説明

異常音判定システム、サーバ、情報機器及び異常音判定プログラム

【課題】 情報機器の修理部品を特定して迅速かつ正確なメンテナンスを提供することができる異常音判定システム、サーバ、情報機器及び異常音判定プログラムを提供する。
【解決手段】 プリンタ15は、その内部にマイクを備え、稼働音測定用のテストパターンを実行することによってプリンタ15の各駆動部をそれぞれ所定の時間毎に単独で駆動させ、そのときの稼働音を録音記憶部に録音する。そして、コンピュータ13が、その稼働音をデジタル化した音データを管理コンピュータ12に送信する。管理コンピュータ12は、その音データの音圧と基準値とを比較し、音データの音圧のうち基準値を超えた時間に対応する駆動部を駆動部記憶部47から検索することにより、異常音の発生の原因となる駆動部を修理部品として特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常音判定システム、サーバ、情報機器及び異常音判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタや複写機等の印刷装置は、その内部の部品の不具合等により、異常音が発生することがあった。このような異常音の発生をユーザがサービスマンに連絡する際に、異常音の音量や音質を口頭で正確に伝えるのは困難であった。また、ユーザは、その異常音が印刷装置の不具合により発生しているのか否かを判断できなかった。
【0003】
そこで、音響診断によって印刷装置等の診断対象機器の異常診断を行うシステムがあった(例えば、特許文献1)。このシステムは、診断対象機器より音響を採取してデータ化し、そのデータ波形より音響の特徴を抽出して折線で近似し、予め格納してある正常時のパターンと照合する。そして、その照合結果より診断対象機器の異常音を診断していた。さらに、診断対象機器の音響の波形パターンと、予め格納してある正常時の音響の波形パターンとの照合において、採取した音響から診断対象機器内の修理部分を摘出していた。この結果、サービスマンが顧客のところに行く前に予め摘出した修理部分の部品を持っていくことができるので、サービスマンが診断対象機器の設置場所に一度行って修理部分を判断した後、再度その修理部分を構成する部品を持って診断対象機器の設置場所まで修理に行く必要がない。
【特許文献1】特開平6−167385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは、異常音の分析が正確ではなかった。すなわち、診断対象機器の異常診断を行う際に診断対象機器を動作させると、複数の部品が同時に駆動するため、得られた異常音を分析しても、不具合が発生していると考えられる部品として複数の部品が該当するため、修理部品の特定には至らなかった。そのため、サービスマンは、修理部分を構成する全ての部品を持って診断対象機器の設置場所に行く必要があり、手間を要していた。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、情報機器の修理部品を特定して迅速かつ正確なメンテナンスを提供することができる異常音判定システム、サーバ、情報機器及び異常音判定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、本発明の異常音判定システムは、情報機器とサーバとがネットワークを介して接続された異常音判定システムにおいて、前記情報機器が、前記情報機器の稼働音の取得を指示する稼働音取得命令を入力する入力手段と、前記稼働音取得命令の入力があったとき、前記情報機器を駆動させる複数の駆動部をそれぞれ所定の時間毎に単独で駆動させるテスト動作手段と、前記複数の駆動部の各稼動音を取得する稼働音取得手段と、前記稼働音を前記サーバに送信する稼働音送信手段とを有するとともに、前記サーバは、前記駆動部と前記稼働音とを前記複数の駆動部についてそれぞれ対応付けて駆動部記憶部に登録する駆動部登録手段と、前記稼働音を受信する稼働音受信手段と、前記稼働音受信手段が受信した稼働音の音圧を所定の基準値と比較する比較手段と、前記稼働音の音圧が前記所定の基準値を超えたとき、前記駆動部記憶部を検索し、前記所定の基準値を超えた音圧の稼働音に対応した駆動部を修理部として特定する修理部特定手段と、
前記修理部の情報を異常音判定結果として出力部に出力する出力手段とを有する。
【0007】
この発明によれば、情報機器に稼働音取得命令の入力があったとき、テスト動作手段が情報機器を駆動させる複数の駆動部をそれぞれ所定の時間毎に単独で駆動させ、稼働音取得手段が複数の駆動部の各稼働音を取得し、稼働音送信手段がその各稼働音をサーバに送信する。サーバが受信した稼働音の音圧を比較手段が所定の基準値と比較し、稼働音の音圧が所定の基準値を超えたとき、修理部特定手段が駆動部と稼働音とを複数の駆動部についてそれぞれ対応付けて登録された駆動部記憶部を検索する。そして、修理部特定手段が所定の基準値を超えた音圧の稼働音に対応した駆動部を修理部として特定し、その修理部の情報を異常音判定結果として出力部に出力する。
【0008】
この結果、例えば、稼働音が通常と異なるとき、その原因となる修理部を情報機器の保守担当者が情報機器の設置場所に行く前に特定することができるので、保守担当者を修理部と考えられうる全ての部品を持って情報機器の設置場所に行かせる必要がない。また、定量的に異常音を判定することができる。従って、迅速かつ正確なメンテナンスを提供することができる。
【0009】
本発明の異常音判定システムにおいて、前記出力手段は、前記修理部特定手段が特定した修理部の情報を異常音判定結果として前記情報機器に出力する。
この発明によれば、出力手段は、修理部特定手段が特定した修理部の情報を異常音判定結果として情報機器に出力するので、情報機器を使用する顧客が異常音判定結果を把握することができる。
【0010】
