説明

発光素子

【課題】発光層で発光した光の取り出し効率を高めることが可能な発光素子を提供する。
【解決手段】発光素子1は、p型半導体層21、発光層22及びn型半導体層23が積層され、p型半導体層及び発光層22の一部が除去されてn型半導体層21の一部が露出したGaN半導体層20と、GaN半導体層20の上に、p側第1絶縁膜開口部55及びn側第1絶縁膜開口部56を備えて積層される第1反射層50と、p側第1絶縁膜開口部55を通じて、p型半導体層23にキャリアを注入するためのp側透明配線電極層40と、p側透明配線電極層40の上方に、p側第1絶縁膜開口部55の少なくとも一部を覆うように積層され、p側第1絶縁膜開口部55を通過した光を発光層22側に反射する第2反射層60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光光を光取り出し方向に反射する構造を有する発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サファイア基板に形成された窒化物半導体の同一平面側にp側とn側の電極が設けられたフリップチップ型の発光素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の発光素子は、p型半導体層とn型半導体層との間に発光層を有し、p型半導体層の上にはITO(Indium Tin Oxide)等からなる透光性を有する拡散電極が形成されている。この拡散電極の上には、NiとAuを順に積層した後に加熱して合金化されたバッファ電極が設けられている。また、拡散電極の上方であってバッファ電極を除く部分には、発光層で発光して拡散電極を透過した光を反射するための金属反射膜が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−288548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発光素子では、発光層で発光して拡散電極を透過した光の一部は金属反射膜で反射するが、他の一部はバッファ電極又はn電極で吸収されてしまう。このため、光取り出し効率を高めるにあたっての制限が生じていた。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発光層で発光した光の取り出し効率を高めることが可能な発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明では、第1導電型の第1の半導体層、発光層、及び前記第1導電型と異なる第2導電型の第2の半導体層が積層され、前記第2の半導体層及び前記発光層の一部が除去されて前記第1の半導体層の一部が露出した半導体積層構造と、前記半導体積層構造の上に、開口部を備えて積層される第1の反射層と、前記開口部を通じて、前記第1の半導体層又は前記第2の半導体層にキャリアを注入するための透明配線電極と、前記透明配線電極の上方に前記開口部の少なくとも一部を覆うように積層され、前記開口部を通過した前記発光層の光を前記発光層側に反射する第2の反射層とを備える発光素子が提供される。
【0007】
上記発光素子において、一方面側が前記透明配線電極に接触し、他方面側が前記第1の半導体層又は前記第2の半導体層に接触する透明導電膜からなるコンタクト電極をさらに備えてもよい。
【0008】
また、上記発光素子において、前記コンタクト電極を、前記透明配線電極と同一の電極材料によって形成するとよい。
【0009】
また、上記発光素子において、前記第1の反射層は、前記第1の半導体層又は前記第2の半導体層の前記コンタクト電極上の少なくとも一部に設けるとよい。
【0010】
また、上記発光素子において、前記第1の反射層と前記第2の反射層との間、及び前記第1の反射層と前記透明配線電極との間の少なくとも何れかには、絶縁層を形成するとよい。
【0011】
また、上記発光素子において、前記第1の反射層上であって前記開口部を除く領域に設けられ、前記透明配線電極と電気的に接続される金属配線電極をさらに有してもよい。
【0012】
また、上記発光素子において、前記第1の反射層を前記第2の半導体層のコンタクト電極としてもよい。
【0013】
また、上記発光素子において、前記透明配線電極が前記第1の半導体層に接触してもよい。
【0014】
