説明

発光装置、照明装置、ディスプレイ用バックライトおよびディスプレイ

【課題】発光効率および演色性が高く、発光色の色ずれの少ない発光装置を提供する。
【解決手段】駆動電流を流通して発光する光源3と、該光源からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長の光を発する少なくとも1種類の波長変換材料4とを備える発光装置1であって、該発光装置の効率が32lm/W以上、平均演色評価数Raが85以上であり、17.5A/cmの駆動電流密度で得られる発光の色度座標値xをx(17.5)、yをy(17.5)とし、70A/cmの駆動電流密度で得られる発光の色度座標値xをx(70)、yをy(70)としたとき、色度座標値xおよびyのずれ量、[x(17.5)−x(70)]と[y(17.5)−y(70)]が下記式(A)および(B)を満足する。−0.01≦x(17.5)−x(70)≦0.01・・・(A)、−0.01≦y(17.5)−y(70)≦0.01・・・(B)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、照明装置、ディスプレイ用バックライトおよびディスプレイに関する。特に、発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等の光源と、この光源からの光を吸収して異なる波長の光を発する蛍光体等の波長変換材料とを組み合わせてなる発光装置、照明装置、ディスプレイ用バックライトおよびディスプレイに関する。
特に、輝度と演色性が高く、且つ温度特性が安定なために発光色の変移が少ない発光装置、並びにこの発光装置を光源とする照明装置、ディスプレイ用バックライトおよびディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、窒化ガリウム(GaN)系発光ダイオード(LED)等の半導体発光素子と、波長変換材料としての蛍光体とを組み合わせて構成される白色発光の発光装置が、消費電力が小さく長寿命であるという特徴を活かして画像表示装置や照明装置の発光源として注目されている。中でも、In添加GaN系青色LEDと、Ce付活イットリウムアルミニウムガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた白色発光装置が代表的な発光装置として挙げられる。
【0003】
しかし、この発光装置では、赤色領域(600nm以上)の光量が少ないこと、および青緑色領域(480nm〜510nm)の光量が少なく演色性が低いことが指摘されている。また、この発光装置は、高い光量を得るために発光装置に流す電流を増加させると、発光装置で発せられる熱により蛍光体の温度が上昇することに伴って蛍光体の蛍光強度が低下する、所謂温度消光現象が顕著になる。このため、この発光装置を使用する場合、青色LEDからの青色光と蛍光体からの黄色光との混色バランスがずれて白色発光装置の発光色が顕著にずれるなどの問題もあった。更に、発光装置の平均演色評価数Raが低く、また、発光装置を使用する際の発光色の変移が大きくなり安定な発光色が得にくいこともあり、より一層の改良が求められていた。
【0004】
発光装置の演色性が低いという問題を改良すべく、特許文献1では、(Y1−a−bGdCe(Al1−cGa12系緑色蛍光体の発光色に加え、赤色成分を増大させるために(Ca1−a−bSrEu)S系赤色蛍光体からなる蛍光体を使用すること、及び、これらの蛍光体を青色LEDで励起することにより、白色合成光を発する発光装置が得られることを開示している。しかし、これらの蛍光体の組合せによって発光装置の演色性は改善されるものの、組み合わせる蛍光体のいずれもが温度消光現象を顕著に示す物質であるため、発光装置に流す電流値を高くすると、発光装置から発せられる光束が低くなると共に発光色が大きく変移するという問題点があった。
【0005】
また、使用される赤色蛍光体は耐湿性の低い硫化物系赤色蛍光体であるため劣化しやすく、さらにその合成が困難であるために製造コストが高く、得られる白色発光装置が耐久性が低く高価格になるという問題点もあった。さらに、使用される緑色蛍光体の発光色が黄色に偏っているために青緑色領域の発光が不足し演色性が劣るという問題点もあった。
【0006】
非特許文献1には、緑色蛍光体としてSrGa:Eu2+、赤色蛍光体としてZnCdS:Ag,Clを使用した白色発光装置が開示されており、特許文献2では、緑色蛍光体として(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga):Eu2+、赤色蛍光体として(Ca,Sr)S:Eu2+を使用した白色発光装置が開示されている。しかしながら、これらの蛍光体の組合せによっても十分な光束と演色性が得られず、硫化物蛍光体が白色発光装置使用時に劣化し易いという問題があり、また、これらのいずれの蛍光体も温度消光が顕著に観察される物質であるために、白色発光装置への電流増加時に発光色が大きく変移するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−243715号公報
【特許文献2】特表2002−531956号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Electrochem.Soc.Vol.150(2003)pp.H57−H60
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述の従来技術の問題点を解決し、発光効率および演色性が高く、発光色の色ずれの少ない発光装置を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、高い輝度を有し、自然光により近く、発光光量増減に伴う発光色のずれの少ない発光装置、および、その発光装置を光源とする照明装置と、ディスプレイ用バックライトおよびディスプレイを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の三つの特性をすべて満足することにより発光効率が高く、演色性が高く、光量変化に伴う色ずれの少ない発光装置が得られることを見出し、本発明に到達した。
第1:発光装置の発光効率が32lm/W以上であること。
第2:平均演色評価数Raが85以上であること。
第3:二つの異なる駆動電流密度17.5A/cmと70A/cmにおける色度座表値の差が下記(A)および(B)の範囲内にあること。
−0.01≦x(17.5)−x(70)≦0.01 (A)
−0.01≦y(17.5)−y(70)≦0.01 (B)
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
【0011】
(1) 駆動電流を流通させると発光する光源と、該光源からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長を有する光を発する少なくとも1種類の波長変換材料とを備える発光装置であって、
該発光装置の効率が32lm/W以上であり、
平均演色評価数Raが85以上であり、
17.5A/cmの駆動電流密度で得られる発光の色度座標値xをx(17.5)、色度座標値yをy(17.5)とし、
70A/cmの駆動電流密度で得られる発光の色度座標値xをx(70)、色度座標値yをy(70)としたとき、
色度座標値xおよび色度座標値yのずれ量、[x(17.5)−x(70)]と[y(17.5)−y(70)]が下記式(A)および(B)を満足することを特徴とする発光装置。
−0.01≦x(17.5)−x(70)≦0.01 (A)
−0.01≦y(17.5)−y(70)≦0.01 (B)
【0012】
(2) 該波長変換材料として、2種類以上の蛍光体の混合物であって、
25℃においてピーク波長455nmの青色光で励起して得られる蛍光の輝度をBR(25)、色度座標値xをx(25)、色度座標値yをy(25)とし、
125℃においてピーク波長455nmの青色光で励起して得られる蛍光の輝度をBR(125)、色度座標値xをx(125)、色度座標値yをy(125)としたとき、
下記式(C)、(D)及び(E)を満足する蛍光体混合物を用いることを特徴とする(1)に記載の発光装置。
0.85≦BR(125)/BR(25)≦1.15 (C)
−0.03≦x(25)−x(125)≦0.03 (D)
−0.03≦y(25)−y(125)≦0.03 (E)
【0013】
(3) 特殊演色評価数Rが64以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の発光装置。
【0014】
(4) (1)ないし(3)のいずれかに記載の発光装置を備えることを特徴とする照明装置。
【0015】
(5) (1)ないし(3)のいずれかに記載の発光装置を備えることを特徴とするディスプレイ用バックライト。
【0016】