本発明の異常音判定システムは、情報機器とサーバとがネットワークを介して接続され、前記サーバは前記情報機器の保守担当者の端末と前記ネットワークを介して接続可能な異常音判定システムにおいて、前記情報機器が、前記情報機器の稼働音の取得を指示する稼働音取得命令の入力手段と、前記稼働音取得命令の入力があったとき、前記情報機器を駆動させる複数の駆動部をそれぞれ所定の時間毎に単独で駆動させるテスト動作手段と、前記複数の駆動部の各稼働音を取得する稼働音取得手段と、前記稼働音を前記サーバに送信する稼働音送信手段とを有するとともに、前記サーバは、前記駆動部と前記稼働音とを前記複数の駆動部についてそれぞれ対応付けて駆動部記憶部に登録する駆動部登録手段と、前記稼働音を受信する稼働音受信手段と、前記稼働音受信手段が受信した稼働音の音圧を所定の基準値と比較する比較手段と、前記稼働音の音圧が前記所定の基準値を超えたとき、前記駆動部記憶部を検索し、前記所定の基準値を超えた音圧の稼働音に対応した駆動部を修理部として特定する修理部特定手段と、前記修理部の情報を異常音判定結果として前記端末に出力する出力手段とを有する。
【0011】
この発明によれば、情報機器に稼働音取得命令の入力があったとき、テスト動作手段が情報機器を駆動させる複数の駆動部をそれぞれ所定の時間毎に単独で駆動させ、稼働音取得手段が複数の駆動部の各稼働音を取得し、稼働音送信手段がその各稼働音をサーバに送信する。サーバが受信した稼働音の音圧を比較手段が所定の基準値と比較し、稼働音の音圧が所定の基準値を超えたとき、修理部特定手段が駆動部と稼働音とを複数の駆動部についてそれぞれ対応付けて登録された駆動部記憶部を検索する。そして、修理部特定手段が所定の基準値を超えた音圧の稼働音に対応した駆動部を修理部として特定し、その修理部の情報を異常音判定結果として端末に出力する。
【0012】
この結果、稼働音が通常と異なるとき、その原因となる修理部を情報機器の保守担当者が情報機器の設置場所に行く前に特定し、保守担当者の端末に出力することができるので、保守担当者が修理部と考えられうる全ての部品を持って情報機器の設置場所に行ったり、再度必要な部品を取りに帰ったりする必要がない。また、定量的に異常音を判定するこ
とができる。さらに、端末に異常音判定結果を出力することによって、情報機器の保守担当者が異常音判定結果を把握することができる。従って、迅速かつ正確なメンテナンスを提供することができる。
【0013】
本発明のサーバは、情報機器とネットワークを介して接続可能なサーバであって、前記情報機器を駆動させる複数の駆動部をそれぞれ所定の時間毎に単独で駆動させたときの駆動部の稼働音を前記複数の駆動部についてそれぞれ対応付けて駆動部記憶部に登録する駆動部登録手段と、前記情報機器の稼働音を受信する稼働音受信手段と、前記稼働音受信手段が受信した稼働音の音圧を所定の基準値と比較する比較手段と、前記稼働音の音圧が前記所定の基準値を超えたとき、前記駆動部記憶部を検索し、前記所定の基準値を超えた音圧の稼働音に対応した駆動部を修理部として特定する修理部特定手段と、前記修理部の情報を異常音判定結果として出力部に出力する出力手段とを有する。
【0014】
また、本発明の異常音判定プログラムは、情報機器とネットワークを介して接続可能なサーバを、前記情報機器を駆動させる複数の駆動部をそれぞれ所定の時間毎に単独で駆動させたときの駆動部の稼働音を前記複数の駆動部についてそれぞれ対応付けて駆動部記憶部に登録する駆動部登録手段と、前記情報機器の稼働音を受信する稼働音受信手段と、前記稼働音受信手段が受信した稼働音を所定の基準値と比較する比較手段と、前記稼働音の音圧が前記所定の基準値を超えたとき、前記駆動部記憶部を検索し、前記所定の基準値を超えた音圧の稼働音に対応した駆動部を修理部として特定する修理部特定手段と、前記修理部の情報を異常音判定結果として出力する出力手段として機能させる。
【0015】
これらの発明によれば、サーバが受信した稼働音の音圧を比較手段が所定の基準値と比較し、稼働音の音圧が所定の基準値を超えたとき、修理部特定手段が駆動部と稼働音とを複数の駆動部についてそれぞれ対応付けて登録した駆動部記憶部を検索する。そして、修理部特定手段が所定の基準値を超えた音圧の稼働音に対応した駆動部を修理部として特定し、その修理部の情報を異常音判定結果として出力部に出力する。
【0016】
この結果、例えば、稼働音が通常と異なるとき、その原因となる修理部を情報機器の保守担当者が情報機器の設置場所に行く前に特定することができるので、保守担当者を修理部と考えられうる全ての部品を持って情報機器の設置場所に行かせる必要がない。また、定量的に異常音を判定することができる。従って、迅速かつ正確なメンテナンスを提供することができる。
【0017】
本発明のサーバであって、前記出力手段は、前記修理部特定手段が特定した修理部の情報を異常音判定結果として前記情報機器に出力することを特徴とする。
この発明によれば、出力手段は、修理部特定手段が特定した修理部の情報を異常音判定結果として情報機器に出力するので、情報機器を使用する顧客が異常音判定結果を把握することができる。
【0018】
本発明のサーバは、情報機器及び前記情報機器の保守担当者の端末とネットワークを介してそれぞれ接続可能なサーバであって、前記情報機器を駆動させる複数の駆動部をそれぞれ所定の時間毎に単独で駆動させたときの駆動部の稼働音を前記複数の駆動部についてそれぞれ対応付けて駆動部記憶部に登録する駆動部登録手段と、前記情報機器の稼働音を受信する稼働音受信手段と、前記稼働音受信手段が受信した稼働音の音圧を所定の基準値と比較する比較手段と、前記稼働音の音圧が前記所定の基準値を超えたとき、前記駆動部記憶部を検索し、前記所定の基準値を超えた音圧の稼働音に対応した駆動部を修理部として特定する修理部特定手段と、前記修理部の情報を異常音判定結果として前記端末に出力する出力手段とを有する。
【0019】
この発明によれば、サーバが受信した稼働音の音圧を比較手段が所定の基準値と比較し、稼働音の音圧が所定の基準値を超えたとき、修理部特定手段が駆動部と稼働音とを複数の駆動部についてそれぞれ対応付けて登録した駆動部記憶部を検索する。そして、修理部特定手段が所定の基準値を超えた音圧の稼働音に対応した駆動部を修理部として特定し、その修理部の情報を異常音判定結果として端末に出力する。
【0020】
この結果、稼働音が通常と異なるとき、その原因となる修理部を情報機器の保守担当者が情報機器の設置場所に行く前に特定し、保守担当者の端末に出力することができるので、保守担当者が修理部と考えられうる全ての部品を持って情報機器の設置場所に行ったり、再度必要な部品を取りに帰ったりする必要がない。また、定量的に異常音を判定することができる。さらに、端末に異常音判定結果を出力することによって、情報機器の保守担当者が異常音判定結果を把握することができる。従って、迅速かつ正確なメンテナンスを提供することができる。
【0021】