前記第1の半導体層のコンタクト電極は透明導電膜であり、この透明導電膜に前記透明配線電極が接触するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発光層で発光した光の取り出し効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態の発光素子の構造を説明するための概略平面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の第1の実施の形態の発光素子の図1のA−A断面図である。
【図2B】図2Bは、本発明の第1の実施の形態の発光素子の図2Aの一部拡大図である。
【図3】図3(a)〜(i)は、本発明の第1の実施形態の発光素子1の製造工程を説明するための概略平面図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態の発光素子の構造を説明するための概略断面図である。
【図5】図5は、本発明の第3の実施形態の発光素子の構造を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]

(発光素子1の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態の発光素子の構造を説明するための概略平面図であり、図2Aは図1のA−A断面図、図2Bは図2Aの一部拡大図である。
【0018】
本発明の一実施形態に係る発光素子1は、フリップチップ型であり、図1に示すように、平面視にて四角形状に形成される。また、発光素子1は、図2Aに示すように、C面(0001)を有するサファイア基板10と、サファイア基板10の上に設けられるGaN半導体層20とを備えている。GaN半導体層20は、図示しないバッファ層と、バッファ層の上に設けられるn型半導体層21と、n型半導体層21の上に設けられる発光層22と、発光層22の上に設けられるp型半導体層23とをサファイア基板10側からこの順で有している。
【0019】
また、発光素子1は、p型半導体層23の上に設けられるp側透明コンタクト電極30と、発光層22の光を反射するための第1反射層50と、p型半導体層23にキャリアを注入するためのp側透明配線電極層40とを備える。図2Aに示すように、p側透明コンタクト電極30は、一方面側がp側透明配線電極層40に接触し、他方面側がp型半導体層23に接触している。第1反射層50は、p側透明コンタクト電極30上に設けられ、その一部にp側第1絶縁膜開口部55が形成されている。また、第1反射層50は、反射層52を絶縁膜51で覆って構成されている。p側透明配線電極層40は、第1反射層50上に設けられ、第1反射層50に形成されたp側第1絶縁膜開口部55を通じてp側透明コンタクト電極30と接触し、p側透明コンタクト電極30に電気的に接続されている。
【0020】
発光素子1はまた、p側配線電極層70と、発光層22の光を反射するための第2反射層60と、p側電極80とを備える。p側配線電極層70は、p側透明配線電極層40上であってp側第1絶縁膜開口部55の上方ではない領域に設けられ、p側透明配線電極層40と電気的に接続されている。第2反射層60は、p側透明配線電極層40の上方に、p側第1絶縁膜開口部55の少なくとも一部を覆うように形成された反射層62を有し、p側透明配線電極層40及びp側配線電極層70上に設けられている。反射層62は、p側第1絶縁膜開口部55を通過した発光層22の光を発光層22側に反射するように形成されている。また、第2反射層60は、反射層62を絶縁膜61で覆って構成されている。p側電極80は、第2反射層60上に設けられ、第2反射層60に形成されたp側第2絶縁膜開口部65から露出したp側配線電極層70と接触し、電気的に接続されている。
【0021】
また、発光素子1は、n型半導体層21にキャリアを注入するためのn側透明配線電極層41と、n側配線電極層71と、n側電極81とを備える。n側透明配線電極層41は、p型半導体層23から少なくともn型半導体層21のコンタクト層の一部までエッチングにより除去することにより露出したn型半導体層21上における第1反射層50の上側に設けられ、第1反射層50に形成されたn側第1絶縁膜開口部56を介してn型半導体層21と接触し、n型半導体層21に電気的に接続されている。n側配線電極層71は、n側透明配線電極層41上であってn側第1絶縁膜開口部56の上方ではない領域に設けられ、n側透明配線電極層41と電気的に接続されている。また、n側第1絶縁膜開口部56の上方の少なくとも一部を覆うように、第2反射層60の反射層62が形成されている。n側電極81は、第2反射層60に形成されたn側第2絶縁膜開口部66から露出したn側配線電極層71と電気的に接続されて第2反射層60上に設けられている。
