疾患の観察方法
【課題】本発明は、疾患、特に中枢神経疾患、中でも髄膜炎、脳炎、くも膜下出血の鑑別に有用な情報を提供するための疾患の観察方法および、そのための自動分析装置に関するものである。
【解決手段】酸を含む染色液を用いて体液試料(髄液)を染色し、透光板を用いて染色した試料を撮像し、試料中に含まれる有形成分を形態に基づいて分類し、得られた画像および分類結果を記憶することで、簡便かつ迅速に疾患の鑑別に必要な情報を取得しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【解決手段】酸を含む染色液を用いて体液試料(髄液)を染色し、透光板を用いて染色した試料を撮像し、試料中に含まれる有形成分を形態に基づいて分類し、得られた画像および分類結果を記憶することで、簡便かつ迅速に疾患の鑑別に必要な情報を取得しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患、特に中枢神経疾患、中でも髄膜炎、脳炎、くも膜下出血の鑑別に有用な情報を提供するための疾患の観察方法および、そのための自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳脊髄液(以下、髄液またはCSF)は脳室の脈絡叢で産生され、脳室、脊椎管内ならびにくも膜下腔を満たして循環し、中枢神経系の保護、恒常性の維持、老廃物の処理などの役割を担っている。髄液は中枢神経系に直に接して存在することから、そのさまざまな病態を反映する。CTやMRなどの画像診断がめざましく発展をした現在でも、脳脊髄液検査は中枢神経疾患診断において、欠くことのできない検査法のひとつとされている。
【0003】
髄液検査の適応がある疾患には、中枢神経系感染症(髄膜炎、脳炎)をはじめ、くも膜下出血、多発性硬化症、脳ヘルニア、脊髄疾患、ギラン・バレー症候群、ベーチェット症候群、サルコイドーシス、脳腫瘍、髄膜白血病やその他の転移性腫瘍などがある。
髄液検査項目としては細胞数算定・細胞分類をはじめとし、糖、タンパク、各種酵素、各種抗原・抗体の検出、免疫グロブリンの測定や微生物学的検索、細胞塗沫標本による形態学的検索などが挙げられる。ことに髄液細胞数算定と分類は、迅速な治療を必要とする各種中枢神経系感染症の鑑別診断および治療効果の判定において、きわめて重要な検査法である。
【0004】
髄液の採取方法としては、腰椎穿刺、後頭下穿刺(大槽穿刺)、頚椎側方穿刺、脳室穿刺(脳室ドレナージ)の4つがある。髄液採取は通常、腰椎穿刺で行われ、採取時に液圧測定、クエッケンシュテット試験が施行される。髄液採取が原因となって、感染や脳ヘルニアを発症する危険性もあるので、採取にあたっては、禁忌と合併症を常に考慮する必要がある。
【0005】
腰椎穿刺では、最初に流出する髄液中により多くの細胞が含まれているので、一般検査では原則として最初の部分を検体とする。腰椎穿刺による髄液採取は容易にくりかえし行うことはできず、また一度に採取できる量も限られている。また、微生物学的検査を施行する場合には、雑菌による汚染を避ける必要があるため、別の滅菌容器に採取する。
【0006】
いったん採取された髄液中に細胞変性はきわめて早く、冷蔵保存しても防ぐことは難しい。これは、髄液中にはタンパク量が少ないことと、髄液の浸透圧の低さに起因している。
したがって、採取から検査までに時間がかかればかかるほど、細胞数も細胞分画も変化することになる。細胞検査は少なくとも採取後1時間以内に行う必要があり、髄液採取時間および検査実施時間を厳密に管理しなくてはならない。
【0007】
髄液検査において、重要な細胞検査として細胞数算定と細胞分類があげられる。
細胞数算定は、髄膜炎、脳炎をはじめとする各種中枢神経系感染症の診断ならびに治療効果の推定を行う上で、非常に重要である。そのため、高い精度が要求され、使用する器具、手技には細心の注意が必要となる。
【0008】
以下に、一般的に実施されている細胞数算定の工程を述べる。
細胞数算定では、まず髄液を10/9倍に希釈する。希釈方法としては、マイクロピペット法、メランジュール法があるが、髄液の必要量が少なくてすむこと、染色液の逆流による失敗がないことなどから、マイクロピペット法が推奨されている。
マイクロピペットで採取した髄液180μlを染色液20μlと混合し、フックス・ローゼンタル計算盤に注入後、3〜5分放置し、通常200倍で鏡検し、全16区画を算定する。結果値は整数とし、単位は細胞数表示の標準単位である/μlを用いることが望ましいとされる。また、同時に単核球と多核球に分類する。
【0009】
細胞分類の第一の目的は早急な治療を必要とする細菌性髄膜炎の早期発見である。すなわち、細菌性髄膜炎で著明に増加する好中球を計算盤上で多核球としてとらえ、その割合を細胞増多の程度とともに考え合わせることで、他の髄膜炎を区別しようというものである。
【0010】
髄液中には末梢血と同様にあらゆる種類の白血球が出現するが、計算盤上で分類可能なものは好中球、リンパ球、単球、組織球の4種である。これらは、それぞれに出現意義を持つが、計算盤上では単核球と多核球の2種に分類する。前述した細胞分類の臨床的意義から、リンパ球、単球、組織球を単核球としてまとめ、好中球および好酸球、好塩基球を多核球としてまとめる。
【0011】
その他、髄液検査では糖、タンパク、各種酵素、各種抗原・抗体の検出、免疫グロブリンの測定や微生物学的検索も行う必要があることから、限られた採取量の試料を無駄なく効率よく測定するために、検査を実施する臨床検査技師は各種検査に十分習熟していることが求められる。
【0012】
しかし、髄液検査における細胞数算定は作業のすべてを用手によって実施しており、検査技師の大きな負担になっているほか、作業が用手であるため、結果のばらつきが大きく、判断には当然個人差があり、正確性に問題が指摘されていた。
また、前述の計算盤を用いる手法は、髄液中の細胞成分の増多状態と細胞組成の概ねを知る上では有効であるが、形態学的観察に限界があることは否めない。この場合、髄液細胞塗沫標本を作製することで、詳細な観察が可能となるが、さらに操作が煩雑となり、手間がかかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述のとおり、用手による細胞数算定には、操作が煩雑で手間がかかり、得られる結果の正確性にも問題が指摘されている。
また、髄液検体がきわめて不安定であることから、採取後速やかに検査を行う必要がある。しかし、日中の担当する臨床検査技師の勤務時間内であれば問題はないが、夜間や緊急に検査を実施しなければならない事態においては、適切な対応を取れない可能性は十分に考えうる。
【0014】
これらの問題を解決するため、従来は添加剤による髄液検体の保存安定性の向上(特許文献1)や既存のフローサイトメトリによる血液分析システムを利用した髄液検査の自動化が試みられてきた。
しかし、髄液検体への添加剤が分析結果に与える影響が必ずしも保証されていないことや、一方、フローサイトメトリによる自動分析では、用手法よりも多量の検体が必要であり、他検体からのキャリーオーバー等の問題が指摘されている。
【0015】
本願発明者らも、特許文献2において、髄液分析装置および髄液分析方法を報告したが、従来の用手法に比べると、有形成分の染色性が弱く、十分な効果が得られていたとは言い難い。
【特許文献1】特許3759512号
【特許文献2】特開2004−132787
【課題を解決するための手段】
【0016】
鋭意検討の結果、酸および核染色可能な色素を含む染色液を用いて試料(髄液)を染色し、透光板を用いて染色した試料を撮像し、試料中に含まれる有形成分を形態に基づいて分類し、撮像した画像および分類結果を記憶することで、簡便かつ迅速に疾患の鑑別に必要な体液試料の観察を実施しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[項1]
患者より採取された体液試料を試料とし、
(1)5〜40%(重量%)の酸および核染色が可能な色素を含む染色液と試料を1:1〜1:9の比で混合し、試料を染色する工程と、
(2)染色した試料を、撮影した個別画像の撮影視野が重複しないように透光板を用いて撮像する工程と、
(3)撮像した画像を用いて試料中に含まれる有形成分の形態による分類を行う工程と、
(4)撮像した画像および有形成分の分類結果を記憶する工程と、
を少なくとも有し、前記工程の少なくとも一部を、自動分析装置を用いて行うことを特徴とする疾患の観察方法。
[項2]
透光板を用いて撮像した画像を、分析者により個別試料ごと任意の枚数かさねあわせる手段を有する自動分析装置を用いることを特徴とする項1記載の疾患の観察方法。
[項3]
透光板を用いて撮像した画像を用いて、試料中に含まれる白血球数を計数し、および/または白血球が単核球であるか多核球であるかを識別する手段を有する自動分析装置を用いることを特徴とする項1または2記載の疾患の観察方法。
[項5]
疾患が中枢疾患であることを特徴とする項1〜3いずれかに記載の疾患の観察方法。
[項5]
中枢疾患が髄膜炎、脳炎、くも膜下出血より成る群から選択される項4に記載の疾患の観察方法。
[項6]
項1〜5のいずれかの方法に用いるための自動分析装置であって、以下の(1)〜(4)のいずれか1つ以上の工程を行う能力を有する自動分析装置。
(1)5〜40%(重量%)(本願では、以下特に断らない限り「%」は「重量%」を示す。)の酸および核染色が可能な色素を含む染色液と試料を1:1〜1:9の比で混合し、試料を染色する工程
(2)染色した試料を、撮影した個別画像の撮影視野が重複しないように透光板を用いて撮像する工程
(3)撮像した画像を用いて試料中に含まれる有形成分の形態による分類を行う工程と、
(4)撮像した画像および有形成分の分類結果を記憶する工程
[項7]
対物レンズ1,合焦検出部2,駆動部3,自動合焦部4,制御部5,判定部6,撮像部7,分類部8,記憶部9,出力部10,ステージ11,光源12を備え、ステージ11上には、プレパラート20が載置されており、プレパラート20は、スライドガラス21とカバーガラス22とから構成されている、項6の自動分析装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる疾患鑑別方法は、酸および核染色可能な色素を含む染色液を用いて体液試料(髄液)を染色し、透光板を用いて染色した試料を撮像し、試料中に含まれる有形成分を形態に基づいて分類し、撮像した画像および分類結果を記憶する工程を、少なくとも有し、また前記工程の少なくとも一部は分析装置による自動化が容易である。それゆえ、本発明の疾患鑑別方法は簡便かつ迅速に髄液検査を実施し、疾患、特に中枢疾患の鑑別に必要な体液試料の観察を容易に行えるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態について説明すると、以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
本発明は、患者より採取された体液試料の分析に用いられる。特に、腰椎穿刺、後頭下穿刺、頚椎側方穿刺、脳室穿刺で採取された髄液の分析に有効に用いられる。中でも、細胞数、細胞分類の報告を必要とする中枢疾患の鑑別において、試料中の有形成分の画像を取得可能な本発明は、有効な手段と考えられる。
【0020】
本発明において分析の対象となる有形成分は、被検液中に分散ないし懸濁しているものであれば特に限定されるものではない。髄液の場合では、リンパ球、単球、組織球等の単核球、好中球などの多核(分葉核)球等が分析対象となる有形成分として挙げられる。
