説明

癌の処置

【課題】ラパマイシンおよびその誘導体を含んでなる化合物群の新規使用の提供。
【解決手段】ラパマイシンおよびその誘導体、特に40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンを有効成分として含む、多様な固形腫瘍の処置剤。また、特に乳癌の処置において使用するための上記の化合物とアロマターゼ阻害剤との組合せ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規使用、特にラパマイシンおよびその誘導体を含んでなる化合物群の新規使用に関する。
【発明の概要】
【0002】
ラパマイシンは、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)により産生される既知のマクロライド系抗生物質である。ラパマイシンの適当な誘導体には、例えば、式I
【化1】

〔式中、
はCHまたはC3〜6アルキニルであり、
はHまたは−CH−CH−OHであり、そして
Xは=O、(H,H)または(H,OH)であり、
ただし、Xが=Oであり、かつ、RはCHである場合、RはH以外である。〕
の化合物が含まれる。
【0003】
式Iの化合物は、例えば、WO 94/09010、WO 95/16691またはWO 96/41807において開示されており、これらを引用することにより本明細書の一部とする。それらは、開示されたとおりに、またはこれらの引用文献において記載されたのと同様の手順により、製造され得る。
【0004】
好適な化合物は、32−デオキソラパマイシン、16−ペンタ−2−イニルオキシ−32−デオキソラパマイシン、16−ペンタ−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−ラパマイシン、16−ペンタ−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンであり、そしてさらに好ましくは、WO 94/09010中の実施例8として開示された、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン(以下、「化合物A」という。)である。
【0005】
例えばマクロフィリン−12(FK−506結合タンパク質またはFKBP−12としても知られる。)に結合するといった、例えばWO 94/09010、WO 95/16691またはWO 96/41807において記載されたような、観察された活性に基づいて、式Iの化合物は、例えば急性同種移植拒絶反応の処置において、例えば免疫抑制剤として有用であることが見出されている。今回、式Iの化合物は、特に固形腫瘍の、とりわけ進行固形腫瘍(advanced solid tumor)の癌化学療法に有用となる強力な抗増殖特性を有することが見出された。
【0006】
とりわけ抗癌性化合物が疾患の退行または安定化と関連しない場合において、今なお、固形腫瘍の癌処置の医療的手段を拡大する必要性が存在する。
【0007】
本発明の特定の知見に関連して、
1.1 固形腫瘍の処置方法であって、それを必要とする対象において、該対象に治療上有効量の式Iの化合物を投与することを含んでなる方法、
1.2 固形腫瘍の増殖を阻害する方法であって、それを必要とする対象において、該対象に治療上有効量の式Iの化合物を投与することを含んでなる方法、
【0008】
1.3 腫瘍退行、例えば、腫瘍重量の減少を誘導する方法であって、それを必要とする対象において、該対象に治療上有効量の式Iの化合物を投与することを含んでなる方法、
1.4 固形腫瘍侵襲またはそのような腫瘍増殖に関連した症候を処置する方法であって、それを必要とする対象において、該対象に治療上有効量の式Iの化合物を投与することを含んでなる方法、
1.5 腫瘍の転移性拡大を予防するかまたは微小癌組織の増殖を予防もしくは阻害する方法であって、それを必要とする対象において、該対象に治療上有効量の式Iの化合物を投与することを含んでなる方法、
が提供される。
【0009】
「固形腫瘍(solid tumor)」なる用語は、リンパ癌以外の(いかなる箇所の)腫瘍および/または転移、例えば、脳および他の中枢神経系の腫瘍(例えば、髄膜、脳、脊髄、脳神経および中枢神経系の他の部分、例えば神経膠芽腫または髄芽腫);頭部および/または頚部の癌;乳房の腫瘍;循環器系の腫瘍(例えば、心臓、縦隔および胸膜、および他の胸郭内の器官、血管腫瘍および腫瘍関連血管組織);排泄系の腫瘍(例えば、腎臓、腎盂、尿管、膀胱、その他の泌尿器);胃腸管の腫瘍(例えば、食道、胃、小腸、結腸、結腸直腸、直腸S状部結合部、直腸、肛門、および肛門管)、肝臓および肝内胆管、胆嚢、胆道のその他の部分、膵臓、他の消化器官に関する腫瘍;頭部および頚部;口腔(口唇、舌、歯肉、口底部、口蓋、および口の他の部分、耳下腺、および唾液腺の他の部分、扁桃、中咽頭、鼻咽頭、梨状陥凹、下咽頭、ならびに口唇、口腔および咽頭の他の部位);生殖系の腫瘍(例えば、陰門、膣、子宮頚部、子宮、卵巣、および雌性の生殖器の他の部位、胎盤、陰茎、前立腺、精巣、および雄性の生殖器に関わる他の部位);
【0010】
呼吸器管の腫瘍(例えば、鼻腔および中耳、副洞、喉頭、気管、気管支および肺、例えば小細胞肺癌または非小細胞肺癌);骨格系の腫瘍(例えば、四肢の骨および関節軟骨、骨関節軟骨および他の部位);皮膚の腫瘍(例えば、皮膚の悪性メラノーマ、非メラノーマ性皮膚癌、皮膚の基底細胞カルシノーマ、皮膚の扁平上皮細胞カルシノーマ、中皮腫、カポジ肉腫);ならびに末梢神経および自律神経系、結合組織および柔組織、後腹膜および腹膜、眼および付属器、甲状腺、副腎および他の内分泌腺および関連構造を含む他の組織に関わる腫瘍、リンパ節の二次的かつ明記していない悪性新生物(malignant neoplasm)、呼吸器および消化系の二次的な悪性新生物ならびに他の部位の二次的悪性新生物、を意味する。
【0011】
本明細書における前記または後記の腫瘍、腫瘍疾患、カルシノーマまたは癌という場合、腫瘍および/または転移の位置が何であれ、元の器官もしくは組織におけるおよび/または他の任意の位置における転移も代替的または追加的に含意される。
【0012】
一連のさらなる特異的または代替的実施態様において、本発明は、また、
1.6 脱調節性血管新生に関連する疾患の処置方法であって、それを必要とする対象において、該対象に治療上有効量のラパマイシンまたはその誘導体、例えばCCI779、ABT578または式Iの化合物を投与することを含んでなる方法、
1.7 脱調節性血管新生を阻害または制御する方法であって、それを必要とする対象において、該対象に治療上有効量のラパマイシンまたはその誘導体、例えばCCI779、ABT578または式Iの化合物を投与することを含んでなる方法、
【0013】
1.8 化学療法剤の活性を増大させる方法または化学療法剤に対する耐性を克服する方法であって、それを必要とする対象において、該化学療法剤に付随的または逐次的のどちらかで、該対象に治療上有効量のラパマイシンまたはその誘導体、例えばCCI779、ABT578または式Iの化合物を投与することを含んでなる方法、
1.9 化学療法剤が、宿主細胞または腫瘍形成および/もしくは転移形成に関与するプロセスに命令するか、あるいは増殖、生存、分化または薬剤耐性の獲得のために腫瘍細胞により利用される、シグナル伝達経路のインヒビターである、1.8に記載の方法、
【0014】
1.10 ラパマイシンまたはその誘導体、例えばCCI779、ABT578または式Iの化合物が断続的に投与される、上記の方法、
を提供する。
【0015】
CCI779は、ラパマイシン誘導体、すなわち、40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパノエート]−ラパマイシンまたは薬学的に許容されるその塩であり、そして、例えば米国特許第5,362,718号において開示されている。ABT578は、ジエンの還元をさらに含む40−置換ラパマイシン誘導体である。
【0016】
脱調節性血管新生に関連する疾患の例としては、限定されるわけではないが、例えば新生物疾患、例えば固形腫瘍が挙げられる。血管新生は、一定の直径、例えば約1〜2mmを超えて成長するそれらの腫瘍の必要条件であると考えられている。
【0017】
一連のさらなる特異的または代替的実施態様において、本発明は、また、
2.1 上記の1.1〜1.5で定義された任意の方法における使用のための式Iの化合物、
2.2 上記の1.6〜1.10または下記の7で定義された任意の方法における使用のための、ラパマイシンまたはその誘導体、例えばCCI779、ABT578または式Iの化合物、
【0018】
3.1 上記の1.1〜1.5で定義された任意の方法における使用のための医薬組成物の製造における使用のための式Iの化合物、
3.2 上記の1.6〜1.10または下記の7で定義された任意の方法における使用のために医薬組成物の製造における使用のための、ラパマイシンまたはその誘導体、例えばCCI779、ABT578または式Iの化合物、
【0019】
