説明

発光ダイオード用付加硬化型シリコーン樹脂組成物及び発光ダイオード

【課題】熱衝撃に対して高い耐性を有し過酷な温度サイクル下でもクラックが生じにくいLED用付加硬化型シリコーン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくとも、
(A)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を含有せず、1分子中にアルケニル基を少なくとも2個有する、下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン 100質量部、
SiO(4−a)/2 (1)
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個及びケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも1個有する、下記平均組成式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
SiO(4−b−c)/2 (2)
(C)付加反応触媒 触媒量、
を含有するオルガノポリシロキサン組成物であって、
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、そのケイ素原子に結合した水素原子数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計数1個あたり0.4〜10個となる割合で配合されていることを特徴とする発光ダイオード用付加硬化型シリコーン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光ダイオード(LED)用付加硬化型シリコーン樹脂組成物に関し、特に硬化物が透明で発光ダイオード素子の保護、波長の変更・調整あるいはレンズの構成材料として適し、更に高温/低温の温度サイクル条件下でもクラック耐性が良好な硬化物が得られる付加硬化型シリコーン樹脂材料に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDへの通電・点灯の際には、急激な温度上昇が起こりLED素子は熱衝撃を受けることが知られている。したがって、LED素子の点灯と消灯の繰り返しによりLED素子は過酷な温度サイクルに供されることになる。
【0003】
LED素子の封止材料として、一般的にエポキシ樹脂が用いられている。エポキシ樹脂の弾性率は高いために、ボンディングワイヤーは温度サイクルによるストレスを受け断線したり、エポキシ樹脂にはクラックが発生することがある。またエポキシ樹脂がLEDチップに与えるストレスが原因で、半導体材料の結晶構造が崩れることによる発光効率の低下も懸念される。
その対策として、室温硬化型のシリコーンゴムをバッファー材として使用し、その外側をエポキシ樹脂で封止する方法が定法として定着している。しかしこの方法では、エポキシ樹脂がシリコーン樹脂に接着しないために、やはり温度サイクルによりエポキシ樹脂とシリコーンゴムとの界面で剥離が発生し、光取り出し効率が経時的に極端に低下することが知られている。
【0004】
エポキシ樹脂に替わる材料として、シリコーン樹脂を使用することが提案されている(例えば特許文献1、2及び3等参照)。シリコーン樹脂は耐熱性、耐候性、耐変色性がエポキシ樹脂に比較して優れていることから、近年青色LED、白色LEDを中心に使用される例が増えてきている。
しかし、これらシリコーン樹脂はエポキシ樹脂に比較して弾性率は低いものの、曲げ強度などの機械特性も低いことから、LEDへの通電・点灯の際に生じる熱衝撃によりクラックが発生しやすいという問題を有する。
【0005】
また、特許文献4には、ビニル基と水素を含有するオルガノポリシロキサンとビニル基を含有するオルガノポリシロキサンと白金系触媒からなる液状シリコーン樹脂で封止された光電変換装置が提案されているが、これはビニル基と水素を含有するオルガノポリシロキサンが分岐構造であると共に大量に使用するため、脆くなり耐クラック性に劣ると共に、耐久的な耐候性、耐変色性にも劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−1619号公報
【特許文献2】特開2002−265787号公報
【特許文献3】特開2004−186168号公報
【特許文献4】特開2004−140220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、高透明性に優れ、熱衝撃に対して高い耐性を有し、過酷な温度サイクル下でもクラックが生じ難く、剥離も発生しないLED用付加硬化型シリコーン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも、
(A)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を含有せず、1分子中にアルケニル基を少なくとも2個有する、下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン 100質量部、
SiO(4−a)/2 (1)
(式中、Rは一価有機基を表し、その少なくとも5モル%がフェニル基である。aは1.5〜3.0の数である。)
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個及びケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも1個有する、下記平均組成式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
SiO(4−b−c)/2 (2)
(式中、Rは、置換又は非置換の一価炭化水素基、b及びcは、0<b<3、0<c≦2、かつ0<b+c<4を満足する数である)
(C)付加反応触媒 触媒量、
を含有するオルガノポリシロキサン組成物であって、
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、そのケイ素原子に結合した水素原子数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計数1個あたり0.4〜10個となる割合で配合されていることを特徴とする発光ダイオード用付加硬化型シリコーン樹脂組成物を提供する。
【0009】
このような本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、耐変色性に優れているため高透明性を有しており、熱衝撃に対して高い耐性を有しているため過酷な温度サイクル下でもクラックや剥離が生じ難いものとなる。
【0010】
この場合、前記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、分岐構造を有しない、直鎖状であることが好ましい。
このように、前記(B)成分が分岐構造を有しない直鎖状であれば、前記組成物が耐クラック性により優れたものとなる。
【0011】
また、本発明は、前記組成物の硬化物で封止された発光ダイオードを提供する。
