説明

癌治療の成功の可能性を予測するための方法及びキット

本発明は、癌のための適切な治療を判定するため、より詳細には代謝拮抗性化合物を使用する癌の治療の成功の可能性を判定するための、改善された方法及びキットを提供することを目的とする。前記方法及びキットは、代謝拮抗性化合物による癌の治療の成功の可能性を予測するために有用である、被験者のCIMP状態の評価を可能にする。治療の方法及び医薬組成物と共に適切な治療レジメンを選択する方法は、全て本発明の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療の成功の可能性を予測するための方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
プロモーター領域内に位置するCpGジヌクレオチド「アイランド」の高メチル化に関連する癌抑制遺伝子の転写サイレンシングは、発癌のための重要な後成的機構であると思われる(1)。p16、THBS1、IGF−2及びHIC−1を含む多数の遺伝子の同時高メチル化はCIMP+と称され(2,3)、結腸直腸腫瘍の約20−40%で認められる(3−5)。これらの腫瘍のかなりの割合において、DNAミスマッチ修復遺伝子hMLH1が高メチル化されている(6,7)。これは、hMLH1発現の欠如、およびその結果としてマイクロサテライト配列、特にBAT−26などの大きなモノヌクレオチド反復配列における広汎な不安定性に関連する。CIMP+又はMSI+表現型を有する散発性結腸直腸癌(CRC)は、近位結腸における頻繁な局在(2,4,5,8−10)、組織分化不良(4,5,9,10)及び野生型p53(3−5,9)を含むいくつかの重要な生物学的特徴を共有する。これらの共通特性は、CIMP+及びMSI+ CRCが、おそらく前駆体としての鋸歯状腺腫及び過形成性ポリープに関与して、類似した経路に沿って発達することを示唆する(11,12)。本研究において、本発明者らは、それ故、5−FUで治療された又は5−FUなしで治療されたIII期CRC患者の生存率を比較することによってCIMP+の予測値を検討した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、癌のための適切な治療を判定するため、より詳細には代謝拮抗性化合物を使用する癌の治療の成功の可能性を判定するための、改善された方法及びキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、被験者から得た試料のCIMP状態を測定することを含み、それにより、CIMP状態が陽性である場合はCIMP状態が陰性である場合よりも治療成功の可能性が高いとする、代謝拮抗性化合物による癌治療の成功の可能性を予測するための方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明の方法は、本発明者らが、CpGアイランドメチル化表現型(CIMP)状態が、代謝拮抗性化合物を使用した化学療法に結びつく長期的な生存率上の利益を判定するための予測値を有することを発見したという事実に基づく。CpGアイランドメチル化表現型(CIMP)は結腸直腸癌(CRC)の症例の約30%において認められ、腫瘍DNA内の多数のCpGアイランドの同時メチル化によって特徴付けられる。この表現型(CIMP+)は、近位局在、マイクロサテライトの不安定性及び正常p53を有する腫瘍においてより頻繁に認められる。
【0006】
「代謝拮抗性化合物」は、本明細書では、癌細胞の代謝、より特定するとヌクレオチド及びDNAの代謝、さらにより特定するとメチル化代謝、プリン代謝及びメチル基代謝、よりいっそう特定すると葉酸代謝、さらに特定すると核酸代謝における葉酸を阻害し得る全ての化合物を包含すると定義される。
【0007】
本発明に関して「試料」とは、CIMP状態を試験することが望ましいいかなる試料も包含すると定義される。本発明に関して、「試料」は一般に臨床試料である。使用する試料は、試験される特定癌種に依存し得る。例として、結腸直腸癌を診断する場合は、被験者からの適切な結腸試料が必要であると考えられる。試料は、腫瘍自体から採取し得るか又は周辺組織から採取し得る。1つの実施形態では、試料は被験者のリンパ節から採取する。
【0008】
CIMP状態は、本明細書では、そのメチル化状態が癌との関連性を示す、少なくとも2つのCpG座位のメチル化状態の検討を包含すると定義される。メチル化は、最も一般的には遺伝子のプロモーター領域内のCpGアイランドに関連する。それ故、ほとんどの場合、CIMP状態の検出の方法は関連遺伝子のこの領域に焦点を当てる。しかし、本発明はプロモーター領域に限定されない。遺伝子が他の部分でメチル化され、このメチル化が癌に結びつく場合は、遺伝子のこの部分を、被験者のCIMP状態を検出するための本発明の方法において評価し得る。さらに、CIMP状態はまた、hMLH1及びp16を含む特定遺伝子の転写サイレンシングに関連することも知られている。その結果として、CIMPは特徴的なタンパク質発現パターンを示すと考えられる。したがって、RNA又はタンパク質レベルで特定遺伝子の発現を測定することによってCIMP状態を測定し得る。
【0009】
陽性CIMP状態(CIMP+)は、それ故、以下を含むと定義される:
1)CpGジヌクレオチドでメチル化されており、その遺伝子のメチル化状態が癌に関連する、2又はそれ以上の遺伝子の存在。
2)そのRNA又はタンパク質をコードする遺伝子がCpGジヌクレオチドでメチル化されており、その遺伝子のメチル化状態が癌に関連する、適切なRNA又はタンパク質の変化した発現レベル。
【0010】
最も好ましい実施形態では、遺伝子のパネルのメチル化状態を判定することによって患者のCIMP状態を測定する。好ましくは、遺伝子のプロモーター領域において評価を行う。好ましくは、パネルは少なくとも2つの遺伝子を含む。
【0011】
1つの実施形態では、遺伝子のパネルは、以下の遺伝子:p16、MINT−2及びMDR1を含む。遺伝子のパネルは、それらのメチル化状態が癌の発生率に関連することを条件として、他の遺伝子を含み得る。これらは、例として列挙するものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない、以下の遺伝子:THBS1、IGF−2、HIC−1及びhMLH1、p16、p15、E−カドヘリン、VHL、TGFβ1、TGFβ2、P130、BRAC2、NF1、NF2、TSG101、MDGI、GSTPI、カルシトニン、HIC−1、エンドセリンB受容体、TIMP−2、MGMT、MLH1、MLH2及びGFAP(国際公開広報第WO97/46705号参照);MGMT、DAPキナーゼ、RASSF1A、H−カドヘリン、レチノイン酸受容体β及び脆弱ヒスチジン三連構造(triad)(国際公開広報第WO02/18649号参照);TSLC1(国際公開広報第WO02/14557号参照);SOCS−1、SOCS−2、CIS−2(国際公開広報第WO02/083705号参照);APC、DAPK、PAX5α、PAX5β、Gata−4、Gata−5、Dab−2、インヒビンα、Tiff2及びTiff3、AP−2α、P73、BRAC−1、RASSF−1、P14、E−カドヘリン、RARβ2、TIMP3、CDH1、BRAC−1及びTrombのいずれか又は全部を含み得る。高メチル化の傾向があり、高メチル化が癌発現に結びつく他のそのような遺伝子は、当技術分野において公知であり、例えばSuzuki et al. in Nature Genetics (2002) 31:141-149 (38)によって記述されている。
【0012】
「メチル化」及び「高メチル化」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。どちらも、そのメチル化状態が癌の発生率に関連する、遺伝子配列内、ほとんどの場合遺伝子のプロモーター内のCpG座位のメチル化と定義される。
【0013】
本発明の好ましい態様では、遺伝子のパネルのプロモーターの全部又は少なくとも2個がメチル化されている場合、CIMP状態は陽性とみなされる。明らかに、パネル内の遺伝子の数は異なり得るが、2又はそれ以上の部位がメチル化を示すことを条件として、これは、試料がCIMP+と分類されるのに十分であるとみなし得る。
【0014】
あるいは、特定試料をCIMP+と分類するためには、遺伝子の少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個又は少なくとも6個がメチル化を示さなければならない。
【0015】
別法としてさらに、CIMP状態を判定するために一定の遺伝子のRNA及び/又はタンパク質発現レベルを評価してもよい。好ましい実施形態では、RNA又はタンパク質レベルで遺伝子のパネルの発現を判定することによってCIMP状態を測定する。好ましくは、遺伝子のパネルは、少なくとも以下の遺伝子:p16及びhMLH1を含む。CIMP+は、これらの遺伝子の両方の転写サイレンシングに関連していることが知られている。
【0016】
遺伝子のパネルは、例として列挙するものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない、以下の遺伝子:THBS1、IGF−2、HIC−1及びhMLH1、p16、p15、E−カドヘリン、VHL、TGFβ1、TGFβ2、P130、BRAC2、NF1、NF2、TSG101、MDGI、GSTPI、カルシトニン、HIC−1、エンドセリンB受容体、TIMP−2、MGMT、MLH1、MLH2及びGFAP(国際公開広報第WO97/46705号参照);MGMT、DAPキナーゼ、RASSF1A、H−カドヘリン、レチノイン酸受容体β及び脆弱ヒスチジン三連構造(国際公開広報第WO02/18649号参照);TSLC1(国際公開広報第WO02/14557号参照);SOCS−1、SOCS−2、CIS−2(国際公開広報第WO02/083705号参照);APC、DAPK、PAX5α、PAX5β、Gata−4、Gata−5、Dab−2、インヒビンα、Tiff2及びTiff3、AP−2α、P73、BRAC−1、RASSF−1、P14、E−カドヘリン、RARβ2、TIMP3、CDH1、BRAC−1及びTrombのいずれか又は全部を含み得る。高メチル化の傾向があり、高メチル化が癌発現に結びつく他のそのような遺伝子は、当技術分野において公知であり、例えばSuzuki et al. in Nature Genetics (2002) 31:141-149 (38)によって記述されている。
