説明

発光装置、その製造方法、画像形成装置、および画像読み取り装置

【課題】 レンズを光束の集束効率がよい位置に簡単かつ確実に備えることができる発光
装置を提供する。
【解決手段】 発光装置10は、基板11と、基板11上に形成された発光素子12と、
発光素子12上に成形されて、基板11と協働して発光素子12を封止する透明な封止膜
20と、封止膜20に一体成形され発光素子12に重なるレンズ20Aとを備える。発光
装置の製造時には、発光素子12上に、レンズ20Aの形状部分を含む形状の透明な封止
膜20を、型を用いて成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に発光素子を備えた発光装置、その製造方法、画像形成装置、および
画像読み取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上にEL素子(エレクトロルミネッセンス素子)などの発光素子を備えた発
光装置が、表示装置や電子写真方式の画像形成装置の露光装置などとして広く利用されて
いる。
【0003】
このような発光装置には、発光素子が発する光を集束させたり、平行にしたりするため
のレンズを備えたものがある。例えば特許文献1には、発光素子としての無機EL素子を
基板上に形成した発光装置に、レンズを設けた構成が記載されている。例えば、特許文献
1の図6に記載された発光装置では、樹脂などの透明な接着剤によって発光素子上に透明
なカバーガラスが接着され、そのカバーガラスの表面上に、発光素子と重なる位置にレン
ズが設けられている。接着剤は、発光素子を覆う形状に硬化して、発光素子上にカバーガ
ラスを接着する。したがって、接着剤とカバーガラスは基板と協働して発光素子を封止す
ることになる。カバーガラスの表面上に設けられるレンズは、エッチング処理によってカ
バーガラスの表面上に一体的に形成されるか、または型を用いて成形されてからカバーガ
ラスの表面上に接着される。
【0004】
【特許文献1】特開2004−58448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されているように、発光素子上に接着されるカバーガラスの
表面上にレンズを設ける場合には、発光素子に対してレンズの位置ずれが生じるおそれが
ある。このような位置ずれが生じた場合には、レンズが発光素子と正対せずに、そのレン
ズの機能が充分に発揮できない。しかも、基板上の発光素子とカバーガラス上のレンズと
の間が離れているため、発光素子からの光のうちレンズを透過する光の割合が減少し、光
の利用効率が低下してしまう。
【0006】
本発明の目的は、レンズを光束の集束効率がよい位置に簡単かつ確実に備えることがで
きる発光装置、その製造方法、画像形成装置、および画像読み取り装置を提供することに
ある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発光装置は、基板と、前記基板上に形成された発光素子と、前記発光素子
上に成形されて、前記基板と協働して前記発光素子を封止する透明な封止膜と、前記封止
膜に一体成形され前記発光素子に重なるレンズと、を備える。
【0008】
このように、発光素子上に成形される透明な封止膜にレンズを一体成形することにより
、発光素子直近の封止膜の一部がレンズとして機能することになり、それらの発光素子と
レンズとの間の距離を小さくすることができる。また、発光素子上に直接接着される封止
膜にレンズを一体成形して、発光素子とレンズとの位置関係の精度を高めることができる
。これらの結果、発光素子が発する光を精度よくかつ効率よくレンズに導くことができる
。また、レンズを封止膜に一体成形するため、発光装置の部品点数を削減することもでき
る。
【0009】
好ましい形態においては、前記封止膜に接合された透明な封止基板を備え、前記レンズ
が前記封止基板に埋め込まれている。このように、封止膜上にさらにレンズを囲む形式の
封止基板を備えることにより、封止膜に成形されたレンズを保護することができると共に
、封止膜と封止基板とによって発光素子を2重に封止することができる。また、薄い封止
膜に外力が与えられると、それに重なった発光素子およびこれに通電する導線の損傷、お
よび発光素子を駆動するための回路の短絡のおそれがあるが、封止膜に封止基板が重なっ
たこの好ましい形態によれば、封止基板に外力が与えられても、発光素子、導線および回
路にかかる圧力が低減され、これらの損傷のおそれを低減することができる。
【0010】
本発明の発光装置の製造方法は、基板上に発光素子を形成する工程と、前記発光素子上
に、レンズの形状部分を含む形状の透明な封止膜を、型を用いて成形する工程と、を含む
。このように、型を用いて封止膜とレンズとを一体成形することにより、それらを発光素
子上において同時に成形して、発光装置の製造工程を簡素化することができる。
【0011】
好ましい形態において、前記型として透明な型を用い、前記透明な型は前記封止膜の成
形後も外さずに残す。このように透明な型を残すことにより、その型を封止基板として機