【0021】
本発明の疾患の観察方法は、以下の工程を有し、工程の少なくとも一部または全部を自動分析装置を用いて、自動化することが可能である。
(1)5〜40%の酸および核染色が可能な色素を含む染色液と試料を1:1〜1:9の比で混合し、試料を染色する工程
(2)染色した試料を、撮影した個別画像の撮影視野が重複しないように透光板を用いて撮像する工程
(3)撮像した画像を用いて試料中に含まれる有形成分の形態による分類を行う工程
(4)撮像した画像および有形成分の分類結果を記憶する工程。
【0022】
工程(1)
本発明の方法においては、5〜40%の酸および核染色が可能な色素を含む染色液と試料を1:1〜1:9の比で混合し、試料を染色する工程を行うことを特徴とする。
染色液に含まれる酸および核染色可能な色素は特に限定されない。酸は無機酸、有機酸のいずれにも限定されないが、有機酸が好ましく、好ましくは酢酸、クエン酸、より好ましくは酢酸が好ましく、酢酸のかわりに氷酢酸を用いてもよい。色素は核染色可能であれば特に限定されないが、塩基性色素が好ましく、特にフクシンが好ましい。色素の添加量は特に限定されないが、好ましくは0.05〜10%、より好ましくは0.1〜5%が好ましい。染色液の組成は前述の酸と色素を含んでいればよく、一般に入手可能な市販の染色液、例えばサムソン液を用いてもよい。また、市販のサムソン液で十分な染色能が得られない場合は、フクシンを追添してもよく、最終的なフクシンの含有量は0.2〜2%の範囲であることが好ましい。
染色液と試料の混合比は1:1〜1:9の範囲であればよく、好ましくは1:1〜1.5がよく、さらに好ましくは1:3〜1:4がよい。また、検査に用いる試料は100〜200μl、好ましくは150μl以下がよい。
【0023】
本発明の方法においては、透光板上に試料を載置することを特徴とする。透光板は透光性を有し、試料を載置可能なものであれば良く、例えば、スライドガラス等が挙げられる。スライドガラスは一回使い切り(ディスポーザブル)であるため、前検体のキャリーオーバーや染色剤による汚染の可能性がゼロであり、信頼性の高い測定結果を提供することができる。透光板の材料は、プラスチック(合成樹脂)、ガラスなど透光性を有するものであれば、特に限定されるものではない。なお、プラスチックの場合は、必要に応じて親水性を向上させるための化学的および/または物理的処理を施すのが良い。
【0024】
透光板に載置された試料は、被覆透光板で被覆されていても良い。被覆透光板としては、例えばカバーガラスが挙げられる。被覆透光板の材料としては、上記した透光板と同様のものが挙げられるが、特に限定されるものではない。図1は、被覆透光板となるカバーガラスと、透光板となるスライドガラスとが一体的に形成された、カバーガラス一体型スライドガラス1の斜視図である。図1(a)ではスライドガラス部2上に載置されたカバーガラス部3の対向する二辺が接着剤4などで封止され、残りの対向する二辺が開放状態になっている。図1(b)はスライドガラス部2上に載置されたカバーガラス部3の三辺が接着剤4などで封止され、残りの一辺が開放状態になっている。被検液を開放された一辺から分注すると、毛細管現象によりスライドガラス部2とカバーガラス部3との間隙に被検液が注入される。即ち、透光板であるスライドガラス部2に前記染色液で染色した試料が載置される。このようにカバーガラス一体型スライドガラス1を用いれば、簡単に所定量を正確に注入させることができ、カバーガラスをセットする煩雑な標本作製工程を省力化することができる。
【0025】
工程(2)
本発明の方法は、染色した試料を、撮影した個別画像の撮影視野が重複しないように透光板を用いて撮像する工程を行うことを特徴とする。
透光板上の試料を撮像するための撮像ステージは、透光板を載置し得るものであれば良く、特に限定されないが、撮影した個別画像の撮影視野が重複しないように撮像位置を変更できるように移動可能なものであるのが好ましい。移動は手動で行っても良いが、例えばサーボモータ、ステッピングモータやリニアモータ等を使用して機械的に行うのが好ましい。
撮像する視野数は特に限定されないが、少なくとも25視野以上、より好ましくは50視野以上であることが好ましい。
【0026】
撮像手段としては、デジタルカメラ、CCDカラービデオカメラ等が挙げられる。また、撮像手段には、有形成分の標本像の焦点を自動で合わせる機能(オートフォーカス機能)を付加しておくのが好ましい。拡大手段は、撮像前の標本像を光学的に拡大するものであっても良いし、撮像された標本像の画像をデジタル処理等して拡大するものであっても良い。具体的には、前記カメラに取り付けられるズームレンズや対物レンズ等が挙げられる。
【0027】
試料中の有形成分としては、8〜10μm程度のリンパ球、20μmを超えることのある組織球などまでがある。従って、拡大手段の有する拡大倍率は、一種類のみとするよりも、二種類以上とするのが好ましい。この場合、小型の成分から大型の成分までをより精度よく解析することができる。また、拡大倍率は連続的に変化するものであっても良い。拡大倍率は成分に合わせて適宜決定すれば良い。
【0028】
工程(3)
本発明の方法は、撮像した画像を用いて試料中に含まれる有形成分の形態による分類を行う工程を有することを特徴とする。
前記工程は、分析者である技師が目視で行ってもよいが、有形成分の識別手段を有する分析装置を用いてもよい。識別手段とは、撮像された画像中の有形成分をその形態等に基づいて分類し、識別するものである。識別手段には、予め設定された視野分の全識別結果から分析結果を算出する機能と、分析結果を出力器から出力する機能とを付加するのが好ましい。なお、ここでいう予め設定された視野分とは、撮像する視野(画像)数のことをいう。また、識別手段には撮像された画像を一旦記憶しておくためのメモリ等を備えておくのが好ましい。
【0029】
識別手段としては、例えば、上記の識別を行うようにプログラミングされたコンピュータ、論理回路で構成された識別装置等が挙げられる。このうち、識別手段としてコンピュータを用いれば、各工程の動作、画像処理、記憶、計算、出力等すべての制御がソフト上で行えるようになり好ましい。
【0030】
識別手段は学習機能を有しているのが好ましい。学習認識機能を有することによって、正確性、精密性の高い測定結果が提供される。識別手段は、(1)赤、緑、青を明度と色度とに分離する色抽出の範囲指定、(2)穴埋め、線分の書き込み、画像の切り離しからなる二値画像処理の範囲指定、(3)画像の特徴量(面積、円形度係数、円相当径、周囲長、絶対最大長、フェレ径X/Y比、最大弦長X/Y比、短軸長さ/長軸長さ比など)の範囲指定を学習し、識別を行うことができる。
【0031】
工程(4)
また、本発明の方法には、撮像した画像および撮像された画像を処理して各種成分に識別した結果を記憶する工程が含まれる。
記憶しておく手段としては、記憶容量の大きい光磁気ディスク、固定ディスク、デジタルビデオディスク、CD−R等の補助記憶装置が挙げられる。
なお、前記工程により、本発明の方法では、従来の用手法と異なり特別な処理を必要とすることなく試料中の有形成分の画像を残し、随時参照することが可能である。
【0032】
本発明の方法は、撮像した個別画像を任意の枚数かさねあわせる手段を有していても良く、また、そのような手段を有する自動分析装置を用いても良い。
すなわち、個別画像を複数重ね合わせることで、個別画像に分散している有形成分を集積することが可能となり、体液試料を濃縮した場合と同じ効果を得ることができる。
前述の工程は、特に採取できる髄液量が限られている髄液検査において、濃縮されていない試料では鑑別困難な症例において、特に有効である。また逆に、著しく試料中の有形成分すなわち白血球の増多が認められる場合には、前述の工程を行わず個別画像で、有形成分の分類を行うことが望ましい。
【0033】
また、本発明の方法は、透光板を用いて撮像した画像を用いて、試料中に含まれる白血球数を計数し、および/または白血球が単核球であるか多核球であるかを識別する手段を有していても良く、また、そのような手段を有する自動分析装置を用いても良い。
前述の自動分析装置により、容易に試料中に含まれる単核球と多核球の比率を算出できる。結果値は細胞数および/または各々の%で表示できることが望ましい。
【0034】
本発明の方法により、容易に疾患の鑑別に必要な体液試料の観察が可能となるが、特に中枢疾患、中でも、髄膜炎、脳炎、くも膜下出血のいずれであるかを鑑別する際に有効である。
すなわち、一般的に、撮像した画像においてリンパ球の増加はウィルス感染症ならびに慢性炎症を示し、単球の増加は髄膜の炎症、好中球の増加は細菌感染症ならびに急性炎症を示す。また、単球および組織球の増加はくも膜下出血の所見として認められる。
さらに、本発明の方法では、試料中の有形成分の画像を記憶することが可能であることから、各種病原性微生物、脳性ヘルニアに由来する脳組織細胞、原発性脳腫瘍細胞、転移性腫瘍細胞などを検出可能であり、また画像を確認することで髄液採取時に医原的に混在する臨床的意義に乏しい細胞成分を識別できることから、検査の正確性の向上に有効である。
なお本発明は、以上例示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術範囲に含まれる。
【0035】
本発明の自動分析装置は、上記いずれかの方法に用いるための自動分析装置であって、以下の(1)〜(4)のいずれか1つ以上の工程を行う能力を有する自動分析装置である。
(1)5〜40%の酸および核染色が可能な色素を含む染色液と試料を1:1〜1:9の比で混合し、試料を染色する工程
(2)染色した試料を、撮影した個別画像の撮影視野が重複しないように透光板を用いて撮像する工程
(3)撮像した画像を用いて試料中に含まれる有形成分の形態による分類を行う工程と、
(4)撮像した画像および有形成分の分類結果を記憶する工程
【実施例】
【0036】
本発明について、実施例および図2〜図14に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
【0037】
〔実施例1:酸を含む染色液を用いた疾患の鑑別〕
(1)染色工程
患者より採取された髄液サンプル(以下、試料)112.5μlと染色液(30%酢酸、0.2%塩基性フクシン)37.5μlを混合し、約2分後に33μlを分取して図1の透光板(T−PLATE:東洋紡績)に分注した。染色された試料が透光板のスライドガラス部全面に展開されたことを確認してから、撮像工程へと進んだ。
(2)撮像工程
撮像は尿中有形成分分析装置U−SCANNERII(東洋紡績)を用いて行った。検体を分注した透光板を撮像ステージにセットし、CCDカメラにて計50視野分の検体画像を取得した。取得した画像は光磁気ディスクまたは固定ディスクに記憶させた。
(3)分類
撮像した画像をディスプレイに表示させ、細胞成分の計数および単核球/多核球の分類を行った。画像はU−SCANNERIIに内蔵されている画像レビューシステムを用いて、11枚分の画像を重ね合わせた条件で表示させた。その図を図2〜5に示す。画像は1検体あたり、4枚ずつ表示させ、分類を実施した。
(4)用手法との比較
図2〜5の画像より分類・計数した細胞成分の結果を表1に示す。試料中の白血球数の増加および多核球優位の傾向から、細菌性髄膜炎がうたがわれた。