4.1 1またはそれ以上の薬学的に許容される希釈剤またはその担体とともに式Iの化合物を含んでなる、上記の1.1〜1.5で定義された任意の方法における使用のための医薬組成物、
4.2 1またはそれ以上の薬学的に許容される希釈剤またはその担体とともに、ラパマイシンまたはその誘導体、例えばCCI779、ABT578または式Iの化合物、例えば「化合物A」を含んでなる、上記の1.6〜1.10または下記の7で定義された任意の方法における使用のための医薬組成物、
【0020】
5.1 a)ラパマイシンまたはその誘導体、例えばCCI779、ABT578または式Iの化合物、例えば「化合物A」である第1の剤、およびb)化学療法剤、例えば後記のものである、コエージェントを含んでなる、組合せ医薬、
5.2 相乗的治療効果を得るための量の、a)ラパマイシンまたはその誘導体、例えばCCI779、ABT578または式Iの化合物、例えば「化合物A」である第1の剤、およびb)下記の(iv)または(v)のパラグラフで定義された化合物から選択される化学療法剤であるコエージェント、を含んでなる組合せ医薬、
【0021】
6. 例えば、付随的または逐次的に、治療上有効量のラパマイシンまたはその誘導体、例えばCCI779、ABT578または式Iの化合物、例えば「化合物A」、および化学療法剤、例えば後記のものである第2の医薬物質、の共投与を含んでなる、上で定義された方法、
【0022】
7. 移植後のリンパ組織増殖性の障害またはリンパ腺癌、例えば腫瘍侵襲またはそのような腫瘍増殖に関連する症候を処置する方法であって、それを必要とする対象において、該対象に、例えば付随的または逐次的に、ラパマイシンまたはその誘導体、例えばCCI779、ABT578または式Iの化合物、例えば「化合物A」、および化学療法剤、例えば後記のものである第2の医薬物質の共投与を含んでなる方法、
を提供する。
【0023】
「リンパ腺癌(lymphatic cancer)」なる用語は、例えば血液およびリンパ系の腫瘍(例えばホジキン病、非ホジキン病性リンパ腫、バーキットリンパ腫、AIDS−関連リンパ腫、悪性免疫増殖疾患、多発性骨髄腫および悪性形質細胞新生物(malignant plasma cell neoplasm)、リンパ性白血病、骨髄性白血病、急性または慢性リンパ性白血病、単球性白血病、特定の細胞型の他の白血病、特定されていない細胞型の白血病、リンパ球の他の特定されていない悪性新生物、造血および関連組織、例えばびまん性大細胞型リンパ腫、T細胞リンパ腫または皮膚T細胞リンパ腫)を意味する。
【0024】
「化学療法剤」なる用語は、とりわけ、ラパマイシンまたはその誘導体以外の任意の化学療法剤を意味する。化学療法剤は、
i. アロマターゼインヒビター、
ii. 抗エストロゲン、抗アンドロゲン(とりわけ、前立腺癌の場合において)またはゴナドレリンアゴニスト、
iii. トポイソメラーゼIインヒビターまたはトポイソメラーゼIIインヒビター、
iv. 微小管活性化剤、アルキル化剤、抗悪性腫瘍性代謝拮抗薬またはプラチナ化合物、
v. タンパク質もしくは脂質キナーゼ活性またはタンパク質もしくは脂質ホスファターゼ活性を標的化/減少化する化合物、さらなる抗血管新生性化合物、あるいは細胞分化プロセスを誘導する化合物、
vi. ブラジキニン1レセプターまたはアンギオテンシンIIアンタゴニスト、
【0025】
vii. シクロオキシゲナーゼインヒビター、ビスホスホネート、ヒストンデアセチラーゼインヒビター、ヘパラナーゼインヒビター(ヘパラン硫酸の分解を妨げる)、例えばPI−88、生物学的応答修飾因子、好ましくはリンフォカインまたはインターフェロン、例えばインターフェロンγ、ユビキチン化インヒビター、または抗アポトーシス経路をブロックするインヒビター、
viii. Ras、例えばH−Ras、K−RasまたはN−Ras発癌性アイソフォームのインヒビター、またはファルネシルトランスフェラーゼインヒビター、例えばL−744,832またはDK8G557、
ix. テロメラーゼインヒビター、例えばテロメスタチン、
x. プロテアーゼインヒビター、マトリックスメタロプロテイナーゼインヒビター、メチオニン アミノペプチダーゼインヒビター、例えばベンガミドまたはその誘導体、またはプロテオソームインヒビター、例えばPS−341、
を含むが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書において使用される「アロマターゼインヒビター」なる用語は、エストロゲン産生、すなわち、基質アンドロステンジオンおよびテストステロンの、それぞれ、エストロンおよびエストラジオールへの変換を阻害する化合物に関する。該用語は、ステロイド、とりわけアタメスタン(atamestane)、エクセメスタンおよびホルメスタン(formestane)ならびに、特に、非ステロイド、とりわけアミノグルテチミド、ログレチミド(roglethimide)、ピリドグルテチミド(pyridoglutethimide)、トリロスタン、テストラクトン、ケトコナゾール(ketokonazole)、ボロゾール、ファドロゾール、アナストロゾールおよびレトロゾールを含むが、これらに限定されない。エクセメスタンは、例えば市販されている形態で、例えばAROMASIN(商標)の商標名で、投与され得る。
【0027】
ホルメスタンは、例えば市販されている形態で、例えばLENTARON(商標)の商標名で、投与され得る。ファドロゾールは、例えば市販されている形態で、例えばAFEMA(商標)の商標名で、投与され得る。アナストロゾールは、例えば市販されている形態で、例えばARIMIDEX(商標)の商標名で、投与され得る。レトロゾールは、例えば市販されている形態で、例えばFEMARA(商標)またはFEMAR(商標)の商標名で、投与され得る。アミノグルテチミドは、例えば市販されている形態で、例えばORIMETEN(商標)の商標名で、投与され得る。アロマターゼインヒビターである化学療法剤を含んでなる本発明の組合せ剤は、特に、ホルモン受容体陽性腫瘍、例えば乳房の腫瘍の処置に有用である。
【0028】
本明細書において使用される「抗エストロゲン」なる用語は、エストロゲン受容体のレベルでエストロゲンの効果に拮抗する化合物に関する。該用語は、タモキシフェン、フルベストラント、ラロキシフェンおよび塩酸ラロキシフェンを含むが、これらに限定されない。タモキシフェンは、例えば市販されている形態で、例えばNOLVADEX(商標)の商標名で、投与され得る。塩酸ラロキシフェンは、例えば市販されている形態で、例えばEVISTA(商標)の商標名で、投与され得る。フルベストラントは、US 4,659,516において開示されているように製剤化され得るか、またはそれは、例えば市販されている形態で、例えばFASLODEX(商標)の商標名で、投与され得る。抗エストロゲン性の化学療法剤を含んでなる本発明の組合せ剤は、特に、エストロゲン受容体陽性腫瘍、例えば乳房の腫瘍の処置に有用である。
【0029】
本明細書において使用される「抗アンドロゲン」なる用語は、アンドロゲンホルモンの生物学的効果を阻害することができる任意の物質に関し、そして、例えばUS 4,636,505において開示されたように、製剤化され得るビカルタミド(CASODEX(商標))を含むが、これに限定されない。
【0030】
本明細書において使用される「ゴナドレリンアゴニスト」なる用語は、アバレリックス(abarelix)、ゴセレリンおよび酢酸ゴセレリンを含むが、これらに限定されない。ゴセレリンはUS 4,100,274において開示されており、そして、例えば市販されている形態で、例えばZOLADEX(商標)の商標名で、投与され得る。アバレリックスは、例えば、US 5,843,901において開示されているように、製剤化され得る。
【0031】
本明細書において使用されるように「トポイソメラーゼIインヒビター」なる用語は、トポテカン(topotecan)、イリノテカン、9−ニトロカンプトテシン(nitrocamptothecin)および大分子カンプトテシンコンジュゲートPNU−166148(WO99/17804における化合物A1)を含むが、これらに限定されない。イリノテカンは、例えば市販されている形態で、例えばCAMPTOSAR(商標)の商標名で、投与され得る。トポテカンは、例えば市販されている形態で、例えばHYCAMTIN(商標)の商標名で、投与され得る。
【0032】
本明細書において使用される「トポイソメラーゼIIインヒビター」なる用語には、ドキソルビシン(リポソーム製剤、例えばCAELYX(商標)を含む)、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびネモルビシン(nemorubicin)のようなアンスラサイクリン類、アンスラキノン類のミトキサントロンおよびロソキサントロン(losoxantrone)、ならびにポドフィロトキシン類のエトポシドおよびテニポシドが含まれるが、これらに限定されない。エトポシドは、例えば市販されている形態で、例えばETOPOPHOS(商標)の商標名で、投与され得る。テニポシドは、例えば市販されている形態で、例えばVM 26−BRISTOL(商標)の商標名で、投与され得る。ドキソルビシンは、例えば市販されている形態で、例えばADRIBLASTIN(商標)の商標名で、投与され得る。エピルビシンは、例えば市販されている形態で、例えばFARMORUBICIN(商標)の商標名で、投与され得る。イダルビシンは、例えば市販されている形態で、例えばZAVEDOS(商標)の商標名で、投与され得る。ミトキサントロンは、例えば市販されている形態で、例えばNOVANTRON(商標)の商標名で、投与され得る。
