説明

異種有核細胞を含む非ヒト哺乳動物モデル、化合物をスクリーニングするための使用

a.生物適合性支持体に前もって結合させた異種有核細胞を、免疫低下した非ヒト哺乳動物宿主に移植し、b.非ヒト哺乳動物宿主の非適応防御を制御し、c.維持、分化及び成長することができる定着した異種有核細胞を有する非ヒト哺乳動物モデルを回収することを含む非ヒト哺乳動物モデルを作製する方法に関する。本発明は、支持体に定着した異種有核細胞を含む支持体を移植された免疫低下した非ヒト哺乳動物宿主でありそして非適応防御が該移植された支持体の異種有核細胞を維持、分化及び成長させることを可能とするように制御されている非ヒト哺乳動物モデルにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、異種有核細胞(heterologous nucleated cells)を含む非ヒト哺乳動物モデルを作製する方法を提供する。本発明は、非ヒト哺乳動物モデル及びこのようなモデルに由来する組織マトリックスも開示する。本発明は、病原体感染又は該感染から生じる有害な作用の処置において化合物をスクリーニングするため又は化合物の有効性を評価するための、該モデルに頼る病原体研究における適用にも関する。本発明は、患者の処置における化合物の影響力(interest)を評価するための該モデルの使用にも関する。
【0002】
異種有核細胞を含む非ヒト哺乳動物モデルは、該細胞を薬物化合物又は薬物候補を含む種々の作用物質と接触させるとき、該細胞の代謝の研究に更に有用でありうる。
【0003】
発明の背景
疾患を引起す病原体は、ウイルス、バクテリア、真菌(fungi)又は寄生虫を包含する微生物を含む。他の病原体は、毒性反応又は有害な反応を誘発又は促進して宿主中に現れ又は広がる物質であって、微生物に由来する成分もしくは微生物により産生された成分を含む物質であることができ、又は異なる起源を有する分子であることができる。時には早過ぎる死をもたらすヒトにおける病原体感染は、病原体のライフサイクルのよりよい理解及びワクチンを含む新規薬物のデザイン及び入手可能性により、この10年間は工業化された国においてある程度抑制されてきた。しかしながら、既知の病原体は、種々の領域において人に感染し続け、これに対して、他の状況では、現存の薬物に対する耐性株が発生するか又は新規な病原体が出現する。ゆえに、病原体に対して又は宿主におけるその有害な結果に対して有効な薬物のデザイン又は同定及びこのような病原体の感染の機構の研究の必要が依然としてある。
【0004】
病原体の研究は、in vitro又はin vivoモデルの両方で行うことができる。in vitroモデル、例えば細胞培養物は、合理的な価格に維持するのが容易である。しかしながら、培養細胞は、必ずしも病原体に対して受容性ではなく、そして、例えそれらが受容性であるとしても、それらは、病原体ライフサイクルの研究を可能とするのに十分な時間の期間感染を持続しない。更に、初代培養物は、マーカーを発現するのに及び分子を分泌するのに十分に分化されない。最後に、それらは、生きている生物により提供される環境に匹敵する環境に統合されず、その結果として、in vivoで働く他の生物学的系、特に免疫系との相互作用に欠けている。細胞培養物は、それ自体、in vivo相互作用を模倣する方式で、病原体と細胞との間の種々の相互作用を研究するのに十分なモデルを表さない。
【0005】
in vivoモデルは、しばしば、培養された細胞よりも適切なモデルを表し;実験は一般に哺乳動物で、特にマウスで行われるが、霊長類でも行われる。マウスモデルは、例えば費用効果的であり、再現及び操作するのが容易であるなどの多数の利点を有する。しかしながら、多くの病原体は、その制限された向性(tropism)の故に、このような宿主において成長する(develop)ことができない。加えて、マウスにおける生物学的機構は、ヒトで観察された機構とは多くの点で異なり、そしてマウスで得られた結果は、時にはヒトに殆ど当てはめることができない。このような問題を克服するために、感染の機構が多少ヒトにおけると同じである霊長類、チンパンジーの如き少なくともより高級な霊長類で実験を行う。しかし、これらの霊長類の限定された入手可能性、その使用の基礎をなす経済的及び倫理的考慮及び大抵の実験室でそれらを取り扱うことの困難は、このような目的でのその使用を厳しく制限する。
【0006】
これらの制限により心配される疾患の特定のグループは、例えば、一年の累積死亡数が1千万人に近い、ヒト肝臓疾患、例えば肝炎及びマラリアである。3種の主要な病原体、HBV(肝炎Bウイルス)、HCV(肝炎Cウイルス)及びマラリアのPlasmodium falciparum、により引起される感染に対して、異なる処置:HBVには予防ワクチン又は抗ウイルス治療、HCV及びマラリアには抗ウイルス治療、により戦うことができる。しかしながら、ある患者は、処置に応答せず、そして該病原体の耐性株は、有病率及び耐性の程度の両方で増加している。病原体の研究及び新規薬物の開発は、in vitro及びin vivoで適切なモデルを樹立することの困難により妨害される。
【0007】
これらの病原体の狭い宿主範囲は、大抵のin vitroモデルにおいてその有効な研究を妨害する。例えば、初代培養物の完全に機能的な肝細胞のみがPlasmodium falciparumに感受性である(susceptible)が、1〜3週間の培養の後に、これらの培養物は、発現型の変化、即ち、脱分化(de-differentiation)が起こったとき抵抗性(refractoty)となる(Fraslin, EMBO J,1985 and Guguen-guillouzou, cytotechnology,1993)。大抵の分化した肝細胞、例えば、分泌されたタンパク質に関して初代肝細胞と99%の相同性を有するHepG2−A16又はBC2でさえ、Plasmodium falciparum成熟を持続させない(Hollingdale Am J Trop Med Hyg, 1985 and Druilhe, in malaria 1998)。
【0008】
腫瘍細胞を含む哺乳動物モデルは記載されているが、非感染、非腫瘍のヒト細胞を含む少数の哺乳動物モデルが入手可能である。ヒト細胞状態を或る程度再現するこのようなモデル又は改良されたin vivoモデルの必要性は、上記した感染疾患の研究のためのみならず、非感染疾患、例えば、遺伝子疾患又は環境的疾患の研究のため、又は更に一般的には動物モデルに埋め込まれたヒト細胞の化合物の代謝の研究のためにも重要である。
【0009】
更に、in vivo動物モデルは、生物に対する化合物のスクリーニング活動を行うのに有用であり、特に、生きている生物に対する新規な薬物の効果を試験するのに有用であろう。この点で、機能的ヒト細胞を含む本発明に従う非ヒト哺乳動物は、化合物の投与の後の代謝経路の研究を可能とする。ヒト患者とスクリーニングのために通常使用される動物モデル間の代謝経路に存在する差により、ヒト生物学的システムに対する化合物の効果はときには臨床試験だけで確かめることができると思われる。かくして、このようなモデルの入手可能性は、スクリーニング効率を増加させることを可能とし、従って、より適当な方式で、臨床試験のために興味ある化合物を選ぶことを可能とするであろう。
【0010】
10年間にわたって作成されたin vivoモデルは、in vivoでヒトの健康な細胞及び感染した細胞を保存するための可能性を与えるが、それらの有効な使用を妨げる欠点を依然として有する。
例えば、Plasmodium falciparumサイクルの後期段階として知られた段階、即ち、肝臓又は外赤血球(EE)期を研究するために、ヒト肝細胞を、機能的T及びB細胞の両方を欠いている重い合併型免疫不全(SCID)マウス中に移植した(Sacci J. B. et al., 1992. Natl. Acad Sci. 89, 3701-3705)。このSCIDモデルは、ヒト組織の異種移植片(xenograft)を拒絶せず、移植された細胞がそれらの宿主中に維持されることを可能とした。P.falciparumスポロゾイト(sporozoites)のその後の静脈内注射は、注射の1〜7日後に免疫組織化学的染色により確かめられたとおり移植された肝細胞の感染をもたらした。ヒト肝細胞を移植されたマウスにおけるP.falciparumの肝臓期の最初の発生が得られた。しかしながら、急速に、これらの結果は、失望させるものでありそして疑問の余地があることが見出された。何故ならば、2つの独立した研究チームが、文献で報告された実験では、感染を再現できず、それゆえ、移植された肝細胞の成熟及び機能性について論争することができなかったからである(Butcher GA. Et al. 1993. Exp. Parasitol 77, 257-260 and Badell E. et al. 1995. Paresitology Today 11(5),169-171)。
【0011】
他の例に従えば、抗HBV治療剤を評価するために、「トリメラ(trimera)」と呼ばれるマウスモデルを開発した(Ilan E. et al. 1999. Hepatology 29(2), 553-562)。致死的全身照射により予備状態調節されそしてSCIDマウス骨髄で放射線防御された正常なマウスは、ヒト組織の生着(engraftment)を可能にすると思われた。得られるモデルは、3つの遺伝子的に異種のソースの組織(genetically disparate sources of tissues)を含んでいた。このようなマウスにおけるex vivoHBV感染ヒト肝臓断片の移植は、HBVが1ヶ月間複製しそしてレシピエントマウスにおいてウイルス血症を発生することを可能とした。このモデルは、感染されトランスフェクションされた細胞をレシピエントにおいて維持することを可能としそして病原体の複製を持続させた(sustained)。このようなモデルは、移植後1ヶ月まで非感染肝細胞の生存も示したが、これらの非感染肝細胞の成長を示さなかった。
【0012】
他のストラテジーは、Ohashi et al(Ohashi K. et al.2000. Nat. Med.6(3), 327-331)のチームにより採用されて、ヒト肝炎ウイルス感染の研究のための異種移植片モデル(xenotransplant model)を創生した。NOD/SCID(非肥満糖尿病/重い合併型免疫不全)マウスに、腎臓カプセルにおいて、Matrigelと混合された肝細胞を移植した。しかしながら、ヒト移植された肝細胞の損失が観察されそして必須の成長因子、即ち、肝細胞成長因子(HGF)の不存在の推定がなされた。しかしながら、c−metに対する特異的抗体の添加によるこの成長因子のリン酸化は、肝細胞特異的マーカー濃度、ヒトα1抗トリプシン(hAAT)の測定により示されたとおり、肝細胞を安定化させた。著者は、これらの肝細胞がHBV及びHDV感染に感受性となったこと及びこれらのウイルスの複製を支持することができたことを示した。しかしながら、このモデルがウイルス感染を研究するのに適切であるように見えるけれども、移植された肝細胞の生存性及び維持のみは観察できたが、成長は観察できなかった。更に、移植の約5ヶ月の後に、hAATレベルの35〜40%減少が観察され、これは、多分より少ない機能的肝細胞の持続を示唆している。
【0013】
循環している赤血球(RBC)の移植及びP.falciparumによるそれらの感染を研究するためのマウスモデルが得られた(Badell E. et al ., 2000. J. Exp. Med. 192(11), 1653-1659 and Moreno A. et al. 2001. Antimicrob Agents Chemother. 45(6), 1847-1853)。T及びB細胞機能に影響を与える突然変異を有するマウス(BXNマウス)を、リポソーム内にカプセル化されたジクロロメチレンジホスホネート(ClMDP)の腹腔内注射により及び抗多形核好中球(PMN)抗体により処理した。この処理は、P.falciparum感染RBCの生存を可能としそして慢性の安定で長く続く寄生虫血症における薬物の研究を可能とした。このモデルは、RBCのような核が無く、循環する細胞及びPlasmodiumの如き有核原虫(nucleated protozoa)の生存のために有効であると思われた。
