説明

発光性ポリマー及び発光素子

以下の、式(1)で示される繰り返し単位を有することを特徴とする発光性ポリマー及びこれを用いた発光素子。


(但し、式(1)において、Arは、式(2)〜式(5)で示される基である。Bは、−Y−Ar、−Y−R又は水素原子を示す。また、Yは単結合又は−O−を示す。Arは、式(6)で示される基である。Rはアルキル基又はアルケニル基である。n個のBは同一であっても相違していてもよい。式(2)〜式(5)で示される基におけるBが水素原子のときには式(1)における複数のBの少なくとも1つのBは−Y−Ar又は−Y−Rであり、式(1)におけるベンゼン核に結合するBが水素原子であるときには式(2)〜式(5)で示される基における複数のBの少なくとも1つのBは−Y−Ar又は−Y−Rである。nは1〜4の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は、発光性ポリマー及び発光素子に関し、詳しくは、フィルム又はシートに容易に成形することができ、発光素子に容易に組み込むことができ、高輝度で青色に発光可能な発光素子を与えることのできる発光性ポリマー及びそのような発光性ポリマーを用いて容易に製造することができ、かつ高輝度で青色に発光可能な発光素子に関する。
【背景技術】
従来、オキサジアゾールを主鎖中に有するポリマーとしてポリオキサジアゾールが知られている(非特許文献1)。
【非特許文献1】 井本 稔編集、「−新しい合成化学4− 新しい合成樹脂」共立出版、昭和39年10月1日初版発行、p.219
このポリオキサジアゾールは、式(11)で示され、耐熱合成繊維として知られている。

しかしながら、上記文献には、このポリオキサジアゾールは通電等のエネルギーの印加により発光するとの記載がない。
一方、エネルギーの付与により高輝度で発光する発光物質が開発されるとすれば、そのような発光物質は有機ELパネル等のディスプレイに応用可能である(非特許文献2)。
【非特許文献2】 「特集[LCD(ディスプレイ)]」NIKKEI MICRODEVICES、2001年5月号、p.93−102
しかしながら、高分子の発光物質はまだ未開発である。高分子の発光物質即ち発光性ポリマーが開発されるとすると、低分子の発光化合物を有機EL素子に組み込む場合のように、低分子の発光化合物を蒸着する蒸着操作、低分子の発光化合物を溶媒に溶解してこれを電極基板に流延し、ついで溶媒を除去する操作、又は低分子の発光化合物をポリマー中に分散させてなるポリマー組成物を電極基板上にフィルム状に積層する操作等が不要になるという工業的メリットが期待される。
この発明は、フィルム又はシートに容易に成形することができ、発光素子に容易に組み込むことができる発光性ポリマー及びそのような発光性ポリマーを用いて容易に製造することができる発光素子を提供することを、目的とする。
【発明の開示】
前記課題を解決するための手段は、式(1)で示される繰り返し単位を有することを特徴とする発光性ポリマーである。

(但し、式(1)において、Arは、式(2)〜式(5)で示される基である。Bは、−Y−Ar、−Y−R又は水素原子を示す。また、Yは単結合又は−O−を示す。Arは、式(6)で示される基である。Rはアルキル基又はアルケニル基である。n個のBは同一であっても相違していてもよい。式(2)〜式(5)で示される基におけるBが水素原子のときには式(1)における複数のBの少なくとも1つのBは−Y−Ar又は−Y−Rであり、式(1)におけるベンゼン核に結合するBが水素原子であるときには式(2)〜式(5)で示される基における複数のBの少なくとも1つのBは−Y−Ar又は−Y−Rである。nは1〜4の整数を示す。)

(但し、式(2)において、Bは式(1)におけるのと同様の意味を示す。nは1〜4の整数を示す。複数のBは同一であっても相違していてもよい。)

(但し、式(3)において、Bは式(1)におけるのと同様の意味を示す。nは1〜3の整数を示す。一個のベンゼン核に結合する複数のBは同一であっても相違していてもよい。一方のベンゼン核に結合するBと他方のベンゼン核に結合するBとは同一であっても相違していてもよい。)

(但し、式(4)において、Bは式(1)におけるのと同様の意味を示す。nは1〜4の整数を示す。ベンゼン核に結合する複数のBは同一であっても相違していてもよい。)

(但し、式(5)において、Bは式(1)におけるのと同様の意味を示す。nは1〜4の整数を示す。一個のベンゼン核に結合する複数のBは同一であっても相違していてもよい。一方のベンゼン核に結合するBと他方のベンゼン核に結合するBとは同一であっても相違していてもよい。)

(但し、式(6)において、Rは水素原子又はアルキル基である。nは1〜5の整数を示す。)
前記発光性ポリマーの好適例は、式(7)で示される繰り返し単位を有することを特徴とする発光性ポリマーであり、

(但し、式(7)において、R及びRはアルキル基である。nは1〜5の整数を示す。一つのベンゼン核に結合するR又はRは同一であっても相違していてもよい。一方のベンゼン核に結合するR又はRは、他方のベンゼン核に結合するR又はRと同一であっても相違していてもよい。)
前記発光性ポリマーの好適例は、式(8)で示される繰り返し単位を有することを特徴とする発光性ポリマーであり、

(但し、式(8)において、Bは前記式(1)におけるBと同様であり、式(8)における3個のBの少なくとも1つが、−Y−Ar、又は−Y−Rである。このAr及びRは式(1)におけるのと同様である。)
前記発光性ポリマーの好適例は、式(9)で示される繰り返し単位を有することを特徴とする発光性ポリマーであり、

(但し、式(9)において、Bは式(1)におけるのと同様であり、2個のBの少なくとも1つのBは、−Y−Ar、又は−Y−Rである。)
前記課題を解決するための他の手段は、式(10)で示される繰り返し単位を有することを特徴とする発光性ポリマーであり、