【0033】
「微小管活性化剤」なる用語は、タキサン類、例えばパクリタキセルおよびドセタキセル、ビンカアルカロイド類、例えば、ビンブラスチン、とりわけ硫酸ビンブラスチン、ビンクリスチン、とりわけ硫酸ビンクリスチン、ビノレルビン、ディスコデルモリド類およびエポチロン類ならびにそれらの誘導体、例えばエポチロンBまたはその誘導体を含むが、これらに限定されない微小管安定化剤および微小管不安定化剤に関する。パクリタキセルは、例えばTAXOL(商標)として、例えば市販されている形態で投与され得る。ドセタキセルは、例えば市販されている形態で、例えばTAXOTERE(商標)の商標名で、投与され得る。硫酸ビンブラスチンは、例えば市販されている形態で、例えばVINBLASTIN R.P.(商標)の商標名で、投与され得る。硫酸ビンクリスチンは、例えば市販されている形態で、例えばFARMISTIN(商標)の商標名で、投与され得る。ディスコデルモリドは、例えばUS 5,010,099において開示されているように、入手することができる。
【0034】
本明細書において使用される「アルキル化剤」なる用語は、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファランまたはニトロソウレア(BCNUまたはGliadel(商標))を含むが、これらに限定されない。シクロホスファミドは、例えば市販されている形態で、例えばCYCLOSTIN(商標)の商標名で、投与され得る。イホスファミドは、例えば市販されている形態で、例えばHOLOXAN(商標)の商標名で、投与され得る。
【0035】
「抗悪性腫瘍性代謝拮抗薬」なる用語は、5−フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、メソトレキセートおよびエダトレキサート(edatrexate)を含むが、これらに限定されない。カペシタビンは、例えば市販されている形態で、例えばXELODA(商標)の商標名で、投与され得る。ゲムシタビンは、例えば市販されている形態で、GEMZAR(商標)の商標名で、投与され得る。
【0036】
本明細書において使用される「プラチナ化合物」なる用語は、カルボプラチン、シスプラチンおよびオキサリプラチン(oxaliplatin)を含むが、これらに限定されない。カルボプラチンは、例えば市販されている形態で、例えばCARBOPLAT(商標)の商標名で、投与され得る。オキサリプラチンは、例えば市販されている形態で、例えばELOXATIN(商標)の商標名で、投与され得る。
【0037】
本明細書において使用される「タンパク質もしくは脂質キナーゼ活性を標的化/減少化する化合物、またはさらなる抗血管新生性化合物」なる用語は、タンパク質チロシンキナーゼならびに/もしくはセリンおよび/またはトレオニンキナーゼのインヒビター、あるいは脂質キナーゼインヒビター、例えばレセプターチロシンキナーゼの上皮細胞成長因子ファミリー(ホモ−またはヘテロダイマーとしてのEGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4)の活性を標的化、減少化または阻害する化合物、レセプターチロシンキナーゼの血管内皮成長因子ファミリー(VEGFR)、血小板由来成長因子−レセプター(PDGFR)、繊維芽細胞成長因子−レセプター(FGFR)、インスリン様成長因子レセプター1(IGF−1R)、Trkレセプター チロシンキナーゼファミリー、Axlレセプター チロシンキナーゼファミリー、Retレセプターチロシンキナーゼ、Kit/SCFRレセプター チロシンキナーゼ、c−Ablファミリーのメンバーおよびそれらの遺伝子の融合生成物(例えば、BCR−Abl)、プロテインキナーゼCのメンバー(PKC)およびセリン/トレオニンキナーゼのRafファミリー、MEK、SRC、JAK、FAK、PDKまたはPI(3)キナーゼファミリーのメンバー、またはPI(3)−キナーゼ−関連キナーゼファミリーのメンバー、および/またはサイクリン依存性キナーゼファミリー(CDK)のメンバー、ならびにそれらの活性と別のメカニズムを有する抗血管新生化合物、例えばタンパク質または脂質キナーゼ阻害に無関係もの、を含むがこれらに限定されない。
【0038】
VEGFRの活性を標的化、減少化または阻害する化合物は、とりわけ、VEGFレセプター チロシンキナーゼを阻害するか、VEGFレセプターを阻害するか、またはVEGFに結合する化合物、タンパク質または抗体であり、そして特に、WO 98/35958において総括的におよび具体的に開示された化合物、タンパク質またはモノクローナル抗体、例えば1−(4−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジンまたは薬学的に許容されるその塩、例えばコハク酸塩、またはWO 00/09495、WO 00/27820、WO 00/59509、WO 98/11223、WO 00/27819およびEP 0 769 947において開示されたもの;M. PrewettらによりCancer Research 59 (1999) 5209-5218において、F. YuanらによりProc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 93, pp. 14765-14770, Dec. 1996において、Z. ZhuらによりCancer Res. 58, 1998, 3209-3214において、およびJ. MordentiらによりToxicologic Pathology, Vol. 27, no. 1, pp 14-21, 1999において開示されたもの;WO 00/37502およびWO 94/10202において開示されたもの;Angiostatin(商標)(M. S. O'Reilly et al, Cell 79, 1994, 315-328により記載された); Endostatin(商標)(M. S. O'Reilly et al, Cell 88, 1997, 277-285により記載された); アントラニル酸アミド;ZD4190;ZD6474;SU5416;SU6668;または抗−VEGF抗体または抗−VEGFレセプター抗体、例えばRhuMabである。
【0039】
抗体なる用語は、インタクトのモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトの抗体から形成された多選択性抗体、およびそれらが所望の生物学的活性を示す限りにおいて抗体のフラグメントを意味する。
【0040】
上皮成長因子レセプターファミリーの活性を標的化、減少化または阻害する化合物は、とりわけ、EGFレセプターチロシンキナーゼファミリーのメンバー、例えばEGFレセプター、ErbB2、ErbB3およびErbB4を阻害するかまたはEGFもしくはEGF関連リガンドに結合する化合物、タンパク質または抗体であり、そして特に、WO 97/02266、例えば実施例39の化合物、またはEP 0 564 409、WO 99/03854、EP 0520722、EP 0 566 226、EP 0 787 722、EP 0 837 063、US 5,747,498、WO 98/10767、WO 97/30034、WO 97/49688、WO 97/38983、およびとりわけ、WO 96/30347(例えば、CP 358774として知られる化合物)、WO 96/33980(例えば、化合物ZD 1839)およびWO 95/03283(例えば、化合物ZM105180)において総括的かつ具体的に記載された化合物、タンパク質またはモノクローナル抗体;例えばトラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、セツキシマブ(cetuximab)、イレッサ、OSI−774、CI−1033、EKB−569、GW−2016、E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3またはE7.6.3である。
【0041】
PDGFRの活性を標的化、減少化または阻害する化合物は、とりわけ、PDGFレセプターを阻害する化合物、例えば、N−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体、例えばイマチニブである。
【0042】
c−AbIファミリーのメンバーおよびそれらの遺伝子融合産物の活性を標的化、減少化または阻害する化合物、例えばN−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体、例えばイマチニブ;PD180970;AG957;またはNSC 680410。