【0017】
RNA発現を検出するための適切な手法は当技術分野において周知であり、例えば、限定としてではなく、ノーザンブロット法、逆転写酵素PCR(RT−PCR)、質量分析法及びマイクロアレイの使用を含む。従って、これらの周知の手法の使用は本発明の方法に組み込まれ得る。
【0018】
タンパク質発現を検出するための手法は、大きく2つの主要カテゴリー:溶液ベースの手法、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫沈降法及び免疫拡散法、及び試料を固体支持体に固定化する手法、例えば、ウエスタンブロット法及びドットブロット法に分けられる、免疫検出法を含むが、これらに限定されない。これらの方法は、対象タンパク質を特異的に認識する抗体に基づく。これらの方法は本発明の方法に包含され得る。
【0019】
例えばSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を含む、他のタンパク質検出法も本発明の方法において使用し得る。
【0020】
本発明の方法は、葉酸代謝に関与する遺伝子の発現レベルも同時に測定することによって感受性をさらに高め得る。好ましい実施形態では、これらの遺伝子は、チミジル酸シンテターゼ、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ及びチミジンホスホリラーゼをコードする遺伝子のいずれかを含む。しかし、本発明はこれらの特定例に限定されることを意図せず、葉酸代謝に関わるいかなる遺伝子の発現レベルも測定し得る。
【0021】
加えて、本発明のさらなる態様では、ゲノム低メチル化のレベルを測定することによってCIMP状態をさらに評価し得る。ゲノム低メチル化は癌発現に結びつき、主として非癌組織に比べて癌組織における一定遺伝子の過剰発現を生じさせることが示されている。この低メチル化は、中でも特に膵管腺癌、胃及び肝細胞癌、子宮平滑筋腫、重細胞性星状細胞腫、子宮頸癌、膵癌、乳癌及び卵巣癌を含む、様々な癌種において認められてきた。そのような低メチル化によって影響を受ける遺伝子が記述されており、中でも特にクラウジン(claudin)4、リポカリン2、14−3−σ、トレフォイル因子2、S100A4、メソテリン、前立腺幹細胞抗原、CAGE、メチルトランスフェラーゼ(DNMT1、3A及び3B)、MYOD1、シヌクレインγ(SNCG、BCSG1)、MUC2、H19、IGF2、CDH13を含む(Sato et al, Cancer Res. (2002) 63: 4158-4166; Cho et al. Biochem Biophys Res Commun. (2003) 307: 52-63 ; Li et al., Gyneol Oncol. (2003) 90: 123-130 ; Uhlmann et al., Int. J. Cancer (2003) 103: 52-59 ; Dunn, Ann NY Acad Sci (2003) 983: 28-42; Eden et al. Science (2003) 300: 455, Capoa et al. , Oncol. Rep. (2003) 10: 545-549; Gupta et al., Cancer Res., (2003) 63: 664-674; Mesquita et al., Cancer lett. (2003) 189: 129-136; Cui et al. Cancer res. (2002) 62: 6442-6446; Yu et al., BMC cancer (2002) 2: 39参照)。
【0022】
そこで、1つの実施形態では、CIMP状態は、以下の遺伝子:クラウジン4、リポカリン2、14−3−σ、トレフォイル因子2、S100A4、メソテリン、前立腺幹細胞抗原、CAGE、メチルトランスフェラーゼ(DNMT1、3A及び3B)、MYOD1、シヌクレインγ(SNCG、BCSG1)、MUC2、H19、IGF2、CDH13のいずれかのメチル化レベルを評価することによってさらに判定し得る。これらの遺伝子は単に例として列挙するものであり、本発明に関する限定を意図しない。その低メチル化が癌に関連するいかなる遺伝子も、本発明の範囲内に包含され得る。
【0023】
CIMP状態は、腫瘍組織における葉酸代謝の破壊と一致する、腫瘍内葉酸代謝産物のレベルを測定することによってさらに判定し得る。それ故本発明の方法は、1つの特定実施形態では、腫瘍内葉酸代謝産物のレベルを測定することをさらに組み込み得る。
【0024】
ゲノム低メチル化の評価も含み得る、遺伝子のパネルのメチル化状態を評価するときに使用するための好ましい手法は、特異的PCR(MSP)又は定量的メチル化特異的PCR(QMSP)を含む。どちらの手法も当業者には熟知される。MSPアプローチでは、亜硫酸水素ナトリウム処理の結果としての配列相違を利用することにより、メチル化と非メチル化を区別するように設計されたプライマー対を用いてDNAを増幅し得る(30)。亜硫酸水素ナトリウム処理後、非メチル化シトシンはウラシルに変換され、メチル化シトシンは変換されないままである。
【0025】
この手法の進歩した点は、メチル化DNAの信頼し得る定量を可能にするリアルタイム定量MSP(QMSP)と呼ばれる。この方法は、蛍光PCRの連続的光学モニタリングに基づく。このPCRアプローチは、正常DNAの実質的な(1:10,000)汚染を有するヒト試料におけるメチル化パターンの異常を検出することができる(31)。さらに、このPCR反応は、ゲル電気泳動を必要とせずに2時間未満で400近い試料の分析を可能にする高流量手法に適合させやすい。
【0026】
他の核酸増幅手法も、遺伝子のパネルのメチル化状態を検出するように改変し得る。そのような増幅手法は当技術分野において周知であり、NASBA (Compton, 1991 (45) )、3SR (Fahy et al., 1991 (46))及び転写仲介増幅(TMA)などの方法を含む。増幅は、そのメチル化状態を評価しようとする遺伝子の配列に特異的なプライマーを使用して達成される。核酸分子に対する特異性を与えるために、前記配列の適切な領域に対応するプライマー結合部位を選択し得る。当業者は、核酸分子が遺伝子のメチル化状態の検出のために必要なプライマー結合部位、例えばRNAポリメラーゼ結合部位、以外の配列も含み得ること、又はプロモーター配列が定温遺伝子増幅法、例えばNASBA、3SR及びTMAのために必要であり得ることを認識する。
【0027】
TMA(Gen-probe Inc.)は、反応を推進するための2つの酵素、すなわちRNAポリメラーゼと逆転写酵素を使用するRNA転写増幅系である。TMA反応は定温であり、DNA又はRNAのいずれかを増幅して、RNA増幅最終産物を生産することができる。TMAは、単一試験管内で生成物の検出を可能にするためにGen−probeのハイブリダイゼーション保護アッセイ(HPA)検出手法と組み合わせてもよい。そのような単一試験管検出は、本発明を実施するために好ましい方法である。このリストは網羅的であることを意図せず、適切な核酸生成物が特異的に増幅されることを条件として、いかなる核酸増幅手法も使用し得る。
【0028】
それ故、さらなる実施形態では、本発明の方法は、NASBA、3SR及びTMAから選択される手法を用いて実施される。
【0029】
増幅反応産物のリアルタイム検出のための多くの手法が当技術分野において公知である。これらの多くは、連続的に観測できる蛍光読み出しを生成し、特定例は分子ビーコン及び蛍光共鳴エネルギー転移プローブである。リアルタイム手法は、「単一試験管」内での反応を保持するので好都合である。これは、結果を得るために下流分析を必要としないことを意味し、より迅速な結果の入手を導く。さらに、反応を「単一試験管」環境内に保持することは、交差汚染の危険性を低下させ、本発明の方法から定量的結果を得ることを可能にする。これは、本発明の臨床背景において特に重要であると考えられる。PCR反応のリアルタイム定量は、TaqMan(登録商標)(アプライド・バイオシステムズ)を用いて実施することができ、Holland et al ; Detection of specific polymerase chain reaction product by utilising the 5'-3'exonuclease activity of Thermus aquaticus DNA polymerase; Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88,7276-7280 (1991) (32), Gelmini et al. Quantitative polymerase chain reaction-based homogeneous assay with flurogenic probes to measure C-Erbb-2 oncogene amplification. Clin. Chem. 43,752-758 (1997) (33) and Livak et al. Towards fully automated genome wide polymorphism screening. Nat. Genet. 9,341-342 (19995) (34)参照。Taqman(登録商標)プローブは広く市販のものが入手でき、Taqman(登録商標)システム(アプライド・バイオシステムズ)は当技術分野において周知である。Taqman(登録商標)プローブは、PCR反応において上流と下流のプライマーの間でアニーリングする。それらは、5’−蛍光体と3’−消光剤を含む。増幅の間に、Taqポリメラーゼの5’−3’エキソヌクレアーゼ活性は蛍光体をプローブから切断除去する。蛍光体はもはや消光剤に近接していないので、蛍光体は蛍光を発することができる。生じた蛍光は測定することができ、増幅される標的配列の量に直接比例する。
【0030】
分子ビーコンシステムでは、Tyagi & Kramer. Molecular beacons-probes that fluoresce upon hybridization. Nat. Biotechnol. 14,303-308 (1996) (35) and Tyagi et al. Multicolor molecular beacons for allele discrimination. Nat. Biotechnol. 16,49-53 (1998) (36)参照、ビーコンは、その標的に結合したとき蛍光が回復される、内部消光された蛍光体を有するヘアピン形プローブである。ループ部分はプローブとして働き、ステムはビーコンの両端の相補的「アーム」配列によって形成される。蛍光体と消光成分は反対側に結合されており、ステムは各々の部分を近接した状態に保持し、蛍光体をエネルギー転移によって消光させている。ビーコンは、その標的を検出したとき、立体配座変化を受けてステムを離れさせ、その結果蛍光体と消光剤を分離させる。これは、エネルギー転移を分断して、蛍光の回復を生じさせる。