能させることができる。薄い封止膜に外力が与えられると、それに重なった発光素子およ
びこれに通電する導線の損傷、および発光素子を駆動するための回路の短絡のおそれがあ
るが、封止膜に封止基板が重なったこの好ましい形態によれば、封止基板に外力が与えら
れても、発光素子、導線および回路にかかる圧力が低減され、これらの損傷のおそれを低
減することができる。
【0012】
本発明に係る画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体を帯電する帯電器と、複数の
前記発光素子が配列され、前記像担持体の帯電された面に複数の前記発光素子により光を
照射して潜像を形成する前記発光装置と、前記潜像にトナーを付着させることにより前記
像担持体に顕像を形成する現像器と、前記像担持体から前記顕像を他の物体に転写する転
写機と、を備える。前記発光装置は、発光素子が発する光を精度よくレンズに導くことが
できるため、このような発光装置を用いることにより、像担持体に高解像度の潜像を良好
に形成して高品位の画像を形成することができる。
【0013】
本発明に係る画像読み取り装置は、複数の前記発光素子が配列された前記発光装置と、
前記発光素子から発して読み取り対象で反射した光を電気信号に変換する受光装置と、を
備える。前記発光装置は、発光素子が発する光を精度よくレンズに導くことができるため
、このような発光装置を用いることにより、読み取り対象に対して効率よく光を照射する
ことができるため、同程度の照度を得るために、発光素子に与える電圧を従来よりも低減
することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。なお、図
面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0015】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置を示す断面図であり、図2は、その
電気光学装置の平面図である。より具体的には、図1は図2のA−A線矢視断面図である

【0016】
図に例示された発光装置10は、基板11上に複数の発光素子12を備えており、例え
ば、電子写真方式を利用した画像形成装置における像担持体(例えば、感光体ドラム)に
潜像を書き込むためのライン型の光ヘッドとして用いられる。各発光素子12は、有機発
光ダイオード(Organic Light Emitting Diode、以下「OLED」と略称する)素子
であり、印加された電圧に応じて発光する。基板11は、ガラス、プラスチック、セラミ
ックまたは金属などの適切な材料により形成されており、透明であってもよいし不透明で
あってもよい。基板11の上には駆動素子層13が形成されており、その上に複数の発光
素子12が形成されている。駆動素子層13の内部の詳細な図示は省略するが、ここには
、複数のTFT(薄膜トランジスタ)素子およびTFT素子に電流を供給する配線が設け
られている。TFT素子は、それぞれ発光素子12に駆動電圧を与える。
【0017】
発光素子12は、図2に示すように、二列かつ千鳥状のパターンで配列されている。発
光素子12の配列パターンは図示の形態に限定されず、単列または三列以上でもよいし他
の適切なパターンで配列されていてもよい。
【0018】
各発光素子12から発せられた光は、基板11とは反対側に図1中の上方に放出される
。すなわち、発光装置10はトップエミッションタイプのOLED発光パネルである。発
光素子12の各々は、駆動素子層13の上に形成された陽極14と、その陽極14上に成
膜された正孔注入層15と、その上に成膜された発光層16と、その上に成膜された陰極
17とを有する。陰極17は、複数の発光素子12にとって共通である。
【0019】
発光層16から発せられた光を上方に進行させるために、陽極14は、例えばアルミニ
ウムのような光を反射する導電材料で形成されており、一方、陰極17は透明なITO(
Indium Tin Oxide)で形成されている。正孔注入層15および発光層16は、絶縁層1
8および隔壁19によって画定された凹部内に形成されている。その凹部は正孔注入層1
5および発光層16の位置、ひいては発光素子12の位置を規制することになる。正孔注
入層15は、その液状の成形材料を凹部内に付与してから、それを硬化させることにより
形成することができる。正孔注入層15の硬化後に、発光層16は同様にその液状の成形
材料を凹部内に付与してから、それを硬化させることにより形成することができる。正孔
注入層15および発光層16の形成において、液状の材料の供給には、液滴吐出装置(典
型的にはインクジェットプリンタと同じ原理の噴射装置)が使用される。絶縁層18の材
料は例えばSiOであり、隔壁19の材料は例えばポリイミドまたはアクリルである。
【0020】
この実施の形態の各発光素子12の構成は上記の通りであるが、本発明に利用可能な発
光素子のバリエーションとしては、陰極と発光層の間に電子注入層を設けたタイプや、適