【0043】
プロテインキナーゼC、Raf、MEK、SRC、JAK、FAKおよびPDKファミリーのメンバー、またはPI(3)キナーゼまたはPI(3)キナーゼ−関連ファミリーのメンバー、および/またはサイクリン−依存性キナーゼファミリー(CDK)のメンバーを標的化、活性化または阻害する化合物は、とりわけ、EP 0 296 110に開示されたスタウロスポリン誘導体、例えば、ミドスタウリンであり;さらなる化合物の例としては、例えばUCN−01、サフィンゴール(safingol)、BAY 43−9006、ブリオスタチン1、ペリフォシン(Perifosine);イルモフォジン(Ilmofosine);RO 318220およびRO 320432;GO 6976;Isis 3521;またはLY333531/LY379196が挙げられる。
【0044】
さらなる抗血管新生化合物は、例えばサリドマイド(THALOMID)およびTNP−470である。
タンパク質または脂質ホスファターゼの活性を標的化、減少化または阻害する化合物は、例えば、ホスファターゼ1、ホスファターゼ2A、PTENまたはCDC25のインヒビター、例えば、オカダ酸またはその誘導体である。
【0045】
細胞分化プロセスを誘導する化合物は、例えば、レチノイン酸、α−、γ−もしくはδ−トコフェロール、またはα−、γ−もしくはδ−トコトリエノールである。
本明細書において使用される「シクロオキシゲナーゼインヒビター」なる用語には、例えばセレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、エトリコキシブ、バルデコキシブまたは5−アルキル−2−アリールアミノフェニル酢酸、例えば5−メチル−2−(2'−クロロ−6'−フルオロアニリノ)フェニル酢酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書において使用される「ヒストンデアセチラーゼインヒビター」なる用語は、MS−27−275、SAHA、ピロキサミド(pyroxamide)、FR−901228またはバルプロ酸を含むが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書において使用される「ビスホスホネート」なる用語には、エトリドロン酸(etridonic acid)、クロドロン酸、チルドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、イバンドロン酸(ibandronic acid)、リセドロン酸およびゾレドロン酸が含まれるが、これらに限定されない。「エトリドロン酸」は、例えば市販されている形態で、例えばDIDRONEL(商標)の商標名で、投与され得る。「クロドロン酸」は、例えば市販されている形態で、例えばBONEFOS(商標)の商標名で、投与され得る。「チルドロン酸」は、例えば市販されている形態で、例えばSKELID(商標)の商標名で、投与され得る。「パミドロン酸」は、例えば市販されている形態で、例えばAREDIA(商標)の商標名で、投与され得る。「アレンドロン酸」は、例えば市販されている形態で、例えばFOSAMAX(商標)の商標名で、投与され得る。「イバンドロン酸」は、例えば市販されている形態で、例えばBONDRANAT(商標)の商標名で、投与され得る。「リセドロン酸」は、例えば市販されている形態で、例えばACTONEL(商標)の商標名で、投与され得る。「ゾレドロン酸」は、例えば市販されている形態で、例えばZOMETA(商標)の商標名で、投与され得る。
【0048】
本明細書において使用される「マトリックスメタロプロテイナーゼインヒビター」なる用語には、コラーゲンペプチド類似およびペプチド非類似インヒビター、テトラサイクリン誘導体、例えばヒドロキサメートペプチド類似インヒビター バチマスタット(batimastat)およびその経口的に生物利用可能なアナログ、マリマスタット、プリノマスタット(prinomastat)、BMS−279251、BAY 12−9566、TAA211またはAAJ996が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
特許出願または科学刊行物が引用されたそれぞれの場合において、その化合物に関連する主題発明を、引用により本願の一部とする。同様に、薬学的に許容されるそれらの塩、対応するラセミ体、ジアステレオマー、エナンチオマー、互変異性体ならびに、存在する場合には上の開示された化合物の対応する結晶変態、例えば、溶媒和物、水和物および多形(これらはそれらの中に開示されている。)も含まれる。本発明の組合せ剤において活性成分として使用される化合物は、それぞれ、引用文献において記載されたように製造および投与され得る。また、上に示した2を超える別々の活性成分の組合せも本発明の範囲内である。すなわち、本発明の範囲内の組合せ医薬は、3またはそれ以上の活性成分を含み得る。さらに、第1の剤およびコエージェントの両方が、同一の成分ということはない。
【0050】
上で特定したような固形腫瘍の処置における式Iの化合物の利用は、動物試験モデル、ならびに臨床において、例えば後記の方法にしたがって例証され得る。
【実施例】
【0051】
A. インビトロ
A.1 他の剤との組合せの抗増殖活性
細胞株、例えば「化合物A」耐性A549株(低nMの範囲のIC50)対、比較の「化合物A」耐性KB−31およびHCT116株(μMの範囲のIC50)を、96−ウェルプレート(100μl培地中1,500細胞/ウェル)に加え、そして24時間インキュベートする。その後、各化合物(式Iの化合物または既知の化学療法剤)の2倍希釈シリーズを、単独または対の組合せのどちらかにてセパレートチューブ中で(8×各化合物のIC50で開始して)、そして希釈液をウェルに加える。次いで、細胞を3日間、再びインキュベートする。メチレンブルー染色を4日目(day 4)に行い、そして結合した染料の量(これは、染料に結合する生存細胞の数に比例する。)を測定する。
【0052】
その後、IC50を、Calcusynプログラムを用いて測定する。これにより、相互作用、すなわち、いわゆる非排他的組合せインデックス(CI)を測定することができる。ここで、CI 約1=相互作用はほとんど相加的;0.85〜0.9=やや相乗的;<0.85=相乗的である。本アッセイにおいて、式Iの化合物は、別の化学療法剤との組合せにおいて興味深い抗増殖活性を示す。例えば、下記のCI値は、「化合物A」とシスプラチン、パクリタキセル、ゲムシタビンおよびドキソルビシンの組合せで得られ、これらは相乗的効果を示している。
【表1】

【0053】
さらに、本アッセイにおいて、「化合物A」は、A549細胞の生存度の減少およびゲムシタビンと組み合せて使用した場合の細胞死の減少を増強する。
【0054】
A.2 抗血管新生活性
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対する、ラパマイシンまたはその誘導体、例えば「化合物A」の抗増殖活性のインビトロアッセイにおいて、VEGF−およびbFGF−およびFBS−刺激性増殖に関して、それぞれ、120±22pMおよび841±396、および>10000pMのIC50値が示される。さらに、bFGF−刺激性正常ヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF)増殖に対する「化合物A」の有意な効果は、同じ濃度範囲で観察されない。これらの結果により、「化合物A」がHUVECの増殖を阻害し、特にVEGF−誘発性増殖に対して強力であることが示される。VEGFは重要なプロ−血管新生因子である。
【0055】
B. インビボ
下記のアッセイにおいて、抗腫瘍活性をT/C%(処置動物の腫瘍容積における平均増加を、対照動物の腫瘍容積の平均増加で除し、100をかけたもの)、および%縮退(腫瘍容積から最初の腫瘍容積を引き、最初の腫瘍容積で除し、そして100をかけたもの)で表す。
【0056】
B.1 A549ヒト肺腫瘍異種移植片における活性
A549腫瘍のフラグメント(約25mg;CCL 185細胞株由来、ATCC、Rockville MD、USA)を、BALB/cヌードマウスの左わき腹に皮下移植する。腫瘍移植後の7日目または12日目に処置を開始する。試験化合物を、それぞれ、7/12日目〜38/55日目に、1日1回経口投与する。本アッセイにおいて、0.1mg/kg〜2.5mg/kgの1日投与量で投与した場合、式Iの化合物は用量依存性の腫瘍増殖の阻害を示す;例えば、1つの典型的実験において、2.5mg/kgの投与量で投与された場合の「化合物A」は持続的縮退をもたらす(41%);0.5mg/kgの投与量では、一過性の縮退がもたらされる(17日目で38%)が、最終的なT/Cは16%である。そして、0.1mg/kgの投与量では腫瘍成長を遅延させ、最終的なT/Cは43%である(対照動物のT/Cは100%である。)。
【0057】
B.2 KB−31ヒト類表皮性腫瘍異種移植片における活性
