説明

病理診断支援装置、病理診断支援方法、病理診断支援のための制御プログラムおよび該制御プログラムを記録した記録媒体

【課題】医師による病理診断をコンピュータシステム等によって支援する技術分野において、複数種の臓器に対応することで病理診断をより効果的に支援する技術を提供する。
【解決手段】検査対象となる臓器の選択を含む機能選択をユーザに行わせ(ステップS101)、検査対象画像を取得する(ステップS102)。続いて、臓器に依存しない要素については共通支援機能として分類を実行する一方(ステップS103)、臓器に特有の要素に関しては、臓器に特化した検出アルゴリズムをプラグインとして用意しておき、これを適宜組み込んで実行する(ステップS104)。これらの結果を統合して表示させることで(ステップS106、S107)、同一の装置で複数種の臓器の診断支援を行えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病理診断をコンピュータシステム等によって支援するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病理診断の1つに、患者から臓器の一部を検体として採取し、これを組織切片ガラススライド標本(プレパラート)にして顕微鏡下で観察し診断を行う生検組織診断がある。このような診断自体は医師が行わなければならないが、そのための作業量は膨大であり、医師の負担は重い。そこで、診断のための観察作業を効率よく行い医師の負担を軽減するために、コンピュータシステムによる画像処理技術を利用した種々の診断支援装置が従来より提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術では、乳腺組織標本を顕微鏡等で拡大して撮影することでデジタル画像を生成し、該画像から乳腺腫瘍に見られる病理組織学的特徴量(例えば、核領域の数、面積、形状、乳頭状パターンの有無など)を算出する。そして、該特徴量をもとに病理組織学的特徴に基づいてあらかじめ設定された診断カテゴリーを適合度算出カテゴリーとして決めておき、該画像の特徴量が適合度算出カテゴリーに適合する程度を算出し、適合度の高い適合度算出カテゴリー名を表示することで診断支援を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−197522号公報
【特許文献2】特開2003−126045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に病理医は複数種類の臓器に対して病理診断を行う。また、診断の基準としては、臓器に共通した診断基準や、各臓器ごとに特化した診断基準がある。その支援を行う診断支援装置の開発は対象となる臓器または病変ごとに特化されており、上記従来技術のように特定の臓器に特化した支援機能しか持たない診断支援システムでは、検査対象とする臓器が変わるごとにシステムの操作方法も変わるなど、医師の病理診断の支援を十分に行うことができないという問題がある。
【0006】
一方、例えば特許文献2に記載されているように、モダリティ(例えば、コンピュータ断層撮影装置や、内視鏡装置など)ごとに特化した診断支援機能をプラグイン形式で提供する技術も提案されているが、この技術では、病理診断において重要となる臓器間で共通に診断基準として用いられる病変特有の特徴の傾向を把握することができないという問題がある。
【0007】
このように、これまでのところ、異なる複数種の臓器に対応することのできる診断支援システムは未だ実用化されておらず、複数種の臓器を診断対象とする病理医の診断を効果的に支援することのできる技術は確立されるに至っていない。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、医師による病理診断をコンピュータシステム等によって支援する技術分野において、複数種の臓器に対応することで病理診断をより効果的に支援することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明にかかる病理診断支援装置は、上記目的を達成するため、検体組織を撮像した画像を取得する画像取得手段と、前記画像に基づいて、臓器の種類に依存しない特徴量である共通特徴量を算出する共通特徴量算出手段と、前記共通特徴量に基づいて、前記画像を複数の分類カテゴリに分類する共通分類手段と、前記画像に基づいて、検査対象となる臓器に特化した特徴量である特化特徴量を算出する特化特徴量算出手段と、前記特化特徴量に基づいて、前記画像から臓器に特有の特殊領域を検出する特化検出手段と、前記共通分類手段による分類結果と、前記特化検出手段による検出結果とを出力する出力手段とを備え、前記特化特徴量算出手段が、臓器の種類に応じて交換可能であることを特徴としている。
【0010】
また、この発明にかかる病理診断支援方法は、検体組織を撮像した画像を取得する画像取得工程と、前記画像に基づいて、臓器の種類に依存しない特徴量である共通特徴量を算出し、該共通特徴量に基づいて前記画像を複数の分類カテゴリに分類する共通分類工程と、検査対象となる臓器を選択設定する臓器選択工程と、前記画像に基づいて、前記検査対象として設定された臓器に特化した特徴量である特化特徴量を算出し、該特化特徴量に基づいて前記画像から臓器に特有の特殊領域を検出する特化検出工程と、前記共通分類工程における分類結果と、前記特化検出工程における検出結果とを出力する出力工程とを備え、前記特化検出工程では、設定された臓器の種類に応じて前記特化特徴量の種類を異ならせることを特徴としている。
【0011】
