説明

疼痛状態を治療するための、カリウムチャネル開口薬及びナトリウムチャネル阻害剤又はナトリウムチャネルに影響を与える活性物質の組み合わせ

本発明は、高い筋緊張に関連する疼痛状態の治療のための、カリウムチャネル開口薬及びナトリウムチャネル阻害剤の薬物組み合わせに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上昇した筋緊張に関連する疼痛状態の治療のための、カリウムチャネル開口薬及びナトリウムチャネル阻害剤の薬剤の組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様の疼痛疾患は、上昇した骨格筋緊張に関連する。ある場合には、痛みの進行は関節中の炎症により始まり、その結果疼痛状態が生じ、そしてしばしば有痛性筋痙攣を伴う。このような疾患の治療としては、例えばベンゾジアゼピンなどが挙げられるが、それらは中毒を起こす著しい可能性を伴い、そのため使用が限られてしまう。例えばリウマチ様炎症などの基礎疾患の治療では、しばしば適切で十分な治療的成功が得られないことがある。そのため、鎮痛薬及び/又は骨格筋弛緩薬の追加投与がしばしば示唆されている。
【0003】
中枢作用性筋弛緩薬は、リュウマチ疾患若しくは神経疾患に関係する痙攣に関連する有痛性筋痙攣及び/又は硬直に苦しむ患者の異常に上昇した筋緊張を軽減するために臨床診療で使用されている。多くの対応の活性物質は商業的に入手可能であるが、それらの臨床有用性はしばしば疑わしく又は所望されない副作用により制限される。
【0004】
このような活性物質の1つのクラスはNa+チャネル阻害物質である。それらは上昇した筋緊張を弛緩できることが示唆されている。臨床的に適切な濃度のプロポフォールは、筋細胞膜のナトリウムチャネルに対して明確な阻害作用を有することが明らかにされている。この機構が筋緊張の減少に寄与している可能性がある(Haeseler 他, Anesth Analg 2001 ; 92 : 1192-8)。Na+チャネル阻害によって、シナプス前末端からの神経伝達物質の放出の阻害がもたらされることが同様に明らかにされている(Obrenovitch, Int Rev Neurobiol 1997 ; 40 : 109-35)。神経保護作用成分であるリルゾールは、ナトリウムチャネル阻害剤であり且つ筋萎縮性側索硬化症の治療に用いられる抗興奮毒性物質である。運動ニューロン疾患のマウスモデルにおいて、リルゾールが麻痺の開始を著しく遅延させ且つ筋強度に連動した機能パラメータの進行を著しく遅延させることを、ケネル等(J Neurol Sci 2000 ; 180 : 55-61)は最近示すことができた。抗不整脈物質且つ抗筋緊張物質であるメチレキシン(Metilexine)は、骨格筋のナトリウムチャネルを遮断し(Duranti 他, Eur J Med Chem 2000 ; 35 : 147-56)、そして遺伝性筋緊張症のマウスモデルにおける骨格筋過興奮性亢進を解消する(De Luca 他, J Pharmacol Exp Ther 1997 ; 282 : 93-100)。正常な緊張を維持する上で骨格筋ナトリウムチャネルの機能が重要であるということは、電位誘導性Na+チャネル(SCN4A)のαサブユニットの遺伝子の突然変異と、遺伝性非異栄養性筋緊張症との関連性が明らかにされているという事実による。Na+チャネル阻害物質であるフレカイニドの投与により、筋緊張症が劇的に解消したことは興味深い(Rosenfeld 他, Ann Neurol 1997 ; 42 : 811-4)。
【0005】
トルペリゾンは、比較的優れた臨床忍容性を備えた中枢作用性筋弛緩薬である。今日までの出版物では、トルペリゾンに類似した化合物の作用機構について取り扱っているものは相対的にわずかであった。トルペリゾンは、脊髄分節反射の生成を低下させ、そしてin vivo及びin vitroの双方で求心性神経のC線維により誘導される伝導性を効果的に減少させる(Farkas 他, Neurobiology 1997 ; 5 : 57-58)。局所麻酔薬であるリドカインと比較すると、その物質はA線維の伝導性に対してより小さい阻害作用を有する。それの最も特徴的な作用は、単シナプス性又は多シナプス性脊髄反射を強力に阻害することである(Farkas 他, Neurobiology 1997 ; 5 : 57-58, Kocsis 他, Acta Pharm Hung 2002 ; 72 (1) : 49-61, Okada 他, Jpn J Pharmacol 2001 ; 86 : 134-136)。