【0022】
本実施形態においては、p型半導体層23のp側コンタクト層からn型半導体層21のn側コンタクト層の一部に到るまで除去することにより、p型半導体層23、発光層22、n型半導体層21からなるメサ部が形成される。メサ部は、n型半導体21の一部を残したGaN半導体層20の除去によって形成され、サファイア基板10に垂直な方向に対して傾斜した傾斜面を有する。傾斜面の上には、反射層52を含む第1反射層50が形成され、第1反射層50の上にn側透明配線電極層41が形成されている。(また、本実施形態において、反射層52は発光素子1の外縁部にも設けられている。)
【0023】
n型半導体層21を構成するn側コンタクト層及びn側クラッド層と、発光層22と、p型半導体層23を構成するp側クラッド層及びp側コンタクト層とは、それぞれIII族窒化物化合物半導体からなる層である。III族窒化物化合物半導体としては、例えば、AlxGayIn1−x−yN(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)のIII族窒化物化合物半導体を用いることができる。
【0024】
発光層22は、複数の井戸層及び障壁層からなり、InGaN、GaN、AlGaN等の材料が用いられる多重量子井戸構造を有する。さらに、p側クラッド層とp側コンタクト層とは、所定量のp型ドーパント(例えば、Mg)をドーピングしたp−GaNからそれぞれ形成される。
【0025】
本実施の形態においては、p側透明コンタクト電極30を構成する材料とp側透明配線電極層40及びn側透明配線電極層41を構成する材料とは同一の電極材料からなる。また、p側配線電極層70を構成する材料とn側配線電極層71を構成する材料とは同一の電極材料からなる。
【0026】
p側透明コンタクト電極30、p側透明配線電極層40及びn側透明配線電極層41は、導電性及び発光層22で発光する光の波長に対して透光性を有する材料からなる。本実施の形態では、p側透明コンタクト電極30、p側透明配線電極層40、及びn側透明配線電極層41は酸化物半導体から形成され、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)から形成される。また、絶縁膜51,61は、電気絶縁性及び発光層22で発光する光の波長に対して透光性を有する材料からなる。この絶縁膜51,61は、例えば、二酸化シリコン(SiO)から主として形成される。
【0027】
また、反射層52,62は、それぞれ絶縁膜51,61の内部に設けられ、発光層22が発する光を反射する金属材料、例えば、Al、Ag、Rh、Pt、Pd等から形成される。絶縁膜51及び61の厚さは、全体にわたって、0.1μm以上1.0μm以下であり、絶縁膜51及び61の内部に設けられる反射層52,62の厚さは、反射層52,62に入射した光を適切に反射させることを目的として、0.05μm以上0.5μm以下である。
【0028】
また、p側配線電極層70及びn側配線電極層71は、例えばNi又はTiと、Auとを含む金属材料などから形成される。p側配線電極層70及びn側配線電極層71をNi又はTiからなる層とAu層とで構成した場合、Au層の厚さは0.05μm以上であることが好ましい。
【0029】
また、p側電極80及びn側電極81の上にはんだ層を設けることができ、はんだ層は、共晶材料、例えば、AuSnから形成することができる。はんだ層は、例えば、真空蒸着法(例えば、電子ビーム蒸着法、又は抵抗加熱蒸着法等)、スパッタ法、めっき法、スクリーン印刷法等により形成することができる。また、はんだ層は、AuSn以外の共晶材料からなる共晶はんだ又はSnAgCu等の鉛フリーはんだから形成することもできる。
【0030】
以上のように構成された発光素子1は、青色領域の波長の光を発するフリップチップ型の発光ダイオード(LED)であり、例えば、発光素子1は、順電圧が2.9Vで、順電流が20mAの場合に、ピーク波長が455nmの光を発する。また、発光素子1の平面寸法は、例えば、縦寸法及び横寸法がそれぞれ略300μm及び500μmである。
【0031】