これらの発明では、画像をその特徴量に応じて分類するのに際して、臓器に共通の要素と、臓器ごとに異なる要素とを区別して取り扱う。そして、臓器ごとに異なる要素に関しては、検査対象となる臓器に応じて算出する特徴量の種類を入れ換えることが可能である。そのため、この発明によれば、単一の診断支援装置および方法において複数種の臓器を取り扱うことが可能であり、病理医による病理診断をより効果的に支援することが可能となっている。また、臓器の種類に依存しない機能や操作手順等を臓器間で共通化することが可能であり、検査対象臓器の変更や追加に伴う病理医の負担増加を軽減することができる。
【0012】
上記した病理診断支援装置においては、例えば、特化検出手段が特化特徴量算出手段と一体的に交換可能であってもよい。こうすることで、特徴量の算出およびそれに基づく特殊領域の検出を臓器ごとに最適化することができ、より効率よく診断支援を行うことが可能となる。
【0013】
また、共通特徴量算出手段および特化特徴量算出手段は画像を分割してなる複数のグリッド画像のそれぞれについて特徴量の算出を行い、共通分類手段および特化検出手段は該グリッド画像を分類するようにしてもよい。取得された画像を複数のグリッド画像に区分しグリッド画像単位で分類を行うことにより、例えば画像内における病変部位の分布状況を明らかにするなど、より効果的な診断支援を行うことができる。
【0014】
ここで、共通特徴量としては、画像内の核密度、核の濃度、核の配列、核の大きさ、核の形状、画像内における細胞質と核との面積比、核異型、核の大小不同のそれぞれに対応する特徴量のうちの少なくとも1つ用いることができる。これらの要素は臓器の種類によらず、画像内における病変の有無を判断するのに有効なものである。したがって、これらに対応する特徴量を共通特徴量とすることで、臓器間で共通の診断基準に基づく診断を効率よく支援することが可能となる。
【0015】
また、出力手段は、共通分類手段による分類結果と、特化検出手段による検出結果とを統合して表示する表示部を有するように構成されてもよい。このようにすると、使用者は臓器間で共通の診断基準と臓器固有の診断基準とに基づく総合的な診断を行うことが可能となり、当該装置による診断支援の効果をより向上させることができる。
【0016】
ここで、臓器に特有の特殊領域の検出を行うに際しては、機械学習によらない検出器を用いて検出を行うようにしてもよい。病理学の分野においては、生検組織に現れる画像上の特徴が臓器あるいはその病変ごとに詳しく研究されており、ある特徴の有無や検出数など、明確な診断基準が確立されている臓器も多い。このような臓器については、診断基準に沿った状況提供を行うことで、病理医は経験と定量的なデータの結果とを融合した精度の高い診断につなげることができる。一方、共通分類手段は機械学習による分類器を用いた画像の分類を行うようにしてもよい。
【0017】
また、この発明にかかる病理診断支援のための制御プログラムは、上記目的を達成するため、検体組織を撮像した画像に基づいて、臓器の種類に依存しない特徴量である共通特徴量を算出し、該共通特徴量に基づいて前記画像を複数の分類カテゴリに分類する共通分類工程と、前記画像に基づいて、検査対象となる臓器に特化した特徴量である特化特徴量を算出し、該特化特徴量に基づいて前記画像から臓器に特有の特殊領域を検出する特化検出工程と、前記共通分類工程における分類結果と、前記特化検出工程における検出結果とを出力する出力工程とをコンピュータに実行させ、しかも、前記特化検出工程では、設定された臓器の種類に応じて前記特化特徴量の種類を異ならせることを特徴としている。さらに、この発明にかかる記録媒体は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、上記した病理診断支援のための制御プログラムを記録したことを特徴としている。これらの発明によれば、上記発明にかかる病理診断支援方法をコンピュータにより実行させることができ、病理医による診断を効果的に支援することができる。
【0018】
この場合において、特化検出工程を実行するためのプログラムが、制御プログラム本体に対するプラグインファイルとして構成されてもよい。このようにすると、検査対象となる臓器に対応したプラグインファイルを適宜適用して制御プログラムを実行することにより、複数種の臓器に対応することが可能となる。この場合でも、多くの機能については選択された臓器によらず同一とすることができるので、検査対象臓器の変更に伴う病理医の負担の増加を軽減することが可能である。また、プラグインファイルの更新や追加によって、新たな機能を付加することが可能であり、拡張性に優れた診断支援システムを構築することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明にかかる病理診断支援技術によれば、単一の診断支援装置および方法において複数種の臓器を取り扱うことが可能であり、これにより臓器間で共通で使用する診断基準の統計データを提供することができるため、病理医による病理診断をより効果的に支援することが可能となる。また、臓器の種類に依存しない機能や操作手順等を臓器間で共通化することで、検査対象臓器の変更や追加に伴う病理医の負担増加を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明にかかる病理診断支援装置の一実施形態を示す図である。
【図2】この病理診断支援装置の構成を示すブロック図である。
【図3】診断支援装置による診断支援処理を示すフローチャートである。
【図4】図3の処理中の支援機能の選択処理を示すフローチャートである。
【図5】共通支援機能および特化支援機能の処理の概要を示すフローチャートである。