本発明のサーバにおいて、前記駆動部登録手段は、前記所定の時間とその所定の時間に駆動される駆動部とを対応付けて前記駆動部記憶部に登録する。
この発明によれば、駆動部登録手段は、所定の時間とその所定の時間に駆動される駆動部とを対応付けて駆動部記憶部に登録する。従って、稼働音の音圧が基準値を超えたとき駆動部記憶部を検索することにより、その基準値を超えた時間に駆動した駆動部を修理部として特定することができる。
【0022】
本発明のサーバにおいて、さらに、前記稼働音の所定の周波数毎に周波数解析する解析手段を備え、前記駆動部登録手段は、前記所定の周波数とその所定の周波数の稼働音に対応する駆動部とを対応付けて前記駆動部記憶部に登録する。
【0023】
この発明によれば、さらに、稼働音の所定の周波数毎に周波数解析する解析手段を備え、駆動部登録手段は、所定の周波数とその所定の周波数の稼働音に対応する駆動部とを対応付けて駆動部記憶部に登録する。従って、稼働音の音圧が基準値を超えたとき駆動部記憶部を検索することにより、その基準値を超えた周波数に対応した駆動部を修理部として特定することができる。
【0024】
本発明のサーバにおいて、さらに、前記異常音判定結果のうち前記修理部が列挙された修理部リストを作成するリスト作成手段を備え、前記異常音判定結果は前記修理部リストである。
【0025】
この発明によれば、異常音判定結果は異常音判定結果のうち修理部が列挙された修理部リストであるため、修理の必要な駆動部を容易に把握することができる。
本発明のサーバにおいて、前記異常音判定結果は前記稼働音の音圧を表現するグラフである。
【0026】
この発明によれば、異常音判定結果は稼働音の音圧を表現するグラフであるため、稼働音の特性を容易に把握することができる。
本発明のサーバにおいて、前記異常音判定結果は複数の解析結果データからなり、前記情報機器には前記解析結果データの一部のみを出力する。
【0027】
この発明によれば、異常音判定結果は複数の解析結果データからなり、情報機器には解析結果データの一部のみを出力する。この結果、例えば、解析データの一部として解析データの概要のみを情報機器に出力するとき、情報機器を使用する顧客はその概要を元に異常音判定結果を容易に把握することができる。従って、メンテナンスに関する適切な情報を提供するので、メンテナンスの信頼性を向上することができる。
【0028】
本発明のサーバにおいて、前記異常音判定結果は複数の解析結果データからなり、前記端末には前記解析結果データの一部のみを出力する。
この発明によれば、異常音判定結果は複数の解析結果データからなり、端末には解析結果データの一部のみを出力する。この結果、例えば、端末が受信可能なデータ量が限られているとき、端末に解析結果データの一部としてメンテナンスに必要な情報の概要を出力することができる。従って、情報量を低減しながらもメンテナンスに関する適切な情報を提供するので、メンテナンスの信頼性を向上することができる。
【0029】
本発明の情報機器は、情報機器の稼働音の取得を指示する稼働音取得命令を入力する入力手段と、前記稼働音取得命令の入力があったとき、前記情報機器を駆動させる複数の駆動部の稼働音をそれぞれ単独で駆動させるテスト動作手段と、前記複数の駆動部の各稼働音を取得する稼働音取得手段とを有する。
【0030】
この発明によれば、情報機器の稼働音の取得を指示する稼働音取得命令を入力があったとき、テスト動作手段が情報機器を駆動させる複数の駆動部の稼働音をそれぞれ単独で駆動させ、稼働音取得手段が複数の駆動部の各稼働音を取得する。従って、例えば、稼働音が通常と異なるとき駆動部毎の稼働音を取得することができるので、不具合の発生している駆動部の特定に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図10に従って説明する。本実施形態では、異常音判定システムを、複数の会社(顧客)が所有するプリンタ等の異常音を判定するときに具体化した場合について説明する。
【0032】
図1に示すように、管理サーバ11は、顧客情報の管理のための各種情報の送受信及び各記憶部に格納されるデータの読み出し、書き込み等を行う管理コンピュータ12を有する。また、管理サーバ11は、図示しない顧客データベースを備えており、保守管理対象である顧客の所有するプリンタのシリアルナンバ、機種名、プリンタの管理者、電話番号、住所等の顧客情報が予め記憶されている。管理コンピュータ12は、ネットワークIを介してコンピュータ13に接続されている。管理サーバ11は、プリンタ等の保守管理等を提供する業者が所有するサーバである。コンピュータ13は、例えば、複数の会社(顧客)がそれぞれ所有する端末である。尚、ネットワークIは、インターネット等である。そして、コンピュータ13は、それぞれ顧客の会社内のLAN等のネットワークNを介して複数のプリンタ15と接続されている。また、管理コンピュータ12は、これら複数のプリンタ15の保守管理等を担当する保守担当者としてのサービスマンが所有するコンピュータ等の端末としての携帯端末16とネットワークIを介して接続されている。
【0033】
管理コンピュータ12は、図示しないCPU等の制御部、RAM及びROM等の記憶部、及び通信手段等を備えている。この管理コンピュータ12は、ROMに記憶された各種プログラムに従って、コンピュータ13と各種データの送受信を行う。すなわち、本実施形態では、この管理コンピュータ12(管理サーバ11)が、駆動部登録手段、稼働音受信手段、比較手段、修理部特定手段、出力手段、リスト作成手段等として機能する。また、管理コンピュータ12は、図示しない出力部としてのモニタ、スピーカを備えている。
【0034】
図2に示すように、コンピュータ13は、CPU13a等の制御部、RAM13b及びROM13c等の記憶部、及び通信手段(図示しない)等を備えている。このコンピュータ13は、ROM13cに記憶された各種プログラムに従って、管理コンピュータ12と各種データの送受信を行う。
【0035】
また、コンピュータ13は、録音記憶部17及び音データ記憶部19を備えている。録音記憶部17には、プリンタ15にて録音されたプリンタ15の稼働中の音(以下、稼働音という)が記憶される。この稼働音は、プリンタ15から通常と異なる稼働音が発生したときにプリンタ15にて録音され、コンピュータ13に送信される。
【0036】
