説明

発光装置、撮像装置、及び発光制御方法

【課題】発光部が経年劣化しても所望する発光色温度で発光することができるようにする。
【解決手段】ストロボ装置は、複数の色のLEDを備えるLEDストロボ106を有し、LEDの色別の発光量比を変化させることでLEDストロボ106の発光色温度が変更可能である。CPU101及び画像色分布判定回路109はLEDストロボを発光させて撮影して得られた画像データの色分布に応じて当該画像データの色温度データを画像色温度データとして求める。CPU及び測色センサ107はLEDストロボによる発光に応じた色温度を設定発光色温度データとして求める。CPU及び電圧・電流制御回路105は画像色温度データ及び設定発光色温度データに基づいて各色のLED毎にその発光量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発光素子の発光量を制御することで発光色温度を変更可能な発光装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カメラで用いられるストロボ装置等の発光装置においては、その光源としてキセノン管等の放電管が用いられている。キセノン管を用いたストロボ装置における発光光(ストロボ光)の色温度は、太陽光付近(6000K)に設定されている。このため、当該色温度と異なる色温度の環境下において、ストロボ装置を用いて撮影を行うと、ストロボ光が照射されている領域と照射されていない領域とで光源の色温度が異なるため、適正なホワイトバランス処理がなされず不自然な色の撮影画像となっていた。
【0003】
そこで、近年、光源としてLED(発光ダイオード)を用いて、ストロボ光の色温度をマニュアル又は自動で変更するようにしたストロボ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。以下、光源としてLEDを用いたストロボ装置をLEDストロボ装置と呼ぶ。
【0004】
また、ストロボ光の色温度の変化を軽減するため、キセノン管等の放電管とは別に、補助発光部として赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の3色のLEDを用いて発光する発光部を設けるようにしたものも提案されている。ここでは、ストロボ光の色温度変化をR・G・Bの3色のLEDの発光量を変化させて放電管と同時に発光するようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−116481号公報
【特許文献2】特開2006−322986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、LEDストロボ装置は、前述のように、光源として赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の3色のLEDを有しており、その使用環境下において各LEDの経年劣化の度合いが異なる。例えば、色温度の低い環境下でストロボ装置を使用する場合には、一般にLEDストロボ装置においてその色温度を低く設定して、撮影画像が不自然な色とならないようにする。この場合には、相対的に赤色LEDの発光量を多くして、青色LEDの発光量を少なくしてストロボ発光を行う。
【0007】
この結果、色温度の低い環境下において、LEDストロボ装置を頻繁に使用すると青色LEDに比べて、赤色LEDが早く劣化してしまうことになる。
【0008】
一方、LEDは一般にパッケージに封入されているが、パッケージに使用されている構成材(例えば、樹脂)は光エネルギーによって劣化していくことが知られている。そして、同一の発光量において、赤色LED、緑色LED、及び青色LEDを使用した場合には、光のエネルギーの強い青色LEDのほうがが赤色LEDよりも早く樹脂が劣化する。
【0009】
このように、赤色LED、緑色LED、及び青色LEDによって、その劣化の度合いが異なる以下のような問題が生じる。すなわち、LEDストロボ装置を使用し始めた初期段階と使用を継続した後とで、初期段階と使用を継続した後とで同様の発光量で各LEDを発光させてもLEDストロボ装置の発光色温度が変わってしまうことになる。この結果、LEDストロボ装置を発光させて撮影を行う際、所望の色合いの撮影画像を得ることができない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、発光部が経年劣化しても所望する発光色温度で発光することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる発光装置は、複数の色の発光素子を備える発光部を有し、前記発光素子の色別の発光量比を変化させることで前記発光部の発光色温度を変更可能な発光装置であって、前記発光部を発光させて撮影して得られた画像データの色分布に応じて当該画像データの色温度データを画像色温度データとして求める画像色温度算出手段と、前記発光部による発光に応じた色温度を設定発光色温度データとして求める発光色温度算出手段と、前記画像色温度データ及び前記設定発光色温度データに基づいて前記発光素子の発光量を制御する発光制御手段とを有することを特徴とする。