【図6】臓器に特化したプラグインファイルの一例を示す図である。
【図7】臓器に特化したプラグインファイルの他の例を示すフローチャートである。
【図8】分類・統合結果の表示の一例を示す図である。
【図9】過去の支援結果を統計処理した結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1はこの発明にかかる病理診断支援装置の一実施形態を示す図である。この病理診断支援装置1は、ホストコンピュータ10と撮像部20とを備えている。ホストコンピュータ10は、例えば公知のパーソナルコンピュータやワークステーション端末と同等の構成および機能を有するものであり、各種の制御プログラムを実行するプロセッサ部100と、ユーザからの操作入力を受け付ける入力部150と、各種の情報を表示する表示部160と、制御プログラムや画像データなどの各種データを記録した外部記録媒体である光学ディスクODにアクセスしてデータを読み出すディスクドライブ170と、インターフェース180とを備えている。このホストコンピュータ10は、インターフェース180を介して構内LANやインターネットなどの電気通信回線30に接続可能となっている。
【0022】
表示部160としては例えば液晶ディスプレイを用いることができる。また、入力部150としては、例えばマウスのようなポインティングデバイスやキーボードのほか、表示部160と一体となったタッチパネルを用いてもよい。また、制御プログラムや画像データを記録した記録媒体としては、光学ディスクに限定されず、ハードディスクやメモリーカード、USBメモリなど任意のものを用いることができる。
【0023】
撮像部20は、CCDカメラ201が取り付けられた顕微鏡202を有している。顕微鏡202は、患者から採取された検体組織から作成されたプレパラートの拡大光学像をCCDカメラ201の受光部に結像し、CCDカメラ201はこれを撮像しデジタルデータ化していわゆるバーチャルスライドを作成する。検体組織は観察目的に応じて適宜の染色法によって染色される(例えばヘマトキシリン・エオジン(HE)染色)。
【0024】
ホストコンピュータ10は、光学ディスクODから読み込まれた制御プログラムにしたがって、撮像部20によって撮像されデジタルデータ(RGBデータ)化された検体組織の画像に各種の画像処理を施して表示部160に表示させることで、ユーザ(診断医)による病理診断を支援する。
【0025】
図2はこの病理診断支援装置1の構成を示すブロック図である。より詳しくは、ホストコンピュータ10が光学ディスクODから読み込んだ、もしくは電気通信回線30を介して受信した制御プログラムを実行することにより、図2の各機能ブロックがプロセッサ部100内でソフトウェアにより実現される。これらの機能ブロックにより実現される診断支援処理の内容については後に詳述するが、ここでは個々の機能ブロックの概要について簡単に説明しておく。なお、図2においては、各機能ブロック間でやり取りされる情報の内容を括弧を付して記載している。
【0026】
この病理診断支援装置1において処理対象となる画像(対象画像)は、例えば、検体組織を撮像しデータ化してなるバーチャルスライドの全体またはそれを複数に分割した画像である。また、同一または複数の患者から採取した複数の検体組織のそれぞれを個別に撮像した複数の画像を対象画像としてもよい。1つのバーチャルスライドを複数に分割して複数の対象画像とする場合には、後の処理でバーチャルスライドを復元できるように、元のバーチャルスライドにおける各対象画像の位置を特定できる情報(例えば、座標情報)を各対象画像データに付しておくことが望ましい。
【0027】
撮像部20で撮像された対象画像に対応するRGB画像データは、グリッド画像生成部101および後述する特化支援処理部120に与えられる。グリッド画像生成部101は、撮像部20から入力された対象画像を予め定められた、あるいはユーザにより指定された任意の大きさのグリッドで複数のグリッド画像に分割する。この際、各グリッド画像が元の対象画像においてどの位置にあったかを示す情報(例えば、座標情報)を、グリッド画像データに付与しておく。
【0028】
支援機能選択部102は入力部150を介したユーザからの操作入力を受け付けるインターフェースとして機能し、ユーザが当該装置で実行可能な支援機能の中から所望の機能を入力部150に選択入力すると、支援機能選択部102は、選択された機能に対応する選択情報を装置各部に送信する。
【0029】
グリッド画像生成部101により生成されたグリッド画像データを含む画像情報、および、支援機能選択部102から出力された選択情報は、検査対象臓器の種類に依存しない処理を行う共通支援処理部110に与えられる。また、撮像部20で撮像された対象画像および支援機能選択部102から出力された選択情報が、検査対象となる臓器に特化した処理を行う特化支援処理部120に与えられる。
【0030】
共通支援処理部110は、検査対象臓器の種類に依存しない処理、例えば、画像内における細胞核や細胞質に対応する部分を抽出しその位置や数を求める処理を実行する。より具体的には、画像の特徴を表す特徴量のうち、臓器に対する依存性の低い、つまり臓器を限定せず共通して適用可能な特徴量を「共通特徴量」として算出し、該共通特徴量に基づいて画像の分類を行う。
【0031】