(但し、式(10)において、R及びRは、アルキル基を示し、互いに同一であっても相違していてもよい。)
前記課題を解決するための他の手段は、前記(1)〜(5)に記載の発光性ポリマーのフィルムを一対の電極間に備えて成ることを特徴とする発光素子である。
【図面の簡単な説明】
図1は、この発明に係わる一例としての発光素子を示す説明図である。
図2は、この発明に係わる他の例としての発光素子を示す説明図である。
図3は、この発明に係わるその他の例としての発光素子を示す図面である。
図4は、この発明に係わるその他の例としての発光素子を示す図面である。
図5は、実施例1において合成された化合物(a)のNMRスペクトルチャートである。
図6は、実施例1において合成された化合物(b)のNMRスペクトルチャートである。
図7は、実施例1において合成された化合物(b)のIRスペクトルチャートである。
図8は、実施例1において合成された化合物(c)のNMRスペクトルチャートである。
図9は、実施例1において合成された化合物(c)のIRスペクトルチャートである。
図10は、実施例1において合成されたポリマー(e)のIRスペクトルチャートである。
図11は、実施例1において合成されたポリマー(e)の蛍光スペクトルチャートである。
図12は、実施例2において合成されたポリマー(e1)のIRスペクトルチャートである。
図13は、実施例2において合成されたポリマー(e1)の蛍光スペクトルチャートである。
図14は、実施例3において合成されたポリマー(e2)のIRスペクトルチャートである。
図15は、実施例3において合成されたポリマー(e2)の蛍光スペクトルチャートである。
図16は、実施例4において合成された化合物(d3)のIRスペクトルチャートである。
図17は、実施例4において合成された化合物(d3)のNMRスペクトルチャートである。
図18は、実施例4において合成されたポリマー(e3)のIRスペクトルチャートである。
図19は、実施例4において合成されたポリマー(e3)の蛍光スペクトルチャートである。
図20は、実施例5において合成された化合物(d6)のNMRスペクトルチャートである。
図21は、実施例5において合成された化合物(d6)のIRスペクトルチャートである。
図22は、実施例5において合成された化合物(e6)のIRスペクトルチャートである。
図23は、実施例5において合成された化合物(e6)の蛍光スペクトルチャートである。
図24は、実施例6において合成された化合物(f7)のIRスペクトルチャートである。
図25は、実施例6において合成された化合物(f7)の蛍光スペクトルチャートである。
図26は、実施例7において合成された化合物(d8)のIRスペクトルチャートである。
図27は、実施例7において合成された化合物(d8)の蛍光スペクトルチャートである。
図28は、実施例8において合成された化合物(b9)のIRスペクトルチャートである。
図29は、実施例8において合成された化合物(b9)の蛍光スペクトルチャートである。
図30は、実施例9において合成された化合物(b10)のIRスペクトルチャートである。
図31は、実施例9において合成された化合物(b10)の蛍光スペクトルチャートである。
図32は、実施例10において合成された化合物(e11)のIRスペクトルチャートである。
図33は、実施例10において合成された化合物(e11)の蛍光スペクトルチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
この発明に係る発光性ポリマーは、その主鎖中にオキサジアゾール環と置換基を結合する芳香族基とを有する。芳香族基に置換基を有することにより、この発光性ポリマーは、可撓性を有するに至り、フィルム形成が可能になる。また、芳香族基に置換する置換基により、高分子全体の発光強度が増強される。
このような特性を有するこの発明の発光性ポリマーは、式(1)で示される繰り返し単位を有する。

前記式(1)におけるArは式(2)〜式(5)で示される芳香族基である。

式(2)において、Bは、−Y−Ar、−Y−R又は水素原子を示す。また、Yは単結合又は−O−を示す。Arは、式(6)で示される基である。Rはアルキル基又はアルケニル基である。

式(6)において、Rは水素原子又はアルキル基である。Rがアルキル基であるとき、そのアルキル基としては、炭素数が20以下のアルキル基、特に炭素数が10以下のアルキル基、さらには炭素数が1〜5の低級アルキル基を好適例として挙げることができ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
式(6)において、Rがベンゼン核に結合する数としてのnは1〜5である。ベンゼン核に結合する複数のRは、同一であっても相違していてもよい。
式(6)で示される好ましい基としては、パラ位に炭素数1〜5の低級アルキル基が置換する置換ベンジル基である。
式(2)において、Rで示されるアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。Rとして好ましいアルキル基は、炭素数が1〜10の低級アルキル基である。また、式(2)において、Rで示されるアルケニル基は、二重結合が炭素鎖中の末端にあっても、また炭素鎖の中央部に有っても良い。Rで示される好適なアルケニル基は、20以下の炭素数を有する。

前記式(1)におけるArの一態様を示す式(3)において、Bは、式(2)におけるのと同様である。式(3)で示されるナフタレン環におけるベンゼン核に結合するBの数を示すnは、1〜3である。ナフタレン環に結合する複数のBは同一であっても相違していてもよい。またナフタレン環における一方のベンゼン環に結合するBと他方のベンゼン環に結合するBとは、同一であっても相違していてもよい。Bの好ましい結合位置は、ナフタレン環における2位及び5位である。

前記式(1)におけるArの一態様を示す式(4)において、Bは式(2)におけるのと同様である。式(4)におけるnは、1〜4の整数である。ベンゼン核に結合する複数のBは同一であっても相違していてもよい。

前記式(1)におけるArの一態様を示す式(5)において、Bは式(2)におけるのと同様である。式(5)におけるnは、1〜4の整数である。ビフェニル構造におけるベンゼン核に結合する複数のBは同一であっても相違していてもよい。ビフェニル構造における一方のベンゼン核に結合するBと他方のベンゼン核に結合するBとは、同一であっても相違していてもよい。
式(1)におけるベンゼン核に結合するBは、式(2)におけるBと同様である。式(1)におけるBの結合数を示すnは、1〜4の整数である。
前記式(1)で示される繰り返し単位を有する発光性ポリマーの中でも好ましい発光性ポリマーは、式(7)〜(9)で示される繰り返し単位を有する。

式(7)において、R及びRはアルキル基である。nは1〜5の整数を示す。一つのベンゼン核に結合するR又はRは同一であっても相違していてもよい。一方のベンゼン核に結合するR又はRは、他方のベンゼン核に結合するR又はRと同一であっても相違していてもよい。
又はRで示されるアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができ、好ましいアルキル基は、炭素数が1〜5の低級アルキル基である。
式(7)で示される繰り返し単位を有する発光性ポリマーにおいては、オキサジアゾール構造とそのオキサジアゾール構造に隣接するナフタレン環とがそれらの二重結合が共役すること、超共役するメチレン基を介してナフタレン環にベンゼン環が結合していることとにより、π電子の励起状態と基底状態とにおけるエネルギー差が例えば青色発光可能な値に調整される。また、ベンゼン核にR又はRで示されるアルキル基が結合しているので、式(7)で示される繰り返し単位を有する青色に発光可能な発光性ポリマーは、フィルム形成可能になる。