【0012】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる撮像装置は、複数の色の発光素子を備える発光部を有し、前記発光素子の色別の発光量比を変化させることで前記発光部の発光色温度を変更可能な撮像装置であって、前記発光部を発光させて撮影して得られた画像データの色分布に応じて当該画像データの色温度データを画像色温度データとして求める画像色温度算出手段と、前記発光部による発光に応じた色温度を設定発光色温度データとして求める発光色温度算出手段と、前記画像色温度データ及び前記設定発光色温度データに基づいて前記発光素子の発光量を制御する発光制御手段とを有することを特徴とする。
【0013】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる発光制御方法は、複数の色の発光素子を備える発光部を有し、前記発光素子の色別の発光量比を変化させることで前記発光部の発光色温度を変更可能な発光装置の発光制御方法であって、前記発光部を発光させて撮影して得られた画像データの色分布に応じて当該画像データの色温度データを画像色温度データとして求める画像色温度算出ステップと、前記発光部による発光に応じた色温度を設定発光色温度データとして求める発光色温度算出ステップと、前記画像色温度データ及び前記設定発光色温度データに基づいて前記発光素子の発光量を制御する発光制御ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発光部が経年劣化しても所望する発光色温度で発光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態によるストロボ装置の一例が用いられるカメラを示すブロック図である。
【図2】図1に示すLEDストロボに備えられた各色のLED群を正面から示す図である。
【図3】図2に示すLEDストロボにおいて赤色(R)LED、緑色(G)LED、及び青色(B)LEDの発光比率(相対強度)と色温度との関係をグラフで示す図である。
【図4】図2に示すLEDストロボにおいて赤色(R)LED、緑色(G)LED、及び青色(B)LEDの発光比率(相対強度)と色温度との関係を説明するための表を示す図である。
【図5】図1に示すLEDストロボ装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】図1に示す内蔵メモリに記憶される差分データの一例を説明するための図である。
【図7】図2に示すLEDに流す電流と発光強度との関係を示す図である。
【図8】図2に示す赤色(R)LEDが劣化した場合を考慮して、設定発光色温度に応じた差分データの記憶について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態による発光装置(ストロボ装置)について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明の実施の形態によるストロボ装置の一例が用いられるカメラを示すブロック図である。図示のカメラ100は、マイクロコンピュータ(以下、CPUと呼ぶ)101を有しており、このCPU101によってカメラ100の各部が制御される。図示のカメラ100においては、撮影レンズ103を通って被写体像(光学像)が撮像素子102に結像される。そして、撮像素子102は結像された光学像を電気信号(画像信号)に変換する。図1には示されていないが、この画像信号は、例えば、画像処理回路によって画像処理された後、画像データとして不図示の記録媒体に記憶される。なお、撮像素子102は、例えば、赤外カットフィルタ及びローパスフィルタ等を含むCCD又はCMOS等の撮像素子である。
【0018】
さらに、カメラ100はメモリ(記憶手段)104を有しており、このメモリ104には、後述する色温度情報(以下、色温度テーブルともいう)が記憶される。また、カメラ100は、電圧・電流制御回路105、LEDストロボ(発光部)106、及び測色センサ107を備えている。そして、LEDストロボ106は、後述するように、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色のLED毎に電圧・電流制御回路105によって駆動制御される。
【0019】
シャッターボタン108が操作されると、CPU101は、その操作を検知して撮影動作を開始するようにカメラ100の各部を制御する。
