癌治療用のジ(フェニルプロパノイド)・グリセロール誘導体
本発明は、式(I)または式(II’)
【化1】
[式中、R1,R2,R3,R4,R5,R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]で示される化合物または製薬上許容されるその塩を被験者に投与することを含む、被験者の癌を治療する方法を提供する。また、式(II)または式(II)’[式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、R3およびR4は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、R6は、H、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、R5およびR7はいずれもHである]で示される化合物または製薬上許容されるその塩が提供される。
【化1】
[式中、R1,R2,R3,R4,R5,R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]で示される化合物または製薬上許容されるその塩を被験者に投与することを含む、被験者の癌を治療する方法を提供する。また、式(II)または式(II)’[式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、R3およびR4は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、R6は、H、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、R5およびR7はいずれもHである]で示される化合物または製薬上許容されるその塩が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌を治療するための治療薬に関する。より詳細には、本発明は癌を治療するためのプロパン・ジイル・ジシンナメート誘導体およびその調製法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関(WHO)によれば、2000年の世界の全死亡者は約5600万人で、そのうちの12%は悪性腫瘍が死因であった。詳細には、男性530万人および女性470万人が悪性腫瘍を発症し、合わせて620万人がこの病気で死亡した。この報告書では、癌が発展途上国で大きな公衆衛生問題として浮上してきていることも明らかとされ、その影響は先進国に匹敵する。
【0003】
過去20年で大きな前進があったとはいえ、従来の療法では効果不十分であったり、まったく効果が得られない癌が多く残っている。これら治療法に共通する主な問題は認容できない毒性である。
【0004】
したがって、癌の発生を予防するための、または、既に悪性新生物が発生している場合には、宿主生物を無癌状態にするか、命に別状ないレベルまで腫瘍細胞量を減らすか、または、少なくとも併用療法の使用を容易にするための、新規な化合物、医薬品、または方法が必要とされている。
【0005】
本質的に、癌等の腫瘍は、細胞再生と細胞死の間の微妙な調和が崩れた状態での不適切な細胞の蓄積と考えられる。悪性新生物が発生する場合、細胞再生の増加、細胞死の減少、またはその両方が生じているはずである。この関係の当然の帰結として、宿主生物の有利(したがって、腫瘍の不利)に上記プロセスに影響を及ぼす薬剤が潜在的な抗新生物薬ということになる。
【0006】
抗新生物剤の中には天然源から単離および特定されているものもある。例えば、一般にウコンと呼ばれる植物ウコン由来のポリフェノールであるクルクミン(ジフェルロイルメタン)は、この50年以上にわたって広範囲に研究され、このポリフェノールが癌予防と癌治療の両方が可能であることが示されている。具体的には、これら一連の研究により、乳癌、大腸癌、急性骨髄白血病、基底細胞癌、黒色腫、前立腺癌を含む様々な腫瘍細胞の増殖をクルクミンが抑制することが証明されている(1−7)。その優れた薬理学的安全性にもかかわらず、投与量での全身吸収性の低さおよび代謝作用の高さより、この化合物の抗癌剤としての効果は制限されてきた。
【0007】
カフェ酸フェニルエステル(CAPE)と して識別される、ミツバチの巣材であるプロポリスの特定成分が、多形成膠芽腫(GBM−18)、結腸腺癌(HT−29)及びメラノーマ(HO−1)細胞を含むヒト腫瘍細胞、ならびに、バイタル転換及び発癌転換げっ歯類細胞の増殖を選択的に抑制することが実証されている。これらの研究は、CAPEおよび他のいくつかのカフェ酸エステルがアゾキシメタン誘導性コロニー前癌性病変およびオルニチン脱炭素酵素、タンパク質チロシンキナーゼ、大腸発癌と関連するリポキシゲナーゼの活性を阻害することも示している(8−13)。
【0008】
CAPEとクルクミノイドは別々の天然資源に由来するものであるが構造的類似性があり、これがその抗癌特性、少なくともその安全性と選択性、を明らかにすると考えられる。抗癌特性に関する上記構造的類似性の意味は現時点では不明である。
【0009】
新しい抗新生物剤開発のための取り組みの1つは、癌に対して選択的であり、生物学的環境において安定であり、癌に対する効力を継続的に維持し、全体として低毒性の新規な化合物を合成することである。
【0010】
Banskotaらは、オランダ産プロポリスのメタノール抽出物から、桂皮酸誘導体、カフェ酸ベンジル、カフェ酸フェネチルおよびカフェ酸シンナミル、またジシンナメート化合物(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート)および(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートを単離した(JournalofEthnopharmacology(2002),80(1),67-73)。
カフェ酸ベンジル、カフェ酸フェネチル、およびカフェ酸シンナミルは、B16−BL6に対してそれぞれEC50値が2.03μM、3.16μM、1.92μMであった。
ジシンナメート化合物(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートおよび(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートは、同一細胞株に対してそれぞれ81.9μMおよび66μMという中度のEC50を示した。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、癌を治療するための治療薬に関する。より詳細には、本発明は癌を治療するためのプロパン・ジイル・ジシンナメート誘導体およびその調製法に関する。
【0012】
一態様において、本発明は、式(I)または式(I’)
【化1】
[式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R3およびR4は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R6は、H、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩
(但し、(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−メトキシフェニル)アクリレート;または
(E)−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)−2−ヒドロキシプロピル3−(4−メトキシフェニル)アクリレート、
ではない化合物または製薬上許容されるその塩)
を提供する。
【0013】
別態様において本発明は、式(II)または式(II’)
【化2】
[式中、R1,R2,R3,R4,R5,R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩
(但し、(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートおよび(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートではない化合物または製薬上許容されるその塩)
を被験者に投与することを含む、被験者の癌を治療する方法を提供する。
【0014】
さらに別態様において、本発明は、以下の式
【化3】
[式中、R1およびR2がいずれもアルコキシである]
で示される中間体を提供する。
【0015】
本発明の上記及びその他の特徴は、添付図面を参照する以下の説明から更に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】式(II)のジエステル化合物を製造するための合成スキームの例を示す。
【図2】式(II’)のジエステル化合物を製造するための合成スキームの例を示す。
【図3】グリシジジル皮酸エステル誘導体を製造する方法の例を示す。
【図4】対称的な終わりのある式(II)および式(II’)のジエステル化合物を製造するための合成スキームの例を示す。
【図5】本発明の化合物を構成する中間体の三置換誘導体の例を示す。
【図6】本発明の化合物を構成する中間体の三置換誘導体の例を示す。
【図7】本発明の化合物を構成する中間体の二置換誘導体の例を示す。
【図8】本発明の化合物を構成する中間体の二置換誘導体の例を示す。
【図9】式(II)のジエステル化合物を製造するための合成スキームの例を示す。
【図10】式(II)のジエステル化合物を製造するための合成スキームの例を示す。
【図11】式(II)のジエステル化合物を製造するための合成スキームの例を示す。
【図12】化合物で処理を行わなかったヒト大腸癌細胞株HCT116の顕微鏡写真を示す(コントロール)。
【図13】30μM化合物(lib)で処理した後のヒト大腸癌細胞株HCT116の顕微鏡写真を示す。
【図14】30μM化合物(le)で処理した後のヒト大腸癌細胞株HCT116の顕微鏡写真を示す。
【図15】30μM化合物(ld)で処理した後のヒト大腸癌細胞株HCT116の顕微鏡写真を示す。
【0017】
本発明は、癌を治療するための治療薬に関する。より詳細には、本発明は癌を治療するためのプロパン・ジイル・ジシンナメート誘導体およびその調製法に関する。
【0018】
一態様において本発明は、式(I)または式(I’)
【化4】
[式中:R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R3およびR4は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R5は、H、OH、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R6は、H、またはアルコキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩
(但し、上記化合物は
(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル 3−(4−メトキシフェニル)アクリレート、または
(E)−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)−2−ヒドロキシプロピル3−(4−メトキシフェニル)アクリレートではない化合物である)
を提供する。
【0019】
上記化合物の式(I)または式(I’)の一例において、R1およびR2はいずれも、OH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである。
【0020】
より詳細には、本発明は、式(Ia)または式(Ia’)
【化5】
[式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R4は、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R6は、H、またはアルコキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩を提供する。
【0021】
上記式(Ia)または式(Ia’)の化合物の一例において、R1およびR2はいずれもOH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである。
【0022】
別の例において、本発明は、上記式(I)、(Ia)、(I’)および(Ia’)[式中、R1およびR2はいずれもOHまたはアルコキシである]で示される化合物に関する。
【0023】
また、本発明は、上記式(I),(Ia),(I’)および(Ia’)[式中、R4はHまたはOHである]で示される化合物に関する。
【0024】
また、本発明は、式(Ib)または式(Ib’)
【化6】
[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R6は、H、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩、に関する。
【0025】
例において、本発明は、式(Ic)または式(Ic’)
【化7】
[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R4は、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩に関する。
【0026】
より詳細には、本発明は、式(Id)、(Ie)、(If)、(Ig)、(Ih)、(Ii)、(Ij)、(Id’)、(Ie’)、(If’)、(Ig’)、(Ih’)、(Ii’)、(Ij’):
【化8A】
【化8B】
で示される化合物に関する。
【0027】
第2の態様において、本発明は、式(II)または式(II’)
【化9】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩
(但し、上記化合物は、(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートおよび(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート以外の化合物である)
を被験者に投与することを含む、被験者の肺癌、乳癌、大腸癌、前立腺癌、卵巣癌、皮膚癌、または白血病などの癌を治療する方法を提供する。