KB−31腫瘍のフラグメント(約25mg;Roswell Park Memorial Institute Buffalo、NY、USAから入手した細胞株由来)を、BALB/cヌードマウスの左わき腹に皮下移植する。腫瘍移植後7日目または10日目に、処置を開始する。試験化合物を、それぞれ、7/10日目〜25/35日目に、1日1回経口投与する。抗腫瘍活性を、上で示したT/C%で表す。本アッセイにおいて、1日に0.5mg/kg〜2.5mg/kgの範囲で投与する場合、式Iの化合物は腫瘍の増殖を阻害する;例えば、1つの典型的な実験において、2.5mg/kg/日の投与量で投与された場合の「化合物A」は、25%の最終的T/C値をもたらす(対照動物のT/Cは100%である。)。
【0058】
B.3 CA20948ラット膵臓腫瘍における活性
雄性Lewisラットにおいて、ドナーラット由来のCA20948腫瘍細胞懸濁液を左わき腹に皮下注射することにより、腫瘍を確立する。接種後4日目に処置を開始する。試験化合物を、接種後4日目から9〜15日目に、1日1回(週に6日)経口投与する。抗腫瘍活性を、上で示したT/C%で表す。本アッセイにおいて、0.5mg/kg〜2.5mg/kgの1日投与量で投与した場合、式Iの化合物は腫瘍増殖を阻害する;例えば、典型的な実験において、2.5mg/kgの1日投与量で投与した場合の「化合物A」は、23%の最終的T/C値をもたらす。同じ実験において、5mg/kgで週に2回断続的に「化合物A」を投与すると、最終的なT/C値は32%となる。対照のビヒクルと比べた場合、「化合物A」は、これらのアッセイにおいて、CA20948膵臓腫瘍の増殖の速度を、有意に、かつ、一貫して、減少させる(対照動物のT/Cは100%と定義される。)。
【0059】
式Iの化合物、例えば「化合物A」を、上で開示した手順にしたがう更なる腫瘍モデルにおいて試験した。例えば、「化合物A」の2.5mg/kgまたは5mg/kgの1日投与量は、ヒトNCI H−596肺腫瘍モデルおよびヒトMEXF 989メラノーマ腫瘍モデルに投与した場合、それぞれ、18%および9%の最終T/Cをもたらす;同所性マウスB16/BL6メラノーマ腫瘍モデルに投与した場合、5mg/kgでは20%(一次腫瘍)および36%(頚部リンパ節転移)の最終T/Cがもたらされ、そしてヒトAR42J膵腫瘍モデルに投与された場合は24%であり;2.5mg/kgでは、多剤耐性(MDR)ヒトKB−8511類表皮性腫瘍モデルに投与された場合、28%の最終T/Cがもたらされる。式Iの化合物、例えば「化合物A」が、ヒトAR42J膵腫瘍を移植したマウスに、断続的に、例えば週に連続して2日または週に2回投与された場合も、また、良好な抗腫瘍応答が得られる。
【0060】
B.4 ドキソルビシンとの組合せ
ヒトKB−31類表皮腫瘍を移植したマウスを、週に1回5mg/kg静脈注射の投与量のドキソルビシンで、1日1回2.5mg/kg経口投与の投与量の式Iの化合物、例えば「化合物A」で、または両者の組合せで、21日間処置する。その後、式Iの化合物が従来の剤に対して応答する腫瘍の増殖を抑制するかどうかを調べるために、組合せ処置群において、式Iの化合物単独での処置を継続する。抗腫瘍活性を、上に示したように、T/C%または%縮退で表す。例えば、「化合物A」とドキソルビシンの組合せ剤は、いずれか一方の剤(「化合物A」、T/C 32%;ドキソルビシン 44%縮退)と比較してより大きな抗腫瘍効果(74%縮退)をもたらす。「化合物A」での処置を加える場合、ドキソルビシンにより引き起こされる体重減少の増悪は全く起こらない。ドキソルビシンの投与を止めた後の、組合せ処置群における「化合物A」での処置を継続することは、腫瘍の増殖を阻害し、ドキソルビシン単独治療群の腫瘍容積は、組合せ処置群のそれよりも有意に大きい。さらに、組合せ剤は処置終了後14日目において、ドキソルビシン単独(3/8腫瘍)よりも大きな治癒率(8/8腫瘍)をもたらすと思われる。
【0061】
B.5 シスプラチンとの組合せ
ヒトNCI H−596肺腫瘍が移植されたマウスを、週に1回2.5mg/kg静脈注射の投与量のシスプラチンで、1日1回2.5mg/kg経口投与の投与量の式Iの化合物、例えば「化合物A」で、または両者の組合せで、21日間処置する。抗腫瘍活性を、上で示したように、T/C%または%縮退で表す。「化合物A」とシスプラチンの組合せ剤は、どちらか一方の剤と比べて(「化合物A」、T/C 26%;シスプラチン、T/C 26%)、より優れた抗腫瘍効果(5%縮退)をもたらす。該組合せ剤は、耐容性の悪化をもたらさなかった。
【0062】
B.6 抗血管新生活性
B16/BL6細胞(5×10)を、C57BL/6マウスの耳に皮内注射する。7日後に、ラパマイシンまたはその誘導体、例えば「化合物A」、あるいはビヒクルでの処置を開始する。一次腫瘍および頚部リンパ節を、管密度(vessel density)の測定のために毎日処置し、2週間後に回収する。腫瘍の導管の内皮を、マウスの屠殺の少し前に静脈注射した核染色色素(Hoechst 33342、20mg/kg)を用いて可視化する。
【0063】
腫瘍および転移を急速冷凍し、断片をエピ蛍光源(epifluorescent source)を備えた光学顕微鏡で調べる。蛍光H33342−標識内皮細胞を、導管の数および腫瘍部位全体の大きさを測定するために使用する。管を、10μm−サイズの範囲のグループに割り当てる。管の大きさの分布を、頻度ヒストグラム分析(histogram frequency analysis)を用いて評価する。5mg/kg経口投与の投与量で、ラパマイシンまたはその誘導体は、対照と比較して、一次腫瘍(例えば、「化合物A」ではT/C 50%)および転移(例えば、「化合物A」ではT/C 40%)の両方において、管密度を減少させる。ラパマイシンまたはその誘導体、例えば「化合物A」は、また、転移における管サイズ分布も変化させる。
【0064】
B.7 抗血管新生剤との組合せ
B16/BL6細胞(5×10)を、C57BL/6マウスの耳に皮内注射する。7日後に、ラパマイシンまたはその誘導体、例えば「化合物A」、VEGFレセプター チロシンキナーゼインヒビター、例えば1−(4−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジンまたはその塩、例えばコハク酸塩、あるいは両者の組合せでの処置を開始し、そして、一次腫瘍の成長および重量に対する効果ならびに頚部リンパ節の転移を、それぞれ、モニターする。毎日の、抗血管新生剤(100mg/kg経口投与)またはラパマイシンまたはその誘導体、例えば「化合物A」、(1mg/kg経口投与)の単独投与は、一次腫瘍の大きさを減少させる(最終T/C:それぞれ、65%および74%)が、これら2つの剤の組合せ剤は相乗的である(T/C 12%)。ラパマイシンまたはその誘導体、例えば「化合物A」および抗血管新生剤単独での処置は、(局所的転移に関連する)頚部リンパ節の重量を減少させる(T/C:それぞれ、75%および34%)が、該組合せ剤は、さらにリンパ節重量を減少させる(T/C 13%)。
【0065】
該処置は、対照と比較して、有意に体重増加を促進する。一次腫瘍に関して、可能性のある相互作用の分析により、抗血管新生剤/対照=0.66;「化合物A」/対照= 0.77;「化合物A」および抗血管新生剤/対照=0.135と、「化合物A」および抗血管新生剤は相乗的であることが示される。「化合物A」および抗血管新生剤/対照は、「化合物A」/対照×抗血管新生剤/対照(0.51)よりも小さいので、これは相乗的と定義される。転移に関して、分析により、また、抗血管新生剤/対照=0.337;「化合物A」/対照=0.75;「化合物A」および抗血管新生剤/対照=0.122と、「化合物A」と抗血管新生剤は相乗的であることが示される。「化合物A」および抗血管新生剤/対照は、「化合物A」/対照×抗血管新生剤/対照(0.252)よりも小さいので、これもまた相乗的と定義される(Clark, Breast Cancer Research Treatment 1997;46:255)。
【0066】
C. 臨床試験
C.1 固形腫瘍における単独治療として式Iの化合物、例えば「化合物A」の臨床上の利点の調査
研究の目的:漸増投与研究において、週に1回経口投与した該化合物の最適投与量、および固形腫瘍における最適投与量の効力を同定すること。
【0067】
本研究は2部に分かれている:
第1部:
第1の目的:週に1回経口投与された式Iの化合物、例えば「化合物A」の最適投与量を同定し、これを、mTORの延長された阻害、およびインビボ前臨床レベルの抗腫瘍効果を達成するものと少なくとも同等の該化合物の血中濃度に関連した最小限の投与量であると仮定する。
【0068】
第2の目的:癌患者に単独投与した場合の該化合物の安全性評価および腫瘍代謝活性における変化の評価
計画:進行性悪性固形腫瘍を有し、難治性または標準的治療に抵抗性の、4患者連続的グループに、式Iの化合物、例えば「化合物A」を、7日ごとに異なる投与量(グループ1に5mgを投与し;グループ2に10mgを投与し、グループ3に20mgを投与する。)で、4週間投与する。第4週において、薬動力学的プロフィール、および末梢リンパ球におけるp70s6キナーゼの阻害により反映されるmTOR阻害のプロフィールを確立する。比較18−フルオロデオキシグルコース(FDG)ポジトロン放射型断層(FDG−PET)イメージング(1回目の投与前、3回目の投与後)を行い、腫瘍代謝の変化を調べる。