用手法による検査結果を照合したところ、同様に細菌性髄膜炎を示唆する結果が得られており、本発明の方法によって、疾患の鑑別が可能であることを確認した。
【0038】
【表1】
【0039】
〔実施例2:酸を含まない染色液を用いた疾患の鑑別〕
(1)染色工程
患者より採取された髄液サンプル(以下、試料)112.5μlと酸を含まない染色液(U−SCANNER専用染色液:東洋紡績)37.5μlを混合し、約2分後に33μlを分取して図1の透光板(T−PLATE:東洋紡績)に分注した。染色された試料が透光板のスライドガラス部全面に展開されたことを確認してから、撮像工程へと進んだ。
(2)撮像工程
撮像は尿中有形成分分析装置U−SCANNERII(東洋紡績)を用いて行った。検体を分注した透光板を撮像ステージにセットし、CCDカメラにて計50視野分の検体画像を取得した。取得した画像は光磁気ディスクまたは固定ディスクに記憶させた。
(3)分類
撮像した画像をディスプレイに表示させ、細胞成分の計数および単核球/多核球の分類を行った。画像はU−SCANNERIIに内蔵されている画像レビューシステムを用いて、11枚分の画像を重ね合わせた条件で表示させた。その図を図6〜9に示す。画像は1検体あたり、4枚ずつ表示させ、分類を実施した。
(4)用手法との比較
図6〜9の画像では、赤血球と推測される細胞成分の混入が認められ、白血球数を計数することは困難であった。また、核の染色が不明瞭であるため、単核球あるいは多核球の識別・分類を行うことはできなかった。
【0040】
〔実施例3:自動分析装置を用いた、本発明に係る中枢疾患の鑑別方法の実施〕
以下に説明する自動分析装置を用いて〔実施例1〕〔実施例2〕と同様にして疾患の鑑別を行った。
【0041】
図14に示す自動分析装置を用いて、〔実施例1〕〔実施例2〕と同様にして髄液検査を行った。
〔実施例1〕と同様に酸を含む染色液を用いて自動分析装置で撮像した結果を図10〜13に示す。撮像した画像を用いて〔実施例1〕と同様に細胞成分の計数および単核球/多核球の分類を行った結果を表2に示す。本発明の自動分析装置を用いた結果からは、試料中の白血球数の増加および多核球優位の傾向から、細菌性髄膜炎がうたがわれた。
一方、用手法による検査結果では、多核球優位の傾向は見られず、細胞数自体も正常髄液と同等レベルに減少していた。
用手法の結果が、試料を採取した患者の臨床症状と一致しないことから原因を検討したところ、用手法では担当者が不在であったために検体が放置され、劣化した状態で髄液検査が行われたことが判明した。
しかし、本発明の技術を使用した自動分析装置による鑑別方法では、試料を自動分析装置に設置するのみで、検査が実施されるため、担当者以外の技師でも対応可能であり、新鮮な髄液試料を用いた正確な検査結果を得ることができた。
【0042】
【表2】
【0043】
以下、図面を用いて、自動分析装置について詳細に例示する。
図14は、本発明に係る中枢疾患の鑑別方法で用いた自動分析装置の一実施形態の構成を模式的に示す図である。同図に示すように、分析装置100は、対物レンズ1,合焦検出部2,駆動部3,自動合焦部4,制御部5,判定部6,撮像部7,分類部8,記憶部9,出力部10,ステージ11,光源12を備えている。ステージ11上には、プレパラート20が載置されている。なお、図1に示すように、プレパラート20は、スライドガラス21とカバーガラス22とから構成されており、これらの間に試料23が保持されている。
【0044】
対物レンズ1は、ステージ11上の試料23を観察するための対物レンズであればよく、その具体的な構成は特に限定されず、従来公知のレンズを用いることができる。
【0045】
合焦検出部2は、対物レンズ1の合焦状態、特に、試料23に対する合焦状態を検出する合焦検出手段として機能するものである。合焦状態を検出する手法については、特に限
定されるものではなく、従来公知の合焦状態の検出手法を利用することができる。例えば、合焦検出部2は、自動合焦動作中における輝度レベルの分散値を評価値として決め、この評価値が最小値となるときを検出し、その最小値となったときの対物レンズ1の位置が合焦状態であると判断するように構成できる。なお、合焦状態の検出手法については、後述の自動合焦部4についての説明時でも詳説する。
【0046】
駆動部3は、対物レンズ1と試料23と相対位置を3次元方向に変動させる駆動手段として機能するものである。換言すれば、ステージ11と対物レンズ1との間の相対位置を3次元方向に変動させる駆動手段として機能するものともいえる。かかる駆動部3としては、従来公知の駆動手段を好適に利用可能であり、例えば、サーボモーター、ステッピングモーターやリニアモーターなど機械的に駆動するものを挙げることができる。
【0047】
また、本実施の形態では、駆動部3は、ステージ11を移動させることにより、対物レンズ1と試料23との相対位置を変動させる構成であるが、これに限定されるものではない。例えば、対物レンズ1を駆動させる構成であってもよいし、対物レンズ1とステージ11の両方を駆動させてもよい。ただし、構成の容易さ、駆動の安定性等の観点から、ステージ11を駆動させる構成が好ましい。
【0048】
また、本明細書では、説明の便宜上、図14に示すように、対物レンズ1と試料23とを結ぶ鉛直方向をz軸方向とし、プレパラート20に平行な水平方向をxy軸方向とする。
【0049】
自動合焦部4は、合焦検出部2の検出結果に基づいて、駆動部3を制御して対物レンズ1を自動的に合焦させる自動合焦手段として機能するものである。自動合焦部4が行う自動合焦動作の方式は、従来公知の自動合焦方式を利用することができ、その具体的な構成については特に限定されるものではない。例えば、アクティブオートフォーカス方式、パッシブオートフォーカス方式の両方を利用できるが、好ましくは、パッシブオートフォーカス方式である。
【0050】
また、上記パッシブオートフォーカス方式を用いた場合における、具体的な合焦状態の検出方法としては、(i)撮影対象の光強度を電気信号に変換して、電気信号の変化を利用して合焦点を検出する方法、(ii)位相差検出を行い、位相差解析を利用して合焦点を検出する方法、(iii)光源とは別に補助発光装置を内蔵し撮影対象からの反射光を測定することで距離換算し、算出された距離に基づいて合焦点を検出する方法などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、撮影対象の光強度を電気信号に変換して、電気信号の変化を利用して合焦点を検出する方法である。さらにいえば、撮影対象となる画像撮影用の撮像素子の光強度をコントラストとしてとらえ、コントラストの高周波成分の検出で行う方式、いわゆるコントラスト方式であることが好ましい。すなわち、自動合焦部4による自動合焦動作は、コントラスト方式自動合焦点調節機能により行われることが好ましい。
【0051】
また、上記(ii)位相差解析を利用する方法としては銀塩フィルム、光電子変換素子等の撮像素子を配置する撮像面と等価な面の近傍に、ラインセンサー等の撮影画像検出用センサーを一対または複数対配置して対物レンズを透過した光のうち異なる部位の光束を異なるセンサーに導き、対を成すセンサー上の撮影対象の位置のずれから対物レンズの焦点を検出する位相差検出方式が挙げられる。
【0052】
さらに、上記(iii)撮影対象からの反射光よりカメラから撮影対象までの距離を算出し、算出された距離に基づいて合焦点を検出する方法としては、赤外線等の補助光を発光する装置を内蔵し、撮影対象から反射された赤外線の入射角度を距離に換算する三角測量に基づいて撮影対象との距離の絶対値を算出する赤外線方式が挙げられる。
【0053】
つまり、上述した合焦検出部2は、自動合焦部4の自動合焦方式に合わせて、上述した合焦状態の検出方法のうち、適切な手法を選択し構成することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、自動合焦部4は、駆動部3を制御して、ステージ11を駆動することで対物レンズ1と試料23とのz軸方向の相対距離を変動させて自動合焦動作を行う構成である。このステージ11の移動方式には、(i)連続的な移動方式と、(ii) 一定距離ずつ移動する段階的な移動方式があり、どちらの方式を選ぶかについては、特に限定されるものではない。また、どちらの方式を選択しても、その具体的な移動方法については従来公知のものを用いることができ、特に限定されない。例えば、(i)連続的な移動方式としては、ステージ11を極めて微小な所定周期毎に移動させ、各周期で、焦点状態を評価し、最も良好な焦点状態を示す位置を合焦状態と設定する方式を挙げることができる。一方、(ii)段階的な移動方式としては、予め定めた複数の位置にオフセット駆動を行い、その中での焦点状態を評価し、最も良好な焦点状態を示す移動位置を合焦点状態と設定する方式を挙げることができる。
【0055】
制御部5は、分析装置100の各手段を制御する制御手段として機能するものである。例えば、制御部5は、自動合焦部4及び/又は駆動部2を制御して、スライドガラス21とカバーガラス22との間における、所定の分析開始位置から予め設定された分析終了位置まで、自動合焦動作を行うように制御する制御手段として機能する。ここで、「分析開始位置」と「分析終了位置」とは、スライドガラスとカバーガラスとの間の鉛直方向の高さ位置(z軸上の位置)が異なるが、水平位置(xy軸上の位置)は同一な位置である。また、分析開始位置・分析終了位置の具体的な位置については、ユーザが検査目的や検査対象等に応じて任意に設定可能であり、特に限定されるものではない。
【0056】
判定部6は、試料23中に有形成分が存在するか否かを判定する判定手段として機能するものである。例えば、上記自動合焦動作において、合焦検出部2によって合焦状態が検出された場合、当該合焦位置に有形成分が存在すると判定する判定手段として機能するものといえる。
【0057】
撮像部7は、試料23についての画像を取得するための撮像手段として機能するものである。例えば、撮像部7は、判定部6によって有形成分が存在すると判定された場合、合焦位置に存在する当該有形成分の画像を取得するものであることが好ましい。さらに、判定部6によって当該視野領域内には有形成分が存在しないと判定された場合、上記自動合焦動作が完了した分析終了位置において、試料の画像を取得するものであることが好ましい。
【0058】
撮像部7としては、従来公知の撮像手段を用いることができ、その具体的な構成については特に限定されるものではない。例えば、光に反応する半導体素子を使って映像を電気信号に変換し、デジタルデータとして記憶媒体に記憶することができる撮像手段を用いることが好ましい。かかる撮像手段としては、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、CCDデジタルカメラ、及びCMOSデジタルカメラ等を挙げることができる。
【0059】
分類部8は、撮像部7によって取得された画像に基づき、試料23中の有形成分を分類する分類手段として機能するものである。分類部8は、試料23中に含まれる有形成分を撮像部7により撮影した画像を基に、自動で分類及び/又は計測する有形成分分類手段として機能するものと換言できる。かかる分類部8の具体的な分類動作については、従来公知の分類手法を利用することができ、特に限定されるものではない。
【0060】