音データ記憶部19は、プリンタ15から送信された稼働音をデジタル化した結果が音データとして記憶されている。本実施形態では、例えば、取得した稼働音をPCM方式でデジタル化する。PCM(Pulse Code Modulation )方式とは、音声をデジタルデータに変換する方式の一つであって、音を一定時間ごとにサンプリングして記録する。なお、サンプリングとは、アナログ信号の強さを一定時間ごとに採取し、デジタル記録が可能な形にすることである。
【0037】
また、図1及び図2に示すように、コンピュータ13は、キーボードK、マウスM等の入力手段を備えており、音データ等の送信を行うための各種操作信号をこの入力手段を介してコンピュータ13に入力する。また、コンピュータ13はモニタDを備えている。モニタDは、例えば、画像を表示するLCD等であって、モニタDの画面上に管理コンピュータ12から送信されたメッセージ等を出力表示する。
【0038】
プリンタ15は、本実施形態ではレーザプリンタであって、図3に示すように、そのフレーム21内部に、ドラム駆動部23、フィーダー駆動部24、清掃部駆動部25、転写部駆動部26、現像部駆動部27、トナー駆動部28を備えている。また、プリンタ15は、フレーム21内部であって、プリンタ15前面に対応する箇所に稼働音取得手段としてのマイク30を備えている。このマイク30によって、プリンタ15から通常と異なる稼働音が発生したときにプリンタ15の各駆動部23〜28(ドラム駆動部23、フィーダー駆動部24、清掃部駆動部25、転写部駆動部26、現像部駆動部27、トナー駆動部28)の稼働音が録音される。
【0039】
また、プリンタ15は、図4に示すように、CPU15a、RAM15b、ROM15c及び図示しないASIC等を備えている。CPU15aはROM15cに記憶されたプログラムを実行することで、ASICに対し印刷制御上必要な指示を出し、コンピュータ13から送信された印刷データに基づいて、各駆動部23〜28を駆動して印刷を行うようになっている。すなわち、図示しないドラムにレーザ光線を当てて、静電気の有無に応じた像を描き(現像)、その像を図示しないトナーにトナー像として転写する。そして、CPU15aは、その転写されたトナー像を図示しない紙に定着させ、ドラムを清掃し、印刷が完了する。また、プリンタ15は、録音記憶部32を備えている。録音記憶部32は、マイク30により録音されたプリンタ15の稼働音を記憶する。なお、本実施形態では、コンピュータ13とプリンタ15とで情報機器を構成しており、テスト動作手段、稼働音送信手段等として機能する。
【0040】
管理サーバ11は、図1に示すように、テストパターン記憶部41、音データ記憶部43、基準値記憶部45、駆動部記憶部47を備えている。
テストパターン記憶部41には、プリンタ15の異常音の原因を検出するためのテストパターンが予め記憶されている。このテストパターンは、プリンタ15の異常音を検出するために、プリンタ15の各駆動部23〜28をそれぞれ個別に駆動させる専用のテストパターンであって、プリンタ15の機種毎に予め作成されている。そして、プリンタ15の稼働音を取得する際に、テストパターン記憶部41から読み出されるようになっている。このテストパターンを実行することにより(以下、テスト動作という)、プリンタ15が印刷を行う際に駆動される各駆動部23〜28を、それぞれ所定の時間T毎にそれぞれ単独で駆動させることができる。本実施形態では、例えば、所定の時間Tは10秒間であるとする。
【0041】
音データ記憶部43は、図5に示すように、音データ情報43aがプリンタ15毎に記憶される。音データ情報43aは、コンピュータ13がデジタル化したプリンタ15の稼働音であって、コンピュータ13から送信された音データである。音データ情報43aは、シリアルナンバ49、音データ51から構成されている。シリアルナンバ49は、プリンタ15毎に与えられる固有の識別番号である。音データ51は、コンピュータ13がデジタル化したプリンタ15の稼働音である。
【0042】
基準値記憶部45は、録音したプリンタ15の稼働音が正常か否か判断するための基準となる音圧である所定の基準値としての基準値Sを記憶している。この基準値Sはプリンタ15の機種毎に、工場出荷時に予め定められた値である。そして、管理コンピュータ12は、プリンタ15の各駆動部23〜28の稼働音のうち、この基準値Sを超える音圧の稼働音(音データ)を異常音と判断する。
【0043】
駆動部記憶部47は、図6に示すように、前記テストパターンに基づいた動作において、所定の時間T毎に各駆動部23〜28のうちどの駆動部が駆動しているかの駆動部データが記憶されている。なお、図6は、説明の便宜上、数字以外の文字も用いて表現されているが、実際は、管理コンピュータ12が認識できるように全て二進数で表現されている。詳述すると、前記テストパターンによるテスト動作の際、0秒〜10秒にはドラム駆動部23が駆動しており、11秒〜20秒にはフィーダー駆動部24が駆動している。21秒〜30秒には清掃部駆動部25が駆動しており、31秒〜40秒には転写部駆動部26が駆動している。41秒〜50秒には現像部駆動部27が駆動しており、51秒〜60秒にはトナー駆動部28が駆動している。そして、テスト動作により、すなわち、前記テストパターンに基づいて各駆動部23〜28を単独で動作させることにより、異常音があったとき、その異常音の発生した時間と駆動部記憶部47を対応させる。この結果、異常音の発生原因となる駆動部を特定することができる。
【0044】
携帯端末16(図1参照)は、本実施形態ではコンピュータの機能を有し、前記プリンタ15のサービスマンが所有する携帯端末である。そして、携帯端末16は、プリンタ15の各駆動部23〜28のうち不具合が発生している箇所の通知、プリンタ15の稼働音(音データ)のグラフ、その他の情報を管理コンピュータ12からネットワークIを介して受信する。なお、図1では、説明の便宜上、2人のサービスマンの2個の携帯端末16しか図示していないが、実際はそれ以上のサービスマンの携帯端末16との間でのデータの授受が行われる。
【0045】
次に、異常音判定システムの作用(異常音判定処理)について、図7〜図9に従って説明する。異常音判定処理は、稼働音取得処理、判定処理、修理部品特定処理の3つの処理から構成されている。図7は、稼働音取得処理のフローチャートである。なお、このとき、プリンタ15からは通常と異なる稼働音が発生しているが、プリンタ15内の各駆動部23〜28のうち、どの駆動部に不具合が発生しているかユーザが判断できない状態であるとする。