【0020】
図示のように、撮像素子102の出力信号(つまり、画像信号)は、画像色分布判定回路109に与えられる。そして、画像色分布判定回路109は、後述するようにして、画像信号の色分布判定を行って、その色分布判定結果をCPU101に与える。
【0021】
また、測色センサ107は、外光(周辺光)の色分布を測定するためのセンサであり、測色センサ107で測定された外光の色分布は色分布測定結果としてCPU101に与えられる。この色分布測定結果によって、CPU101は外光における赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の相対比率を知ることができる。CPU101は色分布判定結果及び色分布測定結果に基づいて、後述するようにして、電圧・電流制御回路105を制御する。
【0022】
なお、図示の例では、カメラ100に発光装置であるLEDストロボ装置が内蔵されている構成を説明したが、LEDストロボ装置がカメラ100に着脱可能なものであってもよい。その場合、LEDストロボ装置とカメラ100とを組み合わせて上述した構成要件を満たすようなLEDストロボ装置であればよい。
【0023】
図2は、図1に示すLEDストロボ106に備えられた各色のLED群を正面から示す図である。LEDストロボ106には、複数の色の発光素子、すなわち、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)のLED201〜203がそれぞれ複数備えられている。図示の例では、行方向に沿って赤色(R)LED201、緑色(G)LED202、そして、青色(B)LED203がその順で繰り返し配列されている。
【0024】
LEDストロボ106は、赤色(R)LED201、緑色(G)LED202、及び青色(B)LED203毎にその発光量が調整される。CPU101は後述するように、赤色(R)LED201、緑色(G)LED202、及び青色(B)LED203の発光比率に基づいて電圧・電流制御回路105を制御する。そして、電圧・電流制御回路105によって各LED201に流す順方向電流を調整して、所望の発光色温度に変更可能である。
【0025】
図3は、図2に示すLEDストロボ106において赤色(R)LED201、緑色(G)LED202、及び青色(B)LED203の発光比率(相対強度)と色温度との関係をグラフで示す図である。また、図4は、図2に示すLEDストロボ106において赤色(R)LED201、緑色(G)LED202、及び青色(B)LED203の発光比率(相対強度)と色温度との関係を説明するための表を示す図である。
【0026】
ここでは、緑色(G)LED202の相対強度I(GRN)を”1”とした際、3000K〜10000Kの色温度で発光する場合に、赤色(R)LED201の相対強度I(RED)と青色(B)LED201の相対強度I(BLU)とが出力比率で示されている。
【0027】
図示のように、3000K程度の色温度においては、REDの出力比率が高く、BLUの出力比率は低い。色温度が上昇するに連れて、REDの出力比率は逓減し、BLUの比率は逓増する。そして、6000K付近の色温度において、RED、GRN、及びBLUの出力比率はともに、”1”となる。
【0028】
さらに、色温度が上昇していくと、REDの出力比率は”1”よりも低くなり、BLUの出力比率は”1”よりも大きくなる。そして、10000Kの色温度では、REDの出力比率は、おおよそ”0.75”となり、BLUの出力比率は、おおよそ”1.2”となる。このように、REDの出力比率は色温度の上昇とともに低下し、BLUの出力比率は色温度の上昇とともに増加する。
【0029】
図3又は図4に示す出力比率は、例えば、テーブル(つまり、色温度情報)として、メモリ104に記憶される。前述の測色センサ107からの色分布測定結果によって、CPU101は外光における赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の相対比率を知る。そして、CPU101は、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の相対比率に応じて色温度情報を参照して、外光における色温度を得る。
【0030】
続いて、図1に示すLEDストロボ装置の動作について説明する。
【0031】
図5は、図1に示すLEDストロボ装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0032】
まず、電源がオンとなりカメラ100が動作を開始すると、CPU101は、シャッターボタン108が半押し状態であることを示すスイッチSW1がオン(ON)であるか否か判別する(ステップS101)。そして、スイッチSW1がオフ(OFF)であると、CPU101は待機状態となる。
【0033】