【0031】
いかなる適切な蛍光体も本発明の範囲内に包含される。本発明の方法において使用し得る蛍光体は、例として、FAM、HEX(商標)、NED(商標)、ROX(商標)、Texas Red(商標)等を含む。消光剤、例えばDabcyl及びTAMRAは、本発明の方法において使用し得る周知の消光剤分子である。しかし、本発明はこれらの特定例に限定されない。
【0032】
本発明の方法に組み込み得る、さらなるリアルタイム蛍光ベースのシステムは、ゼネカのScorpionシステムであり、Detection of PCR products using self-probing amplicons and fluorescence by Whitcombe et al. Nature Biotechnology 17, 804-807(01 Aug 1999) (37)参照。この参考文献は、その全体が参照して本出願に組み込まれる。その方法は、5’延長部のコピーを妨げるリンカーによってその5’末端に結合された尾部を有するプライマーに基づく。前記プローブエレメントは、標的部位が尾部プライマーの延長によって同じ分子内に組み込まれたときにのみその標的にハイブリダイズするように設計される。プローブ−標的結合は反応速度論的に鎖内二次構造よりも促進されるので、この方法は迅速で信頼し得るシグナルを生じる。
【0033】
そこで、本発明の更なる態様では、メチル化特異的増幅の産物を、リアルタイム手法を用いて検出する。本発明の1つの特定実施形態では、リアルタイム手法は、Taqmanシステム、分子ビーコンシステム又はScorpionプローブシステムのいずれか1つを使用することから成る。
【0034】
最も好ましい実施形態では、遺伝子のパネルのメチル化状態を単一実験において判定する。そこで、反応混合物は、試験する試料、遺伝子のメチル化状態を判定するために必要なプライマー及びプローブ、増幅産物のリアルタイム検出を可能にするために必要な試薬に加えて、必要な緩衝液及び全ての試薬及び増幅のために必要な酵素、の全部を含む。それ故代謝拮抗性化合物を用いて癌の治療成功の可能性予測するための方法全体が単一反応において起こり、定量的結果が得られ、いかなる中間洗浄工程も必要としない。「単一試験管」反応の使用は、結果を得るために下流分析を必要とせず、より迅速な結果の入手を導くので、好都合である。さらに、反応を「単一試験管」環境内に保持することは、交差汚染の危険性を低下させ、本発明の方法から定量的結果を得ることを可能にする。また。単一試験管反応は、例えば高流量設定において、より自動化しやすい。
【0035】
マルチプレックス(単一試験管内での多くの遺伝子のメチル化状態の評価)は、インビトロジェン(Invitrogen)(商標)からのLUX(商標)蛍光プライマーに従った標識プライマーを用いて又はNazarenko et al. NAR 30: e37 (2002) and Nazarenko et al. NAR 30: 2089-2095 (2002) によって述べられているように実施し得る。このテクノロジーは、プライマー対のプライマーの少なくとも1つをヘアピン構造を含むように標識し、設計することに基づく。蛍光標識をその同じプライマーに結合する。前記蛍光体は、例えばFAM又はJOEであり得る。ヘアピンは消光剤として機能する。当業者は、そのようなプローブの代替物も、本発明と共に等しく良好に機能することを認識する。
【0036】
あるいは、本発明の方法は段階的に実施してもよい。そこで、遺伝子のパネルの各々のメチル化状態を別々の実験において判定し、それらの結果を収集して被験者のCIMP状態を評価し得る。
【0037】
そのメチル化状態を検出しようとする遺伝子に特異的なプライマーを本発明の方法及びキットにおいて使用する。最小限のバックグラウンドの非特異的増幅で配列特異的増幅を指令することができ、亜硫酸水素ナトリウム処理後にメチル化DNAと非メチル化DNAを識別することができるいかなるプライマーも使用し得る。プライマーは、使用する増幅手法に依存してDNA又はRNA及び合成等価物を含み得る。例えば、標準PCRに関しては短い一本鎖DNAプライマー対が使用される傾向にあり、両方のプライマーが、増幅する対象領域(CpGモチーフを含む)に接している。核酸増幅テクノロジー、例えばPCR(MSP及びQMSPを含む)、3SR、NASBA及びTMAにおいて使用し得るプライマーの種類は当技術分野において周知である。
【0038】
本発明の方法及びキットにおいて使用するプライマーと共に使用できるように、リアルタイム法における使用のための適切なプローブも設計し得る。そこで、例えばTaqman手法を使用するときは、プローブは、本発明に従う代謝拮抗性化合物を用いる治療に良好に応答すると予測される癌患者において、メチル化され得る部位を含む関連遺伝子上のプライマー結合部位の間を結合することができる配列である必要があると考えられる。同様に、本発明の方法及びキットに組み込まれる核酸配列の関連部分に結合する分子ビーコンプローブを設計し得る。リアルタイム検出のためにScorpionプローブ手法を使用する場合、プローブは、標的部位が尾部プライマーの延長によって同じ分子内に組み込まれたときにのみその標的にハイブリダイズするように設計される。それ故、本発明はさらに、本発明でのリアルタイム検出法における使用に適するプローブの包含を提供する。
【0039】
PCR反応に依存しない、遺伝子のパネルのメチル化状態の検出の代替的方法も使用し得る。そのような選択的検出方法は、PCRとは独立して又はPCRと組み合わせて使用し得る。選択的検出方法の例は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析法及びMALDI−飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析法を含む質量分析法、クロマトグラフィー及びマイクロアレイテクノロジーの使用(モトローラ、ナノジェン)、逆ハイブリダイゼーション及びメチル化感受性制限酵素(下記参照)を含む。マイクロアレイに関しては、多数の適切なCpGアイランド標識を鋳型として固体支持体上に整列する。固体支持体は、例えばマイクロチップであり得る。被験試料及び対照細胞(陽性及び陰性対照)からアンプリコンを作製し得る。次に、遺伝子のパネルのメチル化状態を検出するため、及びそれ故被験者のCIMP状態を提供するために、これらのアンプリコンを使用してアレイを探査し得る。質量分析法は、メチル化遺伝子の予想分子量を正確に測定することを可能にする。MALDI−TOFは、イオンを迅速に抽出して、それらを飛行管へと加速する高電圧電位に基づく。飛行管の先端の検出器を使用して、初期レーザー光パルスからイオン検出までの経過時間を測定する。飛行時間はイオンの質量に比例する。この手法の精度は、メチル化遺伝子を非メチル化遺伝子から識別することを可能にする。
【0040】
制限酵素(RE)分析も、そのメチル化状態が癌に関連し、それ故被験者のCIMP状態を示すために使用できる、遺伝子のパネルのメチル化状態を検出するために使用し得る。遺伝子配列のメチル化は、それらを制限酵素消化から保護するためであることが知られており、それ故、非メチル化対照配列と比較して、遺伝子配列についてのREパターンの変化を観察することによってメチル化を検出し得る。
【0041】
前記方法からの読み出しは、好ましくは蛍光読み出しであるが、例えば電気的読み出しも含み得る。
【0042】
本発明の方法は、最も好ましくは結腸直腸癌(CRC)の葉酸拮抗薬治療の成功の可能性を予測するために使用される。しかし、葉酸拮抗性化合物、チミジル酸シンターゼ阻害剤及び他の「代謝拮抗性化合物」を含む他の「代謝拮抗性化合物」(定義については[0006]段落参照)が、膵癌、乳癌、前立腺癌、胃癌、子宮頚癌、肺癌、食道癌、腎癌、頭頚部癌を含むがこれらに限定されない、様々な癌種における癌化学療法の治療のために使用されてきた、Smith and Gallagher, Eur J. Cancer (2003) 39: 1377-1383 (39) ; Droz et al., Ann. Oncol. (2003) 14: 1291-1298 (40); Cocconi et al. Ann. Oncol. (2003) 14: 1258-1263 (41) ; F. G. , J. Obset. Gyneaecol. (2003) 23: 422-425 (42); Focan et al., Pathol Biol (Paris) (2003) 51: 204-205(43); Lee et al., Acta Oncol. (2003) 42: 207-217 (44)参照。CIMP+状態は細胞葉酸及びメチル基代謝の広汎な異常についてのマーカーであり得るので、そのような変化は、全てのタイプのCIMP+腫瘍細胞を、当技術分野において周知である、本明細書中で述べる葉酸拮抗薬治療に対してより感受性にすると考えられる。これは、CIMP+状態はおそらく各々の癌種に関して同様の意味を有すると考えられるので、本発明の方法が、代謝拮抗性化合物を使用する多くの異なる癌についての治療の成功の可能性を予測するために適用し得ることを意味する。
【0043】
代謝拮抗性化合物は、チミジル酸シンターゼの阻害剤及び他の酵素、例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ、AICARトランスホルミラーゼ、GARトランスホルミラーゼ、幾つかのメチルトランスフェラーゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ、DNAポリメラーゼアデノシンデアミナーゼ、メチオニンシンターゼ、及び葉酸拮抗性化合物とヌクレオチド類似体の両方を含むシスタチオニン−β−シンターゼの阻害剤、及び葉酸経路において、より特定すると、以下でさらに詳述するように、核酸代謝における葉酸経路において代謝拮抗作用を有する全ての化合物を含む。
【0044】