例えば、分類部8は、有形成分の大きさ、形態、色などに基づいて分類する分類プログラムを用いて上記分類動作を実施できる。上記分類プログラムは、コンピューターソフトとして提供されること好ましい。上記分類プログラムは、例えば、撮影した有形成分において、(i)RGB値を明度と色度に分離する色抽出工程、(ii)穴埋め、線分の書き込み、画像の分離からなる2値画像処理工程、(iii)面積、円形度係数、円相当径、周囲長、絶対最大量、フェレ径X/Y比、最大弦長X/Y比、短軸長/長軸長比等の特徴量算出工程を実施し、予め設定しておいた有形成分の設定値と比較することで分類するものであることが好ましい。さらに上記分類プログラムは、最適な分類ができるようにこのプログラムに学習機能を有しているものであることが好ましい。かかる分類プログラムとしては、例えば、特開2001−255260に開示のものを利用することができる。
【0061】
記憶部9は、撮像部7によって撮影された画像や、上記分類プログラム、分析装置100の分析結果等の各種データを格納するための記憶手段として機能するものである。かかる記憶部9としては、従来公知のメモリ、記憶部材を用いることができ、その具体的な構成については特に限定されるものではない。また、ハードディスクのように内蔵型であってもよいし、外部記憶装置等の外付型であっても構わない。すなわち、記憶部9としては、例えばハードディスク、光磁気ディスク、DVD、CD−ROM、フラッシュメモリー、デジタルビデオディスク等を用いることができる。
【0062】
出力部10は、自動合焦動作等の機械動作、取得した画像の一覧表示や取得した画像を合成した画像の表示、画像及び計測結果の保存等の各手段・部材についての付帯制御、並びに、分析結果・分類結果等の分析装置100に関する各種の情報を外部へ出力・表示するためのものである。かかる出力部10としては、従来公知のディスプレイを好適に用いることができる。出力部10としてディスプレイを用いる場合には、メニュー選択によって、測定結果や画像データの他、時刻、現在の装置の状況(各検体の測定状況、各検体又は選択した検体の測定終了予定時刻又は必要残時間、廃液タンクの廃液量、純水タンクの残量、各試薬の残量、洗剤の残量)等を表示する機能や、選択指定した情報のみを離れた場所から読み取れるように拡大表示する機能を付加してもよい。なお、必要に応じて、従来公知の印刷手段を備えて、必要な情報をハードコピー(紙等)として出力できる構成(印刷手段)を備えていてもよい。
【0063】
ステージ11は、プレパラート20を載置するための試料搭載手段として機能するものである。かかるステージ11としては、例えば、従来公知の顕微鏡等に用いられる試料ステージを好適に用いることができ、その具体的な構成については特に限定されない。また、ステージ11は、視野移動を目的としてx,y軸方向へ移動可能であり、また焦点調節を目的としてz軸方向へ移動可能であるという3次元の移動が可能なように構成されているものであればよい。なお、ステージ11の3次元移動は、駆動部3によって駆動される構成であればよい。
【0064】
光源12は、ステージ11の下方に配置されており、試料23を下方から照射し、分析装置100の分析動作や撮像部7の撮影に十分な光量を示すものであればよく、従来公知の光源を用いることができ、その具体的な構成は特に限定されるものではない。例えば、ハロゲンランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、発光ダイオード等を用いることができる。これらの中でも、光源寿命の長い発光ダイオードがより好ましい。
【0065】
また、スライドガラス21とカバーガラス22としては、従来公知のプレパラートに使用可能なものを用いることができ、その具体的な構成は特に限定されるものではない。例えば、東洋紡績製のU−SCANNER(登録商標)専用スライドを好適に用いることができる。
【0066】
なお、本実施の形態では図示しないが、分析装置100には、試料23を採取し、プレパラート20に分注する分注部(分注手段)、プレパラートを供給するプレパラート供給部(供給手段)、プレパラート20をステージ11まで搬送する搬送部(搬送手段)を備えている構成であってもよい。より好ましくは、これらの部材に加え、試料を採取した容器を複数架設するためのラックを保持するラック保持部(保持手段)と、当該ラックを装置内で搬送するためのラック搬送部(搬送手段)を備えていてもよい。これら構成を有することにより、試料をセットするだけで試料の採取から結果表示まで自動で実施することが可能となる。上記各部材としては、従来公知の自動分析装置に用いられる部材を用いることができ、その具体的な構成については特に限定されるものではない。例えば、東洋紡績製のU−SCANNER(登録商標)に用いられる各種部材を備えることができる。
【0067】
次に、分析装置100の具体的な分析動作について説明する。なお、以下、説明の便宜上、本実施の形態では、髄液中の有形成分を分析する場合を例に挙げて説明する。勿論、本発明はこれに限定されるものではない。
【0068】
最初に、試料23のプレパラート20を作成する手順から説明する。まず、不図示の容器(例えば、試験管)を複数架設するラックから髄液を、所定の反応槽(不図示)に必要量分注する。このとき、均一な試料を分注するため、髄液を攪拌操作後に採取し、分注してもよい。また、予めバーコードなど個体識別手段が貼付してある容器を用いる場合はバーコード読取装置にて分注時に読み取ることができる。
【0069】
次に、髄液中の有形成分を染色するための染色液(例えば、武藤化学株式会社製サムソン液)を上記反応槽に分注し、髄液中有形成分の染色を実施する。反応槽中にて、よく混和後、反応槽から染色後の髄液を一定量採取し、スライドガラス21に分注し、カバーガラス22を載置して、均一に展開させるために数分静置して、試料23が保持されたプレパラート20を作成する。
【0070】
上述の手順で作成されたプレパラート20をステージ11に載置する。上述したように、ステージ11は、プレパラート20をxyz軸座標方向、すなわち3次元方向に自在に移動・停止できるように構成されている。プレパラート20をステージ11に載置後、光源12からの照射光をプレパラート20に集光させる。ステージ11が駆動し、撮影視野が重複しないように50枚の個別画像が撮影された。
【0071】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0072】
最後に、上記分析装置100の各ブロック、特に合焦検出部2,自動合焦部4,制御部5,判定部6,及び分類部8は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0073】
すなわち、分析装置100は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである分析装置100の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記分析装置100に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0074】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0075】
また、分析装置100を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを、通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0076】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明の疾患の観察方法、および自動分析装置によれば、疾患、特に中枢疾患、中でも髄膜炎、脳炎、くも膜下出血の鑑別に有用な情報を容易に取得可能である。すなわち、本発明により、簡便かつ迅速に疾患の鑑別に必要な情報を得ることが可能になり、これを必要とする分野、具体的には、医療分野、臨床検査分野や医薬品分野等に広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る疾患の観察方法で用いた自動分析装置に使用するプレパラートの構成を模式的に示す図。カバーガラス一体型スライドガラス1の斜視図である。
【図2】実施例1において撮像した画像
【図3】実施例1において撮像した画像
【図4】実施例1において撮像した画像
【図5】実施例1において撮像した画像
【図6】実施例2において撮像した画像
【図7】実施例2において撮像した画像
【図8】実施例2において撮像した画像
【図9】実施例2において撮像した画像
【図10】実施例3において撮像した画像
【図11】実施例3において撮像した画像
【図12】実施例3において撮像した画像
【図13】実施例3において撮像した画像
【図14】本発明の一実施形態に係る疾患の観察方法で用いた自動分析装置の構成を模式的に示す図
【符号の説明】
【0079】
1 対物レンズ
2 合焦検出部(合焦検出手段)
3 駆動部(駆動手段)
4 自動合焦部(自動合焦手段)
5 制御部(制御手段)
6 判定部(判定手段)
7 撮像部(撮像手段)
8 分類部(分類手段)
9 記録部
10 出力部
11 ステージ
12 光源
20 プレパラート
21 スライドガラス
22 カバーガラス
23 試料
100 分析装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患、特に中枢神経疾患、中でも髄膜炎、脳炎、くも膜下出血の鑑別に有用な情報を提供するための疾患の観察方法および、そのための自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳脊髄液(以下、髄液またはCSF)は脳室の脈絡叢で産生され、脳室、脊椎管内ならびにくも膜下腔を満たして循環し、中枢神経系の保護、恒常性の維持、老廃物の処理などの役割を担っている。髄液は中枢神経系に直に接して存在することから、そのさまざまな病態を反映する。CTやMRなどの画像診断がめざましく発展をした現在でも、脳脊髄液検査は中枢神経疾患診断において、欠くことのできない検査法のひとつとされている。
【0003】
髄液検査の適応がある疾患には、中枢神経系感染症(髄膜炎、脳炎)をはじめ、くも膜下出血、多発性硬化症、脳ヘルニア、脊髄疾患、ギラン・バレー症候群、ベーチェット症候群、サルコイドーシス、脳腫瘍、髄膜白血病やその他の転移性腫瘍などがある。
髄液検査項目としては細胞数算定・細胞分類をはじめとし、糖、タンパク、各種酵素、各種抗原・抗体の検出、免疫グロブリンの測定や微生物学的検索、細胞塗沫標本による形態学的検索などが挙げられる。ことに髄液細胞数算定と分類は、迅速な治療を必要とする各種中枢神経系感染症の鑑別診断および治療効果の判定において、きわめて重要な検査法である。
【0004】
髄液の採取方法としては、腰椎穿刺、後頭下穿刺(大槽穿刺)、頚椎側方穿刺、脳室穿刺(脳室ドレナージ)の4つがある。髄液採取は通常、腰椎穿刺で行われ、採取時に液圧測定、クエッケンシュテット試験が施行される。髄液採取が原因となって、感染や脳ヘルニアを発症する危険性もあるので、採取にあたっては、禁忌と合併症を常に考慮する必要がある。
【0005】
腰椎穿刺では、最初に流出する髄液中により多くの細胞が含まれているので、一般検査では原則として最初の部分を検体とする。腰椎穿刺による髄液採取は容易にくりかえし行うことはできず、また一度に採取できる量も限られている。また、微生物学的検査を施行する場合には、雑菌による汚染を避ける必要があるため、別の滅菌容器に採取する。
【0006】
