説明

癌を治療するための方法および組成物

本発明は、プロシアニジンおよびその誘導体のようなポリフェノールを含有する、特定の腫瘍を治療するための組成物およびその使用方法に関し、より広くは、タンパク質の過剰リン酸化が細胞の形質転換に寄与する腫瘍細胞において過剰リン酸化した細胞周期調節タンパク質の脱リン酸化の誘発に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、特定の腫瘍を治療するための、プロシアニジンおよびその誘導体のようなポリフェノールを含有する組成物、およびその使用方法に関するものであり、より一般的には、腫瘍細胞中で、細胞の形質転換に寄与する過剰リン酸化した細胞周期調節タンパク質の脱リン酸化の誘発に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロアントシアニジンは、その広範囲の生物学的活性のために薬および栄養の分野で大いに注意を引いてきた(例えば、特許文献1)。本出願人は、プロシアニジンおよびその誘導体の特定の抗癌特性および細胞周期の調節に関係するタンパク質の調節における効果を発見した。そのようなタンパク質の例は、Cdc2、AKT、フォークヘッド(forkhead)転写因子、p53およびpRbである。
【0003】
Cdc2は、細胞周期およびアポトーシスの調節において重要なタンパク質キナーゼである[非特許文献1]。Cdc2 Tyr15残基のリン酸化は、その機能を要請し、パクリタキセル(登録商標Taxol)誘発アポトーシスへの耐性を引き起こす[非特許文献2]。
【0004】
既知の癌遺伝子によりコードされ、タンパク質キナーゼBとしても知られるAKTは、広範囲の細胞種の生存の促進において主要な役割を果たすセリン/トレオニンキナーゼである[非特許文献3]。AKTの抑制により、ヒト卵巣癌細胞のアポトーシスが誘発され、これはAKTが癌および他の増殖性疾患の治療のための重要な標的かもしれないことを示す[非特許文献4]。実際、AKTは卵巣がんおよび乳癌のためのマーカーとして一般に使用される。AKTは、アミノ酸位置Ser256においてフォークヘッド転写因子(FKHR)をリン酸化し、結果としてFKHR機能を抑制することにより細胞生存を促進する[非特許文献5]。FKHRのSer256のAKT媒介リン酸化は、FKHRにより調節されるFasリガンド発現の減少を介してアポトーシスを抑制する[非特許文献6]。
【0005】
悪性腫瘍と関連する初期の遺伝的変化は、細胞周期の進行を調節する遺伝子と関連し、網膜芽細胞腫(pRb)およびp53細胞周期経路における欠陥のために、しばしばこの変化により腫瘍細胞中のG1チェックポイントが失われる[非特許文献7]。これらのタンパク質の転写後修飾は、その機能調節の重要なメカニズムのようである。
【0006】
例えば、p53のSer392のリン酸化は、p53四量体形成を安定化することにより特定のDNA結合機能を活性化する[非特許文献8]。いくつかのストレス刺激は、Ser392(マウスではSer389)をリン酸化することが報告されている。さらに、ヒト腫瘍におけるp53リン酸化の細菌の分析により、分析された10部位のうち、残基Ser15、Ser81、およびSer392の過剰リン酸化およびアセチル化が最も頻繁な修飾の1つであることが分かった[非特許文献9]。ヒト腫瘍におけるSer392でのp53のリン酸化の増加はしばしば起こる[非特許文献10]。
【0007】
pRbのセリン残基もまた、G1/S移行に非常に関連する。サイクリンD-Cdk4は、Ser780およびおそらくSer795においてpRbをリン酸化することが知られている[非特許文献11]。形質転換成長因子β(TGF-β)およびレチノイン酸は、Ser780、Ser795およびSer807/811でpRbを脱リン酸化することによりG1細胞周期停止を引き起こすことが報告されている[非特許文献12]。
【特許文献1】米国特許第6,638,971号
【非特許文献1】Kinishi,Y.et al.,Molec.Cell,9:1005-1016,2002
【非特許文献2】Tan,M.et al.,Molec.Cell,9:993-1004,2002
【非特許文献3】Khwaja,A.,Nature,pp.33-34(1990)
【非特許文献4】Zang,Q.Y.,et al,Oncogene,19(2000)
【非特許文献5】Brunet,A.,et al.,Cell,96:857-868(1999)
【非特許文献6】Jackson,J.G.et al.,Oncogene,198:4574-4581,2000;Nakamura,N.et al.,Mol.Cell.Biol.,20:8969-8982,2000;Rena,G.et al.,EMBO J.,21:2263-2271,2002
【非特許文献7】Lomazze,M.et al.,Nat Genet.,31:190-194,2002
【非特許文献8】Keller,D.M.et al.,Molec.Cell,7:283-292,2001;Fiscella,M.,et al.,Oncogene,9:3249-3257,1994
【非特許文献9】Minamoto,T.K.,et al.,Oncogene,20:3341-3347,2001
【非特許文献10】Furihata,M.et al.,J.Pathol.,197:82-88,2002
【非特許文献11】Kitagawa,M.,et al.,EMBO J.,15:7060-7069,1996;Panigone,S.et al.,Oncogene,19:4035-4041,2002
【非特許文献12】Hu,X.et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 276:930-939, 2000;Dimbert,A.et al.,Blood,99:2199-2206,2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、細胞周期調節タンパク質は、腫瘍治療に有用な標的である。現在、増殖性の成長を抑制および/または治療するためにこれらのタンパク質の過剰リン酸化および/または過剰発現を標的にできる化合物が当該技術において必要である。本発明の化合物およびその組成物はこれらの用途に有効であることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、特定の腫瘍、特に特定の癌を治療するための組成物、産物および方法に関し、より一般的には、腫瘍細胞中で、過剰リン酸化された細胞周期調節タンパク質の脱リン酸化の誘発に関する。
【0010】
1つの態様において、本発明は、プロシアニジンまたはその誘導体のような本発明の化合物を含む薬剤、食品、食品添加物、または栄養補助食品のような組成物に関する。この組成物は、必要に応じて追加の癌治療剤を含んでもよい、または追加の癌治療剤と一緒に投与してもよい。上記の組成物および腫瘍の治療に使用されるラベルおよび/または指示を含むパッケージ産物も、本発明の範囲内である。
【0011】
別の態様において、本発明は、腫瘍細胞中で、形質転換に寄与する過剰発現された細胞周期調節タンパク質、例えばCdc2、FKHR、p53およびpRbの脱リン酸化を誘発する方法に関する。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は、ヒトまたは家畜動物のような哺乳動物に、有効な量のプロシアニジンまたはその誘導体を投与することにより、細胞周期調節タンパク質の過剰リン酸化が腫瘍表現型に寄与する腫瘍を値要する方法に関する。概して、本発明は、有効な量の本発明の化合物を投与することにより、ヒトまたは家畜動物のような哺乳動物において腫瘍を治療する方法に関する。癌の例として、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、結腸直腸癌および膵臓癌が挙げられるがこれに限定されない。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、(i)被験者を、細胞周期調節タンパク質、例えばCdc2、AKT、FKHR、p53、サイクリンD1およびpRbの過剰発現および/または過剰リン酸化状態についてプロファイリングする工程、および(ii)有効な量の本発明の化合物を投与することによりこれらのタンパク質の過剰リン酸化および/または過剰発現を示す患者を治療する工程を含む方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面の簡単な説明
図1A-Cは、五量体処理されたヒト乳癌細胞のLPS(層状タンパク質スキャニング)マルチウェルプレートおよび免疫ブロット分析の結果を示す。A)100μg/mLの五量体(T)で48および72時間処理されたMDA MB-231細胞およびDMSO(C)で処理されたコントロール細胞のLPSドットブロット;B)A)におけるのと同じサンプルのウェスタンブロット;C)リン酸化状態と無関係にCdc2、FKHR、p53、およびpRbを検出する抗体で再プローブ化された膜のウェスタンブロット。添加の質を調べるために、ブロットをGAPDHで再プローブ化した。結果は、同じタンパク質サンプルを使用する2つの独立した免疫ブロット分析を示す。
【0015】
図2A-Bは、五量体で処理されたヒト乳癌細胞におけるp53の高分解能プロファイリングを示す。A)五量体で48および72時間処理されたMDA-MB-231細胞および対応するDMSO処理されたコントロールのLPS免疫ブロット;B)A)と別の実験で五量体およびDMSOで72時間処理されたMDA MB-231、MDA MB-468およびMCF-7細胞のLPS免疫ブロット。添加の質を調べるために、ブロットをGAPDHで再プローブ化した。データは、同じタンパク質サンプルを使用する2つの独立した免疫ブロット分析を示す。
【0016】
図3は、五量体で処理されたヒト乳癌細胞におけるpRbの高分解能プロファイリングを示す(LPS免疫ブロット法を使用する)。添加の質を調べるために、ブロットをGAPDHで再プローブ化した。データは、同じタンパク質サンプルを使用する2つの独立した免疫ブロット分析を示す。
【0017】
発明の詳細な説明
本出願において挙げられている全ての特許、特許出願、および引例が、参照によってこの中に組み込まれる。矛盾がある場合には、本開示が適用される。
【0018】
本発明は、有効な量の下記の構造式Anを有する化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)を含む組成物に関する:
【化1】

【0019】
ここで、
nは2から18までの整数である;
RおよびXはそれぞれαまたはβ配置を有する;
RはOH、O-糖またはO-没食子酸塩である;
C-4、C-6およびC-8の置換基はそれぞれX、ZおよびYであり、単量体単位の結合がC-4、C-6またはC-8で生じる;
C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素または糖である;
糖は必要に応じて、例えばエステル結合を介して任意の位置でフェノール成分で置換される。
【0020】
上記の構造式中の単量体単位は、4→6および4→8結合を介して結合されてもよい。糖は、グルコース、ガラクトース、ラムノース、キシロース、およびアラビノースからなる群より選択できる。糖は好ましくは単糖類または二糖類である。フェノール成分は、コーヒー酸、桂皮酸、クマル酸、フェルラ酸、没食子酸、ヒドロキシ安息香酸およびシナピン酸からなる群より選択される。誘導体の例には、化合物Anのグリコシド、没食子酸塩、エステル、酸化物等が含まれる。酸化物は、その関連部分が参照によりここに引用される米国特許第5,554,645号に開示されるように調製されてもよい。
【0021】
ある実施の形態において、化合物は、有効な量の構造式Anを有する化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)を含む:
【化2】

【0022】
ここで、
nは2から18までの整数である;
RおよびXはそれぞれαまたはβ配置を有する;
RはOHである;
C-4、C-6およびC-8の置換基はそれぞれX、ZおよびYであり、単量体単位の結合がC-4、C-6およびC-8で生じる;
C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素である。
【0023】
上記の構造式中の単量体単位は、4→6および4→8結合を介して結合されてもよい。糖は、グルコース、ガラクトース、ラムノース、キシロース、およびアラビノースからなる群より選択できる。糖は好ましくは単糖類または二糖類である。フェノール成分は、コーヒー酸、桂皮酸、クマル酸、フェルラ酸、没食子酸、ヒドロキシ安息香酸およびシナピン酸からなる群より選択される。誘導体の例には、グリコシド、没食子酸塩、エステル、酸化物等が含まれる。
【0024】
製品に、および本発明の方法において有用な化合物の例には、整数nが3-18;2-12;2-5;4-12;5-12;4-10;または5-10である化合物が含まれる。いくつかの実施の形態において、化合物はプロシアニジン四量体または五量体である。
【0025】
ある実施の形態において、高分子化合物Anは下記の構造式を有する:
【化3】