本発明の一態様では、癌を治療するために使用される葉酸拮抗薬は5−フルオロウラシル(5−FU)である。5−FUは1957年に初めて合成され、チミジル酸シンターゼ(TS)阻害剤の最初のクラスを代表する。それ以後、5−FU類似体を含むチミジル酸シンターゼ阻害剤のシリーズ全体が合成され、開発された。これらの化合物は主として2つのクラス:葉酸類似体及びヌクレオチド類似体に属する。
【0045】
葉酸拮抗物質類似体、例えばフルオロデオキシウリジン、フトルフル(ftorfur)、5’−デオキシフルオロウリジン、ラルチトレキセド、UFT、S−1、5−エチニルウラシル、カペシタビン、ペメトレキセド、ノラトレキセド、ZD9331、トリメトレキサート、LU231514、エダトレキサート、GW1843、GW1843、OSI−7904L、ロイコボリン、レビモゾール(Levimosole)、メトトレキサート、GS7904L、PDX、10−EdAM、ICI−198,583、DDATHFその他が、現在臨床試験下にある。葉酸拮抗性化合物以外のチミジル酸シンターゼ阻害剤、例えばCB300638、4−S−CAP、N−ac−4−S−CAPも周知である。他のそのような葉酸拮抗性化合物及びチミジル酸シンターゼ阻害剤は当技術分野において公知である(Theti et al. Cancer res. (2003) 63:3612-3618 ; Ackland et al., Cancer Chemother Biol Response modif. (2002) 20: 1-36; Pawelczak et al, Act Biochim Pol. (2002) 49:407-420 ; Chu et al. Cancer Chemother. Pharmacol. (2003) 52 supl 1:80-89 ; Wang et al. Leuk lymphoma. (2003) 44 (6): 1027-1035; Van Der Laan et al., Int. J. Cancer (1992) 51:909-914 ; Papamichael, Stem Cell. (2000) 18:166-175 ; Prezioso, et al., Cancer chemother. Pharmacol. (1992) 30:394-400 ; Ismail et al., Cancer Chemother Biol response Modif. (2001) 19: 1-19参照)。
【0046】
本発明者らは、高メチル化遺伝子を有する癌患者における5−FU化学療法が、そのような高メチル化遺伝子を持たない被験者よりも臨床的恩恵を受ける又は治療に対してより良好な応答を生じることを明らかに示した。上述したものを含むがそれらに限定されない、他の葉酸拮抗性化合物及び他のチミジル酸シンターゼ阻害剤も、高メチル化遺伝子を有する癌患者において、適切な遺伝子の高メチル化を欠く被験者よりも多くの臨床的恩恵をもたらす又は治療に対するより良好な応答を生じさせる。
【0047】
5−FU及び他の葉酸拮抗性化合物は、DNAのメチル化を妨げる又は抑制することが知られている。しかし、臨床の場での長年にわたる使用後も、5−FU及び他の葉酸拮抗薬についての正確な作用機構はまだ論議の対象であるが、主としてチミジル酸シンターゼ(TS)阻害剤とみなされている。より特定すると、そのような化合物は葉酸経路において、特に核酸代謝における葉酸経路において代謝拮抗作用を有する。この経路は、新生細胞プリンヌクレオチド生合成及びDNAメチル化において決定的に重要である。関与する酵素は、チミジル酸シンターゼに加えて、他の酵素、例えば、中でも特に、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、AICARトランスホルミラーゼ、GARトランスホルミラーゼ、幾つかのメチルトランスフェラーゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼを含む。これらの経路において鍵となる役割を果たす、いくつかの重要な中間体及びビタミンは、中でも特に、メチオニン、コリン、ビタミンB−6、ビタミンB−12、リボフラビン(ビタミンB−2)、S−アデノシルメチオニン、ホモシステイン、S−アデノシルホモシステイン、メチルマロン酸、テトラヒドロ葉酸、ジヒドロ葉酸である(Potter, J. nutr. (2002) 132 (8 Suppl. ) :2410S-2412S ; Mason et al. J. nutr. (2002) 133 (Suppl. 3):941S-947S ; Plasche et al. Cancer Lett. (2003) 191: 179-185; Choi et al, (2000) J. Nutr. 130: 129-132参照)。これらや他の代謝経路、例えばチミジル酸シンターゼ経路、プリン生合成経路、メチル代謝経路、DNA合成経路を阻害することが公知である化合物は、癌の化学療法において成功裏に使用されてきた。それらは、本発明に関する限定ではなく例として、DNAポリメラーゼを妨げるシタラビン(Ara−C)及びゲンシタビン、DNAに組み込まれたとき鎖の切断を引き起こす、6−MP及び6−TG(チオプリン)、同じく鎖の切断を生じさせ、加えてDNAポリメラーゼ及びRNAポリメラーゼ機能の阻害剤であるフルアラビン、白血病に罹患している被験者の核酸において鎖の切断を引き起こし得るクラドリビン、及びアデノシンデアミナーゼ(RR)酵素を阻害し、DNA合成を停止させるペントスタチンを含む。そのような化合物は本発明の範囲内に包含される。
【0048】
本発明者らは、高メチル化遺伝子を有する癌患者における5−FU化学療法が、同じ遺伝子の高メチル化を欠く被験者よりも臨床的恩恵を受ける又は治療に対してより良好な応答を生じることを明らかに示した。上述したものを含むがそれらに限定されない、他の代謝拮抗薬も、高メチル化遺伝子を有する癌患者において、これらの遺伝子の高メチル化を欠く被験者よりも多くの臨床的恩恵をもたらす又は治療に対するより良好な応答を生じさせる。
【0049】
上述したように、本発明に関して「試料」は、CIMP状態を試験することが望ましいいかなる試料も包含すると定義される。本発明に関して、「試料」は一般に臨床試料である。使用する試料は、試験される特定癌種に依存し得る。例として、結腸直腸癌を診断する場合は、被験者からの適切な結腸試料が必要であると考えられる。試料は、腫瘍自体から採取し得るか又は周辺組織から採取し得る。1つの実施形態では、試料は被験者のリンパ節から採取する。
【0050】
試料は、被験者のCIMP状態を評価するために必要なマーカー(遺伝子及び/又はRNA及び/又はタンパク質)を含むことを条件として、被験者のいかなる体液から入手してもよい。例えば、CIMP状態の分析を可能にする適切なマーカーが試料中に存在することを条件として、血液試料が使用し得る。使用し得る、但し本発明を限定することを意図しない、典型的な試料は、被験者から、最も好ましくはヒト被験者から採取した全血、血清、血漿、尿、乳び、便、射出精液、痰、乳頭吸引液、唾液等を含む。
【0051】
最も好ましい実施形態では、試験は、被験者から採取した試料に関して実施されるインビトロ試験である。
【0052】
さらなる実施形態では、上述した方法は、被験者から試料を入手する工程をさらに含み得る。適切な試料を入手する方法は当技術分野において周知である。あるいは、前記方法は、別途の手順で被験者から既に単離されていた試料から開始して実施し得る。前記方法は、最も好ましくはヒトからの試料に関して実施されるが、本発明の方法は多くの動物に関して診断上の有用性を有し得る。
【0053】
本発明はまた、被験者から得た試料のCIMP状態を測定することを含み、それにより、CIMP状態が陽性である場合は、代謝拮抗薬を用いる化学療法を被験者に投与し得る、癌のための適切な治療レジメンを選択する方法を提供する。前記化学療法は、場合により外科手術と組み合わせて使用し得る。
【0054】
他方で、CIMP状態が陰性である場合は、おそらく、CIMP状態が陰性(CIMP−)の場合は適切な治療方法ではないと考えられる、代謝拮抗性化合物を用いる治療以外の他の化学療法と組み合わせて、外科手術を使用し得る。
【0055】
適切な治療レジメンを選択するための方法は、被験者から得た試料のCIMP状態を測定することを含む、代謝拮抗性化合物による癌治療の成功の可能性を予測する方法に関して述べた選択的特徴の全てを組み込み得る。
【0056】
本発明者らは、癌に罹患している被験者での代謝拮抗薬化学療法が、高メチル化遺伝子を有する患者に関しては、これらの遺伝子の高メチル化を欠く患者よりも多くの臨床的恩恵を受ける又は治療に対してより良好な応答を生じることを明らかに示した。それ故、CIMP状態を測定することにより、代謝拮抗薬化学療法に対して応答する可能性がより高い癌患者の特定サブグループを特定することができる。被験者のCIMP状態は、全ての代謝拮抗性化合物(詳細な例をここで示すが、それらは本発明の範囲を限定することを意図しない)による患者の治療を導く正確な指標として働く。
【0057】
化学療法による癌患者の治療のための本発明の指標は、主として起源(結腸、乳房、前立腺、子宮頚等)又は癌の組織学的特性決定(癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫等)に基づく。本発明者らは、代謝拮抗性化合物を用いた治療を必要とする被験者の治療成功を可能にする、患者のCIMP状態に基づく癌患者のための新しい指標を提示した。
【0058】
従って、本発明のさらなる実施形態では、陽性CIMP状態を有する、癌に罹患している被験者の治療における代謝拮抗性化合物の使用が提供される。
【0059】
さらにまた、陽性CIMP状態を有する、癌に罹患している被験者の治療のための薬剤の製造における使用のための代謝拮抗性化合物が提供される。
【0060】
加えて、代謝拮抗性化合物を投与することを含む、陽性CIMP状態を有する、癌に罹患している被験者を治療する方法も提供される。
【0061】
癌は、上述したように、いかなる癌からも選択され得るが、より特定すると結腸直腸癌(CRC)、膵癌、乳癌、前立腺癌、胃癌、子宮頚癌、肺癌、食道癌、腎癌、頭頚部癌から選択される。
【0062】
より好ましくは、前記癌は結腸直腸癌(CRC)である。
【0063】
上述した選択的特徴の全部、特に適切な代謝拮抗性化合物の例は、本発明のこれらの実施形態に組み込まれる。
【0064】
本発明はまた、本発明の方法を実施するために使用し得るキットを提供する。キットは、上記本発明の方法に関連して述べた好ましい特徴のいずれかを組み込み得る。
