説明

疎水性及び/または疎油性表面を有するデバイス、及びそのようなデバイスを作成する方法

本発明は、疎水性及び/または疎油性表面を有するデバイスに関し、該表面はカーペット状のナノファイバー(20)を含むものであって、これらのナノファイバー(20)は疎水性及び/または疎油性の連続的なフィルムで全て覆われ、これらのナノファイバー間の表面(22)が、この同じポリマー層で覆われる。
本発明は、そのようなデバイスを作成する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性表面、すなわち水をはじき、それを吸着せず、またはその内部に溶解されない表面と、及び/または“疎油性”表面、すなわち、同様に、脂肪性の物質をはじき、それらを吸着せず、またはその内部に溶解されない表面とを有するデバイス、及びそのようなデバイスを作成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超疎水性表面には多くの分野での用途が見出されており、そのような表面の作成に対する興味は増加している。
【0003】
そのような表面は、表面粗さ及び表面エネルギーを変えることによって得られてよい。
【0004】
実用的には、フォトリソグラフィーまたは機械加工法を用いることによって、幾何的なパターンがそのような表面上に刻まれてもよい。その後、疎水性の化合物をグラフト化するか、または堆積することによって、これらの表面を疎水性にすることが必要である。それらは、この表面上部に塗布されたゲルまたは樹脂中に、マイクロメーターレベルの粒子を分散することによって得られてもよい。この場合、前記粒子は本質的に疎水性である。
【0005】
そのような表面は、ナノファイバー、すなわち、ナノメートルサイズのファイバーをこれらの表面上に堆積して、その後これらのナノファイバー上の化学反応によって疎水性にされてもよい。
【0006】
Huanjun Li、Xianbao Wang、Yanlin Song、Yungi Liu、Qianshu Li、Lei Jiang、及びDaoben Zhuらの“Super−Amphiphobic aligned carbon nanotube films”(Angew. Chem. Int.、Ed. 2001、40、No.9、papes 1743−1746)には、基板の表面に垂直に配置され、緊密にパッキングされ、均一な長さ及び直径を有する、整列されたカーボンナノファイバー(NTC)からなるフィルムの成長、その後のこれらのナノファイバーの加水分解フルオロアルキルシランのメタノール溶液中への浸漬、が開示されている。
【非特許文献1】Angew. Chem. Int.、Ed. 2001、40、No.9、papes 1743−1746
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1は、化学反応によって疎水性とされたカーボンナノファイバー10から得られたデバイスの例を示している。この図で説明されているように、
各カーボンナノファイバー10は表面11上に配置され、後者に付着しておらず、
各カーボンナノファイバー10の上部部分12のみが疎水性とされ、
それは、各カーボンナノファイバーの全表面にわたって処理の連続性がなく、
カーボンナノファイバーの間の表面にわたって処理の連続性がない。
【0008】
そのような処理の非連続性は、主にカーボンナノファイバーを疎水性にするために使用される方法に原因がある。使用される液体試薬は、毛細管現象により各カーボンナノファイバー10の全表面に到達できない。さらに、この液体試薬は炭素及び下部の表面とは反応しない。
【0009】
水蒸気凝縮現象の存在下で、この水蒸気は、カーボンナノファイバー間の疎水性ではない表面13上に優先的に形成される。この表面13は、結果としてこの濃縮によって自動的に汚染され、不純物は濃縮によって輸送される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、ポリマーフィルムを堆積する他の方法を用いることによって、そのようなデバイスの疎水性を改良することである。
【0011】
本発明は、疎水性及び/または疎油性表面を有するデバイスに関し、該表面はカーペット状のナノファイバー、例えばカーボンナノファイバー、を含み、これらのカーボンナノファイバーは疎水性及び/または疎油性の連続的なポリマーフィルム、例えばポリシロキサン、またはフッ化炭素ポリマー(carbofluorinated polymer)で全て覆われることで特徴付けられ、これらのナノファイバー間の表面が、この同じポリマー層で覆われることによって特徴付けられる。
【0012】
