説明

異物検出装置

【課題】 衣類等の検査対象物に混入した針等の異物を検出するにあたって、検査官の見落としによる異物の不検出を防止し、小さな異物をも検出することが可能な異物検出装置を提供する。
【解決手段】 検査対象物を輸送する輸送手段3と、輸送手段3上の検査対象物にX線を照射するX線照射手段4、5と、X線照射手段4、5から輸送手段3上の検査対象物にX線が照射された際のX線透過率を測定する複数の電離箱検出器6と、複数の電離箱検出器6の各々の測定値と、予め記録した基準値から検査対象物中に異物が混入しているか否かを判定する判定手段とを備えた異物検出装置1において、複数の電離箱検出器6を、検査対象物を挟んでX線照射手段4、5の反対側に、2段にわたって配置した。判定手段によって検査対象物に異物が混入していると判定された場合には、検査対象物は、輸送手段3の入口側に戻すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物検出装置に関し、特に、衣類、バッグ、靴等に混入した針、金属片、鉄粉等を検出するための異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述のような装置として、衣類等の検査対象物にX線を照射して透視画像をディスプレイに表示し、目視で異物を検出する装置が用いられている。この装置は、例えば、ベルトコンベア上に載置された検査対象物を停止させ、X線を照射して透視画像をディスプレイに表示し、検査官が目視で異常な形状となっている部分を感知することによって異物を検出する。
【0003】
このような装置として、例えば、特許文献1には、食品中の小石、貝殻、金属片等を高い感度で効率よく検出するため、食品を収納した包装体内の空隙を充填剤で埋めて包装体を封入することにより、搬送される食品入りの包装体にX線を投射し、食品中に混入する異物を検出する技術が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ハムの中に混入した異物等を確実に検出するため、ハムを収容部材の貫通孔に挿入し、一対の押圧部材でハムを両側から押圧し、圧迫して貫通孔に密着させ、X線照射部から収容部材に向けてX線を照射し、この収容部材、ハム及び押圧部材を透過したX線透過画像をカメラで撮像する技術が開示されている。
【0005】
上記異物検出装置は、いずれも撮像手段によって撮影された画像を、検査官が目視で異常な形状となっている部分を感知することにより異物を検出するものであるが、このような画像を利用するのではなく、図3に示すように、複数の電離箱検出器16を、検査対象物を輸送するベルト13の下方の鉛板17上に一列に整列させ、検査対象物の上方からX線を照射し、検査対象物のX線透過率を測定することによって異物の有無を検出する装置が知られている。
【特許文献1】特開2004−101368号公報
【特許文献2】特開平5−18911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1及び2に記載のような、X線透過画像をカメラで撮像することによって異物を検出する装置においては、検査官が常に画像を監視し、検査対象物を隅々まで目視でチェックする必要があるため、検査官の見落としがあると異物を検出することができないという問題があった。
【0007】
一方、図3の電離箱検出器16を用いてX線透過率を測定することによって異物を検出する装置については、検査官が常に画像を監視する必要がないため、見落としによる異物の不検出を回避することができるものの、隣接する電離箱検出器16間に測定精度の低下する領域が存在するため、小さな異物を検出することが困難であるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の異物検出装置における問題点に鑑みてなされたものであって、検査官の見落としによる異物の不検出を防止するとともに、小さな異物であっても検出することが可能な異物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、検査対象物を輸送する輸送手段と、該輸送手段上の前記検査対象物にX線を照射するX線照射手段と、該X線照射手段から前記輸送手段上の前記検査対象物にX線が照射された際のX線透過率を測定する複数の電離箱検出器と、該複数の電離箱検出器の各々の測定値と、予め記録した基準値から前記検査対象物中に異物が混入しているか否かを判定する判定手段とを備えた異物検出装置において、前記複数の電離箱検出器を、前記検査対象物を挟んで前記X線照射手段の反対側に、2段にわたって配置したことを特徴とする。ここで、電離箱検出器とは、直径が数cmのアルミニウム製等の円筒容器の中心に電極を備えたものであって、容器の内部に電離気体としての不活性ガス等が封入され、放射線により空気が電離して生じた電子及び陽イオンにより、微小な電離電流が流れ、電流を増幅して線量当量率単位で表示するもの、及びこれに類似する検出器をいう。