(6) (1)ないし(3)のいずれかに記載の発光装置を備えることを特徴とするディスプレイ。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高い輝度を有し、自然光により近く、発光光量増減に伴う発光色のずれの少ない発光装置、並びに、その発光装置を光源とする照明装置及びディスプレイ用バックライトおよびディスプレイが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態としての発光装置の要部を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態としての発光装置の要部を模式的に示す断面図である。
【図3】図1に示す発光装置を組み込んだ面発光照明装置の一実施例を示す模式的断面図である。
【図4】実施例1の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図5】実施例2の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図6】比較例1の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これらの内容に限定されない。
【0020】
本発明の発光装置は、駆動電流を流通させると発光する光源と、該光源からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長を有する光を発する少なくとも1種類の波長変換材料とを備える発光装置であって、
該発光装置の効率が32lm/W以上であり、
平均演色評価数Raが85以上であり、
17.5A/cmの駆動電流密度で得られる発光の色度座標値xをx(17.5)、yをy(17.5)とし、
70A/cmの駆動電流密度で得られる発光の色度座標値xをx(70)、yをy(70)としたとき、
色度座標値xおよびyのずれ量、[x(17.5)−x(70)]と[y(17.5)−y(70)]が下記式(A)および(B)を満足するものである。
−0.01≦x(17.5)−x(70)≦0.01 (A)
−0.01≦y(17.5)−y(70)≦0.01 (B)
【0021】
ここで発光装置の効率とはJISZ8113「照明用語」において定義されているものであって、光源が発する全光束を、その光源の消費電力で除した値であり、単位は「lm/W」である。本発明において、その具体的な測定方法は、JISZ8724「色の測定方法−光源色」に準じた。
従来、発光効率が30lm/W以下の発光装置は知られていたが、照明用途など大電力を消費する場合には発熱量の軽減のため、発光効率の高いことが望まれている。本発明者等は鋭意検討を重ね32lm/W以上の従来に無い高効率の発光装置を実現した。
【0022】
本発明において、平均演色評価数Raおよび特殊演色評価数RはJISZ8726「光源の演色性評価方法」に準じて測定した。演色評価数はJISZ9112「蛍光ランプの光源色および演色性による区分」によれば、普通形、高演色形に区分される。本発明による発光装置は少なくとも平均演色評価数Raが85以上であり、材料や、発光装置の構造を選択すれば、特殊演色評価数Rにおいて温白色演色AAの最低値64以上、更には、昼光色演色AAAの要求値88を満足することも可能である。
【0023】
[光源]
光源としては、駆動電流を流通させると発光するものであれば、特に制限は無いが、紫外から可視光領域に発光ピーク波長を有するものを使用することが好ましい。光源の発光ピーク波長としては、通常370nm以上、好ましくは380nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下の範囲が好ましい。この範囲の上限を上回る場合や下限を下回る場合には、発光効率の高い発光装置を得るのが難しくなる。
【0024】
本発明においては、この範囲に発光ピーク波長を有する励起光源であれば、半導体発光素子、ランプ、電子ビーム、プラズマ、エレクトロルミネッセンス素子などを使用することができるが、特に発光ダイオード(LED)またはレーザーダイオード(LD)等の半導体発光素子を用いることが好ましい。
【0025】
紫外から可視光領域に発光ピーク波長を有する半導体発光素子の材料としては、例えば、窒化硼素(BN)、シリコンカーバイド(SiC)、ZnSeやGaN、InGaN、InAlGaN、AlGaN、BAlGaN、BInAlGaNなど種々の半導体を挙げることができる。また、これらの元素に不純物元素としてSiやZnなどを含有させ発光中心とすることもできる。中でも、InAlGa1−X−YN(式中、0<X<1、0<Y<1、X+Y≦1)で表される、AlやGaを含む窒化物半導体、あるいはInやGaを含む窒化物半導体(以下、「(In,Al,Ga)N系化合物半導体」と称する場合がある。)は、紫外領域から可視光の短波長を効率よく発光可能であり、使用時の温度や駆動電流の変化に対しても安定に発光可能であるため発光層の材料として好適である。
【0026】
また、半導体発光素子の好ましい構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体発光素子では、半導体層の材料やその混晶比によって発光波長を種々選択することができる。また、活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることでより出力を向上させることもできる。
【0027】
これらのうち(In,Al,Ga)N系化合物半導体を使用した(In,Al,Ga)N系LEDやLDが好ましい。なぜなら、(In,Al,Ga)N系LED等は、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体等の波長変換材料と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常(In,Al,Ga)N系LEDはSiC系LEDの100倍以上の発光強度を有し、またGaAs系LEDよりも使用時の温度や駆動電流の変化に対して安定に発光可能である。(In,Al,Ga)N系LED等においては、AlX’GaY’N発光層、GaN発光層、またはInX’GaY’N発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInGaN発光層を有するものが発光強度が非常に強いので、特に好ましく、(In,Al,Ga)N系LDにおいては、InGaN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。
【0028】
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。(In,Al,Ga)N系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0029】
(In,Al,Ga)N系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、および基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlGaN層、GaN層、またはInGaN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが発光効率が高いため好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが発光効率がさらに高くいため、より好ましい。
【0030】
基板としては、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、GaAs、GaN等の材料が好適に用いられ、特に、サファイア、ZnO、GaN等が好適に用いられる。
【0031】
半導体発光素子の形状や大きさは特に限定されないが、駆動電流の流通方向に垂直な面が、1辺が通常100μm以上、好ましくは200μm以上の角型のものを用いることができる。例えば、EPISTAR社製「ES−CEBL912」、Cree社製「C460MB」などを用いることができる。
【0032】
また、半導体発光素子は1個を単独で用いてもよく、2個以上の半導体発光素子を併用しても良い。さらに、半導体発光素子は1種類のみで用いてもよく、2種類以上のものを併用しても良い。
【0033】
光源の駆動電流密度は、駆動電流の流通方向に垂直な面の単位面積あたりの駆動電流のことであり、光源に流通させる駆動電流の値を駆動電流の流通方向に垂直な面の面積で除することにより求めることができる。2個以上の半導体発光素子を並列に接続して用いる場合は、光源に流通させる駆動電流の値を駆動電流の流通方向に垂直な面の面積の和で除することにより求めることができる。
【0034】
また、光源は、必要に応じて、ヒートシンクを設ける、パッケージを工夫する等により熱を効率的に逃がすことができる構造とすることができる。