切な位置に絶縁層を設けたタイプなど他の層を有するタイプであってもよい。
【0021】
発光層16および隔壁19の上には陰極17が形成され、その陰極17の上には透明な
封止膜20が形成されている。この封止膜20は後述するように型を用いて成形され、そ
の一部には、発光層16の上方に位置する凸状のレンズ20Aが一体成形される。封止膜
20の成形材料としては、例えば、透明なエポキシ系の紫外線硬化性プラスチック、透明
なアクリル系の紫外線硬化性プラスチック、または各種の透明な熱硬化性プラスチックを
用いることができる。封止膜20は、発光素子12を覆うように成形されて基板12に接
合されることにより、基板11と協働して発光素子12を封止し、発光素子12を外気(
特に、水分および酸素)から離隔して、その劣化を抑制する。
【0022】
このように構成された発光装置10は、発光素子12からの光束を凸状のレンズ20A
によって集束させてから、図1中の上方に放出することができる。また、封止膜20の上
方には不図示の集束性レンズアレイが備えられており、その集束性レンズアレイによって
、レンズ20Aからの光をさらに集束して利用することができる。集束性レンズアレイと
は、光を透過させて元の像に対する正立像を結像可能な屈折率分布型レンズが複数配列さ
れたレンズアレイであり、複数の屈折率分布型レンズで結像された像は1つの連続した像
となる。集束性レンズアレイとしては、例えば日本板硝子株式会社から入手可能なSLA
(セルフォック・レンズ・アレイ)がある(セルフォック\SELFOCは日本板硝子株式
会社の登録商標)。例えば、この発光装置10を電子写真方式の画像形成装置におけるラ
イン型の光ヘッドとして用いた場合には、レンズ20Aおよび集束性レンズアレイによっ
て集束された光を感光体ドラムなどの像担持体に到達させて、そこに静電潜像を形成する
ことができる。なお、レンズ20Aの集光性能およびその他の光学的な諸条件によっては
、マイクロレンズは必ずしも備える必要はない。
【0023】
またレンズ20Aは、発光素子12上に直接接着される薄い封止膜20に一体成形され
るため、特別な接着剤などを介さずに、それ自体が直接的に発光素子12上に接着される
ことになる。そのため、レンズ20Aと発光素子12との間の距離がきわめて短くなり、
発光素子12からの光がレンズ20Aに入りやすい。つまり、発光素子12が発する光の
利用効率を大幅に高めることができる。従って、同程度の照度の像を得るために、発光素
子12に与える電圧を従来よりも低減することが可能であり、その分発光素子12の寿命
を延ばすことも可能となる。
【0024】
また、発光素子12からの光束が特別な接着剤などを介さずに直接レンズ20Aに入る
ため、レンズ20Aは、発光素子12からの光束を精度よく集束させて、精密な像を投影
することができる。またレンズ20Aは、発光素子12上に直接接着される封止膜20そ
のものに一体成形されるため、発光素子12に対して高精度に位置決めされることにもな
る。したがってレンズ20Aは、発光素子12と精度よく正対してレンズ機能を充分に発
揮することができる。
【0025】
また封止膜20は、発光素子12に直接接着される接着剤でもある。したがって封止膜
20は、発光素子12を外気から離隔する封止部材としての機能、そのような封止部材を
発光素子12に接着する接着剤としての機能、およびレンズとしての機能を兼有すること
になる。また、発光素子12の封止に欠かせない封止部材としての封止膜20に、レンズ
20Aを一体成形するため、発光装置10の部品点数を削減することができる。
【0026】
また、このような発光装置10のバリエーションとしては、図示しないが、基板11上
にガラス等の透明な封止体を接着剤によって接着し、その封止体が基板11と協働して、
レンズ20Aを含む封止膜20をさらに封止するように構成してもよい。より詳細には、
基板11に成形された封止膜20上に封止体が接着され、その封止体と基板11との間に
形成される封止空間内に、レンズ20Aを含む封止膜20と共に発光素子12が封止され
る。その封止空間には、発光素子12に悪影響を及ぼすおそれのある湿気を吸収するため
の乾燥剤を備えてもよい。すなわちキャップ封止を行ってもよい。また、基板11上に封
止体を接着するための接着剤は、透明であっても透明でなくてもよい。
【0027】
次に、発光装置10の製造方法について説明する。
まず、基板11上に、駆動素子層13、陽極14、絶縁層18、および隔壁19を形成
する。これらの成形方法としては、公知のいずれの方法であってもよいため、その説明は
省略する。
【0028】
その後、絶縁層18および隔壁19によって画定された凹部内の陽極14上に、液滴吐
出装置によって正孔注入層15の材料を投与して、これを硬化させる。正孔注入層15の
硬化後に、絶縁層18および隔壁19によって画定された凹部内の正孔注入層15上に、
液滴吐出装置によって発光層16の材料を投与して、これを硬化させる。さらに複数の発
光素子12の発光層16および隔壁19上に、一様な厚さの陰極17を堆積させる。以下