トルペリゾンが、局所麻酔薬と類似の作用(「膜安定化」)を、in vivoでの運動ニューロン及び一次求心性神経いずれにおいても示し、且つin vitroでのラット末梢神経において示すことを、オノ等(J Pharmacobio Dynam 1984 ; 7 : 171-178)は証明することができた。トルペリゾンの作用は、電位依存性ナトリウムチャネルの阻害剤として作用することが知られているリドカインの作用と類似しているようである(Strathmann 2002, www.ifap-index.de/bda/hausarzt/19-2002/64-83.pdf)。リドカインに類似するトルペリゾンが、テトロドトキシン(TTX)感受性電流及びTTX抵抗性電流を遮断することを示すことが可能であり、それ故に電位依存性ナトリウムチャネルの両方のタイプに対する阻害作用が示唆されている(Bastigkeit, MMW-Forschr Med 2000 ; 142 : 50-51, Farkas 他, 2000, http://www.asso.univ-paris5.fr/ewcbr/Francais/EWCBR2000/Abstracts/ABST126.htm ; Kocsis 他, Acta Pharm Hung 2002 ; 72 (1) : 49-61)。これに関しては、たぶんトルペリゾンの作用機構はリドカインのそれとは幾分異なるだろう。さらに、トルペリゾンがナトリウム透過性を減少させるという示唆がある。この作用が、トルペリゾンの興奮性亢進の減少作用の原因であり且つ臨床的観察において記録可能であった抗痙攣性作用の原因であるかもしれない(Hinck 及び Koppenhofer, Gen Physiol Biophys 2001 ; 20 : 413-29)。さらに、トルペリゾン及びそのアナログが電圧依存性カルシウム電流を阻害することが、巻き貝ニューロンの電圧固定法実験で明らかにされている(Novalies-Li 他, Eur J Pharmacol 1989 ; 168 : 299-305)。例えばエペリゾン及びシルペリソン(silperisone)などのトルペリゾンアナログは、電気生理学的実験において類似した振る舞いを示した。このように、例えばシルペリソンがナトリウム透過性を減少させることは明らかにされている(During 及び Koppenhofer, Gen Physiol Biophys 2001 ; 20 : 157-73)。このことから、これらの物質が痙攣性骨格筋緊張を減少させる可能性があると結論付けることができる。
【0006】
これらの物質が、神経系疾患又はリュウマチ疾患に関連する有痛性痙攣を軽減できることが臨床研究で更に明らかにされている。筋痙攣の治療にトルペリゾンが効果的に使用されていることが報告された(Pratzel 他, Pain 1996 ; 67 : 417-25)。トルペリゾンのいくつかの誘導体、例えばエペリゾンなどは、有痛性筋痙攣の治療において同様に効果を示す(Bose, Methods Find Exp Clin Pharmacol 1999 ; 21 : 209-13)。ある病的状態においては、ナトリウムチャネルが特定物質の阻害作用に対してより敏感に応答するように、ニューロンは持続的脱分極状態になる。これにより、好適な副作用のプロフィールをもって筋痙攣及び痛みを軽減することが可能となる。最近のデータにより、トルペリゾン及びそのアナログは電位依存性ナトリウムチャネルに対して選択的阻害作用を有することが示されている。この機構が、それらの脊髄反射抑制作用及び筋弛緩作用の原因であるかもしれない。さらに、この特性が鎮痛作用をもたらすかもしれなく、小さな相違に着目すれば、リドカインとは対照的にその鎮痛作用には副作用がないかもしれない。
【0007】
筋弛緩物質の更なるクラスはカリウムチャネル開口薬である。これらにはトリアミノピリジンのクラスのフルピルチン(flupirtine)が含まれ、それは筋弛緩特性を有する非オピオイド鎮痛剤として用いられている。抗侵害受容作用に対しての量と同程度の量を用いた場合、フルピルチンは骨格筋緊張を減少させることが明らかにされている(Nickel 他, Arzn Forsch/Drug Res 1990a ; 40 : 909-11)。
【0008】