【0069】
患者の主な選択分類:進行期(III〜V)固形腫瘍を有し、難治性または標準的治療に抵抗性の成人。少なくとも1つの腫瘍性病変が測定され得る(1つの寸法において、>20mm)。
評価のための主な変数:安全性(有害事象)、標準的血清生化学および血液学、試験化合物の血液レベル、リンパ球p70−s6キナーゼ活性、FDG−PETによる腫瘍グルコース取り込みの変化。
【0070】
第2部:
第1の目的:腫瘍応答により示されたような第1部において同定された、最適投与量で週に1度投与された場合の、進行性固形腫瘍を有する患者における、式Iの化合物、例えば「化合物A」の効力を調べること。
【0071】
第2の目的:この投与量での該化合物の安全性評価
計画:難治性または標準的治療に抵抗性の、進行性の、進行期の固形腫瘍を有する20人の患者に、第1部の結果として推奨される投与量で該化合物を投与する。患者の一般的な臨床状態を、身体的および実験室的試験により毎週調べる。腫瘍重量の変化を、放射線実験により2ヵ月ごとに評価する。最初に、患者は2ヵ月間の処置を受ける。その後、彼らの疾患が進行しない限り処置を続け、そして該医薬は十分に認容される。
【0072】
評価のための主な変数:安全性(有害事象)、標準的血清生化学および血液学、コンピューター・トモグラフィー(CT)スキャンまたは磁気共鳴イメージング(MRI)による腫瘍の大きさ。
【0073】
C.2 組合せ処置
適当な臨床試験は、例えば、進行性固形腫瘍を有する患者におけるオープンラベル、非無作為化、漸増投与試験である。このような試験により、特に、本発明の組合せ剤の活性成分の相乗性が証明される。増殖性疾患に対する有利な効果は、これらの試験の結果を通して、または当業者にそれ自体既知の試験計画を変更したものにより、直接的に決定され得る。このような試験は、特に、該活性成分を用いる単独治療と本発明の組合せ剤の効果を比較するのに適している。好ましくは、最大許容投与量(Maximum Tolerated Dosage)に達するまで、(a)の剤の投与量を漸増し、そして、コエージェント(b)を固定投与量で投与する。代わりに、(a)の剤を固定投与量で投与し、そしてコエージェント(b)の投与量を漸増させる。各患者は、毎日または断続的に、(a)の剤を投与される。処置の効果は、このような研究、例えば、6週ごとの腫瘍の放射線学的評価により、12、18または24週後に測定され得る。
【0074】
代わりに、プラセボ−対照、二重盲検試験が、本明細書に記載の本発明の組合せ剤の利点を証明するために使用され得る。
【0075】
式Iの化合物が単独で使用される場合、本発明の方法の実施において必要とされる1日投与量は、例えば、使用される化合物、宿主、投与様式および処置されるべき病状の重症度に依存して変動する。好適な1日投与量の範囲は、単回投与または分割投与で、おおよそ、0.1〜25mgである。患者のための適当な投与量は、例えば、0.1〜25mg経口投与のオーダーである。「化合物A」は任意の通常の経路、特に経腸的、例えば経口的に、例えば錠剤、カプセル剤、内用液の形態で、経鼻的に、経肺的(吸入により)に、または非経腸的に、例えば注射可能な溶液または懸濁液の形態で、投与され得る。経口投与に適した単位投与形態は、1またはそれ以上の薬学的に許容される希釈剤またはその担体とともに、約0.05〜12.5mg、通常0.25〜10mgの「化合物A」を含んでなる。
【0076】
本発明の組合せ剤は、また、外科的処置、軽度の延長した全身性高熱および/または放射線治療と組み合せて適用され得る。
【0077】
本発明の組合せ医薬の投与は、例えば新生物形成の減速、阻止、または反転あるいはより長時間の腫瘍応答に関して、有利な効果、例えば相乗的治療効果のみならず、本発明の組合せ剤において使用された薬学的に活性な成分のうちの1つのみを適用する単独治療と比べた場合、特に抗癌剤として知られる他の化学療法剤に難治性の腫瘍の処置において、さらに驚くべき有利な効果、例えば、より少ない副作用、改善されたクオリティー・オブ・ライフまたは減少した死亡率および罹患率をもたらす。第1の(a)剤と組み合せて適用した場合、特に、腫瘍組織および腫瘍細胞におけるコエージェント(b)の増加した取り込みが観察される。
【0078】
さらに有利な点は、より少ない投与量の本発明の組合せ剤の活性成分が使用され得ることである。例えば、有利な点は、しばしばより少ない量の投与量が必要されることのみならず、より少ない頻度で適用されること、または腫瘍形成の増殖を制御しながら、副作用の発生を抑えるために使用され得ることである。これは、処置される患者の希望と要求にしたがうものである。
【0079】
本発明の1つの実施態様にしたがって、好適な組合せ医薬は、
a)式Iの化合物、例えば「化合物A」、および
b)コエージェントとしての、上の(ii)、(iii)または(iv)のパラグラフで示した1またはそれ以上の化合物、例えばカルボプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビンまたはドキソルビシン
を含んでなる。
カルボプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビンまたはドキソルビシンと式Iの化合物、例えば「化合物A」との相乗的な組合せが、特に好ましい。
【0080】
さらに好ましい組合せ医薬は、例えば、
a)ラパマイシンまたはその誘導体、例えばCCI−779、ABT578または「化合物A」、および
b)コエージェントとしての、上の(i)および(v)〜(x)のパラグラフで示した1またはそれ以上の化合物、好ましくは、上の(v)のパラグラフで特定した1またはそれ以上の化合物
を含んでなる組合せ剤である。
例えば、ラパマイシンまたはその誘導体、例えばCCI−779、ABT578または「化合物A」と、VEGFR、EGFRファミリー、PDGFR、c−ABlファミリーのメンバーまたはプロテインキナーゼCの活性を標的化、減少化または阻害する化合物、例えば上で開示されたものとの相乗的組合せ剤が好ましい。
【0081】
本発明の1つの特異的実施態様は、乳癌の予防、進行の遅延化または処置のための、あるいは乳癌の予防、進行の遅延化または処置用の医薬製造のための、本発明の組合せ剤の使用に関する。好ましくは、このような実施態様において、組合せ剤は、コエージェントb)として、アロマターゼインヒビター、例えばアロマターゼインヒビター レトロゾール、抗エストロゲン剤、例えばタモキシフェン、トポイソメラーゼIIインヒビター、例えばドキソルビシン、または微小管活性化剤、例えばパクリタキセルを含んでなる。
【0082】
本発明の別の実施態様は、肺癌の予防、進行の遅延化または処置のための、あるいは肺癌の予防、進行の遅延化または処置用医薬の製造のための、本発明の組合せ剤の使用に関する。好ましくは、このような実施態様において、本発明の組合せ剤は、コエージェントb)としてプラチナ化合物、例えばカルボプラチン、または微小管活性化剤、例えばパクリタキセルを含んでなる。
【0083】
本発明の別の実施態様は、膵癌の予防、進行の遅延化または処置のための、あるいは膵癌の予防、進行の遅延化または処置用医薬の製造のための、本発明の組合せ剤の使用に関する。好ましくは、このような実施態様において、本発明の組合せ剤は、コエージェントb)として、抗悪性腫瘍性代謝拮抗薬、例えばゲムシタビンを含んでなる。
【0084】
本発明の別の実施態様は、神経膠芽腫の予防、進行の遅延化または処置のための、あるいは神経膠芽腫の予防、進行の遅延化または処置用医薬の製造のための、本発明の組合せ剤の使用に関する。好ましくは、そのような実施態様において、本発明の組合せ剤はコエージェントb)としてアルキル化剤、例えばBCNUを含んでなる。
【0085】
本発明のさらなる実施態様は、リンパ腺癌の処置における化学療法剤、例えば上に開示したもの、と組み合わせたラパマイシンまたはその誘導体の使用に関する。該組合せ剤は、さらに、コエージェントb)として、ブスルファン、シタラビン、6−チオグアニン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、プロカルバジン、ブレオマイシンまたはメソトレキセートを含み得る。トポイソメラーゼIIインヒビター、例えばダウノマイシン、あるいは、特に、PDGFRまたはc−AbIファミリーのメンバーおよびそれらの遺伝子融合産物の活性を標的化、減少化または阻害する化合物、例えばイマチニブが、コエージェント(b)として好ましい。
【0086】
本明細書において使用される「共投与」または「組合せ投与」などの用語は、単一の患者に、選択された複数の治療剤の投与を包含することを意味し、そして、該治療剤が必ずしも同じ投与経路により、または同時に投与されるわけではない治療レジメン(treatment regimen)を含むことを意図する。
【0087】