【0014】
HCV感染のための他の適当なモデルがMercer等により得られた(Mercer D. F. et al . 2001. Nat. Med. 7(8), 927-933)。SCIDマウス(即ち、機能的T及びB細胞を持たないマウス)をAlb−uPAトランスジェニックマウスと交差させた。これらの後者は、アルブミンプロモーターの制御の下に、導入遺伝子、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)を発現し、導入遺伝子を有する肝細胞の死をもたらしそして該遺伝子を欠いた移植された細胞のための成長の利点をもたらす。これらの交差されたマウス(crossed mice)におけるヒト肝細胞移植の有効性は、hAATシグナル測定により制御された。結果は、いくらかのレシピエントマウスは移植の約14週間後にシグナルの消滅を有していたが、これに対して、第2のサブセットは、30週間を超えて強いシグナルを維持していたことを示した。DNA分析は、持続した生着を伴う動物が、導入遺伝子に対してホモ接合であること及び成功しなかった移植片を有するサブセットは該導入遺伝子に対して半接合であることを確証した。このモデルは、マウス肝臓がヒト肝細胞で再増殖され(repopulated)うるが、Alb−uPAホモ接合マウスのみにおいて再増殖されうることも証明した。結果として、このモデルにおけるAlb−uPAのホモ接合性は、成功した移植及びウイルス感染の樹立に決定的に重要であると思われる。
【0015】
マウス肝臓のヒト肝細胞部分的再増殖を示す他のモデルは、Dandri等のモデルであった(Dandri M. et al., 2001. Hepatology 33(4), 981-988)。uPAトランスジェニックマウスをRAG−2マウス(成熟T及びBリンパ球を欠いた)と交差させ、そして半接合uPAマウスに初代ヒト肝細胞を移植した。成功した移植及び部分的再増殖(マウス肝臓の15%までと評価された最高の程度)が灌流されたドナー肝臓試験片からの肝細胞で得られた。腫瘍を取り囲んでいる組織又は細胞溶液からの肝細胞に関する他の実験は成功した移植を生じなかった。uPA/RAG−2マウスへのHBV感染ヒト血清の注射は、ヒト肝細胞感染をもたらしそして移植されたマウス血清中のウイルスエンビロープタンパク質の存在をもたらした。従って、移植された肝細胞はHBVに対して許容性であったが,これは、それらが機能的であることを示す。このモデルは、再増殖を得ることができたとき、即ち、灌流の前に非常に短い虚血時間を経た健康な肝臓からの肝細胞により、HBV感染の研究において有用であることが証明された。部分的肝切除術から得られたヒト肝細胞を使用する移植は成功しなかった。この制限は、移植のために使用することができるヒト肝臓試験片を相当制限し、したがって得られた有効なモデルの数を相当制限する。
【0016】
上記したモデルは、すべて重要な制限又は病原体及び薬物研究におけるそれらの使用を限定する欠点に直面する。特に、最初の上記モデルは産生するのは容易であったが、移植されたヒト細胞の生存のみを可能としそしてそれらの成長を可能としなかった。肝細胞の再増殖を可能とする2つの最後のモデルは、広汎な条件:免疫が低下した形質及び導入遺伝子の両方を持つモデルに対する要件又は移植された肝細胞の非常に高い品質、により制限された。
【0017】
ヒト宿主における特異的向性を有する病原体の研究を可能とするために、モデルは、ヒトで遭遇する条件に極めてよく似た条件を満たさなければならない。このゆえに、受容体及び分子のレギュラーな発現を可能とする細胞相互作用及び十分細胞分化を可能とする再増殖の程度を有するモデルを得ることは高度に望ましいであろう。このモデルは、病原体ライフサイクルの研究のみならず薬物のスクリーニング又は化合物のデザインのためにも適当であろう。
【0018】
発明の要約
1つの観点では、本発明は、
a.生物適合性支持体に前もって結合させた異種有核細胞を、免疫低下した非ヒト哺乳動物宿主に移植し、
b.非ヒト哺乳動物宿主の非適応防御(non-adaptive defence)を制御し、
c.維持、分化及び成長することができる定着した(settled)異種有核細胞を有する非ヒト哺乳動物モデルを回収すること、
を含む非ヒト哺乳動物モデルを作製する方法を提供する。
【0019】
別法として、このような方法において、有核細胞含有支持体を移植しそして非適応防御を制御する上記工程を逆転させることができる。
【0020】
本発明は、支持体に定着した異種有核細胞を含む支持体を移植された免疫低下した非ヒト哺乳動物宿主であり、そして非適応防御が該移植された支持体の異種有核細胞を維持、分化及び成長させることを可能とするように制御されている非ヒト哺乳動物モデルも提供する。
【0021】
本発明の他の観点は、本発明に従う非ヒト哺乳動物モデルから単離された定着された異種有核細胞の組を含む組織マトリックスを提供する。
【0022】
更に他の観点では、本発明は、本発明の非ヒト哺乳動物モデルにおいて病原体を研究するための方法であって、
a.該病原体を、該非ヒト哺乳動物モデルの定着した異種有核細胞と接触させることを可能とする条件で、該非ヒト哺乳動物モデルに該病原体を感染させ、
b.該定着した細胞における病原体で発生した感染を観察する、
ことを含む方法を提供する。
【0023】
本発明は、治療的興味を与えることができる化合物のスクリーニング又は試験のための本発明の非ヒト哺乳動物モデルの使用にも関する。
【0024】
本発明の他の観点は、本発明の非ヒト哺乳動物モデルにおける病原体による感染又はその有害な作用に対して活性な化合物をスクリーニングするための方法であって、
a.該病原体が非ヒト哺乳動物モデルの定着した異種有核細胞を透過することを可能とする条件で該非ヒト哺乳動物モデルを病原体で感染させ、
b.試験した化合物を、その活性を生じさせる条件で投与し、
c.病原体で発生した感染又はその有害な結果に対する該化合物の効果を観察する、
ことを含む方法である。
【0025】
更なる観点では、本発明は、本発明の非ヒト哺乳動物モデルにおいて生体異物化合物(xenobiotic compounds)のin vivo代謝をスクリーニングするための方法であって、
a.試験されるべき生体異物化合物を定着した異種有核細胞と相互作用させる条件で該非ヒト哺乳動物モデルに該試験されるべき化合物を投与し、
b.該定着した細胞のレベルでのそのバイオトランスフォーメーション(biotransformation)を観察する、
ことを含む方法を提供する。
【0026】
本発明の特定の態様では、異種有核細胞は、ヒト肝細胞又はリンパ球である。このような肝細胞は、部分的肝臓切除術からのドナー肝臓試験片から得ることができ、又は他の非ヒト哺乳動物モデルから単離された肝細胞であることができる。
【0027】
特定の免疫低下した非ヒト哺乳動物宿主はSCID、BXN又はSCID/Nodマウスである。
【0028】
ライフサイクルの研究又は薬物スクリーニングのための特定の病原体は、肝細胞指向性病原体、例えば、Plasmodium株(P.falciparum又はP.vivax)、HBV又はHCVである。
【0029】
詳細な説明
本発明は、
a.生物適合性支持体に前もって結合させた異種有核細胞を、免疫低下した非ヒト哺乳動物宿主に移植し、
b.非ヒト哺乳動物宿主の非適応防御を制御し、
c.維持、分化及び成長することができる定着した(settled)異種有核細胞を有する非ヒト哺乳動物モデルを回収すること、
を含む非ヒト哺乳動物モデルを作製する方法を提供する。
【0030】
該免疫低下した非ヒト哺乳動物宿主から出発して非ヒト哺乳動物モデルを製造するために、異種有核細胞は、該細胞が該支持体に結合しそして機能的な状態を維持することを可能とするような条件で支持体に与えられる。次いで、定着した異種細胞を、維持し、分化させそして成長させることを可能とする非ヒト哺乳動物モデルを最後の段階で回収するために、宿主の非適応防御を制御するための工程を行う。
【0031】
非ヒト哺乳動物宿主を発生させるこの方法に対する代替法として、本発明は、該支持体に結合した有核細胞を移植する前に非適応防御の制御を行う可能性を包含する。
【0032】
哺乳動物非ヒト宿主への移植工程のための本発明で考慮された支持体は、該支持体が生物適合性であるとの条件下に、種々の起源のものであることができる。支持体の例は、EP0702723patentに記載されている。
【0033】
この支持体は、細胞の生物学的固着(anchoring)(特に、支持体に結合するか又はコロナイジングすること(colonizing)により)を可能とする生物適合性材料からなる。支持体の例として、合成生物適合性材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン繊維(PTFE)、生物学的起源の材料、例えば、炭酸カルシウム及び好ましくは、サンゴ又は、例えば、架橋したコラーゲン繊維を挙げることができる。
【0034】
異種有核細胞は、支持体の表面に付着させることができ、又はこの支持体の内部に浸透させて定着を達成することができる。
【0035】
支持体への細胞の持ち込みは、特に、ゲルの構成を有する(ゲル化と呼ばれるプロセスによる)マトリックス内に細胞を含ませることを誘発及び/又は促進することができる成分の存在により可能とされる。このようなゲルは、コラーゲンゲル、例えば、ラット尾部コラーゲン、ウシコラーゲン又はヒトコラーゲンを含む。
【0036】
便利な支持体を構築するための材料は、支持体が導入されている宿主により再吸収性であってもなくてもよい。
【0037】
宿主又はモデルとして本発明で考慮される哺乳動物は、ヒトを除いて哺乳動物グループのいかなる動物であってもよいが、但し、それは本発明に関して使用するのに適切であるものとする。
【0038】
本明細書で使用された「モデル」は、異種発生性起源(xenogenic origin)からの、即ち、異なる生物、特に異なる動物種に由来する有核細胞を含む非ヒト哺乳動物宿主に関する。本発明の特定の態様では、該有核細胞はヒト細胞である。宿主中に移植されたとき、細胞は、維持され、分化しそして成長する。
【0039】
本明細書で使用された「宿主」は、非ヒト哺乳動物でありそして遺伝子突然変異、処理又は手術から生じる変更された免疫学的機構の故に、免疫低下している。
【0040】
本明細書で使用した「移植(implanting)」は、異種有核細胞を含有する支持体を、レシピエント非ヒト哺乳動物宿主に組み込むプロセスである。移植は、種々の場所で、例えば、肝臓内、脾臓内、腹腔内、又は眼窩内(intraorbital)で行うことができ、そして非ヒト哺乳動物モデルにおいて定着したとき循環することができるか又は対照的に所定の場所に残ることができる移植された細胞で行うことができる。移植は持続性であるか又は一過性であることができる。
【0041】
支持体を定着させる前に、細胞を当業者に周知の技術に従って処理される。細胞は、器官切除に直接由来する初代細胞、遺伝子修飾を含む種々の処理を前もって受けた細胞、他の非ヒト哺乳動物モデルからの又はin vitro培養物からの細胞であることができる。
【0042】
本明細書で使用される「有核細胞」は、核を含有する細胞である。特定の態様では、分化活性を有し及び/又は分裂して宿主において再増殖することができる細胞を使用する。このような細胞は、肝細胞、リンパ球であることができる。特定の態様では、使用される細胞は幹細胞又は多能性細胞である。
【0043】
モデルは、いくつかの有核細胞型及び有核細胞のほかに核出した細胞(enucleated cells)、例えば、赤血球(RBC)を移植するのに使用することができる。
