説明

発光装置、照明装置および車両用前照灯

【課題】発光部のサイズに対して励起光の照射範囲が大きくなってしまうことを抑制する。
【解決手段】複数のレーザ光L0を発生するレーザダイオード群10と、レーザ光L0が照射されることによりインコヒーレント光L1を発生する円筒状発光体40と、光入射面201から入射したレーザ光L0を光照射面202に導光し、導光したレーザ光L0を、円筒状発光体40の光照射領域に照射する導光照射部20とを備えており、導光照射部20における光照射面202の面積は、光入射面201の面積よりも小さくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励起光源と蛍光体を含有する発光部とを組合せた発光装置及び照明装置、並びに、前記発光装置又は前記照明装置を備えた車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、励起光源として発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)や半導体レーザ(LD;Laser Diode)等の半導体発光素子(固体素子光源)を用いた発光装置の研究が盛んになってきている。
【0003】
このような従来の発光装置の一例として、単一の光ファイバーを用いた技術が特許文献1に開示されている。
【0004】
この特許文献1に開示された技術では、導光部材として通常の光ファイバーを用いているので、当然ながらこの光ファイバーの入光部の断面積と出光部の断面積とは等しくなっている。
【0005】
一方、従来の発光装置の他の例として特許文献2及び3には、複数の光ファイバーを束ねたバンドルファイバーを用いた技術が開示されている。
【0006】
この特許文献2及び3に開示された技術では、複数の励起光源の出力光を、バンドルファイバーを用いて纏めることで大きなパワーの出力光を発生させることが可能となっている。
【0007】
ところで、この特許文献2及び3に開示された技術では、複数の光ファイバーを用いる点で、特許文献1に開示された技術と異なっているが、バンドルファイバーは、上述のように、複数の光ファイバーを束ねたものであるため、通常は、特許文献2に開示された技術のように、入光部の断面積と出光部の断面積とは等しくなっている。
【0008】
なお、特許文献3に開示された技術では、入光部に対して出光部の断面積が大きくなっているが、バンドルファイバーの出射端から出射される光を、凸レンズを使って集光することで、この入光部に対して出光部の断面積が大きいという問題点を解決している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−318998号公報(1995年12月8日公開)
【特許文献2】特開2004−87925号公報(2004年3月18日公開)
【特許文献3】特開2001−15839号公報(2001年1月19日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の発光装置のように、導光部材として、単一の光ファイバーやバンドルファイバーを用いる技術では、以下のような問題点が生じる。
【0011】
まず、図10(a)に示すように、従来の光ファイバーは、入光部の断面積と出光部の断面積とは等しいが、光の全反射を利用して励起光を導光する部材であるので、その出射光の照射範囲は、光ファイバーの断面の径に対して或る程度の拡がりを持っている。従って、発光部のサイズが充分小さくなれば、発光部のサイズに対して励起光の照射範囲が大きくなってしまい、発光効率が低下するという問題点が生じる。
【0012】
一方、従来のバンドルファイバーは、複数の励起光源からの出力光を纏める際、励起光源毎に接続された複数の光ファイバーを束ねているため、励起光源の数が増えるほど、束ねられる光ファイバーの数が増えてしまう。
【0013】
このため、図10(b)に示すように、バンドルファイバーの出射端から出射される出力光の照射範囲が、励起光源の数が増えるほど大きくなってしまうという問題点が生じる。
【0014】
なお、この照射範囲は、光ファイバーの本数に比例して拡大するわけではないが、少なくとも一本の光ファイバーの出射端から照射される照射範囲よりは大きくなってしまう。
【0015】
すなわち、上記従来の発光装置では、より大きな出力を得るために、励起光源の数を増加させていくと、いつかは、必ず発光部のサイズに対して励起光の照射範囲が大きくなってしまうという問題点がある。
【0016】
一方、上述したように、特許文献3に開示された技術では、バンドルファイバーの出射端から出射される光を、凸レンズを使って集光しているが、入光部の断面積と出光部の断面積とが等しいバンドルファイバーを用いているため、図10(c)に示すように、コア間の距離が最も離れた光ファイバーの中心を通る軸の延長線間の距離よりも小さい範囲に、出射光を集光させることができないという問題点がある。
【0017】
なお、以上のバンドルファイバーを用いる技術において、発光部のサイズに対して励起光の照射範囲が大きくなってしまうという問題点は、本発明の発明者らが見出したものであり、当該発明者らが知る限りにおいて当該問題点に明確に触れられた公知文献は無い。
【0018】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、発光部のサイズに対して励起光の照射範囲が大きくなってしまうことを抑制することができる発光装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の発光装置は、前記課題を解決するために、励起光を発生する励起光源と、前記励起光源から発生した励起光が照射されることにより光を発生する発光部と、一端に入射した前記励起光源から発生した励起光を他端に導光し、導光した励起光を前記発光部における所定の光照射領域に照射する導光照射部材とを備えており、前記導光照射部材における前記他端の断面積は、前記一端の断面積よりも小さくなっていることを特徴とする。
【0020】
前記構成によれば、発光部は、前記励起光源から発生した励起光が照射されることにより光を発生するようになっている。よって、発光部は、少なくとも励起光が照射されることにより光を発生する蛍光体を含んでいる。
【0021】
また、前記構成によれば、導光照射部材は、一端に入射した前記励起光源から発生した励起光を他端に導光し、導光した励起光を前記発光部における所定の光照射領域に照射するようになっている。
【0022】
また、導光照射部材における前記他端の断面積は、前記一端の断面積よりも小さくなっている。
【0023】
これにより、導光照射部材の一端の断面積よりも小さい断面積を有する他端に導光した励起光を、発光部における所定の光照射領域に照射させることができる。
【0024】
そうすると、発光部のサイズが小さくなっても、導光照射部材の他端の断面積をより小さくすれば、前記他端若しくはその近傍において照射される励起光の照射範囲を小さくできるので、発光部のサイズに対して励起光の照射範囲が大きくなってしまうことを抑制することができる。
【0025】
以上により、発光部のサイズに対して励起光の照射範囲が大きくなってしまうことを抑制することができる発光装置を提供することができる。
【0026】
ここで、「励起光源」は、LDのようにコヒーレントなレーザ光を発生するものであっても良いし、LEDのようにインコヒーレントな励起光を発生するものであっても良い。
【0027】
また、「励起光源」を、LDチップやLEDチップなどの固体素子光源で構成する場合、1チップ1ストライプの固体素子光源としても良いし、1チップ複数ストライプの固体素子光源としても良い。
【0028】
次に、「発光部」は、上述したように、少なくとも蛍光体を含んでいるが、単一種の蛍光体のみで構成されていても良いし、複数種の蛍光体で構成されていても良い。また、発光部は、単一種又は複数種の蛍光体を適当な分散媒に分散させて構成しても良い。
【0029】
また、「蛍光体」とは、励起光を照射することにより低エネルギー状態の電子が高エネルギー状態に励起し、この電子が、高エネルギー状態から低エネルギー状態に遷移することにより、インコヒーレントな光を発生する物質のことである。
【0030】
次に、「照射」には、照射範囲のサイズをほぼ一定にして光照射領域に励起光を照射させる場合、照射範囲を拡げつつ光照射領域に励起光を照射させる場合、照射範囲を縮小しつつ光照射領域に励起光を照射させる場合のいずれの場合も含まれる。
【0031】
