説明

疎水性活性成分と関連して毛髪に形状記憶効果を生じさせる方法

本発明は、回復可能なヘアリスタイリングの実現方法に関する。この目的のため、単独で又は他の物質と共に、毛髪に適用後及び本発明の毛髪処理の実行後に形状記憶効果を毛髪に与えうる少なくとも1種の活性成分又は活性成分混合物を含有する組成物を毛髪(5)に適用する。組成物は、少なくとも1種の第2活性成分、すなわち20℃にて水溶解度が5質量%以下の疎水性物質をさらに含む。毛髪を所定(永久的)形状に整えてから、適用した活性成分の化学的又は物理的変化を生じさせて前記永久的形状を固定する。このとき、形状記憶の望ましい変形又は望ましくない変形後、物理的刺激によって最初の形状記憶を回復させることができる。永久的ヘアスタイルに加え、第2(一時的)形状を作ることができる。本発明は、一時的形状に変換しうるか又は変形した、予めプログラムした永久的ヘアスタイルを回復させる方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、疎水性活性成分と、毛髪に形状記憶効果を与える活性成分とを併用して、特に形状記憶ポリマーの併用又は架橋して形状記憶ポリマーになりうるマクロマーを併用して、回復可能なヘアリスタイリングを生じさせる方法である。
【背景技術】
【0002】
毛髪の成形では、通常、一時的ヘアスタイリングと持続性の永久的ヘアスタイリングとが区別される。原則として、一時的なヘアスタイリングは、毛髪固定ポリマーの溶液又は分散系を主成分とする組成物の使用によって行われる。この種の製品は、ポリマーの添加によって毛髪により幾分かの保持力、ボリューム、弾性、跳躍性及び艶を与える。例えば、ゲルの形態では、これらスタイリング製品はヘアスタイルの成形と創作を容易にし;ヘアスプレーの形態では、それらは創作したヘアスタイルの状態を改善し;かつ、固定フォームの形態では、それらは毛髪のボリュームを増やす。好ましくないのは所望の効果が比較的短時間しか持続せず、梳毛、風、高い気湿又は水との接触のような外部からの影響の結果として急速に所望効果が再び失われることである。原則として、永久的ヘアスタイリングはパーマネントウェーブ処理によって達成される。この場合、毛髪内のジスルフィド結合を還元的に切断し、毛髪を新しい形状に変え、この新しい形状を酸化的プロセスで新しいジスルフィド結合を形成することによって固定する。好ましくないのは、毛髪を還元剤及び酸化剤で化学的に処理する必要がある結果として、毛髪構造へのダメージを回避できないことである。現在までに知られているヘアリスタイリング方法のさらなる欠点は、リスタイリングを比較的簡単な様式で可逆的にできない、すなわち、複雑な再創作なしで、あるヘアスタイルから別のヘアスタイルに変えられないことである。
【0003】
JP 04-41416から、40〜90℃のガラス転移温度Tgを有する特有の直線状ポリウレタンを含有する毛髪化粧品が知られている。この明細書で開示されている毛髪処理方法は、典型的な熱可塑性材料を用いる処理に相当する。組成物の適用後、Tg以上の温度でヘアスタイルを調製してからTg未満に冷却することで適所に固定する。その後にTg以上の温度に再加熱する間にポリマーが軟化して新しいヘアスタイルを調製することができる。回復させうる可逆的なヘアリスタイリングの方法は開示されていない。
【発明の開示】
【0004】
本発明の根底にある目的は、プログラムしたヘアスタイルの高い回復度を回復可能ヘアリスタイリングに与えることについて改良された効率と性能を有する組成物を提供することである。例えば、改良された効率又は性能は、毛髪に対する接着力の向上、効果の持続性の向上、プログラム化ヘアスタイルのより高い回復度などでありえる。さらなる目的は、毛髪構造を傷つける措置なしで永久的ヘアリスタイリングを可能にする方法を提供することである。さらなる目的は、簡単なやり方で複数回一時的なスタイリング形状の復帰を可能にし、かつ予め調製し、プログラムした永久的ヘアスタイルを高度の正確さで復帰させうる方法の提供である。さらなる目的は、簡単なやり方かつ高度な正確さで、外部からの影響によるヘアスタイルの変形を容易に逆転させて予め調製し、プログラムした永久的ヘアスタイルに戻す方法の提供である。
【0005】
この目的は、
−活性成分組成物を毛髪に適用し(ここで、前記活性成分組成物は、
(A)単独で又は他の物質と共に、毛髪に適用後及び後述する毛髪処理の実行後に形状記憶効果を毛髪に与えうる物質から選択され、又は該物質で形成される少なくとも1種の第1活性成分又は第1活性成分複合体を含有し、かつ
(B)疎水性物質から選択される少なくとも1種の第2活性成分を含有する);
−前記活性成分組成物の適用前、適用と同時又は適用後に、所定形状(永久的記憶形状)で毛髪を整え;かつ
−その後に、適用した活性成分の化学的又は物理的変化を生じさせて前記記憶形状を固定し;
前記記憶形状の望ましい又は望ましくない変形後、物理的刺激によって最初の記憶形状を本質的に回復させることができる、毛髪処理方法によって解決される。
本発明の文脈における疎水性物質は、20℃で5質量%以下、好ましくは2質量%以下の水溶解度を有する物質である。質量比(A):(B)は、例えば、1:100〜1,000:1、1:50〜200:1、1:10〜5:1、又は1:1〜2.5:1でよい。
【0006】
一実施態様は、少なくとも2種の物質を含有する活性成分組成物を用いる毛髪処理方法に関し、前記物質は個々には形状記憶特性がないか又は弱く、かつ前記物質は、本発明の方法で一緒に適用すると相乗的に高められた形状記憶効果を毛髪に与える。この関係では、前記少なくとも2種の物質は、上記第1活性成分と上記疎水性第2活性成分のいずれをも含み、或いは前記少なくとも2種の物質が上記活性成分複合体を形成することができる。
特定の実施態様は、
−毛髪に適用される組成物の第1活性成分が、架橋後形状記憶ポリマーを形成する架橋性マクロマーであり(ここで、前記マクロマーは、
a)化学結合を介して架橋しうる架橋性領域を含有し、かつ
b)化学的に架橋され得ない熱可塑性領域を含有する);
−適用前、適用と同時又は適用後に毛髪を所定(永久的)形状に整え;かつ
−その後に、マクロマーを化学的に架橋し、記憶形状ポリマーを形成させることによって前記形状を固定し、
前記形状記憶ポリマーが少なくとも1つの転移温度Ttransを有する、毛髪処理方法に関する。
本発明のさらなる目的は、第1のプログラムした回復可能なヘアスタイルに第2のヘアスタイルを刻印する方法である。この関係では、まず、上記方法でプログラムしたヘアスタイル(永久的形状)をTtrans以上の温度に加熱する。次に、所望の第2(一時的)形状を毛髪に生じさせ、Ttrans未満の温度に冷却することによって第2形状を固定する。
本発明のさらなる目的は、上記方法で予めプログラムした第1ヘアスタイル(永久的形状)の回復方法である。この目的のため、一時的形状のヘアスタイル、又は低温成形で変形したヘアスタイルをTtrans以上の温度に加熱する。
【0007】
本発明との関係における形状記憶ポリマーは、ポリマーにいずれの形状(永久的形状)も刻印できるという特性を有する原料を生成でき、変形後又は第2形状(一時的形状)の刻印後、単に再加熱又は別のエネルギー刺激の結果として、自発的に外力を加えずに形状が回復するポリマーである。同時に、変形と回復は複数回可能である。最初の永久的形状が達成される度合は、原則として、変形と回復から成る第1緩和サイクルでは、おそらく初めにまだ存在している欠陥スポット、テクスチャー等の排除のため、その後のサイクルにおけるよりいくらか低い。しかし、その後の緩和サイクルでは特に高い回復度が達成される。第1緩和サイクルでの回復度は、好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも40%であり、その後の緩和サイクルでは、好ましくは少なくとも40%、特に好ましくは少なくとも50%である。しかし、この度合は75%、90%以上にもなり得る。回復度は、処理したヘアカールの長さを測定することによって、又は公知の適切な応力-ひずみ実験を用いて、普通のカール保持力測定法に従って測定することができる。毛髪に及ぼす形状記憶効果は、変形後、自発的かつ如何なる外力も加えずに、単に加熱して、或いは他の何らかのエネルギー刺激によって、特有のヘアスタイル(永久的記憶形状)に実質的に、すなわち、第1緩和サイクル中は少なくとも30%、特に好ましくは少なくとも40%の程度に、またその後の緩和サイクル中は好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも50%又は75%の程度に回復しうる特性である。
【0008】
本発明との関係において、架橋して形状記憶ポリマーになりうるマクロマー又はプレポリマーは、刻印した永久的形状の固定が、個々のポリマー鎖又はオリゴマー鎖を連結する化学結合によって起こるポリマー又はオリゴマーである。この化学結合による架橋は、イオン結合又は共有結合によって与えられうる。架橋反応はいずれの適切な化学反応でもよく、例えば、塩形成反応、縮合反応、付加反応、置換反応又は光化学的に若しくはラジカルによって惹起される反応でよい。架橋反応は適切な触媒又は開始剤を用いて引き起こすことができ、或いは触媒を使用せずに引き起こすこともできる。適切なエネルギー源、例えば、電磁放射、超音波、熱又は機械エネルギーを用いて架橋反応を惹起することができる。必要な場合、2種以上の惹起方法を併用して架橋反応の効率又は速度を高めることができる。