【0046】
コンピュータ13は、通常と異なる稼働音が発生したとき、まず、管理コンピュータ12に不具合通知を送信する(ステップS1−10)。コンピュータ13は、ユーザに不具合通知の送信を促す画面をモニタDに表示し、マウスM、キーボードK等の入力手段を介した選択信号によって、不具合通知を送信する。なお、不具合通知とは、通常と異なる稼働音を発しているプリンタ15のシリアルナンバと不具合のあった旨である。管理コンピュータ12は不具合通知を受信すると(ステップS1−15)、顧客データベースからシリアルナンバに対応するプリンタ15の機種名を検索し、そのプリンタ15に対応したテストパターンをテストパターン記憶部41から読み出し、コンピュータ13に送信する(
ステップS1−20)。コンピュータ13は、テストパターンを受信すると(ステップS1−25)、プリンタ15に稼働音取得命令を送信する(ステップS1−30)。すなわち、その受信したテストパターンに基づいてプリンタ15を駆動させる。プリンタ15は、コンピュータ13から稼働音取得命令を受信すると(ステップS1−35)、テスト動作を実行する(ステップS1−40)。すなわち、そのテストパターンを実行することによって、プリンタ15は、稼働音取得用に、プリンタ15の各駆動部23〜28を所定の時間T毎に順番に単独で駆動させ、そのときの稼働音をプリンタ15の内部に備えられたマイク30で録音する。
【0047】
稼働音を取得後、プリンタ15は、その取得した稼働音をコンピュータ13に送信する(ステップS1−45)。コンピュータ13は、稼働音を受信すると(ステップS1−50)、その稼働音をデジタル化し、音データとする(ステップS1−55)。そして、コンピュータ13は、その音データをプリンタ15のシリアルナンバと共に管理コンピュータ12に送信する(ステップS1−60)。管理コンピュータ12は、それらのデータを受信し(ステップS1−65)、音データ記憶部43に記憶する。
【0048】
続いて、判定処理について説明する。図8は、判定処理のフローチャートである。管理コンピュータ12は、音データ51のグラフ53を作成する(ステップS2―10)。本実施形態では、例えば、図10に示すように、横軸を時間、縦軸を音圧とし、各駆動部23〜28が駆動したときの稼働音(音データ)の音圧を表すこととする。そして、稼働音(音データ)の音圧が基準値Sを超えないときは、その稼働音は規格内であり、駆動部の不具合はないと判断できる。一方、稼働音(音データ)の音圧が基準値Sを超えたときは、そのときに駆動していた駆動部に不具合が発生していると判断できる。次に、管理コンピュータ12は、修理部としての修理部品を特定する(ステップS2−15)。すなわち、駆動部記憶部47に記憶された駆動部データと音データ51とを比較し、修理部品を特定する。例えば、図10に示すように、41秒〜50秒の間の稼働音の音圧が基準値Sを超えたとき、どの駆動部に不具合が発生しているかを特定する。
【0049】
この修理部品特定処理について、図9に従って説明する。まず、管理コンピュータ12は、音データ記憶部43に記憶した音データ51のうち、基準値Sを超えた音圧のデータがあるか否かを判断する(ステップS3―10)。基準値Sを超えた音圧のデータがないとき(ステップS3―10でNO)、この修理部品特定処理を終了する。一方、基準値Sを超えた音圧のデータがあったとき(S3―10でYES)、管理コンピュータ12は、その音データ51から、基準値Sを超えた音圧のデータに対応する時間を検索する(ステップS3−15)。すなわち、テスト動作開始から何秒経過後に稼働音(音データ)の音圧が基準値Sを超えたかを検索する。そして、管理コンピュータ12は、駆動部記憶部47から、その基準値Sを超えたデータに対応する時間に駆動している駆動部を選択し(ステップS3―20)、この修理部品特定処理を終了する。すなわち、図6に示すように駆動部記憶部47から、稼働音(音データ)の音圧が基準値Sを超えている41〜50秒の間に駆動している駆動部、すなわち現像部駆動部27を選択する。
【0050】
修理部品特定処理が終了すると、管理コンピュータ12は、携帯端末16に異常音判定結果としての判定結果として修理部品の有無と作成したグラフ53を送信する(図8のステップS2―20)。すなわち、修理部品がない場合は、稼働音は規格内であり、修理部品はない旨を送信する。そして、修理部品がある場合は、その修理部品の修理部リストとしてのリストを作成し、送信する。さらに、管理コンピュータ12は、テスト動作後に作成したグラフ53を送信する。携帯端末16は、それら判定結果を受信すると(ステップS2−25)、判定処理を終了し、これにより、異常音判定処理を終了する。
【0051】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 本実施形態によれば、プリンタ15は、その内部にマイク30を備え、稼働音測定用のテストパターンを実行することによってプリンタ15の各駆動部23〜28をそれぞれ所定の時間T毎に順番に単独で駆動させ、そのときの稼働音を録音記憶部32に記憶した。そして、コンピュータ13が、その稼働音をデジタル化した音データの音圧を管理コンピュータ12に送信した。管理コンピュータ12は、その音データ51と基準値Sとを比較し、音データ51のうち基準値Sを超えた時間に対応する駆動部を駆動部記憶部47から検索する。これにより、異常音の発生の原因となる駆動部を特定することができる。この結果、サービスマンがプリンタ15の設置場所に行く前に、予め修理部品を特定することができるため、修理部品と考えられうる全ての部品を持ってプリンタ15の設置場所に行ったり、再度必要な部品を取りに帰ったりする必要がない。従って、迅速かつ正確なメンテナンスを提供することができる。
【0052】
(2) 本実施形態によれば、プリンタ15の内部にマイク30を備えた。これにより、プリンタ15の外部にマイクを配置して録音するときと比較して、他の音に妨げられることなくプリンタ15の発する稼働音を精度良く録音することができる。この結果、稼働音の発生する駆動部を正確に特定することができる。従って、迅速かつ正確なメンテナンスを提供することができる。
【0053】