【0044】
移植された細胞は、健常な細胞であり、従って、非感染及び非腫瘍細胞を包含する。移植された細胞は、突然変異した細胞又は組換え細胞も包含する。
【0045】
「非感染」細胞は、以前に移植、病原体との相互作用を受けていない細胞を指し、該細胞に対するその効果は、得られたモデルにおいて後で試験することができる。このような細胞は、例えば、該病原体についてネガティブであることが試験された患者、又はそのバックグラウンドが問題の期間患者が感染していなかったことを裏付けることができる(例えば、組織学的及び/又は生物学的徴候)患者の器官から得られる。
【0046】
例えば、本発明がヒト肝細胞を含む非ヒト哺乳動物モデルを与える場合には、移植された細胞は、Plasmodium、例えば、Plasmodium falciparum及び/又はHBV及び/又はHCVにより感染されていない。
【0047】
「非腫瘍」細胞は、制御された細胞増殖及び広がりを有しそして安定な核型を有する細胞、即ち、多重分裂後に同じ数の染色体を含有する細胞を指す。
【0048】
本発明では、異種有核細胞は、非感染且つ非腫瘍細胞であるけれども、それにもかかわらず、突然変異を有することができ、その効果は、これらの細胞をモデルに投与された所定の化合物と接触させるときに調べることができる。異種有核細胞は、試験されるべき細胞に対して影響を与える異種配列の組み込み(incorporation)の結果として組換え細胞であることもできる。
【0049】
「非適応防御」は、T及びBリンパ球により指向された特異的免疫と対照的に、非特異的免疫に関与した細胞、例えば、マクロファージ、単球又は多形核好中球(PMN)を指す。
【0050】
本明細書で使用された「定着した(settled)」は、細胞を含む支持体の移植工程後に損失されない細胞を指し、従って、非ヒト哺乳動物モデルにおいて生存しそして再増殖することに成功した細胞を指す。
【0051】
移植された細胞の本明細書で使用された「維持する」能力は、移植された細胞が宿主において生存する能力を指す。
【0052】
本明細書で使用された、移植された細胞の「分化する」能力は、移植工程後、細胞の元の宿主における同じ細胞型の特徴とできる限り類似した特徴に到達する能力を有する細胞を指す。この能力は、分泌された分子(例えば、肝細胞ではアルブミン)、発現された表面受容体、病原体感染、細胞サイズとして又はいかなる他の適切な方法によっても決定することができる。定着された細胞により発現されたヒト細胞型特異的分子の存在は、周知の技術、例えば、ELISA(酵素結合イムノソーベントアッセイ)、ウエスタンブロット、ドットブロット、免疫沈殿、移植された細胞マーカーの特異的抗体を使用する組織学的切片に対する直接又は間接免疫染色により、血清で測定することができる。細胞型特異的分子転写物は、移植された細胞マーカーの特異的プライマーを使用することによりRT−PCR(逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応)又はリアルタイムRT−PCRにより検出することができる特異的受容体は、種々の技術、例えば、FACS分析により検出することができる。最後に、病原体感染は、光学顕微鏡法、生検に関する免疫組織学的染色を含む技術、血清に関するELISA、PCR又はRT−PCR及び細胞抽出物に関するウエスタンブロット、PCR又はRT−PCRによる定着された細胞工程特異的タンパク質の検出により制御される。
【0053】
本明細書で使用された移植された細胞の「成長」する能力は、定着された細胞の、レシピエントにおいて生存する能力のみならず、得られたモデルにおいて増殖する能力も指す。成長は、定量的像形成及び特異的細胞型マーカーを発現する細胞の百分率を評価することにより測定することができる。測定は、異なる時点で行って定着された細胞の再増殖を追跡することができる。成長は、標識されたヌクレオチド、例えば、BrdUの組み込みによりDNA合成の分析によって追跡することもできる。
【0054】
本発明の1つの利点は、モデルを製造するのに使用された非ヒト哺乳動物宿主の唯一の必要な特徴は免疫低下した特徴であるということにある。いくつかの遺伝子欠陥を有する宿主の必要はなく、ゆえに、移植されうる宿主を得るのに異なる株間で必要な交差の数を減少させる。結果として、これは、必要な宿主のより速い且つより安価な発生をもたらす。
【0055】
本発明者は、宿主の非適応防御の制御は、移植細胞が非ヒト哺乳動物モデルにおいて定着、分化及び成長することを可能とするパラメーターの1つであることを決定した。
【0056】
非適応防御の制御の有効性は、種々の技術、例えばFACS分析によりチェックすることができる。非適応防御に関与する必須の因子は、本発明に従う免疫調節(immunomodulation)後にその強い減少又は欠乏が予測されるマクロファージ及びPMNである。
【0057】
本明細書で使用された「マクロファージ欠乏」("Macrophage depletion")は、循環しているマクロファージ及び組織マクロファージを大量にしかし完全にではなく減少させるプロセスである。処理後に残っているマクロファージの好都合な範囲0%〜50%である。残っているマクロファージの特定の範囲は、0%〜20%である。
【0058】
マクロファージ数は、宿主に、マクロファージのアンタゴニスト、例えば、マクロファージの発生又は機能を変えそして最後にはマクロファージを殺してしまう、シスプラチニウム又は抗体のような毒性物質を投与することにより減少させることができる。アンタゴニストの投与は、リポソームの使用を含む周知の技術により行われる。マクロファージの減少は、照射によっても達成することができる。
【0059】
本明細書で使用される「PMN欠乏」は、処理後に多形核好中球(PMN)細胞を減少させるプロセスである。処理後の残存PMNの好都合な範囲は、0%〜50%である。残存PMNの特定の範囲は、0%〜20%である。
【0060】
PMNアンタゴニスト又はそれらの機能及び発達を変える物質の投与は、リポソームを含むベクターを使用することを含む周知の技術によりなされる。
【0061】
特定の態様では、マクロファージ欠乏は、Van Rooijen等の技術に従ってClMDPを含有するリポソームを注射することにより得られる(Van Rooijen N. 1989. L. Immunol. Methods 124, 1-6)。リポソームサイズは、0.5〜7μmの範囲にあってマクロファージにより消化されることができ、その結果マクロファージを殺す。
【0062】
PMN欠乏は、好ましくは、PMN活性が全体として強く減少又は妨害されるようにPMN一部を欠乏させるのみならず残存PMNの機能もブロックする抗PMN抗体、例えば、NIMP−R14モノクローナル抗体を注射することにより行われる。NIMPモノクローナル抗体の活性は、特に、PMNが病原体と接触しているとき通常PMNにより放出される細胞質好中球顆粒(cytoplasmic neutrophil granulations)の消失を誘導する。
【0063】
マクロファージ欠乏の特定のプロトコールは、移植の2日後に出発して、4日間隔で、リポソーム中に埋め込まれたClMDPの注射である。このようなリポソームは、腹膜、肝臓、脾臓及び腎臓からマクロファージを完全にクリアー(clear)。骨髄からの単球は、すべてのクッパー細胞のクリアランスの後に肝臓をコロナイズし(colonize)、そして非常に活性な大きなマクロファージ及び新しいクッパー細胞に転換する。これらの細胞は、やはりリポソームの次の注射により破壊される。
【0064】
PMN欠乏の特定の態様では、抗PMN抗体は、移植の2日後に出発して、1月間隔で注射される。注射間の間隔は3〜4日である。
【0065】
特定の態様では、モデルの発生に使用される非ヒト哺乳動物宿主は、特に、低コスト、飼育が容易である及び種々の株が入手可能であるという理由で、げっ歯類、特にマウスである。
【0066】
移植工程のための特定の免疫低下した宿主は、SCIDマウス(重い合併型免疫不全(severe combined immunodeficiency)、SCID/Nodマウス(重い合併型免疫不全/非肥満糖尿病)又は変えられたリンパ球系統を有する哺乳動物、例えば、BXN(NIHIII又はBeige Xid Nude)、RAG、RAG2及びRAG−γCマウスである。
【0067】
特定の態様では、マウスは、ヒト肝細胞を含む支持体を移植される。細胞は、コラーゲナーゼ処理により、記載されたごとく(Dandri M. et al. 2001. Hepato; ogy 33, 981-988)調製することができる。しかしながら、それらは、動物への移植工程の前に培養物中にin vitro条件下に保つ(例えば、1〜3週間)ことができる。特定の態様では、結合及び移植工程は、成体又は胎仔初代肝細胞、骨髄細胞又は肝細胞系で行われる。
【0068】
本発明は、支持体に定着した異種有核細胞を含む支持体を移植された免疫低下した非ヒト哺乳動物宿主でありそして非適応防御が該移植された支持体の異種有核細胞を維持、分化及び成長させることを可能とするように制御されている非ヒト哺乳動物モデルも提供する。
【0069】
非ヒト哺乳動物モデルの利点は、定着した有核細胞の維持のみならず、それらの成長及び分化でもある。
【0070】
本発明のモデルの定着した有核細胞の成長及び分化は、種々の特徴、例えば、細胞表面受容体の存在、移植された細胞の特異的タンパク質の分泌、細胞サイズ又は病原体に対する受容性によりチェックすることができる。
【0071】
本発明の特定の態様では、モデルは、定着した有核細胞が、定着した細胞の分化及び成長を特徴付ける特異的タンパク質を数ヶ月間分泌することを可能とする。移植された細胞型の特異的タンパク質、例えば、肝細胞についてアルブミンは、マーカーとして使用して、分化状態及び再増殖を追跡することができる。
【0072】
移植された細胞が、in vivo条件で観察された分化状態と類似した分化状態を獲得したという仮定は、分化した細胞をいくらかの病原体に感染させてそれらの発達を可能とするための厳しい要求により試験することができる。
【0073】
本発明のモデルの他の利点は、制限された向性を有する病原体に対する定着された細胞の受容性である。
【0074】
本明細書で使用された「受容性」は、定着した細胞の元の宿主で観察された感染と同様な感染を持続する定着された細胞の能力を指す。ゆえに、病原体は、定着された細胞に浸透しそしてそれらの複製及び成熟を実現する。
【0075】
定着した異種有核細胞を含む本発明の非ヒト哺乳動物モデルは、これらの細胞に対する特異的向性を有する病原体を研究するために使用するのに適当である。
【0076】
本発明の他の態様に従えば、モデルは、該定着された細胞において、投与された化合物、特に薬物の代謝のin vivo研究に適当である。
【0077】
特定の態様として、哺乳動物宿主は、ヒト肝細胞を移植されたマウスである。このマウスモデルにおいては、定着された細胞は肝臓指向性病原体、例えば、HBV、HCV又はPlasmodium株、例えば、P.falciparum又はP.vivaxに対して受容性である。
【0078】
他の特定の態様では、哺乳動物宿主は、リンパ球を移植されたマウスである。このモデルでは、病原体に由来するペプチドの注射は、これらのペプチドの特異的抗体の移植されたリンパ球による産生をもたらす。
【0079】
本発明は、非ヒト哺乳動物モデルから発生させた組織マトリックスも提供する。本明細書で使用された「組織マトリックス」は、本発明に従う非ヒト哺乳動物モデルに由来する定着された異種有核細胞のセットを指す。この定着された細胞セットは、
懸濁している、そして周知の技術、例えばPercoll勾配での遠心により処理された、単離された細胞として現れるか、
生検断片の如き「固体」調製物として現れるか、