また、本発明の発光装置は、前記構成に加えて、前記導光照射部材は、前記一端に入射した励起光を反射する光反射側面で囲まれた囲繞構造を有しており、前記一端に入射した前記励起光を、前記囲繞構造により前記他端に導光することが好ましい。
【0032】
前記構成によれば、光反射側面で囲まれた囲繞構造により、導光照射部材の一端に入射した励起光を、他端に導光することができる。
【0033】
ここで、「囲繞」とは、励起光源から発生する励起光の光路の周囲を取り囲むことである。
【0034】
また、「囲繞構造」の例としては、角錐台側面、円錐台側面及び楕円錐台側面のような錐台側面が例示できる。
【0035】
次に、「囲繞構造により他端に導光する」場合には、光反射側面に1回だけ反射して他端に導光する場合、光反射側面に複数回反射して他端に導光する場合、光反射側面に1回も反射することなく他端に導光する場合のいずれの場合も含まれる。
【0036】
また、本発明の発光装置は、前記構成に加えて、前記励起光源及び前記導光照射部材のそれぞれが、複数存在している場合に、前記複数の導光照射部材のそれぞれは、前記複数の励起光源から発生した各励起光のうち、前記一端に入射した励起光を前記他端に導光しても良い。
【0037】
前記構成によれば、複数の励起光源同士の距離が離れている場合でも、各導光照射部材の他端を寄り集めることで、複数の励起光源から発生する各励起光を光照射領域に集めて照射させることができる。
【0038】
なお、「複数の励起光源」は、LD又はLEDのみで構成しても良いし、LD及びLEDを混在させたものであっても良い。
【0039】
また、本発明の発光装置は、前記構成に加えて、前記励起光源が、複数存在している場合に、前記導光照射部材における前記一端は、前記複数の励起光源のそれぞれを前記光照射領域の中心から等距離の位置に配置することが可能な断面形状を備えていても良い。
【0040】
これにより、例えば、複数の励起光源のそれぞれを光照射領域の中心から等距離の位置に配置し、かつ複数の励起光源の向きを前記光照射領域の中心に向けるようにすれば、励起光源が発する光(励起光)の利用効率(結合効率=他端からの出射光/一端からの入射光)をほぼ最大にすることができる。
【0041】
また、このとき、複数の励起光源から発生する各励起光の光学的距離をほぼ共通にすることができる。よって、例えば、励起光がレーザ光のようなコヒーレント光である場合、複数の励起光源から発生する各励起光の位相を揃えることにより励起光の強度をより強めることができる。
【0042】
ここで、「断面形状」の例としては、導光照射部材の他端を所定の水平面で切ったときの切断線が、発光部の光照射領域の中心から等距離にある円弧となるような断面形状の他、導光照射部材の他端を所定の水平面で切ったときの切断線が、発光部の光照射領域の中心から等距離にある複数の線分からなる折れ線で構成されるような断面形状などを例示することができる。
【0043】
また、本発明の発光装置は、前記構成に加えて、前記複数の導光照射部材それぞれの一端は、前記光照射領域の中心から等距離となっていても良い。
【0044】
これにより、例えば、複数の励起光源のそれぞれを光照射領域の中心から等距離の位置に配置し、かつ複数の励起光源の向きを前記光照射領域の中心に向けるようにすれば、励起光源が発する光(励起光)の利用効率(結合効率=他端からの出射光/一端からの入射光)をほぼ最大にすることができる。
【0045】
また、このとき、複数の励起光源から発生する各励起光の光学的距離をほぼ共通にすることができる。よって、例えば、励起光がレーザ光のようなコヒーレント光である場合、複数の励起光源から発生する各励起光の位相を揃えることにより励起光の強度をより強めることができる。
【0046】
また、本発明の発光装置は、前記構成に加えて、前記導光照射部材の光反射側面は、前記他端の近傍で内側に凸な曲面となっていても良い。
【0047】
ここで、例えば、角錐台や円錐台のような母線が直線である錐台状の導光照射部材の場合、励起光が光反射側面に対して複数回反射した結果、導光照射部材の他端の近傍で、励起光の光反射側面への入射角が小さくなってしまい、励起光が光照射領域に照射されずに逃げてしまうという問題点がある。
【0048】
しかしながら、導光照射部材の他端の近傍で、光反射側面を内側に凸な曲面とすることで、光反射側面に同一光路で入射する励起光の入射角を大きくすることができるので、励起光が光照射領域に照射されずに逃げてしまうことを抑制することができる。よって、発光部の発光効率をより向上させることができる。
【0049】
また、本発明の発光装置は、前記構成に加えて、前記導光照射部材の他端が、前記光照射領域と接していても良い。
【0050】
ここで、導光照射部材の他端の断面形状が平面である場合、前記他端若しくはその近傍において照射される励起光の照射範囲は、導光照射部材の他端の断面よりも大きく拡がる傾向がある。
【0051】
そこで、導光照射部材の他端が光照射領域と接していれば、励起光の照射範囲が光照射領域に対して大きく拡がる前に、発光部の光照射領域に励起光が照射されることになる。
【0052】
よって、発光部のサイズに対して励起光の照射範囲が大きくなってしまうことを抑制することができる。
【0053】
なお、「導光照射部材の他端が、光照射領域と接している」場合には、導光照射部材の他端が、光照射領域と当接している場合の他、導光照射部材の他端が、光照射領域に接合されている場合も含まれる。また、「接合」には、接着や溶着などによる接合や圧接などが含まれる。
【0054】
また、本発明の発光装置は、前記構成に加えて、前記導光照射部材の他端に、前記光照射領域に対する凹面を有する凹レンズ状曲面が形成されていても良い。
【0055】
前記構成によれば、導光照射部材の他端と発光部の光照射領域が離れており、導光照射部材の他端から出射される励起光の照射範囲が光照射領域よりも小さくなってしまうような場合でも、凹レンズ状曲面により、他端と光照射領域の距離を保ったまま励起光の照射範囲を大きく助長できるので、光照射領域のサイズに合せて励起光を照射させることができる。
【0056】
また、本発明の発光装置は、前記構成に加えて、前記導光照射部材の他端に、前記光照射領域に対する凸面を有する凸レンズ状曲面が形成されていても良い。
【0057】
前記構成によれば、導光照射部材と発光部の光照射領域が離れており、導光照射部材の他端から出射される励起光の照射範囲が光照射領域よりも大きくなってしまうような場合でも、凸レンズ状曲面により、他端と光照射領域の距離を保ったまま励起光の照射範囲を小さく抑制できるので、光照射領域のサイズに合せて励起光を照射させることができる。
【0058】
また、本発明の発光装置は、前記構成に加えて、前記導光照射部材は、空気よりも屈折率が高い材料で構成されており、前記導光照射部材の外側面は、空気と接触しており、前記導光照射部材の外側面における複数箇所を点接触で保持する保持部材を備えていても良い。
【0059】
前記構成によれば、前記導光照射部材の外側面は、空気と接触している。また、導光照射部材は、空気よりも屈折率が高い材料で構成されている。これにより、簡単な構成で、導光照射部材の外側面と空気との界面に屈折率差(外側面側の屈折率>空気側の屈折率)を設けることができる。よって、前記外側面側から空気側へ所定入射角で入射する光を全反射させることが可能となる。
【0060】
また、前記構成によれば、本発明の発光装置は、前記導光照射部材の外側面における複数箇所を点接触で保持する保持部材を備えている。これにより、保持部材と導光照射部材の外側面との接触面積を小さくすることができ、点接触により導光照射部材の外側面と空気との界面における屈折率差が均一とならない部分(複数箇所)の面積を小さくすることができる。
【0061】
また、本発明の照明装置は、前記構成に加えて、前記発光装置のいずれかを備えていることが好ましい。
【0062】
前記構成によれば、発光部のサイズに対して励起光の照射範囲が大きくなってしまうことを抑制することができる照明装置を提供することができる。
【0063】
また、本発明の車両用前照灯は、前記構成に加えて、前記発光装置と、前記発光部から発生した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する反射鏡とを備えていても良い。
【0064】
前記構成によれば、発光部から発生した光は、反射鏡によって反射され、所定の立体角内を進む光線束が形成される。それゆえ、発光部のサイズに対して励起光の照射範囲が大きくなってしまうことを抑制することができる車両用前照灯を提供することができる。
【発明の効果】
【0065】
