疾患の治療または予防のための可溶型CD83タンパク質およびそれをコードする核酸の使用
【課題】可溶型CD83タンパク質およびそれをコードする核酸を提供する。
【解決手段】CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質、その断片、二量体型および/または機能誘導体。樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患の治療または予防のための前記可溶型CD83タンパク質およびそれをコードする核酸の使用。前記目的に特異的に適した可溶型CD83タンパク質、前記特異的な可溶型CD83タンパク質に対する抗体および、前記抗体を含有する測定方法およびキット。
【解決手段】CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質、その断片、二量体型および/または機能誘導体。樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患の治療または予防のための前記可溶型CD83タンパク質およびそれをコードする核酸の使用。前記目的に特異的に適した可溶型CD83タンパク質、前記特異的な可溶型CD83タンパク質に対する抗体および、前記抗体を含有する測定方法およびキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患の治療または予防のための可溶型CD83タンパク質およびそれをコードする核酸の使用を提供する。本発明はさらに、前記目的に特異的に適した可溶型CD83タンパク質、前記特異的な可溶型CD83タンパク質に対する抗体および、前記抗体を含有する測定方法およびキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の免疫系は、非常に多くの外来抗原に反応する能力を有さねばならない。リンパ球は免疫系の中心的な要素を構成し、それはリンパ球が抗原を認識し、特異的な適応免疫応答をすることができるからである。リンパ球は二つの一般的な分類の細胞、抗体を発現できるBリンパ球と、CD4+ヘルパーT細胞とCD8+細胞毒性T細胞にさらに分類されるTリンパ球に分けられる。Tリンパ球のこれらのサブグループは両者とも、主要組織適合複合体(MHC)として知られる表面タンパク質に関連する抗原を認識することができる。MHCの認識は、T細胞受容体(TCR)、T細胞の細胞膜に付着するタンパク質複合体を介して起きる。CD8+T細胞受容体は独占的に、MHCクラスI抗原と細胞毒性T細胞との相互作用を仲介し;CD4+T細胞受容体は独占的に、MHCクラス II抗原とヘルパーT細胞との相互作用を仲介する。
【0003】
免疫応答の誘発は独占的にT細胞だけから進むのではなく、むしろT細胞がいわゆる抗原提示細胞(APCs、アクセサリー細胞としても知られる)とその表面マーカー(例えばMHC II)と相互作用することにより進む。
【0004】
これらのアクセサリー細胞は、その機能が抗原を提示することである「単純」APCsと、抗原を提示することに加え、リンパ球を活性化するアクセサリー機能を有する「専門」APCsにさらに分けられる。APCsそれ自身は抗原特異性をもたないが、T細胞に抗原を提示することにより「天然のアジュバント」として作用する。単核食細胞に加え、樹状細胞(DC)はAPC型の構成員である。事実、DCsは現在知られている最も効力のあるAPCであり、天然T細胞を活性化でき、それゆえ「天然のアジュバント」と呼ばれる唯一のAPCである。これらの異なる特性と機能の結果、今日まで二つの型の樹状細胞に分けられている:すなわち、リンパ節、脾臓および粘膜関連リンパ組織に存在する濾胞性樹状細胞(リンパ関連DCsとしても知られる)と、ほとんどの臓器の間質腔、リンパ節と脾臓のT細胞の豊富な区画に見出され、ランゲルハンス細胞として知られる皮膚全体にわたって分布するインターデジタル樹状細胞(骨髄由来DCsとしても知られる)である。
【0005】
未成熟な樹状細胞、すなわちT細胞を完全には活性化できないDCsは、抗原を結合し、それらをMHC-ペプチド複合体に加工する機能を有する。TNF-アルファ(腫瘍壊死因子)およびCD40Lのような刺激は樹状細胞の成熟化を誘導し、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子の新規の大量合成と、例えば内臓の間質腔から血液を介した脾臓および肝臓のリンパ節へのDCの移動をもたらす。さらに、副刺激因子の分子(例えばCD80、CD86)および接着分子(例えばLFA3)の発現の増加が第二のリンパ系組織への移動の間に起きる。成熟DCは、第二のリンパ系組織のT細胞が豊富な領域に到達するとすぐに、MHCクラスIまたはMHCクラスIIの範囲内でペプチド抗原をこれらのT細胞に提示することによりTリンパ球を活性化する。条件に応じて、DCsは順に免疫系の区別される応答をもたらす、各種T細胞の活性化を刺激できる。例えば、上記のように、MHCクラスIを発現するDCsは増殖のために細胞毒性T細胞を生じることができ、MHCクラスIIを発現するDCsはヘルパーT細胞と相互作用できる。成熟DCとそれらが産生するIL-12の存在下で、これらのT細胞はインターフェロン−ガンマを産生するTh1細胞に分化する。
【0006】
インターフェロン−ガンマとIL-12は、一緒にT-キラー細胞を促進するように作用する。IL-4存在下で、DCsは、順に好酸球を活性化し、抗体産生するB細胞を支援するIL-5とIL-4を分泌するTh2細胞へT細胞が分化することを誘導する(Banchereau, J.およびSteinman, R.M. (1998) Nature 392: 245-252)。
【0007】
DCsはまた、いわゆるインビトロでの混合リンパ球反応(MLR)、同種T細胞活性化と移植拒絶のモデルであるが、を誘導できる。
【0008】
MLR測定の典型的な特徴は、大きなDC-T細胞塊の形成である。1日目でhCD83extを添加すると、DCおよび増殖T細胞の典型的な細胞塊の形成は強く阻害された(Lechmannら (2001) J. Exp. Med. 194: 1813-1821)。
【0009】
成熟DCは特徴的に、(例えばMHC IおよびII、CD80/86、CD40)のなかでも特に、マーカー分子であるCD83をその細胞表面に発現する(Zhou, L.-J.およびTedder, T.F. (1995) J. Immunology、154: 3821-3835)。これは今日知られている最もよいマーカーの一つである。
【0010】
Igスーパーファミリーのタンパク質の一分子であるCD83は、その未成熟型が205アミノ酸(配列番号:2)からなる単一鎖の43kDaの糖タンパク質である。最初の19アミノ酸はCD83のシグナルペプチドを表し、それらはタンパク質が膜に挿入されると失われ、186アミノ酸の膜貫通タンパク質となる。成熟CD83は、アミノ酸20から144(配列番号:2)で形成される細胞外ドメイン、アミノ酸145から166(配列番号:2)を含有する膜貫通ドメイン、およびアミノ酸167から205(配列番号:2)から形成される細胞質ドメインを有する。細胞外ドメインは構造的特徴として単一のIg様(V型)ドメインを有し、成熟DCの細胞表面で非常に強く発現される。CD83タンパク質の細胞外ドメインは、少なくとも二つのエクソンによりコードされ:一つのエクソンはIg様ドメインの半分だけをコードし、他方のエクソンは膜貫通ドメインをコードする点において、典型的なIg様ドメインとは異なる(Zhou, L.-J.、Schwarting, R.、Smith, H.M.およびTedder, T.F. (1999) J. Immunology、149: 735-742を参照せよ)。ヒトCD83をコードするcDNAは618bpのオープンリーディングフレーム(配列番号:1、Genbank ID: Z11697および上記のZhou, L.-J.ら(1995)を参照せよ)を含有する。
【0011】
CD83の正確な機能は調べられているが、CD83 mRNAの核移行の阻害による成熟DC上におけるCD83の細胞表面での発現の阻害が、これらの細胞のT細胞刺激能に明らかな低減をもたらすことが示されている(Kruse, M.ら (2000) J. Exp. Med. 191: 1581-1589)。それゆえ、CD83はDC機能に必要であると思われる。
【0012】
さらに、可溶型CD83を細胞に投与すると、細胞が発現するCD83量が減少し(成熟樹状細胞)、あるいは細胞がCD83を産生しなくなる(未成熟樹状細胞)ことが明らかとなった。未成熟樹状細胞はその膜中/膜上にCD83をもたないので、この観察から、可溶型CD83はCD83とは別の細胞(膜)と相互作用し、すなわち異好性の相互作用が可溶型CD83と未同定のリガンドの間に生ずると思われるという結論が導かれる(Lechmann, M.ら、(2001年12月17日)J. Exp. Med. 194: 1813-1821、および(2002年6月)Trends in Immunology, 23(6): 273-275)。インビボで可溶型CD83が存在する証拠もまた存在する。可溶型CD83は正常ヒト血清中に見出され、活性化された樹状細胞およびB-リンパ球から放出されていると思われる(Hockら、(2001) Int. Immunol. 13: 959-967)。
【0013】
WO 97/29781は、可溶型CD83を任意の抗原とともにアジュバントとして用いる液性免疫応答を刺激する方法および組成物(ワクチン)に関する。可溶型はCD83融合タンパク質およびアミノ酸1から124からなる可溶型、CD83の細胞外ドメインを含有する。ワクチン製剤のアジュバントとしてのCD83の用途に加え、この文献は哺乳動物における好ましくない抗原特異的な応答を阻害するCD83に対するアンタゴニスト(抗体)の用途について議論している。
【0014】
WO93/21318は、ここでHB15と命名されたCD83、HB15キメラ分子およびHB15の細胞外ドメイン(アミノ酸1から125)からなる断片を含むHB15断片について記載している。さらに、HB15に対する抗体が記述されている。しかし、前記抗体の潜在的な用途も機能も記載されていない。HB15はリンパ球活性化のアクセサリー分子としての役割があるので、可溶型HB15および断片は免疫応答増強のアゴニストとして有用であると考えられている。また、実験的な証明はなされていない。
【0015】
US5,710,262および対応WO95/29236は、AIDSの治療の潜在的に有用な医薬としてヒトおよびマウスのHB15を開示している(マウスHB15のDNAおよびアミノ酸配列に関しては、配列番号:3および4を参照)。ここで記載されているように、HB15の細胞外ドメインは、シグナルペプチドの最初の19アミノ酸、続いて細胞外ドメインの106アミノ酸を含有する。
【0016】
上記のWO93/21318およびWO95/29236はまた、CD83に対するモノクローナル抗体が血清中の内在性CD83またはモニターCD83量を排除することを強調している。
【発明の概要】
【0017】
驚いたことに、アミノ酸20から144(配列番号:2)を含有するCD83の細胞外ドメイン(以降「hCD83ext」)が樹状細胞のリガンドとの異好性の相互作用に関与することが明らかとなった。最新の文献が完全な細胞外ドメインまたは細胞外ドメインのC-末端のアミノ酸を欠く細胞外ドメインについて記載しているだけなので(US5,710,262、WO95/29236およびWO97/29781)、hCD83extが正しい構造を導入し、樹状細胞と相互作用することもまた驚くべきことであった。さらに大きな驚きは、hCD83extの樹状細胞に対する効果であった;hCD83extは、未成熟な樹状細胞の成熟化を妨げ、成熟樹状細胞におけるCD83の発現を低減した。結果として、樹状細胞はT細胞活性化能を消失した。それゆえ、可溶型hCD83ext自身が、好ましくない免疫応答、特にT細胞の活性化を妨げることにより生ずる疾患または病状の治療または予防に適していることが示された。hCD83extはまた、樹状細胞、T細胞および/またはB細胞を介する好ましくない免疫応答により生ずる疾患または病状の治療または予防に適していることが明らかとなった。
【0018】
最近、hCD83extが正しい天然のCD83の構造を有している事実から、CD83に対する抗体の調製にも適していることが明らかとなった(Lechmannら、Protein Expression and Purification 24巻、445-452 (2002年3月5日))。前記文献はまた、Cd83の細胞外ドメインのクローニングとアミノ酸23から128を含有するCD83断片の単離について開示している。
【0019】
さらに、ヒト血清中の可溶型CD83タンパク質の量は変化し、腫瘍およびB-細胞白血病の場合に極めて高いことが明らかとなった。それゆえ、可溶型CD83タンパク質に対する抗体は、患者のある疾患(例えば、腫瘍、自己免疫性疾患、ウイルス感染等)を判断する強力なツールである。
【0020】
最後に、hCD83extが単量体と二量体の形態で存在し(両者とも比較的活性がある)、hCD83extの細胞外ドメイン中の一つ以上のシステイン残基、特に5番目のシステイン残基を異なるアミノ酸残基(例えばセリン残基)で置換すると、自然に二量体化しにくい単量体の細胞外CD83分子となることが明らかとなった。
【0021】
特に、可溶型hCD83extは未成熟および成熟樹状細胞に関与し、未成熟樹状細胞の成熟化を妨げる。その上、可溶型hCD83extで処理した成熟樹状細胞は、そのT細胞刺激活性を完全に阻害される。それゆえ、T細胞はもはや増殖しない。CD83はT細胞(およびB細胞)との相互作用できる成熟樹状細胞のマーカーとして認識される。元々、可溶型hCD83extで処理した成熟した、活性のある樹状細胞は、インビトロでT細胞(およびB細胞)と塊を形成することができない。したがって、樹状細胞はもはやT細胞の分裂/刺激を誘導できない。
【0022】
その結果、本発明は、樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防に適したCD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質の使用を提供する。特に、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質は、樹状細胞とT細胞との相互作用、および樹状細胞とB細胞との相互作用を阻害する。
【0023】
さらに、前記疾患の治療または予防に適した特異的なCD83タンパク質(ホモ二量体、単量体および特定の置換ムテインを含む)が提供される。
【0024】
最終的には、本発明は前記抗体が患者血清中の増強された可溶型CD83タンパク質と相関する疾患を判定する方法に適していることを提供する。
【0025】
より具体的には、本発明は以下を提供する。
(1)樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬を製造するための、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質(以降単に「可溶型CD83タンパク質」)、その断片、二量体型および/または機能誘導体の使用。
(2)可溶型CD83タンパク質が二量体、好ましくは可溶型単量体CD83タンパク質内の一つ以上のシステイン残基を介して結合するホモ二量体である、上記(1)の使用。
(3)可溶型CD83タンパク質が単量体CD83タンパク質、好ましくは一つ以上のシステイン残基が同一または異なる小さなおよび/または極性アミノ酸残基に置換されている単量体CD83タンパク質である、上記(1)の使用。
(4)医薬が麻痺の治療又は予防、好ましくは進行性多発性硬化症に伴う麻痺の治療または予防に適している、上記(1)、(2)または(3)の使用。
(5)樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬を製造するための、上記(1)、(2)または(3)に記載のCD83タンパク質をコードするDNA断片を有する核酸またはベクターの使用。
(6)樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる前記疾患または病状がアレルギー、喘息、組織または臓器移植の拒絶、筋無力症のような自己免疫症候群、多発性硬化症、脈管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性大腸炎、強直性脊椎炎(Bechterew病)および全身性エリテマトーデスのようなHLAB27関連自己免疫疾患、乾癬のような皮膚病、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病およびAIDSからなる群から選択される、上記(1)ないし(3)および(5)の使用。
(7)配列番号:2の20から144のアミノ酸を含有する、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質、その断片、二量体型および/または機能誘導体。
(8)上記(7)のCD83タンパク質をコードする核酸または組換え発現ベクター。
(9)上記(1)または(2)に記載の二量体可溶型CD83タンパク質。
(10)上記(3)に記載の単量体可溶型CD83タンパク質。
(11)上記(9)または(10)のCD83タンパク質をコードする核酸または組換え発現ベクター。
(12)上記(8)または(11)の核酸またはベクターで形質転換/トランスフェクトされた原核生物または真核生物の宿主細胞。
(13)上記(7)、(9)または(10)の可溶型CD83タンパク質の製造方法であって、上記(12)の形質転換/トランスフェクトされた原核生物または真核生物の宿主細胞を培養することを特徴とする、製造方法。
(14)上記(7)、(9)または(10)の可溶型CD83タンパク質、または上記(5)、(8)または(11)に記載の核酸またはベクターを含有する、医薬組成物。
(15)上記(7)、(9)または(10)に記載の可溶型CD83タンパク質に対する抗体。
(16)患者の血清中の可溶型CD83タンパク質をインビトロで定量する測定方法であって、血清試料を上記(15)の抗体と接触させることを特徴とする、測定方法。
(17上記(15)の測定方法を実施するための、上記(14)の抗体を含有するキット。
(18)樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防方法であって、上記(7)、(9)または(10)の可溶型CD83タンパク質、または上記(5)、(8)または(11)に記載の核酸またはベクターを薬学的に適量、該治療が必要なヒトに投与することを特徴とする、方法。
【0026】
本発明はまた、以下を提供する。
[1]樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬を製造するための、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質(可溶型CD83タンパク質)、その断片、二量体型および/または機能誘導体の使用。
[2]上記[1]の使用であって、可溶型CD83タンパク質がCD83タンパク質の細胞外ドメインまたは、その断片または機能誘導体、好ましくは配列番号:2の20から144のアミノ酸残基または、その断片または機能誘導体を含有する、上記[1]の使用。
[3]上記[2]の使用であって、可溶型CD83タンパク質がさらに、
(a)そのC-末端で隣接する細胞内ドメインに由来する一つ以上のアミノ酸残基を有し、好ましくは可溶型CD83タンパク質が配列番号:2の20から145のアミノ酸残基を含有し;および/または、
(b)そのN-末端についた機能配列、好ましくは10アミノ酸残基までの機能配列を有し、最も好ましくは、N-末端で付加的なアミノ酸Gly-Ser-Pro-Glyを有する、
上記[2]の使用。
[4]上記[2]の使用であって、CD83タンパク質の可溶型が配列番号:8の1から130のアミノ酸残基を含有する、上記[2]の使用。
[5]上記[1]の使用であって、可溶型CD83タンパク質が二量体、好ましくは、可溶型CD83タンパク質の単量体型の一つ以上のシステインを介して結合するホモ二量体である、上記[1]の使用。
[6]上記[5]の使用であって、可溶型CD83タンパク質が上記[2]から[4]に定義されるようであり、および/または、ホモ二量体が可溶型CD83タンパク質の単量体の5番目のシステインを介して結合している、上記[5]の使用。
[7]上記[1]の使用であって、可溶型CD83タンパク質が単量体CD83タンパク質、好ましくは、一つ以上のシステイン残基が同一または異なる少数の、および/または極性のアミノ酸残基に置換されている単量体CD83タンパク質である、上記[1]の使用。
[8]上記[7]の使用であって、
(i)少数の、および/または極性のアミノ酸残基がセリン、アラニン、グリシン等から選択され、好ましくはセリンであり;および/または、
(ii)可溶型CD83が上記[2]から[4]に定義されるようであり;および/または、
(iii)一つのシステイン残基、好ましくは5番目のシステイン残基が置換されている、
上記[7]の使用。
[9]上記[7]または[8]の使用であって、可溶型CD83タンパク質が配列番号:2の20から144のアミノ酸残基を含有し、129の位置のシステイン残基がセリン残基または配列番号:10の1から130のアミノ酸残基に置換されている、上記[7]または[8]の使用。
[10]上記[1]から[9]のいずれかひとつの使用であって、医薬が
(a)麻痺の治療または予防、好ましくは、進行性多発性硬化症に伴う麻痺の治療または予防に適し、および/または
(b)特定の抗原とともに経皮、皮内、皮下または全身投与に適している、
上記[1から9のいずれかひとつの使用。
[11]樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬を製造するための、上記[1]から[9]のいずれか一項に記載されるCD83タンパク質をコードするDNA断片を有する核酸またはベクターの使用。
[12]上記[11]の使用であって、DNA断片が配列番号:1の58から432のヌクレオチドを含有する、上記[11]の使用。
[13]上記[11]または[12]の使用であって、医薬が哺乳動物におけるCD83の発現の際のRNA量またはタンパク質量の下方制御に適している、上記[11]または[12]の使用。
[14]上記[1]または[11]の使用であって、樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる前記疾患または病状がアレルギー、喘息、組織または臓器移植の拒絶、筋無力症のような自己免疫症候群、多発性硬化症、脈管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性大腸炎、強直性脊椎炎(Bechterew病)および全身性エリテマトーデスのようなHLAB27関連自己免疫疾患、乾癬のような皮膚病、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病およびAIDSからなる群から選択される、上記[1]または[11]の使用。
[15]配列番号:2の20から144のアミノ酸を含有する、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質(可溶型CD83タンパク質)、その断片、二量体型および/または機能誘導体。
[16]上記[15]の可溶型CD83タンパク質であって、タンパク質がさらに、
(a)そのC-末端で隣接する細胞内ドメインに由来する一つ以上のアミノ酸残基を有し、好ましくは可溶型CD83タンパク質が配列番号:2の20から145のアミノ酸残基を含有し;および/または、
(b)そのN-末端についた機能配列、好ましくは10アミノ酸残基までの機能配列を有し、最も好ましくは、N-末端で付加的なアミノ酸Gly-Ser-Pro-Glyを有する、上記[15]の可溶型CD83タンパク質。
[17]配列番号:8の1から130のアミノ酸残基を含有する、上記[15]の可溶型CD83タンパク質。
[18]上記[15]から[17]のいずれか一項のCD83タンパク質をコードする核酸または組換え発現ベクターであって、前記核酸または組換え発現ベクターが好ましくは配列番号:1の配列の58から435のヌクレオチドまたは、配列番号:7の37から417を含有する、核酸または組換え発現ベクター。
[19]上記[1]、[5]または[6]に記載の二量体可溶型CD83タンパク質。
[20]上記[7]から[9]のいずれか一項に記載の単量体可溶型CD83タンパク質。
[21]上記[19]または[20]のCD83タンパク質をコードする核酸または組換え発現ベクター。
[22]上記[18]または[21]の核酸またはベクターで形質転換/トランスフェクトされた原核生物または真核生物の宿主細胞。
[23]上記[15]から[17]、[19]もしくは[20]のいずれか一項の可溶型CD83タンパク質の製造方法であって、上記[22]の形質転換/トランスフェクトされた原核生物または真核生物の宿主細胞を培養することを特徴とする、製造方法。
[24]上記[1]から[9]または[15]から[17]、[19]もしくは[20]のいずれか一項]に記載の可溶型CD83タンパク質、または上記[11]から[12]、[18]もしくは[21]のいずれか一項に記載の核酸またはベクターを含有する、医薬組成物。
[25]上記[1]から[9]または[15]から[17]、[19]もしくは[20]のいずれか一項]に記載の可溶型CD83タンパク質に対する抗体。
[26]上記[25]の抗体であって、天然のCD83タンパク質の正しいタンパク質折りたたみ構造を有する可溶型CD83タンパク質に対して作製された抗体。
[27]患者の血清中の可溶型CD83タンパク質をインビトロで定量する測定方法であって、血清試料を上記[25]または[26]の抗体と接触させることを特徴とする、測定方法。
[28]上記[27]の測定方法であって、患者の血清中の増加した可溶型CD83タンパク質量に関連する疾患を判定するのに適した、好ましくは患者のB細胞白血病に関連する腫瘍、自己免疫疾患、ウイルス感染等を判定する方法。
[29]上記[27]または[28]の測定方法を実施するための、上記[25]または[26]の抗体を含有するキット。
[30]樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防方法であって、上記[1]から[9]または[15]から[17]、[19]もしくは[20]のいずれか一項に記載の可溶型CD83タンパク質、または上記[11]から[12]、[18]もしくは[21]のいずれか一項に記載の核酸またはベクターを薬学的に適量、該治療が必要なヒトに投与することを特徴とする、方法。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】pGEX2ThCD83extベクターの部分配列。CD83細胞外ドメインの配列を太字で示す。アミノ酸配列「GSPG」をCD83細胞外ドメインのN-末端に付加し、これは下線を付したトロンビン切断部位の部分である。C-末端アミノ酸「I」はCD83の細胞質ドメインの部分である。SmaIとEcoRIのクローニング部位を破線(--)で示す。
【図2A】hCD83extの精製。A-Dは四つの精製工程におけるクロマトグラフィの溶出プロフィールを示す。集めた画分を黒で示す。集めた画分のタンパク質を還元条件および変性条件の15%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色で可視化した。さらに、Dはウェスタンブロット解析も示す。A:GSTrapカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィ:レーン1:分子量マーカー(MWM);レーン4-10:GST-hCD83ext画分。
【図2B】hCD83extの精製。A-Dは四つの精製工程におけるクロマトグラフィの溶出プロフィールを示す。集めた画分を黒で示す。集めた画分のタンパク質を還元条件および変性条件の15%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色で可視化した。さらに、Dはウェスタンブロット解析も示す。B:Source 15QPE 4.6/100カラムを用いた陰イオン交換クロマトグラフィ:レーン1:MWM:レーン2-7 GST-hCD83ext画分。
【図2C】hCD83extの精製。A-Dは四つの精製工程におけるクロマトグラフィの溶出プロフィールを示す。集めた画分を黒で示す。集めた画分のタンパク質を還元条件および変性条件の15%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色で可視化した。さらに、Dはウェスタンブロット解析も示す。C:GSTrapアフィニティクロマトグラフィを用いたトロンビン切断産物の精製:レーン1:MWM;レーン2-4:切断されたhCD83extを含む素通り画分。
【図2D】hCD83extの精製。A-Dは四つの精製工程におけるクロマトグラフィの溶出プロフィールを示す。集めた画分を黒で示す。集めた画分のタンパク質を還元条件および変性条件の15%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色で可視化した。さらに、Dはウェスタンブロット解析も示す。D:Superdex 75 (26/16)カラムを用いたゲル濾過:レーン1:MWM;レーン2:hCD83ext。右パネルは、抗CD83抗体を用いたウェスタンブロット分析を示す。
【図2E】hCD83extの精製。A-Dは四つの精製工程におけるクロマトグラフィの溶出プロフィールを示す。集めた画分を黒で示す。集めた画分のタンパク質を還元条件および変性条件の15%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色で可視化した。さらに、Dはウェスタンブロット解析も示す。E:凍結乾燥、凍結乾燥の前後に採取した等量のCD83ext試料を15% SDS-PAGEにのせた。