【0026】
ここで、
nは5である;
RおよびXはそれぞれαまたはβ配置を有する;
RはOH、O-糖またはO-没食子酸塩である;
C-4、C-6およびC-8の置換基はそれぞれX、ZおよびYであり、単量体単位の結合がC-4、C-6およびC-8で生じる;
C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素または糖である;
糖は必要に応じて、例えばエステル結合を介して任意の位置でフェノール成分で置換される、
またはその薬剤的に許容できる塩または誘導体(酸化生成物を含む)。
【0027】
上記の構造式中の単量体単位は、4→6および4→8結合を介して結合されてもよい。糖は、グルコース、ガラクトース、ラムノース、キシロース、およびアラビノースからなる群より選択できる。糖は好ましくは単糖類または二糖類である。フェノール成分は、コーヒー酸、桂皮酸、クマル酸、フェルラ酸、没食子酸、ヒドロキシ安息香酸およびシナピン酸からなる群より選択される。誘導体の例には、グリコシド、没食子酸塩、エステル、酸化物等が含まれる。
【0028】
別の実施の形態において、高分子化合物Anは下記の構造式を有する:
【化4】

【0029】
ここで、
nは5である;
RおよびXはそれぞれαまたはβ配置を有する;
RはOHである;
C-4、C-6およびC-8の置換基はそれぞれX、ZおよびYであり、単量体単位の結合がC-4、C-6およびC-8で生じる;
C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素である;
またはその薬剤的に許容できる塩または誘導体(酸化生成物を含む)。
【0030】
上記の構造式中の単量体単位は、4→6および4→8結合を介して結合されてもよい。糖は、グルコース、ガラクトース、ラムノース、キシロース、およびアラビノースからなる群より選択できる。糖は好ましくは単糖類または二糖類である。フェノール成分は、コーヒー酸、桂皮酸、クマル酸、フェルラ酸、没食子酸、ヒドロキシ安息香酸およびシナピン酸からなる群より選択される。誘導体の例には、グリコシド、没食子酸塩、エステル、酸化物等が含まれる。
【0031】
四量体の例は以下のようでもよい:[EC-(4β→8)]4-EC、[EC-(4β→8)]3-EC-(4β→6)-EC、[EC-(4β→8)]3-EC-(4β→8)-C、および[EC-(4β→8)]3-EC-(4β→6)-C、ここで、ECはエピカテキンでありCはカテキンである。
【0032】
ある実施例において、四量体は下記の構造式を有する:
【化5】

【0033】
精製された個々のペンタマーおよびペンタマー混合物のいずれを使用してもよい。精製度は、例えば、少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約92%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%である。上記の精製度は、構造式Anの化合物、その塩および誘導体に使用してもよい。
【0034】
使用の方法
本発明は、特定の腫瘍、特に特定の癌を治療するための組成物、産物および方法に関し、より一般的には、腫瘍細胞中で、過剰リン酸化された細胞周期調節タンパク質の脱リン酸化の誘発に関する。ここに記載される方法により治療される癌の例は、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、結腸直腸癌および膵癌であるがこれに限定されない。本出願中に記載される任意の化合物を、ここに記載される方法を実施するために使用してもよい。
【0035】
ある実施の形態において、本発明は、腫瘍細胞中で、形質転換に寄与する過剰リン酸化した細胞周期調節タンパク質の脱リン酸化を誘発、促進または刺激する方法であって、前記腫瘍細胞を、有効な量の構造式Anを有する化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)と接触させる工程を含むことを特徴とする方法を提供する:
【化6】

【0036】
ここで、
nは2から18までの整数である;
RおよびXはそれぞれαまたはβ配置を有する;
RはOH、O-糖またはO-没食子酸塩である;
C-4、C-6およびC-8の置換基はそれぞれX、ZおよびYであり、単量体単位の結合がC-4、C-6またはC-8で生じる;
C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素または糖である;
糖は必要に応じて、例えばエステル結合を介して任意の位置でフェノール成分で置換される。
【0037】
例えば、上記の方法は、RがOHであり、C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZが水素である、化合物An、またはその薬剤的に許容できる塩または誘導体(酸化生成物を含む)の使用を含んでもよい。上記の方法のある実施の形態において、構造式Anにおける糖は、好ましくは単糖類または二糖類である。適切な糖の例は、グルコース、ガラクトース、ラムノース、キシロース、およびアラビノースである。フェノール成分の例は上記に記載されるものである。
【0038】
ある実施の形態において、腫瘍細胞中で、形質転換に寄与する過剰リン酸化した細胞周期調節タンパク質の脱リン酸化を誘発、促進または刺激する方法は、前記腫瘍細胞を、有効な量の構造式Anを有する化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)と接触させる工程を含む:
【化7】

【0039】
ここで、
nは5である;
RおよびXはそれぞれαまたはβ配置を有する;
RはOHである;
C-4、C-6およびC-8の置換基はそれぞれX、ZおよびYであり、単量体単位の結合がC-4、C-6およびC-8で生じる;
C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素である。
【0040】
四量体の例は以下のようでもよい:[EC-(4β→8)]4-EC、[EC-(4β→8)]3-EC-(4β→6)-EC、[EC-(4β→8)]3-EC-(4β→8)-C、および[EC-(4β→8)]3-EC-(4β→6)-C、ここで、ECはエピカテキンでありCはカテキンである。
【0041】
ある実施例において、四量体は下記の構造式を有する:
【化8】

【0042】
ここで用いたように、「細胞周期調節タンパク質」とは、細胞周期を直接または間接に調節するタンパク質である。細胞周期を直接に調節するタンパク質の例は、Cdc2、p53および網膜芽細胞腫(pRb)であり、細胞周期を間接に調節するタンパク質の例は、フォークヘッド転写因子(FKHR)である。したがって、ある実施の形態において、腫瘍細胞中で過剰リン酸化した細胞周期調節タンパク質の脱リン酸化を誘発、促進または刺激する方法は、Cdc2、p53、pRbおよび/またはFKHRを含んでもよい。より詳細には、本発明の方法は、アミノ酸位置Tyr15において過剰リン酸化したCdc2、アミノ酸位置Ser392において過剰リン酸化したp53、アミノ酸位置Ser256において過剰リン酸化したFKHR、およびアミノ酸位置Ser780、Ser795、およびSer807/811の少なくとも1つにおいて過剰リン酸化したpRbの脱リン酸化を誘発、促進または刺激する工程を含む。
【0043】
「過剰リン酸化細胞周期調節タンパク質」とは、リン酸化状態が異常な細胞周期調節タンパク質(すなわち、正常に機能する細胞で見られるものと異なる)を称し、これは、タンパク質機能の変化および細胞周期における変化を生じる。「過剰リン酸化」は、正常細胞の腫瘍細胞への形質転換に寄与する、すなわち、細胞の腫瘍形成および腫瘍表現型を生じする要因であることが理解されるであろう。
【0044】
本発明はまた、細胞周期調節タンパク質の過剰リン酸化が腫瘍表現型に寄与する腫瘍を治療する方法であって、該腫瘍を患うヒトまたは家畜動物に、有効な量の構造式Anを有する化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)を投与する工程を含むことを特徴とする方法に関する:
【化9】

【0045】
ここで、
nは2から18までの整数である;
RおよびXはそれぞれαまたはβ配置を有する;
RはOH、O-糖またはO-没食子酸塩である;
C-4、C-6およびC-8の置換基はそれぞれX、ZおよびYであり、単量体単位の結合がC-4、C-6またはC-8で生じる;
C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素または糖である;
糖は必要に応じて、例えばエステル結合を介して任意の位置でフェノール成分で置換される。
【0046】
例えば、上記の方法は、RがOHであり、C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素である、化合物An、またはその薬剤的に許容できる塩または誘導体(酸化生成物を含む)の投与を含んでもよい。上記の方法のある実施の形態において、構造式Anにおける糖は、好ましくは単糖類または二糖類である。適切な糖の例は、グルコース、ガラクトース、ラムノース、キシロース、およびアラビノースである。フェノール成分の例は上記に記載されるものである。
【0047】
ある実施の形態において、細胞周期調節タンパク質の過剰リン酸化が腫瘍表現型に寄与する腫瘍を治療する方法は、該腫瘍を患うヒトまたは家畜動物に、有効な量の構造式Anを有する化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)を投与する工程を含む:
【化10】

【0048】
ここで、
nは5である;
RおよびXはそれぞれαまたはβ配置を有する;
RはOHである;
C-4、C-6およびC-8の置換基はそれぞれX、ZおよびYであり、単量体単位の結合がC-4、C-6およびC-8で生じる;
C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素である。
【0049】
四量体の例は以下のようでもよい:[EC-(4β→8)]4-EC、[EC-(4β→8)]3-EC-(4β→6)-EC、[EC-(4β→8)]3-EC-(4β→8)-C、および[EC-(4β→8)]3-EC-(4β→6)-C、ここで、ECはエピカテキンでありCはカテキンである。
【0050】
ある実施例において、四量体は下記の構造式を有する:
【化11】