【0065】
そこでさらなる態様では、本発明は、
−被験者から得た試料のCIMP状態を測定するための手段;及び
−前記試料を、CIMP状態を測定するための手段と接触させるための手段
を含む、代謝拮抗性化合物による癌治療の成功の可能性を予測するためのキットを提供する。
【0066】
試料のCIMP状態を判定するために必要な手段(上記で定義したような)を提供することにより、前記キットは特定癌のための適切な治療レジメンを選択することを可能にする。
【0067】
最も好ましい実施形態では、試料のCIMP状態を測定するための手段は、遺伝子のパネルのプロモーターのメチル化状態を判定するための手段を含む。遺伝子のパネルは、上記本発明の方法に関して述べたものと同じであり得る。
【0068】
遺伝子のパネルのメチル化状態を検出する好ましい方法はMSP及び/又はQMSPを使用するので、好ましい実施形態では、本発明のキットは適切なMSP及び/又はQMSP試薬を含む。そのような試薬は当技術分野において周知であり、例えばDNA単離試薬、増幅のためのポリメラーゼ酵素、亜硫酸水素ナトリウム、MSP/QMSP特異的緩衝液等を含む。
【0069】
DNA単離試薬は、試料からDNAを精製するために必要であり、前記試料は、CIMP状態を検出するために適切な遺伝子を含むいかなる試料タイプであってもよい。そのようなDNA単離試薬は当技術分野において周知であり、例えばフェノール−クロロホルム抽出は一般的に使用される手法である。キットは、細胞を懸濁するためのリン酸緩衝食塩水(PBS)及び洗浄緩衝液(10mM HEPES−KOH(pH=7.5);1.5mM MgCl2;10mM KCl;1mM ジチオトレイトール)を含み得る。DNAは標準塩−クロロホルム手法を用いて抽出でき、それ故そのような試薬は本発明のキットに含まれ得る。エタノール沈殿法は高分子量DNAを得るために使用でき、この手法において使用されるそのような試薬は本発明の範囲内に包含され得る。TE緩衝液(10mM トリス;1mM EDTA(pH8.0))も、DNA試料を溶解するために含まれ得る。あるいは、例えば蒸留水も使用し得る。
【0070】
MSP及びQMSP手法はいずれも当技術分野において周知であるので、そのような緩衝液及び酵素は当業者に熟知されている。
遺伝子(すなわちCpG座位)のメチル化状態に依存して、亜硫酸水素ナトリウム処理によって影響を受ける遺伝子の領域を増幅するプライマーは、本発明のキットに含まれる。プライマーは遺伝子特異的であり、それ故それらの配列は、被験者からの試料のCIMP状態を判定するときに使用するために選択した遺伝子のパネルに依存する。1つの実施形態では、遺伝子のパネルはp16、MINT−2及びMDR1遺伝子を含み、それ故プライマーは、これらの遺伝子のメチル化状態を判定するための特異的配列である。
【0071】
本発明のキットはまた、MSP及び/又はQMSP反応のために必要なさらなる成分を含み得る。そこで、抽出したDNAの亜硫酸水素ナトリウム処理のための試薬が必要である。また、DNA配列を増幅するためのPCR酵素、例えばTaqポリメラーゼが必要である。MSP及びQMSP手法は当技術分野において周知であるので、それらの実施のために必要な試薬も当業者には周知である。いかなるそのような試薬も本発明の範囲内に包含される。
【0072】
同様に他の増幅手法、例えば3SR、NASBA及びTMAも当技術分野において周知である。これらの手法の使用を可能にする適切なプライマー、プローブ及び試薬を含むキットは本発明の範囲内である。
【0073】
CIMP状態のRE分析を可能にするキットも提供され得る。上述した遺伝子配列のメチル化は、当技術分野において周知の、多くの制限酵素による消化からそれらを保護するためであることが知られているので、非メチル化対照配列と比較して、遺伝子配列についてのREパターンの変化を観察することによってメチル化を検出し得る。そこでキットは、適切な制限酵素及び緩衝液、そしておそらく、RE分析を使用して被験者のCIMP状態を検出するための手段、例えばゲル電気泳動における使用のためのマーカーを含み得る。そのような制限酵素は広く市販されており、ほとんどの場合適切な緩衝液と共に提供される。同様に、RE消化パターンを評価するための適切な手段、例えばゲル電気泳動は、当技術分野において周知である。
【0074】
増幅産物のリアルタイム検出を可能にするためのプローブも本発明のキットに含まれ得る。好ましい実施形態では、キットは、QMSP反応産物のリアルタイム検出を可能にする遺伝子特異的プローブ及び試薬を含む。好ましい態様では、リアルタイム検出法は、Taqmanシステム、分子ビーコンシステム及びScorpionプローブシステムから選択される。そこで本発明のキットは、これらの方法の各々を使用することを可能にする適切な試薬を含み得る。従って、プローブは、いずれのリアルタイム検出法を使用するかに依存して異なる。例えばTaqmanプローブ又は分子ビーコンを使用するときは、プローブは、遺伝子のメチル化領域を増幅するプライマーの間で結合するように、反対の末端に発光体と消光剤を含み得る。Scorpionシステムでは、プローブエレメントは、標的部位が尾部プライマーの延長によって同じ分子内に組み込まれたときにのみその標的にハイブリダイズするように設計される。
【0075】
いかなる適切な発光体も本発明の範囲内に包含される。本発明のキットに含まれ得る発光体は、例として、FAM、HEX(商標)、NED(商標)、ROX(商標)、Texas Red(商標)等を含む。同様に、本発明のキットは単一消光剤に限定されない。消光剤、例えばDabcyl及びTAMRAは、本発明の方法において使用し得る周知の消光剤分子であり、本発明のキットに含まれる。
【0076】
本発明のキットはまた、上述したもの以外のPCR産物の作製と検出のために必要なさらなる成分、例えばPCR産物の検出のために使用し得る、又はPCR産物を増幅し(チップ上でのPCR)、検出するために使用し得るマイクロアレイ、を含み得る。他の成分はさらに、アプライド・バイオシステムズによって述べられている「マイクロ流体カード」、逆ハイブリダイゼーションストリップ、例えばLIPAテクノロジー(イノジェネティクス、Zwijnaarde, Belgium)によって述べられているもの、又はUlysis及びULSテクノロジー(クレアテク・バイオテクノロジーズ、Amsterdam, The Netherlands)によって述べられているものを含み得る。そのような成分は当技術分野において公知であり、本発明のキットに包含するために、限定ではなく例として列挙する。
【0077】
CIMP状態はまた、RNA及びタンパク質発現のレベルでも測定しうるので、RNA又はタンパク質レベルで遺伝子のパネルの発現を測定することによってCIMP状態の判定を可能にするキットが提供される。遺伝子のパネルは、そのメチル化状態が試験下にある癌の発生率に関連するいかなる遺伝子も含み得る。適切な例は、本発明の方法に関連して上記で列挙している。1つの実施形態では、遺伝子のパネルはp16及びhMLH1(単独で又は他の遺伝子と組み合わせて)を含む。
【0078】
RNA発現を検出するための適切な手法は当技術分野において周知であり、例えば、限定としてではなく、ノーザンブロット法、逆転写酵素PCR(RT−PCR)、質量分析法及びマイクロアレイの使用を含む。従って、これらの周知の手法の使用のための適切な試薬は、本発明のキットに組み込まれ得る。
【0079】
タンパク質発現レベルを検出するための手法は、大きく2つの主要カテゴリー:溶液ベースの手法、例えば酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫沈降法及び免疫拡散法、及び試料を固体支持体に固定化する手法、例えばウエスタンブロット法及びドットブロット法、に分けられる、免疫検出法を含むが、これらに限定されない。前記方法は、対象タンパク質を特異的に認識する抗体に基づく。本発明のキットのために、そのメチル化状態が対象癌種の発生率に関連する遺伝子から発現されるタンパク質を認識する適切な抗体が含まれ得る。さらに、適切な緩衝液及び試薬も本発明のキットに組み込まれ得る。これらは、例えば非特異的結合阻止緩衝液(例えばTBST中の1%BSA)、ニトロセルロース又はPVDF膜、TBS、メタノール及び/又はエタノール、基質に結合している一次抗体の検出を可能にする、酵素に結合体化した二次抗体、例えばアルカリホスファターゼ又はホースラディッシュペルオキシダーゼを含み得る。
【0080】
他のタンパク質検出法は、例えばSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を含む。この場合、キットは、ゲルを泳動させるために必要な試薬及び緩衝液、及びゲルのための染料、例えばクマシーブルー(プロメガ)を含み得る。
【0081】
付属の表及び図面と共に、以下の実施例を参照して本発明がさらに理解される。
【0082】
表1は、手術単独又は手術と5−FUによって治療された患者コホートの臨床、病理及び分子特徴を示す。
【0083】
表2は、CIMP+と臨床病理的及び分子特徴の結びつきを示す。
【0084】
表3は、CIMP+の予測値についての感度評価を示す。
患者及び方法
【0085】
腫瘍シリーズ
合計891のIII期CRC症例が、1985年から1999年までの間にthe Sir Charles Gairdner Hospitalで診断された(14)。これは、5−FUに基づくアジュバント化学療法がIII期CRCの管理のために西オーストラリアにおいて導入された期間にまたがる。アジュバント化学療法は、標準メイヨークリニックレジメン(5−FU/ロイコボリン)に従って270名(30%)の患者に与えられた。これは、少なくとも2サイクルの化学療法を含み、大半の患者に関しては完全な6サイクルが完了された。患者は、5歳ごとの年齢間隔、性別及び腫瘍起源の部位に基づいてカテゴリーに分けられた。最後の2つの因子は、CRCにおいて5−FUからの生存率上の利益に影響を及ぼすことが示された(13,16)。これらの群内で、アジュバント治療された患者と治療されなかった患者をランダムに対合させた。125組のマッチドペアの全体コホートをDNAメチル化分析のために選択した。腫瘍は全て陰性サージカルマージンを有しており、患者は手術の時点で転移性疾患の徴候を示さなかった。全ての症例を、the Sir Charles Gairdner Hospitalに付随する1つの病理学研究所(Hospital and University Pathology Service/Pathcenter)で診断した。この研究所は、1985-1999年の試験期間中、比較的一定の報告業務を維持した。5例がT4病変と分類され、その他は全てT3と分類された。試験は、48の直腸腫瘍、24のS状結腸腫瘍、24の下行結腸腫瘍、17の横行結腸腫瘍、47の上行結腸腫瘍及び46の盲腸腫瘍を含んだ。直腸癌を有する4名の患者は術後放射線治療を受けた。病院及び西オーストラリア保健局記録の検討により、206名の患者全員に関して疾患特異的生存率情報を得た。平均追跡期間は39ヶ月間(範囲、1−172ヶ月間)であり、119名(58%)の患者が試験終了までに再発疾患の結果として死亡した。他の原因で死亡した19名(9%)の患者に関する生存率データは、死亡の時点で検閲した。西オーストラリア州からの正味の移転は年間0.4%と推定され、このシリーズにおいて検討した206例のうち約1例/年に等しい。しかしこの割合は、高齢者については、特に癌と診断された高齢者については、かなり低いと予想される。the Sir Charles Gairdner Hospital臨床研究倫理委員会はこの試験に対する承認を与えた。