においては、このように発光素子12が形成されても未だ封止膜20が成形されていない
基板11を”発光装置主体10−1”という。
【0029】
図3(a)から(e)は、封止膜20を成形するための型21の作成方法の説明図であ
る。但し、図3(a)から(d)に示す工程を採用せずに、型21を別の型により成形し
てもよい。型21の材料としては、ガラスまたはプラスチックがあるが、いずれの場合に
も型21を別の型で成形することが可能であるが、特に型21の材料としてプラスチック
を使用する場合には、別の型による成形で図3(e)の型21を作成すると好ましい。そ
のプラスチックは透明であっても不透明であってもよい。しかし、後述する第2の実施の
形態のように、型21が封止膜20の成形後に外されずに残される場合には、透明なプラ
スチックであることが必要である。
【0030】
型21の材料としてガラスを使用する場合もプラスチックを使用する場合も、図3(a
)から(d)に示す工程を採用することができるが、特に型21の材料としてガラスを使
用する場合には、図3(a)から(d)の工程を経て、図3(e)の型21を作成すると
好ましい。そのガラスは透明であっても不透明であってもよい。しかし、後述する第2の
実施の形態のように、型21が封止膜20の成形後に外されずに残される場合には、透明
なガラスであることが必要である。
【0031】
まず、図3(a)のように、型21用の板ガラスを用意し、その一方の面上に、ガラス
エッチングのマスクとなるレジスト膜22を形成する。次に、図3(b)のように、レジ
スト膜22にパターンニングを施して開口22Aを形成する。開口22Aは、レジスト膜
22を貫通する小径の孔である。開口22Aを形成するには、例えば、レジスト膜22の
うち開口22Aを形成すべき領域を露光し、その領域を現像液で溶解して除去すればよい

【0032】
次に、エッチング液(例えば、フッ化水素酸)で型21用の板ガラスをエッチングして
、図3(c)のように、その板ガラスに凹部21Aを形成する。そのエッチングでは、レ
ジスト膜22の開口22Aを通して、エッチング液を板ガラスに徐々に導入する。これに
より、開口22Aの周囲の板ガラスの部分が徐々に溶解し、開口22Aを中心とする半球
状の凹部21Aが形成される。その後、図3(d)のようにレジスト膜22を剥離してか
ら、図3(e)のように、型21の凹部21A側の面を削って、その型21の厚さを小さ
くする。型21を削るには、機械的な研削および研磨でもよいし、例えば凹部21Aにマ
スキングした状態でのエッチングのように化学的に削ってもよい。
【0033】
このように作成した型21を用いて、発光装置主体10−1の上に、図4(a)から(
d)の工程を経て封止膜20を成形する。
まず、図4(a)のように、凹部21Aを上向にした型21をホルダー30内にセット
する。次に、図4(b)のように、ホルダー30内に封止膜20の成形材料を流し込む。
ホルダー30は、封止膜20の成形材料が型21の側方から漏れ出ることを防止し、また
凹部21A内には、封止膜20の成形材料が完全に充填される。封止膜20の成形材料は
、硬化すると所定の屈折率をもつ透明材料である。後述する第2の実施の形態のように、
透明な型21が封止膜20の成形後に外されずに残される場合には、封止膜20の成形材
料として、硬化したときに透明な型21よりも高い屈折率をもつ透明材料を用いる。
【0034】
封止膜20の成形材料としては、透明な紫外線硬化性または熱硬化性のプラスチックを
用いることができ、また屈折率が異なる紫外線硬化型エポキシ系接着剤などの種々の材料
を用いることもできる。具体的には、屈折率がガラスに近い屈折率1.514の紫外線硬
化型エポキシ系接着剤であるダイキン工業(株)製のオプトダイン(商標)UV−3200
、屈折率がガラスよりも大きい屈折率1.63の紫外線硬化型エポキシ系接着剤である(
株)アーデル製のオプトクレーブ(商標)HV153、および屈折率が1.567の紫外
線硬化型エポキシ系接着剤であるダイキン工業(株)製のオプトダイン(商標)UV−40
00を挙げることができる。
【0035】
次に、図4(c)のように、発光素子12を下向きにした発光装置主体10−1をホル
ダー30内に位置決めし、型21と発光装置主体10−1との間の封止膜20の材料を所
定の寸法および形状に圧縮する。封止膜20の成形材料は、型21と発光装置主体10−
1との対向面に密着する。その後、封止膜20の成形材料を硬化させて、封止膜20の成
形を完了させてから、図4(d)のようのようにホルダー30と型21を外す。これによ
り発光装置10が完成する。なお、少なくとも封止膜20の成形材料を流し込む工程(図
4(b))から成形材料を硬化させる工程(図4(c))までは、真空中で行うと好まし
い。真空中で作業を行うことにより、封止膜20の成形材料に気泡が生ずるおそれを低減
することができる。また、気泡が生じたとしても、製造後に大気圧下では気泡が圧縮され
て微小になる。
【0036】
このような発光装置10の製造方法のバリエーションとしては、図示しないが、型21