ジアゼパム及びその他のベンゾジアゼピンは筋弛緩薬として頻繁に使用されているので、フルピルチンの薬物動態学的特性とベンゾジアゼピンのそれとの比較は明白な事項である。受容体結合研究では、10μmol/lの濃度までは特効薬[3H]フルニトラゼパムに対する親和性は検出されなかった(Nickel 他, Arzn Forsch/Drug Res 1990b ; 40 : 905-908)。EEGにおける変化と相関して、フルピルチンとベンゾジアゼピンにより誘導されたプロフィールにおいて明確な相違が検出された(Nickel, Postgrad Med J 1987 ; 63 : 19-28)。GABAの作用を増強することでフルピルチンがGABA性伝導に影響を与えることが、電気生理学的研究により示された(Weiser 他, Arch Pharmacol 1992 ; 346 (Suppl.) : R22)。in vitro及びin vivoの分析からのデータにより、フルピルチンは機能的なN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニストのように振る舞うことが示唆されている。これにより、この機構がフルピルチンの筋弛緩作用に関与する可能性のあることを結論付けられるかもしれない(Schwarz 他, Neuroreport 1994 ; 5 : 1981-4)。最近の研究により、フルピルチンが電位非依存性カリウムチャネルを活性化することが示唆されている(Kornhuber 他, J Neural Transm 1999 ; 106 : 857-67)。フルピルチンのこのカリウムチャネル開口作用が、その鎮痛作用及び骨格筋弛緩作用の原因であるかもしれない。
【0009】
発表された従来技術は、上昇した筋緊張による疼痛状態の治療のために採用されている多くの物質があることを明示しているが、所望されない副作用によりこれはしばしば制限される。このように、例えば、フルピルチンの高投与量は、眠気、協調障害などの神経毒性作用を示す。トルペリゾンは深刻な所望されない副作用は示さないが、筋弛緩における作用の有効性及び持続時間が不十分である。これは恐らく、ヒトにおけるバイオアベイラビリティが比較的低く且つ半減期が短いことによるのであろう(Ito 他, Arch Int Pharmacodyn Ther 1985 ; 275 : 105-22, Matsunaga 他, Jpn J Pharmacol 1997 ; 73 : 215-20)。
【発明の開示】
【0010】
従って本発明の目的は、上昇した筋緊張に関連する疼痛状態の治療のための薬剤を提供することである。それは同程度の作用を有しながらも副作用をほとんど示さず、又は同じ投与量でも増強した効力を有する。
【0011】
本発明に従って、カリウムチャネル開口薬とナトリウムチャネル阻害剤との新規組み合わせにより、これをもたらすことができた。
【0012】
ナトリウムチャネル阻害活性物質又はナトリウムチャネル影響活性物質とカリウムチャネル開口薬との組み合わせにより、筋弛緩作用が増大することが明らかにされている。
【0013】
Na+チャネルを阻害する又は影響を与える使用可能な物質の例としては:トルペリゾン及びそのアナログであるエペリゾン及びシルペリソン、リルゾール、プロパフェノン、リドカイン、フレカイニド、メチキセン、及びそれらの医薬に使用可能な塩、がある。
【0014】
フルピルチンはカリウムチャネル開口薬の例として言及されている。
【0015】
トルペリゾン又はそのアナログ及びフルピルチン又はその医薬に使用可能な塩の組み合わせは、これに関して特に好ましい。
【0016】
本発明の組み合わせは、上昇した筋緊張に関連する疼痛状態の治療をより効果的且つ安全なものにする。ナトリウムチャネル阻害物質又はナトリウムチャネル影響物質とフルピルチンなどのカリウムチャネル開口薬との組み合わせは、治療作用を増大し又は忍容性を改善する。例えば、トルペリゾンなどのNaチャネル阻害活性物質又はNaチャネル影響活性物質により、フルピルチンの筋弛緩作用が強化され、そしてその逆もまた同様であることが明らかにされている。しかし、フルピルチンの骨格筋弛緩作用がトルペリゾンにより超相加的に強化されるという作用、そしてその逆もまた同様であるということは、当業者にとって特に驚くべきことであり且つ意外なことである。それとは対照的に、フルピルチンの神経毒性はトルペリゾンによって強化されない。
【0017】
