからの信号の周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う際、前記転動装置の回転速度または移動速度に応じて前記振動センサからの信号の増幅利得を調整するので、前記転動装置の回転速度または移動速度の大小に左右されずに転動装置の異常診断を極めて高精度に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る異常診断装置の第1実施形態および第2実施形態について図を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1(a)は本発明の異常診断装置を搭載した鉄道車両の概略平面図、図1(b)は同鉄道車両の概略側面図、図2は車軸軸受と振動センサとの位置関係を例示する概略図、図3は本発明に係る異常診断装置の第1実施形態のブロック図、図4は図3の診断処理部の動作内容を示すフローチャート、図5はピーク検出の際使用する閾値についての説明図、図6は異常判定処理の内容を例示するフローチャート、図7は検出信号の強度の平均的値を求める範囲についての説明図、図8は異常診断の評価区間についての説明図、図9は本発明に係る異常診断装置の第2実施形態において異常振動を有効とする下限基準値についての説明図、図10は車両の移動速度に応じた増幅器の利得(アンプのゲイン)の設定についての説明図、図11は増幅器の利得を図10のように段階的に変えるための具体的構成を例示したブロック図、図12は本発明に係る異常診断装置の第2実施形態のブロック図である。
【0013】
(第1実施形態)
まず、図1〜図8を参照して、第1実施形態の異常診断装置について説明する。
図1に示すように、一両の鉄道車両100は前後2つの車台によって支持され、各車台には4個の車輪101が取り付けられている。各車輪101の回転支持装置(軸受箱)110には、運転中に回転支持装置110から発生する振動を検出する振動センサ111が取り付けられている。
【0014】
鉄道車両100の制御盤115には、4チャネル分のセンサ信号を同時(ほぼ同時)に取り込んで診断処理を実施する異常診断装置150が2つ搭載されている。即ち、各車台に設けられている4つの振動センサ111の出力信号が各々信号線116を介して車台毎に別の異常診断装置150に入力される。また、異常診断装置150には、車輪101の回転速度を検出する回転速度センサ(図示省略)からの回転速度パルス信号も入力される。
【0015】
図2に示すように、回転支持装置110には、例えば回転部品である車軸軸受130が設けられており、車軸軸受130は、回転軸(図示省略)に外嵌される回転輪である内輪131と、ハウジング(図示省略)に内嵌される固定輪である外輪132と、内輪131および外輪132との間に配置された複数の転動体である玉133と、玉133を転動自在に保持する保持器(図示省略)とを備える。振動センサ111は、重力方向の振動加速度を検出し得る姿勢に保持されてハウジングの外輪132近傍に固定されている。振動センサ111には、加速度センサ、AE(acoustic emission)センサ、超音波センサ、ショックパルスセンサ等、種々のものを使用することができる。
【0016】
図3に示すように、異常診断装置150は、センサ信号処理部150Aと、診断処理部(MPU)150Bとを有する。センサ信号処理部150Aは、4つの増幅・濾波器(A
FILT)151を備えている。そして、4つの振動センサ111の出力信号が増幅・濾波器151に個別に入力されるようになっている。各増幅・濾波器151は、アナログアンプの機能とアンチエリアシングフィルタの機能とを兼ね備えている。これら4つの増幅・濾波器151で増幅且つ濾波された4チャネルのアナログ信号は、診断処理部(MPU)150Bに取り込まれる。診断処理部(MPU)150Bは、マルチプレクサ(MUX)152およびAD変換器(ADC)153を備えており、入力された4チャネルのアナログ信号を、マルチプレクサ(MUX)152にて1チャネルごとの信号に切換えて、AD変換器(ADC)153にてデジタル信号に変換する。
【0017】
一方、回転速度センサからの速度比例正弦波または回転速度パルス信号などの回転速度信号は、波形整形回路155によって整形された後、タイマカウンタ(図示省略)により単位時間当りのパルス数がカウントされ、その値が回転速度信号として診断処理部(MPU)150Bに入力される。診断処理部(MPU)150Bは、振動センサ111により検出された振動波形信号と回転速度センサにより検出された回転速度信号とをもとに異常診断を実行する。診断処理部(MPU)150Bによる診断結果はラインドライバ(LD)156を介して通信回線120(図1参照)に出力される。通信回線120は警報機に接続されており、車輪101のフラット等の異常発生時には然るべき警報動作がなされるようになっている。
