説明

発光デバイス及び灯具

【課題】低輝度時の発光のばらつきを低減し、輝度差の大きい複数の状態の発光を制御性良く実現する、高効率の発光デバイス及び灯具を提供する。
【解決手段】第1の発光面積を有し、第1の電極130が接続された第1の発光部110と、前記第1の発光面積よりも小さい面積の第2の発光面積を有し、前記第1の電極130と異なる第2の電極230が接続され、前記第1の発光部110と独立して発光可能な第2の発光部210と、を備えたことを特徴とする発光デバイスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光デバイス及び灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
発光デバイスの代表例として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)がある。
LEDの明るさを調整する最も簡単な方法は、駆動電流を制御する方法である。電源が定電圧の場合は、適当な値を持つ抵抗をLEDと電源との間に接続することで、LEDに流れる電流を制御できる。これにより、LEDに流れる電流が大きい時に高輝度の発光が得られ、電流が小さい時に低輝度の発光が得られる。
【0003】
一般に、LEDにおいて、電流と光出力との関係は必ずしも線形ではない。
すなわち、大きい電流を流しても、自己発熱と、注入キャリア密度(電流密度)の三乗以上に比例する非放射再結合成分の増加によって光出力は飽和傾向を示す。さらに、過度に大きい電流を流すと素子破壊や素子寿命への悪影響を引き起こす。
一方、過度に小さい電流で駆動したとき、表面再結合電流や、発光層の接合面の不完全性によるシャントパス(バイパス)形成で起こるリーク電流等の影響によって、発光効率が下がる。また、発光層の接合面内での電極抵抗の分布によって印加電圧に分布が生じ、均一な発光が得られず、チップ面の一部で発光しないこともある。
このように、LEDには、効率的に発光するための適切な駆動電流の範囲があり、従って、安定して出力できる輝度の範囲がある。
【0004】
これに対し、極端に差のある高輝度状態と低輝度状態との発光が必要な応用がある。 このような例として、例えば自動車の後方ランプ用の赤色LEDが挙げられる。この場合、低輝度状態は、夜間のテールランプ発光であり、高輝度状態は、ブレーキを踏んだ時のストップランプ発光である。この高輝度状態の輝度は、例えば、低輝度状態の輝度の数10倍の明るさであることが必要とされる。
このように極端に差異のある輝度は、従来の単一のLEDで得ることは難しい。すなわち、従来の技術では、低輝度時には、発光の効率が低下し、発光にばらつきが発生する。
【0005】
なお、特許文献1に、赤色LED素子と、赤色LED素子より発光面積が広い青色LED素子を備えた、色再現範囲の広いLEDパッケージに関する技術が公開されている。
【特許文献1】特開2007−27421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低輝度時の発光のばらつきを低減し、輝度差の大きい複数の条件の発光を制御性良く実現する、高効率の発光デバイス及び灯具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、第1の発光面積を有し、第1の電極が接続された第1の発光部と、前記第1の発光面積よりも小さい面積の第2の発光面積を有し、前記第1の電極と異なる第2の電極が接続され、前記第1の発光部と独立して発光可能な第2の発光部と、を備えたことを特徴とする発光デバイスが提供される。
【0008】
本発明の別の一態様によれば、前記第1の発光部の光出力が、前記第2の発光部の光出力の10倍以上であり、前記第1の発光部及び前記第2の発光部の発光ドミナント波長が、600nm〜640nmの範囲にあり、前記第1の発光部に供給される電流密度、及び、前記第2の発光部に供給される電流密度が、10A/cm以上である上記の発光デバイスを用いたことを特徴とする車両後方表示用の灯具が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低輝度時の発光のばらつきを低減し、輝度差の大きい複数の状態の発光を制御性良く実現する、高効率の発光デバイス及び灯具が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図面は、本発明の一実施形態に係わり、図1〜図4は、発光デバイスの構成を例示する模式的斜視図、図5は、発光デバイスの構成を例示する回路図、図6は、灯具の構成を例示する模式的断面図である。