本発明の発光装置は、以上のように、励起光を発生する励起光源と、前記励起光源から発生した励起光が照射されることにより光を発生する発光部と、一端に入射した前記励起光源から発生した励起光を他端に導光し、導光した励起光を前記発光部における所定の光照射領域に照射する導光照射部材とを備えており、前記導光照射部材における前記他端の断面積は、前記一端の断面積よりも小さくなっているものである。
【0066】
それゆえ、発光部のサイズに対して励起光の照射範囲が大きくなってしまうことを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明における発光装置の実施の一形態の概要構成を示す模式図である。
【図2】(a)は、前記発光装置に関し、励起光源の一例(LED)の回路図であり、(b)は、前記LEDの概観を示す模式図であり、(c)は、前記励起光源の他の例(LD)の回路図であり、(b)は、前記LDの概観を示す模式図である。
【図3】前記発光装置の他の実施形態を示す模式図である。
【図4】前記発光装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。
【図5】(a)は、前記発光装置に関し、導光照射部材の好ましい形態の一例を示す模式図であり、(b)は、前記導光照射部材の好ましい形態の他の例を示す模式図である。
【図6】(a)は、前記LDの光出射傾向を示す図であり、(b)は、前記発光装置における発光部の一例の斜視図であり、(c)は、導光照射部材の他端に凸レンズ状曲面が存在しない場合の出射光の一例を示す図であり、(d)は、前記他端に凸レンズ状曲面が存在する場合の出射光の一例を示す図であり、(e)は、導光照射部材の他端に凹レンズ状曲が存在しない場合の出射光の一例を示す図であり、(f)は、前記他端に凹レンズ状曲面が存在する場合の出射光の他の一例を示す図である。
【図7】本発明における照明装置の実施の一形態の概要構成を示す模式図である。
【図8】自動車用のヘッドランプに必要なレンズ直径をランプの種類で比較した様子を示す図である。
【図9】(a)は、ランプの種類でその性能を比較した図であり、(b)は、従来の自動車用ヘッドランプの外観構成の一例を示す図であり、(c)は、前記発光装置(照明装置)を用いた場合の自動車用ヘッドランプの外観構成の一例を示す図である。
【図10】(a)は、従来の光ファイバーの光出射傾向を示す図であり、(b)は、従来のバンドルファイバーの光出射傾向を示す図であり、(c)は、従来のバンドルファイバーの光出射端に凸レンズを設けた場合の光出射傾向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明の一実施形態について図1〜図9(c)に基づいて説明すれば、以下の通りである。以下の特定の項目で説明すること以外の構成は、必要に応じて説明を省略する場合があるが、他の項目で説明する構成と同じである。また、説明の便宜上、各項目に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0069】
なお、以下で説明する発光装置(照明装置,車両用前照灯)110、発光装置(照明装置,車両用前照灯)120A及び発光装置(照明装置,車両用前照灯)120B、並びに、照明装置(発光装置,車両用前照灯)140のそれぞれの形態は、いずれも照明装置又は車両用前照灯の発光装置部として説明するが、本発明を具現化した形態はこれらの形態に限られず、照明装置又は車両用前照灯以外の灯具及び照明器具などの発光装置部としても適用することができる。
【0070】
〔1.発光装置の概要構成について〕
まず、図1に基づき、本発明の一実施形態である発光装置110の概要構成について説明する。
【0071】
図1は、本発明の一実施形態である発光装置110の概要構成を示す模式図である。
【0072】
図1に示すように、発光装置110は、インコヒーレント光(光)L1を発生するものであり、レーザダイオード群(励起光源)10、導光照射部(導光照射部材)20及び円筒状発光体(発光部)40を備える。
【0073】
また、レーザダイオード群10は、3個のLDチップ(励起光源)101を含んでおり、LDチップ101は、6個の発光点(励起光源)102を有する1チップ6ストライプの半導体レーザ素子(固体レーザ素子)であり、光出力3.0W、動作電圧5V、電流1.92Aで、径9mmのステムに実装されている。
【0074】
また、発光点102から発生するレーザ光(励起光)L0の発振波長は、405nmである。
【0075】
なお、発光点102から発生するレーザ光L0の発振波長は、405nmに限られず、青紫色領域又は青色領域(380nm以上490nm以下)の発振波長を有するものであれば良い。
【0076】
また、現在の技術では波長380nm以下の良質な短波長半導体レーザを作るのは困難であるが、将来的には380nm以下で発振するように設計されたLDチップ101も光源として採用しても良い。
【0077】
このLDチップ101を3個用いて9Wで出力させたときの消費電力は計28.8Wである。
【0078】
これにより、単純計算で合計3つのLDチップ101の合計の光束が、光源全体の光束となるので、単一のLDチップ101のみを用いる場合と比較して光源全体の光束を約3倍程度大きくすることができる。但し、LDチップ101の性能は均等であるものとする。
【0079】
なお、本実施形態では、レーザダイオード群10を構成するLDチップ101の数は3つとしているが、LDチップ101の数はこれに限られず、1〜2つ又は4つ以上のいずれであっても良い。
【0080】
また、励起光源は、本実施形態のLDチップ101のように複数の励起光源(発光点102)を一体化した1チップ複数ストライプの固体素子光源であっても良いし、以下説明するLDチップ11のように1チップ1ストライプの固体素子光源であっても良い。
【0081】
次に、本実施形態のLDチップ101のようにコヒーレントなレーザ光L0を発生するものであっても良いし、後述するLEDパイロットランプ(励起光源)13のようにインコヒーレントな励起光を発生するものであっても良い。
【0082】
また、複数の励起光源は、上述のように、LD又はLEDのみで構成しても良いし、LD及びLEDを混在させたものであっても良い。
【0083】
次に、導光照射部20は、光入射面(一端)201に入射したそれぞれのレーザ光L0を、光照射面(他端)202に導光し、導光した各レーザ光L0を、光照射面202の近傍又は光照射面202において円筒状発光体40の光照射領域に照射するようになっている。
【0084】
また、導光照射部20における光照射面202の断面積は、光入射面201の断面積よりも小さくなっている。
【0085】
これにより、光入射面201よりも断面積が小さい光照射面202に導光したレーザ光L0を、円筒状発光体40の光照射領域に照射することができる。
【0086】
ここで、「照射」には、照射範囲のサイズをほぼ一定にして光照射領域にレーザ光L0を照射する場合、照射範囲を拡げつつ光照射領域にレーザ光L0を照射する場合、照射範囲を縮小しつつ光照射領域にレーザ光L0を照射する場合のいずれの場合も含まれる。
【0087】
本実施形態では、導光照射部20の光照射面202が、光照射領域と接しており、光照射面202のサイズと光照射領域のサイズは同程度である。
【0088】
よって、円筒状発光体40の光照射領域には、光照射面202の位置におけるレーザ光L0の照射範囲のサイズをほぼ一定に保った状態でレーザ光L0が照射される。
【0089】
以上より、円筒状発光体40のサイズが小さくなっても、導光照射部20の光照射面202の断面積をより小さくすれば、光照射面202若しくはその近傍において照射されるレーザ光L0の照射範囲の拡がりを小さくできるので、円筒状発光体40のサイズに対してレーザ光L0の照射範囲が大きくなってしまうことを抑制することができる。
【0090】
すなわち、円筒状発光体40のサイズに対してレーザ光L0の照射範囲が大きくなってしまうことを抑制することができる発光装置110を提供することができる。
【0091】
また、導光照射部20の光入射面201から光照射面202までの距離を調整することで、レーザダイオード群10と、円筒状発光体40とを任意の間隔で空間的に分離することができるので、レーザダイオード群10で発生する熱の影響により、円筒状発光体40が劣化してしまうことを防止することができる。
【0092】
次に、LDチップ101の各発光点102から発振されるレーザ光L0は、コヒーレントな光であるため、指向性が強く、発光装置110は、導光照射部20により、レーザ光L0を励起光として無駄なく集光し、利用することができる。
【0093】