と発光装置主体10−1との位置関係を上下逆にして、発光素子12を上向にした発光装
置主体10−1と、凹部21Aを下向きにした型21との間に、封止膜の成形空間を形成
するようにしてもよい。
【0037】
<第2の実施の形態>
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る発光装置10を示す断面図である。第2の実
施の形態においては、透明な型21が外されずに残されていることのみが前述した第1の
実施の形態の発光装置10と異なる。
【0038】
すなわち第2の実施の形態においては、型21を封止膜20の成形後も外さずに、それ
を発光装置10の構成部品の一部として残す。その残された型21は、封止膜20によっ
て発光素子12に接着される封止基板として機能し、基板11上に形成される発光素子1
2をより確実に劣化から保護することができる。また、この封止基板には封止膜20のレ
ンズ20Aが埋め込まれる。このように、封止膜20上にさらにレンズ20Aを囲む形式
の封止基板を備えることにより、封止膜20に成形されたレンズ20Aを保護することが
できる。また、薄い封止膜20に外力が与えられると、それに重なった発光素子12およ
びこれに通電する導線の損傷、および発光素子12を駆動するための回路の短絡のおそれ
があるが、封止膜20に封止基板としての型21が重なったこの好ましい形態によれば、
封止基板としての型21に外力が与えられても、発光素子14、導線および回路にかかる
圧力が低減され、これらの損傷のおそれを低減することができる。このように残される型
21は、前述したようにレンズ20Aよりも低い屈折率をもつものである。
【0039】
<画像形成装置>
上述したように、発光装置10は、電子写真方式を利用した画像形成装置における像担
持体に潜像を書き込むためのライン型の光ヘッドとして用いることが可能である。画像形
成装置の例としては、プリンタ、複写機の画像形成部分およびファクシミリの画像形成部
分がある。
【0040】
図6は、前述した第1、第2の実施の形態の発光装置10のいずれかをライン型の光ヘ
ッドとして用いた画像形成装置の一例を示す縦断面図である。この画像形成装置は、ベル
ト中間転写体方式を利用したタンデム型のフルカラー画像形成装置である。
【0041】
この画像形成装置では、同様な構成の4個の有機ELアレイ露光ヘッド10K,10C
,10M,10Yが、同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)110K,11
0C,110M,110Yの露光位置にそれぞれ配置されている。有機ELアレイ露光ヘ
ッド10K,10C,10M,10Yは、上述した第1、第2の実施の形態の発光装置1
0のいずれかである。
【0042】
図6に示すように、この画像形成装置には、駆動ローラ121と従動ローラ122が設
けられており、これらのローラ121,122には無端の中間転写ベルト120が巻回さ
れて、矢印に示すようにローラ121,122の周囲を回転させられる。図示しないが、
中間転写ベルト120に張力を与えるテンションローラなどの張力付与手段を設けてもよ
い。
【0043】
この中間転写ベルト120の周囲には、互いに所定間隔をおいて4個の外周面に感光層
を有する感光体ドラム110K,110C,110M,110Yが配置される。添え字K
,C,M,Yはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの顕像を形成するために使用さ
れることを意味している。他の部材についても同様である。感光体ドラム110K,11
0C,110M,110Yは、中間転写ベルト120の駆動と同期して回転駆動される。
【0044】
各感光体ドラム110(K,C,M,Y)の周囲には、コロナ帯電器111(K,C,
M,Y)と、有機ELアレイ露光ヘッド10(K,C,M,Y)と、現像器114(K,
C,M,Y)が配置されている。コロナ帯電器111(K,C,M,Y)は、対応する感
光体ドラム110(K,C,M,Y)の外周面を一様に帯電させる。有機ELアレイ露光
ヘッド10(K,C,M,Y)は、感光体ドラムの帯電させられた外周面に静電潜像を書
き込む。各有機ELアレイ露光ヘッド10(K,C,M,Y)は、複数のOLED素子1
4の配列方向が感光体ドラム110(K,C,M,Y)の母線(主走査方向)に沿うよう
に設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複数のOLED素子14により光を感光体
ドラムに照射することにより行う。現像器114(K,C,M,Y)は、静電潜像に現像
剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラムに顕像すなわち可視像を形成する

【0045】
このような4色の単色顕像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、
イエローの各顕像は、中間転写ベルト120上に順次一次転写されることにより、中間転