【0035】
これまで、In添加GaN系青色LEDと、Ce付活イットリウムアルミニウムガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた白色発光装置が広く使用されてきたが、前述のような演色性が低いという欠点を有する。この課題を解決するため、次の〈1〉〜〈3〉の方式で光源と少なくとも1種以上の蛍光体と併用することによって、所望の色を発する発光装置を構成することが提案されている。
【0036】
〈1〉 波長330nm〜420nmの紫外LED発光装置とこの波長で励起され420nm以上480nm以下の波長に発光ピークを持つ蛍光を発する青色蛍光体と、500nm以上550nm以下の波長に発光ピークを持つ蛍光を発する緑色蛍光体と、550nm以上700nm以下の波長に発光ピークを持つ赤色蛍光体の組合せ。この構成では、LEDが発する紫外線が蛍光体に照射されると、赤、緑、青の3色の光が発せられ、これの混合により白色の発光装置となる。
【0037】
〈2〉 波長420nm〜500nmの青色LEDとこの波長で励起されて550nm以上600nm以下の波長に発光ピークを持つ蛍光を発する黄色ないし赤色発光蛍光体との組み合わせ。この構成では、LEDが発する青色光が蛍光体に照射されると、赤、黄の2色の光が発せられ、これらとLED自身の青色光が混合されて白色または赤みがかった電球色の発光装置となる。
【0038】
〈3〉 波長420nm〜500nmの青色LEDとこの波長で励起されて500nm以上550nm以下の波長に発光ピークを持つ蛍光を発する緑色蛍光体および610nm以上680nm以下の波長に発光ピークを持つ蛍光を発する赤色発光蛍光体との組合せ。この構成では、LEDが発する青色光が蛍光体に照射されると、赤、緑の2色の光が発せられ、これらとLED自身の青色光が混合されて白色の発光装置となる。
【0039】
本発明の発光装置では、上記〈1〉〜〈3〉のいずれの構成を採用することもできるが、いずれの場合も、本発明の発光装置は、17.5A/cmの駆動電流密度で得られる発光の色度座標値xをx(17.5)、色度座標値yをy(17.5)とし、70A/cmの駆動電流密度で得られる発光の色度座標値xをx(70)、色度座標値yをy(70)としたとき、下記式(A)及び(B)を満足する発光装置であることを特徴とする。
−0.01≦x(17.5)−x(70)≦0.01 (A)
−0.01≦y(17.5)−y(70)≦0.01 (B)
【0040】
すなわち、17.5A/cmの駆動電流密度で得られる発光の色度座標値xと色度座標値yに対する、70A/cmの駆動電流密度で得られる発光の色度座標値xと色度座標値yのずれ量に相当する色度座標値の差[x(17.5)−x(70)]と[y(17.5)−y(70)]が±0.01以内である。駆動電流密度の変化に伴う発光の色度座標値のずれが±0.01よりも大きい場合には、発光光量を制御するために駆動電流密度を変化させると色ずれが大きくなって、発光色が不安定となってしまう。
【0041】
この色度座標値xおよび色度座標値yのずれ量は少ないほど好ましい。
すなわち、ずれ量[x(17.5)−x(70)]は、通常−0.005以上、好ましくは−0.004以上、より好ましくは−0.003以上、また、通常0.005以下、好ましくは0.004以下、より好ましくは0.003以下である。さらに、ずれ量[y(17.5)−y(70)]も、通常−0.005以上、好ましくは−0.004以上、より好ましくは−0.003以上、また、通常0.005以下、好ましくは0.004以下、より好ましくは0.003以下である。
【0042】
このような本発明の発光装置を実現するために、使用する蛍光体等の波長変換材料について特段の制限は存在しないが、2種類以上の蛍光体の混合物であって、該蛍光体混合物を、25℃においてピーク波長455nmの青色光で励起して得られる蛍光の輝度をBR(25)、色度座標値xをx(25)、yをy(25)とし、125℃においてピーク波長455nmの青色光で励起して得られる蛍光の輝度をBR(125)、色度座標値xをx(125)、yをy(125)としたとき、下記式(C)、(D)および(E)を満たす蛍光体混合物を用いることが好ましい。
【0043】
0.85≦BR(125)/BR(25)≦1.15 (C)
−0.03≦x(25)−x(125)≦0.03 (D)
−0.03≦y(25)−y(125)≦0.03 (E)
【0044】
本発明に係る蛍光体混合物は、25℃においてピーク波長455nmの青色光で励起して得られる蛍光の輝度[BR(25)]に対する125℃において該青色光で励起して得られる蛍光の輝度[BR(125)]の比率[BR(125)/BR(25)]が、0.85未満の場合や1.15より大きい場合には、そのような蛍光体混合物を用いた白色発光装置などにおいて、それから得られる光量を変化させるために青色LEDに流す電流値を増減すると、得られる発光色が大きく変化し安定な発光色を得ることができないおそれがある。
【0045】
このような場合には、青色LEDに流す電流量を増減させて青色光の光量を増減させた場合に、青色LEDから生じる発熱量の増減によって、青色LEDの近傍に置かれる蛍光体の温度が上下し、蛍光体からの蛍光強度が、青色LEDの光量から期待される蛍光強度から大きくずれてしまうためである。すなわち、白色発光装置の光量の増減を図ろうとして青色LEDに通電する電流量を増減すると、青色LEDからの発光強度と蛍光体からの蛍光強度の混色バランスが崩れて、得られる白色発光装置の発光色が大きく変化してしまう。
【0046】
従って、該輝度の比率[BR(125)/BR(25)]が、通常0.85以上、好ましくは0.9以上であり、また、通常1.15以下、好ましくは1.1以下であり、1.05以下であることが特に好ましい。このような輝度の比率を得るためには、蛍光体混合物を構成する蛍光体としては、蛍光体の温度の上昇に伴い蛍光強度が低下するいわゆる温度消光現象の程度が小さいものを選ぶことが好ましい。
【0047】
また、本発明に係る蛍光体混合物は、25℃においてピーク波長455nmの青色光で励起して得られる蛍光の色度座標値xをx(25)、色度座標値yをy(25)とし、125℃において同青色光で励起して得られる蛍光の色度座標値xをx(125)、色度座標値yをy(125)としたとき、色度座標値xの差[x(25)−x(125)]および色度座標値yの差[y(25)−y(125)]が、−0.03未満の場合や0.03よりも大きい場合には、この蛍光体混合物を使用した白色発光装置の光量増減にともなって顕著な色ずれを起してしまうおそれがある。
【0048】
この色度座標値xの差[x(25)−x(125)]および色度座標値yの差[y(25)−y(125)]は、蛍光体混合物中に含まれる2種類以上の蛍光体のそれぞれの温度消光の程度が大きく異なることによって引き起こされる。すなわち、発光色の異なる2種類以上の蛍光体を含む混合物において、蛍光体の温度消光の程度が異なる場合、例えば、温度上昇に伴う蛍光強度の低下が一つの蛍光体は小さく、もう一つの蛍光体は大きいとすると、それらの異なる発光強度を足し合わせた場合には、温度上昇に伴って発光色が変化し、色ずれを起こすこととなる。
【0049】
従って、蛍光体混合物の温度変化に伴う色度座標値xの差[x(25)−x(125)]および色度座標値yの差[y(25)−y(125)]は小さいほど好ましく、通常−0.03以上、好ましくは−0.02以上、より好ましくは−0.015以上、また、通常0.03以下、好ましくは0.02以下、より好ましくは0.015以下である。
【0050】
このような温度変化に伴う色度座標値xおよびyの差の小さい蛍光体混合物を得るためには、混合物を構成する蛍光色の異なる複数の蛍光体は、その温度消光による蛍光強度の変化率がほぼ一致していることが好ましい。温度消光による蛍光強度の変化率がほぼ等しい蛍光体を組み合わせた際には、各蛍光体の蛍光強度を足し合わせて得られる白色などの混合色が温度変化に関わりなくほぼ同一となり、発光装置の光量変化に伴う温度変化による発光色のずれを少なくすることが可能となる。
【0051】
本発明において、ピーク波長455nmの青色光で蛍光体混合物を励起して得られる輝度と色度座標値xおよび色度座標値yを測定する際には、例えば、ペルチエ素子による冷却機構とヒーターによる加熱機構とを備えており、感度補正や波長補正を行った精度の高いダブルモノクロメーターを装備した蛍光分光光度計を使用する。そして、冷却・加熱機構により制御して、予め25℃または125℃において蛍光体の表面温度が一定となることを放射温度計により確認できるまで十分な時間を保った後に、輝度と色度座標値を測定する。また、励起光である青色光の影響を最小限に抑えるために、励起光の半値幅を20nm以下に狭めると共に、470nm未満の蛍光スペクトルを使用せず、470nm以上の蛍光スペクトルだけを使用して、JISZ8724に定める3刺激値を用いて輝度Yと色度座標値xおよび色度座標値yを算出する。