一方、スイッチSW1がオンであると、CPU101は、初期リセットを行って(ステップS102)、入力部(図示せず)から入力された各種スイッチの状態及び予め設定された入力情報を読み込む。そして、CPU101は露光時間(TV)の設定及び絞り値(AV)の設定あるいは種々の撮影モード設定等を実行する。
【0034】
続いて、CPU101は、測色センサ107で計測された色分布結果に応じて、前述したようにして、外光の色温度を得る(ステップS103)。そして、CPU101は、外光の色温度に基づいてLEDストロボ106を発光させる色温度(発光色温度)を設定発光色温度(設定発光色温度データ)として設定する(ステップS104)。
【0035】
次に、CPU101は、シャッターボタン108が全押し状態であることを示すスイッチSW2がオンであるか否かを判別する(ステップS105)。スイッチSW2がオフであると、CPU101はステップS101に戻って処理を続行する。
【0036】
一方、スイッチSW2がオンであると、CPU101は、撮像素子102の露光を開始させる。さらに、CPU101は設定発光色温度に基づいて電圧・電流制御回路105を制御して、電圧・電流制御回路105によってLEDストロボ106を駆動し、LEDストロボ106を発光させる(ステップS106)。
【0037】
続いて、露光が終了すると(ステップS107)、画像色分布判定回路109は撮影して得られた画像信号(画像データ)について、所謂白サーチを行って画像データにおける白部分を探索する。ここで、白サーチとは、画像データから黒体輻射軌跡付近の色を探し出す処理をいうものとする。
【0038】
そして、画像色分布判定回路109は白サーチによって得られた白部分における色分布を判定して色分布判定結果を得る。この色分布判定結果は画像色分布判定回路109からCPU101に与えられる。
【0039】
CPU101では、色分布判定結果で示される赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の比に応じて、前述の色温度情報を検索して、画像データの白部分における色温度を判定色温度(画像色温度データ)として求める(ステップS108)。
【0040】
続いて、CPU101は、設定発光色温度と実際の発光色温度(つまり、判定色温度)とを比較する。言い換えると、CPU101は外光の色温度と撮影画像の色温度との比較演算を実行することになる(ステップS109)。
【0041】
いま、設定発光色温度が3000Kである場合、赤色(R)LED201が緑色(G)及び青色(B)LED202及び203よりも劣化すると、実際の発光色温度は3100Kのように青味寄りとなる。この場合には、設定発光色温度と実際の発光色温度との差は青味寄りに100Kでこの値が差分データとなる。
【0042】
このようにして、CPU101は、実際の発光色温度−設定発光色温度=差分データとする(前述のように、設定発光色温度が3000Kで、実際の発光色温度が3100Kであると、差分データは+100Kとになる)。
【0043】
続いて、CPU101は上記の差分データの信頼性を判定する(ステップS110)。差分データに信頼性がないと判定すると、CPU101は後述するステップS115に移行する。
【0044】
ここで、差分データの信頼性を判定するに当たっては、例えば、外光の影響が大きい場合又は白サーチがうまくいかなかった場合等、設定発光色温度と実際の発光色温度が大きくずれてしまった場合には、CPU101は差分データの信頼性がないとする。
【0045】
なお、外光の影響が大きい場合とは、外光がストロボ光よりも強いような場合をいい、この場合には、ストロボ光の色温度は撮影画像に反映されにくい。また、白サーチがうまくいかなかった場合とは、画像データ内に黒体輻射軌跡付近の色がないような場合であり、この場合には、一般に色温度を求めるための色分布をうまく読み取ることができない。
【0046】
ここでは、LEDの経年劣化等を考慮して、予め閾値を設定しておき、差分データ(差分データの絶対値)がこの閾値以上であると、CPU101は、当該差分データに信頼性がないと判定するようにする。図示の例では、予め設定された閾値(以下、信頼性閾値という)として、例えば、±300Kが用いられる。つまり、差分データが±300Kの範囲にあれば、CPU101は当該差分データには信頼性があると判定することになる。
【0047】
なお、上記の信頼性閾値はLEDストロボ106の発光色温度のバラツキを実際に測定して変更するようにしてもよい。
【0048】
前述のように、差分データに信頼性があると判定すると、すなわち、差分データが信頼性閾値以下であると、CPU101は差分データをメモリ104に記憶する(ステップS111)。
【0049】
