説明

異形断面繊維及びメークアップ化粧料

【課題】化粧料に含有させて塗布すると、光の拡散、反射作用に優れ、つや感のある素肌感を得ることができ、かつ異物感のない滑らかな使用感を有し、さらにはマスカラ等に使用する際にはボリュームアップ効果も有することができる異形断面繊維を提供する。またこのような異形断面繊維を含有するメークアップ化粧料を提供する。
【解決手段】繊維軸方向に対して垂直に切断した単糸の断面形状が、開口部を有する2個の円形が少なくとも1点で連結した形状を呈する異形断面繊維であって、2個の円形の開口部が閉塞することなく連結されており、断面形状における任意の2点を結ぶ最大長が最大径を有する円形の直径の1.1倍以上であり、かつ最大長が5〜100μm、2個の円形ともに開口角度が30〜140°であり、単糸繊度が1.0〜7.0dtexである異形断面繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料に含有させることが好適な異形断面繊維に関するものであり、単糸の断面形状が開口部を有する2個の円形が連結した形状を呈することにより、光の拡散、反射作用に優れ、異物感のない滑らかな使用感を有する化粧料を得ることができる異形断面繊維に関するものである。
【0002】
また、本発明は、このような本発明の異形断面繊維を含有するメークアップ化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、ファンデーション等のメークアップ化粧料には、化粧効果を高めたり、滑らかな使用感を与えるために繊維が配合されている。特許文献1には、横断面に凹みのある異形断面繊維を分散されてなる化粧料が提案されている。
【0004】
特許文献1記載の異形断面繊維を使用することで、化粧料塗布時の繊維の不要な転がりを防止でき、繊維の凹みに化粧料が入り込むために繊維と塗布面との密着性を向上させることができ、塗布後の仕上がりの美しさを向上させることができるものである。
【0005】
また、ファンデーションにおいては、しみ等の皮膚の好ましくない部分を隠蔽し、見ために美しく見えるようにするために、隠蔽製の高い粉体の開発が望まれ、微粒子二酸化チタンなどの素材が開発されてきた。その一方で、このような高隠蔽性による素肌感の喪失が次の開発すべき課題として挙げられている。
【0006】
特許文献1記載の異形断面繊維においては、化粧料中に繊維を均一に分散させ、化粧料塗布時の繊維と化粧料、塗布面との密着性を向上させることはできたが、自然な素肌感を与えることは困難であった。
【0007】
特許文献2には、井型断面形状の異形断面繊維を含有させた化粧料が提案されている。特許文献2記載の化粧料によると、井型断面繊維と特定の化合物の粒子を含有させることによって、塗布部位に照射された光を拡散、反射させる効果に優れ、光照射部位の明るさを高めることができ、生き生きとした表情感、若々しさの印象を高めることができるものである。
【0008】
しかしながら、特許文献2記載の化粧料では、井型断面形状の異形断面繊維を使用しているため、繊維に直線部分が多く、肌に塗布した場合に異物感が生じ、滑らかな使用感が得られるものではなかった。
【0009】
また、マスカラ等の化粧料にもまつ毛を長く見せるロングラッシュ効果やまつ毛をボリュームアップさせる効果を得るために繊維が含有されている。このような化粧料においても滑らかな使用感、塗布後のつや感とボリューム感、仕上がりの美しさが求められているが、全ての要求を満たすものは得られていなかった。
【特許文献1】特開2004−107237号公報
【特許文献2】特開2006−52202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するものであって、化粧料に含有させて塗布すると、光の拡散、反射作用に優れ、つや感のある素肌感を得ることができ、かつ異物感のない滑らかな使用感を有し、さらにはマスカラ等に使用する際にはボリュームアップ効果も有することができる異形断面繊維を提供すること及びこのような異形断面繊維を含有するメークアップ化粧料を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の(1)、(2)を要旨とするものである。
(1)繊維軸方向に対して垂直に切断した単糸の断面形状が、開口部を有する2個の円形が少なくとも1点で連結した形状を呈する異形断面繊維であって、2個の円形の開口部が閉塞することなく連結されており、断面形状における任意の2点を結ぶ最大長が最大径を有する円形の直径の1.1倍以上であり、かつ最大長が5〜100μm、2個の円形ともに開口角度が30〜140°であり、単糸繊度が1.0〜7.0dtexであることを特徴とする異形断面繊維。