(3) 本実施形態によれば、稼働音取得処理において、テストパターン記憶部41に記憶した稼働音取得のためのテストパターンを実行することによって、プリンタ15の各駆動部23〜28をそれぞれ所定の時間T毎に順番に単独で駆動させた。これにより、プリンタ15から発生した異常音がどの駆動部から出力されたものかを容易に対応付けることができる。この結果、サービスマンがプリンタ15の設置場所に行く前に、予め修理部品を特定することができる。
【0054】
(4) 本実施形態では、テストパターン記憶部41は、プリンタ15の機種毎に異なるテストパターンを記憶した。これにより、プリンタ15の機種毎に最適なテスト動作をさせることができることから、正確にメンテナンスを提供することができる。
【0055】
(5) 本実施形態によれば、管理コンピュータ12は、稼働音取得処理により各駆動部23〜28が駆動したときに発する稼働音(音データ)の音圧を元にグラフ53を作成した。これにより、各駆動部のうち、どの駆動部23〜28が駆動したときに異常音が発生しているかを一目で理解することができる。この結果、例えば、サービスマンが顧客に修理部品についての説明をする際に、容易に正確な説明をすることができるため、迅速かつ正確なメンテナンスを提供することができる。
【0056】
(6) 本実施形態によれば、稼働音取得処理を実行するテストパターンは、プリンタ15が実際に給紙、排紙する動作において駆動する各駆動部23〜28をそれぞれ所定の時間T毎に順番に単独で駆動させるテストパターンとした。この結果、テスト動作であっても、実際にプリンタ15が駆動したときに発する稼働音を再現することができる。従って、正確に修理部品を特定することができる。
【0057】
(7) 本実施形態によれば、異常音判定処理を行うことにより、管理コンピュータ12がプリンタ15の稼働音(音データ)を基準値Sと比較して定量的に異常の有無を判定することができる。この結果、従来のようにユーザがプリンタ15の稼働音の音量や音質を口頭でサービスマンに伝えるときと比較して、正確に異常の有無を判定することができる。この結果、サービスマンがプリンタ15の設置場所に行く前に、予め修理部品を特定することができる。
【0058】
(8) 本実施形態によれば、異常音判定処理によって定量的に修理部品の特定を行っ
たので、例えば、サービスマンの経験の有無等による修理部品の特定の違いや修理部品の特定に要する時間のバラツキを低減し、メンテナンスの信頼性を向上することができる。
【0059】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○上記実施形態では、マイク30は、プリンタ15のフレーム21内部であって、プリンタ15前面に対応する箇所に1本備えた。これを、各駆動部23〜28の稼働音を取得する各取得位置のそれぞれに対応するマイクを複数本備えてもよい。また、前記各取得位置のうち複数位置をまとめて録音するマイクを複数本備えてもよい。さらに、任意の位置に複数本のマイクを備えてもよい。これにより、マイクを1本備えたときと比較して、より正確に音を取得することができる。
【0060】
○上記実施形態では、コンピュータ13は、プリンタ15から送信された稼働音をデジタル化して音データとし、その音データを管理コンピュータ12に送信した。これを、稼働音そのものを管理コンピュータ12に送信してもよい。
【0061】
○上記実施形態では、管理コンピュータ12は、異常音判定処理の結果から作成したグラフ53、修理部品のリストを携帯端末16に送信した。これを、管理コンピュータ12のモニタにグラフ53、修理部品のリストを表示してもよい。
【0062】
○上記実施形態では、管理コンピュータ12は、異常音判定処理の結果からグラフ53を作成して携帯端末16に送信した。これを、携帯端末16のみならず、コンピュータ13のモニタDにもそのグラフ53を出力してもよい。また、コンピュータ13にスピーカを設け、稼働音が基準値Sを超えたときにそのスピーカから警告音を鳴らしてもよい。
【0063】
○上記実施形態では、管理コンピュータ12は、異常音判定処理の結果からグラフ53を作成して携帯端末16に送信した。これを、携帯端末16のみならず、プリンタ15にそのグラフ53を出力し、印刷させてもよい。さらに、プリンタ15に異常音判定処理の結果を印刷させるだけでなく、プリンタ15にLCD等の表示部を設け、その表示部に異常音判定処理の結果を表示させてもよい。これにより、携帯端末16を所有するサービスマンのみならず、ユーザも異常音判定処理結果を知ることができる。
【0064】
さらに、このプリンタ15に出力させるグラフ53は、携帯端末16に出力したグラフ53よりも簡易なものでよい。すなわち、複数の解析データからなる異常音判定処理の結果のうち、一部のみをグラフ53の概要としてプリンタ15に送信してもよい。これにより、専門的知識が比較的少ないユーザであっても、異常音判定処理の結果を理解することができる。また、プリンタ15にスピーカを設け、稼働音の音圧が基準値Sを超えたときに警告音を鳴らしてもよい。さらに、プリンタ15にLEDを設け、稼働音の音圧が基準値Sを超えたときにそのLEDを点滅させてもよい。これにより、稼働音が異常であるか否かをユーザが容易に判断することができる。
【0065】
○上記実施形態では、携帯端末16をコンピュータとして説明したが、携帯電話であってもよい。このとき、管理コンピュータ12は複数の解析データからなる異常音判定処理の結果のうち、一部のみを携帯電話に送信するようにしてもよい。すなわち、携帯電話が受信可能なデータ量の解析データでありながらも、サービスマンがメンテナンスに必要最低限のデータを受信することができる。
【0066】
○上記実施形態では、管理コンピュータ12は、音データ記憶部43に記憶した音データ51を元にグラフ53を作成し、音データ51のうち、その音圧が基準値Sよりも大きい駆動部を不具合が発生している駆動部として特定した。これを、デジタル化する前の稼働音をコンピュータ13が管理コンピュータ12に送信し、管理コンピュータ12がその
稼働音を周波数解析し、周波数毎に異常の有無を判定してもよい。このとき、管理コンピュータ12は、解析手段として機能する。詳述すると、音データ51をFFT(Fast Fourier Transform)を用いて周波数解析する。FFTとは、信号の中にどの周波数成分がどれだけ含まれているかを抽出する処理である離散的フーリエ変換と逆変換を高速に計算する手法である。そして、FFTにより、例えば、図11に示すように、周波数毎に稼働音の音圧を表現することができる。この周波数解析結果に対しても、所定の基準値を設け、所定の周波数毎の稼働音の音圧を所定の基準値と比較することによって、異常音の発生原因となる駆動部を特定することができる。