【0051】
ここで用いたように、「治療」とは、例えば病気の進行を遅らせ、寿命を延ばし、死の危険を減らし、および/または関連する細胞周期調節タンパク質のリン酸化状態の適度の減少を誘発することにより、現存する病状、例えば、細胞周期タンパク質の過剰リン酸化が腫瘍表現型に寄与する腫瘍、を改善することを意味する。
【0052】
上記の治療方法は、例えば、Cdc2、p53、pRbおよび/またはFKHRの過剰リン酸化が腫瘍表現型に寄与する腫瘍の治療を含む。より詳細には、本発明の方法は、アミノ酸位置Tyr15において過剰リン酸化したCdc2、アミノ酸位置Ser392において過剰リン酸化したp53、アミノ酸位置Ser256において過剰リン酸化したFKHR、およびアミノ酸位置Ser780、Ser795、およびSer807/811の少なくとも1つにおいて過剰リン酸化したpRbの脱リン酸化が、腫瘍表現型に寄与する腫瘍の治療を含んでもよい。
【0053】
「細胞周期調節タンパク質の過剰リン酸化が腫瘍表現型に寄与する腫瘍」という用語は、過剰リン酸化された細胞周期調節タンパク質が、腫瘍形成を生じる要因の少なくとも1つである場合に生じる腫瘍を称する。
【0054】
本発明はまた、少なくともアミノ酸位置Ser392において過剰リン酸化されるp53を過剰発現する腫瘍を患うヒトにおいて、腫瘍、特に癌を治療する方法を含む。その様な癌の例は、乳癌および結腸癌である。
【0055】
ヒトまたは家畜動物においてAKTキナーゼを過剰発現する癌を治療する方法もまた提供される。その様な癌の例は、AKTキナーゼを過剰発現する卵巣癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、膵癌、肝臓癌または結腸直腸癌である。癌の徴候標識の1つであるAKTは、アミノ酸位置Ser256においてFKHRをリン酸化しそれを抑制し、したがって細胞がアポトーシスに進むのを防止するので、AKTキナーゼを過剰発現する患者が、本発明の化合物による治療に適切である。本発明の化合物はまた、AKT抑制剤との組合せ治療に適切である。AKT抑制剤の例には、SRI Internationalの実験薬SR13668が含まれる。
【0056】
ヒトまたは家畜動物中で、サイクリンD1を過剰発現する腫瘍、特に癌を治療する方法も提供される。そのような癌の例は、サイクリンD1を過剰発現する乳癌である;そのような過剰発現は、乳癌患者の約50%で起こる。サイクリンD1は、腫瘍形成および分化で重要な役割を果たす。サイクリンD1遺伝子は、腫瘍抑制サプレッサタンパク質pRbをリン酸化および不活性化するホロ酵素の調節サブユニットをコードする。従って、サイクリンD1を過剰発現する患者は、本発明の化合物による治療に適切である。本発明の化合物はまた、サイクリンD1を標的とする化学療法薬との組合せ治療に適切である。そのような薬の例は、サイクリンD1を抑制する、ビタミンAの天然および合成誘導体であるレチノイドである。そこに記載される前治療および治療研究が参照によりここに引用される、Petty et al.,Lung Cancer,2003 Aug;41 Suppl 1:S155-61を参照。
【0057】
パクリタキセル(登録商標Taxol)による治療に耐性の癌を患うヒトまたは家畜動物における、腫瘍、特に癌を治療する方法も本発明の範囲内である。ErbB2によるCdc2のTyr15のリン酸化は、Cdc2の活性化を防止し、パクリタキセルにより誘発されるアポトーシスへの耐性に関係する。本発明の化合物は、Tyr15においてCdc2を脱リン酸化できるので、パクリタキセルに耐性の患者を治療できる。本発明の化合物は、単独でまたはパクリタキセルとの組合せ治療において、投与してもよい。
【0058】
上記の方法のいずれも、本発明の化合物および少なくとも1つの追加の化学療法薬を使用して行ってもよい。AKTおよびサイクリンD1抑制剤のような上記の化学療法薬に加えて、成長因子抑制剤を使用してもよい。上皮成長因子レセプター(EGFR)、インスリン成長因子レセプター(IGFR)およびHer-2の抑制剤も例となる。そのような薬の例は以下のようである;チロシンキナーゼレセプターの抑制剤、例えば、C225、抗−EGFRモノクローナル抗体(Overholser et al.,Cancer 2000 Jul l;89(1):74-82)およびトラスツズマブ(登録商標Herceptin、Genentech)、ErbB2レセプターを過剰発現する乳癌患者に有効であり処方されるErbB2レセプターに対するモノクローナル抗体;チロシンおよびセリン/トレオニンキナーゼにおけるアデノシン三リン酸結合部位の競合阻害剤、例えばZD1839(ゲフィチニブまたは登録商標Iressaとしても知られる、www.clinicaltrials.gov参照);OSI-774(登録商標Tarceva;Prados et al.,9th ASCO Annual Meeting,Chicago,IL,May 31-June 3,2003(Clinical Study,Abstract No.394);ErbB2抑制剤であるCI-1033(clinicaltrialx.gov参照)、上記の文献は参照によりここに引用される。
【0059】
本発明の化合物は、いくつかの実施の形態において、化学療法薬および/または方法への感応性を高めるために投与されてもよい。この目的のために、薬剤以外の投与形態、例えば栄養補助食品および食品を使用してもよい。
【0060】
本発明はまた、本発明の化合物を投与することにより、腫瘍(細胞周期調節タンパク質の過剰リン酸化が腫瘍表現型に寄与する)を発生する危険にある被験者において、過剰発現した細胞周期調節タンパク質の脱リン酸化を誘発することによって、腫瘍、特に癌を予防する方法(化学予防)を含む。
【0061】
「予防する」という用語は、病気の兆候を減らすことを含む、病気を発症することに関連する危険性を減らすことを意味する。
【0062】
「腫瘍を発生する危険のある被験者」という用語は、健康なヒトのグループと比較して腫瘍を発生する危険因子を有するヒトのグループにおいて腫瘍の可能性を増加する特性を有する被験者を意味する。危険因子は、UV放射への暴露または化学薬品でもよい。
【0063】
上記の方法は、ヒトまたはイヌ、ネコおよびウマのような家畜動物で使用してもよい。
【0064】
したがって、以下の使用は本発明の範囲内である。上記のような、腫瘍細胞中で、形質転換に寄与する過剰リン酸化した細胞周期調節タンパク質の脱リン酸化を誘発するための、薬剤、食品、食品添加物、または栄養補助食品における、化合物An、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)の使用。上記のような、細胞周期調節タンパク質の過剰リン酸化が腫瘍表現型に寄与する腫瘍の治療のための、薬剤、食品、食品添加物、または栄養補助食品における、化合物An、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)の使用。細胞周期調節タンパク質の例は、Cdc2、p53、FKHRおよびpRbである。
【0065】
以下の使用はいくつかの実施の形態の例である。少なくとも1つのアミノ酸位置Ser392で過剰リン酸化されるp53を過剰発現する腫瘍を治療するための、薬剤、食品、食品添加物、または栄養補助食品における、構造式Anの化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)の使用。サイクリンD1を過剰発現する腫瘍を治療するための、薬剤、食品、食品添加物、または栄養補助食品における、構造式Anの化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)の使用。AKTを過剰発現する腫瘍を治療するための、薬剤、食品、食品添加物、または栄養補助食品における、構造式Anの化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)の使用。パクリタキセル(登録商標Taxol)による治療に耐性の癌を治療するための、薬剤、食品、食品添加物、または栄養補助食品における、構造式Anの化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)の使用。
【0066】
上記の方法はさらに、例えば過剰発現が治療されている細胞周期調節タンパク質のリン酸化状態を分析することにより、治療の有効性を特定する工程を含んでもよい。
【0067】
本発明の利点は、腫瘍、特に癌の治療に、個別化された薬剤手段を提供することである。それぞれの患者は、細胞周期調節タンパク質の発現およびリン酸化状態について評価され、適切なところで本発明の化合物および方法が適用される。したがって、患者のプロファイリングの方法およびそれに続く治療もまた本発明の範囲内である。
【0068】
プロファイリングおよび/または治療される患者における過剰発現は、当該技術においてよく知られる方法および試薬を使用して特定できるということは、当業者に理解されるであろう。例えば、適切な抗体(例えば抗−AKTまたは抗−サイクリンD1抗体)によるウェスタンブロットを使用して、あるいは、過剰発現が転写のレベルにある場合は、適切な核酸プローブによるサザンおよびノザンブロットを使用して、過剰発現を検出することができる。過剰リン酸化は、リン酸化されたアミノ酸残基を認識する抗体を使用して検出してもよい。これらの方法の例は、実施例3に示される。
【0069】
有効量は、ここに提供される指図および当該技術における通常の知識を使用して当業者により特定されてもよい。例えば、有効量は、哺乳類の体内で生理的に適切な濃度を達成するようなものでもよい。そのような生理的に適切な濃度は、少なくとも20ナノモル(nM)、好ましくは少なくとも約100nM、およびより好ましくは少なくとも約500nMでもよい。ある実施の形態において、哺乳類、例えばヒトの血液中少なくとも約1マイクロモルが達成される。構造式Anの化合物は、約50mg/日-約1000mg/日、好ましくは約100-150mg/日から約900mg/日、および最も好ましくは約300mg/日から約500mg/日までで投与されてもよい。しかしながら、上記より多い量を使用してもよい。
【0070】
必要な回数に関して熟練した医者によって特定されたように、例えば毎日、1ヶ月に1回、2ヵ月に1回、半年に1回、1年に1回といった有効期間の投薬計画、あるいは他の投薬計画に従って、治療/予防的投与を継続して差し支えない。投与は、過剰リン酸化を治療的に適切なレベルに減少させるために必要な期間続けてもよい。好ましくは、毎日組成物を投与し、最も好ましくは、哺乳類の体内の効果的な化合物レベルを維持するために、例えば朝と夜というように、1日2回または3回組成物を投与する。最も有益な結果を得るために、少なくとも約30日間、または少なくとも約60日間組成物を投与してもよい。そのような投薬計画を定期的に繰り返して差し支えない。
【0071】
組成物および構造
本発明の化合物は、天然発生(例えばTheobroma属、Herrania属)または合成調製された、異なる供給源からでもよい。ある実施の形態において、化合物は、カカオフラバノールおよび/またはカカオプロシアニジンオリゴマーを含むカカオに由来する。カカオポリフェノールに加えて、またはそれに代えて、組成物は、カカオポリフェノールと同じまたはそれに似た構造および/または特性を有する、カカオ以外の供給源からのポリフェノールを含んでもよい。
【0072】
ここで用いたように、「カカオポリフェノール」(CP)という用語は、カカオ豆の特徴であるフラバノールおよびその関連オリゴマーのようなポリフェノール物質を称する。言い換えれば、カカオポリフェノール、カカオフラバノールまたはカカオプロシアニジンオリゴマーは、供給源に関係なく、カカオで天然に発生するポリフェノール、フラバノールまたはプロシアニジンの構造式を有する、任意のポリフェノール、フラバノールまたはプロシアニジンオリゴマーである。ある実施の形態において、これらの化合物は、カカオ豆またはカカオ原料から抽出されてもよい。「フラバノール」という用語は、カテキンおよびエピカテキンのモノマーを含む。カテキンおよびエピカテキンのオリゴマーは、プロシアニジンと称される。この中でのポリフェノールへの言及は、組み合わせておよび別々に、フラバノールおよびプロシアニジンにも適用されることを理解すべきであり、また逆の場合も同じである。
【0073】
「カカオ原料」の用語は、例えばチョコレート液、および部分または完全脱脂カカオ固形物(例えばケーキまたは粉末)のような、殻を含まないカカオニブに由来するカカオ固形物含有物質を称する。
【0074】
本発明に使用されるポリフェノールは、天然由来のものでもよく、例えばカカオ豆またはポリフェノールの別の天然供給源由来のものであっても、あるいは合成によって調製されたものであっても差し支えない。当業者は、可用性およびコストに応じて、天然または合成ポリフェノールを選択して差し支えない。ポリフェノールは、例えばチョコレート中に含まれるチョコレート液のようなカカオポリフェノール含有カカオ原料の形態で組成物中に含まれていて差し支えなく、あるいは例えば抽出物、抽出画分、単離および精製された個々の化合物、プールした抽出画分または合成によって調製された化合物として、カカオ原料とは無関係に添加されても差し支えない。
【0075】
プロシアニジンオリゴマーは、2から約18、好ましくは2から約12、さらに最も好ましくは2から約10のモノマー単位を有する。あるいは、オリゴマーは、3-18、好ましくは3-12、およびより好ましくは3-10のモノマー単位;あるいは、5-18、好ましくは5-12およびより好ましくは5-10のモノマー単位を有してもよい。例えば、オリゴマーは、ダイマー(二量体)、トリマー(三量体)、テトラマー(四量体)、ペンタマー(五量体)、ヘキサマー(六量体)、ヘプタマー(七量体)、オクタマー(八量体)、ノナマー(九量体)、およびデカマー(十量体)であって差し支えない。オリゴマーでは、モノマーが(4→6)および/または(4→8)のフラバン間結合を介して結合している。もっぱら(4→8)結合のみを有するオリゴマーは直鎖であり;一方、1つ以上の(4→8)結合が存在すると分枝オリゴマーとなる。少なくとも1つの非天然結合(6→6)、(6→8)、および(8→8)を有するオリゴマーも本発明の範囲内である。そのような非天然発生オリゴマーの合成は、ここに言及することによりその関連部分が引用される、2000年10月19日にWO00/61547号として公開された国際特許出願第PCT/US00/08234号に記載されている。本発明の任意の化合物中のフラバン-3-ol(単量体)単位は、(+)-カテキン、(-)-エピカテキンおよびそれらのそれぞれのエピマー(例えば(-)-カテキンおよび(+)-エピカテキン)でもよい。
【0076】
カカオ豆、カカオニブ、あるいは例えばチョコレート液、部分脱脂カカオ固形物および/または完全脱脂カカオ固形物からの抽出によって、カカオポリフェノールを調製することができる。好ましくは、完全または部分脱脂カカオ粉末から抽出物を調製する。テオブロマ、ヘラニア(Herrania)、またはそれらの種内および種間の交配物の任意の種類の豆を用いて差し支えない。発酵した、発酵途中の、または未発酵の豆から抽出物を調製して差し支えなく、発酵豆が最も少ない量のカカオポリフェノールを有し、未発酵豆が最も多い量のカカオポリフェノールを有する。豆の発酵因子に基づいて豆の選択を行うことができ、例えば、275以下の発酵因子を有する豆から抽出が行われる。ここに言及することによりその関連部分が引用される、WO98/09533号として公開された国際特許出願第PCT/US97/15893号に記載のように、発酵の程度を操作することによって、カカオ原料またはその抽出物中のポリフェノールレベルを最適化することができる。
【0077】
従来のカカオ加工法(例えば、Industrial Chocolate Manufacture and Use, ed. Beckett, S.T., Blackie Acad. & Professional, New York, 1997例えば1、5および6章に記載)、あるいは米国特許第6,015,913号(Kealey et al)に記載の改善された加工法(従来の方法に比べて、カカオ原料中のポリフェノールが、その破壊を防止することによって保存される)を用いて加工されたカカオ原料から、カカオポリフェノールを抽出する。改善された加工法は、従来の焙煎工程を省略する。以下の工程によってカカオ原料が得られる:(a)カカオニブを焙煎することなくカカオ殻を軟らかくするのにちょうど十分な時間および温度でカカオ豆を加熱する工程;(b)カカオ殻からカカオニブをふるい分ける工程;(c)カカオニブを回転圧搾する工程、および(d)保存レベルのカカオポリフェノールを含有するカカオバターおよび部分脱脂カカオ固形物を回収する工程。本方法は、従来の加工法よりも非常に高レベルの高プロシアニジンオリゴマーを保持する。本方法によって作成されたカカオ固形物は、無脂肪固形物1g当り20,000μgを超える量;好ましくは25,000μg/gを超える量、より好ましくは28,000μg/gを超える量、さらに最も好ましくは30,000μg/gを超える量の全フラバノールおよび/またはプロシアニジンを含有する。本願発明の目的において、全フラバノールおよび/またはプロシアニジン量は実施例2に記載のように特定される。
【0078】
ポリフェノールを溶解させる溶媒を用いて、上記のような供給源から、または任意の他のポリフェノールまたはフラバノールまたはプロシアニジン含有供給源から、ポリフェノールを抽出してもよい。適切な溶媒として、水、あるいは例えばメタノール、エタノール、アセトン、イソプロピルアルコールおよび酢酸エチルのような有機溶媒が挙げられる。溶媒混合物を用いても差し支えない。溶媒として水を用いる場合、例えば酢酸でわずかに酸性化したものでもよい。いくつかの溶媒の例は、水と、例えば水性メタノール、エタノールまたはアセトン等の有機溶媒との混合物である。水性有機溶媒は、例えば約50%から約95%の有機溶媒を含有する。従って、水中の約50%、約60%、約70%、約80%、および約90%有機溶媒を用いて差し支えない。また、溶媒は、少量、例えば約0.5%から約1.0%の量、の酢酸のような酸を含んでいて差し支えない。抽出物の組成、すなわち表示(すなわちオリゴマープロフィール)、およびプロシアニジンオリゴマーの量は、溶媒の選択に依存するであろう。例えば、水抽出物は主にモノマーを含有し、酢酸エチル抽出物はモノマーおよび低オリゴマー(主にダイマーおよびトリマー)を含有し、さらに水性メタノール、エタノールまたは酢酸抽出物はモノマーおよび一連の高オリゴマーを含有する。モノマーならびに高プロシアニジンオリゴマーの抽出に好ましい溶媒の1つは、70%アセトンである。しかしながら、いずれのポリフェノール含有抽出物も本発明において有用である。カカオフェノール抽出方法は当業界で公知であり、例えば米国特許第5,554,645号(Romanczyk et al.)およびWO97/36497として公開された国際特許出願第PCT/US97/05693号に記載されている。従って、1つの実施形態では、カカオ豆をカカオ粉末に粉砕し、その粉末を脱脂し、カカオポリフェノールを抽出し、さらにその抽出物を精製することによって、カカオ抽出物を調製する。カカオ豆およびパルプを凍結乾燥し、凍結乾燥カカオ豆を脱パルプ化しまたは外皮を剥ぎ、外皮を剥いだカカオ粉末を粉砕することによってカカオ粉末を調製して差し支えない。