CIMP+分子分析
【0086】
Toyotaら(2)は、2−4タイプの「C」(癌特異的)CpG遺伝子座の検討がCIMP+表現型の正確な評価のために十分であることを示唆した。メチル化特異的PCRを使用して、p16プロモーター(4、5、10、17)、MINT−2クローン(3、4)及びMDR1プロモーター(4、9)内に位置するCpGアイランドのメチル化状態を判定した。3つのCpG遺伝子座全部のDNA増幅が103のマッチドペアに関して成功し、全体的成功率は約90%であった。CIMP+は、メチル化を示す2又はそれ以上のこれらの部位の存在と恣意的に定義した。CIMP+状態に関してこの試験で成功裏に分析された206腫瘍のうちで、大半(83%)は、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した既採取(archival)組織ブロックをソースとした。残りの症例は、外科的切除の直後に採取され、−80℃で凍結保存された非固定組織試料の形態であった。
【0087】
本発明者らは、この試験に含まれた腫瘍のMSI+及びp53突然変異状態を以前に評価した(14)。MSI+状態は、BAT−26モノヌクレオチド反復配列における欠失をスクリーニングすることによって判定し(18)、一方エクソン5−8(5及び8を含む)内のp53突然変異に関するスクリーニングを一本鎖立体配座多型分析によって実施した(19)。
統計解析
【0088】
マッチドペア層別化及びカプラン‐マイヤー解析と共に多変量コックス比例ハザード検定を使用して、患者群の間の生存率の差を評価した。Linら(20)が述べているように未測定二元交絡因子(unmeasured binary confounders)の作用を解析することにより、回帰感度を測定した。Stata7.0(College Station, TX)ソフトウエアパッケージを使用して統計解析を実施した。パラメータは全て両側性(two-sided)である。
結果
【0089】
手術単独又は手術と5−FUによって治療された患者コホートの臨床、病理及び分子特徴を表1に示す。手術の年を除いて、これらの群の間に有意差は存在しない。
【0090】
化学療法を受けた患者は全員、1989年以後に診断された;一方手術単独で治療された患者のうちの17名(16%)は、1985年から1989年の間に診断された。p16、MDR1及びMINT−2のメチル化は、それぞれ36%、25%及び38%の腫瘍において検出された。メチル化を示す2又はそれ以上の部位という定義を用いて、このシリーズにおける腫瘍の33%(206腫瘍のうち67)がCIMP+と分類された。この表現型は、結腸における近位局在、低い組織学的グレード、MSI+及び正常なp53状態と有意に関連したが、年齢、性別又は結節の関与の程度とは関連しなかった(表2)。67のCIMP+腫瘍のうちで、21(31%)が低い組織学的グレードであったのに対し、CIMP−腫瘍については20/136(15%)であった(P=0.005)。同様に、20/65(31%)のCIMP+腫瘍がMSI+であったのに対し、CIMP−腫瘍についてはわずかに8/128(6%)であった。(P<0.0001)。
【0091】
2つの治療コホートの各々について、CIMP+の予後的価値を図1に示す。手術単独で治療された患者に関しては(図1A)、CIMP+はCIMP−と比較して予後不良に結びついていた(RR=1.65;95%CI:[1.00−2.72];P=0.05)。しかし、手術プラス5−FUで治療されたコホートでは(図1B)、おそらく以下で述べるようなCIMP+と化学療法の間の相互作用のために、CIMP+患者のより良好な生存率の傾向が認められた。
【0092】
無作為化臨床試験からの結果と一致して(16,21)、この試験における5−FUの使用に関連した絶対的5年間生存率の恩恵は約11%であった(RR=0.62;95%CI:[0.43−0.90];P=0.012)。CIMP+状態に従って分析したとき、5−FU治療からの長期的恩恵のほとんど全てがCIMP+患者群に帰せられ(図2B)、CIMP−患者については長期的生存率恩恵は明らかではなかった(図2A;RR=0.96;95%CI:[0.62−1.49];P=0.86)。マッチドペアに関する多変量解析は、CIMP+が、MSI+及びp53突然変異状態とは独立して生存率恩恵を予測することを明らかにした(RR=0.22;95%CI:[0.06−0.84];P=0.027)。MSI+又はTP53状態は、CIMP+を含む多変量解析モデルにおいて独立した予測値を持たないことが認められた(結果は示していない)。
【0093】
感度分析は、未測定高危険度交絡因子だけが、5−FUで治療されたコホートと比較して手術単独で治療されたコホートにおいて少なくとも2倍の頻度で存在する場合、CIMP+に関連する予測値を説明し得ることを明らかにした(表3)。この交絡因子に関連する相対的危険度も3.0より大きい必要がある。
考察
【0094】
臨床試験は、5−FUに基づくレジメンによるアジュバント化学療法が、III期CRC患者の生存率における小さいが有意の改善に結びつくことを確認した(21)。最近まで、性別又は腫瘍の解剖学的位置によって定義されたCRC患者の異なるサブグループが、この治療から異なる恩恵を得ることを示唆する証拠は存在しなかった。しかし、2つの最近の公表文献からのデータは、1つは後ろ向きコホート研究(13)及び他方は前向き無作為化試験(16)であるが、5−FUからの生存率恩恵のレベルが性別及び腫瘍部位によって異なり得ることを示している。女性患者及び結腸腫瘍を有する患者は、それぞれ男性及び直腸癌患者よりも多くの恩恵を受けると思われる。5−FUに対するこの区別的応答についての基礎となる分子根拠は不明である。
【0095】
現在の試験において、本発明者らはそれ故、2つの年齢、性別及び部位がマッチする患者コホート:1つは手術単独で治療されたコホートで、他方は手術と5−FU/ロイコボリン化学療法によって治療されたコホート、の生存率を比較することにより、CIMP+の予測値を検討した。III期CRCのための5−FUベースの化学療法は、西オーストラリアでは1990年代の初期から半ばに比較的短期間導入され、それ故アジュバント治療されたコホートと治療されなかったコホート内の患者は、比肩し得る手術処置、病理学的診断及び術後管理を受けたと考えられた。この裏づけとして、初期(1985−1992)に手術単独で治療された患者についての生存率は、より最近の患者(1993−1999)の生存率と有意に異ならなかった。表1に示すように、2つの治療コホートはまた、同様の臨床病理及び分子特徴を明らかにした。この試験における5−FU治療に関連した絶対的生存率恩恵は、5年間の追跡後11%であり、無作為化臨床試験に関して報告されたものと同様である(16,21)。CIMP+の分類に関してはまだコンセンサスに至っていないが、本研究において使用した定義は、他の研究者達(2−5,8,9)によって報告されたのと同様の特徴を有する腫瘍サブグループを特定した。これらは、近位腫瘍局在、低い組織学的グレード、野生型p53及びMSI+との結びつきを含む(表2)。
【0096】
CpGアイランドメチル化の予後的価値はこれまでに検討されている。Liangら(22)は、84名のIII期CRC患者を試験し、p16メチル化と生存期間短縮の間の結びつきを認めた。また、I−IV期CRCの426例についての最近の研究は、CIMP+腫瘍を有する患者が予後不良であることを報告した(5)。しかし、他の2つの報告はp16メチル化(23)又はCIMP+(4)に予後的価値を見出さなかった。本研究において、本発明者らは、CIMP+は、手術単独で治療された患者に関してはより低い生存率に結びつくが、手術と化学療法で治療された患者についてはそうではないことを認めた。分子予後マーカーに関するデータを解釈するときは、それ故、患者治療情報を常に考慮すべきである。本研究は、CIMP+の予後的価値に関する最初の報告である。本試験の新規所見は、CIMP+腫瘍を有するCRC患者は、5−FU化学療法の使用に関連する長期的生存率恩恵の大部分、おそらくは全部を占め得ると考えられることである(図2)。CIMP+の予測的重要性は、同じくCRCにおける5−FUからの生存率恩恵について予測値を有する他の2つの分子マーカー、MSI+及びp53(14,15,24)とは無関係であった。
【0097】
感度分析は、未特定交絡因子変数がCIMP+と5−FUからの見かけ上の生存率恩恵との結びつきを説明する可能性は低いことを明らかにした(表3)。未測定二元交絡変数の統計評価は、これまで、高齢のIII期CRC患者における5−FU化学療法からの恩恵を評価するために使用されてきた(25)。CIMP+腫瘍を有する患者の約40%が、5−FUの使用にもかかわらず再発性CRCのために死亡しており、この表現型が治療に対する応答の予測に関して必ずしも全面的に特異的ではないことを示唆していることに留意しなければならない(図2B)。CIMP+を定義するためにCpGアイランドの他の組合せを使用することは、p16、MINT−2及びMDR1の現在のパネルで認められたよりも強力な予測情報を生じ得る。付加的な予測因子はまた、5−FU代謝に関与する遺伝子、例えばチミジル酸シンテターゼ、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ及びチミジンホスホリラーゼの発現のレベルであり得る(26−28)。ゲノム低メチル化のレベル又は腫瘍内葉酸中間体のレベルも、葉酸拮抗薬治療に対する応答の程度に関連すると考えられる。
