疑似同軸フラットケーブル及びプラグ構造体
【課題】伝送損失特性を確保した状態で、従来に比べて大幅に狭幅化、低背化しており、かつ専用の同軸コネクタも不要の疑似同軸フラットケーブルを提供する。
【解決手段】絶縁フィルムと、その片面に互いに平行に配線された信号線導体2と、その信号線導体を埋設する絶縁層と、その絶縁層を被覆する電磁シールド材とから成る疑似同軸ケーブル部A1を有し、その疑似同軸ケーブル部A1の端部には、信号線導体2の端部と電気的に接続する導体回路8が形成された接続端子部Jを有する電気接続部A2が一体化して形成されている同軸フラットケーブルA。
【解決手段】絶縁フィルムと、その片面に互いに平行に配線された信号線導体2と、その信号線導体を埋設する絶縁層と、その絶縁層を被覆する電磁シールド材とから成る疑似同軸ケーブル部A1を有し、その疑似同軸ケーブル部A1の端部には、信号線導体2の端部と電気的に接続する導体回路8が形成された接続端子部Jを有する電気接続部A2が一体化して形成されている同軸フラットケーブルA。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は疑似同軸フラットケーブル及びプラグ構造体に関し、更に詳しくは、それ自身が接続対象である相手材(モジュールや電子機器)とのコネクタ機能も併せ持つ疑似同軸フラットケーブルであって、従来の同軸ケーブルに比べると、同等かそれ以上の伝送損失特性が確保された状態で接続対象のモジュールや電子機器との電気接続部を大幅に狭幅化でき、かつ低背化できる新規な構造の疑似同軸フラットケーブル及びプラグ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
同軸ケーブルは、信号を伝送する信号線導体を芯線とし、この芯線の周囲を絶縁体で被覆し、更にこの絶縁体の外周を例えば導電線材から成る編組などの電磁シールド材で被覆した構造になっていて、高周波信号を効率よく伝送できるとともに、外部からの電波やノイズの影響を遮断するので、高周波信号の伝送損失特性が優れている。
【0003】
そのため同軸ケーブルは、最近、デジタル信号の高速化が進み、また信号容量が増大していることに伴い、電子機器に内蔵されるモジュール間の接続や、電子機器相互間の接続のためのケーブルとして多用されている。
【0004】
例えば、パソコンをはじめとする各種の電子機器や各種のゲーム機器などでは、最近、通信機能を備えた通信モジュールを内蔵する機種が一般化しているのであるが、これらの機種においては、アンテナ等から入力された高周波信号を内蔵モジュールに伝送する伝送経路として単軸(1本)の同軸ケーブルが多く使用されている。その場合、同軸ケーブルにおける信号線導体の端部は、相手材であるアンテナやモジュールの出入力端子に電気的に接続され、もって電子機器の内部に収容される。
【0005】
また最近の携帯電話などでは、40本程度の単軸の同軸ケーブルを束ねて(バンドルして)1本の集合体線材とし、その集合体線材の全体を絶縁樹脂で被覆した構造を有する多軸の極細線同軸ケーブルが使用されている。
【0006】
この極細線同軸ケーブルは、高周波信号の伝送損失特性の面で好適であるということだけではなく、全体的に屈曲性の自由度が高い。そのため、単純な開閉動作だけではなく、回転などの機械的な動作を強制されてもそれに追随して信号線導体などの断線が起こりづらく、その特性を利用して携帯電話のLCDパネルと本体を繋ぐヒンジ部に組み込むケーブルとして普及している。
【0007】
機器に内蔵されているモジュールにこの極細線同軸ケーブルを電気的に接続するためには、一般に、まず薄い金属板などを機械加工して、出入力端子部が横一列に配列され、通常は扇状の外形形状を有する専用の同軸コネクタを別体として製造し、その端子部1つ1つに、極細線同軸ケーブルの信号線導体の端部を1つ1つ接続して当該極細線同軸ケーブルと同軸コネクタを一体化し、ついで同軸コネクタの端子部を内蔵モジュールの出入力端子に一括して接続する。
【0008】
また次のようなケーブルも使用されている。それは、単軸の同軸ケーブルを所定のピッチ間隔で横一列に配列し、そして全体を絶縁樹脂で被覆成形して、厚みは薄いが比較的幅広にフラット化した形状のケーブルである(特許文献1を参照)。このようなタイプのケーブルは、通常、疑似同軸フラットケーブルと呼ばれている。
【0009】
この疑似同軸フラットケーブルの場合も、専用の同軸コネクタを別体として製造し、その出入力端子の1つ1つにケーブルの信号線導体の1本1本を接続して当該疑似同軸フラットケーブルと同軸コネクタを一体化し、その同軸コネクタの端子部を相手材モジュールの出入力端子に一括接続して使用される。
【0010】
一方、本出願人は、特許文献2,3に示した小型、薄型のコネクタを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−211855号公報
【特許文献2】特許第4059522号公報
【特許文献3】特許第4247798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで最近の各種電子機器に関しては、その小型化、薄型化、多機能化への要望が強い。この観点から前記した同軸ケーブルと内臓モジュールの電気的な接続構造を考えると次のような問題がある。
【0013】
例えば前記した多軸の極細線同軸ケーブルを使用する場合、専用の同軸コネクタを製造することが必要なのであるが、その同軸コネクタは金属板に対する打ち抜き加工のような機械加工で製造されるので、その外形形状を小型化することには限界がある。とくに同軸コネクタの出入力端子は横一列に配置されているので、極細線同軸ケーブルにおける信号線導体の本数が多くなると、当該同軸コネクタは比較的幅広な外形形状になる。
【0014】
また、この極細線同軸ケーブルを専用の同軸コネクタに接続して両者を一体化する場合、その端部では束ねられている単軸の同軸ケーブルを1本1本分離し、かつ分離されたそれぞれの同軸ケーブルの電磁シールド材と絶縁層を剥離除去して信号線導体を裸出させ、それを同軸コネクタの対応する出入力端子に例えばはんだを用いて1本1本電気的に接続するという作業が必要になる。そのため、極細線同軸ケーブルと同軸コネクタの一体化作業は煩雑であり、その作業を自動的に行うことは容易ではなく、不可避的に製造された製品のコストを押し上げることになる。
【0015】
しかも、内臓モジュールと同軸コネクタの電気接続部においては、内臓モジュールの出入力端子の配列パターンも比較的幅広な同軸コネクタの出入力端子の配列パターンに対応させることが必要となり、また信号線導体の接続と電磁シールド材の接続を互いにショートすることなく実現するためにはある程度のスペースを必要とするため、当該電気接続部を小型化することには限界が生ずる。それは、内臓される各種のモジュールを小型化することに制約を加え、そのため機器内に実装する内蔵モジュールの高密度実装を阻害する要因にもなっている。
【0016】
例えば、携帯電話のヒンジ部に40ピンの多軸極細線同軸ケーブルを挿通する場合、一般にヒンジ部の孔径は3mm程度であるため、ここに当該ケーブルと同軸コネクタの幅広な電気接続部を通すことは困難であるという問題がある。仮にその電気接続部を孔径3mm程度のヒンジ部に挿通させる場合、用いる多軸極細線同軸ケーブルとしてはピン数の少ないもの(信号線導体の少ないもの)に限定されてくるため、多機能化という要望を充分に満たせなくなる。
【0017】
また、極細線同軸ケーブルと専用の同軸コネクタの電気接続部では信号線導体が裸出しているのであるが、それ自体としては高周波信号の伝送損失特性が優れている極細線同軸ケーブルであっても、裸出している信号線導体の箇所では特性インピーダンスが劣化するので、同軸コネクタに接続されたケーブル全体としての損失特性は劣化する。そして同軸コネクタが大きい場合は、信号線導体の裸出する長さも不可避的に長くなり、両者の電気接続部における伝送損失特性の劣化が増大する。そのようなことから、信号線導体の裸出長さができるだけ短くなるような同軸ケーブルとコネクタとの電気接続構造が求められている。
【0018】
なお、市販の同軸コネクタを使用した場合、信号線導体の裸出長さは、通常、4mm程度になっている。また同軸コネクタの高さは1〜1.5mm程度である。
【0019】
特許文献1で示した疑似同軸フラットケーブルの場合も、専用の同軸コネクタを必要とする点で、やはりその端部と相手材のモジュールや電子機器との電気接続部を小型化(薄型化と低背化と狭幅化)することは困難であるという問題がある。
【0020】
一方、上記課題の解決に当たって、本出願人の提案に係る特許文献2,3のコネクタを使用することが考えられるが、このコネクタを疑似同軸フラットケーブルの端部に単に接続しただけでは、疑似同軸フラットケーブルの薄型化、低背化及び狭幅化を達成することはできない。
【0021】
本発明は従来の同軸ケーブルや疑似同軸フラットケーブルにおける上記した問題を解決し、接続対象の相手材との電気接続部を従来に比べて大幅に小型化、低背化、狭幅化することができ、しかもそれ自身がコネクタ構造を具備しているので、従来のように別体の同軸コネクタを使用する必要もなく、したがって電気接続部で裸出する信号線導体の長さも大幅に短くなり、従来の同軸ケーブルに比べても伝送損失特性が同等かそれ以上である新規な構造の疑似同軸フラットケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明においては、絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの片面または両面に互いに平行に配線された信号線導体と、前記信号線導体を埋設する絶縁層と、前記絶縁層を被覆する電磁シールド材とから成る疑似同軸ケーブル部を有し、前記疑似同軸ケーブルの端部には、前記信号線導体の端部と電気的に接続する回路導体が形成された接続端子部を有する電気接続部が一体化して形成されていることを特徴とする疑似同軸フラットケーブルが提供される。
【0023】
好適には、
前記信号線導体が複数本配線され、前記信号線導体の間には、前記信号線導体の高さと同じ高さの電磁シールド材が前記絶縁層を介して配置されている疑似同軸フラットケーブル、
前記電気接続部の幅が、前記疑似同軸ケーブル部の幅と等しいか、または1〜1.5倍の幅である疑似同軸フラットケーブル、
前記信号線導体と前記電気接続部が、同一の絶縁フィルムに形成されている疑似同軸フラットケーブル、
前記疑似同軸ケーブルの前記信号線導体と前記電気接続部の前記接続端子部に形成された回路導体が、前記絶縁フィルムにめっき技術を適用して形成された一体的なめっき導体から成る疑似同軸フラットケーブル、
前記接続端子部はメス端子部であって、そのメス端子部は、絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの片面に形成された導電性パッド部と、前記導電性パッド部から引き出され、前記信号線導体の端部と電気的に接続する前記回路導体と、前記導電性パッド部の面内領域で前記絶縁フィルムの厚み方向に形成された貫通孔と、前記導電性パッド部の面内に形成され、前記貫通孔と連通する開口とから成り、前記導電性パッド部からは前記信号線導体の端部と電気的に接続する前記回路導体が引き出されている疑似同軸フラットケーブル、
複数本の前記信号線導体が前記絶縁フィルムの両面に配線され、前記絶縁フィルムの端部には、複数の前記メス端子部がマトリックス状に形成され、その一部は前記絶縁フィルムの一方の表面で前記信号線導体と電気的に接続され、残りは前記絶縁フィルムの他方の表面で前記信号線導体と電気的に接続されている疑似同軸フラットケーブル、
前記電気接続部の前記絶縁フィルムの表面には、前記メス端子部が形成されている箇所以外の前記絶縁フィルムの部分を覆う板状ガイド部材が固着されている疑似同軸フラットケーブル、
前記疑似同軸ケーブル部が1本の信号線導体を有し、前記電気接続部が前記信号線導体と接続する1個の前記メス端子部と、前記メス端子部の周囲の少なくとも2箇所に形成され、前記電気接続部と接続される相手材を係止する係止部とを有し、前記疑似同軸ケーブル部の片面はアースと接続する導電性皮膜で被覆され、前記電気接続部の両面のうち、前記メス端子部の形成箇所以外の表面は導電性皮膜で被覆されている疑似同軸フラットケーブルが提供される。
【0024】