(2)(1)記載の異形断面繊維を含有するメークアップ化粧料。
【発明の効果】
【0012】
本発明の異形断面繊維は、単糸の断面形状が開口部を有する2個の円形が少なくとも1点で連結した形状を呈しており、曲線部分からなる形状であるため、光を照射すると、光の拡散、反射作用に優れるとともにぎらぎら感のないソフトな光沢感が得られる。このため、化粧料に含有させて塗布すると、つや感のある素肌感を得ることができる。そして、断面形状が直線部分を有していないため、素肌に塗布した際には異物感のない滑らかな使用感を有し、仕上がりの美しさも得られるものである。さらには断面形状が2個の円形が連結した形状であることから、嵩高性を有し、マスカラ等に使用する際にはボリュームアップ効果も奏することが可能となる。
【0013】
本発明のメークアップ化粧料は、本発明の異形断面繊維を含有するものであるため、つや感のある素肌感を得ることができ、素肌に塗布した際には異物感のない滑らかな使用感を有するファンデーションとなる。また、本発明の異形断面繊維は嵩高性も有するため、本発明のメークアップ化粧料は、優れたボリュームアップ効果を有するマスカラとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の異形断面繊維は、単糸の断面形状が以下に詳述する形状を呈するものであり、マルチフィラメント、モノフィラメントのいずれでもよい。
【0015】
そして、本発明の異形断面繊維は化粧料中に含有させて用いることが好適なものである。化粧料としては、メークアップ化粧料が好ましく、中でもファンデーション、マスカラ、アイブロウ等が好適である。
【0016】
本発明の異形断面繊維は、単糸を繊維軸方向に対して垂直に切断した断面形状が、開口部を有する2個の円形が少なくとも1点で連結しており、2個の円形の開口部が閉塞することなく連結されている。
【0017】
開口部を有する円形とはC型の形状のものであり、2個のC型のものが連結しており、連結部が1点以上のものである。中でも連結部が2点であるものが好ましい。
【0018】
本発明の異形断面繊維の単糸の断面形状の実施態様としては、図1の(A)〜(F)の形状のものが挙げられる。(A)、(B)、(D)、(F)は連結部が2点のものであり、(C)、(E)は連結部が1点のものである。
【0019】
そして、連結した形状において、2個の円形の開口部が閉塞することなく連結されている。つまり、図2に示すように開口部端部同士が連結した形状であると、開口部が閉塞されたものとなる。
【0020】
本発明の異形断面繊維は、図1に示すような形状であることにより、曲線部のみからなる複雑な形状となり、嵩高なものとなると同時に、形状の外周面のみならず、開口部端部、開口部内部でも照射された光が反射する部位が多くなり、光の拡散、反射作用に優れる。
【0021】
そして、本発明の異形断面繊維の断面形状においては、直線部分を有しておらず、曲線部のみからなり、曲線部分で光が反射、拡散されることにより、ぎらぎら感が生じず、ソフトな光の拡散、反射が得られ、ファンデーション等に含有させると、つや感とともにナチュラルな素肌感をも有するものとなる。
【0022】
図2に示すような形状であると、嵩高なものとはなるが、照射された光を反射する部位が外周面のみになり、光の拡散、反射作用に劣るものとなり、つや感やナチュラルな素肌感を得ることができない。
【0023】
さらに、本発明の異形断面繊維は、2個の円形が組み合わさった曲線部分からなる形状のもので、直線部分を有していないので、素肌に塗布した際には異物感がなく、滑らかな使用感のものとなり、仕上がりの美しさも得られるものである。
【0024】
また、円形が組み合わさった曲線部分のみからなる形状であるため、素肌に塗布した際にも素肌に接する繊維の面が多くないことから、密着感がなく、隠蔽感も生じないため、ナチュラルな素肌感を得ることができるものとなる。
【0025】
そして、2個の円形の開口角度は30〜140°であり、中でも50〜120°が好ましい。本発明でいう開口角度とは、図3に示すように、円形の中心点Oから2つの開口部端部M、Nに向かって引いた線がなす角度θをいうものである。
【0026】
開口角度が30°未満であると、上記したような光の反射、拡散作用を得ることができず、ファンデーションに含有させた際に、つや感やナチュラルな素肌感を得ることができない。一方、開口角度が140°を超えると、開口部が広くなりすぎることから、この繊維を含有させた化粧料を素肌に塗布すると異物感が生じるものとなる。
【0027】
また、本発明の異形断面繊維の断面形状においては、図1(A)〜(D)に示すように2個の円形の大きさが等しいものであっても、図1(E)〜(F)に示すように2個の円形の大きさが異なるものであってもよい。そして、2個の開口部が開口する向きも開口部を閉塞することがなければ特に限定するものではない。