なお、サファイア基板10の上に設けられるバッファ層からp側コンタクト層までの各層は、例えば、有機金属化学気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition : MOCVD)、分子線エピタキシー法(Molecular Beam Epitaxy : MBE)、ハライド気相エピタキシー法(Halide Vapor Phase Epitaxy : HVPE)等によって形成することができる。ここで、バッファ層がAlNから形成されるものを例示したが、バッファ層はGaNから形成することもできる。また、発光層22の量子井戸構造は、多重量子井戸構造でなく、単一量子井戸構造、歪量子井戸構造にすることもできる。
【0032】
また、絶縁膜51,61は、酸化チタン(TiO)、アルミナ(Al)、五酸化タンタル(Ta)等の金属酸化物、若しくはポリイミド等の電気絶縁性を有する樹脂材料から形成することもできる。そして、反射層52及び62は、Agから形成することもでき、Al又はAgを主成分として含む合金から形成することもできる。また、反射層52及び62は、屈折率の異なる2つの材料の複数の層から形成される分布ブラッグ反射器(Distributed Bragg Reflector : DBR)であってもよい。
【0033】
更に、発光素子1は、紫外領域、近紫外領域、又は緑色領域にピーク波長を有する光を発するLEDであってもよいが、LEDが発する光のピーク波長の領域はこれらに限定されない。なお、他の変形例においては、発光素子1の平面寸法はこれに限られない。例えば、発光素子1の平面寸法を縦寸法及び横寸法がそれぞれ1000μmとなるように設計することもでき、縦寸法と横寸法とが互いに異なるようにすることもできる。
【0034】
(発光素子1の製造工程)
次いで、発光素子1の製造工程について説明する。まず、サファイア基板10を準備して、このサファイア基板10の上に、n型半導体層21と、発光層22と、p型半導体層23とを含むGaN半導体層20を形成する。具体的には、サファイア基板10の上に、バッファ層と、n側コンタクト層と、n側クラッド層と、発光層22と、p側クラッド層と、p側コンタクト層とをこの順にエピタキシャル成長してGaN半導体層20を形成する(半導体層形成工程)。
【0035】
図3(a)〜(i)は、本発明の第1の実施形態の発光素子1の製造工程を説明するための概略平面図であり、説明のため(a)〜(i)の各図は、各製造工程における最上面に形成される層のみを表示するものとする。
【0036】
まず、図3(a)に示すように、後にn側第1絶縁膜開口部56を形成する領域以外の全面にp側透明コンタクト電極30を形成する。本実施形態においてp側透明コンタクト電極30はITOであり、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、ゾルゲル法等により形成することができる。
【0037】
次いで、図3(b)に示すように、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、p側透明コンタクト電極30の一部をエッチングして除去するとともに、p型半導体層23のp側コンタクト層からn型半導体層21のn側コンタクト層の一部までエッチングする。これにより、n側クラッド層からp側コンタクト層までの複数の化合物半導体層から構成されるメサ部が形成され、n側コンタクト層の一部が露出する。
【0038】
次に、表面の全体に亘って第1反射層50の絶縁膜51を形成する。具体的には、p側透明コンタクト電極30、メサ部、及びn側コンタクト層の露出部分を覆うようにして、絶縁膜51を形成する。絶縁膜51は、例えばプラズマCVD法や蒸着により形成することができる(絶縁層形成工程における第1の絶縁層形成工程)。
【0039】
そして、図3(c)に示すように、絶縁膜51の上であってp側第1絶縁膜開口部55及びn側第1絶縁膜開口部56が形成される部分を除く領域に、蒸着法及びフォトリソグラフィー技術を用いて第1反射層50の反射層52を形成する(絶縁層形成工程における第1の反射層形成工程)。
【0040】
次に、再び表面の全体に亘ってプラズマCVD法や蒸着等によって絶縁膜51を形成する(絶縁層形成工程における第2の絶縁層形成工程)。これにより反射層52が絶縁膜51により被覆される。そして、絶縁膜51及び反射層52を図3(d)に示すようにパターンニングし、p側第1絶縁膜開口部55及びn側第1絶縁膜開口部56を形成する。本実施の形態では、p側第1絶縁膜開口部55は、平面視においてGaN半導体層20の外縁側に8つ備えられている。また、n側第1絶縁膜開口部56は、平面視においてGaN半導体層20の中央部に3つ備えられている。