また、この異常診断装置150は、バックアップ電池(Batt)161を有するスタティックランダムアクセスメモリー(SRAM)162を備えている。
【0018】
また、車軸軸受130に発生する異常の中で、静止輪の外輪軌道の剥離が最も起こりやすい。そこで、車軸軸受130については、静止輪の外輪軌道の剥離(以下、車軸軸受の剥離と記す。)を検出対象とする。
【0019】
振動センサ111の出力信号から検出する異常は、車軸軸受130の剥離と車輪101のフラットである。車軸軸受130の剥離による欠陥周波数と車輪101のフラットによる欠陥周波数は、振動センサ111からの信号の周波数分布のピークとして現れる。また、両欠陥周波数も、1kHz付近までの周波数帯域の振動信号として検知できる。さらに、車軸軸受130の剥離による欠陥周波数と車輪101のフラットによる欠陥周波数とでは、周波数帯域が10倍程度異なるので、AD変換器(ADC)153にてデジタル信号に変換されたデータをソフトウエア処理により車軸軸受診断用と車輪診断用とに分離して、両者の異常診断を行なう。
【0020】
また、車輪101のフラットによる欠陥基本周波数は、車輪101の回転速度(r/s)に等しい。したがって、診断すべき回転速度の範囲は新幹線を想定した場合には3〜30r/sとなるので、車輪101のフラットの欠陥基本周波数は3〜30Hzとなる。これに対して、車軸軸受130の剥離による欠陥基本周波数は、車輪101のフラットの欠陥周波数の約10倍、22〜220Hzとなる。どちらも4次までの高調波を検査する場合、車輪101については3〜120Hz、車軸軸受130については22〜880Hzが各々の必要とされるDFT(離散フーリエ変換)の周波数分析範囲である。
【0021】
ここで、車軸軸受130の診断の際のDFTの周波数分解能は1.0Hzで十分であるが、車輪101の診断については車輪101のフラットによる欠陥周波数は低周波領域に偏っているため、1.0Hzでは分解能が不足する。したがって、車輪101の診断の際のDFTの周波数分解能を0.25Hzになるようにデータを別に調整する必要がある。
【0022】
そこで、本実施形態では、AD変換器(ADC)153にてデジタル信号に変換(サンプリング)したデータを車軸軸受剥離解析用と、車輪フラット解析用のサンプリング周波数の異なる2種類のデータに変換して処理する。
【0023】
図4は、第1実施形態における診断処理部(MPU)150Bの動作フローを示している。診断処理部(MPU)150Bは、4つの振動センサ111から出力され、増幅・濾波器(AFILT)151を経て送られてくるセンサ信号を、マルチプレクサ(MUX)152にて1チャネルごとの信号に切換えて、AD変換器(ADC)153にてデジタル信号に変換する(即ち、S101)。この実施形態では、AD変換器(ADC)153におけるサンプリング周波数を8kHz、且つサンプリング単位を1.5秒間で実施している。
【0024】
そして、AD変換器(ADC)153の出力信号に対してソフトウエアにより実現されるFIRローパスフィルタリング(LPF)によりデシメーション処理(即ち、S102)を施す。また、デシメーション処理(即ち、S102)では、サンプリング周波数を2kHzに落とすために、デシメーション率Mを4としてデータ数を1/4に削減する。
【0025】
診断処理部(MPU)150Bは、デシメーション処理(即ち、S102)を経たデータを、車軸軸受剥離離解析用(以下、「軸受用」と記す。)と車輪フラット解析用(以下、「車輪用」と記す。)としてサンプリング周波数の異なる2種類のデータに変換する。
【0026】
軸受用のデータは、デシメーション処理(即ち、S102)を経てサンプリング周波数が2kHzである1.5秒間単位のデータを2分割して0.75秒ごとのデータ区間に分割することにより得られる(即ち、S111)。そして、その得られたデータに対し絶対値化処理(即ち、S112)およびAC化処理(即ち、S113)を順次実施する。更に、1区間あたりおよそ0.25秒分のゼロ(0)を追加して当該データを補間すること(0詰め補間)により約1秒分のデータ区間長とし、2048個となるデータを生成する(即ち、S114)。このデータに対し周波数分解能を約1.0HzとしてFFTを行なう(即ち、S115)。なお、FFT処理前にはハニング(Hanning)窓処理を行なっておく。