【0052】
[緑色系蛍光体]
色ずれの少ない発光装置の中でも特に演色性の高い発光装置を得るためには、本発明の発光装置に用いる蛍光体混合物等の波長変換材料は、500nm〜550nmの波長範囲に蛍光強度のピーク値を有する緑色系蛍光体の少なくとも一種を含有することが好ましい。この様な波長範囲に蛍光強度のピーク値を有する緑色系蛍光体を使用することにより、青緑色、緑色、黄緑色などの緑色域についての色再現性の高い発光装置を得ることが出来、更にはこの発光装置を用いることにより該緑色域での色再現性に優れたディスプレイ用バックライト、画像表示装置(ディスプレイ)や照明装置を得ることが可能となる。緑色蛍光体の蛍光強度のピーク値が500nmより短波長の場合や550nmより長波長の場合には、青色LEDと組み合わせて使用する際に緑色域の色再現性が低くなり好ましくない。
【0053】
本発明の波長変換材料が含有し得る、少なくとも一種の、500nm〜550nmの波長範囲に蛍光強度のピーク値を有する緑色系蛍光体としては、蛍光体混合物としたときに、好ましくは前記式(A)〜(C)を満足するものであれば特に制限されないが、酸化物、窒化物、酸窒化物が、熱安定性が良いので好ましい。例えば、MSi:Eu、M−Si−Al−O−N:Ce、M−Si−Al−O−N:Eu(ただしMは1種又は2種以上のアルカリ土類金属を表す。)、好ましくは、SrSi:Eu、Ca−Si−Al−O−N:Ce、Ca−Si−Al−O−N:Eu等が挙げられる。また、他の例としては下記一般式(1)又は(2)で表される母体結晶内に、発光中心イオンとして少なくともCeを含有する蛍光体が、輝度が高く、緑色域での蛍光強度が高く、温度消光が小さいので好ましい。
【0054】
(1)
ここで、Mは2価の金属元素、Mは3価の金属元素、Mは4価の金属元素をそれぞれ示し、a、b、c、dはそれぞれ下記の範囲の数である。
2.7≦a≦3.3
1.8≦b≦2.2
2.7≦c≦3.3
11.0≦d≦13.0
【0055】
(2)
ここで、Mは2価の金属元素、Mは3価の金属元素をそれぞれ示し、e、f、gはそれぞれ下記の範囲の数である。
0.9≦e≦1.1
1.8≦f≦2.2
3.6≦g≦4.4
【0056】
以下、一般式(1)についてより詳しく説明する。
本発明で使用される好適な緑色蛍光体は、下記一般式(1)表される母体結晶内に発光中心イオンとして少なくともCeを含有するものであり、式中、Mは2価の金属元素、Mは3価の金属元素、Mは4価の金属元素をそれぞれ示す。
(1)
【0057】
上記一般式(1)におけるMは2価の金属元素を表すが、発光効率等の面から、Mg、Ca、Zn、Sr、Cd、及びBaからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Mg、Ca、及びZnからなる群から選択される少なくとも1種であることが更に好ましく、Caが特に好ましい。この場合、Caは単独系でもよく、Mgとの複合系でもよい。Mは、基本的には、ここに例示された好ましいとされる元素から選択されることが好ましいが、性能を損なわない範囲で、他の2価の金属元素を含んでいてもよい。
【0058】
また、一般式(1)におけるMは3価の金属元素であるが、上記と同様に発光効率等の面から、Al、Sc、Ga、Y、In、La、Gd、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Al、Sc、Y、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種であるのが更に好ましく、Scが特に好ましい。この場合、Scは単独系でもよく、YまたはLuとの複合系でもよい。Mは、基本的には、ここに例示された好ましいとされる元素から選択されることが好ましいが、性能を損なわない範囲で、他の3価の金属元素を含んでいてもよい。
【0059】
一般式(1)におけるMは4価の金属元素であるが、発光効率等の面から、少なくともSiを含むことが好ましく、通常、Mで表される4価の金属元素の50モル%以上がSiであり、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に90モル%以上がSiであることが好ましい。MのSi以外の4価の金属元素としては、Ti、Ge、Zr、Sn、及びHfからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Ti、Zr、Sn、及びHfからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、Snであることが特に好ましい。特に、MがSiであることが好ましい。Mは、基本的には、ここに例示された好ましいとされる元素からなることが好ましいが、性能を損なわない範囲で、他の4価の金属元素を含んでいてもよい。
【0060】
なお、ここで、性能を損なわない範囲で含むとは、上記M、M及びMそれぞれの金属元素に対し、他元素を、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは1モル%以下で含むことをいう。
【0061】
上記一般式(1)において、a、b、c、dはそれぞれ下記の範囲の数である。
2.7≦a≦3.3
1.8≦b≦2.2
2.7≦c≦3.3
11.0≦d≦13.0
【0062】
本発明に好適に用いられる緑色蛍光体は、前記一般式(1)で表される母体結晶内に発光中心イオン元素として少なくともCeを含有し、発光中心イオン元素が、M、M、Mのいずれかの金属元素の結晶格子の位置に置換するか、或いは、結晶格子間の隙間に配置する等により、a〜dの値は前記範囲の中で変動するが、本蛍光体の結晶構造はガーネット結晶構造であり、a=3、b=2、c=3、d=12の体心立方格子の結晶構造をとるのが一般的である。
【0063】
また、この結晶構造の化合物母体内に含有される発光中心イオン元素としては、少なくともCeを含有し、発光特性の微調整のためにCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選択された1種以上の2価〜4価の元素を含ませることも可能である。特に、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr、Sm、Eu、Tb、Dy、及びYbからなる群から選択された1種以上の2価〜4価の元素を含ませることが可能であり、2価のMn、2価〜3価のEu、3価のTb、又は3価のPrを好適に含有させることができる。
【0064】
発光中心イオン(付活剤)としてのCeの添加量は適切に調節する必要がある。Ce添加量が小さすぎると発光するイオンが少なすぎて発光強度が低く、大きすぎると濃度消光が大きくなって発光強度が下がる。発光強度の観点から、Ceの濃度は、上記一般式(1)で表される母体結晶1モルに対してモル比で0.0001以上、0.3以下の範囲が好ましく、0.001以上、0.1以下の範囲がより好ましく、0.005以上、0.05以下の範囲が更に好ましい。
【0065】
なお、一般式(1)で表される母体結晶内に発光中心イオンとして少なくともCeを含有する蛍光体は、通常420nm〜480nmの光で励起される。そして、得られる発光スペクトルは、500nm〜510nmにピークを持ち、450nm〜650nmの波長成分を有する。
【0066】
次に、一般式(2)についてより詳しく説明する。
本発明の好適な緑色蛍光体は、下記一般式(2)表される母体結晶内に発光中心イオンとして少なくともCeを含有するものであり、ここで、Mは2価の金属元素、Mは3価の金属元素をそれぞれ示す。
(2)
【0067】
また、前記一般式(2)におけるMは2価の金属元素であるが、発光効率等の面から、Mg、Ca、Zn、Sr、Cd、及びBaからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Mg、Sr、Ca、及びZnからなる群から選択される少なくとも1種であることが更に好ましく、Sr又はCaがより好ましく、Caが特に好ましい。この場合、Caは単独系でもよく、Mgとの複合系でもよい。Mは、基本的にはここに例示された好ましいとされる元素から選択されるのが好ましいが、性能を損なわない範囲で、他の2価の金属元素を含んでいてもよい。
【0068】
また、一般式(2)におけるMは3価の金属元素であるが、発光効率等の面から、Al、Sc、Ga、Y、In、La、Gd、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Al、Sc、Y、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種であることが更に好ましく、Scが特に好ましい。この場合、Scは単独系でもよく、YまたはLuとの複合系でもよい。Mは基本的には、ここに例示された好ましいとされる元素から選択されるのが好ましいが、性能を損なわない範囲で、他の3価の金属元素を含んでいてもよい。