【0079】
例えば、カフェインおよび/またはテオブロミンの除去によってカカオポリフェノール抽出物を精製し、さらにその後、ゲル浸透クロマトグラフィおよび/または高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)によって精製する。ゲル浸透クロマトグラフィ(例えばセファデックスLH−20)を用いて、高プロシアニジンオリゴマーに関して抽出物の質を高めた。例えば、選択したオリゴマーがカラムから溶出を始めるまで、モノマーおよび低オリゴマーを含有する溶出物を集めない。そのような抽出の例は当業界で公知であり、ここに言及することによりその関連部分が引用されるWO97/36497として公開された国際特許出願第PCT/US97/05693号の実施例5に記載されている。例えば順相HPLCのような予備HPLCを用いることによって、例えば50重量%以上のモノマーまたは特定オリゴマーを含有するモノマー画分およびオリゴマー画分に、抽出物を分画することができる。その特定の画分がモノマーおよび任意の低オリゴマー(例えばダイマー、トリマーまたはテトラマー画分)を含む場合、その画分は約90から95重量%の特定オリゴマー画分を含む。分離後、所望の画分をプールし、例えばオリゴマー3−10又は5−10を含有するように選択したオリゴマーの混合物を得ることができる。本願明細書におけるガイダンスおよび当業界における一般知識、例えば米国特許第5,554,645号(Romanczyk et al.)およびWO97/36497として公開された国際特許出願第PCT/US97/05693号に記載の技術、を鑑みて、当業者はクロマトグラフィ条件を操作して、所望のプロシアニジン特性を達成することができる。
【0080】
モノマー画分は通常、モノマーエピカテキンおよびカテキンの混合物を含有する;オリゴマー画分は通常、ダイマー(ダイマー画分中)、トリマー(トリマー画分中)、テトラマー(テトラマー画分中)等の混合物を含有する。カカオはそれぞれのモノマー、ダイマー等を1種類以上含有するので、モノマーおよびオリゴマーの混合物は単離された画分で生じる。オリゴマーの変化性は、プロシアニジンの基礎単位である2つのモノマーであるエピカテキンおよびカテキン、並びにオリゴマー中でモノマーを結合する化学結合の結果として生じる。したがって、カカオダイマーは主として、それぞれエピカテキンの2つのモノマーを含有するB2およびB5である。それぞれのモノマーおよびオリゴマーは、例えばC18カラムを使用する逆相HPLCを使って得てもよい。
【0081】
例えば溶媒由来抽出物のようなカカオ抽出物、カカオ画分、単離された化合物またはカカオ原料の形態で、あるいは有効量のカカオフラバノールおよび/またはプロシアニジンを含むチョコレートとして、本発明の組成物中にカカオポリフェノールを使用してもよい。従来のカカオ加工法を用いてカカオ原料を調製して差し支えないが、好ましくは、米国特許第6,015,913号(Kealey et al)に記載の方法を用いて調製する。あるいは、カカオポリフェノールレベルを高めるために、275以下の発酵因子を有するカカオ豆から調製したチョコレート液およびカカオ固形物を用いる。それら原料は、従来のカカオ加工法(例えば焙煎工程を含む)および完全発酵豆を用いて得られるよりも高いカカオポリフェノール含有量を有する。従来技術を用いて上記の原料から、あるいはここに言及することによりその関連部分が引用されるWO99/45788として公開された国際特許出願第PCT/US99/05414号に記載のように、チョコレート製造においてカカオポリフェノールを保護するために改善された方法を用いて、チョコレートを調製することができる。少なくとも1つの以下の非従来的方法によって調製されたチョコレートは、この中で、「保存量のカカオポリフェノールを有するチョコレート」と称される:(i)発酵途中または未発酵のカカオ豆からカカオ原料を調製する;(ii)カカオ原料製造においてカカオポリフェノールを保護する;および(iii)チョコレート製造工程においてカカオポリフェノールを保護する。
【0082】
合成プロシアニジンを用いても差し支えなく、それらは、当業界で公知の方法、およびここに言及することによりその関連部分が引用される、WO99/19319として公開された国際特許出願第PCT/US98/21392号の実施例に記載の方法によって調製できる。
【0083】
フラバノールおよび/またはプロシアニジン誘導体も有用である。それらは、以下のものを含む;没食子酸エステル(例えば没食子酸エピカテキンおよび没食子酸カテキン)のようなモノマーおよびオリゴマーのエステル;例えば上記の構造式の位置X、Yおよび/またはXにおいてモノ−またはジ−糖成分(例えばβ-D-グルコース)のような糖成分で誘導体化された化合物;グリコシル化モノマーおよびオリゴマー、およびそれらの混合物;例えば硫酸化、グルクロン酸化、およびメチル化形態のようなプロシアニジンモノマーおよびオリゴマーの代謝物であって、大腸微小植物代謝により産生されるプロシアニジンの酵素切断産物を除くもの。それら誘導体は、天然由来であっても合成によって調製されたものであっても差し支えない。
【0084】
本発明の組成物は、薬剤、食品、食品添加物、栄養補助食品として有用である。本組成物は、担体、希釈剤、または賦形剤を含んでいて差し支えない。意図された用途に応じて、ヒトまたは家畜での使用、食品、食品添加物、栄養補助食品、または薬剤における使用に適するように、担体、希釈剤、または賦形剤が選択される。組成物は、必要に応じて追加の癌治療薬を含んでもよい。
【0085】
ここで用いたように、「食品」は、成長、修復および生活過程を維持し、かつエネルギーを供給するために生物の体内で用いられる、タンパク質、炭水化物および/または脂肪から実質的に成る物質である。食品は、例えばミネラル、ビタミン、および調味料のような補助的物質も含んでいて差し支えない。Merriam-Webster’s Collegiate Dictionary, 10th Edition, 1993を参照。食品の用語は、ヒトまたは動物が摂取するのに適合させた飲料を含む。ここで用いたように、「食品添加物」は、FDA(21 C.F.R. 170.3(e)(1))によって定義されており、直接的および間接的添加物を含む。ここで用いたように、「薬剤」は医薬である。Merriam-Webster’s Collegiate Dictionary, 10th Edition, 1993を参照。薬剤は医薬品とも称される。ここで用いたように、「栄養補助食品」は、食事を補足することが意図された、以下の食物原料の1つ以上を有するまたは含有する製品(タバコ以外)である:ビタミン、ミネラル、ハーブまたは他の植物、アミノ酸、全1日摂取量を増やすことによって食事を補足するために男性に用いられる栄養物質、あるいはそれら原料の濃縮物、代謝物、構成成分、抽出物または配合物。
【0086】
例えばメチル化化合物または代謝分解産物のようなポリフェノールまたはその誘導体の存在により、および必要に応じて別の癌治療薬と組み合わせることにより、改良された任意の飲料を含む、任意の従来の食品も本発明の範囲に含まれる。L−アルギニン、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ビタミンEおよびビタミンCのような酸化剤、任意のビタミンB複合体、カロチノイド、グアールガム、および/またはモノまたはポリ不飽和脂肪酸(例えばオメガ−3脂肪酸)のような他の化合物が存在してもよい。
【0087】
(i)カカオポリフェノールを含有しない食品にポリフェノールまたはその誘導体を添加することによって、あるいは(ii)食品が従来から例えばチョコレートのようなポリフェノールを含有する場合には、従来の食品中に含まれるレベルを越えてポリフェノールレベルを強化することによって、改良を行う。例えば抽出物、画分または単離および精製された化合物の形態で、カカオポリフェノールのような追加のポリフェノールを添加することによって;原料を含む別のポリフェノール(例えば木の実の表皮)と共にカカオポリフェノールを添加することによって;食品の製造に用いられるカカオ原料中のカカオポリフェノールを保存するように、上記のようにカカオ原料加工およびカカオ豆選択を操作することによって;あるいは、上記のようにチョコレート製造工程を操作することによって;強化を行うことができる。従って、それら食品(飲料を含む)は、匹敵する従来の食品(飲料を含む)と比較して、「高められたレベルのポリフェノール」(カカオプロシアニジンを含む)。高められたレベルのポリフェノールを有するチョコレートの例は、チョコレート製造業者が、既に市販されている製品に、カカオポリフェノール含有カカオ抽出物を添加した場合に生じる。そのような食品は、「高カカオポリフェノール食品」とも称され、すなわち、それら食品は従来の対応物よりも高レベルのポリフェノールを含有する。
【0088】
カカオポリフェノール、またはここに記載される任意の化合物、および必要に応じて別の腫瘍/癌治療薬を含む食品を、ヒトまたは家畜における使用(ペットフードを含む)に適合させて差し支えない。その食品は菓子以外であっても差し支えないが、好ましいコレステロール降下食品は、例えばミルクチョコレート、ダークチョコレートを含むスウィートおよびセミスウィートチョコレート、低脂肪チョコレート、およびチョコレートでキャンディーを覆ったようなキャンディーのような、同一性規格(standard of identity)(SOI)または非SOIチョコレートのような菓子類である。他の例として、焼き製品(例えばチョコレートケーキ、焼きスナック、クッキー、ビスケット等)、調味料、グラノーラバー(granola bar)、キャラメル(toffee chew)、食事代用バー(meal replacement bar)、スプレッド(spread)、シロップ、粉末飲料混合物、カカオまたはチョコレート風味飲料、プディング、もち、米混合物(rice mix)、風味の良いソース等が挙げられる。所望であれば、食品はチョコレートまたはカカオ風味である。食品は、チョコレート、または例えば、木の実(例えばピーナッツ、クルミ、アーモンド、およびヘーゼルナッツ等)を含有するグラノーラバーのようなキャンディーバーでもよい。例えばピーナッツの表皮は約17%のフラバノールおよびプロシアニジンを含有し、さらにアーモンドの表皮は約30%のフラバノールおよびプロシアニジンを含有するため、この中に記載の食品に、表皮を有する木の実を加えると、全ポリフェノール含有量が高められることに注意すべきである。1つの実施形態では、チョコレートキャンディーのヌガー(nougat)に、木の実の表皮を添加する。
【0089】
ある実施の形態において、非チョコレート食品は、約5μg/g以上から約10mg/g(例えば5μg/g以上、好ましくは10μg/g以上、より好ましくは 100μg/g以上)のカカオフラバノールおよび/またはプロシアニジンオリゴマーを含有する。所望であれば、非チョコレート食品は、以下に記載のチョコレート食品中に含まれるレベルよりもさらに高レベルのカカオプロシアニジンを含んでいて差し支えない。
【0090】
チョコレート菓子は、ミルクまたはダークチョコレートでもよい。ある実施の形態において、チョコレートは、その製品中の無脂肪カカオ固形物の全体量に基づいて、チョコレート1g当り、3,600μg以上、好ましくは4,000μg以上、より好ましくは4,500μg以上、さらに好ましくは5,000μg以上、最も好ましくは5,500μg以上のカカオフラバノールおよび/またはプロシアニジンを含有する。他の実施形態では、チョコレートは、その製品中の無脂肪カカオ固形物の全体量に基づいて、チョコレート1g当り、6,000μg以上、好ましくは6,500μg以上、より好ましくは7,000μg以上、最も好ましくは8,000μg以上のカカオプロシアニジンを含有し、さらにより好ましくは10,000μg含有する。
【0091】
ミルクチョコレート菓子は、そのミルクチョコレート製品中の無脂肪カカオ固形物の全体量に基づいて、ミルクチョコレート1g当り、1,000μg以上、好ましくは1,250μg以上、より好ましくは1,500μg以上、最も好ましくは2,000μg以上のカカオフラバノールおよび/またはプロシアニジンを含有する。より好ましい実施形態では、ミルクチョコレート菓子は、そのミルクチョコレート製品中の無脂肪カカオ固形物の全体量に基づいて、ミルクチョコレート1g当り、2,500μg以上、好ましくは3,000μg以上、より好ましくは4,000μg以上、最も好ましくは5,000μg以上のカカオフラバノールおよび/またはプロシアニジンを含有する。
【0092】
食品中のL−アルギニンの量は変化して差し支えない。通常、カカオは、100gの部分脱脂カカオ固形物100g当り、1から1.1gのL−アルギニンを含有する。それはカカオ100g当り0.8から1.5gの範囲に亘るであろう。ある実施の形態において、本発明のチョコレート食品は、カカオ原料中に天然で生じる量よりも多い量で、L−アルギニンを含有する。食品中で用いられるカカオ原料およびL−アルギニンの量が分かれば、当業者は容易に最終製品中のL−アルギニンの全体量を特定できるであろう。食品は、通常、食品1g当り、5μg/g以上、好ましくは30μg/g以上あるいは60μg/g以上、さらに好ましくは200μg/g以上でL−アルギニンを含むであろう。
【0093】
フラバノールおよび/またはプロシアニジンのようなポリフェノールの1日有効量を単一の1人前量で提供してもよい。したがって、菓子(例えばチョコレート)は、1人前当り少なくとも約100mg(例えば150−200mg、200−400mg)のカカオプロシアニジンを含有してもよい。
【0094】
必要に応じて別の癌治療薬と共に、本発明の化合物を含む薬剤を、例えば経口、口腔内、経鼻、直腸、静脈内、非経口、および局所等の様々な経路で投与して差し支えない。当業者は、構造式Anの化合物、および必要に応じて他の癌治療薬の腫瘍部位への供給を最大限にするために適切な投与形態を特定することができる。したがって、各投与形態に適合させた剤形も本発明の範囲に含まれ、例えば錠剤、カプセル剤、ゼラチンカプセル剤(ゲルカップ)、バルクまたは単位量の粉末または顆粒、エマルジョン、懸濁液、ペースト、クリーム、ゲル、フォームまたはゼリー等の固形剤形、液体剤形、および半固形剤形が挙げられる。徐放性剤形も本発明の範囲に含まれ、米国特許第5,024,843号;第5,091,190号;第5,082,668号;第4,612,008号;および第4,327,725号(参照によって関連部分がこの中に組み込まれている)に記載のように調製することができる。適切な薬剤的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤は、当業界で周知であり、当業者は容易にそれらを特定できる。例えば錠剤は、効果量のポリフェノール含有組成物、ならびに例えばソルビトール、ラクトース、セルロースまたはリン酸2カルシウムのような担体を含んでもよい。
【0095】
カカオフラバノールおよび/またはプロシアニジン、および必要に応じて別の癌治療薬を含有する栄養補助食品を、当業界で公知の方法を用いて調製することができ、例えば、リン酸2カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、硝酸カルシウム、ビタミン、およびミネラルのような栄養素を含んでもよい。
【0096】
更に、本発明の組成物(例えば食品、栄養補助食品、薬剤)を含むパッケージのような製品の説明および本発明の組成物の存在または増強された含有量を示す、あるいは細胞周期調節タンパク質が腫瘍表現型に寄与する腫瘍(例えば癌)を治療するための組成物の使用を示すラベルも本発明の範囲内である。パッケージ製品は、本発明の組成物および細胞周期調節タンパク質が腫瘍表現型に寄与する腫瘍(例えば癌)の治療に使用するための指示を含んでもよい。使用のためのラベルおよび/または指示は、本出願に記載される任意の使用方法に言及してもよい。ある実施の形態において、使用のためのラベルおよび/または指示は、p53を過剰発現する腫瘍(少なくともアミノ酸位置Ser392において過剰リン酸化される);サイクリンD1を過剰発現する腫瘍;AKTを過剰発現する腫瘍;またはパクリタキセル(登録商標Taxol)による治療に耐性の腫瘍、の治療ための本発明の化合物の直接の使用を含んでもよい。
【0097】
少なくとも1つの容器および少なくとも1つの本発明の化合物(例えば、nが5である構造式Anの化合物;プロシアニジンペンタマー)を含む組合せ治療に使用するために適合された製品の説明も本発明の範囲内である(パッケージ製品またはキット)。製品の説明はさらに、分離組成物として別の容器中で、または本発明の化合物との混合物で提供される、少なくとも1つの追加の化学療法薬(すなわち、構造式Anの化合物、その薬剤的に許容できる塩または誘導体(酸化生成物を含む))を含む。
【0098】
以下の非限定的な実施例において本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0099】
実施例1−抽出および精製
抽出および精製は、参照によりここに引用される、Romanczyk et alの米国特許第6,670,390号に記載されるように行ってもよい。特定の関連部分が以下に再現される。
【0100】
プロシアニジン抽出方法
方法1
JalalおよびCollinにより記載される方法の改良を使用して、脱脂し、発酵させず、凍結乾燥したカカオ豆からプロシアニジンを抽出した(Polyphenols of Mature Plant,Seedling and Tissue Cultures of Theobroma Cocoa,Phytochemistry,6,1377-1380,1977)。2X 400mL 70%のアセトン/脱イオン水およびその後400mL 70%のメタノール/脱イオン水を使用して、脱脂したカカオの塊の50グラムのバッチからプロシアニジンを抽出した。抽出物をプールし、不完全真空下でロータリーエバポレーターにより45℃で乾燥させることによって溶媒を除去した。生じた水相を、脱イオン水で1Lに希釈し、400mLのCHCl3で2倍抽出した。溶媒相は捨てた。次に水相を、500mLの酢酸エチルで4倍抽出した。生じた乳濁液を、2000x、30分間、10℃で操作したSorvall RC28S遠心分離機で遠心分離し破棄した。混合された酢酸エチル抽出物に、100-200mLの脱イオン水を加えた。不完全真空下でロータリーエバポレーターにより45℃で乾燥させることによって溶媒を除去した。生じた水相を液体窒素中で凍結させ、LABCONCO Freeze Dry Systemで凍結乾燥させた。異なるカカオ遺伝子型から得られた粗プロシアニジンの収率は表1に示される。
【表1】