写ベルト120上で重ね合わされて、この結果フルカラーの顕像が得られる。中間転写ベ
ルト120の内側には、4つの一次転写コロトロン(転写器)112(K,C,M,Y)
が配置されている。一次転写コロトロン112(K,C,M,Y)は、感光体ドラム11
0(K,C,M,Y)の近傍にそれぞれ配置されており、感光体ドラム110(K,C,
M,Y)から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写コロトロンの
間を通過する中間転写ベルト120に顕像を転写する。
【0046】
最終的に画像を形成する対象としてのシート102は、ピックアップローラ103によ
って、給紙カセット101から1枚ずつ給送されて、駆動ローラ121に接した中間転写
ベルト120と二次転写ローラ126の間のニップに送られる。中間転写ベルト120上
のフルカラーの顕像は、二次転写ローラ126によってシート102の片面に一括して二
次転写され、定着部である定着ローラ対127を通ることでシート102上に定着される
。この後、シート102は、排紙ローラ対128によって、装置上部に形成された排紙カ
セット上へ排出される。
【0047】
図6の画像形成装置は、書き込み手段として有機ELアレイを有する第1、第2の実施
の形態の発光装置10のいずれかを用いているので、レーザ走査光学系を用いた場合より
も、装置の小型化を図ることができる。また上述した通り、発光装置の発光素子12とレ
ンズ20Aとを高精度に位置決めして、発光素子12が発する光を精度よく集束させるこ
とができるため、高解像度の画像を良好に形成することができる。
【0048】
次に、本発明に係る画像形成装置の他の実施の形態について説明する。
図7は、第1、第2の実施の形態の発光装置10のいずれかをライン型の光ヘッドとし
て用いた他の画像形成装置の縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方
式を利用したロータリ現像式のフルカラー画像形成装置である。図7に示す画像形成装置
において、感光体ドラム(像担持体)165の周囲には、コロナ帯電器168、ロータリ
式の現像ユニット161、有機ELアレイ露光ヘッド167、中間転写ベルト169が設
けられている。
【0049】
コロナ帯電器168は、感光体ドラム165の外周面を一様に帯電させる。有機ELア
レイ露光ヘッド167は、感光体ドラム165の帯電させられた外周面に静電潜像を書き
込む。有機ELアレイ露光ヘッド167は、上述した第1、第2の実施の形態の発光装置
10のいずれかであり、複数の発光素子(OLED素子)12の配列方向が感光体ドラム
165の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複
数の発光素子12により光を感光体ドラムに照射することにより行う。
【0050】
現像ユニット161は、4つの現像器163Y,163C,163M,163Kが90
°の角間隔をおいて配置されたドラムであり、軸161aを中心にして反時計回りに回転
可能である。現像器163Y,163C,163M,163Kは、それぞれイエロー、シ
アン、マゼンタ、黒のトナーを感光体ドラム165に供給して、静電潜像に現像剤として
のトナーを付着させることにより感光体ドラム165に顕像すなわち可視像を形成する。
【0051】
無端の中間転写ベルト169は、駆動ローラ170a、従動ローラ170b、一次転写
ローラ166およびテンションローラに巻回されて、これらのローラの周囲を矢印に示す
向きに回転させられる。一次転写ローラ166は、感光体ドラム165から顕像を静電的
に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写ローラ166の間を通過する中間転写ベ
ルト169に顕像を転写する。
【0052】
具体的には、感光体ドラム165の最初の1回転で、露光ヘッド167によりイエロー
(Y)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Yにより同色の顕像が形成され、
さらに中間転写ベルト169に転写される。また、次の1回転で、露光ヘッド167によ
りシアン(C)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Cにより同色の顕像が形
成され、イエローの顕像に重なり合うように中間転写ベルト169に転写される。そして
、このようにして感光体ドラム9が4回転する間に、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の
顕像が中間転写ベルト169に順次重ね合わせられ、この結果フルカラーの顕像が転写ベ
ルト169上に形成される。最終的に画像を形成する対象としてのシートの両面に画像を
形成する場合には、中間転写ベルト169に表面と裏面の同色の顕像を転写し、次に中間
転写ベルト169に表面と裏面の次の色の顕像を転写する形式で、フルカラーの顕像を中
間転写ベルト169上で得る。