式(8)において、3個のBそれぞれは、式(2)におけるBと同様の意味を示す。式(8)で示される繰り返し単位中のベンゼン核に結合するB及びナフタレン環に結合するBの何れかは、−Y−Ar、又は−Y−Rである。
この式(8)で示される繰り返し単位を有する発光性ポリマーは、式(7)で示される繰り返し単位を有する発光性ポリマーと同様に、ベンゼン核、オキサジアゾール構造及びナフタレン環という剛直な主鎖構造にフレキシブルなアルキル基が結合することにより、フィルム形成能を獲得する。しかも、ベンゼン核、オキサジアゾール構造及びナフタレン環における二重結合が超共役すること、ナフタレン環又はベンゼン核に、超共役可能なメチレン基を介してベンゼン環が結合することとによって、理由は明確ではないが、青色発光可能なπ電子状態が実現され、しかも発光性ポリマーの発光強度が増大される。
式(8)で示される繰り返し単位の中でも好ましいのは、式(12)で示される繰り返し単位、及び式(13)で示される繰り返し単位である。

式(12)において、R及びnは、式(6)におけるR及びnと同様の意味を有する。式(12)で示される繰り返し単位を有する発光性ポリマーは、ナフタレン核に超共役するメチレン基を介してベンゼン核が結合しているので、部主鎖中のベンゼン核及びオキサジアゾール構造におけるπ電子とメチレン基を介して結合する側鎖部分のベンゼン核におけるπ電子とが共通する電子雲として広がり、これによって発光強度が増大される。さらに、側鎖におけるRが、この繰り返し単位を有する発光性ポリマーにフィルム形成能を与える。

式(13)において、Bは、式(2)におけるBと同様の意味を示す。
式(13)で示される繰り返し単位を有する発光性ポリマーは、その側鎖としてBを有するので、フィルム形成能がある。また主鎖中のベンゼン核及びオキサジアゾール構造に含まれているπ電子により、発光性を有する。
式(1)で示される繰り返し単位に含まれる好適な繰り返し単位の一つは、式(9)で示される。

式(9)において、Bは、前記式(1)におけるBと同様の意味を示す。一方のベンゼン核に結合するBは、他方のベンゼン核に結合するBと同一であっても相違していてもよい。
この発明の他の発光性ポリマーは、式(10)で示される繰り返し単位を有する。式(10)で示される繰り返し単位は、式(1)で示される繰り返し単位に含まれない。

式(10)において、R及びRはアルキル基を示し、互いに同一であっても相違していてもよい。R及びRで示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができ、好ましいアルキル基は、炭素数が1〜10の低級アルキル基である。
式(10)で示される繰り返し単位を有する発光性ポリマーにおいては、フルオレン骨格とオキサジアゾール構造とにおいてπ電子が共役しているので、発光性を具備する。また、R及びRが結合するので、発光性ポリマーはフィルム形成能を有する。
式(1)又は(10)で示される繰り返し単位を有する発光性ポリマーの分子量は、少なくとも8000であり、好ましくは少なくとも10、000であり、特に10,000〜1,000,000である。
式(1)で示される繰り返し単位を有する発光性ポリマーは、次のようにして製造することができる。
式(1)で示される繰り返し単位を有する発光性ポリマーは、式(14)で示される繰り返し単位を有するポリマーを、窒素ガス等の不活性雰囲気下に、例えばポリリン酸等の存在下で、又はトリクロロオキシリン(POCl)の存在下で、加熱することにより、得ることができる。加熱温度は、通常、その溶媒の沸点(常圧下)以下の適宜の温度である。又は、式(14)で示される繰り返し単位を有するポリマーを、窒素気流などの不活性ガス気流中で、高温に加熱することにより、得ることもできる。

式(14)で示される繰り返し単位を有するポリマーは、式(15)で示される酸クロライド等の酸ハライドと式(16)で示されるカルボヒドラジン化合物とを、窒素ガス等の不活性雰囲気下に、テトラヒドラフラン(THF)、ジメチル酢酸エステル(DMAc)等の溶媒中で、ピリジン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン等の脱ハロゲン化水素剤の存在下で、反応させてハロゲン化水素を脱離することにより、得ることができる。

式(15)において、B及びnは前記と同様の意味を示す。

式(16)で示されるカルボヒドラジン化合物は、式(17)で示される酸クロライド等の酸ハライドとヒドラジンとを、窒素ガス等の不活性雰囲気中で、THF、DMAc等の溶媒中で、前記した脱ハロゲン化水素剤の存在下に、最高120℃程度までの適宜の高温度に加熱して反応させることにより、得ることができる。

式(17)で示される酸クロライドにおけるAr中の置換基Bが、−O−Ar又は−O−R(Ar及びRは、前記と同様の意味を示す。)である場合、−O−Ar又は−O−Rの導入は、ウィリアムソン(Williamson)合成により容易に行うことができる。ウィリアムソン合成は、アルコラート(R’OY(但し、R’はアルキル基又は芳香族基であり、Yはナトリウム等のアルカリ金属である。))とハロゲン化アルキル(R’’OX(但し、R’’はアルキル基又は芳香族基であり、Xはハロゲン原子である。)とを反応させてR’−O−R’’型の混合エーテルを合成する周知の方法である(石川清一、表 美守著、「有機化学要論」昭和52年2月25日六訂第8刷発行、培風館発行、p183)。Williamson合成自体はよく知られた反応であるから、エーテル結合を有するBを置換する式(17)で示される酸クロライドを合成するための反応条件(雰囲気、溶媒の種類、反応温度、反応時間等)については、その詳細な説明を省略する。
式(17)で示される酸クロライドにおけるAr中の置換基Bが、−Ar又は−Rである場合、芳香族基への−Ar又は−Rの導入は、亜鉛等の金属触媒の存在下に、不活性雰囲気下に、ベンゼン環、ナフタレン環にX−Ar又はX−R(但し、Xはハロゲン原子である。)を反応させることにより、容易におこなうことができる。したがって、その詳細な説明を省略する。
式(10)で示される繰り返し単位を有する発光性ポリマーも、基本的には式(1)で示される繰り返し単位を有する発光性ポリマーと同様にして製造することができる。すなわち、式(18)で示される繰り返し単位を有するポリマーを、窒素ガス等の不活性雰囲気下に、例えばポリリン酸等の存在下で、又は塩化ホスホリル(POCl)の存在下で、又は減圧下に窒素ガス等の不活性ガスの気流下又は雰囲気下に加熱することにより、得ることができる。