また本発明では、1個のメス端子部を有する上記した疑似同軸フラットケーブルの接続対象である相手材の端子部に配置されるプラグ構造体であって、絶縁基材の片面に、前記疑似同軸フラットケーブルの前記メス端子部と嵌合する1個のオス端子部が突設して形成され、前記疑似同軸フラットケーブルの前記係合部と係合する少なくとも2個のバンプが、前記オス端子部と絶縁された状態で、しかし相互間は導通可能な状態で突設して形成されている疑似同軸フラットケーブル用のプラグ構造体が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の疑似同軸フラットケーブルは、モジュールなど相手材と電気的に接続する電気接続部と疑似同軸ケーブル部が一体化した構造になっている。そして、それらの信号線導体や回路導体や導電性パッド部や貫通孔や開口などの部位はいずれも、フレキシブルプリント配線板の回路パターン形成時と同様に、絶縁フィルムにフォトリソグラフィー技術とエッチング技術とめっき技術を適用して形成されているので、これらの部位を、機械加工の場合に比べて、大幅に細線化、低背化、小型化することができる。その結果、この疑似同軸フラットケーブルは、全体として狭幅で低背化した疑似同軸ケーブルになっていて、その電気接続部をモジュールなど相手材に接続したときに、両者によって形成された接続部もまた狭幅、低背、小型となり、したがってそれが組み込まれる電子機器の小型化、薄型化も実現することができる。
【0026】
また、本発明の疑似同軸フラットケーブルの製造に際しては、絶縁フィルムを共有する状態で電気接続部と疑似同軸ケーブル部を形成することができる。すなわち電気接続部と疑似同軸ケーブル部を同一の絶縁フィルムに形成することができる。その場合、信号線導体、回路導体、導電性パッド部を同じめっき工程で同一の絶縁フィルムの表面に同時に形成することができるので、電気接続部と疑似同軸ケーブル部が同じ絶縁フィルムの表面で完全に一体化している疑似同軸フラットケーブルにすることができる。したがって、従来の疑似同軸フラットケーブルの場合のように、専用の同軸コネクタを別体として制作することは必要でなくなる。
【0027】
そして、電気接続部と疑似同軸ケーブル部で裸出する信号線導体と回路導体の長さも従来に比べて大幅に短くなるので、疑似同軸ケーブルとしての良好な伝送損失特性も確保される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の疑似同軸フラットケーブルの1例Aを示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】別の疑似同軸ケーブル部B1を示す断面図である。
【図5】本発明の別の疑似同軸フラットケーブルの1例Cを示す平面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】上面から見たときの電気接続部C2を示す平面図である。
【図8】下面から見たときの電気接続部C2を示す平面図である。
【図9】図7のIX−IX線に沿う平面図である。
【図10】図7のX−X線に沿う平面図である。
【図11】本発明の別の疑似同軸フラットケーブルの1例Dを示す斜視図である。
【図12】本発明の別の疑似同軸フラットケーブルの1例Eを上面から見たときの平面図である。
【図13】疑似同軸フラットケーブルEを下面から見たときの平面図である。
【図14】図12のXIV−XIV線に沿う断面図である。
【図15】疑似同軸フラットケーブルEの電気接続部E2を示す斜視図である。
【図16】図15のXVI−XVI線に沿う断面図である。
【図17】図15のXVII−XVII線に沿う断面図である。
【図18】プラグ構造体の1例Fを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の疑似同軸フラットケーブルの1例Aを図面に示す。図1は疑似同軸フラットケーブルAの平面図、図2は図1のII−II線に沿う断面図、図3は図1のIII−III線に沿う断面図である。
【0030】
この疑似同軸フラットケーブルAは4ピンの疑似同軸フラットケーブルを例示するものであり、絶縁フィルムの表面に後述する疑似同軸ケーブル部A1とその両端部に一体化した状態で電気接続部A2が形成された構造になっていて、全体としては薄い箔体形状になっている。
【0031】
なお、この疑似同軸フラットケーブルAは、例えば携帯電話のヒンジ部に挿通してその電気接続部A2を内蔵モジュールの出入力端子に接続して使用することを考えると、疑似同軸ケーブル部A1と電気接続部A2はいずれもヒンジ部を挿通できる程度に狭幅でかつ低背であることが好ましい。仮に、疑似同軸ケーブル部は従来の極細線同軸ケーブルの場合のようにヒンジ部を挿通可能であっても、電気接続部A2が疑似同軸ケーブル部よりも大幅に幅広であれば両者の挿通を実現することはできない。このようなことから、本発明の疑似同軸フラットケーブルAの場合は、疑似同軸ケーブル部A1の幅と電気接続部A2の幅は等しいか、または電気接続部A2の幅は疑似同軸ケーブルA1の幅の1〜1.5倍に設定されていて、ヒンジ部の孔径を考慮して、全体の幅を最大でも3mmとなるように設定することが好ましい。
【0032】
疑似同軸ケーブル部A1では、図2で示したように、可撓性を有する絶縁フィルム1Aの片面1aに4本の信号線導体2が互いに平行に配線され、それら信号線導体2がいずれも絶縁層3に埋設されている。そして、絶縁層3を被覆して電磁シールド材4aが配置され、同時に絶縁フィルム1Aの他方の表面1a’も電磁シールド材4bで被覆され、それぞれは図示しないアースに接地されている。
【0033】
ここで、信号線導体2は、ポリイミドフィルムのような可撓性を有する絶縁フィルム1Aの片面1aに、フレキシブルプリント配線板に回路パターンを配線する時と同様にして、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術と例えば銅めっき技術を組み合わせて容易に形成することができる。このような公知の単位技術の組み合わせにより、疑似同軸ケーブル部A1では例えば高さ30μm、幅40μmの断面形状を有する信号線導体2を、ピッチ間隔100μmで配線することができる。
【0034】
また、信号線導体2を埋設する絶縁層3は、配線した信号線導体2の上から絶縁性の液状樹脂を塗布したのち当該樹脂を硬化したり、または公知のレジストフィルムを信号線導体2の上面に貼着したのち熱圧着して形成することができる。
【0035】
更に、電磁シールド材4a、4bは、絶縁層3の表面や絶縁フィルム1Aの他方の表面1bに例えば銅のような導電性の金属材料を用いた通常のめっき技術で配置することができる。なおその場合、めっき材料としてステンレス鋼、ニッケルやニッケル合金、銅合金などの高弾性の金属材料を用いると、形成された疑似同軸ケーブル部A1の強度向上を実現することができるので好適である。なお、この電磁シールド材は、上記しためっき技術の適用に限らず、市販の電磁シールドシートを貼着して配置してもよい。
【0036】
一方、電気接続部A2には、図1で示したように、面内に4個の接続端子部Jが2列2行のマトリックス状に配列して形成され、それぞれの接続端子部Jは前記した疑似同軸ケーブル部A1における4本の信号線導体2のそれぞれと電気的に接続されている。すなわち、接続端子部Jのいずれかから出入力した信号は、当該接続端子部Jと接続する信号線導体2のみを伝送できるようになっている。したがって、電気接続部A2に形成される接続端子部Jの個数は、同軸ケーブル部A1に埋設されている信号線導体2の本数と同じ数になっている。
【0037】
ここで、接続端子部Jは、接続対象の相手材の出入力端子と電気的に接続して両者間の電気接続構造を形成することからして、相手材の出入力端子がオス型構造であればメス型構造(メス端子部)として形成され、また相手材の出入力端子がメス型構造であればオス型構造(オス端子部)として形成されるのであるが、以下では、この接続端子部Jがメス型構造(メス端子部)である場合について説明する。
【0038】
本発明の接続端子部Jとしては、特許第4059522号や特許第4247798号に開示されている構造のメス端子部が採用される。
【0039】
具体的には、図3で示したように、可撓性を有する絶縁フィルム1Bの片面1bに小面積の薄い導電性パッド部5が形成され、この導電性パッド部5の面内領域に位置する絶縁フィルム1Bの部分には当該絶縁フィルムの厚み方向に貫通する貫通孔6が形成され、また前記導電性パッド部5の面内には前記貫通孔6と連通する開口7(図では十文字のスリット開口)が形成され、そして前記導電性パッド5からは回路導体8が引き出され、それが絶縁フィルムの表面1bに配線された構造になっている。
【0040】
このような電気接続部A2は、前記した特許第4059522号や特許第4247798号に記載されているように、絶縁フィルム1Bにフォトリソグラフィー技術とエッチング技術とめっき技術を組み合わせて容易に製作することができる。その場合、前記した疑似同軸ケーブル部A1の信号線導体2の場合と同様に、高さ30μm、幅40μmの回路導体8を配線することができ、また厚みが40μmで径が300μm程度の導電性パッド5を形成することができる。その場合、絶縁フィルム1Bの厚みを25μmとすれば、電気接続部A2の厚みは、全体として65μm程度になる。
【0041】
更には、用いる絶縁フィルム1Bとして、疑似同軸ケーブル部A1の制作時に用いた絶縁フィルム1Aと同じ幅か1〜1.5倍の幅の絶縁フィルムを用いれば、制作された電気接続部A2の幅も疑似同軸ケーブル部A1と等幅か、または1〜1.5倍の幅にすることができる。
【0042】
そして、各導電性パッド部5から引き出されて絶縁フィルムの表面1bに配線されたそれぞれの回路導体8は、その端部が前記した信号線導体2のそれぞれの端部と電気的に接続されることにより、同軸ケーブル部A1の端部に電気接続部A2が一体化して接続されている。
【0043】
この接続端子部(メス端子部)Jの場合、接続対象である相手材の突起形状をしたオス端子部を、導電性パッド部5の方から開口7を介して貫通孔6に挿入すると、導電性パッド部5と貫通孔付近の絶縁フィルム1Bがオス端子部の挿入方向に撓み、その時に発生する弾性力によって導電性パッド部5の表面がオス端子部と圧接する。その結果、オス端子部はメス端子部Jで機械的に確保され、同時にオス端子部(それを具備する相手材)と接続端子部J(それと接続する信号線導体2)との間で電気接続構造が形成される。
【0044】
このように、疑似同軸フラットケーブルAは、上記した構造の疑似同軸ケーブルブA1の端部に電気接続部A2が一体化した構造になっているのであるが、その構造は、絶縁フィルム1Aに形成されている疑似同軸ケーブル部A1と、絶縁フィルム1Bに形成されている電気接続部A2をそれぞれ別体として製造し、疑似同軸ケーブルA1の信号線導体2の端部に電気接続部A2の接続端子部Jから引き出されている回路導体8の端部を例えばはんだ接続して形成することができる。
【0045】
しかし、この方法では互いに別体として製造された部材に配線されている細線をはんだ付けする作業が必要となるので、作業効率の面で問題がある。
そこで、本発明の場合、疑似同軸ケーブルA1と電気接続部A2の一体化構造は次のようにして形成することが好適である。
【0046】
すなわちその方法は、絶縁フィルム1Aの片面1aに前記した信号線導体を配線して疑似同軸ケーブル部A1を形成し、そして同じ絶縁フィルム1Aの両端部の同じ片面1aに前記した接続端子部Jの導電性パッド部5が形成された電気接続部A2を同時に形成する方法である。つまり、疑似同軸フラットケーブルA1と電気接続部A2が同一の絶縁フィルムを共有する状態で疑似同軸フラットケーブルを製造する方法である。
【0047】
この方法では、1枚の絶縁フィルム(図1と図3で絶縁フィルム1Aと絶縁フィルム1Bを同一フィルムとすることに相当する)の同一片面に、疑似同軸ケーブル部A1の信号線導体2と接続端子部Jの導電性パッド部5とそこから引き出される回路導体8を同一の金属材料を用いた後述するめっき技術によって同時に形成する。したがって、信号線導体2と回路導体8と導電性パッド部5が同じ金属材料から成るめっき導体で形成されたとき、そのときには同時に、疑似同軸ケーブル部A1と電気接続部2の一体化作業が完了されたことになる。
この方法の場合、前者の方法の場合のように、疑似同軸ケーブル部と電気接続部をそれぞれ別体として製造したのち両者を一体化する作業を省略できるという点で好適である。
【0048】
図4は別の疑似同軸フラットケーブルBの疑似同軸ケーブル部B1を示す断面図である。
この疑似同軸ケーブル部B1の場合、絶縁フィルム1Aの片面1aに4本の信号線導体2が所定の間隔を置いて平行に配線され、それらが絶縁層3に埋設され、全体が電磁シールド材4a、4bで被覆されていることは図2で示した疑似同軸ケーブル部A1の場合と同じであるが、各信号線導体2の間に、高さは信号線導体2の高さと同じである3個の電磁シールド材4cが配置され、各電磁シールド材4cもまた絶縁層3で埋設されているという点で異なっている。これらの電磁シールド材4cは、いずれも疑似同軸ケーブル部A1の電磁シールド材4a、4bの場合と同様に図示しないアースと接地されていることはいうまでもない。
【0049】
そして、この疑似同軸ケーブル部B1の信号線導体2の端部は、前記した疑似同軸フラットケーブルAの場合と同様に、図3で示した電気接続部A2の回路導体8と接続され、一体化されている。ただし、電磁シールド材4cは、疑似同軸ケーブル部B1の部分に配置されておればよく、この疑似同軸ケーブル部B1よりも長く配置することは必要とされない。