【0028】
第3の態様において、本発明は、被験者の癌治療用の薬剤を調製するための、式(II)または式(II’)
【化10】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩
(但し、上記化合物は、(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート)および(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート以外の化合物である)
の使用を提供する。
【0029】
本発明の第3の態様による一例において、癌は、肺癌、乳癌、大腸ガン、前立腺癌、卵巣癌、皮膚癌、または白血病である。
【0030】
第4の態様において、本発明は、式(II)または(II’)
【化11】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩
(但し、上記化合物は、(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート)および(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート以外の化合物である)
に癌細胞を接触させることを含む、肺癌細胞、乳癌細胞、大腸癌細胞、前立腺癌細胞、卵巣癌細胞、皮膚ガン細胞、または白血病細胞などの癌を死滅させる方法を提供する。
【0031】
第5の態様において、本発明は、癌を死滅させるための、式(II)または式(II’)
【化12】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである、で示される化合物または製薬上許容されるその塩
(但し、上記化合物は、(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート)および(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート以外の化合物である)
の使用を提供する。
【0032】
本発明の第5の態様による使用の一例において、癌細胞は、肺癌細胞、乳癌細胞、大腸癌細胞、前立腺癌細胞、卵巣癌細胞、皮膚癌細胞、または白血病細胞である。
【0033】
上記方法の一例において、式(II)または式(II’)の化合物のR1およびR2は、いずれもOH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである。
【0034】
より詳細には、本発明は、式(II)または式(II’)の化合物が、式(IIa)または式(IIa’)
【化13】
[式中、R1、R2、R4、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、上記方法または上記使用に関する。
【0035】
本発明は、式(II)または式(II’)の化合物が、式(Ia)または式(Ia’)
【化14】
[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R4は、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R6は、H、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、上記方法または上記使用に関する。
【0036】
本発明はさらに、式(II)または式(II’)の化合物が式(Ic)または式(Ic’)
【化15】
[式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R4は、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、上記方法または上記使用に関する。
【0037】
上記方法または使用の一例において、式(II)、(IIa)、(Ia)、(Ic)、(II’)、(IIa’)、(Ia’)および(Ic’)のR1およびR2が、いずれもOH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである。
【0038】
その他の例において、本発明は、式(II)、(IIa)、(Ia)、(Ic)、(II’)、(IIa’)、(Ia’)および(Ic’)のR1およびR2がいずれもOHまたはいずれもアルコキシである、上記方法または上記使用に関する。
【0039】
本発明はまた、式(II)、(IIa)、(Ia)、(Ic)、(II’)、(IIa’)、(Ia’)および(Ic’)のR4がHまたはOHである、上記方法または上記使用に関する。
【0040】
より詳細には、本発明は、被験者に投与される化合物が、式(Id),(Ie),(If),(Ig)、(IIb)、(IIc)、(IIe)、(Id’)、(Ie’)、(If’)、(Ig’)、(IIb’)、(IIc’)、(IId’)、(IIe’):
【化16A】
【化16B】
で示される化合物またはその組み合わせである、上記方法または上記使用に関する。
【0041】
第6の態様において、本発明は、
式(I)または式(I’)
【化17】
[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R3およびR4は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R6は、H、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物 、または、製薬上許容されるその塩と、
製薬上許容される希釈剤またはキャリアと、
を含む
(但し、上記化合物は、
(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−アセトキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−アセトキシフェニール)アクリレート;または
(E)−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)−2−ヒドロキシプロピル3−(4−メトキシフェニル)アクリレートではない)、
医薬組成物を提供する。
【0042】
第7の態様においては、本発明は、式
【化18】
[式中、R1およびR2はいずれもアルコキシである]
で示される中間体を提供する。
【0043】
また、本発明は、上記化合物と、製薬上許容される希釈剤およびキャリアとを含む、医薬組成物に関する。
【0044】
また、本発明は、一般式(I),(I’),(II)および(II’)の化合物またはその混合物を含む医薬組成物および投薬剤に関する。
【0045】
本願明細書で使用される用語「alkyl(アルキル)」は、1個〜10個、1個〜9個、1個〜8個、1個〜7個、1個〜6個、1個〜5個、1個〜4個、1個〜3個、または1個〜2個の炭素原子を有するアルキル基をはじめとする一般式CnH2n+1の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基のことを言う。アルキル基の例として、限定的ではないが、メチル(基)、エチル(基)、プロピル(基)、イソプロピル(基)およびt−ブチル(基)などが掲げられる。
【0046】
「製薬上許容される塩」とは、対応する遊離基または遊離酸の生物学的効果および特性を維持し、生物学的または他の意味で有害ではない塩のことである。無機塩基由来の塩類として、限定的ではないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム塩等が掲げられる。有機塩基由来の塩類として、限定的ではないが、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、リジン、アルギニン、N−エチルピペリジン、ピペリジンおよびポリアミン樹脂など、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂が掲げられる。
【0047】
本発明の化合物またはそれらに対応する製薬上許容される塩は、経腸投与、非経口投与、または局所投与用の医薬品組成物の形態で使用可能である。
【0048】
無機担体材料だけででなく有機担体材料も担体材料として適している。したがって、例えば、ラクトース、コーンスターチ、またはそれらの誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩類を、タブレット、コーティング錠、糖衣錠、硬ゼラチンカプセルの担体材料として使用できる。ソフトゼラチンカプセルに適した担体材料は、例えば、植物油、ろう状物質、脂質、半個体状および液状のポリオールである(有効成分の性質による。ソフトゼラチンカプセルの場合は担体不要のことがある)。液剤やシロップ剤の製造に適した担体材料は、例えば、水、ポリオール、スクロース、転化糖等である。座薬に適した担体材料は、例えば、天然オイル、硬化油、ろう状物質、脂質、半液体状あるいは液体状ポリオールである。局所用製剤に適した担体材料は、例えば、グリセリド、半合成および合成グリセリド、硬化油、液体ワックス、流動パラフィン、液状脂肪アルコール、ステロール、ポリエチレングリコールおよびセルロース誘導体である。
【0049】
一般式(I),(I’),(II)および(II’)で示されるプロパン・ジイル・ジシンナメート誘導体は、限定的ではないが、癌ならびに腫瘍、炎症およびヒト免疫不全(HIV)などのその他の増殖性疾患の治療、予防、防止に有益である本発明の化合物の抗癌活性は、細胞毒性、増殖防止、細胞周期キナーゼ抑制、あるいは細胞分化に発揮される場合がある。
【0050】
また、本発明は、一般式(I),(I’),(II)および(II’)によって定義されている化合物の調製過程、あるいは混合物、その立体異性体、多形体、製薬上許容されるその塩、製薬上許容される溶媒和物に関する。
【0051】
一般式(II)の化合物は図1および9〜11参照の合成経路に従って生成できる。ジエステル5をさらにアルキル化またはアシル化することによって、誘導体化ジエステル6を生成できる。
【0052】
R4が水素である式(II)の化合物は、架橋結合剤7で桂皮酸誘導体1および2を架橋させてジエステル化合物8を生成することによって生成される。その後、RC(O)L等のアシル化剤を用いたジエステル8の部分的、あるいは完全なアシル化によって、アシル化誘導体17を得ることができる。
【0053】
図2に示されるように、式(II’)の化合物は、相間移動触媒(PTC)の存在下で、桂皮酸誘導体9または10を対応するグリシジル・シンナメート誘導体3または4でエステル化して1,2グリセロール・ジエステル誘導体13を生じ、さらにアルキル化またはアシル化してジエステル14を生成することによって作製できる。
【0054】
R4が水素である式(II)の化合物は、ジエステル化合物16を作るために架橋結合剤15で、桂皮酸酸誘導体1および2の架け橋結合で形成できる。その後、RC(O)L等のアシル化剤を用いたジエステル8の部分的、あるいは完全なアシル化によって、アシル化誘導体18を得ることができる。
【0055】
ジエステル化合物5および13の生成に使用できる相間移動触媒の例として、臭化テトラブチルアンモニウムまたはテトラブチルアンモニウムクロリドが掲げられる。
【0056】
化合物7および15で使用できる脱離基の例として、限定的ではないが、塩素、ブロム(臭素)、ヨード、メタンスルホニル、フェニルスルホニルオキシ、p−トシルオキシ、メタンスルホニルオキシ、アセトキシまたはベンゾイルオキシ等のハロゲンがカカベラレル。
【0057】
中間体のグリシジル・シンナメート化合物3および4は、対応するシンナメート誘導体1または2、およびエピクロルヒドリンあるいは他の適切なエピクロルヒドリンのモル過剰量を含む置換反応によって生成できる(図3)。ジオキサンなどの適切な不活性溶媒の中で、また任意により50℃〜100oCあるいは70℃〜95oCの反応温度でおよそ12時間〜18時間、触媒の存在下でその反応を誘導する。
【0058】
置換基R1、R2およびR3は、置換基R7、R6、R5とそれぞれ同じである場合、一般式(II)の化合物は、ピジリンなどの第三級アミンの存在下で、ジエステル5を生成するために、シンナミル・ハロゲン誘導体9および化学量論量のグリセロールを含む反応で調製できる。それは、保護化合物6を得るのにさらにアルキル化あるいはエステル化することが可能である(図4)。
【0059】
一般式(II’)の化合物を調製するには、変数R4がHであり、また変数R1、R2およびR3はR7、R6、R5とそれぞれ同等であり、ジエステル化合物16を生成するための触媒量のピリジンの存在下でメチルグリコールでシンナミル・ハロゲン誘導体9と反応させることができる。
【0060】
シンナミル・ハロゲン化誘導体9または10は、約15−20分間室温でジオキサン等の適切な溶媒で、塩化チオニルなどのチオニルハライドで、桂皮酸を反応させて調製できる。
【0061】
ジエステル誘導体5、8、13および16を形成するための反応は、ピリジンの存在下で通常実行され、およそ20−30分間で反応可能である。反応終了後、反応混合物は重曹または他の適切な中和剤で中和される。それから、反応混合物をろ過し、最終化合物を、酢酸エチルまたは酢酸エチルとシクロヘキサンの混合物の結晶化の後、有機層を減圧乾燥させて単離する。
【0062】
図5および図6は、珪皮酸1または2の異なる三置換誘導体を生成するための合成反応概略の実施例を説明する。本合成反応概略には、没食子酸メチル21を生成するために、没食子酸20のエステル化をまず取り入れており、保護誘導体22を生成するのにパラ配置で選択的にベンジル化される。ハロゲン化アルキルRXの2つの等価物で誘導体22のアルキル化は、ジアルキル化エステル23を得て、その後フェノール誘導体24を生成するのに、水素化分解する。ピリジニウム塩化クロム(PCC)で生じるアルキルアルコールの部分酸化に続いて、水素化アルミニウムリチウム(LAH)を用いてフェノール24を還元した結果、アルデヒド25を形成し、桂皮酸誘導体26を生成するのに、ピリジン中のマロン酸およびピペリジンと反応する。
【0063】
あるいは、没食子酸メチル21は直接還元でき、そのようにして得られたメチルアルコールはPCCで部分酸化してアルデヒド27を得て、次いで桂皮酸誘導体26を生成するためのピリジン中のマロン酸およびピペリジンと反応させる。