【0027】
FFT処理後は、回転速度と軸受内部諸元から得られる軸受130の剥離における異常を示す周波数Zfcを求めるとともに(表1参照)、得られたデータに対し基本波から4次までのピーク検出を行なう(即ち、S116)。そして、当該ピーク検出結果より得られたピーク値を示す周波数と、値Zfcとを比較し、両者の一致度を算出する(即ち、S117)。この処理を一定回数繰り返して得られる一致度合計点数に基づいて車軸軸受130の異常判定を行なう。
【0028】
【表1】

【0029】
一方、車輪用のデータは、デシメーション処理(即ち、S102)を経てサンプリング周波数が2kHzであるデータを、絶対値化処理(即ち、S121)後、濾波器(LFP)によりデシメーション率Mを4としてデシメーション処理(即ち、S122)することによりサンプリング周波数を250Hzまで落とすことにより得られる。この時点でのデータ数は375個となるが、0詰め補間(即ち、S124)を行なっておよそ4秒分のデータとする。得られたデータを、周波数分解能を約0.25HzとしてFFTを実行する(即ち、S125)。なお、FFT処理前にはハニング(Hanning)窓処理を行なっておく。
【0030】
FFT処理後は、得られたデータについてピーク検出を行なう(即ち、S126)。そして、ピーク値を示す周波数と車輪101のフラットでの異常を示す周波数との比較を行ない、両者の一致度を算出しておく(即ち、S127)。この処理を一定回数繰り返して得られる一致度合計点数に基づいて車輪101の異常判定を行なう。なお、車輪のフラットによる異常を示す周波数は、車輪101の回転速度(r/s)に等しい。したがって、車輪101のフラットでの異常を示す周波数は、タイマカウンタ(図示省略)により回転速度パルス信号の単位時間当りのパルス数をカウントすることにより求める。
【0031】
ここで、ピーク値を示す周波数と異常を示す周波数との一致度を算出する際、当該一致度の検出を精度よく行うため許容誤差を設定し、当該許容誤差を周波数の許容誤差関数として規定する。すなわち、当該許容誤差は、例えば、許容誤差をe(Hz)、異常を示す周波数をFx(Hz)(FxはZfcまたはFr)とした場合、e=a・Fx+b(FxはZfcまたはFr)として規定される。ただし、aとbは予め設定する設定パラメータであり、またZfc(Hz)は車軸軸受130の剥離での異常を示す周波数であり、Fr(Hz)は車輪101のフラットでの異常を示す周波数である。
【0032】
本実施形態に上述した許容誤差関数を適用する場合には、FFTの周波数分解能(軸受用としては1.0Hz、車軸用としては0.25Hz)と、また軸受転動体の公転速度誤差と速度の変動とを考慮して、基本波から4次までの車軸軸受130の剥離解析のための前記許容誤差をef,b,i(Hz)(ただし、i=1,2,3,4)、車輪101のフラット解析のための前記許容誤差をef,w,i(Hz)(ただし、i=1,2,3,4)、また軸受用のFFTの周波数分解能をδf1(Hz)、は車輪用のFFTの周波数分解能をδf2(Hz)としたとき、前記許容誤差は以下の式で規定される。
f,b,i(Hz)= a・i・Zfc+b´1・δf1、(ただし、i=1,2,3,4)
f,w,i(Hz)= a2・i・Fr+b´2・δf2、(ただし、i=1,2,3,4)
ここで、a、b´1は軸受用の、a、b´は車輪用の設定パラメータであり、そしてb´1、b´は前記値bに相当する設定パラメータである。また、a及びa2は0.005〜0.0035の範囲で設定し、より好ましくは0.005〜0.0030、さらに好ましくは0.01〜0.025の値とする。また、b´1及びb´2は0〜7の範囲で設定し、より好ましくは0〜5、さらに好ましくは1から3の値とする。
【0033】
車軸軸受130について、前記式より得られた許容誤差±ef,b,1(Hz)を用いて、ピーク検出処理(即ち、S116)で検出されたピーク値を示す周波数fp,b,1と車軸130の剥離での異常を示す周波数Zfcの一致を、次式を満たすか否かで判定する。
Zfc−ef,b,1 ≦ fp,b,1 ≦ Zfc+ef,b,1
ピーク検出処理(即ち、S116)で検出された高次のピーク値を示す周波数についても同様に次式のように適用して、4次までの高次成分の一致を解析する。
i・Zfc−ef,b,i ≦ fp,b,i ≦ i・Zfc+ef,b,i