本発明の組合せ剤を含んでなる増殖性悪性疾患に対して組み合わせで治療上有効な量を含む医薬組成物を提供することが本発明の目的の1つである。本組成物において、第1の剤a)およびコエージェント(b)は、1つの組合せ単位投与形態または2つの別個の単位投与形態で、ともに、一方の後に他方を、または個別的に、投与され得る。単位投与形態は、また、固定された組合せ剤であり得る。
【0088】
本発明にしたがう、第1の剤a)およびコエージェントb)の個別的投与のための、ならびに固定された組合せ剤、すなわち少なくとも2つの組合せパートナーa)およびb)を含む単一のガレヌス製剤での投与のための、医薬組成物は、それ自体公知の方法で製造され得、そして治療上有効量の、単独、あるいは1またはそれ以上の薬学的に許容される担体または希釈剤、とりわけ経腸投与または非経腸投与に適したものと組み合せた、少なくとも1つの薬理学的に活性な組合せパートナー、例えば上に示したものを含んでなる、ヒトを含む哺乳動物(温血動物)への経腸的、例えば経口的または直腸的、および非経腸投与に適したものである。
【0089】
適当な医薬組成物は、例えば、約0.1%〜約99.9%、好ましくは約1%〜約60%の活性成分(複数も可)を含む。経腸または非経腸投与のための組合せ治療のための医薬製剤は、例えば、単位投与形態のもの、例えば糖衣錠、錠剤、カプセル剤または坐剤またはアンプル剤である。特記しない限り、これらは自体公知の方法で、例えば通常の混合、造粒、シュガーコーティング、溶解、または凍結乾燥工程により、製造される。個々の投与形態のそれぞれの投与量中に含まれる組合せパートナーのユニット含量は、それ自体、有効量を構成する必要はないものと考えられる。何故なら、必要とされる有効量は、複数の投与ユニットの投与により達成され得るからである。
【0090】
特に、治療上有効量の本発明の組合せ剤の個々の組合せパートナーは、同時的または逐次的におよび任意の順番で投与され得、そしてその構成成分は、個別的または固定された組合せ剤として投与され得る。例えば、本発明にしたがう増殖性悪性疾患の進行の遅延または処置方法は、同時的または任意の順序で逐次的に、合わせて治療上有効になる量で、好ましくは相乗的有効量で、例えば本明細書に記載の量に対応する投与量で毎日または断続的に、(i)遊離または薬学的に許容される塩の形態の第1の剤a)を投与すること、および(ii)遊離または薬学的に許容される塩の形態のコエージェントb)を投与することを含み得る。
【0091】
本発明の組合せ剤の個々の組合せパートナーは、治療過程の間の異なる時点で別々に、または分割もしくは単一の組合せ形態で同時的に、投与され得る。さらに、「投与」なる用語は、また、インビボでそれ自体組合せパートナーに変換される組合せパートナーのプロドラッグの使用を包含する。本発明は、したがって、このような同時的治療法または改変された処置のすべてを包含するものとして理解されるべきであり、そして「投与」なる用語は、そのように理解されるべきである。
【0092】
本発明の組合せ剤において使用される個々の組合せパートナーの有効投与量は、使用される特定の化合物または医薬組成物、投与様式、処置される病状、処置される病状の重症度に依存して変動し得る。したがって、本発明の組合せ剤の投与レジメンは、投与経路ならびに患者の腎および肝機能を含むさまざまな要因にしたがって選択される。通常の知識を有する医師、臨床医または獣医師は、該病状を予防、抑制、または阻止するのに必要とされる単一の有効成分の有効量を容易に決定および処方することができる。毒性なしに効力を生ずる範囲内の活性成分の濃度を達成する最適の処方には、標的部位に対する活性成分の利用能の動力学に基づく治療法が必要とされる。
【0093】
第1の剤a)の1日投与量は、もちろん、さまざまな要因、例えば選択される化合物、処置されるべき特定の疾患および所望の効果に依存して変動するものであろう。しかしながら、一般的に、満足な結果が、単回投与または分割投与として、約0.1〜25mgのオーダーの1日投与量の割合での、ラパマイシンまたはその誘導体の投与により達成される。ラパマイシンまたはその誘導体、例えば式Iの化合物は、任意の通常の経路、特に経腸的に、例えば経口的に、例えば錠剤、カプセル剤、内用液の形態で、または非経腸的に、例えば注射可能な溶液または懸濁液の形態で、投与され得る。経口投与に適した単位投与形態は、1またはそれ以上の薬学的に許容される希釈剤またはその担体とともに、約0.05〜10mgの活性成分、例えば「化合物A」を含んでなる。
【0094】
ファドロゾールは、約0.5〜約10mg/日、好ましくは約1〜約2.5mg/日の間を変動する投与範囲でヒトに経口的に投与され得る。エクセメスタンは、ヒトに、約5〜約200mg/日、好ましくは約10〜約25mg/日の間を変動して経口的に、または約50〜500mg/日、好ましくは約100〜約250mg/日の間を変動して非経腸的に、投与され得る。該薬物が別々の医薬組成物で投与される場合には、GB 2,177,700において開示された形態で投与され得る。ホルメスタンは、約100〜500mg/日、好ましくは約250〜約300mg/日の間を変動する投与範囲でヒトに非経腸的に投与され得る。
【0095】
アナストロゾールは、約0.25〜20mg/日、好ましくは約0.5〜約2.5mg/日の間を変動する投与範囲でヒトに経口的に投与され得る。アミノグルテミドは、約200〜500mg/日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。
【0096】
クエン酸タモキシフェンは、約10〜40mg/日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。
【0097】
ビンブラスチンは、約1.5〜10mg/m日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。硫酸ビンクリスチンは、約0.025〜0.05mg/kg(体重)*週の間を変動する投与範囲でヒトに非経腸的に投与され得る。ビノレルビンは、約10〜50mg/m日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。
【0098】
リン酸エトポシドは、約25〜115mg/m日の間を変動する投与範囲で、例えば56.8または113.6mg/m日でヒトに投与され得る。
【0099】
テニポシドは、ほぼ隔週で約75〜150mgの間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。ドキソルビシンは、約10〜100mg/m日の間を変動する投与範囲で、例えば25または50mg/m日でヒトに投与され得る。エピルビシンは、約10〜200mg/m日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。イダルビシンは、約0.5〜50mg/m日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。ミトキサントロンは、約2.5〜25mg/m日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。
【0100】
パクリタキセルは、約50〜300mg/m日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。ドセタキセルは、約25〜100mg/m日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。
【0101】
シクロホスファミドは、約50〜1500mg/m日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。メルファランは、約0.5〜10mg/m日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。
【0102】
5−フルオロウラシルは、約50〜1000mg/m日の間を変動する投与範囲で、例えば500mg/m日でヒトに投与され得る。カペシタビンは、約10〜1000mg/m日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。塩酸ゲムシタビンは、約1000mg/m/週から変動する投与範囲でヒトに投与され得る。メソトレキセートは、約5〜500mg/m日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。
【0103】
トポテカンは、約1〜5mg/m日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。イリノテカンは、約50〜350mg/m日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。
【0104】
