説明

疾患の処置のためのヒトホルミルペプチド受容体の拮抗作用

本発明は、好酸球及び好中球機能の調節物質と、好酸球関連性及び好中球関連性疾患の処置のためのこのような調節物質の使用とに関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
好酸球及び好中球は免疫応答において重要な役割を果たす血球である。好酸球は、寄生生物感染と闘うというそれらの役割に加え、多様な免疫及びアレルギー障害の関連する免疫細胞である。それらは骨髄で発生し、血液中に動員される。未刺激の循環中好酸球は血流中に8乃至12時間、存続する。好酸球分化は、IL-3、IL-5、及びGM-CSFを含む数多くの因子によって調節される。具体的には、動物モデルでは、好酸球の増殖と骨髄から血流中へ、そして肺内へという動員におけるIL-5の主要な役割が初めて示唆された。
【0002】
喘息は罹患者の多い、複雑で、病因の理解が余り進んでいないアレルギー障害である。数多くの動物(例えばマウス)モデルが存在するが、いずれもこの疾患の生理的及び病理的特徴をすべて精確に捕捉するものではない。にもかかわらず、好酸球が関与免疫エフェクター細胞の中にあることは明白であり、この観察はアトピー性又はアレルゲン関連性喘息に罹患した患者の気道粘膜に好酸球数の増加があることを一致する。実際、IL-5シグナル伝達に拮抗する抗体を用いた臨床治験が行われてきた。複数のこのような研究では、このような抗体を投与した結果、循環中好酸球が著しくかつ持続的に減少した。更に、肺組織のリモデリングは喘息患者の主要な特徴である。このようなリモデリングが、喘息患者の気道の応答性を慢性的に損なっていると考えられている。このようなリモデリングの精確な病因はあまり理解されていないが、好酸球の慢性的な局所的活動が重要な役割を果たしていると広く考えられている。
【0003】
超好酸球症候群(HES)は、持続する高レベルの好酸球を特徴とし、呼吸、心臓、皮膚、及び胃腸管の問題につながる。胃腸管内の好酸球蓄積は、好酸球性胃腸炎、アレルギー性大腸炎、好酸球食道炎、炎症性腸疾患、及び胃腸管逆流性疾患を含め、数多くの好酸球関連胃腸管障害(EGID)でも観察されている。いずれの場合においても、好酸球の局所的浸潤が、疾患又は障害の病因又は病理で役割を果たしていることが示唆されている(Hogan and Rothenberg, 2006にレビュー)。
【0004】
IL-5に対するヒト化モノクローナル抗体であるレスリズマブは現在、好酸球性食道炎及び喘息の処置に向けて臨床治験中である。好酸球性食道炎の処置におけるレスリズマブの使用を調べた複数の研究で、臨床上の効験が実証されてきた。更に、IL-5に向けたもう一つのヒト化モノクローナル抗体であるメポリズマブはHES処置で有効であることが示されており、この適応症のための稀用薬として現在開発されつつある。
【0005】
しかしながら、アレルギー性障害、胃腸管障害、又は免疫障害など、好酸球の関連する疾患及び障害の処置の必要がいまだにある。
【0006】
好中球は感染部位に最初に遊走する細胞群の中にあることで、感染に対する防御において重要な役割を果たす。それらは血液中には豊富であるが、正常組織にはない。好中球の活性化は、感染部位への化走性動員と、細胞受容体をナノモル濃度で刺激する多様なシグナル伝達分子勾配(例えば化学誘引物質、インターロイキン、ケモカイン)を通じた活性化があると、脱顆粒して、一群のタンパク質分解酵素と、オゾン及び過酸化水素を含む酸化的生成物とを放出する。これらの事象は生来の免疫応答の重要な生理的成分ではあるが、いくつかn病的状態が、好中球の不適切又は強調された活性化に伴うため、過剰な組織傷害が起きる。
【0007】
強調された又は不適切な好中球応答は有害となる可能性があり、その多くが好ましい又は有効な処置上の選択肢があるとしてもほとんどないような数多くの医学的疾患及び障害の病因、病態生理、又は症状で重要な役割を果たす。好中球の応答は数多くの内因性及び外因性因子によって調節される。しかしいずれの場合でも、感染に応答するのに充分に強力な、しかし不要な又は望ましくない破壊又は障害がホスト組織に起きる点までは至らないような応答が可能なように、バランスが必要である。更に、発作又は感染性生物が消失したときには、炎症性応答は自己減衰して消散すべきである。このような減衰は、問題の組織の健康にとって、そして、局所的組織傷害に、並びに感染及び免疫応答に伴う治癒プロセスにとって、重要である。
【0008】
嚢胞性線維症(CF)は白人で最もよくある遺伝性障害である。気道の炎症がその病因の主要な因子であり、肺の組織破壊が罹患率及び死亡率の最も大きな原因である。慢性のシュードモナス-アエルギノーサ肺感染もまた、この疾患に特徴的であり、ほとんどすべてのCF患者の肺には、3歳になる前のこの生物の集落形成がある。CF患者におけるこのような感染は大規模な好中球応答を惹起するが、それには細菌クリアランスは伴わない。抗生物質療法の効験も典型的には限界があり、時間と共に減衰する。
【0009】
CFの処置は現在のところ多くの場合、対症法的であり、細菌感染と闘うための抗生物質療法、気道から粘性粘液を取り除く理学療法、(患者の少なくとも85%に見られる)膵臓機能の喪失を補償するための膵臓酵素の投与、粘液溶解薬の投与、及び、エネルギー摂取を最適化するための食餌調節から成る。短期間高用量のイブプロフェン又は他の抗炎症薬は、CF肺に特徴的な深在性及び苒延性の炎症に対処するには有用であり得るが、肝臓及び他の臓器(特に小児の患者)への毒性から、それらの長期の使用は妨げられてきた。同様に、コルチコステロイド療法にはいくらかの実用性があるが、副作用のためにそれらの広汎な又は通常の使用も妨げられてきた。しかし、CF患者における抗炎症薬の効験は、有効な治療法の鍵となる形態として炎症に対処することの望ましさや実用性を確証するものである。
【0010】
CF、COPD及び肺気腫など、好中球関連性疾患及び障害の処置の必要性が未だある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の概要
好酸球関連性及び好中球関連性疾患及び障害のための新規な処置及び治療法の必要性が未だにある。更に、アレルギー性障害、胃腸管障害、免疫障害、炎症、CF、COPD及び肺気腫の一つ以上の症状を処置又は防止又は改善する上で有用な化合物も求められている。更に、好酸球及び好中球の活性を調節する方法が求められている。
【0012】
このように、ある局面では、本発明は式IのシクロスポリンH誘導体を提供する。ある実施態様では、前記シクロスポリンH誘導体は放射性核種結合競合又は他の適した定量的ホルミルペプチド受容体結合検定法において少なくとも1μMのIC50を有する。別の局面では、本発明は、好酸球関連性疾患に罹患した対象を処置する方法を提供するものであり、該方法は、前記対象が処置されるように、ホルミルペプチド受容体(FRR)アンタゴニストを治療上有効量、投与するステップを含む。該FPRアンタゴニストは免疫結合剤でも、又は核酸アプタマーであってもよい。免疫結合剤は更に抗FPR 抗体であってもよい。
【0013】
別の局面では、好酸球関連性疾患に罹患した対象を処置する方法であって、前記対象が処処置されるように、式IのシクロスポリンH誘導体を治療上有効量、投与するステップを含む方法をここで提供する。更に別の局面では、好酸球関連性疾患に罹患した対象を処置する方法であって、前記対象が処置されるように、シクロスポリンH又はジヒドロシクロスポリンHを治療上有効量、投与するステップを含む方法をここで提供する。
【0014】
好酸球関連性疾患は、例えば湿疹、皮膚炎、又は乾癬、喘息、枯草熱、過好酸球性症候群又は好酸球関連性胃腸管障害などの免疫障害であってよい。アレルギー性障害の非限定的例には、好酸球性胃腸炎、アレルギー性大腸炎、好酸球性食道炎、炎症性腸疾患及び胃腸管逆流性疾患がある。呼吸器の障害の場合、このような処置の結果、処置を受けた患者の気道リモデリングも変化(即ち阻害又は遅延)するであろうと理解される。従って、ここで開示するFPP阻害剤媒介性処置のすべての局面及び実施態様には、おそらくは、限定はしないが気道リモデリングの減衰又は遅延が含まれるであろう。
【0015】
別の局面では、対象のホルミルペプチド受容体の活性を阻害する方法であって、前記対象の好酸球動員が阻害されるように、ホルミルペプチド受容体(FPR)アンタゴニストを有効量、前記対象に投与するステップを含む方法をここで提供する。ある実施態様では、前記FPRアンタゴニストは免疫結合剤又は核酸アプタマーである。別の実施態様では、前記免疫結合剤は抗FPR抗体である。
【0016】
別の局面では、対象のホルミルペプチド受容体の活性を阻害する方法であって、前記対象の好酸球動員が阻害されるように、式IのシクロスポリンH誘導体を有効量、前記対象に投与するステップを含む方法をここで提供する。
【0017】
更に別の局面では、対象のホルミルペプチド受容体の活性を阻害する方法であって、前記対象の好酸球動員が阻害されるように、シクロスポリンH又はジヒドロシクロスポリンHを有効量、前記対象に投与するステップを含む方法をここで提供する。
【0018】
更に別の局面では、対象の好酸球動員を減少させる方法であって、前記対象の好酸球動員が減少するように、ホルミルペプチド受容体(FPR)アンタゴニストを有効量、前記対象に投与するステップを含む方法をここで提供する。ある実施態様では、前記FPR アンタゴニストは免疫結合剤又は核酸アプタマーである。別の実施態様では、前記免疫結合剤は抗FPR抗体である。
【0019】
別の局面では、対象の好酸球動員を減少させる方法であって、前記対象の好酸球動員が減少するように、式IのシクロスポリンH誘導体を有効量、前記対象に投与するステップを含む方法をここで提供する。ある実施態様では、当該の細胞は骨髄細胞である。
【0020】
更に別の局面では、対象の好酸球動員を減少させる方法であって、前記対象の好酸球動員が減少するように、シクロスポリンH又はジヒドロシクロスポリンHを有効量、前記対象に投与するステップを含む方法をここで提供する。ある実施態様では、当該の細胞は骨髄細胞である。
【0021】
別の局面では、対象の循環中好酸球のレベルを減少させる方法であって、ホルミルペプチド受容体(FPR)を、前記対象の循環中好酸球の前記レベルを減少させるために充分な量、前記対象に投与するステップを含む方法をここで提供する。ある実施態様では、前記FPR アンタゴニストは免疫結合剤又は核酸アプタマーである。別の実施態様では、前記免疫結合剤は抗FPR 抗体である。
【0022】
更に別の局面では、対象の循環中好酸球のレベルを減少させる方法であって、式IのシクロスポリンH誘導体を、前記対象の循環中好酸球の前記レベルを減少させるために充分な量、前記対象に投与するステップを含む方法をここで提供する。
【0023】
更に別の局面では、対象の循環中好酸球のレベルを減少させる方法であって、シクロスポリンH又はジヒドロシクロスポリンHを、前記対象の循環中好酸球の前記レベルを減少させるのに充分な量、前記対象に投与するステップを含む方法をここで提供する。循環中好酸球のレベルは、前記過好酸球症候群患者を診断するのに必要な量よりも少なくてもよい。
【0024】
別の局面では、対象における好酸球機能上昇又は局所的好酸球数減少に関係する疾患に関連する部位での好酸球の蓄積又は活性化を減少させる方法であって、対象における好酸球機能上昇又は局所的好酸球数減少に関係する疾患に関係する部位での好酸球の蓄積又は活性化が減少するように、治療上有効量のホルミルペプチド受容体(FPR)アンタゴニストを前記対象に投与するステップを含む方法をここで提供する。ある実施態様では、前記FPR アンタゴニストは免疫結合剤又は核酸アプタマーである。別の実施態様では、前記免疫結合剤は抗FPR抗体である。
【0025】
別の局面では、対象における好酸球機能上昇又は局所的好酸球数減少に関係する疾患に関連する部位での好酸球の蓄積を減少させる方法であって、前記対象における好酸球機能上昇又は局所的好酸球数減少に関係する疾患に関連する部位での好酸球の蓄積が減少するように、式IのシクロスポリンH誘導体を治療上有効量、前記対象に投与するステップを含む方法をここで提供する。該部位は、例えば胃腸管、肺又は皮膚であってよい。ある実施態様では、好酸球機能上昇又は局所的好酸球数減少に関係する前記疾患は、好酸球性胃腸炎、アレルギー性大腸炎、好酸球性食道炎、炎症性腸疾患及び胃腸管逆流性疾患から選択される。別の実施態様では、好酸球機能上昇又は局所的好酸球数減少に関係する前記疾患は、皮膚炎、湿疹及び乾癬から選択される。
【0026】
別の局面では、対象における好酸球機能上昇又は局所的好酸球数減少に関係する疾患に関連する部位での好酸球の蓄積を減少させる方法であって、対象における好酸球機能上昇又は局所的好酸球数減少に関係する疾患に関連する部位での好酸球の蓄積が減少するように、治療上有効量のシクロスポリンH又はジヒドロシクロスポリンHを前記対象に投与するステップを含む方法をここで提供する。該部位は、例えば胃腸管、肺又は皮膚であってよい。ある実施態様では、好酸球機能上昇又は局所的好酸球数減少に関係する前記疾患は、アレルギー感染性の、特発性の、及びアトピー性喘息を含む喘息、又は、肺気腫を含む慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び慢性閉塞性気管支炎から選択される。別の実施態様では、好酸球機能上昇又は局所的好酸球数減少に関係する前記疾患は、皮膚炎、湿疹及び乾癬から選択される。
【0027】
別の実施態様では、式IのシクロスポリンH誘導体 、シクロスポリンH又はジヒドロシクロスポリンHを全身用又は局所用ステロイドと組み合わせて投与する。
【0028】
別の実施態様では、式IのシクロスポリンH誘導体 、シクロスポリンH又はジヒドロシクロスポリンHを、レスリズマブ又はメポリズマブなど、IL-5シグナル伝達に拮抗する抗体と組み合わせて投与する。
【0029】
別の局面では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患した対象を処置する方法であって、前記対象が処置されるように、ホルミルペプチド受容体(FPR)アンタゴニストを治療上有効量、投与するステップを含む方法をここで提供する。ある実施態様では、前記FPRアンタゴニストはCsH 又はジヒドロCsHである。別の実施態様では、前記FPR
アンタゴニストは免疫結合剤(例えば抗FPR 抗体)又は核酸アプタマーである。
【0030】
別の局面では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患した対象を処置する方法であって、前記対象が処置されるように、シクロスポリンH、ジヒドロシクロスポリンH、又はその薬学的に許容可能な塩及び溶媒和化合物を治療上有効量、投与するステップを含む方法をここで提供する。
【0031】
更に別の局面では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患した対象を処置する方法であって、式IのシクロスポリンH誘導体を治療上有効量、投与するステップを含む方法をここで提供する。ある実施態様では、前記COPDは慢性気管支炎、慢性閉塞性気管支炎、及び肺気腫、又はこれらの組合せから成る群より選択される。
【0032】
更に別の局面では、肺気腫に罹患した対象を処置する方法であって、前記対象が処置されるように、ホルミルペプチド受容体(FPR)アンタゴニストを治療上有効量、投与するステップを含む方法をここで提供する。ある実施態様では、前記FPR アンタゴニストは免疫結合剤(例えば抗FPR 抗体)又は核酸アプタマーである。
【0033】
別の局面では、肺気腫に罹患した対象を処置する方法であって、前記対象が処置されるように、シクロスポリンH又はヒドロシクロスポリンHを治療上有効量、投与するステップを含む方法をここで提供する。
【0034】
別の局面では、肺気腫に罹患した対象を処置する方法であって、式IのシクロスポリンH誘導体を治療上有効量、投与するステップを含む方法をここで提供する。
【0035】
別の局面では、炎症性疾患に罹患した対象を処置する方法であって、前記対象が処置されるように、ホルミルペプチド受容体(FPR)アンタゴニストを治療上有効量、投与するステップを含む方法をここで提供する。ある実施態様では、前記FPR アンタゴニストはジヒドロシクロスポリンH (ジヒドロCsH)である。別の実施態様では、前記FPRアンタゴニストは免疫結合剤(例えば抗FPR 抗体)又は核酸アプタマーである。
【0036】
別の局面では、炎症性疾患に罹患した対象を処置する方法であって、前記対象が処置されるように、ジヒドロシクロスポリンH又はその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和化合物を治療上有効量、投与するステップを含む方法をここで提供する。
【0037】
別の局面では、炎症性疾患に罹患した対象を処置する方法であって、式Iのシクロスポリン誘導体を治療上有効量、投与するステップを含む方法をここで提供する。
【0038】
ある実施態様では、処置しようとする炎症性疾患は、急性肺炎症、慢性肺炎症、COPD、肺気腫、胃腸管の炎症、急性皮膚炎症、アトピー性皮膚炎、湿疹、好中球性皮膚病、酒さ、乾癬、腹膜炎、虚血性再潅流損傷、好中球障害、嚢胞性線維症、にきび、及び、有害な、誇張された、又は不適切な好中球活性化により引き起こされる、又は伴う疾患、又はこれらの組合せから成る群より選択される。
【0039】
ある実施態様では、胃腸管の炎症は炎症性腸疾患 (IBD) 又はクローン病である。処置しようとするこの障害はまた、慢性肉芽腫性疾患、チェディアック−東症候群(CHS)、白血球接着不全、超IgE症候群(ジョブズ症候群)、及び他の好中球関連炎症から成る群より選択することもできる。別の実施態様では、処置しようとする疾患は、嚢胞性線維症、炎症性腸疾患 (IBD) 又はクローン病である。
【0040】
別の局面では、上述の炎症性疾患のいずれかを処置する方法であって、前記対象が処置されるように、ジヒドロシクロスポリンH又はその薬学的に許容可能なその塩又は溶媒和化合物を治療上有効量、投与するステップを含む方法をここで提供する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1はジヒドロシクロスポリンHのLC-MSスペクトルである。
【図2】図2は、ジヒドロCsHがhFPRの強力な阻害剤であり、CsHの6.85nMというIC50(図2A)に比較して7.99nMという推定IC50(図2B)を持つことを実証した、fMLFペプチドを内部標準として用いた放射性核種結合競合検定法の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の詳細な説明
シクロスポリンH (CsH) はホルミルペプチド受容体の公知の特異的アンタゴニストである (Wenzel-Seifert et al., 1991;
Wenzel-Seifert and Seifert, 1993)。ここでは、上に列挙したものを含め、好酸球関連性及び好中球関連性疾患並びに障害の処置のためのFPRアンタゴニストの治療的使用を提供する。好適な実施態様では、このようなアンタゴニストには、強力かつ特異的なFPRアンタゴニスト(例えばジヒドロCsH及び式Iの化合物)として作用するCsH及びその誘導体が含まれるであろう。本発明のシクロスポリンは、循環中好酸球又は好中球を減少させる、又は好酸球もしくは好中球機能又は局所的細胞数の増加の疾患に関係する部位での好酸球又は好中球を減少させる、あるいは、このような部位での好酸球又は好中球の活性化を減少させる用量、投与される。
【0043】
発明の化合物
ある局面では、本発明は式I:
【0044】
【化1】