【0069】
なお、ここで、性能を損なわない範囲で含むとは、上記M、Mそれぞれの金属元素に対し、他元素を、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは1モル%以下で含むことをいう。
【0070】
上記一般式(2)において、e、f、gで表される元素比は、それぞれ下記の範囲の数であることが、発光特性の面で好ましい。
0.9≦e≦1.1
1.8≦f≦2.2
3.6≦g≦4.4
【0071】
本発明に好適に用いられる緑色蛍光体は、前記一般式(2)で表される母体結晶内に発光中心イオン元素として少なくともCeを含有し、発光中心イオン元素が、M、Mのいずれかの金属元素の結晶格子の位置に置換するか、或いは、結晶格子間の隙間に配置する等により、e〜gの値は前記範囲の中で変動するが、e=1、f=2、g=4であることが好ましい。
【0072】
また、この結晶構造の化合物母体内に含有される発光中心イオン元素としては、少なくともCeを含有し、発光特性の微調整のためにCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選択された1種以上の2価〜4価の元素を含ませることも可能であり、特に、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr、Sm、Eu、Tb、Dy、及びYbからなる群から選択された1種以上の2価〜4価の元素を含ませることが可能であり、2価のMn、2価〜3価のEu、3価のTb、又は3価のPrを好適に添加できる。
【0073】
発光中心イオン(付活剤)としてのCeの添加量は適切に調節する必要がある。Ce添加量が小さすぎると発光するイオンが少なすぎて発光強度が低く、大きすぎると濃度消光が大きくなって発光強度が下がる。発光強度の観点から、Ceの濃度は、上記一般式(2)で表される母体結晶1モルに対してモル比で0.0001以上、0.3以下の範囲が好ましく、0.001以上、0.1以下の範囲がより好ましく、0.005以上、0.05以下の範囲が更に好ましい。
【0074】
一般式(1)で表される母体結晶内に発光中心イオンとして少なくともCeを含有する蛍光体の中では、特にCaScSi12:Ce、Mgを添加したCaScSi12:Ceが好ましい。
これらの中でも、Mgを添加したものが好ましく、特にMgの濃度が母体結晶1モルに対して0.001モル以上、好ましくは0.01モル以上、また、0.5モル以下、好ましくは0.3モル以下であるものが好ましい。このような蛍光体としては、Ca2.97Ce0.03Sc1.97Mg0.03Si12、Ca2.97Ce0.03Sc1.94Mg0.06Si12、Ca2.94Ce0.03Sc1.94Mg0.06Si12、Ca2.94Ce0.06Sc1.97Mg0.03Si12、Ca2.94Ce0.06Sc1.94Mg0.06Si12、Ca2.94Ce0.06Sc1.9Mg0.1Si12、Ca2.9Ce0.1Sc1.97Mg0.03Si12、Ca2.9Ce0.1Sc1.94Mg0.06Si12が挙げられる。
【0075】
また、一般式(2)で表される母体結晶内に発光中心イオンとして少なくともCeを含有する蛍光体の中では、特にCe0.01Ca0.99Sc、Ce0.007Ca0.993Sc,Ce0.013Ca0.987Scが好ましい。Caの一部をSrで置換したCe0.01Ca0.94Sr0.05Sc、Ce0.01Ca0.89Sr0.1Sc、Ce0.01Ca0.84Sr0.15Scも好ましい蛍光体の例である。また、Srを増加させることにより緑色の色純度を向上させることができるので画像表示装置として使用する場合に好ましい。
【0076】
これらの蛍光体は、発光ピーク波長が比較的長波長であり、また輝度が高いため好ましい。
なお、これらの蛍光体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0077】
[赤色系蛍光体]
本発明の発光装置において、色ずれの少ない発光装置の中でも特に演色性の高い発光装置を得るためには、発光装置に用いる蛍光体混合物等の波長変換材料が、610nm〜680nmの波長範囲に蛍光強度のピーク値を有する赤色系蛍光体を少なくとも1種含有することが好ましい。この様な波長範囲に蛍光強度のピーク値を有する赤色系蛍光体を使用することにより、橙色、赤色、深赤色などの赤色域についての色再現性の高い発光装置を得ることができ、更にはこの発光装置を用いることにより該赤色域での色再現性に優れたディスプレイ用バックライト、画像形成装置(ディスプレイ)や照明装置を得ることが可能となる。蛍光強度のピーク値が610nmより短波長の場合には、青色LEDと組み合わせて使用する際に赤色域の色再現性が低くなり、680nmより長波長の場合には演色性は高くなるが、輝度が低くなる傾向にある。
【0078】
本発明に係る波長変換材料が含有し得る、少なくとも一種の、610nm〜680nmの波長範囲に蛍光強度のピーク値を有する赤色系蛍光体としては、蛍光体混合物としたときに、好ましくは前記式(A)〜(C)を満足するものであれば特に制限されないが、酸化物、窒化物、酸窒化物が、熱安定性が良いので好ましい。例えば、MSi10:Eu、MSi:Eu、(ただし、Mは1種又は2種以上のアルカリ土類金属元素を表す。)、好ましくは、BaSi10:Eu、(Ca,Ba,Sr)Si:Eu等が挙げられる。また、他の例としては、下記一般式(3)で表される蛍光体が挙げられ、該蛍光体混合物等の波長変換材料はこの蛍光体を含有することにより、輝度が高く、赤色域での蛍光強度が高く、温度消光が小さいので好ましい。
hijkm (3)
【0079】
上記一般式(3)において、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であって、Aは、M元素以外の2価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素を表し、Dは、4価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素を表し、Eは、3価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素を表し、Xは、O、N、Fからなる群からから選ばれる1種または2種以上の元素を表す。
【0080】
また、上記一般式(3)中、h、i、j、k、及びmはそれぞれ下記範囲の数である。
0.00001≦h≦0.1
h+i=1
0.5≦j≦4
0.5≦k≦8
0.8×(2/3+4/3×j+k)≦m
m≦1.2×(2/3+4/3×j+k)
【0081】
上記一般式(3)において、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であるが、中でも、Mn、Ce、Sm、Eu、Tb、Dy、Er、及びYbからなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であることが好ましく、少なくともEuを含むものであることが更に好ましい。
【0082】
また、上記一般式(3)において、Aは、M元素以外の2価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であるが、中でも、Mg、Ca、Sr、及びBaからなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であることが好ましく、Caであることが更に好ましい。
【0083】
さらに、上記一般式(3)において、Dは、4価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であるが、中でも、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfからなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であることが好ましく、Siであることが更に好ましい。
【0084】
また、上記一般式(3)において、Eは、3価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であるが、中でも、B、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Gd、及びLuからなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であることが好ましく、Alであることが更に好ましい。
【0085】