過度の筋緊張及び制限された可動性(restricted mobility)に関連の骨格筋疾患、特に脊髄損傷、骨粗しょう症、関節炎及び硬化/痙攣状態により引き起こされるものに関連の骨格筋疾患に関係する疼痛状態の治療に、その2つの物質の組み合わせを使用することができる。それは以下の:腰部神経ラチリスム(lumber neurolathyrism)、関節炎、抹消循環系の疾患、更年期の筋性及び血管性症状、開口障害、筋原性頭痛(myogenic headache)、筋緊張亢進もしくは痙攣もしくは痛みもしくは炎症症状及び制限された可動性に関係するリュウマチ疾患、多発性硬化症、によって引き起こされる疼痛状態に対しても付加的に効果を発揮し、そして外傷患者の術後療法においても付加的に効果を発揮し、そして下部痙攣性不全対麻痺症候群(lower spastic paraparesis syndrome):下部パラスパズム(lower paraspasm)、横断性脊髄炎、多発性硬化症、遺伝性下部痙性対麻痺(hereditary inferior spastic paraplegia)(Stuempel's 対麻痺)、脊髄血液循環の障害、下部痙攣性不全麻痺(cerebral paralysis with lower spastic paresis)を伴う脳性麻痺、頸髄障害に関係する四肢不全麻痺、眼耳脊椎異形成、緊張性頭痛及び頸部上腕痛(cervical brachialgia)に対しても付加的に効果を発揮する。
【実施例】
【0018】
薬理学的実施例
1:ラットにおけるレセルピン誘導性筋固縮に対する筋弛緩作用
結果
フルピルチン及びトルペリゾンはいずれも、覚醒ラットにおけるレセルピン誘導性骨格筋固縮を用量依存的に減少させる。フルピルチンに対する腹腔内(i.p.)ED50は6.45 mg/kgであった。トルペリゾンに対するED50は32.4 mg/kg i.p.であった。
【0019】
トルペリゾンによってフルピルチンの骨格筋弛緩作用が驚くほど超相加的に強化され、そしてその逆もまた同様であることを、表1及び表2の結果は明確に示している。
【0020】
表1.トルペリゾンとの組み合わせで腹腔内に投与したフルピルチンの、覚醒ラットにおけるレセルピン誘導性骨格筋固縮に対する作用
【表1】

【0021】
表2.フルピルチンとの組み合わせで腹腔内に投与したトルペリゾンの、覚醒ラットにおけるレセルピン誘導性骨格筋固縮に対する作用
【表2】

【0022】
本実験の説明
食物及び水は制限せずに標準条件(温度 22℃、湿度 40−60%)の下で、200−220gの重さのSprague−Dawleyラットを2つのグループに分けておいた。6時から18時は照明をつけた。実験動物の保護及び適切な使用に対して責任を有する地域動物健康委員(local animal health committee)によって、本実験の承認を得た。
【0023】
実験設計の詳細は既に説明されている(Nickel 他, Arzn Forsch/Drug Res 1997; 47:1081-6)。簡潔に説明すると、足の屈伸時に関節で逆の作用をする屈筋及び伸筋の抵抗を連続的に測定することにより、骨格筋において筋固縮を測定した。足の動きにより発生する圧力の相違を連続的に記録した。10分間における足の屈伸の抵抗値を計算するPCプログラムによって、そのシグナルを分析した。
【0024】
活性物質はそれぞれの日に新鮮なものを作製し、レセルピン注入の16時間後に様々な量で同時に腹腔内に投与した(2mg/kg、腹腔内)。
【0025】
計算値と測定値の間の相違に関する統計分析については、一方向(one-way)ANOVAにより行った。(*)は有意水準p<0.01を表す。
【0026】
2:いわゆる傾斜スクリーン試験(inclined screen test)におけるマウスの骨格筋緊張の調査
結果
マウスの実験で、実施例の1の驚くべき結果について説得力のある証明をすることができた。
【0027】
フルピルチンとトルペリゾンはいずれも、覚醒ラットにおいて用量依存的に骨格筋緊張を減少させ、このようにしてそれらの筋弛緩作用に関する情報を提供する。フルピルチンの腹腔内(i.p.)ED50は10.8mg/kgである。トルペリゾンのED50は51.0mg/kg i.p.である。
【0028】
様々な用量のフルピルチン及びトルペリゾンを同時i.p.投与することで、フルピルチンの骨格筋弛緩作用がトルペリゾンにより超相加的に強化され、そしてその逆もまた同様であることを、表3及び表4の結果は明確に示している。
【0029】
表3:覚醒マウスの骨格筋緊張に対する、トルペリゾンとの組み合わせで腹腔内投与したフルピルチンの作用。
【表3】

【0030】
表4:覚醒マウスの骨格筋緊張に対する、フルピルチンとの組み合わせで腹腔内投与したトルペリゾンの作用。
【表4】

【0031】
本実験の説明
食物及び水は制限せずに標準条件(温度 22℃、湿度 40−60%)の下で、22−24gの重さのSprague−Dawleyラットを4つのグループに分けておいた。6時から18時は照明をつけた。実験動物の保護及び適切な使用に対して責任を有する地域動物健康委員によって、本実験の承認を得た。
【0032】