複数種の処理アルゴリズムが共通支援機能記憶部112に記憶保存されており、これらの中から支援機能選択部102から与えられる選択情報に対応する処理アルゴリズムが選択されて共通支援機能実行部111上で実行され、特徴量の算出およびそれに基づく画像の分類が行われる。より具体的には、上記のような各特徴量を算出する特徴量算出器113に相当するダイナミックリンクライブラリと該特徴量に基づく分類を行う分類器114に相当するダイナミックリンクライブラリとの組み合わせにより実現されるプラグインファイル(以下、略して「PI」と称することがある)が共通支援機能記憶部112に複数記憶されており、共通支援機能実行部111に相当する処理ルーチンに適宜プラグインファイルを組み込んで実行することにより、上記の種々の処理アルゴリズムが選択実行される。こうして実行された処理の結果については、共通支援結果記憶部115に記憶される。
【0032】
プラグインファイルの選択については、入力部150および支援機能選択部102を介してユーザ、すなわち病理医が行うことができる。また、必要に応じてプラグインファイルの更新または追加を可能とすることにより、装置の機能を拡張することができる。
【0033】
一方、特化支援処理部120では、検査対象となる臓器に特化した処理を行う。すなわち、特化支援機能記憶部122には、当該臓器における病変部位の特徴を有する領域(特殊領域)を検出することに特化された特徴量(特化特徴量)を算出する特徴量算出器123とそれに基づき特殊領域を検出する検出器124とを組み合わせたプラグインファイルが臓器ごとに、あるいは各臓器における病変の種類ごとに用意されており、ユーザにより指定された臓器の種類に対応するプラグインが特化支援機能実行部121に相当する処理ルーチンに組み込まれて実行される。その結果は特化支援結果記憶部125に記憶される。
【0034】
特化支援機能記憶部122に記憶されている各プラグインにより算出される特徴量の種類や数および各臓器における病変の判断に利用される検出器の構成は当然に臓器ごとに異なったものとなるが、その例については後述する。
【0035】
共通支援結果記憶部115および特化支援結果記憶部125に記憶された支援処理の結果は、支援結果統合部131により統合される。支援結果統合部131では、それぞれの支援処理での共通支援結果および特化支援結果の和集合や積集合を取るなどの集合演算を行うことにより、共通支援処理部110および特化支援処理部120での処理結果を総合的な1つの処理結果に統合する。例えば、共通支援処理部110による分類結果に基づく画像の色分けと、特化支援処理部120による分類結果に基づく画像の色分けとを重ね合わせた合成画像データを作成する。これを表示処理部132で適宜に画像処理し、表示部160に表示させる。ユーザ(病理医)はこうして表示される画像を見て診断を行うことができる。
【0036】
図3は上記のように構成された診断支援装置1による診断支援処理を示すフローチャートである。また、図4は図3の処理中の支援機能の選択処理を示すフローチャートである。この病理診断支援装置1を用いた診断支援処理では、まず実行可能な複数の支援機能の中から所望の機能をユーザに選択させるための支援機能の選択処理を実行する(ステップS101)。
【0037】
図4に示すように、支援機能の選択処理では、最初に実行可能な支援機能の一覧を表示部160に表示させる(ステップS201)。ここで、ユーザの便宜のために、共通支援処理部110により実行可能な共通支援処理と、特化支援処理部120により実行可能な特化支援処理とが区別して表示されることが望ましい。支援機能選択部102は、こうして表示された機能の中から、共通支援機能、特化支援機能のそれぞれについて、ユーザからの機能選択入力を受け付ける(ステップS202、S203)。なお、共通支援機能、特化支援機能の選択の順序はいずれが先であってもよく、また1つ1つの機能について任意の順序で選択入力を受け付けるようにしてもよい。
【0038】
共通支援機能としては、例えば分類に使用する分類器のタイプ、すなわちその分類アルゴリズムや使用する特徴量を選択できるようにすることができる。また、特化支援機能としては、第一義には検査対象となる臓器の種類や検出したい病変の種類等を選択できるようにすることができるが、さらに使用する特徴量を選択できるようにしてもよい。
【0039】
ユーザにより支援機能が選択されると、その選択情報が支援機能選択部102から共通支援処理部110および特化支援処理部120のそれぞれに送られ、選択された機能に対応するプラグインファイルの情報が共通支援機能実行部111および特化支援機能実行部121のそれぞれに記憶される(ステップS204)。
【0040】
こうして支援機能が選択されると、次に検査対象となる対象画像を取得する(ステップS102)。対象画像は主として検体組織の全体を撮像したバーチャルスライド画像であるが、画像のサイズが大きい場合にはバーチャルスライド画像を複数の部分画像に分割して各部分画像をそれぞれ対象画像としてもよい。また、バーチャルスライド画像については撮像部20から受け取ることができるほか、他の撮像装置やストレージから電気通信回線30等を介して受け取ってもよい。対象画像はグリッド画像生成部101により複数のグリッド画像に分割され、共通支援処理部110に送られて共通支援機能が実行される(ステップS103)。また、特化支援処理部120には対象画像が送られて特化支援機能が実行される(ステップS104)。
【0041】
図5は共通支援機能および特化支援機能の処理の概要を示すフローチャートである。図5(a)に示す共通支援機能の処理では、臓器の種類に依存しない、概ね生体組織に共通して適用可能な特徴量(共通特徴量)の算出と(ステップS301)、これに基づく画像の分類(ステップS302)とを行う。
【0042】
より具体的には、例えば、カラー画像を画素単位でRGB成分に分解し、それらの輝度レベルあるいは色差成分に一定の閾値を設けて、画像から核領域(好塩基性でありB輝度レベルが比較的高い)と細胞質領域(好酸性でありR輝度レベルが比較的高い)とを特定する。