【0053】
画像形成装置には、シートが通過させられるシート搬送路174が設けられている。シ
ートは、給紙カセット178から、ピックアップローラ179によって1枚ずつ取り出さ
れ、搬送ローラによってシート搬送路174を進行させられ、駆動ローラ170aに接し
た中間転写ベルト169と二次転写ローラ171の間のニップを通過する。二次転写ロー
ラ171は、中間転写ベルト169からフルカラーの顕像を一括して静電的に吸引するこ
とにより、シートの片面に顕像を転写する。二次転写ローラ171は、図示しないクラッ
チにより中間転写ベルト169に接近および離間させられるようになっている。そして、
シートにフルカラーの顕像を転写する時に二次転写ローラ171は中間転写ベルト169
に当接させられ、中間転写ベルト169に顕像を重ねている間は二次転写ローラ171か
ら離される。
【0054】
上記のようにして画像が転写されたシートは定着器172に搬送され、定着器172の
加熱ローラ172aと加圧ローラ172bの間を通過させられることにより、シート上の
顕像が定着する。定着処理後のシートは、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印Fの向
きに進行する。両面記録の場合には、シートの大部分が排紙ローラ対176を通過した後
、排紙ローラ対176が逆方向に回転させられ、矢印Gで示すように両面記録用搬送路1
75に導入される。そして、二次転写ローラ171により顕像がシートの他面に転写され
、再度定着器172で定着処理が行われた後、排紙ローラ対176でシートが排出される

【0055】
図7の画像形成装置は、書き込み手段として有機ELアレイを有する露光ヘッド167
(第1、第2の実施の形態の発光装置10のいずれか)を用いているので、レーザ走査光
学系を用いた場合よりも、装置の小型化を図ることができる。また上述した通り、発光装
置の発光素子12とレンズ20Aとを高精度に位置決めして、発光素子12が発する光を
精度よく集束させることができるため、高解像度の画像を良好に形成することができる。
【0056】
以上、第1、第2の実施の形態の発光装置10のいずれかを応用可能な画像形成装置を
例示したが、他の電子写真方式の画像形成装置にも第1、第2の実施の形態の発光装置1
0のいずれかを応用することが可能であり、そのような画像形成装置は本発明の範囲内に
ある。例えば、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムから直接シートに顕像を転写す
るタイプの画像形成装置や、モノクロの画像を形成する画像形成装置にも第1、第2の実
施の形態の発光装置10のいずれかを応用することが可能である。
【0057】
<画像読み取り装置>
また、第1、第2の実施の形態の発光装置10は、画像読み取り装置における読み取り
対象に光を照射するためのライン型の光ヘッドとして用いることが可能である。画像読み
取り装置の例としては、スキャナ、複写機の読み取り部分、ファクシミリの読み取り部分
、バーコードリーダおよび、例えばQRコード(登録商標)のような二次元画像コードを
読む二次元画像コードリーダがある。
【0058】
図8は、第1、第2の実施の形態の発光装置10のいずれかをライン型の光ヘッドとし
て用いた画像読み取り装置の一例を示す縦断面図である。この画像読み取り装置のキャビ
ネット201の上部には、平板状のプラテンガラス202が設けられており、プラテンガ
ラス202には原稿203がその画像面を下方に向けて載置される。そして、図示しない
プラテンカバーが原稿203をプラテンガラス202に向けて押さえる。
【0059】
キャビネット201の内部には、高速キャリッジ204と低速キャリッジ205が横方
向に移動可能に配置されている。高速キャリッジ204には原稿203を照射する有機E
Lアレイ露光ヘッド206(第1、第2の実施の形態の発光装置10のいずれか)と反射
鏡207が搭載されており、低速キャリッジ205には二つの反射鏡208,209が搭
載されている。これらの有機ELアレイ露光ヘッド206および反射鏡207,208,
209は図8の紙面垂直方向(主走査方向)に延びている。また、有機ELアレイ露光ヘ
ッド206は、複数の発光素子(OLED素子)12の配列方向が主走査方向に沿うよう
に設置される。
【0060】
また、キャビネット201の内部の固定位置には、原稿読み取り器210が配置されて
いる。この原稿読み取り器210は、結像レンズ212と、多数の感光画素(電荷結合素
子)から構成されるラインセンサ(受光装置)213を備える。ラインセンサ213は図
8の紙面垂直方向(主走査方向)に延びており、複数の感光画素の配列方向が主走査方向
に沿うように設置される。
【0061】
有機ELアレイ露光ヘッド206(第1、第2の実施の形態の発光装置10のいずれか
)から発した光は、プラテンガラス202を透過して原稿203の下面で反射する。原稿
203からの反射光は、プラテンガラス202を透過し、反射鏡207〜209で反射し