筋弛緩特性予測を可能にするために使用する薬理学モデルは、いわゆる30度傾斜スクリーン試験(30 degrees inclined screen test)であった(Simiand 他, Arch Int Pharmacodyn Ther 1989; 297:272-85)。その傾斜スクリーンは、任意の角度で傾斜可能なワイヤーメッシュスクリーンを有する木枠からなる(この場合:80°)。スクリーンの下方部分はテーブルの上15cmのところである。動物を傾斜スクリーンに置き、それらが傾斜スクリーンにとどまる能力を有するかを、30秒間観察する。スクリーンから落ちた動物の数を数え、各グループの総数におけるそれらの割合を計算する。
【0033】
活性物質はそれぞれの日に新鮮なものを作製し、そして骨格筋緊張を分析するため、実験開始の1時間前に様々な量で同時に腹腔内へ投与した。
【0034】
計算値と測定値の間の相違に関する統計分析については、一方向(one-way)ANOVAにより行った。(*)は有意水準p<0.01を表す。
【0035】
3:その物質の可能性のある神経毒性作用を、ラットの回転棒試験(rotating rod test)において測定
結果
中枢作用性物質は、それらの治療上の使用を制限する可能性のある神経毒性副作用を有するかもしれない。表5及び表6の結果は、フルピルチンとトルペリゾンの組み合わせが運動神経に対し相加的作用を有することを明確に示している。過度の相加的作用は観察できない、つまりフルピルチンとトルペリゾンの組み合わせは所望されない中枢神経作用を増加させない。
【0036】
表5.回転棒を用いることによる、トルペリゾンとの組み合わせで腹腔内に投与したフルピルチンの、ラットの運動神経に対する作用。
【表5】

【0037】
表6.回転棒を用いることによる、フルピルチンとの組み合わせで腹腔内に投与したトルペリゾンの、ラットの運動神経に対する作用。
【表6】

【0038】
本実験の説明
食物及び水は制限せずに標準条件(温度 22℃、湿度 40−60%)の下で、200−220gの重さのSprague−Dawleyラットを2つのグループに分けておいた。6時から18時は照明をつけた。実験動物の保護及び適切な使用に対して責任を有する地域動物健康委員によって、本実験の承認を得た。
【0039】
その動物の運動神経及びバランスを、いわゆる回転棒試験において分析した(Jones 及び Roberts, J. Pharm Pharmacol 1968; 20:302-304)。回転棒(直径 10cm;長さ 60cm;5rpm)の上にその動物を置き、2分後に棒状にとどまっている動物の数を数えた。活性物質はそれぞれの日に新鮮なものを作製し、実験開始の30分前に様々な量で同時に腹腔内へ投与した。
【0040】
その記載した実験は、フルピルチン/トルペリゾンの組み合わせの作用を明確に示している。カリウムチャネル開口薬及びナトリウムチャネル阻害物質又はナトリウムチャネル影響物質の作用に関する類似機構から、これらのクラスの物質の他の組み合わせが同一のプラス作用を有するだろうと推測することができる。
【0041】
Na+チャネル阻害活性物質又はNa+チャネル影響活性物質及びカリウムチャネル開口薬及び医薬に使用可能な塩の組み合わせは、全ての経口投与、腸内投与、直腸投与、舌投与、静脈投与、筋肉内投与、腹腔内投与、経皮投与、皮投与下又は皮内投与の形態で投与することができる。好ましい経口投与形態としては、例えば錠剤、フィルムコート錠、糖衣錠、硬カプセル剤、軟カプセル剤、チュアブル錠、サッカブル剤(suckable tablets)、シロップ剤、放出制御製剤(例えば、二重製剤(dual formulation)、持続放出製剤)、丸薬、チュアブル錠又は可溶性顆粒(soluble granules)、がある。更に適切な投与形態の例としては:注入用溶液、懸濁液、坐薬、クリーム、軟膏、ジェル、経皮投与形態、皮下−又は皮内インプラント、がある。
【0042】
その物質は、連続的に又は固定した組み合わせで、同時に投与することができる。それらは、一つの投与形態で又は同一の若しくは異なった二つの投与形態で、同時に投与することができる。それらは同時に又は連続的に投与することがき、立て続けの投与又は長い時間間隔をおいての投与いずれでもよく、例えばフルピルチンを夜にそしてトルペリゾンを朝に投与することができる。
【0043】
その活性物質は、所望の作用を得るのに十分な量を、一日あたり1回から8回の間の回数で投与することができる。その活性物質は一日あたり1回から4回の投与が好ましい。
【0044】