なお、本願明細書及び各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施の形態)
図1に表したように、本発明の第1の実施形態に係る発光デバイス10は、第1の発光面積を有し、第1の電極130が接続された第1の発光部110と、第2の発光面積を有し、第2の電極230が接続された第2の発光部と、を備えている。
【0011】
第2の発光面積は、第1の発光面積より小さい。
そして、発光デバイス10では、第1の発光部110と第2の発光部210とが、同一の半導体チップ300に設けられている。
【0012】
半導体チップ300は、LEDチップ(LED Die)であり、p型クラッド層とn型クラッド層との間に、両クラッド層より小さいバンドギャップを有する発光層(活性層)310を挟んだ構成を有している。下側のクラッド層の下には、下側電極320が設けられている。例えば、発光層310の材料としてGaAlAs系やInAlGaP系の化合物半導体を用いた場合、赤色の発光を得ることができる。
【0013】
発光デバイス10は、例えば、1辺が350μm角の直法体形状であり、その一部に、第2の面積(小さい面積)の第2の発光部210が設けられている。第2の発光部210は、例えば、100μm角のLEDであり、第2の発光部210以外の領域に、第1の面積(大きい面積)の第1の発光部110が設けられている。第1の発光部110と第2の発光部210の間には、分離溝329が設けられており、これらの発光部は互いに電気的に分離されている。例えば、発光層(活性層)を分離溝329によって分離することで、第1の発光部110と第2の発光部210とをそれぞれ独立に発光させることができる。なお、上記に限らず、発光デバイス10のサイズ、形状は任意であり、また、第1の発光部110と第2の発光部210のそれぞれのサイズ、形状も任意である。
【0014】
第1の発光部110の第1の電極130は、第1のワイヤー160をワイヤーボンディングするための円形のパッド部131と、電極指132を有している。この電極指132によって、第1の発光部110の上面の実質的全体に電流を広げることができる。
【0015】
一方、第2の発光部210の第2の電極230は、円形であり、第2のワイヤー260をワイヤーボンディングするためのパッド部の機能も果たす。
このように、第1の電極130と第2の電極230とは独立している。
【0016】
そして、第1の電極130と下側電極320との間に電流を流すことにより、第1の発光部110が発光する。そして、第2の電極230と下側電極320との間に電流を流すことにより、第2の発光部210が発光する。
【0017】
このように、第1の発光部110と第2の発光部210に、異なる電極である、第1の電極130と第2の電極230をそれぞれ設けることで、第1の発光部110と第2の発光部120とは、互いに独立して発光可能とされている。
【0018】
これにより、第1の発光部110と第2の発光部210とをそれぞれ適切な駆動条件で発光させつつ、異なる輝度の発光を得ることができる。すなわち、低輝度を得たい時は、第2の発光部210のみを発光させる。このとき、第1の発光部110は、低輝度とは言え、第1の発光部110の適切な駆動条件で駆動されているため、安定した発光を得ることができ、発光のばらつきは実質上発生しない。
【0019】
また、高輝度を得たい時は、第1の発光部110のみ、または、第1の発光部110と第2の発光部210の両方を発光させる。この時、第1の発光部110(または第1の発光部110と第2の発光部210)は、適切な駆動条件で駆動されているため、過度に大きい電流を流すことがなく、安定した駆動を行うことができる。
【0020】
このように、本実施形態の発光デバイス10によれば、低輝度時の発光のばらつきを低減し、輝度差の大きい複数の状態の発光を制御性良く実現する、高効率の発光デバイスが提供される。
【0021】