ただし、i=2,3,4である。
【0034】
車輪に関しても、車軸軸受剥離解析の場合と同様に、ピーク検出処理(即ち、S126)で検出されたピーク値を示す周波数fp,w,iと車輪101のフラットによる異常を示す基本周波数Frの一致を、次式を満たすか否かで判定する。
i・Fr−ef,w,i ≦ fp,w,i ≦ i・Fr+ef,w,i
ただし、i=1,2,3,4である。
【0035】
また、ピーク検出処理(即ち、S116及びS126)でのピーク値を示す周波数の検出は、移動平均で平坦化した後に微分係数の符号が正から負に変化する点をピークの候補とし、さらにピーク値、即ちピークの振幅スペクトル値に関し閾値を決めて候補を絞り込むことにより行う。
【0036】
つまり、図5に示すように、ナイキスト周波数(サンプリング周波数の1/2)までの振幅スペクトル値の平均的値としてRMS値(2乗平均平方根)を基準とし、そのK倍を閾値とする。たとえば、K=3としてRMS値の3倍を下回るピークの候補は切り捨て、RMS値の3倍以上のものを検出する。なお、前記平均的値としては、RMS値の代わりに絶対値平均などを用いてもよい。また、閾値を下回るピークの候補を切り捨ててもなおピークの候補の数が多数ある場合は、ピーク値によるソーティングを行い、一定個数以下のピークに絞る。
【0037】
値Kは、通信回線を通して、異常診断装置150の診断処理部(MPU)150Bに外部からコマンドを送ることにより設定できる。この値は、電池161でバックアップされたSRAM162に、車軸用と車輪用に個々保存される。診断処理部(MPU)150Bは、リセットされた際にも、再起動時にSRAM162から設定値を読み出して稼働する。これにより作業現場等の状況に応じた柔軟な閾値変更が可能となる。
【0038】
本実施形態における異常判定処理の流れについて図6のフローに従って詳細に説明する。振動信号をAD変換して生成されたデータに対してバッファ入れ替えを逐次行い(即ち、S201)、ローパスフィルタ(LPF)等のフィルタ処理(即ち、S201)を施し、振動信号のRMS値を算出する(即ち、S203)。
次に、周波数のピーク検出による一致度の算出(即ち、S204)を実行する。この処理では、閾値以上のピーク値を示す周波数と異常を示す周波数との比較を行い、表2に例示するように、基本波成分と基本波以外の4次までの成分のうち2つの合計3つの振幅スペクトルが一致すれば前記一致度に点数1を与える。全て一致の場合は点数2を与える。それ以外の場合は0とする。この一致度判定は予め設定した計算回数Nで行う。
【0039】
【表2】

【0040】
また、図7に示すように、振動信号の振幅が微小な場合に異常診断を行うのは不適なので、サンプリング範囲における信号の平均的値(ここではRMS値)と予め定めた最小基準値とを比較し(即ち、S205)、振動信号の平均値が最小基準値を下回る場合には一致判定を行わず、前記一致度を無効、即ち0とする。
【0041】
さらに、本実施形態では、走行中でのFFTを実行する所定の評価区間において、当該評価区間長での連続した計算回数N回に亘る一致度合計点数Spを算出し(即ち、S207)、当該一致度合計点数Spと基準合計点数Pを比較する(即ち、S208)。その結果、当該一致度合計点数Spが基準点数Pよりも大きければ、振動異常の警報出力を行う(即ち、S209、図8参照)。
【0042】
基準点数Pと計算回数Nの値、値P/Nの値を変えず計算回数Nを大きくするほど、異常診断の誤報の発生確率を低く抑えることができる。しかし、基準点数Pと計算回数Nの値が等しいほど異常を見落とす危険性が増大し、また値Nを大きくし過ぎると異常判定に要する時間が増大する。
そこで、この実施形態では、値P、Nの値を外部から設定・変更できる通信コマンドを備えたプログラムが異常診断装置150に実装されており、逐次、値P、Nの調整が可能となっている。設定・変更された値P、Nは電池161でバックアップされたSRAM162に保存される。これら値は、車軸用と車輪用に別々の値を設定できるように、例えば車軸外輪軌道剥離解析のための基準合計点数及び計算回数をそれぞれPb、Nbとし、車輪フラット解析のための基準合計点数及び計算回数をそれぞれPw、Nwとして区別する。
【0043】