この電磁シールド材4cは、例えば金属材料を用いためっき技術を適用して信号線導体2の配線時に同時に配置することができる。
【0050】
このような疑似同軸ケーブル部B1を用いると、電磁シールド材4cの両側に配線されている信号線導体2に対して電磁波のシールド効果が図2の疑似同軸ケーブル部A1の場合よりも向上するので、得られた疑似同軸フラットケーブルBの伝送損失特性は向上する。
【0051】
次に本発明の別の疑似同軸フラットケーブルCについて説明する。
図5は、疑似同軸フラットケーブルCの全体的な平面図であり、図6は図5のVI−VI線に沿う断面図である。そして、図7は疑似同軸フラットケーブルCの電気接続部C2を一方の側(これを上面側とする)から見たときの平面図、図8は同じ電気接続部C2を他方の側(これを下面側または裏面側とする)から見たときの平面図である。
【0052】
この疑似同軸フラットケーブルCは、信号線導体を内蔵する後述の疑似同軸ケーブル部C1と、その両端部には後述する電気接続部C2が一体化した構造になっている。
電気接続部C2の疑似同軸ケーブル部C1側には、5行4列の後述する接続端子部J1、先端側には同じく5行4列の接続端子部J2がそれぞれマトリックス状に配列し、全体としては10行4列の接続端子部が合計で40個マトリックス状に配列している。そして接続端子部J1からは疑似同軸ケーブル部C1に内蔵された信号線導体と接続する回路導体81、接続端子部J2からは同じく信号線導体と接続する回路導体82がそれぞれ引き出されている。
【0053】
なお、接続端子部J1,J2はメス型構造(メス端子部)、オス型構造(オス端子部)のいずれであってもよいが、以下の説明は、接続端子部がメス端子部であり、また疑似同軸ケーブル部C1と電気接続部C2がいずれも1枚の同一絶縁フィルムに形成される場合について行う。
【0054】
最初に図6に基づいて疑似同軸ケーブル部C1について説明する。
この疑似同軸ケーブル部C1の場合、絶縁フィルム1Aの上面1aに20本の信号線導体2aが互いに平行に配線され、下面1bにも20本の信号線導体2bが互いに平行に配線され、全体として40本の信号線導体が絶縁フィルム1Aに配線されている。そしてこの絶縁フィルム1Aの端部は、疑似同軸ケーブル部C1の端部から延在し、その延在した箇所に、後述するように、接続端子部J1,J2が形成されることにより、そこが電気接続部C2になる。
【0055】
上面の信号線導体2aは絶縁層3aに埋設され、下面の信号線導体2bは絶縁層3bに埋設されている。そして、絶縁層3aを被覆して電磁シールド材4aが、絶縁層3bを被覆して電磁シールド材3bがそれぞれ配置され、これら電磁シールド材4a、4bはいずれも図示しないアースに接地されている。
すなわち、この疑似同軸ケーブル部C1は、絶縁フィルム1Aの両面に配線された複数の信号線導体2a、2bを具備し、これら信号線導体は絶縁フィルム1Aを介して2層構造で形成されていて、かつ全体の表面は電磁シールド材4a、4bによって両面が電磁シールドされた構造になっている。
【0056】
この疑似同軸ケーブル部C1は、図2で示した疑似同軸シールド部A1の場合と同様に、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術とめっき技術を組み合わせて形成することができる。そのとき、信号線導体2a、2bの配線時に、図4で示した疑似同軸ケーブル部B1の場合と同様に各信号線導体の間に電磁シールド材4cを同時に配置して全体の伝送損失特性を高めることができる。
【0057】
この疑似同軸ケーブル部C1の場合、厚み25μm程度のポリイミドフィルム(絶縁フィルム)を用い、高さ30μm、幅40μm程度の信号線導体をピッチ間隔100μ程度で配線し、信号線導体の間に高さ30μm、幅20μm程度の電磁シールド材を配置し、それらを埋設して厚み30μm程度の絶縁層で被覆すれば、全体として、3mm幅の中に40本の信号線導体を内蔵することができる。しかもその場合、全体の厚みは150μm以下であり、40本の信号線導体を内蔵する疑似同軸ケーブル部としては、極めて狭幅でかつ薄型な構造を実現することができる。
【0058】
次に、図7と図8に基づいてこの疑似同軸ケーブル部C1の端部に一体化されている電気接続部C2について説明する。
【0059】
まず電気接続部C2には、メス端子部J1、J2がマトリックス状に配列して形成されている。これらのメス端子部J1、J2は、いずれも、図6の疑似同軸ケーブル部C1から延在している同じ絶縁フィルム1Aに形成されている。すなわち、疑似同軸ケーブル部C1と絶縁フィルムを共有する状態で電気接続部C2にはこれらメス端子部J1、J2が形成されている。そしてそれらの構造は、図1と図3で示した電気接続部A2に形成されている接続端子部Jの場合と基本的には同じであるが、回路導体8の引き出し態様でメス端子部J1,J2では異なる構造になっている。
【0060】
そこで、図7のIX−IXに沿う断面図である図9、図7のX−X線に沿う断面図である図10に基づいてメス端子部J1、J2を説明する。
メス端子部J1、J2は、いずれも、疑似同軸ケーブル部C1から延在している絶縁フィルム1Aの片面(上面)1aに導電性パッド部5が形成され、その面内領域で下に位置する絶縁フィルム1Aの部分に他方の表面(下面または裏面)1a’にまで至る貫通孔6が形成され、そして導電性パッド部5の面内には前記貫通孔6と連通する開口(十文字スリットの開口)7が形成され、これら全体でメス端子部を構成している。
【0061】
そしてメス端子部J1の場合、各列5個の導電性パッド部5から引き出されている回路導体81はいずれも絶縁フィルム1Aの上面1aに配線され、その端部は疑似同軸ケーブル部C1の方向に延長している。つまり、回路導体81と導電性パッド部5は同一平面上に形成されている。そしてこれらの回路導体81は、図6で示した疑似同軸ケーブル部C1における信号線導体2aと接続されている。
【0062】
一方、メス端子部J2の場合、その回路導体82は絶縁フィルム1Aの下面(裏面)1a’に配線され、その端部は図6で示した疑似同軸ケーブル部C1の方向に延長し、絶縁フィルム1Aの下面1a’に配線されている信号線導体2bと接続されている。つまり、回路導体82と導電性パッド部5は同一平面上に形成されておらず、互いに絶縁フィルム1Aの反対側の表面に形成されている。そのため、メス端子部J2の場合、導電性パッド部5と回路導体82の間に位置する絶縁フィルム1Aに例えば銅のような導電性材料から成るビア導体9を形成して両者の電気的接続がとられている。
【0063】
ここで、メス端子部J1,J2の構成要素は、いずれもフォトリソグラフィー技術とエッチング技術とめっき技術を組み合わせて形成されるのであるが、このとき、疑似同軸ケーブル部C1の信号線導体2a、2bと、メス端子部J1、J2の導電性パッド部5と、回路導体81,82とは同一のめっき工程で形成することができる。
その場合、信号線導体2aと回路導体81、信号線導体2bと回路導体82は、いずれも同一の導体材料から成る1本の一体化しためっき導体の経路として導電性パッド部5と同時に絶縁フィルム1Aの表面に形成される。したがってこの時点で、疑似同軸ケーブル部C1と電気接続部C2は、同じ絶縁フィルムを共有した状態で一体的に形成されることになる。
【0064】
この電気接続部C2では、導電性パッド部5の大径部の径を0.35mm、厚みを0.03mmとし、ピッチ間隔を0.5mmとし、回路導体81,82の高さ30μm、幅40μmとすれば、図7で示した10行4列のメス端子部J1,J2を形成した場合であっても、それら全体を幅3mmの平面内に優に収容することができる。しかもその場合、絶縁フィルム1Aの厚みを25μmとすれば全体の厚みを0.15mm程度に低背化することができる。
【0065】
したがって、図6で示した疑似同軸ケーブル部C1とこの電気接続部C2が一体化している本発明の疑似同軸フラットケーブルCの場合、全体の厚みが150μm程度、接続対象の相手材との接続部の幅が3mm程度となり、従来の専用コネクタ部を用いた場合に比べて大幅な狭幅化、低背化が実現されている。また裸出している信号線導体2a、2bと回路導体81,82を合わせた長さも短くなり、伝送損失特性の劣化要因も従来に比べて大幅に削減されることになる。
【0066】
例えば、厚み25μm、幅3mmのポリイミドフィルムを絶縁フィルムとし、その両面に高さ30μm、幅40μm、長さ50mmである銅の信号線導体をピッチ間隔100μmでそれぞれ20本配線し、それらを電気絶縁性樹脂で埋設し、全体を厚み20μmのめっき銅から成る電磁シールド材で被覆した図6で示した疑似同軸ケーブル部と、同じポリイミドフィルムに、径350μm、厚み20μmの導電性パッド部を10行4列、そこから引き出される高さ30μm、幅40μmの回路導体を有するメス端子部が形成されている電気接続部とから成る図5で示した疑似同軸フラットケーブルCの場合、相手材のバンプ(オス端子部)との接続部における高さを0.3mm程度にでき、また裸出する信号線導体と回路導体の合計長さを0.3mm程度にすることができる。
そしてその場合、測定周波数250MHz〜8GHzにおける挿入損失は10db程度であり、従来の40本の多軸極細線同軸ケーブルと専用の同軸コネクタとを接続した場合の伝送損失特性と遜色はなかった。
【0067】
図11に更に別の疑似同軸フラットケーブルの1例Dを示す。
この疑似同軸フラットケーブルDは、既に説明した疑似同軸フラットケーブルCにおける電気接続部C2の他方の表面1a’側(貫通孔6が表出する側)に、例えば剛性を備えた金属材料から成り、前記した電気接続部C2とほぼ同一の平面形状を有する板状ガイド部材10Aを配置した構造になっている。金属材料としてはステンレス鋼、ニッケルやニッケル合金など高弾性材料が好適である。また板状ガイド部材の厚みは100μm程度であればよい。
板状ガイド部材10Aには、メス端子部J1,J2の貫通孔6よりも大径の貫通孔10aがマトリックス状に配列するメス端子部J1,J2に対応した配列で形成され、他の部分(貫通孔10aが形成されていない部分)は絶縁フィルム1Aの表面1aに密着した状態で当該絶縁フィルムの部分に固着されている。
この板状ガイド部材10Aは、予め薄い金属板材を機械加工して別体として製造しておき、それを電気接続部C2の表面1a’に貼着してもよいし、または絶縁フィルム1Aの表面1a’に所定の金属材料を用いてめっき技術とエッチング技術とフォトリソグラフィー技術を適用して形成することもできる。
【0068】
この疑似同軸フラットケーブルDは次のようにして使用される。
すなわち、図11で示したように、メス端子部J1、J2の開口7に挿入可能なバンプ11がマトリックス状に配列されているオス端子部を有し、かつ、バンプ11の配列群を囲撓し、前記した板状ガイド部材10Aを嵌め込むことができる門型形状をした枠体12が、配列するバンプ11の周囲に固着されている相手材D’の当該オス端子部に、電気接続部C2を嵌め込む。なお、この枠体12も、金属材料などで別体として製造しておき、それを相手材D’に貼着したり、または相手材D’にめっき技術やエッチング技術やフォトリソグラフィー技術を適用して形成することができる。
板状ガイド部材10Aは枠体12の中に固定され、同時に相手材D’のオス端子部のバンプ11はそれぞれメス端子部J1,J2の開口7から貫通孔6に挿入されて導電性パッド部と圧接し、ここに疑似同軸フラットケーブルDと相手材D’の間で電気的な接続構造が形成される。
疑似同軸フラットケーブルDにおける電気接続部C2の絶縁フィルム1Aは、板状ガイド部材10Aで固定された状態にあるため、開口7へのバンプ11の挿入時に当該開口を含む貫通孔6の周辺に位置する絶縁フィルム1Aが大きく撓むことはなく、そのため開口7の位置ずれは起こらず、全ての開口と全てのバンプは一括して嵌合される。
【0069】
次に、本発明の更に別の疑似同軸フラットケーブルEと、その疑似同軸フラットケーブルEの電気接続部との接続に用いるプラグ構造体につき、図面に基づいて説明する。
図において、図12は、疑似同軸フラットケーブルEを上面側から見たときの平面図、図13は、裏面側から見たときの一部切欠き平面図である。図14は、図12のXIV−XIV線に沿う断面図である。図15は、疑似同軸フラットケーブルEの電気接続部E2の1例を示す斜視図である。図16と図17は、それぞれ、図15のXVI−XVI線、XVII−XVII線に沿う断面図である。そして、図18は疑似同軸フラットケーブルEの電気接続部との接続に用いるプラグ構造体の1例を示す斜視図である。
【0070】
まず、この疑似同軸フラットケーブルEは単軸の疑似同軸フラットケーブルであって、図12と図13で示したように、疑似同軸ケーブル部E1とその両端部に一体的に形成された電気接続部E2,E2で構成されている。
この疑似同軸ケーブル部E1と電気接続部E2は、いずれも、同一の絶縁フィルム1Aに一体的に形成されている。