【0043】
その上で、グリッド画像ごとに以下の各要素に対応する特徴量:
核密度…(核領域の画素数の合計)/(核以外の組織の画素数の合計);
N/C比(Nuclear to Cytoplasmic Ratio)
…(核領域の画素数の合計)/(細胞質領域の画素数の合計);
核異型…各核領域の真円度の分散または標準偏差;
核の大小不同…各核領域の面積の分散または標準偏差;
などを共通特徴量として算出する。一般的に癌化した細胞では核の形状が崩れたり大きさがばらつく傾向があるため、これらの特徴量は臓器の種類によらず癌化した組織を検出するのに適している。
【0044】
また、これらに加えて、間質比、すなわち組織内に占める間質の面積比を共通特徴量に加えてもよい。ただ、細胞における実質と間質との区別については、臓器の種類ごとに異なる取り扱いがなされており、必ずしも統一的な定義がされているわけではないので、後述する臓器ごとに特化された特徴量として扱うようにしてもよい。
【0045】
そして、これらの共通特徴量を分類器に入力し、当該画像を複数の分類カテゴリ、例えば「正常組織」、「癌化した疑いのある組織」などに分類する。共通特徴量に基づく画像の分類は、例えばニューラルネットワーク、サポート・ベクタ・マシン(Support Vector Machine;SVM)や判別分析などの学習アルゴリズムにより行うのが望ましい。これらの分類器は、分類対象の画像から算出された特徴量を入力として、予め学習した結果を元に分類結果を出力するものである。細胞の大きさや形状は臓器や個体によるばらつきが大きいため、典型例となるサンプル画像を用いた学習アルゴリズムを用いた分類を行うことで、特徴量に基づく画像の分類を精度よく行うことができる。複数種の学習アルゴリズムをプラグイン化して共通支援機能記憶部112に記憶させておき、ユーザが適宜選択できるようにしておくことが望ましい。
【0046】
一方、図5(b)に示す特化支援機能の処理では、ユーザにより選択された機能に対応するプラグインファイルを実行することにより、検査対象臓器における病変の検出に特化した特徴量(特化特徴量)の算出と(ステップS401)、これに基づく特殊領域の検出(ステップS402)とを行う。例えば、前立腺における癌検出用のプラグインファイルの構成例は次のようなものである。
【0047】
前立腺癌の診断に広く利用されている画像上の特徴は、腺管組織内に存在する好酸性クリスタロイド(Crystalloid)である。前立腺組織における好酸性クリスタロイドは、主に腺管領域に存在する針状物質で大きさがある程度一定しており、HE染色では赤色に染まりやすい一方、青色に染まりにくいという特徴を有している。前立腺内の他の組織や物質でこれらの特徴を全て備えるものは知られておらず、これらの性質から高い確度でクリスタロイドを検出することが可能である。したがって、前立腺癌に対応した特化特徴量としては、例えばRおよびB輝度レベル、面積および形状などの要素に対応するものを用いることができる。これらの特徴量の値に対して所定の閾値を設定し、該閾値と算出値との比較により、前立腺癌の診断に利用される特殊領域であるクリスタロイドの検出を行うことができる。
【0048】
図6は臓器に特化したプラグインファイルの一例を示す図である。より具体的には、図6(a)は前立腺癌の検出に特化したプラグイン(PI)ファイルの処理内容を示すフローチャートであり、図6(b)はこのフローチャートが具現化している決定木の例を示す図である。この処理では、処理対象となる対象画像を取得し(ステップS502)、その対象画像から、上記したクリスタロイド検出のための特化特徴量を算出する(ステップS502)。
【0049】
次いで、算出された特徴量に基づき特殊領域の検出を行うが、上記のように臓器あるいはさらに病変の種類までを特定すると、多くの場合、特殊領域は極めて明確となる。例えばこの例では、好酸性クリスタロイドが画像内にあるか否かで特殊領域の有無を判断することができる。すなわち、対象画像内に上記特徴を有する部位、つまりクリスタロイドが検出されたか否かを判定し(ステップS503)、検出されていなければ当該対象画像に対しては共通支援結果を利用して判断する。
【0050】
図6(a)において一点鎖線で囲んだ処理、すなわちステップS503の処理は、図6(b)に示す決定木と等価である。このように特殊領域の基準が明確なもの、言い換えると診断基準が明確なものについては、学習型の分類器を用いるのではなく、この図の決定木のような学習によらない、診断基準に沿ったルールベースの検出器で処理することが可能である。これが可能となるのは、使用する特徴量および該特徴量に基づく特殊領域の検出アルゴリズムを特定の臓器の病変を検出する機能のみに特化させているからである。このような特徴量および該特徴量に基づく特殊領域の検出アルゴリズムは対象となる臓器が異なれば適用することができない可能性があるが、このように臓器に特化した特徴量および検出アルゴリズムをプラグイン化して臓器ごとに予め用意しておけば、検査対象臓器の種類に応じてそれらを選択実行することで、同一の装置で複数の臓器に対する診断支援が可能となる。
【0051】
なお、ここではクリスタロイドと見られる特殊領域が検出されない場合、ユーザは共通支援結果を利用して癌の疑いがあるか否かを判断するが、例えばこの場合に学習アルゴリズムによる分類器を適用して、種々の特徴量から総合的に癌の疑いがあるか否かを判断するようにしてもよい。
【0052】