基質上の定着された細胞の付着後に得られた細胞系として現れることができる。基質は、生物分解性もしくは生物安定性ポリマーを含む合成起源、天然起源又は両方の混合物であることができ、そして細胞の正常な生物学的活性を維持するように選ばれる。このような基質及び人工的基質の例は、プラスチック、ガラス又は膜である。細胞は、網状化成分(reticulated components)、例えばコラーゲン、ゲル又は網状化ポリマー上に培養することもできる。
【0080】
この組織マトリックスは、分化した非ヒト哺乳動物細胞の一定のそして均質な保存物を形成する。組織マトリックスの利点は、それを構成している細胞を新しい移植のために使用することができるということである。結果として、新しい組織又は新しい生検を得ることは必要ではない。
【0081】
本発明の非ヒト哺乳動物モデルは、制限された向性の病原体であって、そのための許容されうる系が存在しないか又はそのための許容されうるモデルが完全に満足ではない病原体の研究を可能とする。本発明の非ヒト哺乳動物モデルは、分化されそして数週間病原体感染を持続することができる定着された細胞を含有する。非ヒト哺乳動物モデルにおける、定着された細胞生存の長い期間、それらの再増殖及びそれらの高い数の故に、該感染された細胞を候補薬物化合物と接触させるときを含めて病原体ライフサイクルを集中的に研究することができる。
【0082】
本発明は、本発明の非ヒト哺乳動物モデルにおいて病原体を研究するための方法であって、
a.該病原体が非ヒト哺乳動物モデルの定着された異種有核細胞と接触することを可能とする条件で、該非ヒト哺乳動物モデルを病原体で感染させ、
b.該定着された細胞における病原体で発生した感染を観察する、
ことを含む方法も提供する。
【0083】
第1工程は、病原体が定着された細胞と相互作用することができそして特に該細胞中に浸透することができる条件で、非ヒト哺乳動物モデルへの病原体の導入である。病原体の導入は静脈内又は皮内の注射を含む種々の方法により達成されうる。
【0084】
第2工程で、該定着された細胞の感染を周知の方法により監視し、該周知の方法は、光学顕微鏡法、病原体特異的抗体を使用する免疫蛍光抗体試験(IFAT)、病原体特異的遺伝子のためのプライマーを使用するPCR(定性的又は定量的)又はRT−PCR、ELISA又は免疫沈殿を含むが、それらに限定はされない。病原体が種々の器官又は種々の種に感染する異なる形態を有するライフサイクルを有するとき、抗体又はプライマーは、各形態のタンパク質に特異的であるように選ばれ、そして本発明では、定着された細胞形態のタンパク質に特異的であるように選ばれる。病原体感染を同定するために得られたすべての結果、例えば、光学顕微鏡により計算された病原体の数、IFATにより観察された染色及びモデルの定着された細胞において検出されたmRNA転写物を、同じ病原体により感染されているが細胞移植なしのコントロールモデルと比較する。
【0085】
特定の態様では、試験される非ヒト哺乳動物は、ヒト肝細胞含有支持体が移植されているSCIDマウス宿主から発生したマウスモデルである。
【0086】
特定の病原体は、HBV(肝炎Bウイルス)、HCV(肝炎Cウイルス)又はP.falciparum及びP.vivaxを含むPlasmodium株を含む肝臓指向性病原体である。
【0087】
P.falciparumによる肝細胞感染の監視は、肝細胞及び/又は赤血球に対して特異的な病原体タンパク質、例えば、サーカムスポロゾイトタンパク質(スポロゾイト)、MSP3タンパク質(赤血球)、HSP70及びMSP1タンパク質(肝細胞及び赤血球)並びにLSA1タンパク質(肝細胞)を試験することにより行うことができる。
【0088】
HCVによる肝細胞感染の監視は、ウイルスRNA配列(定性的PCR)の存在又は不存在あるいはウイルスロード(定量的PCR)を測定することにより行うことができる。
【0089】
HBVによる肝細胞感染の監視は、ELISA技術によりウイルスエンビロープタンパク質HbsAgを定量することにより行うことができる。
【0090】
本発明は、感染又はその結果に対する治療的興味を与える化合物の試験のための、本発明の非ヒト哺乳動物モデルの使用も提供する。
【0091】
非ヒト哺乳動物モデルは、病原体のライフサイクルを変えることができる薬物のスクリーニングのためにも有用でありうる。非ヒト哺乳動物モデルの数週間病原体感染を持続する能力により、感染に対する薬物投与の効果を観察することができるそしてその有効性を評価することができる。本発明は、本発明の非ヒト哺乳動物モデルにおいて病原体による感染又はその有害な作用に対する活性な化合物をスクリーニングするための方法であって、
a.該病原体が非ヒト哺乳動物モデルの定着された異種有核細胞に浸透することを可能とする条件で、該非ヒト哺乳動物モデルを病原体で感染させ、
b.試験される化合物の活性が生じることを可能とする条件で、試験される化合物を投与し、
c.病原体で発生した感染又はその有害な作用に対する該化合物の効果を観察する、
ことを含む方法を提供する。
【0092】
第1工程では、定着された細胞は上記した方法に従って感染させられる。
【0093】
次いで、薬物がその活性を保ち、修飾し又は獲得する条件で、薬物を非ヒト哺乳動物モデルに投与する。定着した細胞及び宿主環境との相互作用を薬物の活性に対して決定することができる。
【0094】
薬物は全身系経路又は局部的経路を含むいかなる適当な形態の下でも投与されうる。
【0095】
いくつかの薬物(少なくとも2種)を、一緒に、又は特定のプロトコールで投与して、起こりうる相乗性、重複性(redundancy)又は拮抗性(antagonism)を示すことができる。
【0096】
薬物は、口により摂取されること(経口)、静脈への注射(静脈内に)、筋肉への注射(筋肉内)により与えること、皮膚の下に(皮下に)与えること又は舌の下に(舌下に)置くこと、直腸に(直腸内に)又は膣に(膣内に)挿入すること、眼に(眼経路)点滴するか、鼻に噴霧すること及び鼻粘膜を通して(鼻内に)吸収させること、肺に吸い込ませる(吸入による)又は皮膚に適用する(皮膚に(cutaneously))ことを含む多数の周知の経路により投与することができる。
【0097】
最後に、病原体感染又はその有害な作用に対する薬物の効果を監視することができる。投与された薬物の効果を観察するために、光学顕微鏡法、免疫蛍光抗体試験(IFAT)、RT−PCR、PCR(定性的又は定量的)又はELISAを含む種々の技術を使用することができる。感染は、異なる時点で追跡されそして種々のファクター:薬物半減期、感染排除又は減少のための最小有効投与量(minimam effective dosage)、年齢、体重又は体表面積基づく薬用量(drug dosage)、薬物投与のための最も有効な場所又は経路、組み合わせ治療有効性、を計算することができる。観察されうる他のファクターは、定着された異種細胞により産生される薬物代謝物の生物学的活性及びこれらの特異的代謝物の非ヒト哺乳動物の種々の器官に対する毒性であることができる。
【0098】
本発明は、本発明の非ヒト哺乳動物モデルにおいて生体異物(xenobiotic)化合物のin vivo代謝をスクリーニングするための方法であって、
a.試験されるべき生体異物化合物が定着された異種有核細胞と相互作用することを可能とする条件で、該試験されるべき生体異物化合物を該非ヒト哺乳動物モデルに投与し、
b.該定着された細胞のレベルでのその生体内変化(biotransformation)を観察する、
ことを含む方法も提供する。
【0099】
異種有核細胞のこのサブセットは、非ヒト哺乳動物モデルへのその注射後に、生体異物化合物の生体内変化を追跡するのに利用することができる。本明細書で使用された「生体異物」は、生物において暴露される生物の普通の成分ではない化学物質(又は更に一般的には、化学的混合物)を指す。生体異物化合物は、大抵の薬物(生物において天然に存在する化合物以外の)及び他の生体異物(Foreign substances)を含む。
【0100】
生体異物は薬物について上記したすべての経路及び全ての形態に従って非ヒト哺乳動物モデルに投与される。投与における1つの条件は、生体異物が定着した細胞と相互作用することができるということである。
【0101】
中間体及び最終産物を含む代謝産物(分解産物)のレベルの測定は、その半減期を含む生体異物代謝速度論を追跡することを可能とする。モデルは、定着された細胞に対する化合物の効果を観察すること、効果が現れる投与量を評価することも可能とする。最後に、反応性代謝産物と細胞巨大分子(cellular macromolecules)間の潜在的相互作用を研究することも可能とする。
【0102】
大抵の生体異物化合物は肝臓により代謝されるので、試験される特定の哺乳動物は、肝細胞含有支持体が移植されているSCIDマウス宿主から発生されたマウスモデルである。このモデルでは、例えば、循環している肝臓トランスアミナーゼを測定することによりそして光学顕微鏡法により肝臓組織を分析することにより、肝臓に対する薬物の細胞障害性作用を監視することができる。
【0103】
上記した生物学的測定のいくらかは、定着された細胞の発生及び機能化へのアクセスを与えるために、ヒト細胞の定着の結果として得られた移植片の除去又は定着された細胞の犠牲を必要とした。ゆえに、本発明の方法は、更に、維持、分化又は成長することができる定着した異種有核細胞を持っている非ヒト動物モデルから移植片を除去する工程又は該非ヒト動物モデルを犠牲にする工程を含むことができる。この犠牲は、試験されるべき活性又は生体異物化合物の注射の前又は後に、非感染動物又は感染動物において行うことができる。
【0104】
本発明は、少なくとも本発明のキメラマウスモデルを含む技術的プラットホーム、例えば、
病原体により引き起こされた哺乳動物感染を処置するのに有用な新規な化合物を同定するのに有用な技術的プラットホームであって、少なくとも上記したキメラモデルと、病原体で発生した該モデルの感染に対する該化合物の効果を検出又は観察するための適切な手段を含むことを特徴とするプラットホーム、
生体異物化合物のin vivo代謝をスクリーニングするのに有用な技術的プラットホームであって、少なくとも本発明に従うキメラモデルと、該マウスモデルにおいて移植されたヒト細胞による該化合物の生体内変化を観察するための適切な手段を含むことを特徴とする技術的プラットホーム、
も提供する。
【0105】
実施例
実施例は本発明を説明するために与えられており、本発明を限定するためではない。
実施例1:肝細胞を移植されたマウスモデルの生成
動物
IFFA−CREDOから購入した6〜8週齢の雄及び雌のBXN、SCID及びSCID/NODマウスを、無菌のアイソレーター中に保ちそして随意にオートクレーブ処理した水道水及びγ−照射されたペレット飼料を与えた。マウスを、層流フード(laminar-flux hoods)において病原体を含まない条件下に収容し、維持しそして処理する。すべての動物を実験室動物ガイドラインに従って処理した。
ヒト肝細胞の単離
初代ヒト肝細胞を、フランス国倫理規則(French National ethical regulations)(Huriet法のL−1245−2条)に従って、肝臓転移及び良性肝臓腫瘍のための治療的部分肝臓切除術を受けた患者からインフォームドコンセントで得られた外科手術肝臓生検試験片(約20〜25cm)の健常な肝臓組織から、他に記載されたようにして(Guguen-Guillouzo C. et al. 1986. Prog Liver Dis 8,33-50)単離した。ウイルス感染(HCV、HBV、HIV)、硬変及び原発性肝臓がんを有する対象は除外した。
【0106】