いったん採取された髄液中に細胞変性はきわめて早く、冷蔵保存しても防ぐことは難しい。これは、髄液中にはタンパク量が少ないことと、髄液の浸透圧の低さに起因している。
したがって、採取から検査までに時間がかかればかかるほど、細胞数も細胞分画も変化することになる。細胞検査は少なくとも採取後1時間以内に行う必要があり、髄液採取時間および検査実施時間を厳密に管理しなくてはならない。
【0007】
髄液検査において、重要な細胞検査として細胞数算定と細胞分類があげられる。
細胞数算定は、髄膜炎、脳炎をはじめとする各種中枢神経系感染症の診断ならびに治療効果の推定を行う上で、非常に重要である。そのため、高い精度が要求され、使用する器具、手技には細心の注意が必要となる。
【0008】
以下に、一般的に実施されている細胞数算定の工程を述べる。
細胞数算定では、まず髄液を10/9倍に希釈する。希釈方法としては、マイクロピペット法、メランジュール法があるが、髄液の必要量が少なくてすむこと、染色液の逆流による失敗がないことなどから、マイクロピペット法が推奨されている。
マイクロピペットで採取した髄液180μlを染色液20μlと混合し、フックス・ローゼンタル計算盤に注入後、3〜5分放置し、通常200倍で鏡検し、全16区画を算定する。結果値は整数とし、単位は細胞数表示の標準単位である/μlを用いることが望ましいとされる。また、同時に単核球と多核球に分類する。
【0009】
細胞分類の第一の目的は早急な治療を必要とする細菌性髄膜炎の早期発見である。すなわち、細菌性髄膜炎で著明に増加する好中球を計算盤上で多核球としてとらえ、その割合を細胞増多の程度とともに考え合わせることで、他の髄膜炎を区別しようというものである。
【0010】
髄液中には末梢血と同様にあらゆる種類の白血球が出現するが、計算盤上で分類可能なものは好中球、リンパ球、単球、組織球の4種である。これらは、それぞれに出現意義を持つが、計算盤上では単核球と多核球の2種に分類する。前述した細胞分類の臨床的意義から、リンパ球、単球、組織球を単核球としてまとめ、好中球および好酸球、好塩基球を多核球としてまとめる。
【0011】
その他、髄液検査では糖、タンパク、各種酵素、各種抗原・抗体の検出、免疫グロブリンの測定や微生物学的検索も行う必要があることから、限られた採取量の試料を無駄なく効率よく測定するために、検査を実施する臨床検査技師は各種検査に十分習熟していることが求められる。
【0012】
しかし、髄液検査における細胞数算定は作業のすべてを用手によって実施しており、検査技師の大きな負担になっているほか、作業が用手であるため、結果のばらつきが大きく、判断には当然個人差があり、正確性に問題が指摘されていた。
また、前述の計算盤を用いる手法は、髄液中の細胞成分の増多状態と細胞組成の概ねを知る上では有効であるが、形態学的観察に限界があることは否めない。この場合、髄液細胞塗沫標本を作製することで、詳細な観察が可能となるが、さらに操作が煩雑となり、手間がかかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述のとおり、用手による細胞数算定には、操作が煩雑で手間がかかり、得られる結果の正確性にも問題が指摘されている。
また、髄液検体がきわめて不安定であることから、採取後速やかに検査を行う必要がある。しかし、日中の担当する臨床検査技師の勤務時間内であれば問題はないが、夜間や緊急に検査を実施しなければならない事態においては、適切な対応を取れない可能性は十分に考えうる。
【0014】
これらの問題を解決するため、従来は添加剤による髄液検体の保存安定性の向上(特許文献1)や既存のフローサイトメトリによる血液分析システムを利用した髄液検査の自動化が試みられてきた。
しかし、髄液検体への添加剤が分析結果に与える影響が必ずしも保証されていないことや、一方、フローサイトメトリによる自動分析では、用手法よりも多量の検体が必要であり、他検体からのキャリーオーバー等の問題が指摘されている。
【0015】
本願発明者らも、特許文献2において、髄液分析装置および髄液分析方法を報告したが、従来の用手法に比べると、有形成分の染色性が弱く、十分な効果が得られていたとは言い難い。
【特許文献1】特許3759512号
【特許文献2】特開2004−132787
【課題を解決するための手段】
【0016】
鋭意検討の結果、酸および核染色可能な色素を含む染色液を用いて試料(髄液)を染色し、透光板を用いて染色した試料を撮像し、試料中に含まれる有形成分を形態に基づいて分類し、撮像した画像および分類結果を記憶することで、簡便かつ迅速に疾患の鑑別に必要な体液試料の観察を実施しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[項1]
患者より採取された体液試料を試料とし、
(1)5〜40%(重量%)の酸および核染色が可能な色素を含む染色液と試料を1:1〜1:9の比で混合し、試料を染色する工程と、
(2)染色した試料を、撮影した個別画像の撮影視野が重複しないように透光板を用いて撮像する工程と、
(3)撮像した画像を用いて試料中に含まれる有形成分の形態による分類を行う工程と、
(4)撮像した画像および有形成分の分類結果を記憶する工程と、
を少なくとも有し、前記工程の少なくとも一部を、自動分析装置を用いて行うことを特徴とする疾患の観察方法。
[項2]
透光板を用いて撮像した画像を、分析者により個別試料ごと任意の枚数かさねあわせる手段を有する自動分析装置を用いることを特徴とする項1記載の疾患の観察方法。
[項3]
透光板を用いて撮像した画像を用いて、試料中に含まれる白血球数を計数し、および/または白血球が単核球であるか多核球であるかを識別する手段を有する自動分析装置を用いることを特徴とする項1または2記載の疾患の観察方法。
[項5]
疾患が中枢疾患であることを特徴とする項1〜3いずれかに記載の疾患の観察方法。
[項5]
中枢疾患が髄膜炎、脳炎、くも膜下出血より成る群から選択される項4に記載の疾患の観察方法。
[項6]
項1〜5のいずれかの方法に用いるための自動分析装置であって、以下の(1)〜(4)のいずれか1つ以上の工程を行う能力を有する自動分析装置。
(1)5〜40%(重量%)(本願では、以下特に断らない限り「%」は「重量%」を示す。)の酸および核染色が可能な色素を含む染色液と試料を1:1〜1:9の比で混合し、試料を染色する工程
(2)染色した試料を、撮影した個別画像の撮影視野が重複しないように透光板を用いて撮像する工程
(3)撮像した画像を用いて試料中に含まれる有形成分の形態による分類を行う工程と、
(4)撮像した画像および有形成分の分類結果を記憶する工程
[項7]
対物レンズ1,合焦検出部2,駆動部3,自動合焦部4,制御部5,判定部6,撮像部7,分類部8,記憶部9,出力部10,ステージ11,光源12を備え、ステージ11上には、プレパラート20が載置されており、プレパラート20は、スライドガラス21とカバーガラス22とから構成されている、項6の自動分析装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる疾患鑑別方法は、酸および核染色可能な色素を含む染色液を用いて体液試料(髄液)を染色し、透光板を用いて染色した試料を撮像し、試料中に含まれる有形成分を形態に基づいて分類し、撮像した画像および分類結果を記憶する工程を、少なくとも有し、また前記工程の少なくとも一部は分析装置による自動化が容易である。それゆえ、本発明の疾患鑑別方法は簡便かつ迅速に髄液検査を実施し、疾患、特に中枢疾患の鑑別に必要な体液試料の観察を容易に行えるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態について説明すると、以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
本発明は、患者より採取された体液試料の分析に用いられる。特に、腰椎穿刺、後頭下穿刺、頚椎側方穿刺、脳室穿刺で採取された髄液の分析に有効に用いられる。中でも、細胞数、細胞分類の報告を必要とする中枢疾患の鑑別において、試料中の有形成分の画像を取得可能な本発明は、有効な手段と考えられる。
【0020】
本発明において分析の対象となる有形成分は、被検液中に分散ないし懸濁しているものであれば特に限定されるものではない。髄液の場合では、リンパ球、単球、組織球等の単核球、好中球などの多核(分葉核)球等が分析対象となる有形成分として挙げられる。
【0021】
本発明の疾患の観察方法は、以下の工程を有し、工程の少なくとも一部または全部を自動分析装置を用いて、自動化することが可能である。
(1)5〜40%の酸および核染色が可能な色素を含む染色液と試料を1:1〜1:9の比で混合し、試料を染色する工程
(2)染色した試料を、撮影した個別画像の撮影視野が重複しないように透光板を用いて撮像する工程
(3)撮像した画像を用いて試料中に含まれる有形成分の形態による分類を行う工程
(4)撮像した画像および有形成分の分類結果を記憶する工程。
【0022】
工程(1)
本発明の方法においては、5〜40%の酸および核染色が可能な色素を含む染色液と試料を1:1〜1:9の比で混合し、試料を染色する工程を行うことを特徴とする。
染色液に含まれる酸および核染色可能な色素は特に限定されない。酸は無機酸、有機酸のいずれにも限定されないが、有機酸が好ましく、好ましくは酢酸、クエン酸、より好ましくは酢酸が好ましく、酢酸のかわりに氷酢酸を用いてもよい。色素は核染色可能であれば特に限定されないが、塩基性色素が好ましく、特にフクシンが好ましい。色素の添加量は特に限定されないが、好ましくは0.05〜10%、より好ましくは0.1〜5%が好ましい。染色液の組成は前述の酸と色素を含んでいればよく、一般に入手可能な市販の染色液、例えばサムソン液を用いてもよい。また、市販のサムソン液で十分な染色能が得られない場合は、フクシンを追添してもよく、最終的なフクシンの含有量は0.2〜2%の範囲であることが好ましい。
染色液と試料の混合比は1:1〜1:9の範囲であればよく、好ましくは1:1〜1.5がよく、さらに好ましくは1:3〜1:4がよい。また、検査に用いる試料は100〜200μl、好ましくは150μl以下がよい。
【0023】
本発明の方法においては、透光板上に試料を載置することを特徴とする。透光板は透光性を有し、試料を載置可能なものであれば良く、例えば、スライドガラス等が挙げられる。スライドガラスは一回使い切り(ディスポーザブル)であるため、前検体のキャリーオーバーや染色剤による汚染の可能性がゼロであり、信頼性の高い測定結果を提供することができる。透光板の材料は、プラスチック(合成樹脂)、ガラスなど透光性を有するものであれば、特に限定されるものではない。なお、プラスチックの場合は、必要に応じて親水性を向上させるための化学的および/または物理的処理を施すのが良い。
【0024】
透光板に載置された試料は、被覆透光板で被覆されていても良い。被覆透光板としては、例えばカバーガラスが挙げられる。被覆透光板の材料としては、上記した透光板と同様のものが挙げられるが、特に限定されるものではない。図1は、被覆透光板となるカバーガラスと、透光板となるスライドガラスとが一体的に形成された、カバーガラス一体型スライドガラス1の斜視図である。図1(a)ではスライドガラス部2上に載置されたカバーガラス部3の対向する二辺が接着剤4などで封止され、残りの対向する二辺が開放状態になっている。図1(b)はスライドガラス部2上に載置されたカバーガラス部3の三辺が接着剤4などで封止され、残りの一辺が開放状態になっている。被検液を開放された一辺から分注すると、毛細管現象によりスライドガラス部2とカバーガラス部3との間隙に被検液が注入される。即ち、透光板であるスライドガラス部2に前記染色液で染色した試料が載置される。このようにカバーガラス一体型スライドガラス1を用いれば、簡単に所定量を正確に注入させることができ、カバーガラスをセットする煩雑な標本作製工程を省力化することができる。