【0045】
のシクロスポリンH誘導体及びその薬学的に許容可能な塩及び溶媒和化合物を提供するものであり、但し式中、R1

【0046】
【化2】

【0047】
であり、
R2 はC1-C6 アルキル、C3-C6 シクロアルキル、又はヒドロキシ-C1-C6 アルキルであり;
R4、R5及び R11
は個別にC1-C6 アルキル又はC3-C6 シクロアルキルであり;
R8 はC1-C6 アルキル, ヒドロキシ-C1-C6
アルキル、又はアミノ-C1-C6 アルキルであり;
R12、R13、R14
及びR15 は個別にH 又はメチルであり;
R21 はH、メチル、C1-C6 アルキル、C2-C6 アルケニル、C3-C6 シクロアルキル又はフェニルであり;
R23 はH 又はC1-C6
アルキルであり;
R24 はH、ハロゲン、C1-C6 アルキル、C2-C6 アルケニル、-NHR21、ヒドロキシ又はC1-C6 アルコキシであり;
R25
はC1-C6
アルキルであり;
但しこのときR21、R24
及びR25
は選択的に-OH、-CHO、又は-CO2Hで一回以上、置換され;そして
このときR21、R22、R24
及びR25のいずれか二つの隣接する炭素原子は一個の酸素原子と一緒になって一個のエポキシドを形成してもよく;
R22、R26、R27、R28
及びR29
は個別にH、ハロゲン、シアノ、ニトロ、メチル、C1-C6
アルキル、C2-C6
アルケニル 、-OR30、-C(O)R30、-OC(O)R30、-C(O)OR30、-S(O)R30、-SO2R30、-SO3R30、-OSO2R30、-OSO3R30、-PO2R30R31、-OPO2
R30R31、-PO3 R30R31、-OPO3
R30R31、-N(R30)R31、-C(O)N(R30)R31、-C(O)NR30NR31SO2R32、-C(O)NR30SO2R32、-C(O)NR30CN、-SO2N(R30)R31、-SO2N(R30)R31、-NR32C(O)R30、-NR32C(O)OR30
又は-NR32C(O)N(R30)R31;
あるいはR26
及びR27
は共に -O-であり;あるいは R28
及びR27
が一緒になって、あるいはR22
及びR26
が一緒になって個別に -O-であり;あるいはR22
及びR29
は一緒になって-O-であり;あるいはR28はそれが結合した相手の炭素と一緒になって-C(=O)R30、-CO2R30、-CH2OR30、-CH2OC(O)R30、-CH(OR30)2、-C(O)N(R30R31)、-C(=NR31)R30、-C(=NOR31)R30、又は-C(=NNR31)R30であり;但し条件としてR27
及びR28、R26
及びR27、又はR22
及びR26
のうちの少なくとも一対は一個の環を形成せず;そして
R30、R31
及びR32
はそれぞれ個別に-H 、又は選択的に置換される脂肪族、脂環式、ベンジル、又はアリールであるか、あるいは-N(R30)R31
が一緒になって選択的に置換される複素環式の基、あるいは -CH(OR30)2
が一緒になって環式のアセタール基である。
【0048】
ある実施態様では、R1
【化3】


R2 はC1-C6 アルキル、C3-C6 シクロアルキル、又はヒドロキシ-C1-C6 アルキルであり;R4、R5
及びR11 は個別に C1-C6
アルキル 又はC3-C6 シクロアルキルであり;
R8 は C1-C6 アルキル、ヒドロキシ-C1-C6 アルキル、又はアミノ-C1-C6 アルキルであり;
R12、R13、R14
及び R15 は個別に H 又はメチルであり;
R21 はH、メチル、C1-C6 アルキル、C2-C6 アルケニル、C3-C6 シクロアルキル 又はフェニルであり;
R22 はH、メチル、C1-C6 アルキル、C2-C6 アルケニル、ヒドロキシ 又はC1-C6 アルコキシであり;あるいは
R23 はH 又は C1-C6
アルキルであり;
R24 は H、ハロゲン、C1-C6
アルキル、C2-C6 アルケニル、-NHR21 ヒドロキシル 又は C1-C6 アルコキシであり;そして
R25 は C1-C6 アルキルであり;
但しR21、R24
及びR25
は −OH、-CHO、又は-CO2Hで選択的に一回以上置換され;そして
この場合 R21、R22、R24 及びR25のうちのいずれか二つの隣接する炭素原子は一個の酸素原子と一緒になって一個のエポキシドを形成してもよい。
【0049】
別の実施態様では、R1
【0050】
【化4】


【0051】
更に別の実施態様では、R1
【0052】
【化5】

である。
【0053】
別の実施態様では、R2、R12、R4、R5、R13、R8、R14、R15
及びR11
はC1-C6
アルキルである。
【0054】
別の実施態様では、
R2 はエチルであり;
R4 はイソブチルであり;
R5 及びR11 はイソプロピルであり;そして
R8、R12、R13、R14
及びR15
はメチルである。
【0055】
別の局面では、本発明は式IのシクロスポリンH誘導体及びその薬学的に許容可能な塩及び溶媒和化合物を提供するものであり、但しこの場合のR1
はCH(OH)CH(CH3)CH2CH2R17R18であり;但し式中
R17 は −CHCHCH2CH2-、-CHCHCH2C(O)-、-(CH2)4- 又は −(CH2)3C(O)-であり;そしてR18 は OH、O-C1-C6 アルキル、OC(O)-C1-C6 アルキル、NH2、NH-C1-C6
アルキル 又は NHC(O)-C1-C6
アルキルであり;
R2 は C1-C6 アルキル、C3-C6 シクロアルキル、又は ヒドロキシ-C1-C6 アルキルであり;
R4、R5 及び R11
は個別に C1-C6 アルキル 又はC3-C6 シクロアルキルであり;
R8 は C1-C6 アルキル、ヒドロキシ-C1-C6 アルキル、又はアミノ-C1-C6 アルキルであり;そして
R12、R13、R14
及びR15 は個別に H 又はメチルである。
【0056】
別の実施態様では、R1 はCH(OH)CH(CH3)CH2CH2R17R18
であり;但しこの場合、式中
R17 は -CHCHCH2CH2-、-CHCHCH2C(O)-、- (CH2)4- 又は- (CH2)3C(O)-であり;そして
R18 は OH、OCH3、O(アセチル)、NH2、NH(CH2CH3)
又は NH(アセチル)であり;
R2 はC1-C6 アルキル、C3-C6 シクロアルキル、又はヒドロキシ-C1-C6 アルキルであり;
R4、R5 及びR11
は個別に C1-C6 アルキル又はC3-C6 シクロアルキルであり;
R8 は C1-C6 アルキル、ヒドロキシ-C1-C6 アルキル、又はアミノ-C1-C6 アルキルであり;
R12、R13、R14
及びR15 は個別に H又は メチルである。
【0057】
ある好適な実施態様では、R1
【0058】
【化6】