切除された肝葉(resected liver lobes)を、転移部(metastasis)から少なくとも3cmの距離で切断した。ヒト肝細胞を、2段階灌流技術により単離した。この方法により得られた肝細胞生存率は3つの重要なファクターに依存する。これらのファクターは、温度:37℃、pH:7.6及び灌流液流速:拒絶サイズに従って16〜20ml、である。上記した温度、pH及び灌流流速で、カルシウムなしでHEPES緩衝剤で灌流を始めた。次いで肝細胞を、コラゲナーゼH(Collagenase H)0.05%(Roche Molecule Biochemicals)及びCaCl5mMを補充されたHEPES緩衝剤200mlの灌流により単離し、そして以前に記載されたとおり(Giannini C. et al. 2003. Hepatology 38, 114-122; Guguen-Guillouzo C. et al. 1993 . Cytotechnology 11 Suppl, S3-5; Guguen-Guillouzo C. et al. 1982. Cell Biol Int Rep 6(6), 625-8)Percoll分別(Percoll fractionation)により非実質性細胞(non-parenchymatous cells)から分離した。生存している細胞をトリパンブルー排除により決定した。
【0107】
ヒト肝細胞の移植
マウスを、バリウム(Valium)(10mg/kg)0.3mgの腹腔内注射により麻酔し、主として腹膜腔内のコラーゲンマトリックス中に分散させた、コラゲナーゼで解離されたヒト肝細胞(collagenase-dissociated human hepatocytes)の外科的移植のためにケタミン2.5mg(83.3mg/kg)により麻酔した。
【0108】
コラゲナーゼによる肝細胞の解離の後に、100万〜1千万個の細胞をコラーゲンマトリックス(スポンジ様)中に注射し、次いでそれをエピプロン(epiplon)及び腹腔に縫合して、「新器官」("neo-organ")の血管新生を促進するか、又はエピプロン+小腸に縫合して胆管形成及び胆汁排出(bile evacuation)を促進する。すべての手術及び動物取り扱い方法は、層流フードにおいて厳密な無菌技術を使用して行った。
【0109】
免疫モジュレーションプロトコール
マウス宿主におけるヒト肝細胞の移植は、特に、肝臓、脾臓及び腹腔における組織マクロファージ、並びに循環している多形核好中球(PMN)及び単球の高い増加を誘発する。
【0110】
リポソーム中にカプセル化されたジクロロメチレンジホスホネート(ClMDP)を、以前に記載のように使用した(Nico Van Roojen 1989.J. Immunol. Methods) 124, 1-6)。リポソーム媒介マクロファージ「自殺("suicide")」技術は、異種細胞の存在に応答してBXN、SCID−NODマウスにおける組織マクロファージの減少を可能とした。
【0111】
PMNの増加は、NIMP−R14モノクローナル抗体を使用することにより制御された(Lopez A. et al. 1984 Br J Haematol 57(3)484-94)。マウスに、3〜4日毎にリポソームカプセル化クロロドロネート(リポソームの50%ヘマトクリットの溶液100μl)及び抗体NIMP−R14(100〜200μg/ml)を、移植の2日後に出発して4日の感覚で腹腔内に注射した。クロロドロネートは、Roche Diagnostics GmbHd)により商品化されそして以前に記載のとおりにカプセル化された。
【0112】
実施例2:ヒト肝臓細胞/肝細胞検出
移植の15日〜9ヶ月後に、マウスを屠殺した。肝臓移植片を取り出しそして組織学及び/又はPCRによるヒトDNA検出のために処理した。ヒトアルブミン検出を、RT−PCRにより及びマウス血清で行われたELISAにより評価した。
【0113】
移植片内のヒトDNAの検出
GenElute Mammalian Genomic DNA(Sigmaからのキット)及びβ−グロビン特異的プライマー:
【表1】


を使用するPCRにより増幅されたヒトβ−グロビンを使用して、ゲノムDNAを単離した。
【0114】
ヒト末梢血はポジティブコントロールとして役立ちそして移植されなかったBXN肝臓はネガティブコントロールとして役立った。PCR条件は、90℃5分間、94℃30秒、55℃30秒及び72℃30秒で40サイクル、及び最終伸長72℃で5分間であった。20マイクロリットルの最終PCR産物(増幅した産物のサイズ:262bp)を、電気泳動(臭化エチジウムを有する2%アガロースゲル)により分析しそしてPCR産物バンド(262bp)をUVトランスイルミネーション下に可視化した。
【0115】
移植片内のヒトアルブミン、ヒトシトクロームP450A4及びヒトα1抗トリプシンRNAsの検出
ヒトRNA検出のために、製造者の指示に従ってRNeasy Protect Mini kit (Qiagen)を使用して、全RNAをヒトマウスキメラ肝細胞、マウス及びヒト肝臓細胞組織から単離した。精製したRNAsを分光光度法により定量し、そして各サンプルからの等量のRNAを、ランダムプライマーを使用するcDNA合成に付した。下記のヒト特異的アルブミンプライマー
【表2】


を使用してヒトアルブミン転写物を検出した(増幅したmRNA:523bp)。PCR条件は、95℃5分、94℃30秒、60℃1分及び72℃1分で40サイクル及び最終伸長72℃で5分であった。
【0116】
ヒトシトクロームP450及びα−1トリプシン転写物(塩基対における増幅されたmRNAsのサイズ)を、下記のプライマー
【表3】


【表4】


使用して慣用のRT−PCT又は定量的リアルタイムRT−PCR(ライトサイクラー(light cycler))により検出した。
【0117】
次いで、20マイクロリットルの最終PCR産物を、電気泳動(臭化エチジウムを有する2%アガロースゲル)により分析しそしてPCR産物バンド(523bp)をUVトランスイルミネーション下に可視化した。
【0118】
免疫組織化学
Zn緩衝剤中に固定したヒト肝臓移植片をパラフィンで埋め込んだ。切片(5μm)を標準方式でHemotoxylin−Eosin染色した。ヒト肝細胞及び肝臓に特異的な他の細胞を検出するために、切片を、ヒトアルブミン(Clone 3H5/G4、又は抗ヒトアルブミン、Sigma)、ヒトクッパー細胞(CD68、Dako)、ヒト内皮細胞(CD31、Dako)、ヒト胆管細胞(CK19、Dako)に対するモノクローナル抗体免疫染色し、結合した抗体は抗マウスIgG(H+L)Alexa488(Molecular probes)により検出された。
【0119】
ELISA(酵素結合イムノソーベントアッセイ)による移植されたマウス血清におけるヒトアルブミンの検出
ヒトアルブミンを、移植片から回収された培養されたヒト肝細胞上で及び/又は移植されたマウスの血清中で(移植された肝細胞の分化状態を反映する)、1/10の血清希釈率でモノクローナル抗ヒト血清アルブミンクローンHAS−9(Sigma,St Louis,USA)の使用により、in−situで検出した。
【0120】
1/100に希釈された抗ヒト血清アルブミン(クローンHSA−9)100μlの4℃における一夜コーティングの後、37℃で1時間の1%ウシ血清アルブミンとのインキュベーションにより非特異的結合をブロックした。洗浄の後、1/8000に希釈されたHRPコンジュゲート化ウサギ抗ヒトアルブミン(HRP-conjugated rabbit anti-human albumin)(0.16μg/ml、Sigma Chemical Co.)75μlを4℃で一夜インキュベーションした。HRPコンジュゲート化ウサギ抗ヒトアルブミンを、抗原特異的インディケーター抗体として使用した。色素原及び基質を、製造者の指示に従って使用した(Sigma Chemical Co.)(1Xクエン酸塩緩衝剤中のOPD錠剤)。吸光度値(405nm)を、規定された量の精製されたヒトアルブミン(Sigma Chemical Co.)の逐次希釈物を使用することにより行われた標準曲線との比較によりμg/mlの濃度に変換した。ELISAの結果は、OD値が14匹の移植されていないAlb−uPA/SCIDマウスのOD平均+2×標準偏差より高いとき、ヒトタンパク質(HA、hα1AT)の検出についてポジテイブであるとみなされた。カイ二乗検定(chi 2 test)及びフィッシャーの正確検定(Fisher’s exact test)を使用して定性的比較を行った。0.05より小さいP値は、有意であるとみなされた。
【0121】
実施例3:BXNマウスモデル(1)で得られた結果
相補的免疫調節処理(complementary immunomodulation treatment)なしに、11匹のBXNマウスのグループに、腹腔内位置におけるコラーゲンスポンジから作られた細胞外マトリックス内の解離され、単離された肝細胞を移植した。
【0122】
移植の1が月半の後に、生検の検査は、新規器官が血管形成されそしてサイズが2倍まで増加した(直径約3mmから7〜8mmまで)ことを示した。
【0123】
肝細胞生存は、新規器官のコラゲナーゼによる灌流、肝細胞の培養及びヒトアルブミンの検出により確かめられた。
【0124】
これらの結果は、ヒト肝細胞の長期の生存が免疫不全マウスにおいて達成可能であったという考えを支持した。
【0125】
抗PMN抗体処理を受けなかったこれらのマウスにおいて、筋肉に移植された生検において特に可視の、主として多形核細胞から作られた大きな環の存在は、これらの細胞は、B及びTリンパ球を欠いているマウスにおける防御において決定的に重要であること、及び、肝細胞の生存の期間が与えられたとすれば、PMNが末梢のそれを破壊していると同じ時に肝細胞が多分複製していることの両方を示唆する。
【0126】
実施例4:BXNマウスモデル(2)において得られた結果
次のグループは、腹腔における細胞外マトリックス中に単離された肝細胞を受け入れる相補的免疫調節処理なしの16匹のBXNマウスからなっていた。それらは、肝細胞の形態学的特徴を示した。
【0127】
しかしながら、きわめて多様な種類のマーカーによる標識は、抗体の非特異的結合をもたらす免疫相補的処理の不存在下に細胞の罹患により後に説明された高いバックグラウンドを有する非確定的な結果をもたらした。
【0128】
ヒト肝細胞を移植されたこれらの16匹のBXNマウスからの抽出物に関して行われたひとβ−グロビンPCRは、16匹の移植片からの11個は、移植15日〜9ヶ月後に、ヒト、β−グロビンDNAについてポジティブであることが見出された(図1)。
【0129】
9ヶ月目における肝細胞組織の存在は、これらのマウスにおける非適応防御にもかかわらず、移植された肝細胞が活性な増殖を有することを示す。それは、組織マクロファージ及び循環しているマクロファージの活性を欠乏させることを目的とした相補的処理の価値も強調した。
【0130】
実施例5:SCID/NODマウスモデル(1)において得られた結果
10匹のSCID−NODマウスに、腹膜内の細胞外マトリックス中の解離された肝細胞を移植した。それらは、すべて、移植の2日後に抗PMN抗体及びCLMDP含有リポソームによる相補的処理を受けた。
【0131】
抗PMN及びマクロファージ欠乏処理を受けているマウスと、相補的処理を受けていないマウスとの比較は、移植の1ヶ月後に回収された移植片のサイズ及びヘマトキシリン−エオシン着色された切片における回収された肝細胞の形態の大きな改良を示した。
【0132】
それらは、移植片を浸潤する又は取り囲むPMNの数の激烈な減少も示す。これらの移植片における免疫組織化学による非特異的標識の不存在は、回収された肝細胞のより良好な健康の別の証明であった。
【0133】
2つの生検は、ヒトゲノムDNAの存在についてのPCR(γグロビン遺伝子に相当するプライマーを使用する)により分析し、2つのうち2つがポジティブである。
【0134】
処理されたSCID−NODマウスの10個のヒト肝細胞移植片からの抽出物に関してヒトアルブミンRT−PCRを行った。ヒトアルブミンメッセンジャーが、移植の15日〜4ヶ月後に10匹の移植されたマウスの内6匹で検出された(図2)。
【0135】
実施例6:SCID−NODマウスモデル(2)で得られた結果