【0028】
本発明の異形断面繊維の断面形状において、中でも2個の円形が連結した形状が線対称又は点対称であることが好ましい。線対称又は点対称であるとバランスの取れた断面形状なり、光の反射、拡散をよりバランスのよいソフトなものとすることが可能となり、また、化粧料中の分散もより均一なものとなり、異物感が少なくなり、使用感や仕上がりも良好となる。
【0029】
さらに、本発明の異形断面繊維は、2個の円形が連結した断面形状において、任意の2点を結ぶ最大長Lが最大径Rを有する円形の直径より大きく、かつ最大長Lが5〜100μmである。
【0030】
つまり、本発明においては、嵩高性を有するものとするために、任意の2点を結ぶ最大長Lが最大径Rを有する円形の直径の1.1倍以上(L≧1.1R)のものとする。図4に示すような断面形状のものでは、最大長Lが最大径Rを有する円形の直径と同じ(L=R)であり、嵩高性に乏しいものとなる。嵩高性と光の反射、拡散効果を考慮すると、中でも最大長Lが最大径Rを有する円形の直径の1.2倍以上、さらには1.3倍以上であることが好ましい。
【0031】
そして、最大長Lは5〜100μmであり、中でも20〜80μmであることが好ましい。さらに、単糸繊度は1.0〜7.0dtex、中でも2.0〜6.0dtexであることが好ましい。
【0032】
断面形状の大きさをこのような範囲のものとすることにより、上記したような嵩高性と光の反射、拡散効果を良好なものとすることができる。最大長が5μm未満であったり、単糸繊度が1.0dtex未満であると、これらの効果に乏しいものとなり、一方、最大長が100μmを超えたり、単糸繊度が7.0dtexを超えると、素肌に付与した際に異物感のあるものとなる。
【0033】
また、本発明の異形断面繊維は、上記したような形状による嵩高性を有するものとなることで、マスカラに含有させるとロングラッシュ効果やボリュームアップ効果が得られるものである。
【0034】
本発明の異形断面繊維は、単糸の断面形状の成形性の観点から、熱可塑性樹脂を用いて溶融紡糸して得られたものであることが好ましい。つまり、本発明の異形断面繊維は、所望の断面形状を得られるように穿孔した紡糸孔(スリット)を有する紡糸口金を用い、熱可塑性樹脂を溶融紡糸して得ることが好ましい。
【0035】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィンなどが挙げられる。中でも肌への刺激がソフトとなるため、ポリアミドを用いることが好ましい。
【0036】
また、これらの熱可塑性樹脂においては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて、熱安定剤、結晶核剤、艶消剤、顔料、耐候剤、耐光剤、滑剤、酸化防止剤、抗菌剤、香料、可塑剤、染料、界面活性剤、難燃剤、表面改質剤、各種無機及び有機電解質、その他類似の添加剤を添加することができる。
【0037】
本発明の異形断面繊維は、メークアップ化粧料に含有させる際の繊維の長さは、20〜1000μmが好ましく、中でも100〜500μmとすることが好ましい。
【0038】
繊維長が20μmより短い場合、光の拡散、反射効果やボリュームアップ効果が不十分となりやすい。一方、繊維長が1000μmより長い場合は、塗布時に異物感を感じるものとなり、仕上がりの美しさにも劣るものとなりやすい。
【0039】
そして、本発明のメークアップ化粧料は、本発明の異形断面繊維を含有するものである。メークアップ化粧料としては、中でもファンデーション、マスカラ、アイブロウ等が好ましい。
【0040】
これらのメークアップ化粧料には、本発明の異形断面繊維が0.1〜15質量%含有されていることが好ましく、中でも1〜10質量%含有されていることが好ましい。
【0041】
本発明のメークアップ化粧料中の本発明の異形断面繊維の含有量が0.1質量%より少ない場合は、光の拡散、反射効果やボリュームアップ効果が不十分となりやすい。一方、本発明の異形断面繊維の含有量が15質量%より多い場合は、塗布時に異物感を感じるものとなり、仕上がりの美しさにも劣るものとなりやすい。
【0042】
次に、本発明の異形断面繊維の製造方法について一例を用いて説明する。
熱可塑性樹脂としてナイロン6を用い、通常のエクストルーダー型溶融紡糸装置を用い、所望の断面形状のものが得られるように紡糸孔を穿孔した紡糸口金を用いて、256℃で溶融紡糸する。紡糸された糸条を冷却、固化した後、一旦巻取り、又は巻き取ることなく、延伸を行い、必要に応じて延伸時に熱処理を行いながら、巻き取ることにより異形断面繊維を得る。そして、得られた異形断面繊維は、化粧料中に含有させる際には、ギロチンカッター等を用いて所望の繊維長にカットして用いる。