【0064】
他の実験例では、ハロゲン化アルキルRXの1つの等価物で誘導体22をアルキル化して、モノアルキル化エステル29を得て、次いでベンジル保護基を取り除くため水素化分解する。
【0065】
図6は、モノアキレル化、ジアキレル化、トリアルキル化の誘導体を生成するための合成スキームの実例を示している。合成スキームは、正当な1、2あるいは3で没食子酸メチル21の第一印象を含んでいる。モノにアルキル化されたエステル32、ジにアルキル化されたエステル35およびトリにアルキル化されたエステル38を生産するためにテトラブチルアンモニウム(tetrabutylammonium)ヨウ化物およびK2CO3がある状態でハロゲン化アルキルRXにそれぞれ。その後、本エステルは、アルデヒド33、36、39をそれぞれ形成するためPCCで部分酸化したそれぞれのアルコールを生成するため、LAHで還元され、それからアルキル化桂皮酸誘導体34、37、40を生成するため、ピリジン中のマロン酸およびピペリジンに反応させる。
【0066】
図7は、モノを生産する合成計画の例およびモノヒドロキシル化した、またジヒドロキシル化した珪皮酸(44、46および50)を生成するための合成スキーム実施例を説明している。カフェ酸41は、カフェ酸メチルエステル42を生成するために、まずMeOH中でエステル化する、その後、モノ‐アルキル化中間体43またはジアキレル化中間体45を生成するためTBAIおよびK2CO3の存在下で、アルキル化剤RXを1eqまたは2eqで反応する。エステル43および45は、対応する酸44および46をそれぞれ生成するため、塩基性条件下でそれぞれ加水分解する。
【0067】
ベンゼン環の3位に置換しているアルコキシ基を有するカフェ酸誘導体を生成するため、フェニル環のパラの位置に置換基を有するベンジルオキシ基を有する保護誘導体47を得るため、エステル42をハロゲン化ベンゾイル1eqでまず保護し、さらにモノ‐アルキル誘導体48を生成するために、ハロゲン化アルキル1eqで反応させる。誘導体48脱保護によって、フェニル環のパラの位置に置換基を有する遊離ヒドロキシル基およびフェニル環の3位に置換しているアルコキシ基を有しているエステル49を生成する。結果として、塩基性条件下でのエステル49の加水分解によってカルボン酸50を生成する。
【0068】
図8では、3、5−ジヒドロキシケイ皮酸のアルキル化誘導体を生成する合成スキームを例示している。例示されている合成スキームでは、3、5−ジヒドロキシケイ皮酸51を、3、5−ジヒドロキシケイ皮酸メチルエステル52を生成するため、MeOH内で最初にエステル化する。それから、モノアルキル化中間体53またはジアルキル化中間体を生成するため、TBAIおよびK2CO3の存在下でアルキル化剤RX1〜2eqで反応させる。および、エステル53および55を、対応する酸54および56をそれぞれ生成するために塩基性条件下で、加水分解する。
【0069】
同様に、m−またはp−クマル酸のモノアルキル化誘導体は、クマル酸メチルエステルを生成するのに、MeOH中のクマル酸をエステル化することにより生成でき、その後、モノアルキル化中間体を生成するためにアルキル化剤で反応させる。この中間物は、対応するアルキル化された誘導体を生産するのに塩基性条件下で加水分解される。
【0070】
図9〜図11は、ジエステル5および13の異なる保護誘導体を形成するための合成スキーマを例示している。図9を参照すると、シアル化フェノール残基を有するジエステル誘導体の合成スキームを例示しており、TBS−エーテル60を形成するためtert−ブチルジメチルシリル基でジエステル5の第二級ヒドロキシル基をまず保護し、次にアシル化保護誘導体61を形成するため、ハロゲン化アシルなどのアシル化剤で遊離ヒドロキシル基でアシル化することが示されている。それから、TBS基はアルコール62を生成するためテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)で取り除かれ、さらにアシル化アルキルエーテル63を得るため、アルキル化が可能である。
【0071】
図10に例証された別の例において、TBSのエーテル60のフェノール性水酸基は一つ以上の自由なフェノール性水酸基があるTBSエーテル61aを形成するために部分的にアシル化される。TBAFでのTBSエーテル61a脱保護の後、得られたアルコール62aのフェノール性ヒドロキシル基は、遊離第二級ヒドロキシル基を有する、トリチル化誘導体62bを形成させるため、トリチル基−Clで選択的に保護される。および、アルコール62bは部分的にアシル化されたアルキル・エーテル63aを得るためさらにアルキル化できる。
【0072】
11に例証されたさらに次の例において、自由なフェノール性水酸基およびジエステル5の第二アルコール基は、ハロゲン化アシルのようなアシル化剤を使用してアシル化することができる。あるいは、第2水酸基がある誘導体70を形成するために、ジエステル5のフェノール性水酸基は、トリチル基−Clで選択的に防御されるかもしれない。またはアルキル化されて、アルコール70のアルキル化あるいはアシル化で、誘導体72をアシル化した。
【0073】
限定的な例を示す。
【実施例】
【0074】
[例1:グリシジルシンナメートの調製(130)]
【化19】
脱イオン水50mLに溶解し、50℃〜60℃に加熱した水酸化カリウム5.66g(0.10モル)に、珪皮酸15g(0.10モル)を攪拌しながら加えた。結果として生じた反応スラリーを、40℃〜50℃で真空オーブンで乾燥させ、カリウム・シンナメート(110)を得た。
【0075】
[カリウム・シンナメート(110)を生成するための別の方法]
約30℃の珪皮酸(110,15g;0.10モル)のTHF溶液(150mL)に、粉砕したばかりの珪皮酸ペレットの粉末5.66g(0.10モル)を加え、カリウム・シンナメート(110)の白降汞を得た。この白降汞を濾過し、真空乾燥器内で40℃〜50℃で乾燥させた。
【0076】
カリウム・シンナメート(110;5.3g;0.028モル)および触媒量の臭化テトラブチルアンモニウム(0.85g;2.7ミリモル)を、撹拌機および還流アセンブリを備えた反応槽にエピクロロヒドリン50g(0.54mol)(120)に加え、95℃〜105℃で熱し、60分間反応させ混合物を生成させた。さらに、その混合物を室温まで冷まし、クロロホルム55mLで希釈し、ろ過して、固体沈殿を取り除いた。有機物の濾液を、順次5%のNaHCO3(炭酸水素ナトリウム)および脱イオン水で洗浄し、結果として生じた有機層を、30°〜40°で減圧蒸留し、グリシジルシンナメート(130)を得た。
【0077】
[例2: (E)−3−(シンナモイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリレート(ID)の調製]
【化20】
3,4−ジメトキシけい皮酸(140;3.82g;18.37モル)を、ジオキサン60mLで溶解し、還流させた(60℃〜70℃)。触媒量の臭化テトラブチルアンモニウム(22.5mg;0.7ミリモル)、グリシジルシンナメート1.5g(130)を、3,4−ジメトキシけい皮酸水溶液に順次加えた。結果として生じた混合物を100℃〜105℃で15時間〜16時間攪拌しながら順次加熱し、減圧蒸留させて化合物(Id)を生じさせた。1H-NMR(CD3OD)δ3.81(s,3H),3.83(s,3H),4.14(m,1H),4.27(d,4H,J=8Hz),6.42(d,1H,J=16Hz),7.64(d,1H,J=16Hz),7.15(dd,1H,J=8Hz,2Hz),6.92(d,1H,J=8Hz),7.18(d,1H,J=2Hz),6.53(d,1H,J=16Hz),7.70(d,1H,J=16Hz),7.35(m,3H),7.56(m,2H)
【化21】
【表1】
【0078】
[例3: (E)−オキシラン−2−イルメチル(3−(3,4−ジメトキシフェニル)(170)の調製]
【化22】
脱イオン水30mLに溶解し、50℃〜60℃で加熱した水酸化カリウム5.0g(0.24モル)に、3,4−ジメトキシけい皮酸1.34g(0.024モル)(140)を攪拌しながら加えた。結果として生じた反応スラリーを、40℃〜50℃で真空オーブンで乾燥させ、3,4−ジメトキシけい皮酸(160)を得た。
【0079】
カリウム3、4‐ジメトキシ・シンナメート(160;11.83g;0.048モル)および触媒量の臭化テトラブチルアンモニウム0.772g(0.0024ミリモル)を、撹拌機および還流アセンブリを備えた反応槽にエピクロロヒドリン55.32g(0.60mol)(120)に加え、85℃〜95℃に熱し、60分間反応させ混合物を生成した。それから混合物は、室温まで冷まし、個体沈殿物を取り除くためにろ過して、真空中で乾燥させ、化合物170を生じさせた。
【0080】
[例4:(E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル・クロリド(180)の調製]
【化23】
反応槽に入った乾燥させた塩化チオニル(SOCl2)5mLに、3,4−ジメトキシけい皮酸4g(19ミリモル)(140)と乾燥させたN’N’−ジメチルホルムアミド50μLを少しずつ加えた。反応槽の中身を、10分〜15分間室温で順次混ぜ合わせ、結果的に生じた生成物を、30℃〜40℃で真空内乾燥させ、(E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイルクロリド(180)を生じさせた。
【0081】
[例5: (E)−2−(シンナモイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリレート(Id’)の調製]
【化24】
3,4−ジメトキシ塩化シンナモイル(180;2.5g;11ミリモル)を、ジオキサン20mLに溶解し、触媒量の臭化テトラブチルアンモニウム(250mg)およびグリシジルシンナメート1.33g(6.5ミリモル)(130)を順次加えた。結果として生じた混合物を90℃〜95℃の温度で16〜17時間攪拌しながら順次加還流させ、減圧蒸留させて化合物(Id’)を生じさせた。
【0082】
例6: カフェオイルクロリドの調製(200)
【化25】
カフェ酸500mgを(190)は室温で乾燥させたジオキサン12mLに溶解し、次に、(塩化チオニル)600μLを約20分間でゆっくりと混ぜ合わせ、カフェオイルクロリド(200)を含んだ反応混合物を作った。
【0083】
[例7: (2E,2’E)−2−ヒドロキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(3、4−ジヒドロキシフェニル)アクリレート(IIb)の調製]
【化26】
例6の未処理の反応混合物に、無水グリセロール248mg(1.39ミリモル)と触媒量のピリジン(300μL)を加えた。その混合物を30分〜40分間攪拌し、およびNaHCO3(炭酸水素ナトリウム)約1.0gおよびメタノール酢酸エチル(50:50)を加えた。さらに室温で約30分間攪拌し、反応混合物をろ過し、溶媒を取り除いた。および、反応混合物を約60℃で減圧乾燥させた。乾燥させた物質を、酢酸エチル50mLに溶かし、ギ酸アンモニウム100mL、pH3.7で3回洗浄した。洗浄した有機層をNa2SO4上で乾燥させ、減圧下に置き、化合物(IIb)を得た。それから、化合物(IIb)を酢酸エチルおよびシクロヘキサンの混合物から再結晶させた。1H-NMR(CD3OD)d4.15(s,3H),3.83(s,3H),6.32(m,1H),4.27(d,4H,J=8Hz),6.42(d,1H,J=16Hz),7.60(d,1H,J=16Hz),6.95(dd,1H,J=8Hz,2Hz),6.77(d,1H,J=8Hz),7.05(d,1H,J=2Hz),6.53(d,1H,J=16Hz),7.70(d,1H,J=16Hz),7.35(m,3H),7.56(m,2H)
【化27】
【表2】
【0084】
[例8: カリウム3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートの調製(200)]
【化28】
水酸化カリウム水溶液15mL(0.002mM)に、クマル酸5g(30ミリモル)をゆっくり加え、混ぜ合わせた。得られたクマル酸カリウム(200)は、30℃〜40℃で真空乾燥した。
【0085】
[例9: (E)−3−((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート(IIc)の調製]
【化29】
オキシラン−2−イルメチル(3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリレート1.5g(5.68ミリモル)(170)溶液に、乾燥させたジオキサンの30mLを溶解し、ジオキサン20mLで溶解したクマル酸カリウム2.29g(11.36ミリモル)と触媒量の臭化テトラブチルアンモニウム100mgを加え、得られた混合物を16〜18時間、105〜110℃の温度まで熱し、自エステル(IIc)を生成した。
【0086】
[例10: (E)−3−(シンナモイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)アクリレート(Ie)の調製]
【化30】
カフェ酸(41;18.02g;0.10モル)をTHF(180mL)に約30℃で攪拌溶解させて10%溶液を得た。粉砕されたばかりの珪皮酸ペレットの粉末(4.00g;0.10モル)をカフェ酸溶液に加え、カフェ酸ナトリウム(sodiumcaffeate)(210)の白色固体を生成し、濾過し、減圧下で乾燥させた。
【0087】
60℃〜70℃のカフェ酸ナトリウム(210;7.35ミリモル)のDMSO溶液(20mL)にグリシジル・シンナマート(130;7.35ミリモル)を加えた。
このようにして得られた混合物を60℃〜75℃に加熱して22時間〜24時間連続攪拌し、次いで、減圧下で蒸留して化合物(Ie)を得た。1H-NMR(CD3OD)84.16(s,1H),2.28(s,4H),6.29(d,1H,J=16Hz),6.65(d,1H,J=16Hz),6.75(d,1H,J=8Hz),6.93(1H,dd,J=8,2Hz),7.03(d,1H,J=2Hz),7.37(m,1H),7.38(m,1H),7.55(m),7.59(d,1H,J=16Hz),7.72(d,1H,J-16Hz).