【0025】
工程(2)
本発明の方法は、染色した試料を、撮影した個別画像の撮影視野が重複しないように透光板を用いて撮像する工程を行うことを特徴とする。
透光板上の試料を撮像するための撮像ステージは、透光板を載置し得るものであれば良く、特に限定されないが、撮影した個別画像の撮影視野が重複しないように撮像位置を変更できるように移動可能なものであるのが好ましい。移動は手動で行っても良いが、例えばサーボモータ、ステッピングモータやリニアモータ等を使用して機械的に行うのが好ましい。
撮像する視野数は特に限定されないが、少なくとも25視野以上、より好ましくは50視野以上であることが好ましい。
【0026】
撮像手段としては、デジタルカメラ、CCDカラービデオカメラ等が挙げられる。また、撮像手段には、有形成分の標本像の焦点を自動で合わせる機能(オートフォーカス機能)を付加しておくのが好ましい。拡大手段は、撮像前の標本像を光学的に拡大するものであっても良いし、撮像された標本像の画像をデジタル処理等して拡大するものであっても良い。具体的には、前記カメラに取り付けられるズームレンズや対物レンズ等が挙げられる。
【0027】
試料中の有形成分としては、8〜10μm程度のリンパ球、20μmを超えることのある組織球などまでがある。従って、拡大手段の有する拡大倍率は、一種類のみとするよりも、二種類以上とするのが好ましい。この場合、小型の成分から大型の成分までをより精度よく解析することができる。また、拡大倍率は連続的に変化するものであっても良い。拡大倍率は成分に合わせて適宜決定すれば良い。
【0028】
工程(3)
本発明の方法は、撮像した画像を用いて試料中に含まれる有形成分の形態による分類を行う工程を有することを特徴とする。
前記工程は、分析者である技師が目視で行ってもよいが、有形成分の識別手段を有する分析装置を用いてもよい。識別手段とは、撮像された画像中の有形成分をその形態等に基づいて分類し、識別するものである。識別手段には、予め設定された視野分の全識別結果から分析結果を算出する機能と、分析結果を出力器から出力する機能とを付加するのが好ましい。なお、ここでいう予め設定された視野分とは、撮像する視野(画像)数のことをいう。また、識別手段には撮像された画像を一旦記憶しておくためのメモリ等を備えておくのが好ましい。
【0029】
識別手段としては、例えば、上記の識別を行うようにプログラミングされたコンピュータ、論理回路で構成された識別装置等が挙げられる。このうち、識別手段としてコンピュータを用いれば、各工程の動作、画像処理、記憶、計算、出力等すべての制御がソフト上で行えるようになり好ましい。
【0030】
識別手段は学習機能を有しているのが好ましい。学習認識機能を有することによって、正確性、精密性の高い測定結果が提供される。識別手段は、(1)赤、緑、青を明度と色度とに分離する色抽出の範囲指定、(2)穴埋め、線分の書き込み、画像の切り離しからなる二値画像処理の範囲指定、(3)画像の特徴量(面積、円形度係数、円相当径、周囲長、絶対最大長、フェレ径X/Y比、最大弦長X/Y比、短軸長さ/長軸長さ比など)の範囲指定を学習し、識別を行うことができる。
【0031】
工程(4)
また、本発明の方法には、撮像した画像および撮像された画像を処理して各種成分に識別した結果を記憶する工程が含まれる。
記憶しておく手段としては、記憶容量の大きい光磁気ディスク、固定ディスク、デジタルビデオディスク、CD−R等の補助記憶装置が挙げられる。
なお、前記工程により、本発明の方法では、従来の用手法と異なり特別な処理を必要とすることなく試料中の有形成分の画像を残し、随時参照することが可能である。
【0032】
本発明の方法は、撮像した個別画像を任意の枚数かさねあわせる手段を有していても良く、また、そのような手段を有する自動分析装置を用いても良い。
すなわち、個別画像を複数重ね合わせることで、個別画像に分散している有形成分を集積することが可能となり、体液試料を濃縮した場合と同じ効果を得ることができる。
前述の工程は、特に採取できる髄液量が限られている髄液検査において、濃縮されていない試料では鑑別困難な症例において、特に有効である。また逆に、著しく試料中の有形成分すなわち白血球の増多が認められる場合には、前述の工程を行わず個別画像で、有形成分の分類を行うことが望ましい。
【0033】
また、本発明の方法は、透光板を用いて撮像した画像を用いて、試料中に含まれる白血球数を計数し、および/または白血球が単核球であるか多核球であるかを識別する手段を有していても良く、また、そのような手段を有する自動分析装置を用いても良い。
前述の自動分析装置により、容易に試料中に含まれる単核球と多核球の比率を算出できる。結果値は細胞数および/または各々の%で表示できることが望ましい。
【0034】
本発明の方法により、容易に疾患の鑑別に必要な体液試料の観察が可能となるが、特に中枢疾患、中でも、髄膜炎、脳炎、くも膜下出血のいずれであるかを鑑別する際に有効である。
すなわち、一般的に、撮像した画像においてリンパ球の増加はウィルス感染症ならびに慢性炎症を示し、単球の増加は髄膜の炎症、好中球の増加は細菌感染症ならびに急性炎症を示す。また、単球および組織球の増加はくも膜下出血の所見として認められる。
さらに、本発明の方法では、試料中の有形成分の画像を記憶することが可能であることから、各種病原性微生物、脳性ヘルニアに由来する脳組織細胞、原発性脳腫瘍細胞、転移性腫瘍細胞などを検出可能であり、また画像を確認することで髄液採取時に医原的に混在する臨床的意義に乏しい細胞成分を識別できることから、検査の正確性の向上に有効である。
なお本発明は、以上例示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術範囲に含まれる。
【0035】
本発明の自動分析装置は、上記いずれかの方法に用いるための自動分析装置であって、以下の(1)〜(4)のいずれか1つ以上の工程を行う能力を有する自動分析装置である。
(1)5〜40%の酸および核染色が可能な色素を含む染色液と試料を1:1〜1:9の比で混合し、試料を染色する工程
(2)染色した試料を、撮影した個別画像の撮影視野が重複しないように透光板を用いて撮像する工程
(3)撮像した画像を用いて試料中に含まれる有形成分の形態による分類を行う工程と、
(4)撮像した画像および有形成分の分類結果を記憶する工程
【実施例】
【0036】
本発明について、実施例および図2〜図14に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
【0037】
〔実施例1:酸を含む染色液を用いた疾患の鑑別〕
(1)染色工程
患者より採取された髄液サンプル(以下、試料)112.5μlと染色液(30%酢酸、0.2%塩基性フクシン)37.5μlを混合し、約2分後に33μlを分取して図1の透光板(T−PLATE:東洋紡績)に分注した。染色された試料が透光板のスライドガラス部全面に展開されたことを確認してから、撮像工程へと進んだ。
(2)撮像工程
撮像は尿中有形成分分析装置U−SCANNERII(東洋紡績)を用いて行った。検体を分注した透光板を撮像ステージにセットし、CCDカメラにて計50視野分の検体画像を取得した。取得した画像は光磁気ディスクまたは固定ディスクに記憶させた。
(3)分類
撮像した画像をディスプレイに表示させ、細胞成分の計数および単核球/多核球の分類を行った。画像はU−SCANNERIIに内蔵されている画像レビューシステムを用いて、11枚分の画像を重ね合わせた条件で表示させた。その図を図2〜5に示す。画像は1検体あたり、4枚ずつ表示させ、分類を実施した。
(4)用手法との比較
図2〜5の画像より分類・計数した細胞成分の結果を表1に示す。試料中の白血球数の増加および多核球優位の傾向から、細菌性髄膜炎がうたがわれた。
用手法による検査結果を照合したところ、同様に細菌性髄膜炎を示唆する結果が得られており、本発明の方法によって、疾患の鑑別が可能であることを確認した。
【0038】
【表1】
【0039】
〔実施例2:酸を含まない染色液を用いた疾患の鑑別〕
(1)染色工程
患者より採取された髄液サンプル(以下、試料)112.5μlと酸を含まない染色液(U−SCANNER専用染色液:東洋紡績)37.5μlを混合し、約2分後に33μlを分取して図1の透光板(T−PLATE:東洋紡績)に分注した。染色された試料が透光板のスライドガラス部全面に展開されたことを確認してから、撮像工程へと進んだ。
(2)撮像工程
撮像は尿中有形成分分析装置U−SCANNERII(東洋紡績)を用いて行った。検体を分注した透光板を撮像ステージにセットし、CCDカメラにて計50視野分の検体画像を取得した。取得した画像は光磁気ディスクまたは固定ディスクに記憶させた。
(3)分類
撮像した画像をディスプレイに表示させ、細胞成分の計数および単核球/多核球の分類を行った。画像はU−SCANNERIIに内蔵されている画像レビューシステムを用いて、11枚分の画像を重ね合わせた条件で表示させた。その図を図6〜9に示す。画像は1検体あたり、4枚ずつ表示させ、分類を実施した。
(4)用手法との比較
図6〜9の画像では、赤血球と推測される細胞成分の混入が認められ、白血球数を計数することは困難であった。また、核の染色が不明瞭であるため、単核球あるいは多核球の識別・分類を行うことはできなかった。
【0040】
〔実施例3:自動分析装置を用いた、本発明に係る中枢疾患の鑑別方法の実施〕
以下に説明する自動分析装置を用いて〔実施例1〕〔実施例2〕と同様にして疾患の鑑別を行った。
【0041】
図14に示す自動分析装置を用いて、〔実施例1〕〔実施例2〕と同様にして髄液検査を行った。
〔実施例1〕と同様に酸を含む染色液を用いて自動分析装置で撮像した結果を図10〜13に示す。撮像した画像を用いて〔実施例1〕と同様に細胞成分の計数および単核球/多核球の分類を行った結果を表2に示す。本発明の自動分析装置を用いた結果からは、試料中の白血球数の増加および多核球優位の傾向から、細菌性髄膜炎がうたがわれた。
一方、用手法による検査結果では、多核球優位の傾向は見られず、細胞数自体も正常髄液と同等レベルに減少していた。
用手法の結果が、試料を採取した患者の臨床症状と一致しないことから原因を検討したところ、用手法では担当者が不在であったために検体が放置され、劣化した状態で髄液検査が行われたことが判明した。
しかし、本発明の技術を使用した自動分析装置による鑑別方法では、試料を自動分析装置に設置するのみで、検査が実施されるため、担当者以外の技師でも対応可能であり、新鮮な髄液試料を用いた正確な検査結果を得ることができた。
【0042】
【表2】
【0043】
以下、図面を用いて、自動分析装置について詳細に例示する。
図14は、本発明に係る中枢疾患の鑑別方法で用いた自動分析装置の一実施形態の構成を模式的に示す図である。同図に示すように、分析装置100は、対物レンズ1,合焦検出部2,駆動部3,自動合焦部4,制御部5,判定部6,撮像部7,分類部8,記憶部9,出力部10,ステージ11,光源12を備えている。ステージ11上には、プレパラート20が載置されている。なお、図1に示すように、プレパラート20は、スライドガラス21とカバーガラス22とから構成されており、これらの間に試料23が保持されている。