た後、結像レンズ212によりラインセンサ213で結像する。高速キャリッジ204は
横方向に移動して、原稿203の全面が有機ELアレイ露光ヘッド206で照射されるよ
うにし、低速キャリッジ205は高速キャリッジ204の半分の速度で移動して、原稿2
03からラインセンサ213に到る反射光路の長さを一定に維持する。
【0062】
以上、第1、第2の実施の形態の発光装置10のいずれかを応用可能な画像読み取り装
置を例示したが、他の画像読み取り置にも第1、第2の実施の形態の発光装置10のいず
れかを応用することが可能であり、そのような画像読み取り装置は本発明の範囲内にある
。例えば、受光装置が照明装置としての第1、第2の実施の形態の発光装置10のいずれ
かと共に移動してもよいし、受光装置と第1、第2の実施の形態の発光装置10のいずれ
かが共に固定されて原稿または読み取り対象が移動して読み取られるようにしてもよい。
【0063】
<他の応用>
本発明に係る発光装置は、さらに各種の露光装置、照明装置および画像表示装置に応用
することが可能である。
【0064】
また、上記の発光装置では、与えられる電気的なエネルギを光学的エネルギに変換する
発光素子としてOLED素子が使用されているが、他の発光素子(例えば、無機EL素子
やプラズマディスプレイ素子)を発光パネルに使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る発光装置を示す断面図である。
【図2】図1の発光装置の平面図である。
【図3】図1の発光装置に用いる型の作成工程の説明図である。
【図4】図1の発光装置の製造工程の説明図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る発光装置を示す断面図である。
【図6】本発明の第1または第2の実施の形態の発光装置を用いた画像形成装置の一例を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第1または第2の実施の形態の発光装置を用いた画像形成装置の他の例を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第1または第4の実施の形態の発光装置を用いた画像読み取り装置の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0066】
10…発光装置、11…基板、12…発光素子、13…駆動素子層、14…陽極、15
…正孔注入層、16…発光層、17…陰極、18…絶縁層、19…隔壁、20…封止膜、
20A…レンズ、21…型(封止基板)、22…レジスト膜、10K,10C,10M,
10Y,167,206…有機ELアレイ露光ヘッド(発光装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された発光素子と、
前記発光素子上に成形されて、前記基板と協働して前記発光素子を封止する透明な封止
膜と、
前記封止膜に一体成形され前記発光素子に重なるレンズと、
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記封止膜に接合された透明な封止基板を備え、前記レンズが前記封止基板に埋め込ま
れていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
基板上に発光素子を形成する工程と、
前記発光素子上に、レンズの形状部分を含む形状の透明な封止膜を、型を用いて成形す
る工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記型として透明な型を用い、
前記透明な型は前記封止膜の成形後も外さずに残す
ことを特徴とする請求項3に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
像担持体と、
前記像担持体を帯電する帯電器と、
複数の前記発光素子が配列され、前記像担持体の帯電された面に複数の前記発光素子に
より光を照射して潜像を形成する請求項1から請求項4のいずれかに記載の発光装置と、
前記潜像にトナーを付着させることにより前記像担持体に顕像を形成する現像器と、
前記像担持体から前記顕像を他の物体に転写する転写機と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
複数の前記発光素子が配列された請求項1から請求項4のいずれかに記載の発光装置と

前記発光素子から発して読み取り対象で反射した光を電気信号に変換する受光装置と、
を備えることを特徴とする画像読み取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−205364(P2006−205364A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16489(P2005−16489)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】