なお、第1の発光部110の第1の発光面積は、第1の発光部110に対応する発光層(活性層)310の面積に依存するが、第1の電極130に遮光性がある材料を用いた場合は、発光した光が第1の電極130によって遮光される。このため、このときは、実用的には、第1の発光面積は、第1の電極130の第1の発光部110における開口部となる。また、同様に、第2の発光面積は、実用的には、第2の電極230の第2の発光部210における開口部となる。従って、両電極に遮光性がある材料を用いた場合は、これら両発光部の電極以外の開口部の面積が異なっていれば良い。
すなわち、本実施形態の発光デバイスにおいて、第1の発光部110の第1の発光面積と、第2の発光部210の第2の発光面積とは、実質的な発光面積として異なっている。
【0022】
(比較例)
比較例の発光デバイスは、本実施形態に係る発光デバイス10に対し、発光部が1つであり、その発光面積は、発光デバイス10における第1の発光面積と第2の発光面積の実質的に和となっている。
例えば、比較例の発光デバイスのLEDチップは、GaAlAsからなる発光層を備えた約350μm角であり、接合部の面積は、1.225×10−3cmである。そして、標準駆動電流は、70mAである。従って、標準駆動条件での電流密度は、57A/cm(=70mA/1.225×10−3cm)である。
【0023】
例えば、このLEDは、製造後に、標準条件である70mAの電流で評価(検査)され、明るさが所定の仕様の範囲に入るように選別される。従って、標準条件である70mAで駆動すれば、安定した一定の所定の明るさが得られる。従って、このようなLEDを複数設けた灯具(例えば自動車の後方ランプ)において、複数のLED間での明るさのばらつきは実用上目立たない。
【0024】
このLEDをストップランプ状態(高輝度状態)及びテールランプ(尾灯)状態(低輝度状態)で点灯させる。
ここで、ストップランプ状態は、ブレーキを踏むことで車両が制動状態(減速・停止)にあることを、後方に認識させる発光表示状態である。また、テールランプ状態は、自動車や列車などの車体後部につける赤色の標識灯としての点灯状態である。
ストップランプ状態で点灯させた場合は、LEDは、大電流駆動状態である、標準駆動電流値付近で動作されており、安定した駆動が行われ、複数のLED間での明るさのばらつきも実質的に生じない。
【0025】
これに対して、テールランプ状態(低輝度状態)で点灯させた場合は、例えば、3mA程度の駆動電流、すなわち、2.5A/cm(=3mA/1.225×10−3)の電流密度の低電流で動作させる。このとき、例えば、LEDが上記のように標準条件である70mAの電流で評価され、明るさが所定の仕様の範囲(ランク)に入るように選別されている場合は、その評価条件よりかなり小さい電流で駆動するので、発光にばらつきが発生する。
すなわち、駆動電流が小さい場合には、表面再結合やシャントパスによるリーク電流のように発光に寄与しない無効電流の割合が増える。また、低輝度を発光するのに過度に大きい発光領域を使用することになるので、結晶の欠陥密度が一定であるとすれば面積が大きいために欠陥の数が増え、シャントパスが増える。また、面積が大きいと表面再結合電流の影響も大きくなる。そして、大面積になるほど、チップ面内の電圧分布も大きいため、発光の弱い部分も目立ってきて、輝度が低くなってしまい、ギラギラと輝く発光感がなくなる。
【0026】
このように、単一の発光部しか有しない比較例の発光デバイスでは、低輝度時(小電流駆動時)には、発光の効率が低下し、発光にばらつきが発生する。一方、低輝度時に対応させて発光デバイスを設計すると、高輝度時の輝度が不足する。
【0027】
これに対して、本実施形態によれば、異なる発光面積を有する複数の発光部を設けてこれらをそれぞれ発光可能とすることにより、低輝度時の発光のばらつきを低減し、輝度差の大きい複数の状態の発光を制御性良く実現する、高効率の発光デバイスが提供される。
なお本実施形態に係る発光デバイスにおいて、第1の発光部110と第2の発光部210の発光色(発光ドミナント波長)は、実質的に同一とすることができる。
【0028】
(第2の実施の形態)
図2に表したように、本発明の第2の実施形態に係る発光デバイス20は、第1の発光部110と第2の発光部210とが、同一の外囲器(パッケージ)370に格納されている。そして、第1の発光部110として、第1のLEDチップ111が用いられ、第2の発光部210として第2のLEDチップ211が用いられている。