である。
【0059】
別の実施態様では、R1 はすぐ上に記載した置換アルキル又はアルキレン基のいずれかであり;そして
R2 はエチルであり;
R4 はイソブチルであり;
R5 及びR11
はイソプロピルであり;そして
R8、R12、R13、R14
及びR15
はメチルである。
【0060】
本発明の化合物のいくつかの構造には非対象の炭素原子が含まれることは留意されよう。従って、このような非対称性から生じる異性体(例えばすべてのエナンチオマー及びジアステレオマー)は、そうでないと明示しない限り、本発明の範囲内に含まれることは理解されねばならない。このような異性体は、伝統的な分離技術や、立体学的に制御された合成によってほぼ純粋な形で得ることができる。更に、本願で論じた構造及び他の化合物及び部分にはそれらのあらゆる互変異性体も含まれる。ここで解説した化合物は、当業で公知の合成戦略で得ることができる。
【0061】
ここでの開示の記載は化学結合の法則及び原理との適合性から見て捉えられねばならない。例えば、いずれかの位置で置換基を適合させるためには水素原子を取り除く必要があるかも知れない。更に、本発明の可変部分(即ち「R基」)や一般式の結合位置の定義は、当業で公知の化学結合の法則に従ったものであろうことは理解されねばならない。上述の本発明の化合物のすべてには、更に、各原子の原子価を満たすために必要な場合には、隣接する原子間の結合及び/又は水素が含まれるであろうことも理解されねばならない。即ち、結合及び/又は水素原子は、以下の種類の原子のそれぞれに以下の総結合数を提供するために加えられる:炭素:4つの結合;窒素:3つの結合;酸素:2つの結合;及び硫黄:2乃至6つの結合。
【0062】
ここで解説する化合物は、当業で公知の合成戦略を通じて得ることができる。例えばその全文を引用をもってここに援用することとするWenger, Helvetica Chimica Acta 67 (Fasc. 2-Nr. 60): 502-525 及びWO
2006/063470の両者を参照されたい。当業者であれば、ここに記載した化学反応は、本発明の他のシクロスポリン類似体の多くを調製するためにも容易に適合させ得ることは認識されるであろうし、本発明の化合物を調製する代替的方法は本発明の範囲内にあると考えられる。例えば、本発明に従いながらも、例示されていない化合物の合成は、例えば干渉する基を適宜保護する、記載した以外で当業で公知の他の適した試薬を用いる、及び/又は、反応条件の慣例的な改変を行うなど、当業者には明白な改変により、成功裏に行うことができよう。代替的には、ここで開示する、又は、当業で公知の他の反応も、本発明の他の化合物を調製するための適用性を有すると認識されよう。
【0063】
ジヒドロシクロスポリンHは本発明の一好適な実施態様である。CsHの水素化によるジヒドロCsHの作製法の一例として、CsHをメタノールに溶解させ、炭素上パラジウム(Pd/C)触媒を加える。この混合物を、水素取り込みが止まるまで水素雰囲気下で室温でParr装置上で振盪させる。混合物を窒素雰囲気下でろ過して触媒を取り除き、ろ過物をin vacuoで濃縮してメタノールを取り除く。その後、ジヒドロシクロスポリンHである残渣を、必要に応じてクロマトグラフィ又は再結晶化で精製してもよい。
【0064】
「薬学的に許容可能な塩」には、そうでないと明示しない限り、特定された化合物の遊離酸及び塩基の生物学的有効性を保持すると共に、生物学的に、又は他の点で望ましくないことがないような塩類が含まれる。本発明の化合物は、充分に酸性の、充分に塩基性の、又は両方の官能基を持つため、数多くの無機又は有機塩基や無機及び有機酸のいずれとも反応して薬学的に許容可能な塩を形成するであろう。薬学的に許容可能な塩の例には、本発明の化合物を鉱物又は有機酸又は無機塩基と反応させることで調製される塩が含まれ、例えばこのような塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜重硫酸塩、リン酸塩、モノヒドロゲン(原語:monohydrogen)硫酸塩、ジヒドロゲン(原語:dihydrogen)硫酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸、クエン酸塩、乳酸塩、ガンマ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、及びマンデル酸塩。本発明の単一の化合物には二つ以上の酸性又は塩基性部分が含まれ得るため、本発明の化合物には、単一の化合物のモノ、ジ又はトリ塩類が含まれよう。
【0065】
本発明の化合物が塩基である場合、所望の薬学的に許容可能な塩は、具体的には例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸の無機酸、あるいは、酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、グルクロン酸又はガラクツロン酸などのピラノシジル酸、クエン酸又は酒石酸などのアルファヒドロキシ酸、アスパラギン酸又はグルタミン酸などのアミノ酸、安息香酸又はケイ皮酸などの芳香族の酸、p-トルエンスルホン酸又はエタンスルホン酸などのスルホン酸 等の有機酸などの酸性化合物で遊離塩基を処置するなど、当業で公知のいずれかの適した方法で調製できよう。
【0066】
本発明の化合物が酸である場合、所望の薬学的に許容可能な塩は、例えば無機又は有機塩基で遊離酸を処置するなど、いずれかの適した方法で調製できよう。適した無機塩の例には、
リチウム、ナトリウム、カリウム、バリウム及びカルシウムなど、アルカリ及びアルカリ土類金属で形成されるものがある。適した有機塩基塩類の例には、例えばアンモニウム、ジベンジルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、2-ヒドロキシエチルアンモニウム、ビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、フェニルエチルベンジルアミン、ジベンジルエチレンアミン等々の塩類がある。酸性部分の他の塩類には、例えばプロカイン、キニン及びN-メチルグルコサミンで形成される塩類や、グリシン、オルニチン、ヒスチジン、フェニルグリシン、リジン及びアルギニンなどの塩基性のアミノ酸で形成される塩類が含まれよう。
【0067】
ここで用いられる場合の用語「アルキル」とは、完全に飽和した分枝状又は非分枝状の炭化水素部分を言う。好ましくは、アルキルは1乃至20個の炭素原子、より好ましくは1乃至20個の炭素原子、1乃至10個の炭素原子、1乃至7個の炭素原子、又は1乃至4個の炭素原子を含む。アルキルの代表的な例には、限定はしないが、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-
ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル等がある。更に、xが1-5であり、yが2-10である「Cx-Cy-アルキル」という表現は、特定の範囲の炭素の特定のアルキル基(直鎖又は分枝鎖)を指す。例えば、C1-C4-アルキルという表現には、限定はしないが、 メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、tert-ブチル及びイソブチルが含まれる。
【0068】
用語「アルケニル」は、単独又は組合せで、少なくとも一つのオレフィン結合と、指定した数の炭素原子とを含む直鎖、環状又は分枝状炭化水素残基を言う。好適なアルケニル基は、最高で8個、好ましくは最高で6個、特に好ましくは最高で4個の炭素原子を有する。アルケニル基の例はエテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、イソブテニル、1-シクロヘキセニル、1-シクロペンテニルである。
【0069】
ここで用いられる場合の用語「シクロアルキル」とは、3乃至12個の炭素原子、好ましくは3乃至9個、又は3乃至7個の炭素原子から成る飽和又は不飽和の単環式、二環式又は三環式炭化水素基を言う。単環式の炭化水素基の例には、限定はしないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル及びシクロヘキセニル等がある。二環式炭化水素の例には、ボルニル、インジル、ヘキサヒドロインジル、テトラヒドロナフチル、デカヒドロナフチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプテニル、6,6-ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプチル、2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル等がある。三環式炭化水素基の例にはアダマンチル等がある。
【0070】
用語「シクロアルケニル」とは、1乃至3個の環及び4乃至8個の炭素原子を一つの環当り含有する部分的に不飽和の環式炭化水素基を言う。基の例にはシクロブテニル、シクロペンテニル、及びシクロヘキセニルがある。用語「シクロアルケニル」には更に、環の少なくとも一つが部分的に不飽和の炭素含有環であり、二番目又は三番目の環が炭素環式又は複素環式であってもよいような二環式及び三環式の基が含まれるが、但し条件として結合点はシクロアルケニル基に付いている。
【0071】
「アルコキシ」とは、酸素原子を介して分子の残りに結合している、1乃至10個の炭素原子を有するアルキル基を言う。1乃至8個の炭素原子を持つアルコキシ基が好ましい。アルコキシのアルキル部分は直線状でも、環式でも、又は分枝状でもよく、あるいはこれらの組合せでもよい。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、シクロペンチルオキシ等がある。更にアルコキシ基は以下の式: -ORi(但し式中、Ri はアルコキシ基の「アルキル部分」である)で表すこともできる。
【0072】
用語「アリール」には、環系が部分的に飽和していてもよい、水素および炭素のみから成り、6個乃至19個の炭素原子、又は6個乃至10個の炭素原子を含有する、例えば三環式、二環式などの芳香族の単環式又は多環式の炭化水素環系が包含される。アリール基には、限定はしないが、例えばフェニル、トリル、キシリル、アントリル、ナフチル及びフェナントリルなどの基が含まれる。アリール基はまた縮合していても、あるいは、芳香族でない脂環式又は複素環式の環と架橋することで多環(例えばテトラリン)を形成することもできる。
【0073】
用語「ヘテロアリール」は、ここで用いられる場合、少なくとも一つの環が芳香族であり、O、N 及びSから成る群より選択されるヘテロ原子を1乃至4個含有するような、各環中に最高7個の原子から成る安定な単環式又は二環式の環を表す。この定義の範囲内のヘテロアリール基には、限定はしないが:アクリジニル、カルバゾリル、シノリニル、キノクサリニル、ピラゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、インドリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリンがある。下記の複素環の定義について、「ヘテロアリール」には、いずれかの含窒素ヘテロアリールのN-オキシド誘導体が含まれるとも理解されている。ヘテロアリール置換基が二環式であり、一方の環が非芳香族であるか又はヘテロ原子を含まない場合、結合は、それぞれ芳香族の環を通じて、又は、ヘテロ原子含有環を通じてであると理解される。
【0074】
用語「複素環」又は「ヘテロシクリル」とは、O、S又はNなどのヘテロ原子を少なくとも一つ含有する、完全に飽和した、又は、部分的に不飽和の、5員環乃至10員環の非芳香族複素環基を言う。最も頻度の高い例はピペリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピロリジニル又はピラジニルである。ヘテロシクリル置換基の結合は炭素原子又はヘテロ原子を通じて起こさせることができる。
【0075】
更に、上述のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、及び複素環基は「非置換」でも、又は「置換されて」いてもよい。用語「置換された」は、例えばある一つの分子のC、O又はNなど、一つ以上の原子に付いた水素を置換した置換基を有する部分を言うものと意図されている。このような置換基には、個別に、例えば以下のうちの一つ以上を含めることができる:直鎖又は分枝状アルキル(好ましくはC1−C5)、シクロアルキル(好ましくはC3−C8)、アルコキシ (好ましくはC1−C6)、チオアルキル(好ましくはC1−C6)、アルケニル(好ましくはC2−C6)、アルキニル(好ましくはC2−C6)、複素環式、炭素環式、アリール(例えばフェニル)、アリールオキシ(例えばフェノキシ)、アラルキル(例えばベンジル)、アリールオキシアルキル(例えばフェニルオキシアルキル)、アリールアセトアミドイル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル、アルキルカルボニル及びアリールカルボニル又は他のこのようなアシル基、ヘテロアリールカルボニル、又はヘテロアリール基、(CR’R”)0−3NR’R” (例えば −NH2)、(CR’R”)0−3CN (例えば −CN)、−NO2、ハロゲン(例えば−F、−Cl、−Br、又は −I)、(CR’R”)0−3C(ハロゲン)3
(例えば −CF3)、(CR’R”)0−3CH(ハロゲン)2、(CR’R”)0−3CH2(ハロゲン)、(CR’R”)0−3CONR’R”、(CR’R”)0−3(CNH)NR’R”、(CR’R”)0−3S(O)1−2NR’R”、(CR’R”)0−3CHO、(CR’R”)0−3O(CR’R”)0−3H、(CR’R”)0−3S(O)0−3R’ (例えば −SO3H、−OSO3H)、(CR’R”)0−3O(CR’R”)0−3H (例えば −CH2OCH3 及び−OCH3)、(CR’R”)0−3S(CR’R”)0−3H (例えば −SH 及び−SCH3)、(CR’R”)0−3OH (例えば −OH)、(CR’R”)0−3COR’、(CR’R”)0−3(置換もしくは非置換のフェニル)、(CR’R”)0−3(C3−C8 シクロアルキル)、(CR’R”)0−3CO2R’
(例えば −CO2H)、又は (CR’R”)0−3OR’ 基、又はいずれかの天然発生型のアミノ酸の側鎖;但しこの場合のR’ 及びR” はそれぞれ個別に水素、C1−C5
アルキル、C2−C5
アルケニル、C2−C5
アルキニル、又はアリール基である。
【0076】
用語「アミン」又は「アミノ」は、当業で広く理解されるように両者とも分子又は部分又は官能基に適用されるものと理解されねばならず、一次、二次、又は三次であってよい。用語「アミン」又は「アミノ」には、窒素原子が少なくとも一つの炭素、水素又はヘテロ原子に共有結合しているような化合物が含まれる。該用語には、例えば、限定はしないが、「アルキルアミノ」、「アリールアミノ」、「ジアリールアミノ」、「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」、「アリールアミノアルキル」、「アルカミノアルキル」、「アミド」、 「アミド」及び「アミノカルボニル」が含まれる。 用語「アルキル アミノ」は、窒素が少なくとも一つの付加的なアルキル基に結合しているような基及び化合物を含む。用語「ジアルキルアミノ」には、窒素原子が少なくとも二つの付加的なアルキル基に結合しているような基が含まれる。用語「アリールアミノ」及び「ジアリールアミノ」には、窒素がそれぞれ少なくとも一つ又は二つのアリール基に結合しているような基が含まれる。用語「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」 又は「アリールアミノアルキル」とは、少なくとも一つのアルキル基及び少なくとも一つのアリール基に結合しているアミノ基を言う。用語 「アルカミノアルキル」 とは、アルキル基にも結合している窒素原子に結合したアルキル、アルケニル、又はアルキニル基を言う。