本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、高透明性に優れていると共に、熱衝撃に対して高い耐性を有しているため過酷な温度サイクル下に供されてもクラックや剥離が生じ難いものとなり、その結果、このような本発明の硬化物で封止された発光ダイオードも、有用なものとなる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、硬化物の耐熱衝撃性が高いため、クラックや剥離が生じ難く、また、高透明性に優れる。よって、発光ダイオード素子用の材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物が好適に用いられる発光半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
上述のように、従来用いられてきたLED素子用の封止材料は、特にLEDへの通電・点灯の際に生じる熱衝撃によりクラックが発生しやすいという問題を有しており、過酷な温度サイクル下でもクラックや剥離が生じ難い封止材料が求められていた。
【0015】
そこで本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、架橋剤中に少なくとも1個のアルケニル基を導入することにより、上記課題を達成できることを見出し、LED素子用封止材料として好適な付加硬化型シリコーン樹脂組成物を完成させるに至った。
【0016】
即ち、本発明の発光ダイオード用付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、少なくとも、
(A)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を含有せず、1分子中にアルケニル基を少なくとも2個有する、下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン 100質量部、
SiO(4−a)/2 (1)
(式中、Rは一価有機基を表し、その少なくとも5モル%がフェニル基である。aは1.5〜3.0の数である。)
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個及びケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも1個有する、下記平均組成式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
SiO(4−b−c)/2 (2)
(式中、Rは、置換又は非置換の一価炭化水素基、b及びcは、0<b<3、0<c≦2、かつ0<b+c<4を満足する数である)
(C)付加反応触媒 触媒量、
を含有するオルガノポリシロキサン組成物であって、
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、そのケイ素原子に結合した水素原子数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計数1個あたり0.4〜10個となる割合で配合されていることを特徴とする。
【0017】
以下、本発明の各成分につき、詳細に説明する。
<(A)成分>
(A)成分は、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を含有せず、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサンである。
SiO(4−a)/2 (1)
(式中、Rは一価有機基を表し、その少なくとも5モル%がフェニル基である。aは1.5〜3.0の数である。)
【0018】
(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等の、通常、炭素数2〜8、好ましくは2〜4程度のものが挙げられ、特にビニル基であることが好ましい。
【0019】
(A)成分のポリシロキサン骨格中におけるアルケニル基が結合するケイ素原子の位置としては、例えば、分子鎖末端及び/又は分子鎖途中(分子鎖非末端)が挙げられるが、(A)成分としては、少なくとも分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0020】
尚、(A)成分中のアルケニル基の含有量は、ケイ素原子に結合した一価の有機基(即ち、上記平均組成式(1)において、Rで示される非置換又は置換の一価炭化水素基)全体に対して0.01〜20モル%、特に0.1〜10モル%程度であることが好ましい。
【0021】
(A)成分のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する一価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などの、通常、炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜10程度の、非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基が挙げられる。
【0022】
尚、全Rのうち、フェニル基が5モル%未満である場合、硬化した被覆保護材の耐熱性が悪くなったり低温特性が悪くなり、熱衝撃試験による信頼性の低下を招くため、少なくとも5モル%がフェニル基であることが必要で、好ましくは10モル%以上、特に20モル%以上であることが好ましい。その上限は特に規定されるものではないが、合成のし易さから80モル%以下、特には60モル%以下であることが好ましい。
【0023】
aは1.5〜3.0の正数であり、本成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0024】
この(A)成分であるオルガノポリシロキサンが直鎖状の場合の粘度は、作業性の面から23℃において、0.1〜20Pas、特に0.5〜10Pas程度の範囲であることが好ましい。0.1Pas以上であれば適度な流動性となるため、成形バリなどを大幅に減らすことができ、20Pas以下であれば必要成分混合時に混入した空気の泡も抜け易くなる。尚、分岐鎖状の場合は、分岐の度合いや分子量により固体となることもあるが、その場合は、これを溶融可能な溶媒に溶解させて使用してもよい。
【0025】
<(B)成分>
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(2)で表される。
SiO(4−b−c)/2 (2)
(式中、Rは、置換又は非置換の一価炭化水素基、b及びcは、0<b<3、0<c≦2、かつ0<b+c<4を満足する数である)
【0026】
本発明において使用されるこの(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、架橋剤として作用し、(A)成分中のアルケニル基と付加反応して硬化物を形成するものである。そのために、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいては、1分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子が少なくとも2個必要であり、このような水素原子は、分子末端、分子の途中のいずれのケイ素原子に結合していても差し支えない。
【0027】
また(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、Rの置換又は非置換の一価炭化水素基として、分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有していることが必要である。このようなアルケニル基を分子中に有していることによって、かかるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、それ自身で一部架橋構造を形成することが可能となり、その結果として、本発明の組成物から形成された硬化物中に架橋密度の局在化が生じることにより、熱衝撃に対して高い耐性を有し過酷な温度サイクル下でもクラックの成長が回避されるのである。