合計30匹のマウスにヒト肝細胞を移植した。これらの肝細胞は、ヒト肝臓生検のコラゲナーゼによる解離の後得られ、細胞外マトリックス及びコラーゲンスポンジに含浸させて新規器官を創生した。これらは、腹腔内で異なる位置に、主として大網(omentum)に、腹腔に、又は小腸に、又はその両方に位置していた。
【0136】
すべての動物は、B及びTリンパ球機能を有していなかった。15匹の動物を処理せず、そして15匹を、リポソ−ムにカプセル化されたクロロドロネートで1週間又は4日間隔基準で処理し、そして4日毎に与えられた抗多形核抗体で処理した。
【0137】
結果を、マウス血清のサンプリングによって、マウスアルブミンと交差反応しない2つのモノクローナルヒトアルブミン特異的抗体を使用するヒトアルブミンの検出により全てのマウスについて分析した(図6A)。移植片が外科的に除去されたとき、ヒトアルブミン、ヒトα1抗トリプシン及びヒトシトクロームP450 A43を、特異的プライマーを使用する慣用又は定量的リアルタイムRT−PCRにより試験した(図6B)。
【0138】
図6Aは、15匹の非処理マウスにおいて、分泌は非常に低く、5匹の非移植マウス(ナイーブマウス)のコントロールグループより僅かに高く、この僅かな増加は有意ではないが、ボーダーラインであることを示す。対照的に、クロロドロネート及び抗PMNを受け取りそしてヒトアルブミンを分泌する9匹のマウスのグループの中で、9匹のうち5匹は有意にヒトアルブミンを分泌する。タイトルはそれらの2匹については低〜中程度であり、これに対して他の3匹は非常に高いレベルのヒトアルブミンを分泌した(H2e、K1及びK2)。
【0139】
定着した非常に少数のヒト肝細胞、及びヒトアルブミンが宿主マウスの全血中に希釈されるということを考慮すると、これらのヒトアルブミンレベルは特に高い。更に、マウス肝臓の数cmに比較して、移植片の非常に小さなサイズ(即ち、約0.25cm)を仮定すると、これらの移植されたマウスにおけるヒトアルブミンのレベルは印象的であり、そして相対的に少数のヒト肝細胞は機能的に非常に活性であり、したがって非常に健康であることを示す。
【0140】
最も高いヒトアルブミンシグナルを有するマウス(マウスH2e)は、ヒトアルブミン、α抗トリプソン及びシトクロームP450のための転写物を示すマウスでもあることも明らかである(図6B)。
【0141】
対照的に、相補的処理(complementary treatment)を受けていない移植されたマウスのいくらかにおいて、ヒト肝細胞の存在は、β−グロビン特異的プライマーを使用する直接PCRによってのみ確かめられた。PCR結果は、ヒトDNAの存在を示したが、RT−PCRは3つのヒトmRNA(4Reマウスを除いて)のための転写物を示さなかった。これは、これらのマウスが複製する及び/又は生存しているヒト細胞を持っていることを結論するが、機能的ではなかったことを結論する。
【0142】
図7は、同じ実施例で上記のとおりに処理された、それぞれ4及び2匹の2つのグループのSCID−NODマウスにおいて移植された2つのドナー肝細胞で得られたより最近の結果を示す。
【0143】
最初のグループでは、4匹のうち3匹のマウスが、非常に高いレベルのヒトアルブミンを分泌し、そして第2グループにおいて、2匹のうち2匹は高いレベルのヒトアルブミンを分泌した。これらの動物は依然として追跡されそしてそれらの移植片はまだRT−PCRにより研究されていない。
【0144】
これらの結果は、高度に有意でありそして将来性を非常に鼓舞するものである。何故ならば、それらは、ドナ−肝細胞の品質(ドナーによって変わる)及び異所性新規器官(ectopic new- organs)の再血管形成の成功(外科手術の成功及びマウスの防御に依存する)にもかかわらず、マクロファージを標的化する相補的免疫調節処理を受けた非常に実質的な割合の移植された動物は、非常に高いレベルのヒトアルブミンを分泌しそしてマウス肝細胞に比較して、特に非常に小さな割合のヒト肝細胞を与えたからである。本発明の結果は、開発された技術及び近い将来にそれに至らせることができる更なる精製は、ヒト身体の最も微妙な且つ代謝的に複雑な細胞を有する異種移植片が高度に異種の動物、SCIDマウスにおいて生じることができる環境を与えることができるという確信を増加させる。
【0145】
実施例7:リンパ球を移植されたマウスモデルの発生
ヒトリンパ球の単離及び移植
ヒトリンパ球はヒト臍帯(human umbilical cord)から得られた。健常なドナーからの全ヒト末梢血単核細胞(huPBMC)をフィコール−ハイパック(ficoll-hypaque)(Jacques Boy, France)の勾配により単離した。細胞を、Hepes(Gibco, BRL)で緩衝化されたハンクス液で2回洗浄し、そして3×10細胞/マウスを、BXN−NIH IIIマウス(Charles River)の腹腔に移植した。
【0146】
免疫調節プロトコール
リポソーム中にカプセル化されたジクロロメチレンジホスホネート(ClMDP)を以前に記載のとおりに使用した(Nico Van Roojen 1989. J. Immmunol. Methods 124,1-6)リポソーム媒介マクロファージ「自殺」技術は、異種細胞の存在に応答してBXN、SCID−NODマウスにおける組織マクロファージの減少を可能とした。
【0147】
PMNの増加は、NIMP−R14モノクローナル抗体を使用することにより制御された(Lopez A. et al. 1984 Br J Haematol 57(3)484-94)。マウスを、移植の2日後に出発して4日間隔でリポソームカプセル化クロロドロネート(liposome-encapsulated clorodronate)(リポソームの50%ヘマトクリットの溶液100μl)をそして抗体NIMP−R14(100又は200μg/ml)を3〜4日毎に、腹腔内に注射した。クロロドロネートは、Roche Diagnostics GmbHにより市販されておりそして以前に記載のとおりカプセル化された。
【0148】
マウスの免疫感作
我々は、Plasmodium falciparumの前赤血球段階のタンパク質からの3種のリポペプチド:NRII(LSA−3抗原からの)、LSA−J(LSA−1抗原からの)及びSALSA−1(SALSA抗原からの)により構成されたペプチドのカクテルを使用した。それらは、チンパンジー、ヨザル(Aotus monkeys)及びマウスにおけるそれらの優れた免疫原性のゆえに選ばれた。我々は、アジュバントなしの免疫感作につき各リポペプチド50μg/マウスを腹腔内に(i.p)注射した。
【0149】
免疫感作のプロトコール
免疫感作の異なる形態を試験した。2匹のマウスは、その腹腔内注射の前にリポペプチドのプールと15分間インキュベーションされたhu−PBMCを、0日目に受け取った(マウスN1及び2)。2匹の他のマウスは、(マウスN3及び4)は、hu−PBMC注射の1日後にリポペプチドのプールの腹腔内注射を受け取った。2匹の更なるマウス(マウスN5及び6)もこの時点でリポペプチドの注射を受け取ったが、細胞はスポンジコラーゲンの中に入れられ、次いでスポンジコラーゲンをバリウム/ケタミン麻酔下に外科手術により腹膜に導入した。更なる2つの免疫感作を、10日及び20日目にすべてのマウスにおいて腹腔内で行った。
【0150】
実施例8:リンパ球検出
次いで移植されたマウスの末梢循環においてリンパ球を収集しそして下記の技術に従って検出した。
【0151】
フローサイトメトリー分析
循環しているヒトCD2CD3細胞を、フルオレセインにカップリングしたモノクローナル抗体抗CD2抗CD(DAKO A/S,Denmark)を使用してFACSによりマウス血液中に検出した。同じアイソタイプのモノクローナル抗体を、コントロールとして使用した。血液をマウスの後方眼窩洞(retro-orbital sinus)からヘパリン上に集めた。hu−PBMCを、フィコール−ハイパック(Jacques Boy, France)勾配により単離した。洗浄の後に、細胞をマウス血清1%を含有するモノクローナル抗体と30分間インキュベーションした。洗浄(NaCl0.9%−hepes、400×g、10’)後に、細胞を0.3mlNaCl0.9%−hepes)中に懸濁させた。ポジティブ細胞の%をサイトメトリーにより検出した(EPICS MCL−XL、COULTER−COULTRONICS)。
【0152】
リンパ球増殖アッセイ
ウエル当りhu−PBMC50μl及びペプチド50μlを96コニックウエルプレート(96 conic wells plate)にプレート培養した。抗原を各々10μg/mlでプールしそして細胞は2×10細胞/ウエルであった。マイトゲンとして、2μg/mlのPHAを使用した。すべての希釈物は、ペニシリン/ストレプトマイシン、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、ヘペス及びヒトAB血清10%を補充されたRPMI−1640(GIBCO,BRL,France)で作成された。すべての試験は三重で(in triplicate)行われた。プレートを37℃及びCO9%で湿潤インキュベーター(humid incubator)中でインキュベーションした。ウエル当り1μCiの3H−チミジンを6日後に加えた。インキュベーションを12〜18時間続け、次いで細胞を細胞回収器(Tomtec, ECG Instruments)を使用して繊維ガラスシート上に回収し、そしてシンチレーションカウンター(Microbeta, ECG Instruments)で計数した。
【0153】
ヒト免疫グロブリン(hu−Ig)の検出
hu−Igの検出は、ELISA技術により行った。簡単に言えば、プレートを、4℃で一夜インキュベーションされた抗原溶液50μl/ウエルでコーティングした。次いで、プレートを、洗浄しそして脱脂乳を含有する溶液と室温で1時間インキュベーションした(300μl/ウエル)。3回の洗浄の後、マウスからの血漿をプレート培養し、そして37℃で2時間インキュベーションした。プレートを5回洗浄しそしてアルカリホスファターゼ(Immunotech, Marseille, France)にカップリングした全体のhu−Ig、抗γ及び抗μに対する抗ヒト抗体を加えそして37℃で1時間インキュベーションした。5回の洗浄後に、グリシン緩衝剤中のp−ニトロフェニルホスフェート(Sigma, St, Louis)1mg/ml、50μl/ウエルを加え、そして暗所で15〜30分インキュベーションした。最後に、光学濃度(OD)を405nmで読み取った。
【0154】
腹膜及び脾臓細胞単離
マウスを、頚部脱臼(cervical dislocationにより殺した。腹膜単核細胞は、腹腔内に冷NaCl0.9%−ヘペス10mlを注射して得られた。マウス腹部を集めた(massing)後に、細胞の懸濁液を吸引し、そして単核細胞を上記したとおりフィコール−ハイパック(Jack boy)勾配により単離した。単離された細胞を5 ℃で10分間225×gで遠心し、5%ウシ胎仔血清を有し、ペニシリン100U/ml及びストレプトマイシン100μg/mlを有するRPMI1640培地(RPM/FCS/P−S)(GIBCO BRL, Life Technologies)に再懸濁させた。次いで細胞を、可視血球計(visual hemocytometer)により計数し、そしてフローサイトメトリー染色のためにアリクォート化した。
【0155】
ガラス顕微鏡スライドのつや消しされた端部間に脾臓をプレスして穏やかなせん断圧力により組織を破壊することにより脾臓細胞懸濁液を調製し、そしてRPMI/FCS中にすすいだ。2匹のマウスからの脾臓細胞のプールを混合し、そして大きなデブリスを5℃で5分間沈降させた。次いで、上清細胞懸濁液を除去しそして5℃で10分間225×gで遠心した。細胞ペレットをRPMI/FCS1〜2ml中に再懸濁させ、そして血球計により計数した。
【0156】
実施例9:マウスモデルで得られた結果