本発明で好適な形状記憶ポリマーは、少なくとも1つの転移温度Ttransを有する。この転移温度は融点Tm又はガラス転移温度Tgであり得る。Ttransより上ではポリマーはTtrans未満より低い弾性率を有する。Ttrans未満とTtransより上における弾性率の比は、好ましくは少なくとも20である。転移温度Ttransは、好ましくは室温(20℃)より高く、特に少なくとも30℃、特に好ましくは少なくとも40℃であり、変形した形状から又は一時的形状から始まって永久的形状の自発的回復が起こる温度より上の温度である。
【0009】
本発明との関係において用語“ヘアスタイル”及び“毛髪の形状”は広く解釈するものとし、例えば、毛髪のウェーブの程度又は毛髪のストレートさの程度をも含む。本発明の文脈では、プログラムしたヘアスタイルは、架橋して永久的形状に固定された形状記憶ポリマーによる特有の形状を示す1群のヘアである。本発明の文脈では、プログラムしたヘアスタイルの回復は、プログラムしたヘアスタイルが、変形後、第1緩和サイクル後に起こる形状について、好ましくは少なくとも40%の程度まで、特に好ましくは少なくとも50%又は60%の程度まで回復することを意味する。回復度は、例えば、毛髪のカール又は房の長さを測定することによって決定することができる。
化学的に架橋して形状記憶ポリマーになりうる適切なマクロマー又はプレポリマーは、重合可能、又は化学的単結合によって架橋可能なマクロモノマーである。化学的に架橋したポリマーは、WO 99/42147の熱硬化性ポリマーとしても設計される。WO 99/42147に記載されているマクロマー及び熱硬化性ポリマーは本発明で使用するのに適し、この出願の構成要素である。転移温度Ttransを有する軟らかい熱可塑性セグメント(スイッチングセグメント)は、化学的結合、好ましくは共有結合によって架橋される。結果として、スイッチングセグメントとネットワークポイントが必要であり、ネットワークポイントが永久的形状を固定し、スイッチングセグメントが一時的形状を固定する。形状記憶効果は、温度がTtransより上およびTtrans未満になる時の弾性の変化に基づく。Ttrans未満とTtransより上の場合の弾性率の比は、好ましくは少なくとも20である。この比が大きければ大きいほど、形状記憶効果が高く発現される。形状記憶特性を有する4タイプの熱硬化性ポリマーに分類することができる:ネットワークポリマー、相互貫入ポリマー、半相互貫入ネットワークポリマー及び混合相互貫入ネットワークポリマー。ネットワークポリマーは、マクロモノマー、すなわち連結可能な反応性末端基、好ましくはエチレン性不飽和ラジカル反応性末端基又は光化学反応性末端基を有するオリゴマー又はポリマーの共有結合によって形成されうる。架橋反応は、例えば、光感受性若しくは温度感受性開始剤を用いて、又は酸化還元系若しくはその組合せを用いて開始させることができ、或いは開始剤を使用せずに、例えば、紫外線、熱又は機械エネルギーを用いて反応を開始させることができる。相互貫入ネットワークは、各成分がそれ自体に架橋されるが、他の成分とは架橋しない少なくとも2成分から形成される。混合相互貫入ネットワークは、少なくとも2成分から形成され、一方の成分は化学結合で架橋され、他方の成分は物理的相互作用によって架橋される。半相互貫入ネットワークは、少なくとも2成分から形成され、一方の成分が化学的に架橋可能であり、他方の成分は化学的に架橋可能でなく、両成分は物理的方法によっては分離できない。
【0010】
原則として、架橋した形状記憶ポリマーに適切な転移温度TtransとTtransより上及びTtrans未満で適切な弾性率を与える反応性末端基又は側基を有するすべての合成若しくは天然オリゴマー又はポリマーが好適である(前記末端基又は側基は製造時に既に反応性形態で存在するか又はその後の誘導体化の結果として反応性形態で存在し、前記オリゴマー又はポリマーは上記方法による架橋反応を可能にする)。適切なマクロマーは、例えば、下記式を有するマクロマーである。
A1-(X)n-A2 (I)
式中、A1及びA2は、反応性の化学的に架橋可能な基を表し、-(X)n-は二価の熱可塑性ポリマー又はオリゴマーセグメントを表す。A1及びA2は、好ましくはアクリレート基又はメタクリレート基である。セグメント(X)nは、好ましくはポリエステルセグメント、オリゴエステルセグメント、ポリアルキレングリコールセグメント、オリゴアルキレングリコールセグメント、ポリアルキレンカーボネートセグメント又はオリゴアルキレンカーボネートセグメント(アルキレン基は、好ましくはエチレン基又はプロピレン基である)を表す。形状記憶特性を有する熱硬化性ポリマーの形成に好適なマクロモノマーは、オリゴ-(ε-カプロラクトン)若しくはポリ(ε-カプロラクトン)、オリゴラクチド若しくはポリラクチド、オリゴアルキレングリコール若しくはポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール若しくはポリプロピレングリコール又はそれらのブロックコポリマーであり、ここで、上記ポリマー又はオリゴマーは、末端位又は側位で、ラジカル反応、例えばアクリレート又はメタクリレートによって重合しうる少なくとも2つのエチレン性不飽和基によって置換されている。
【0011】
ポリマーセグメントは、例えばタンパク質又は多糖類のような天然ポリマーから誘導されるセグメントでよい。ポリマーセグメントは、合成ポリマーブロックでもよい。好適な天然ポリマーセグメントは、ゼイン、改変ゼイン、カゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミン又はコラーゲンのようなタンパク質、及びアルギネート、セルロース、デキストラン、プルラン(pullulan)又はポリヒアルロン酸のような多糖、及びキチン、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)、特にポリ(β-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシオクタノエート)又はポリ(3-ヒドロキシ脂肪酸)である。アルキル化、ヒドロキシアルキル化、ヒドロキシル化又は酸化改変のような天然ポリマーセグメントの誘導体も好適である。合成的に改変された天然ポリマーは、例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、キトサン又はキトサン誘導体のようなセルロース誘導体であり、例えば、N-アルキル置換及び/又はO-アルキル置換又はヒドロキシアルキル置換によって得られる。例は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース又はセルロース硫酸ナトリウム塩である。以下、これらの材料を総称して“セルロース”と表す。
【0012】
好適な合成ポリマーブロックとして、ポリホスファゼン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリアミノ酸、ポリアンヒドリド、ポリカーボネート、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリアクリレート、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリオルトエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハロゲニド、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びそれらのコポリマーが挙げられる。好適なポリアクリレートの例は、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)又はポリ(オクタデシルアクリレート)である。好適な合成の、容易に生分解しうるポリマーセグメントは、ポリラクチド、ポリグリコリドのようなポリヒドロキシ酸及びそれらのコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート);ポリ(ヒドロキシ酪酸);ポリ(ヒドロキシ吉草酸);ポリ[ラクチド-コ-(ε-カプロラクトン)];ポリ[グリコリド-コ-(ε-カプロラクトン)];ポリカーボネート、ポリ(アミノ酸);ポリ(ヒドロキシアルカノエート);ポリアンヒドリド;ポリ(オルトエステル)並びにそれらの混合物及びコポリマーである。不完全な生分解性ポリマーセグメントの例は、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルフェノール並びにそれらの混合物及びコポリマーである。
【0013】
特に好ましい実施態様では、本組成物は、(A1)少なくとも2つの反応性架橋可能基で置換されているマクロマーと、(A2)1つだけの反応性基で置換されているマクロマーの混合物を含む。好適なさらなるマクロマーは、例えば、下記一般式のマクロマーである。