式(18)において、R及びRは前記と同様の意味を示す。式(18)で示す繰り返し単位を有するポリマーは、式(19)で示される酸クロライド等の酸ハライドと式(20)で示されるカルボヒドラジン化合物とを、ピリジン等の脱ハロゲンン化剤の存在下に、テトラヒドロフラン等の溶媒中で、60℃〜溶媒の沸点以下の温度に加熱して反応させることにより製造されることができる。

式(19)において、R及びRは前記と同様の意味を示す。この式(19)で示される酸クロライドは、対応するカルボン酸化合物と塩化チオニルとの反応により、容易に製造することができる。カルボン酸を塩化チオニルにより酸塩化物にする反応は、よく知られているところである。

式(20)において、R及びRは前記と同様の意味を示す。
式(20)で示されるカルボヒドラジン化合物は、式(19)で示される酸クロライド等の酸ハライドとヒドラジンとをピリジン等の脱ハロゲンン化剤の存在下に、テトラヒドロフラン等の溶媒中で、60℃〜溶媒の沸点以下の温度に加熱して反応させることにより製造されることができる。
以上のようにして製造されることのできる式(1)、式(7)〜(10)で示される繰り返し単位を有する発光性ポリマーは、フィルムに形成することができる。この発光性ポリマーのフィルムを一対の電極間に介装することにより、発光素子が製造される。
図1は、一層型有機EL素子でもある発光素子の断面構造を示す説明図である。図1に示されるように、この発光素子Aは、透明電極2を形成した基板1上に、この発明に係る発光性ポリマーから成るフィルムである発光層3及び電極層4をこの順に積層して成る。
図1に示される発光素子は、その発光層3としてこの発明に係る発光性ポリマーのフィルムを有していると、透明電極2及び電極層4に電流を通電すると、発光性ポリマーの化学構造に応じた色に発光する。また、発光は、前記透明電極2と前記電極層4との間に電界が印加されると、電極層4側から電子が注入され、透明電極2から正孔が注入され、更に電子が発光層3において正孔と再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出する現象である。
図1に示される発光素子Aは、その全体形状を大面積の平面形状にすると、例えば壁面、あるいは天井に装着して、大面積壁面発光素子、及び大面積天井面発光素子等の面状発光照明装置とすることができる。つまり、この発光素子は、従来の蛍光灯のような線光源あるいは電球と言った点光源に代えて面光源として利用されることができる。特に、居住のための室内、事務用の室内、車両室内等の壁面、天井面、あるいは床面をこの発光素子により面光源として発光ないし照明することができる。さらに、この発光素子Aをコンピュータにおける表示画面、携帯電話における表示画面、金銭登録機における数字表示画面等のバックライトに使用することができる。その他、この発光素子Aは、直接照明、間接照明等の様々の光源として使用されることができ、また、夜間に発光させることができて視認性が良好である広告装置、道路標識装置、及び発光掲示板等の光源に使用されることもできる。しかも、この発光素子Aは、発光性ポリマーを発光層に有するので、発光寿命が長い。したがって、この発光素子Aにより発光が長寿命である光源とすることができる。
また、この発光素子Aを、筒状に形成された基板1と、その基板1の内面側に透明電極2、発光層3及び電極層4をこの順に積層してなる管状発光体とすることができる。この発光素子Aは、水銀を使用していないので、従来の水銀を使用する蛍光灯に代替して環境に優しい光源とすることができる。
基板1としては、透明電極2をその表面に形成することができる限り、公知の基板を採用することができる。この基板1として、例えばガラス基板、プラスチックシート、セラミック、表面に絶縁塗料層を形成する等の、表面を絶縁性に加工してなる金属板等を挙げることができる。
発光層3は、フィルム状乃至シート状に形成されたこの発明に係る発光性ポリマーを用いて構成することができる。
発光層3の厚みは、通常30〜500nm、好ましくは100〜300nmである。発光性ポリマーのフィルム乃至シートの厚みが薄すぎると発光光量が不足することがあり、その厚みが大きすぎると、駆動電圧が高くなりすぎて好ましくないことがあり、また、面状体、管状体、湾曲体、環状体とするときの柔軟性に欠けることがある。
発光性ポリマーのフィルム乃至シートは、前記発光性ポリマーを適宜の溶媒に溶解してなる溶液を用いて、塗布法例えばスピンキャスト法、コート法、及びディップ法等により形成することができる。また、発光性ポリマーの粉末を電極間挟んで溶融圧着することにより、発光層3を形成することもできる。
前記電極層4は、仕事関数の小さな物質が採用され、例えば、MgAg、アルミニウム合金、金属カルシウム等の、金属単体又は金属の合金で形成されることができる。好適な電極層4はアルミニウムと少量のリチウムとの合金電極である。この電極層4は、例えば基板1の上に形成された前記発光層3を含む表面に、蒸着技術により、容易に形成することができる。
塗布法及び蒸着法のいずれを採用して発光層を形成するにしても、電極層と発光層との間に、バッファ層を介装するのが好ましい。
前記バッファ層を形成することのできる材料として、例えば、フッ化リチウム等のアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウム等の酸化物、4,4’−ビスカルバゾールビフェニル(Cz−TPD)を挙げることができる。また、例えばITO等の陽極と有機層との間に形成されるバッファ層を形成する材料として、例えばm−MTDATA(4,4’,4’’−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、フタロシアニン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体、無機酸化物例えば酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化バナジウム、フッ化リチウムを挙げることができる。これらのバッファ層は、その材料を適切に選択することにより、発光素子である有機EL素子の駆動電圧を低下させることができ、発光の量子効率を改善することができ、発光輝度の向上を達成することができる。
次にこの発明に係る発光素子の第2の例を図に示す。図2は多層型有機EL素子である発光素子の断面を示す説明図である。
図2に示すように、この発光素子Bは、基板1の表面に、透明電極2、ホール輸送層5、発光層3a,3b、電子輸送層6及び電極層4をこの順に積層してなる。
基板1、透明電極2、及び電極層4については、図1に示された発光素子Aにおけるのと、同様である。
図2に示される発光素子Bにおける発光層は発光層3a及び発光層3bよりなり、発光層3aは発光化合物を蒸着してなる蒸着膜である。発光層3bは、DPVBi層である。このDPVBi層は、ホスト材料的な機能を有する層である。
前記ホール輸送層5に含まれるホール輸送物質としては、トリフェニルアミン系化合物例えばN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)−ベンジジン(TPD)、及びα−NPD等、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、複素環系化合物、π電子系スターバースト正孔輸送物質等を挙げることができる。
前記電子輸送層6に含まれる電子輸送物質としては、前記電子輸送性物質としては、例えば、2−(4−tert−ブチルフェニル)−5−(4−ビフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体及び2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、並びに2,5−ビス(5’−tert−ブチル−2’−ベンゾキサゾリル)チオフェン等を挙げることができる。また、電子輸送性物質として、例えばキノリノールアルミ錯体(Alq3)、ベンゾキノリノールベリリウム錯体(Bebq2)等の金属錯体系材料を好適に使用することもできる。
図2における発光素子Bでは、電子輸送層6はAlq3を含有する。
各層の厚みは、従来から公知の多層型有機EL素子におけるのと同様である。
図2に示される発光素子Bは、図1に示される発光素子Aと同様に作用し、発光する。したがって、図2に示される発光素子Bは、図1に示される発光素子Aと同様の用途を有する。
図3に、この発明に係る発光素子の第3の例を示す。図3は、多層型有機EL素子である発光素子の断面を示す説明図である。
図3に示される発光素子Cは、基板1の表面に、透明電極2、ホール輸送層5、発光層3、電子輸送層8及び電極層4をこの順に積層してなる。
この図3に示す発光素子Cは前記発光素子Bと同様である。
図4に発光素子の他の例を示す。この図4に示す発光素子Dは、基板1、電極2、ホール輸送層5、発光層3及び電極層4をこの順に積層してなる。
図4に発光素子の他の例を示す。この図4に示す発光素子Dは、基板1、電極2、ホール輸送層5、発光層3及び電極層4をこの順に積層してなる。
前記図1〜4に示される発光素子の外に、基板上に形成された透明電極である陽極と電極層である陰極との間に、ホール輸送性物質を含有するホール輸送層と、この発明に係る発光性ポリマーで形成された電子輸送性発光層とを積層して成る二層型有機低分子発光素子(例えば、陽極と陰極との間に、ホール輸送層と、ゲスト色素としてこの発明に係る発光化合物及びホスト色素を含有する発光層とを積層して成る二層型色素ドープ型発光素子)、陽極と陰極との間に、ホール輸送性物質を含有するホール輸送層と、この発明における発光性ポリマーと電子輸送性物質とを用いて形成された電子輸送性発光層とを積層して成る二層型有機発光素子(例えば、陽極と陰極との間に、ホール輸送層と、ゲスト色素としてこの発明に係る発光性ポリマー及びホスト色素とを含有する電子輸送性発光層とを積層して成る二層型色素ドープ型有機発光素子)、陽極と陰極との間に、ホール輸送層、この発明に係る発光性ポリマー含有の発光層及び電子輸送層を積層して成る三層型有機発光素子を挙げることができる。
また、前記発光層中には、増感剤としてルブレンが含有されていてもよく、特に、ルブレンとAlq3とが含有されていてもよい。
この発明に係る発光性ポリマーを利用した発光素子は、例えば一般に直流駆動型の有機EL素子として使用することができ、また、パルス駆動型の有機EL素子及び交流駆動型の有機EL素子としても使用することができる。
【実施例1】
以下の反応式1に従って、以下の手順で(b)で示す酸クロライド及び(c)で示すカルボヒドラジン化合物を合成した。