本発明は、疎水性及び/または疎油性表面を有するデバイスを作成する方法にも関し、前記方法は前記デバイスの表面上にナノファイバーを堆積する段階を含み、乾式物理蒸着の技術によって、またはエレクトログラフティング(electro−grafting)技術によってこれらのナノファイバーを疎水性及び/または疎油性ポリマーで覆うための段階を連続して含むことで特徴付けられる。
【0013】
実施形態の例示において、本発明の方法は以下の段階、すなわち、
一部の表面上にカーボンナノファイバーを堆積する段階であって、連続的に、
・PVD(Physical Vapor Deposition)法によって触媒を蒸着し、前記触媒は数10−3mbarの圧力において真空中で蒸着され、触媒材料からなるターゲットがイオン化されたアルゴンの流れを照射され、その結果ターゲットから飛び出した原子が前記表面を覆い、
・結果として覆われた部分を、カーボンナノファイバーを堆積するために真空のCVD炉のチャンバーへ導入し、前記触媒は、まず第一に前記部分の温度上昇の効果の下で、ドロップ状に変形され、炭化水素前駆体がこのチャンバーに連続して投入され、前記触媒がドロップ状に変形される位置でカーボンナノファイバーの成長が実行され、
・PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)技術によって、またはエレクトログラフティング技術によって、ナノファイバーを疎水性ポリマーで覆う段階を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、疎水性のナノファイバーを作成することが可能であり、固体上の液体において非常に大きな接触角が得られ、それは例えば160°より大きい。
【0015】
本発明の用途分野は大変広い。例えば、これらは以下の製造において、
−分析用の電気化学電極、
−紙に印刷するためのインク射出システム、
−生物学的分析マイクロシステム中に液体を分散または保持するためのチャンネル、
−液体食物を注入するためのピストンの表面、
−熱交換器におけるテクスチャーを有するプレート
−疎水性表面を必要とする、その内部を流体が流れる生物学的センサーまたはマイクロキャビティ
【0016】
そのような技術は、自己洗浄及び/または耐凝結表面の要求に対しても適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のデバイスは、図2に例証されるように、疎水性及び/または疎油性表面を有するデバイスであり、該表面はカーペット状のナノファイバー20を含み、疎水性及び/または疎油性の連続的なポリマーフィルム21で全体を覆われる。これらのナノファイバーの間に存在する表面22は、上記と同じポリマー層で覆われている。
【0018】
ポリマーフィルムの連続性によって、ナノファイバーは表面23上に結合され、または強く付着されることが可能となる。
【0019】
前記被覆は、乾式物理蒸着技術またはエレクトログラフティング技術によってなされてよい。
【0020】
結果として、以下の特性が得られてよく、
−使用されるナノファイバーの例としては、カーボンナノファイバーがあり、
−使用されるポリマーフィルムの例としては、ポリシロキサンまたはフッ化炭素ポリマーであり、
−ナノファイバー20の直径は、約20〜30nmであり、
−ナノファイバーの長さは、約3μmであり、
−疎水性ポリマーフィルムの厚さは、約50nmである。
【0021】
疎水性及び/または疎油性表面を有するそのようなデバイスを作成する方法は、結果的に、前記デバイス表面上にナノファイバーを堆積する段階と、その後これらのナノファイバーを、乾式物理蒸着技術またはエレクトログラフティング技術の方法によって疎水性及び/または疎油性ポリマーで覆う段階とを含む。
【0022】
図3は、上記のように処理された疎水性表面を形成するカーペット状のカーボンナノファイバー20上に凝結した直径約1.5mmの水30の水滴の形状を示す。この水滴31は自重によりわずかに変形しており、結果的に変形していない水滴の実際の接触角θは175°より大きくなる。
【0023】
超疎水性層の実施形態の例示としては、以下の段階が実施される:
−表面の一部分にカーペット状のカーボンナノファイバーを堆積する段階であって、連続的に、
・PVD法による触媒の蒸着であって、この触媒は数10−3mbarの圧力において、真空で堆積され、触媒材料からなるターゲットはイオン化されたアルゴンの流れを照射され、結果としてターゲットから飛び出した原子が前記表面を覆い、