図7は臓器に特化したプラグインファイルの他の例を示すフローチャートである。より具体的には、胃癌の検出に特化したプラグインの例である。胃癌検出用のプラグインファイルでは、対象画像を取得した後(ステップS601)、胃組織において癌化した部位に特異的に見られる特殊領域である印環細胞の検出に適した特徴量を算出する(ステップS602)。印環細胞では、形状が比較的円形に近く、その周縁部に扁平な核を有するという特徴がある。したがって、例えば細胞質の円形度や細胞内での核の位置、核の形状等に対応する特徴量を、この場合の「特化特徴量」とすることができる。そして、これらの値を予め設定した閾値と比較することで、印環細胞の有無を判別することができる。
【0053】
この場合の検出器は例えば以下のように構成される。まず、対象画像内において印環細胞とされる特殊領域が検出され(ステップS603)、かつその検出個数が所定の閾値以上である場合には(ステップS604)、当該画像の組織を癌化した疑いが強いと判断し特殊領域を特化支援結果として表示部160に表示する。また、これには該当しないが、当該画像の組織から一定の距離範囲内で検出された印環細胞の数が閾値以上である場合、つまり周辺領域に印環細胞とされる特殊領域が多く見られる場合にも、当該画像を癌化した疑いが強いと判断し該領域を特化支援結果として表示部160に表示する(ステップS605)。この例においても、一点鎖線で囲んだ部分が検出器として機能している。なお、検出器としては印環細胞を検出する機能のみを有するものとしてもよい。このような構成であっても、印環細胞の領域を特化支援結果として表示部160に表示することで、ユーザの診断を支援することができる。
【0054】
このように、この実施形態の病理診断支援装置1では、検査対象となる臓器として例えば前立腺が選択されているときと胃が選択されているときとでは、実行されている処理の内容は異なっている。しかしながら、ユーザから見れば、いずれも検査対象臓器において癌化している疑いのある部位を見出すという機能が実行されているという点には何ら変わりはない。また、このように臓器に特化された機能以外の機能は当然に同じである。このことは、対象となる臓器が変わっても装置の操作性や使用感に変化がないということを意味しており、従来技術のように、臓器ごとに全く異なるシステムが提供されることによるユーザの負担増を大きく軽減することができる。
【0055】
また、ある臓器について新たな診断基準が確立された場合には、それに対応するプラグインファイルを作成して組み込むことにより、直ちに当該新たな診断基準による分類機能を装置に付加することができる。このように、臓器に特化した機能をプラグイン化しておくことで、応用および拡張性に優れた診断支援装置とすることができる。
【0056】
図3に戻って、診断支援処理の説明を続ける。上記のようにして共通支援機能実行部111および特化支援機能実行部121でそれぞれ実行された分類の結果および特殊領域の検出結果は、共通支援結果記憶部115および特化支援結果記憶部125にそれぞれ記憶される(ステップS105)。これらの結果は支援結果統合部131によって適宜統合されて表示処理部132に送られ(ステップS106)、表示処理部132は統合された分類結果を画面表示するための表示用画像データを生成して表示部160に送出する。これによって、最終的な分類結果および検出結果が表示部160に表示されてユーザに提示される(ステップS107)。このようにしてユーザ(病理医)による診断が支援される。なお、特化支援機能実行部121によるルールベースでの検出の結果を特化支援結果記憶部125に記憶し、支援結果の統合に用いてもよい。
【0057】
図8は分類・統合結果の表示の一例を示す図である。ここでは胃の組織画像から癌の診断を行う場合の例を示す。共通支援機能の実行結果からは、例えば核密度、N/C比、核異型、核の大小不同から特定された、組織画像中の癌化した領域の座標などが表示情報として提供可能である。また、特化支援機能の実行結果からは、画像中の印環細胞の有無やその数、印環細胞に相当する特殊領域の色表示などを表示情報として提供可能である。
【0058】
図8の例では、表示部160の表示画面161に、検査対象となったバーチャルスライド画像Ivまたはその部分画像が表示されている。また、バーチャルスライド画像Ivを分割してなる各グリッド画像Igのうち、正常と判断されたものについては原画像の色をそのまま表示する一方、共通支援機能実行部111において癌化の疑いと判断されたグリッド画像領域R1に濃いハッチングを付すとともに、特化支援機能実行部121において癌化の疑いと判断された印環細胞の領域R2にはより薄いハッチングを付して視覚的に強調表示する。これによって、各領域に対する分類結果の違いを一目で視認することができるようにしている。
【0059】
また、画面左側には、ユーザにより選択された機能や各種の計算結果等を一覧表示させるテキスト領域Itを設けており、分類条件やより詳細な分類結果をユーザが必要に応じて確認することができるようになっている。これらの表示により、ユーザたる病理医は効率よく病理診断を行うことが可能となる。
【0060】
また、例えば図9に示すように、共通支援結果記憶部115および特化支援結果記憶部125にそれぞれ蓄積された過去の支援結果を支援結果統合部131で統計的に処理し表示部160に表示させることで、各臓器ごとの、あるいは各臓器間で共通する画像上における特徴の傾向を抽出し、学術研究や新たな診断基準を確立するための作業を支援することも可能となる。
【0061】
図9は過去の支援結果を統計処理した結果の一例を示す図である。患者から採取した組織を分析した結果として共通支援結果記憶部115および特化支援結果記憶部125に蓄積されたデータから、各特徴量ごとの統計データ(平均や分散、標準偏差等)を求め、図9に示すようにそれらをまとめて表示画面161に表示させることで、ユーザが臓器や病変ごとの画像上の傾向を把握しやすくなる。