【0028】
かかるアルケニル基としては、(A)成分におけるRと同様のビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、スチリル基等の、通常、炭素数2〜8、好ましくは2〜4程度のものが挙げられ、特にビニル基であることが好ましい。これらのアルケニル基は、分子鎖の末端に存在していても良いし、その途中に存在していてもよい。またこのようなアルケニル基が分子中に多数存在することにより得られる硬化物が逆に脆くなってしまうのを防ぐため、好ましくは10個以下、より好ましくは3個以下、特に、該アルケニル基がオルガノハイドロジェンポリシロキサン1分子中に1個存在していることが好適である。
【0029】
また前記Rとして、アルケニル基以外の基としては、(A)成分におけるRと同様の、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などの、通常、炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜10程度の、非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基が挙げられるが、合成が容易なことや、(A)成分との相溶性の観点から、アルケニル基以外の基はメチル基、フェニル基が好ましい。このように(B)成分のRがメチル基であれば、耐熱性により優れた硬化物が得られ、高い屈折率が必要な場合は、フェニル基の使用が効果的である。
尚、透明な組成物が得られるよう、(A)成分と(B)成分の屈折率を同等程度にすることが好ましい。
【0030】
上述したオルガノハイドロジェンポリシロキサン骨格は、直鎖状でも環状でも分岐状でも高度に分岐したレジン状であってよいが、耐クラック性がより優れたものとなる分岐構造を有さない直鎖状であることが好ましい。粘度は特に制限されるものでないが、好ましくは1000mPas以下、より好ましくは5〜200mPasである。
【0031】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)の配合量は、そのケイ素原子に結合した水素原子数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計数1個あたり0.4〜10個となる割合で配合されている。0.4個未満では硬化が甘くなり、10個を越えると硬化物が脆くなりすぎるからである。好ましくは0.6〜5個である。
【0032】
<(C)成分>
(C)成分の付加反応触媒は、(A)成分と(B)成分との付加反応による架橋の触媒となるもので、その例としては、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸とビニルシロキサンの配位化合物、白金黒などの白金系触媒、更にパラジウム系触媒、ロジウム系触媒などが挙げられ、触媒効率の高さの面から通常白金触媒が使用される。また特に本用途においては、エレクトロニクス分野である封止型LEDの作製に用いられることから、金属を腐食させる恐れのない低塩素触媒が好ましく、中でも塩素成分を含有しないジビニルテトラメチルジシロキサン、ジビニルジフェニルジメチルジシロキサン等で変性されたものが好ましい。これらの付加反応触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0033】
尚、この付加反応触媒の配合量は触媒として作用する有効量(触媒量)であり、好ましくは(A)成分と(B)成分の合計量に対して、1〜1000ppmである。1ppm以上であれば適度な速さで硬化が進み、1000ppm以下であれば作業可能な時間が短くなり過ぎることもなく、また硬化物が黄変し難いため経済的である。特に好ましくは5〜100ppmである。
【0034】
<任意成分>
本発明の組成物において、上記の(A)〜(C)成分以外の任意の成分として、例えば、付加反応触媒に対して硬化抑制効果を持つ化合物とされている従来公知の制御剤化合物はすべて使用することができる。このような化合物としては、トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物、トリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物、硫黄含有化合物、アセチレン系化合物、アルケニル基を2個以上含む化合物、ハイドロパーオキシ化合物、マレイン酸誘導体などが例示される。制御剤化合物による硬化遅延効果の度合は、制御剤化合物の化学構造によって大きく異なるため、制御剤化合物の添加量は、使用する制御剤化合物の個々について最適な量に調整することが好ましく、通常、室温での長期貯蔵安定性が得られ、かつ硬化が阻害されない範囲程度の量、通常、(A)成分100質量部に対して0.5質量部以下、好ましくは0.01〜0.3質量部の量で使用される。
【0035】
また、本組成物には、その接着性を向上させるための接着付与剤を含有してもよい。この接着付与剤としては、シランカップリング剤やその加水分解縮合物等が例示される。シランカップリング剤としては、エポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤、イソシアヌレート基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤等公知のものが例示され、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して好ましくは0.1〜20質量部、好ましくは、0.3〜10質量部である。
【0036】
このような本発明の組成物の硬化物は、高透明性に優れ、過酷な温度サイクル下でもクラックや剥離が発生することがないため、発光ダイオードの封止材料として有用であり、更に、このような発光ダイオードは、例えばスイッチング素子や、照明、液晶ディスプレイのバックライト等、様々な分野において有用なものとなる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例等に制限されるものではない。
[実施例1]
平均単位式:(PhSiO3/20.55[(CH=CH)MeSiO2/20.2(MeSiO)0.25で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン[性状=固体(25℃)、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合ビニル基の含有率=14モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=38モル%、標準スチレン換算の重量平均分子量=3000]90質量部に、下記式(I)で表される粘度が20mPasのビニル基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン18質量部、塩化白金酸/1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するトルエン溶液0.06質量部、エチニルシクロヘキサノール0.05質量部、及びγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3質量部を均一混合して、シリコーン組成物(A)を調製した。このシリコーン組成物(A)を150℃で4時間加熱し硬化させたところ、硬さはShore Dで67であった。