【0043】
なお、本発明のメークアップ化粧料は、本発明の異形断面繊維を含有するものであるが、ファンデーション、マスカラ、アイブロウ等においては、ミキサーで混合しながら含有させることが好ましい。
【実施例】
【0044】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例中の各種の値の測定、評価は次のようにして行った。
〔開口角度、最大長、円形の直径〕
ニコン社製マイクロフォトS光学顕微鏡に顕微鏡写真撮影装置を取り付け、24本の単糸について、単糸の横断面形状を撮影し、それぞれの長さや角度を測定し、24本の平均値とした。
〔光の反射、拡散効果〕
得られたファンデーションを用い、同一モデルにメークアップを行い、写真に撮影し、専門パネラー5名が以下の4段階で評価した。
◎・・・つや感、素肌感が非常に優れている。
○・・・つや感、素肌感に優れている。
△・・・つや感、素肌感にやや優れている。
×・・・つや感、素肌感に劣る。
〔使用感〕
得られたファンデーション又はマスカラを用い、10名のモデルにメークアップを行い、塗布時の異物感の有無について以下の3段階で評価した。
◎・・・異物感を感じないが9名以上。
○・・・異物感を感じないが7〜8名。
△・・・異物感を感じないが4〜6名。
×・・・異物感を感じないが3名以下。
〔ボリュームアップ感〕
得られたマスカラを用い、10名のモデルにメークアップを行い、化粧後のボリュームアップ感の有無について以下の3段階で評価した。
◎・・・ボリュームアップ感を感じるが9名以上。
○・・・ボリュームアップ感を感じるが7〜8名。
△・・・ボリュームアップ感を感じるが4〜6名。
×・・・ボリュームアップ感を感じるが3名以下。
【0045】
実施例1
相対粘度(96%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dl、温度25℃で測定した)3.50のポリアミド6に、顔料として赤色205号を20質量%添加し、ブレンドしてマスターチップを作製した。
このマスターチップと相対粘度3.50のナイロン6を質量比1:39で混合(繊維中の赤色203号の含有量が0.5質量%となるように)し、通常のエクストルーダー型溶融紡糸装置を使用して溶融紡糸を行った。このとき、単糸の断面形状が図1(C)の形状となるようにスリットを穿孔した紡糸口金を用いて、256℃で溶融紡糸した。そして、紡糸された糸条を冷却固化した後、第1ローラ(温度25℃)の表面速度を3111m/分、第2ローラ(温度110 ℃)の表面速度を4200m/分とし、延伸倍率1.35倍で延伸し、速度4000m/分で巻き取り、60dtex/24fのマルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントの単糸の断面形状は図1(C)に示すもの(2個の円形は大きさ、開口角度が同じ)であり、連結部が1点、2個の円形の開口角度が50°、最大長が25μm、最大径を有する円形の直径20μm、単糸繊度2.5dtexであった。
そして、ギロチンカッターを用いてカットし、繊維長400μmの短繊維(成分A)とし、以下の処方1に示す成分と含有量からなるファンデーションを作製した。このとき、成分Bをヘンシェルミキサーで混合した後、0.9mm丸穴スクリーンを装着したパルベライザーで粉砕し、その後に成分Aを加えてヘンシェルミキサーで混合し、さらにヘンシェルミキサーで混合しながら成分Cを噴霧してコーティングを行い、ファンデーションを得た。
【0046】
〔処方1〕
成分A:ナイロン6短繊維 5質量%
成分B:シリコーン焼付け処理二酸化チタン 20質量%
シリコーン焼付け黄酸化鉄 5質量%
シリコーン焼付けベンガラ 0.5質量%
シリコーン焼付け群青 0.1質量%
セリサイト 30質量%
マイカ 19.4質量%
シリカ 10質量%
成分C:ジメチコン 5質量%
オレイン酸オクチルドデシル 5質量%
【0047】
実施例2〜6、比較例1〜4
紡糸口金のスリット形状を変更することにより、単糸の断面形状における開口角度、最大長、最大径を有する円形の直径、単糸繊度が表1に示すものとなるようにした以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得、短繊維にした後、処方1によりファンデーションを得た。
【0048】
実施例7