疑似同軸ケーブル部E1では、図14で示したように、絶縁フィルム1Aの下面1aに1本の信号線導体2が配線され、それは絶縁層3で埋設されている。そして、この絶縁層3を被覆して導電性皮膜13Bが形成されている。一方、絶縁フィルム1Aの上面1a’にも、そこを被覆して導電性皮膜13Aが形成されている。なお、この導電性皮膜13A、13Bは、いずれも図1と図2で示した疑似同軸ケーブル部A1における電磁シールド材4aそのものであってもよく、また絶縁フィルム1Aの片面(上面)1a’と絶縁層3の上に例えば銅めっきを施して形成したものであってもよい。そしてこれらの導電性皮膜はいずれも図示しないアースに接地されている。
【0071】
一方、絶縁フィルム1Aの両端部における片面(上面)1a’には後述する板状ガイド部材10Bが当該絶縁フィルムに密着して固着されることにより電気接続部E2が形成されている。
この板状ガイド部材10Bは導電性の材料から成り、絶縁フィルム1Aとほぼ等幅の薄い板状体であって、図11で示した疑似同軸フラットケーブルDの板状ガイド部材10Aの場合と同じように、この板状ガイド部材10Bを絶縁フィルム1Aの上面1a’に配置したときに、当該絶縁フィルム1Aに形成されているメス端子部Jの貫通孔6の箇所に対応する箇所にメス端子部Jの貫通孔6と同等かやや大径の貫通孔10bが1個形成されている。そして、この板状ガイド部材10Bは、疑似同軸ケーブル部E1の表面に形成されている導電性皮膜13Aと接触または電気的に接続されている。
【0072】
この板状ガイド部材10Bの下に位置する絶縁フィルム1Aにはメス端子部Jが形成され、それは、図16で示したように、その下面1aに導電性パッド部5と、その上の絶縁フィルムの部分に形成された貫通孔6と、導電性パッド部5の面内に形成され、前記貫通孔6と連通する開口7とで構成され、そして導電性パッド部5から回路導体8が引き出され、それは、図13で示したように、疑似同軸ケーブル部E1の信号線導体2と一体化している。したがって、メス端子部Jの開口7、貫通孔6と板状ガイド部材10Bの貫通孔10bは互いに連通している。
そして、絶縁フィルム1Aの下面1aでは、導電性パッド部5と回路導体8が形成されている箇所を除いた部分が導電性パッド部5と同じ厚みの導電性皮膜13Bで被覆されている。したがって、図13で示したように、導電性パッド部5および回路導体8と導電性皮膜13Bの間には絶縁フィルム1Aの下面1aが表出していて、その部分は絶縁状態になっている。また、導電性パッド部5から引き出されている回路導体8は、疑似同軸ケーブル部E1に近接した部分が絶縁層3’で被覆されている。
【0073】
一方、メス端子部Jを取り囲んで形成されている係合部Kは、電気接続部E2と後述するプラグ構造体のバンプと係合するための部位であり、同時に、疑似同軸フラットケーブルEをプラグ構造体に接続したときに、その接続部において外部からの電波やノイズなどの影響を遮断して電磁シールド効果を発揮する。
【0074】
係合部Kは、図17で示したように、絶縁フィルム1Aに形成された貫通孔6’と、絶縁フィルム1Aの下面1aを被覆して形成される導電性皮膜13Bと、そこに形成され、かつ前記貫通孔6’に連通する開口7’とで構成されている。そして、絶縁フィルム1Aの上面1a’に固着される板状ガイド部材10Bには、上記した貫通孔6’と連通する貫通孔10cが形成されて、開口7’と貫通孔6’と貫通孔10cは互いに連通している。
したがって、この係合部Kでは、メス端子部Jの場合と異なって導電性パッド5は形成されていないが、開口7’の付近の導電性皮膜13Bが導電性パッド5の場合と同じように、後述するプラグ構造体のバンプがこの開口7’に挿入されると、バンプの挿入方向に撓み、そのときに発生する弾性力でバンプに圧接し、当該バンプを係合すると同時に電気的な接続構造を形成する。
【0075】
なお、導電性皮膜13Bの上に位置する絶縁フィルム1Aには、図17で示したように、前記導電性皮膜13Bと板状ガイド部材10Bの間を電気的に接続する複数のビア導体9’を埋設し、導電性皮膜13B−ビア導体9’−板状ガイド部材10B−導電性皮膜13A―アース(図示しない)から成る導通経路を形成することが好ましい。この導通経路が、疑似同軸フラットケーブルEを後述するプラグ構造体に接続したときに、外部からの電波やノイズに対する電磁シールド効果を高めることができるからである。
【0076】
このメス端子部Jの導電性パッド部5と回路導体8、および係合部Kを形成するに際しては、まず絶縁フィルム1Aの片面(下面)1aの全面に例えば銅をめっき材料にして所定厚みの導電性皮膜13Bを製膜し、ついで、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術を適用して、メス端子部Jを形成すべき箇所と係合部Kを形成すべき個所を残して導電性皮膜を除去して絶縁フィルムの表面1aを表出させたのち、残存している導電性皮膜13Bの箇所に開口7、7’をそれぞれ形成すればよい。
【0077】
次に、図12〜図17で示した疑似同軸フラットケーブルEと接続して用いられるプラグ構造体の1例Fを説明する。
このプラグ構造体は、絶縁基材の表面に後述する諸要素をフォトリソグラフィー技術、エッチング技術、およびめっき技術を適用して製造した1個のチップ部材であってもよい。その場合、このチップ部材は図示しないプリント配線板の端子部に実装して用いられる。またこのプラグ構造体は、プリント配線板の所定の端子部に上記技術を組み合わせて後述の諸要素を形成したものであってもよい。
【0078】
このプラグ構造体Fは、図18の斜視図で示したように、絶縁基材14の片面にバンプ形状をした1個のオス端子部11が突設して形成され、それを取り囲んで4個のバンプ15が同じく突設して形成されている。その場合、オス端子部11は、絶縁基材14を貫通して他の面(下面または裏面)にまで表出して、このプラグ構造体Fが配置されるプリント配線板の端子部と電気的に接続できるように形成され、バンプ15は、絶縁基材14の下面に表出することなく、プリント配線板の端子部とは絶縁状態を確保して形成されている。
【0079】
また、オス端子部11とバンプ15は、前記した疑似同軸フラットケーブルEとプラグ構造体Fを接続したときに、電気接続部E2におけるメス端子部Jと対応する箇所にオス端子部11が、係合部Kと対応する箇所にバンプ15がそれぞれ形成されている。
そして、絶縁基材14の表面には、4個のバンプ15の間のみを電気的に接続する導電性皮膜16が形成されている。したがって、オス端子部11とバンプ15の間は電気的に絶縁された状態になっている。
【0080】
このような疑似同軸フラットケーブルEの電気接続部E2をプラグ構造体Fに接続すると、プラグ構造体Fのオス端子部11はメス端子部Jの開口7から貫通孔6、10bに挿入され、そのときに発生する弾性力によって導電性パッド部5で確保されるとともに導電性パッド部5との間で導通構造を形成する。したがって、プリント配線板の端子部からの出入力信号は、オス端子部11−導電性パッド部5−回路導体8−信号線導体2のみを伝搬する。
【0081】
一方、プラグ構造体Fのバンプ15は係合部Kの導電性皮膜13Bに形成されている開口7’から貫通孔6’、10cに挿入され、そのときに発生する弾性力によって導電性皮膜13Bで確保され、同時に導電性皮膜16が絶縁フィルム1Aの下面1aの導電性皮膜13Bと圧接されるので、板状ガイド部材10Bとの間で導通構造を形成する。したがって、ここに、バンプ15から疑似同軸ケーブル部E1の導電性皮膜13Aを経て図示しないアースにまで至る導通経路が形成されることになり、外部からの電波やノイズの影響を遮断する電磁シールド効果が発揮される。
【0082】
なお、この疑似同軸フラットケーブルEやプラグ構造体Fの場合、メス端子部Jとオス端子部11がいずれも1個であるため、全体の幅を非常に狭幅にすることができ、また電気接続部E2を非常に小型化することができる。しかし、この単軸の場合に比べれば拡幅するとはいえ、その幅が許容される範囲内であれば、例えば数個(2〜3個)のメス端子部Jを横1列に形成したり、長手方向に縦1列に形成することもできる。その場合、プラグ構造体のオス端子部11も上記したメス端子部Jの配列に対応した状態で形成されることになる。
【符号の説明】
【0083】
A,C,D、E 疑似同軸フラットケーブル
A1、B1、C1、E1 疑似同軸ケーブル部
A2、C2、E2 電気接続部
D’、F 相手材
J、J1、J2 接続端子部(メス端子部)
K 係合部
1A、1B 絶縁フィルム
1a 絶縁フィルム1Aの一方の表面
1a’絶縁フィルム1Aの他方の表面
1b 絶縁フィルム1Bぼ一方の表面
2、2a、2b 信号線導体
3、3a、3b 絶縁層
4a、4b、4c 電磁シールド材
5 導電性パッド部
6、6’貫通孔
7、7’開口
8、81、82 回路導体
9、9’ビア導体
10A、10B 板状ガイド部材
10a、10b、10c 貫通孔
11 オス端子部
12 枠体
13A,13B 導電性皮膜
14 絶縁基材
15 バンプ
16 導電性皮膜
【技術分野】
【0001】
本発明は疑似同軸フラットケーブル及びプラグ構造体に関し、更に詳しくは、それ自身が接続対象である相手材(モジュールや電子機器)とのコネクタ機能も併せ持つ疑似同軸フラットケーブルであって、従来の同軸ケーブルに比べると、同等かそれ以上の伝送損失特性が確保された状態で接続対象のモジュールや電子機器との電気接続部を大幅に狭幅化でき、かつ低背化できる新規な構造の疑似同軸フラットケーブル及びプラグ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
同軸ケーブルは、信号を伝送する信号線導体を芯線とし、この芯線の周囲を絶縁体で被覆し、更にこの絶縁体の外周を例えば導電線材から成る編組などの電磁シールド材で被覆した構造になっていて、高周波信号を効率よく伝送できるとともに、外部からの電波やノイズの影響を遮断するので、高周波信号の伝送損失特性が優れている。
【0003】
そのため同軸ケーブルは、最近、デジタル信号の高速化が進み、また信号容量が増大していることに伴い、電子機器に内蔵されるモジュール間の接続や、電子機器相互間の接続のためのケーブルとして多用されている。
【0004】
例えば、パソコンをはじめとする各種の電子機器や各種のゲーム機器などでは、最近、通信機能を備えた通信モジュールを内蔵する機種が一般化しているのであるが、これらの機種においては、アンテナ等から入力された高周波信号を内蔵モジュールに伝送する伝送経路として単軸(1本)の同軸ケーブルが多く使用されている。その場合、同軸ケーブルにおける信号線導体の端部は、相手材であるアンテナやモジュールの出入力端子に電気的に接続され、もって電子機器の内部に収容される。
【0005】
また最近の携帯電話などでは、40本程度の単軸の同軸ケーブルを束ねて(バンドルして)1本の集合体線材とし、その集合体線材の全体を絶縁樹脂で被覆した構造を有する多軸の極細線同軸ケーブルが使用されている。
【0006】
この極細線同軸ケーブルは、高周波信号の伝送損失特性の面で好適であるということだけではなく、全体的に屈曲性の自由度が高い。そのため、単純な開閉動作だけではなく、回転などの機械的な動作を強制されてもそれに追随して信号線導体などの断線が起こりづらく、その特性を利用して携帯電話のLCDパネルと本体を繋ぐヒンジ部に組み込むケーブルとして普及している。
【0007】
機器に内蔵されているモジュールにこの極細線同軸ケーブルを電気的に接続するためには、一般に、まず薄い金属板などを機械加工して、出入力端子部が横一列に配列され、通常は扇状の外形形状を有する専用の同軸コネクタを別体として製造し、その端子部1つ1つに、極細線同軸ケーブルの信号線導体の端部を1つ1つ接続して当該極細線同軸ケーブルと同軸コネクタを一体化し、ついで同軸コネクタの端子部を内蔵モジュールの出入力端子に一括して接続する。
【0008】
また次のようなケーブルも使用されている。それは、単軸の同軸ケーブルを所定のピッチ間隔で横一列に配列し、そして全体を絶縁樹脂で被覆成形して、厚みは薄いが比較的幅広にフラット化した形状のケーブルである(特許文献1を参照)。このようなタイプのケーブルは、通常、疑似同軸フラットケーブルと呼ばれている。
【0009】
この疑似同軸フラットケーブルの場合も、専用の同軸コネクタを別体として製造し、その出入力端子の1つ1つにケーブルの信号線導体の1本1本を接続して当該疑似同軸フラットケーブルと同軸コネクタを一体化し、その同軸コネクタの端子部を相手材モジュールの出入力端子に一括接続して使用される。
【0010】
一方、本出願人は、特許文献2,3に示した小型、薄型のコネクタを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−211855号公報
【特許文献2】特許第4059522号公報