【0044】
対物レンズ1は、ステージ11上の試料23を観察するための対物レンズであればよく、その具体的な構成は特に限定されず、従来公知のレンズを用いることができる。
【0045】
合焦検出部2は、対物レンズ1の合焦状態、特に、試料23に対する合焦状態を検出する合焦検出手段として機能するものである。合焦状態を検出する手法については、特に限
定されるものではなく、従来公知の合焦状態の検出手法を利用することができる。例えば、合焦検出部2は、自動合焦動作中における輝度レベルの分散値を評価値として決め、この評価値が最小値となるときを検出し、その最小値となったときの対物レンズ1の位置が合焦状態であると判断するように構成できる。なお、合焦状態の検出手法については、後述の自動合焦部4についての説明時でも詳説する。
【0046】
駆動部3は、対物レンズ1と試料23と相対位置を3次元方向に変動させる駆動手段として機能するものである。換言すれば、ステージ11と対物レンズ1との間の相対位置を3次元方向に変動させる駆動手段として機能するものともいえる。かかる駆動部3としては、従来公知の駆動手段を好適に利用可能であり、例えば、サーボモーター、ステッピングモーターやリニアモーターなど機械的に駆動するものを挙げることができる。
【0047】
また、本実施の形態では、駆動部3は、ステージ11を移動させることにより、対物レンズ1と試料23との相対位置を変動させる構成であるが、これに限定されるものではない。例えば、対物レンズ1を駆動させる構成であってもよいし、対物レンズ1とステージ11の両方を駆動させてもよい。ただし、構成の容易さ、駆動の安定性等の観点から、ステージ11を駆動させる構成が好ましい。
【0048】
また、本明細書では、説明の便宜上、図14に示すように、対物レンズ1と試料23とを結ぶ鉛直方向をz軸方向とし、プレパラート20に平行な水平方向をxy軸方向とする。
【0049】
自動合焦部4は、合焦検出部2の検出結果に基づいて、駆動部3を制御して対物レンズ1を自動的に合焦させる自動合焦手段として機能するものである。自動合焦部4が行う自動合焦動作の方式は、従来公知の自動合焦方式を利用することができ、その具体的な構成については特に限定されるものではない。例えば、アクティブオートフォーカス方式、パッシブオートフォーカス方式の両方を利用できるが、好ましくは、パッシブオートフォーカス方式である。
【0050】
また、上記パッシブオートフォーカス方式を用いた場合における、具体的な合焦状態の検出方法としては、(i)撮影対象の光強度を電気信号に変換して、電気信号の変化を利用して合焦点を検出する方法、(ii)位相差検出を行い、位相差解析を利用して合焦点を検出する方法、(iii)光源とは別に補助発光装置を内蔵し撮影対象からの反射光を測定することで距離換算し、算出された距離に基づいて合焦点を検出する方法などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、撮影対象の光強度を電気信号に変換して、電気信号の変化を利用して合焦点を検出する方法である。さらにいえば、撮影対象となる画像撮影用の撮像素子の光強度をコントラストとしてとらえ、コントラストの高周波成分の検出で行う方式、いわゆるコントラスト方式であることが好ましい。すなわち、自動合焦部4による自動合焦動作は、コントラスト方式自動合焦点調節機能により行われることが好ましい。
【0051】
また、上記(ii)位相差解析を利用する方法としては銀塩フィルム、光電子変換素子等の撮像素子を配置する撮像面と等価な面の近傍に、ラインセンサー等の撮影画像検出用センサーを一対または複数対配置して対物レンズを透過した光のうち異なる部位の光束を異なるセンサーに導き、対を成すセンサー上の撮影対象の位置のずれから対物レンズの焦点を検出する位相差検出方式が挙げられる。
【0052】
さらに、上記(iii)撮影対象からの反射光よりカメラから撮影対象までの距離を算出し、算出された距離に基づいて合焦点を検出する方法としては、赤外線等の補助光を発光する装置を内蔵し、撮影対象から反射された赤外線の入射角度を距離に換算する三角測量に基づいて撮影対象との距離の絶対値を算出する赤外線方式が挙げられる。
【0053】
つまり、上述した合焦検出部2は、自動合焦部4の自動合焦方式に合わせて、上述した合焦状態の検出方法のうち、適切な手法を選択し構成することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、自動合焦部4は、駆動部3を制御して、ステージ11を駆動することで対物レンズ1と試料23とのz軸方向の相対距離を変動させて自動合焦動作を行う構成である。このステージ11の移動方式には、(i)連続的な移動方式と、(ii) 一定距離ずつ移動する段階的な移動方式があり、どちらの方式を選ぶかについては、特に限定されるものではない。また、どちらの方式を選択しても、その具体的な移動方法については従来公知のものを用いることができ、特に限定されない。例えば、(i)連続的な移動方式としては、ステージ11を極めて微小な所定周期毎に移動させ、各周期で、焦点状態を評価し、最も良好な焦点状態を示す位置を合焦状態と設定する方式を挙げることができる。一方、(ii)段階的な移動方式としては、予め定めた複数の位置にオフセット駆動を行い、その中での焦点状態を評価し、最も良好な焦点状態を示す移動位置を合焦点状態と設定する方式を挙げることができる。
【0055】
制御部5は、分析装置100の各手段を制御する制御手段として機能するものである。例えば、制御部5は、自動合焦部4及び/又は駆動部2を制御して、スライドガラス21とカバーガラス22との間における、所定の分析開始位置から予め設定された分析終了位置まで、自動合焦動作を行うように制御する制御手段として機能する。ここで、「分析開始位置」と「分析終了位置」とは、スライドガラスとカバーガラスとの間の鉛直方向の高さ位置(z軸上の位置)が異なるが、水平位置(xy軸上の位置)は同一な位置である。また、分析開始位置・分析終了位置の具体的な位置については、ユーザが検査目的や検査対象等に応じて任意に設定可能であり、特に限定されるものではない。
【0056】
判定部6は、試料23中に有形成分が存在するか否かを判定する判定手段として機能するものである。例えば、上記自動合焦動作において、合焦検出部2によって合焦状態が検出された場合、当該合焦位置に有形成分が存在すると判定する判定手段として機能するものといえる。
【0057】
撮像部7は、試料23についての画像を取得するための撮像手段として機能するものである。例えば、撮像部7は、判定部6によって有形成分が存在すると判定された場合、合焦位置に存在する当該有形成分の画像を取得するものであることが好ましい。さらに、判定部6によって当該視野領域内には有形成分が存在しないと判定された場合、上記自動合焦動作が完了した分析終了位置において、試料の画像を取得するものであることが好ましい。
【0058】
撮像部7としては、従来公知の撮像手段を用いることができ、その具体的な構成については特に限定されるものではない。例えば、光に反応する半導体素子を使って映像を電気信号に変換し、デジタルデータとして記憶媒体に記憶することができる撮像手段を用いることが好ましい。かかる撮像手段としては、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、CCDデジタルカメラ、及びCMOSデジタルカメラ等を挙げることができる。
【0059】
分類部8は、撮像部7によって取得された画像に基づき、試料23中の有形成分を分類する分類手段として機能するものである。分類部8は、試料23中に含まれる有形成分を撮像部7により撮影した画像を基に、自動で分類及び/又は計測する有形成分分類手段として機能するものと換言できる。かかる分類部8の具体的な分類動作については、従来公知の分類手法を利用することができ、特に限定されるものではない。
【0060】
例えば、分類部8は、有形成分の大きさ、形態、色などに基づいて分類する分類プログラムを用いて上記分類動作を実施できる。上記分類プログラムは、コンピューターソフトとして提供されること好ましい。上記分類プログラムは、例えば、撮影した有形成分において、(i)RGB値を明度と色度に分離する色抽出工程、(ii)穴埋め、線分の書き込み、画像の分離からなる2値画像処理工程、(iii)面積、円形度係数、円相当径、周囲長、絶対最大量、フェレ径X/Y比、最大弦長X/Y比、短軸長/長軸長比等の特徴量算出工程を実施し、予め設定しておいた有形成分の設定値と比較することで分類するものであることが好ましい。さらに上記分類プログラムは、最適な分類ができるようにこのプログラムに学習機能を有しているものであることが好ましい。かかる分類プログラムとしては、例えば、特開2001−255260に開示のものを利用することができる。
【0061】
記憶部9は、撮像部7によって撮影された画像や、上記分類プログラム、分析装置100の分析結果等の各種データを格納するための記憶手段として機能するものである。かかる記憶部9としては、従来公知のメモリ、記憶部材を用いることができ、その具体的な構成については特に限定されるものではない。また、ハードディスクのように内蔵型であってもよいし、外部記憶装置等の外付型であっても構わない。すなわち、記憶部9としては、例えばハードディスク、光磁気ディスク、DVD、CD−ROM、フラッシュメモリー、デジタルビデオディスク等を用いることができる。
【0062】
出力部10は、自動合焦動作等の機械動作、取得した画像の一覧表示や取得した画像を合成した画像の表示、画像及び計測結果の保存等の各手段・部材についての付帯制御、並びに、分析結果・分類結果等の分析装置100に関する各種の情報を外部へ出力・表示するためのものである。かかる出力部10としては、従来公知のディスプレイを好適に用いることができる。出力部10としてディスプレイを用いる場合には、メニュー選択によって、測定結果や画像データの他、時刻、現在の装置の状況(各検体の測定状況、各検体又は選択した検体の測定終了予定時刻又は必要残時間、廃液タンクの廃液量、純水タンクの残量、各試薬の残量、洗剤の残量)等を表示する機能や、選択指定した情報のみを離れた場所から読み取れるように拡大表示する機能を付加してもよい。なお、必要に応じて、従来公知の印刷手段を備えて、必要な情報をハードコピー(紙等)として出力できる構成(印刷手段)を備えていてもよい。
【0063】
ステージ11は、プレパラート20を載置するための試料搭載手段として機能するものである。かかるステージ11としては、例えば、従来公知の顕微鏡等に用いられる試料ステージを好適に用いることができ、その具体的な構成については特に限定されない。また、ステージ11は、視野移動を目的としてx,y軸方向へ移動可能であり、また焦点調節を目的としてz軸方向へ移動可能であるという3次元の移動が可能なように構成されているものであればよい。なお、ステージ11の3次元移動は、駆動部3によって駆動される構成であればよい。
【0064】