・この結果的に覆われた部分を、カーボンナノファイバーの堆積を実行するために、真空のCVD(Chemical Vapor Deposition)炉に導入し、限界真空度が数10−3mbarであり、前記触媒は前記部分の温度の上昇の効果の下で、まず第一にドロップ状に変形し、その後炭化水素の前駆体がチャンバー内に導入され、前記触媒がドロップ状に変形された場所でカーボンナノファイバーの成長が実行される、
ことを含む段階。
−PECVD技術、またはエレクトログラフティング技術によって、前記ナノファイバーを疎水性ポリマーで覆う段階。
【0024】
堆積段階の間、前記圧力は0.1から3mbarの間に位置する。ポリシロキサン前駆体(ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシラン、ジフェニルメチルシラン、...)またはフッ化炭素前駆体は前記チャンバーに導入され、キャリアガス(Ar、He、H)で希釈される。前記堆積したカーペット状のナノファイバーの厚さは、百ナノメーターのオーダーである。
【0025】
さらに、この疎水性材料は、本質的に電気絶縁体であるが、ナノチューブ上に薄膜として堆積されたときには、有意の電気伝導性を持つことを示すことには意味がある。
【0026】
疎水性ポリマーで覆われたナノチューブの電極としての使用が期待されてよい。特に、疎水性材料の堆積前のカーペット状のナノチューブは、お互いに孤立したブロックとして構造化され、これらブロックの各々が電極のマトリックスを改善するように、疎水性ポリマーで覆われてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】疎水性表面を有するように提供された従来技術のデバイスを示す。
【図2】本発明による、疎水性表面を有するデバイスを示す。
【図3】本発明のデバイスのナノファイバーの上部端によって形成された表面上に凝集した水滴の形状を示す。
【符号の説明】
【0028】
10 カーボンナノファイバー
13 表面
20 ナノファイバー
22 表面
31 水滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性及び/または疎油性表面を有するデバイスであって、前記デバイスはカーペット状のナノファイバー(20)を含み、これらのナノファイバー(20)は疎水性及び/または疎油性の連続的なポリマーフィルムで全て覆われることで特徴付けられ、これらのナノファイバー間の表面(22)が、この同じポリマー層で覆われることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記ナノファイバー(20)がカーボンナノファイバーである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ポリマーフィルムがポリシロキサン、またはフッ化炭素ポリマーである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
疎水性及び/または疎油性表面を有するデバイスを作成する方法であって、前記方法は前記デバイスの表面上にナノファイバーを堆積する段階を含み、乾式物理蒸着の技術によって、またはエレクトログラフティング技術によってこれらのナノファイバーを疎水性及び/または疎油性ポリマーで覆うための段階を連続して含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
一部の表面上にカーボンナノファイバーを堆積する段階であって、連続的に、
PVD法によって触媒を蒸着し、触媒材料からなるターゲットはイオン化されたアルゴンの流れを照射され、結果としてターゲットから飛び出した原子が前記表面を覆い、
この結果的に覆われた部分を、カーボンナノファイバーの堆積を実行するために、真空のCVD炉に導入し、前記触媒は前記部分の温度の上昇の効果の下で、まず第一にドロップ状に変形され、その後炭化水素前駆体がチャンバー内に導入され、前記触媒がドロップ状に変形された場所でカーボンナノファイバーの成長が実行される段階と、
PECVD技術またはエレクトログラフティング技術によって、ナノファイバーを疎水性ポリマーで覆う段階とが実行される、請求項4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−514877(P2007−514877A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544523(P2006−544523)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050707
【国際公開番号】WO2005/061129
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】