【0098】
選択的アプローチは、5−FUのこれまでの臨床試験からの既採取腫瘍標本においてCIMP+に関する分子スクリーニングを実施することである。CIMP+は、hMLH1及びp16を含む特定遺伝子の転写サイレンシングに関連し、その結果としてこの表現型は特徴的なタンパク質発現パターンを示すと考えられる。これらが正確に特定できれば、CRCのCIMP+サブグループを特定するために、DNA分析に代わるものとして遺伝子発現の免疫組織化学分析を可能にし得る。葉酸代謝とDNAメチル化の変化の間で強い結びつきが明らかにされた(29)。
【0099】
本発明者らは、CIMP+腫瘍において認められるDNA高メチル化が、細胞の葉酸及びメチル基代謝のより広汎な異常についての代理マーカーであり得ると仮定する。そのような変化は、CIMP+腫瘍細胞を、5−FU及びロイコボリンを含む葉酸拮抗薬治療に対してより感受性にすると考えられる。CIMP+とCIMP−腫瘍の間での葉酸中間体のレベルの比較は、この可能性をより明らかにすると考えられる。CIMP+腫瘍の見かけ上の化学的感受性についてのもう1つの説明は、この表現型に関連する転写サイレンシングが5−FUの存在下で細胞生存のために必要な遺伝子を不活性化するということである。近位(13)及び結腸(16)腫瘍は、CRC患者において5−FUから認められる生存率恩恵の大半を獲得すると思われる。206例の本試験では、近位腫瘍の48%がCIMP+であり、一方遠位結腸又は直腸腫瘍ではCIMP+はわずかに14−15%であった(表2)。417の連続的I−IV期CRC症例についての最近の試験では、検討した5つのCpG部位のうち3又はそれ以上のCpG部位のメチル化という定義を使用して、遠位腫瘍のわずか9%と比較して近位腫瘍の37%がCIMP+と分類された。重度メチル化(3部位のうち3がメチル化)だけを考慮した場合(4)、CIMP+頻度における腫瘍部位の差はより一層大きくなる(8倍)。近位腫瘍局在に加えて、本発明者らはまた、女性が男性よりも5−FUからの恩恵を受けると思われることを示した(13)。
【0100】
これまでの試験は、p16メチル化(10)、重度メチル化(4)、及び5CpG部位のうち≧3のメチル化が、全て女性患者からの腫瘍においてより一般的であることを示した。CIMP+に関して3部位のうち≧2のメチル化という定義を使用した本試験において、本発明者らはCIMP+頻度に関して性差を認めなかった(表2)。しかし、これは、これまでの試験において使用された非選択シリーズと比較して今回の患者コホートの選択性によるものである可能性がある。特に、この試験における患者の平均年齢は、我々の研究所からの大きな連続シリーズで認められたものよりも7歳若かった(14)。結論として、本試験は、CIMP+が、MSI+及びp53状態とは独立して、CRC患者における5−FU化学療法からの生存率恩恵についての予測因子であることの証拠を提供する。これらの所見の確認は、アジュバント5−FU化学療法を受けるCRC患者の改善された選択を導き得る。
【0101】
近位腫瘍におけるより高いCIMP+頻度と化学療法からのより大きな生存率恩恵の間で認められる相関は、因果関係を示唆する。CIMP+とCIMP−腫瘍の間での細胞葉酸プール及び遺伝子発現パターンの比較は、DNAメチル化異常を有する腫瘍の見かけ上の化学的感受性を説明するのに役立つと考えられる。
【表1】


【表2】


【表3】

【0102】
hMLH1メチル化の予測値に関するデータ
5FU化学療法による生存率恩恵についてのhMLH1メチル化の予測値を、手術単独(化学療法なし)によって又は手術プラス標準5FU化学療法によって治療されたII期及びIII期結腸直腸癌のシリーズにおいて検討した。
【0103】
亜硫酸水素塩変換後のメチル化hMLH1を検出するために以下のプライマーを使用した(MSP手法を用いて):
正 5’−TTAATAGGAAGAGCGGATAGC−3’(配列番号1)
逆 5’−CTATAAATTACTAAATCTCTTCG−3’(配列番号2)
【0104】
標本の大きさは以下の通りであった:
hMLH1非メチル化症例 N=86
hMLH1メチル化症例 N=47
【0105】
患者についての平均追跡期間は以下の通りであった。
手術単独(化学療法なし) 64ヶ月間(0.5−185ヶ月間の範囲)
手術プラス化学療法 71ヶ月間(9−203ヶ月間の範囲)
【0106】
患者群の生存率は以下の通りであった。
hMLH1非メチル化/化学療法なし 48/64(75%)
hMLH1非メチル化/化学療法 15/22(68%)
P=NS
hMLH1メチル化/化学療法なし 29/37(78%)
hMLH1メチル化/化学療法 10/10(100%)
P=0.097
【0107】
結論
hMLH1メチル化に関するデータは、特定遺伝子がメチル化されている腫瘍は5FU化学療法に応答性であることを示す、p16、MINT−2及びMDR1を使用したこれまでの結果を裏付ける。
【0108】
参考文献







【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、手術単独(A)又は手術と5−FU(B)で治療されたIII期CRC患者におけるCIMP+についての予後価値を示す。示されているP値はログランク検定からである。
【図2】図2は、5−FUからの生存率上の恩恵に関するCIMP+(A)及びCIMP−(B)の予測値を示す。示されているP値はログランク検定からである。
【図3−1】図3は、II期及びIII期直腸結腸癌の5−FU治療に対する患者応答についてのhMLH1メチル化の予測値を証明する生存率分析の結果を示す。 A.非メチル化hMLH1遺伝子を有する患者(実線)対メチル化hMLH1遺伝子を有する患者(破線)の全体的生存率を示す。 B.化学療法治療を受けていない非メチル化hMLH1遺伝子を有する患者(実線)対化学療法を用いて治療された非メチル化hMLH1遺伝子を有する患者(破線)の全体的生存率を示す。 C.化学療法治療を受けていないメチル化hMLH1遺伝子を有する患者(実線)対化学療法を用いて治療されたメチル化hMLH1遺伝子を有する患者(破線)の全体的生存率を示す。ここでは、hMLH1遺伝子がメチル化されている場合、化学療法は明らかにプラスの作用を有する。
【図3−2】図3は、II期及びIII期直腸結腸癌の5−FU治療に対する患者応答についてのhMLH1メチル化の予測値を証明する生存率分析の結果を示す。 D.hMLH1遺伝子がメチル化されていない、化学療法治療なしの患者(実線)対メチル化hMLH1遺伝子を有する、化学療法治療なしの患者(破線)の全体的生存率を示す。 E.hMLH1遺伝子がメチル化されていない、化学療法治療を受けた患者(実線)対メチル化hMLH1遺伝子を有する、化学療法治療を受けた患者(破線)の全体的生存率を示す。hMLH1遺伝子がメチル化されている、化学療法によって治療された患者に関して、生存率の上昇が明らかに認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者から得た試料のCIMP状態を測定することを含み、それにより、CIMP状態が陽性である場合はCIMP状態が陰性である場合よりも治療成功の可能性が高いとする、代謝拮抗性化合物による癌治療の成功の可能性を予測するための方法。
【請求項2】
被験者から得た試料のCIMP状態を測定することを含み、それにより、CIMP状態が陽性である場合は、代謝拮抗性化合物を用いる治療を投与し得る、癌のための適切な治療レジメンを選択する方法。
【請求項3】
前記癌が、結腸直腸癌(CRC)、膵癌、乳癌、前立腺癌、胃癌、子宮頚癌、肺癌、食道癌、腎癌、頭頚部癌から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記癌が結腸直腸癌(CRC)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記代謝拮抗性化合物が、癌細胞代謝、ヌクレオチド及びDNAの代謝又はメチル化、プリン、メチル基代謝、葉酸代謝又は核酸代謝における葉酸の阻害剤である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記代謝拮抗性化合物が、チミジル酸シンターゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、AICARトランスホルミラーゼ、GARトランスホルミラーゼ、幾つかのメチルトランスフェラーゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ、DNAポリメラーゼアデノシンデアミナーゼ、メチオニンシンターゼ及び/又はシスタチオニン−β−シンターゼの阻害剤である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記代謝拮抗性化合物がチミジル酸シンターゼ(TS)阻害剤である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記チミジル酸シンターゼ(TS)阻害剤が、5−FU、フルオロデオキシウリジン、フトルフル(ftorfur),5’−デオキシフルオロウリジン、ラルチトレキセド、UFT、S−1、5−エチニルウラシル、カペシタビン、ペメトレキセド、ノラトレキセド、ZD9331、トリメトレキサート、LU231514、エダトレキサート、GW1843、GW1843、OSI−7904L、ロイコボリン、レビモゾール(Levimosole)、メトトレキサート、GS7904L、PDX、10−EdAM、ICI−198,583及びDDATHF;CB300638、4−S−CAP及びN−ac−4−S−CAPから選択される葉酸類似体又はヌクレオチド類似体を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