R-(X')n-A3 (II)
式中、Rは一価の有機残基を表し、A3は反応性の化学的に架橋しうる基を表し、-(X')n-は二価の熱可塑性ポリマーセグメント又はオリゴマーセグメントを表す。A3は、好ましくはアクリレート基又はメタクリレート基である。セグメント(X')nは、好ましくはポリアルキレングリコール、そのモノアルキルエーテル又はそのブロックコポリマー(アルキレン基は、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、かつアルキル基は、好ましくは1〜30個のC原子を有する)を表す。(A1)両末端がアクリル酸若しくはメタクリル酸でエステル化されたポリアルキレングリコール又はポリカプロラクトンと、(A2)一末端がアクリル酸若しくはメタクリル酸でエステル化されたポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルの混合物(アルキレン基は、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、かつアルキル基は、好ましくはC1〜C30アルキル基である)が特に好ましい。単独でも使用しうる成分(A1)としては、ポリ(ε-カプロラクトン)-ジメタクリレート、ポリ(DL-ラクチド)-ジメタクリレート、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)-ジメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジメタクリレート、PEG-ブロック-PPG-ブロック-PEG-ジメタクリレート、ポリ(エチレンアジペート)-ジメタクリレート、ヘキサメチレンカーボネートジメタクリレートが好ましい。成分(B)としては以下のものが好ましい:ポリ(エチレングリコール)モノアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)モノアクリレート及びそのモノアルキルエーテル。
【0014】
さらに具体的な実施態様は、毛髪の処理方法であって、
−毛髪に適用する組成物の第1活性成分が、少なくとも2つの転移温度Ttrans及びT'transを有し、かつ
a)第1転移温度T'transを有する少なくとも1つの硬セグメント(硬セグメントは物理的相互作用によって架橋しうる)を有し、前記第1転移温度は室温より高く、好ましくは室温より10℃高く、かつ
b)T'trans未満、好ましくはT'transより少なくとも10℃低い第2転移温度Ttransを有する少なくとも1つの軟セグメントを有する、
形状記憶ポリマーであり、
−適用前、適用と同時又は適用後に、毛髪を所定の(永久的)形状に整え、かつ
−その後に、この形状を前記形状記憶ポリマーの物理的架橋によって固定する、
方法に関する。
毛髪の成形は、少なくともT'transの温度への加熱下で適切に起こり、Ttrans未満の温度に冷却することによって毛髪の形状を固定する。通常、室温は周囲温度を指し、好ましくは少なくとも20℃であり、温かい気候では、好ましくは少なくとも25℃である。組成物の毛髪への適用は、種々の方法で行うことができ、例えば、直接噴霧して、或いはまず手又は適切な道具、例えば、くし、ブラシ等に組成物を与え、その後毛髪内又は毛髪上に分布させることによって間接的に適用することができる。組成物の粘稠度は、例えば、溶液、分散系、ローション、濃厚ローション、ゲル、フォーム又は半固形混合物の粘稠度でよく、或いはクリーム様又は蝋様でよい。
【0015】
本発明のさらなる目的は、プログラムした回復可能な第1ヘアスタイルの上に第2ヘアスタイルを刻印する方法である。この関係では、まず、上記方法でプログラムしたヘアスタイル(永久的形状)をT'transとTtransの間の温度に加熱する。次に、毛髪を所望の第2(一時的)形状にし、Ttrans未満の温度に冷却して第2形状を固定する。
本発明のさらなる目的は、上記方法でプログラムした第1ヘアスタイル(永久的形状)を回復する方法に関する。この目的のため、一次的形状のヘアスタイル又は低温成形で変形されたヘアスタイルをTtrans以上の温度に加熱する。永久的形状が再び自発的かつ自動的に形成される。ヘアスタイルの低温成形は、ヘアドライヤー又は同様の装置を用いてさらなる熱を供給しないで、周囲温度におけるヘアスタイルの変化を意味する。変形は、例えば、機械的、例えば、重力の影響下で単にカールを掛けることによって、或いは毛髪を櫛で梳き又はブラッシングして、或いは風又は湿度の結果として、或いは睡眠又は横になっている間の物理的影響の結果として起こりうる。
さらに、本発明は上記方法で予めプログラムした永久的ヘアスタイルを異なった新しい永久的ヘアスタイルに再プログラムする方法に関する。この目的のため、最初のヘアスタイルをT'trans以上の温度に加熱して毛髪を新しい形状にする。その後、温度をT'trans未満に冷却することによって新しい形状を固定する。
【0016】
本発明との関係では、物理的に架橋可能な形状記憶ポリマーは、架橋によって刻印された永久的形状の固定が物理的相互作用によって起こるポリマーである。ポリマー鎖の特定のセグメントがアッセンブルして結晶領域となるときに物理的相互作用による架橋が達成されうる。物理的相互作用は、高分子電解質セグメントの電荷移動錯体、水素結合、双極子相互作用又は疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用又はイオン相互作用であり得る。これら相互作用は、1つのポリマー鎖内(分子内)及び/又は異なるポリマー鎖間(分子間)で、異なるセグメント間で起こりうる。相互作用の形成は、例えば、冷却(特に、結晶化の場合)及び/又は乾燥、すなわち溶媒の除去によって惹起されうる。
【0017】
本発明の好適な物理的に架橋可能な形状記憶ポリマーは、少なくとも2つの転移温度TtransとT'transを有する。この2つの転移温度は、例えば融点Tm又はガラス転移温度Tgでよい。Ttransより上ではポリマーはTtrans未満の場合より低い弾性率を有する。Ttrans未満とTtransより上における弾性率の比は、好ましくは少なくとも10、特に好ましくは少なくとも20である。より低い転移温度Ttransは、好ましくは室温(20℃)より高く、特に少なくとも30℃、特に好ましくは少なくとも35℃又は少なくとも40℃であり、その温度を超えると、変形した形状又は一時的形状からの永久的形状の自発的回復が見られる温度である。Ttransは好ましくは通常想定される周囲温度よりかなり高いので、周囲温度では、有意な、故意でない熱的に誘導される一時的ヘアスタイルの成形が起こらない。Ttransの好適な範囲は、例えば25〜100℃、30〜75℃、35〜70℃又は40〜60℃である。高い方の転移温度T'transは、Ttransより高く、当該温度以上で永久的形状の刻印又は永久的形状の新しい永久的形状への再刻印が起こり、当該温度未満で永久的形状が固定される温度である。T'transは、好ましくはTtransよりずっと高いので、永久的ヘアスタイルを維持しながら、永久的ヘアスタイルの回復のため又は一時的ヘアスタイルの再形成のためにTtrans以上の温度にヘアスタイルを加熱する際に、永久的形状の有意な、非意図的な、熱的に引き起こされる変形が起こらない。好ましくはT'transは、Ttransより少なくとも10℃、特に好ましくは少なくとも20℃又は少なくとも30℃高い。T'transとTtransの差は、例えば10〜80℃、20〜70℃又は30〜60℃でよい。T'transの適切な範囲は、例えば40〜150℃、50〜100℃又は70〜95℃である。
【0018】
好適な物理的に架橋した形状記憶ポリマーは、少なくとも1つの硬セグメントと少なくとも1つの軟セグメントから成るポリマーである。硬セグメントは、物理的架橋を有し、かつ室温より高い、好ましくは20℃より10℃より多く高い転移温度T'transを有する。軟セグメントは、T'trans未満、好ましくはT'transより少なくとも10℃低い転移温度Ttransを有する。ポリマーセグメントは、好ましくはオリゴマー、特に例えば400〜30,000、好ましくは1,000〜20,000又は1,500〜15,000の分子量を有する直鎖分子である。これらは直鎖状のジ-ブロック、トリ-ブロック、テトラ-ブロック又はマルチ-ブロックコポリマーでよく;分枝した、樹状の、又はグラフト化したコポリマーでよい。好ましくは、これらポリマーはビス(2-ヒドロキシ-エチル)-ヒドロキノンを含有する直鎖状ポリエーテルウレタンでない。ポリマーの分子量は、例えば、30,000〜1,000,000、好ましくは50,000〜700,000又は70,000〜400,000でよい。好適な物理的に架橋した形状記憶ポリマーはWO 99/42147に記載されており、該明細書で熱可塑性ポリマーと呼ばれる。WO 99/42147に記載されている熱可塑性ポリマー、並びに該明細書で記載されている製造方法は本発明に好適であり、かつこの出願の構成要素である。これらは、好ましくは3〜80%、さらに好ましくは3〜60%の結晶化度を有する。Ttrans未満とTtransより上における弾性率の比は、好ましくは少なくとも10、特に好ましくは少なくとも20である。ポリマーセグメントは、例えばタンパク質又は多糖類のような天然ポリマーから誘導されるセグメントでよい。ポリマーセグメントは合成ポリマーブロックでもよい。好適な天然又は合成ポリマーセグメントは、架橋性マクロマーについて上で列挙したものと同一である。