【化31】
【0088】
[抗癌作用]
本発明で調製した化合物は、ヒトB−16メラノーマ細胞株に対して優れたin vitro抗癌作用を示した。細胞株は、10%FCSと0.1%重炭酸ナトリウムと12mMグルタミンとで補充されたEMEM培地内で維持した。一般的な処理手順では、培地90μLの96ウェルプレートのそれぞれに1×104細胞を播種した。細胞接着を可能にするために上記プレートをCO2存在下で24時間インキュベートした。24時間後、試験化合物を、5段階の10倍希釈液(1:10、1:100、1:1000、1:10000、および1:100000)で評価した。各試験ウェルに試験化合物溶液100μLを加え、対照ウェルにビヒクルを含有する培地を加え、これらのプレートをさらにインキュベートした。24時間のインキュベーション後、10μLの[3H]−チミジンを加えて10μCi濃度/ウェルとし、さらに24時間インキュベートした。プレートを終了し、細胞を採取し、マクロベータ(Microbeta)プレートリーダーで測定した。このようにしてられた結果を表1に示す。
【0089】
[表1 B−16メラノーマ細胞株での本発明の化合物のEC50値(μM)]
【表3】
[本発明の抗癌化合物のMTT(細胞増殖および細胞生存)分析]
【0090】
ヒト正常線維芽細胞株(GM9503およびGM8399)とヒト癌細胞株(MCF-7、A549、HCT116、SKOV-3およびPC-3)を10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)に保持した。また、マウス白血病MDAY−D2細胞を5%FBSを補充したPRMI1640に保持した。全ての培地にストレプトマイシン2000単位/mLおよびペニシリン100μg/mL(いずれもユタ州ローガンのHyclone社製)を補充した。5%CO2を含む加湿空気雰囲気中で細胞を37℃でインキュベートした。
【0091】
細胞の成長および生存を3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)還元アッセイを用いて計測した。MTT試薬(ミズーリ州セントルイス、Sigma社)をddH20で5mg/ml(5倍希釈)に調製し、濾過滅菌し、−20℃の暗所に保存した。
【0092】
1ウェル当たりの最適細胞数を確認するために、96ウェルプレート内の細胞密度を増やしながら調べる事前実験を行った。細胞を種々の密度で播種し、96時間後に顕微鏡下で調べた。これらの実験および成長曲線分析に基づいて細胞株ごとに最適細胞密度を選択した。簡単に記載すると、増殖細胞を採取し、約2000細胞を含む細胞懸濁液100μLを96ウェル微量定量プレートに入れた。細胞を接着させるために24時間培養後、5%FBC補充培地(60μL/ウェル)内にて種々濃度の試験サンプルで細胞を処理し、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。MTT補充3時間後に、スペクトラマックスプラス(SpectramaxPlus)384プレートリーダーを用いて生成量のホルマザンの570nmの吸光度を測定した。
【0093】
成長および生存に対する新規化合物の効力を評価するために、96ウェルプレートの補充培地に、GM9503(ヒト正常線維芽細胞、2.08×103細胞/ウェル)、GM8599(ヒト正常線維芽細胞、2.05×103細胞/ウェル)、HCT116(ヒト大腸癌細胞、2.019×103細胞/ウェル)、MFC−7(ヒト乳癌細胞、2.19×103細胞/ウェル)、SKOV−3(ヒト卵巣癌細胞、2.10×103細胞/ウェル)、PC−3(ヒト前立腺癌細胞、2.08×103細胞/ウェル)、およびMDAY−D2(マウス白血病細胞、2.5×103細胞/ウェル)を播種した。播種から24時間後に、5%FBS(コントロールとして)を補充したDMEMまたは高濃度の化合物(lib)、(Ie)および(Id)を補充したDMEMで細胞を処理した。72時間培養した後、細胞の成長と生存を測定した。各化合物を3回ずつ試験した。表2〜表4に記載されているデータは、培地対照と比較された生細胞の平均値である。
【0094】
表2 In-Vitroでの癌細胞の阻害、比較EC50(μΜ)
【表4】
【0095】
表3 In-Vitroでの癌細胞の阻害、比較IC50μM
【表5】
【0096】
表4 In-Vitroでのヒト正常線維芽細胞における本発明の化合物の比較毒性(IC50,μM)
【表6】
【0097】
表4に示されるように、ヒト正常線維芽細胞株では、タキソールは化合物(IIb)、(Ie)、および(Id)よりも毒性が高い。
【0098】
抗癌化合物の治療指数は、化合物の正常細胞における毒性と癌細胞における増殖抑制効果を比較するものであり、抗癌化合物の安全性の目安である。特定の抗癌化合物の、正常ヒト細胞株におけるIC50値とヒト癌細胞株におけるIC50値の比率は、当該抗癌化合物の安全性および選択性に関する比較情報となる。表5記載の治療指数値は、パクリタクセル(承認抗癌剤)と比較して化合物(Ib)、(Ie)、および(Id)は、治療指数が大きく、したがって毒性が低いことを示している。適切な抗癌治療は、抗腫瘍細胞毒性だけでなく、健康な正常細胞に対して許容毒性であることも必須であるので、上記結果は有意義である。
【0099】
表5 本発明の抗癌化合物の治療(安全)指数*
【表7】
【0100】
[作用機序]
ヒト大腸癌細胞株HCT116を化合物IIb、Ie、Idで処理し、細胞死の機序を確認するために一定期間にわたって観察した。実験は以下のように実施した。
【0101】
HCT116細胞を播種し、各化合物で処理した。各時間点で、生きた細胞を63X(ニュートラル)で撮像した後、固定した。時間点は、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間であった。
【0102】
化合物で処置された細胞は、アポトーシス中に通常見られる特徴的な膜ブレブ形成形態を示す(図12〜図15参照)。化合物IIbが最も攻撃的であり、化合物Ieと化合物Idがこれに続くように見える。4時間で各ウェル内の少数の細胞が膜ブレブ形成を呈し、6時間点および8時間点において初期細胞集団の多くがアポトーシスに陥いっているように見える。10時間点および12時間点の生細胞は、2時間点および4時間点と比較して著しく少ないが、16時間点では細胞集団が若干増加しているように見える。これは、この時間点における細胞集団倍加によって引き起こされた可能性がある。
【0103】
本願に開示された本発明の実施形態は、本発明の基本原理を例示したものであると理解されるべきである。採用され得る他の変更形態も本発明の範囲内である。したがって、限定的にではなく一例として、本発明の代替構成を本明細書の教示に従って利用することもできる。したがって、本発明は、図示および説明されている通りの態様に限定されるものではない。
【0104】
本願で引用されている特許、特許出願、および刊行物はいずれも参照によって、あたかも個々の特許、特許出願、および刊行物がそれぞれ表記されているかのように、その全体が本願に実際に組み込まれているものとする。
【0105】
[参考文献]
【表8A】
【表8B】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌を治療するための治療薬に関する。より詳細には、本発明は癌を治療するためのプロパン・ジイル・ジシンナメート誘導体およびその調製法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関(WHO)によれば、2000年の世界の全死亡者は約5600万人で、そのうちの12%は悪性腫瘍が死因であった。詳細には、男性530万人および女性470万人が悪性腫瘍を発症し、合わせて620万人がこの病気で死亡した。この報告書では、癌が発展途上国で大きな公衆衛生問題として浮上してきていることも明らかとされ、その影響は先進国に匹敵する。
【0003】
過去20年で大きな前進があったとはいえ、従来の療法では効果不十分であったり、まったく効果が得られない癌が多く残っている。これら治療法に共通する主な問題は認容できない毒性である。
【0004】
したがって、癌の発生を予防するための、または、既に悪性新生物が発生している場合には、宿主生物を無癌状態にするか、命に別状ないレベルまで腫瘍細胞量を減らすか、または、少なくとも併用療法の使用を容易にするための、新規な化合物、医薬品、または方法が必要とされている。
【0005】
本質的に、癌等の腫瘍は、細胞再生と細胞死の間の微妙な調和が崩れた状態での不適切な細胞の蓄積と考えられる。悪性新生物が発生する場合、細胞再生の増加、細胞死の減少、またはその両方が生じているはずである。この関係の当然の帰結として、宿主生物の有利(したがって、腫瘍の不利)に上記プロセスに影響を及ぼす薬剤が潜在的な抗新生物薬ということになる。
【0006】
抗新生物剤の中には天然源から単離および特定されているものもある。例えば、一般にウコンと呼ばれる植物ウコン由来のポリフェノールであるクルクミン(ジフェルロイルメタン)は、この50年以上にわたって広範囲に研究され、このポリフェノールが癌予防と癌治療の両方が可能であることが示されている。具体的には、これら一連の研究により、乳癌、大腸癌、急性骨髄白血病、基底細胞癌、黒色腫、前立腺癌を含む様々な腫瘍細胞の増殖をクルクミンが抑制することが証明されている(1−7)。その優れた薬理学的安全性にもかかわらず、投与量での全身吸収性の低さおよび代謝作用の高さより、この化合物の抗癌剤としての効果は制限されてきた。
【0007】
カフェ酸フェニルエステル(CAPE)と して識別される、ミツバチの巣材であるプロポリスの特定成分が、多形成膠芽腫(GBM−18)、結腸腺癌(HT−29)及びメラノーマ(HO−1)細胞を含むヒト腫瘍細胞、ならびに、バイタル転換及び発癌転換げっ歯類細胞の増殖を選択的に抑制することが実証されている。これらの研究は、CAPEおよび他のいくつかのカフェ酸エステルがアゾキシメタン誘導性コロニー前癌性病変およびオルニチン脱炭素酵素、タンパク質チロシンキナーゼ、大腸発癌と関連するリポキシゲナーゼの活性を阻害することも示している(8−13)。
【0008】
CAPEとクルクミノイドは別々の天然資源に由来するものであるが構造的類似性があり、これがその抗癌特性、少なくともその安全性と選択性、を明らかにすると考えられる。抗癌特性に関する上記構造的類似性の意味は現時点では不明である。
【0009】
新しい抗新生物剤開発のための取り組みの1つは、癌に対して選択的であり、生物学的環境において安定であり、癌に対する効力を継続的に維持し、全体として低毒性の新規な化合物を合成することである。
【0010】
Banskotaらは、オランダ産プロポリスのメタノール抽出物から、桂皮酸誘導体、カフェ酸ベンジル、カフェ酸フェネチルおよびカフェ酸シンナミル、またジシンナメート化合物(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート)および(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートを単離した(JournalofEthnopharmacology(2002),80(1),67-73)。
カフェ酸ベンジル、カフェ酸フェネチル、およびカフェ酸シンナミルは、B16−BL6に対してそれぞれEC50値が2.03μM、3.16μM、1.92μMであった。
ジシンナメート化合物(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートおよび(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートは、同一細胞株に対してそれぞれ81.9μMおよび66μMという中度のEC50を示した。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、癌を治療するための治療薬に関する。より詳細には、本発明は癌を治療するためのプロパン・ジイル・ジシンナメート誘導体およびその調製法に関する。
【0012】
一態様において、本発明は、式(I)または式(I’)
【化1】
[式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R3およびR4は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R6は、H、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩
(但し、(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−メトキシフェニル)アクリレート;または
(E)−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)−2−ヒドロキシプロピル3−(4−メトキシフェニル)アクリレート、
ではない化合物または製薬上許容されるその塩)
を提供する。
【0013】
別態様において本発明は、式(II)または式(II’)
【化2】
[式中、R1,R2,R3,R4,R5,R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩
(但し、(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートおよび(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートではない化合物または製薬上許容されるその塩)
を被験者に投与することを含む、被験者の癌を治療する方法を提供する。
【0014】
さらに別態様において、本発明は、以下の式
【化3】
[式中、R1およびR2がいずれもアルコキシである]
で示される中間体を提供する。
【0015】
本発明の上記及びその他の特徴は、添付図面を参照する以下の説明から更に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】式(II)のジエステル化合物を製造するための合成スキームの例を示す。
【図2】式(II’)のジエステル化合物を製造するための合成スキームの例を示す。
【図3】グリシジジル皮酸エステル誘導体を製造する方法の例を示す。
【図4】対称的な終わりのある式(II)および式(II’)のジエステル化合物を製造するための合成スキームの例を示す。
【図5】本発明の化合物を構成する中間体の三置換誘導体の例を示す。
【図6】本発明の化合物を構成する中間体の三置換誘導体の例を示す。
【図7】本発明の化合物を構成する中間体の二置換誘導体の例を示す。
【図8】本発明の化合物を構成する中間体の二置換誘導体の例を示す。
【図9】式(II)のジエステル化合物を製造するための合成スキームの例を示す。
【図10】式(II)のジエステル化合物を製造するための合成スキームの例を示す。
【図11】式(II)のジエステル化合物を製造するための合成スキームの例を示す。
【図12】化合物で処理を行わなかったヒト大腸癌細胞株HCT116の顕微鏡写真を示す(コントロール)。
【図13】30μM化合物(lib)で処理した後のヒト大腸癌細胞株HCT116の顕微鏡写真を示す。
【図14】30μM化合物(le)で処理した後のヒト大腸癌細胞株HCT116の顕微鏡写真を示す。
【図15】30μM化合物(ld)で処理した後のヒト大腸癌細胞株HCT116の顕微鏡写真を示す。
【0017】
本発明は、癌を治療するための治療薬に関する。より詳細には、本発明は癌を治療するためのプロパン・ジイル・ジシンナメート誘導体およびその調製法に関する。
【0018】
一態様において本発明は、式(I)または式(I’)
【化4】
[式中:R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R3およびR4は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R5は、H、OH、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R6は、H、またはアルコキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩
(但し、上記化合物は
(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル 3−(4−メトキシフェニル)アクリレート、または
(E)−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)−2−ヒドロキシプロピル3−(4−メトキシフェニル)アクリレートではない化合物である)
を提供する。
【0019】
上記化合物の式(I)または式(I’)の一例において、R1およびR2はいずれも、OH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである。
【0020】
より詳細には、本発明は、式(Ia)または式(Ia’)
【化5】
[式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R4は、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R6は、H、またはアルコキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩を提供する。
【0021】
上記式(Ia)または式(Ia’)の化合物の一例において、R1およびR2はいずれもOH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである。
【0022】
別の例において、本発明は、上記式(I)、(Ia)、(I’)および(Ia’)[式中、R1およびR2はいずれもOHまたはアルコキシである]で示される化合物に関する。
【0023】
また、本発明は、上記式(I),(Ia),(I’)および(Ia’)[式中、R4はHまたはOHである]で示される化合物に関する。
【0024】
また、本発明は、式(Ib)または式(Ib’)
【化6】
[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R6は、H、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩、に関する。
【0025】
例において、本発明は、式(Ic)または式(Ic’)
【化7】
[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R4は、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩に関する。
【0026】
より詳細には、本発明は、式(Id)、(Ie)、(If)、(Ig)、(Ih)、(Ii)、(Ij)、(Id’)、(Ie’)、(If’)、(Ig’)、(Ih’)、(Ii’)、(Ij’):
【化8A】
【化8B】
で示される化合物に関する。
【0027】
第2の態様において、本発明は、式(II)または式(II’)
【化9】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩
(但し、上記化合物は、(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートおよび(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート以外の化合物である)
を被験者に投与することを含む、被験者の肺癌、乳癌、大腸癌、前立腺癌、卵巣癌、皮膚癌、または白血病などの癌を治療する方法を提供する。
【0028】
第3の態様において、本発明は、被験者の癌治療用の薬剤を調製するための、式(II)または式(II’)
【化10】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩
(但し、上記化合物は、(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート)および(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート以外の化合物である)
の使用を提供する。
【0029】
本発明の第3の態様による一例において、癌は、肺癌、乳癌、大腸ガン、前立腺癌、卵巣癌、皮膚癌、または白血病である。
【0030】
第4の態様において、本発明は、式(II)または(II’)
【化11】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩
(但し、上記化合物は、(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート)および(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート以外の化合物である)
に癌細胞を接触させることを含む、肺癌細胞、乳癌細胞、大腸癌細胞、前立腺癌細胞、卵巣癌細胞、皮膚ガン細胞、または白血病細胞などの癌を死滅させる方法を提供する。
【0031】
第5の態様において、本発明は、癌を死滅させるための、式(II)または式(II’)
【化12】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである、で示される化合物または製薬上許容されるその塩
(但し、上記化合物は、(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート)および(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート以外の化合物である)
の使用を提供する。
【0032】
本発明の第5の態様による使用の一例において、癌細胞は、肺癌細胞、乳癌細胞、大腸癌細胞、前立腺癌細胞、卵巣癌細胞、皮膚癌細胞、または白血病細胞である。
【0033】
上記方法の一例において、式(II)または式(II’)の化合物のR1およびR2は、いずれもOH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである。
【0034】
より詳細には、本発明は、式(II)または式(II’)の化合物が、式(IIa)または式(IIa’)
【化13】
[式中、R1、R2、R4、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、上記方法または上記使用に関する。
【0035】
本発明は、式(II)または式(II’)の化合物が、式(Ia)または式(Ia’)
【化14】
[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R4は、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R6は、H、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、上記方法または上記使用に関する。
【0036】
本発明はさらに、式(II)または式(II’)の化合物が式(Ic)または式(Ic’)
【化15】
[式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R4は、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、上記方法または上記使用に関する。
【0037】
上記方法または使用の一例において、式(II)、(IIa)、(Ia)、(Ic)、(II’)、(IIa’)、(Ia’)および(Ic’)のR1およびR2が、いずれもOH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである。
【0038】
その他の例において、本発明は、式(II)、(IIa)、(Ia)、(Ic)、(II’)、(IIa’)、(Ia’)および(Ic’)のR1およびR2がいずれもOHまたはいずれもアルコキシである、上記方法または上記使用に関する。
【0039】
本発明はまた、式(II)、(IIa)、(Ia)、(Ic)、(II’)、(IIa’)、(Ia’)および(Ic’)のR4がHまたはOHである、上記方法または上記使用に関する。
【0040】
より詳細には、本発明は、被験者に投与される化合物が、式(Id),(Ie),(If),(Ig)、(IIb)、(IIc)、(IIe)、(Id’)、(Ie’)、(If’)、(Ig’)、(IIb’)、(IIc’)、(IId’)、(IIe’):
【化16A】
【化16B】
で示される化合物またはその組み合わせである、上記方法または上記使用に関する。
【0041】
第6の態様において、本発明は、
式(I)または式(I’)
【化17】
[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R3およびR4は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R6は、H、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物 、または、製薬上許容されるその塩と、
製薬上許容される希釈剤またはキャリアと、
を含む
(但し、上記化合物は、
(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−アセトキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−アセトキシフェニール)アクリレート;または
(E)−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)−2−ヒドロキシプロピル3−(4−メトキシフェニル)アクリレートではない)、
医薬組成物を提供する。
【0042】
第7の態様においては、本発明は、式
【化18】
[式中、R1およびR2はいずれもアルコキシである]
で示される中間体を提供する。
【0043】
また、本発明は、上記化合物と、製薬上許容される希釈剤およびキャリアとを含む、医薬組成物に関する。
【0044】
また、本発明は、一般式(I),(I’),(II)および(II’)の化合物またはその混合物を含む医薬組成物および投薬剤に関する。
【0045】
本願明細書で使用される用語「alkyl(アルキル)」は、1個〜10個、1個〜9個、1個〜8個、1個〜7個、1個〜6個、1個〜5個、1個〜4個、1個〜3個、または1個〜2個の炭素原子を有するアルキル基をはじめとする一般式CnH2n+1の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基のことを言う。アルキル基の例として、限定的ではないが、メチル(基)、エチル(基)、プロピル(基)、イソプロピル(基)およびt−ブチル(基)などが掲げられる。
【0046】
「製薬上許容される塩」とは、対応する遊離基または遊離酸の生物学的効果および特性を維持し、生物学的または他の意味で有害ではない塩のことである。無機塩基由来の塩類として、限定的ではないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム塩等が掲げられる。有機塩基由来の塩類として、限定的ではないが、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、リジン、アルギニン、N−エチルピペリジン、ピペリジンおよびポリアミン樹脂など、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂が掲げられる。
【0047】
本発明の化合物またはそれらに対応する製薬上許容される塩は、経腸投与、非経口投与、または局所投与用の医薬品組成物の形態で使用可能である。
【0048】
無機担体材料だけででなく有機担体材料も担体材料として適している。したがって、例えば、ラクトース、コーンスターチ、またはそれらの誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩類を、タブレット、コーティング錠、糖衣錠、硬ゼラチンカプセルの担体材料として使用できる。ソフトゼラチンカプセルに適した担体材料は、例えば、植物油、ろう状物質、脂質、半個体状および液状のポリオールである(有効成分の性質による。ソフトゼラチンカプセルの場合は担体不要のことがある)。液剤やシロップ剤の製造に適した担体材料は、例えば、水、ポリオール、スクロース、転化糖等である。座薬に適した担体材料は、例えば、天然オイル、硬化油、ろう状物質、脂質、半液体状あるいは液体状ポリオールである。局所用製剤に適した担体材料は、例えば、グリセリド、半合成および合成グリセリド、硬化油、液体ワックス、流動パラフィン、液状脂肪アルコール、ステロール、ポリエチレングリコールおよびセルロース誘導体である。
【0049】
一般式(I),(I’),(II)および(II’)で示されるプロパン・ジイル・ジシンナメート誘導体は、限定的ではないが、癌ならびに腫瘍、炎症およびヒト免疫不全(HIV)などのその他の増殖性疾患の治療、予防、防止に有益である本発明の化合物の抗癌活性は、細胞毒性、増殖防止、細胞周期キナーゼ抑制、あるいは細胞分化に発揮される場合がある。
【0050】
また、本発明は、一般式(I),(I’),(II)および(II’)によって定義されている化合物の調製過程、あるいは混合物、その立体異性体、多形体、製薬上許容されるその塩、製薬上許容される溶媒和物に関する。
【0051】
一般式(II)の化合物は図1および9〜11参照の合成経路に従って生成できる。ジエステル5をさらにアルキル化またはアシル化することによって、誘導体化ジエステル6を生成できる。
【0052】
R4が水素である式(II)の化合物は、架橋結合剤7で桂皮酸誘導体1および2を架橋させてジエステル化合物8を生成することによって生成される。その後、RC(O)L等のアシル化剤を用いたジエステル8の部分的、あるいは完全なアシル化によって、アシル化誘導体17を得ることができる。
【0053】
図2に示されるように、式(II’)の化合物は、相間移動触媒(PTC)の存在下で、桂皮酸誘導体9または10を対応するグリシジル・シンナメート誘導体3または4でエステル化して1,2グリセロール・ジエステル誘導体13を生じ、さらにアルキル化またはアシル化してジエステル14を生成することによって作製できる。
【0054】
R4が水素である式(II)の化合物は、ジエステル化合物16を作るために架橋結合剤15で、桂皮酸酸誘導体1および2の架け橋結合で形成できる。その後、RC(O)L等のアシル化剤を用いたジエステル8の部分的、あるいは完全なアシル化によって、アシル化誘導体18を得ることができる。
【0055】
ジエステル化合物5および13の生成に使用できる相間移動触媒の例として、臭化テトラブチルアンモニウムまたはテトラブチルアンモニウムクロリドが掲げられる。
【0056】
化合物7および15で使用できる脱離基の例として、限定的ではないが、塩素、ブロム(臭素)、ヨード、メタンスルホニル、フェニルスルホニルオキシ、p−トシルオキシ、メタンスルホニルオキシ、アセトキシまたはベンゾイルオキシ等のハロゲンがカカベラレル。
【0057】
中間体のグリシジル・シンナメート化合物3および4は、対応するシンナメート誘導体1または2、およびエピクロルヒドリンあるいは他の適切なエピクロルヒドリンのモル過剰量を含む置換反応によって生成できる(図3)。ジオキサンなどの適切な不活性溶媒の中で、また任意により50℃〜100oCあるいは70℃〜95oCの反応温度でおよそ12時間〜18時間、触媒の存在下でその反応を誘導する。
【0058】
置換基R1、R2およびR3は、置換基R7、R6、R5とそれぞれ同じである場合、一般式(II)の化合物は、ピジリンなどの第三級アミンの存在下で、ジエステル5を生成するために、シンナミル・ハロゲン誘導体9および化学量論量のグリセロールを含む反応で調製できる。それは、保護化合物6を得るのにさらにアルキル化あるいはエステル化することが可能である(図4)。
【0059】
一般式(II’)の化合物を調製するには、変数R4がHであり、また変数R1、R2およびR3はR7、R6、R5とそれぞれ同等であり、ジエステル化合物16を生成するための触媒量のピリジンの存在下でメチルグリコールでシンナミル・ハロゲン誘導体9と反応させることができる。