リポペプチドに対する単核細胞のin vitro増殖応答
我々は、ヒト適合したマウスの末梢血から単離されたPBMCのin vitro応答を試験した。この試験は、分離後に得られた細胞の少ない数の故に、3つのペプチドの混合物で行った。
【0157】
図3は、刺激されていない細胞(ネガティブコントロール)、ヒト細胞の増殖のためのコントロールとしてPHAにより刺激された細胞(マウス細胞はこのマイトジェンに対して有意な方法で応答しないので)及びin vitro刺激の6日後にペプチドの混合物により刺激された細胞について増殖の応答を表す。
【0158】
我々は、相当な数のマウスにおけるペプチドの混合物に対してリンパ球増加を観察した。これらの実験で使用した小数の細胞により、応答は、そのように高められないが、ドナーの細胞及びネイティブマウスの応答より高い。応答は、免疫感作の19日後に最大でありそして32日目に減少した。
【0159】
循環しているヒト細胞の検出
マウスの末梢血におけるヒトCD2CD3細胞の数はFACSにより検出された(表1)。循環しているヒト細胞の少ない数は、リンパ節におけるそれらのシーケストレーション(sequestration)の結果でありうる。この現象は、引き続く免疫感作により増幅されることができ、そして第3免疫感作後に増殖応答の減少を説明することができる。
【0160】
【表5】


表1:hu−PBMCを移植されたNIH−IIIマウスにおけるCD2CD3細胞の百分率
注射の後の異なる日に、4匹のマウスの末梢血においてCD2CD3細胞が検出された。検出は、フィコエリトリンにカップリングした抗体抗CD2を使用して及びフルオロセインにカップリングした抗体抗CD3を使用してFACSにより実現された。
n.a:入手可能ではない
【0161】
ヒト免疫グロブリン(hu−Ig)の産生
移植されたすべてのマウスの血漿におけるhu−Igの強い産生はELISA技術を使用して検出された(図4)。この免疫グロブリン産生は、移植後の7日という早期に検出可能であった。
【0162】
特異的免疫グロブリンの産生
hu−Igの特異性を、マウスを免疫感作した各ペプチドに対して試験した。我々は、すべてのマウスにおいて、3つのリポペプチドに対して特異的な抗体を見出した。しかしながら、同じプロトコールの免疫感作を受けるグループにおいてすら、マウス間のリポペプチド応答の相当な変動性がある(図5)。
【0163】
検出されたhu−Igのクラス
我々は、ヒトに適合したマウスの血漿におけるヒト全Ig(human whole-Ig)の存在を求めた。リポペプチドに対するより高い応答を有するマウス(マウスN2及びN4)において、我々は、IgM(マウスN2)及び多分IgAの存在を検出した(マウスN5)(図5)。興味深いことに、分泌されたヒト免疫グロブリンのアイソタイププロフィルは、マウスヒト適合化のプロトコールの関数であると思われる。細胞が抗原により再刺激されている瞬間にある環境は、産生された抗体クラスに対する影響を与えうることが可能である。
【0164】
実際に、腹腔内に移植された細胞は、節に移行する。リンパ節において、細胞は、実質性細胞により及び局部的サイトカインにより刺激されて、主としてIgMから構成された体液性応答を生じる。対照的に、コラーゲンスポンジ上に移植された細胞は、腹膜にとどまり、腹膜は、粘膜に近い絹膜(seric membrane)である。次いで、コラーゲンスポンジの血管形成をもたらす炎症プロセス期間中放出された腹膜液及び/又はサイトカインは、細胞によるIgAの産生を誘導することができる。
【0165】
リンパ球で得られたこれらの結果は、我々のモデルにおける更に他のヒト細胞型の生存、複製及び特異的免疫機能のためのモデルの全体的価値を証明するのに貢献する。それらは、ヒト細胞のみが存在する新規器官を発生するためのコラーゲンマトリックスの影響力(interest)を確立するのにも貢献し、コラーゲンマトリックスからそれらは容易に回収されることができ、次いでin vitro条件下に研究されるか又はその代わりに他のマウスを移植するのに使用される。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】BXNマウスにおけるヒト肝細胞移植片に対するヒトβ−グロビンPCRすべてのPCRはBXNマウスにおけるヒト肝細胞移植片に関してなされた。 a)PCR−27−10−03 移植されたBXNからの肝臓生検(ライン4〜14)及びネガティブコントロールとして2匹のマウス(15、16)及びポジティブコントロールとしてヒト肝臓(Hu肝臓、ライン17〜19)に関するヒトβ−グロビンプライマーを使用するPCR。ネガティブコントロールとしてDNAなしのPCR(ライン20、HO) 同じ図において、ヒトゲノムDNAのガンマ(gamme)が存在する。b)PCR27−10−03 A1、A2、E1及びE2は、異なるBXNマウスにおけるヒト肝細胞移植片に相当する。移植されたBXNからの肝臓生検に関するヒトβ−グロビンプライマーを使用するPCR(ライン2、3,5及び6)。
【図2】SCID−NODマウスにおけるヒト肝細胞移植片に関するヒトアルブミンRT−PCR すべてのRT−PCRは、クロロドロネート及び抗PMNで処理されたSCID−NODにおけるヒト肝細胞移植片でなされた。左には、100bpDNAマーカーが現れている。a)RT−PCR22−10−03 移植されたSCID−NODマウス(ライン3〜5)及びネガティブコントロールとして移植されていないSCID−NODマウス(ライン6)からの肝臓生検並びにポジティブコントロールとしてヒト肝臓(Hu肝臓、ライン2)に関するヒトアルブミンプライマーを使用するRT−PCR。ネガティブコントロールとしてDNAなしのRT−PCR(ライン7、HO)。 b)RT−PCR27−10−03 移植されたSCID−NODマウスからの肝臓生検(ライン3〜6)及びポジティブコントロールとしてヒト肝臓(Hu肝臓、ライン2)に関するヒトアルブミンプライマーを使用するRT−PCR。ネガティブコントロールとしてDNAなしのRT−PCR(ライン7、HO)。 c)RT−PCR18−11−03 移植されたSCID−NODマウスからの肝臓生検(ライン3〜5)及びポジティブコントロールとしてヒト肝臓(Hu肝臓、ライン3)に関するヒトアルブミンプライマーを使用するRT−PCR。ネガティブコントロールとしてDNAなしのRT−PCR(ライン2、HO)。
【図3】NIHマウスにおけるリポペプチドに対するhu−PBMCのリンパ球増殖応答 コントロールは、刺激されなかった細胞からの応答を表す。 PHAは、PHAマイトジェンで刺激された細胞からの応答を表す:ヒト細胞の増殖のためのコントロール ペプチド(1、2及び3)は、ペプチドの混合物により刺戟された細胞からの応答を表す。
【図4】NIHマウスにおけるヒト免疫グロブリン(hu−Ig)検出 6匹の異なるマウス(1〜6)において6つの希釈物(1/8〜1/262144)について計算された光学濃度(OD)。
【図5】5つの異なるペプチド(NRII、SALSA1、LSA J、NANP50及びMSP3)について5匹の異なるマウスについての抗体レベル(全Ig、IgG及びIgM)レベルは、異なる日(6日目〜88日目)に計算されそして非処理マウス(N)について計算された。
【図6A】6A.ELISA試験によるヒトアルブミンの検出 a)ヒト肝細胞を移植されそして処理されたNOD/SCIDマウス(処理された)、b)ヒト肝細胞を移植されそして処理されなかったNOD/SCIDマウス(非処理)及びc)移植されておらずそして処理されていないNOD/SCIDマウス(ナイーブ)からの1/20希釈血清に関してELISA試験を行った。処理したマウスは、実施例に記載のとおりクロロドロネート及び抗PMNの両方を受け取った。
【図6B】外科的に除去された移植片で行われたRT−PCR又はPCRからの結果。ヒトアルブミン、α抗トリプシン及びシトクロムP450 4A3(Cyt P450)からの転写物についてRT−PCRを行い、そしてゲノムDNA(gDNA)上のヒトβ−グロビン遺伝子についてPCRを行った。nd:決定されなかった;O:移植片は見出されなかった。
【図7】NOD/SCIDマウスに関するヒト肝細胞移植工程の2週間後にELISA試験を行った。SN:いくつかのナイーブマウスから得られた平均O.D。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.生物適合性支持体に前もって結合させた異種有核細胞を、免疫低下した非ヒト哺乳動物宿主内に移植すること、
b.非ヒト哺乳動物宿主の非適応防御を制御すること、
c.維持、分化及び成長することができる定着した異種有核細胞を有する非ヒト哺乳動物モデルを回収すること、
を含む非ヒト哺乳動物モデルを作製する方法。
【請求項2】
生物適合性支持体に定着された該異種有核細胞を移植する工程と、非適応防御を制御する工程を逆転させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
異種有核細胞がコラーゲンゲルを有する支持体に結合している、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
支持体上に定着された異種有核細胞を含む支持体を、免疫低下した宿主の腹腔内に移植する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
異種有核細胞が、ドナーの器官もしくは部分的切除、腫瘍を取り囲む健康な組織、細胞培養物又は組織マトリックスに由来することができる細胞である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
異種有核細胞が非感染、非腫瘍細胞である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
非適応防御の制御が、FACS分析により測定された、マクロファージ/単球及び/又は多形核好中球(PMN)の減少あるいはマクロファージ、単球又はPMN細胞の少なくとも2つの減少を包含する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
非ヒト哺乳動物宿主への毒性化合物の制御された投与によりマクロファージを欠乏させる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
マクロファージ欠乏のための投与される毒性化合物がジクロロメチレンジホスホネート(ClMDP)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
非ヒト哺乳動物宿主内に注入されるリポソーム中に毒性化合物を含有させる、請求項8〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
異種有核細胞を移植した2日後に始めて4日間隔で、ClMDP含有リポソームを注入する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
PMNアンタゴニストを投与することにより、多形核好中球(PMN)を欠乏させる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
抗PMN抗体を投与することにより、PMNを欠乏させる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
異種有核細胞を移植した2日後に始めて3〜4日毎に、抗PMN抗体を注入する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
免疫低下したした非ヒト哺乳動物宿主が、げっ歯類、好ましくはマウスである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
免疫低下したマウス宿主が、
SCIDマウス(重い合併型免疫不全)、
SCID/Nodマウス(重い合併型免疫不全/非肥満糖尿病)、