【0019】
好適な形状記憶ポリマーは、特に、少なくとも1つの第1タイプのブロックと、第1タイプと異なる第2タイプのブロックを少なくとも1つ有するマルチブロックコポリマーであり、これらブロックは、前記マルチブロックコポリマーが2つの異なる転移温度を有するという効果を有する。好適なマルチブロックコポリマーは、特に、少なくとも2種の異なるマクロジオールと、少なくとも1種のジイソシアネートから生成されるようなコポリマーである。マクロジオールは、少なくとも2個の遊離のヒドロキシル基を有するオリゴマー又はポリマーである。オリゴマーは、通常、少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、特に4〜20、5〜15又は6〜10個のモノマーから成る。マクロジオールは、一般式HO-A-OH(Aは二価のオリゴマー基又はポリマー基、好ましくはポリエステル又はオリゴエステルを表す)を有しうる。ジイソシアネートは、一般式OCN-B-NCO(Bは二価の有機基、好ましくはアルキレン基又はアリーレン基を表し、さらなる置換基で置換されていてもよい)を有しうる。アルキレン基は、直鎖状、分枝状又は環状でよく、好ましくは1〜30個のC原子、さらに好ましくは2〜20個又は5〜15個のC原子を有する。
【0020】
特に好ましい形状記憶ポリマーは、WO 99/42147に記載されているコポリエステルウレタン、特に(a)α,ω-ジヒドロキシポリエステル、α,ω-ジヒドロキシオリゴエステル、α,ω-ジヒドロキシポリラクトン及びα,ω-ジヒドロキシオリゴラクトンから選択される2種の異なるマクロジオールと、(b)少なくとも1種のジイソシアネート、好ましくはトリメチルヘキサン-1,6-ジイソシアネートの反応生成物である。ポリ(パラ-ジオキサン)(PDX)、ポリ(ペンタデカラクトン)(PDL)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)由来のマクロジオールが特に好ましい。マクロジオールのモル質量は、好ましくは400〜30,000、好ましくは1,000〜20,000又は1,500〜15,000の範囲内である。結果のマルチブロックコポリマーのモル質量は、好ましくはMw=30,000〜1,000,00、特に好ましくは50,000〜700,000又は70,000〜400,000g/モル(GPCで決定しうる)である。多分散度は、好ましくは1.7〜2.0の範囲内である。
【0021】
〔疎水性活性成分〕
好適な疎水性活性成分は、例えば、油、脂肪、蝋、脂肪アルコール、脂肪酸、疎水性ポリマー、疎水性界面活性剤(tenside)、疎水性シリコーン化合物などである。好適な疎水性界面活性剤は、特にHLBレベル≦7を有するもの、例えば、エトキシル化度が好ましくは1、2又は3である、エトキシル化されたC8〜C30、好ましくはC10〜C20の脂肪アルコール、例えば、Ceteareth-2、Ceteareth-3、Ceteth-2、Ceteth-3、Laureth-1、Laureth-2、Laureth-3、Myreth-2、Myreth-3、Oleth-2、Oleth-3、Steareth-2、Steareth-3である。好適な油は、例えば、25℃未満の融点及び好ましくは250℃より高い、特に300℃より高い沸点を有するものである。植物油又は動物油、鉱油(白色鉱油)、油状脂肪酸エステル又は脂肪アルコールエステルが考えられる。さらに、炭化水素油、例えば、パラフィン油又はイソパラフィン油、スクアラン、脂肪酸とポリオール由来の油、特に、トリグリセリドも好適である。好適な植物油は、例えばヒマワリ油、ココナツ油、ヒマシ油、ラノリン油、ホホバ油、コーン油、大豆油である。好適な蝋は、例えば動物蝋、植物蝋、鉱物蝋及び合成蝋、微細結晶蝋、巨大結晶蝋、固形パラフィン、オゾケライト、山蝋、フィッシャー-トロプシュ蝋、ポリオレフィン蝋、例えば、ポリブチレン蝋、蜜蝋、羊毛蝋とその誘導体(羊毛蝋アルコールのような)、カンデリラ蝋、カルナウバ蝋、木蝋、硬化脂肪、脂肪酸エステル及び脂肪酸グリセリド(各場合40℃より高い凝固点を有する)、蝋アルコール、蝋酸及びポリエチレン蝋などである。蝋又は蝋様物質は、40℃より高い、好ましくは55℃より高い凝固点を有する。好適な疎水性軟蝋物質は、例えば、ワセリン又は半固形パラフィン、例えば、ペトロラタム(石油から抽出した炭化水素の半固形混合物)である。凝固点は、通常、約25℃〜40℃の範囲内である。
疎水性ポリマーは、好ましくは、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルから選択される少なくとも1種のモノマー(アルキル基は少なくとも6個のC原子、好ましくは8〜30個のC原子を有する)を含むポリマーから選択される。
【0022】
疎水性シリコーン化合物は、好ましくはシリコーン油、シリコーン蝋、ジメチルポリシロキサン及びジメチルシロキサン/アルキルメチルシロキサンコポリマー(アルキル基は少なくとも6個のC原子、好ましくは8〜30個のC原子を有する)から選択される。好適なシリコーン化合物は、例えばシリコーン蝋、ポリジメチルシロキサン(ジメチコーン)、フェニル化シリコーン、ポリフェニルメチルシロキサン、フェニルトリメチコーン、アルキル側鎖を有するメチルポリシロキサン(アルキル基は2〜30、好ましくは少なくとも8個のC原子、さらに好ましくは10〜20個のC原子を有する)(例えば、ステアリルジメチコーン)、α-ヒドロ-ω-ヒドロキシポリオキシジメチルシリレン(ジメチコノール(dimethiconol))、環状ジメチルポリシロキサン(シクロメチコーン)、トリメチル(オクタデシルオキシ)シラン(ステアロキシトリメチルシラン)、ジメチルシロキサン/グリコールコポリマー(ジメチコーンコポリオール)、末端ヒドロキシ基を有するジメチルシロキサン/アミノアルキルシロキサンコポリマー(アミノジメチコーン)、ラウリル側鎖と末端ポリオキシエチレン鎖及び/又はポリオキシプロピレン鎖を有するモノメチルポリシロキサン (ラウリルメチコーンコポリオール)、ジメチルシロキサン/グリコールコポリマーアセテート(ジメチコーンコポリオールアセテート)、末端トリメチルシリル基を有するジメチルシロキサン/アミノアルキルシロキサンコポリマー(トリメチルシリルアミノジメチコーン)である。好ましいシリコーンポリマーはジメチコーン、シクロメチコーン及びジメチコノールである。シリコーンポリマーの混合物、例えば、ジメチコーンとジメチコノールの混合物も好適である。括弧内に与えた上記名称は、化粧品の活性成分及び添加剤の命名で利用されるINCI(国際化粧品成分(International Cosmetic Ingredients))命名法に対応する。
【0023】
特に好ましい疎水性物質は、ダイマー酸及びその誘導体である。ダイマー酸は、二量体化した脂肪酸、特に単純な不飽和C8〜C30脂肪酸、例えば、オレイン酸又はトール油脂肪酸(TOFA)のダイマーである。誘導体は、例えば、ダイマージオール、ダイマージオールオリゴエーテル及びオリゴエステルジオールである。ダイマージオールは、オレイルアルコールの二量体化又はダイマー脂肪酸若しくはそのエステルの水素化によって生成しうるα,ω-C36ジオールの名称である。オリゴエステルジオールは、ダイマージオールから酸触媒脱水によって生成しうる。オリゴエステルジオールは、ジカルボン酸と、脂肪成分を有するジオールとから得られるジヒドロキシエステルである。ダイマージオールオリゴエーテル及びオリゴエステルジオールの分子量は、好ましくは1,000〜10,000、特に好ましくは約2,000〜5,000である。好ましいオリゴマーは、特にダイマー、トリマー及びテトラマーである。好ましい市販ジオールはダイマージオール(Sovermol(登録商標)908, Cognis、分子量は約550g/モル)及びダイマージオールオリゴエーテル(Sovermol(登録商標)909、分子量は約1,000g/モル及びSovermol(登録商標)910、分子量は約2,000g/mol))である。
疎水性成分は、低揮発性でも高揮発性物質でもよく、毛髪上に留まる低揮発性物質、特に好ましくは20より高い、好ましくは100より高い蒸発率を有する物質が好ましい。蒸発率は、被験液体の蒸発時間と、比較液体としてのジエチルエーテルの蒸発時間との比として定義される。好ましい実施態様では、本発明の毛髪処理組成物は、少なくとも1種の低揮発性の疎水性物質と、蒸発率が20未満である少なくとも1種の高揮発性の疎水性物質とを両方含有する。
【0024】