【0010】
そして、本発明によれば、前記複数の電離箱検出器を、前記検査対象物を挟んで前記X線照射手段の反対側に、2段にわたって配置したため、測定精度の低下する領域がなくなり、小さな異物であっても確実に検出することができる。
【0011】
前記異物検出装置において、前記判定手段によって前記検査対象物に異物が混入していると判定した場合には、該検査対象物を、前記輸送手段の入口側に戻すことができる。これによって、異物の混入した検査対象物を次工程に移行させることなく、確実に回収することができる。
【0012】
前記判定手段によって前記検査対象物に異物が混入していると判定された場合には、該検査対象物の異物混入部分を指し示す異物混入位置表示手段を備えることを特徴とする。異物混入位置表示手段によって異物混入部分を指し示すことにより、容易に異物を発見し、取り出すことができる。
【0013】
前記異物混入位置表示手段は、揺動可能なスポットライト光源を備え、該スポットライト光源から前記検査対象物の異物混入部分にスポットライトを照射することができる。また、前記輸送手段をベルトコンベアとし、該ベルトコンベアのベルトの上方に前記X線照射手段を配置し、該ベルトの下方に前記電離箱検出器を2段にわたって複数配置することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、検査官の見落としによる異物の不検出を防止するとともに、小さな異物であっても検出することが可能な異物検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明にかかる異物検出装置の一実施の形態を示し、この異物検出装置1は、検査対象物が通過可能な開口部を両側に備えた本体2と、検査対象物を輸送する輸送手段としてのベルトコンベア3と、検査対象物にX線を照射するX線源4と、X線を検査対象物に照射又は遮断するためのシャッター及び絞り5と、検査対象物にX線が照射された際のX線透過率を測定するための電離箱検出器6と、電離箱検出器6の測定値と予め記録した基準値とを比較し、検査対象物中に異物が混入しているか否かを判定する図示しない判定手段としてのパーソナルコンピュータ(PC)と、異物混入位置表示手段としてスポットライト7等で構成される。
【0016】
本体2は、ベルトコンベア3の中央部を覆うようにして床面上に据え付けられ、この本体2には、ベルトコンベア3、X線源4、電離箱検出器6等が固定されている。
【0017】
ベルトコンベア3は、無端状に構成され、ベルト3a上に検査対象物が載置されて図1(a)の矢印A方向に移動する。このベルトコンベア3は、検査対象物中に異物が検出された際には、検査対象物を本体2の入口側(図1(a)の左側に戻すことができるように、ベルトコンベア3の駆動用のモータ8を正逆方向に運転可能に構成される。
【0018】
X線源4は、ベルトコンベア3の上方に取り付けられ、シャッター及び絞り5を介して検査対象物に蛍光X線を照射する。絞り5によって蛍光X線の照射範囲を調節することができ、これによって、検出可能な異物の寸法を調節することができる。
【0019】
電離箱検出器6は、ベルトコンベア3のベルト3aの下方に設けられ、図2に示すように、上下方向に2段にわたって複数配置される。この電離箱検出器6を2段にわたって配置することにより、1段で配置した場合に隣接する電離箱検出器6間に発生する隙間をなくすことができる。これによって、測定精度の低下する領域がなくなり、小さな異物であっても確実に検出可能となる。
【0020】
PCには、想定される異物の材質毎に、予め基準値としてのX線透過率が記録され、電離箱検出器6で検出された電流値に基づいて算出された測定値との比較により、検査対象物に異物が混入しているか否かを判断する。また、異物が混入していると判定した場合には、検査対象物を本体2の入口側に戻すように指令を出す。
【0021】
スポットライト7は、図1(c)に示すように、ベルトコンベア3のベルトの進行方向に対して垂直な面内で旋回可能に構成され、PCによって検査対象物に異物が混入していると判定された場合に、検査対象物の異物混入部分を指示する。
【0022】