【0062】
例えば腺組織が多数含まれる臓器(例えば前立腺)では、正常な組織であっても腺を構成する核が多く含まれるため、正常組織の核密度が高くなる場合がある。一方、筋や脂肪が多い臓器(例えば心臓など)では核密度は低くなる。つまり、臓器によって同じ特徴量でも正常と判断すべき閾値が異なる。そのため、過去の支援結果を元に支援結果統合部131において各臓器における共通の特徴量の統計データを求めることで、医師の診断をより効果的に支援することが可能となる。
【0063】
以上のように、この実施形態では、検体組織を撮像した画像を処理して病理診断を支援する病理診断支援システムにおいて、臓器ごとに特化された機能をプラグインファイルとして構成し、これを必要に応じて制御プログラム本体に組み込んで実行することで、単一のシステムで複数種の臓器の診断支援を行えるようにしている。このため、ユーザは対象臓器ごとに異なるシステムを用意する必要がないだけでなく、対象臓器が変わってもほぼ同様の使用感で装置を操作することができる。これにより、この実施形態の診断支援装置1は、医師による複数種の臓器に対する診断を極めて効果的に支援することが可能である。
【0064】
また、プラグインファイルを更新したり新たに組み込むことにより、これまで対応していなかった臓器または診断基準に直ちに対応することが可能となり、拡張性の優れた診断支援システムを構築することが可能となっている。
【0065】
以上説明したように、この実施形態では、撮像部20が本発明の「画像取得手段」として機能しており、表示部160が本発明の「出力手段」として機能している。また、共通支援処理部110により実現される特徴量算出器113および分類器114の機能がそれぞれ本発明の「共通特徴量算出手段」および「共通分類手段」に相当する一方、特化支援処理部120により実現される特徴量算出器123および特殊領域を検出するための検出器124の機能がそれぞれ本発明の「特化特徴量算出手段」および「特化検出手段」に相当している。
【0066】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、臓器の例として前立腺および胃を採り上げたが、これら以外の臓器に対する診断支援にも、本発明を適用することが可能である。また、本実施形態の説明において挙げた特徴量は一部の例を示したものに過ぎず、ここに記載していない任意の特徴量を用いることが可能である。
【0067】
また、上記実施形態では共通支援機能として画像の分類を「正常」と「癌化の疑い」という2つの分類カテゴリに分類しているが、分類カテゴリの数や種類はこれに限定されず任意である。例えば、「正常」のカテゴリをさらに細分化して「正常組織」、「正常組織(腺管)」などのカテゴリを設けたり、「癌化」のカテゴリをさらに細分化して、「高分化腺癌」、「低分化腺癌」などのカテゴリを設けてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、共通支援機能記憶部112に記憶させる、共通支援機能の処理アルゴリズムについてもプラグイン化することで、将来的なこれらの機能の更新や追加に対応することができるようにしているが、このことは本発明において必須の要件ではない。すなわち、これらは制御プログラム本体に予め組み込まれた固定的なものとしてもよい。この場合、例えば制御プログラム全体のアップデートを行うことで、機能の更新や追加を行うことが可能である。
【0069】
また、上記実施形態では、CCDカメラ201および顕微鏡202を有する撮像部20を「画像取得手段」として備えているが、本発明において撮像部は必須ではない。前記したように電気通信回線30からインターフェース180を介して、あるいは外部記録媒体から適宜のインターフェースを介して原画像を受け取ることも可能であり、その場合にはこれらのインターフェースが「画像取得手段」として機能することになる。また、この意味において、本発明の制御プログラムにおいては「画像を取得するための工程」は必須ではない。
【0070】
また、上記実施形態では、共通支援機能実行部111による分類結果と特化支援機能実行部121による検出結果とを統合したものを画面表示しているが、これらの結果をそれぞれ単独で表示する機能を有していてもよい。
【0071】
また、この実施形態では、光学ディスクODに記録された制御プログラムをホストコンピュータ10が実行することで各機能ブロックによる処理が実現されているが、制御プログラムを記録する記録媒体は光学ディスクに限定されるものではなく、前記したとおり他の任意の記録媒体を用いることができる。また、この制御プログラムは電気通信回線30を通じて配布されるものであってもよい。
【0072】
また、上記実施形態の病理診断支援装置1は汎用のホストコンピュータ10と撮像部20とを組み合わせて構成されているが、撮像部と専用端末とを組み合わせて病理診断支援装置を構成するようにしてもよい。また、既存のバーチャルスライド作成装置に本発明にかかる制御プログラムを組み込むことで、バーチャルスライド作成装置を病理診断支援装置として機能させるようにしてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、表示部160を本発明の「出力手段」として機能させているが、出力手段としては結果を表示するものに限定されず、例えば記録紙上に分類結果をプリント出力するものや、記録媒体または電気通信回線に対して分類結果を送出するものであってもよい。またこれらが併用されてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、特化支援処理部120は対象画像に対して処理を行う構成となっているが、共通支援処理部110と同様にグリッド画像生成部101により生成されたグリッド画像および画像情報に対して処理を行ってもよい。そして、該グリッド画像を表す領域に対して色付けを行いユーザに検出結果を示すようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