なお、メモリ104にはLEDストロボ106における発光のバラツキの影響を考慮して、予め定められた数(例えば、100個)の差分データを記憶させる。そして、CPU101は予め定められた数の差分データを平均化して、平均化差分データとする。この平均化差分データは、後述するように、発光比率(発光量比)を補正する際に用いられる。
【0050】
また、差分データを記憶するに当たって、先入れ先出し(FIFO)方式が用いられる。この結果、CPU101は予め定められた数の差分データをメモリ104に記憶する際、最も古い差分データを破棄して最新の差分データをメモリ104に記憶することになり、蓄積データが更新される(ステップS112)。
【0051】
つまり、撮影を行うたびに、CPU101は差分データをメモリ104に予め定められた数となるまで記憶する。そして、メモリ104に記憶された差分データが予め定められた数となると、それ以降については、CPU101はFIFO方式によってメモリ104に差分データを記憶することになる。
【0052】
ステップS112に続いて、CPU101は、複数の差分データを平均して得られた平均化差分データの絶対値が所定の閾値(以下、補正閾値と呼ぶ)以上か否かについて判定する(ステップS113)。図示の例では、補正閾値として、色温度の異なる二つの撮影画像を並べた際にその違いをユーザーが認識できるか否かの境目である±100Kとした。つまり、CPU101は平均化差分データが±100Kの範囲にあるか否かを判定することになる。
【0053】
図6は、図1に示すメモリ104に記憶される差分データの一例を説明するための図である。
【0054】
図6において、縦軸は差分データ、横軸は差分データについてその新旧の順を表し、新しいものから順に番号が付与されている。前述のように、図示の例では、差分データが信頼性閾値(±300K)を越えると、当該差分データは信頼性がないとして、CPU101はメモリ104に差分データを記憶しない。なお、図7に示す例では、データ番号”2”、”14”、及び”19”の差分データは信頼性がないと判定され、メモリ104には記録されない差分データではあるが、説明のためデータ番号を付けて記載している。すなわち、図7に示す状態においては、実際にメモリ104に記憶されている差分データは、データ番号”2”、”14”、及び”19”の差分データを除いた27個の差分データとなる。
【0055】
また、差分データには前述のようにバラツキが生じるが、このバラツキを抑制するため、予め定められた数の差分データが平均化されて平均化差分データとされる。図7に示す例では、平均化差分データは「+80K」となっており、CPU101は当該平均化差分データについては補正を行わないと判定する。
【0056】
一方、平均化差分データが補正閾値(±100K)以上であると、CPU101は平均化差分データに基づいてLED発光量の補正を行うと判定する。
【0057】
前述のように、平均差分データが補正閾値未満であれば、CPU101は、補正を行わないと判定して、後述するステップS115に処理を移行する。
【0058】
一方、平均差分データが補正閾値以上であると、CPU101は、赤色(R)LED201、緑色(G)LED202、及び青色(B)LED203の色別に発光量(つまり、光量比)の補正を実行する(ステップS114)。つまり、CPU101は、赤色(R)LED201、緑色(G)LED202、及び青色(B)LED203の発光比率の補正を行うことになる。この場合、CPU101は電圧・電流制御回路105を制御して、赤色(R)LED201、緑色(G)LED202、及び青色(B)LED203に流す順方向電流を制御することになる。
【0059】
例えば、平均化差分データが+100K以上の場合には、赤色(R)LED201が緑色(G)LED202及び青色(B)LED203に比べて劣化していると考えられる。この場合には、LEDストロボ106を色温度6000Kで発光しようとしても、R:G:Bの比率は1:1:1になっていない。実際には、R:G:Bの比率が、図4に示す6100K付近の発光比率0.98:1:1.01近傍において、LEDストロボ106は発光する。
【0060】
このため、発光色温度は6000Kとならない。発光色温度を補正するためには、赤色LEDを2%程度強く、青色LEDを1%程度弱く発光させる必要がある。
【0061】
図7は、図2に示すLED201〜203に流す順方向電流と発光強度との関係を示す図である。なお、図8に示す順方向電流と発光強度との関係は、例えば、メモリ104に電流・発光強度テーブルとして記憶されている。
【0062】
図示の例では、順方向電流と発光強度とが比例する直線区間(領域)を使用しており、例えば、補正前においては赤色(R)LED201に6mAの順方向電流を流していたとする。この場合、赤色(R)LED201に流す順方向電流を6.12mAにすると、赤色(R)LED201の発光量は約2%増加する。そして、青色(B)LED203に流す順方向電流についても同様にして補正すれば、R:G:Bの比率を1:1:1に補正することができる。