【0101】
方法2
もう1つの方法として、70%の水性アセトンを使用して、脱脂し、発酵させず、凍結乾燥したカカオ豆からプロシアニジンを抽出した。10グラムの脱脂した材料を、100mLの溶媒で5-10分間スラリーにした。スラリーを3000xで4℃で15分間遠心分離し、上澄みをガラスウールに通過させた。濾液を不完全真空下で蒸留させ、生じた水相を液体窒素中で凍結させ、LABCONCO Freeze Dry Systemで凍結乾燥させた。粗プロシアニジンの収率は15-20%であった。
【0102】
特定の議論に縛られることを意図せず、粗収率における差異は、異なる遺伝子型、地理的起源、園芸品種、および調製の方法に遭遇した変動を示した。
【0103】
カカオプロシアニジンの部分的精製
A.ゲル浸透クロマトグラフィ
上記のようにして得たプロシアニジンを、セファデックスLH-20(28x2.5cm)上での液体クロマトグラフィにより部分的に精製した。脱イオン水からメタノールまでの段階勾配により分離を助長した。最初の勾配組成物を、脱イオン水中15%のメタノールで開始し、30分ごとに、脱イオン水中25%のメタノール、脱イオン水中35%のメタノール、脱イオン水中70%のメタノール、および最終的に100%のメタノールで段階的にした。キサンチンアルカロイド(カフェインおよびテオブロミン)の溶出後の廃液を、単一の画分として集めた。画分はキサンチンアルカロイドを有しない細画分を産生し、これをさらに細分画して、MM2AからMM2Eまでで示される5つの細画分を生じた。不完全真空下でロータリーエバポレーターにより45℃で蒸発させることにより、溶媒をそれぞれの画分から除去した。生じた水相を液体窒素中で凍結させ、LABCOONCO Freeze Dry Systemで一晩凍結乾燥させた。
【0104】
約100mgの物質がこの方法で細分画された。クロマトグラフィ条件:カラム;28x2.5cmセファデックスLH-20、Mobile Phase:メタノール/水段階勾配、30分間隔で段階にされる15:85、25:75、35:65、70:30、100:0、流速;1.5mL/分、検出器;λ1=254nmおよびλ2=365nmにおけるUV、送り速さ;0.5mm/分、カラム負荷;120mg。
【0105】
B.半調製高速液体クロマトグラフィ(HPLC)
方法1.逆相分離
上記のようにして得たプロシアニジンを、半調製HPLCにより部分的に調製した。可変波長検出器、1mL注入ループを持つRheodyne7010注入弁を備えたHewlett Packard1050HPLCシステムに、Pharmacia FRAC-100画分収集器を取り付けた。Phenomenex10μODS Ultracarb(登録商標)(60x10mm)ガードカラムと連結したPhenomenex Ultracarb10μ ODSカラム(250x22.5m)で分離を行った。移動相組成物は以下膿瘍であった:A=水;B=以下の直線勾配条件で使用されるメタノール:[時間、%A];流速5mL/分で(0,85)、(60,50)、(90,0)、および(110,0)。化合物を254nmでUVにより検出した。それぞれのピークまたは選択クロマトグラフィ領域を、定期間隔でまたは手動で、さらなる精製およびその後の評価のために画分採集により集めた。注入負荷は、物質の25-100mgであった。
【0106】
方法2.順相分離
上記のようにして得たプロシアニジン抽出物を、半調製HPLCにより部分的に調製した。Hewlett Packard 1050HPLCシステム、254nmでセットされたMillipore-Waters Model 480 LC検出器に、ピークモードでセットされたPharmacia Frac-100画分採集器を取り付けた。Supelco 5μm Supelguard LC-Siガードカラム(20x4.6mm)と連結したSupelco 5pm Supelcosil LC-Siカラム(250x10mm)で分離を行った。以下の条件下で直線勾配によりプロシアニジンを溶出し:(時間、%A,%B);(0,82,14)、(30,67.6,28.4)、(60,46,50)、(65,10,86)、(70,10,86)、その10分間再平衡化した。移動相組成物は、Aジクロロメタン;B=メタノール;およびC=酢酸:水(1:1)であった。3mL/分の流速を使用した。254nmにおけるUVにより成分を検出し、Kipp & Zonan BD41レコーダで記録した。注入容積は、0.25mL70%の水性アセトン中に溶解した10mgのプロシアニジン抽出物の100-250μLであった。それぞれのピークまたは選択クロマトグラフィ領域を、定期間隔でまたは手動で、さらなる精製およびその後の評価のために画分採集により集めた。
【0107】
HPLC条件:250x10mm Supelco Supelcosil LC-Si(5μm)半調製カラム;20x4.6mm Supelco Supelcosil LC-Si(5μm)ガードカラム;検出器:Waters LC;254nmにおける分光光度計Model480;流速:3mL/分;カラム温度:周囲温度;注入:250μLの70%水性アセトン抽出物。
【表2】