HMeSiO(MeSiO)(HMeSiO)(PhSiO)SiMeCH=CH (I)

【0038】
[実施例2]
主鎖がジフェニルシロキサン単位のみからなり、粘度が0.4Pasの両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン共重合体80質量部、(PhSiO3/20.75[(CH=CH)MeSiO1/20.25で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン[性状=固体(25℃)、ケイ素原子結合ビニル基の含有率=20モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=50モル%、標準スチレン換算の重量平均分子量=1600]20質量部、下記式(II)で表される粘度が20mPasのビニル基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン32質量部、塩化白金酸/1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するトルエン溶液0.5質量部、エチニルシクロヘキサノール0.05質量部、及びγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3質量部を均一混合して、シリコーン組成物(B)を調製した。このシリコーン組成物(B)を150℃で4時間加熱し硬化させたところ、硬さはShore Dで58であった。

HMeSiO(HMeSiO)(PhSiO)SiMeCH=CH (II)

【0039】
[実施例3]
平均単位式:(PhSiO3/20.55[(CH=CH)MeSiO2/20.2(MeSiO)0.25で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン[性状=固体(25℃)、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合ビニル基の含有率=14モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=38モル%、標準スチレン換算の重量平均分子量=3000]90質量部に、下記式(III)で表される粘度が20mPasのビニル基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン17質量部、塩化白金酸/1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するトルエン溶液0.06質量部、エチニルシクロヘキサノール0.05質量部、及びγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3質量部を均一混合して、シリコーン組成物(C)を調製した。このシリコーン組成物(C)を150℃で4時間加熱し硬化させたところ、硬さはShore Dで65であった。