【0041】
次に、図3(e)に示すように、p側透明配線電極層40とn側透明配線電極層41とを第1反射層50の表面の予め定められた領域に同時に形成する。この際、p側第1絶縁膜開口部55内にp側透明配線電極層40の一部が、n側第1絶縁膜開口部56内にn側透明配線電極層41の一部が入り込み、p側透明コンタクト電極30又はn型半導体層21とそれぞれ接触する。
【0042】
本実施形態において、p側透明配線電極層40を構成する材料と、n側透明配線電極層41を構成する材料とは同一材料であり、ITOを用いる。p側透明配線電極層40及びn側透明配線電極層41は、例えば、スパッタリング法を用いて形成される。なお、p側透明配線電極層40及びn側透明配線電極層41を真空蒸着法、CVD法、蒸着法又はゾルゲル法等により形成することもできる。
【0043】
続いて、図3(f)に示すように、真空蒸着法及びフォトリソグラフィー技術を用いて、p側配線電極層70及びn側配線電極層71をそれぞれp側透明配線電極層40及びn側透明配線電極層41の表面の予め定められた一部の領域に同時に形成する。
【0044】
次に、表面の全体に亘ってプラズマCVD法や蒸着等によって第2反射層60の絶縁膜61を形成する。具体的には、p側配線電極層70、n側配線電極層71、p側透明配線電極層40、n側透明配線電極層41、(n側コンタクト層の露出部)及び第1反射層50を覆うようにして、絶縁膜61をプラズマCVD法等により形成する(絶縁層形成工程における第3の絶縁層形成工程)。
【0045】
そして、図3(g)に示すように、p側第1絶縁膜開口部55及びn側第1絶縁膜開口部56の上方にて、p側第1絶縁膜開口部55及びn側第1絶縁膜開口部56を覆うように、蒸着法及びフォトリソグラフィー技術を用いて第2反射層60の反射層62を形成する(絶縁層形成工程における第2の反射層形成工程)。
【0046】
次に、再び表面の全体に亘ってプラズマCVD法や蒸着等によって第2反射層60の絶縁膜61を形成する(絶縁層形成工程における第4の絶縁層形成工程)。これにより反射層62が絶縁膜61により被覆される。そして、絶縁膜61及び反射層62を図3(h)に示すようにパターンニングし、p側第2絶縁膜開口部65及びn側第2絶縁膜開口部66を形成する。
【0047】
次に、図3(i)に示すように、真空蒸着法及びフォトリソグラフィー技術を用いて、それぞれのp側第2絶縁膜開口部65及びn側第2絶縁膜開口部66を通じて、かつ、覆うように、同一材料からなるp側電極80及びn側電極81を同時に形成する(外部電極形成工程)。p側第2絶縁膜開口部65に形成されたp側電極80はp側配線電極層70に電気的に接続するとともに、n側第2絶縁膜開口部66に形成されたn側電極81はn側配線電極層71に電気的に接続する。以上の工程を経て、発光素子1が製造される。
【0048】
以上の工程を経て形成された発光素子1は、導電性材料の配線パターンが予め形成されたセラミック等から構成される配線基板の所定の位置に、フリップチップボンディングにより実装される。そして、基板に実装された発光素子1を、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はガラス等の封止材で一体として封止することにより、発光素子1を発光装置としてパッケージ化できる。
【0049】
(動作)
発光素子1は、p側電極80及びn側電極81に電圧を加えることで、発光層22から光を発する。光の一部は、発光層22から光取り出し方向であるサファイア基板10側に、一部は側方やp側透明コンタクト電極30側に発せられる。
【0050】
発光層22の発光光のうちp側透明コンタクト電極30側に発せられた光の一部は、第1反射層50によって光取り出し方向に反射され、その他の一部は、p側第1反射層開口部55を通過して第2反射層60によって光取り出し方向に反射される。
【0051】
発光光のうちサファイア基板10側に発せられた光もGaN半導体層20とサファイア基板10との界面でp側透明コンタクト電極30側に反射されることがあるが、その光についても第1反射層50により、又はp側第1絶縁膜開口部55及びn側第1絶縁膜開口部56を通過して第2反射層60によって光取り出し方向に反射される。