【特許文献3】特許第4247798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで最近の各種電子機器に関しては、その小型化、薄型化、多機能化への要望が強い。この観点から前記した同軸ケーブルと内臓モジュールの電気的な接続構造を考えると次のような問題がある。
【0013】
例えば前記した多軸の極細線同軸ケーブルを使用する場合、専用の同軸コネクタを製造することが必要なのであるが、その同軸コネクタは金属板に対する打ち抜き加工のような機械加工で製造されるので、その外形形状を小型化することには限界がある。とくに同軸コネクタの出入力端子は横一列に配置されているので、極細線同軸ケーブルにおける信号線導体の本数が多くなると、当該同軸コネクタは比較的幅広な外形形状になる。
【0014】
また、この極細線同軸ケーブルを専用の同軸コネクタに接続して両者を一体化する場合、その端部では束ねられている単軸の同軸ケーブルを1本1本分離し、かつ分離されたそれぞれの同軸ケーブルの電磁シールド材と絶縁層を剥離除去して信号線導体を裸出させ、それを同軸コネクタの対応する出入力端子に例えばはんだを用いて1本1本電気的に接続するという作業が必要になる。そのため、極細線同軸ケーブルと同軸コネクタの一体化作業は煩雑であり、その作業を自動的に行うことは容易ではなく、不可避的に製造された製品のコストを押し上げることになる。
【0015】
しかも、内臓モジュールと同軸コネクタの電気接続部においては、内臓モジュールの出入力端子の配列パターンも比較的幅広な同軸コネクタの出入力端子の配列パターンに対応させることが必要となり、また信号線導体の接続と電磁シールド材の接続を互いにショートすることなく実現するためにはある程度のスペースを必要とするため、当該電気接続部を小型化することには限界が生ずる。それは、内臓される各種のモジュールを小型化することに制約を加え、そのため機器内に実装する内蔵モジュールの高密度実装を阻害する要因にもなっている。
【0016】
例えば、携帯電話のヒンジ部に40ピンの多軸極細線同軸ケーブルを挿通する場合、一般にヒンジ部の孔径は3mm程度であるため、ここに当該ケーブルと同軸コネクタの幅広な電気接続部を通すことは困難であるという問題がある。仮にその電気接続部を孔径3mm程度のヒンジ部に挿通させる場合、用いる多軸極細線同軸ケーブルとしてはピン数の少ないもの(信号線導体の少ないもの)に限定されてくるため、多機能化という要望を充分に満たせなくなる。
【0017】
また、極細線同軸ケーブルと専用の同軸コネクタの電気接続部では信号線導体が裸出しているのであるが、それ自体としては高周波信号の伝送損失特性が優れている極細線同軸ケーブルであっても、裸出している信号線導体の箇所では特性インピーダンスが劣化するので、同軸コネクタに接続されたケーブル全体としての損失特性は劣化する。そして同軸コネクタが大きい場合は、信号線導体の裸出する長さも不可避的に長くなり、両者の電気接続部における伝送損失特性の劣化が増大する。そのようなことから、信号線導体の裸出長さができるだけ短くなるような同軸ケーブルとコネクタとの電気接続構造が求められている。
【0018】
なお、市販の同軸コネクタを使用した場合、信号線導体の裸出長さは、通常、4mm程度になっている。また同軸コネクタの高さは1〜1.5mm程度である。
【0019】
特許文献1で示した疑似同軸フラットケーブルの場合も、専用の同軸コネクタを必要とする点で、やはりその端部と相手材のモジュールや電子機器との電気接続部を小型化(薄型化と低背化と狭幅化)することは困難であるという問題がある。
【0020】
一方、上記課題の解決に当たって、本出願人の提案に係る特許文献2,3のコネクタを使用することが考えられるが、このコネクタを疑似同軸フラットケーブルの端部に単に接続しただけでは、疑似同軸フラットケーブルの薄型化、低背化及び狭幅化を達成することはできない。
【0021】
本発明は従来の同軸ケーブルや疑似同軸フラットケーブルにおける上記した問題を解決し、接続対象の相手材との電気接続部を従来に比べて大幅に小型化、低背化、狭幅化することができ、しかもそれ自身がコネクタ構造を具備しているので、従来のように別体の同軸コネクタを使用する必要もなく、したがって電気接続部で裸出する信号線導体の長さも大幅に短くなり、従来の同軸ケーブルに比べても伝送損失特性が同等かそれ以上である新規な構造の疑似同軸フラットケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明においては、絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの片面または両面に互いに平行に配線された信号線導体と、前記信号線導体を埋設する絶縁層と、前記絶縁層を被覆する電磁シールド材とから成る疑似同軸ケーブル部を有し、前記疑似同軸ケーブルの端部には、前記信号線導体の端部と電気的に接続する回路導体が形成された接続端子部を有する電気接続部が一体化して形成されていることを特徴とする疑似同軸フラットケーブルが提供される。
【0023】
好適には、
前記信号線導体が複数本配線され、前記信号線導体の間には、前記信号線導体の高さと同じ高さの電磁シールド材が前記絶縁層を介して配置されている疑似同軸フラットケーブル、
前記電気接続部の幅が、前記疑似同軸ケーブル部の幅と等しいか、または1〜1.5倍の幅である疑似同軸フラットケーブル、
前記信号線導体と前記電気接続部が、同一の絶縁フィルムに形成されている疑似同軸フラットケーブル、
前記疑似同軸ケーブルの前記信号線導体と前記電気接続部の前記接続端子部に形成された回路導体が、前記絶縁フィルムにめっき技術を適用して形成された一体的なめっき導体から成る疑似同軸フラットケーブル、
前記接続端子部はメス端子部であって、そのメス端子部は、絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの片面に形成された導電性パッド部と、前記導電性パッド部から引き出され、前記信号線導体の端部と電気的に接続する前記回路導体と、前記導電性パッド部の面内領域で前記絶縁フィルムの厚み方向に形成された貫通孔と、前記導電性パッド部の面内に形成され、前記貫通孔と連通する開口とから成り、前記導電性パッド部からは前記信号線導体の端部と電気的に接続する前記回路導体が引き出されている疑似同軸フラットケーブル、
複数本の前記信号線導体が前記絶縁フィルムの両面に配線され、前記絶縁フィルムの端部には、複数の前記メス端子部がマトリックス状に形成され、その一部は前記絶縁フィルムの一方の表面で前記信号線導体と電気的に接続され、残りは前記絶縁フィルムの他方の表面で前記信号線導体と電気的に接続されている疑似同軸フラットケーブル、
前記電気接続部の前記絶縁フィルムの表面には、前記メス端子部が形成されている箇所以外の前記絶縁フィルムの部分を覆う板状ガイド部材が固着されている疑似同軸フラットケーブル、
前記疑似同軸ケーブル部が1本の信号線導体を有し、前記電気接続部が前記信号線導体と接続する1個の前記メス端子部と、前記メス端子部の周囲の少なくとも2箇所に形成され、前記電気接続部と接続される相手材を係止する係止部とを有し、前記疑似同軸ケーブル部の片面はアースと接続する導電性皮膜で被覆され、前記電気接続部の両面のうち、前記メス端子部の形成箇所以外の表面は導電性皮膜で被覆されている疑似同軸フラットケーブルが提供される。
【0024】
また本発明では、1個のメス端子部を有する上記した疑似同軸フラットケーブルの接続対象である相手材の端子部に配置されるプラグ構造体であって、絶縁基材の片面に、前記疑似同軸フラットケーブルの前記メス端子部と嵌合する1個のオス端子部が突設して形成され、前記疑似同軸フラットケーブルの前記係合部と係合する少なくとも2個のバンプが、前記オス端子部と絶縁された状態で、しかし相互間は導通可能な状態で突設して形成されている疑似同軸フラットケーブル用のプラグ構造体が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の疑似同軸フラットケーブルは、モジュールなど相手材と電気的に接続する電気接続部と疑似同軸ケーブル部が一体化した構造になっている。そして、それらの信号線導体や回路導体や導電性パッド部や貫通孔や開口などの部位はいずれも、フレキシブルプリント配線板の回路パターン形成時と同様に、絶縁フィルムにフォトリソグラフィー技術とエッチング技術とめっき技術を適用して形成されているので、これらの部位を、機械加工の場合に比べて、大幅に細線化、低背化、小型化することができる。その結果、この疑似同軸フラットケーブルは、全体として狭幅で低背化した疑似同軸ケーブルになっていて、その電気接続部をモジュールなど相手材に接続したときに、両者によって形成された接続部もまた狭幅、低背、小型となり、したがってそれが組み込まれる電子機器の小型化、薄型化も実現することができる。
【0026】
また、本発明の疑似同軸フラットケーブルの製造に際しては、絶縁フィルムを共有する状態で電気接続部と疑似同軸ケーブル部を形成することができる。すなわち電気接続部と疑似同軸ケーブル部を同一の絶縁フィルムに形成することができる。その場合、信号線導体、回路導体、導電性パッド部を同じめっき工程で同一の絶縁フィルムの表面に同時に形成することができるので、電気接続部と疑似同軸ケーブル部が同じ絶縁フィルムの表面で完全に一体化している疑似同軸フラットケーブルにすることができる。したがって、従来の疑似同軸フラットケーブルの場合のように、専用の同軸コネクタを別体として制作することは必要でなくなる。
【0027】
そして、電気接続部と疑似同軸ケーブル部で裸出する信号線導体と回路導体の長さも従来に比べて大幅に短くなるので、疑似同軸ケーブルとしての良好な伝送損失特性も確保される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の疑似同軸フラットケーブルの1例Aを示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】別の疑似同軸ケーブル部B1を示す断面図である。
【図5】本発明の別の疑似同軸フラットケーブルの1例Cを示す平面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】上面から見たときの電気接続部C2を示す平面図である。
【図8】下面から見たときの電気接続部C2を示す平面図である。
【図9】図7のIX−IX線に沿う平面図である。
【図10】図7のX−X線に沿う平面図である。
【図11】本発明の別の疑似同軸フラットケーブルの1例Dを示す斜視図である。
【図12】本発明の別の疑似同軸フラットケーブルの1例Eを上面から見たときの平面図である。
【図13】疑似同軸フラットケーブルEを下面から見たときの平面図である。
【図14】図12のXIV−XIV線に沿う断面図である。
【図15】疑似同軸フラットケーブルEの電気接続部E2を示す斜視図である。
【図16】図15のXVI−XVI線に沿う断面図である。
【図17】図15のXVII−XVII線に沿う断面図である。
【図18】プラグ構造体の1例Fを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の疑似同軸フラットケーブルの1例Aを図面に示す。図1は疑似同軸フラットケーブルAの平面図、図2は図1のII−II線に沿う断面図、図3は図1のIII−III線に沿う断面図である。
【0030】
この疑似同軸フラットケーブルAは4ピンの疑似同軸フラットケーブルを例示するものであり、絶縁フィルムの表面に後述する疑似同軸ケーブル部A1とその両端部に一体化した状態で電気接続部A2が形成された構造になっていて、全体としては薄い箔体形状になっている。
【0031】
なお、この疑似同軸フラットケーブルAは、例えば携帯電話のヒンジ部に挿通してその電気接続部A2を内蔵モジュールの出入力端子に接続して使用することを考えると、疑似同軸ケーブル部A1と電気接続部A2はいずれもヒンジ部を挿通できる程度に狭幅でかつ低背であることが好ましい。仮に、疑似同軸ケーブル部は従来の極細線同軸ケーブルの場合のようにヒンジ部を挿通可能であっても、電気接続部A2が疑似同軸ケーブル部よりも大幅に幅広であれば両者の挿通を実現することはできない。このようなことから、本発明の疑似同軸フラットケーブルAの場合は、疑似同軸ケーブル部A1の幅と電気接続部A2の幅は等しいか、または電気接続部A2の幅は疑似同軸ケーブルA1の幅の1〜1.5倍に設定されていて、ヒンジ部の孔径を考慮して、全体の幅を最大でも3mmとなるように設定することが好ましい。
【0032】
疑似同軸ケーブル部A1では、図2で示したように、可撓性を有する絶縁フィルム1Aの片面1aに4本の信号線導体2が互いに平行に配線され、それら信号線導体2がいずれも絶縁層3に埋設されている。そして、絶縁層3を被覆して電磁シールド材4aが配置され、同時に絶縁フィルム1Aの他方の表面1a’も電磁シールド材4bで被覆され、それぞれは図示しないアースに接地されている。