さらに、上記一般式(3)において、Xは、O、N、及びFからなる群からから選ばれる1種または2種以上の元素であるが、中でも、N、またはNとOからなることが好ましい。XがNとOからなる場合、蛍光体中のOと(O+N)の比が0<{(Oの原子数)/(Oの原子数+Nの原子数)}≦0.5が好ましい。この値が、この範囲を超えて大きすぎると発光強度が低くなる虞がある。発光強度の観点からは、この値は、0.3以下がより好ましく、0.1以下が発光波長640nm〜660nmに発光ピーク波長を持つ色純度の良い赤色蛍光体となるので、更に好ましい。また、この値を0.1〜0.3とすることにより発光ピーク波長を600nm〜640nmに調整することができ、人間の視感度が高い波長域に近づくために輝度の高い発光装置が得られるので、別の観点から好ましい。
【0086】
また、上記一般式(3)において、hは発光中心となる元素Mの含有量を表し、蛍光体中のMと(M+A)の原子数の比h{ただし、h=(Mの原子数)/(Mの原子数+Aの原子数)}が0.00001以上0.1以下となるようにするのがよい。h値が0.00001より小さいと発光中心となるMの数が少ないため発光輝度が低下する虞がある。h値が0.1より大きいとMイオン間の干渉により濃度消光を起こして輝度が低下する虞がある。中でも、MがEuの場合には発光輝度が高くなる点で、h値が0.002以上0.03以下であることが好ましい。
【0087】
さらに、上記一般式(3)において、jはSiなどのD元素の含有量であり、0.5≦j≦4で示される量である。好ましくは、0.5≦j≦1.8、さらに好ましくはj=1がよい。jが0.5より小さい場合および4より大きい場合は、発光輝度が低下する虞がある。また、0.5≦j≦1.8の範囲は発光輝度が高く、中でもj=1が特に発光輝度が高い。
【0088】
さらに、上記一般式(3)において、kはAlなどのE元素の含有量であり、0.5≦k≦8で示される量である。好ましくは、0.5≦k≦1.8、さらに好ましくはk=1がよい。k値が0.5より小さい場合および8より大きい場合は発光輝度が低下する虞がある。また、0.5≦k≦1.8の範囲は発光輝度が高く、中でもk=1が特に発光輝度が高い。
【0089】
さらに、上記一般式(3)において、mはNなどのX元素の含有量であり、0.8×(2/3+4/3×j+k)以上、1.2×(2/3+4/3×j+k)以下で示される量である。さらに好ましくは、m=3がよい。mの値が上記範囲外となると、発光輝度が低下する虞がある。
【0090】
以上の組成の中で、発光輝度が高く好ましい組成は、少なくとも、M元素にEuを含み、A元素にCaを含み、D元素にSiを含み、E元素にAlを含み、X元素にNを含むものである。中でも、M元素がEuであり、A元素がCaであり、D元素がSiであり、E元素がAlであり、X元素がNまたはNとOとの混合物の無機化合物が望ましい。
【0091】
この蛍光体は、少なくとも580nm以下の光で励起され、特に400nm〜550nmで最も効率がよい。発光スペクトルは、580nm〜720nmにピークを有する。
【0092】
また、赤色系蛍光体としては最密充填構造に近い結晶であるものが、熱安定性が良いので好ましい。さらに赤色系蛍光体に含まれる窒素原子として3配位の窒素原子を含むものが、熱安定性が良いので好ましい。赤色系蛍光体に含まれる窒素原子のうち、3配位の窒素原子の含有量が20%以上、好ましくは40%以上、特に60%以上であることが好ましい。ここで、MSi:Eu(ただし、Mは1種又は2種以上のアルカリ土類金属を表す。)は3配位の窒素原子の含有量が50%であり、上記式(3)で表される蛍光体、例えば:(Ca,Sr)AlSiN:Euは3配位の窒素原子の含有量が66%である。
【0093】
なお、これらの蛍光体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0094】
上記蛍光体の粒径は、通常150μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下とすることが望ましい。この範囲を上回ると、白色発光装置とした場合に発光色のばらつきが大きくなると共に、蛍光体とバインダ(封止剤)とを混合した場合には蛍光体を均一に分散させることが困難となる虞がある。また、粒径の下限は、通常1μm以上、好ましくは5μm以上とすることが望ましい。この範囲を下回ると、発光効率が低下する虞がある。同様に、中央粒径(D50)は、通常2μm〜50μm、好ましくは5μm〜20μmとすることが望ましい。また、蛍光体の粒度分布は比較的狭いものが好ましい。本発明において、粒径、中央粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される重量基準粒度分布曲線から求めることができる。
【0095】
なお、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体の発光効率のバランスや、赤色系蛍光体がどの程度緑色系蛍光体からの発光を吸収するかにもよるが、上記緑色系蛍光体と上記赤色系蛍光体を混合して用いる場合は、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体の合計重量に対して、緑色系蛍光体を重量百分率で、通常65%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上含有することが好ましい。緑色系蛍光体の重量百分率がこの範囲よりも小さい場合は、高輝度で演色性が高く好ましい白色を示す白色発光装置を得ることができず、赤みの強い白色発光装置となる虞がある。また、白色発光装置とするためには、緑色系蛍光体の重量百分率は、通常99%以下、好ましくは98%以下、より好ましくは97%以下である。
【0096】
また、半導体発光素子からの発光波長における赤色系蛍光体の吸収効率が、緑色系蛍光体の発光ピーク波長における赤色系蛍光体の吸収効率より大きいことが好ましく、この場合には、半導体発光素子からの発光が赤色系蛍光体に吸収されて赤色系蛍光体が励起されて発光する確率が、緑色系蛍光体からの発光が赤色系蛍光体に吸収されて赤色系蛍光体が励起されて発光する確率より高くなり、発光効率がより高い発光素子を得ることができるので好ましい。
【0097】
[蛍光体の発光効率]
本発明に係る蛍光体混合物等の波長変換材料を構成する蛍光体は、その発光効率が20%以上であることが好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上であることが更に好ましく、発光効率は高いほど良い。蛍光体の発光効率が20%より低いと輝度の高い発光装置が得られない。なお、発光効率は、蛍光体に照射された光の量子数に対する蛍光体から発せられる光の量子数として定義する。
【0098】
以下に、本発明の第1の発光装置において定義される蛍光体の発光効率を、量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積により求める方法を説明する。
まず、測定対象となる蛍光体サンプル(例えば、粉末状など)を、測定精度が保たれるように、十分に表面を平滑にしてセルに詰め、積分球などの集光装置に取り付ける。積分球などの集光装置を用いるのは、サンプルで反射したフォトン及びサンプルからフォトルミネッセンスで放出されたフォトンを全て計上できるようにする、すなわち、計上されずに測定系外へ飛び去るフォトンをなくすためである。
【0099】
この積分球などに蛍光体を励起する発光源を取り付ける。この発光源は、例えばXeランプ等であり、発光ピーク波長が例えば455nmとなるようにフィルターやモノクロメーター等を用いて調整がなされる。この455nmの波長ピークを持つように調整された発光源からの光を、測定しようとしているサンプルに照射し、その発光スペクトルを分光測定装置、例えば大塚電子株式会社製MCPD2000などを用いて測定する。この測定スペクトルには、実際には、励起発光光源からの光(以下では単に励起光と記す。)でフォトルミネッセンスによりサンプルから放出されたフォトンの他に、サンプルで反射された励起光の分のフォトンの寄与が重なっている。
【0100】
吸収効率αqは、サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsを励起光の全フォトン数Nで割った値である。
【0101】
まず、後者の励起光の全フォトン数Nを、次のようにして求める。すなわち、励起光に対してほぼ100%の反射率Rを持つ物質、例えばLabsphere製「Spectralon」(450nmの励起光に対して98%の反射率を持つ。)等の反射板を、測定対象として該分光光度計に取り付け、反射スペクトルIref(λ)を測定する。ここでこの反射スペクトルIref(λ)から下記(式I)で求められた数値は、Nに比例する。
【0102】
【数1】

【0103】
ここで、積分区間は実質的にIref(λ)が有意な値を持つ区間のみで行ったものでよい。
前者のサンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsは下記(式II)で求められる量に比例する。
【0104】
【数2】

【0105】