光源12は、ステージ11の下方に配置されており、試料23を下方から照射し、分析装置100の分析動作や撮像部7の撮影に十分な光量を示すものであればよく、従来公知の光源を用いることができ、その具体的な構成は特に限定されるものではない。例えば、ハロゲンランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、発光ダイオード等を用いることができる。これらの中でも、光源寿命の長い発光ダイオードがより好ましい。
【0065】
また、スライドガラス21とカバーガラス22としては、従来公知のプレパラートに使用可能なものを用いることができ、その具体的な構成は特に限定されるものではない。例えば、東洋紡績製のU−SCANNER(登録商標)専用スライドを好適に用いることができる。
【0066】
なお、本実施の形態では図示しないが、分析装置100には、試料23を採取し、プレパラート20に分注する分注部(分注手段)、プレパラートを供給するプレパラート供給部(供給手段)、プレパラート20をステージ11まで搬送する搬送部(搬送手段)を備えている構成であってもよい。より好ましくは、これらの部材に加え、試料を採取した容器を複数架設するためのラックを保持するラック保持部(保持手段)と、当該ラックを装置内で搬送するためのラック搬送部(搬送手段)を備えていてもよい。これら構成を有することにより、試料をセットするだけで試料の採取から結果表示まで自動で実施することが可能となる。上記各部材としては、従来公知の自動分析装置に用いられる部材を用いることができ、その具体的な構成については特に限定されるものではない。例えば、東洋紡績製のU−SCANNER(登録商標)に用いられる各種部材を備えることができる。
【0067】
次に、分析装置100の具体的な分析動作について説明する。なお、以下、説明の便宜上、本実施の形態では、髄液中の有形成分を分析する場合を例に挙げて説明する。勿論、本発明はこれに限定されるものではない。
【0068】
最初に、試料23のプレパラート20を作成する手順から説明する。まず、不図示の容器(例えば、試験管)を複数架設するラックから髄液を、所定の反応槽(不図示)に必要量分注する。このとき、均一な試料を分注するため、髄液を攪拌操作後に採取し、分注してもよい。また、予めバーコードなど個体識別手段が貼付してある容器を用いる場合はバーコード読取装置にて分注時に読み取ることができる。
【0069】
次に、髄液中の有形成分を染色するための染色液(例えば、武藤化学株式会社製サムソン液)を上記反応槽に分注し、髄液中有形成分の染色を実施する。反応槽中にて、よく混和後、反応槽から染色後の髄液を一定量採取し、スライドガラス21に分注し、カバーガラス22を載置して、均一に展開させるために数分静置して、試料23が保持されたプレパラート20を作成する。
【0070】
上述の手順で作成されたプレパラート20をステージ11に載置する。上述したように、ステージ11は、プレパラート20をxyz軸座標方向、すなわち3次元方向に自在に移動・停止できるように構成されている。プレパラート20をステージ11に載置後、光源12からの照射光をプレパラート20に集光させる。ステージ11が駆動し、撮影視野が重複しないように50枚の個別画像が撮影された。
【0071】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0072】
最後に、上記分析装置100の各ブロック、特に合焦検出部2,自動合焦部4,制御部5,判定部6,及び分類部8は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0073】
すなわち、分析装置100は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである分析装置100の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記分析装置100に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0074】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0075】
また、分析装置100を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを、通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0076】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明の疾患の観察方法、および自動分析装置によれば、疾患、特に中枢疾患、中でも髄膜炎、脳炎、くも膜下出血の鑑別に有用な情報を容易に取得可能である。すなわち、本発明により、簡便かつ迅速に疾患の鑑別に必要な情報を得ることが可能になり、これを必要とする分野、具体的には、医療分野、臨床検査分野や医薬品分野等に広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る疾患の観察方法で用いた自動分析装置に使用するプレパラートの構成を模式的に示す図。カバーガラス一体型スライドガラス1の斜視図である。
【図2】実施例1において撮像した画像
【図3】実施例1において撮像した画像
【図4】実施例1において撮像した画像
【図5】実施例1において撮像した画像
【図6】実施例2において撮像した画像
【図7】実施例2において撮像した画像
【図8】実施例2において撮像した画像
【図9】実施例2において撮像した画像
【図10】実施例3において撮像した画像
【図11】実施例3において撮像した画像
【図12】実施例3において撮像した画像
【図13】実施例3において撮像した画像
【図14】本発明の一実施形態に係る疾患の観察方法で用いた自動分析装置の構成を模式的に示す図
【符号の説明】
【0079】
1 対物レンズ
2 合焦検出部(合焦検出手段)
3 駆動部(駆動手段)
4 自動合焦部(自動合焦手段)
5 制御部(制御手段)
6 判定部(判定手段)
7 撮像部(撮像手段)
8 分類部(分類手段)
9 記録部
10 出力部
11 ステージ
12 光源
20 プレパラート
21 スライドガラス
22 カバーガラス
23 試料
100 分析装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者より採取された体液試料を試料とし、
(1)5〜40%(重量%)の酸および核染色が可能な色素を含む染色液と試料を1:1〜1:9の比で混合し、試料を染色する工程と、
(2)染色した試料を、撮影した個別画像の撮影視野が重複しないように透光板を用いて撮像する工程と、
(3)撮像した画像を用いて試料中に含まれる有形成分の形態による分類を行う工程と、
(4)撮像した画像および有形成分の分類結果を記憶する工程と、
を少なくとも有し、前記工程の少なくとも一部を、自動分析装置を用いて行うことを特徴とする疾患の観察方法。
【請求項2】
透光板を用いて撮像した画像を、分析者により個別試料ごと任意の枚数かさねあわせる手段を有する自動分析装置を用いることを特徴とする請求項1記載の疾患の観察方法。
【請求項3】
透光板を用いて撮像した画像を用いて、試料中に含まれる白血球数を計数し、および/または白血球が単核球であるか多核球であるかを識別する手段を有する自動分析装置を用いることを特徴とする請求項1または2記載の疾患の観察方法。
【請求項4】
疾患が中枢疾患であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の疾患の観察方法。
【請求項5】
中枢疾患が髄膜炎、脳炎、くも膜下出血より成る群から選択される請求項4に記載の疾患の観察方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの方法に用いるための自動分析装置であって、以下の(1)〜(4)のいずれか1つ以上の工程を行う能力を有する自動分析装置。
(1)5〜40%(重量%)の酸および核染色が可能な色素を含む染色液と試料を1:1〜1:9の比で混合し、試料を染色する工程
(2)染色した試料を、撮影した個別画像の撮影視野が重複しないように透光板を用いて撮像する工程
(3)撮像した画像を用いて試料中に含まれる有形成分の形態による分類を行う工程と、
(4)撮像した画像および有形成分の分類結果を記憶する工程
【請求項7】
対物レンズ1,合焦検出部2,駆動部3,自動合焦部4,制御部5,判定部6,撮像部7,分類部8,記憶部9,出力部10,ステージ11,光源12を備え、ステージ11上には、プレパラート20が載置されており、プレパラート20は、スライドガラス21とカバーガラス22とから構成されている、請求項6の自動分析装置。
【請求項1】
患者より採取された体液試料を試料とし、
(1)5〜40%(重量%)の酸および核染色が可能な色素を含む染色液と試料を1:1〜1:9の比で混合し、試料を染色する工程と、
(2)染色した試料を、撮影した個別画像の撮影視野が重複しないように透光板を用いて撮像する工程と、
(3)撮像した画像を用いて試料中に含まれる有形成分の形態による分類を行う工程と、
(4)撮像した画像および有形成分の分類結果を記憶する工程と、
を少なくとも有し、前記工程の少なくとも一部を、自動分析装置を用いて行うことを特徴とする疾患の観察方法。
【請求項2】
透光板を用いて撮像した画像を、分析者により個別試料ごと任意の枚数かさねあわせる手段を有する自動分析装置を用いることを特徴とする請求項1記載の疾患の観察方法。
【請求項3】
透光板を用いて撮像した画像を用いて、試料中に含まれる白血球数を計数し、および/または白血球が単核球であるか多核球であるかを識別する手段を有する自動分析装置を用いることを特徴とする請求項1または2記載の疾患の観察方法。
【請求項4】
疾患が中枢疾患であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の疾患の観察方法。
【請求項5】
中枢疾患が髄膜炎、脳炎、くも膜下出血より成る群から選択される請求項4に記載の疾患の観察方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの方法に用いるための自動分析装置であって、以下の(1)〜(4)のいずれか1つ以上の工程を行う能力を有する自動分析装置。
(1)5〜40%(重量%)の酸および核染色が可能な色素を含む染色液と試料を1:1〜1:9の比で混合し、試料を染色する工程
(2)染色した試料を、撮影した個別画像の撮影視野が重複しないように透光板を用いて撮像する工程
(3)撮像した画像を用いて試料中に含まれる有形成分の形態による分類を行う工程と、
(4)撮像した画像および有形成分の分類結果を記憶する工程
【請求項7】
対物レンズ1,合焦検出部2,駆動部3,自動合焦部4,制御部5,判定部6,撮像部7,分類部8,記憶部9,出力部10,ステージ11,光源12を備え、ステージ11上には、プレパラート20が載置されており、プレパラート20は、スライドガラス21とカバーガラス22とから構成されている、請求項6の自動分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−54426(P2010−54426A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221283(P2008−221283)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】
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