【0063】
このようにして、平均化差分データが補正閾値以上となると、CPU101は、以後赤色(R)LED201、緑色(G)LED202、及び青色(B)LED203に流す順方向電流を補正することになる。その後、CPU101は撮影後の処理(例えば、画像処理等)を行って(ステップS115)、処理を終了する。
【0064】
ところで、差分データをメモリ104に記憶する際には、設定発光色温度に応じて差分データの領域を数箇所に分けるようにしてもよい。
【0065】
図8は、図2に示す赤色(R)LED201が劣化した場合を考慮して、設定発光色温度に応じた差分データの記憶について説明するための図である。
【0066】
図8において、横軸は設定発光色温度、縦軸は差分データを表す。ここでは、差分データは、設定発光色温度が4500K以下の第1の領域、設定発光色温度が4500K〜7500Kの第2の領域、そして、設定発光色温度が7500K以上の第3の領域に分けられている。
【0067】
図示のように、設定発光色温度が4500K以下の第1の領域では、赤色(R)LED201の発光量は相対的に大きく、このため、赤色(R)LED201の劣化が表れやすい。一方、設定発光色温度が7500K以上の第3の領域では、青色(B)LED202の劣化が表れやすい。
【0068】
このように、差分データを蓄積する領域を分けて、これら第1〜第3の領域毎に差分データを平均化して、領域毎の平均化差分データ、つまり、設定発光色温度に対応する平均化差分データを求める。そして、設定発光色温度に対応する領域の平均化差分データに応じて、CPU101は発光比率の補正を行うか否かを決定するようにすれば、精度の高い発光量補正を行うことができる。
【0069】
つまり、メモリ104には、差分データが設定発光色温度に応じて第1〜第3のグループに分けられて記憶されることになる。そして、CPU101は第1〜第3のグループ毎に平均化差分データを求めて、設定発光色温度に対応するグループの平均化差分データに応じて、発光比率の補正を行うか否かを決定する。
【0070】
なお、上述の例では、カメラ100にLEDストロボ106が内蔵されている例について説明した。しかしながら、外付けのLEDストロボ装置を用いる際には、カメラ100に備えられたCPU101が、LEDストロボ装置に備えられたCPUと通信を行って、ストロボ装置が内蔵するメモリに差分データを記憶させるようにしてもよい。そして、この際には、上記の演算はLEDストロボ装置が備えるCPUによって行われ、電圧・電流制御回路105はLEDストロボ装置に備えられることになる。
【0071】
以上のように、本発明の実施の形態によるLEDストロボ装置では、たとえ、LEDに劣化が生じても、使用初期に近い色温度で発光を行うことができ、所望の色合いの撮影画像を得ることができる。
【0072】
また、上述したように、LED毎の発光量の補正は自動的に行われるので、ユーザーはLEDストロボの色温度の変化を意識することなく撮影を行うことができる。
【0073】
なお、連写ストロボ撮影のように連続してストロボ撮影を行っている途中に平均化差分データが閾値以上となった場合には、連写が終了するまで発光色温度の補正を行わないようにしてもよい。連写ストロボ撮影の途中に発光色温度の補正を行うと、連続して撮影したにもかかわらず得られる連続画像の色合いが途中で変化してしまい画像の連続性が失われてしまうからである。
【0074】
また、本発明の実施の形態では、測色センサ107で測定された外光の色温度に基づいてLEDストロボ106の発光色温度を設定したが、不図示の操作部を介してユーザーが任意の発光色温度を設定してもよい。
【0075】
また、本発明の実施の形態では、LED201〜203の発光比率を補正するために、LED201〜203に流す順方向電流の大きさを変更したが、LED201〜203へ順方向電流を流す時間、すなわち、LED201〜203の発光時間を変更してもよい。
【0076】
なお、上述の説明から明らかなように、CPU101及び画像色分布判定回路109が画像色温度算出手段として機能し、CPU101及び測色センサ107が発光色温度算出手段として機能する。また、CPU101及び電圧・電流制御回路105が発光制御手段として機能することになる。さらに、CPU101は書込み制御手段及び平均化手段としても機能する。
【0077】
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【0078】
例えば、上記の実施の形態の機能を制御方法として、この制御方法を、ストロボ装置が備えるコンピュータに実行させるようにすればよい。また、上述の実施の形態の機能を有するプログラムを制御プログラムとして、この制御プログラムをストロボ装置が備えるコンピュータに実行させるようにしてもよい。