【図3】hCD83はDCの成熟を阻害する。DCのFACS解析。A:5-8日の成熟カクテル(=成熟DCの擬似対照)の存在で成熟化する未成熟DC。B:成熟カクテル(5-8日)の存在で成熟化され、7日目にhCD83extが添加された未成熟DC。C:hCD83と組合わせた、5-8日の成熟カクテルの存在下でインキュベートした未成熟DC。8日目、細胞を洗浄し、表記抗体で染色し、FACSで解析した。
【図4】hCD83extは同種T細胞の増殖を阻害する。MLR解析:hCD83extは投与量に依存してT細胞の増殖を低減させた。hCD83extと同様に精製したGSTとBSA(それぞれ5μg/ml)を対照として用いた。
【図5】hCD83extはネズミの同種T細胞の増殖を阻害する。A:MLR解析:hCD83extは投与量に依存してT細胞の増殖を低減させた(濃度は図4参照)。hCD83extと同様に精製したGST(5μg/ml)を対照として用いた。B:図5Aに示したようにMLR解析における生物学的活性は凍結乾燥後も保持される。
【図6】hCD83extは実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を阻害する。A:多発性硬化症(MS)のインビボ・モデル;B:阻害は長い持続効果を有し;C:治療用途に適している(hCD83extは、EAE誘導後3日目から2日ごとに(合計14回)投与された)。
【図7】2-メルカプトエタノール(ME)存在下および非存在下におけるhCD83extのSDS-PAGE。
【図8】pGEX2ThCD83ext_mut129_CtoSベクターの部分配列。細胞外CD83ドメインの配列を太字で示す。置換されたヌクレオチドおよびアミノ酸残基を拡大して示す。アミノ酸配列「GSPG」を細胞外CD83ドメインのN-末端に付加し、これは下線を付したトロンビン切断部位の部分である。C-末端アミノ酸「I」はCD83の細胞質ドメインの部分である。SmaIとEcoRIのクローニング部位を破線(--)で示す。
【図9】2-メルカプトエタノール(ME)存在下および非存在下におけるhCD83extおよびhCD83ext_mut129_CtoSのSDS-PAGE。
【図10】CD83は、1回目のEAE誘導後(A)の脾臓細胞の再刺激および2回目のEAE誘導後(B)の再刺激も阻害する。
【図11A】可溶型CD83は、1回目のEAE誘導後(A)および2回目のEAE誘導後(B)の脾臓細胞によるサイトカイン産生を阻害する。
【図11B】可溶型CD83は、1回目のEAE誘導後(A)および2回目のEAE誘導後(B)の脾臓細胞によるサイトカイン産生を阻害する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
PCR法を用いて、CD83の細胞外ドメインと細胞質ドメインの最初のコドンを完全長のヒトcDNAクローンから増幅し、発現ベクターのグルタチオン-トランスフェラーゼの後ろに挿入した。得られた融合タンパク質において、N-末端のグルタチオン-トランスフェラーゼ(GST)をトロンビン切断部位により、細胞質ドメインのIleにひろがる細胞外CD83ドメインから分離した。融合タンパク質を細菌の一晩培養液から精製し、トロンビン切断により、hCD83extをさらに精製した。精製hCD83extを樹状細胞の成熟化とT細胞刺激(MLR)アッセイに用いた。驚くべきことに、hCD83extを未成熟樹状細胞に添加すると、変化した表面マーカーの発現パターンが誘導された。CD80発現は96%から66%に減少し、CD83発現は96%から30%に減少した。また、成熟樹状細胞をhCD83extに曝すと、表面マーカーの発現パターンが変化した。CD83発現は96%から66%に減少した。hCD83extで処理した樹状細胞はそのT細胞増殖刺激能を失った。これらの結果から、樹状細胞、T細胞および/またはB細胞を介する疾患および病状の治療へのhCD83extの潜在的な使用が示唆された。それゆえ、多発性硬化症のモデルである、hCD83extの実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に対する効果が研究された。驚くべきことに、hCD83extで処理したマウスはEAEに伴う典型的な麻痺を生じなかった。
【0029】
それゆえ、本発明の実施態様(1)によれば、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質、その断片、またはその機能誘導体は樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬の製造に用いることができる。好ましくは、可溶型CD83タンパク質は、配列番号:2の少なくともアミノ酸20から144、または20から145を含有する。適当な断片は、天然のCD83と同一の活性と構造を有するものである。適切な誘導体として、これに限られないが、そのC-末端またはN-末端にさらに配列をつけた、例えばC-末端に膜貫通ドメインの一部を、またはN-末端に短い機能ペプチド(Gly-Ser-Pro-Gly)を有するタンパク質が用いられる。これらのタンパク質および断片を含む医薬は、例えば進行性多発性硬化症に見られるような麻痺の治療または予防に有用である。
【0030】
同様に、これらのタンパク質またはその断片をコードする核酸またはベクターを樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる病状の治療または予防のための医薬の製造に用いることができる。特に、配列番号:1のヌクレオチド58から432、より好ましくは58から435を含有するDNA配列を用いることができる。これらの医薬は哺乳動物のCD83発現におけるRNAおよび/またはタンパク質量のダウンレギュレーションに用いることができる。
【0031】
これらの医薬のアレルギー、喘息、組織または臓器移植の拒絶、筋無力症のような自己免疫症候群、多発性硬化症、脈管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性大腸炎、強直性脊椎炎(Bechterew病)および全身性エリテマトーデスのようなHLA B27関連自己免疫疾患、乾癬のような皮膚病、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病およびAIDSのような疾患の予防または治療のための使用が適切である。機能不全または好ましくないT細胞機能により生ずる病状の治療および/または予防方法としては、ここで記述されるような有効量のCD83または断片を投与することが特徴である;方法としてはまた、上述のように、有効量の核酸またはベクターを投与することが特徴である;前記方法はアレルギー、喘息、組織または臓器移植の拒絶、筋無力症のような自己免疫症候群、多発性硬化症、脈管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性大腸炎、強直性脊椎炎(Bechterew病)および全身性エリテマトーデスのようなHLA B27関連自己免疫疾患、乾癬のような皮膚病、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病およびAIDSのような疾患の治療または予防に適用できる。
【0032】
ここで定義されるように、用語「相互作用を阻害する」は、本発明のCD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質がインビトロの生理学的pHと塩濃度で、好ましくはpH6.0から8.0の範囲のpH濃度で、および/または50mMから250 mM、好ましくは125 mMから175 mMの範囲の塩濃度で、樹状細胞のT細胞および/またはB細胞に対する相互作用をこわす、および/または樹状細胞-T細胞塊または樹状細胞-B細胞塊の形成を阻害する能力があることを示すために用いる。
【0033】
樹状細胞のT細胞への結合および樹状細胞-T細胞塊の形成の好ましい測定法は実施例に提供される(Lechmann, M.ら (2001) J. Exp. Med. 194: 1813-1821)。
【0034】
本発明の使用のためのCD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質は、樹状細胞のT細胞および/またはB細胞に対する結合、および/または樹状細胞-T細胞塊または樹状細胞-B細胞塊の形成の破壊を、上記アッセイの一つで測定した場合、25%以上、より好ましくは50%以上、さらにより好ましくは75%以上、最も好ましくは90%以上生ずることができる。CD83ファミリータンパク質の「可溶型」という用語は、ここでは少なくともCD83ファミリーを構成するタンパク質の細胞外ドメインの一部を有するが、前記分子が発現する細胞膜に固定化されるアミノ酸配列をもたないタンパク質性分子を定義するために用いられる。CD83のアミノ酸配列同様、ヒトCD83タンパク質をコードする核酸配列は、Zhou, L.J.ら (1992) J. Immunol. 149(2): 735-742(Genbank受託番号Z11697)に記載され、それぞれ配列番号:1および配列番号:2として提供されている。
ここで定義されるように、CD83ファミリータンパク質には、配列番号:2で示されるヒトCD83と70%以上、好ましくは80%以上、および最も好ましくは90%以上のアミノ酸同一性を有するいかなる天然に存在するタンパク質も含まれる。
【0035】
それゆえ、ヒトCD83それ自身とは別に、CD83ファミリーを構成するタンパク質として、配列番号:3の核酸配列でコードされ、配列番号:4で提供されるアミノ酸配列で表されるマウスHB15タンパク質があげられる(Genbank受託番号NM_009856 (Berchtholdら))。
【0036】
他の天然に存在するCD83ファミリーを構成するタンパク質を、例えばヒトCD83コーディング領域の全てまたは細胞外部分、またはマウスHB15コーディング領域を含有する核酸を、他の動物、好ましくは哺乳動物、または同種生物の他の組織からの各種ソースの核酸(ゲノムDNA、cDNA、RNA)とハイブリダイズすることにより、得ることができる。
【0037】
ハイブリダイゼーションは相補的な核酸配列間の結合(例えばセンス/アンチセンス、siRNA等)である。当業者に知られているように、Tm(融解温度)は配列間の結合がもはや安定でなくなる温度である。ここで用いられるように、用語「選択的ハイブリダイゼーション」は、CD83関連ヌクレオチド配列と無関係な配列を区別できる、中程度のストリンジェントまたは高度のストリンジェント条件でのハイブリダイゼーションである。
【0038】
核酸ハイブリダイゼーション反応において、特定レベルのストリンジェンシーを達成するために用いられる条件はハイブリダイズする核酸の性質に依存して変化する。例えば、ハイブリダイズする領域の長さ、配列相補性の程度、配列組成(例えば、GC v. AT含量)および型(例えばRNA v. DNA)が特定のハイブリダイゼーション条件を選択する際に考慮される。さらに、一方の核酸が例えばフィルターに固定化されているかどうかが考慮される。
【0039】
一般に、核酸ハイブリッドの安定性はナトリウムイオンの減少およびハイブリダイゼーション反応の温度の上昇に伴い低下する。中程度のストリンジェンシーによるハイブリダイゼーション反応の例は以下のとおりである:約37℃または42℃で、2 x SSC/0.1 SDS (ハイブリダイゼーション条件);およそ室温で、0.5 x SSC/0.1% SDS(低ストリンジェンシーの洗浄条件);約42℃で、0.5 x SSC/0.1% SDS(中程度のストリンジェンシーの洗浄条件)。高ストリンジェンシーでのハイブリダイゼーション条件の例は以下のとおりである:およそ室温で、2 xSSC/0. 1% SDS(ハイブリダイゼーション条件);およそ室温で、0.5 x SSC/0.1% SDS(低ストリンジェンシーの洗浄条件);約42℃で、0.5 x SSC/0.1% SDS(中程度のストリンジェンシーの洗浄条件);および約65℃で、0.1 x SSC/0.1% SDS(高ストリンジェンシー条件)。
【0040】
典型的には、洗浄条件は望みの程度のストリンジェンシーになるように調整される。それゆえ、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを例えば、低ストリンジェンシー条件または高ストリンジェンシー条件のような特定の条件での洗浄により、またはそれぞれの条件、例えば上述の順にそれぞれ10-15分、あげられた工程のいずれかまたは全てを繰り返す条件を用いることにより決定することができる。選択的ハイブリダイゼーションの最適条件は、行われる個々のハイブリダイゼーション反応に依存して変化し、経験的に決定される。
【0041】
天然に存在するCD83タンパク質をコードする核酸をクローニングすると、細胞外ドメインを既知のCD83分子の細胞外ドメインとクローニングされたCD83配列とを比較することにより決定することができる。その結果、任意の天然に存在する可溶型CD83タンパク質をここに記載の方法を用いて組換え的に発現することができる。例えば、ここに記載の既知の方法および当業者に既知の方法(Sambrookら、モレキュラー・クローニング:実験室マニュアル、コールドスプリングハーバー・ラボラトリー、ニューヨーク、1989)を用いて、可溶型CD83をコードする核酸を製造し、ベクターに挿入し、原核生物または真核生物の宿主細胞を形質転換できる。
【0042】
それゆえ、細菌システムにクローニングする場合、pi、バクテリオファージXの、plac、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッドプロモーター)のような誘導性プロモーター同様、T7等の構成的プロモーターを用いることができる。哺乳動物細胞システムにクローニングする場合、SV40、RSV、CMV-IEを含むCMV等の構成的プロモーターまたは哺乳動物細胞のゲノム由来の誘導性プロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルス由来の誘導性プロモーター(例えば、マウス乳腺腫瘍ウイルスの末端反復配列;アデノウイルス後期プロモーター)を用いることができる。組換えDNA技術または合成法により製造されるプロモーターはまた、本発明の核酸配列の転写に用いられる。
【0043】
発現のために組換えウイルスまたはウイルスの要素を利用する哺乳動物の発現システムが設計されている。例えば、アデノウイルス発現ベクターを用いる場合、目的の核酸をアデノウイルスの転写/翻訳コントロール複合体、例えば後期プロモーターと3部からなるリーダー配列にライゲートすることができる。あるいは、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーターを用いることができる。
【0044】
特に興味深いことは、染色体外要素としての複製能を有する、ウシパピローマウイルス(BPV)に基づくベクターである。マウス細胞に染色体外ベクターが入った直後、ベクターは細胞当り約100から200コピー複製する。挿入cDNAの転写にはプラスミドの宿主染色体への組み込みは必要ないので、高レベルの発現が起きる。これらのベクターを、プラスミドに選択マーカー、例えばneo遺伝子を含むことにより、安定発現に用いることができる。あるいはレトロウイルスゲノムを、宿主細胞中で目的の核酸の発現を導入する、および発現させることができるベクターとして用いるために改変することができる。高レベルの発現を、これに限定はされないが、メタロチオネインRAプロモーターおよびヒートショックプロモーターを含む誘導性プロモーターを用いて達成できる。
【0045】
酵母において、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを含む多くのベクターが用いられている。ADHまたはLEU2のような構成的酵母プロモーター、またはGALのような誘導性プロモーターを用いることができる。あるいは、例えば相同組換えを介する、外来核酸配列の酵母染色体への組み込みを容易にするベクターが当業者には知られており、用いられている。
【0046】
本発明の使用のためのCD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質をコードする目的の核酸を、インビトロでの発現のために(例えば、インビトロでの転写/翻訳アッセイまたは市販のキットを用いて)発現ベクターに挿入する、または、適当な核酸を適切な細胞に移すことにより原核生物または真核生物(例えば、昆虫細胞)のいずれかで、転写および/または翻訳を容易にするプロモーター配列を含む発現ベクターに挿入することができる。ベクターが伝播し、その核酸が転写、あるいはコードされるポリペプチドが発現する細胞をここでは「宿主細胞」と呼ぶ。
【0047】
この用語はまた、目的の宿主細胞のいかなる子孫をも含む。さらに、本発明の目的の核酸を、体細胞遺伝子治療におけるインビボ発現のために、発現ベクターに挿入できる。これらのベクター、例えばレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、プラスミド発現ベクターを用いて、発明の核酸をDCへのベクターの感染/導入により発現させる。
【0048】
宿主細胞としては、これに限定はされないが、細菌のような微生物、酵母、昆虫および哺乳動物があげられる。例えば、目的核酸を含む組換えバクテリオファージの核酸、プラスミドの核酸またはコスミドの核酸発現ベクターで形質転換された細菌;目的核酸を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母;目的核酸を含む、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)を感染した、または組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞システム;目的核酸を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染した昆虫細胞システム;または目的核酸を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)を感染した動物細胞システム、または安定発煙のために操作した形質転換動物細胞システムがあげられる。
【0049】
宿主細胞中でCD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質を長期間発現するために、安定発現が好ましい。それゆえ、例えばウイルスの複製起点を含む発現ベクターを用いて、適当なコントロール要素(例えば、プロモーター/エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)により制御される目的核酸を用いて細胞を形質転換できる。状況に応じて、発現ベクターはまた、ベクターを有する細胞がそれにより同定され、生育し、および広がるようになる選択圧に対する抵抗性を得る選択または同定マーカーをコードする核酸を含むことができる。あるいは、選択マーカーは、発明のポリヌクレオチドを含む第一のベクターをもつ宿主細胞に共トランスフェクトした第二のベクター上に存在することができる。
【0050】
これに限定されないが、ヘルペス単純ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を含む多くの選択システムが、それぞれtk-、hgprtまたはaprt細胞で使用できる。加えて、代謝拮抗物質抵抗性を、メトトレキサート耐性を与えるdhfr;キノコフェノール酸耐性を与えるgpt遺伝子;アミノグリコシドG-418耐性を与えるネオマイシン遺伝子;およびハイグロマイシン耐性を与えるハイグロマイシン遺伝子の選択の基礎として用いることができる。さらに選択可能な遺伝子として、トリプトファンの代わりにインドールを細胞に利用させるtrpB;ヒスチジンの変わりにヒスチノールを細胞に利用させるhisD;およびオルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤である2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン(DFMO)に対する耐性を与えるODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)が記載されている。
【0051】
ここで用いられているように、用語「形質転換(トランスフォーメーション)」は、細胞への外来DNAの取り込みに続く細胞の遺伝的変化を意味する。それゆえ、「形質転換された細胞」は、細胞内(またはその細胞の子孫)にDNA分子が組換えDNA技術により導入されている細胞である。
【0052】
DNAを用いた細胞の形質転換を、当業者には既知の従来法により実施できる。例えば、宿主細胞が真核生物のものである場合、DNA形質転換法として例えば、リン酸カルシウム共沈殿法、マイクロインジェクションのような従来の機械的手法、電気穿孔法、リポソームで包んだプラスミドの挿入およびウイルスベクターをあげることができる。真核細胞はまた、目的核酸をコードするDNA配列と選択的な表現型をコードする第二の外来DNA分子を、ここで記載したように、共形質転換することができる。別の方法としては、サルウイルス40(SV40)またはウシパピローマうウイルスのような真核生物ウイルスのベクターを、一過的に真核細胞に感染または形質転換し、タンパク質を発現させるために用いる方法である。
【0053】
形質転換に続き、可溶型CD83を従来法により単離精製できる。例えば、発現宿主(例えば、細菌)から調製した溶菌液(ライセート)をHPLC、サイズ排除クロマトグラフィ、ゲル電気泳動、アフィニティクロマトグラフィ、または他の精製法を用いて精製できる。実質的に純粋なタンパク質を、ペプチド合成機(例えば、アプライドバイオシステムズ、フォスターシティ、CA;モデル430A等)を用いた化学合成により得ることができる。
【0054】
本発明の実施態様(2)によれば、本発明の医薬に使用するための化合物は二量体構造の可溶型CD83である。好ましくは、二量体構造はホモ二量体である。二量体化は、可溶型CD83タンパク質の単量体内部に存在するシステイン残基(これは配列番号:2のアミノ酸12、27、35、100、107、129、163に存在する)間に一つ以上のジスルフィド結合を形成することにより、または可溶型CD83タンパク質の単量体内部の同一または異なる官能基(例えば、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、チオ基等)を結合する二官能性リンカー分子(例えば、ジアミン、ジカルボン酸化合物等)により得ることができる。後者からまた、組換え技術により直接作られる二量体構造を得るための、(例えば、-[(Gly)xSer]y-(xは例えば3または4、yは例えば1ないし5)のような小さな極性アミノ酸残基からの)ポリペプチドリンカーの使用ができるようになる。
【0055】
特に好ましいのは、可溶型CD83の5番目のシステイン残基(すなわち、配列番号:2のアミノ酸129および配列番号:8のアミノ酸114に相当するシステイン残基)間のジスルフィド結合により結合した(配列番号:2の20から144、または配列番号:8の1から130のアミノ酸残基を含有するホモ二量体のような)ホモ二量体である。
【0056】
本発明の使用のための化合物はまた、これらの誘導体が上述のように可溶性のままであり、上述の樹状細胞のT細胞および/またはB細胞への結合、および/または樹状細胞-T細胞塊の形成を妨げることができるかぎり、一つ以上のアミノ酸が付加、欠失、置換、挿入または反転している、上述の発明によるCD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質の誘導体を包含する。これはまた、前述のCD83化合物のスプライスバリアントを包含する。
【0057】
特に好ましい付加は、前に定義した可溶型CD83タンパク質がそのC-末端に隣接する細胞質ドメインに由来する一つ以上のアミノ酸残基を有し、好ましくは可溶型CD83タンパク質が配列番号:2のアミノ酸残基20から145を含有し;および/またはそのN-末端に付いた機能配列、好ましくは10アミノ酸残基までの機能配列、および最も好ましくはN-末端に更なるアミノ酸Gly-Ser-Pro-Glyを有するような付加である。
【0058】
CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質の一つ以上のアミノ酸が置換されている場合、一つ以上のアミノ酸が保守的に置換されることが好ましい。例えば保守的な置換には、Met、Ile、Val、LeuまたはAlaのような脂肪族アミノ酸残基が互いに置換される置換が包含される。同様に、極性アミノ酸残基はLysとArg、GluとAsp、またはGlnとAsnのように、互いに置換できる。
【0059】
発明の可溶型CD83タンパク質の好ましい置換ムテインは、発明の態様(3)および(10)のものであり、ここで可溶型CD83タンパク質は一つ以上のシステイン残基が同一の、または異なる短い、および/または極性のアミノ酸残基に置換されている単量体CD83タンパク質である。好ましくは、小さい、および/または極性のアミノ酸残基はセリン、アラニン、グリシン、バリン、スレオニン等から選択され、好ましくはセリンである。さらに一つのシステイン残基、より好ましくは5番目のシステイン残基が置換されていることが好ましい。最も好ましくは、可溶型CD83タンパク質は配列番号:2のアミノ酸残基20から144を含有し、129位のシステイン残基がセリン残基、または配列番号:10のアミノ酸残基1から130に置換されている。そのように定義される単量体分子は、医薬応用に特に重要である。
【0060】
発明によれば、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質の誘導体はまた、その中の一つ以上のアミノ酸が変化した側鎖を有する誘導体を包含する。そのような誘導体ポリペプチドには例えば、遊離のアミノ基が塩酸アミン、p-トルエンスルホニル基、カロベンズオキシ基を形成する;遊離のカルボキシ基が塩、メチルおよびエチルエステルを形成する;遊離のヒドロキシル基が天然に存在するアミノ酸誘導体のように0-アシルまたは0-アルキル誘導体、例えばプロリンに対して4-ヒドロキシプロリン、リジンに対して5-ヒドロキシリジン、セリンに対してホモセリン、リジンに対してオミチン等を形成するアミノ酸を含有するポリペプチドが包含される。また、共有結合、例えば環状ポリペプチドを産生する二つのシステイン残基間に形成されるジスルフィド結合を変えることができるアミノ酸誘導体も含まれる。
【0061】
CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質またはその誘導体は、これらの分子が上述のように可溶性であり、上述の樹状細胞のT細胞および/またはB細胞への結合、および/または樹状細胞-T細胞塊の形成を妨げることができるかぎり、CD83分子の天然のグリコシル化パターンまたは変化したグリコシル化パターンを有し、あるいはグリコシル化されない。
【0062】
好ましい態様では、本発明の使用のための可溶型CD83は、配列番号:2で示されるヒトCD83タンパク質のアミノ酸20から144、より好ましくはアミノ酸20から145、または配列番号:8のアミノ酸1から130を含有する。
【0063】
さらに好ましい態様では、本発明の使用のための可溶型CD83は、配列番号:4で示されるマウスHB15タンパク質のアミノ酸22から135を含有する。
【0064】
本発明はまた、樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬を製造するための、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質またはそのようなタンパク質の誘導体をコードする核酸または発現ベクターの使用に関する。
【0065】
上述のような、本発明の使用のための核酸は、塩基アデニン、チミン、グアニンおよびシトシンを含むDNA(デオキシリボ核酸)または塩基アデニン、ウラシル、グアニンおよびシトシンを含むRNA(リボ核酸)、もしくは二つの混合物の形態をとりうる。
【0066】
発明の使用のための核酸がヒトCD83タンパク質に由来する場合、コーディング領域の部分は好ましくは、配列番号:1の配列のヌクレオチド58から432である。あるいは、コーディング領域の部分は、配列番号:1の配列のヌクレオチド58から435である。
【0067】
発明の使用のための核酸がマウスHB15タンパク質に由来する場合、コーディング領域の部分は好ましくは、配列番号:3の配列のヌクレオチド76から418である。
【0068】
発明の使用のためのタンパク質をコードする核酸はベクターに挿入される。用語「ベクター」は、ポリペプチドを挿入または取り込みにより操作することができる、当業者には既知のプラスミド、ウイルスまたは他の媒体を意味する。そのようなベクターは遺伝子操作に用いられ(すなわち「クローニングベクター」)、あるいは挿入ポリペプチドが転写または翻訳される(「発現ベクター」)。一般にベクターは少なくとも、細胞中で増殖するための複製起点とプロモーターを含む。ここで説明した発現制御要素を含む発現ベクター内に存在する制御要素(例えば、イントロンのスプライシングシグナル、mRNAのインフレーム翻訳を可能にするための遺伝子の正しい読み取り枠(リーディングフレーム)の維持、停止コドン等)は、適正な転写および翻訳を容易にすることに関連する。用語「制御要素」は、その存在が発現に影響をおよぼす少なくとも一つ以上の要素を含むことを意味し、別の要素、例えばリーダー配列および融合パートナー配列を含むこともできる。
【0069】
ここで用いられているように、用語「発現制御要素」は、操作できるようにつなげた核酸配列の発現を調節する一つ以上の核酸配列を意味する。核酸配列に操作できるようにつなげた発現制御要素は、核酸配列の転写および、必要に応じて翻訳を制御する。それゆえ、発現制御要素は、必要に応じて、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質コード遺伝子の前の開始コドン(例えば、ATG)を含む。「操作できるようにつなげる」とは、記載した要素を所望の方法で機能するような関係に並べることを意味する。
【0070】