使用する前記代謝拮抗性化合物が、シタラビン(Ara−C)及びゲンシタビン、6−MP及び6−TG(チオプリン)、フルアラビン、クラドリビン及びペントスタチンから選択される葉酸代謝経路の阻害剤である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記CIMP状態を、遺伝子のパネルのメチル化状態を判定することによって測定する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子のパネルが、THBS1、IGF−2、HIC−1及びhMLH1、p16、MINT−2、MDR1、p15、E−カドヘリン、VHL、TGFβ1、TGFβ2、P130、BRAC2、NF1、NF2、TSG101、MDGI、GSTPI、カルシトニン、HIC−1、エンドセリンB受容体、TIMP−2、MGMT、MLH1、MLH2及びGFAP;MGMT、DAPキナーゼ、RASSF1A、H−カドヘリン、レチノイン酸受容体β及び脆弱ヒスチジン三連構造(triad);TSLC1;SOCS−1、SOCS−2、CIS−2;APC、DAPK、PAX5α、PAX5β、Gata−4、Gata−5、Dab−2、インヒビンα、Tiff2、Tiff3、AP−2α、P73、BRAC−1、RASSF−1、P14、E−カドヘリン、RARβ2、TIMP3、CDH1、BRAC−1及びTrombからの少なくとも2個の遺伝子を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記遺伝子のパネルが、以下の遺伝子:p16、MINT−2及びMDR1を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記遺伝子のパネルのプロモーターの全部、又は少なくとも2個、又は少なくとも3個、又は少なくとも4個、又は少なくとも5個、又は少なくとも6個がメチル化されている場合、CIMP状態を陽性とみなす、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
特異的PCR(MSP)又は定量的メチル化特異的PCR(QMSP)を用いて遺伝子のメチル化状態を測定する、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記遺伝子のパネルのメチル化状態を単一実験において測定する、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記遺伝子のパネルの各々のメチル化状態を別々の実験において測定する、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記CIMP状態を、RNA又はタンパク質レベルで遺伝子のパネルの発現を判定することによって測定する又は付加的に測定する、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記遺伝子のパネルが、THBS1、IGF−2、HIC−1及びhMLH1、p16、MINT−2、MDR1、p15、E−カドヘリン、VHL、TGFβ1、TGFβ2、P130、BRAC2、NF1、NF2、TSG101、MDGI、GSTPI、カルシトニン、HIC−1、エンドセリンB受容体、TIMP−2、MGMT、MLH1、MLH2及びGFAP;MGMT、DAPキナーゼ、RASSF1A、H−カドヘリン、レチノイン酸受容体β及び脆弱ヒスチジン三連構造;TSLC1;SOCS−1、SOCS−2、CIS−2;APC、DAPK、PAX5α、PAX5β、Gata−4、Gata−5、Dab−2、インヒビンα、Tiff2及びTiff3、AP−2α、P73、BRAC−1、RASSF−1、P14、E−カドヘリン、RARβ2、TIMP3、CDH1、BRAC−1及びTrombからの少なくとも2個の遺伝子を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記遺伝子のパネルが、以下の遺伝子:p16及びhMLH1を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
葉酸代謝に関与する遺伝子の発現レベルを測定することをさらに含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記の葉酸代謝に関与する遺伝子が、チミジル酸シンテターゼ、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ及びチミジンホスホリラーゼをコードする遺伝子のいずれかを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ゲノム低メチル化のレベルを測定することをさらに含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記遺伝子が、クラウジン(claudin)4、リポカリン2、14−3−3σ、トレフォイル因子2、S100A4、メソテリン、前立腺幹細胞抗原、CAGE、メチルトランスフェラーゼ(DNMT1、3A及び3B)、MYOD1、シヌクレインγ(SNCG、BCSG1)、MUC2、H19、IGF2、CDH13のいずれかを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ゲノム低メチル化のレベルを、MSP又はQMSPを用いて測定する、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
腫瘍内葉酸中間体のレベルを測定することをさらに含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
CIMP状態が陽性である場合に、代謝拮抗性化合物を外科手術と共に使用する、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
CIMP状態が陰性である場合に、外科手術を、できる限り、代謝拮抗性化合物を用いる治療以外の他の化学療法と共に使用する、請求項2に記載の方法。
【請求項28】
−被験者から得た試料のCIMP状態を測定するための手段;及び
−前記試料を、CIMP状態を測定するための手段と接触させるための手段
を含む、代謝拮抗性化合物による癌治療の成功の可能性を予測するためのキット。
【請求項29】
試料のCIMP状態を測定するための手段が、遺伝子のパネルのプロモーターのメチル化状態を判定するための手段を含む、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
前記遺伝子のパネルが、任意の数の以下の遺伝子:THBS1、IGF−2、HIC−1及びhMLH1、p16、MINT−2、MDR1、p15、E−カドヘリン、VHL、TGFβ1、TGFβ2、P130、BRAC2、NF1、NF2、TSG101、MDGI、GSTPI、カルシトニン、HIC−1、エンドセリンB受容体、TIMP−2、MGMT、MLH1、MLH2及びGFAP;MGMT、DAPキナーゼ、RASSF1A、H−カドヘリン、レチノイン酸受容体β及び脆弱ヒスチジン三連構造;TSLC1;SOCS−1、SOCS−2、CIS−2;APC、DAPK、PAX5α、PAX5β、Gata−4、Gata−5、Dab−2、インヒビンα、Tiff2及びTiff3、AP−2α、P73、BRAC−1、RASSF−1、P14、E−カドヘリン、RARβ2、TIMP3、CDH1、BRAC−1及びTrombを含む、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
前記遺伝子のパネルが、以下の遺伝子:p16、MINT−2及びMDR1を含む、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
試料のCIMP状態を測定するためのMSP及び/又はQMSP試薬を含む、請求項28から31のいずれかに記載のキット。
【請求項33】
CIMP状態を判定するためにそのメチル化状態を測定する遺伝子についての遺伝子特異的プライマーを含む、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
QMSP反応産物のリアルタイム検出を可能にする遺伝子特異的プローブ及び試薬をさらに含む、請求項28から33のいずれか一項に記載のキット。
【請求項35】
前記リアルタイム検出法が、Taqmanシステム、分子ビーコンシステム及びScorpinプローブシステムから選択される、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
CIMP状態を測定するために、RNA又はタンパク質レベルで遺伝子のパネルの発現を判定するための手段を含む、又は付加的に含む、請求項28から35のいずれか一項に記載のキット。
【請求項37】
前記遺伝子のパネルが、任意の数の以下の遺伝子:THBS1、IGF−2、HIC−1及びhMLH1、p16、MINT−2、MDR1、p15、E−カドヘリン、VHL、TGFβ1、TGFβ2、P130、BRAC2、NF1、NF2、TSG101、MDGI、GSTPI、カルシトニン、HIC−1、エンドセリンB受容体、TIMP−2、MGMT、MLH1、MLH2及びGFAP;MGMT、DAPキナーゼ、RASSF1A、H−カドヘリン、レチノイン酸受容体β及び脆弱ヒスチジン三連構造;TSLC1;SOCS−1、SOCS−2、CIS−2;APC、DAPK、PAX5α、PAX5β、Gata−4、Gata−5、Dab−2、インヒビンα、Tiff2及びTiff3、AP−2α、P73、BRAC−1、RASSF−1、P14、E−カドヘリン、RARβ2、TIMP3、CDH1、BRAC−1及びTrombの多くを含む、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記遺伝子のパネルが、以下の遺伝子:p16及びhMLH1を含む、請求項35又は36に記載のキット。
【請求項39】
陽性CIMP状態を有する、癌に罹患している被験者の治療における代謝拮抗性化合物の使用。
【請求項40】
陽性CIMP状態を有する、癌に罹患している被験者の治療のための薬剤の製造における使用のための代謝拮抗性化合物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate


【公表番号】特表2007−501002(P2007−501002A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521677(P2006−521677)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003346
【国際公開番号】WO2005/012569
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(504206827)ザ ユニバーシティ オブ ウェスタン オーストラリア (2)
【Fターム(参考)】