【0029】
すなわち、LEDチップに電流を流し、光取り出し効率を高め、さらには、信頼性を高めるため、LEDチップが適当な外囲器370に収納されている。外囲器370としては、砲弾型やSMD(Surface Mount Device)型等の各種の構成の外囲器を用いることができる。図2には、SMD型の外囲器370が例示されている。
【0030】
カソード側リードフレーム340の上に、第1のLEDチップ111及び第1のLEDチップ211が導電材料によってマウントされている。そして、カソード側リードフレーム340はカソード側はんだパターン351に接続されている
第1のLEDチップ111の上側の第1の電極130から、第1のアノード側リードフレーム150に第1のワイヤー160が設けられている。そして、第1のアノード側リードフレーム150は、第1のアノード側はんだパターン151に接続されている。
また、第2のLEDチップ211の上側の第2の電極130から、第2のアノード側リードフレーム250に第2のワイヤー260が設けられている。そして、第2のアノード側リードフレーム250は、第2のアノード側はんだパターン251に接続されている。
【0031】
そして、また、カソード側リードフレーム340、第1、第2のアノード側リードフレーム150、250及び第1、第2のLEDチップ111、211の外側には、反射率の高い白色の樹脂やセラミック等の外囲器370が配されている。
この外囲器370の上面開口部から透明な樹脂材料380を充填し、第1、第2のLEDチップ111、121が封止されている。
【0032】
第1のLEDチップ111は、第1の発光面積を有し、第1の電極130が接続されており、第1の発光部110となる。
そして、第2のLEDチップ211は、第2の発光面積を有し、第2の電極230が接続されており、第2の発光部210となる。そして、第2の発光面積は、第1の発光面積よりも小さい。
また、第1の発光部110と第2の発光部210の発光波長は実質的に等しく、すなわち、発光色は実質的に同じに設定できる。
テールランプ状態(低輝度状態)においては、第2のLEDチップ211のみを発光させる。一方、ストップランプ状態(高輝度状態に)においては、第1のLEDチップ111のみ、または第1のLEDチップ111と第2のLEDチップ211の両方を発光させる。これにより、第1実施形態に関して前述したものと同様の効果が得られる。
【0033】
このように、同一の発光波長を有し、異なる発光面積を有する複数の発光部をそれぞれ別のLEDチップとして作製し、これらを同一の外囲器370に格納することで、例えば各種の標準仕様のLEDチップの中から、各種用途の仕様に合わせた組み合わせのLEDチップを採用することで、任意の仕様の発光デバイスを簡便に製造することができ、実用上非常に便利となる。
【0034】
このように、異なる発光面積を有する複数の発光部を同一の外囲器370内に格納する本実施形態の発光デバイス20によれば、低輝度時の発光のばらつきを低減し、輝度差の大きい複数の状態の発光を制御性良く実現する、高効率の発光デバイスが提供される。
【0035】
(第3の実施の形態)
図3に表したように、本発明の第3の実施形態に係る発光デバイス30では、第1の発光部110と第2の発光部120とが同一の実装部材390に設けられている。実装部材390には、例えば、放熱機能を有するPCB(Printed Circuit Board)などの基板を使用することができる。
【0036】
そして、第1の発光部110として、第1のLEDパッケージ112が設けられている。第1のLEDパッケージ112は、第1の発光面積を有し、第1の電極130が接続されている。具体的には、第1の発光面積を有する第1のLEDチップ111が、第1のLEDパッケージ112に搭載されている。なお、この場合、第1の電極130は、第1のアノード側リードフレーム150または、第1のアノード側はんだパターン151とすることができる。
【0037】