本発明の毛髪処理用組成物は、単独で又は添加物質と共に形状記憶効果の原因である第1活性成分を、適切な媒体中に、好ましくは0.01〜25質量%、特に好ましくは0.1〜15質量%の量で含む。疎水性活性成分の好ましい量は、0.01〜10質量%、特に好ましくは0.05〜5質量%である。組成物は、溶液、分散系、エマルジョン、懸濁液又はラテックスとして存在しうる。ここで、前記液体、ゲルタイプ、半固形又は固形媒体は、実質的に化粧品として許容でき、かつ生理的に無害である。
本発明の組成物は、一般的に適切な液剤又は分散剤中に溶液又は分散系の形態で存在する。水、有機溶媒及び水と少なくとも1種の有機溶媒との混合物が特に好ましい。好ましい有機溶媒は、例えば、アルコール及びアセトンである。好適な溶媒は、例えば、脂肪族の線状又は分枝C1〜C4アルコール又は水とこれらアルコールの1種との混合物である。しかし、他の有機溶媒も使用でき、特に、非分枝又は分枝炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン)、環状炭化水素(例えば、シクロペンタン及びシクロヘキサン)、有機直鎖状又は環状エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF))又は液状有機エステル(例えば、酢酸エチル)を挙げることができる。さらに、シリコーンを主成分とする溶媒、特に直鎖状又は環状ポリジメチルシロキサンを主成分とするシリコーン油(ジメチコーン又はシクロメチコーン)も適し、200℃未満の沸点を有する揮発性シリコーンが好ましい。さらなる溶媒はアセトン、テトラヒドロフラン、クロロホルム等である。溶媒は、好ましくは0.5〜99質量%の量、さらに好ましくは10〜97質量%の量、20〜95質量%の量又は40〜90質量%の量で存在する。
【0025】
本発明の組成物は、さらに0.01〜25質量%の少なくとも1種のヘアケア活性成分、毛髪固定活性成分及び/又は毛髪着色活性成分を含有しうる。毛髪固定活性成分は、特に、公知の通常の膜形成毛髪固定ポリマーである。膜形成及び毛髪固定ポリマーは、合成又は天然起源のポリマーでよく、また非イオン性、カチオン性、アニオン性又は両性の性質を有するポリマーでよい。このようなポリマー添加剤は、0.01〜25質量%、好ましくは0.1〜20質量%、特に好ましくは0.5〜15質量%の量で存在してよく、1種より多くのポリマーの混合物から成ることもあり、この添加剤に濃化効果のあるポリマーをさらに添加して毛髪固定特性についてさらに改変することができる。本発明の膜形成、毛髪固定ポリマーを水溶液、アルコール溶液又は水-アルコール溶液中で0.01〜5%の濃度で利用すると、ポリマー膜を毛髪上に与え、それによってこの方法で毛髪を固定することができる。
【0026】
本発明の毛髪処理組成物中の適切な合成の非イオン性膜形成、毛髪固定ポリマーとして、800〜20,000g/モルの分子量を有する、ビニルピロリドンのホモポリマー、N-ビニルホルムアミドのホモポリマー、ビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマー、ビニルピロリドン、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニルのターポリマー、ポリアクルアミド、ポリビニルアルコール又はポリエチレングリコールを利用することができる。好適な合成のアニオン性膜形成ポリマーは、クロトン酸/酢酸ビニルコポリマーと、アクリル酸、酢酸エチル及びN-t-ブチルアクリルアミドのターポリマーである。天然の膜形成ポリマー又はそれから化学変換によって得られるポリマーも本発明の毛髪処理組成物に使用でき、例えばチャイニーズバルサム樹脂、セルロース誘導体(分子量30,000〜50,000g/モルのヒドロキシプロピルセルロースのような)、又は中和又は非中和形態のセラックを使用しうる。本発明の毛髪処理組成物では両性ポリマーも使用できる。例えば、オクチルアクリルアミド、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、及びアクリル酸、メタクリル酸及びその単一エステルから成る群より選択される2種以上のモノマーのコポリマーが好適である。
増粘剤を添加して、本発明の毛髪処理組成物の粘稠度を高めることができる。この関連では、例えば、2,000,000〜6,000,000g/モルの分子量を有するアクリル酸のホモポリマーが適する。2,000,000〜6,000,000g/モルの分子量を有する、アクリル酸とアクリルアミドのコポリマー(ナトリウム塩)、スクレロチウム(sclerotium)ゴム及びアクリル酸とメタクリル酸のコポリマーも好適である。
本発明の化粧剤組成物は、種々の適用形態で使用することができ、例えば、ローション、スプレーローション、クリーム、ゲル、フォームゲル、エアロゾルスプレー、非エアロゾルスプレー、エアロゾルフォーム、非エアロゾルフォームとして、o/wエマルジョン若しくはw/oエマルジョンとして、又はマイクロエマルジョンとして又はヘアワックスとして使用できる。
本発明の毛髪処理組成物をエアロゾルスプレーの形態で提供する場合、本組成物は、さらに15〜85質量%、好ましくは25〜75質量%の噴霧剤を含有し、かつ該組成物をスプレーヘッドを有する加圧容器に詰める。噴霧剤としては、低級アルカン(例えば、n-ブタン、イソブテン及びプロパン並びにその混合物)、及びジメチルエーテル又はフルオロ炭化水素(例えば、F 152a(1,1-ジフルオロエタン)又はF 134(テトラフルオロエタン)、及びN2、N2O及びCO2のような問題の圧力で気体状態で存在する噴霧剤、並びに上述した噴霧剤の混合物が好適である。
【0027】
本発明の毛髪処理組成物を噴霧可能な非エアロゾルヘアスプレーの形態で提供する場合、適切な機械的に操作される噴霧装置を用いて本組成物を噴霧する。機械タイプの噴霧装置は、噴霧剤を使用せずに組成物を噴霧できる装置である。適切な機械式噴霧装置は、例えば、スプレーバルブを備えたスプレーポンプ又は弾性容器であり、その中に加圧下で本発明の化粧剤組成物を詰めると弾性容器が膨張し、バルブを開けると弾性容器の収縮のため化粧剤組成物が連続的に放出される。
本発明の毛髪処理組成物をヘアフォーム(ムース)の形態で提供する場合、本組成物は、この目的で技術的に知られている少なくとも1種の通常の発泡物質を含有する。噴霧ガス又は化学的噴霧剤の助けによって、又は助けなしで本組成物を発泡させ、フォームとして毛髪中に挿入し、洗い流さずに毛髪中に残す。本発明の製品は、追加要素として組成物を泡立てる道具を有する。泡立てるための道具として、噴霧剤を使用して、又は使用せずに液体を泡立てることができる道具が考えられる。例えば、市販のフォームポンプ又はエアロゾル発泡ヘッドを適切な機械式発泡具として使用することができる。
本発明の毛髪処理組成物をヘアゲルの形態で提供する場合、本組成物は、さらに少なくとも1種の好ましくは0.05〜10、さらに好ましくは0.1〜2質量%の量のゲル形成物質を含有する。ゲルの粘度は、25℃にて好ましくは100〜50,000mm2/秒、特に好ましくは1,000〜15,000mm2/秒の量(50秒-1のせん断速度でBohlin Rheometer CS、測定体C25を用いて動粘度として測定)である。
【0028】
本発明の毛髪処理組成物をヘアワックスの形態で提供する場合、本組成物は、水-不溶性の脂肪物質若しくは蝋様物質、又は組成物に蝋様粘稠度を与える量の物質を、好ましくは0.5〜30質量%の量で含有する。好適な水-不溶性物質は、例えば、7未満のHLB-値を有する乳化剤、シリコーン油、シリコーン蝋、蝋原料(例えば、蝋アルコール、蝋酸、蝋エステル、及び特に蜜蝋、カルナウバ蝋のような天然蝋など)、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル又は800〜20,000、好ましくは2,000〜10,000g/モルの分子量を有する高分子ポリエチレングリコールである。
本発明の毛髪処理組成物をヘアローションの形態で提供する場合、本組成物は、実質的に非粘性又は低粘性の溶液、分散系又はエマルジョンとして存在し、それぞれ流動でき、少なくとも10質量%、好ましくは20〜95質量%の化粧剤適合性アルコールを含む。アルコールとして、特に、例えばエタノール及びイソプロパノールのような化粧用目的で通常用いられる低級のC1〜C4アルコールを使用できる。
本発明の毛髪処理組成物をヘアクリームの形態で提供する場合、好ましくはエマルジョンの形態で提供し、さらに0.1〜10質量%の量で粘性供給成分を含有し、或いは適宜の乳化剤、脂肪酸、脂肪アルコール、蝋などの助けでミセル形成による常法で、必要な粘度及びクリーム状粘稠度を築き上げる。
【0029】
好ましい実施態様では、本発明の組成物は、回復可能なヘアスタイルの刻印と毛髪着色の両方を同時に促進することができる。着色毛髪処理組成物として、例えば、着色固定剤、着色クリーム、着色フォーム等として本組成物を調製する。したがって前記組成物は、少なくとも1種の着色物質を含む。この着色物質成分は、有機着色剤、特にいわゆる直接染料でよく、或いは無機顔料でもよい。本発明の物質では、着色物質の総量は約0.01〜7質量%、好ましくは約0.2〜4質量%に達する。本発明の組成物で使用しうる適切な直接染料は、例えば、トリフェニルメタン着色剤、芳香族ニトロ着色剤、アゾ着色剤、キノン着色剤又はカチオン性若しくはアニオン性着色剤である。