【0077】
用語「アミド」、「アミド」 又は「アミノカルボニル」には、カルボニル又はチオカルボニル基の炭素に結合した窒素原子を含有する化合物又は部分が含まれる。この用語には、カルボニル基に結合したアミノ基に結合したアルキル、アルケニル、アリール 又はアルキニル基を含む「アルカミノカルボニル」 又は「アルキルアミノカルボニル」基が含まれる。
それは、カルボニル又はチオカルボニル基の炭素に結合したアミノ基に結合したアリール 又はヘテロアリール部分を含むアリールアミノカルボニル及びアリールカルボニルアミノ基を含む。用語「アルキルアミノカルボニル」、「アルケニルアミノカルボニル」、「アルキニルアミノカルボニル」、「アリールアミノカルボニル」、「アルキルカルボニルアミノ」、「アルケニルカルボニルアミノ」、「アルキニルカルボニルアミノ」及び「アリールカルボニルアミノ」は用語「アミド」に含まれる。アミドには更にウレア基(アミノカルボニルアミノ)及びカルバメート(オキシカルボニルアミノ)も含まれる。
【0078】
本発明のある具体的な実施態様では、用語「アミン」又は「アミノ」とは、式N(R)R 又は C1−6N(R')R"の置換基を言い、この場合
R 及び R はそれぞれ、個別に −H 及び− (C1-4アルキル)0−1G(但しこの場合の Gは −COOH、−H、−PO3H、−SO3H、−Br、−Cl、−F、−O−C1−4アルキル、−S−C1−4アルキル、アリール、−C(O)OC1−C6−アルキル、−C(O)C1−4アルキル−COOH、−C(O)C1−C4−アルキル及び−C(O) −アリールから成る群より選択される)から成る群より選択され;又はN(R)Rはピロリル、テトラゾリル、ピロリジニル、ピロリジニル−2−オン、ジメチルピロリル、イミダゾリル及びモルホリノである。
【0079】
処置の方法
好中球性障害及び好中球関連炎症プロセスのための潜在的な治療薬としてCsHが満足のいくものかどうかを評価するプロセスにおいて、我々はCsHを投与された動物で循環中好酸球が著しく減少したことを観察した(表1を参照されたい)。これはユニークで予測できなかった観察である。好酸球はFPRを発現することが公知であるが、この受容体が、好酸球の成熟、骨髄からの放出、全身の循環中レベル、又は局所的動員を媒介する上で役割を有すると示唆されたことはなかった。
【0080】
数多くの疾患が好酸球の応答及び特異的組織への局在化に関係する。喘息においては、好酸球のレベル上昇が循環中及び肺組織への局在の両者でみられる。下に述べるHES及びEGID障害では、好酸球のレベル上昇が観察される。更に、皮膚の炎症性障害(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、湿疹)には、局所的な好酸球浸潤が伴う。いずれの場合でも、本発明のシクロスポリンで処置すると、循環中や、これらの各障害に関係する局所的部位で好酸球レベルや好酸球活性化が減少するであろう。このような化合物による処置で、このような浸潤及び関連する症状が軽減又は改善するであろう。
【0081】
本発明において、上に列挙したものを含め、好酸球関連疾患及び障害の処置のためのFPRアンタゴニストの治療的使用をここで提供する。好適な実施態様では、このようなアンタゴニストは、強力かつ特異的なFPRアンタゴニストとして作用するCsH及びその誘導体(例えばジヒドロCsH、式Iの化合物)が含まれよう。本発明のシクロスポリンは、循環中好酸球を減少させる、好酸球機能もしくは局所的細胞数の増加の疾患に関連する部位での好酸球を減少させる、あるいは、このような部位での好酸球活性化レベルを減少させる用量、投与される。
【0082】
用語「好酸球関連疾患」又は「好酸球関連障害」には、好酸球の異常なレベル又は活性化に関係する障害及び状態(例えば疾患状態)が含まれる。好酸球関連状態には、好酸球の発現の上昇が原因で起きる状態が含まれる。好酸球関連状態の例には、限定はしないが、免疫障害(例えば湿疹、皮膚炎、又は乾癬)又はアレルギー障害(例えば喘息、枯草熱、過好酸球症候群、又は好酸球関連胃腸管障害)、胃腸管障害(例えば好酸球性胃腸管炎、アレルギー性腸炎、好酸球性食道炎、炎症性腸疾患又は胃腸管逆流性疾患)がある。
【0083】
このような好酸球性障害の他の既存の処置法は全身用又は局所用ステロイドを利用するものである。このような処置には限界があり、著しい悪い副作用を伴う。FPR アンタゴニストもまた、このようなステロイド処置戦略を超える利点を有するであろう。なぜなら、この受容体を特異的に狙う薬剤はこのような副作用を発現しないだろうからである。本発明のシクロスポリンを含むFPR アンタゴニストはステロイド処置と組み合わせて用いることができ、また、低用量のこのような治療薬による処置を可能にするかも知れない。
【0084】
本発明のシクロスポリンは、例えば、内因性及び外因性の両方の喘息を含め、いずれの種類の喘息の処置にも有用である。例えばそれらは、アレルギー性全色、気管支炎性喘息、運動誘発性喘息、職業性喘息、細菌感染後に誘発される喘息、及び、他の非アレルギー性喘息を含め、アトピー性及び非アトピー性の喘息の処置に有用である。喘息の処置はまた、主要な医学的懸念のある患者に確立されたカテゴリーであり、今ではより正確に初期又は初期段階の喘息患者として特定される「喘鳴性小児」として診断された、又は診断可能な、特に夜間に喘鳴症状を示す、4乃至5歳未満などの対象の処置である「喘鳴性小児症候群」の包含処置であるとも理解されている。加えて本発明のシクロスポリンは、その喘息性状態がステロイド依存的又はステロイド耐性である対象の喘息の処置に有用である。
【0085】
用語「喘息」は、気管支の気道の直径又は口径の広汎な変動が短期間にあることで肺機能に変化が生じることを特徴とする状態を記述するために用いられてきた。その結果起きる、空気の流れへの耐性上昇は、息切れ(呼吸困難)、胸部の収縮又は「締付け感」及び喘鳴を含む症状を生じる。用いられる通りのこの用語は現在、いずれかの特定の一つ又は複数の原因で生じる障害又は疾患に限られず、むしろそれはその臨床上の症状発現によって特徴づけられる。本当の免疫学的機序は、個々の喘息状態の病因において因子である場合も、ない場合もある。更に、空気の輸送が完全に閉塞された特に重篤な発作では特徴的な喘鳴が存在しない場合もある。原因に関係なく、あらゆる罹患者の喘息は、気管支の平滑筋の可逆性の反応性亢進を特徴とし、その結果それは収縮して正常な呼吸が妨げられることとなる。喘息で死亡する患者の肺は通常、青白いピンクであり、高度膨張しており、胸部から取り出してもつぶれない。気管支樹全体の気道の多くは、マスト細胞を含む多様な種類の白血球に浸潤された濃稠な粘性の栓で閉塞されている。気道の平滑筋は肥大している。喘息発作を特徴とする気管支収縮又は気管支痙攣は空気の流れに閉塞を起こすため、気道を解放した状態に保つために、努力呼気と、人為的に高められた機能的空気貯留能とを必要とする。その結果起きる肺の高度膨張は著しいストレスを心臓血管系(特に右心室)にかけるため、結果的に心臓血管事象にまでつながることもある。
【0086】
本発明のシクロスポリンは、気道及び/又は肺を冒すため過好酸球増加症や、レフレル症候群に続発する又は併発する気道の好酸球関連障害、好酸球性肺炎、寄生生物(特に後生生物)インフェステーション(熱帯性好酸球増加症を含む)、気管支肺アスペルギルス症、結節性多発性動脈炎(チャーグ-ストラウス症候群を含む)、好酸球性肉芽腫、及び、薬物反応が引き起こす、気道が罹患する好酸球関連障害を含め、気道の好酸球関連障害(例えば肺組織の病的な好酸球性浸潤が関与するもの)を処置するために有用であろう。
【0087】
気道及び肺の疾患、特に喘息の処置に関係して用いられる場合、用語「処置」とは、例えば急性感染症(対症療法的)などの即時処置である対症療法的形態や、長期の総体的症状を防ぐ、軽減する又は制限する(予防的処置)ための先行処置である予防的形態の両方を包含するものと理解されねばならない。例えばぜんそくの場合、本発明は、急性の炎症事象を軽減するための対症療法処置や、進行中の炎症状態を阻害するため、そして気道のリモデリングを含め、それに伴う将来の気管支の増悪を軽減するための予防的処置を含む。
【0088】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の場合、空気の流れの減少の大半はゆっくりと進行し、気道組織の損傷のために非可逆的である。細気管支洗浄中の好中球の増加や、好中球活性化の多様なマーカーのレベル上昇が COPDで観察されている (Barnes, 2000にレビュー)。これらには、COPD及び肺気腫の両方で組織損傷において鍵となる役割を果たしていると考えられる好中球エラスターゼ(活性化好中球が放出する破壊酵素)が含まれる。
【0089】
喫煙はCOPD及び肺気腫の主要なリスク因子として明らかに特定されているが、喫煙関連組織損傷がこれらの疾患を発現する分子機序の理解は進んでいない。このような患者の肺での主要な特徴の一つはアポトーシスである。喫煙は気道上皮細胞のアポトーシスを誘導することが示されている (Hodge
et al., 2004にレビュー)。アポトーシスの結果、注目すべきことにミトコンドリア物質を含む細胞片が局所的に放出及び蓄積されることが公知である。
【0090】
好中球及び好酸球の浸潤は、特に増悪のエピソード中にCOPDの進行に勢力をふるうが、この疾患に関係する進行性組織破壊に関与すると考えられている (Papi
et al., 2006)。更に、ミトコンドリアホルミルペプチドは強力な好中球活性化物質として作用し、ホルミルペプチド受容体を通じてシグナル伝達することができる
(Rabiet et el., 2005)。従って、COPD又は肺気腫患者の肺組織の好中球(及び場合によっては好酸球)浸潤を考慮して、本発明は、このような組織でホルミルペプチドが媒介する活性化を減衰するであろうホルミルペプチドアンタゴニストを投与することによる、このような患者の処置法を解説する。このようなアンタゴニストは、長期又は予防的治療法に、あるいは他の場合ではこのような患者の疾患増悪を処置するために使用することができよう。本発明の化合物には、限定はしないが、CsH、ジヒドロCsH、及びそれらの誘導体又は類似体(式1の化合物など)が含まれる。
【0091】
好中球活性化は数多くの刺激に応答して起き得る。IL-8、ロイコトリエン(即ちLTB4)及びC5a は好中球の強力な活性化物質であり、化学走性物質として作用し、好中球血管外遊出を惹起することが知られている。もう一つのクラスの好中球活性化物質はホルミル化ペプチド:部分的にN-ホルミル-メチオニンから成るペプチド (fMet)から成る。fMetは原核生物のタンパク質合成における一番目のアミノ酸残基であり、その結果、成長中のポリペプチドのN末端に位置する。これらのタンパク質又はその分解生成物は、原核生物(即ち細菌)感染部位における好中球動員及び活性化の強力な活性化物質として役立つ。
【0092】
N-ホルミル-メチオニンもまた、細菌の進化上の子孫であるミトコンドリアでは開始コドンである。このように、ミトコンドリアにコードされ、かつ産生されるタンパク質及びペプチドもまたfMetのソースであり、原核生物でのものと同様な態様で好中球を刺激することができる。
【0093】
N-ホルミルメチオニン含有ペプチドの受容体はホルミルペプチド受容体(FPR)として公知である。FPR は好中球、好酸球、及び好塩基球(即ち顆粒球)上で特異的に発現するGタンパク質共役受容体(GPCR)である。分類上、GPCRは、疾患プロセスにおける治療的介入にとって最も成功率の高い標的タンパク質であった:臨床で処方された薬物の推定30%がGPCR アゴニスト又はアンタゴニストである (Stadel et al,
Trends Pharmacol Sci. 18:430-437 (1997))。fMLF 媒介性化学誘因は最もよく知られ、かつ特徴付けられた免疫調節性シグナル伝達系であるが、健康及び疾患の両方の多様な生理学的シナリオにおいて、補体系及び数多くの公知のケモカインの多様な成分を含め、他の化学誘因物質に比べてFPRシグナル伝達のin vivoでの寄与についてはほとんど未知である。このことは、急性又は慢性炎症におけるいずれかの病因上の役割を含め、ヒトの疾患及び障害においてFPRシグナル伝達が果たしているかも知れない役割について真実である。炎症は局所的免疫応答で重要な事象であり、感染除去に必要な細胞及び細胞活性を集約かつ調節するシグナル伝達カスケードを開始及び増幅させるのに役立っているが、これらのシグナル伝達プロセスの制御消失はおそらく、いずれかの数の病的炎症状態又は付随状態につながるものであろう。従って、抗炎症治療法の潜在的なターゲットとしてのFPRの可能性は概ね未開発のままである。FPR アンタゴニストは、多様な炎症関連障害の処置での使用に向けて大きな関心であろう。
【0094】
ホルミル化ペプチドリガンドに加え、多くのFPRアゴニスト及びアンタゴニストが発見されてきた。アンタゴニストには、誘導体化短鎖Leu-Pheペプチドや、シクロスポリンH (CsH)がある。CsHはCsAとは明らかに異なる生物学的特性及び活性を有する、CsAのジアステレオマーである。カルシニューリン媒介性シグナル伝達の阻害を通じてT細胞活性化を阻害する。CsHはこのシグナル伝達経路に何の効果も有さず、実際、CsAによる免疫抑制の研究で負のコントロールとして広く用いられてきた。更に、CsAはFPR媒介性シグナル伝達に何の効果も有さない。
【0095】
CF気道炎症は、異常に密な好中球浸潤及び活性化を特徴とし、活性化酸素代謝産物(即ち過酸化水素、酸素ラジカル、オゾン)や、好中球エラスターゼを含むタンパク質分解酵素の産生及び放出を通じて進行性の気道損傷を引き起こす(Fick, Chest 96:
158-164 (1989))。更に、CF患者で観察される過剰な好中球応答及び結果的な肺増悪は、P.アエルギノーサ感染自体のみに関連するものではないかも知れない。好中球及び単球浸潤、並びに高レベルの炎症誘発性サイトカイン含む、炎症のサインが、肺炎症に罹患した、感染のない小児で、そして検出可能なP.アエルギノーサ感染前のCF罹患小児の気管支肺胞洗浄液(BAL)中で観察されている (Khan et al.,
Am J Respir Crit Care Med 151:1075-82 (1995))。
【0096】
ムコイドの転換とバイオフィルムの形成という、二つの変化した状態のP.アエルギノーサ成長もまた、CF患者の疾患経過で役割を果たすと考えられている。ムコイド転換はin vivoで起き、慢性感染の樹立と関係している。P.アエルギノーサによるCF肺の最初のコロニー形成はしばしば、抗生物質治療法によって根絶することができる。しかし、後期の段階で喀痰試料分離物の研究では、ムコイド成長への転換を伴うコロニー形態の出現と、より強力な抗生物質処置をもっても感染を除去できない場合との間に相関関係が観察されている (Fredericksen et al.,
Pediatr. Pulmonol. 23:330-335 (1997))。ムコイドの表現型はアルギン酸塩の過剰産生を特徴とするが、このアルギン酸塩は、細菌接着に影響し、好中球攻撃への耐性を発現し、酸素ラジカルを中和し、貪食細胞へのバリアーとして役立ち、そしてムコイド細菌を抗生物質治療に対して抵抗性にするバリヤーを成すカプセル様の多糖である (Evans and
Linker, J. Bacteriol 116:915-924, 1993; Govan and Deretic, Microbiol Rev
60:539-573 (1996))。ムコイドの表現型はしばしば、mucA遺伝子産物を切断する変異や、アルギン酸塩をコードするオペロンを通常、負に調節する抗シグマ因子が原因である (Martin et al.,
Proc Natl Acad Sci USA 90:8377-8381 (1993))。mucA 変異はムコイドP.アエルギノーサ分離株の84%に見られるが (Boucher et al., Infect
Immun 65:3838-46 (1997))、これは、CF患者の変異物質株の高い発生率及び持続性を説明する観察であろう (Oliver et al., Science