【0033】
ここで、信号線導体2は、ポリイミドフィルムのような可撓性を有する絶縁フィルム1Aの片面1aに、フレキシブルプリント配線板に回路パターンを配線する時と同様にして、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術と例えば銅めっき技術を組み合わせて容易に形成することができる。このような公知の単位技術の組み合わせにより、疑似同軸ケーブル部A1では例えば高さ30μm、幅40μmの断面形状を有する信号線導体2を、ピッチ間隔100μmで配線することができる。
【0034】
また、信号線導体2を埋設する絶縁層3は、配線した信号線導体2の上から絶縁性の液状樹脂を塗布したのち当該樹脂を硬化したり、または公知のレジストフィルムを信号線導体2の上面に貼着したのち熱圧着して形成することができる。
【0035】
更に、電磁シールド材4a、4bは、絶縁層3の表面や絶縁フィルム1Aの他方の表面1bに例えば銅のような導電性の金属材料を用いた通常のめっき技術で配置することができる。なおその場合、めっき材料としてステンレス鋼、ニッケルやニッケル合金、銅合金などの高弾性の金属材料を用いると、形成された疑似同軸ケーブル部A1の強度向上を実現することができるので好適である。なお、この電磁シールド材は、上記しためっき技術の適用に限らず、市販の電磁シールドシートを貼着して配置してもよい。
【0036】
一方、電気接続部A2には、図1で示したように、面内に4個の接続端子部Jが2列2行のマトリックス状に配列して形成され、それぞれの接続端子部Jは前記した疑似同軸ケーブル部A1における4本の信号線導体2のそれぞれと電気的に接続されている。すなわち、接続端子部Jのいずれかから出入力した信号は、当該接続端子部Jと接続する信号線導体2のみを伝送できるようになっている。したがって、電気接続部A2に形成される接続端子部Jの個数は、同軸ケーブル部A1に埋設されている信号線導体2の本数と同じ数になっている。
【0037】
ここで、接続端子部Jは、接続対象の相手材の出入力端子と電気的に接続して両者間の電気接続構造を形成することからして、相手材の出入力端子がオス型構造であればメス型構造(メス端子部)として形成され、また相手材の出入力端子がメス型構造であればオス型構造(オス端子部)として形成されるのであるが、以下では、この接続端子部Jがメス型構造(メス端子部)である場合について説明する。
【0038】
本発明の接続端子部Jとしては、特許第4059522号や特許第4247798号に開示されている構造のメス端子部が採用される。
【0039】
具体的には、図3で示したように、可撓性を有する絶縁フィルム1Bの片面1bに小面積の薄い導電性パッド部5が形成され、この導電性パッド部5の面内領域に位置する絶縁フィルム1Bの部分には当該絶縁フィルムの厚み方向に貫通する貫通孔6が形成され、また前記導電性パッド部5の面内には前記貫通孔6と連通する開口7(図では十文字のスリット開口)が形成され、そして前記導電性パッド5からは回路導体8が引き出され、それが絶縁フィルムの表面1bに配線された構造になっている。
【0040】
このような電気接続部A2は、前記した特許第4059522号や特許第4247798号に記載されているように、絶縁フィルム1Bにフォトリソグラフィー技術とエッチング技術とめっき技術を組み合わせて容易に製作することができる。その場合、前記した疑似同軸ケーブル部A1の信号線導体2の場合と同様に、高さ30μm、幅40μmの回路導体8を配線することができ、また厚みが40μmで径が300μm程度の導電性パッド5を形成することができる。その場合、絶縁フィルム1Bの厚みを25μmとすれば、電気接続部A2の厚みは、全体として65μm程度になる。
【0041】
更には、用いる絶縁フィルム1Bとして、疑似同軸ケーブル部A1の制作時に用いた絶縁フィルム1Aと同じ幅か1〜1.5倍の幅の絶縁フィルムを用いれば、制作された電気接続部A2の幅も疑似同軸ケーブル部A1と等幅か、または1〜1.5倍の幅にすることができる。
【0042】
そして、各導電性パッド部5から引き出されて絶縁フィルムの表面1bに配線されたそれぞれの回路導体8は、その端部が前記した信号線導体2のそれぞれの端部と電気的に接続されることにより、同軸ケーブル部A1の端部に電気接続部A2が一体化して接続されている。
【0043】
この接続端子部(メス端子部)Jの場合、接続対象である相手材の突起形状をしたオス端子部を、導電性パッド部5の方から開口7を介して貫通孔6に挿入すると、導電性パッド部5と貫通孔付近の絶縁フィルム1Bがオス端子部の挿入方向に撓み、その時に発生する弾性力によって導電性パッド部5の表面がオス端子部と圧接する。その結果、オス端子部はメス端子部Jで機械的に確保され、同時にオス端子部(それを具備する相手材)と接続端子部J(それと接続する信号線導体2)との間で電気接続構造が形成される。
【0044】
このように、疑似同軸フラットケーブルAは、上記した構造の疑似同軸ケーブルブA1の端部に電気接続部A2が一体化した構造になっているのであるが、その構造は、絶縁フィルム1Aに形成されている疑似同軸ケーブル部A1と、絶縁フィルム1Bに形成されている電気接続部A2をそれぞれ別体として製造し、疑似同軸ケーブルA1の信号線導体2の端部に電気接続部A2の接続端子部Jから引き出されている回路導体8の端部を例えばはんだ接続して形成することができる。
【0045】
しかし、この方法では互いに別体として製造された部材に配線されている細線をはんだ付けする作業が必要となるので、作業効率の面で問題がある。
そこで、本発明の場合、疑似同軸ケーブルA1と電気接続部A2の一体化構造は次のようにして形成することが好適である。
【0046】
すなわちその方法は、絶縁フィルム1Aの片面1aに前記した信号線導体を配線して疑似同軸ケーブル部A1を形成し、そして同じ絶縁フィルム1Aの両端部の同じ片面1aに前記した接続端子部Jの導電性パッド部5が形成された電気接続部A2を同時に形成する方法である。つまり、疑似同軸フラットケーブルA1と電気接続部A2が同一の絶縁フィルムを共有する状態で疑似同軸フラットケーブルを製造する方法である。
【0047】
この方法では、1枚の絶縁フィルム(図1と図3で絶縁フィルム1Aと絶縁フィルム1Bを同一フィルムとすることに相当する)の同一片面に、疑似同軸ケーブル部A1の信号線導体2と接続端子部Jの導電性パッド部5とそこから引き出される回路導体8を同一の金属材料を用いた後述するめっき技術によって同時に形成する。したがって、信号線導体2と回路導体8と導電性パッド部5が同じ金属材料から成るめっき導体で形成されたとき、そのときには同時に、疑似同軸ケーブル部A1と電気接続部2の一体化作業が完了されたことになる。
この方法の場合、前者の方法の場合のように、疑似同軸ケーブル部と電気接続部をそれぞれ別体として製造したのち両者を一体化する作業を省略できるという点で好適である。
【0048】
図4は別の疑似同軸フラットケーブルBの疑似同軸ケーブル部B1を示す断面図である。
この疑似同軸ケーブル部B1の場合、絶縁フィルム1Aの片面1aに4本の信号線導体2が所定の間隔を置いて平行に配線され、それらが絶縁層3に埋設され、全体が電磁シールド材4a、4bで被覆されていることは図2で示した疑似同軸ケーブル部A1の場合と同じであるが、各信号線導体2の間に、高さは信号線導体2の高さと同じである3個の電磁シールド材4cが配置され、各電磁シールド材4cもまた絶縁層3で埋設されているという点で異なっている。これらの電磁シールド材4cは、いずれも疑似同軸ケーブル部A1の電磁シールド材4a、4bの場合と同様に図示しないアースと接地されていることはいうまでもない。
【0049】
そして、この疑似同軸ケーブル部B1の信号線導体2の端部は、前記した疑似同軸フラットケーブルAの場合と同様に、図3で示した電気接続部A2の回路導体8と接続され、一体化されている。ただし、電磁シールド材4cは、疑似同軸ケーブル部B1の部分に配置されておればよく、この疑似同軸ケーブル部B1よりも長く配置することは必要とされない。
この電磁シールド材4cは、例えば金属材料を用いためっき技術を適用して信号線導体2の配線時に同時に配置することができる。
【0050】
このような疑似同軸ケーブル部B1を用いると、電磁シールド材4cの両側に配線されている信号線導体2に対して電磁波のシールド効果が図2の疑似同軸ケーブル部A1の場合よりも向上するので、得られた疑似同軸フラットケーブルBの伝送損失特性は向上する。
【0051】
次に本発明の別の疑似同軸フラットケーブルCについて説明する。
図5は、疑似同軸フラットケーブルCの全体的な平面図であり、図6は図5のVI−VI線に沿う断面図である。そして、図7は疑似同軸フラットケーブルCの電気接続部C2を一方の側(これを上面側とする)から見たときの平面図、図8は同じ電気接続部C2を他方の側(これを下面側または裏面側とする)から見たときの平面図である。
【0052】
この疑似同軸フラットケーブルCは、信号線導体を内蔵する後述の疑似同軸ケーブル部C1と、その両端部には後述する電気接続部C2が一体化した構造になっている。
電気接続部C2の疑似同軸ケーブル部C1側には、5行4列の後述する接続端子部J1、先端側には同じく5行4列の接続端子部J2がそれぞれマトリックス状に配列し、全体としては10行4列の接続端子部が合計で40個マトリックス状に配列している。そして接続端子部J1からは疑似同軸ケーブル部C1に内蔵された信号線導体と接続する回路導体81、接続端子部J2からは同じく信号線導体と接続する回路導体82がそれぞれ引き出されている。
【0053】
なお、接続端子部J1,J2はメス型構造(メス端子部)、オス型構造(オス端子部)のいずれであってもよいが、以下の説明は、接続端子部がメス端子部であり、また疑似同軸ケーブル部C1と電気接続部C2がいずれも1枚の同一絶縁フィルムに形成される場合について行う。
【0054】
最初に図6に基づいて疑似同軸ケーブル部C1について説明する。
この疑似同軸ケーブル部C1の場合、絶縁フィルム1Aの上面1aに20本の信号線導体2aが互いに平行に配線され、下面1bにも20本の信号線導体2bが互いに平行に配線され、全体として40本の信号線導体が絶縁フィルム1Aに配線されている。そしてこの絶縁フィルム1Aの端部は、疑似同軸ケーブル部C1の端部から延在し、その延在した箇所に、後述するように、接続端子部J1,J2が形成されることにより、そこが電気接続部C2になる。
【0055】
上面の信号線導体2aは絶縁層3aに埋設され、下面の信号線導体2bは絶縁層3bに埋設されている。そして、絶縁層3aを被覆して電磁シールド材4aが、絶縁層3bを被覆して電磁シールド材3bがそれぞれ配置され、これら電磁シールド材4a、4bはいずれも図示しないアースに接地されている。
すなわち、この疑似同軸ケーブル部C1は、絶縁フィルム1Aの両面に配線された複数の信号線導体2a、2bを具備し、これら信号線導体は絶縁フィルム1Aを介して2層構造で形成されていて、かつ全体の表面は電磁シールド材4a、4bによって両面が電磁シールドされた構造になっている。
【0056】
この疑似同軸ケーブル部C1は、図2で示した疑似同軸シールド部A1の場合と同様に、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術とめっき技術を組み合わせて形成することができる。そのとき、信号線導体2a、2bの配線時に、図4で示した疑似同軸ケーブル部B1の場合と同様に各信号線導体の間に電磁シールド材4cを同時に配置して全体の伝送損失特性を高めることができる。
【0057】
この疑似同軸ケーブル部C1の場合、厚み25μm程度のポリイミドフィルム(絶縁フィルム)を用い、高さ30μm、幅40μm程度の信号線導体をピッチ間隔100μ程度で配線し、信号線導体の間に高さ30μm、幅20μm程度の電磁シールド材を配置し、それらを埋設して厚み30μm程度の絶縁層で被覆すれば、全体として、3mm幅の中に40本の信号線導体を内蔵することができる。しかもその場合、全体の厚みは150μm以下であり、40本の信号線導体を内蔵する疑似同軸ケーブル部としては、極めて狭幅でかつ薄型な構造を実現することができる。
【0058】
次に、図7と図8に基づいてこの疑似同軸ケーブル部C1の端部に一体化されている電気接続部C2について説明する。
【0059】
まず電気接続部C2には、メス端子部J1、J2がマトリックス状に配列して形成されている。これらのメス端子部J1、J2は、いずれも、図6の疑似同軸ケーブル部C1から延在している同じ絶縁フィルム1Aに形成されている。すなわち、疑似同軸ケーブル部C1と絶縁フィルムを共有する状態で電気接続部C2にはこれらメス端子部J1、J2が形成されている。そしてそれらの構造は、図1と図3で示した電気接続部A2に形成されている接続端子部Jの場合と基本的には同じであるが、回路導体8の引き出し態様でメス端子部J1,J2では異なる構造になっている。