そのため、LDチップ101の数に関わらず、非常に小さな円筒状発光体40を形成することができ、その結果、小型で超高輝度の発光装置110を実現できる。
【0094】
よって、例えば、このようなLDチップ101を励起光源として用いた発光装置110を各種照明器具などに適用することにより、各種照明器具などを小型化できるなど、種々のメリットが生まれる。
【0095】
なお、図1に示す導光照射部20は、レーザ光L0をどの様に光入射面201から光照射面202に導光するかについては、具体的に記載していない。
【0096】
しかしながら、導光照射部20の具体例としては、大きく分けて、2つの形態が例示できる。
【0097】
第1の形態は、導光照射部20を他端の断面積が一端の断面積よりも小さい単一の導光照射部材で構成する場合である。
【0098】
例えば、導光照射部20として、以下で説明する楕円錐台状集光部(導光照射部材)21などを用いる場合である。
【0099】
第2の形態は、導光照射部20を他端の断面積が一端の断面積よりも小さい複数の導光照射部材で構成する場合である。
【0100】
例えば、導光照射部20として、以下で説明する円錐台状集光部(導光照射部材)22A〜22Cなどを用いる場合である。
【0101】
なお、導光照射部20のより具体的な形態については後ほど説明する。
【0102】
次に、円筒状発光体40は、レーザ光L0が照射されると、インコヒーレント光L1を発生する。すなわち、円筒状発光体40は、少なくともレーザ光L0が照射されることによりインコヒーレント光L1を発生する蛍光体を含んでいる。
【0103】
円筒状発光体40の大きさは、本実施形態では、直径2mm、厚さ1mmであり、円盤状(円筒状)の形態をしている。
【0104】
なお、発光部の形状としては、この他、例えば、車両用ヘッドランプに用いる場合は、後述する直方体状発光体(発光部)41のように水平方向に長い直方体形状とし、横×縦×高さ=3mm×1mm×1mm程度の大きさとすれば良い。
【0105】
ここで、円筒状発光体40は、上述したように、少なくとも蛍光体を含んでいるが、単一種の蛍光体のみで構成されていても良いし、複数種の蛍光体で構成されていても良い。
【0106】
また、円筒状発光体40は、単一種又は複数種の蛍光体を適当な分散媒に分散させて構成しても良い。分散媒は固体が好ましいが、光透過性のある円筒状の容器に蛍光体を封じ込めるような場合には、分散媒を液体としても良い。
【0107】
分散媒としては、透光性の樹脂材料が好ましく、シリコーン樹脂が例示できる。シリコーン樹脂と蛍光体との割合は、重量比で10:1程度とする。なお、分散媒は、シリコーン樹脂に限定されず、無機ガラス材料をはじめとするガラス材料であってもよいし、有機・無機ハイブリッド材料であっても良い。
【0108】
以上より、発光装置110は、レーザ光L0が導光照射部20により集光・照射(又は導光・照射)されるため、円筒状発光体40の光照射領域のサイズに合せてレーザ光L0を照射させることができる。
【0109】
また、集光したレーザ光L0のほとんどを照射させることができるので、円筒状発光体40に含まれる蛍光体中で、照射されたレーザ光L0に応じて低エネルギー状態の電子が高エネルギー状態に励起する。
【0110】
よって、照射されたレーザ光L0に応じて円筒状発光体40からインコヒーレント光L1が発生するので、単一のLDチップ101を用いる場合と比較して発光装置110の高光束・高輝度化を実現することができる。
【0111】
以上によれば、高光束・高輝度かつ長寿命を実現でき、円筒状発光体40(光照射領域)のサイズに対してレーザ光L0の照射範囲の拡がりが大きくなってしまうことを抑制することができる発光装置110を提供することができる。
【0112】
なお、「蛍光体」とは、レーザ光L0を照射することにより低エネルギー状態の電子が高エネルギー状態に励起し、この電子が、高エネルギー状態から低エネルギー状態に遷移することにより、インコヒーレント光L1を発生する物質のことである。
【0113】
また、蛍光体としては、サイアロン蛍光体(酸窒化物系蛍光体)若しくはIII−V族化合物半導体ナノ粒子蛍光体が好ましいが、セリウム(Ce)で賦活したイットリウム(Y)−アルミニウム(Al)−ガーネット(YAG:Ce)蛍光体などを用いても良い。
【0114】
ここで、サイアロンは、窒化ケイ素と同様に、結晶構造によりα型とβ型とがある。特に、α−サイアロンは,一般式Si12−(m+n)Al(m+n)16−n(m+n<12,0<m ,n<11;m ,nは整数)であらわされる28原子からなる単位構造の中に2箇所の空隙があり,ここに各種金属を侵入固溶させることが可能である.希土類元素を固溶させることで,蛍光体になる。カルシウム(Ca)とユーロピウム(Eu)とを固溶させると,YAG:Ceよりも長波長の黄色から橙色の範囲で発光する特性の良い蛍光体が得られる。
【0115】
また、サイアロン蛍光体は、青紫領域若しくは青色領域(380nm以上490nm以下)の光で励起可能であり,白色LED用の蛍光体などに適している。
【0116】
次に、サイアロン蛍光体の合成手順を示す。組成は、一般式CaSi12−(m+n)Al(m+n)16−n:Eu(p ,qは、それぞれCa,Euの固溶量、m+n<12,0<m ,n<11;m,nは整数)で表される。あらかじめ実験によりCaの固溶量pとEuの固溶量qの最適値を求め,mおよびnは電荷の中性を保つ条件などから決定する。
【0117】
また、出発原料として窒化ケイ素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ユーロピウム(Eu)の各粉末を用い、秤量・混合した後に焼結温度1700℃で窒素ガス加圧焼結を行う。その後、これを粉末に崩せば、サイアロン蛍光体を得ることができる。
【0118】
サイアロン蛍光体は、レーザ光L0に対する劣化耐性が強い蛍光体である。よって、理論的には、円筒状発光体40をサイアロン蛍光体のみで構成すれば、劣化をより効果的に防止することができる。
【0119】
なお、円筒状発光体40の劣化は、円筒状発光体40に含まれる蛍光体の分散媒(例えば、シリコーン樹脂)の劣化が原因であると考えられる。すなわち、上述のサイアロン蛍光体は、レーザ光L0が照射されると60〜80%の効率で光を発生させるが、残りは熱となって放出される。この熱によって分散媒が劣化すると考えられる。
【0120】
従って、分散媒としては、熱耐性の高い分散媒が好ましい。熱耐性の高い分散媒としては、例えば、ガラスなどが例示できる。
【0121】
ところで、白色光は、等色の原理を満たす3つの色の混色で構成できることが知られているが、この等色の原理に基づきLDチップ101から発振されたレーザ光L0の色と蛍光体が発する光の色とを適切に選択することにより白色光を発生させることができる。
【0122】
例えば、発光装置110のインコヒーレント光L1を白色とするには、1つの方法は、励起光として青紫色領域の発振波長(380nm以上420nm未満)のレーザ光を用い、蛍光体として青色蛍光体、緑色蛍光体、及び赤色蛍光体の組合せを採用すれば良い。
【0123】
また、もう1つの方法は、励起光として青色領域の発振波長(440nm以上490nm以下)のレーザ光、黄色蛍光体又は緑色蛍光体+赤色蛍光体のいずれかの組合せを採用すれば良い。
【0124】
さらに、励起光源として青色領域の発振波長(440nm以上490nm以下)のLED光、蛍光体として黄色蛍光体又は緑色蛍光体+赤色蛍光体のいずれかの組合せを採用すれば良い。
【0125】
なお、黄色の蛍光体とは、560nm以上590nm以下の波長を有する光を発する蛍光体である。緑色の蛍光体とは、510nm以上560nm以下の波長を有する光を発する蛍光体である。赤色の蛍光体とは、600nm以上680nm以下の波長を有する光を発する蛍光体である。
【0126】
〔2.励起光源の概要構成について〕
次に、図2(a)〜(d)に基づき、励起光源の具体例について説明する。
【0127】
図2(a)は、励起光源の一例であるLEDパイロットランプ(励起光源)13の回路図であり、図2(b)は、LEDパイロットランプ13の概観を示す正面図であり、図2(c)は、励起光源の他の例であるLDチップ(励起光源)11の回路図であり、図2(b)は、LDチップ11の概観を示す模式図である。
【0128】
図2(b)に示すように、LEDパイロットランプ13は、アノード14とカソード15に接続されたLEDチップ(励起光源)130が、エポキシ樹脂キャップ16によって封じこめられた構成である。
【0129】