したがって、本実施形態の異常診断装置100は、振動センサ111からの信号の周波数分布に含まれる1次(基本波)から4次までのピーク値を示す周波数(fp,b,i、fp,w,i)と異常を示す周波数に含まれる1次から4次までの周波数(Zfc、Fr)とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて車軸軸受130および車輪101の異常診断を行なう。その際、比較すべきピーク値を示す周波数(fp,b,i、fp,w,i)と異常を示す周波数(Zfc、Fr)との差が許容誤差(ef,b,i、ef,w,i)の範囲内であるか否かによって一致するか否かを比較し、当該許容誤差(ef,b,i、ef,w,i)を周波数の関数として予め設定した許容誤差関数により規定するので、車軸軸受130および車輪101の異常診断をそれぞれ極めて高精度に実施できる。この異常診断装置100によれば、線路などからの雑音や走行速度の大小に左右されにくい極めて高精度な異常診断が可能である。
【0044】
また、前記一致度の計算回数Nと、前記一致度のN回に亘る計算結果に対する基準合計点数Pとを電池161によりバックアップされたSRAM162に記憶しておき、診断処理部(MPU)150BがSRAM162から前記一致度の計算回数Nと基準合計点数Pを逐次読み出して、一致度を連続してN回求め、当該N回の一致度合計点数Spに基づいて異常診断を行うので、車軸軸受130および車輪101の異常診断をそれぞれ極めて高精度に実施できる。また、前記一致度の計算回数Nと基準合計点数Pを外部から設定変更できるので、状況に応じて診断精度を柔軟に変更できる。
【0045】
また、ピーク値を示す周波数(fp,b,i、fp,w,i)の閾値を決める値Kを電池161によりバックアップされたSRAM162に記憶しておき、診断処理部(MPU)150BがSRAM162から値Kを逐次読み出して、その値Kにより決まる閾値以上のピーク値を用いて両周波数を比較するので、車軸軸受130および車輪101の異常診断をそれぞれ極めて高精度に実施できる。また、値Kを外部から設定変更できるので、状況に応じて閾値を柔軟に変更できる。
【0046】
また、振動センサ111からの信号の周波数分布に含まれる1次から4次までのピーク値を示す周波数(fp,b,i、fp,w,i)の平均的値が所定の基準値を下回る場合には、その周波数分布に含まれるピーク値を示す周波数と異常を示す周波数との、一致するか否かの比較を行わないので、車軸軸受130及び車輪101の異常診断を極めて高精度に実施できる。
【0047】
なお、本実施形態では、デジタル処理の大部分をソフトウエアによって行なっているが、その一部またはすべてをFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウエアで実現してもよい。
【0048】
(第2実施形態)
第1次実施形態の変形例として、図を参照しながら第2実施形態を説明する。本発明に係る異常診断装置の第2実施形態では、図9に示すように、鉄道車両100の移動速度に応じて有効な振動信号のRMS値の基準値を設定しておき、基準値以下の振動では異常診断を無効とし、また前記移動速度が基準値以下の場合も異常診断を同様に無効とする。ただし、そのためには前記移動速度による振動信号のRMS値のばらつきを抑制する必要があるため、前記移動速度に応じてAD変換前段の増幅器の利得(アンプのゲイン)を図10のように段階的に変える。具体的には、PGA(Programmable Gain Amplifier)のようなマイコン側で増幅器の利得を逐次設定できるデバイスを異常診断装置150に実装する(図11参照)。
【0049】
また、図3中のバッテリ付きSRAM162に代えて、図12に示すようにFRAM(Ferroelectric RAM)165を採用する。これにより、設定値やデータの保存するためにバッテリが不要になる。FRAMはEEPROM(Electrically Erable and Programmable ROM)やフラッシュROMに比べて圧倒的に書き換えが簡単且つ高速で、しかも寿命が長く、SRAMと同じ使い方をしても耐用年数を10年は確保できる。また、バッテリはRTC163用のみ備えればよい。また、RTC163とSRAM162とでバッテリを共用していた場合には、SRAM162を無くした分だけバッテリ寿命が延びることになる。
【0050】
したがって、第2実施形態によれば、車両の移動速度に応じて振動センサ111からの信号の増幅利得を調整することにより、車両の移動速度の大小に左右されずに車軸軸受130および車輪101の異常診断をそれぞれ極めて高精度に実施できる。