この発明は、医師による各種の病理診断をコンピュータシステム等によって支援する技術分野に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 パーソナルコンピュータ
20 撮像部(画像取得手段)
110 共通支援処理部
113 特徴量算出器(共通特徴量算出手段)
114 分類器(共通分類手段)
120 特化支援処理部
123 特徴量算出器(特化特徴量算出手段)
124 検出器(特化検出手段)
160 表示部(出力手段)
Iv バーチャルスライド画像
S101 臓器選択工程
S102 画像取得工程
S103 共通分類工程
S104 特化検出工程
S107 出力工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体組織を撮像した画像を取得する画像取得手段と、
前記画像に基づいて、臓器の種類に依存しない特徴量である共通特徴量を算出する共通特徴量算出手段と、
前記共通特徴量に基づいて、前記画像を複数の分類カテゴリに分類する共通分類手段と、
前記画像に基づいて、検査対象となる臓器に特化した特徴量である特化特徴量を算出する特化特徴量算出手段と、
前記特化特徴量に基づいて、前記画像から臓器に特有の特殊領域を検出する特化検出手段と、
前記共通分類手段による分類結果と、前記特化検出手段による検出結果とを出力する出力手段と
を備え、
前記特化特徴量算出手段が、臓器の種類に応じて交換可能である
ことを特徴とする病理診断支援装置。
【請求項2】
前記特化検出手段が前記特化特徴量算出手段と一体的に交換可能である請求項1に記載の病理診断支援装置。
【請求項3】
前記共通特徴量算出手段は前記画像を分割してなる複数のグリッド画像のそれぞれについて特徴量を算出し、前記共通分類手段は前記グリッド画像を分類する一方、
前記特化特徴量算出手段は前記画像について特徴量を算出し、前記特化検出手段は前記特殊領域を検出する請求項1または2に記載の病理診断支援装置。
【請求項4】
前記共通特徴量は、前記画像内の核密度、核の濃度、核の配列、核の大きさおよび核の形状の少なくとも1つに対応する特徴量を含む請求項1ないし3のいずれかに記載の病理診断支援装置。
【請求項5】
前記共通特徴量は、前記画像内における細胞質と核との面積比、核異型、核の大小不同の少なくとも1つに対応する特徴量を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の病理診断支援装置。
【請求項6】
前記出力手段は、前記共通分類手段による分類結果と、前記特化検出手段による検出結果とを統合して表示する表示部を有する請求項1ないし5のいずれかに記載の病理診断支援装置。
【請求項7】
前記特化検出手段は、機械学習によらない検出器を用いて前記画像から前記特殊領域の検出を行う請求項1ないし6のいずれかに記載の病理診断支援装置。
【請求項8】
前記共通分類手段は、機械学習による分類器を用いて前記画像の分類を行う請求項1ないし7のいずれかに記載の病理診断支援装置。
【請求項9】
検体組織を撮像した画像を取得する画像取得工程と、
前記画像に基づいて、臓器の種類に依存しない特徴量である共通特徴量を算出し、該共通特徴量に基づいて前記画像を複数の分類カテゴリに分類する共通分類工程と、
検査対象となる臓器を選択設定する臓器選択工程と、
前記画像に基づいて、前記検査対象として設定された臓器に特化した特徴量である特化特徴量を算出し、該特化特徴量に基づいて前記画像から臓器に特有の特殊領域を検出する特化検出工程と、
前記共通分類工程における分類結果と、前記特化検出工程における検出結果とを出力する出力工程と
を備え、
前記特化検出工程では、設定された臓器の種類に応じて前記特化特徴量の種類を異ならせる
ことを特徴とする病理診断支援方法。
【請求項10】
検体組織を撮像した画像に基づいて、臓器の種類に依存しない特徴量である共通特徴量を算出し、該共通特徴量に基づいて前記画像を複数の分類カテゴリに分類する共通分類工程と、
前記画像に基づいて、検査対象となる臓器に特化した特徴量である特化特徴量を算出し、該特化特徴量に基づいて前記画像から臓器に特有の特殊領域を検出する特化検出工程と、
前記共通分類工程における分類結果と、前記特化検出工程における検出結果とを出力する出力工程と
をコンピュータに実行させ、しかも、
前記特化検出工程では、設定された臓器の種類に応じて前記特化特徴量の種類を異ならせる
ことを特徴とする、病理診断支援のための制御プログラム。
【請求項11】
前記特化検出工程を実行するためのプログラムが、前記制御プログラム本体に対するプラグインファイルとして構成されている請求項10に記載の制御プログラム。
【請求項12】
請求項10または11に記載の制御プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−73179(P2012−73179A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219645(P2010−219645)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】