シクロヘキサノン300mlに、5−ヒドロキシイソフタル酸ジメチル25g、4−イソプロピルベンジルクロリド40.1g及び炭酸カリウム98.6gを加え、得られる混合物を攪拌しながら160℃で13時間還流し、その後に放冷し、水600mlとジエチルエーテル500mlとを加えて油層と水層とに分離して油層を取り出した。
この油層を洗浄するため15%水酸化ナトリウム水溶液250mlを加えて中和し、液液分離して油層を取り出した。この油層を水洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、油層中の水分を除去してから、濾過した。
次に、濾過液から溶媒をエバポレータで溜去した後にさらに真空ポンプで減圧するとともに100℃で2時間乾燥し、その後、石油エーテル70mlに溶解させ、加熱後、放冷し、再結晶した。
この再結晶物を乾燥し、14.8g(収率34.9%)の化合物(a)を得た。この化合物は、図5に示されるNMRチャートにより同定された。
1,4−ジオキサン60mlに、化合物(a)10gと40%水酸化ナトリウム水溶液20mlとを加え、得られた混合物を攪拌しながら110℃で3時間還流した。
反応液を氷冷した後に、この反応液を塩酸でpH3にし、この塩酸酸性反応液を濾過して固形分を取り出した。この固形分を水洗浄し、さらに、エチルエーテル洗浄した後、乾燥し、8.20gの固形物を得た。
1,4−ジオキサン50mlに、前記固形物8.2gと塩化チオニル38.1mlとを加え、この溶液を攪拌しながら110℃で3.5時間還流した。放冷後、1,4−ジオキサンと塩化チオニルとを減圧蒸留により除去してから、テトラヒドロフラン(以下、THFと記す。)100mlを加え、濾過した後に、エバポレータでTHFを除去し、さらに70℃で10分間真空ポンプで減圧しながら乾燥させ、酸クロライド(反応式1における化合物(b))8.7gを得た。
この酸クロライド(b)は、図6に示されるNMRチャート及び図7に示されるIRチャートにより同定された。
ピリジン1.76gと無水ヒドラジン10gとTHF50mlと前記酸クロライド(b)3.9gと混合し、得られた混合液を室温にしてから、50℃で24時間加熱撹拌を行った。放冷後に、反応生成液を氷水中に投入して固形分を析出させ、濾過し、固形分を水洗浄し、さらに、メタノール洗浄した後、乾燥させ、肌色の固体1.1gを得た。
この化合物は、図8に示されるNMRチャート及び図9に示されるIRチャートにより、式(c)の構造を有する化合物であると、同定された。
以下の反応式2に示すように、以下の手順に従って、酸クロライド(b)とこれと等モルのカルボヒドラジン化合物(c)とをトリス(ジメチルアミノ)ホスフィンの存在下に0〜15℃で反応させて繰り返し単位(d)で示されるポリマー1.44gを得た。