図2(a)に示すように、LEDチップ130は、p型半導体131とn型半導体132とをpn接合し、p型電極133にカソード15が接続され、n型電極134にアノード14が接続される。なお、LDチップ101は、抵抗Rを介して電源Eと接続されている。
【0130】
また、アノード14とカソード15とを電源Eに接続することにより、回路が構成され、電源EからLEDチップ130に電力が供給されることによってpn接合附近からインコヒーレントな励起光を発生する。
【0131】
LEDチップ130の材料としては、発光色が赤色となるGaP、AlGaAs、GaAsPなど、発光色が橙色となるGaAsP、発色光が黄色となるGaAsP、GaP、発光色が緑となるGaP、発光色が青色となるSiC、GaNなどの化合物半導体が例示できる。
【0132】
なお、LEDチップ130は、約2V〜4V程度の低電圧で動作し、小型軽量で、応答速度が速い、長寿命で、低コストといった特徴がある。
【0133】
次に、図2(c)及び(d)に示すように、LDチップ11は、カソード電極19、基板18、クラッド層113、活性層111、クラッド層112、アノード電極17がこの順に積層された構成である。
【0134】
基板18は、半導体基板であり、本願のように蛍光体を励起する為の青色〜紫外の励起光を得る為にはGaN、サファイア、SiCを用いることが好ましい。一般的には、半導体レーザ用の基板としては、その他には、Si、GeおよびSiC等のIV属半導体、GaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSbおよびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体、ZnO、Al、SiO、TiO、CrOおよびCeO等の酸化物絶縁体、並びに、SiNなどの窒化物絶縁体のいずれかの材料が用いられる。
【0135】
アノード電極17は、クラッド層112を介して活性層111に電流を注入するためのものである。
【0136】
カソード電極19は、基板18の下部から、クラッド層113を介して活性層111に電流を注入するためのものである。なお、電流の注入は、アノード電極17・カソード電極19に順方向バイアスをかけて行う。
【0137】
活性層111は、クラッド層113及びクラッド層112で挟まれた構造になっている。
【0138】
また、活性層111およびクラッド層の材料としては、青色〜紫外の励起光を得る為にはAlInGaNから成る混晶半導体が用いられる。一般に半導体レーザの活性層・クラッド層としては、Al、Ga、In、As、P、N、Sbを主たる組成とする混晶半導体が用いられ、そのような構成としても良い。また、Zn、Mg、S、Se、TeおよびZnO等のII−VI属化合物半導体によって構成されていてもよい。
【0139】
また、活性層111は、注入された電流により発光が生じる領域であり、クラッド層112及びクラッド層113との屈折率差により、発光した光が活性層111内に閉じ込められる。
【0140】
さらに、活性層111には、誘導放出によって増幅される光を閉じ込めるために互いに対向して設けられる表側へき開面114・裏側へき開面115が形成されており、この表側へき開面114・裏側へき開面115が鏡の役割を果す。
【0141】
ただし、完全に光を反射する鏡とは異なり、誘導放出によって増幅される光の一部は、活性層111の表側へき開面114・裏側へき開面115(本実施の形態では、便宜上表側へき開面114とする)から出射され、レーザ光L0となる。なお、活性層111は、多層量子井戸構造を形成していてもよい。
【0142】
なお、表側へき開面114と対向する裏側へき開面115には、レーザ発振のための反射膜(図示せず)が形成されており、表側へき開面114と裏側へき開面115との反射率に差を設けることで、低反射率端面である、例えば、表側へき開面114よりレーザ光L0の大部分を発光点103から照射されるようにすることが出来る。
【0143】
クラッド層113・クラッド層112および活性層111などの各半導体層との膜形成については、MOCVD(有機金属化学気相成長)法やMBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学気相成長)法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。各金属層の膜形成については、真空蒸着法やメッキ法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。
【0144】
〔3.発光装置の具体例について(その1)〕
次に、図3に基づき、本発明の他の実施形態である発光装置120A(発光装置110の導光照射部20より具体化したもの)の各構成について説明する。
【0145】
図3は、発光装置110の導光照射部20の一例として、楕円錐台状集光部(導光照射部材)21を採用した発光装置120Aの構成を示している。
【0146】
なお、本実施形態では、楕円錐台状集光部21を例にとって説明するが、集光部の形状はこれに限られず、円錐台状、角錐台状など様々な形状を採用することができる。
【0147】
図3に示すように、発光装置120Aは、インコヒーレント光(光)L1を発生するものであり、レーザダイオード群10、楕円錐台状集光部21及び円筒状発光体40を備える。
【0148】
レーザダイオード群10は、上述したように、3個のLDチップ101を含んでおり、LDチップ101は、6個の発光点102を有する1チップ6ストライプの半導体レーザ素子(固体レーザ素子)であり、光出力3.0W、動作電圧5V、電流1.92Aで、径9mmのステムに実装されている。
【0149】
また、発光点102から発生するレーザ光L0の発振波長は、405nmである。
【0150】
なお、発光点102から発生するレーザ光L0の発振波長は、405nmに限られず、青紫色領域又は青色領域(380nm以上490nm以下)の発振波長を有するものであれば良い。
【0151】
このLDチップ101を3個用いて9Wで出力させたときの消費電力は計28.8Wである。
【0152】
これにより、単純計算で合計3つのLDチップ101の合計の光束が、光源全体の光束となるので、単一のLDチップ101のみを用いる場合と比較して光源全体の光束を約3倍程度大きくすることができる。但し、LDチップ101の性能は均等であるものとする。
【0153】
なお、本実施形態では、レーザダイオード群10を構成するLDチップ101の数は3つとしているが、LDチップ101の数はこれに限られず、1〜2つ又は4つ以上のいずれであっても良い。
【0154】
また、励起光源は、本実施形態のLDチップ101のように複数の励起光源(発光点102)を一体化した1チップ複数ストライプの固体素子光源であっても良いし、上述したLDチップ11のように1チップ1ストライプの固体素子光源であっても良い。
【0155】
また、本実施形態のLDチップ101のようにコヒーレントなレーザ光L0を発生するものであっても良いし、上述したLEDパイロットランプ13のようにインコヒーレントな励起光を発生するものであっても良い。
【0156】
また、複数の励起光源は、上述のように、LD又はLEDのみで構成しても良いし、LD及びLEDを混在させたものであっても良い。
【0157】
次に、楕円錐台状集光部21は、先細りの楕円柱形状をなしており、光入射面(一端)211から入射した各レーザ光L0を反射する楕円錐台側面(光反射側面,囲繞構造)213で囲まれた囲繞構造を有している。
【0158】
また、光照射面(他端)212の断面積は、光入射面211の断面積よりも小さくなっており、光入射面211から入射した各レーザ光L0を、楕円錐台側面213により光照射面212に導光する。
【0159】
ここで、楕円錐台側面213は、レーザダイオード群10から発生する各レーザ光L0のすべての光路の周囲を取り囲む(囲繞)ように構成する。
【0160】
「囲繞構造」の例としては、本実施形態のような楕円錐台側面の他、角錐台側面や円錐台側面のような錐台側面が例示できる。
【0161】
また、各レーザ光L0は、楕円錐台側面213に1回だけ反射して光照射面212に導光される場合、楕円錐台側面213に複数回反射して光照射面212に導光される場合、楕円錐台側面213に1回も反射することなく光照射面212に導光される場合のいずれかの光路で導光される。
【0162】
光入射面211は、楕円形状となっており、その径は、10×30mm程度であり、光照射面202は、円形状となっており、その径は、2mm程度である。
【0163】