【0052】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態に係る発光素子1は、p型半導体層23のp側コンタクト層上に設けられるコンタクト電極を発光光に対して透明であるITOとし、その上に第1反射層50を設け、p側透明配線電極層40が設けられる第1反射層50のp側第1絶縁膜開口部55の上方にさらに第2の反射層60を設けたことで、p側透明コンタクト電極30によって光を吸収することなく、光取り出し方向に発光光を高い割合で反射する構造を形成することができる。
【0053】
また、p側配線電極層70及びn側配線電極層71には発光光が入射せず、反射層としての役割を必要としないので、反射率が低くても光の取り出し効率に大きく影響しない。よってp側配線電極層70及びn側配線電極層71として各種の抵抗が低い材料を選択することができる。従って、透明配線電極のシート抵抗が高い場合であっても、発光素子1のキャリア拡散性を向上させ、全体の駆動電圧を低下させることができる。
【0054】
また、p側第1絶縁膜開口部55及びn側第1絶縁膜開口部56の数を増やしても発光光の反射率が低い部分が増大せず、発光面積も減らないため、光度を維持しながらp側透明配線電極層40とp側透明コンタクト電極30の接点、及びn側透明配線電極層41とn型半導体層21との接点を多数設けることができ、駆動電圧を下げることが可能となる。
【0055】
[第2の実施の形態]
図4は、本発明の第2の実施形態に係る発光素子1Aの構造を説明するための概略断面図である。
【0056】
この発光素子1Aは、第1の実施の形態の発光素子1のp側透明コンタクト電極30を透明でないAg、Rh等の高反射材料からなるp側コンタクト電極32に変更し、第1の実施の形態の第1反射層50に替えて反射層を有しない絶縁層53を設けたものである。つまり、この発光素子1Aでは、p側コンタクト電極32が第1の反射層となる。また、n型半導体層21の一部が露出した領域が開口部となる。
【0057】
(動作)
発光素子1Aは、p側電極80及びn側電極81に電圧を加えることで、発光層22から光を発する。その光の一部は、発光層22から光取り出し方向であるサファイア基板10側に、他の一部はp側コンタクト電極32側に発せられる。
【0058】
p側コンタクト電極32側に発せられた光は、その表面でサファイア基板10側に反射される。また、サファイア基板10側に向かった光の一部は、GaN半導体層20とサファイア基板10との界面でメサ部、又はn側コンタクト層に向かって反射し、第2反射層60の反射層62によって光取り出し方向に反射される。
【0059】
(第2の実施の形態の効果)
本実施の形態に係る発光素子1Aは、n型半導体層21のn側コンタクト層上に設けられるn側透明配線電極層41を発光光に対して透明であるITOとし、その上方に第2の反射層60を設けたことで、n側透明配線電極層41によって光を吸収することなく、光取り出し方向に発光光を反射する構造を形成することができる。
【0060】
[第3の実施の形態]
図5は、本発明の第3の実施形態に係る発光素子1Bの構造を説明するための概略断面図である。
【0061】
この発光素子1Bは、n型半導体層21のn側コンタクト層とn側透明配線電極層41との間にn側コンタクト電極31を備えた構成が上記第1の実施の形態に係る発光素子1とは異なる。n側コンタクト電極31は、導電性及び発光層22で発光する光の波長に対して透光性を有する材料からなり、n側透明配線電極層41と同一の電極材料からなる。n側コンタクト電極31は、例えばITOから形成される。
【0062】
図5に示すように、n側コンタクト電極31の一方面側はn側透明配線電極層41に接触し、他方面側はn型半導体層21に接触して、それぞれ電気的に接続されている。
【0063】
(動作)
発光光のうちp側透明コンタクト電極30側に発せられた光の一部は、第1反射層50によって光取り出し方向に反射され、その他の一部は、p側第1絶縁膜開口部55を通過して第2反射層60によって光取り出し方向に反射される。
【0064】
また、発光光のうちサファイア基板10側に発せられた光の一部は、GaN半導体層20とサファイア基板10との界面で反射され、さらにその一部はn側コンタクト電極31を通過して、第1反射層50又は第2反射層60によって光取り出し方向に反射される。
【0065】
(第3の実施の形態の効果)