【0060】
シンナミル・ハロゲン化誘導体9または10は、約15−20分間室温でジオキサン等の適切な溶媒で、塩化チオニルなどのチオニルハライドで、桂皮酸を反応させて調製できる。
【0061】
ジエステル誘導体5、8、13および16を形成するための反応は、ピリジンの存在下で通常実行され、およそ20−30分間で反応可能である。反応終了後、反応混合物は重曹または他の適切な中和剤で中和される。それから、反応混合物をろ過し、最終化合物を、酢酸エチルまたは酢酸エチルとシクロヘキサンの混合物の結晶化の後、有機層を減圧乾燥させて単離する。
【0062】
図5および図6は、珪皮酸1または2の異なる三置換誘導体を生成するための合成反応概略の実施例を説明する。本合成反応概略には、没食子酸メチル21を生成するために、没食子酸20のエステル化をまず取り入れており、保護誘導体22を生成するのにパラ配置で選択的にベンジル化される。ハロゲン化アルキルRXの2つの等価物で誘導体22のアルキル化は、ジアルキル化エステル23を得て、その後フェノール誘導体24を生成するのに、水素化分解する。ピリジニウム塩化クロム(PCC)で生じるアルキルアルコールの部分酸化に続いて、水素化アルミニウムリチウム(LAH)を用いてフェノール24を還元した結果、アルデヒド25を形成し、桂皮酸誘導体26を生成するのに、ピリジン中のマロン酸およびピペリジンと反応する。
【0063】
あるいは、没食子酸メチル21は直接還元でき、そのようにして得られたメチルアルコールはPCCで部分酸化してアルデヒド27を得て、次いで桂皮酸誘導体26を生成するためのピリジン中のマロン酸およびピペリジンと反応させる。
【0064】
他の実験例では、ハロゲン化アルキルRXの1つの等価物で誘導体22をアルキル化して、モノアルキル化エステル29を得て、次いでベンジル保護基を取り除くため水素化分解する。
【0065】
図6は、モノアキレル化、ジアキレル化、トリアルキル化の誘導体を生成するための合成スキームの実例を示している。合成スキームは、正当な1、2あるいは3で没食子酸メチル21の第一印象を含んでいる。モノにアルキル化されたエステル32、ジにアルキル化されたエステル35およびトリにアルキル化されたエステル38を生産するためにテトラブチルアンモニウム(tetrabutylammonium)ヨウ化物およびK2CO3がある状態でハロゲン化アルキルRXにそれぞれ。その後、本エステルは、アルデヒド33、36、39をそれぞれ形成するためPCCで部分酸化したそれぞれのアルコールを生成するため、LAHで還元され、それからアルキル化桂皮酸誘導体34、37、40を生成するため、ピリジン中のマロン酸およびピペリジンに反応させる。
【0066】
図7は、モノを生産する合成計画の例およびモノヒドロキシル化した、またジヒドロキシル化した珪皮酸(44、46および50)を生成するための合成スキーム実施例を説明している。カフェ酸41は、カフェ酸メチルエステル42を生成するために、まずMeOH中でエステル化する、その後、モノ‐アルキル化中間体43またはジアキレル化中間体45を生成するためTBAIおよびK2CO3の存在下で、アルキル化剤RXを1eqまたは2eqで反応する。エステル43および45は、対応する酸44および46をそれぞれ生成するため、塩基性条件下でそれぞれ加水分解する。
【0067】
ベンゼン環の3位に置換しているアルコキシ基を有するカフェ酸誘導体を生成するため、フェニル環のパラの位置に置換基を有するベンジルオキシ基を有する保護誘導体47を得るため、エステル42をハロゲン化ベンゾイル1eqでまず保護し、さらにモノ‐アルキル誘導体48を生成するために、ハロゲン化アルキル1eqで反応させる。誘導体48脱保護によって、フェニル環のパラの位置に置換基を有する遊離ヒドロキシル基およびフェニル環の3位に置換しているアルコキシ基を有しているエステル49を生成する。結果として、塩基性条件下でのエステル49の加水分解によってカルボン酸50を生成する。
【0068】
図8では、3、5−ジヒドロキシケイ皮酸のアルキル化誘導体を生成する合成スキームを例示している。例示されている合成スキームでは、3、5−ジヒドロキシケイ皮酸51を、3、5−ジヒドロキシケイ皮酸メチルエステル52を生成するため、MeOH内で最初にエステル化する。それから、モノアルキル化中間体53またはジアルキル化中間体を生成するため、TBAIおよびK2CO3の存在下でアルキル化剤RX1〜2eqで反応させる。および、エステル53および55を、対応する酸54および56をそれぞれ生成するために塩基性条件下で、加水分解する。
【0069】
同様に、m−またはp−クマル酸のモノアルキル化誘導体は、クマル酸メチルエステルを生成するのに、MeOH中のクマル酸をエステル化することにより生成でき、その後、モノアルキル化中間体を生成するためにアルキル化剤で反応させる。この中間物は、対応するアルキル化された誘導体を生産するのに塩基性条件下で加水分解される。
【0070】
図9〜図11は、ジエステル5および13の異なる保護誘導体を形成するための合成スキーマを例示している。図9を参照すると、シアル化フェノール残基を有するジエステル誘導体の合成スキームを例示しており、TBS−エーテル60を形成するためtert−ブチルジメチルシリル基でジエステル5の第二級ヒドロキシル基をまず保護し、次にアシル化保護誘導体61を形成するため、ハロゲン化アシルなどのアシル化剤で遊離ヒドロキシル基でアシル化することが示されている。それから、TBS基はアルコール62を生成するためテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)で取り除かれ、さらにアシル化アルキルエーテル63を得るため、アルキル化が可能である。
【0071】
図10に例証された別の例において、TBSのエーテル60のフェノール性水酸基は一つ以上の自由なフェノール性水酸基があるTBSエーテル61aを形成するために部分的にアシル化される。TBAFでのTBSエーテル61a脱保護の後、得られたアルコール62aのフェノール性ヒドロキシル基は、遊離第二級ヒドロキシル基を有する、トリチル化誘導体62bを形成させるため、トリチル基−Clで選択的に保護される。および、アルコール62bは部分的にアシル化されたアルキル・エーテル63aを得るためさらにアルキル化できる。
【0072】
11に例証されたさらに次の例において、自由なフェノール性水酸基およびジエステル5の第二アルコール基は、ハロゲン化アシルのようなアシル化剤を使用してアシル化することができる。あるいは、第2水酸基がある誘導体70を形成するために、ジエステル5のフェノール性水酸基は、トリチル基−Clで選択的に防御されるかもしれない。またはアルキル化されて、アルコール70のアルキル化あるいはアシル化で、誘導体72をアシル化した。
【0073】
限定的な例を示す。
【実施例】
【0074】
[例1:グリシジルシンナメートの調製(130)]
【化19】
脱イオン水50mLに溶解し、50℃〜60℃に加熱した水酸化カリウム5.66g(0.10モル)に、珪皮酸15g(0.10モル)を攪拌しながら加えた。結果として生じた反応スラリーを、40℃〜50℃で真空オーブンで乾燥させ、カリウム・シンナメート(110)を得た。
【0075】
[カリウム・シンナメート(110)を生成するための別の方法]
約30℃の珪皮酸(110,15g;0.10モル)のTHF溶液(150mL)に、粉砕したばかりの珪皮酸ペレットの粉末5.66g(0.10モル)を加え、カリウム・シンナメート(110)の白降汞を得た。この白降汞を濾過し、真空乾燥器内で40℃〜50℃で乾燥させた。
【0076】
カリウム・シンナメート(110;5.3g;0.028モル)および触媒量の臭化テトラブチルアンモニウム(0.85g;2.7ミリモル)を、撹拌機および還流アセンブリを備えた反応槽にエピクロロヒドリン50g(0.54mol)(120)に加え、95℃〜105℃で熱し、60分間反応させ混合物を生成させた。さらに、その混合物を室温まで冷まし、クロロホルム55mLで希釈し、ろ過して、固体沈殿を取り除いた。有機物の濾液を、順次5%のNaHCO3(炭酸水素ナトリウム)および脱イオン水で洗浄し、結果として生じた有機層を、30°〜40°で減圧蒸留し、グリシジルシンナメート(130)を得た。
【0077】
[例2: (E)−3−(シンナモイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリレート(ID)の調製]
【化20】
3,4−ジメトキシけい皮酸(140;3.82g;18.37モル)を、ジオキサン60mLで溶解し、還流させた(60℃〜70℃)。触媒量の臭化テトラブチルアンモニウム(22.5mg;0.7ミリモル)、グリシジルシンナメート1.5g(130)を、3,4−ジメトキシけい皮酸水溶液に順次加えた。結果として生じた混合物を100℃〜105℃で15時間〜16時間攪拌しながら順次加熱し、減圧蒸留させて化合物(Id)を生じさせた。1H-NMR(CD3OD)δ3.81(s,3H),3.83(s,3H),4.14(m,1H),4.27(d,4H,J=8Hz),6.42(d,1H,J=16Hz),7.64(d,1H,J=16Hz),7.15(dd,1H,J=8Hz,2Hz),6.92(d,1H,J=8Hz),7.18(d,1H,J=2Hz),6.53(d,1H,J=16Hz),7.70(d,1H,J=16Hz),7.35(m,3H),7.56(m,2H)
【化21】
【表1】
【0078】
[例3: (E)−オキシラン−2−イルメチル(3−(3,4−ジメトキシフェニル)(170)の調製]
【化22】
脱イオン水30mLに溶解し、50℃〜60℃で加熱した水酸化カリウム5.0g(0.24モル)に、3,4−ジメトキシけい皮酸1.34g(0.024モル)(140)を攪拌しながら加えた。結果として生じた反応スラリーを、40℃〜50℃で真空オーブンで乾燥させ、3,4−ジメトキシけい皮酸(160)を得た。
【0079】
カリウム3、4‐ジメトキシ・シンナメート(160;11.83g;0.048モル)および触媒量の臭化テトラブチルアンモニウム0.772g(0.0024ミリモル)を、撹拌機および還流アセンブリを備えた反応槽にエピクロロヒドリン55.32g(0.60mol)(120)に加え、85℃〜95℃に熱し、60分間反応させ混合物を生成した。それから混合物は、室温まで冷まし、個体沈殿物を取り除くためにろ過して、真空中で乾燥させ、化合物170を生じさせた。
【0080】
[例4:(E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル・クロリド(180)の調製]
【化23】
反応槽に入った乾燥させた塩化チオニル(SOCl2)5mLに、3,4−ジメトキシけい皮酸4g(19ミリモル)(140)と乾燥させたN’N’−ジメチルホルムアミド50μLを少しずつ加えた。反応槽の中身を、10分〜15分間室温で順次混ぜ合わせ、結果的に生じた生成物を、30℃〜40℃で真空内乾燥させ、(E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイルクロリド(180)を生じさせた。
【0081】
[例5: (E)−2−(シンナモイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリレート(Id’)の調製]
【化24】
3,4−ジメトキシ塩化シンナモイル(180;2.5g;11ミリモル)を、ジオキサン20mLに溶解し、触媒量の臭化テトラブチルアンモニウム(250mg)およびグリシジルシンナメート1.33g(6.5ミリモル)(130)を順次加えた。結果として生じた混合物を90℃〜95℃の温度で16〜17時間攪拌しながら順次加還流させ、減圧蒸留させて化合物(Id’)を生じさせた。
【0082】
例6: カフェオイルクロリドの調製(200)
【化25】
カフェ酸500mgを(190)は室温で乾燥させたジオキサン12mLに溶解し、次に、(塩化チオニル)600μLを約20分間でゆっくりと混ぜ合わせ、カフェオイルクロリド(200)を含んだ反応混合物を作った。
【0083】
[例7: (2E,2’E)−2−ヒドロキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(3、4−ジヒドロキシフェニル)アクリレート(IIb)の調製]
【化26】
例6の未処理の反応混合物に、無水グリセロール248mg(1.39ミリモル)と触媒量のピリジン(300μL)を加えた。その混合物を30分〜40分間攪拌し、およびNaHCO3(炭酸水素ナトリウム)約1.0gおよびメタノール酢酸エチル(50:50)を加えた。さらに室温で約30分間攪拌し、反応混合物をろ過し、溶媒を取り除いた。および、反応混合物を約60℃で減圧乾燥させた。乾燥させた物質を、酢酸エチル50mLに溶かし、ギ酸アンモニウム100mL、pH3.7で3回洗浄した。洗浄した有機層をNa2SO4上で乾燥させ、減圧下に置き、化合物(IIb)を得た。それから、化合物(IIb)を酢酸エチルおよびシクロヘキサンの混合物から再結晶させた。1H-NMR(CD3OD)d4.15(s,3H),3.83(s,3H),6.32(m,1H),4.27(d,4H,J=8Hz),6.42(d,1H,J=16Hz),7.60(d,1H,J=16Hz),6.95(dd,1H,J=8Hz,2Hz),6.77(d,1H,J=8Hz),7.05(d,1H,J=2Hz),6.53(d,1H,J=16Hz),7.70(d,1H,J=16Hz),7.35(m,3H),7.56(m,2H)
【化27】
【表2】
【0084】
[例8: カリウム3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートの調製(200)]
【化28】
水酸化カリウム水溶液15mL(0.002mM)に、クマル酸5g(30ミリモル)をゆっくり加え、混ぜ合わせた。得られたクマル酸カリウム(200)は、30℃〜40℃で真空乾燥した。
【0085】
[例9: (E)−3−((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート(IIc)の調製]
【化29】
オキシラン−2−イルメチル(3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリレート1.5g(5.68ミリモル)(170)溶液に、乾燥させたジオキサンの30mLを溶解し、ジオキサン20mLで溶解したクマル酸カリウム2.29g(11.36ミリモル)と触媒量の臭化テトラブチルアンモニウム100mgを加え、得られた混合物を16〜18時間、105〜110℃の温度まで熱し、自エステル(IIc)を生成した。
【0086】
[例10: (E)−3−(シンナモイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)アクリレート(Ie)の調製]
【化30】
カフェ酸(41;18.02g;0.10モル)をTHF(180mL)に約30℃で攪拌溶解させて10%溶液を得た。粉砕されたばかりの珪皮酸ペレットの粉末(4.00g;0.10モル)をカフェ酸溶液に加え、カフェ酸ナトリウム(sodiumcaffeate)(210)の白色固体を生成し、濾過し、減圧下で乾燥させた。
【0087】
60℃〜70℃のカフェ酸ナトリウム(210;7.35ミリモル)のDMSO溶液(20mL)にグリシジル・シンナマート(130;7.35ミリモル)を加えた。
このようにして得られた混合物を60℃〜75℃に加熱して22時間〜24時間連続攪拌し、次いで、減圧下で蒸留して化合物(Ie)を得た。1H-NMR(CD3OD)84.16(s,1H),2.28(s,4H),6.29(d,1H,J=16Hz),6.65(d,1H,J=16Hz),6.75(d,1H,J=8Hz),6.93(1H,dd,J=8,2Hz),7.03(d,1H,J=2Hz),7.37(m,1H),7.38(m,1H),7.55(m),7.59(d,1H,J=16Hz),7.72(d,1H,J-16Hz).