288:1251-53 (2000))。
【0097】
興味深いことに、ムコイド転換を選択するソースの一つは、浸潤中の好中球が産生する酸素ラジカルの存在かも知れない。実際、このようなラジカルは、非ムコイド細胞のムコイド表現型への転換において原因となる役割を果たしていると考えられる:P.アエルギノーサを生理的に意味のある濃度の過酸化水素にin vitroで一時的に暴露するとムコイド転換が起きる (Mathee et al.,
Microbiology 145:1349-1357 (1999))。このように、CF患者の感染肺で起きる過剰な炎症性免疫応答は、難治性の形のP.アエルギノーサの出現に影響することにより、この疾患プロセスで付加的な役割を果たすものであろう。これはひいては、このような患者における好中球応答を選択的に減衰すれば、ムコイド転換を妨げる又は遅延させることで、抗生物質療法の効験を永続化させ、非ムコイド性P.アエルギノーサのより強力なムコイド型への転換を遅らせる又は妨げられるかも知れないことを示唆している。
【0098】
CF肺炎症のための有効な治療法の好ましい最終的ゴールの一つは、他の好中球機能又は免疫応答の他の成分の応答性を深刻に減衰することなく、好中球エラスターゼ放出及び酸素ラジカル産生を減衰させることで、肺の炎症関連組織損傷を抑えつつ、細菌感染と有効に闘う能力を維持することであろう。上で言及したように、好中球動員及び活性化は、細胞外勾配を形成する複数の小型シグナル伝達分子によって媒介される。しかし、ホルミル化ペプチドは、きわめて低濃度で強力かつ完全な好中球応答を行うという点で、効力のより低いシグナル伝達分子とは異なる。対照的に、C5a、ロイコトリエン、及びIL-8などの他のエフェクターは化学走性及び抗原体抱き込みを潜在的に刺激するが、脱顆粒及びスーパーオキシド産生を有効に誘導するためにはより高濃度が必要である(Klinker et al.,
Biochem Pharmacol 48:1857-1864 (1994))。
【0099】
上述したように、P.アエルギノーサはCF肺のフローラの不幸な(そして病原性の)成分として考えてよいであろう。従って、細菌フローラが豊富な別の部位は、多様な細菌及び微生物の居所が常に見つかり、実際、消化管の良好な健康及び好調と関係する場所である消化系である。このような固有のフローラは消化の助けとなり、有益でない、又は有害な微生物の集落形成又は成長をかわす。
【0100】
腸管は、そのすべてではないにしてもほとんどが有益であるが通常は免疫応答を惹起する高レベルの微生物の部位として、このような固有のフローラに対する免疫応答を制御するために数多くの機序を実行しなければならない。更に、小腸及び結腸からの消化産物は全身的に取り込まれなければならない。従って消化系の粘膜ライニングは、重要な半透過性バリヤーとして役立ち、栄養物質及び消化産物の輸送は可能としつつ、消化管中の微生物からそれらを分離する物理的バリヤーとして役立つことで免疫応答を媒介する細胞は除外する。
【0101】
従って消化管の粘膜ライニングの物理的一体性は大変重要である。損傷又は傷害は病的状態につながりかねない。多様な形の大腸炎、クローン病又は炎症性腸疾患(IBD)における炎症は、細菌に組織への局所的通過をゆるし、長期の炎症につながる免疫反応を起こさせると考えられる、結腸又は小腸の内側のライニングの透過性上昇が原因であると示唆されてきた。代替的には、これらの生物の産生する免疫刺激性分子が組織近傍の透過を許されて、免疫応答を惹起するのかも知れない。好中球が蓄積及び活性化し、他の局面の免疫応答も係わるようになるにつれ、その結果の組織損傷は、組織に治癒及び炎症性免疫応答を消散させる機会のない自己永続化性病変となる。
【0102】
ホルミルペプチドは高濃度で細菌集落形成部位に存在するため、消化管の固有の微生物フローラの産生するこれらの分子が、大腸炎、クローン病、及びIBDに関係する傷害及び病変部位への好中球動員において役割を果たしている可能性が高い。これは、好中球浸潤がこれらの障害の証明であることの観察によって裏付けられる。FPR アンタゴニストで患者を処置することにより、病変が治癒すると共に腸管フローラン及び免疫系間の必要なバリヤーが再構築されるように、この好中球動員及び活性化、炎症、並びに組織損傷のサイクルを消散させられよう。
【0103】
FPRのもう一つのクラスの強力な活性化物質は、ミトコンドリアにコードされて産生されるタンパク質の開始残基メチオニンを含有するペプチドである。局所的組織損傷の領域、特にアポトーシスに関連するものにおいては、このようなミトコンドリア産物が放出され、顆粒球(即ち好中球)媒介型免疫応答をFPRシグナル伝達を通じて惹起するのだと考えられる。このような損傷及び応答の一例は、アポトーシス及び局所的好中球浸潤が観察されている虚血組織でみられる。虚血損傷のこのような部位の例は、移植臓器、心筋梗塞又は脳卒中における組織再潅流損傷である。FPRアンタゴニストで、臓器を提供する患者を予備処置する、提供された臓器を潅流する、臓器レシピエントを予備処置する及び/又は処置することにより、再潅流に関係する組織損傷及びアポトーシスの炎症性続発症を、好中球浸潤又は活性化を阻害、組織損傷を抑える又は防いだために、減衰又は防止できるであろう。同様に、脳卒中又は心臓発作(即ち心筋梗塞)に罹患した患者をFPRアンタゴニストで虚血事象後に処置すると、それらの組織に対する損傷が軽減するであろう。
【0104】
不適切な、過剰な、又は長引いた好中球応答(即ち動員及び/又は活性化)が関与する疾患又は障害の治療法におけるホルミルペプチド受容体アンタゴニストの使用をここで提供する。シクロスポリンH (CsH) はホルミルペプチド受容体の公知の強力かつ特異的なアンタゴニストであり、従って、ここで解説する指標のためにアンタゴニストとして治療的に用いることができる。同様に、FPRアンタゴニスト活性を持つ、CsHの誘導体及び類似体もまた、治療上の用途を有するであろう。更に、CsH 様CsA、CsHはMeBmt 側鎖を有する。生物学的活性を維持するための化学修飾をその側鎖が全く寛容できないCsA(CsA中のこの側鎖の化学修飾は、その後代謝を受けて生物学的に活性な分子になる、生物学的に不活性なプロドラッグを作ることを、ほぼ排他的な焦点としていた)とは対照的に、我々は、CsHのMeBmt部分を化学的に変化させ、生物学的機能を維持する(即ちFPR阻害特性を保持する)ことができることを観察した。例えばT細胞活性化検定でCsAのMeBmt側鎖の二重結合を還元すると活性が劇的に消失する。結晶構造研究では、この側鎖はシクロフィリン-CsA-カルシニューリン複合体のシクロフィリン成分との特異的相互作用点を4つ有することが示されている(Huai et al., Proc Natl Acad Sci USA 99:12037-12042
(2002))。ホルミルペプチドのヒトホルミルペプチド受容体への結合検定で、CsH中のこの同じ結合を還元しても、CsHの見かけのIC50に何の影響もない。このように、この発明のシクロスポリンには、ジヒドロCsHや、FPR阻害活性を維持した式Iの化合物がふくまれる。
【0105】
CsHのFPR結合活性を維持する上での化学修飾に対するMeBmt側鎖の寛容性を見た我々の観察に基づき、処置を受けた患者におけるCsHのADME(吸収、分散、代謝、及び排泄)、可溶性、生物学的利用能、又は薬物動態(PK)特徴を有利に変化させる手段として、この側鎖の化学修飾を我々は提案する。このような変更はまた、CsHと他の同時に投与される治療法との間の薬物対薬物相互作用(即ち、他の同時投与される薬物の薬物対薬物相互作用、代謝変化、吸収又は排泄)を減衰又は調節する戦略ともなるであろう。更に、MeBMT側鎖はシクロスポリン代謝の部位としてよく文献化されている。この部分を化学修飾又は変更すると、CsHベースの化合物の代謝に影響があるであろうことが予測される。
【0106】
CsA はまた、p-糖たんぱく質トランスポーターの基質であることも知られており、この特性は、同時に投与される薬物の薬物対薬物相互作用や、その吸収及び排泄特徴の両方とに関係すると考えられる。ここで開示するように、CsHの活性欠如は、このクラスの化合物をCsA及びその生物学的に活性な誘導体又は類似体(即ち、T細胞活性化又はシクロフィリン-カルシニューリン経路シグナル伝達検定で活性を保持するもの)から識別する好ましい特性である。
【0107】
本発明はまた、CsH、ジヒドロCsH、又は式Iの化合物の薬学的に活性な代謝産物及び薬学的に許容可能な塩にも関する。更に本発明は、治療上有効量のCsH、ジヒドロCsH、又は式Iの化合物、あるいはその代謝産物、溶媒和化合物、分解エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ混合体又は薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物にも関する。
【0108】
本発明の化合物は、他の公知の治療薬と組み合わせて有利に用いてよい。従って本発明は、治療上有効量のCsH、ジヒドロCsH、又は式Iの化合物、あるいはその代謝産物、溶媒和化合物、分解エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ混合体又は薬学的に許容可能な塩を第二の治療薬と組み合わせて含む医薬組成物にも関する。
【0109】
更なる局面では、本発明は、呼吸器疾患、障害、及び状態を処置するための医薬としての本発明の化合物の使用法を提供する。例えば本発明は、哺乳動物において免疫調節又は呼吸器障害を処置する方法であって、前記障害を処置するために有効量のCsH、ジヒドロCsH、又は式Iの化合物、あるいはその代謝産物、溶媒和化合物、分解エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ混合体又は薬学的に許容可能な塩のうちの一つ以上の化合物を前記哺乳動物に投与するステップを含む。同様に他の局面には、消化管又は皮膚の疾患を処置する方法が含まれる。
【0110】
更に本発明は、CsH、ジヒドロCsH、又は式Iの化合物、あるいはその代謝産物、溶媒和化合物、分解エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ混合体又は薬学的に許容可能な塩のうちの一つ以上の化合物を含むキットを提供する。本キットは更に、免疫調節性又は呼吸器の疾患、障害又は状態を処置するための第二の医薬物質を含む第二の化合物又は調合物も含んでよい。
【0111】
「薬学的に活性な代謝産物」とは、身体内での特定の化合物又はその塩の代謝を通じて産生される薬理学的に活性な産物である。ある化合物の代謝産物は、当業で公知の慣例的な技術を用いて特定でき、それらの活性は、ここに記載したものなどの検査を用いて判定できよう。
【0112】
本発明のシクロスポリンは、例えば眼、鼻腔、口腔、大腸、皮膚、腸管、気道、肺、耳、肛門又は膣の疾患又は状態の処置用の局所投与など、抗炎症治療法又は関連する治療法に応答性の、又は、同治療法を要する疾患又は状態の処置に有用である。本発明のシクロスポリンは、例えば気道又は肺の疾患及び状態、特に炎症性又は閉塞性気道疾患、の処置にとって有用であろう。これらは、好酸球など、炎症性細胞の蓄積が伴う炎症性細胞浸潤又は他の炎症性事象を伴う、又は特徴とする、気道又は肺の疾患又は状態の処置に特に有用である。
【0113】
用語「処置する」は、ここで用いられる場合、他に明示しない限り、このような用語が適用される障害又は状態、あるいは、このような障害又は状態の一つ以上の症状、を逆転させる、軽減する、その進行を阻害する、又は防止することを意味する。用語「処置」とは、ここで用いられる場合、他に明示しない限り、「処置する」がすぐ上に定義されている通り、処置する行為を言う。「処置する」は、ヒトなどの哺乳動物において、とくにこの哺乳動物が、疾患状態を有する素因があると見出されながらもそれを有すると診断されていないときに、疾患状態を少なくとも軽減することを意味するものと意図されており、その中には、限定はしないが、疾患状態を調節する及び/又は阻害する;及び/又は疾患状態もしくはその症状を軽減することが含まれる。
【0114】
医薬組成物
本化合物の「有効量」という文言は、例えば、好酸球関連又は好中球関連疾患、及び/又は、ここで解説する疾患又は状態の多様な形態学的及び身体症状を防ぐなど、好酸球関連又は好中球関連疾患を処置又は防止するのに必要又は充分な量である。一例では、本発明の化合物の有効量とは、対象において好酸球関連又は好中球関連疾患を処置するのに充分な量である。該有効量は、対象の大きさ及び体重、疾病の種類、又は本発明の特定の化合物に依存するであろう。例えば、本発明の化合物の選択は、何が「有効量」を構成するのかに影響し得る。当業者であれば、ここに含まれる因子を研究でき、不当な実験なしで本発明の化合物の有効量に関する決定を行えよう。
【0115】
投与の養生法は、何が有効量を構成するかに影響を与え得る。本発明の化合物は、好酸球関連又は好中球関連疾患の発症前又は発症後のいずれでも、対象に投与することができる。更に、複数回に分割された投薬量や、交互に食い違いになった投薬量を毎日、又は順次投与することもでき、あるいは、用量を連続輸注することも、あるいは大量注射とすることもできる。更に、本発明の化合物の投薬量は、治療又は予防状況の緊急度が示す場合には比例的に増減させることができる。
【0116】
本発明のシクロスポリンは、限定はしないが肺経路(吸入)、鼻腔投与、直腸投与(例えば座薬又は浣腸型)、皮膚(皮膚への局所)、経口又は眼を含む経路により、投与してよい。
【0117】
例えば、CsH、ジヒドロCsH、又は式Iの化合物は、例えば肺経路による吸入などにより、気道内に局所投与することができる。本発明の化合物はまた、例えば乾癬、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、多形性紅斑、疱疹状皮膚炎、強皮症、白斑、過敏性血管炎、蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、紅斑性狼瘡、天疱瘡、後天性表皮水疱症、及び他の、皮膚の炎症性又はアレルギー性状態など、免疫機序が媒介する皮膚疾患の処置などのために、皮膚、即ち皮膚に局所的に、投与することもできる。選択的には、本発明のシクロスポリンを、例えばコルチコステロイド、抗ヒスタミン、抗生物質、抗カビ剤など、抗炎症性、免疫抑制性、又は他の薬理学的に活性な薬剤と一緒に同時投与する。
【0118】
本発明の化合物を用いるには、通常はそれを医薬組成物として標準的な医学的慣例に従って調合する。本発明のこの局面に従って、CsH、ジヒドロCsH、は式Iの化合物(あるいは薬学的に許容可能なこれらの塩)を、薬学的に許容可能な希釈剤又は担体と関係させて含む医薬組成物が提供される。
【0119】
本発明による医薬組成物を調製するには、治療上又は予防上有効量のCsH、ジヒドロCsH、又は式Iの化合物、あるいは、これらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、又は代謝産物(単独で、又はここで開示する通りの付加的な治療薬と一緒に)、ある用量を作製するための従来の薬学的配合技術に従って、薬学的に許容可能な担体などと当該化合物をまず混合する。担体は、例えば経口又は非経口など、投与に好ましい製剤型に応じて幅広い多様な形を採ってよい。適した担体の例には、限定はしないが、あらゆる溶媒、分散媒、アジュバント、コーティング、抗菌剤及び抗カビ剤、等張剤及び吸収遅延剤、甘味料、安定化剤(長期の保存を促進するため)、乳濁剤、結合剤、増粘剤、塩類、保存剤、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗カビ剤、等張剤及び吸収遅延剤、着香料、並びに、特定の治療用組成物を調製するために必要であろう緩衝剤及び吸収剤など、その他の物質が含まれる。薬学的に活性な物質と一緒のこのような媒質及び薬剤の使用は当業で公知である。いずれかの従来の媒質又は薬剤が本発明の化合物と不適合でない限り、本治療用組成物及び製剤中へのその使用は考察されるところである。補助的な活性成分もまた、ここで解説する組成物及び製剤中に取り入れることができる。