これにより、楕円錐台側面213により、光入射面211から入射した各レーザ光L0を、光入射面211の断面積よりも小さい断面積を有する光照射面212に導光する、すなわち、各レーザ光L0を、光照射面212に集光することができる。
【0164】
なお、本実施形態の楕円錐台状集光部21は、石英(SiO;屈折率1.45)で構成しているが、その他、BK7やアクリル樹脂などの透明素材で構成しても良い。
【0165】
また、楕円錐台側面213には、屈折率1.35のフッ素系樹脂(ポリテトラフロオロエチレン)がコーティングされている。
【0166】
以上の楕円錐台状集光部21のLDチップ101に対する光結合効率は90%程度となる。
【0167】
なお、本実施形態では、光入射面211及び光照射面212のそれぞれは、平面となっているが、後述のように、平面でなくても良い。
【0168】
例えば、入射光・出射光の角度を変えるために凸レンズ状曲面又は凹レンズ状曲面となっていても良く、凸レンズ状曲面と凹レンズ状曲面を組合せたような複合レンズ状曲面でも良い。
【0169】
また、光入射面211及び光照射面212としてのレンズ状曲面の形状は球面に限らず、非球面であっても良い。
【0170】
さらに、以下で説明するように、光入射面211とLDチップ101との間、及び光照射面212と円筒状発光体40との間に別のレンズを挿入する場合、このレンズの形状は球面に限らず、非球面であっても良く、例えば円筒状であってもよい。
【0171】
また、本実施形態では楕円錐台状集光部21の外側面にはフッ素系樹脂がコーティングされているが、それに限らず直接空気に接していてもよい。その際には、楕円錐台状集光部21は数点の突起部を有する保持部材(不図示)を用いて点接触で保持することが好ましい。
【0172】
これにより、簡単な構成で、楕円錐台状集光部21の外側面と空気との界面に屈折率差(外側面側の屈折率>空気の屈折率)を設けることができる。よって、外側面側から空気側へ所定入射角で入射する光を全反射させることが可能となる。
【0173】
また、保持部材と楕円錐台状集光部21の外側面との接触面積を小さくすることができ、点接触により楕円錐台状集光部21の外側面と空気との界面における屈折率差が均一とならない部分(複数箇所)の面積を小さくすることができる。
【0174】
次に、円筒状発光体40は、本実施形態では、直径2mm、厚さ1mm程度の大きさであり、円盤状(円筒状)の形態をしている。
【0175】
ここで、円筒状発光体40は、上述したものと同じである。
【0176】
また、蛍光体としては、サイアロン蛍光体(酸窒化物系蛍光体)若しくはIII−V族化合物半導体ナノ粒子蛍光体が好ましいが、セリウム(Ce)で賦活したイットリウム(Y)−アルミニウム(Al)−ガーネット(YAG:Ce)蛍光体などを用いても良い。
【0177】
また、円筒状発光体40は、単一種又は複数種の蛍光体を適当な分散媒に分散させて構成しても良い。分散媒は固体が好ましいが、光透過性のある円筒状の容器に蛍光体を封じ込めるような場合には、分散媒を液体としても良い。
【0178】
分散媒としては、透光性の樹脂材料が好ましく、シリコーン樹脂が例示できる。シリコーン樹脂と蛍光体との割合は、重量比で10:1程度とする。なお、分散媒は、シリコーン樹脂に限定されず、無機ガラス材料をはじめとするガラス材料であってもよいし、有機・無機ハイブリッド材料であっても良い。
【0179】
次に、図3に示すように、本実施形態の発光装置120Aでは、楕円錐台状集光部21の光入射面211が、円筒状発光体40の光照射領域と接している(又は共通となっている)。
【0180】
ここで、楕円錐台状集光部21の光照射面212の断面形状が平面である場合、光照射面212若しくはその近傍において照射されるレーザ光L0の照射範囲は、楕円錐台状集光部21の光照射面212よりも大きく拡がる傾向がある。
【0181】
そこで、本実施形態のように、楕円錐台状集光部21の光照射面212が光照射領域と接していれば、レーザ光L0の照射範囲が光照射領域に対して大きく拡がる前に、円筒状発光体40の光照射領域にレーザ光L0が照射されることになる。
【0182】
よって、円筒状発光体40のサイズに対してレーザ光L0の照射範囲が大きくなってしまうことを抑制することができる。
【0183】
なお、「光照射面212が、光照射領域と接している」場合には、光照射面212が、光照射領域(又は円筒状発光体40)と当接している場合の他、光照射面212が、光照射領域に接合されている場合も含まれる。また、「接合」には、接着や溶着などによる接合や圧接などが含まれる。
【0184】
また、LDチップ101と光入射面211との間、光照射面212と円筒状発光体40との間に、空気とは屈折率の異なる透光部材や放熱部材が挿入されていてもよい。
【0185】
屈折率の異なる透光部材を挿入する場合としては、LDチップ101、LDチップ101から発生したレーザ光L0をコリメートするコリメートレンズ、バンドルファイバーをこの順で接続してバンドルファイバーの光出射端から出射したレーザ光L0を光入射面211から入射するようにした場合などが例示できる。
【0186】
これにより、光入射面211のサイズを大きくすることなく、LDチップ101の個数を増加させることができる。
【0187】
その他、屈折率の異なる透光部材を挿入する場合としては、光照射面212と円筒状発光体40との間に凹レンズ、凸レンズ及びGRINレンズ(Gradient Index lens:屈折率勾配変化型レンズ)のいずれかを設ける場合などが例示できる。
【0188】
なお、GRINレンズは、レンズが凸又は凹の形状をしていなくても、レンズ内部の屈折率勾配によってレンズ作用が生じるレンズである。
【0189】
よって、GRINレンズを用いれば、例えば、光照射面212を凹面や凸面とすることなく、平面としたままでレンズ作用を生じさせることができる。
【0190】
また、平面としたままでレンズ作用を生じさせることができるので、楕円錐台状集光部21の他端をGRINレンズで構成すれば、GRINレンズの端面(光照射面212)に円筒状発光体40を隙間無く接合することができる。
【0191】
これにより、光照射領域に照射されないレーザ光L0を低減できるので、円筒状発光体40の発光効率をより向上させることができる。
【0192】
次に、放熱部材は、特に光照射面212と円筒状発光体40との間に設けることが好ましい。
【0193】
これにより、円筒状発光体40から発生した熱によって、円筒状発光体40が劣化することを防止することができる。
【0194】
以上の構成によれば、円筒状発光体40(又は光照射領域)のサイズが小さくなっても、楕円錐台状集光部21の光照射面202の断面積をより小さくすれば、光照射面202若しくはその近傍において照射されるレーザ光L0の照射範囲を小さくできるので、円筒状発光体40のサイズに対してレーザ光L0の照射範囲が大きくなってしまうことを抑制することができる。
【0195】
ここで、後述する実験結果によれば、単純計算で1Wのレーザ光源1つ当たりの、円筒状発光体40から発光するインコヒーレント光L1の光束は、約150lm(ルーメン)程度である。
【0196】
よって、発光点102(0.5W)の1個当たりのインコヒーレント光L1の光束は、75lm程度となる。
【0197】
ここで、上述したように楕円錐台状集光部21のLDチップ101に対する光結合効率は90%程度なので、発光点102の1個当たりのインコヒーレント光L1の光束は、75×0.9=67.5lm程度と見積もれる。
【0198】
そうすると、3つのLDチップ101における発光点102の合計は、6×3=18個であるから、円筒状発光体40からのインコヒーレント光L1の全光束は、67.5×18=1215lm程度となる。これは、後述する高出力の白色LEDの400lmと比較して3倍程度の値であり、700〜1500lmの光束を実現するハロゲンランプと同程度の値であることが分かる。
【0199】
次に、現実には光の放射は等方的ではないため正確な値の算出は困難であるが、発光点から等方的に光が放射されるとして、光度(単位立体角当たりの光束)は、1215(lm)/4π≒1215/4/3.14(cd)≒96.7(cd)程度である。
【0200】
また、実効口径面積を3.14mm程度、光学系の透過率を0.7程度とすると、輝度≒96.7(cd)/0.7/3.14(mm)=43.9(cd/mm)≒44(Mcd/m)程度となることが分かる。
【0201】
これは、後述する後述する高出力の白色LEDの輝度20(Mcd/m)と比較して約2.2倍程度の値であることが分かる。
【0202】