「プロモーター」は、直接転写に十分な最小の配列を意味する。構成的プロモーターと誘導性プロモーターの両者が発明に包含される(例えば、Bitterら、Methods in Enzymology 153: 516-544,1987を参照せよ)。誘導性プロモーターは外部シグナルまたは薬剤により活性化される。また発明には、特定の細胞型、組織または生理的条件で制御可能なプロモーター依存性の遺伝子発現を行わせるのに十分なプロモーター要素が含まれる;そのような要素は遺伝子の5’、3’またはイントロン領域に存在する。発明に有用なプロモーターとしてはまた、条件付プロモーターがあげられる。「条件付プロモーター」は、ある条件下でのみ活性のあるプロモーターである。例えば、プロモーターは、ある化合物のような特定の薬剤が存在すると、不活性または抑制される。薬剤が存在しないと、転写が賦活化または活性化される。
【0071】
本発明の目的核酸を、体細胞遺伝子治療のためのインビボ発現用に発現ベクターに挿入することができる。これらのベクター、例えばレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、プラスミド発現ベクターを用いて、ベクターを樹状細胞、T細胞および/またはB細胞へ感染/導入することにより、発明の核酸を発現する。
【0072】
さらに発明は、樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防方法に関し、ここで効果的な量の可溶型hCD83extが被検者に投与される。
【0073】
その上、発明は樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防方法に関し、ここで効果的な量の可溶型hCD83extをコードする核酸または発現ベクターが被検者に投与される。
【0074】
発明によれば、可溶型CD83extまたは、hCD83extをコードする核酸または発現ベクターを、例えば移植片対宿主疾患または宿主対移植片疾患の結果生ずる、組織および/または臓器移植、特に異種組織および/または臓器移植の拒絶を治療又は予防するために用いることができる。
【0075】
本発明のさらなる態様において、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質または、hCD83extをコードする核酸または発現ベクターを外来抗原への望ましくない応答、それに伴うアレルギーおよび喘息、あるいは類似の症状を治療または予防するために用いることができる。
【0076】
可溶型hCD83ext、または可溶型hCD83extをコードする核酸または発現ベクターを使用して治療または予防できる他の障害、疾患および症状としては、筋無力症のような自己免疫症候群、多発性硬化症、脈管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性大腸炎、強直性脊椎炎(Bechterew病)および全身性エリテマトーデスのようなHLA B27関連自己免疫疾患、乾癬のような皮膚病、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病およびAIDSをあげることができる。
特にhCD83extは、多発性硬化症に伴う麻痺の治療に適している。
【0077】
治療または予防用途のために、本発明の化合物がそれだけで、あるいは他の免疫調節化合物、例えば体性誘導抗原との組合せで被検者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト患者に、医療指示に適した方法で、治療または予防のために投与される。経皮、皮内、皮下および/または組織投与がhCD83extおよびその誘導体の送達のために選択される。
【0078】
一定量の本発明の一つ以上の化合物を用いた医薬組成物の製造および/または本発明の用途に対するその利用は、通常の医薬技術による通例の方法で行われる。このために、本発明の化合物は、各種の用途指示および型に適した医薬剤形に対する適当な、薬学的に許容されうるアジュバントおよび/または担体とともに加工される。それにより、医薬をそれぞれの所望の放出速度、例えば速浸効果および/または徐放効果もしくは持続効果が得られるように製造することができる。
【0079】
注射液および輸液が属する非経口用途の製剤は、上記の適応に対して最も重要な全身に用いられる医薬である。
【0080】
好ましくは、多くの取り出し口をもつ穿孔ボトルに加え、注射液はバイアルの形態で、あるいは、例えばready-to-useのシリンジまたは一回使用のシリンジのような、いわゆるready-to-useの注射製剤として調製される。注射製剤の投与として、皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)、静脈内(i.v.)、節間(i.n.)または皮内(i.e.)投与の形態をあげることができる。それぞれに適当な注射剤を、溶液、結晶懸濁液、ナノ粒子または、例えばハイドロゾルのようなコロイド分散系として製造することができる。
【0081】
注射製剤をまた、水性等張希釈剤を用いて発明の化合物を所望の用量に調整可能な濃縮液として製造できる。さらにそれらをまた、適当な希釈剤で使用直前に好ましくは溶解または分散する、例えば凍結乾燥品のような粉末として製造することができる。輸液はまた、等張溶液、脂肪乳剤、リポソーム製剤、マイクロエマルジョンおよび、混合ミセル、例えばリン脂質に基づく液体の形態で製造することができる。注射製剤同様、輸液製剤はまた希釈液のための濃縮液の形態で調製することができる。注射製剤はまた、外来治療同様、静止状態での、例えばミニポンプでの連続的な輸液の形態で投与できる。
【0082】
本発明の化合物の、注射器または包装材のような物質、例えばプラスチックやガラスへの吸着を減らすために、アルブミン、血漿増量剤、界面活性化合物、有機溶媒、pH作用化合物、複合体形成化合物またはポリマー化合物を非経口医薬製剤に添加することができる。
【0083】
本発明の化合物を非経口用途の製剤のナノ粒子、例えばポリ(メト)アクリレート、ポリアセテート、ポリグリコレート、ポリアミノ酸またはポリエーテルウレタンに基づく微細分散粒子に結合することができる。非経口製剤はまた、持続性製剤として、例えば複数ユニット原理に基づき修飾することができる。ここで、本発明の化合物は最も微細な分布型および/または分散、懸濁型に、あるいは結晶懸濁液として取り込まれる。もしくは単一ユニット原理に基づき、本発明の化合物は医薬剤形、例えば錠剤または続いて移植されるシードに取り込まれる。単一ユニットまたは複数ユニット医薬剤形中のこれらの移植または持続性医薬はしばしば、いわゆる生分解性ポリマー、例えば乳酸とグリコール酸のポリエーテルウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリアミノ酸、ポリ(メト)アクリレートまたは多糖類からなる。
【0084】
滅菌水、例えば有機および無機酸または塩基ならびにそれらの塩のようなpHの値に影響を及ぼす物質、pHの値を設定するための緩衝物質、例えば塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ブドウ糖および果糖のような等張剤、界面活性剤および/または界面活性物質、および、例えばポリオキシエチレンソルビタンの部分脂肪酸エステル(Tween(登録商標))または例えばポリオキシエチレンの脂肪酸エステル(Cremophor(登録商標))、例えばピーナッツ油、大豆油およびヒマシ油のような脂肪油、例えばオレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルおよび中性油(Miglyol(登録商標))のような合成脂肪酸エステル、ならびに、例えばゼラチン、デキストラン、ポリビニルピロリドンのようなポリマーアジュバント、例えばプロピレングリコール、エタノール、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピレングリコールのような溶解度を増加する有機溶媒添加剤または例えばクエン酸塩および尿素のような複合体形成化合物、例えば安息香酸ヒドロキシプロピルおよび安息香酸ヒドロキシメチルのような防腐剤、ベンジルアルコール、例えば亜硫酸ナトリウムのような抗酸化剤、および例えばEDTAのような安定化剤が、非経口用途の製剤の製造にアジュバントおよび担体として適している。
【0085】
懸濁液においては、本発明の化合物の環境を界面活性剤および解膠剤から保護し、シェ−クされるべき沈殿物の能力を保証するための増粘剤、またはEDTAのような錯体形成剤の添加が続く。この工程は、各種ポリマー剤複合体、例えばポリエチレングリコール、ポリスチロール、カルボキシメチルセルロース、Pluronics(登録商標)またはポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステルを用いて達成することができる。本発明の化合物はまた、封入体化合物の形態、例えばシクロデキストリンを用いて液体製剤に取り込むことができる。さらなるアジュバントとして、分散剤もまた適当である。凍結乾燥物製造のために、例えばマンニット、デキストラン、白糖、ヒトアルブミン、乳糖、PVPまたはゼラチン類のような材料も用いられる。
【0086】
重要なさらなる全身投与剤形は、錠剤、ゼラチンのハードカプセル剤またはソフトカプセル剤、被覆錠剤、粉末、小球、マイクロカプセル剤、矩形圧縮剤、顆粒剤、チュアブル錠、トローチ剤、増粘剤または小袋のような経口投与である。これらの固形経口投与剤形は、徐放作用および/または持続性システムとして調製される。これらには、一定量の一つ以上の微粉末化された本発明の化合物を含む医薬、マトリックスに基づく、例えば脂肪、ワックス様および/またはポリマー化合物、またはいわゆるリザーバーシステムを用いることによる分散剤および侵食剤が含まれる。緩染剤および/または制御放出剤として、フィルムまたは、例えばエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(メト)アクリレート誘導体(例えばEudragit(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートのようなマトリックス形成剤が、有機溶液ならびに水性分散剤の形態で適当である。これに関しては、体内の保持時間の増加が体内の粘膜への集中的な接触により達成される、いわゆる生体接着材料もまたあげられる。生体接着ポリマーの例としては、Carbomers(登録商標)のグループをあげることができる。
【0087】
舌下投与については、例えば本発明の化合物の徐放性を有する、適当なサイズをもつ矩形の非崩壊錠剤のような圧縮剤が特に適当である。胃腸管の各種の場所における、本発明の化合物を標的放出するために、各種の場所で放出される小球の混合物、例えば胃液可溶性で小腸可溶性小球、および/または胃液抵抗性で大腸可溶性小球の混合物を用いうる。核を有する適切に製造された積層錠剤、これにより薬剤の被覆が胃液中に急速に放出され、薬剤の核がゆっくり小腸の環境に放出されるような、胃腸管の各場所での放出についての同一の目的を考えることができる。胃腸管の各種の場所における制御放出の目的を、多層錠剤で達することもできる。差動放出剤を含む小球混合物をゼラチンのハードカプセル剤に充填することができる。
【0088】
抗粘着および潤滑および分離剤、フレーム分散二酸化ケイ素のような分散剤、各種デンプン型の錠剤分解物質、PVC、例えばワックス様および/またはEudragit(登録商標)、セルロースまたはCremophor(登録商標)に基づくポリマー化合物のような造粒剤または緩染剤としてのセルロースエステルが、例えば錠剤または、ゼラチンのハードカプセル剤およびソフトカプセル剤、ならびに被覆錠剤および粒剤のような圧縮剤の製造のためのさらなるアジュバントとして用いられる。
【0089】
抗酸化剤、例えば白糖、キシリットまたはマンニットのような甘味剤、マスキングフレーバー、芳香族化合物、保存料、着色剤、緩衝物質、例えば微結晶性セルロース、デンプンおよびデンプン水解物(例えばCelutab(登録商標))、乳糖、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンおよびリン酸二カルシウムのような直接的な打錠剤、潤滑剤、乳糖またはデンプンのような賦形剤、乳糖の形状の結合剤、例えばコムギまたはトウモロコシおよび/またはコメのデンプンのようなデンプン類、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはシリカのようなセルロース誘導体、滑石粉、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウムのようなステアリン酸塩、タルク、ケイ化タルク、ステアリン酸、アセチルアルコールおよび水和脂肪が用いられる。
【0090】
これに関しては、特に浸透圧原理に基づいて構築された経口治療システム、例えばGIT(胃腸治療システム)またはOROS(経口浸透圧システム)もまたあげられる。
【0091】
水に急速に溶解または懸濁される即時に引用できる医薬剤形を示す発泡錠剤も経口投与圧縮剤に含まれる。前記経口投与剤形として、上述の方法により製造され、安定性増加のための保存料と取り込みやすくするための任意の芳香族化合物、およびよりよい区別のための着色剤、ならびに抗酸化剤および/またはビタミン類および糖または人工甘味料のような甘味料を含む、溶液、例えば点滴剤、ジュースおよび懸濁液があげられる。これには、摂取前に水で処方される濃縮ジュースも含まれる。本発明の一つ以上の化合物を組合わせたイオン交換樹脂もまた、液体摂取剤形の製造のためにあげられる。
【0092】
特殊な放出形態が、例えば体液に接触した後に気体を発生し、それゆえ胃液表面に浮遊する錠剤または小球に基づくいわゆる浮遊医薬剤形の調製時に存在する。さらに、いわゆる電子制御の放出システムもまた、本発明の化合物の放出を選択的に、個々の必要に応じて調整することにより製剤化することができる。
【0093】
さらなる全身投与のグループで、任意に局所的に硬化のアル医薬剤形が、直腸に投与可能な医薬としてあげられる。これらとして、坐剤および浣腸剤がある。浣腸剤はこの投与剤形を製造するために、水性溶媒をもつ錠剤に基づき調整することができる。直腸カプセル剤もまた、ゼラチンまたは他の担体に基づき得ることができる。
【0094】
例えばWitepsol(登録商標)、Massa Estarinum(登録商標)、Novata(登録商標)、ココナッツ脂肪、グリセロール-ゼラチン塊、グリセロール-石鹸-ゲルおよびポリエチレングリコールのような硬化脂肪が坐剤の基剤として適当である。
【0095】
数週間までの本発明の化合物の全身放出による長期間の投与に関し、好ましくはいわゆる生分解性ポリマーに基づき製剤化された圧縮植込錠が適当である。
【0096】
全身的に活性のある医薬のさらに重要なグループとして、肝臓循環システムおよび/または肝臓代謝を回避することにより、上述の直腸剤形と同様に、群を抜く経皮システムもまた強調することができる。これらの膏薬は特に、本発明の化合物を、適当なアジュバントおよび担体の異なる層および/または混合物に基づき、より長いまたはより短い時間に調節した方法で放出することができる経皮システムとして調製することができる。
【0097】
溶媒や、例えばEudragit(登録商標)に基づくポリマー化合物のような適当なアジュバントおよび担体とは別に、例えばオレイン酸、Azone(登録商標)、アジピン酸誘導体、エタノール、尿素、プロピルグリコールのような膜浸透性増加材料および/または膜透過促進剤が、透過性の改良促進のためのこの型の経皮システムの製造に適している。
【0098】
局所的投与のための医薬としては、以下のものが特別な製剤として適当である:膣または性器に塗布可能なエマルジョン、クリーム、フォームタブレット、持続性植込錠、卵または経尿道投与できる導入溶液。眼科用投与のためには、高度に滅菌した眼球用軟膏、溶液および/または点滴剤またはクリームおよびエマルジョンが適当である。
【0099】
同様に、対応する耳鼻科用点滴剤、軟膏またはクリームを耳に投与するためにデザインすることができる。上述の適用のために、例えばCarbopol(登録商標)に基づくゲルまたは、例えばポリビニルピロリドンおよびセルロース誘導体のような他の化合物のような半固体製剤の投与もまた可能である。
【0100】
通例の皮膚または粘膜への塗布のために、標準的なエマルジョン、ゲル、軟膏、クリームまたは混合相、および/または両親媒性エマルジョン系(オイル/水-、水/オイル混合相)をリポソーム同様あげることができる。適当な基礎製造のためのゲル材料としてのアルギン酸ナトリウム、または、例えばグアールガムまたはキサンタンガムのようなセルロース誘導体、例えば水酸化アルミニウムまたはベントナイトのような無機ゲル材料(いわゆる揺変性ゲル材料)、例えばCarbopol(登録商標)のようなポリアクリル酸誘導体、ポリビニルピロリドン、微結晶性セルロースまたはカルボキシメチルセルロースがアジュバントおよび/または担体として適当である。さらに、両親媒性低分子量および両親媒性高分子量の化合物がリン脂質同様適当である。ゲルは、水に基づくハイドロゲルとして、また例えば低分子量および高分子量のパラフィン炭化水素とワセリンの混合物に基づく疎水性オルガノゲルとして存在しうる。
【0101】
陰イオン性、陽イオン性または中性界面活性剤、例えばアルカリ石鹸、メチル石鹸、アミン石鹸、スルファネート化合物、陽イオン性石鹸、高級脂肪アルコール、ソルビタンとポリオキシエチレンソルビタンの部分脂肪酸エステル、例えばラネット型、羊毛脂、ラノリンまたは他の合成産物を乳化剤として、オイル/水および/または水/オイルエマルジョンを製造するために用いることができる。
【0102】
親水性オルガノゲルを例えば、高分子ポリエチレングリコールを基礎として製剤することができる。これらのゲル様形態は洗浄可能である。ワセリン、天然または合成のワックス類、脂肪酸、脂肪アルコール、例えばモノ-、ジ-またはトリグリセリドのような脂肪酸エステル、パラフィン油または植物油、硬化ヒマシ油またはココナッツ油、ブタ脂肪、例えばSoftisan(登録商標)のようなアクリル酸、カプロン酸、ラウリン酸およびステアリン酸、またはMiglyol(登録商標)のようなトリグリセリド混合物に基づく合成油脂が、軟膏、クリームまたは乳化剤の製造のための、油脂および/またはワックス様組成物の形態で脂質として用いられる。
【0103】
浸透効果を有する酸および塩基、例えば塩酸、クエン酸、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム、さらに緩衝システム、例えばクエン酸塩、リン酸塩、トリス緩衝液またはトリエタノールアミンがpHを調整するために用いられる。保存料、例えばメチル-またはプロピルベンゾエート(パラベンス)またはソルビン酸を、安定性を増すために添加することができる。
【0104】
ペースト、粉末または溶液が、さらに局所投与の形態としてあげられる。ペーストはしばしば、稠度を与える基礎として非常に多量の脂肪物質とともに、脂肪親和性および親水性の補助剤を含む。粉末または局所投与の粉末は例えば、凝集を防ぐだけでなく、潤滑性同様、流動性を増加するための希釈剤として機能する、小麦または米のデンプンのようなデンプン類、フレーム分散二酸化ケイ素またはシリカを含むことができる。
【0105】
鼻の点滴薬または鼻の噴霧剤は経鼻投与形態として機能する。この関連で、噴霧器または鼻のクリームもしくは軟膏を使用することができるようになる。
【0106】
さらに、鼻の噴霧剤または乾燥粉製剤は、制御用量のエアロゾル同様、本発明の化合物の全身投与にも適している。
【0107】
これらの高圧および/または制御用量のエアロゾルおよび乾燥粉製剤は、吸入および/または吹送される。この型の投与形態はまた確かに、肺または気管支および咽頭への直接的、局所的適用にとって重要である。それにより、乾燥粉組成物は例えば、発明の化合物-ソフトペレットとして、例えば乳糖および/またはブドウ糖のような適当な担体との発明の化合物-ペレット混合物として製剤できる。吸入または吹送のために、鼻、口および/または咽頭の処置に適している共通のアプリケーターが適切である。本発明の化合物はまた、超音波噴霧装置により適用される。エアロゾル噴霧製剤および制御用量エアロゾルの高圧ガスとして、テトラフルオロエタンまたはHFC 134aおよび/またはヘプタフルオロプロパンまたはHFC 227が適しており、ここで、非フッ素化炭化水素または、例えばプロパン、ブタンまたはジメチルエーテルのような常圧、室温で気体の他の高圧ガスが好ましい。制御用量エアロゾルの代わりに、高圧ガスを含まない、主導ポンプシステムを用いることもできる。
【0108】
高圧ガスエアロゾルはまた適切に、例えばミリスチン酸イソプロピル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、トリオレイン酸ソルビタン、レシチンまたは大豆レシチンのような界面活性アジュバントを含むことができる。
【0109】
さらに、医薬組成物が、ある種の動物への投与のために、発明の使用のための核酸を含有する場合、発明の使用のための核酸は、好ましくはその種に由来する。例えば、医薬組成物がヒトに投与される場合、医薬の核酸は好ましくは、可溶型ヒトCD83タンパク質またはその誘導体を含有する。
【0110】
発明の使用のための核酸を、細胞膜透過性および/または核酸の細胞取り込みを増加する薬剤と同時に投与することができる。これらの薬剤の例としては、Antony, T.ら(1999)Biochemistry 38: 10775-10784に例として記載されたポリアミン;Escriou, V.ら(1998)Biochem. Biophys. Acta 1368 (2): 276-288に例として記載された分岐ポリアミン;Guy-Caffey, J. K.ら(1995)J. Biol. Chem. 270 (52): 31391-31396に例として記載されたポリアミノ脂質;Felgner, P. L.ら(1987)PNAS USA84 (21): 7413-7417に記載されたDOTMA、およびBenimetskaya, L.ら(1998)NAR 26 (23): 5310-5317に例として記載された陽イオン性ポルフィリン類をあげることができる。
【0111】
発明の態様(15)によれば、上で定義される可溶型CD83はCD83に対する抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)を調製するのに適している。抗体を当業者に既知の標準的な方法に従い調製することができる。これらの抗体は具体的に、発明の態様(16)のアッセイ法およびキット(17)に対して有用である。前記アッセイ法は具体的には、患者の血清中の増加した可溶型CD83タンパク質と相関する疾患を判断するのに適している、好ましくは患者のB細胞白血病を含む、腫瘍、自己免疫性疾患、ウイルス感染等を判断する方法である。
【0112】
Elisa試験を用いて、可溶型CD83を健常者において約0.25 ng/ml(+/- 0.25 ng/ml)の濃度で検出した。驚いたことに、腫瘍患者では、15 ng/mlまでの濃度を検出した。それゆえ、この試験により腫瘍患者の診断および予後評価が可能である。さらに、自己免疫性疾患、アレルギーおよび、ウイルス、細菌および/または寄生虫感染を患っている患者にも可能である。
【0113】
以下に、発明の各種態様をより詳細に実施例により記載する。しかし、発明は実施例に限定するように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0114】
実施例1:大腸菌におけるヒトの細胞外CD83ドメインの組換え発現
ヒトの全長cDNAクローンを鋳型として用いて、CD83の細胞外ドメインを次のPCRプライマー:
5’-TCCCCGGGAACGCCGGAGGTGAAGGTGGCT-3’(配列番号:5)
5’-AATTAGAATTCTCAAATCTCCGCTCTGTATT-3’(配列番号:6)
によりPCR増幅した(PCR条件:94℃1分を1サイクル、94℃1分の「変性」、64℃1分の「アニーリング」からなる工程を30サイクル、72℃1分の「伸長」)。
【0115】
増幅したcDNA断片を発現ベクターpGEX2T(アマシャム・ファルマシア・バイオテク、フライブルク、ドイツ)のSmaIとEcoRIの部位にクローニングし、プラスミドpGEX2ThCD83extを得た。このプラスミドを大腸菌TOP10F’[F {lacIqTn10 (TetR) mcrA Δ(mrr- hsd RMS- mcrBC) p80 lacZ, ΔM15 ΔlacX74 recA1 deoR araD139 Δ(ara-leu) 7697 galU galK rpsL(StrR) endA1 nupG)(インビトロジェン、フローニンゲン、オランダ)に形質転換した。pGEX2ThCD83extの正しいヌクレオチド配列をシーケンシングにより確かめた。細胞外CD83をアミノ末端に融合のパートナーとしてグルタチオンS-トランスフェラーゼを含有する融合タンパク質として発現した。トロンビン切断認識部位をGSTと細胞外CD83ドメインの間に挿入した(図1参照)。
【0116】
実施例2:組換えヒトCD83extの精製
培養:
上記細菌を一晩培養した培養液を新鮮なLB培地(100 i-ig/ml アンピシリンを添加)で1:10に希釈し、吸光度1.0まで培養した。IPTGを添加し(終濃度1 mM)、培養をさらに1時間行った。細胞を沈殿させ、500 mlの培養あたり10 mlのネイティブ緩衝液(140 mM NaCI, 2.7 mM KCI, 10 mM Na2HPO4, 1.8 mM KH2P04, 2.6 mM MnCl2, 26mM MgCI2, 1μg/ml ロイペプチン, 1pg/ml アプロチニン, 1pg/ml DNAse I, pH7.6)に再懸濁し、50μg/mlのリゾチームを添加した。氷上で15分のインキュベーションの後、溶菌液(ライセート)を20,000 x gで遠心した。
【0117】
吸着工程:
上清40 mlを、予め4カラム容量の結合緩衝液:PBS(リン酸緩衝化生理的食塩水)、pH7.6で平衡化したAKTAエクスプローラー 10システム(アマシャム・ファルマシア・バイオテク、ウプサラ、スウェーデン)のGSTrapの5mlカラムに添加した。カラムを12カラム容量の同一の結合緩衝液で洗浄し、続いて5カラム容量の溶出緩衝液:5 mM 還元グルタチオンを含む50 mM Tris-HCl, pH 8.0を用いて、流速5 ml/minで溶出した。カラムをその後、5カラム容量の2 M NaCl/PBS, pH 7.6および5カラム容量の結合緩衝液で処理した(図2A)。
【0118】
中間精製工程:
GST-CD83extを含む画分を50 mM 1-メチル-ピペラジン(Sigma), 50 mM Bis-Tris(シグマ), 25 mM Tris(シグマ) pH9.5(緩衝液A)に対して透析し、AKTAエクスプローラー10システム(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)の15Q PE 4.6/100陰イオン交換カラムにのせた。タンパク質を3種類の異なる塩の直線濃度勾配:標的濃度までの16カラム容量の10% 緩衝液B(緩衝液A/1 M NaCl);標的濃度までの20カラム容量の50% 緩衝液Bおよび標的濃度までの10カラム容量の100% 緩衝液Bで分離した(図2B参照)。
【0119】
GST-CD83extを含む画分をPBS, pH 7.6に対して透析した。その後、GST-CD83ext融合タンパク質をトロンビン(20 U/ml)とグルタチオン-セファロース・マトリックス上で、22℃16時間インキュベートした。hCD83extタンパク質をGSTと分離するために、この溶液を吸着工程において用いたのと同一の緩衝液条件で、プレパックのグルタチオン-セファロース4Bカラムに充填した。結合緩衝液条件下で、組換えヒトCD83extタンパク質を含む素通り画分を集めた。結果を図2Cに示す。
【0120】
さらなる精製工程:
最終的に、上記の素通り画分をAKTAエクスプローラー 10システム(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)のSuperdex 200 (26/16) prep gradeカラムに溶出緩衝液:PBS, pH 7.6を用い、流速3 ml/minで充填することにより、分取ゲル濾過による分離を行った。
【0121】
正しい画分を銀染色、クーマシー染色および抗CD83(コールター-イムノテック、マルセイユ、フランス)を用いたウェスタンブロット解析で試験した。
【0122】
組換え可溶型CD83の凍結乾燥:
HPLCで精製した組換え可溶型CD83ドメインを1:20希釈したDPBS(バイオウィテーカー・ヨーロッパ)に対して透析した。その後、このタンパク質溶液を液体窒素で凍結し、アルファ1-2 LD凍結乾燥機(クリスト)を用いて4時間凍結乾燥した。タンパク質を、0.22 μmのフィルターを通したddH2Oを用いて、終濃度が1x DPBSになるように再溶解した。
【0123】
SDS Page分析から、凍結乾燥した組換えタンパク質はこの手順後も分解しておらず、非凍結乾燥タンパク質と互換性があることが明らかとなった(図2E)。
【0124】
実施例3:樹状細胞成熟化の阻害、インビトロの細胞塊およびMLR実験(ヒト)
培養:
特に記載しない限り、全ての細胞を、グルタミン(200 μg/ml)(バイオウィテーカー、バルビエ、ベルギー)、ペニシリン/ストレプトマイシン(20 μg/ml)、10 mM HEPES, pH7.5(シグマ-アルドリッチ)および輸血医学部門(エアランゲン、ドイツ)から得られた単一ドナーの熱不活性化(56℃;30分)した1% ヒト血漿を添加したRPMI 1640(バイオウィテーカー、バルビエ、ベルギー)からなる標準培地(1% ヒト血漿培地)を用いて培養した。
【0125】
樹状細胞(DCs)の産生:
PBMCsをバフィーコートからフィコール-ハイパック(アマシャム・ファルマシア・バイオテク、フライブルク、ドイツ)の沈降により分離し、IgGをコートした(コーン分画のγ-グロブリン 10 μg/ml;シグマ-アルドリッチ)100mm培養ディッシュに播き、5% CO2中 37℃でインキュベートした。インキュベーション1時間および7時間後に、非接着細胞画分を回収し、接着細胞をさらに、サイトカインGM-CSF(800 U/ml)とIL-4(500 U/ml)を添加した1% ヒト血漿培地で培養した。終濃度400 U/mlまでのGM-CSFとIL-4(500 U/ml)を添加した新鮮な培地をインキュベーション3日目に添加した。4または5日目に、非接着細胞を回収、計測し、新しいディッシュに0.3-0.5 x 105細胞/mlの密度で移した。最後のDC成熟のために、1% ヒト血漿培地にTNF-α(1.25 ng/ml)、GM-CSF(40 U/ml)、IL-4(200 U/ml)、プロスタグランジンE2(0.5 μg/ml)を添加した(Lechmann, M.ら (2001) J. Exp. Med. 194: 1813-1821)。
【0126】
可溶型hCD83extは未成熟樹状細胞の成熟化を阻害する
DCの表現型に対するhCD83extの影響を解析するために、FACS解析を8日目に行った(図3参照)。DCは、IL-1β、TNF-αおよびPGE2からなる特異的な成熟カクテルを用いることにより完全に成熟化する(図3a)。面白いことに、この成熟カクテルをhCD83ext(4 μg/ml)とともに5日目の未成熟DCに投与し、8日目の最後のFACS解析まで放置すると、これらの細胞では正常に成熟したDCに比べ(図3a)、CD80およびCD83の細胞表面での発現が明らかに低減すること(それぞれ、96%から66%、96%から30%)が明らかとなった(図3c)。それゆえ、hCD83extはDC成熟化の減少(また、CD14陽性細胞の増加)を誘導する。対照的に、7日目に24時間hCD83とインキュベートし、8日目に解析した成熟DCは、CD80発現について最小の影響だけを示し(96%から92%)、一方、CD83の発現はまた減少した(96%から66%)(図3b)。興味深いことに、CD86の発現はいずれの時間点においても、hCD83ext投与により影響されなった。またMHCクラスIおよびIIの発現は、未成熟DC、成熟DCいずれの場合も影響されなかった(Lechmann, M.ら (2001) J. Exp. Med. 194: 1813-1821)(図3参照)。
【0127】
同種MLR:
CD4+およびCD84’T細胞をバフィーコート(回収した非接着細胞画分をノイラミダーゼ処理したヒツジ赤血球とインキュベートし、フィコール濃度勾配遠心により回収し、単一のABドナーのヒト血清を5%添加したRPMIで培養した)から単離し、異なる比率の成熟同種DCsを用いて刺激した。細胞を未処理のまま残す、または、異なる濃度のhCD83extまたは対照としてBSA(バイオラド)とともにインキュベートした。T-細胞(2 x 105/ウェル)とDCsを、96ウェルの細胞培養ディッシュで、単一のABドナーのヒト血清を5%添加したRPMI 200 p,l中で4日間共培養した。細胞を[3H]-チミジン(1 μCi/ウェル;アマシャム・ファルマシア・バイオテク)で、16時間パルスラベルした。培養上清をIH-110ハーベスタ(イノテック、ドティコン、スイス)を用いたガラス繊維フィルターメイト上に回収し、フィルターを1450マイクロプレートカウンターでカウントした(ワラック、トゥルク、フィンランド)(Lechmann, M.ら (2001) J. Exp. Med. 194: 1813-1821)。
【0128】
これらのMLR法の典型的な特徴は、大きなDC-T細胞塊の形成である。1日目にhCD83extを添加すると、DCと増殖T細胞の典型的な細胞塊の形成が強く阻害された(Lechmann, M.ら (2001) J. Exp. Med. 194: 1813-1821)。
【0129】
さらに、可溶型hCD83extで処理した成熟樹状細胞は、そのT細胞を刺激する能力に関して、濃度依存的に阻害される。それゆえ、T細胞はもはや増殖しない(図4参照)。
【0130】
実施例4:インビトロ細胞塊およびMLR実験(マウス)
雄性または雌性のC57/BL6マウスおよびBALB/Cマウス(チャールスリバー、ウィガ、ザルツフェルト、ドイツ)を1ないし4月齢で用いた。
【0131】
骨髄(BM)-DCsの産生:
C57/BL6のBM-DCsの産生を記載どおりに行った(J. Immunol. Methods 223: 77, 1999)。RPMI 1640(ライフテクノロジーズ、カールスルーエ、ドイツ)に100 U/ml ペニシリン(シグマ)、100 μg/ml ストレプトマイシン(シグマ)、2 mM L-グルタミン(シグマ)、50 pg/ml ME(シグマ)、10% 熱不活性化した濾過済みFCS(PAA、コルベ、ドイツ)を添加した。GM-CSFはインキュベーションの0、3、6および8日目に、200 U/ml(PrepoTech/Tebu、ロッキーヒル、NJ)で用いた。
【0132】
同種MLR:
CD4+およびCD8+ T細胞をBALB/Cマウスの鼠径部および間葉リンパ節から単離し、同種MLRに用いた。これらのT-細胞(2 x 205細 胞/ウェル)と9日目のBM-DCsを(異なる比率で)、96ウェルの細胞培養ディッシュで、100 U/ml ペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシン、2 mM L-グルタミン、50 μg/ml ME、10% 熱不活性化した濾過済みFCSを添加したRPMI 1640の200 μl中で3日間共培養した。細胞を[3H]-チミジン(1 μCi/ウェル;アマシャム・ファルマシア・バイオテク)で、16時間パルスラベルした。培養上清をIH-110ハーベスタ(イノテック、ドティコン、スイス)を用いたガラス繊維フィルターメイト上に回収し、フィルターを1450マイクロプレートカウンターでカウントした(ワラック、トゥルク、フィンランド)。
【0133】
マウス樹状細胞とマウスT細胞の間の塊形成は可溶型ヒトhCD83extにより阻害された。さらに、可溶型ヒトhCD83extで処理されたネズミ樹状細胞は、そのT細胞刺激能に関して、濃度依存的に阻害を受けた。それゆえ、T細胞はもはや増殖しない(図5A参照)。
【0134】
凍結乾燥した組換えCD83の生物学的活性:
凍結乾燥したタンパク質の生物学的活性を、上述の混合リンパ球反応解析におけるその阻害活性により測定した。タンパク質は、非凍結乾燥タンパク質同様、投与量依存的に、樹状細胞が介するT-細胞刺激を阻害する(図5B参照)。それゆえ、組換え可溶型CD83は、凍結乾燥後も安定で、その生物学的活性を維持する。同様の効果がヒトのシステムにおいて観察された(データ未出)。
【0135】
実施例5:実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の阻害
EAEは多発性硬化症の標準モデルである。EAEを完全フロイント・アジュバント(CFA)とミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG35-55)を含む50 μlの懸濁液を0日に両方のtightsに皮下注射することによりマウスに誘導した。同日、100 μlの百日咳毒素(2 μg/ml)を腹腔内注射した。2日目に、2回目の百日咳毒素の投与を行った。麻痺の臨床的徴候は10日目と14日目の間に現れた。
【0136】
インビボ・モデルにおけるEAEの阻害:
hCD83extのEAEに伴う麻痺の阻害・抑制能を試験するために、100 μlのhCD83(1 μg/1 μl)を−1日目、1日目と3日目に注射により投与した(図6A参照)。対照として、マウスの一群に100 μlのBSA(1 μg/1 μl)を注射した。第三群のマウスは未処理のまま置いた。三群全てのマウスにEAEを0日に誘導した。驚くことに、hCD83extは殆ど完全にEAEに伴う麻痺を阻害した。
【0137】
EAE阻害の長い持続効果:
EAEを二回誘導しても、CD83処理マウスは保護されている(可溶型CD83の三回の投与がEAEからマウスを保護する)ことが示された。EAEを上述のように誘導した:100 μlのhCD83(または対照としてBSA)を−1日目、1日目と3日目に注射した(i.p.)。EAEを0日にM. tuberculosis濃縮CFAで乳化したMOGペプチドの皮下(s.c.)注射により誘導した。さらに、200 ngの百日咳毒素(Pt)を0日と2日に投与した(i.p.)。hCD83は殆ど完全に麻痺を阻害したが、BSA処理および未処理のマウスは強い疾患症状を発症した(図6B参照;1. EAE、左パネル)。28日目、上述のように、マウスをMOGペプチドで免疫することにより、EAEの二回目の誘導を行った。際立ったことに、可溶型CD83で三回処理したマウスは完全に保護されたが、未処理およびBSA処理マウスは麻痺を起こした(図6B;2. EAE 右パネル)。
【0138】
治療用途におけるEAEの阻害:
EAEを0日にM. tuberculosis濃縮CFAで乳化したMOGペプチドの皮下(s.c.)注射により上述のように誘導した。さらに、200 ngの百日咳毒素(Pt)を0日と2日に投与した(i.p.)。hCD83ext(100 μg/投与)を3日目から1日おきに14回投与した。このような治療設定でさえ、可溶型CD83はEAE症状に強く影響を与えることができた。 BSA(100 μg/投与)を陰性対照として用いた(図6C参照)。
【0139】
実施例6:ヒトCD83に対するモノクローナル抗体の産生
約50 μgのGST-hCD83ext融合タンパク質をLOU/Cラットに腹腔内(ip)および皮下(sc)注射した。2ヶ月の間隔の後、抗原による最後のブーストを融合3日前にipとscで行った。ミエローマ細胞系P3X63-Ag8.653とラット免疫脾臓細胞の融合を標準的な方法に従って行った。ハイブリドーマ上清を、ポリスチレン・マイクロタイタープレートに吸着したGST-hCD83extタンパク質を用いた固相イムノアッセイで試験した。培養上清と1時間インキュベートした後、結合したモノクローナル抗体をペルオキシダーゼ標識したヤギ抗ラットIgG+IgM抗体(ダイアノーヴァ、ハンブルク、ドイツ)と色原体としてのo-フェニレンジアミンを用いたペルオキシダーゼ反応で検出した。無関係のGST融合タンパク質を陰性対照として用いた。モノクローナル抗体の免疫グロブリンイソタイプをビオチン化抗ラット免疫グロブリン(IgG)サブクラス特異的モノクローナル抗体(ATCC、ロックビル、MD)を用いて決定した。CD83-1G11(ラットIgG1)およびCD83-4B5(ラットIgG2a)をウェスタンブロットとFACS解析に用いた。
【0140】
実施例7:患者の可溶型CD83の定量
Elisaテストを用いて、健常者で可溶型CD83を約0.25 ng/ml(+/- 0.25 ng/ml)の濃度で検出した。驚いたことに、腫瘍患者では15 ng/mlまでの濃度を検出した。それゆえ、この試験は、腫瘍患者の診断および予後評価となりうる。
【0141】
実施例8:hCD83extはジスルフィド結合したホモ二量体タンパク質である
HPLC精製組換えヒトCD83extタンパク質(実施例1に記載のようなクローニングおよび発現、実施例2に記載のような精製)をLaemmliのSDS-PAGEシステムを用いて解析した。CD83の可能なオリゴマーの形態を同定するために、2-メルカプトエタノール(ME)を試料緩衝液(2% SDS、5% 2-メルカプトエタノール(ME)、10% グリセロール、0.2 mM EDTA、0.005% ブロモフェノールブルー、62.5 mM Tris pH6,8)から除いた。この還元剤非存在下で、CD83の分子間および分子内ジスルフィド結合は完全に残る。還元および非還元タンパク質試料をともに5分間95℃でインキュベートし、それぞれをSDS-PAGEで比較した(図7参 照)。電気泳動の間、オリゴマー-SDS-タンパク質の移動度は、完全に変性したSDS-ポリペプチド組成物の移動度よりも小さかった。MEなしでより上のバンドは推定サイズのCD83二量体(約25 kDa)であると思われるが、単量体CD83のバンド(約14 kDa)はかすかである。抗CD83抗体であるCD83-1G11(Lechmannら、Protein Expression and Purification 24: 445-452 (2002年3月2日))を用いたウェスタンブロット解析から、タンパク質のバンドの特異性が確認された。その結果、hCD83extはジスルフィド結合したホモ二量体タンパク質である。
【0142】
単離したジスルフィド結合したホモ二量体タンパク質の阻害活性を実施例3および4に記載のMLR実験法で測定した。単離したホモ二量体の阻害活性は実施例3および4に記載のものと同一であることが明らかとなった。
【0143】
実施例9:可溶型CD83の変異体の生成
hCD83ext_mut129_Cys to Ser変異体の大腸菌を用いたクローニング
ヒトCD83の細胞外ドメイン(アミノ酸20-145)の変異体を以下のプライマーセット:センス-pGEX2ThCD83:5'-TCCCCCCGGG AACGCCGGAG GTGAAGGTGGCT-3'およびアンチセンス-CD83extra_mutantCtoS:5'-AATTAGAATT CTCAAATCTC CGCTCTGTAT TTCTTAAAAG TCTCTTCTTT ACGCTGTGCAG GGGAT-3'(MWG-バイオテクAG;それぞれ配列番号:11および12)を用いてPCR増幅した。アンチセンスプライマーに、アミノ酸配列の129番目のシスチジンがセリンになる変異が導入されるようにgからcのヌクレオチド・トランスバージョンが挿入された(図8参照)。PCR条件は以下のとおりであった:5分94℃での最初の変性工程、31サイクル:1分94℃での変性、1分61℃でのアニーリング、2分72℃での伸長;および10分72℃での最後の伸長工程。増幅したcDNA断片を発現ベクターpGEX2T(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)のSmaIとEcoRI部位にサブクローニングした結果、プラスミドpGEX2ThCD83ext_mut129_CtoSを得、これを大腸菌株TOPO10(インビトロジェン)に形質転換した。正しいヌクレオチド配列をシーケンシングにより確認した。
【0144】
hCD83ext_mut129_Cys to Ser変異体タンパク質の大腸菌における組換え発現
変異体hCD83extの発現と精製を上記のように組換え体hCD83extタンパク質について行った:
細菌を一晩培養した培養液を新鮮なLB培地(100 μg/ml アンピシリンを添加)で1:10に希釈した。吸光度0.9で1 mM IPTGを添加し、培養をさらに1時間行った。その後、細胞を沈殿させ、500 mlの培養あたり10 mlのネイティブ緩衝液(140 mM NaCI, 2.7 mM KCI, 10 mM Na2HPO4, 1.8 mM KH2P04, 2.6 mM MnCl2, 26 mM MgCI2, 1 μg/ml ロイペプチン, 1 μg/ml アプロチニン, 1 μg/ml DNAse I, pH 7.6)に再懸濁し、50 μg/mlのリゾチームを添加した。氷上で15分のインキュベーションの後、溶菌液(ライセート)を20000gで遠心した。タンパク質の精製:吸着工程:上清40 mlをAKTAエクスプローラー 10システム(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)のGSTrapの5 mlカラムに添加した。結合緩衝液:PBS(140 mM NaCI, 2.7 mM KCI, 10 mM Na2HPO4, 1.8 mM KH2P04、 pH7.6)。溶出緩衝液:5 mM 還元グルタチオンを含む50 mM Tris-HCl, pH 8.0。流速:5 ml。クロマトグラフィの手順:4CV(カラム容量)の結合緩衝液、40 mlの上清、12CVの結合緩衝液、5CVの溶出緩衝液、5CVの2N NaCI/PBS, pH7.6、5CVの結合緩衝液。その後、GST-hCD83ext融合タンパク質をトロンビン 20U/mlと22℃で16時間インキュベートした。GSTからhCD83extを分離するために、溶出液を吸着工程の緩衝液条件を用いたGSTrap 5 mlカラムに再度充填した。結合緩衝液条件下で、組換えヒトCD83extタンパク質を含む素通りを回収した。
【0145】
精製したhCD83ext_mut129_Cys to Serを精製したhCD83extとSDS-PAGEにより比較した(図9参照)。非還元条件下同様、還元条件下で、CD83の変異体は14 kDaの安定した単量体のバンドを示した。このバンドは、還元条件下で解析したhCD83ext野生型タンパク質に相当する。非還元条件下では、CD83二量体を変異体CD83タンパク質で検出できなかった。すなわち、細胞外CD83ドメインの5番目のカルボキシ末端システインがホモ二量体の生成に必要である。ウェスタンブロット解析によりバンドの特異性を確認した(データは示さない)。
【0146】
実施例3および4に記載したMLR実験での試験によるhCD83ext_mut129_C to Sの阻害活性は実施例3および4で試験した化合物の活性に相当した。
【0147】
実施例10:可溶型CD83は脾臓細胞の増殖を阻害する
脾臓細胞の増殖の阻害:
MOGを用いたマウスの免疫30日後、または60日後、再刺激アッセイのために脾臓を取り出した。細胞を、ペニシリン(10O U/ml、シグマ)、ストレプトマイシン(100 μg/ml、シグマ)、L-グルタミン(2 mM、シグマ)および2-メルカプトエタノール(50 μM、シグマ)を添加したHL-1無血清培地で培養した。MOG-特異的細胞を、96ウェル組織培養プレートの200 μl HL-1/ウェル中で4×105脾臓細胞を異なる濃度のMOGペプチドとインキュベートすることにより解析した。さらに、対照として、4×105脾臓細胞をIL-2(500 U/ml、プロロイキン)で刺激した。陰性対照として、未刺激の培養液が用いられた。72時間後、培養液を[3H]チミジン(0.4 Ci/mmol、アマシャム TRA-20)でパルス標識した。12時間後、チミジンの取り込みをマイクロプレート・カウンター(ワラック)を用いて測定した。
【0148】
hCD83ext処理マウスに由来する脾臓細胞は明らかな増殖の減少を示す(図10A参照)。さらに、対照として、4×105脾臓細胞がIL-2(500 U/ml)で刺激された。また、hCD83ext処理細胞は、IL-2に応答して増殖することが可能であった(図10A、右手挿入図参照)。これらのデータは明らかに、脾臓細胞の増殖はCD83処理マウスで減少したが、IL-2を用いて再刺激されることを示している。すなわち、脾臓細胞は死んでいなかった。
【0149】
EAEを二回誘導されたhCD83ext処理、BSA処理、または未処理のマウスに由来する脾臓細胞の再刺激(図10B参照)。hCD83ext処理マウスは増殖能にわずかな減少を示した。しかし、BSA処理および未処理マウスがIL-2に応答して強く増殖する一方、hCD83ext処理マウスはIL-2に応答して増殖しなくなった(図10B、右手挿入図参照)。
これらのデータは明らかに、脾臓細胞の増殖がCD83処理マウスで減少していることを示す。
【0150】
実施例11:可溶型CD83は脾臓細胞のサイトカイン産生を阻害する
(実施例10に記載したように)異なる濃度のMOGペプチドで刺激した回収脾臓細胞をそのエクスビボでのサイトカイン産生について試験した。培養上清を96時間後に採取し、市販のINF-γ、IL-2、IL-4、IL-10用のサンドイッチELISAキット(BDバイオサイエンシズ)を用いて試験した。(第一のEAE誘導後の)hCD83ext処理細胞では、そのINF-γ産生が強く阻害される(図11A参照)。また、IL-10産生はあきらかに減少する。IL-2およびIL-4産生は格段には影響されない。これらのデータは明らかに、可溶型CD83が処理動物においてサイトカイン産生の減少をもたらすことを示す。
【0151】
脾臓細胞のサイトカイン産生はまた、EAEを二回誘導された動物由来の脾臓細胞で測定された(図11B参照)。INF-γ産生は強く阻害される。IL-10産生についても同様である。IL-2産生はそれほど影響を受けない。BSA処理および未処理細胞でいくらかのIL-4産生があったが、値は非常に低く、検出限界に近いものである。この場合もやはり、これらのデータは明らかに、可溶型CD83がEAEを二回誘導した動物のサイトカイン産生を減少することを示す。
【配列表フリ−テキスト】
【0152】
配列番号:5 CD83extのプライマー
配列番号:6 CD83extのプライマー
配列番号:7 pGEX2ThCD83extの部分配列
配列番号:8 pGEX2ThCD83extの部分配列
配列番号:9 pGEX2ThCD83ext_mut129_CtoSの部分配列
配列番号:10 pGEX2ThCD83ext_mut129_CtoSの部分配列
配列番号:11 pGEX2ThCD83のセンスプライマー
配列番号:12 pGEX2ThCD83のセンスプライマー
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患の治療または予防のための可溶型CD83タンパク質およびそれをコードする核酸の使用を提供する。本発明はさらに、前記目的に特異的に適した可溶型CD83タンパク質、前記特異的な可溶型CD83タンパク質に対する抗体および、前記抗体を含有する測定方法およびキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の免疫系は、非常に多くの外来抗原に反応する能力を有さねばならない。リンパ球は免疫系の中心的な要素を構成し、それはリンパ球が抗原を認識し、特異的な適応免疫応答をすることができるからである。リンパ球は二つの一般的な分類の細胞、抗体を発現できるBリンパ球と、CD4+ヘルパーT細胞とCD8+細胞毒性T細胞にさらに分類されるTリンパ球に分けられる。Tリンパ球のこれらのサブグループは両者とも、主要組織適合複合体(MHC)として知られる表面タンパク質に関連する抗原を認識することができる。MHCの認識は、T細胞受容体(TCR)、T細胞の細胞膜に付着するタンパク質複合体を介して起きる。CD8+T細胞受容体は独占的に、MHCクラスI抗原と細胞毒性T細胞との相互作用を仲介し;CD4+T細胞受容体は独占的に、MHCクラス II抗原とヘルパーT細胞との相互作用を仲介する。
【0003】
免疫応答の誘発は独占的にT細胞だけから進むのではなく、むしろT細胞がいわゆる抗原提示細胞(APCs、アクセサリー細胞としても知られる)とその表面マーカー(例えばMHC II)と相互作用することにより進む。
【0004】
これらのアクセサリー細胞は、その機能が抗原を提示することである「単純」APCsと、抗原を提示することに加え、リンパ球を活性化するアクセサリー機能を有する「専門」APCsにさらに分けられる。APCsそれ自身は抗原特異性をもたないが、T細胞に抗原を提示することにより「天然のアジュバント」として作用する。単核食細胞に加え、樹状細胞(DC)はAPC型の構成員である。事実、DCsは現在知られている最も効力のあるAPCであり、天然T細胞を活性化でき、それゆえ「天然のアジュバント」と呼ばれる唯一のAPCである。これらの異なる特性と機能の結果、今日まで二つの型の樹状細胞に分けられている:すなわち、リンパ節、脾臓および粘膜関連リンパ組織に存在する濾胞性樹状細胞(リンパ関連DCsとしても知られる)と、ほとんどの臓器の間質腔、リンパ節と脾臓のT細胞の豊富な区画に見出され、ランゲルハンス細胞として知られる皮膚全体にわたって分布するインターデジタル樹状細胞(骨髄由来DCsとしても知られる)である。
【0005】
未成熟な樹状細胞、すなわちT細胞を完全には活性化できないDCsは、抗原を結合し、それらをMHC-ペプチド複合体に加工する機能を有する。TNF-アルファ(腫瘍壊死因子)およびCD40Lのような刺激は樹状細胞の成熟化を誘導し、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子の新規の大量合成と、例えば内臓の間質腔から血液を介した脾臓および肝臓のリンパ節へのDCの移動をもたらす。さらに、副刺激因子の分子(例えばCD80、CD86)および接着分子(例えばLFA3)の発現の増加が第二のリンパ系組織への移動の間に起きる。成熟DCは、第二のリンパ系組織のT細胞が豊富な領域に到達するとすぐに、MHCクラスIまたはMHCクラスIIの範囲内でペプチド抗原をこれらのT細胞に提示することによりTリンパ球を活性化する。条件に応じて、DCsは順に免疫系の区別される応答をもたらす、各種T細胞の活性化を刺激できる。例えば、上記のように、MHCクラスIを発現するDCsは増殖のために細胞毒性T細胞を生じることができ、MHCクラスIIを発現するDCsはヘルパーT細胞と相互作用できる。成熟DCとそれらが産生するIL-12の存在下で、これらのT細胞はインターフェロン−ガンマを産生するTh1細胞に分化する。
【0006】
インターフェロン−ガンマとIL-12は、一緒にT-キラー細胞を促進するように作用する。IL-4存在下で、DCsは、順に好酸球を活性化し、抗体産生するB細胞を支援するIL-5とIL-4を分泌するTh2細胞へT細胞が分化することを誘導する(Banchereau, J.およびSteinman, R.M. (1998) Nature 392: 245-252)。
【0007】
DCsはまた、いわゆるインビトロでの混合リンパ球反応(MLR)、同種T細胞活性化と移植拒絶のモデルであるが、を誘導できる。
【0008】
MLR測定の典型的な特徴は、大きなDC-T細胞塊の形成である。1日目でhCD83extを添加すると、DCおよび増殖T細胞の典型的な細胞塊の形成は強く阻害された(Lechmannら (2001) J. Exp. Med. 194: 1813-1821)。
【0009】
成熟DCは特徴的に、(例えばMHC IおよびII、CD80/86、CD40)のなかでも特に、マーカー分子であるCD83をその細胞表面に発現する(Zhou, L.-J.およびTedder, T.F. (1995) J. Immunology、154: 3821-3835)。これは今日知られている最もよいマーカーの一つである。
【0010】
Igスーパーファミリーのタンパク質の一分子であるCD83は、その未成熟型が205アミノ酸(配列番号:2)からなる単一鎖の43kDaの糖タンパク質である。最初の19アミノ酸はCD83のシグナルペプチドを表し、それらはタンパク質が膜に挿入されると失われ、186アミノ酸の膜貫通タンパク質となる。成熟CD83は、アミノ酸20から144(配列番号:2)で形成される細胞外ドメイン、アミノ酸145から166(配列番号:2)を含有する膜貫通ドメイン、およびアミノ酸167から205(配列番号:2)から形成される細胞質ドメインを有する。細胞外ドメインは構造的特徴として単一のIg様(V型)ドメインを有し、成熟DCの細胞表面で非常に強く発現される。CD83タンパク質の細胞外ドメインは、少なくとも二つのエクソンによりコードされ:一つのエクソンはIg様ドメインの半分だけをコードし、他方のエクソンは膜貫通ドメインをコードする点において、典型的なIg様ドメインとは異なる(Zhou, L.-J.、Schwarting, R.、Smith, H.M.およびTedder, T.F. (1999) J. Immunology、149: 735-742を参照せよ)。ヒトCD83をコードするcDNAは618bpのオープンリーディングフレーム(配列番号:1、Genbank ID: Z11697および上記のZhou, L.-J.ら(1995)を参照せよ)を含有する。
【0011】
CD83の正確な機能は調べられているが、CD83 mRNAの核移行の阻害による成熟DC上におけるCD83の細胞表面での発現の阻害が、これらの細胞のT細胞刺激能に明らかな低減をもたらすことが示されている(Kruse, M.ら (2000) J. Exp. Med. 191: 1581-1589)。それゆえ、CD83はDC機能に必要であると思われる。
【0012】
さらに、可溶型CD83を細胞に投与すると、細胞が発現するCD83量が減少し(成熟樹状細胞)、あるいは細胞がCD83を産生しなくなる(未成熟樹状細胞)ことが明らかとなった。未成熟樹状細胞はその膜中/膜上にCD83をもたないので、この観察から、可溶型CD83はCD83とは別の細胞(膜)と相互作用し、すなわち異好性の相互作用が可溶型CD83と未同定のリガンドの間に生ずると思われるという結論が導かれる(Lechmann, M.ら、(2001年12月17日)J. Exp. Med. 194: 1813-1821、および(2002年6月)Trends in Immunology, 23(6): 273-275)。インビボで可溶型CD83が存在する証拠もまた存在する。可溶型CD83は正常ヒト血清中に見出され、活性化された樹状細胞およびB-リンパ球から放出されていると思われる(Hockら、(2001) Int. Immunol. 13: 959-967)。
【0013】
WO 97/29781は、可溶型CD83を任意の抗原とともにアジュバントとして用いる液性免疫応答を刺激する方法および組成物(ワクチン)に関する。可溶型はCD83融合タンパク質およびアミノ酸1から124からなる可溶型、CD83の細胞外ドメインを含有する。ワクチン製剤のアジュバントとしてのCD83の用途に加え、この文献は哺乳動物における好ましくない抗原特異的な応答を阻害するCD83に対するアンタゴニスト(抗体)の用途について議論している。
【0014】
WO93/21318は、ここでHB15と命名されたCD83、HB15キメラ分子およびHB15の細胞外ドメイン(アミノ酸1から125)からなる断片を含むHB15断片について記載している。さらに、HB15に対する抗体が記述されている。しかし、前記抗体の潜在的な用途も機能も記載されていない。HB15はリンパ球活性化のアクセサリー分子としての役割があるので、可溶型HB15および断片は免疫応答増強のアゴニストとして有用であると考えられている。また、実験的な証明はなされていない。
【0015】