【0079】
この際、制御方法及び制御プログラムは、少なくとも画像色温度算出ステップ、発光色温度算出ステップ、及び発光制御ステップを有することになる。なお、制御プログラムは、例えば、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に記録される。
【0080】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記録媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0081】
100 カメラ
101 CPU
102 撮像素子
103 レンズ
104 メモリ
105 電圧・電流制御回路
106 LEDストロボ
107 測色センサ
108 シャッターボタン
109 画像色分布判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色の発光素子を備える発光部を有し、前記発光素子の色別の発光量比を変化させることで前記発光部の発光色温度を変更可能な発光装置であって、
前記発光部を発光させて撮影して得られた画像データの色分布に応じて当該画像データの色温度データを画像色温度データとして求める画像色温度算出手段と、
前記発光部による発光に応じた色温度を設定発光色温度データとして求める発光色温度算出手段と、
前記画像色温度データ及び前記設定発光色温度データに基づいて前記発光素子の発光量を制御する発光制御手段とを有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記発光制御手段は、前記画像色温度データと前記設定発光色温度データとの差分を示す差分データに応じて前記発光素子の色別の発光量比を補正して前記発光量を制御することを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記撮影のたびに、前記差分データを記憶する記憶手段と、
前記差分データの絶対値が予め設定された信頼性閾値以下である際、当該差分データを前記記憶手段に記憶する書込み制御手段とを有することを特徴とする請求項2記載の発光装置。
【請求項4】
前記記憶手段に記憶された所定の数の差分データを平均化して平均化差分データを得る平均化手段を有し、
前記発光制御手段は、前記平均化差分データが予め定められた補正閾値以上であると、前記平均化差分データに応じて前記発光素子の色別の発光量比を補正することを特徴とする請求項3記載の発光装置。
【請求項5】
前記記憶手段には、前記差分データが前記設定発光色温度データに応じて複数のグループに分けられて記憶され、
前記平均化手段は、前記グループ毎に前記平均化差分データを求めており、
前記発光制御手段は、前記設定発光色温度データに応じた前記グループの平均化差分データを用いて、当該平均化差分データが予め定められた補正閾値以上であると、前記平均化差分データに応じて前記発光素子の色別の発光量比を補正することを特徴とする請求項4記載の発光装置。
【請求項6】
複数の色の発光素子を備える発光部を有し、前記発光素子の色別の発光量比を変化させることで前記発光部の発光色温度を変更可能な撮像装置であって、
前記発光部を発光させて撮影して得られた画像データの色分布に応じて当該画像データの色温度データを画像色温度データとして求める画像色温度算出手段と、
前記発光部による発光に応じた色温度を設定発光色温度データとして求める発光色温度算出手段と、
前記画像色温度データ及び前記設定発光色温度データに基づいて前記発光素子の発光量を制御する発光制御手段とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
複数の色の発光素子を備える発光部を有し、前記発光素子の色別の発光量比を変化させることで前記発光部の発光色温度を変更可能な発光装置の発光制御方法であって、
前記発光部を発光させて撮影して得られた画像データの色分布に応じて当該画像データの色温度データを画像色温度データとして求める画像色温度算出ステップと、
前記発光部による発光に応じた色温度を設定発光色温度データとして求める発光色温度算出ステップと、
前記画像色温度データ及び前記設定発光色温度データに基づいて前記発光素子の発光量を制御する発光制御ステップとを有することを特徴とする発光制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−32619(P2012−32619A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172196(P2010−172196)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】