適切な毛髪着色顔料は、組成物の媒体中の事実上不溶性の着色剤であり、これら顔料は有機又は無機特質のものでよい。無機-有機混合相顔料も可能である。顔料は、好ましくはナノ顔料でない。好ましい粒径は1〜200μm、特に3〜150μm、特に好ましくは10〜100μmである。無機顔料が好ましい。
【0030】
本発明の毛髪処理組成物は、好ましくはさらに0.01〜10、特に好ましくは0.05〜5質量%の量で少なくとも1種のヘアケア物質を含有する。好ましいヘアケア物質はカチオン-活性物質である。カチオン-活性物質は、分子内に少なくとも1種の永久的カチオン性基、例えば、イミニウム基又はアンモニウム基、特に四級アンモニウム基を備えることを特徴とし、或いはカチオン性を与えうる少なくとも1種の基、例えば、一級、二級又は三級アミン基(プロトン化によってカチオン性を与えることができ、四級アンモニウム基が好ましい)を備えることを特徴とする。カチオン-活性剤は、カチオン性基又はカチオン性を与えうる基による人毛への直接染色性を有する物質である、好適なカチオン-活性物質は、例えば、カチオン性基又はカチオン性を与えうる基を有する界面活性剤(tenside)、特にカチオン性界面活性剤、ベタイン性又は両性界面活性剤;カチオン性基又はカチオン性を与えうる基を有するポリマー、特にカチオン性、ベタイン性又は両性ポリマー;カチオン性基又はカチオン性を与えうる基を有するシリコーン化合物、特にジ四級シロキサン若しくはポリ四級シロキサン又はアモジメチコーン(amodimethicone);カチオン誘導体化タンパク質;カチオン誘導体化タンパク質加水分解物又はベタインである。
【0031】
通常添加する公知の化粧品添加剤、例えば、ポリエチレングリコールのような非固定性の非イオン性ポリマー、非固定性のアニオン性ポリマー及び天然ポリマー、並びにその混合物を好ましくは0.01〜50質量%の量で本発明の毛髪処理組成物に添加しうる。0.01〜5質量%の量で香油及び芳香物質、0.01〜5質量%の量でエチレングリコールジステアレートのような乳白剤、0.1〜30質量%の量で湿潤剤又は乳化剤、特にアニオン性、若しくは非イオン性界面活性剤、例えば脂肪アルコールスルフェート、エトキシル化脂肪アルコール、脂肪酸アルカノールアミド、例えばヒマシ油由来の含水脂肪酸のエステル、並びに0.01〜10質量%の量でモイスチャライザー、染料受容性改良剤、光保護剤、抗酸化剤及び保存剤を添加することもできる。
【0032】
図1は、回復可能な永久的ヘアスタイルを生成する1つの可能な方法を概略的に示す。毛髪の房をヘアカーラー上に巻き付け、架橋性マクロマーを含有する本発明の溶液を噴霧する。適切なエネルギー源、例えば、UVランプで照射して所望の永久的形状を固定する。その後カーラーをはずす。
図2は、永久的ヘアスタイルの変形と、一時的形状から開始する永久的形状の回復を示す。永久的形状のヘアカールは長さl0を有する。変形した形状のカールは長さl1を有する。回復した形状のカールは長さl2を有する。以下のように回復度を計算できる:回復率=(l1−l2)/(l1−l0)。
【0033】
組成物の形状記憶特性の評価の尺度として、永久的ヘアスタイルの一時的形状への形成能(成形係数)、及び一時的形状から開始する永久的形状の回復(回復係数、回復度)を考察する記憶係数を利用できる。カーリー形状が永久的形状として刻印され、その後にその上に第2のストレート形状が一時的形状として刻印されているストレートヘアで開始する場合、以下の基準に従って成形係数を決定できる。
【0034】

【0035】
以下の基準に従って回復係数を決定できる。

【0036】
成形係数f、最大成形係数F=4、回復係数r、最大回復係数R=6を用いて下記の式で記憶係数Mを計算できる。
M=(f/F)*(r/R)*100
理想的には、記憶係数は25以上、好ましくは25〜33.3、特に好ましくは37〜100であるべきだ。
以下の実施例は、本発明の主題をさらに説明することを意図している。
【0037】
〔実施例〕
〔実施例1〜12〕
表1の組成物を調製した(量はグラムで示す)。





表1

1) 末端がメタクリル酸でエステル化されている分子量8,000のポリエチレングリコール
2) α,ω-c36-ジオール(Cognis)
3) ダイマージオール2)のオリゴマー (Cognis)
4) ジカルボン酸と脂肪基礎のあるジオールの合成オリゴエステルジオール
5) 2)と同様で、末端がメタクリル酸でエステル化されている
6) 3)と同様で、末端がメタクリル酸でエステル化されている
7) 4)と同様で、末端がメタクリル酸でエステル化されている
【0038】

8) α,ω-C36-ジカルボン酸(Cognis)
9) Aldrich社の製品
10) マレイン酸キャストリル(Castoryl maleate)、ISP社の製品
11) ステアリルジメチコーン、Clariant社の製品
【0039】
上記方法に従って記憶係数Mを決定した。
永久的形状の調製のため、水で湿らせた長さ20cmの毛髪一房をカーラーに巻き付け、その上にポリマー溶液を塗布した(ポリマー20〜30mg/g(ヘア))。処理した毛髪一房に紫外線を与えて30分間70℃で固定した。室温(約25℃)に冷ました後、ヘアカーラーをはずした。カールした一房の毛髪(刻印された永久的形状)は、約4.5cmの長さだった。一時的形状(例えば、ストレート)を生成するため、カールした一房の毛髪を約55℃に加熱し、最初の全長(20cm)に伸ばし、再び室温に冷ました。ストレートヘアを55℃に加熱することによって永久的形状を回復させうる。この温度で、前記一房の毛髪は自発的に永久的(カーリー)形状に収縮した。永久的形状(例えば、ストレート)を再び生成するため、カールした一房の毛髪を再び55℃に加熱し、その全長(20cm)に伸ばして室温に冷ました。
【0040】
〔架橋性マクロマーによる実施例〕
以下に列挙する架橋して形状記憶ポリマーになりうるマクロマーを用いて、以下の毛髪処理組成物を調製した。マクロマーの製造は、WO 99/72147に記載されているとおりに行った。
Ml PEG (4k)-DMA、2回メタクリル酸でエステル化されている分子量が約4,000のポリエチレングリコール
M2 PEG (8k)-DMA、2回メタクリル酸でエステル化されている分子量が約8,000のポリエチレングリコール
M3 PEG (l0k)-DMA、2回メタクリル酸でエステル化されている分子量が約10,000のポリエチレングリコール
M4 PLG (7k)-DMA、分子量が約7,000のポリ(L-ラクチド-コ-グリコシド)-ジメタクリレート
M5 PCl (10k)-DMA、分子量が約10,000のポリ(ε-カプロラクトン)-ジメタクリレート
以下の毛髪処理組成物の適用は、実施例1で述べたとおりに行い、同様の結果だった。
【0041】
実施例13:非エアロゾルスプレーローション
5.0g マクロマーMl
0.5g PVP/VAコポリマー
0.5g Luviquat(登録商標) FC 550 3)
0.5g テトラエトキシラウリルエーテル
1g ジメチルポリシロキサン(Wacker-Belsil(登録商標) DM 500)
0.5g ポリソルベート(Polysorbate) 40
加えて100g エタノール
3) メチルビニルイミダゾリウムクロライド/ビニルピロリドンコポリマー(ポリ四級-16)の40%水溶液
市販の噴霧ポンプでローションを乾燥ヘア又は湿ったヘアに直接噴霧する。
【0042】
実施例14:記憶効果のある液状固定剤
6.0g マクロマーM2
5.0g シクロ-オクタメチルテトラシロキサン
5.0g ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー
2.0g ジヒドロキシ-ポリジメチルシロキサン、12%(シクロジメチルシロキサン中)(Abil(登録商標) OSW 12、Goldschmidt社/独国)
加えて100g ペンタン
【0043】
実施例15:記憶効果のあるヘアワックス
7g マクロマーM3
6g エタノール
4g セチルアルコール
4g ペトロラタム
3g セレシン
3g カルナウバ蝋
2g Ceteareth-25
2g ポリビニルピロリドン
1.5g 鉱油
1.5g マレイン酸ジカプリル
0.5g カルボマー
0.4g アミノメチルプロパノール
加えて100g 水
【0044】
実施例16:記憶効果のあるヘア流体
3g マクロマーM4
0.6g ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド
0.5g ヒマワリ油
0.5g ジメチルポリシロキサン(Wacker-Belsil(登録商標) DM 1000)
0.5g Abil Quat(登録商標) 3272(Quaternium-80)
0.5g ガーヒドロキシプロピルトリモニウムクロライド(Guar hydroxypropyltrimonium chloride)
0.5g パンテノール