BXN(NIHIII又はBeige Xid Nude)マウス、
RAGマウス、
RAG2マウス、
RAG−γCマウス、
からなる群より選ばれる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該異種有核細胞がヒト肝細胞である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
該異種有核細胞がヒトリンパ球である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
支持体に定着した異種有核細胞を含む支持体を移植された免疫低下した非ヒト哺乳動物宿主であり、そして非適応防御が該移植された支持体の異種有核細胞を維持、分化及び成長させることを可能とするように制御されている非ヒト哺乳動物モデル。
【請求項20】
該定着した異種有核細胞が、特定のタンパク質を数ヶ月間分泌する、請求項19に記載の非ヒト哺乳動物モデル。
【請求項21】
該定着した異種有核細胞が、それに対して制限された向性を有する病原体に対して受容性である、請求項19又は20に記載の非ヒト哺乳動物モデル。
【請求項22】
該定着した異種有核細胞がヒト肝細胞である、請求項19〜21のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物モデル。
【請求項23】
該定着したヒト肝細胞が、肝臓指向性病原体に対して受容性である、請求項22に記載の非ヒト哺乳動物モデル。
【請求項24】
該定着した異種有核細胞がヒトリンパ球である、請求項19〜21のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物モデル。
【請求項25】
抗原による免疫化後に、該リンパ球が、該抗原に特異的な、ヒトIgG抗体を産生しそしてリンパ球増殖応答を誘発する、請求項24に記載の非ヒト哺乳動物モデル。
【請求項26】
抗原が肝臓指向性病原体に由来するタンパク質である、請求項25に記載の非ヒト哺乳動物モデル。
【請求項27】
肝臓指向性病原体が、プラスモジウム(Plasmodium)株、HBV又はHCVである、請求項23又は26に記載の非ヒト哺乳動物モデル。
【請求項28】
非ヒト哺乳動物免疫低下宿主がマウスである、請求項19〜27のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物モデル。
【請求項29】
免疫低下したマウス宿主が、
SCIDマウス(重い合併型免疫不全)、
SCID/Nodマウス(重い合併型免疫不全/非肥満糖尿病)、
BXN(NIHIII又はBeige Xid Nude)マウス、
RAGマウス、
RAG2マウス、
RAG−γCマウス、
からなる群より選ばれる、請求項28に記載の非ヒト哺乳動物モデル。
【請求項30】
請求項19〜29のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物モデルから単離された定着された異種有核細胞の組を含む組織マトリックス。
【請求項31】
該定着された異種有核細胞が、懸濁液中の又は「固体調製物」中の個別化された細胞として現れる、請求項30に記載の組織マトリックス。
【請求項32】
該定着された異種有核細胞が細胞系として現れる、請求項30に記載の組織マトリックス。
【請求項33】
請求項19〜29のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物モデルにおいて病原体を研究するための方法であって、
a.該病原体を該非ヒト哺乳動物モデルの定着した異種有核細胞と接触させることを可能とする条件で、該非ヒト哺乳動物モデルに該病原体を感染させること、
b.該定着した細胞における病原体で発生した感染を観察すること、
を含む方法。
【請求項34】
光学顕微鏡法、病原体特異的抗体を使用する免疫蛍光抗体試験(IFAT)又は病原体特異的遺伝子のためのプライマーを使用するRT−PCRにより感染を観察する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
光学顕微鏡法により計算された病原体の数、IFATにより得られた染色及び定着したヒト有核細胞において検出された転写物を、同じ病原体により感染されているが細胞移植を欠いているコントロール非ヒト哺乳動物のそれらと比較する、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
定着された細胞がヒト肝細胞である、請求項33〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
マウスモデルに投与される病原体が肝臓指向性病原体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
肝臓指向性病原体が、Plasmodium株、HBV又はHCVから選ばれる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
プラスモジウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)を感染のために使用し、そして感染を、Plasmodium falciparum肝臓型(Plasmodium falciparum liver forms)の特異的な抗体、又はPlasmodium falciparum肝臓型遺伝子(Plasmodium falciparum liver form genes)に対して特異的なプライマーを使用するヌクレオチド配列増幅により観察する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
該特異的抗体が、LSA−1タンパク質を認識し、又は該プライマーがLSA−1遺伝子の配列の増幅を可能とする、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
非ヒト哺乳動物モデルがマウスである、請求項33〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
潜在的な治療的興味について化合物を試験するための請求項19〜29のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物モデルの使用。
【請求項43】
請求項19〜29のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物モデルにおける病原体による感染又はその有害な作用に対して活性な化合物をスクリーニングするための方法であって、
a.該病原体が非ヒト哺乳動物モデルの定着した異種有核細胞に浸透することを可能とする条件で、該非ヒト哺乳動物モデルを病原体で感染させること、
b.試験された化合物を、その活性を生じさせる条件で投与すること、
c.病原体で発生した感染又はその有害な結果に対する該化合物の効果を観察すること、
を含む方法。
【請求項44】
光学顕微鏡法、病原体特異的抗体を使用する免疫蛍光抗体試験(IFAT)又は病原体特異的遺伝子のためのプライマーを使用するRT−PCRにより感染を観察する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
光学顕微鏡法により計算された病原体の数、IFATにより得られた染色及び定着した細胞において検出された転写物を、同じ非ヒト哺乳動物モデルにおいて異なる時点でそれらと比較する、請求項43〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
マウスモデルに投与される病原体が肝臓指向性病原体である、請求項43〜45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
肝臓指向性病原体が、Plasmodium株、HBV又はHCVから選ばれる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
Plasmodium falciparumを感染のために使用し、そして感染を、Plasmodium falciparum肝臓型(Plasmodium falciparum liver forms)の特異的な抗体、又はPlasmodium falciparum肝臓型遺伝子(Plasmodium falciparum liver form genes)に対して特異的なプライマーを使用するヌクレオチド配列増幅により観察する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
該特異的抗体が、LSA−1タンパク質を認識し、又は該プライマーがLSA−1遺伝子の配列の増幅を可能とする、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
非ヒト哺乳動物モデルがマウスである、請求項43〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
請求項19〜29のいずれか1つに記載の非ヒト哺乳動物モデルにおいて生体異物化合物のin vivo代謝をスクリーニングするための方法であって、
a.試験されるべき生体異物化合物を定着した異種有核細胞と相互作用させる条件で、該非ヒト哺乳動物モデルに該試験されるべき生体異物化合物を投与すること、
b.該定着した細胞のレベルでのそのバイオトランスフォーメーションを観察すること、
を含む方法。
【請求項52】
化合物の投与の前及び後に定着した細胞により産生された代謝物の検出及び/又はレベルの測定により、化合物バイオトランスフォーメーションを評価する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
ヒト有核細胞に対する毒性効果を評価し、そして効果が現れる適切な化合物用量を計算する、請求項51〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
反応性代謝物と細胞巨大分子との潜在的相互作用を調べる、請求項51〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
異種有核細胞がヒト肝細胞である、請求項51〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
病原体により引き起こされる哺乳動物感染を処置するのに有用な新規な化合物を同定するのに有用な技術的プラットホームであって、請求項19〜29のいずれかに記載の少なくともキメラモデル及び該モデルの病原体で発生した感染に対する該化合物の効果を検出するか又は観察するための適切な手段を含むことを特徴とする、技術的プラットホーム。
【請求項57】
生体異物化合物のin vivo代謝をスクリーニングするのに有用な技術的プラットホームであって、請求項19〜29のいずれかに記載の少なくともキメラモデル及び該モデルにおいて移植されたヒト細胞による該化合物のバイオトランスフォーメーションを観察するための適切な手段を含むことを特徴とする技術的プラットホーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−521025(P2007−521025A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548289(P2006−548289)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000547
【国際公開番号】WO2005/067710
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(593218462)インスティチュート・パスツール (19)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
【Fターム(参考)】