そして、第2の発光部210として、第2のLEDパッケージ212が設けられている。第2のLEDパッケージ212は、第2の発光面積を有し、第2の電極230が接続されている。具体的には、第2の発光面積を有する第2のLEDチップ211が、第2のLEDパッケージ212に搭載されている。なお、この場合、第2の電極230は、第2のアノード側リードフレーム250または、第2のアノード側はんだパターン251とすることができる。
【0038】
そして、第2の発光面積は、第1の発光面積より小さい。
そして、第1の発光部110と第2の発光部210の発光波長は実質的に等しく、すなわち、発光色は実質的に同じに設定できる。
すなわち、第1の発光部110は、第1の半導体チップ(第1のLEDチップ111)に設けられ、第2の発光部210は、第2の半導体チップ(第2のLEDチップ211)に設けられ、第1の発光部110と第2の発光部210の発光色は、同じであり、第1の半導体チップは、第1の外囲器(第1のパッケージ112)に収容され、第2の半導体チップは、第2の外囲器(第2のパッケージ212)に収容され、第1の外囲器と第2の外囲器は、同一の実装部材390に搭載されている。
【0039】
本実施形態においても、テールランプ状態(低輝度状態)においては、第2のLEDチップ211のみを発光させる。一方、ストップランプ状態(高輝度状態に)においては、第1のLEDチップ111のみ、または第1のLEDチップ111と第2のLEDチップ211の両方を発光させる。これにより、第1実施形態に関して前述したものと同様の効果が得られる。
このように、異なる発光面積を有する複数の発光部を別のLEDパッケージとして作製し、これらを同一の実装部材390に搭載することで、例えば各種の標準仕様のLEDパッケージの中から、各種用途の仕様に合わせた組み合わせのLEDパッケージを採用することで、任意の仕様の発光デバイスを簡便に製造することができ、実用上非常に便利となる。
【0040】
このように、異なる発光面積を有する複数の発光部を同一の実装部材390に搭載する本実施形態の発光デバイス30によれば、低輝度時の発光のばらつきを低減し、輝度差の大きい複数の状態の発光を制御性良く実現する、高効率の発光デバイスが提供される。
【0041】
なお、上記の発光デバイス30では、発光面積が異なる複数のLEDパッケージを同一基板上に設けた例であるが、発光面積が異なる複数のLEDチップをベアチップ状態で同一基板上に設けても良い。
【0042】
さらに、上記の発光デバイス10〜30において、第1の発光部110と第2の発光部210の2つの発光部が設けられているが、本発明はこれには限らず、異なる発光面積を有する3以上の発光部を、同一半導体チップ、同一外囲器、及び、同一基板に設けても良い。例えば、大、中、小の3種の発光面積の発光部をそれぞれ1つずつ設けても良い。
【0043】
また、図4に例示した本実施形態の別の発光デバイス31のように、大発光面積の発光部(第1の発光部110)を1つ設け、小発光面積の発光部(第2の発光部210)を2つ設けても良い。
【0044】
すなわち、発光部の数と、それぞれの発光面積の組み合わせは任意である。これにより、3つ以上の発光部にそれぞれ対応した駆動条件でそれぞれの発光部を駆動でき、これにより、複数の輝度の発光を安定して得ることができる。
【0045】
(第4の実施の形態)
図5に表したように、本発明の第4の実施形態に係る発光デバイス40は、第1の発光部110と、第2の発光部120に加え、さらに、第1の発光部110と第2の発光部210とに接続されたスイッチ回路500を備えている。
【0046】
第1の発光部110と第2の発光部210には、それぞれ直列抵抗成分R1、R2がある。そして、第1の発光部110と第2の発光部210は並列に接続され、それぞれスイッチ回路500と接続されている。スイッチ回路500と駆動端子Pとの間には、外部抵抗成分Rexがある。
そして、駆動端子Pには、第1の発光部110及び第2の発光部210への駆動電流Iが供給される。
【0047】
このとき、スイッチ回路500は、駆動電流Iが、所定のしきい値電流以下の場合は、駆動電流Iを第2の発光部210に通電する。
そして、駆動電流Iがしきい値電流より大きい場合は、例えば、しきい値電流以下の電流成分Iを第2の発光部210に供給し、駆動電流Iのうちしきい値電流より大きい電流成分Iを第1の発光部110に供給する。または、駆動電流Iがしきい値電流より大きい場合は、駆動電流Iを第1の発光部110のみに供給しても良い。すなわち、駆動電流Iが、しきい値電流より大きい場合は、駆動電流Iの少なくとも一部を、第1の発光部110に供給する。この場合、第1の発光部110と第2の発光部210に供給するそれぞれの電流の大きさは、発光特性と信頼性等を勘案して適切に設定できる。