【0051】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の様態はこれら実施形態に限られるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。また、転動装置として車軸軸受130および車輪101を例示して説明をしたが、これに限らず歯車の異常診断についても適応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】(a)は本発明の異常診断装置を搭載した鉄道車両の概略平面図、そして(b)は同鉄道車両の概略側面図である。
【図2】車軸軸受と振動センサとの位置関係を例示する概略図である。
【図3】本発明に係る異常診断装置の第1実施形態のブロック図である。
【図4】図3の診断処理部の動作内容を示すフローチャートである。
【図5】ピーク検出の際使用する閾値についての説明図である。
【図6】異常判定処理の内容を例示するフローチャートである。
【図7】検出信号の強度の平均的値を求める範囲についての説明図である。
【図8】異常診断の評価区間についての説明図である。
【図9】本発明に係る異常診断装置の第2実施形態において異常振動を有効とする下限基準値についての説明図である。
【図10】車両の移動速度に応じた信号増幅利得(アンプのゲイン)設定についての説明図である。
【図11】増幅器の利得を図10のように段階的に変えるための具体的構成を例示したブロック図である。
【図12】本発明に係る異常診断装置の第2実施形態のブロック図である。
【符号の説明】
【0053】
100 鉄道車両
101 車輪
110 回転支持装置
111 振動センサ
130 車軸軸受
150 異常診断装置
150A センサ信号処理部
150B 診断処理部
152 マルチプレクサ
162 SRAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動装置の振動を検出する振動センサと、
前記振動センサからの信号の周波数分布を求め、その周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う診断処理部とを備えた異常診断装置において、
前記診断処理部は、
比較すべき前記ピーク値を示す周波数と前記異常を示す周波数との差が許容誤差の範囲内であるか否かによって一致するか否かを比較し、当該許容誤差を周波数の関数として予め設定した許容誤差関数により規定することを特徴とする異常診断装置。
【請求項2】
転動装置の振動を検出する振動センサと、
前記振動センサからの信号の周波数分布を求め、その周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに比較して両周波数の一致度として点数化し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う診断処理部と、
前記一致度の計算回数Nと前記一致度のN回に亘る計算結果に対する基準合計点数Pとを記憶した、外部から書き換え可能な設定値記憶部とを備え、
前記診断処理部は、
前記設定値記憶部から値N、Pを逐次読み出し、前記一致度をN回求めることにより一致度合計点数を求め、当該N回における該一致度合計点数と基準合計点数Pとを比較することにより異常診断を行うことを特徴とする異常診断装置。
【請求項3】
転動装置の振動を検出する振動センサと、
前記振動センサからの信号の周波数分布を求め、その周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う診断処理部と、
前記ピーク値の閾値を決める値Kを記憶した、外部から書き換え可能な設定値記憶部とを備え、
前記診断処理部は、
前記設定値記憶部から値Kを読み出し、該値Kにより決まる閾値以上のピーク値を示す周波数を求めることを特徴とする異常診断装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の異常診断装置において、前記設定値記憶部に記憶される前記値N、PまたはKは、前記転動装置の異常の種類または部品によって異なることを特徴とする異常診断装置。
【請求項5】
転動装置の振動を検出する振動センサと、
前記振動センサからの信号の周波数分布を求め、その周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う診断処理部とを備えた異常診断装置において、
前記診断処理部は、
前記振動センサからの信号の所定の期間における振幅の平均的値が所定の基準値を下回る場合には、その周波数分布に含まれる前記ピーク値を示す周波数と前記異常を示す周波数との、一致するか否かの比較を無効化することを特徴とする異常診断装置。