単糸の断面形状が図1(A)の形状となるようにスリットを穿孔した紡糸口金を用いた以外は実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。このとき、得られたマルチフィラメントの単糸の断面形状は図1(A)に示すもの(2個の円形は大きさ、開口角度が同じ)であり、連結部が2点、2個の円形の開口角度が50°、最大長が30μm、最大径を有する円形の直径20μm、単糸繊度2.5dtexであった。そして、実施例1と同様にして短繊維にした後、処方1によりファンデーションを得た。
【0049】
実施例8〜12、比較例5〜8
紡糸口金のスリット形状を変更することにより、単糸の断面形状における開口角度、最大長、最大径を有する円形の直径、単糸繊度が表1に示すものとなるようにした以外は、実施例7と同様にしてマルチフィラメントを得、短繊維にした後、処方1によりファンデーションを得た。
【0050】
比較例9
単糸の断面形状が開口部を有する1個の円形からなるC型断面形状となるようにスリットを穿孔した紡糸口金を用いた以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。このとき、得られたマルチフィラメントの単糸の断面形状はC型のものであり、開口角度が90°、最大長(直径)が25μm、単糸繊度2.5dtexであった。そして、実施例1と同様にして短繊維にした後、処方1によりファンデーションを得た。
【0051】
比較例10
単糸の断面形状が井型断面形状となるようにスリットを穿孔した紡糸口金を用いた以外は実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。このとき、得られたマルチフィラメントの単糸の断面形状は井型のものであり、最大長が40μm、単糸繊度2.5dtexであった。そして、実施例1と同様にして短繊維にした後、処方1によりファンデーションを得た。
【0052】
参考例1
繊維を含有せず、以下の処方2に示す成分と含有量からなるファンデーションを作製した。
〔処方2〕
成分A:ナイロン6短繊維 0質量%
成分B:シリコーン焼付け処理二酸化チタン 20質量%
シリコーン焼付け黄酸化鉄 5質量%
シリコーン焼付けベンガラ 0.5質量%
シリコーン焼付け群青 0.1質量%
セリサイト 30質量%
マイカ 24.4質量%
シリカ 10質量%
成分C:ジメチコン 5質量%
オレイン酸オクチルドデシル 5質量%
【0053】
実施例1〜12、比較例1〜10、参考例1で得られた異形断面繊維、ファンデーションの評価結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1から明らかなように、実施例1〜12の異形断面繊維は、単糸の断面形状が本発明の形状を満足するものであったため、これらの異形断面繊維を含有させたファンデーションは、光の反射、拡散効果に優れ、良好なつや感と自然な素肌感を得ることができ、塗布時には異物感がなく、滑らかな使用感を有するものであった。
一方、比較例1、5の異形断面繊維は、開口角度が150°であったため、これらの異形断面繊維を含有させたファンデーションは、光の反射、拡散効果を有するものの、塗布時に異物感が感じられた。比較例2、6の異形断面繊維は、開口角度が20°であったため、これらの異形断面繊維を含有させたファンデーションは、塗布時の異物感は感じられないが、光の反射、拡散効果が不十分であり、良好なつや感と自然な素肌感を得ることができなかった。比較例3、7の異形断面繊維は、最大長が大きすぎたため、比較例4、8の異形断面繊維は単糸繊度が大きすぎたため、これらの異形断面繊維を含有させたファンデーションはいずれも塗布時に異物感が感じられるものであった。また、比較例9の異形断面繊維はC型のものであったため、光の反射、拡散効果が不十分であり、この異形断面繊維を含有させたファンデーションは良好なつや感と自然な素肌感を得ることができなかった。比較例10の異形断面繊維は井型のものであったため、ソフトな光の反射、拡散効果が得られず、この異形断面繊維を含有させたファンデーションはぎらぎら感のあるものとなり、良好なつや感と自然な素肌感を得ることができなかった。さらには塗布時に異物感が感じられるものであった。
【0056】
実施例13
相対粘度3.50のポリアミド6を通常のエクストルーダー型溶融紡糸装置を使用して溶融紡糸を行った。このとき、単糸の断面形状が図1(C)の形状となるようにスリットを穿孔した紡糸口金を用いて、256℃で溶融紡糸した。そして、紡糸された糸条を冷却固化した後、第1ローラ(温度25℃)の表面速度を3111m/分、第2ローラ(温度110℃)の表面速度を4200m/分とし、延伸倍率1.35倍で延伸し、速度4000m/分で巻き取り、60dtex/24fのマルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントの単糸の断面形状は図1(C)に示すもの(2個の円形は大きさ、開口角度が同じ)であり、連結部が1点、2個の円形の開口角度が50°、最大長が25μm、最大径を有する円形の直径20μm、単糸繊度2.5dtexであった。