US5,710,262および対応WO95/29236は、AIDSの治療の潜在的に有用な医薬としてヒトおよびマウスのHB15を開示している(マウスHB15のDNAおよびアミノ酸配列に関しては、配列番号:3および4を参照)。ここで記載されているように、HB15の細胞外ドメインは、シグナルペプチドの最初の19アミノ酸、続いて細胞外ドメインの106アミノ酸を含有する。
【0016】
上記のWO93/21318およびWO95/29236はまた、CD83に対するモノクローナル抗体が血清中の内在性CD83またはモニターCD83量を排除することを強調している。
【発明の概要】
【0017】
驚いたことに、アミノ酸20から144(配列番号:2)を含有するCD83の細胞外ドメイン(以降「hCD83ext」)が樹状細胞のリガンドとの異好性の相互作用に関与することが明らかとなった。最新の文献が完全な細胞外ドメインまたは細胞外ドメインのC-末端のアミノ酸を欠く細胞外ドメインについて記載しているだけなので(US5,710,262、WO95/29236およびWO97/29781)、hCD83extが正しい構造を導入し、樹状細胞と相互作用することもまた驚くべきことであった。さらに大きな驚きは、hCD83extの樹状細胞に対する効果であった;hCD83extは、未成熟な樹状細胞の成熟化を妨げ、成熟樹状細胞におけるCD83の発現を低減した。結果として、樹状細胞はT細胞活性化能を消失した。それゆえ、可溶型hCD83ext自身が、好ましくない免疫応答、特にT細胞の活性化を妨げることにより生ずる疾患または病状の治療または予防に適していることが示された。hCD83extはまた、樹状細胞、T細胞および/またはB細胞を介する好ましくない免疫応答により生ずる疾患または病状の治療または予防に適していることが明らかとなった。
【0018】
最近、hCD83extが正しい天然のCD83の構造を有している事実から、CD83に対する抗体の調製にも適していることが明らかとなった(Lechmannら、Protein Expression and Purification 24巻、445-452 (2002年3月5日))。前記文献はまた、Cd83の細胞外ドメインのクローニングとアミノ酸23から128を含有するCD83断片の単離について開示している。
【0019】
さらに、ヒト血清中の可溶型CD83タンパク質の量は変化し、腫瘍およびB-細胞白血病の場合に極めて高いことが明らかとなった。それゆえ、可溶型CD83タンパク質に対する抗体は、患者のある疾患(例えば、腫瘍、自己免疫性疾患、ウイルス感染等)を判断する強力なツールである。
【0020】
最後に、hCD83extが単量体と二量体の形態で存在し(両者とも比較的活性がある)、hCD83extの細胞外ドメイン中の一つ以上のシステイン残基、特に5番目のシステイン残基を異なるアミノ酸残基(例えばセリン残基)で置換すると、自然に二量体化しにくい単量体の細胞外CD83分子となることが明らかとなった。
【0021】
特に、可溶型hCD83extは未成熟および成熟樹状細胞に関与し、未成熟樹状細胞の成熟化を妨げる。その上、可溶型hCD83extで処理した成熟樹状細胞は、そのT細胞刺激活性を完全に阻害される。それゆえ、T細胞はもはや増殖しない。CD83はT細胞(およびB細胞)との相互作用できる成熟樹状細胞のマーカーとして認識される。元々、可溶型hCD83extで処理した成熟した、活性のある樹状細胞は、インビトロでT細胞(およびB細胞)と塊を形成することができない。したがって、樹状細胞はもはやT細胞の分裂/刺激を誘導できない。
【0022】
その結果、本発明は、樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防に適したCD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質の使用を提供する。特に、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質は、樹状細胞とT細胞との相互作用、および樹状細胞とB細胞との相互作用を阻害する。
【0023】
さらに、前記疾患の治療または予防に適した特異的なCD83タンパク質(ホモ二量体、単量体および特定の置換ムテインを含む)が提供される。
【0024】
最終的には、本発明は前記抗体が患者血清中の増強された可溶型CD83タンパク質と相関する疾患を判定する方法に適していることを提供する。
【0025】
より具体的には、本発明は以下を提供する。
(1)樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬を製造するための、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質(以降単に「可溶型CD83タンパク質」)、その断片、二量体型および/または機能誘導体の使用。
(2)可溶型CD83タンパク質が二量体、好ましくは可溶型単量体CD83タンパク質内の一つ以上のシステイン残基を介して結合するホモ二量体である、上記(1)の使用。
(3)可溶型CD83タンパク質が単量体CD83タンパク質、好ましくは一つ以上のシステイン残基が同一または異なる小さなおよび/または極性アミノ酸残基に置換されている単量体CD83タンパク質である、上記(1)の使用。
(4)医薬が麻痺の治療又は予防、好ましくは進行性多発性硬化症に伴う麻痺の治療または予防に適している、上記(1)、(2)または(3)の使用。
(5)樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬を製造するための、上記(1)、(2)または(3)に記載のCD83タンパク質をコードするDNA断片を有する核酸またはベクターの使用。
(6)樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる前記疾患または病状がアレルギー、喘息、組織または臓器移植の拒絶、筋無力症のような自己免疫症候群、多発性硬化症、脈管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性大腸炎、強直性脊椎炎(Bechterew病)および全身性エリテマトーデスのようなHLAB27関連自己免疫疾患、乾癬のような皮膚病、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病およびAIDSからなる群から選択される、上記(1)ないし(3)および(5)の使用。
(7)配列番号:2の20から144のアミノ酸を含有する、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質、その断片、二量体型および/または機能誘導体。
(8)上記(7)のCD83タンパク質をコードする核酸または組換え発現ベクター。
(9)上記(1)または(2)に記載の二量体可溶型CD83タンパク質。
(10)上記(3)に記載の単量体可溶型CD83タンパク質。
(11)上記(9)または(10)のCD83タンパク質をコードする核酸または組換え発現ベクター。
(12)上記(8)または(11)の核酸またはベクターで形質転換/トランスフェクトされた原核生物または真核生物の宿主細胞。
(13)上記(7)、(9)または(10)の可溶型CD83タンパク質の製造方法であって、上記(12)の形質転換/トランスフェクトされた原核生物または真核生物の宿主細胞を培養することを特徴とする、製造方法。
(14)上記(7)、(9)または(10)の可溶型CD83タンパク質、または上記(5)、(8)または(11)に記載の核酸またはベクターを含有する、医薬組成物。
(15)上記(7)、(9)または(10)に記載の可溶型CD83タンパク質に対する抗体。
(16)患者の血清中の可溶型CD83タンパク質をインビトロで定量する測定方法であって、血清試料を上記(15)の抗体と接触させることを特徴とする、測定方法。
(17上記(15)の測定方法を実施するための、上記(14)の抗体を含有するキット。
(18)樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防方法であって、上記(7)、(9)または(10)の可溶型CD83タンパク質、または上記(5)、(8)または(11)に記載の核酸またはベクターを薬学的に適量、該治療が必要なヒトに投与することを特徴とする、方法。
【0026】
本発明はまた、以下を提供する。
[1]樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬を製造するための、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質(可溶型CD83タンパク質)、その断片、二量体型および/または機能誘導体の使用。
[2]上記[1]の使用であって、可溶型CD83タンパク質がCD83タンパク質の細胞外ドメインまたは、その断片または機能誘導体、好ましくは配列番号:2の20から144のアミノ酸残基または、その断片または機能誘導体を含有する、上記[1]の使用。
[3]上記[2]の使用であって、可溶型CD83タンパク質がさらに、
(a)そのC-末端で隣接する細胞内ドメインに由来する一つ以上のアミノ酸残基を有し、好ましくは可溶型CD83タンパク質が配列番号:2の20から145のアミノ酸残基を含有し;および/または、
(b)そのN-末端についた機能配列、好ましくは10アミノ酸残基までの機能配列を有し、最も好ましくは、N-末端で付加的なアミノ酸Gly-Ser-Pro-Glyを有する、
上記[2]の使用。
[4]上記[2]の使用であって、CD83タンパク質の可溶型が配列番号:8の1から130のアミノ酸残基を含有する、上記[2]の使用。
[5]上記[1]の使用であって、可溶型CD83タンパク質が二量体、好ましくは、可溶型CD83タンパク質の単量体型の一つ以上のシステインを介して結合するホモ二量体である、上記[1]の使用。
[6]上記[5]の使用であって、可溶型CD83タンパク質が上記[2]から[4]に定義されるようであり、および/または、ホモ二量体が可溶型CD83タンパク質の単量体の5番目のシステインを介して結合している、上記[5]の使用。
[7]上記[1]の使用であって、可溶型CD83タンパク質が単量体CD83タンパク質、好ましくは、一つ以上のシステイン残基が同一または異なる少数の、および/または極性のアミノ酸残基に置換されている単量体CD83タンパク質である、上記[1]の使用。
[8]上記[7]の使用であって、
(i)少数の、および/または極性のアミノ酸残基がセリン、アラニン、グリシン等から選択され、好ましくはセリンであり;および/または、
(ii)可溶型CD83が上記[2]から[4]に定義されるようであり;および/または、
(iii)一つのシステイン残基、好ましくは5番目のシステイン残基が置換されている、
上記[7]の使用。
[9]上記[7]または[8]の使用であって、可溶型CD83タンパク質が配列番号:2の20から144のアミノ酸残基を含有し、129の位置のシステイン残基がセリン残基または配列番号:10の1から130のアミノ酸残基に置換されている、上記[7]または[8]の使用。
[10]上記[1]から[9]のいずれかひとつの使用であって、医薬が
(a)麻痺の治療または予防、好ましくは、進行性多発性硬化症に伴う麻痺の治療または予防に適し、および/または
(b)特定の抗原とともに経皮、皮内、皮下または全身投与に適している、
上記[1から9のいずれかひとつの使用。
[11]樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬を製造するための、上記[1]から[9]のいずれか一項に記載されるCD83タンパク質をコードするDNA断片を有する核酸またはベクターの使用。
[12]上記[11]の使用であって、DNA断片が配列番号:1の58から432のヌクレオチドを含有する、上記[11]の使用。
[13]上記[11]または[12]の使用であって、医薬が哺乳動物におけるCD83の発現の際のRNA量またはタンパク質量の下方制御に適している、上記[11]または[12]の使用。
[14]上記[1]または[11]の使用であって、樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる前記疾患または病状がアレルギー、喘息、組織または臓器移植の拒絶、筋無力症のような自己免疫症候群、多発性硬化症、脈管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性大腸炎、強直性脊椎炎(Bechterew病)および全身性エリテマトーデスのようなHLAB27関連自己免疫疾患、乾癬のような皮膚病、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病およびAIDSからなる群から選択される、上記[1]または[11]の使用。
[15]配列番号:2の20から144のアミノ酸を含有する、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質(可溶型CD83タンパク質)、その断片、二量体型および/または機能誘導体。
[16]上記[15]の可溶型CD83タンパク質であって、タンパク質がさらに、
(a)そのC-末端で隣接する細胞内ドメインに由来する一つ以上のアミノ酸残基を有し、好ましくは可溶型CD83タンパク質が配列番号:2の20から145のアミノ酸残基を含有し;および/または、
(b)そのN-末端についた機能配列、好ましくは10アミノ酸残基までの機能配列を有し、最も好ましくは、N-末端で付加的なアミノ酸Gly-Ser-Pro-Glyを有する、上記[15]の可溶型CD83タンパク質。
[17]配列番号:8の1から130のアミノ酸残基を含有する、上記[15]の可溶型CD83タンパク質。
[18]上記[15]から[17]のいずれか一項のCD83タンパク質をコードする核酸または組換え発現ベクターであって、前記核酸または組換え発現ベクターが好ましくは配列番号:1の配列の58から435のヌクレオチドまたは、配列番号:7の37から417を含有する、核酸または組換え発現ベクター。
[19]上記[1]、[5]または[6]に記載の二量体可溶型CD83タンパク質。
[20]上記[7]から[9]のいずれか一項に記載の単量体可溶型CD83タンパク質。
[21]上記[19]または[20]のCD83タンパク質をコードする核酸または組換え発現ベクター。
[22]上記[18]または[21]の核酸またはベクターで形質転換/トランスフェクトされた原核生物または真核生物の宿主細胞。
[23]上記[15]から[17]、[19]もしくは[20]のいずれか一項の可溶型CD83タンパク質の製造方法であって、上記[22]の形質転換/トランスフェクトされた原核生物または真核生物の宿主細胞を培養することを特徴とする、製造方法。
[24]上記[1]から[9]または[15]から[17]、[19]もしくは[20]のいずれか一項]に記載の可溶型CD83タンパク質、または上記[11]から[12]、[18]もしくは[21]のいずれか一項に記載の核酸またはベクターを含有する、医薬組成物。
[25]上記[1]から[9]または[15]から[17]、[19]もしくは[20]のいずれか一項]に記載の可溶型CD83タンパク質に対する抗体。
[26]上記[25]の抗体であって、天然のCD83タンパク質の正しいタンパク質折りたたみ構造を有する可溶型CD83タンパク質に対して作製された抗体。
[27]患者の血清中の可溶型CD83タンパク質をインビトロで定量する測定方法であって、血清試料を上記[25]または[26]の抗体と接触させることを特徴とする、測定方法。
[28]上記[27]の測定方法であって、患者の血清中の増加した可溶型CD83タンパク質量に関連する疾患を判定するのに適した、好ましくは患者のB細胞白血病に関連する腫瘍、自己免疫疾患、ウイルス感染等を判定する方法。
[29]上記[27]または[28]の測定方法を実施するための、上記[25]または[26]の抗体を含有するキット。
[30]樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防方法であって、上記[1]から[9]または[15]から[17]、[19]もしくは[20]のいずれか一項に記載の可溶型CD83タンパク質、または上記[11]から[12]、[18]もしくは[21]のいずれか一項に記載の核酸またはベクターを薬学的に適量、該治療が必要なヒトに投与することを特徴とする、方法。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】pGEX2ThCD83extベクターの部分配列。CD83細胞外ドメインの配列を太字で示す。アミノ酸配列「GSPG」をCD83細胞外ドメインのN-末端に付加し、これは下線を付したトロンビン切断部位の部分である。C-末端アミノ酸「I」はCD83の細胞質ドメインの部分である。SmaIとEcoRIのクローニング部位を破線(--)で示す。
【図2A】hCD83extの精製。A-Dは四つの精製工程におけるクロマトグラフィの溶出プロフィールを示す。集めた画分を黒で示す。集めた画分のタンパク質を還元条件および変性条件の15%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色で可視化した。さらに、Dはウェスタンブロット解析も示す。A:GSTrapカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィ:レーン1:分子量マーカー(MWM);レーン4-10:GST-hCD83ext画分。
【図2B】hCD83extの精製。A-Dは四つの精製工程におけるクロマトグラフィの溶出プロフィールを示す。集めた画分を黒で示す。集めた画分のタンパク質を還元条件および変性条件の15%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色で可視化した。さらに、Dはウェスタンブロット解析も示す。B:Source 15QPE 4.6/100カラムを用いた陰イオン交換クロマトグラフィ:レーン1:MWM:レーン2-7 GST-hCD83ext画分。
【図2C】hCD83extの精製。A-Dは四つの精製工程におけるクロマトグラフィの溶出プロフィールを示す。集めた画分を黒で示す。集めた画分のタンパク質を還元条件および変性条件の15%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色で可視化した。さらに、Dはウェスタンブロット解析も示す。C:GSTrapアフィニティクロマトグラフィを用いたトロンビン切断産物の精製:レーン1:MWM;レーン2-4:切断されたhCD83extを含む素通り画分。
【図2D】hCD83extの精製。A-Dは四つの精製工程におけるクロマトグラフィの溶出プロフィールを示す。集めた画分を黒で示す。集めた画分のタンパク質を還元条件および変性条件の15%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色で可視化した。さらに、Dはウェスタンブロット解析も示す。D:Superdex 75 (26/16)カラムを用いたゲル濾過:レーン1:MWM;レーン2:hCD83ext。右パネルは、抗CD83抗体を用いたウェスタンブロット分析を示す。
【図2E】hCD83extの精製。A-Dは四つの精製工程におけるクロマトグラフィの溶出プロフィールを示す。集めた画分を黒で示す。集めた画分のタンパク質を還元条件および変性条件の15%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色で可視化した。さらに、Dはウェスタンブロット解析も示す。E:凍結乾燥、凍結乾燥の前後に採取した等量のCD83ext試料を15% SDS-PAGEにのせた。
【図3】hCD83はDCの成熟を阻害する。DCのFACS解析。A:5-8日の成熟カクテル(=成熟DCの擬似対照)の存在で成熟化する未成熟DC。B:成熟カクテル(5-8日)の存在で成熟化され、7日目にhCD83extが添加された未成熟DC。C:hCD83と組合わせた、5-8日の成熟カクテルの存在下でインキュベートした未成熟DC。8日目、細胞を洗浄し、表記抗体で染色し、FACSで解析した。
【図4】hCD83extは同種T細胞の増殖を阻害する。MLR解析:hCD83extは投与量に依存してT細胞の増殖を低減させた。hCD83extと同様に精製したGSTとBSA(それぞれ5μg/ml)を対照として用いた。
【図5】hCD83extはネズミの同種T細胞の増殖を阻害する。A:MLR解析:hCD83extは投与量に依存してT細胞の増殖を低減させた(濃度は図4参照)。hCD83extと同様に精製したGST(5μg/ml)を対照として用いた。B:図5Aに示したようにMLR解析における生物学的活性は凍結乾燥後も保持される。
【図6】hCD83extは実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を阻害する。A:多発性硬化症(MS)のインビボ・モデル;B:阻害は長い持続効果を有し;C:治療用途に適している(hCD83extは、EAE誘導後3日目から2日ごとに(合計14回)投与された)。
【図7】2-メルカプトエタノール(ME)存在下および非存在下におけるhCD83extのSDS-PAGE。
【図8】pGEX2ThCD83ext_mut129_CtoSベクターの部分配列。細胞外CD83ドメインの配列を太字で示す。置換されたヌクレオチドおよびアミノ酸残基を拡大して示す。アミノ酸配列「GSPG」を細胞外CD83ドメインのN-末端に付加し、これは下線を付したトロンビン切断部位の部分である。C-末端アミノ酸「I」はCD83の細胞質ドメインの部分である。SmaIとEcoRIのクローニング部位を破線(--)で示す。
【図9】2-メルカプトエタノール(ME)存在下および非存在下におけるhCD83extおよびhCD83ext_mut129_CtoSのSDS-PAGE。
【図10】CD83は、1回目のEAE誘導後(A)の脾臓細胞の再刺激および2回目のEAE誘導後(B)の再刺激も阻害する。
【図11A】可溶型CD83は、1回目のEAE誘導後(A)および2回目のEAE誘導後(B)の脾臓細胞によるサイトカイン産生を阻害する。
【図11B】可溶型CD83は、1回目のEAE誘導後(A)および2回目のEAE誘導後(B)の脾臓細胞によるサイトカイン産生を阻害する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
PCR法を用いて、CD83の細胞外ドメインと細胞質ドメインの最初のコドンを完全長のヒトcDNAクローンから増幅し、発現ベクターのグルタチオン-トランスフェラーゼの後ろに挿入した。得られた融合タンパク質において、N-末端のグルタチオン-トランスフェラーゼ(GST)をトロンビン切断部位により、細胞質ドメインのIleにひろがる細胞外CD83ドメインから分離した。融合タンパク質を細菌の一晩培養液から精製し、トロンビン切断により、hCD83extをさらに精製した。精製hCD83extを樹状細胞の成熟化とT細胞刺激(MLR)アッセイに用いた。驚くべきことに、hCD83extを未成熟樹状細胞に添加すると、変化した表面マーカーの発現パターンが誘導された。CD80発現は96%から66%に減少し、CD83発現は96%から30%に減少した。また、成熟樹状細胞をhCD83extに曝すと、表面マーカーの発現パターンが変化した。CD83発現は96%から66%に減少した。hCD83extで処理した樹状細胞はそのT細胞増殖刺激能を失った。これらの結果から、樹状細胞、T細胞および/またはB細胞を介する疾患および病状の治療へのhCD83extの潜在的な使用が示唆された。それゆえ、多発性硬化症のモデルである、hCD83extの実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に対する効果が研究された。驚くべきことに、hCD83extで処理したマウスはEAEに伴う典型的な麻痺を生じなかった。
【0029】
それゆえ、本発明の実施態様(1)によれば、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質、その断片、またはその機能誘導体は樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬の製造に用いることができる。好ましくは、可溶型CD83タンパク質は、配列番号:2の少なくともアミノ酸20から144、または20から145を含有する。適当な断片は、天然のCD83と同一の活性と構造を有するものである。適切な誘導体として、これに限られないが、そのC-末端またはN-末端にさらに配列をつけた、例えばC-末端に膜貫通ドメインの一部を、またはN-末端に短い機能ペプチド(Gly-Ser-Pro-Gly)を有するタンパク質が用いられる。これらのタンパク質および断片を含む医薬は、例えば進行性多発性硬化症に見られるような麻痺の治療または予防に有用である。
【0030】
同様に、これらのタンパク質またはその断片をコードする核酸またはベクターを樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる病状の治療または予防のための医薬の製造に用いることができる。特に、配列番号:1のヌクレオチド58から432、より好ましくは58から435を含有するDNA配列を用いることができる。これらの医薬は哺乳動物のCD83発現におけるRNAおよび/またはタンパク質量のダウンレギュレーションに用いることができる。
【0031】
これらの医薬のアレルギー、喘息、組織または臓器移植の拒絶、筋無力症のような自己免疫症候群、多発性硬化症、脈管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性大腸炎、強直性脊椎炎(Bechterew病)および全身性エリテマトーデスのようなHLA B27関連自己免疫疾患、乾癬のような皮膚病、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病およびAIDSのような疾患の予防または治療のための使用が適切である。機能不全または好ましくないT細胞機能により生ずる病状の治療および/または予防方法としては、ここで記述されるような有効量のCD83または断片を投与することが特徴である;方法としてはまた、上述のように、有効量の核酸またはベクターを投与することが特徴である;前記方法はアレルギー、喘息、組織または臓器移植の拒絶、筋無力症のような自己免疫症候群、多発性硬化症、脈管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性大腸炎、強直性脊椎炎(Bechterew病)および全身性エリテマトーデスのようなHLA B27関連自己免疫疾患、乾癬のような皮膚病、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病およびAIDSのような疾患の治療または予防に適用できる。
【0032】
ここで定義されるように、用語「相互作用を阻害する」は、本発明のCD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質がインビトロの生理学的pHと塩濃度で、好ましくはpH6.0から8.0の範囲のpH濃度で、および/または50mMから250 mM、好ましくは125 mMから175 mMの範囲の塩濃度で、樹状細胞のT細胞および/またはB細胞に対する相互作用をこわす、および/または樹状細胞-T細胞塊または樹状細胞-B細胞塊の形成を阻害する能力があることを示すために用いる。
【0033】
樹状細胞のT細胞への結合および樹状細胞-T細胞塊の形成の好ましい測定法は実施例に提供される(Lechmann, M.ら (2001) J. Exp. Med. 194: 1813-1821)。
【0034】
本発明の使用のためのCD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質は、樹状細胞のT細胞および/またはB細胞に対する結合、および/または樹状細胞-T細胞塊または樹状細胞-B細胞塊の形成の破壊を、上記アッセイの一つで測定した場合、25%以上、より好ましくは50%以上、さらにより好ましくは75%以上、最も好ましくは90%以上生ずることができる。CD83ファミリータンパク質の「可溶型」という用語は、ここでは少なくともCD83ファミリーを構成するタンパク質の細胞外ドメインの一部を有するが、前記分子が発現する細胞膜に固定化されるアミノ酸配列をもたないタンパク質性分子を定義するために用いられる。CD83のアミノ酸配列同様、ヒトCD83タンパク質をコードする核酸配列は、Zhou, L.J.ら (1992) J. Immunol. 149(2): 735-742(Genbank受託番号Z11697)に記載され、それぞれ配列番号:1および配列番号:2として提供されている。
ここで定義されるように、CD83ファミリータンパク質には、配列番号:2で示されるヒトCD83と70%以上、好ましくは80%以上、および最も好ましくは90%以上のアミノ酸同一性を有するいかなる天然に存在するタンパク質も含まれる。
【0035】
それゆえ、ヒトCD83それ自身とは別に、CD83ファミリーを構成するタンパク質として、配列番号:3の核酸配列でコードされ、配列番号:4で提供されるアミノ酸配列で表されるマウスHB15タンパク質があげられる(Genbank受託番号NM_009856 (Berchtholdら))。
【0036】
他の天然に存在するCD83ファミリーを構成するタンパク質を、例えばヒトCD83コーディング領域の全てまたは細胞外部分、またはマウスHB15コーディング領域を含有する核酸を、他の動物、好ましくは哺乳動物、または同種生物の他の組織からの各種ソースの核酸(ゲノムDNA、cDNA、RNA)とハイブリダイズすることにより、得ることができる。
【0037】
ハイブリダイゼーションは相補的な核酸配列間の結合(例えばセンス/アンチセンス、siRNA等)である。当業者に知られているように、Tm(融解温度)は配列間の結合がもはや安定でなくなる温度である。ここで用いられるように、用語「選択的ハイブリダイゼーション」は、CD83関連ヌクレオチド配列と無関係な配列を区別できる、中程度のストリンジェントまたは高度のストリンジェント条件でのハイブリダイゼーションである。
【0038】