この繰り返し単位(d)で示されるポリマー1gを、ポリリン酸中で120℃で3.5時間加熱して脱水反応させた。反応終了後、反応生成液を氷水に投入し、ヌッチェで濾過し、得られた固形物を真空乾燥して、ポリマーを0.47g得た。このポリマーは、図10に示されるIRチャートにより、(e)で示される繰り返し単位を有するポリマーであると、同定された。
また、図11に示される蛍光スペクトルチャートにより、式(e)で示される繰り返し単位を有するポリマーは、発光性ポリマーであることがわかった。
【実施例2】
以下の反応式3に従って、以下の手順で、フェニル−1,4−ジカルボヒドラジドと、これと等モルの実施例1と同様にして得た酸クロライド(b)とをピリジンの存在下に加熱反応させて繰り返し単位(d1)で示されるポリマーを得た。

この繰り返し単位(d1)で示されるポリマー1gとポリリン酸25gとを混合して110℃で4時間加熱して脱水反応させた。反応終了後、反応生成液を氷水に投入し、ヌッチェで濾過し、得られた固形物を真空乾燥してポリマーを0.11g得た。このポリマーは、図12に示されるIRスペクトルチャートにより、(e1)で示される繰り返し単位を有するポリマーであると、同定された。
また、図13に示される蛍光スペクトルチャートにより、(e1)で示される繰り返し単位を有するポリマーは、発光性ポリマーであることがわかった。
【実施例3】
以下の反応式4に従って、以下の手順で、(e2)で示される繰り返し単位を有するポリマーを合成する。

N,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMACと記す。)40mlとナフタレン−1,4−ジカルボヒドラジド2.7gと前記実施例1で合成された酸クロライド(c)3.9gとを加えて得た混合物を氷冷しながら、窒素ガス雰囲気下において、この混合物に、DMAC40mlにヘキサメチルリン酸トリアミド([(CHN]PO)1.99gを加えた溶液を滴下した。その後、20%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、濾過し、固形分を水洗浄し、さらに、メタノール洗浄した後、乾燥させ、(d2)で示す繰り返し単位を有するポリマーである黄土色の粉末2.68gを得た。
この繰り返し単位(d2)で示されるポリマーを、ポリリン酸の存在下に、60〜130℃に加熱して脱水反応させると、容易に(e2)で示される繰り返し単位を有するポリマーを得ることができる。この(e2)で示される繰り返し単位を有するポリマーは、図14に示されるIRスペクトルチャートによって、同定された。
また、図15に示される蛍光スペクトルチャートにより、(e2)で示される繰り返し単位を有するポリマーは、発光性ポリマーであることがわかった。
【実施例4】
以下の反応式5に従って、以下の手順で、(e3)で示す繰り返し単位を有するポリマーを合成した。

DMAC20mlと二塩化1,4−ナフタロイル(酸クロライド)0.86gとカルボヒドラジン化合物(c3)1gとヘキサメチルリン酸トリアミド([(CHN]PO)0.6gとを混合した。その後、20%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、濾過し、固形分を水洗浄し、さらに、メタノール洗浄した後、乾燥させて粉末0.5gを得た。この粉末は、図16に示すIRチャート及び図17に示すNMRチャートから式(d3)で示される繰り返し単位を有するポリマーであると、同定した。
この繰り返し単位(d3)で示されるポリマー0.4gを、ポリリン酸20gの存在下に、110℃に6時間加熱して脱水反応させた。反応終了後、反応生成液を氷水に投入し、ヌッチェで濾過し、得られた固形物を真空乾燥して、ポリマーを0.1g得た。このポリマーは、図18に示されるIRチャートにより、(e3)で示される繰り返し単位を有するポリマーであると、同定された。
また、図19に示される蛍光スペクトルチャートにより、(e3)で示される繰り返し単位を有するポリマーは、発光性ポリマーであることがわかった。
【実施例5】
以下の反応式6に従って、以下の手順で、(e6)で示される繰り返し単位を有するポリマーを合成した。

塩化チオニル30mlに9,9−ジヘキシル−2,7−ジヒドロキシカルボニルフルオレン(反応式6における化合物(f))2.25gを加え、この溶液を攪拌しながら100℃で2時間還流した。放冷後、濾過し、固形分を乾燥させた。さらに、この固形分をTHF30mlに溶解させ、80℃で50分間蒸留し、放冷後、濾過し、固形分を乾燥させ、酸クロライド(反応式6における化合物(g))2.0gを得た。
次に、ピリジン0.22gにヒドラジン5.5gを加えた溶液を氷冷しながら、さらに、その溶液に、THF20mlに前記酸クロライド0.5gを加えた溶液を滴下した。その後、75℃で2時間加熱し、放冷後、濾過し、固形分をDMAC300mlに溶解させ、さらに、これに硫酸ナトリウム50gを加えた。
次に、これを濾過し、90℃で30分間蒸留し、0.35gのカルボヒドラジン化合物(反応式6における化合物(h))を得た。
次に、THF15mlにピリジン0.14gと前記化合物(h)0.35gとを加えた溶液を氷冷しながら,さらに、その溶液に、THF15mlに前記酸クロライド(化合物(g))0.36gを加えた溶液を滴下し、80℃で1時間加熱した。氷冷後、濾過し、固形分を乾燥させ、0.84gの化合物を得た。
この化合物は、図20に示されるNMRチャート及び図21に示されるIRチャートにより、式(d6)で示される繰り返し単位を有するポリマーであると、同定された。
次に、ポリリン酸22gに繰り返し単位(d6)で示されるポリマー0.21gを加え、120℃で13.5時間加熱し、氷冷し、濾過した後、15%水酸化ナトリウムを加えて中和し、濾過し、固形分を乾燥させ、ベージュ色の粉末0.88gを得た。この粉末は、図22に示されるIRスペクトルチャートにより、(e6)で示される繰り返し単位を有するポリマーであると、同定された。
また、図23に示される蛍光スペクトルチャートにより、(e6)で示される繰り返し単位を有するポリマーは、発光性ポリマーであることがわかった。
【実施例6】
以下の反応式7に従って、以下の手順で、(d7)で示されるカルボヒドラジン化合物を合成した。