【0108】
得られた画分は下記のようであった:
【表3】

【0109】
実施例2:フラバノール/プロシアニジンの特定
以下のようにプロシアニジンを定量化した:市販されている(-)-エピカテキン、ならびに以下の方法によって精製状態で得られたダイマーからデカマーを用いて複合標準を作成した:Hammerstone, J.F. et al., J. Ag. Food Chem.; 1999; 47(10)490-496, Lazarus, S.A.et al., J.Ag. Food Chem.; 1999; 47(9); 3693-3701、Adamson, G.E. et al., J. Ag. Food Chem.; 1999; 47(10) 4184-4188。励起波長276nmおよび発光波長316nmでの蛍光検出を利用して、以前挙げられたAdamson引例に記載の順相HPLC法を用いて、それら化合物を使用した標準ストック溶液を分析した。ピークを集め、任意の1つのオリゴマー類内の全ての異性体が含まれるようにその面積を合計し、さらに2次フィット (quadratic fit)を用いて校正曲線を作成した。モノマーおよび小さなオリゴマーはほとんど直線プロットを有しており、それはモノマーおよびダイマーに基づく校正曲線を作成するために直線回帰を事前に行ったものと一致していた。
【0110】
それら校正曲線を用いて、以下のように調製した試料中のプロシアニジンレベルを計算した:最初に、ヘキサン(各45mL)を用いて、カカオまたはチョコレート試料(約8g)を3回脱脂処理した。次に、5mLのアセトン/水/酢酸混合物(70:28.5:0.5 v/v)を用いて1gの脱脂材料を抽出した。次に、試料のHPLCデータを、上記のように得られた校正曲線(精製オリゴマーを用いた)と比較することによって、脱脂材料中のプロシアニジンの量を特定した。Association of Official Analytical Chemists(AOAC Official Method 920.177)による標準化方法を用いて、試料(チョコレートに関して1gの試料を用い、または液体に関して0.5gの試料を用いた)の脂肪の割合(%)を特定した。さらに、元の試料(脂肪を含む)中の全プロシアニジンの量を計算した。カラム間の変動を防ぐため、各試料について実施する前に校正を行った。
【0111】
実施例3
実験手順
細胞培養
ヒト乳癌細胞系MDA MB-231、MDA MB-436、MD MB-468、SKBR-3およびMCF-7を、Lombardi Coprehensive Cancer Center(LCC)Tissue Culture Shared Resoureから得た。MDA MB-231、MDA MB-436、MD MB-468およびSKBR-3は、p53−突然変異変異エストロゲンレセプター(ER)−陰性細胞である。MDA MB-231はまた、K-ras癌遺伝子に突然変異を含む。MCF-7細胞系は、ER-陽性およびp53について非突然変異である。10%ウシ胎仔血清(FBS)(Quality Biological,Gaithersburg,MD)を加えたDMEM(Gibco-BRL,Gaithersburg,MD)を含有する完全培地中で培養した。さらに、MCF-7についての培地は、非必須アミノ酸を含有した(Gibco-BRL,Gaithersburg,MD)。
【0112】
不死化ヒト乳房上皮細胞(HMEC)、MCF-10A、184A1N4および184B5、正常な、継代8における有限寿命HMEC(1001-8、CC-2551)、乳房形成乳組織を、Clonetics-Bio Whittaker, Inc.(Waskersville,MD)から購入した。c-MYC、ErbB2およびRAS癌遺伝子のMCF-10A細胞への導入により産生される細胞系(MCF-10A-ErbB2/Ras細胞およびMCF-10A-c-Myc)も使用した。
【0113】
MCF-10A細胞系(自然不死化した、非突然変異p53を有する非腫瘍形成乳房上皮細胞系)を、5%ウマ血清(Gibco)、20ng/mL EGF(Upstate Biotechnology Incorporated,Lake Placid,NY)、10μg/mLインスリン(Biofluids,Rockville,MD)および500ng/mLヒドロコルチゾンを加えたF-12/DMEM培地中で維持した。同じ培地を、MCF-10A-ErbB2/Ras細胞(Ciardiello,F.et al.,Maol Carcinog.,6:43-52.1992)およびMCF-10A-c-Myc細胞(Sheen,J-H.et al.,Mol.Cell.Biol,22:1819-1833,2002)に使用した。
【0114】
184A1N4細胞系(以下、「A1N4」と称する)は、HMECの一次培養に由来する非腫瘍形成細胞系であり、ベンゾピレン(Dr.M.R.Stampfer,University of California,Berkley,CAにより提供される)で不死化される(Stamper,M.R.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:2394-2398,1985)。これらの細胞を、0.5%FBS、0.5μg/mLのヒドロコルチゾン(Biofluids)、5μg/mLインスリンおよび10ng/mLのEGFを有するIMEM培地中で維持した。
【0115】
184B5系は、不死化した、ベンゾピレン(Dr.M.R.Stampferにより提供される)で不死化したHMECの一次培養に由来する非腫瘍形成細胞系であり、Clonetics乳房上皮細胞培地(MEGM)中で維持した。
【0116】
正常な死ぬ運命にあるHMECを、52μg/mlのウシ下垂体抽出物、10ng/mLのヒトEGF、5μg/mLのインスリン、および0.5μg/mLのヒドロコルチゾンを加えた乳房上皮細胞成長培地(CC-3152)(Clonetics)中で、供給者の指示に従って維持し、低い(0.1-0.2%)CO2条件で37℃のインキュベーター中で成長させた。
【0117】
試薬および抗体
EPLC-精製されたオリゴマー五量体プロシアニジンを、実施例1に記載されるように調製した。五量体プロシアニジンは約92-95%精製であった。五量体のストック溶液を、最初に20μL DMSO中に溶解し、次に完全培地で2mLに希釈することにより調製した。無菌の濾過したアリコートを取り、100μg/mLの最終濃度にした。
【0118】
ウサギポリクローナルポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)(H-250)を、Santa Cruz Biotechnology Inc.,(Santa Cruz,CA)から得た。α−チューブリン抗体を、Neomarkers,Fremont,CAから得た。プロテオミクス分析に使用した全ての抗体を、Cell Signaling(Beverly,MA)、Upstate Biotechnology(Lake Placid,NY)、Neomarkers(Fremont,CA)およびSanta Cruz(Santa Cruz,CA)から得た(表2)。表2を参照すると、「マウス」と示されるAbsはモノクローナルAbsであり、「ウサギ」と示されるAbsはポリクローナルAbsであった。ECL検出試薬を、Amersham(Arlington Heights,IL)から得た。
【0119】
クリスタルバイオレットアッセイによる細胞増殖の評価
ウェルごとに1x103細胞を、96ウェル皿(Corning Costar,Cambridge,MA)で播種した。HMEC、A1N4および184B5細胞の一次培養を、2つの異なる細胞密度(ウェルごとに1x103および2x103で播種)で評価した。細胞付着の24時間後、3通りのウェル中の細胞を、100μg/mLの濃度でペンタマーにより処理した。同じプレート上の細胞を、対応するコントロールで処理した:(i)DMSOを含有する培地および(ii)添加物を含まない培地。
【0120】
細胞を1、2、3、6、8、および10日間処理したが、いくつかの場合において、処理後2、3、4、7および10日にサンプルを採集した。それぞれの処理を三重に行った。以下のようなそれぞれの時点においてサンプルを採集した:培地を除去し、室温でそれぞれのウェルに50μLのクリスタルバイオレット溶液(0.1Mクエン酸溶液中0.1%のクリスタルバイオレット)を加え、プレートを15分間インキュベートした後、脱イオン水で洗浄した。プレートを室温で一晩乾燥させた。次の日、それぞれのウェルに0.1Mクエン酸ナトリウム溶液を100μL加えることにより、プレートから汚れを除去した。プレートを1時間インキュベートした。サンプルの光学密度(OD)を、Ultramark Microplate Imagining System(BioRad,Philadelphia,PA)において550nmで読み取った。実験を二度繰り返し、サンプルごとに9つの測定の平均を生じた。統計的有意性を、tテスト分析を使用して特定した。
【0121】
ミトコンドリア膜電位
登録商標ApoAlert Mitochondrial Membrane Sensor Kit(Clonetech Inc.,Palo Alto,CA)を使用して、ミトコンドリア膜電位を測定した。MDA MB-231、MCF-7、MDA MB-468、MDA MB-436、SKBR-3、MCF-10A、MCF-10A-c-MycおよびAIN4細胞を、適切な培地中で、25cm2に60-70%の集密に成長させた。次の日、完全培地を、(i)ペンタマー(100μg/mL、またはある場合には25μg/mL)、(ii)DMSOを有する培地、または(iii)培地のみ、を含有する完全培地と取り替えた。最初、1、2、3、6、12および24時間、ペンタマーの存在下で細胞を成長させたが、1、2および6時間の処理のものだけを次の試験のために選択した。全ての浮遊性および付着性の細胞を混合し、フローサイトメトリー管に細胞を分けた。製造者の指示に従い、概して管ごとに1x106細胞を分析した。サンプルをLombardi Comprehensive Cancer Center Core Flow Cytometry Shared Resource Facilityで分析した。
【0122】
マルチウェルプレート中の層状タンパク質スキャニング(LPS/MWP)
層状タンパク質スキャニング(LPS)は、マルチウェルプレート[Englet,C.R.et al.,Cancer Res.,60:1526-1530,2000]を使用して、高速処理の様式で液体タンパク質サンプルをスクリーニングする方法であり、20/20 Gene Systems,Inc.,(Rockville,MD)により実施される。簡単には、細胞が溶解され、タンパク質抽出物が真空マニフォールドのウェルに入れられ、重ねた膜を通して移される。それぞれのサンプルのセットから、最大5ドットブロット膜を生じる。
【0123】
MDA MB-231ヒト乳癌細胞を、48および72時間、100μg/mLペンタマーでまたはそれなしで、処理した。細胞をLPS/MWP溶解バッファ(20/20 Gene Systems, Inc.)中で溶解した。BCAタンパク質アッセイキット(Pierce,Rockford,IL)を使用してタンパク質濃度を測定した。各サンプルの10および20μgを、Bio-Dot精密濾過装置(BioRad,Philadelphia,PA)上に2通りにいれ、製造者(20/20 Gene Sytems)により推奨されるように、5層の膜を通過させた。通過の後、室温で10分間、1xPBS中で1mg/mLのEZ-Link スルホ-NHS-ビオチン溶液中で、全ての膜をビオチン化した(Pierce)。
【0124】
表1に示される抗体(1:500または1:1000希釈)と共に、4℃で一晩、膜をインキュベートした。次の日、Tween20(0.1%)を有するTris緩衝食塩水(TBSTバッファ)中で膜を洗浄し、FluroLink Cy5標識ストレプタビジン(1:500,Amarsham)およびフルオレセイン標識二次抗マウスまたは抗ウサギ抗体(1:2000,Molecular Probes, Eugene,OR)の混合物中で、室温で60分間インキュベートし、その後TBST中で洗浄した。膜を乾燥させ、Typhoonスキャナ(Amersham)でスキャンし、得られた画像をImageQuantソフトウェア(Amersham)で分析した。データをエクセルでプロットし、JMP(SAS Institute,Inc.,Cary,NC)で統計的に分析した。階層的構造形成分析を行い、コントロールおよび処理群へのサンプルの偏析を評価した。
【表4】