すなわち、本実施形態の発光デバイス40は、第1の発光部110と第2の発光部210とに接続され、供給すべき駆動電流Iがしきい値電流以下の場合は、駆動電流Iを第2の発光部210のみに供給し、供給すべき駆動電流Iがしきい値電流よりも大きい場合は、駆動電流の少なくとも一部を、第1の発光部に供給するスイッチ回路500をさらに備えている。
【0048】
このように、スイッチ回路500は、2種類のLEDに流れる電流を自動的に振り分ける機能を有している。これにより、例えば、所定のしきい値電流より小さい駆動電流に対しては、発光面積の小さい第2の発光部210のみに電流を流し、発光面積の大きい第1の発光部110には電流を流さないことにより、安定した駆動が実現できる。
【0049】
このように、スイッチ回路500を設けたことにより、第1の発光部110と第2の発光部210とを有する発光デバイスを通常のLEDのように使用することができるので、実用上非常に便利になる。
【0050】
スイッチ回路500は、注入電流の一部を分岐して飽和トランジスタやサイリスタなどのベースやゲートに流すことで、全体の電流Iを、第1の発光部110と第2の発光部210のどちらに流すかを選択することが可能な回路構成を有する。このような機能を持つ各種の回路構成を、スイッチ回路500に用いることができる。
【0051】
上記において、第1の発光部110と第2の発光部210の2種の発光部がある場合のスイッチ回路の動作について説明したが、本発明はこれに限らず、スイッチ回路は、異なる面積を有する、3つ以上を含めた複数の発光部を備えた場合において、それらの発光部に供給する電流を所定のしきい値電流に基づいて切り替え可能とする回路とすることができる。
【0052】
(第5の実施の形態)
以上の実施形態に係る発光デバイスは、例えば自動車後方ランプ等の灯具に応用できる。
自動車後方ランプ用の発光デバイスでは、発光ドミナント波長は、600nm〜640nmの範囲であり、赤色光を発光する。また、意匠性等のために複数のLEDを並べても良い。電源は定電源であり、外部抵抗を用いてLEDに流れる電流値を変化させて高輝度及び低輝度の2状態の明るさが制御される。
【0053】
赤色のAlInGaP形LEDチップにおいては、10A/cm以上の電流で駆動すれば、輝度のばらつきは比較的小さく、実用的には無視できる。
すなわち、発明者の検討によれば、標準駆動電流の2〜4割の電流が、実用的に安定して発光可能な下限の電流と考えられる。LEDチップのサイズとその標準駆動電流の2〜4割での電流密度を調べると、220μm角のLEDチップを5mAで駆動した時の電流密度は、例えば、12.5A/cmである。そして、350μm角のLEDチップを20mAで駆動した時の電流密度は、例えば、16.3A/cmである。そして、1mm角のLEDチップを100mAで駆動した時の電流密度は、例えば、10A/cmである。
すなわち、標準駆動電流の2〜4割に相当するこれら電流密度は、これらのサイズのLEDチップを問題なく使用できる電流密度であり、上記の10A/cm以上である。
【0054】
従って、自動車用後方灯具に応用する場合、発光デバイスは、第1の発光部110の光出力が、第2の発光部210の光出力の10倍以上であり、第1の発光部110及び第2の発光部210の発光ドミナント波長が、600nm〜640nmの範囲であり、第1の発光部110に供給される電流、及び、第2の発光部210に供給される電流が、10A/cm以上であることが望ましい。
【0055】
そして、テールランプ状態では、第2の発光部210のみを発光させ、ストップランプ状態の時は、第1の発光部110、または、第1の発光部110と第2の発光部210の両方を発光させる。
【0056】
これにより、自動車用後方ランプに適した、発光のばらつきが低減された、10倍以上の輝度差の複数の赤色光を発光する、高効率の発光デバイスが提供される。
【0057】
なお、既述の比較例におけるテールランプ状態での2.5A/cmの電流密度は、この下限の10A/cmの電流密度よりも低い値であり、安定した発光が得られない駆動条件である。