核酸ハイブリダイゼーション反応において、特定レベルのストリンジェンシーを達成するために用いられる条件はハイブリダイズする核酸の性質に依存して変化する。例えば、ハイブリダイズする領域の長さ、配列相補性の程度、配列組成(例えば、GC v. AT含量)および型(例えばRNA v. DNA)が特定のハイブリダイゼーション条件を選択する際に考慮される。さらに、一方の核酸が例えばフィルターに固定化されているかどうかが考慮される。
【0039】
一般に、核酸ハイブリッドの安定性はナトリウムイオンの減少およびハイブリダイゼーション反応の温度の上昇に伴い低下する。中程度のストリンジェンシーによるハイブリダイゼーション反応の例は以下のとおりである:約37℃または42℃で、2 x SSC/0.1 SDS (ハイブリダイゼーション条件);およそ室温で、0.5 x SSC/0.1% SDS(低ストリンジェンシーの洗浄条件);約42℃で、0.5 x SSC/0.1% SDS(中程度のストリンジェンシーの洗浄条件)。高ストリンジェンシーでのハイブリダイゼーション条件の例は以下のとおりである:およそ室温で、2 xSSC/0. 1% SDS(ハイブリダイゼーション条件);およそ室温で、0.5 x SSC/0.1% SDS(低ストリンジェンシーの洗浄条件);約42℃で、0.5 x SSC/0.1% SDS(中程度のストリンジェンシーの洗浄条件);および約65℃で、0.1 x SSC/0.1% SDS(高ストリンジェンシー条件)。
【0040】
典型的には、洗浄条件は望みの程度のストリンジェンシーになるように調整される。それゆえ、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを例えば、低ストリンジェンシー条件または高ストリンジェンシー条件のような特定の条件での洗浄により、またはそれぞれの条件、例えば上述の順にそれぞれ10-15分、あげられた工程のいずれかまたは全てを繰り返す条件を用いることにより決定することができる。選択的ハイブリダイゼーションの最適条件は、行われる個々のハイブリダイゼーション反応に依存して変化し、経験的に決定される。
【0041】
天然に存在するCD83タンパク質をコードする核酸をクローニングすると、細胞外ドメインを既知のCD83分子の細胞外ドメインとクローニングされたCD83配列とを比較することにより決定することができる。その結果、任意の天然に存在する可溶型CD83タンパク質をここに記載の方法を用いて組換え的に発現することができる。例えば、ここに記載の既知の方法および当業者に既知の方法(Sambrookら、モレキュラー・クローニング:実験室マニュアル、コールドスプリングハーバー・ラボラトリー、ニューヨーク、1989)を用いて、可溶型CD83をコードする核酸を製造し、ベクターに挿入し、原核生物または真核生物の宿主細胞を形質転換できる。
【0042】
それゆえ、細菌システムにクローニングする場合、pi、バクテリオファージXの、plac、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッドプロモーター)のような誘導性プロモーター同様、T7等の構成的プロモーターを用いることができる。哺乳動物細胞システムにクローニングする場合、SV40、RSV、CMV-IEを含むCMV等の構成的プロモーターまたは哺乳動物細胞のゲノム由来の誘導性プロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルス由来の誘導性プロモーター(例えば、マウス乳腺腫瘍ウイルスの末端反復配列;アデノウイルス後期プロモーター)を用いることができる。組換えDNA技術または合成法により製造されるプロモーターはまた、本発明の核酸配列の転写に用いられる。
【0043】
発現のために組換えウイルスまたはウイルスの要素を利用する哺乳動物の発現システムが設計されている。例えば、アデノウイルス発現ベクターを用いる場合、目的の核酸をアデノウイルスの転写/翻訳コントロール複合体、例えば後期プロモーターと3部からなるリーダー配列にライゲートすることができる。あるいは、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーターを用いることができる。
【0044】
特に興味深いことは、染色体外要素としての複製能を有する、ウシパピローマウイルス(BPV)に基づくベクターである。マウス細胞に染色体外ベクターが入った直後、ベクターは細胞当り約100から200コピー複製する。挿入cDNAの転写にはプラスミドの宿主染色体への組み込みは必要ないので、高レベルの発現が起きる。これらのベクターを、プラスミドに選択マーカー、例えばneo遺伝子を含むことにより、安定発現に用いることができる。あるいはレトロウイルスゲノムを、宿主細胞中で目的の核酸の発現を導入する、および発現させることができるベクターとして用いるために改変することができる。高レベルの発現を、これに限定はされないが、メタロチオネインRAプロモーターおよびヒートショックプロモーターを含む誘導性プロモーターを用いて達成できる。
【0045】
酵母において、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを含む多くのベクターが用いられている。ADHまたはLEU2のような構成的酵母プロモーター、またはGALのような誘導性プロモーターを用いることができる。あるいは、例えば相同組換えを介する、外来核酸配列の酵母染色体への組み込みを容易にするベクターが当業者には知られており、用いられている。
【0046】
本発明の使用のためのCD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質をコードする目的の核酸を、インビトロでの発現のために(例えば、インビトロでの転写/翻訳アッセイまたは市販のキットを用いて)発現ベクターに挿入する、または、適当な核酸を適切な細胞に移すことにより原核生物または真核生物(例えば、昆虫細胞)のいずれかで、転写および/または翻訳を容易にするプロモーター配列を含む発現ベクターに挿入することができる。ベクターが伝播し、その核酸が転写、あるいはコードされるポリペプチドが発現する細胞をここでは「宿主細胞」と呼ぶ。
【0047】
この用語はまた、目的の宿主細胞のいかなる子孫をも含む。さらに、本発明の目的の核酸を、体細胞遺伝子治療におけるインビボ発現のために、発現ベクターに挿入できる。これらのベクター、例えばレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、プラスミド発現ベクターを用いて、発明の核酸をDCへのベクターの感染/導入により発現させる。
【0048】
宿主細胞としては、これに限定はされないが、細菌のような微生物、酵母、昆虫および哺乳動物があげられる。例えば、目的核酸を含む組換えバクテリオファージの核酸、プラスミドの核酸またはコスミドの核酸発現ベクターで形質転換された細菌;目的核酸を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母;目的核酸を含む、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)を感染した、または組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞システム;目的核酸を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染した昆虫細胞システム;または目的核酸を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)を感染した動物細胞システム、または安定発煙のために操作した形質転換動物細胞システムがあげられる。
【0049】
宿主細胞中でCD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質を長期間発現するために、安定発現が好ましい。それゆえ、例えばウイルスの複製起点を含む発現ベクターを用いて、適当なコントロール要素(例えば、プロモーター/エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)により制御される目的核酸を用いて細胞を形質転換できる。状況に応じて、発現ベクターはまた、ベクターを有する細胞がそれにより同定され、生育し、および広がるようになる選択圧に対する抵抗性を得る選択または同定マーカーをコードする核酸を含むことができる。あるいは、選択マーカーは、発明のポリヌクレオチドを含む第一のベクターをもつ宿主細胞に共トランスフェクトした第二のベクター上に存在することができる。
【0050】
これに限定されないが、ヘルペス単純ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を含む多くの選択システムが、それぞれtk-、hgprtまたはaprt細胞で使用できる。加えて、代謝拮抗物質抵抗性を、メトトレキサート耐性を与えるdhfr;キノコフェノール酸耐性を与えるgpt遺伝子;アミノグリコシドG-418耐性を与えるネオマイシン遺伝子;およびハイグロマイシン耐性を与えるハイグロマイシン遺伝子の選択の基礎として用いることができる。さらに選択可能な遺伝子として、トリプトファンの代わりにインドールを細胞に利用させるtrpB;ヒスチジンの変わりにヒスチノールを細胞に利用させるhisD;およびオルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤である2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン(DFMO)に対する耐性を与えるODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)が記載されている。
【0051】
ここで用いられているように、用語「形質転換(トランスフォーメーション)」は、細胞への外来DNAの取り込みに続く細胞の遺伝的変化を意味する。それゆえ、「形質転換された細胞」は、細胞内(またはその細胞の子孫)にDNA分子が組換えDNA技術により導入されている細胞である。
【0052】
DNAを用いた細胞の形質転換を、当業者には既知の従来法により実施できる。例えば、宿主細胞が真核生物のものである場合、DNA形質転換法として例えば、リン酸カルシウム共沈殿法、マイクロインジェクションのような従来の機械的手法、電気穿孔法、リポソームで包んだプラスミドの挿入およびウイルスベクターをあげることができる。真核細胞はまた、目的核酸をコードするDNA配列と選択的な表現型をコードする第二の外来DNA分子を、ここで記載したように、共形質転換することができる。別の方法としては、サルウイルス40(SV40)またはウシパピローマうウイルスのような真核生物ウイルスのベクターを、一過的に真核細胞に感染または形質転換し、タンパク質を発現させるために用いる方法である。
【0053】
形質転換に続き、可溶型CD83を従来法により単離精製できる。例えば、発現宿主(例えば、細菌)から調製した溶菌液(ライセート)をHPLC、サイズ排除クロマトグラフィ、ゲル電気泳動、アフィニティクロマトグラフィ、または他の精製法を用いて精製できる。実質的に純粋なタンパク質を、ペプチド合成機(例えば、アプライドバイオシステムズ、フォスターシティ、CA;モデル430A等)を用いた化学合成により得ることができる。
【0054】
本発明の実施態様(2)によれば、本発明の医薬に使用するための化合物は二量体構造の可溶型CD83である。好ましくは、二量体構造はホモ二量体である。二量体化は、可溶型CD83タンパク質の単量体内部に存在するシステイン残基(これは配列番号:2のアミノ酸12、27、35、100、107、129、163に存在する)間に一つ以上のジスルフィド結合を形成することにより、または可溶型CD83タンパク質の単量体内部の同一または異なる官能基(例えば、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、チオ基等)を結合する二官能性リンカー分子(例えば、ジアミン、ジカルボン酸化合物等)により得ることができる。後者からまた、組換え技術により直接作られる二量体構造を得るための、(例えば、-[(Gly)xSer]y-(xは例えば3または4、yは例えば1ないし5)のような小さな極性アミノ酸残基からの)ポリペプチドリンカーの使用ができるようになる。
【0055】
特に好ましいのは、可溶型CD83の5番目のシステイン残基(すなわち、配列番号:2のアミノ酸129および配列番号:8のアミノ酸114に相当するシステイン残基)間のジスルフィド結合により結合した(配列番号:2の20から144、または配列番号:8の1から130のアミノ酸残基を含有するホモ二量体のような)ホモ二量体である。
【0056】
本発明の使用のための化合物はまた、これらの誘導体が上述のように可溶性のままであり、上述の樹状細胞のT細胞および/またはB細胞への結合、および/または樹状細胞-T細胞塊の形成を妨げることができるかぎり、一つ以上のアミノ酸が付加、欠失、置換、挿入または反転している、上述の発明によるCD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質の誘導体を包含する。これはまた、前述のCD83化合物のスプライスバリアントを包含する。
【0057】
特に好ましい付加は、前に定義した可溶型CD83タンパク質がそのC-末端に隣接する細胞質ドメインに由来する一つ以上のアミノ酸残基を有し、好ましくは可溶型CD83タンパク質が配列番号:2のアミノ酸残基20から145を含有し;および/またはそのN-末端に付いた機能配列、好ましくは10アミノ酸残基までの機能配列、および最も好ましくはN-末端に更なるアミノ酸Gly-Ser-Pro-Glyを有するような付加である。
【0058】
CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質の一つ以上のアミノ酸が置換されている場合、一つ以上のアミノ酸が保守的に置換されることが好ましい。例えば保守的な置換には、Met、Ile、Val、LeuまたはAlaのような脂肪族アミノ酸残基が互いに置換される置換が包含される。同様に、極性アミノ酸残基はLysとArg、GluとAsp、またはGlnとAsnのように、互いに置換できる。
【0059】
発明の可溶型CD83タンパク質の好ましい置換ムテインは、発明の態様(3)および(10)のものであり、ここで可溶型CD83タンパク質は一つ以上のシステイン残基が同一の、または異なる短い、および/または極性のアミノ酸残基に置換されている単量体CD83タンパク質である。好ましくは、小さい、および/または極性のアミノ酸残基はセリン、アラニン、グリシン、バリン、スレオニン等から選択され、好ましくはセリンである。さらに一つのシステイン残基、より好ましくは5番目のシステイン残基が置換されていることが好ましい。最も好ましくは、可溶型CD83タンパク質は配列番号:2のアミノ酸残基20から144を含有し、129位のシステイン残基がセリン残基、または配列番号:10のアミノ酸残基1から130に置換されている。そのように定義される単量体分子は、医薬応用に特に重要である。
【0060】
発明によれば、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質の誘導体はまた、その中の一つ以上のアミノ酸が変化した側鎖を有する誘導体を包含する。そのような誘導体ポリペプチドには例えば、遊離のアミノ基が塩酸アミン、p-トルエンスルホニル基、カロベンズオキシ基を形成する;遊離のカルボキシ基が塩、メチルおよびエチルエステルを形成する;遊離のヒドロキシル基が天然に存在するアミノ酸誘導体のように0-アシルまたは0-アルキル誘導体、例えばプロリンに対して4-ヒドロキシプロリン、リジンに対して5-ヒドロキシリジン、セリンに対してホモセリン、リジンに対してオミチン等を形成するアミノ酸を含有するポリペプチドが包含される。また、共有結合、例えば環状ポリペプチドを産生する二つのシステイン残基間に形成されるジスルフィド結合を変えることができるアミノ酸誘導体も含まれる。
【0061】
CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質またはその誘導体は、これらの分子が上述のように可溶性であり、上述の樹状細胞のT細胞および/またはB細胞への結合、および/または樹状細胞-T細胞塊の形成を妨げることができるかぎり、CD83分子の天然のグリコシル化パターンまたは変化したグリコシル化パターンを有し、あるいはグリコシル化されない。
【0062】
好ましい態様では、本発明の使用のための可溶型CD83は、配列番号:2で示されるヒトCD83タンパク質のアミノ酸20から144、より好ましくはアミノ酸20から145、または配列番号:8のアミノ酸1から130を含有する。
【0063】
さらに好ましい態様では、本発明の使用のための可溶型CD83は、配列番号:4で示されるマウスHB15タンパク質のアミノ酸22から135を含有する。
【0064】
本発明はまた、樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬を製造するための、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質またはそのようなタンパク質の誘導体をコードする核酸または発現ベクターの使用に関する。
【0065】
上述のような、本発明の使用のための核酸は、塩基アデニン、チミン、グアニンおよびシトシンを含むDNA(デオキシリボ核酸)または塩基アデニン、ウラシル、グアニンおよびシトシンを含むRNA(リボ核酸)、もしくは二つの混合物の形態をとりうる。
【0066】
発明の使用のための核酸がヒトCD83タンパク質に由来する場合、コーディング領域の部分は好ましくは、配列番号:1の配列のヌクレオチド58から432である。あるいは、コーディング領域の部分は、配列番号:1の配列のヌクレオチド58から435である。
【0067】
発明の使用のための核酸がマウスHB15タンパク質に由来する場合、コーディング領域の部分は好ましくは、配列番号:3の配列のヌクレオチド76から418である。
【0068】
発明の使用のためのタンパク質をコードする核酸はベクターに挿入される。用語「ベクター」は、ポリペプチドを挿入または取り込みにより操作することができる、当業者には既知のプラスミド、ウイルスまたは他の媒体を意味する。そのようなベクターは遺伝子操作に用いられ(すなわち「クローニングベクター」)、あるいは挿入ポリペプチドが転写または翻訳される(「発現ベクター」)。一般にベクターは少なくとも、細胞中で増殖するための複製起点とプロモーターを含む。ここで説明した発現制御要素を含む発現ベクター内に存在する制御要素(例えば、イントロンのスプライシングシグナル、mRNAのインフレーム翻訳を可能にするための遺伝子の正しい読み取り枠(リーディングフレーム)の維持、停止コドン等)は、適正な転写および翻訳を容易にすることに関連する。用語「制御要素」は、その存在が発現に影響をおよぼす少なくとも一つ以上の要素を含むことを意味し、別の要素、例えばリーダー配列および融合パートナー配列を含むこともできる。
【0069】
ここで用いられているように、用語「発現制御要素」は、操作できるようにつなげた核酸配列の発現を調節する一つ以上の核酸配列を意味する。核酸配列に操作できるようにつなげた発現制御要素は、核酸配列の転写および、必要に応じて翻訳を制御する。それゆえ、発現制御要素は、必要に応じて、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質コード遺伝子の前の開始コドン(例えば、ATG)を含む。「操作できるようにつなげる」とは、記載した要素を所望の方法で機能するような関係に並べることを意味する。
【0070】
「プロモーター」は、直接転写に十分な最小の配列を意味する。構成的プロモーターと誘導性プロモーターの両者が発明に包含される(例えば、Bitterら、Methods in Enzymology 153: 516-544,1987を参照せよ)。誘導性プロモーターは外部シグナルまたは薬剤により活性化される。また発明には、特定の細胞型、組織または生理的条件で制御可能なプロモーター依存性の遺伝子発現を行わせるのに十分なプロモーター要素が含まれる;そのような要素は遺伝子の5’、3’またはイントロン領域に存在する。発明に有用なプロモーターとしてはまた、条件付プロモーターがあげられる。「条件付プロモーター」は、ある条件下でのみ活性のあるプロモーターである。例えば、プロモーターは、ある化合物のような特定の薬剤が存在すると、不活性または抑制される。薬剤が存在しないと、転写が賦活化または活性化される。
【0071】
本発明の目的核酸を、体細胞遺伝子治療のためのインビボ発現用に発現ベクターに挿入することができる。これらのベクター、例えばレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、プラスミド発現ベクターを用いて、ベクターを樹状細胞、T細胞および/またはB細胞へ感染/導入することにより、発明の核酸を発現する。
【0072】
さらに発明は、樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防方法に関し、ここで効果的な量の可溶型hCD83extが被検者に投与される。
【0073】
その上、発明は樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防方法に関し、ここで効果的な量の可溶型hCD83extをコードする核酸または発現ベクターが被検者に投与される。
【0074】
発明によれば、可溶型CD83extまたは、hCD83extをコードする核酸または発現ベクターを、例えば移植片対宿主疾患または宿主対移植片疾患の結果生ずる、組織および/または臓器移植、特に異種組織および/または臓器移植の拒絶を治療又は予防するために用いることができる。
【0075】
本発明のさらなる態様において、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質または、hCD83extをコードする核酸または発現ベクターを外来抗原への望ましくない応答、それに伴うアレルギーおよび喘息、あるいは類似の症状を治療または予防するために用いることができる。
【0076】
可溶型hCD83ext、または可溶型hCD83extをコードする核酸または発現ベクターを使用して治療または予防できる他の障害、疾患および症状としては、筋無力症のような自己免疫症候群、多発性硬化症、脈管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性大腸炎、強直性脊椎炎(Bechterew病)および全身性エリテマトーデスのようなHLA B27関連自己免疫疾患、乾癬のような皮膚病、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病およびAIDSをあげることができる。
特にhCD83extは、多発性硬化症に伴う麻痺の治療に適している。
【0077】
治療または予防用途のために、本発明の化合物がそれだけで、あるいは他の免疫調節化合物、例えば体性誘導抗原との組合せで被検者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト患者に、医療指示に適した方法で、治療または予防のために投与される。経皮、皮内、皮下および/または組織投与がhCD83extおよびその誘導体の送達のために選択される。
【0078】
一定量の本発明の一つ以上の化合物を用いた医薬組成物の製造および/または本発明の用途に対するその利用は、通常の医薬技術による通例の方法で行われる。このために、本発明の化合物は、各種の用途指示および型に適した医薬剤形に対する適当な、薬学的に許容されうるアジュバントおよび/または担体とともに加工される。それにより、医薬をそれぞれの所望の放出速度、例えば速浸効果および/または徐放効果もしくは持続効果が得られるように製造することができる。
【0079】
注射液および輸液が属する非経口用途の製剤は、上記の適応に対して最も重要な全身に用いられる医薬である。
【0080】
好ましくは、多くの取り出し口をもつ穿孔ボトルに加え、注射液はバイアルの形態で、あるいは、例えばready-to-useのシリンジまたは一回使用のシリンジのような、いわゆるready-to-useの注射製剤として調製される。注射製剤の投与として、皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)、静脈内(i.v.)、節間(i.n.)または皮内(i.e.)投与の形態をあげることができる。それぞれに適当な注射剤を、溶液、結晶懸濁液、ナノ粒子または、例えばハイドロゾルのようなコロイド分散系として製造することができる。
【0081】
注射製剤をまた、水性等張希釈剤を用いて発明の化合物を所望の用量に調整可能な濃縮液として製造できる。さらにそれらをまた、適当な希釈剤で使用直前に好ましくは溶解または分散する、例えば凍結乾燥品のような粉末として製造することができる。輸液はまた、等張溶液、脂肪乳剤、リポソーム製剤、マイクロエマルジョンおよび、混合ミセル、例えばリン脂質に基づく液体の形態で製造することができる。注射製剤同様、輸液製剤はまた希釈液のための濃縮液の形態で調製することができる。注射製剤はまた、外来治療同様、静止状態での、例えばミニポンプでの連続的な輸液の形態で投与できる。
【0082】
本発明の化合物の、注射器または包装材のような物質、例えばプラスチックやガラスへの吸着を減らすために、アルブミン、血漿増量剤、界面活性化合物、有機溶媒、pH作用化合物、複合体形成化合物またはポリマー化合物を非経口医薬製剤に添加することができる。
【0083】
本発明の化合物を非経口用途の製剤のナノ粒子、例えばポリ(メト)アクリレート、ポリアセテート、ポリグリコレート、ポリアミノ酸またはポリエーテルウレタンに基づく微細分散粒子に結合することができる。非経口製剤はまた、持続性製剤として、例えば複数ユニット原理に基づき修飾することができる。ここで、本発明の化合物は最も微細な分布型および/または分散、懸濁型に、あるいは結晶懸濁液として取り込まれる。もしくは単一ユニット原理に基づき、本発明の化合物は医薬剤形、例えば錠剤または続いて移植されるシードに取り込まれる。単一ユニットまたは複数ユニット医薬剤形中のこれらの移植または持続性医薬はしばしば、いわゆる生分解性ポリマー、例えば乳酸とグリコール酸のポリエーテルウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリアミノ酸、ポリ(メト)アクリレートまたは多糖類からなる。
【0084】
滅菌水、例えば有機および無機酸または塩基ならびにそれらの塩のようなpHの値に影響を及ぼす物質、pHの値を設定するための緩衝物質、例えば塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ブドウ糖および果糖のような等張剤、界面活性剤および/または界面活性物質、および、例えばポリオキシエチレンソルビタンの部分脂肪酸エステル(Tween(登録商標))または例えばポリオキシエチレンの脂肪酸エステル(Cremophor(登録商標))、例えばピーナッツ油、大豆油およびヒマシ油のような脂肪油、例えばオレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルおよび中性油(Miglyol(登録商標))のような合成脂肪酸エステル、ならびに、例えばゼラチン、デキストラン、ポリビニルピロリドンのようなポリマーアジュバント、例えばプロピレングリコール、エタノール、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピレングリコールのような溶解度を増加する有機溶媒添加剤または例えばクエン酸塩および尿素のような複合体形成化合物、例えば安息香酸ヒドロキシプロピルおよび安息香酸ヒドロキシメチルのような防腐剤、ベンジルアルコール、例えば亜硫酸ナトリウムのような抗酸化剤、および例えばEDTAのような安定化剤が、非経口用途の製剤の製造にアジュバントおよび担体として適している。
【0085】
懸濁液においては、本発明の化合物の環境を界面活性剤および解膠剤から保護し、シェ−クされるべき沈殿物の能力を保証するための増粘剤、またはEDTAのような錯体形成剤の添加が続く。この工程は、各種ポリマー剤複合体、例えばポリエチレングリコール、ポリスチロール、カルボキシメチルセルロース、Pluronics(登録商標)またはポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステルを用いて達成することができる。本発明の化合物はまた、封入体化合物の形態、例えばシクロデキストリンを用いて液体製剤に取り込むことができる。さらなるアジュバントとして、分散剤もまた適当である。凍結乾燥物製造のために、例えばマンニット、デキストラン、白糖、ヒトアルブミン、乳糖、PVPまたはゼラチン類のような材料も用いられる。
【0086】
重要なさらなる全身投与剤形は、錠剤、ゼラチンのハードカプセル剤またはソフトカプセル剤、被覆錠剤、粉末、小球、マイクロカプセル剤、矩形圧縮剤、顆粒剤、チュアブル錠、トローチ剤、増粘剤または小袋のような経口投与である。これらの固形経口投与剤形は、徐放作用および/または持続性システムとして調製される。これらには、一定量の一つ以上の微粉末化された本発明の化合物を含む医薬、マトリックスに基づく、例えば脂肪、ワックス様および/またはポリマー化合物、またはいわゆるリザーバーシステムを用いることによる分散剤および侵食剤が含まれる。緩染剤および/または制御放出剤として、フィルムまたは、例えばエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(メト)アクリレート誘導体(例えばEudragit(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートのようなマトリックス形成剤が、有機溶液ならびに水性分散剤の形態で適当である。これに関しては、体内の保持時間の増加が体内の粘膜への集中的な接触により達成される、いわゆる生体接着材料もまたあげられる。生体接着ポリマーの例としては、Carbomers(登録商標)のグループをあげることができる。
【0087】