【0125】
免疫ブロットによるLPS/MWP結果の確認
LPSにより検出された、ペンタマーの影響を受けたタンパク質を、免疫ブロットによりさらに分析した。下記のタンパク質に対する抗体を使用した:Cdc2(Tyr15)、FKHR(Ser256)、p53(Ser37,Ser46およびSer392)、PKC-δ(Ser643)、PKC-θ(Ser643/676)、pRb(Ser795およびSer807/811)、SAPK/JNK(Thr183/Tyr185)およびStat5(Tyr694)(全ての抗体はCell Signalingから得た)。
【0126】
ペンタマー処理したMDA MB-231、MDA MB-468およびMCF-7細胞および対応するDMSO処理したコントロールからのタンパク質ペレットを、1%SDSを有するPBS中に溶解し、5ワットのパワーで15秒間超音波分解した。その後、サンプルを10000rpmで遠心分離し、上澄みをきれいな管に移した。上記のようにしてタンパク質濃度を測定した。各サンプルの10μgを、4-20%勾配ゲル(BioRad,Philadelphia,PA)上のPAGEにより分離した。製造者の指示(20/20 Gene Systems)に従って、ゲルをPVDF膜(BioRad)またはP-FILM膜(10層の膜)に移した。一次抗体と共にインキュベーションする前に、PVDF膜を、0.5%カゼイン溶液(Vector Laboratories,Burlingame,CA)中で1時間ブロックした。P-FILM膜は、一次抗体と共にインキュベートする前にブロッキングする必要はない。一次抗体の1:500希釈中4℃で一晩膜をインキュベートし、5分間TBST中で3回洗浄し、HRP複合二次抗体中でインキュベートし、再度洗浄し、ECL Plus試薬(Amersham)中でインキュベートした。シグナルをBIOMAX MRフィルム(Kodak,Rochester,NY)で視覚化した。一次抗体と共にインキュベートした後、抗GAPDH抗体(1:500希釈;Chemicon,Temecula,CA)中で膜をインキュベートした。このタンパク質の存在を、アルカリホスファターゼDuoLux基質(Vector Laboratories)に複合した二次抗体で視覚化した。
【0127】
コントロールとして、Cdc2、FKHR、p53およびpRbについてプローブ化したPVDF膜を、製造者の指示に従ってストリップ(strip)した(Cell Signaling)。ストリップの後、TBSTバッファ中で5分間4回洗浄し、上記のようにブロックし、再度洗浄し、4℃で一晩、一次抗体と共にインキュベートした。使用した一次抗体は、抗-total Cdc2(1:1000希釈、Cell Signaling)、抗-total FKHR(1:1000希釈、Cell Signaling)、抗-内因性p53(1:1000希釈、Cell Signaling)および抗−内因性pRb(1:1000希釈、Santa Cruz)であった。次の日、膜を洗浄し、HRP複合二次抗体中でインキュベートし、再度洗浄し、ECL Plus試薬(Amersham)中でインキュベートした。上記のようにシグナルを検出した。添加の質を調べるために、上記のように、抗GADPH抗体(1:500希釈、Chemicon,Temecula,CA)で膜をプローブ化した。
【0128】
p53およびpRbの高分解能プロファイリング
p53pおよびpRbはいずれも複数のリン酸化部位を含有し、それぞれの部位を別々に評価して、各潜在的な機能をより性格に示す。したがって、タンパク質の高分解能機能プロファイリングを、P-FILM技術(20/20 Gene Systems,Inc)を使用して行った。
【0129】
PDVF膜ブロットに使用したのと同じタンパク質サンプルを使用した。10μg100μg/mLのペンタマーで処理した、MDA MB-231細胞、およびいくつかの場合にはMDA MB-468およびMCF-7細胞の各タンパク質サンプルまたはDMSO処理コントロールを、4-20%勾配ゲル(BioRad)上でPAGEにより分離した。製造者の指示(20/20 Gene Systems,Inc)に従って、タンパク質を10層の膜上に移した。製造者(Cell Signaling)により推奨されるように、1:1000希釈で、全ておよびリン酸化されたp53(p53Ser6、Ser9、Ser15、ser20、Ser37、Ser46およびSer392)を認識する抗体で膜をプローブ化した。全ての場合に使用した二次抗体は、抗ウサギポリクローナル1:2000(Amersham)であった。シグナルをBIOMAX MRフィルム(Kodak)上で視覚化した。1:1000希釈で、抗ホスホpRb(Ser780、ser795およびSer807/811)および抗pRbポリクローナル抗体(Cell Signaling)を使用してpRbのプロファイリングを行った。全ての場合に使用した二次抗体は、抗ウサギポリクローナル1:2000(Amersham)であった。Kodak 1D画像分析ソフトウェアを使用して画像分析を行った。バックグラウンドを集めた強度を、GADPH強度を使用して添加について標準化した。数値解析をエクセルで行った。
【0130】
結果
ペンタマー誘発成長阻害
ヒト乳癌細胞MDA MB-231、MDA MB-436、SKBR-3、およびMDA MB-468細胞は、形質転換していない、自然に不死化した、ヒト乳房上皮MCF-10A細胞(ペンタマーに耐性である)よりも、ペンタマー誘発成長阻害に感応性であった。ペンタマー処理の10日後、MDA MB-231、MDA MB-436、SKBR-3、およびMDA MB-468細胞は、DMSO処理されたコントロールと比較して、それぞれお5倍、4.1倍、5.5倍および4倍阻害された。MCF-10A細胞と同様に、正常な死すべき運命のHMECは、ペンタマーの成長阻害効果に耐性であり、1.4倍だけ阻害された。ベンゾ(a)ピレン−不死化、非形質転換184B5およびA1N4細胞は、DMSO処理されたコントロールと比較して、それぞれ2.8倍および7.3倍阻害された。乳癌細胞の多くは、ペンタマー処理の6日後にペンタマーに対して大きい感応性を示し、これは、処理の10日後に大きい感応性を示した不死化184B5細胞よりも早かった。
【0131】
ペンタマー処理は野生型p53を含みER陽性であるMCF-7細胞の大きい、5.6倍の成長阻害を引き起こしたので、上記の腫瘍細胞におけるペンタマーの成長阻害効果は、p53およびER状態と無関係である。また、低増殖MCF-10A細胞(個体群倍加時間31.4時間)、並びに高増殖MCF-10A-c-Myc(個体群倍加時間20.4時間)およびMCF-10A-ErbB2/Ras(親のMCF-10A細胞に比較して4倍早い倍加時間)がペンタマー誘発成長阻害に等しく耐性であったので、ペンタマーの効果は、細胞増殖の速度と無関係である。
【0132】
ミトコンドリア膜電位のペンタマー誘発脱分極
形質転換した乳癌細胞の多くは、ペンタマーによる処理後、ミトコンドリア膜の高い脱分極を示した(表3、3つの実験からの平均データを示す)。この観察の例外は、異なる経路を使用した数回の試みの後、脱分極が見られなかったMCF-7であった。
【表5】

【0133】
MDA MB-231細胞は、ペンタマーに対して高度のミトコンドリア膜脱分極(平均58%)を示したが、DMSO処理細胞における膜の脱分極は5-10%であった。しかしながら、ペンタマー処理により生じたミトコンドリア膜の脱分極はMCF-10A細胞の20%だけであった。DMSO処理により、10%のMCF-10Aでのみミトコンドリア膜の脱分極が生じた。これらの結果は、予期されたバックグラウンド値の範囲内であった。培地のみで細胞を処理した場合に同様の結果が得られた。さらに、ペンタマー処理されたMCF-10A-Myc細胞における膜脱分極に対する同様の耐性が検出された。MDA MB-436、MDA MB-468およびSKBR-3細胞においても、ペンタマーはミトコンドリア膜の大きい脱分極を生じた(表3)。
【0134】
別の実験において、MCF-10AおよびMDA MB-231細胞を、1、2および6時間ペンタマーにさらした。その結果、100μg/mLのペンタマーにより、MDA MB-231細胞でのみミトコンドリア膜の時間依存性脱分極が生じたことが示された。同様に、MDA MB-231細胞だけが、25および100μg/mLのペンタマーに対して投与量依存性反応を示した。
【0135】
ペンタマーにより誘発されるPARP発現における現象
ペンタマーにより誘発される、ミトコンドリア膜の脱分極がヒト乳癌細胞系におけるアポトーシス細胞死を生じるか否かを特定するために、MDA MB-231およびMCF-7細胞を、PARP分解産物について調べた。PARPはカスパーゼカスケードの下流基質であるので、アポトーシスの優れたマーカーである[Soldani,C.et al.,Apoptosis,7:321-328,2002]。
【0136】
その結果、ペンタマーによる48時間の処理後、MDA MB-231細胞においてPARPの主要なバンドは分解しないままであることが示され、予期された85kDaの分解産物についての形跡は見られなかった。PARPについて116kDa分子量の位置の下の同定されないタンパク質バンドが、全ての未処理のコントロールで観察されたが、ペンタマー処理された細胞では存在しなかった。このバンドの重要性は現時点では分からない。
【0137】
カスパーゼ3を欠乏するMCF-7細胞において、ペンタマーによる48時間の処理によって、全長PARP(116kDa)が減少した。この結果は、これらの細胞中のカスパーゼ7または6の作用によるものかもしれない。しかしながら、分解したPARP断片は検出されなかった。現在、ヒト乳癌細胞中のアポトーシスの誘発におけるペンタマーの役割はさらに調査されている。
【0138】
乳癌細胞中のペンタマー標的
LPSスクリーニングのための潜在的なペンタマー標的として選択されたタンパク質は、細胞の成長、増殖、生存およびアポトーシスのコントロールに広く関連するものである(表1参照)。活性状態を示す、調べたタンパク質のリン酸化状態に重点を置いて、全部で45の異なる抗体をスクリーニングで使用した。
【0139】
LPSテスト結果は、8つのタンパク質のリン酸化状態がペンタマーにより影響を受けたことを示した:Cdc2、FKHR、p53、PKC-δ、PKC-θ、pKb、SAPK/JNKおよびStat 5。5つのタンパク質のリン酸化は、48時間以内にペンタマーにより減少し、ペンタマー処理の72時間後に全ての8つのタンパク質でリン酸化が減少した。
【0140】
それぞれのコントロールと比較して、およびデンシトメトリーに基づいて、Cdc2(Tyr15)のリン酸化は、処理の48時間後に31%、72時間後に45%減少し;FKHR(Ser256)のリン酸化は72時間後に63%減少し;p53のリン酸化は処理後36%減少し(Ser 37、46および392で抗体混合物により検出された);Ser643におけるPKC-δのリン酸化は48時間で22%および72時間後に49%減少し;Ser643/676におけるPKC-θのリン酸化は72時間後に49%減少し;Ser795およびSer807/811におけるpRbのリン酸化は48時間で36%および処理後72時間で40%減少し;Tyr694におけるStat 5リン酸化は48時間で28%および72時間で33%減少した。タンパク質p53残基Ser6、Ser9、Ser20およびSer15は、ペンタマーにより大きい影響を受けなかった。これらのタンパク質のリン酸化はペンタマーにより影響を受けたが、それらの全細胞タンパク質発現は影響を受けなかった。統計的分析により、ペンタマー処理の72時間後LPSにより分析された全てのサンプルにおいてタンパク質の行動に基づくクラスター形成が示された。分析は、コントロールと処理群との間の明確な分離を示した。
【0141】
Cdc2-P、FKHR-P、p53-PおよびpRbについてのLPS分析の結果は、図1Aに示される。
【0142】
図1Bを参照すると、LPS結果を確かめるために免疫ブロットを使用した。このアッセイでは、ペンタマーは、48および72時間においてCdc2(Tyr15)、48および72時間においてFKHR(Ser256)、72時間においてp53(Ser37、Ser46およびSer392)、および48および72時間においてpRb(Ser795およびSer807/811)のリン酸化形態に影響を与えた。
【0143】
LPS分析により示されるように、およびPVDF膜実験から、Cdc2、FKHRおよびp53の全てのタンパク質発現がペンタマーにより影響を受けたわけではない(図1A参照)。しかしながら、pRbに関して、全てのおよびホスホ−特異的部位がペンタマーにより影響を受けた(図1C)。GADPH発現により等しい添加を確かめた(図1Bおよび1C)。
【0144】
現状の実験的な免疫ブロット条件およびPVDF膜を使用し、PKC-δ、PKC-θ、SAPK/JNKおよびStat5におけるペンタマーの効果におけるLPS初期スクリーニングにより得られた結果は確かめなかった。
【0145】
p53(Ser392)およびpRb(Ser780、Ser795およびSer807/811)のリン酸化をペンタマーが減少する
p53およびpRbは、多くのリン酸化部位を含有し、それぞれの別々の部位は、特異的なタンパク質機能を特定する。p53およびpRbが細胞周期の調節において重要な役割を果たすG0/G1細胞周期停止におけるペンタマーの効果のために、48および72時間100μg/Lのペンタマーで処理したMDA MB-231および対応するDMSO処理したコントロール中のこれらの2つのタンパク質の高分解能機能プロファイリングを、P-FILM技術(20/20 Gene System)を使用して行った。この分析の結果は図2および3に示される。
【0146】
図2Aに示されるように、MDA MB-231細胞中の内因性p53発現のレベルは、48時間後にペンタマー処理サンプル中でわずかに減少した。デンシトメトリーデータに基づき、この減少は大きくなかった(図示せず)。p53のプロファイリングにより、処理後48時間にSer15残基およびSer46のリン酸化においてわずかに減少することが示されたが(図2Aおよび2B)、処理の48および72時間後にペンタマーに反応して、p53 Ser392残基の大きい脱リン酸化が検出された(図2A)。PVDF膜状の従来の免疫ブロットによりこの結果をさらに確認した。Ser20残基のリン酸化は48時間で減少したが、72時間ペンタマーで処理されたサンプルでは影響を受けなかった(図2A)。タンパク質添加の比較可能性は、GADPHタンパク質発現のモニタリングにより確かめた。
【0147】
MBA MD-231細胞に加えて、48および72時間の処理時間でペンタマーにより処理されたMDA MB-468(突然変異p53)およびMCF-7(野生型p53)において、p53状態を評価した。MDA MB-231細胞と同様に、MDA MB-468における内因性p53の発現は、ペンタマー処理により大きい影響を受けなかった(図2B)。比較した場合、Ser392でリン酸化されたp53の割合は、MDA MB-231(未処理のコントロールと比較して53%)およびMD MB-468細胞(未処理のコントロールと比較して33%)において減少したが、Ser15およびSer46はMDA MB-468細胞中で大きい影響を受けなかった。
【0148】
同じ実験条件下で、MCF-7細胞中、内因性野生型p53またはリン酸化p53についてシグナルは検出されなかった(図2B)。過剰発現した突然変異p53と異なり、野生型p53の内因性レベルは免疫ブロットにより容易に検出されないので、この結果は期待されていたものであった(DiCioccio et al.,Cancer Genet Cytogenet.,105:93-102,1998)。
【0149】
図3について、ペンタマーに応答したMDA MB-231細胞中のSer780、Ser795およびSer807/811のリン酸化状態も調べた。ペンタマー処理により、内因性pRbの端名pk水津発現が減少し、処理後48および72時間で全ての調べた残基においてリン酸化が減少した。GADPHタンパク質発現に基づいて、サンプルを等しく添加した。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】図1は、五量体処理されたヒト乳癌細胞のLPS(層状タンパク質スキャニング)マルチウェルプレートおよび免疫ブロット分析の結果を示す
【図2】図2は、五量体で処理されたヒト乳癌細胞におけるp53の高分解能プロファイリングを示す
【図3】図3は、五量体で処理されたヒト乳癌細胞におけるpRbの高分解能プロファイリングを示す