ここで、I(λ)は、吸収効率αqを求めようとしている対象サンプルを取り付けたときの、反射スペクトルである。(式II)の積分範囲は(式I)で定めた積分範囲と同じにする。このように積分範囲を限定することで、(式II)の第二項は,対象サンプルが励起光を反射することによって生じたフォトン数に対応したもの、すなわち、対象サンプルから生ずる全フォトンのうち励起光によるフォトルミネッセンスで生じたフォトンを除いたものに対応したものになる。実際のスペクトル測定値は、一般にはλに関するある有限のバンド幅で区切ったデジタルデータとして得られるため、(式I)および(式II)の積分は、そのバンド幅に基づいた和分によって求まる。
以上より、αq=Nabs/N=(式II)/(式I)と求められる。
【0106】
次に、内部量子効率ηiを求める方法を説明する。ηiは、フォトルミネッセンスによって生じたフォトンの数NPLをサンプルが吸収したフォトンの数Nabsで割った値である。
ここで、NPLは、下記(式III)で求められる量に比例する。
【0107】
【数3】

【0108】
この時、積分区間は、サンプルからフォトルミネッセンスによって生じたフォトンが持つ波長域に限定する。サンプルから反射されたフォトンの寄与をI(λ)から除くためである。具体的に(式III)の積分の下限は、(式I)の積分の上端を取り、フォトルミネッセンス由来のスペクトルを含むのに好適な範囲を上端とする。
以上により、ηi=(式III)/(式II)と求められる。
【0109】
なお、デジタルデータとなったスペクトルから積分を行うことに関しては、αqを求めた場合と同様である。
そして、上記のようにして求めた量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積をとることで、本発明で定義される発光効率を求める。
【0110】
本発明で用いられる蛍光体は、一般的な固相反応法によって合成することができる。例えば、蛍光体を構成する金属元素源となる原料化合物を、乾式法或いは湿式法により、粉砕・混合して粉砕混合物を調製し、得られた粉砕混合物を加熱処理して反応させることにより製造することができる。
【0111】
また、窒化物又は酸窒化物蛍光体の場合は、蛍光体を構成する金属元素を少なくとも2種類以上含有する合金、好ましくは蛍光体を構成する金属元素を全て含有する合金を作成し、得られた合金を窒素含有雰囲気中、加圧下で加熱処理することにより、製造することができる。また、蛍光体を構成する金属元素の一部を含有する合金を作成し、得られた合金を窒素含有雰囲気中、加圧下で加熱処理した後、更に蛍光体を構成する残りの金属元素源となる原料化合物と混合、加熱処理することにより、製造することもできる。
このように合金を経て製造された蛍光体は、不純物が少なく、輝度が高い蛍光体となる。
【0112】
本発明の発光装置は、具体的には波長変換材料としての蛍光体を少なくとも2種類含む蛍光体混合物と、可視光を発光する半導体発光装置、例えばLEDやLD等の半導体発光装置とを用いて構成され、半導体発光装置の発する可視光を吸収してより長波長の可視光を発する高輝度で演色性が高く光量増減に伴う色ずれの少ない発光装置を実現する。そのため、このような特性を有する本発明の発光装置は、カラー液晶ディスプレイ等のディスプレイ用バックライトや面発光等の照明装置等の光源として好適である。
【0113】
以下、図面を参考して本発明の発光装置の実施形態をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0114】
(1)第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態としての発光装置の要部を模式的に示す図である。
本実施形態の発光装置1は、フレーム2と、光源である青色LED(青色発光部)3と、青色LED3から発せられる光の一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光発光部4で主に構成される。
【0115】
フレーム2は、青色LED3、蛍光発光部4を保持するための樹脂製の基部である。フレーム2の上面には、図中上側に開口した断面台形状の凹部(窪み)2Aが形成されている。これにより、フレーム2はカップ形状となっているため、発光装置1から放出される光に指向性をもたせることができ、放出する光を有効に利用できるようになっている。
【0116】
さらに、フレーム2の凹部2Aの内面は、銀などの金属メッキにより、可視光域全般の光の反射率を高められていて、これにより、フレーム2の凹部2A内面に当たった光も、発光装置1から所定方向に向けて放出できるようになっている。
【0117】
フレーム2の凹部2Aの底部には、光源として青色LED3が設置されている。青色LED3は、電力を供給されることにより青色の光を発するLEDである。この青色LED3から発せられた青色光の一部は蛍光発光部4内の発光物質(波長変換材料:ここでは、蛍光体混合物)に励起光として吸収され、また別の一部は、発光装置1から所定方向に向けて放出されるようになっている。
【0118】
また、前記のように、青色LED3はフレーム2の凹部2Aの底部に設置されているのであるが、ここでは、フレーム2と青色LED3との間は銀ペースト(接着剤に銀粒子を混合したもの)5によって接着され、これにより、青色LED3はフレーム2に設置されている。さらに、この銀ペースト5は、青色LED3で発生した熱をフレーム2に効率よく放熱する役割も果たしている。
【0119】
フレーム2には、青色LED3に電力を供給するための金製のワイヤ6が取り付けられており、青色LED3と青色LED3の上面に設けられた電極(図示省略)とが、ワイヤ6を用いたワイヤボンディングによって結線されている。このワイヤ6を通電することによって青色LED3に電力が供給され、青色LED3が青色光を発するようになっている。なお、ワイヤ6は青色LED3の構造にあわせて1本または複数本が取り付けられる。
【0120】
フレーム2の凹部2Aには、青色LED3から発せられる光の一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光発光部4が設けられている。蛍光発光部4は、蛍光体と透明樹脂とで形成されている。蛍光体は、青色LED3が発する青色光により励起されて、青色光よりも長波長の光である光を発する物質(波長変換材料)である。蛍光発光部4を構成する蛍光体は1種類であっても良いし、複数からなる混合物であってもよく、青色LED3の発する光と蛍光体発光部4の発する光の総和が所望の色になるように選べばよいが、本発明では、好ましくは、前述の式(C)〜(E)を満足する蛍光体混合物を用いる。色は白色だけでなく、黄色、オレンジ、ピンク、紫、青緑等であっても良い。また、これらの色と白色との間の中間的な色であっても良い。また、透明樹脂は蛍光発光部4のバインダであり、ここでは、可視光を全波長領域に亘って透過させることができる合成樹脂としてエポキシ樹脂が用いられている。
【0121】
モールド部8は、青色LED3、蛍光発光部4、ワイヤ6などを外部から保護するとともに、配光特性を制御するためのレンズとしての機能を持つ。モールド部8には主にエポキシ樹脂等の樹脂が用いられる。
【0122】
(2)第2実施形態
図2は本発明の第2実施形態としての発光装置の要部を模式的に示す図である。
本実施形態の発光装置10は、フレーム12と、光源である青色LED(青色発光部)13と、青色LED13から発せられる光の一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光発光部14とで主に構成される。
【0123】
フレーム12は、青色LED13、蛍光発光部14を保持するための樹脂製の基部である。フレーム12の上面には、図中上側に開口した断面台形状の凹部(窪み)12Aが形成されている。これにより、フレーム12はカップ形状となっているため、発光装置10から放出される光に指向性をもたせることができ、放出する光を有効に利用できるようになっている。
【0124】
また、凹部12Aの底部には、発光装置10の外部から電力を供給される図示しない電極が設けられていて、この電極から、青色LED13に電力を供給できるようになっている。
フレーム12の凹部12Aの内面は、可視光域全般の光の反射率が高かい材質からなる。これにより、フレーム12の凹部12A内面に当たった光も、発光装置10から所定方向に向けて放出できるようになっている。なお、電極は可視光域全般の光の反射率が高い金属メッキが施される。
【0125】
フレーム12の凹部12Aの底部には、光源として青色LED13が設置されている。青色LED13は、電力を供給されることにより青色の光を発するLEDである。この青色LED13から発せられた青色光の一部は蛍光発光部14内の発光物質(ここでは、蛍光物質)に励起光として吸収され、また別の一部は、発光装置10から所定方向に向けて放出されるようになっている。
【0126】