以上より、光照射面212の面積及び円筒状発光体40のサイズを共に小さくすることにより、レーザダイオード群10を構成するLDチップ101の数に関わらず、高輝度・高光束の光を発生する円筒状発光体40の小型化が可能となる。
【0203】
〔4.発光装置の具体例について(その2)〕
次に、図4に基づき、本発明のさらに他の実施形態である発光装置120Bの概要構成について説明する。
【0204】
図4は、発光装置110の導光照射部20の一例として、先細りの円柱形状をなした、3つの円錐台状集光部(導光照射部材)22A〜22Cを採用した発光装置120Bの構成を示している。
【0205】
なお、本実施形態では、3つの円錐台状集光部22A〜22Cを採用したが、複数であれば導光照射部材を幾つ用いても良い。
【0206】
また、本実施形態では、円錐台状集光部22A〜22Cを例にとって説明するが、各導光照射部材の形状はこれに限られず、楕円錐台、角錐台状など様々な形状を採用することができる。
【0207】
図4に示すように、発光装置120Bは、インコヒーレント光L1を発生するものであり、レーザダイオード群10、円錐台状集光部22A〜22C及び直方体状発光体(発光部)41を備える。
【0208】
レーザダイオード群10は、上述したものと同じである。
【0209】
次に、円錐台状集光部22A〜22Cは、それぞれ先細りの円柱形状をなしており、光入射面(一端)221A〜221Cから入射したレーザ光L0を反射する円錐台側面(光反射側面,囲繞構造)223A〜223Cで囲まれた囲繞構造を有している。
【0210】
各円錐台状集光部22A〜22Cは、それぞれ、コア部がアクリル製であり、クラッド部がフッ素樹脂製であり、これらのコア部とクラッド部は密着しており、全体としてチューブ状の部材である。
【0211】
光入射面221A〜221Cは円形状をなしており、その径は7mm程度であり、一方、光出射面(他端)222A〜222Cも円形状をなしており、その径は1mm程度である。
【0212】
すなわち、光出射面222A〜222Cの各断面積は、光入射面221A〜221Cの断面積よりも小さくなっており、光入射面221A〜221Cのそれぞれから入射したレーザ光L0を、円錐台側面223A〜223Cにより、光出射面222A〜222Cに導光する。
【0213】
ここで、円錐台側面223A〜223Cは、各LDチップ101から発生するレーザ光L0の光路の周囲を取り囲む(囲繞)ように構成する。
【0214】
「囲繞構造」の例としては、本実施形態のような円錐台側面の他、楕円錐台側面や角錐台側面のような錐台側面が例示できる。
【0215】
また、各レーザ光L0は、各円錐台側面223A〜223Cに1回だけ反射して光出射面222A〜222Cに導光される場合、各円錐台側面223A〜223Cに複数回反射して光出射面222A〜222Cに導光される場合、各円錐台側面223A〜223Cに1回も反射することなく光出射面222A〜222Cに導光される場合のいずれかの光路で導光される。
【0216】
これにより、光入射面221A〜221Cから入射した各レーザ光L0を、各光入射面221A〜221Cの断面積よりも小さい断面積を有する各光出射面222A〜222Cに導光する、すなわち、各レーザ光L0を、各光出射面222A〜222Cに集光することができる。
【0217】
以上の構成によれば、複数のLDチップ101同士の距離が離れている場合でも、各円錐台状集光部22A〜22Cの光出射面222A〜222Cを寄り集めることで、複数のLDチップ101から発生する各レーザ光L0を1つの直方体状発光体41の光照射領域に集めて照射させることができる。
【0218】
また、図4に示すように、各円錐台状集光部22A〜22Cの長手方向のサイズは同一となっており、各円錐台状集光部22A〜22Cの光入射面221A〜221Cは、3つのLDチップ101のそれぞれを、直方体状発光体41の光照射領域の中心付近から等距離の位置に配置することが可能となっている。
【0219】
これにより、例えば、複数のLDチップ101のそれぞれを光照射領域の中心から等距離の位置に配置し、かつ複数のLDチップ101の発光点102の向きを光照射領域の中心に向けるようにすれば、LDチップ101が発するレーザ光L0の利用効率(結合効率=他端からの出射光/一端からの入射光)をほぼ最大にすることができる。
【0220】
また、このとき、複数のLDチップ101から発生する各レーザ光L0の光学的距離をほぼ共通にすることができる。よって、例えば、励起光がレーザ光L0のようなコヒーレント光である場合、複数のLDチップ101から発生する各レーザ光L0の位相を揃えることによりレーザ光L0の強度をより強めることができる。
【0221】
以上の各円錐台状集光部22A〜22CのLDチップ101に対する光結合効率は90%程度となる。
【0222】
次に、直方体状発光体41は、車両用ヘッドランプに用いる場合を想定したものであり、水平方向に長い直方体形状とし、そのサイズは、横×縦×高さ=3mm×1mm×1mm程度の大きさとすれば良い。なお、直方体状発光体41の構成材料等については、上述した円筒状発光体40と同じである。
【0223】
また、LDチップ101と光入射面221A〜221Cとの間、光出射面222A〜222Cと直方体状発光体41との間に、空気とは屈折率の異なる透光部材や放熱部材が挿入されていてもよい。
【0224】
屈折率の異なる透光部材としては、LDチップ101と光入射面221A〜221Cとの間を接続する光ファイバー又はバンドルファイバーなどが例示できる。
【0225】
また、放熱部材は、特に光出射面222A〜222Cと直方体状発光体41との間に設けることが好ましい。
【0226】
これにより、直方体状発光体41から発生した熱によって、直方体状発光体41が劣化することを防止することができる。
【0227】
以上の構成によれば、直方体状発光体41(又は光照射領域)のサイズが小さくなっても、各円錐台状集光部22A〜22Cの光出射面222A〜222Cの断面積をより小さくすれば、光出射面222A〜222C若しくはその近傍において照射されるレーザ光L0の照射範囲を小さくできるので、直方体状発光体41のサイズに対してレーザ光L0の照射範囲が大きくなってしまうことを抑制することができる。
【0228】
なお、本実施形態の発光装置120Bでは、直方体状発光体41は、水平方向に長い、直方体形状であるため、光出射面222A〜222Cを水平方向に並べて配置している。
【0229】
このように、円錐台状集光部22A〜22Cの数、円錐台状集光部22A〜22Cの配置方法を工夫することで、発光部の光照射領域の形状に合せて、光出射面222A〜222Cから出射する各レーザ光L0を光照射領域に照射させることができる。
【0230】
ここで、後述する実験結果によれば、単純計算で1Wのレーザ光源1つ当たりの、直方体状発光体41から発光するインコヒーレント光L1の光束は、約150lm(ルーメン)程度である。
【0231】
よって、発光点102(0.5W)の1個当たりのインコヒーレント光L1の光束は、75lm程度となる。
【0232】
ここで、上述したように各円錐台状集光部22A〜22CのLDチップ101に対する光結合効率は90%程度なので、発光点102の1個当たりのインコヒーレント光L1の光束は、75×0.9=67.5lm程度と見積もれる。
【0233】
そうすると、3つのLDチップ101における発光点102の合計は、6×3=18個であるから、円筒状発光体40からのインコヒーレント光L1の全光束は、67.5×18=1215lm程度となる。これは、後述する高出力の白色LEDの400lmと比較して3倍程度の値であり、700〜1500lmの光束を実現するハロゲンランプと同程度の値であることが分かる。
【0234】
次に、現実には光の放射は等方的ではないため正確な値の算出は困難であるが、発光点から等方的に光が放射されるとして、光度(単位立体角当たりの光束)は、1215(lm)/4π≒1215/4/3.14(cd)≒96.7(cd)程度であり、実効口径面積を3.14mm程度、光学系の透過率を0.7程度とすると、輝度≒96.7(cd)/0.7/3.14(mm)≒44(Mcd/m)程度となることが分かる。
【0235】
これは、後述する後述する高出力の白色LEDの25(Mcd/m)と比較して約1.8倍程度の値であることが分かる。
【0236】
以上より、光出射面222A〜222Cの面積及び直方体状発光体41のサイズを共に小さくすることにより、レーザダイオード群10を構成するLDチップ101の数に関わらず、高輝度・高光束の光を発生する直方体状発光体41の小型化が可能となる。
【0237】
〔5.導光照射部材の好ましい形態〕