【請求項6】
転動装置の振動を検出する振動センサと、
前記振動センサからの信号の周波数分布を求め、その周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う診断処理部とを備えた異常診断装置において、
前記診断処理部は、
前記転動装置の回転速度または移動速度に応じて、前記振動センサからの信号の増幅利得を調整することを特徴とする異常診断装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の異常診断装置において、前記転動装置は鉄道車両用の車軸軸受、歯車またはいずれかであることを特徴とする異常診断装置。
【請求項8】
転動装置の振動を振動センサで検出し、当該振動センサからの信号の周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う異常診断方法において、
比較すべき前記ピーク値を示す周波数と前記異常を示す周波数との差が許容誤差の範囲内であるか否かによって一致するか否かを比較し、当該許容誤差を周波数の関数として予め設定した許容誤差関数により規定するようにしたことを特徴とする異常診断装置方法。
【請求項9】
転動装置の振動を振動センサで検出し、当該振動センサからの信号の周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに比較して両周波数の一致度として点数化し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う異常診断方法において、
前記一致度の計算回数Nと前記一致度のN回に亘る計算結果に対する基準合計点数Pとを外部から書き換え可能な設定値記憶手段に記憶しておき、
前記設定値記憶手段から値N、Pを逐次読み出して、前記一致度を連続してN回行うことにより一致度合計点数を求め、当該N回における該一致度合計点数と基準合計点数Pとを比較することにより異常診断を行うようにしたことを特徴とする異常診断方法。
【請求項10】
転動装置の振動を振動センサで検出し、当該振動センサからの信号の周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う異常診断方法において、
前記ピーク値の閾値を決める値Kを外部から書き換え可能な設定値記憶手段に記憶しておき、
前記設定値記憶部から値Kを逐次読み出して、該値Kにより決まる閾値以上のピーク値を示す周波数を求めるようにしたことを特徴とする異常診断方法。
【請求項11】
請求項9または10記載の異常診断方法において、前記設定値記憶手段に記憶される前記値N、PまたはKは、前記転動装置の異常の種類または部品によって異なることを特徴とする異常診断方法。
【請求項12】
転動装置の振動を振動センサで検出し、当該振動センサからの信号の周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う異常診断方法において、
前記転動装置が発する振動の所定の期間における振幅の平均的値が所定の基準値を下回る場合には、その周波数分布に含まれる前記ピーク値を示す周波数と前記異常を示す周波数分布との、一致するか否かの比較を無効化することを特徴とする異常診断方法。
【請求項13】
転動装置の振動を振動センサで検出し、当該振動センサからの信号の周波数分布に含まれる1次(基本波)からn次までのピーク値を示す周波数と異常を示す1次からn次までの周波数とを各々対応する次数ごとに一致するか否かを比較し、その結果に基づいて前記転動装置の異常診断を行う異常診断方法において、
前記転動装置の回転速度または移動速度に応じて、前記振動センサからの信号の増幅利得を調整するようにしたことを特徴とする異常診断方法。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれかに記載の異常診断方法において、前記転動装置は鉄道車両用車軸軸受、歯車または車輪のいずれかであることを特徴とする異常診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−278894(P2007−278894A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106584(P2006−106584)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】