シクロヘキサノン300mlに、1−クロロ−3−メチルブタン50.7g、5−ヒドロキシイソフタル酸ジメチル50gおよび炭酸カリウム163.4gを加え、得られる混合物を攪拌しながら160〜170℃で4時間還流し、その後に放冷し、水300mlとジエチルエーテル200mlとを加えて油層と水層とに分離して油層を取り出した。
この油層を洗浄するため15%水酸化ナトリウム水溶液250mlを加えて中和し、液液分離して油層を取り出した。この油層を水洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、油層中の水分を除去してから、濾過した後、溶媒を溜去して、化合物(a7)62.6gを得た。
1,4−ジオキサン100mlに、化合物(a7)60gと50%水酸化カリウム水溶液100mlとを加え、得られた混合物を攪拌しながら105℃で15時間還流した。
反応液を氷冷した後に、この反応液を塩酸でpH4にし、この塩酸酸性反応液を濾過して固形分を取り出した。この固形分を水洗浄した後、アセトンに再溶解させ、ヌッチェで濾過して、ジカルボン酸化合物(b7)19gを得た。
1,4−ジオキサン40mlに、化合物(b7)9.5gと塩化チオニル100mlとを加え、この溶液を攪拌しながら75℃で1.5時間還流した。放冷後、1,4−ジオキサンと塩化チオニルとを減圧蒸留により除去してから、テトラヒドロフラン(以下、THFと記す。)を加え、濾過した後に、エバポレータでTHFを除去し、さらに60℃で1時間真空ポンプで減圧しながら乾燥させ、酸クロライド(c7)を得た。
ピリジン3.1gと無水ヒドラジン31gとTHF20mlと前記酸クロライド(c7)5.72gとを混合し、得られた混合液を室温にしてから、50℃で15.5時間加熱撹拌を行った。放冷後に、反応生成液を氷水中に投入して固形分を析出させ、濾過し、固形分を水洗浄した後、メタノールに溶解させた。次いで、得られた溶液をガラスフィルターで濾過し、濾液に硫酸ナトリウムを加え、水分を除去した後、溶媒を留去し、乾燥させて、白色固体のカルボヒドラジン化合物(d7)0.7gを得た。
以下の反応式8に従って、以下の手順で、二塩化1,4−ナフタロイルとこれと等モルのカルボヒドラジン化合物(d7)とをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)の存在下に70℃で反応させて繰り返し単位(e7)で示されるポリマーを得た。

この繰り返し単位(e7)で示されるポリマー0.1gを、窒素ガス雰囲気下で、圧力を0.01Paにして、300℃に加熱して、5分間加熱反応させて、ポリマー0.01gを得た。このポリマーは、図24に示されるIRスペクトルチャートにより、(f7)で示される繰り返し単位を有するポリマーであると、同定された。
また、図25に示される蛍光スペクトルチャートにより、(f7)で示される繰り返し単位を有するポリマーは、発光性ポリマーであることがわかった。
【実施例7】
以下の反応式9に従って、以下の手順で、(d8)で示されるポリマーを合成した。

1,4−ジオキサン50mlに、5−tert−ブチルイソフタル酸(a8)18.7gと塩化チオニル58mlとを加え、この溶液を攪拌しながら80℃で15.5時間還流した。放冷後、1,4−ジオキサンと塩化チオニルとを減圧蒸留により除去してから、テトラヒドロフラン(以下、THFと記す。)を加え、濾過した後に、エバポレータでTHFを除去し、乾燥させ、酸クロライド(b8)17.8gを得た。
ピリジン20g、酸クロライド(b8)0.37g、実施例6で得られたカルボヒドラジン化合物(d7)0.4g、塩化リチウム0.5mgおよび亜リン酸トリフェニル0.44gを混合し、得られた混合液を室温にしてから、70℃で20時間加熱撹拌を行った。放冷後、溶媒を留去し、乾燥させて、繰り返し単位(c8)で示されるポリマー1.23gを得た。
この繰り返し単位(c8)で示されるポリマー1gを、窒素ガス雰囲気下で、圧力を0.01Paにして、300℃に加熱して、5分間加熱反応させて、ポリマー0.1gを得た。このポリマーは、図26に示されるIRスペクトルチャートにより、(d8)で示される繰り返し単位を有するポリマーであると、同定された。
また、図27に示される蛍光スペクトルチャートにより、式(d8)で示される繰り返し単位を有するポリマーは、発光性ポリマーであることがわかった。
【実施例8】
以下の反応式10に従って、以下の手順で、(b9)で示されるポリマーを合成した。

50ml三ツ口フラスコに、9,9’−ジメチル−2,7−ジヒドロキシカルボニルフルオレン(反応式13における化合物(a9))1.40g、硫酸ヒドラジドジニウム0.647gおよびポリリン酸7.4gを入れた。この三ツ口フラスコ内の溶液を100℃に加熱し、3時間反応させた。反応終了後、三ツ口フラスコ内の溶液を氷冷し、10%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中性にした後、遠心分離した。次いで、沈殿物を取り出し、得られた沈殿物を450mlの水と混合させた。この混合物を遠心分離し、沈殿物を取り出し、得られた沈殿物を25mlのメタノールと混合させた。さらに、この混合物を遠心分離し、得られた沈殿物を乾燥させて、ポリマー1.10gを得た。このポリマーは、図28に示されるIRスペクトルチャートにより、(b9)で示される繰り返し単位を有するポリマーであると、同定された。
また、図29に示される蛍光スペクトルチャートにより、(b9)で示される繰り返し単位を有するポリマーは、発光性ポリマーであることがわかった。
【実施例9】
以下の反応式11に従って、以下の手順で、(b10)で示されるポリマーを合成した。

200ml三ツ口フラスコに、繰り返し単位(a10)で示されるポリマー0.36gおよびポリリン酸75gを入れた。この三ツ口フラスコ内の溶液を100〜110℃に加熱し、14時間反応させた。反応終了後、三ツ口フラスコ内の溶液を氷冷し、10%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中性にした後、遠心分離した。次いで、沈殿物を取り出し、得られた沈殿物を450mlの水と混合させた。この混合物を遠心分離し、沈殿物を取り出した。得られた沈殿物を乾燥させて、ポリマー0.1gを得た。このポリマーは、図30に示されるIRスペクトルチャートにより、(b10)で示される繰り返し単位を有するポリマーであると、同定された。
また、図31に示される蛍光スペクトルチャートにより、(b10)で示される繰り返し単位を有するポリマーは、発光性ポリマーであることがわかった。
【実施例10】
以下の反応式12に従って、以下の手順で、繰り返し単位(d11)で示されるポリマーを合成した。