【0067】
すなわち、例えば、高周波の音の音圧が所定の基準値を超えたときは金属部品に、低周波の音の音圧が所定の基準値を超えたときはプラスチック部品に不具合が発生していると判断する。そして、金属部品、プラスチック部品、それぞれに対しても周波数毎の稼働音の音圧によって修理部品を特定することができる。このとき、上記実施形態ではテストパターン実行中の時間とそれぞれの時間に駆動する各駆動部23〜28を対応付けた駆動部記憶部47を予め備えたが、駆動部記憶部47に、周波数とその周波数の音を発する各駆動部23〜28を対応付けて予め記憶し、その駆動部記憶部47を参照することによって修理部品を特定してもよい。この結果、周波数解析によって、音量のみならず、高音、低音の別である音質が異常であるか否かを判断することができるので、より正確に修理部品を特定することができる。
【0068】
○上記実施形態では、管理コンピュータ12は、プリンタ15が録音した稼働音(音データ)を元にグラフ53を作成し、修理部品を特定した。これを、プリンタ15が録音した稼働音(音データ51)を直接管理コンピュータ12のスピーカから出力し、サービスマンが聴き、修理部品を特定してもよい。これにより、管理コンピュータ12がデータ処理しなくてよいため、処理数を低減しながらも、ユーザに稼働音の音量や音質を口頭で説明させる必要がなく、迅速かつ正確に修理部品を特定することができる。
【0069】
○上記実施形態では、通常と異なる稼働音が発生したとユーザが感じたときに、コンピュータ13から管理コンピュータ12に不具合通知を送信し、不具合通知を受信した管理コンピュータ12が送信したテストパターンに基づいてテスト動作が行われた。これを、プリンタ15が異常音の発生の有無を監視し、異常音が発生したときに自動的に管理コンピュータ12に不具合通知を送信し、異常音判定処理を実行してもよい。
【0070】
○上記実施形態では、コンピュータ13のマウスM、キーボードK等の入力手段を介して不具合通知が管理コンピュータ12に送信された。これを、プリンタ15に不具合通知用のスイッチ等の入力手段を設け、そのスイッチをオン状態にすることによって不具合通知が管理コンピュータ12に送信されるようにしてもよい。
【0071】
○上記実施形態では、異常音判定処理用の専用のテストパターンを設け、異常音判定処理を行った。これを、専用のテストパターンを設けずに、プリンタ15の起動時に発生する音を録音し、その音を解析することによって修理部品を特定してもよい。
【0072】
○上記実施形態では、プリンタ15の稼働音を取得するためのテストパターンは、管理サーバ11のテストパターン記憶部41に記憶した。これを、コンピュータ13にそのコンピュータ13と接続されているプリンタ15のテストパターンを記憶してもよい。これにより、管理コンピュータ12とコンピュータ13との間の不具合通知、テストパターンの送受信が不要になるため、より早く修理部品を特定することができる。
【0073】
○上記実施形態では、コンピュータ13が、主に稼働音の取得命令を送信してプリンタ15にテスト動作を実行させ、プリンタ15から送信された稼働音をコンピュータ13が
デジタル化して音データとし、その音データとシリアルナンバとを管理コンピュータ12に送信した。これを、CPU、RAM、ROM、音データ記憶部を備えたプリンタ15が前記各処理を行うようにしてもよい。この場合、印刷を実行する際にコンピュータ13を必要としないプリンタにおいても上記実施形態によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0074】
○上記実施形態では、異常音判定システムの情報機器をコンピュータ13とプリンタ15から構成されるとして具体化したが、このプリンタ15は、プリンタに限らず、ファクシミリ、コピー等であってもよい。また、プリンタ15はレーザプリンタに限らず、インクジェット式プリンタ、熱転写式プリンタ等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本実施形態のシステム概略図。
【図2】同じく、コンピュータの概略図。
【図3】同じく、プリンタの駆動部の模式図。
【図4】同じく、プリンタの概略図。
【図5】同じく、音データ記憶部の説明図。
【図6】同じく、駆動部記憶部の説明図。
【図7】同じく、稼働音取得処理の処理手順の説明図。
【図8】同じく、判定処理の処理手順の説明図。
【図9】同じく、修理部品特定処理の処理手順の説明図。
【図10】同じく、グラフの概略図。
【図11】別例のグラフの概略図。
【符号の説明】
【0076】
11…管理サーバ、12…管理コンピュータ、13…コンピュータ、15…プリンタ、16…携帯端末、23…ドラム駆動部、24…フィーダー駆動部、25…清掃部駆動部、26…転写部駆動部、27…現像部駆動部、28…トナー駆動部、30…マイク、41…テストパターン記憶部、43…音データ記憶部、45…基準値記憶部、47…駆動部記憶部、53…グラフ、I,N…ネットワーク、S…基準値、T…所定の時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報機器とサーバとがネットワークを介して接続された異常音判定システムにおいて、
前記情報機器が、
前記情報機器の稼働音の取得を指示する稼働音取得命令を入力する入力手段と、
前記稼働音取得命令の入力があったとき、前記情報機器を駆動させる複数の駆動部をそれぞれ所定の時間毎に単独で駆動させるテスト動作手段と、
前記複数の駆動部の各稼動音を取得する稼働音取得手段と、
前記稼働音を前記サーバに送信する稼働音送信手段とを有するとともに、
前記サーバは、
前記駆動部と前記稼働音とを前記複数の駆動部についてそれぞれ対応付けて駆動部記憶部に登録する駆動部登録手段と、
前記稼働音を受信する稼働音受信手段と、
前記稼働音受信手段が受信した稼働音の音圧を所定の基準値と比較する比較手段と、
前記稼働音の音圧が前記所定の基準値を超えたとき、前記駆動部記憶部を検索し、前記所定の基準値を超えた音圧の稼働音に対応した駆動部を修理部として特定する修理部特定手段と、