0.4g セテアリール(Cetearyl)アルコール
0.2g 蜜蝋
00.1g セチルアルコール
0.1g PEG-20ステアレート
適量 保存剤、芳香物質
加えて100g 水
【0045】
実施例17:記憶効果のあるエアロゾルフォーム
4g マクロマーM5
1g Dow Corning DC 1401 Fluid
(ジメチコノール(dimethiconol)/シクロメチコーン(cyclomethicone) 13/87)
1g グルコース
0.6g ポリビニルピロリドン
0.8g Aldi Quat(登録商標) 3272(Quaternium-80)
0.2g セチルトリメチルアンモニウムクロライド
0.2g Polyquaternium-11
0.2g シリカ
0.1g Laureth-2
加えて100g 水
組成物をプロパン/ブタン(5質量%)と共に、圧力検査済みのフォームヘッドを有するエアロゾルパッケージに詰める。
実施例14〜17では、使用する特定マクロマーは、他のマクロマーM1〜M5の1つと全体的又は部分的に置き換えることができ、同様の結果が得られる。
【0046】
〔熱可塑性形状記憶ポリマーによる実施例〕
以下の化粧剤組成物で使用する各形状記憶ポリマーは、WO 99/42147の実施例1で使用されるのと同様のやり方で2種の異なるマクロジオールとトリメチルヘキサン-1,6-ジイソシアネートから調製する。







【0047】



マクロジオールの略号は以下の意味を有する:
PDX:ポリ(パラ-ジオキサン)
PLGA:ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)
PCL:ポリ(ε-カプロラクトン)
PDL:ポリ(ペンタデカラクトン)
マクロジオールと共に提示した数は、マクロジオールの概算分子量を示す(±100)。
【0048】
以下の毛髪処理組成物は以下のように使用する。
毛髪の長さによって決まる十分な量の組成物を毛髪に適用する。例えば、毛髪を巻き付けるカーラーを用いて、或いは毛髪を伸ばして、毛髪を所望形状にした後、乾燥する。その後に毛髪を約70℃に加熱する。室温(約25℃)に冷ました後、カーラーをはずす。第2ヘアスタイル(一時的形状)を刻印するため、第1ヘアスタイルを約55℃に加熱し、第2ヘアスタイルにして室温に冷ます。約55℃に再加熱すると、第1ヘアスタイルが自発的に回復する。
【0049】
実施例18:形状記憶効果のあるヘアクリーム
5g ポリマーP1
0.5g シクロオクタメチルテトラシロキサン
2g アクリレート/アルキルアクリレートコポリマー(Pemulen(登録商標)T1)
1g Abil(登録商標)OSW 13(ジメチコノール, シクロジメチコーン中13%)
5g 水
加えて100g イソプロパノール
【0050】
実施例19:記憶効果のあるエアロゾルフォーム
6g ポリマーP2
1g Dow Corning DC 1401 Fluid
(ジメチコノール/シクロジメチコーン 13/87)
0.2g ポリビニルピロリドン
0.8g Abil Quat(登録商標) 3272(Quaternium-80)
0.3g セチルトリメチルアンモニウムクロライド
0.2g Polyquaternium-11
0.2g パンテノール
0.1g ホホバ油、オレンジ皮蝋、リンゴ皮蝋
加えて100g 水
組成物をプロパン/ブタン(5質量%)と共に、フォームヘッドを有する圧力検査済みエアロゾルパッケージに詰める。
【0051】
実施例20:記憶効果のある液状着色固定剤
4.0g ポリマーP7
2.0g シクロオクタメチルテトラシロキサン
0.5g ジメチコノール(シリコーン流体 F212, Wacker社/独国)
0.07g 1-アミノ-4-(2,3-ジヒドロキシプロピル)アミノ-5-クロロ-2-ニトロベンゾール
0.05g Basic Brown 17(C.I. 12251)
0.0023g Basic Violet 14(C.I. 42595)
0.01g Basic Blue 7(C.I. 42595)
20.0g ペンタン
加えて100g イソプロパノール
【0052】
実施例21:記憶効果のあるヘアスプレー
5.0g ポリマーP8
0.5g シクロオクタメチルテトラシロキサン
0.5g ジメチコノール(シリコーン流体 F212, Wacker社/独国)
5.0g ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー
35g プロパン/ブタン
加えて100g ペンタン
【0053】
実施例22:記憶効果のあるヘアワックス
8g ポリマーP3
5g ステアリン酸グリセリル
4g コカミド(Cocamide) MEA
3g セレシン
3g ミリスチン酸イソプロピル
3g Triceteareth-4 ホスフェート
2g Laureth-4
1g Ceteareth-25
0.5g セチルトリメチルアンモニウムクロライド
0.5g ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー
加えて100g 水
実施例18〜22では、使用する特定の形状記憶ポリマーを他のポリマーP1〜P8の1つと置き換えることができ、同様の結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】回復可能な永久的ヘアスタイルを生成する1つの可能な方法を概略的に示す。
【図2】永久的ヘアスタイルの変形と、一時的形状から開始する永久的形状の回復を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−毛髪に下記の(A)および(B)を少なくとも含む活性成分組成物を毛髪に適用すること
(A)単独又は他の物質と組み合わせて毛髪に適用し、以下に記載の毛髪処理を行った後に形状記憶効果を生じさせることができる物質から選ばれる、または前記物質から形成される、第一の活性成分または第一の活性成分複合体、
(B)水溶解度が20℃にて5%以下である疎水性物質から選ばれる第2の活性成分、
−毛髪を前記活性成分組成物を適用する前、同時、または適用後に毛髪を所定の形状(永久的記憶形状)に整えること、および
−続いて、適用した前記活性成分の化学的または物理的改変を誘導することによって前記記憶形状を固定すること、を含む毛髪の処理方法であって、記憶形状の意図したまたは意図しない変形後に元の記憶形状が物理的刺激手段によって本質的に回復し得る、前記方法。
【請求項2】
活性成分組成物中に少なくとも2種の物質を含有し、前記物質は個々には形状記憶特性がなく又は弱い形状記憶特性しか有せず、かつ前記物質は、請求項1記載の方法で一緒に適用した場合、相乗的に増強された形状記憶効果を毛髪に与えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
−前記第1活性成分が、架橋後に形状記憶ポリマーを形成する架橋性マクロマーであり(ここで、前記マクロマーは、
a)化学結合を介して架橋しうる架橋性領域を含み、かつ
b)化学的に架橋しえない熱可塑性領域を含む);
−前記記憶形状ポリマーを形成しながら、前記マクロマーを化学的に架橋することによって前記記憶形状を固定し、
かつ
前記記憶形状ポリマーが少なくとも1つの転移温度Ttransを有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
−請求項3記載の方法でプログラムしたヘアスタイル(永久的形状)をTtrans以上の温度に加熱し、
−該毛髪を第2(一時的)形状にし、かつ
−Ttrans未満の温度に冷却することによって前記第2形状を固定する、
毛髪処理方法。
【請求項5】
架橋性マクロマーが、下記一般式を有する化合物から選択されることを特徴とする請求項3又は4記載の方法。
A1-(X)n-A2
(式中、A1及びA2は反応性の化学的に架橋しうる基を表し、-(X)n-は二価の熱可塑性ポリマー又はオリゴマーセグメントを表す。)
【請求項6】
架橋性マクロマーが、少なくとも2つのアクリレート基又はメタクリレート基で置換されているポリエステル、オリゴエステル、ポリアルキレングリコール、オリゴアルキレングリコール、ポリアルキレンカーボネート及びオリゴアルキレンカーボネートから選択されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
架橋性マクロマーが、ポリ(ε-カプロラクトン)-ジメタクリレート、ポリ(DL-ラクチド)-ジメタクリレート、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)-ジメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)-ジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)-ジメタクリレート、PEG-ブロック-PPG-ブロック-PEG-ジメタクリレート、ポリ(エチレンアジペート)-ジメタクリレート、ヘキサメチレンカーボネートジメタクリレートから選択されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