MeSiO(MeSiO)(HMeSiO)[Ph(CH=CHC)SiO]SiMe (III)

【0040】
[比較例1]
上記式(I)の替わりに、アルケニル基を有しないHMeSiO(MeSiO)(HMeSiO)(PhSiO)SiMeH 18質量部を使用した以外は実施例1にしたがって組成物(D)を調製した。このシリコーン組成物(D)を150℃で4時間加熱し硬化させたところ、硬さはShore Dで69であった。
【0041】
[比較例2]
上記式(II)の替わりに、アルケニル基を有しないHMeSiO(HMeSiO)(PhSiO)SiMeH 32質量部を使用した以外は実施例2にしたがって組成物(E)を調製した。このシリコーン組成物(E)を150℃で4時間加熱し硬化させたところ、硬さはShore Dで60であった。
【0042】
[比較例3]
上記式(III)の替わりに、アルケニル基を有しないMeSiO(MeSiO)(HMeSiO)(PhSiO)SiMe17質量部を使用した以外は実施例3にしたがって組成物(F)を調製した。このシリコーン組成物(F)を150℃で4時間加熱し硬化させたところ、硬さはShore Dで66であった。
【0043】
上記実施例及び比較例で調製したシリコーン組成物(A)〜(F)における評価方法を、下記の要領にて行った。
[評価方法]
発光半導体パッケージ
発光素子として、InGaNからなる発光層を有し、主発光ピークが470nmのLEDチップを搭載した、図1に示すような発光半導体装置を使用した。ここで、1が筐体、2が発光素子、3、4がリード電極、5がダイボンド材、6が金線、7が封止樹脂である。封止樹脂7の硬化条件は150℃、4時間である。
【0044】
耐湿及び赤外線リフローの試験方法
作製した発光半導体装置10個を、85℃、85%の恒温恒湿室に24時間入れた後、赤外線リフロー装置(260℃)を3回通し、外観の変化を観察した。結果を表1に示す。尚、樹脂のクラックやLEDパッケージからの剥離が確認されたものをNGとしてカウントした。
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示されるように、実施例1〜3は、NG数がいずれも0であり、高温/低温の温度サイクル条件下でもクラック耐性が良好で、剥離も発生せず光取り出し効率が高いことがわかる。また、このようなシリコーン樹脂は、高透明性にも優れたものであった。
一方、比較例1〜3は、半数以上に樹脂のクラックやLEDパッケージからの剥離が発生してしまった。これにより、封止材料として従来のものを用いた場合、LEDの生産性が悪くなってしまうことがわかる。
【0047】
以上のことから、本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物であれば、熱衝撃に対して高い耐性を有するため、クラックが生じ難いうえ光取り出し効率も高く、過酷な温度サイクル下に供されるLED用として有用なものであることが実証された。
【0048】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0049】
1…筐体、 2…発光素子、 3、4…リード電極、 5…ダイボンド材、
6…金線、 7…封止樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(A)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を含有せず、1分子中にアルケニル基を少なくとも2個有する、下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン 100質量部、
SiO(4−a)/2 (1)
(式中、Rは一価有機基を表し、その少なくとも5モル%がフェニル基である。aは1.5〜3.0の数である。)
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個及びケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも1個有する、下記平均組成式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
SiO(4−b−c)/2 (2)
(式中、Rは、置換又は非置換の一価炭化水素基、b及びcは、0<b<3、0<c≦2、かつ0<b+c<4を満足する数である)
(C)付加反応触媒 触媒量、
を含有するオルガノポリシロキサン組成物であって、
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、そのケイ素原子に結合した水素原子数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計数1個あたり0.4〜10個となる割合で配合されていることを特徴とする発光ダイオード用付加硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、分岐構造を有しない、直鎖状であることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード用付加硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシリコーン樹脂組成物の硬化物で封止された発光ダイオード。

【図1】
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【公開番号】特開2011−190366(P2011−190366A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58190(P2010−58190)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】