【0120】
本発明の組成物は、経口使用(例えば錠剤、ロゼンジ、硬質もしくは軟質カプセル、水性もしくは油性懸濁液、乳濁液、分散可能な粉末又は顆粒、シロップ又はエリキシル)、局所使用(例えばクリーム、軟膏、ゲル、又は水性もしくは油性の溶液又は懸濁液として)、吸入による投与(例えば微細に分割された粉末又は液体エーロゾルとして)、吸入による投与(例えば微細に分割された粉末として)、あるいは非経口投与(例えば静脈内、皮下、又は筋肉内投薬用の無菌の水性もしくは油性溶液として、あるいは直腸投与用の座薬として)に適した形であってよい。例えば、経口使用を意図された組成物は、例えば一種以上の着色剤、甘味料、着香料、及び/又は保存剤を含んでよい。
【0121】
錠剤調合用に適した、薬学的に許容可能な医薬品添加物には、例えば、乳酸、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム又は炭酸カルシウムなどの不活性の希釈剤、コーンスターチ又はアルギン酸などの顆粒化及び崩壊剤;でんぷんなどの結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクなどの潤滑剤;エチル又はプロピルp-ヒドロキシベンゾエートなどの保存剤、及びアスコルビン酸などの抗酸化剤がある。錠剤調合物はコーティングしないままでも、あるいは、胃腸管内でのそれらの崩壊及びその後の活性成分の吸収を変調する、あるいは、それらの安定性及び/又は外観を高めるために、いずれの場合でも当業で公知の従来のコーティング剤及び手法を用いてコーティングしてもよい。
【0122】
経口使用用の組成物は、活性成分を不活性な硬質希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリンなど、と混合した硬質ゼラチンカプセルの形、あるいは、活性成分を水又はピーナッツ油、液体パラフィン又はオリーブ・オイルなどの油と混合した軟質ゼラチンカプセルの形、であってもよい。
【0123】
水性の懸濁液は、一般に、微細な粉末状の活性成分を、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル-ピロリドン、トラガカントゴム及びアカシアゴムなどの一種以上の懸濁剤;レシチン、あるいは酸化アルキレンの脂肪酸(例えばステアリン酸ポリオキセエチレン)との縮合生成物、あるいは酸化エチレンと脂肪族アルコール、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、との縮合生成物、あるいは酸化エチレンと、脂肪酸及びポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートなどのヘキシトールを由来とする部分エステルとの縮合生成物、あるいは酸化エチレンと、脂肪酸及びポリエチレンソルビタンモノオレエートなどの無水ヘキシトールを由来とする部分的エステルとの縮合生成物などの崩壊剤又は湿潤剤などと一緒に含有する。水性の懸濁液は更に一種以上の保存剤(例えばエチル又はプロピルp-ヒドロキシベンゾエート、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸)、着色剤、着香料、及び/又は甘味料(例えばショ糖、サッカリン又はアスパルテーム)を含んでもよい。
【0124】
油性懸濁液は活性成分を植物油(例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油又はココナッツ油)又は鉱物油(例えば液体パラフィン)に懸濁させることにより調合できよう。更に油性懸濁液には、みつろう、硬質パラフィン又はセチルアルコールなどの増粘剤も含めてよい。上述したような甘味料及び着香料を加えて、美味な経口製剤を提供してもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって防がれよう。
【0125】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した分散可能な粉末及び顆粒は、一般に、分散又は湿潤剤、懸濁剤及び一種以上の保存剤と一緒に活性成分を含有する。適した分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤の例は、上に既に言及したものである。甘味料、着香料及び着色剤などの付加的な医薬品添加物も存在してよい。
【0126】
更に本発明の医薬組成物は水中油乳濁液の形であってもよい。油相はオリーブ油又は落花生油などの植物油であっても、あるいは、液体パラフィンなどの鉱物油であっても、あるいはこれらのうちのいずれかの混合物であってもよい。適した乳濁剤は、例えば、アカシアゴム又はトラガカントゴムなどの天然発生型のゴム、大豆、レシチンなどの天然発生型のホスファチド、脂肪酸及び無水ヘキシトールを由来とするエステル又は部分エステル(例えばソルビタンモノオレエート)、並びに、前記部分エステルと、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどの酸化エチレンとの縮合生成物であってもよい。乳濁液には更に甘味料、着香料及び保存剤を含めてもよい。
【0127】
シロップ及びエリキシルを、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、アスパルテーム又はショ糖などの甘味料と一緒に調合してもよく、また粘滑薬、保存剤、着香料及び/又は着色剤を含有させてもよい。また本医薬組成物は、無菌の注射可能な水性もしくは油性懸濁液の形であってもよく、該懸濁液は、上で言及した、適した分散剤又は湿潤剤並びに懸濁剤のうちの一つ以上を用いて公知の手法に従って調合できよう。無菌の注射可能な製剤は更に、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒に溶かした無菌の注射可能な溶液又は懸濁液であってよく、例えば1,3-ブタンジオールに溶かした溶液である。
【0128】
座薬用調合物は、活性成分を、通常の温度では固形であるが直腸温度では液体であり、従って直腸で溶けて薬物を放出するような、適した非刺激性医薬品添加物に混合することにより、調製できよう。適した医薬品添加物には、例えばココアバター及びポリエチレングリコールがある。
【0129】
クリーム、軟膏、ゲル及び水性もしくは油性の溶液又は懸濁液などの局所用調合物は、一般に、従来より当業で公知の手法を用いて、活性成分を従来の局所的に許容可能な賦形剤又は希釈剤と一緒に、調合することにより、得られよう。
【0130】
吸入法による投与用の組成物は、例えば30μm以下の平均直径の粒子を含有する微細に分割された粉末型であってよく、該粉末自体は、活性成分のみを、又は、乳糖などの一種以上の生理的に許容可能な担体で希釈されて、含む。その後、吸入用の粉末は、公知の薬剤クロモグリク酸ナトリウムなどの吸入用に用いられるものなど、ターボ吸入器で用いられる活性成分を1乃至50mgなどを含有するカプセルに適宜保持する。
【0131】
吸入による投与用の組成物は、微細に分割された固体又は液体の液滴を含有するエーロゾルとして活性成分を分散させるように構成された従来の加圧されたエーロゾルの形であってもよい。揮発性フッ化炭化水素又は炭化水素などの従来のエーロゾル推進薬を用いてもよく、エーロゾル装置は、計量された量の活性成分を分散させるように便利に構成される。
【0132】
本発明の複数のシクロスポリン粒子を膨潤可能な/食用ポリマーに入れて含有する錠剤又はカプセルを含む制御放出経口用剤形を用いてもよい。更に、本発明のシクロスポリンの制御放出経口剤形を、患者の上部胃腸管への連続的な持続投与のために用いてもよい。本発明のシクロスポリンの用量の大半は長期放出ベースで胃、十二指腸、及び小腸の上側領域に送達され、但し下側の胃腸管及び大腸への送達は実質的に制限されるであろう。投薬期間にわたって物理的一体性を維持するが、その後は急速に溶解する親水性、水膨潤性、架橋型のポリマーを含む多種の技術を、本発明のシクロスポリンの送達に用いてよい。
【0133】
調合物についての更なる情報については、言及をもって特にここに援用することとするComprehensive Medicinal Chemistry
(Corwin Hansch; Chairman of Editorial Board), Pergamon Press 1990の第5巻の25.2章を参照されたい。
【0134】
いずれかの特定の対象にとっての治療もしくは予防目的のための具体的投薬レベル及び投薬頻度は様々であり、特定の化合物(即ちCsH、ジヒドロCsH、又は式Iの化合物)、対象の種、年齢、体重、全身の健康、性別及び食事、投与の速度、形態及び時間、排泄速度、薬物の組合せ、特定の状態の重篤度、及び処方する担当医の裁量を含む様々な因子に依るであろうが、それでも尚、当業者には慣例によって判断できるものであることは理解されよう。ある実施態様では、有効量は、1日当たり体重1kg当り約0.001 乃至約100 mg の範囲内であり、例えば一回又は分割された用量で約0.5 乃至約35 mg/kg/日である。70 kg のヒトの場合、これは約0.0035
乃至2.5 g/日であり、例えば約0.05
乃至約2.5 g/日である。場合によっては、上記の範囲の下限未満の投薬レベルで充分すぎるほどであり、また場合によっては、より多量を用いてもいずれの有害な副作用も起こさないかも知れないが、但し条件として、全日投与される場合には、このような多量はまず複数の小量に分割される。投与経路及び投薬計画の更なる情報については、言及をもって特にここに援用することとする Comprehensive Medicinal Chemistry
(Corwin Hansch; Chairman of Editorial Board), Pergamon Press 1990の第5巻の25.3章を参照されたい。
【0135】
更に本発明は、例えばヒトなど、上述した疾患又は状態に罹患した哺乳動物などの温血動物における該疾患又は状態の処置で使用する医薬としてのCsH、ジヒドロCsH、又は式Iの化合物、あるいはこれらの代謝産物、溶媒和化合物、分解エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ混合物又は薬学的に許容可能な塩を提供するものである。更に、例えばヒトなど、上述した障害に罹患した哺乳動物などの温血動物における上述した疾患及び状態の処置用の医薬の調製時のCsH、ジヒドロCsH、又は式Iの化合物、あるいはこれらの代謝産物、溶媒和化合物、分解エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ混合物又は薬学的に許容可能な塩の使用も提供する。
【0136】
活性化合物はまた、例えば小型の単層ベシクル、大型の単層ベシクル及び多層ベシクルなどのリポソーム送達系の形でも投与できよう。リポソームは、例えばコレステロール、ステアリールアミン又はホスファチジルコリンなど、多種のホスホリピドから形成することができる。
【0137】
更に活性化合物を、ターゲティング可能な薬物担体としての可溶性のポリマーと結合させることができる。このようなポリマーには、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェニル、ポリヒドロキシエチルアスパルタミド-フェノール、又は、パルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド-ポリリジンを含めることができる。更に、活性化合物を、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸及びポリグリコール酸のコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、及びヒドロゲルの架橋もしくは両親媒性ブロックコポリマーなど、薬物の制御放出を達成する上で有用なクラスの生分解性ポリマーに結合させてもよい。
【0138】
キット
本発明の別の実施態様では、上に記載した障害の処置に有用な材料を含有する製品、即ち「キット」を提供する。ある実施態様では、該キットが、本発明の化合物を含む容器を含む。ある実施態様では、本発明は、好中球活性化が関与する免疫調節性もしくは呼吸器疾患、障害、又は状態を処置するためのキットを提供する。適した容器には、例えば、びん、バイアル、シリンジ、ブリスター・パック等がある。該容器は、ガラス又はプラスチックなど、多種の材料から形成されてよい。該容器は、該状態を処置するのに有効量の本発明の化合物又はその医薬調合物を保持するが、無菌のアクセス・ポートを有していてもよい(例えば、該容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈用溶液バッグ又はバイアルであってよい)。更に、該キットは該容器上に、又は該容器に関連させて、ラベル又は梱包インサートを含んでもよい。該ラベル又は梱包インサートは、本組成物は、選択された状態を処置するために用いられることを指し示すものである。代替的には、又は付加的に、該キットは更に、例えば注射用の静菌水 (BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液など、薬学的に許容可能な緩衝液を含む第二の容器を含んでもよい。更にそれは、他の緩衝液、希釈液、フィルター、針、及びシリンジを含め、商業的及びユーザーの観点から好ましい他の材料を含んでもよい。
【0139】
該キットは、本発明の化合物と、そして存在する場合には、免疫調節性もしくは呼吸器疾患、障害又は状態を処置する又は防止するための第二の医薬調合物を投与するための指示を含んでもよい。例えば該キットが、本発明の化合物を含む第一組成物と、第二医薬調合物とを含む場合、該キットは更に、前記第一及び第二医薬組成物と、これらを必要とする患者への同時、順次又は別々の投与のための指示を含んでもよい。
【0140】
別の実施態様では、該キットは、例えば錠剤又はカプセルなど、本発明の化合物の固体経口型の送達に適している。このようなキットは、例えば多数の単位剤形を含む。このようなキットには、それらに意図された使用の順に並べられた服用量を有するカードを含めることができる。このようなキットの一例は「ブリスター・パック」である。このようなキットの一例は「ブリスター・パック」である。ブリスター・パックは梱包産業で公知であり、医薬の単位剤形を梱包するために広く用いられている。必要であれば、記憶の助けを、例えば数字、文字、又は他のマークの形で、あるいはカレンダー挿入物で、服用量を投与することのできる処置スケジュール中の日付を示す形で、提供することができる。ある実施態様では、該キットは、(a)本発明の化合物を中に含有した第一容器と、選択的に(b)第二医薬調合物とを含んでよく、このとき前記第二医薬調合物は、好中球活性化に伴う免疫調節性又は呼吸器疾患、障害、又は状態の処置のための第二化合物を含む。代替的には、又は付加的には、該キットは、例えば注射用の静菌水 (BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液など、薬学的に許容可能な緩衝液を含む第三の容器を更に含んでもよい。更にそれは、他の緩衝液、希釈液、フィルター、針、及びシリンジを含め、商業的及びユーザーの観点から好ましい他の材料を含んでもよい。
【0141】
該キットが、本発明の化合物と、第二治療薬を含む第二調合物との医薬調合物を含むいくつかの他の実施態様では、該キットは、分割されたビン又は分割された箔パケットなど、別々の調合物を含有する別々の容器を含んでもよい。しかし、該別々の組成物は、単一の、分割されていない容器に容れられてもよい。典型的には該キットは、別々の成分の投与に関する指示を含む。該キット型は、該別々の成分が異なる剤形で投与された場合(例えば経口及び非経口)、異なる投薬間隔で投与された場合、あるいは、該組合せの個々の成分の滴定を処方する担当医が望んだ場合に、特に有利である。
【0142】
【表1】