フレーム12の凹部12Aの底部に設置された青色LED13とフレーム12との間は銀ペースト(接着剤に銀粒子を混合したもの)15によって接着され、これにより、青色LED13はフレーム12に設置されている。さらに、この銀ペースト15は、青色LED13で発生した熱をフレーム12に効率よく放熱する役割も果たしている。
【0127】
フレーム12には、青色LED13に電力を供給するための金製のワイヤ16が取り付けられており、青色LED13とフレーム12の凹部12Aの底部に設けられた電極(図示省略)とが、ワイヤ16を用いてワイヤボンディングによって結線されていて、このワイヤ16を通電することによって青色LED13に電力が供給され、青色LED13が青色光を発するようになっている。なお、ワイヤ16は青色LED13の構造ににあわせて1本または複数本が取り付けられる。
【0128】
フレーム12の凹部12Aには、青色LED13から発せられる光の一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光発光部14が設けられている。蛍光発光部14は、蛍光体と透明樹脂とで形成されている。蛍光体は、青色LED13が発する青色光により励起されて、青色光よりも長波長の光である光を発する物質である。蛍光発光部24を構成する蛍光体は1種類であっても良いし、複数からなる混合物であってもよく、青色LED13の発する光と蛍光体発光部14の発する光の総和が所望の色になるように選べばよいが、本発明では、好ましくは、前述の式(C)〜(E)を満たす蛍光体混合物を用いる。色は白色だけでなく、黄色、オレンジ、ピンク、紫、青緑等であっても良い。また、これらの色と白色との間の中間的な色であっても良い。また、透明樹脂は蛍光発光部14のバインダであり、ここでは、可視光を全波長領域に亘って透過させることができる合成樹脂であるエポキシ樹脂またはシリコーン樹脂が用いられている。
【0129】
図3は、図1に示す発光装置1を組み込んだ面発光照明装置9を示すが、図3に示されるように、照明装置内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース9Aの底面に、多数の発光装置1を、その外側に発光装置1の駆動のための電源および回路等(図示せず。)を設けて配置し、保持ケース9Aの蓋部に相当する箇所に、白色としたアクリル板等の拡散板9Bを発光の均一化のために固定してなる。
【0130】
そして、面発光照明装置9を駆動して、発光装置1の青色LED3に電圧を印加することにより青色光等を発光させ、その発光の一部を、蛍光発光部4における波長変換材料としての蛍光体混合物が吸収し、より長波長の光を発光し、一方、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により演色性の高い発光が得られ、この光が拡散板9Bを透過して、図面上方に出射され、保持ケース9Aの拡散板9B面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
【0131】
同様に、本発明の発光装置は、カラー液晶ディスプレイ等のディスプレイの光源、すなわちバックライトとして組み込むことも出来る。この場合は、通常、カラーフィルターとともに用いられる。
【実施例】
【0132】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
以下においては、上述した本発明の第1実施形態の発光装置と同様の構成の発光装置を作製し、その発光効率および演色性を評価した。なお、以下の実施例及び比較例の各構成要素のうち、図1に対応する部分については、適宜、その符号をカッコ書きにて示す。
【0133】
(実施例1)
カップ形状の凹部(2A)を有するフレーム(2)を用意し、その凹部(2A)の底に、波長450nm〜470nmで発光する光源としての青色LED(3)を、接着剤として銀ペースト(5)を用いてダイボンディングした。この際、青色LED(3)で発生する熱の放熱性を考慮して、ダイボンディングに使う銀ペースト(5)は、薄く均一に塗った。150℃で2時間加熱して、銀ペーストを硬化させた後、青色LED(3)とフレーム(2)の電極とをワイヤボンディングした。ワイヤ(6)には直径25μmの金線を用いた。
【0134】
青色LED(3)としてはEPISTAR社製「ES−CEBL912」を用いた。
蛍光発光部(4)の発光物質としては、おおよそ波長470nm〜690nmの光を発光するCa2.94Ce0.06Sc1.94Mg0.06Si12(蛍光体Aと呼ぶ)で表わされる蛍光体と、おおよそ波長520nm〜760nmの光を発光するSr0.8Ca0.192Eu0.008AlSiN(蛍光体Bと呼ぶ)の混合物を用いた。
蛍光発光部(4)の蛍光体混合物の蛍光体AおよびBの比率は90:10(重量比)とした。また、蛍光体混合物の重量とエポキシ樹脂の重量の比は25:75として、蛍光体スラリーを作成した。
フレーム(2)の凹部(2A)にこの蛍光体スラリーを注入し、加熱して硬化させた。
次にフレーム全体をエポキシ樹脂でモールドした。モールド部の形成にはカップ状の型を用いた。
【0135】
この発光装置(1)を、青色LED(3)に電力を供給することにより発光させた(駆動電流20mA、駆動電流密度17.5A/cm、温度20℃)。このときに発光装置(1)から発せられる光の発光スペクトルを積分球を用いて測定することにより、全光束、色度、演色性、および青色LED(3)の駆動電流を80mA、駆動電流密度を70A/cmに変化させたときの色度の変化を調べた。結果を表1に示す。なお、演色性は、JISZ8726にしたがって算出したR〜R15と、R〜Rの平均値Raで評価した。
表1において、色度(x/y)は色座標を表わす。
【0136】
【表1】

【0137】
また、図4に本発光装置の発光スペクトルを示す。
なお、用いた蛍光体Aおよび蛍光体Bの混合物の温度特性は、
BR(125)/BR(25)=0.998
|x(25)−x(125)|=0.012
|y(25)−y(125)|=0.000
であった。
【0138】
(実施例2)
蛍光体Aと蛍光体Bの混合比率を91:9としたこと以外は実施例1と同様に発光装置を作成し、同様にその特性を評価し、結果を表2に示した。また、図5に本発光装置の発光スペクトルを示す。
なお、用いた蛍光体Aおよび蛍光体Bの混合物の温度特性は、
BR(125)/BR(25)=0.998
|x(25)−x(125)|=0.012
|y(25)−y(125)|=0.000
であった。
【0139】
【表2】

【0140】
(比較例1)
青色LED(3)としてCree社製「C460MB」を用い、蛍光発光部(4)の蛍光体としては、おおよそ波長480nm〜720nmの光を発光するYAG:Ceで表わされる蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様に発光装置を作成し、同様にその特性を評価し、結果を表3に示した。また、図6に本発光装置の発光スペクトルを示す。
【0141】
【表3】

【符号の説明】
【0142】
1,10 発光装置
2,12 クレーム
3,13 青色LED
4,14 蛍光発光部
5,15 銀ペースト
9 面発光照明装置
9A 保持ケース
9B 拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電流を流通させると発光する光源と、該光源からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長を有する光を発する少なくとも1種類の波長変換材料とを備える発光装置であって、
該発光装置の効率が32lm/W以上であり、
平均演色評価数Raが85以上であり、
17.5A/cmの駆動電流密度で得られる発光の色度座標値xをx(17.5)、yをy(17.5)とし、
70A/cmの駆動電流密度で得られる発光の色度座標値xをx(70)、yをy(70)としたとき、
色度座標値xおよびyのずれ量、[x(17.5)−x(70)]と[y(17.5)−y(70)]が下記式(A)および(B)を満足することを特徴とする発光装置。
−0.01≦x(17.5)−x(70)≦0.01 (A)
−0.01≦y(17.5)−y(70)≦0.01 (B)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−33945(P2012−33945A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204839(P2011−204839)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【分割の表示】特願2006−144321(P2006−144321)の分割
【原出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】