そして、ギロチンカッターを用いてカットし、繊維長1000μmの短繊維(成分D)とし、以下の処方3に示す成分Eと含有量からなるマスカラを得た。
【0057】
〔処方3〕
成分D:ナイロン6短繊維 5.0質量%
成分E:ポリアクリル酸エステルエマルジョン 50.0質量%
ポリメタクリル酸 2.0質量%
トリエタノールアミン 2.5質量%
ブチレングリコール 3.0質量%
塩化ナトリウム 0.5質量%
防腐剤 0.2質量%
シリカ 2.0質量%
顔料 1.0質量%
香料 0.1質量%
精製水 33.7質量%
【0058】
実施例14〜18、比較例11〜13
紡糸口金のスリット形状を変更することにより、単糸の断面形状における開口角度、最大長、最大径を有する円形の直径、単糸繊度が表2に示すものとなるようにした以外は、実施例13と同様にしてマルチフィラメントを得、短繊維にした後、処方3によりマスカラを得た。
【0059】
比較例14
単糸の断面形状が開口部を有する1個の円形からなるC型断面形状となるようにスリットを穿孔した紡糸口金を用いた以外は、実施例13と同様にしてマルチフィラメントを得た。このとき、得られたマルチフィラメントの単糸の断面形状はC型のものであり、開口角度が90°、最大長(直径)が25μm、単糸繊度2.5dtexであった。そして、実施例13と同様にして短繊維にした後、処方3によりマスカラを得た。
【0060】
比較例15
単糸の断面形状が井型断面形状となるようにスリットを穿孔した紡糸口金を用いた以外は実施例13と同様にしてマルチフィラメントを得た。このとき、得られたマルチフィラメントの単糸の断面形状は井型のものであり、最大長が40μm、単糸繊度2.5dtexであった。そして、実施例13と同様にして短繊維にした後、処方3によりマスカラを得た。
【0061】
【表2】

【0062】
表2から明らかなように、実施例13〜18の異形断面繊維は、単糸の断面形状が本発明の形状を満足するものであったため、これらの異形断面繊維を含有させたマスカラは、ボリュームアップ効果に優れ、塗布時には異物感がなく、滑らかな使用感を有するものであった。
一方、比較例11の異形断面繊維は、開口角度が150°であったため、この異形断面繊維を含有させたマスカラは、塗布時に異物感が感じられるものであった。比較例12の異形断面繊維は、最大長が大きすぎたため、比較例13の異形断面繊維は単糸繊度が大きすぎたため、これらの異形断面繊維を含有させたマスカラは、塗布時に異物感が感じられるものであった。また、比較例14の異形断面繊維はC型のものであったため、この異形断面繊維を含有させたマスカラは、ボリュームアップ効果が不十分なものであった。比較例15の異形断面繊維は井型のものであったため、この異形断面繊維を含有させたマスカラはボリュームアップ効果が不十分で、異物感も感じるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の異形断面繊維の単糸の断面形状の実施態様を示す模式図である。
【図2】本発明以外の異形断面繊維の単糸の断面形状の実施態様を示す模式図である。
【図3】本発明の異形断面繊維の開口角度を示す説明図である。
【図4】本発明以外の異形断面繊維の単糸の断面形状の実施態様を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維軸方向に対して垂直に切断した単糸の断面形状が、開口部を有する2個の円形が少なくとも1点で連結した形状を呈する異形断面繊維であって、2個の円形の開口部が閉塞することなく連結されており、断面形状における任意の2点を結ぶ最大長が最大径を有する円形の直径の1.1倍以上であり、かつ最大長が5〜100μm、2個の円形ともに開口角度が30〜140°であり、単糸繊度が1.0〜7.0dtexであることを特徴とする異形断面繊維。
【請求項2】
請求項1記載の異形断面繊維を含有するメークアップ化粧料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−221645(P2009−221645A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314458(P2008−314458)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(399065497)ユニチカファイバー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】