前記修理部の情報を異常音判定結果として出力部に出力する出力手段とを有することを特徴とする異常音判定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の異常音判定システムにおいて、
前記出力手段は、前記修理部特定手段が特定した修理部の情報を異常音判定結果として前記情報機器に出力することを特徴とする異常音判定システム。
【請求項3】
情報機器とサーバとがネットワークを介して接続され、前記サーバは前記情報機器の保守担当者の端末と前記ネットワークを介して接続可能な異常音判定システムにおいて、
前記情報機器が、
前記情報機器の稼働音の取得を指示する稼働音取得命令の入力手段と、
前記稼働音取得命令の入力があったとき、前記情報機器を駆動させる複数の駆動部をそれぞれ所定の時間毎に単独で駆動させるテスト動作手段と、
前記複数の駆動部の各稼働音を取得する稼働音取得手段と、
前記稼働音を前記サーバに送信する稼働音送信手段とを有するとともに、
前記サーバは、
前記駆動部と前記稼働音とを前記複数の駆動部についてそれぞれ対応付けて駆動部記憶部に登録する駆動部登録手段と、
前記稼働音を受信する稼働音受信手段と、
前記稼働音受信手段が受信した稼働音の音圧を所定の基準値と比較する比較手段と、
前記稼働音の音圧が前記所定の基準値を超えたとき、前記駆動部記憶部を検索し、前記所定の基準値を超えた音圧の稼働音に対応した駆動部を修理部として特定する修理部特定手段と、
前記修理部の情報を異常音判定結果として前記端末に出力する出力手段とを有することを特徴とする異常音判定システム。
【請求項4】
情報機器とネットワークを介して接続可能なサーバであって、
前記情報機器を駆動させる複数の駆動部をそれぞれ所定の時間毎に単独で駆動させたときの駆動部の稼働音を前記複数の駆動部についてそれぞれ対応付けて駆動部記憶部に登録する駆動部登録手段と、
前記情報機器の稼働音を受信する稼働音受信手段と、
前記稼働音受信手段が受信した稼働音の音圧を所定の基準値と比較する比較手段と、
前記稼働音の音圧が前記所定の基準値を超えたとき、前記駆動部記憶部を検索し、前記
所定の基準値を超えた音圧の稼働音に対応した駆動部を修理部として特定する修理部特定手段と、
前記修理部の情報を異常音判定結果として出力部に出力する出力手段とを有することを特徴とするサーバ。
【請求項5】
請求項4に記載のサーバであって、
前記出力手段は、前記修理部特定手段が特定した修理部の情報を異常音判定結果として前記情報機器に出力することを特徴とするサーバ。
【請求項6】
情報機器及び前記情報機器の保守担当者の端末とネットワークを介してそれぞれ接続可能なサーバであって、
前記情報機器を駆動させる複数の駆動部をそれぞれ所定の時間毎に単独で駆動させたときの駆動部の稼働音を前記複数の駆動部についてそれぞれ対応付けて駆動部記憶部に登録する駆動部登録手段と、
前記情報機器の稼働音を受信する稼働音受信手段と、
前記稼働音受信手段が受信した稼働音の音圧を所定の基準値と比較する比較手段と、
前記稼働音の音圧が前記所定の基準値を超えたとき、前記駆動部記憶部を検索し、前記所定の基準値を超えた音圧の稼働音に対応した駆動部を修理部として特定する修理部特定手段と、
前記修理部の情報を異常音判定結果として前記端末に出力する出力手段とを有することを特徴とするサーバ。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のサーバにおいて、
前記駆動部登録手段は、前記所定の時間とその所定の時間に駆動される駆動部とを対応付けて前記駆動部記憶部に登録することを特徴とするサーバ。
【請求項8】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のサーバにおいて、
さらに、前記稼働音の所定の周波数毎に周波数解析する解析手段を備え、
前記駆動部登録手段は、前記所定の周波数とその所定の周波数の稼働音に対応する駆動部とを対応付けて前記駆動部記憶部に登録することを特徴とするサーバ。
【請求項9】
請求項4乃至8のいずれか1項に記載のサーバにおいて、
さらに、前記異常音判定結果のうち前記修理部が列挙された修理部リストを作成するリスト作成手段を備え、
前記異常音判定結果は前記修理部リストであることを特徴とするサーバ。
【請求項10】
請求項4乃至8のいずれか1項に記載のサーバにおいて、
前記異常音判定結果は前記稼働音の音圧を表現するグラフであることを特徴とするサーバ。
【請求項11】
請求項10に記載のサーバにおいて、
前記異常音判定結果は複数の解析結果データからなり、前記情報機器には前記解析結果データの一部のみを出力することを特徴とするサーバ。
【請求項12】
請求項10に記載のサーバにおいて、
前記異常音判定結果は複数の解析結果データからなり、前記端末には前記解析結果データの一部のみを出力することを特徴とするサーバ。
【請求項13】
情報機器の稼働音の取得を指示する稼働音取得命令を入力する入力手段と、
前記稼働音取得命令の入力があったとき、前記情報機器を駆動させる複数の駆動部の稼
働音をそれぞれ単独で駆動させるテスト動作手段と、
前記複数の駆動部の各稼働音を取得する稼働音取得手段とを有することを特徴とする情報機器。
【請求項14】
情報機器とネットワークを介して接続可能なサーバを、
前記情報機器を駆動させる複数の駆動部をそれぞれ所定の時間毎に単独で駆動させたときの駆動部の稼働音を前記複数の駆動部についてそれぞれ対応付けて駆動部記憶部に登録する駆動部登録手段と、
前記情報機器の稼働音を受信する稼働音受信手段と、
前記稼働音受信手段が受信した稼働音を所定の基準値と比較する比較手段と、
前記稼働音の音圧が前記所定の基準値を超えたとき、前記駆動部記憶部を検索し、前記所定の基準値を超えた音圧の稼働音に対応した駆動部を修理部として特定する修理部特定手段と、
前記修理部の情報を異常音判定結果として出力する出力手段として機能させることを特徴とする異常音判定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−208074(P2006−208074A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17926(P2005−17926)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】