次に、上記構成を有する異物検出装置1の動作について、検査対象物が洋服であって、異物としてのステンレス製針を検出する場合を例にとって説明する。
【0023】
ベルトコンベア3を運転し、ベルトコンベア3のベルト3a上に洋服を載置すると、洋服は、本体2の中を移動する。洋服は、移動しながらX線源4からのX線を受け、電離箱検出器6の各々は、X線透過率を測定する。より具体的には、洋服が電離箱検出器6の上を通過している時に、連続放射されるX線を遮るので、洋服のX線透過率の違いを電離箱検出器6が電流値で感知し、この電流値を電圧に変換した後、さらにAD変換器によってデジタルデータに変換し、PCに送信する。
【0024】
PCに送信されたX線透過率に関するデータは、PC内に予め記録されているステンレスに関するX線透過率の基準値と比較され、ステンレス製の異物(針等)の有無を判断する。そして、ステンレス製の異物が混入していると判断した場合には、洋服を後退させ、本体2の入口付近の所定の位置に異物の混入している部分が停止する。また、PCからの指示により、スポットライト7が旋回して洋服の異物混入部分を指示する。
【0025】
尚、上記実施の形態においては、検査対象物を洋服とし、異物の材質がステンレスの場合を例にとって説明したが、洋服以外の衣類、バッグ、靴等を検査対象物とすることができるとともに、PCに記録したX線透過率を変更することにより、これらに混入した鉄製の針、鉄粉、その他の金属片をも検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかる異物検出装置の一実施の形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は上面、(c)は側面図である。
【図2】図1の異物検出装置の電離箱検出器の配置図であって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図3】従来の異物検出装置の電離箱検出器の一例を示す配置図であって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 異物検出装置
2 本体
3 ベルトコンベア
3a ベルト
4 X線源
5 シャッター(及び絞り)
6 電離箱検出器
7 スポットライト
8 モータ
9 鉛板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を輸送する輸送手段と、該輸送手段上の前記検査対象物にX線を照射するX線照射手段と、該X線照射手段から前記輸送手段上の前記検査対象物にX線が照射された際のX線透過率を測定する複数の電離箱検出器と、該複数の電離箱検出器の各々の測定値と、予め記録した基準値から前記検査対象物中に異物が混入しているか否かを判定する判定手段とを備えた異物検出装置において、
前記複数の電離箱検出器を、前記検査対象物を挟んで前記X線照射手段の反対側に、2段にわたって配置したことを特徴とする異物検出装置。
【請求項2】
前記判定手段によって前記検査対象物に異物が混入していると判定された場合には、該検査対象物は、前記輸送手段の入口側に戻されることを特徴とする請求項1に記載の異物検出装置。
【請求項3】
前記判定手段によって前記検査対象物に異物が混入していると判定された場合には、該検査対象物の異物混入部分を指し示す異物混入位置表示手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の異物検出装置。
【請求項4】
前記異物混入位置表示手段は、揺動可能なスポットライト光源を備え、該スポットライト光源から前記検査対象物の異物混入部分にスポットライトを照射することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の異物検出装置。
【請求項5】
前記輸送手段はベルトコンベアであって、該ベルトコンベアのベルトの上方に前記X線照射手段が配置され、該ベルトの下方に前記電離箱検出器が2段にわたって複数配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の異物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−3247(P2007−3247A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181369(P2005−181369)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(592244723)アサヒ繊維機械株式会社 (5)
【Fターム(参考)】