【化31】
【0088】
[抗癌作用]
本発明で調製した化合物は、ヒトB−16メラノーマ細胞株に対して優れたin vitro抗癌作用を示した。細胞株は、10%FCSと0.1%重炭酸ナトリウムと12mMグルタミンとで補充されたEMEM培地内で維持した。一般的な処理手順では、培地90μLの96ウェルプレートのそれぞれに1×104細胞を播種した。細胞接着を可能にするために上記プレートをCO2存在下で24時間インキュベートした。24時間後、試験化合物を、5段階の10倍希釈液(1:10、1:100、1:1000、1:10000、および1:100000)で評価した。各試験ウェルに試験化合物溶液100μLを加え、対照ウェルにビヒクルを含有する培地を加え、これらのプレートをさらにインキュベートした。24時間のインキュベーション後、10μLの[3H]−チミジンを加えて10μCi濃度/ウェルとし、さらに24時間インキュベートした。プレートを終了し、細胞を採取し、マクロベータ(Microbeta)プレートリーダーで測定した。このようにしてられた結果を表1に示す。
【0089】
[表1 B−16メラノーマ細胞株での本発明の化合物のEC50値(μM)]
【表3】
[本発明の抗癌化合物のMTT(細胞増殖および細胞生存)分析]
【0090】
ヒト正常線維芽細胞株(GM9503およびGM8399)とヒト癌細胞株(MCF-7、A549、HCT116、SKOV-3およびPC-3)を10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)に保持した。また、マウス白血病MDAY−D2細胞を5%FBSを補充したPRMI1640に保持した。全ての培地にストレプトマイシン2000単位/mLおよびペニシリン100μg/mL(いずれもユタ州ローガンのHyclone社製)を補充した。5%CO2を含む加湿空気雰囲気中で細胞を37℃でインキュベートした。
【0091】
細胞の成長および生存を3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)還元アッセイを用いて計測した。MTT試薬(ミズーリ州セントルイス、Sigma社)をddH20で5mg/ml(5倍希釈)に調製し、濾過滅菌し、−20℃の暗所に保存した。
【0092】
1ウェル当たりの最適細胞数を確認するために、96ウェルプレート内の細胞密度を増やしながら調べる事前実験を行った。細胞を種々の密度で播種し、96時間後に顕微鏡下で調べた。これらの実験および成長曲線分析に基づいて細胞株ごとに最適細胞密度を選択した。簡単に記載すると、増殖細胞を採取し、約2000細胞を含む細胞懸濁液100μLを96ウェル微量定量プレートに入れた。細胞を接着させるために24時間培養後、5%FBC補充培地(60μL/ウェル)内にて種々濃度の試験サンプルで細胞を処理し、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。MTT補充3時間後に、スペクトラマックスプラス(SpectramaxPlus)384プレートリーダーを用いて生成量のホルマザンの570nmの吸光度を測定した。
【0093】
成長および生存に対する新規化合物の効力を評価するために、96ウェルプレートの補充培地に、GM9503(ヒト正常線維芽細胞、2.08×103細胞/ウェル)、GM8599(ヒト正常線維芽細胞、2.05×103細胞/ウェル)、HCT116(ヒト大腸癌細胞、2.019×103細胞/ウェル)、MFC−7(ヒト乳癌細胞、2.19×103細胞/ウェル)、SKOV−3(ヒト卵巣癌細胞、2.10×103細胞/ウェル)、PC−3(ヒト前立腺癌細胞、2.08×103細胞/ウェル)、およびMDAY−D2(マウス白血病細胞、2.5×103細胞/ウェル)を播種した。播種から24時間後に、5%FBS(コントロールとして)を補充したDMEMまたは高濃度の化合物(lib)、(Ie)および(Id)を補充したDMEMで細胞を処理した。72時間培養した後、細胞の成長と生存を測定した。各化合物を3回ずつ試験した。表2〜表4に記載されているデータは、培地対照と比較された生細胞の平均値である。
【0094】
表2 In-Vitroでの癌細胞の阻害、比較EC50(μΜ)
【表4】
【0095】
表3 In-Vitroでの癌細胞の阻害、比較IC50μM
【表5】
【0096】
表4 In-Vitroでのヒト正常線維芽細胞における本発明の化合物の比較毒性(IC50,μM)
【表6】
【0097】
表4に示されるように、ヒト正常線維芽細胞株では、タキソールは化合物(IIb)、(Ie)、および(Id)よりも毒性が高い。
【0098】
抗癌化合物の治療指数は、化合物の正常細胞における毒性と癌細胞における増殖抑制効果を比較するものであり、抗癌化合物の安全性の目安である。特定の抗癌化合物の、正常ヒト細胞株におけるIC50値とヒト癌細胞株におけるIC50値の比率は、当該抗癌化合物の安全性および選択性に関する比較情報となる。表5記載の治療指数値は、パクリタクセル(承認抗癌剤)と比較して化合物(Ib)、(Ie)、および(Id)は、治療指数が大きく、したがって毒性が低いことを示している。適切な抗癌治療は、抗腫瘍細胞毒性だけでなく、健康な正常細胞に対して許容毒性であることも必須であるので、上記結果は有意義である。
【0099】
表5 本発明の抗癌化合物の治療(安全)指数*
【表7】
【0100】
[作用機序]
ヒト大腸癌細胞株HCT116を化合物IIb、Ie、Idで処理し、細胞死の機序を確認するために一定期間にわたって観察した。実験は以下のように実施した。
【0101】
HCT116細胞を播種し、各化合物で処理した。各時間点で、生きた細胞を63X(ニュートラル)で撮像した後、固定した。時間点は、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間であった。
【0102】
化合物で処置された細胞は、アポトーシス中に通常見られる特徴的な膜ブレブ形成形態を示す(図12〜図15参照)。化合物IIbが最も攻撃的であり、化合物Ieと化合物Idがこれに続くように見える。4時間で各ウェル内の少数の細胞が膜ブレブ形成を呈し、6時間点および8時間点において初期細胞集団の多くがアポトーシスに陥いっているように見える。10時間点および12時間点の生細胞は、2時間点および4時間点と比較して著しく少ないが、16時間点では細胞集団が若干増加しているように見える。これは、この時間点における細胞集団倍加によって引き起こされた可能性がある。
【0103】
本願に開示された本発明の実施形態は、本発明の基本原理を例示したものであると理解されるべきである。採用され得る他の変更形態も本発明の範囲内である。したがって、限定的にではなく一例として、本発明の代替構成を本明細書の教示に従って利用することもできる。したがって、本発明は、図示および説明されている通りの態様に限定されるものではない。
【0104】
本願で引用されている特許、特許出願、および刊行物はいずれも参照によって、あたかも個々の特許、特許出願、および刊行物がそれぞれ表記されているかのように、その全体が本願に実際に組み込まれているものとする。
【0105】
[参考文献]
【表8A】
【表8B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)または式(I’)
【化1】
[前記式(I)または式(I’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R3およびR4は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R5はH、OH、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R6は、Hまたはアルコキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩であって、
(前記化合物は、
(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−メトキシフェニル)アクリレート、または
(E)−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)−2−ヒドロキシプロピル−3−(4−メトキシフェニル)アクリレートではない)化合物。
【請求項2】
式(Ia)または式(Ia’)
【化2】
[前記式(Ia)または式(Ia’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシ、
R4はH、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R6はH、またはアルコキシである]
で示される、請求項1に記載の化合物または製薬上許容されるその塩。
【請求項3】
式(Ib)または式(Ib’)
【化3】
[前記式(Ib)または式(Ib’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R6はH、またはアルコキシである]
で示される、請求項1に記載の化合物または製薬上許容されるその塩。
【請求項4】
式(Ic)または式(Ic’)
【化4】
[前記式(Ic)または式(Ic’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R4はH、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される、請求項1に記載の化合物または製薬上許容されるその塩。
【請求項5】
前記R1及び前記R2がいずれもOHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記R4がHである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記R4がOHである、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
前記R3がHである、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
前記R3がHである、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
前記R1及び前記R2がいずれもアルコキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記R4がHである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
前記R4がOHである、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
前記R3がHである、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
前記R3がHである、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
式(Id)または式(Id’)
【化5】
で示される、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
式(Ie)または式(Ie’)
【化6】
で示される、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
式(If)または式(If’)
【化7】
で示される、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
式(Ig)または式(Ig’)
【化8】
で示される、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
式(II)または式(II’)
【化9】
[前記式(II)または式(II’)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩を被験者に投与することを含む癌治療の方法であって、
前記化合物は、(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートおよび(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートではない方法。
【請求項20】
前記化合物が、式(IIa)または式(IIa’)
【化10】
[前記式(IIa)または式(IIa’)中、R1、R2、R4、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記化合物が、式(Ia)または式(Ia’)
【化11】
[前記式(Ia)または式(Ia’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R4はH、OH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシであり、
R6は、H、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物が、式(Ic)または式(Ic’)
【化12】
[前記式(Ic)または式(Ic’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R4はH、OH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
R1及びR2がいずれもOHである、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記R4がHである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記R4がOHである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記R3はHである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記R3がHである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記R1及び前記R2がいずれもアルコキシである、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記R4がHである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記R4がOHである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記R3がHである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記R3がHである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記化合物が、式(Id)または式(Id’)
【化13】
で示される化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項34】
前記化合物が、式(Ie)または式(Ie’)
【化14】
で示される化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
前記化合物が、式(If)または式(If’)
【化15】
で示される化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項36】
前記化合物が、式(Ig)または式(Ig’)
【化16】
で示される化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項37】
前記化合物が、式(IIb)または式(Iib’)
【化17】
で示される化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項38】
前記化合物が、式(IIc)または式(IIc’)
【化18】
で示される化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項39】
式(I)または式(I’)
【化19】
[前記式(I)または式(I’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R3およびR4は独立してH、OH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシであり、
R5は、H、OH、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R6はHまたはアルコキシである]で示される化合物 または製薬上許容されるその塩と、
製薬上許容される希釈剤あるいはキャリアと、
を含む、医薬組成物であって、
前記化合物は(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−メトキシフェニル)アクリレート;または
(E)−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)−2−ヒドロキシプロピル3−(4−メトキシフェニル)アクリレートではない医薬組成物。
【請求項40】
式:
【化20】
[前記式中、R1及びR2はいずれもアルコキシである]
で示される中間体。
【請求項41】
被験者の癌の治療をする薬剤を調製するための、式(II)または式(II’)
【化21】
[前記式(II)または式(II’)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩の使用であって、
前記化合物は、(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートおよび(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート以外の化合物である使用。
【請求項42】
前記化合物が、式(IIa)または式(IIa’)
【化22】
[前記式(IIa)または式(IIa’)中、R1、R2、R4、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記化合物が、式(Ia)または式(Ia’)
【化23】
[前記式(Ia)または式(Ia’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R4はH、OH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシであり、
R6は、H、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項41に記載の使用。
【請求項44】
前記化合物が、式(Ic)または式(Ic’)
【化24】
[前記式(Ic)または式(Ic’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R4はH、OH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項41に記載の使用。
【請求項45】
前記R1及び前記R2がいずれもOHである、請求項41に記載の使用。
【請求項46】
前記R4がHである、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
前記R4がOHである、請求項43に記載の使用。
【請求項48】
前記R3がHである、請求項46に記載の使用。
【請求項49】
前記R3がHである、請求項47に記載の使用。
【請求項50】
前記R1及び前記R2がいずれもアルコキシである、請求項41に記載の使用。
【請求項51】
前記R4がHである、請求項50に記載の使用。
【請求項52】
前記R4がOHである、請求項50に記載の使用。
【請求項53】
前記R3がHである、請求項51に記載の使用。
【請求項54】
前記R3がHである、請求項52に記載の使用。
【請求項55】
前記化合物が、式(Id)または式(Id’)
【化25】
で示される化合物である、請求項41に記載の使用。
【請求項56】
前記化合物が、式(Ie)または式(Ie’)
【化26】
で示される化合物である、請求項41に記載の使用。
【請求項57】
前記化合物が、式(If)または式(If’)
【化27】
で示される化合物である、請求項41に記載の使用。
【請求項58】
前記化合物が、式(Ig)または式(Ig’)
【化28】
で示される化合物である、請求項41に記載の使用。
【請求項59】
前記化合物が、式(IIb)または式(IIb’)
【化29】
で示される化合物である、請求項41に記載の使用。
【請求項60】
前記化合物が、式(IIc)または式(IIc’)
【化30】
で示される化合物である、請求項41に記載の使用。
【請求項61】
癌細胞を死滅させるための、式(II)または式(II’)
【化31】
[前記式(II)または式(II’)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩の使用であって、
前記化合物が、(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートおよび(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート以外の化合物である、使用。
【請求項62】
前記化合物が、式(IIa)または式(IIa’)
【化32】
[前記式(IIa)または式(IIa’)中、R1、R2、R4、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである、
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項61に記載の使用。
【請求項63】
前記化合物が、式(Ia)または式(Ia’)
【化33】
[前記式(Ia)または式(Ia’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R4はH、OH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシであり、
R6はH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項61に記載の使用。
【請求項64】
前記化合物が、式(Ic)または式(Ic’)
【化34】