カルボプラチンは、おおよそ4週ごとに、約200〜400mg/mの間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。シスプラチンは、おおよそ3週ごとに、約25〜75mg/mの間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。オキサリプラチンは、隔週で、約50〜85mg/mの間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。
【0105】
イマチニブは、約2.5〜850mg/日、さらに好ましくは5〜600mg/日および最も好ましくは20〜300mg/日の範囲の投与量でヒトに投与され得る。
【0106】
アレンドロン酸は、約5〜10mg/日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。クロドロン酸は、例えば、約750〜1500mg/日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。エトリドロン酸は、約200〜400mg/日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。イバンドロン酸は、3〜4週ごとに、約1〜4mgの間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。
【0107】
リセドロン酸は、約20〜30mg/日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。パミドロン酸は、3〜4週ごとに、約15〜90mgの間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。チルドロン酸は、約200〜400mg/日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。
【0108】
トラスツズマブは、約1〜4mg/m/週の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。
ビカルタミドは、約25〜50mg/m日の間を変動する投与範囲でヒトに投与され得る。
【0109】
1−(4−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジンまたはその塩、例えばコハク酸塩は、約50〜1500、さらに好ましくは約100〜750、および最も好ましくは250〜500、mg/日の投与範囲で、ヒトに投与され得る。
【0110】
ラパマイシンまたはその誘導体は、本発明にしたがう使用に必要とされる投与量で、十分に許容される。例えば、4週間の毒性試験における「化合物A」のNTELは、ラットにおいて0.5mg/kg/日、およびサルにおいて1.5mg/kg/日である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンを有効成分として含む、脳および他の中枢神経系の腫瘍;頭部および/または頚部の癌;乳房の腫瘍;循環器系の腫瘍;排泄系の腫瘍;胃腸管の腫瘍、肝臓および肝内胆管、胆嚢、胆道のその他の部分、膵臓、他の消化器官、口腔に関する腫瘍;生殖系の腫瘍;鼻腔、中耳、副洞、喉頭、気管、気管支および肺の呼吸器管の腫瘍;骨格系の腫瘍;皮膚の腫瘍;ならびに末梢神経および自律神経系、結合組織および柔組織、後腹膜および腹膜、眼および付属器、甲状腺、副腎および他の内分泌腺および関連構造を含む他の組織に関わる腫瘍、リンパ節の二次的かつ明記していない悪性新生物(malignant neoplasm)、呼吸器および消化系の二次的な悪性新生物ならびに他の部位の二次的悪性新生物から選択される固形腫瘍の処置剤。
【請求項2】
固形腫瘍の増殖を阻害するための、請求項1に記載の処置剤。
【請求項3】
腫瘍退行を誘導するための、請求項1に記載の処置剤。
【請求項4】
固形腫瘍侵襲またはそのような腫瘍増殖に伴う症候の処置のための、請求項1に記載の処置剤。
【請求項5】
腫瘍の転移性拡大を予防するかまたは微小癌組織の増殖を予防もしくは阻害するための、請求項1に記載の処置剤。
【請求項6】
a)40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンである第一剤および
b)アロマターゼインヒビターであるコエージント
を有効成分として含む、脳および他の中枢神経系の腫瘍;頭部および/または頚部の癌;乳房の腫瘍;循環器系の腫瘍;排泄系の腫瘍;胃腸管の腫瘍、肝臓および肝内胆管、胆嚢、胆道のその他の部分、膵臓、他の消化器官、口腔に関する腫瘍;生殖系の腫瘍;鼻腔、中耳、副洞、喉頭、気管、気管支および肺の呼吸器管の腫瘍;骨格系の腫瘍;皮膚の腫瘍;ならびに末梢神経および自律神経系、結合組織および柔組織、後腹膜および腹膜、眼および付属器、甲状腺、副腎および他の内分泌腺および関連構造を含む他の組織に関わる腫瘍、リンパ節の二次的かつ明記していない悪性新生物(malignant neoplasm)、呼吸器および消化系の二次的な悪性新生物ならびに他の部位の二次的悪性新生物から選択される固形腫瘍の処置のための組合せ剤。
【請求項7】
アロマターゼインヒビターがアタメスタン(atamestane)、エクセメスタン、ホルメスタン(formestane)、アミノグルテチミド、ログレチミド(roglethimide)、ピリドグルテチミド(pyridoglutethimide)、トリロスタン、テストラクトン、ケトコナゾール(ketokonazole)、ボロゾール、ファドロゾール、アナストロゾールおよびレトロゾールから選択される、請求項6に記載の組合せ剤。
【請求項8】
コエージントがレトロゾールである、請求項7に記載の組合せ剤。
【請求項9】
アロマターゼインヒビターと同時的または逐次的に組み合わせて使用することを特徴とする、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンを有効成分として含む、医薬組成物。
【請求項10】
アロマターゼインヒビターがアタメスタン(atamestane)、エクセメスタン、ホルメスタン(formestane)、アミノグルテチミド、ログレチミド(roglethimide)、ピリドグルテチミド(pyridoglutethimide)、トリロスタン、テストラクトン、ケトコナゾール(ketokonazole)、ボロゾール、ファドロゾール、アナストロゾールおよびレトロゾールから選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
乳癌の処置のための、請求項9または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
排泄系の腫瘍の処置用医薬の製造における、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンの使用。
【請求項13】
40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンの単位用量形態が0.1〜25mgである、請求項12に記載の40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンの使用。
【請求項14】
膵臓腫瘍の処置用医薬の製造における、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンの使用。
【請求項15】
40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンの単位用量形態が0.1〜25mgである、請求項14に記載の40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンの使用。
【請求項16】
40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンおよびアロマターゼ阻害剤の組合せを含む、医薬組成物。
【請求項17】
アロマターゼ阻害剤がエクセメスタンである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
乳癌の処置用医薬の製造のための、請求項16に記載する医薬組成物の使用。
【請求項19】
(a)40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンとアロマターゼ阻害剤の組合せおよび(b)少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項20】
乳癌の処置用医薬の製造のための、請求項19に記載する医薬組成物の使用。

【公開番号】特開2012−184238(P2012−184238A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−101519(P2012−101519)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【分割の表示】特願2007−204409(P2007−204409)の分割
【原出願日】平成14年2月18日(2002.2.18)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】