日用量は、その組み合わせに使用する各物質の認可された量に従うべきである。これは好ましい組み合わせのためであり、例えばトルペリゾンは大人でから450mg/日の間であり、フルピルチンは100−800mg/日であり、好ましくは200から400mg/日である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上昇した筋緊張に関連する疼痛状態の治療を目的とする、ナトリウムチャネル阻害活性物質若しくはナトリウムチャネル影響活性物質又はそれらの医薬に使用可能な塩と組み合わせたカリウムチャネル開口薬の使用。
【請求項2】
フルピルチン又はその医薬に使用可能な塩をカリウムチャネル開口薬として使用することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
トルペリゾン又はそのアナログであるエペリゾン若しくはシルペリソン、又はリルゾール、プロパフェノン、リドカイン、フレカイニド、メチキセン、又はそれらの医薬に使用可能な塩をナトリウムチャネル阻害活性物質若しくはナトリウムチャネル影響活性物質として使用することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
トルペリゾン又はそのアナログであるエペリゾン若しくはシルペリソン、又はそれらの医薬に使用可能な塩をナトリウムチャネル阻害活性物質若しくはナトリウムチャネル影響活性物質として使用することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
上昇した筋緊張に関連する疼痛状態の治療を目的とする、トルペリゾン又はそのアナログであるエペリゾン若しくはシルペリソン、又はそれらの医薬に使用可能な塩と組み合わせたフルピルチンの使用。
【請求項6】
神経痛の治療を目的とする、請求項1に記載のナトリウムチャネル阻害活性物質又はナトリウムチャネル影響活性物質及びそれらの医薬に使用可能な塩と組み合わせたカリウムチャネル開口薬の使用。
【請求項7】
関節炎及び関節症の治療を目的とする、請求項1に記載のナトリウムチャネル阻害活性物質又はナトリウムチャネル影響活性物質及びそれらの医薬に使用可能な塩と組み合わせたカリウムチャネル開口薬の使用。
【請求項8】
慢性又は一時的な緊張性頭痛の治療を目的とする、請求項1に記載のナトリウムチャネル阻害活性物質又はナトリウムチャネル影響活性物質及びそれらの医薬に使用可能な塩と組み合わせたカリウムチャネル開口薬の使用。
【請求項9】
下部痙攣性不全対麻痺症候群(lower spastic paraparesis syndrome)(例えば、下部パラスパズム(lower paraspasm)、横断性脊髄炎、多発性硬化症、遺伝性下部痙性対麻痺(hereditary inferior spastic paraplegia)(Stuempel's 対麻痺)、脊髄血液循環の障害、下部痙攣性不全麻痺(cerebral paralysis with lower spastic paresis))の治療を目的とする、請求項1に記載のナトリウムチャネル阻害活性物質又はナトリウムチャネル影響活性物質及びそれらの医薬に使用可能な塩と組み合わせたカリウムチャネル開口薬の使用。
【請求項10】
頸髄障害に関係する四肢不全麻痺、頸部上腕痛(cervical brachialgia)又は眼耳脊椎異形成の治療を目的とする、請求項1に記載のナトリウムチャネル阻害活性物質又はナトリウムチャネル影響活性物質及びそれらの医薬に使用可能な塩と組み合わせたカリウムチャネル開口薬の使用。
【請求項11】
パーキンソン病の治療を目的とする、請求項1に記載のナトリウムチャネル阻害活性物質又はナトリウムチャネル影響活性物質及びそれらの医薬に使用可能な塩と組み合わせたカリウムチャネル開口薬の使用。
【請求項12】
上昇した筋緊張に関連する疼痛状態の治療を目的とする、経口投与、直腸投与、静脈投与、経皮投与、皮下投与又は皮内投与のための薬剤の生成を目的とした、請求項1に記載のナトリウムチャネル阻害活性物質又はナトリウムチャネル影響活性物質及びそれらの医薬に使用可能な塩と組み合わせたカリウムチャネル開口薬の使用。

【公表番号】特表2007−509100(P2007−509100A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536024(P2006−536024)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011718
【国際公開番号】WO2005/039576
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(502071986)フィアトリス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】