【0060】
そこで、図7のIX−IXに沿う断面図である図9、図7のX−X線に沿う断面図である図10に基づいてメス端子部J1、J2を説明する。
メス端子部J1、J2は、いずれも、疑似同軸ケーブル部C1から延在している絶縁フィルム1Aの片面(上面)1aに導電性パッド部5が形成され、その面内領域で下に位置する絶縁フィルム1Aの部分に他方の表面(下面または裏面)1a’にまで至る貫通孔6が形成され、そして導電性パッド部5の面内には前記貫通孔6と連通する開口(十文字スリットの開口)7が形成され、これら全体でメス端子部を構成している。
【0061】
そしてメス端子部J1の場合、各列5個の導電性パッド部5から引き出されている回路導体81はいずれも絶縁フィルム1Aの上面1aに配線され、その端部は疑似同軸ケーブル部C1の方向に延長している。つまり、回路導体81と導電性パッド部5は同一平面上に形成されている。そしてこれらの回路導体81は、図6で示した疑似同軸ケーブル部C1における信号線導体2aと接続されている。
【0062】
一方、メス端子部J2の場合、その回路導体82は絶縁フィルム1Aの下面(裏面)1a’に配線され、その端部は図6で示した疑似同軸ケーブル部C1の方向に延長し、絶縁フィルム1Aの下面1a’に配線されている信号線導体2bと接続されている。つまり、回路導体82と導電性パッド部5は同一平面上に形成されておらず、互いに絶縁フィルム1Aの反対側の表面に形成されている。そのため、メス端子部J2の場合、導電性パッド部5と回路導体82の間に位置する絶縁フィルム1Aに例えば銅のような導電性材料から成るビア導体9を形成して両者の電気的接続がとられている。
【0063】
ここで、メス端子部J1,J2の構成要素は、いずれもフォトリソグラフィー技術とエッチング技術とめっき技術を組み合わせて形成されるのであるが、このとき、疑似同軸ケーブル部C1の信号線導体2a、2bと、メス端子部J1、J2の導電性パッド部5と、回路導体81,82とは同一のめっき工程で形成することができる。
その場合、信号線導体2aと回路導体81、信号線導体2bと回路導体82は、いずれも同一の導体材料から成る1本の一体化しためっき導体の経路として導電性パッド部5と同時に絶縁フィルム1Aの表面に形成される。したがってこの時点で、疑似同軸ケーブル部C1と電気接続部C2は、同じ絶縁フィルムを共有した状態で一体的に形成されることになる。
【0064】
この電気接続部C2では、導電性パッド部5の大径部の径を0.35mm、厚みを0.03mmとし、ピッチ間隔を0.5mmとし、回路導体81,82の高さ30μm、幅40μmとすれば、図7で示した10行4列のメス端子部J1,J2を形成した場合であっても、それら全体を幅3mmの平面内に優に収容することができる。しかもその場合、絶縁フィルム1Aの厚みを25μmとすれば全体の厚みを0.15mm程度に低背化することができる。
【0065】
したがって、図6で示した疑似同軸ケーブル部C1とこの電気接続部C2が一体化している本発明の疑似同軸フラットケーブルCの場合、全体の厚みが150μm程度、接続対象の相手材との接続部の幅が3mm程度となり、従来の専用コネクタ部を用いた場合に比べて大幅な狭幅化、低背化が実現されている。また裸出している信号線導体2a、2bと回路導体81,82を合わせた長さも短くなり、伝送損失特性の劣化要因も従来に比べて大幅に削減されることになる。
【0066】
例えば、厚み25μm、幅3mmのポリイミドフィルムを絶縁フィルムとし、その両面に高さ30μm、幅40μm、長さ50mmである銅の信号線導体をピッチ間隔100μmでそれぞれ20本配線し、それらを電気絶縁性樹脂で埋設し、全体を厚み20μmのめっき銅から成る電磁シールド材で被覆した図6で示した疑似同軸ケーブル部と、同じポリイミドフィルムに、径350μm、厚み20μmの導電性パッド部を10行4列、そこから引き出される高さ30μm、幅40μmの回路導体を有するメス端子部が形成されている電気接続部とから成る図5で示した疑似同軸フラットケーブルCの場合、相手材のバンプ(オス端子部)との接続部における高さを0.3mm程度にでき、また裸出する信号線導体と回路導体の合計長さを0.3mm程度にすることができる。
そしてその場合、測定周波数250MHz〜8GHzにおける挿入損失は10db程度であり、従来の40本の多軸極細線同軸ケーブルと専用の同軸コネクタとを接続した場合の伝送損失特性と遜色はなかった。
【0067】
図11に更に別の疑似同軸フラットケーブルの1例Dを示す。
この疑似同軸フラットケーブルDは、既に説明した疑似同軸フラットケーブルCにおける電気接続部C2の他方の表面1a’側(貫通孔6が表出する側)に、例えば剛性を備えた金属材料から成り、前記した電気接続部C2とほぼ同一の平面形状を有する板状ガイド部材10Aを配置した構造になっている。金属材料としてはステンレス鋼、ニッケルやニッケル合金など高弾性材料が好適である。また板状ガイド部材の厚みは100μm程度であればよい。
板状ガイド部材10Aには、メス端子部J1,J2の貫通孔6よりも大径の貫通孔10aがマトリックス状に配列するメス端子部J1,J2に対応した配列で形成され、他の部分(貫通孔10aが形成されていない部分)は絶縁フィルム1Aの表面1aに密着した状態で当該絶縁フィルムの部分に固着されている。
この板状ガイド部材10Aは、予め薄い金属板材を機械加工して別体として製造しておき、それを電気接続部C2の表面1a’に貼着してもよいし、または絶縁フィルム1Aの表面1a’に所定の金属材料を用いてめっき技術とエッチング技術とフォトリソグラフィー技術を適用して形成することもできる。
【0068】
この疑似同軸フラットケーブルDは次のようにして使用される。
すなわち、図11で示したように、メス端子部J1、J2の開口7に挿入可能なバンプ11がマトリックス状に配列されているオス端子部を有し、かつ、バンプ11の配列群を囲撓し、前記した板状ガイド部材10Aを嵌め込むことができる門型形状をした枠体12が、配列するバンプ11の周囲に固着されている相手材D’の当該オス端子部に、電気接続部C2を嵌め込む。なお、この枠体12も、金属材料などで別体として製造しておき、それを相手材D’に貼着したり、または相手材D’にめっき技術やエッチング技術やフォトリソグラフィー技術を適用して形成することができる。
板状ガイド部材10Aは枠体12の中に固定され、同時に相手材D’のオス端子部のバンプ11はそれぞれメス端子部J1,J2の開口7から貫通孔6に挿入されて導電性パッド部と圧接し、ここに疑似同軸フラットケーブルDと相手材D’の間で電気的な接続構造が形成される。
疑似同軸フラットケーブルDにおける電気接続部C2の絶縁フィルム1Aは、板状ガイド部材10Aで固定された状態にあるため、開口7へのバンプ11の挿入時に当該開口を含む貫通孔6の周辺に位置する絶縁フィルム1Aが大きく撓むことはなく、そのため開口7の位置ずれは起こらず、全ての開口と全てのバンプは一括して嵌合される。
【0069】
次に、本発明の更に別の疑似同軸フラットケーブルEと、その疑似同軸フラットケーブルEの電気接続部との接続に用いるプラグ構造体につき、図面に基づいて説明する。
図において、図12は、疑似同軸フラットケーブルEを上面側から見たときの平面図、図13は、裏面側から見たときの一部切欠き平面図である。図14は、図12のXIV−XIV線に沿う断面図である。図15は、疑似同軸フラットケーブルEの電気接続部E2の1例を示す斜視図である。図16と図17は、それぞれ、図15のXVI−XVI線、XVII−XVII線に沿う断面図である。そして、図18は疑似同軸フラットケーブルEの電気接続部との接続に用いるプラグ構造体の1例を示す斜視図である。
【0070】
まず、この疑似同軸フラットケーブルEは単軸の疑似同軸フラットケーブルであって、図12と図13で示したように、疑似同軸ケーブル部E1とその両端部に一体的に形成された電気接続部E2,E2で構成されている。
この疑似同軸ケーブル部E1と電気接続部E2は、いずれも、同一の絶縁フィルム1Aに一体的に形成されている。
疑似同軸ケーブル部E1では、図14で示したように、絶縁フィルム1Aの下面1aに1本の信号線導体2が配線され、それは絶縁層3で埋設されている。そして、この絶縁層3を被覆して導電性皮膜13Bが形成されている。一方、絶縁フィルム1Aの上面1a’にも、そこを被覆して導電性皮膜13Aが形成されている。なお、この導電性皮膜13A、13Bは、いずれも図1と図2で示した疑似同軸ケーブル部A1における電磁シールド材4aそのものであってもよく、また絶縁フィルム1Aの片面(上面)1a’と絶縁層3の上に例えば銅めっきを施して形成したものであってもよい。そしてこれらの導電性皮膜はいずれも図示しないアースに接地されている。
【0071】
一方、絶縁フィルム1Aの両端部における片面(上面)1a’には後述する板状ガイド部材10Bが当該絶縁フィルムに密着して固着されることにより電気接続部E2が形成されている。
この板状ガイド部材10Bは導電性の材料から成り、絶縁フィルム1Aとほぼ等幅の薄い板状体であって、図11で示した疑似同軸フラットケーブルDの板状ガイド部材10Aの場合と同じように、この板状ガイド部材10Bを絶縁フィルム1Aの上面1a’に配置したときに、当該絶縁フィルム1Aに形成されているメス端子部Jの貫通孔6の箇所に対応する箇所にメス端子部Jの貫通孔6と同等かやや大径の貫通孔10bが1個形成されている。そして、この板状ガイド部材10Bは、疑似同軸ケーブル部E1の表面に形成されている導電性皮膜13Aと接触または電気的に接続されている。
【0072】
この板状ガイド部材10Bの下に位置する絶縁フィルム1Aにはメス端子部Jが形成され、それは、図16で示したように、その下面1aに導電性パッド部5と、その上の絶縁フィルムの部分に形成された貫通孔6と、導電性パッド部5の面内に形成され、前記貫通孔6と連通する開口7とで構成され、そして導電性パッド部5から回路導体8が引き出され、それは、図13で示したように、疑似同軸ケーブル部E1の信号線導体2と一体化している。したがって、メス端子部Jの開口7、貫通孔6と板状ガイド部材10Bの貫通孔10bは互いに連通している。
そして、絶縁フィルム1Aの下面1aでは、導電性パッド部5と回路導体8が形成されている箇所を除いた部分が導電性パッド部5と同じ厚みの導電性皮膜13Bで被覆されている。したがって、図13で示したように、導電性パッド部5および回路導体8と導電性皮膜13Bの間には絶縁フィルム1Aの下面1aが表出していて、その部分は絶縁状態になっている。また、導電性パッド部5から引き出されている回路導体8は、疑似同軸ケーブル部E1に近接した部分が絶縁層3’で被覆されている。
【0073】
一方、メス端子部Jを取り囲んで形成されている係合部Kは、電気接続部E2と後述するプラグ構造体のバンプと係合するための部位であり、同時に、疑似同軸フラットケーブルEをプラグ構造体に接続したときに、その接続部において外部からの電波やノイズなどの影響を遮断して電磁シールド効果を発揮する。
【0074】
係合部Kは、図17で示したように、絶縁フィルム1Aに形成された貫通孔6’と、絶縁フィルム1Aの下面1aを被覆して形成される導電性皮膜13Bと、そこに形成され、かつ前記貫通孔6’に連通する開口7’とで構成されている。そして、絶縁フィルム1Aの上面1a’に固着される板状ガイド部材10Bには、上記した貫通孔6’と連通する貫通孔10cが形成されて、開口7’と貫通孔6’と貫通孔10cは互いに連通している。
したがって、この係合部Kでは、メス端子部Jの場合と異なって導電性パッド5は形成されていないが、開口7’の付近の導電性皮膜13Bが導電性パッド5の場合と同じように、後述するプラグ構造体のバンプがこの開口7’に挿入されると、バンプの挿入方向に撓み、そのときに発生する弾性力でバンプに圧接し、当該バンプを係合すると同時に電気的な接続構造を形成する。
【0075】
なお、導電性皮膜13Bの上に位置する絶縁フィルム1Aには、図17で示したように、前記導電性皮膜13Bと板状ガイド部材10Bの間を電気的に接続する複数のビア導体9’を埋設し、導電性皮膜13B−ビア導体9’−板状ガイド部材10B−導電性皮膜13A―アース(図示しない)から成る導通経路を形成することが好ましい。この導通経路が、疑似同軸フラットケーブルEを後述するプラグ構造体に接続したときに、外部からの電波やノイズに対する電磁シールド効果を高めることができるからである。
【0076】
このメス端子部Jの導電性パッド部5と回路導体8、および係合部Kを形成するに際しては、まず絶縁フィルム1Aの片面(下面)1aの全面に例えば銅をめっき材料にして所定厚みの導電性皮膜13Bを製膜し、ついで、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術を適用して、メス端子部Jを形成すべき箇所と係合部Kを形成すべき個所を残して導電性皮膜を除去して絶縁フィルムの表面1aを表出させたのち、残存している導電性皮膜13Bの箇所に開口7、7’をそれぞれ形成すればよい。