【0058】
(第6の実施の形態)
以上の実施形態に係る発光デバイスは、例えば自動車後方灯具(ランプ)等の灯具に応用できる。
【0059】
例えば、図6に表したように、本発明の実施形態に係る灯具50は、上記の実施形態の発光デバイス10を3つ用い、それらが、反射部610、レンズ620、カバー630を有するランプハウジング600に搭載されている。発光デバイス10は、例えば、第1の発光部110の光出力が、第2の発光部210の光出力の10倍以上であり、第1の発光部110及び第2の発光部210の発光ドミナント波長が、600nm〜640nmの範囲であり、第1の発光部110に供給される電流、及び、第2の発光部210に供給される電流が、10A/cm以上である。
なお、図6では、発光デバイス10が用いられているが、上記の実施形態の全ての発光デバイスを用いることができる。
【0060】
これにより、発光のばらつきが低減された、10倍以上の輝度差の複数の赤色光を発光する、高効率の灯具が提供される。
【0061】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、発光デバイス及び灯具を構成する各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した発光デバイス及び灯具を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての発光デバイス及び灯具も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】発光デバイスの構成を例示する模式的斜視図。
【図2】発光デバイスの構成を例示する模式的斜視図。
【図3】発光デバイスの構成を例示する模式的斜視図。
【図4】発光デバイスの構成を例示する模式的斜視図。
【図5】発光デバイスの構成を例示する回路図。
【図6】灯具の構成を例示する模式的断面図。
【符号の説明】
【0063】
10、20、30、31、40…発光デバイス、 50…灯具、 110…第1の発光部、 130…第1の電極、 210…第2の発光部、 230…第2の電極、 300…半導体チップ、 370…外囲器、 390…実装部材、500…スイッチ回路、 600…ランプハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発光面積を有し、第1の電極が接続された第1の発光部と、
前記第1の発光面積よりも小さい面積の第2の発光面積を有し、前記第1の電極と異なる第2の電極が接続され、前記第1の発光部と独立して発光可能な第2の発光部と、
を備えたことを特徴とする発光デバイス。
【請求項2】
前記第1の発光部と前記第2の発光部は、同一の半導体チップに設けられていることを特徴とする請求項1記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記第1の発光部は、第1の半導体チップに設けられ、
前記第2の発光部は、第2の半導体チップに設けられ、
前記第1の発光部と前記第2の発光部の発光色は、同じであり、
前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップは、同一の外囲器に収容されてなることを特徴とする請求項1記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記第1の発光部の光出力が、前記第2の発光部の光出力の10倍以上であり、
前記第1の発光部及び前記第2の発光部の発光ドミナント波長が、600nm〜640nmの範囲にあり、
前記第1の発光部に供給される電流密度、及び、前記第2の発光部に供給される電流密度が、10A/cm以上である請求項1〜3のいずれか1つに記載の発光デバイスを用いたことを特徴とする車両後方表示用の灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−218452(P2009−218452A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61852(P2008−61852)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】