舌下投与については、例えば本発明の化合物の徐放性を有する、適当なサイズをもつ矩形の非崩壊錠剤のような圧縮剤が特に適当である。胃腸管の各種の場所における、本発明の化合物を標的放出するために、各種の場所で放出される小球の混合物、例えば胃液可溶性で小腸可溶性小球、および/または胃液抵抗性で大腸可溶性小球の混合物を用いうる。核を有する適切に製造された積層錠剤、これにより薬剤の被覆が胃液中に急速に放出され、薬剤の核がゆっくり小腸の環境に放出されるような、胃腸管の各場所での放出についての同一の目的を考えることができる。胃腸管の各種の場所における制御放出の目的を、多層錠剤で達することもできる。差動放出剤を含む小球混合物をゼラチンのハードカプセル剤に充填することができる。
【0088】
抗粘着および潤滑および分離剤、フレーム分散二酸化ケイ素のような分散剤、各種デンプン型の錠剤分解物質、PVC、例えばワックス様および/またはEudragit(登録商標)、セルロースまたはCremophor(登録商標)に基づくポリマー化合物のような造粒剤または緩染剤としてのセルロースエステルが、例えば錠剤または、ゼラチンのハードカプセル剤およびソフトカプセル剤、ならびに被覆錠剤および粒剤のような圧縮剤の製造のためのさらなるアジュバントとして用いられる。
【0089】
抗酸化剤、例えば白糖、キシリットまたはマンニットのような甘味剤、マスキングフレーバー、芳香族化合物、保存料、着色剤、緩衝物質、例えば微結晶性セルロース、デンプンおよびデンプン水解物(例えばCelutab(登録商標))、乳糖、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンおよびリン酸二カルシウムのような直接的な打錠剤、潤滑剤、乳糖またはデンプンのような賦形剤、乳糖の形状の結合剤、例えばコムギまたはトウモロコシおよび/またはコメのデンプンのようなデンプン類、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはシリカのようなセルロース誘導体、滑石粉、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウムのようなステアリン酸塩、タルク、ケイ化タルク、ステアリン酸、アセチルアルコールおよび水和脂肪が用いられる。
【0090】
これに関しては、特に浸透圧原理に基づいて構築された経口治療システム、例えばGIT(胃腸治療システム)またはOROS(経口浸透圧システム)もまたあげられる。
【0091】
水に急速に溶解または懸濁される即時に引用できる医薬剤形を示す発泡錠剤も経口投与圧縮剤に含まれる。前記経口投与剤形として、上述の方法により製造され、安定性増加のための保存料と取り込みやすくするための任意の芳香族化合物、およびよりよい区別のための着色剤、ならびに抗酸化剤および/またはビタミン類および糖または人工甘味料のような甘味料を含む、溶液、例えば点滴剤、ジュースおよび懸濁液があげられる。これには、摂取前に水で処方される濃縮ジュースも含まれる。本発明の一つ以上の化合物を組合わせたイオン交換樹脂もまた、液体摂取剤形の製造のためにあげられる。
【0092】
特殊な放出形態が、例えば体液に接触した後に気体を発生し、それゆえ胃液表面に浮遊する錠剤または小球に基づくいわゆる浮遊医薬剤形の調製時に存在する。さらに、いわゆる電子制御の放出システムもまた、本発明の化合物の放出を選択的に、個々の必要に応じて調整することにより製剤化することができる。
【0093】
さらなる全身投与のグループで、任意に局所的に硬化のアル医薬剤形が、直腸に投与可能な医薬としてあげられる。これらとして、坐剤および浣腸剤がある。浣腸剤はこの投与剤形を製造するために、水性溶媒をもつ錠剤に基づき調整することができる。直腸カプセル剤もまた、ゼラチンまたは他の担体に基づき得ることができる。
【0094】
例えばWitepsol(登録商標)、Massa Estarinum(登録商標)、Novata(登録商標)、ココナッツ脂肪、グリセロール-ゼラチン塊、グリセロール-石鹸-ゲルおよびポリエチレングリコールのような硬化脂肪が坐剤の基剤として適当である。
【0095】
数週間までの本発明の化合物の全身放出による長期間の投与に関し、好ましくはいわゆる生分解性ポリマーに基づき製剤化された圧縮植込錠が適当である。
【0096】
全身的に活性のある医薬のさらに重要なグループとして、肝臓循環システムおよび/または肝臓代謝を回避することにより、上述の直腸剤形と同様に、群を抜く経皮システムもまた強調することができる。これらの膏薬は特に、本発明の化合物を、適当なアジュバントおよび担体の異なる層および/または混合物に基づき、より長いまたはより短い時間に調節した方法で放出することができる経皮システムとして調製することができる。
【0097】
溶媒や、例えばEudragit(登録商標)に基づくポリマー化合物のような適当なアジュバントおよび担体とは別に、例えばオレイン酸、Azone(登録商標)、アジピン酸誘導体、エタノール、尿素、プロピルグリコールのような膜浸透性増加材料および/または膜透過促進剤が、透過性の改良促進のためのこの型の経皮システムの製造に適している。
【0098】
局所的投与のための医薬としては、以下のものが特別な製剤として適当である:膣または性器に塗布可能なエマルジョン、クリーム、フォームタブレット、持続性植込錠、卵または経尿道投与できる導入溶液。眼科用投与のためには、高度に滅菌した眼球用軟膏、溶液および/または点滴剤またはクリームおよびエマルジョンが適当である。
【0099】
同様に、対応する耳鼻科用点滴剤、軟膏またはクリームを耳に投与するためにデザインすることができる。上述の適用のために、例えばCarbopol(登録商標)に基づくゲルまたは、例えばポリビニルピロリドンおよびセルロース誘導体のような他の化合物のような半固体製剤の投与もまた可能である。
【0100】
通例の皮膚または粘膜への塗布のために、標準的なエマルジョン、ゲル、軟膏、クリームまたは混合相、および/または両親媒性エマルジョン系(オイル/水-、水/オイル混合相)をリポソーム同様あげることができる。適当な基礎製造のためのゲル材料としてのアルギン酸ナトリウム、または、例えばグアールガムまたはキサンタンガムのようなセルロース誘導体、例えば水酸化アルミニウムまたはベントナイトのような無機ゲル材料(いわゆる揺変性ゲル材料)、例えばCarbopol(登録商標)のようなポリアクリル酸誘導体、ポリビニルピロリドン、微結晶性セルロースまたはカルボキシメチルセルロースがアジュバントおよび/または担体として適当である。さらに、両親媒性低分子量および両親媒性高分子量の化合物がリン脂質同様適当である。ゲルは、水に基づくハイドロゲルとして、また例えば低分子量および高分子量のパラフィン炭化水素とワセリンの混合物に基づく疎水性オルガノゲルとして存在しうる。
【0101】
陰イオン性、陽イオン性または中性界面活性剤、例えばアルカリ石鹸、メチル石鹸、アミン石鹸、スルファネート化合物、陽イオン性石鹸、高級脂肪アルコール、ソルビタンとポリオキシエチレンソルビタンの部分脂肪酸エステル、例えばラネット型、羊毛脂、ラノリンまたは他の合成産物を乳化剤として、オイル/水および/または水/オイルエマルジョンを製造するために用いることができる。
【0102】
親水性オルガノゲルを例えば、高分子ポリエチレングリコールを基礎として製剤することができる。これらのゲル様形態は洗浄可能である。ワセリン、天然または合成のワックス類、脂肪酸、脂肪アルコール、例えばモノ-、ジ-またはトリグリセリドのような脂肪酸エステル、パラフィン油または植物油、硬化ヒマシ油またはココナッツ油、ブタ脂肪、例えばSoftisan(登録商標)のようなアクリル酸、カプロン酸、ラウリン酸およびステアリン酸、またはMiglyol(登録商標)のようなトリグリセリド混合物に基づく合成油脂が、軟膏、クリームまたは乳化剤の製造のための、油脂および/またはワックス様組成物の形態で脂質として用いられる。
【0103】
浸透効果を有する酸および塩基、例えば塩酸、クエン酸、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム、さらに緩衝システム、例えばクエン酸塩、リン酸塩、トリス緩衝液またはトリエタノールアミンがpHを調整するために用いられる。保存料、例えばメチル-またはプロピルベンゾエート(パラベンス)またはソルビン酸を、安定性を増すために添加することができる。
【0104】
ペースト、粉末または溶液が、さらに局所投与の形態としてあげられる。ペーストはしばしば、稠度を与える基礎として非常に多量の脂肪物質とともに、脂肪親和性および親水性の補助剤を含む。粉末または局所投与の粉末は例えば、凝集を防ぐだけでなく、潤滑性同様、流動性を増加するための希釈剤として機能する、小麦または米のデンプンのようなデンプン類、フレーム分散二酸化ケイ素またはシリカを含むことができる。
【0105】
鼻の点滴薬または鼻の噴霧剤は経鼻投与形態として機能する。この関連で、噴霧器または鼻のクリームもしくは軟膏を使用することができるようになる。
【0106】
さらに、鼻の噴霧剤または乾燥粉製剤は、制御用量のエアロゾル同様、本発明の化合物の全身投与にも適している。
【0107】
これらの高圧および/または制御用量のエアロゾルおよび乾燥粉製剤は、吸入および/または吹送される。この型の投与形態はまた確かに、肺または気管支および咽頭への直接的、局所的適用にとって重要である。それにより、乾燥粉組成物は例えば、発明の化合物-ソフトペレットとして、例えば乳糖および/またはブドウ糖のような適当な担体との発明の化合物-ペレット混合物として製剤できる。吸入または吹送のために、鼻、口および/または咽頭の処置に適している共通のアプリケーターが適切である。本発明の化合物はまた、超音波噴霧装置により適用される。エアロゾル噴霧製剤および制御用量エアロゾルの高圧ガスとして、テトラフルオロエタンまたはHFC 134aおよび/またはヘプタフルオロプロパンまたはHFC 227が適しており、ここで、非フッ素化炭化水素または、例えばプロパン、ブタンまたはジメチルエーテルのような常圧、室温で気体の他の高圧ガスが好ましい。制御用量エアロゾルの代わりに、高圧ガスを含まない、主導ポンプシステムを用いることもできる。
【0108】
高圧ガスエアロゾルはまた適切に、例えばミリスチン酸イソプロピル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、トリオレイン酸ソルビタン、レシチンまたは大豆レシチンのような界面活性アジュバントを含むことができる。
【0109】
さらに、医薬組成物が、ある種の動物への投与のために、発明の使用のための核酸を含有する場合、発明の使用のための核酸は、好ましくはその種に由来する。例えば、医薬組成物がヒトに投与される場合、医薬の核酸は好ましくは、可溶型ヒトCD83タンパク質またはその誘導体を含有する。
【0110】
発明の使用のための核酸を、細胞膜透過性および/または核酸の細胞取り込みを増加する薬剤と同時に投与することができる。これらの薬剤の例としては、Antony, T.ら(1999)Biochemistry 38: 10775-10784に例として記載されたポリアミン;Escriou, V.ら(1998)Biochem. Biophys. Acta 1368 (2): 276-288に例として記載された分岐ポリアミン;Guy-Caffey, J. K.ら(1995)J. Biol. Chem. 270 (52): 31391-31396に例として記載されたポリアミノ脂質;Felgner, P. L.ら(1987)PNAS USA84 (21): 7413-7417に記載されたDOTMA、およびBenimetskaya, L.ら(1998)NAR 26 (23): 5310-5317に例として記載された陽イオン性ポルフィリン類をあげることができる。
【0111】
発明の態様(15)によれば、上で定義される可溶型CD83はCD83に対する抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)を調製するのに適している。抗体を当業者に既知の標準的な方法に従い調製することができる。これらの抗体は具体的に、発明の態様(16)のアッセイ法およびキット(17)に対して有用である。前記アッセイ法は具体的には、患者の血清中の増加した可溶型CD83タンパク質と相関する疾患を判断するのに適している、好ましくは患者のB細胞白血病を含む、腫瘍、自己免疫性疾患、ウイルス感染等を判断する方法である。
【0112】
Elisa試験を用いて、可溶型CD83を健常者において約0.25 ng/ml(+/- 0.25 ng/ml)の濃度で検出した。驚いたことに、腫瘍患者では、15 ng/mlまでの濃度を検出した。それゆえ、この試験により腫瘍患者の診断および予後評価が可能である。さらに、自己免疫性疾患、アレルギーおよび、ウイルス、細菌および/または寄生虫感染を患っている患者にも可能である。
【0113】
以下に、発明の各種態様をより詳細に実施例により記載する。しかし、発明は実施例に限定するように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0114】
実施例1:大腸菌におけるヒトの細胞外CD83ドメインの組換え発現
ヒトの全長cDNAクローンを鋳型として用いて、CD83の細胞外ドメインを次のPCRプライマー:
5’-TCCCCGGGAACGCCGGAGGTGAAGGTGGCT-3’(配列番号:5)
5’-AATTAGAATTCTCAAATCTCCGCTCTGTATT-3’(配列番号:6)
によりPCR増幅した(PCR条件:94℃1分を1サイクル、94℃1分の「変性」、64℃1分の「アニーリング」からなる工程を30サイクル、72℃1分の「伸長」)。
【0115】
増幅したcDNA断片を発現ベクターpGEX2T(アマシャム・ファルマシア・バイオテク、フライブルク、ドイツ)のSmaIとEcoRIの部位にクローニングし、プラスミドpGEX2ThCD83extを得た。このプラスミドを大腸菌TOP10F’[F {lacIqTn10 (TetR) mcrA Δ(mrr- hsd RMS- mcrBC) p80 lacZ, ΔM15 ΔlacX74 recA1 deoR araD139 Δ(ara-leu) 7697 galU galK rpsL(StrR) endA1 nupG)(インビトロジェン、フローニンゲン、オランダ)に形質転換した。pGEX2ThCD83extの正しいヌクレオチド配列をシーケンシングにより確かめた。細胞外CD83をアミノ末端に融合のパートナーとしてグルタチオンS-トランスフェラーゼを含有する融合タンパク質として発現した。トロンビン切断認識部位をGSTと細胞外CD83ドメインの間に挿入した(図1参照)。
【0116】
実施例2:組換えヒトCD83extの精製
培養:
上記細菌を一晩培養した培養液を新鮮なLB培地(100 i-ig/ml アンピシリンを添加)で1:10に希釈し、吸光度1.0まで培養した。IPTGを添加し(終濃度1 mM)、培養をさらに1時間行った。細胞を沈殿させ、500 mlの培養あたり10 mlのネイティブ緩衝液(140 mM NaCI, 2.7 mM KCI, 10 mM Na2HPO4, 1.8 mM KH2P04, 2.6 mM MnCl2, 26mM MgCI2, 1μg/ml ロイペプチン, 1pg/ml アプロチニン, 1pg/ml DNAse I, pH7.6)に再懸濁し、50μg/mlのリゾチームを添加した。氷上で15分のインキュベーションの後、溶菌液(ライセート)を20,000 x gで遠心した。
【0117】
吸着工程:
上清40 mlを、予め4カラム容量の結合緩衝液:PBS(リン酸緩衝化生理的食塩水)、pH7.6で平衡化したAKTAエクスプローラー 10システム(アマシャム・ファルマシア・バイオテク、ウプサラ、スウェーデン)のGSTrapの5mlカラムに添加した。カラムを12カラム容量の同一の結合緩衝液で洗浄し、続いて5カラム容量の溶出緩衝液:5 mM 還元グルタチオンを含む50 mM Tris-HCl, pH 8.0を用いて、流速5 ml/minで溶出した。カラムをその後、5カラム容量の2 M NaCl/PBS, pH 7.6および5カラム容量の結合緩衝液で処理した(図2A)。
【0118】
中間精製工程:
GST-CD83extを含む画分を50 mM 1-メチル-ピペラジン(Sigma), 50 mM Bis-Tris(シグマ), 25 mM Tris(シグマ) pH9.5(緩衝液A)に対して透析し、AKTAエクスプローラー10システム(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)の15Q PE 4.6/100陰イオン交換カラムにのせた。タンパク質を3種類の異なる塩の直線濃度勾配:標的濃度までの16カラム容量の10% 緩衝液B(緩衝液A/1 M NaCl);標的濃度までの20カラム容量の50% 緩衝液Bおよび標的濃度までの10カラム容量の100% 緩衝液Bで分離した(図2B参照)。
【0119】
GST-CD83extを含む画分をPBS, pH 7.6に対して透析した。その後、GST-CD83ext融合タンパク質をトロンビン(20 U/ml)とグルタチオン-セファロース・マトリックス上で、22℃16時間インキュベートした。hCD83extタンパク質をGSTと分離するために、この溶液を吸着工程において用いたのと同一の緩衝液条件で、プレパックのグルタチオン-セファロース4Bカラムに充填した。結合緩衝液条件下で、組換えヒトCD83extタンパク質を含む素通り画分を集めた。結果を図2Cに示す。
【0120】
さらなる精製工程:
最終的に、上記の素通り画分をAKTAエクスプローラー 10システム(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)のSuperdex 200 (26/16) prep gradeカラムに溶出緩衝液:PBS, pH 7.6を用い、流速3 ml/minで充填することにより、分取ゲル濾過による分離を行った。
【0121】
正しい画分を銀染色、クーマシー染色および抗CD83(コールター-イムノテック、マルセイユ、フランス)を用いたウェスタンブロット解析で試験した。
【0122】
組換え可溶型CD83の凍結乾燥:
HPLCで精製した組換え可溶型CD83ドメインを1:20希釈したDPBS(バイオウィテーカー・ヨーロッパ)に対して透析した。その後、このタンパク質溶液を液体窒素で凍結し、アルファ1-2 LD凍結乾燥機(クリスト)を用いて4時間凍結乾燥した。タンパク質を、0.22 μmのフィルターを通したddH2Oを用いて、終濃度が1x DPBSになるように再溶解した。
【0123】
SDS Page分析から、凍結乾燥した組換えタンパク質はこの手順後も分解しておらず、非凍結乾燥タンパク質と互換性があることが明らかとなった(図2E)。
【0124】
実施例3:樹状細胞成熟化の阻害、インビトロの細胞塊およびMLR実験(ヒト)
培養:
特に記載しない限り、全ての細胞を、グルタミン(200 μg/ml)(バイオウィテーカー、バルビエ、ベルギー)、ペニシリン/ストレプトマイシン(20 μg/ml)、10 mM HEPES, pH7.5(シグマ-アルドリッチ)および輸血医学部門(エアランゲン、ドイツ)から得られた単一ドナーの熱不活性化(56℃;30分)した1% ヒト血漿を添加したRPMI 1640(バイオウィテーカー、バルビエ、ベルギー)からなる標準培地(1% ヒト血漿培地)を用いて培養した。
【0125】
樹状細胞(DCs)の産生:
PBMCsをバフィーコートからフィコール-ハイパック(アマシャム・ファルマシア・バイオテク、フライブルク、ドイツ)の沈降により分離し、IgGをコートした(コーン分画のγ-グロブリン 10 μg/ml;シグマ-アルドリッチ)100mm培養ディッシュに播き、5% CO2中 37℃でインキュベートした。インキュベーション1時間および7時間後に、非接着細胞画分を回収し、接着細胞をさらに、サイトカインGM-CSF(800 U/ml)とIL-4(500 U/ml)を添加した1% ヒト血漿培地で培養した。終濃度400 U/mlまでのGM-CSFとIL-4(500 U/ml)を添加した新鮮な培地をインキュベーション3日目に添加した。4または5日目に、非接着細胞を回収、計測し、新しいディッシュに0.3-0.5 x 105細胞/mlの密度で移した。最後のDC成熟のために、1% ヒト血漿培地にTNF-α(1.25 ng/ml)、GM-CSF(40 U/ml)、IL-4(200 U/ml)、プロスタグランジンE2(0.5 μg/ml)を添加した(Lechmann, M.ら (2001) J. Exp. Med. 194: 1813-1821)。
【0126】
可溶型hCD83extは未成熟樹状細胞の成熟化を阻害する
DCの表現型に対するhCD83extの影響を解析するために、FACS解析を8日目に行った(図3参照)。DCは、IL-1β、TNF-αおよびPGE2からなる特異的な成熟カクテルを用いることにより完全に成熟化する(図3a)。面白いことに、この成熟カクテルをhCD83ext(4 μg/ml)とともに5日目の未成熟DCに投与し、8日目の最後のFACS解析まで放置すると、これらの細胞では正常に成熟したDCに比べ(図3a)、CD80およびCD83の細胞表面での発現が明らかに低減すること(それぞれ、96%から66%、96%から30%)が明らかとなった(図3c)。それゆえ、hCD83extはDC成熟化の減少(また、CD14陽性細胞の増加)を誘導する。対照的に、7日目に24時間hCD83とインキュベートし、8日目に解析した成熟DCは、CD80発現について最小の影響だけを示し(96%から92%)、一方、CD83の発現はまた減少した(96%から66%)(図3b)。興味深いことに、CD86の発現はいずれの時間点においても、hCD83ext投与により影響されなった。またMHCクラスIおよびIIの発現は、未成熟DC、成熟DCいずれの場合も影響されなかった(Lechmann, M.ら (2001) J. Exp. Med. 194: 1813-1821)(図3参照)。
【0127】
同種MLR:
CD4+およびCD84’T細胞をバフィーコート(回収した非接着細胞画分をノイラミダーゼ処理したヒツジ赤血球とインキュベートし、フィコール濃度勾配遠心により回収し、単一のABドナーのヒト血清を5%添加したRPMIで培養した)から単離し、異なる比率の成熟同種DCsを用いて刺激した。細胞を未処理のまま残す、または、異なる濃度のhCD83extまたは対照としてBSA(バイオラド)とともにインキュベートした。T-細胞(2 x 105/ウェル)とDCsを、96ウェルの細胞培養ディッシュで、単一のABドナーのヒト血清を5%添加したRPMI 200 p,l中で4日間共培養した。細胞を[3H]-チミジン(1 μCi/ウェル;アマシャム・ファルマシア・バイオテク)で、16時間パルスラベルした。培養上清をIH-110ハーベスタ(イノテック、ドティコン、スイス)を用いたガラス繊維フィルターメイト上に回収し、フィルターを1450マイクロプレートカウンターでカウントした(ワラック、トゥルク、フィンランド)(Lechmann, M.ら (2001) J. Exp. Med. 194: 1813-1821)。
【0128】
これらのMLR法の典型的な特徴は、大きなDC-T細胞塊の形成である。1日目にhCD83extを添加すると、DCと増殖T細胞の典型的な細胞塊の形成が強く阻害された(Lechmann, M.ら (2001) J. Exp. Med. 194: 1813-1821)。
【0129】
さらに、可溶型hCD83extで処理した成熟樹状細胞は、そのT細胞を刺激する能力に関して、濃度依存的に阻害される。それゆえ、T細胞はもはや増殖しない(図4参照)。
【0130】
実施例4:インビトロ細胞塊およびMLR実験(マウス)
雄性または雌性のC57/BL6マウスおよびBALB/Cマウス(チャールスリバー、ウィガ、ザルツフェルト、ドイツ)を1ないし4月齢で用いた。
【0131】
骨髄(BM)-DCsの産生:
C57/BL6のBM-DCsの産生を記載どおりに行った(J. Immunol. Methods 223: 77, 1999)。RPMI 1640(ライフテクノロジーズ、カールスルーエ、ドイツ)に100 U/ml ペニシリン(シグマ)、100 μg/ml ストレプトマイシン(シグマ)、2 mM L-グルタミン(シグマ)、50 pg/ml ME(シグマ)、10% 熱不活性化した濾過済みFCS(PAA、コルベ、ドイツ)を添加した。GM-CSFはインキュベーションの0、3、6および8日目に、200 U/ml(PrepoTech/Tebu、ロッキーヒル、NJ)で用いた。
【0132】
同種MLR:
CD4+およびCD8+ T細胞をBALB/Cマウスの鼠径部および間葉リンパ節から単離し、同種MLRに用いた。これらのT-細胞(2 x 205細 胞/ウェル)と9日目のBM-DCsを(異なる比率で)、96ウェルの細胞培養ディッシュで、100 U/ml ペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシン、2 mM L-グルタミン、50 μg/ml ME、10% 熱不活性化した濾過済みFCSを添加したRPMI 1640の200 μl中で3日間共培養した。細胞を[3H]-チミジン(1 μCi/ウェル;アマシャム・ファルマシア・バイオテク)で、16時間パルスラベルした。培養上清をIH-110ハーベスタ(イノテック、ドティコン、スイス)を用いたガラス繊維フィルターメイト上に回収し、フィルターを1450マイクロプレートカウンターでカウントした(ワラック、トゥルク、フィンランド)。
【0133】
マウス樹状細胞とマウスT細胞の間の塊形成は可溶型ヒトhCD83extにより阻害された。さらに、可溶型ヒトhCD83extで処理されたネズミ樹状細胞は、そのT細胞刺激能に関して、濃度依存的に阻害を受けた。それゆえ、T細胞はもはや増殖しない(図5A参照)。
【0134】
凍結乾燥した組換えCD83の生物学的活性:
凍結乾燥したタンパク質の生物学的活性を、上述の混合リンパ球反応解析におけるその阻害活性により測定した。タンパク質は、非凍結乾燥タンパク質同様、投与量依存的に、樹状細胞が介するT-細胞刺激を阻害する(図5B参照)。それゆえ、組換え可溶型CD83は、凍結乾燥後も安定で、その生物学的活性を維持する。同様の効果がヒトのシステムにおいて観察された(データ未出)。
【0135】
実施例5:実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の阻害
EAEは多発性硬化症の標準モデルである。EAEを完全フロイント・アジュバント(CFA)とミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG35-55)を含む50 μlの懸濁液を0日に両方のtightsに皮下注射することによりマウスに誘導した。同日、100 μlの百日咳毒素(2 μg/ml)を腹腔内注射した。2日目に、2回目の百日咳毒素の投与を行った。麻痺の臨床的徴候は10日目と14日目の間に現れた。
【0136】
インビボ・モデルにおけるEAEの阻害:
hCD83extのEAEに伴う麻痺の阻害・抑制能を試験するために、100 μlのhCD83(1 μg/1 μl)を−1日目、1日目と3日目に注射により投与した(図6A参照)。対照として、マウスの一群に100 μlのBSA(1 μg/1 μl)を注射した。第三群のマウスは未処理のまま置いた。三群全てのマウスにEAEを0日に誘導した。驚くことに、hCD83extは殆ど完全にEAEに伴う麻痺を阻害した。
【0137】
EAE阻害の長い持続効果:
EAEを二回誘導しても、CD83処理マウスは保護されている(可溶型CD83の三回の投与がEAEからマウスを保護する)ことが示された。EAEを上述のように誘導した:100 μlのhCD83(または対照としてBSA)を−1日目、1日目と3日目に注射した(i.p.)。EAEを0日にM. tuberculosis濃縮CFAで乳化したMOGペプチドの皮下(s.c.)注射により誘導した。さらに、200 ngの百日咳毒素(Pt)を0日と2日に投与した(i.p.)。hCD83は殆ど完全に麻痺を阻害したが、BSA処理および未処理のマウスは強い疾患症状を発症した(図6B参照;1. EAE、左パネル)。28日目、上述のように、マウスをMOGペプチドで免疫することにより、EAEの二回目の誘導を行った。際立ったことに、可溶型CD83で三回処理したマウスは完全に保護されたが、未処理およびBSA処理マウスは麻痺を起こした(図6B;2. EAE 右パネル)。
【0138】
治療用途におけるEAEの阻害:
EAEを0日にM. tuberculosis濃縮CFAで乳化したMOGペプチドの皮下(s.c.)注射により上述のように誘導した。さらに、200 ngの百日咳毒素(Pt)を0日と2日に投与した(i.p.)。hCD83ext(100 μg/投与)を3日目から1日おきに14回投与した。このような治療設定でさえ、可溶型CD83はEAE症状に強く影響を与えることができた。 BSA(100 μg/投与)を陰性対照として用いた(図6C参照)。
【0139】
実施例6:ヒトCD83に対するモノクローナル抗体の産生
約50 μgのGST-hCD83ext融合タンパク質をLOU/Cラットに腹腔内(ip)および皮下(sc)注射した。2ヶ月の間隔の後、抗原による最後のブーストを融合3日前にipとscで行った。ミエローマ細胞系P3X63-Ag8.653とラット免疫脾臓細胞の融合を標準的な方法に従って行った。ハイブリドーマ上清を、ポリスチレン・マイクロタイタープレートに吸着したGST-hCD83extタンパク質を用いた固相イムノアッセイで試験した。培養上清と1時間インキュベートした後、結合したモノクローナル抗体をペルオキシダーゼ標識したヤギ抗ラットIgG+IgM抗体(ダイアノーヴァ、ハンブルク、ドイツ)と色原体としてのo-フェニレンジアミンを用いたペルオキシダーゼ反応で検出した。無関係のGST融合タンパク質を陰性対照として用いた。モノクローナル抗体の免疫グロブリンイソタイプをビオチン化抗ラット免疫グロブリン(IgG)サブクラス特異的モノクローナル抗体(ATCC、ロックビル、MD)を用いて決定した。CD83-1G11(ラットIgG1)およびCD83-4B5(ラットIgG2a)をウェスタンブロットとFACS解析に用いた。
【0140】
実施例7:患者の可溶型CD83の定量