組成物が、1つだけ化学的反応性の末端基又は側基のあるマクロマーをさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
−前記第1活性成分が、
a)物理的相互作用によって架橋しうる少なくとも1つの硬セグメントを有し、前記硬セグメントは室温以上の第1転移温度T'transを有し、かつ
b)T'trans未満の第2転移温度Ttransを有する少なくとも1つの軟セグメントを有する形状記憶ポリマーであり、かつ
−前記形状記憶ポリマーの物理的架橋によって該記憶形状を固定する、
請求項1記載の方法。
【請求項10】
毛髪の成形が少なくともT'transの温度に加熱下で起こり、その後の前記毛髪の固定がT'trans未満の温度に冷却することによって達成されることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
毛髪処理方法であって、
−請求項9又は10記載の方法でプログラムしたヘアスタイル(永久的形状)をT'transとTtransの間の温度に加熱し、
−該毛髪を第2(一時的)形状にし、かつ
−Ttrans未満の温度に冷却することによって前記第2形状を固定する、
毛髪処理方法。
【請求項12】
請求項9記載の方法で予めプログラムしたヘアスタイル(永久的形状)を新しい永久的形状に再プログラム化する方法であって、
−前記ヘアスタイルをT'trans以上の温度に加熱し、
−新しい形状にし、かつ
−その後にT'trans未満の温度に冷却することによって前記新しい形状を固定する、
前記方法。
【請求項13】
形状記憶ポリマーが3〜80%の結晶化度を有し、かつTtrans未満とTtrans以上における弾性率の比が少なくとも20であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
形状記憶ポリマーがコポリエステルウレタンであることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
形状記憶ポリマーが、(a)α,ω-ジヒドロキシポリエステル、α,ω-ジヒドロキシオリゴエステル、α,ω-ジヒドロキシポリラクトン及びα,ω-ジヒドロキシオリゴラクトンから選択される2種の異なるマクロジオールと、(b)少なくとも1種のジイソシアネートとの反応生成物であることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項1、3、9又は12記載の方法で予めプログラムしたヘアスタイル(永久的形状)の回復方法であって、請求項4若しくは11記載の一時的形状のヘアスタイル又は低温成形によって変形したヘアスタイルをTtrans以上の温度に加熱する、前記方法。
【請求項17】
疎水性の第2活性成分が、ダイマージオール、ダイマージオールオリゴエーテル、オリゴエステルジオール、ダイマー酸、PMSジビニルエーテル、疎水性性ポリマー、7以下のHLBレベルを有する疎水性界面活性剤、シリコーン化合物、有機油、脂肪、蝋、グリセリルエステル、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステルから選択されることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
疎水性ポリマーが、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステル(該アルキル基は少なくとも6個のC原子を有する)から選択される少なくとも1種のモノマーを含有するポリマーから選択されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
シリコーン化合物が、ジメチルポリシロキサン及びジメチルシロキサン/アルキルメチルシロキサンコポリマー(該アルキル基は少なくとも6個のC原子を有する)から選択されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項20】
活性成分組成物が、0.01〜25質量%の量の第1活性成分と、0.01〜25質量%の量の第2活性成分を含有することを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記活性成分組成物が溶液として存在し、かつ水と少なくとも1種の有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
有機溶媒が、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール及びアセトンから選択されることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
適切な化粧基剤中に活性成分複合体を含有する毛髪化粧剤組成物であって、前記活性成分複合体が、
(A)単独で又は他の物質と共に、毛髪に適用後及び請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法の実行後に形状記憶効果を毛髪に与えうる物質から選択される少なくとも1種の第1活性成分を含有し、かつ
(B)20℃での水溶解度が5質量%以下の疎水性物質から選択される少なくとも1種の第2活性成分を含有する、
前記毛髪化粧剤組成物。
【請求項24】
第1の活性成分(A)が架橋して形状記憶ポリマーになり得るマクロマーであって、架橋された前記形状記憶ポリマーが少なくとも一つの転位温度Ttransを有し、前記マクロマーが
a)化学結合を介して架橋し得る架橋可能領域を有し、かつ、
b)化学的に架橋され得ない熱可塑性領域を含むマクロマーである、
および/または、第1の活性成分が、
a)物理的相互作用によって架橋し得る少なくとも一つの硬セグメントを有し、前記硬セグメントが室温よりも高い第1の転位温度T’transを有し、かつ、
b)T’transよりも低い第2の転位温度Ttransを有する少なくとも一つの軟セグメントを有しており、
第2の活性成分(B)がダイマージオール、ダイマージオールオリゴエーテル、オリゴエステルジオール、ダイマー脂肪酸、PMS-ジビニルエーテル、疎水性ポリマー、7以下のHLBレベルを有する疎水性界面活性剤、シリコーン化合物、有機油、脂質および蝋から選ばれ、(A):(B)の比が1:1〜2.5:1である、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
疎水性ポリマーが、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステル(該アルキル基は少なくとも6個のC原子を有する)から選択される少なくとも1種のモノマーを含有するポリマーから選択されることを特徴とする請求項24記載の組成物。
【請求項26】
シリコーン化合物が、ジメチルポリシロキサン及びジメチルシロキサン/アルキルメチルシロキサンコポリマー(該アルキル基は少なくとも6個のC原子を有する)から選択されることを特徴とする請求項24記載の組成物。
【請求項27】
形状記憶ポリマーを0.01〜25質量%の量で含み、かつ疎水性活性成分を0.01〜25質量%の量で含むことを特徴とする請求項23〜26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
少なくとも2種の物質を含み、前記物質は個々には形状記憶特性がなく又は弱い形状記憶特性しか有せず、かつ前記物質は、請求項1記載の方法で一緒に適用した場合、相乗的に増強された形状記憶効果を毛髪に与えることを特徴とする請求項23〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
ローション、スプレーローション、クリーム、ゲル、フォーム-ゲル、エアロゾルスプレー、非エアロゾルスプレー、エアロゾルフォーム、非エアロゾルフォーム、o/wエマルジョン若しくはw/oエマルジョン、マイクロエマルジョン又はヘアワックスの形態で存在することを特徴とする請求項23〜28のいずれか1項に記載の組成物を含有する化粧品用材料。
【請求項30】
さらに0.01〜25質量%の少なくとも1種の活性成分を含み、前記活性成分がヘアケア物質、毛髪固定物質及び毛髪着色物質から選択されることを特徴とする請求項29記載の材料。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−500142(P2007−500142A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521441(P2006−521441)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007800
【国際公開番号】WO2005/011626
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(506032794)ムネモサイエンス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【Fターム(参考)】