シクロヘキサノン600mlに、5−ヒドロキシイソフタル酸ジメチル24.26g、オレイルクロリド66.2g及び炭酸カリウム95.6gを加え、得られる混合物を攪拌しながら177℃で24時間還流し、その後に放冷し、水700mlとジエチルエーテル700mlとを加えて油層と水層とに分離して油層を取り出した。
この油層を洗浄するため15%水酸化ナトリウム水溶液500mlを加えて中和し、液液分離して油層を取り出した。この油層を水洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。
次に、濾過液を85℃で20分間蒸留し、放冷後、濃縮、乾固し、化合物(a11)を得た。
1,4−ジオキサン70mlに、化合物(a11)40.6gと25重量%水酸化カリウム水溶液70mlとを加え、得られた混合物を攪拌しながら110℃で21時間還流した。
反応液を氷冷した後に、この反応液を塩酸でpH2にし、この塩酸酸性反応液を濾過して固形分を取り出した。この固形分を水洗浄し、さらに、メタノール洗浄した後、乾燥し、固形物を得た。その後、固形物をアセトン130mlおよびメタノール25mlから成る混合液に溶解させ、加熱、放冷し、再結晶した。この再結晶物を乾燥し、ジカルボン酸化合物(b11)3.3gを得た。
次に、300ml三ツ口フラスコに、ジカルボン酸化合物(b11)3.2g、カルボヒドラジン化合物(c11)1.81g、塩化リチウム2.54g、ピリジン18.3ml、亜リン酸ジフェニル5.2gおよびN−メチル−2−ピロリジノン27.9mlを入れた。この300ml三ツ口フラスコ内の溶液を120℃に加熱し、攪拌しながら、65時間反応させた。反応終了後、三ツ口フラスコを氷冷し、三ツ口フラスコ内の溶液を攪拌しながら、メタノール800ml中に添加した。その後、得られた溶液を濾過して、固形物を得た。この固形物をメタノール、ジエチルエーテルを用いて、この順に洗浄した後、乾燥させ、繰り返し単位(d11)で示されるポリマー3.9gを得た。
以下の反応式13に従って、以下の手順で、繰り返し単位(d11)で示されるポリマーをポリリン酸中で110℃で反応させて繰り返し単位(e11)で示されるポリマーを得た。

すなわち、繰り返し単位(d11)で示されるポリマー0.7gを、30gのポリリン酸中で110℃で18時間加熱して脱水反応させた。反応終了後、反応生成液を氷水に投入し、ヌッチェで濾過し、得られた固形物を真空乾燥して、ポリマーを0.56g得た。このポリマーは、図32に示されるIRスペクトルチャートにより、(e11)で示される繰り返し単位を有するポリマーであると、同定された。
また、図33に示される蛍光スペクトルチャートにより、(e11)で示される繰り返し単位を有するポリマーは、発光性ポリマーであることがわかった。
産業上の利用分野
この発明によると、フィルム又はシートに容易に成形することができ、発光素子に容易に組み込むことができる発光性ポリマー及びそのような発光性ポリマーを用いて容易に製造することができる発光素子を提供することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される繰り返し単位を有することを特徴とする発光性ポリマー。

(但し、式(1)において、Arは、式(2)〜式(5)で示される基である。Bは、−Y−Ar、−Y−R又は水素原子を示す。また、Yは単結合又は−O−を示す。Arは、式(6)で示される基である。Rはアルキル基又はアルケニル基である。n個のBは同一であっても相違していてもよい。式(2)〜式(5)で示される基におけるBが水素原子のときには式(1)における複数のBの少なくとも1つのBは−Y−Ar又は−Y−Rであり、式(1)におけるベンゼン核に結合するBが水素原子であるときには式(2)〜式(5)で示される基における複数のBの少なくとも1つのBは−Y−Ar又は−Y−Rである。nは1〜4の整数を示す。)

(但し、式(2)において、Bは式(1)におけるのと同様の意味を示す。nは1〜4の整数を示す。複数のBは同一であっても相違していてもよい。)

(但し、式(3)において、Bは式(1)におけるのと同様の意味を示す。nは1〜3の整数を示す。一個のベンゼン核に結合する複数のBは同一であっても相違していてもよい。一方のベンゼン核に結合するBと他方のベンゼン核に結合するBとは同一であっても相違していてもよい。)

(但し、式(4)において、Bは式(1)におけるのと同様の意味を示す。nは1〜4の整数を示す。ベンゼン核に結合する複数のBは同一であっても相違していてもよい。)

(但し、式(5)において、Bは式(1)におけるのと同様の意味を示す。nは1〜4の整数を示す。一個のベンゼン核に結合する複数のBは同一であっても相違していてもよい。一方のベンゼン核に結合するBと他方のベンゼン核に結合するBとは同一であっても相違していてもよい。)

(但し、式(6)において、Rは水素原子又はアルキル基である。nは1〜5の整数を示す。)
【請求項2】
式(7)で示される繰り返し単位を有することを特徴とする発光性ポリマー。

(但し、式(7)において、R及びRはアルキル基である。nは1〜5の整数を示す。一つのベンゼン核に結合するR又はRは同一であっても相違していてもよい。一方のベンゼン核に結合するR又はRは、他方のベンゼン核に結合するR又はRと同一であっても相違していてもよい。)
【請求項3】
式(8)で示される繰り返し単位を有することを特徴とする発光性ポリマー。

(但し、式(8)において、Bは前記式(1)におけるBと同様であり、式(8)における3個のBの少なくとも1つが、−Y−Ar、又は−Y−Rである。このAr及びRは式(1)におけるのと同様である。)
【請求項4】
式(9)で示される繰り返し単位を有することを特徴とする発光性ポリマー。

(但し、式(9)において、Bは式(1)におけるのと同様であり、2個のBの少なくとも1つのBは、−Y−Ar、又は−Y−Rである。)
【請求項5】
式(10)で示される繰り返し単位を有することを特徴とする発光性ポリマー。

(但し、式(10)において、R及びRは、アルキル基を示し、互いに同一であっても相違していてもよい。)
【請求項6】
前記請求項1〜5に記載の発光性ポリマーのフィルムを一対の電極間に備えて成ることを特徴とする発光素子。

【国際公開番号】WO2004/039866
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【発行日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548035(P2004−548035)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013597
【国際出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願人】(504108875)ヒロセエンジニアリング株式会社 (8)
【Fターム(参考)】