Elisaテストを用いて、健常者で可溶型CD83を約0.25 ng/ml(+/- 0.25 ng/ml)の濃度で検出した。驚いたことに、腫瘍患者では15 ng/mlまでの濃度を検出した。それゆえ、この試験は、腫瘍患者の診断および予後評価となりうる。
【0141】
実施例8:hCD83extはジスルフィド結合したホモ二量体タンパク質である
HPLC精製組換えヒトCD83extタンパク質(実施例1に記載のようなクローニングおよび発現、実施例2に記載のような精製)をLaemmliのSDS-PAGEシステムを用いて解析した。CD83の可能なオリゴマーの形態を同定するために、2-メルカプトエタノール(ME)を試料緩衝液(2% SDS、5% 2-メルカプトエタノール(ME)、10% グリセロール、0.2 mM EDTA、0.005% ブロモフェノールブルー、62.5 mM Tris pH6,8)から除いた。この還元剤非存在下で、CD83の分子間および分子内ジスルフィド結合は完全に残る。還元および非還元タンパク質試料をともに5分間95℃でインキュベートし、それぞれをSDS-PAGEで比較した(図7参 照)。電気泳動の間、オリゴマー-SDS-タンパク質の移動度は、完全に変性したSDS-ポリペプチド組成物の移動度よりも小さかった。MEなしでより上のバンドは推定サイズのCD83二量体(約25 kDa)であると思われるが、単量体CD83のバンド(約14 kDa)はかすかである。抗CD83抗体であるCD83-1G11(Lechmannら、Protein Expression and Purification 24: 445-452 (2002年3月2日))を用いたウェスタンブロット解析から、タンパク質のバンドの特異性が確認された。その結果、hCD83extはジスルフィド結合したホモ二量体タンパク質である。
【0142】
単離したジスルフィド結合したホモ二量体タンパク質の阻害活性を実施例3および4に記載のMLR実験法で測定した。単離したホモ二量体の阻害活性は実施例3および4に記載のものと同一であることが明らかとなった。
【0143】
実施例9:可溶型CD83の変異体の生成
hCD83ext_mut129_Cys to Ser変異体の大腸菌を用いたクローニング
ヒトCD83の細胞外ドメイン(アミノ酸20-145)の変異体を以下のプライマーセット:センス-pGEX2ThCD83:5'-TCCCCCCGGG AACGCCGGAG GTGAAGGTGGCT-3'およびアンチセンス-CD83extra_mutantCtoS:5'-AATTAGAATT CTCAAATCTC CGCTCTGTAT TTCTTAAAAG TCTCTTCTTT ACGCTGTGCAG GGGAT-3'(MWG-バイオテクAG;それぞれ配列番号:11および12)を用いてPCR増幅した。アンチセンスプライマーに、アミノ酸配列の129番目のシスチジンがセリンになる変異が導入されるようにgからcのヌクレオチド・トランスバージョンが挿入された(図8参照)。PCR条件は以下のとおりであった:5分94℃での最初の変性工程、31サイクル:1分94℃での変性、1分61℃でのアニーリング、2分72℃での伸長;および10分72℃での最後の伸長工程。増幅したcDNA断片を発現ベクターpGEX2T(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)のSmaIとEcoRI部位にサブクローニングした結果、プラスミドpGEX2ThCD83ext_mut129_CtoSを得、これを大腸菌株TOPO10(インビトロジェン)に形質転換した。正しいヌクレオチド配列をシーケンシングにより確認した。
【0144】
hCD83ext_mut129_Cys to Ser変異体タンパク質の大腸菌における組換え発現
変異体hCD83extの発現と精製を上記のように組換え体hCD83extタンパク質について行った:
細菌を一晩培養した培養液を新鮮なLB培地(100 μg/ml アンピシリンを添加)で1:10に希釈した。吸光度0.9で1 mM IPTGを添加し、培養をさらに1時間行った。その後、細胞を沈殿させ、500 mlの培養あたり10 mlのネイティブ緩衝液(140 mM NaCI, 2.7 mM KCI, 10 mM Na2HPO4, 1.8 mM KH2P04, 2.6 mM MnCl2, 26 mM MgCI2, 1 μg/ml ロイペプチン, 1 μg/ml アプロチニン, 1 μg/ml DNAse I, pH 7.6)に再懸濁し、50 μg/mlのリゾチームを添加した。氷上で15分のインキュベーションの後、溶菌液(ライセート)を20000gで遠心した。タンパク質の精製:吸着工程:上清40 mlをAKTAエクスプローラー 10システム(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)のGSTrapの5 mlカラムに添加した。結合緩衝液:PBS(140 mM NaCI, 2.7 mM KCI, 10 mM Na2HPO4, 1.8 mM KH2P04、 pH7.6)。溶出緩衝液:5 mM 還元グルタチオンを含む50 mM Tris-HCl, pH 8.0。流速:5 ml。クロマトグラフィの手順:4CV(カラム容量)の結合緩衝液、40 mlの上清、12CVの結合緩衝液、5CVの溶出緩衝液、5CVの2N NaCI/PBS, pH7.6、5CVの結合緩衝液。その後、GST-hCD83ext融合タンパク質をトロンビン 20U/mlと22℃で16時間インキュベートした。GSTからhCD83extを分離するために、溶出液を吸着工程の緩衝液条件を用いたGSTrap 5 mlカラムに再度充填した。結合緩衝液条件下で、組換えヒトCD83extタンパク質を含む素通りを回収した。
【0145】
精製したhCD83ext_mut129_Cys to Serを精製したhCD83extとSDS-PAGEにより比較した(図9参照)。非還元条件下同様、還元条件下で、CD83の変異体は14 kDaの安定した単量体のバンドを示した。このバンドは、還元条件下で解析したhCD83ext野生型タンパク質に相当する。非還元条件下では、CD83二量体を変異体CD83タンパク質で検出できなかった。すなわち、細胞外CD83ドメインの5番目のカルボキシ末端システインがホモ二量体の生成に必要である。ウェスタンブロット解析によりバンドの特異性を確認した(データは示さない)。
【0146】
実施例3および4に記載したMLR実験での試験によるhCD83ext_mut129_C to Sの阻害活性は実施例3および4で試験した化合物の活性に相当した。
【0147】
実施例10:可溶型CD83は脾臓細胞の増殖を阻害する
脾臓細胞の増殖の阻害:
MOGを用いたマウスの免疫30日後、または60日後、再刺激アッセイのために脾臓を取り出した。細胞を、ペニシリン(10O U/ml、シグマ)、ストレプトマイシン(100 μg/ml、シグマ)、L-グルタミン(2 mM、シグマ)および2-メルカプトエタノール(50 μM、シグマ)を添加したHL-1無血清培地で培養した。MOG-特異的細胞を、96ウェル組織培養プレートの200 μl HL-1/ウェル中で4×105脾臓細胞を異なる濃度のMOGペプチドとインキュベートすることにより解析した。さらに、対照として、4×105脾臓細胞をIL-2(500 U/ml、プロロイキン)で刺激した。陰性対照として、未刺激の培養液が用いられた。72時間後、培養液を[3H]チミジン(0.4 Ci/mmol、アマシャム TRA-20)でパルス標識した。12時間後、チミジンの取り込みをマイクロプレート・カウンター(ワラック)を用いて測定した。
【0148】
hCD83ext処理マウスに由来する脾臓細胞は明らかな増殖の減少を示す(図10A参照)。さらに、対照として、4×105脾臓細胞がIL-2(500 U/ml)で刺激された。また、hCD83ext処理細胞は、IL-2に応答して増殖することが可能であった(図10A、右手挿入図参照)。これらのデータは明らかに、脾臓細胞の増殖はCD83処理マウスで減少したが、IL-2を用いて再刺激されることを示している。すなわち、脾臓細胞は死んでいなかった。
【0149】
EAEを二回誘導されたhCD83ext処理、BSA処理、または未処理のマウスに由来する脾臓細胞の再刺激(図10B参照)。hCD83ext処理マウスは増殖能にわずかな減少を示した。しかし、BSA処理および未処理マウスがIL-2に応答して強く増殖する一方、hCD83ext処理マウスはIL-2に応答して増殖しなくなった(図10B、右手挿入図参照)。
これらのデータは明らかに、脾臓細胞の増殖がCD83処理マウスで減少していることを示す。
【0150】
実施例11:可溶型CD83は脾臓細胞のサイトカイン産生を阻害する
(実施例10に記載したように)異なる濃度のMOGペプチドで刺激した回収脾臓細胞をそのエクスビボでのサイトカイン産生について試験した。培養上清を96時間後に採取し、市販のINF-γ、IL-2、IL-4、IL-10用のサンドイッチELISAキット(BDバイオサイエンシズ)を用いて試験した。(第一のEAE誘導後の)hCD83ext処理細胞では、そのINF-γ産生が強く阻害される(図11A参照)。また、IL-10産生はあきらかに減少する。IL-2およびIL-4産生は格段には影響されない。これらのデータは明らかに、可溶型CD83が処理動物においてサイトカイン産生の減少をもたらすことを示す。
【0151】
脾臓細胞のサイトカイン産生はまた、EAEを二回誘導された動物由来の脾臓細胞で測定された(図11B参照)。INF-γ産生は強く阻害される。IL-10産生についても同様である。IL-2産生はそれほど影響を受けない。BSA処理および未処理細胞でいくらかのIL-4産生があったが、値は非常に低く、検出限界に近いものである。この場合もやはり、これらのデータは明らかに、可溶型CD83がEAEを二回誘導した動物のサイトカイン産生を減少することを示す。
【配列表フリ−テキスト】
【0152】
配列番号:5 CD83extのプライマー
配列番号:6 CD83extのプライマー
配列番号:7 pGEX2ThCD83extの部分配列
配列番号:8 pGEX2ThCD83extの部分配列
配列番号:9 pGEX2ThCD83ext_mut129_CtoSの部分配列
配列番号:10 pGEX2ThCD83ext_mut129_CtoSの部分配列
配列番号:11 pGEX2ThCD83のセンスプライマー
配列番号:12 pGEX2ThCD83のセンスプライマー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬組成物であって、配列番号:2の20から144のアミノ酸残基を含むCD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質(可溶型CD83タンパク質)、その断片、二量体型および/または機能誘導体を含有する、医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物であって、可溶型CD83タンパク質がさらに、
(a)そのC-末端で隣接する細胞内ドメインに由来する一つ以上のアミノ酸残基を有し、好ましくは可溶型CD83タンパク質が配列番号:2の20から145のアミノ酸残基を含有し;および/または、
(b)そのN-末端についた機能配列、好ましくは10アミノ酸残基までの機能配列を有し、最も好ましくは、N-末端で付加的なアミノ酸Gly-Ser-Pro-Glyを有する、医薬組成物。
【請求項3】
CD83タンパク質の可溶型が配列番号:8の1から130のアミノ酸残基を含有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
可溶型CD83タンパク質が二量体、好ましくは、可溶型CD83タンパク質の単量体型の一つ以上のシステインを介して結合するホモ二量体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
可溶型CD83タンパク質が請求項2または3に定義されるようであり、および/または、ホモ二量体が可溶型CD83タンパク質の単量体の5番目のシステインを介して結合している、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
可溶型CD83タンパク質が単量体CD83タンパク質、好ましくは、請求項2または3に定義される可溶性CD83タンパク質である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、
(a)麻痺の治療または予防、好ましくは、進行性多発性硬化症に伴う麻痺の治療または予防に適し、および/または
(b)特定の抗原とともに経皮、皮内、皮下または全身投与に適している、
医薬組成物。
【請求項8】
樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬組成物であって、請求項1から6のいずれか一項に定義されるCD83タンパク質をコードするDNA断片を有する核酸またはベクターを含有する、医薬組成物。
【請求項9】
DNA断片が配列番号:1の58から432のヌクレオチドを含有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
哺乳動物におけるCD83の発現の際のRNA量またはタンパク質量の下方制御に適している、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる前記疾患または病状が、アレルギー、喘息、組織または臓器移植の拒絶、筋無力症のような自己免疫症候群、多発性硬化症、脈管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性大腸炎、強直性脊椎炎(Bechterew病)および全身性エリテマトーデスのようなHLA B27関連自己免疫疾患、乾癬のような皮膚病、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病およびAIDSからなる群から選択される、請求項1または8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
配列番号:2の20から144のアミノ酸を含有する、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質(可溶型CD83タンパク質)、その断片、二量体型および/または機能誘導体。
【請求項13】
請求項12に記載の可溶型CD83タンパク質であって、タンパク質がさらに、
そのN-末端についた機能配列、好ましくは10アミノ酸残基までの機能配列を有し、最も好ましくは、N-末端で付加的なアミノ酸Gly-Ser-Pro-Glyを有する、可溶型CD83タンパク質。
【請求項14】
請求項12または13に記載のCD83タンパク質をコードする核酸または組換え発現ベクターであって、前記核酸または組換え発現ベクターが好ましくは配列番号:7の37から417を含有する、核酸または組換え発現ベクター。
【請求項15】
請求項12または13に記載の可溶型CD83タンパク質、または請求項14に記載の核酸またはベクターを含有する、医薬組成物。
【請求項16】
請求項14に記載の核酸またはベクターで形質転換/トランスフェクトされた原核生物または真核生物の宿主細胞。
【請求項17】
請求項12または13に記載の可溶型CD83タンパク質の製造方法であって、請求項16の形質転換/トランスフェクトされた原核生物または真核生物の宿主細胞を培養する工程を含む、製造方法。
【請求項18】
樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬組成物であって、請求項1〜6または12〜13のいずれか一項に記載の可溶型CD83タンパク質、または請求項8〜9もしくは14のいずれか一項に記載の核酸またはベクターを薬学的に適量含有する、医薬組成物。
【請求項19】
CD83タンパク質ファミリーを構成する単量体可溶型CD83タンパク質であって、1つ以上のシステイン残基が同一のまたは異なる小さいおよび/または極性のアミノ酸残基によって置換されている、タンパク質。
【請求項20】
請求項19に記載の単量体可溶性CD83タンパク質であって、
(i)小さいおよび/または極性のアミノ酸残基がセリン、アラニン、グリシン等から選択され、好ましくはセリンであり;および/または、
(ii)可溶型CD83が、そのC-末端で隣接する細胞内ドメインに由来する1つ以上のアミノ酸残基をさらに有し、好ましくは可溶型CD83タンパク質が配列番号:2の20から145のアミノ酸残基を含有し;および/または、
(iii)単量体可溶性CD83がそのN-末端についた機能配列、好ましくは10アミノ酸残基までの機能配列を有し、最も好ましくは、N-末端で付加的なアミノ酸Gly-Ser-Pro-Glyを有し、および/または、
(iv) 可溶型CD83タンパク質が、配列番号:8の1〜130のアミノ酸残基を含有し、および/または、
(v)一つのシステイン残基、好ましくは5番目のシステイン残基が置換されている、単量体可溶性CD83タンパク質。
【請求項21】
請求項19または20に記載の単量体可溶型CD83タンパク質であって、配列番号:2の20〜144のアミノ酸残基を含有し、129位のシステイン残基がセリン残基で置換されているか、または配列番号:10のアミノ酸残基1〜130を含有する、単量体可溶型CD83タンパク質。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれか一項に記載のCD83タンパク質をコードする核酸または組換え発現ベクター。
【請求項23】
請求項22に記載の核酸またはベクターで形質転換/トランスフェクトされた原核生物または真核生物の宿主細胞。
【請求項24】
請求項19〜21のいずれか一項に記載の可溶型CD83タンパク質の製造方法であって、請求項23に記載の形質転換/トランスフェクトされた原核生物または真核生物の宿主細胞を培養する工程を含む、製造方法。
【請求項25】
請求項19〜21のいずれか一項に記載の可溶型CD83タンパク質、または請求項22に記載の核酸またはベクターを含有する、医薬組成物。
【請求項26】
樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬組成物であって、請求項19〜21のいずれか一項に記載の単量体可溶性CD83または請求項22に記載の核酸もしくはベクターを含有する、医薬組成物。
【請求項27】
請求項26に記載の医薬組成物であって、
前記樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状が、樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる前記疾患または病状がアレルギー、喘息、組織または臓器移植の拒絶、筋無力症のような自己免疫症候群、多発性硬化症、脈管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性大腸炎、強直性脊椎炎(Bechterew病)および全身性エリテマトーデスのようなHLA B27関連自己免疫疾患、乾癬のような皮膚病、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病およびAIDSからなる群から選択される、医薬組成物。
【請求項28】
樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬組成物であって、請求項19〜21のいずれか一項に記載の可溶型CD83タンパク質、または請求項22に記載の核酸またはベクターを薬学的に適量含有する、医薬組成物。
【請求項1】
樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬組成物であって、配列番号:2の20から144のアミノ酸残基を含むCD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質(可溶型CD83タンパク質)、その断片、二量体型および/または機能誘導体を含有する、医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物であって、可溶型CD83タンパク質がさらに、
(a)そのC-末端で隣接する細胞内ドメインに由来する一つ以上のアミノ酸残基を有し、好ましくは可溶型CD83タンパク質が配列番号:2の20から145のアミノ酸残基を含有し;および/または、
(b)そのN-末端についた機能配列、好ましくは10アミノ酸残基までの機能配列を有し、最も好ましくは、N-末端で付加的なアミノ酸Gly-Ser-Pro-Glyを有する、医薬組成物。
【請求項3】
CD83タンパク質の可溶型が配列番号:8の1から130のアミノ酸残基を含有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
可溶型CD83タンパク質が二量体、好ましくは、可溶型CD83タンパク質の単量体型の一つ以上のシステインを介して結合するホモ二量体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
可溶型CD83タンパク質が請求項2または3に定義されるようであり、および/または、ホモ二量体が可溶型CD83タンパク質の単量体の5番目のシステインを介して結合している、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
可溶型CD83タンパク質が単量体CD83タンパク質、好ましくは、請求項2または3に定義される可溶性CD83タンパク質である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、
(a)麻痺の治療または予防、好ましくは、進行性多発性硬化症に伴う麻痺の治療または予防に適し、および/または
(b)特定の抗原とともに経皮、皮内、皮下または全身投与に適している、
医薬組成物。
【請求項8】
樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬組成物であって、請求項1から6のいずれか一項に定義されるCD83タンパク質をコードするDNA断片を有する核酸またはベクターを含有する、医薬組成物。
【請求項9】
DNA断片が配列番号:1の58から432のヌクレオチドを含有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
哺乳動物におけるCD83の発現の際のRNA量またはタンパク質量の下方制御に適している、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる前記疾患または病状が、アレルギー、喘息、組織または臓器移植の拒絶、筋無力症のような自己免疫症候群、多発性硬化症、脈管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性大腸炎、強直性脊椎炎(Bechterew病)および全身性エリテマトーデスのようなHLA B27関連自己免疫疾患、乾癬のような皮膚病、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病およびAIDSからなる群から選択される、請求項1または8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
配列番号:2の20から144のアミノ酸を含有する、CD83ファミリーを構成する可溶型タンパク質(可溶型CD83タンパク質)、その断片、二量体型および/または機能誘導体。
【請求項13】
請求項12に記載の可溶型CD83タンパク質であって、タンパク質がさらに、
そのN-末端についた機能配列、好ましくは10アミノ酸残基までの機能配列を有し、最も好ましくは、N-末端で付加的なアミノ酸Gly-Ser-Pro-Glyを有する、可溶型CD83タンパク質。
【請求項14】
請求項12または13に記載のCD83タンパク質をコードする核酸または組換え発現ベクターであって、前記核酸または組換え発現ベクターが好ましくは配列番号:7の37から417を含有する、核酸または組換え発現ベクター。
【請求項15】
請求項12または13に記載の可溶型CD83タンパク質、または請求項14に記載の核酸またはベクターを含有する、医薬組成物。
【請求項16】
請求項14に記載の核酸またはベクターで形質転換/トランスフェクトされた原核生物または真核生物の宿主細胞。
【請求項17】
請求項12または13に記載の可溶型CD83タンパク質の製造方法であって、請求項16の形質転換/トランスフェクトされた原核生物または真核生物の宿主細胞を培養する工程を含む、製造方法。
【請求項18】
樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬組成物であって、請求項1〜6または12〜13のいずれか一項に記載の可溶型CD83タンパク質、または請求項8〜9もしくは14のいずれか一項に記載の核酸またはベクターを薬学的に適量含有する、医薬組成物。
【請求項19】
CD83タンパク質ファミリーを構成する単量体可溶型CD83タンパク質であって、1つ以上のシステイン残基が同一のまたは異なる小さいおよび/または極性のアミノ酸残基によって置換されている、タンパク質。
【請求項20】
請求項19に記載の単量体可溶性CD83タンパク質であって、
(i)小さいおよび/または極性のアミノ酸残基がセリン、アラニン、グリシン等から選択され、好ましくはセリンであり;および/または、
(ii)可溶型CD83が、そのC-末端で隣接する細胞内ドメインに由来する1つ以上のアミノ酸残基をさらに有し、好ましくは可溶型CD83タンパク質が配列番号:2の20から145のアミノ酸残基を含有し;および/または、
(iii)単量体可溶性CD83がそのN-末端についた機能配列、好ましくは10アミノ酸残基までの機能配列を有し、最も好ましくは、N-末端で付加的なアミノ酸Gly-Ser-Pro-Glyを有し、および/または、
(iv) 可溶型CD83タンパク質が、配列番号:8の1〜130のアミノ酸残基を含有し、および/または、
(v)一つのシステイン残基、好ましくは5番目のシステイン残基が置換されている、単量体可溶性CD83タンパク質。
【請求項21】
請求項19または20に記載の単量体可溶型CD83タンパク質であって、配列番号:2の20〜144のアミノ酸残基を含有し、129位のシステイン残基がセリン残基で置換されているか、または配列番号:10のアミノ酸残基1〜130を含有する、単量体可溶型CD83タンパク質。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれか一項に記載のCD83タンパク質をコードする核酸または組換え発現ベクター。
【請求項23】
請求項22に記載の核酸またはベクターで形質転換/トランスフェクトされた原核生物または真核生物の宿主細胞。
【請求項24】
請求項19〜21のいずれか一項に記載の可溶型CD83タンパク質の製造方法であって、請求項23に記載の形質転換/トランスフェクトされた原核生物または真核生物の宿主細胞を培養する工程を含む、製造方法。
【請求項25】
請求項19〜21のいずれか一項に記載の可溶型CD83タンパク質、または請求項22に記載の核酸またはベクターを含有する、医薬組成物。
【請求項26】
樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬組成物であって、請求項19〜21のいずれか一項に記載の単量体可溶性CD83または請求項22に記載の核酸もしくはベクターを含有する、医薬組成物。
【請求項27】
請求項26に記載の医薬組成物であって、
前記樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状が、樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる前記疾患または病状がアレルギー、喘息、組織または臓器移植の拒絶、筋無力症のような自己免疫症候群、多発性硬化症、脈管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性大腸炎、強直性脊椎炎(Bechterew病)および全身性エリテマトーデスのようなHLA B27関連自己免疫疾患、乾癬のような皮膚病、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病およびAIDSからなる群から選択される、医薬組成物。
【請求項28】
樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関連する細胞免疫応答の機能不全または好ましくない機能により引き起こされる疾患または病状の治療または予防のための医薬組成物であって、請求項19〜21のいずれか一項に記載の可溶型CD83タンパク質、または請求項22に記載の核酸またはベクターを薬学的に適量含有する、医薬組成物。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【公開番号】特開2011−144177(P2011−144177A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23799(P2011−23799)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【分割の表示】特願2004−552655(P2004−552655)の分割
【原出願日】平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願人】(505182915)アルゴス セラピューティクス,インコーポレイティド (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【分割の表示】特願2004−552655(P2004−552655)の分割
【原出願日】平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願人】(505182915)アルゴス セラピューティクス,インコーポレイティド (8)
【Fターム(参考)】
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