【0143】


【0144】


【0145】


【0146】


【0147】


【0148】


【0149】


【0150】


【0151】


【0152】


【0153】


【0154】


【0155】


【0156】
スキーム15. 化合物24の代替的合成

【0157】
参考文献
【非特許文献1】Hogan, S.P. and M.E. Rothenberg.Eosinophil Function in Eosinophil- associated Gastrointestinal Disorders. Curr. Alleregyand Asthma Reports 6:65-71 (2006).
【非特許文献2】Wenzel-Seifert, K., L. Grunbaum, and R. Seifert. Differential Inhibition ofHuman Neutrophil Activation by cyclosporine A, D, and H. Journal ofImmunology 147:1940-1946 (1991).
【非特許文献3】Wenzel-Seifert, K. and R. Seifert. シクロsporin H is a Potent and Selective Formyl Peptide Receptor antagonist. Journalof Immunology 150:4591-4599 (1993).
【非特許文献4】Novak, N., T. Bieber, and D.Y.M. Leung. Immune Mechanisms Leading to AtopicDermatitis. J. Allergy Clin.Immunol. 112: S128-S139 (2003).
【非特許文献5】Simon, D., L.R. Braathen, andH.-U. Simon. Eosinophils and Atopic Dermatitis. Allergy 59: 561-570(2004).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化7】


のシクロスポリンH誘導体及びその薬学的に許容可能な塩及び溶媒和化合物であって、但し式中、
R1
【化8】


であり、
R2 はC1-C6 アルキル、C3-C6 シクロアルキル、又はヒドロキシ-C1-C6 アルキルであり;
R4、R5及び R11
は個別にC1-C6 アルキル又はC3-C6 シクロアルキルであり;
R8 はC1-C6 アルキル, ヒドロキシ-C1-C6
アルキル、又はアミノ-C1-C6 アルキルであり;
R12、R13、R14
及びR15 は個別にH 又はメチルであり;
R21 はH、メチル、C1-C6 アルキル、C2-C6 アルケニル、C3-C6 シクロアルキル又はフェニルであり;
R23 はH 又はC1-C6
アルキルであり;
R24 はH、ハロゲン、C1-C6 アルキル、C2-C6 アルケニル、-NHR21、ヒドロキシ又はC1-C6 アルコキシであり;
R25
はC1-C6
アルキルであり;
但しこのときR21、R24
及びR25
は選択的に-OH、-CHO、又は-CO2Hで一回以上、置換され;そして
このときR21、R22、R24
及びR25のいずれか二つの隣接する炭素原子は一個の酸素原子と一緒になって一個のエポキシドを形成してもよく;
R22、R26、R27、R28
及びR29
は個別にH、ハロゲン、シアノ、ニトロ、メチル、C1-C6
アルキル、C2-C6
アルケニル 、-OR30、-C(O)R30、-OC(O)R30、-C(O)OR30、-S(O)R30、-SO2R30、-SO3R30、-OSO2R30、-OSO3R30、-PO2R30R31、-OPO2
R30R31、-PO3 R30R31、-OPO3
R30R31、-N(R30)R31、-C(O)N(R30)R31、-C(O)NR30NR31SO2R32、-C(O)NR30SO2R32、-C(O)NR30CN、-SO2N(R30)R31、-SO2N(R30)R31、-NR32C(O)R30、-NR32C(O)OR30
又は-NR32C(O)N(R30)R31;
あるいはR26
及びR27
は共に -O-であり;あるいは R28
及びR27
が一緒になって、あるいはR22
及びR26
が一緒になって個別に -O-であり;あるいはR22
及びR29
は一緒になって-O-であり;あるいはR28はそれが結合した相手の炭素と一緒になって-C(=O)R30、-CO2R30、-CH2OR30、-CH2OC(O)R30、-CH(OR30)2、-C(O)N(R30R31)、-C(=NR31)R30、-C(=NOR31)R30、又は-C(=NNR31)R30であり;但し条件としてR27
及びR28、R26
及びR27、又はR22
及びR26
のうちの少なくとも一対は一個の環を形成せず;そして
R30、R31
及びR32
はそれぞれ個別に-H 、又は選択的に置換される脂肪族、脂環式、ベンジル、又はアリールであるか、あるいは-N(R30)R31
が一緒になって選択的に置換される複素環式の基、あるいは -CH(OR30)2
が一緒になって環式のアセタール基である、
シクロスポリンH誘導体及びその薬学的に許容可能な塩及び溶媒和化合物。
【請求項2】
R1
【化9】


であり;
R2 はC1-C6 アルキル、C3-C6 シクロアルキル、又はヒドロキシ-C1-C6 アルキルであり;R4、R5
及びR11 は個別に C1-C6
アルキル 又はC3-C6 シクロアルキルであり;
R8 は C1-C6 アルキル、ヒドロキシ-C1-C6 アルキル、又はアミノ-C1-C6 アルキルであり;
R12、R13、R14
及び R15 は個別に H 又はメチルであり;
R21 はH、メチル、C1-C6 アルキル、C2-C6 アルケニル、C3-C6 シクロアルキル 又はフェニルであり;
R22 はH、メチル、C1-C6 アルキル、C2-C6 アルケニル、ヒドロキシ 又はC1-C6 アルコキシであり;あるいは
R23 はH 又は C1-C6
アルキルであり;
R24 は H、ハロゲン、C1-C6
アルキル、C2-C6 アルケニル、-NHR21 ヒドロキシル 又は C1-C6 アルコキシであり;そして
R25 は C1-C6 アルキルであり;
但しR21、R24
及びR25
は -OH、-CHO、又は-CO2Hで選択的に一回以上置換され;そして
この場合 R21、R22、R24 及びR25のうちのいずれか二つの隣接する炭素原子は一個の酸素原子と一緒になって一個のエポキシドを形成してもよい、
請求項1に記載のシクロスポリンH誘導体。
【請求項3】
R1

【化10】



である、請求項1に記載のシクロスポリンH誘導体。
【請求項4】
R1
【化11】

である、請求項1に記載のシクロスポリンH誘導体。
【請求項5】
R2、R12、R4、R5、R13、R8、R14、R15
及びR11
がC1-C6
アルキルである、請求項1に記載のシクロスポリンH誘導体。
【請求項6】
R2 はエチルであり;
R4 はイソブチルであり;
R5 及びR11 はイソプロピルであり;そして
R8、R12、R13、R14
及びR15
はメチルである、
請求項1に記載のシクロスポリンH誘導体。
【請求項7】
式I:
【化12】


のシクロスポリンH誘導体及びその薬学的に許容可能な塩及び溶媒和化合物であって、但しこの場合、
R1
はCH(OH)CH(CH3)CH2CH2R17R18であり;
但し式中
R17 は -CHCHCH2CH2-、-CHCHCH2C(O)-、-(CH2)4-
又は - (CH2)3C(O)-であり;そして
R18 は OH、O-C1-C6 アルキル、OC(O)-C1-C6 アルキル、NH2、NH-C1-C6
アルキル 又は NHC(O)-C1-C6
アルキルであり;
R2 は C1-C6
アルキル、C3-C6 シクロアルキル、又は ヒドロキシ-C1-C6 アルキルであり;
R4、R5
及び R11 は個別に C1-C6 アルキル 又はC3-C6 シクロアルキルであり;
R8 は C1-C6
アルキル、ヒドロキシ-C1-C6 アルキル、又はアミノ-C1-C6 アルキルであり;そして
R12、R13、R14 及びR15
は個別に H 又はメチルである、シクロスポリンH誘導体及びその薬学的に許容可能な塩及び溶媒和化合物。
【請求項8】
R1 はCH(OH)CH(CH3)CH2CH2R17R18
であり;但しこの場合、式中
R17 は -CHCHCH2CH2-、-CHCHCH2C(O)-、-(CH2)4-
又は- (CH2)3C(O)-であり;そして
R18 は OH、OCH3、O(アセチル)、NH2、NH(CH2CH3) 又は NH(アセチル)であり;
R2 はC1-C6
アルキル、C3-C6 シクロアルキル、又はヒドロキシ-C1-C6 アルキルであり;
R4、R5
及びR11 は個別に C1-C6
アルキル又はC3-C6 シクロアルキルであり;
R8 は C1-C6
アルキル、ヒドロキシ-C1-C6 アルキル、又はアミノ-C1-C6 アルキルであり;
R12、R13、R14 及びR15
は個別に H又は メチルである、
請求項7に記載のシクロスポリンH誘導体。
【請求項9】
R1
【化13】