【0077】
次に、図12〜図17で示した疑似同軸フラットケーブルEと接続して用いられるプラグ構造体の1例Fを説明する。
このプラグ構造体は、絶縁基材の表面に後述する諸要素をフォトリソグラフィー技術、エッチング技術、およびめっき技術を適用して製造した1個のチップ部材であってもよい。その場合、このチップ部材は図示しないプリント配線板の端子部に実装して用いられる。またこのプラグ構造体は、プリント配線板の所定の端子部に上記技術を組み合わせて後述の諸要素を形成したものであってもよい。
【0078】
このプラグ構造体Fは、図18の斜視図で示したように、絶縁基材14の片面にバンプ形状をした1個のオス端子部11が突設して形成され、それを取り囲んで4個のバンプ15が同じく突設して形成されている。その場合、オス端子部11は、絶縁基材14を貫通して他の面(下面または裏面)にまで表出して、このプラグ構造体Fが配置されるプリント配線板の端子部と電気的に接続できるように形成され、バンプ15は、絶縁基材14の下面に表出することなく、プリント配線板の端子部とは絶縁状態を確保して形成されている。
【0079】
また、オス端子部11とバンプ15は、前記した疑似同軸フラットケーブルEとプラグ構造体Fを接続したときに、電気接続部E2におけるメス端子部Jと対応する箇所にオス端子部11が、係合部Kと対応する箇所にバンプ15がそれぞれ形成されている。
そして、絶縁基材14の表面には、4個のバンプ15の間のみを電気的に接続する導電性皮膜16が形成されている。したがって、オス端子部11とバンプ15の間は電気的に絶縁された状態になっている。
【0080】
このような疑似同軸フラットケーブルEの電気接続部E2をプラグ構造体Fに接続すると、プラグ構造体Fのオス端子部11はメス端子部Jの開口7から貫通孔6、10bに挿入され、そのときに発生する弾性力によって導電性パッド部5で確保されるとともに導電性パッド部5との間で導通構造を形成する。したがって、プリント配線板の端子部からの出入力信号は、オス端子部11−導電性パッド部5−回路導体8−信号線導体2のみを伝搬する。
【0081】
一方、プラグ構造体Fのバンプ15は係合部Kの導電性皮膜13Bに形成されている開口7’から貫通孔6’、10cに挿入され、そのときに発生する弾性力によって導電性皮膜13Bで確保され、同時に導電性皮膜16が絶縁フィルム1Aの下面1aの導電性皮膜13Bと圧接されるので、板状ガイド部材10Bとの間で導通構造を形成する。したがって、ここに、バンプ15から疑似同軸ケーブル部E1の導電性皮膜13Aを経て図示しないアースにまで至る導通経路が形成されることになり、外部からの電波やノイズの影響を遮断する電磁シールド効果が発揮される。
【0082】
なお、この疑似同軸フラットケーブルEやプラグ構造体Fの場合、メス端子部Jとオス端子部11がいずれも1個であるため、全体の幅を非常に狭幅にすることができ、また電気接続部E2を非常に小型化することができる。しかし、この単軸の場合に比べれば拡幅するとはいえ、その幅が許容される範囲内であれば、例えば数個(2〜3個)のメス端子部Jを横1列に形成したり、長手方向に縦1列に形成することもできる。その場合、プラグ構造体のオス端子部11も上記したメス端子部Jの配列に対応した状態で形成されることになる。
【符号の説明】
【0083】
A,C,D、E 疑似同軸フラットケーブル
A1、B1、C1、E1 疑似同軸ケーブル部
A2、C2、E2 電気接続部
D’、F 相手材
J、J1、J2 接続端子部(メス端子部)
K 係合部
1A、1B 絶縁フィルム
1a 絶縁フィルム1Aの一方の表面
1a’絶縁フィルム1Aの他方の表面
1b 絶縁フィルム1Bぼ一方の表面
2、2a、2b 信号線導体
3、3a、3b 絶縁層
4a、4b、4c 電磁シールド材
5 導電性パッド部
6、6’貫通孔
7、7’開口
8、81、82 回路導体
9、9’ビア導体
10A、10B 板状ガイド部材
10a、10b、10c 貫通孔
11 オス端子部
12 枠体
13A,13B 導電性皮膜
14 絶縁基材
15 バンプ
16 導電性皮膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの片面または両面に互いに平行に配線された信号線導体と、前記信号線導体を埋設する絶縁層と、前記絶縁層を被覆する電磁シールド材とから成る疑似同軸ケーブル部を有し、前記疑似同軸ケーブル部の端部には、前記信号線導体の端部と電気的に接続する回路導体が形成された接続端子部を有する電気接続部が一体化して形成されていることを特徴とする擬似同軸フラットケーブル。
【請求項2】
前記信号線導体が複数本配線され、前記信号線導体の間には、前記信号線導体と同じ高さの電磁シールド材が前記絶縁層を介して配置されている請求項1の疑似同軸フラットケーブル。
【請求項3】
前記電気接続部の幅が、前記疑似同軸ケーブル部の幅と等しいか、または1〜1.5倍の幅である請求項1または2のいずれかの疑似同軸フラットケーブル。
【請求項4】
前記疑似同軸ケーブル部と前記電気接続部が、同一の絶縁フィルムに形成されている請求項1〜3のいずれかの疑似同軸フラットケーブル。
【請求項5】
前記疑似同軸ケーブル部の前記信号線導体と前記電気接続部の前記接続端子部に接続して形成された前記回路導体が、前記絶縁フィルムにめっき技術を適用して形成される一体的なめっき導体から成る請求項4の疑似同軸フラットケーブル。
【請求項6】
前記接続端子部が、1または複数のメス端子部またはオス端子部である請求項1〜5のいずれかの疑似同軸フラットケーブル。
【請求項7】
前記接続端子部がメス端子部であって、前記メス端子部は、絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの片面に形成された導電性パッド部と、前記導電性パッド部の面内領域で前記絶縁フィルムの厚み方向に形成された貫通孔と、前記導電性パッド部の面内に形成され、前記貫通孔と連通する開口とから成り、前記導電性パッド部からは前記信号線導体の端部と電気的に接続する前記回路導体が引き出されている請求項1〜6のいずれかの疑似同軸フラットケーブル。
【請求項8】
複数の前記メス端子部がマトリックス状に配列して形成されている請求項7の疑似同軸フラットケーブル。
【請求項9】
複数本の前記信号線導体が前記絶縁フィルムの両面に配線され、前記絶縁フィルムの端部には、複数の前記メス端子部がマトリックス状に配列して形成され、その一部は前記絶縁フィルムの一方の表面に配線された前記信号線導体と電気的に接続され、残りは前記絶縁フィルムの他方の表面に配線された前記信号線導体と電気的に接続されている請求項1〜8のいずれかの疑似同軸フラットケーブル。
【請求項10】
前記電気接続部の前記絶縁フィルムの表面には、前記メス端子部が形成されている箇所以外の前記絶縁フィルムの部分を覆う板状ガイド部材が固着されている請求項1〜9のいずれかの疑似同軸フラットケーブル。
【請求項11】
前記疑似同軸ケーブル部が1本の信号線導体を有し、前記電気接続部が前記信号線導体と接続する1個の前記メス端子部と、前記メス端子部の周囲の少なくとも2箇所に形成され、前記電気接続部と接続される相手材を係止する係止部とを有し、前記疑似同軸ケーブル部の片面はアースと接続する導電性皮膜で被覆され、前記電気接続部の両面のうち、前記メス端子部の形成箇所以外の表面は導電性皮膜で被覆されている請求項1〜10のいずれかの疑似同軸フラットケーブル。
【請求項12】
前記電気接続部の両面に形成されている前記導電性皮膜の間が、ビア導体を介して導通可能な状態にある請求項11の疑似同軸フラットケーブル。
【請求項13】
請求項11または12の疑似同軸フラットケーブルに接続される相手材の端子部に配置されるプラグ構造体であって、絶縁基材の片面に、前記疑似同軸フラットケーブルの前記メス端子部と嵌合する1個のオス端子部が突設して形成され、前記疑似同軸フラットケーブルの前記係止部と係合する少なくとも2個のバンプが、前記オス端子部と絶縁された状態で、しかし相互間は導通可能な状態で突設して形成されている疑似同軸フラットケーブル用のプラグ構造体。
【請求項1】
絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの片面または両面に互いに平行に配線された信号線導体と、前記信号線導体を埋設する絶縁層と、前記絶縁層を被覆する電磁シールド材とから成る疑似同軸ケーブル部を有し、前記疑似同軸ケーブル部の端部には、前記信号線導体の端部と電気的に接続する回路導体が形成された接続端子部を有する電気接続部が一体化して形成されていることを特徴とする擬似同軸フラットケーブル。
【請求項2】
前記信号線導体が複数本配線され、前記信号線導体の間には、前記信号線導体と同じ高さの電磁シールド材が前記絶縁層を介して配置されている請求項1の疑似同軸フラットケーブル。
【請求項3】
前記電気接続部の幅が、前記疑似同軸ケーブル部の幅と等しいか、または1〜1.5倍の幅である請求項1または2のいずれかの疑似同軸フラットケーブル。
【請求項4】
前記疑似同軸ケーブル部と前記電気接続部が、同一の絶縁フィルムに形成されている請求項1〜3のいずれかの疑似同軸フラットケーブル。
【請求項5】
前記疑似同軸ケーブル部の前記信号線導体と前記電気接続部の前記接続端子部に接続して形成された前記回路導体が、前記絶縁フィルムにめっき技術を適用して形成される一体的なめっき導体から成る請求項4の疑似同軸フラットケーブル。
【請求項6】
前記接続端子部が、1または複数のメス端子部またはオス端子部である請求項1〜5のいずれかの疑似同軸フラットケーブル。
【請求項7】
前記接続端子部がメス端子部であって、前記メス端子部は、絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの片面に形成された導電性パッド部と、前記導電性パッド部の面内領域で前記絶縁フィルムの厚み方向に形成された貫通孔と、前記導電性パッド部の面内に形成され、前記貫通孔と連通する開口とから成り、前記導電性パッド部からは前記信号線導体の端部と電気的に接続する前記回路導体が引き出されている請求項1〜6のいずれかの疑似同軸フラットケーブル。
【請求項8】
複数の前記メス端子部がマトリックス状に配列して形成されている請求項7の疑似同軸フラットケーブル。
【請求項9】
複数本の前記信号線導体が前記絶縁フィルムの両面に配線され、前記絶縁フィルムの端部には、複数の前記メス端子部がマトリックス状に配列して形成され、その一部は前記絶縁フィルムの一方の表面に配線された前記信号線導体と電気的に接続され、残りは前記絶縁フィルムの他方の表面に配線された前記信号線導体と電気的に接続されている請求項1〜8のいずれかの疑似同軸フラットケーブル。
【請求項10】
前記電気接続部の前記絶縁フィルムの表面には、前記メス端子部が形成されている箇所以外の前記絶縁フィルムの部分を覆う板状ガイド部材が固着されている請求項1〜9のいずれかの疑似同軸フラットケーブル。
【請求項11】
前記疑似同軸ケーブル部が1本の信号線導体を有し、前記電気接続部が前記信号線導体と接続する1個の前記メス端子部と、前記メス端子部の周囲の少なくとも2箇所に形成され、前記電気接続部と接続される相手材を係止する係止部とを有し、前記疑似同軸ケーブル部の片面はアースと接続する導電性皮膜で被覆され、前記電気接続部の両面のうち、前記メス端子部の形成箇所以外の表面は導電性皮膜で被覆されている請求項1〜10のいずれかの疑似同軸フラットケーブル。
【請求項12】
前記電気接続部の両面に形成されている前記導電性皮膜の間が、ビア導体を介して導通可能な状態にある請求項11の疑似同軸フラットケーブル。
【請求項13】
請求項11または12の疑似同軸フラットケーブルに接続される相手材の端子部に配置されるプラグ構造体であって、絶縁基材の片面に、前記疑似同軸フラットケーブルの前記メス端子部と嵌合する1個のオス端子部が突設して形成され、前記疑似同軸フラットケーブルの前記係止部と係合する少なくとも2個のバンプが、前記オス端子部と絶縁された状態で、しかし相互間は導通可能な状態で突設して形成されている疑似同軸フラットケーブル用のプラグ構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−258473(P2011−258473A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133368(P2010−133368)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(595063341)株式会社旭電化研究所 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(595063341)株式会社旭電化研究所 (2)
【Fターム(参考)】
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