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍細胞中で、形質転換に寄与する過剰リン酸化した細胞周期調節タンパク質の脱リン酸化を誘発する方法であって、前記腫瘍細胞を、有効な量の構造式Anを有する化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)と接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
【化1】

ここで、
nは2から18までの整数である;
RおよびXはそれぞれαまたはβ配置を有する;
RはOH、O-糖またはO-没食子酸塩である;
C-4、C-6およびC-8の置換基はそれぞれX、ZおよびYであり、単量体単位の結合がC-4、C-6またはC-8で生じる;
C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素または糖である;
糖は必要に応じて、例えばエステル結合を介して任意の位置でフェノール成分で置換される。
【請求項2】
前記細胞周期調節タンパク質が、Cdc2、フォークヘッド転写因子(FKHR)、p53および網膜芽細胞腫タンパク質(pRb)からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
RがOHであり、C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
RがOHであり、C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素であることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記糖が単糖類であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記糖が単糖類であることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項7】
nが5であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
nが5であることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項9】
nが5であることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項10】
nが5であることを特徴とする請求項1−6いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
細胞周期調節タンパク質が腫瘍表現型に寄与する腫瘍を治療する方法であって、該腫瘍を患うヒトまたは家畜動物に、有効な量の構造式Anを有する化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)を投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【化2】

ここで、
nは2から18までの整数である;
RおよびXはそれぞれαまたはβ配置を有する;
RはOH、O-糖またはO-没食子酸塩である;
C-4、C-6およびC-8の置換基はそれぞれX、ZおよびYであり、単量体単位の結合がC-4、C-6またはC-8で生じる;
C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素または糖である;
糖は必要に応じて、例えばエステル結合を介して任意の位置でフェノール成分で置換される。
【請求項12】
前記細胞周期調節タンパク質が、Cdc2、フォークヘッド転写因子(FKHR)、p53および網膜芽細胞腫タンパク質(pRb)からなる群より選択されることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
RがOHであり、C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素であることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項14】
RがOHであり、C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記糖が単糖類であることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記糖が単糖類であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項17】
nが5であることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項18】
nが5であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項19】
nが5であることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項20】
nが5であることを特徴とする請求項11−16いずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記癌を患うヒトが、p53過剰発現および少なくともアミノ酸位置Ser392における過剰リン酸化を示すことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項22】
前記ヒトが、乳癌または結腸癌を患うことを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記ヒトが、AKTキナーゼを過剰発現する癌を患うことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項24】
前記癌が、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、膵癌、肝臓癌または結腸直腸癌であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記ヒトが、サイクリンD1を過剰発現する癌を患うことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項26】
前記癌が乳癌であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記ヒトまたは家畜動物が、パクリタキセルによる治療が有効でない癌を患うことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項28】
nが5であり、RがOHであり、C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素であることを特徴とする請求項21−27いずれか1項記載の方法。
【請求項29】
AKTキナーゼを過剰発現する癌を治療する方法であって、該癌を患う哺乳動物に、有効な量の構造式Anを有する化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)を投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【化3】

ここで、
nは2から18までの整数である;
RおよびXはそれぞれαまたはβ配置を有する;
RはOH、O-糖またはO-没食子酸塩である;
C-4、C-6およびC-8の置換基はそれぞれX、ZおよびYであり、単量体単位の結合がC-4、C-6またはC-8で生じる;
C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素または糖である;
糖は必要に応じて、例えばエステル結合を介して任意の位置でフェノール成分で置換される;
前記哺乳動物はヒトまたは家畜動物である。
【請求項30】
前記哺乳動物がヒトであることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
追加の化学療法薬を投与する工程を含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記追加の化学療法薬がAKT抑制剤であることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項33】
サイクリンD1を過剰発現する癌を治療する方法であって、有効な量の構造式Anを有する化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)を投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【化4】

ここで、
nは2から18までの整数である;
RおよびXはそれぞれαまたはβ配置を有する;
RはOH、O-糖またはO-没食子酸塩である;
C-4、C-6およびC-8の置換基はそれぞれX、ZおよびYであり、単量体単位の結合がC-4、C-6またはC-8で生じる;
C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素または糖である;
糖は必要に応じて、例えばエステル結合を介して任意の位置でフェノール成分で置換される
前記哺乳動物はヒトまたは家畜動物である。
【請求項34】
前記哺乳動物がヒトであることを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項35】
追加の化学療法薬を投与する工程を含むことを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項36】
パクリタキセルに耐性のある癌を治療する方法であって、有効な量の構造式Anを有する化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)を投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【化5】

ここで、
nは2から18までの整数である;
RおよびXはそれぞれαまたはβ配置を有する;
RはOH、O-糖またはO-没食子酸塩である;
C-4、C-6およびC-8の置換基はそれぞれX、ZおよびYであり、単量体単位の結合がC-4、C-6またはC-8で生じる;
C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素または糖である;
糖は必要に応じて、例えばエステル結合を介して任意の位置でフェノール成分で置換される
前記哺乳動物はヒトまたは家畜動物である。
【請求項37】
前記哺乳動物がヒトであることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項38】
追加の化学療法薬を投与する工程を含むことを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記追加の化学療法薬がパクリタキセルであることを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項40】
個別化された癌を治療する方法であって、(i)患者の細胞サンプル中の細胞周期調節タンパク質の発現およびリン酸化状態を評価する工程;および(ii) 有効な量の構造式Anを有する化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)を投与することにより、Cdc2、p53、FKHRまたはpRbの過剰リン酸化および/またはp53、AKTまたはサイクリンD1の過剰発現を示す患者を治療する工程を含むことを特徴とする方法。
【化6】

ここで、
nは2から18までの整数である;
RおよびXはそれぞれαまたはβ配置を有する;
RはOH、O-糖またはO-没食子酸塩である;
C-4、C-6およびC-8の置換基はそれぞれX、ZおよびYであり、単量体単位の結合がC-4、C-6またはC-8で生じる;
C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素または糖である;
糖は必要に応じて、例えばエステル結合を介して任意の位置でフェノール成分で置換される;
前記患者はヒトまたは家畜動物である。
【請求項41】
併用腫瘍治療において使用するための製品であって、(i)少なくとも1つの容器;(ii) 構造式Anを有する化合物、またはその薬剤的に許容できる塩あるいは誘導体(酸化生成物を含む)である第一の化合物;および(iii)前記第一の化合物と異なる追加の化学療法薬であって、分離された組成物で、分離された容器中で、または前記第一の化合物と混合して存在する第二の化合物を含むことを特徴とする製品。
【化7】

ここで、
nは2から18までの整数である;
RおよびXはそれぞれαまたはβ配置を有する;
RはOH、O-糖またはO-没食子酸塩である;
C-4、C-6およびC-8の置換基はそれぞれX、ZおよびYであり、単量体単位の結合がC-4、C-6またはC-8で生じる;
C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素または糖である;
糖は必要に応じて、例えばエステル結合を介して任意の位置でフェノール成分で置換される。
【請求項42】
前記第二の化合物がパクリタキセルであることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記第二の化合物がAKT抑制剤であることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項44】
前記第二の化合物がサイクリンD1抑制剤であることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項45】
前記第二の化合物が、EGFR、IGFRまたはHer-2抑制剤であることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項46】
nが5であることを特徴とする請求項41−45いずれか1項記載の方法。
【請求項47】
RがOHであり、C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素であることを特徴とする請求項41−45いずれか1項記載の方法。
【請求項48】
nが5であり、RがOHであり、C-4、C-6またはC-8のいずれかが別の単量体単位に結合しない場合、X、YおよびZは水素であることを特徴とする請求項41−45いずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−519752(P2007−519752A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551614(P2006−551614)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/003415
【国際公開番号】WO2005/074632
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(390037914)マーズ インコーポレイテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【Fターム(参考)】