である、請求項7及び8に記載のシクロスポリンH誘導体。
【請求項10】
R2 はエチルであり;
R4 はイソブチルであり;
R5 及びR11
はイソプロピルであり;そして
R8、R12、R13、R14
及びR15
はメチルである。
請求項7乃至9のいずれかに記載のシクロスポリンH誘導体。
【請求項11】
前記シクロスポリンH誘導体が、放射性核種結合競合又は他の適した定量的ホルミルペプチド受容体結合検定法で少なくとも1μMのIC50を有する、請求項1乃至10のいずれか一つに記載のシクロスポリンH誘導体。
【請求項12】
好酸球関連性疾患に罹患した対象が処置されるように、ホルミルペプチド受容体(FPR)アンタゴニストを治療上有効量、投与するステップを含む、前記対象を処置する方法。
【請求項13】
前記FPRアンタゴニストが免疫結合剤又は核酸アプタマーである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫結合剤が抗FPR抗体である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
好酸球関連性疾患に罹患した対象が処置されるように、請求項1乃至10のいずれか一つに記載のシクロスポリンH誘導体を治療上有効量、投与するステップを含む、前記対象を処置する方法。
【請求項16】
前記好酸球関連性疾患が免疫障害又はアレルギー性障害である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記免疫障害が湿疹、皮膚炎及び乾癬から成る群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アレルギー障害が喘息、枯草熱、過好酸球性症候群、又は好酸球関連性胃腸管障害から成る群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記好酸球関連性胃腸管障害が、好酸球性胃腸炎、アレルギー性大腸炎、好酸球性食道炎、炎症性腸疾患及び胃腸管逆流性疾患から成る群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
好酸球関連性疾患に罹患した対象が処置されるように、シクロスポリンH又はジヒドロシクロスポリンHを治療上有効量、投与するステップを含む、前記対象を処置する方法。
【請求項21】
前記好酸球関連性疾患が免疫障害又はアレルギー性障害である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫障害が湿疹及び皮膚炎、及び乾癬から成る群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記アレルギー性障害が喘息、枯草熱、過好酸球性症候群、又は好酸球関連性胃腸管障害から成る群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記好酸球関連性胃腸管障害が、好酸球性胃腸炎、アレルギー性大腸炎、好酸球性食道炎、アトピー性皮膚炎、炎症性腸疾患及び胃腸管逆流性疾患から成る群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
対象の好酸球動員が阻害されるように、ホルミルペプチド受容体(FPR)アンタゴニストを治療上有効量、前記対象に投与するステップを含む、前記対象におけるホルミルペプチド受容体の活性を阻害する方法。
【請求項26】
前記FPR アンタゴニストが 免疫結合剤又は核酸アプタマーである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記免疫結合剤が抗FPR抗体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
対象の好酸球動員が阻害されるように、請求項1乃至10のいずれか一つに記載のシクロスポリンH誘導体を治療上有効量、前記対象に投与するステップを含む、前記対象におけるホルミルペプチド受容体の活性を阻害する方法。
【請求項29】
対象の好酸球動員が阻害されるように、シクロスポリンH又はジヒドロシクロスポリンHを治療上有効量、前記対象に投与するステップを含む、前記対象におけるホルミルペプチド受容体の活性を阻害する方法。
【請求項30】
対象の好酸球動員が減少するように、ホルミルペプチド受容体(FPR)アンタゴニストを治療上有効量、前記対象に投与するステップを含む、前記対象における好酸球動員を減少させる方法。
【請求項31】
前記FPR アンタゴニストが免疫結合剤又は核酸アプタマーである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記免疫結合剤が抗FPR抗体である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
対象の好酸球動員が減少するように、請求項1乃至10のいずれか一つに記載のシクロスポリンH誘導体を治療上有効量、前記対象に投与するステップを含む、前記対象における好酸球動員を減少させる方法。
【請求項34】
前記細胞が骨髄細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
対象の好酸球動員が減少するように、シクロスポリンH又はジヒドロシクロスポリンHを治療上有効量、前記対象に投与するステップを含む、前記対象における好酸球動員を減少させる方法。
【請求項36】
前記細胞が骨髄細胞である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
対象の循環中好酸球のレベルを減少させるのに充分な量のホルミルペプチド受容体(FPR)アンタゴニストを前記対象に投与するステップを含む、対象の循環中好酸球の前記レベルを減少させる方法。
【請求項38】
前記FPR アンタゴニストが免疫結合剤又は核酸アプタマーである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記免疫結合剤が抗FPR抗体である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
対象の循環中好酸球のレベルを減少させるのに充分な量の、請求項1乃至10のいずれか一つに記載のシクロスポリンH誘導体を前記対象に投与するステップを含む、対象の循環中好酸球の前記レベルを減少させる方法。
【請求項41】
対象の循環中好酸球のレベルを減少させるのに充分な量のシクロスポリンH又はジヒドロシクロスポリンHを前記対象に投与するステップを含む、対象の循環中好酸球の前記レベルを減少させる方法。
【請求項42】
循環中好酸球の前記レベルが、過好酸球性症候群のある前記対象を診断するのに必要な量より少ない、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
対象における好酸球機能又は局所的好酸球数の増加に関係する疾患に関連する部位での好酸球蓄積又は活性化が減少するように、ホルミルペプチド受容体(FPR)アンタゴニストを治療上有効量、前記対象に投与するステップを含む、前記対象における好酸球機能の増加を伴う疾患に関連する部位での好酸球蓄積又は活性化を減少させる、あるいは、局所的好酸球数を減少させる方法。
【請求項44】
前記FPR アンタゴニストが免疫結合剤又は核酸アプタマーである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記免疫結合剤が抗FPR抗体である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
対象における好酸球機能又は局所的好酸球数の増加に関係する疾患に関連する部位での好酸球蓄積が減少するように、請求項1乃至6cのいずれか一つに記載のシクロスポリンH誘導体を治療上有効量、前記対象に投与するステップを含む、前記対象における好酸球機能の増加を伴う疾患に関連する部位での好酸球蓄積を減少させる、あるいは、局所的好酸球数を減少させる方法。
【請求項47】
前記部位が胃腸管である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記部位が肺である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
好酸球機能又は局所的好酸球数の増加に関係する前記疾患が、好酸球性胃腸炎、アレルギー性大腸炎、好酸球性食道炎、炎症性腸疾患及び胃腸管逆流性疾患から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記部位が皮膚である、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
好酸球機能又は局所的好酸球数の増加に関係する前記疾患が皮膚炎、湿疹及び乾癬から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
対象における好酸球機能又は局所的好酸球数の増加に関係する疾患に関連する部位での好酸球蓄積が減少するように、シクロスポリンH又はジヒドロシクロスポリンHを治療上有効量、前記対象に投与するステップを含む、前記対象における好酸球機能の増加を伴う疾患に関連する部位での好酸球蓄積を減少させる、あるいは、局所的好酸球数を減少させる方法。
【請求項53】
前記部位が胃腸管である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記部位が肺である、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
好酸球機能又は局所的好酸球数の増加に関係する前記疾患が、アレルゲン関連、特発性及びアトピー性喘息を含む喘息、又は、肺気腫及び慢性閉塞性気管支炎を含む慢性閉塞性肺疾患(COPD)から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記部位が皮膚である、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
好酸球機能又は局所的好酸球数の増加に関係する前記疾患が、皮膚炎、湿疹、及び乾癬から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
前記シクロスポリンH誘導体、シクロスポリンH又はジヒドロシクロスポリンH が全身用又は局所用ステロイドと組み合わせて投与される、請求項15、20、28−29、33、33、40、41、46又は52のうちのいずれか一つに記載の方法。
【請求項59】
前記シクロスポリンH誘導体、シクロスポリンH又はジヒドロシクロスポリンHが、IL-5シグナル伝達に拮抗する抗体と組み合わせて投与される、請求項15、20、28−29、33、33、40、41、46又は52のうちのいずれか一つに記載の方法。
【請求項60】
前記抗体がレスリズマブ又はメポリズマブである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患した対象が処置されるように、ホルミルペプチド受容体(FPR)アンタゴニストを治療上有効量、投与するステップを含む、前記対象を処置する方法。
【請求項62】
前記FPR アンタゴニストがCsH 又はジヒドロCsHである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記FPR アンタゴニストが免疫結合剤又は核酸アプタマーである、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記免疫結合剤が抗FPR抗体である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患した対象が処置されるように、シクロスポリンH、ジヒドロシクロスポリンH、あるいは薬学的に許容可能なその塩及び溶媒和化合物を治療上有効量、投与するステップを含む、前記対象を処置する方法。
【請求項66】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患した対象が処置されるように、請求項1乃至10のうちのいずれか一つに記載のシクロスポリンH誘導体を治療上有効量、投与するステップを含む、前記対象を処置する方法。
【請求項67】
前記COPDが慢性気管支炎、慢性閉塞性気管支炎、及び肺気腫又はこれらの組合せから成る群より選択される、請求項61乃至66のうちのいずれか一つに記載の方法。
【請求項68】
肺気腫に罹患した対象が処置されるように、ホルミルペプチド受容体(FPR)アンタゴニストを治療上有効量、投与するステップを含む、前記対象を処置する方法。
【請求項69】
前記FPR アンタゴニストが免疫結合剤又は核酸アプタマーである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記免疫結合剤が抗FPR抗体である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
肺気腫に罹患した対象が処置されるように、シクロスポリンH又はジヒドロシクロスポリンHを治療上有効量、投与するステップを含む、前記対象を処置する方法。
【請求項72】
肺気腫に罹患した対象が処置されるように、請求項1乃至10のうちのいずれか一つに記載の化合物を治療上有効量、投与するステップを含む、前記対象を処置する方法。
【請求項73】
炎症性疾患に罹患した対象が処置されるように、ホルミルペプチド受容体(FPR)アンタゴニストを治療上有効量、投与するステップを含む、前記対象を処置する方法。
【請求項74】
前記FPR アンタゴニストがジヒドロシクロスポリンH (ジヒドロCsH)である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記FPR アンタゴニストが免疫結合剤又は核酸アプタマーである、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記免疫結合剤が抗FPR抗体である、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
炎症性疾患に罹患した対象が処置されるように、ジヒドロシクロスポリンH又はその薬学的に許容可能な塩及び溶媒和化合物を治療上有効量、投与するステップを含む、前記対象を処置する方法。
【請求項78】
炎症性疾患に罹患した対象が処置されるように、請求項1乃至10のうちのいずれか一つに記載の化合物を治療上有効量、投与するステップを含む、前記対象を処置する方法。
【請求項79】
前記炎症性疾患が、急性肺炎症、慢性肺炎症、COPD、肺気腫、胃腸管の炎症、急性皮膚炎症、アトピー性皮膚炎、湿疹、好中球性皮膚病、酒さ、乾癬、腹膜炎、虚血性再潅流損傷、好中球障害、嚢胞性線維症、及び、有害な、誇張された、又は不適切な好中球活性化により引き起こされる、又は伴う疾患、又はこれらの組合せから成る群より選択される、請求項73乃至78のうちのいずれか一つに記載の方法。
【請求項80】
胃腸管の前記炎症が炎症性腸疾患(IBD)又はクローン病である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記障害が、慢性肉芽腫性疾患、チェディアック−東症候群(CHS)、白血球接着不全、超IgE症候群(ジョブズ症候群)、及び他の好中球関連炎症から成る群より選択される、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
有害な、又は不適切な好中球活性化のある前記疾患が、嚢胞性線維症、炎症性腸疾患 (IBD) 又はクローン病である、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
ジヒドロシクロスポリンHを治療上有効量、投与するステップを含む、免疫性疾患に罹患した対象を処置する方法。
【請求項84】
前記炎症性疾患が、急性肺炎症、慢性肺炎症、COPD、肺気腫、胃腸管の炎症、急性皮膚炎症、ひきび、アトピー性皮膚炎、湿疹、好中球性皮膚病、酒さ、乾癬、腹膜炎、虚血性再潅流損傷、好中球障害、嚢胞性線維症、及び、有害な、誇張された、又は不適切な好中球活性化により引き起こされる、又は伴う疾患、又はこれらの組合せから成る群より選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記胃腸管の炎症が炎症性腸疾患 (IBD) 又はクローン病である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記障害が、慢性肉芽腫性疾患、チェディアック−東症候群(CHS)、白血球接着不全、超IgE症候群(ジョブズ症候群)、及び他の好中球関連炎症から成る群より選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項87】
有害な、又は不適切な好中球活性化のある前記疾患が、嚢胞性線維症、炎症性腸疾患 (IBD) 又はクローン病である、請求項84に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−528875(P2012−528875A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514082(P2012−514082)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/037068
【国際公開番号】WO2010/141584
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(511292301)ナイカン ファーマシューティカルズ, エルエルシー (1)
【氏名又は名称原語表記】NIKAN PHARMACEUTICALS, LLC
【住所又は居所原語表記】26 Morrell Street, West Roxbury, MA 02132 (US).
【Fターム(参考)】