[前記式(Ic)または式(Ic’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R4はH、OH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項61に記載の使用。
【請求項65】
前記R1及び前記R2がいずれもOHである、請求項61に記載の使用。
【請求項66】
前記R4がHである、請求項65に記載の使用。
【請求項67】
前記R4がOHである、請求項63に記載の使用。
【請求項68】
前記R3がHである、請求項66に記載の使用。
【請求項69】
前記R3がHである、請求項67に記載の使用。
【請求項70】
前記R1および前記R2がいずれもアルコキシである、請求項61に記載の使用。
【請求項71】
前記R4がHである、請求項70に記載の使用。
【請求項72】
前記R4がOHである、請求項70に記載の使用。
【請求項73】
前記R3がHである、請求項71に記載の使用。
【請求項74】
前記R3がHである、請求項72に記載の使用。
【請求項75】
前記化合物が、式(Id)または式(Id’)
【化35】
で示される化合物である、請求項61に記載の使用。
【請求項76】
前記化合物が、式(Ie)または式(Ie’):
【化36】
で示される化合物である、請求項61に記載の使用。
【請求項77】
前記化合物が、式(If)または式(If’)
【化37A】
【化37B】
で示される化合物である、請求項61に記載の使用。
【請求項78】
前記化合物が、式(Ig)または式(Ig’):
【化38】
で示される化合物である、請求項61に記載の使用。
【請求項79】
前記化合物が、式(IIb)または式(IIb’)
【化39】
で示される化合物である、請求項61に記載の使用。
【請求項80】
前記化合物が、式(IIc)または式(IIc’)
【化40】
で示される化合物である、請求項61に記載の使用。
【請求項81】
被験者の癌の治療をするのに薬剤を調製するための、請求項1〜18のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項82】
癌細胞を死滅させるための、請求項1〜18のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項83】
アポトーシスによって癌細胞を死滅させるための、請求項1〜18のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項84】
アポトーシスによって癌細胞を死滅させるための、請求項19〜38のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項85】
前記癌細胞と請求項1〜38のいずれかに記載の化合物とを接触させることを含む、アポトーシスによって癌細胞を死滅させる方法。
【請求項1】
式(I)または式(I’)
【化1】
[前記式(I)または式(I’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R3およびR4は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R5はH、OH、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R6は、Hまたはアルコキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩であって、
(前記化合物は、
(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−メトキシフェニル)アクリレート、または
(E)−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)−2−ヒドロキシプロピル−3−(4−メトキシフェニル)アクリレートではない)化合物。
【請求項2】
式(Ia)または式(Ia’)
【化2】
[前記式(Ia)または式(Ia’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシ、
R4はH、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R6はH、またはアルコキシである]
で示される、請求項1に記載の化合物または製薬上許容されるその塩。
【請求項3】
式(Ib)または式(Ib’)
【化3】
[前記式(Ib)または式(Ib’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R6はH、またはアルコキシである]
で示される、請求項1に記載の化合物または製薬上許容されるその塩。
【請求項4】
式(Ic)または式(Ic’)
【化4】
[前記式(Ic)または式(Ic’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R4はH、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される、請求項1に記載の化合物または製薬上許容されるその塩。
【請求項5】
前記R1及び前記R2がいずれもOHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記R4がHである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記R4がOHである、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
前記R3がHである、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
前記R3がHである、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
前記R1及び前記R2がいずれもアルコキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記R4がHである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
前記R4がOHである、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
前記R3がHである、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
前記R3がHである、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
式(Id)または式(Id’)
【化5】
で示される、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
式(Ie)または式(Ie’)
【化6】
で示される、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
式(If)または式(If’)
【化7】
で示される、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
式(Ig)または式(Ig’)
【化8】
で示される、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
式(II)または式(II’)
【化9】
[前記式(II)または式(II’)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩を被験者に投与することを含む癌治療の方法であって、
前記化合物は、(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートおよび(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートではない方法。
【請求項20】
前記化合物が、式(IIa)または式(IIa’)
【化10】
[前記式(IIa)または式(IIa’)中、R1、R2、R4、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記化合物が、式(Ia)または式(Ia’)
【化11】
[前記式(Ia)または式(Ia’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R4はH、OH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシであり、
R6は、H、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物が、式(Ic)または式(Ic’)
【化12】
[前記式(Ic)または式(Ic’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R4はH、OH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
R1及びR2がいずれもOHである、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記R4がHである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記R4がOHである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記R3はHである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記R3がHである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記R1及び前記R2がいずれもアルコキシである、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記R4がHである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記R4がOHである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記R3がHである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記R3がHである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記化合物が、式(Id)または式(Id’)
【化13】
で示される化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項34】
前記化合物が、式(Ie)または式(Ie’)
【化14】
で示される化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
前記化合物が、式(If)または式(If’)
【化15】
で示される化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項36】
前記化合物が、式(Ig)または式(Ig’)
【化16】
で示される化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項37】
前記化合物が、式(IIb)または式(Iib’)
【化17】
で示される化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項38】
前記化合物が、式(IIc)または式(IIc’)
【化18】
で示される化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項39】
式(I)または式(I’)
【化19】
[前記式(I)または式(I’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R3およびR4は独立してH、OH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシであり、
R5は、H、OH、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R6はHまたはアルコキシである]で示される化合物 または製薬上許容されるその塩と、
製薬上許容される希釈剤あるいはキャリアと、
を含む、医薬組成物であって、
前記化合物は(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−メトキシフェニル)アクリレート;または
(E)−3−(((E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)−2−ヒドロキシプロピル3−(4−メトキシフェニル)アクリレートではない医薬組成物。
【請求項40】
式:
【化20】
[前記式中、R1及びR2はいずれもアルコキシである]
で示される中間体。
【請求項41】
被験者の癌の治療をする薬剤を調製するための、式(II)または式(II’)
【化21】
[前記式(II)または式(II’)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩の使用であって、
前記化合物は、(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートおよび(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート以外の化合物である使用。
【請求項42】
前記化合物が、式(IIa)または式(IIa’)
【化22】
[前記式(IIa)または式(IIa’)中、R1、R2、R4、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記化合物が、式(Ia)または式(Ia’)
【化23】
[前記式(Ia)または式(Ia’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R4はH、OH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシであり、
R6は、H、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項41に記載の使用。
【請求項44】
前記化合物が、式(Ic)または式(Ic’)
【化24】
[前記式(Ic)または式(Ic’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R4はH、OH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項41に記載の使用。
【請求項45】
前記R1及び前記R2がいずれもOHである、請求項41に記載の使用。
【請求項46】
前記R4がHである、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
前記R4がOHである、請求項43に記載の使用。
【請求項48】
前記R3がHである、請求項46に記載の使用。
【請求項49】
前記R3がHである、請求項47に記載の使用。
【請求項50】
前記R1及び前記R2がいずれもアルコキシである、請求項41に記載の使用。
【請求項51】
前記R4がHである、請求項50に記載の使用。
【請求項52】
前記R4がOHである、請求項50に記載の使用。
【請求項53】
前記R3がHである、請求項51に記載の使用。
【請求項54】
前記R3がHである、請求項52に記載の使用。
【請求項55】
前記化合物が、式(Id)または式(Id’)
【化25】
で示される化合物である、請求項41に記載の使用。
【請求項56】
前記化合物が、式(Ie)または式(Ie’)
【化26】
で示される化合物である、請求項41に記載の使用。
【請求項57】
前記化合物が、式(If)または式(If’)
【化27】
で示される化合物である、請求項41に記載の使用。
【請求項58】
前記化合物が、式(Ig)または式(Ig’)
【化28】
で示される化合物である、請求項41に記載の使用。
【請求項59】
前記化合物が、式(IIb)または式(IIb’)
【化29】
で示される化合物である、請求項41に記載の使用。
【請求項60】
前記化合物が、式(IIc)または式(IIc’)
【化30】
で示される化合物である、請求項41に記載の使用。
【請求項61】
癌細胞を死滅させるための、式(II)または式(II’)
【化31】
[前記式(II)または式(II’)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩の使用であって、
前記化合物が、(2E,2’E)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル・ビス(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレートおよび(E)−2−アセトキシ−3−(((E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロピル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート以外の化合物である、使用。
【請求項62】
前記化合物が、式(IIa)または式(IIa’)
【化32】
[前記式(IIa)または式(IIa’)中、R1、R2、R4、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシである、
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項61に記載の使用。
【請求項63】
前記化合物が、式(Ia)または式(Ia’)
【化33】
[前記式(Ia)または式(Ia’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシあり、
R4はH、OH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシであり、
R6はH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項61に記載の使用。
【請求項64】
前記化合物が、式(Ic)または式(Ic’)
【化34】
[前記式(Ic)または式(Ic’)中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、OH、アルコキシ、またはアルキルカルボニルオキシであり、
R4はH、OH、アルコキシまたはアルキルカルボニルオキシである]
で示される化合物または製薬上許容されるその塩である、請求項61に記載の使用。
【請求項65】
前記R1及び前記R2がいずれもOHである、請求項61に記載の使用。
【請求項66】
前記R4がHである、請求項65に記載の使用。
【請求項67】
前記R4がOHである、請求項63に記載の使用。
【請求項68】
前記R3がHである、請求項66に記載の使用。
【請求項69】
前記R3がHである、請求項67に記載の使用。
【請求項70】
前記R1および前記R2がいずれもアルコキシである、請求項61に記載の使用。
【請求項71】
前記R4がHである、請求項70に記載の使用。
【請求項72】
前記R4がOHである、請求項70に記載の使用。
【請求項73】
前記R3がHである、請求項71に記載の使用。
【請求項74】
前記R3がHである、請求項72に記載の使用。
【請求項75】
前記化合物が、式(Id)または式(Id’)
【化35】
で示される化合物である、請求項61に記載の使用。
【請求項76】
前記化合物が、式(Ie)または式(Ie’):
【化36】
で示される化合物である、請求項61に記載の使用。
【請求項77】
前記化合物が、式(If)または式(If’)
【化37A】
【化37B】
で示される化合物である、請求項61に記載の使用。
【請求項78】
前記化合物が、式(Ig)または式(Ig’):
【化38】
で示される化合物である、請求項61に記載の使用。
【請求項79】
前記化合物が、式(IIb)または式(IIb’)
【化39】
で示される化合物である、請求項61に記載の使用。
【請求項80】
前記化合物が、式(IIc)または式(IIc’)
【化40】
で示される化合物である、請求項61に記載の使用。
【請求項81】
被験者の癌の治療をするのに薬剤を調製するための、請求項1〜18のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項82】
癌細胞を死滅させるための、請求項1〜18のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項83】
アポトーシスによって癌細胞を死滅させるための、請求項1〜18のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項84】
アポトーシスによって癌細胞を死滅させるための、請求項19〜38のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項85】
前記癌細胞と請求項1〜38のいずれかに記載の化合物とを接触させることを含む、アポトーシスによって癌細胞を死滅させる方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2013−507327(P2013−507327A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532432(P2012−532432)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001613
【国際公開番号】WO2011/041907
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512092416)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001613
【国際公開番号】WO2011/041907
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512092416)
【Fターム(参考)】
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