本実施の形態に係る発光素子1Bは、p型半導体層23及びn型半導体層21のコンタクト層上に設けられるコンタクト電極を発光光に対して透明である材料から形成し、その上に第1反射層50を設け、p側第1絶縁膜開口部55及びn側第1絶縁膜開口部56の上方にさらに第2の反射層60を設けたことで、p側透明コンタクト電極30又はn側コンタクト電極31によって光を吸収することなく、光取り出し方向に発光光を反射する構造を形成することができる。また、n側コンタクト電極31とn側透明配線電極層41とを別に設けることにより、n側コンタクト電極31の形成後であって第1反射層50を形成する前にn側コンタクト電極31に熱を加えて高温処理することで、第1反射層50を熱によって損傷させることなく、n側コンタクト電極31とn型半導体層21との間の接触抵抗を小さくすることができる。
【0066】
本発明は、上記各実施形態及び上記各変形例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。本明細書の中で明示した公開特許公報、特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【符号の説明】
【0067】
1 発光素子
1A 発光装置
1B 発光装置
10 サファイア基板
20 GaN半導体層
21 n型半導体層
22 発光層
23 p型半導体層
30 p側透明コンタクト電極
31 n側コンタクト電極
32 p側コンタクト電極
40 p側透明配線電極層
41 n側透明配線電極層
42 バッファ電極
50 第1反射層
51 絶縁膜
52 反射層
55 p側第1絶縁膜開口部
56 n側第1絶縁膜開口部
60 第2反射層
61 絶縁膜
62 反射層
65 p側第2絶縁膜開口部
66 n側第2絶縁膜開口部
70 p側配線電極層
71 n側配線電極層
80 p側電極
81 n側電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1の半導体層、発光層、及び前記第1導電型と異なる第2導電型の第2の半導体層が積層され、前記第2の半導体層及び前記発光層の一部が除去されて前記第1の半導体層の一部が露出した半導体積層構造と、
前記半導体積層構造の上に、開口部を備えて積層される第1の反射層と、
前記開口部を通じて、前記第1の半導体層又は前記第2の半導体層にキャリアを注入するための透明配線電極と、
前記透明配線電極の上方に前記開口部の少なくとも一部を覆うように積層され、前記開口部を通過した前記発光層の光を前記発光層側に反射する第2の反射層とを備える発光素子。
【請求項2】
一方面側が前記透明配線電極に接触し、他方面側が前記第1の半導体層又は前記第2の半導体層に接触する透明導電膜からなるコンタクト電極をさらに備えた請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記コンタクト電極は、前記透明配線電極と同一の電極材料によって形成された請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第1の反射層は、前記第1の半導体層又は前記第2の半導体層の前記コンタクト電極上の少なくとも一部に設けられる請求項2又は3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記第1の反射層と前記第2の反射層との間、及び前記第1の反射層と前記透明配線電極との間の少なくとも何れかには、絶縁層が形成されている請求項1から4のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項6】
前記第1の反射層上であって前記開口部を除く領域に設けられ、前記透明配線電極と電気的に接続される金属配線電極をさらに有する請求項1から5のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項7】
前記第1の反射層が前記第2の半導体層のコンタクト電極である請求項1に記載の発光素子。
【請求項8】
前記透明配線電極が前記第1の半導体層に接触している請求項7に記載の発光素子。
【請求項9】
前記第1の半導体層のコンタクト電極は透明導電膜であり、この透明導電膜に前記透明配線電極が接触している請求項7に記載の発光素子。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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