次に、図5(a)及び(b)に基づき、本発明の導光照射部材の好ましい形態の例である等距離配置用集光部(導光照射部材)23及び徳利状集光部24(導光照射部材)の各構造について説明する。
【0238】
まず、図5(a)に示す図は、鉛直方向上側から見たときの等距離配置用集光部23の断面図(すなわち、等距離配置用集光部23を水平面で切ったときの断面図)である。
【0239】
等距離配置用集光部23の光照射面(他端)232は、円筒状発光体40の光照射領域に当接(又は接合)させている。
【0240】
また、等距離配置用集光部23は、上述した楕円錐台状集光部21とほぼ同一構造であるが、楕円錐台状集光部21の光入射面211を光入射曲面(一端)231で置き換えたような構造となっている。
【0241】
すなわち、等距離配置用集光部23の光入射曲面231は、水平面で切ったときの切断線が、直方体状発光体41の光照射領域の中心Oから等距離にある円弧Cとなるような断面形状となっている。
【0242】
言い換えれば、楕円形状の光入射面211を円弧Cに沿うように折り曲げたような断面形状である。
【0243】
なお、楕円錐台側面(光反射側面,囲繞構造)233は、LDチップ101から発生するすべてのレーザ光L0の光路の周囲を取り囲んでいる。
【0244】
これにより、例えば、複数のLDチップ101のそれぞれを光照射領域の中心Oから等距離の位置に配置し、かつ複数のLDチップ101の発光点102の向きを光照射領域の中心Oに向けるようにすれば、LDチップ101が発するレーザ光L0の利用効率(結合効率=他端からの出射光/一端からの入射光)をほぼ最大にすることができる。
【0245】
また、このとき、複数のLDチップ101から発生する各レーザ光L0の光学的距離をほぼ共通にすることができる。よって、例えば、励起光がレーザ光L0のようなコヒーレント光である場合、複数のLDチップ101から発生する各レーザ光L0の位相を揃えることによりレーザ光L0の強度をより強めることができる。
【0246】
ここで、光入射面の断面形状の例としては、その他、導光照射部材の他端を所定の水平面で切ったときの切断線が、直方体状発光体41の光照射領域の中心Oから等距離にある複数の線分からなる折れ線で構成されるような断面形状などを例示することができる(不図示)。
【0247】
次に、図5(b)に示す図は、鉛直方向上側から見たときの徳利状集光部(導光照射部材)24の断面図(すなわち、徳利状集光部24を水平面で切ったときの断面図)である。
【0248】
但し、徳利状集光部24は、その光照射面(他端)242近傍の構造がポイントとなっているため、光入射面側は省略し、図示していない。
【0249】
なお、徳利状側面(光反射側面,囲繞構造)243は、LDチップ101から発生するすべてのレーザ光L0の光路の周囲を取り囲んでいる。
【0250】
徳利状集光部24は、上述した楕円錐台状集光部21(破線で示している)とほぼ同一構造であるが、徳利状集光部24の光照射面242近傍の構造が少し異なっている。
【0251】
すなわち、徳利状集光部24の徳利状側面243は、光照射面242の近傍で内側に凸な曲面となっている。
【0252】
ここで、図5(b)に破線で示す楕円錐台状集光部21のように、楕円錐台側面213の母線が直線である錐台状の楕円錐台状集光部21の場合、レーザ光L0が楕円錐台側面213に対して複数回反射した結果、光照射面212の近傍で、点Rに入射するレーザ光L0の楕円錐台側面213への入射角θが小さくなってしまう。
【0253】
よって、点Rに入射したレーザ光L0は、その後、反射角θで反射してレーザ光LBの方向に進み、発光部の光照射領域に照射されずに逃げてしまう。
【0254】
しかしながら、図5(b)に示す徳利状集光部24のように光照射面242の近傍で徳利状側面243を内側に凸な曲面とすれば、徳利状側面243の点Rに入射するレーザ光L0の入射角θを、入射角θよりも大きくして反射角θで反射させてレーザ光LAの方向に進ませることができる。
【0255】
これにより、点Rに入射するレーザ光L0が光照射領域に照射されずに逃げてしまうことを抑制することができる。よって、発光部の発光効率をより向上させることができる。
【0256】
〔6.導光照射部材の他端の形状の選定方法〕
次に、図6(a)〜(f)に基づき、導光照射部材の他端の形状の選定方法について説明する。
【0257】
まず、図6(a)に示すようにLDチップ101(の先端部の大きな直方体の上にある小さな直方体)を水平に設置した時、LDチップ101から放射されるレーザ光L0は、縦(鉛直方向)に長く、横(水平方向)に短い楕円錐状となる光出射傾向を示す。
【0258】
ここで、LDチップ101の発光点102から放射されるレーザ光L0は、縦横比(アスペクト比)が非常に大きい(例えば、水平方向で5度、垂直方向で30度)ものとし、各発光点102から発生するレーザ光L0の重ね合わせが楕円錐状となる光出射傾向を示しているものとする。
【0259】
一方、図6(b)に示すように直方体状発光体41は、鉛直方向に短く、水平方向に長い直方体形状である。
【0260】
そうすると、直方体状発光体41の発光効率を高くするためには、縦に長い楕円錐状に広がるレーザ光L0を、鉛直方向に短く水平方向に長いレーザ光L0に変換する光学部品が必要となる。
【0261】
次に、等距離配置用集光部23を採用したときの光出射傾向につい説明する。
【0262】
まず、図6(c)に示す状態は、凸レンズ状曲面30が存在しない場合の等距離配置用集光部23の出射光の光出射傾向のパターンとして、光照射面(他端)232の水平方向の幅が比較的大きく、レーザ光L0の水平方向の拡がりが、直方体状発光体41の光照射領域の水平方向の幅より大きい場合を示している。このような場合としては、光照射領域の水平方向の幅よりも光照射面232の水平方向の幅が大きい場合などが好例である。
【0263】
また、光照射面232の水平方向の幅が光照射領域の水平方向の幅よりも小さい場合でも、等距離配置用集光部23の形状によっては、レーザ光L0の水平方向の拡がりが、直方体状発光体41の光照射領域の水平方向の幅より大きくなる場合が生じうる。
【0264】
例えば、光照射面232が平面で構成されている場合、光照射面232から出射されるレーザ光L0は、通常平行光であることはあり得ず、若干なりとも拡がって出射される。
【0265】
よって、光照射面232の水平方向の幅と直方体状発光体41の光照射領域の水平方向の幅の大小関係のみならず、光照射面232から直方体状発光体41までの距離が離れていれば(離して直方体状発光体41を設置すれば)、レーザ光L0の水平方向の拡がりが、光照射領域の水平方向の幅より大きくなり得る。
【0266】
次に、図6(e)に示す状態は、凹レンズ状曲面31が存在しない場合の等距離配置用集光部23の出射光の光出射傾向のパターンとして、光照射面232の水平方向の幅が比較的小さく、レーザ光L0の水平方向の拡がりが、直方体状発光体41の光照射領域の幅より小さい場合を示している。
【0267】
このような場合としては、直方体状発光体41の光照射領域の水平方向の幅よりも光照射面232の水平方向の幅が極端に小さい場合などが好例である。
【0268】
また、直方体状発光体41の光照射領域の水平方向の幅よりも光照射面232の水平方向の幅が極端に小さくなくても、直方体状発光体41の光照射領域の水平方向の幅が光照射面232の水平方向の幅と同程度の大きさである場合に等距離配置用集光部23の光学設計を工夫することによって光照射面232から出射されるレーザ光L0がほぼ平行光となった場合などにも、レーザ光L0の水平方向の拡がりが、直方体状発光体41の光照射領域の水平方向の幅より小さくなり得る。
【0269】
ここで、図6(d)に示す凸レンズ状曲面30は、鉛直方向(紙面の表裏方向)に軸を持ち、凸部を光照射領域側に向けた凸レンズ状曲面であり、レーザ光L0の直方体状発光体41に対する水平方向の拡がりを小さくする機能を有する光学部品である。
【0270】
よって、図6(c)に示すようにレーザ光L0の水平方向の拡がりが、直方体状発光体41の光照射領域の水平方向の幅より大きい場合は、等距離配置用集光部23と直方体状発光体41の間に、すなわち、光照射面232として凸レンズ状曲面30を設ければ良い。
【0271】
なお、凸レンズ状曲面30に替えて、等距離配置用集光部23の他端に、凸レンズ作用をもつ上述したGRINレンズを取り付けても良い。
【0272】
一方、図6(f)に示す凹レンズ状曲面31は、鉛直方向に軸を持ち、凹部を光照射領域側に向けた凹レンズ状曲面であり、レーザ光L0の直方体状発光体41に対する水平方向の拡がりを大きくする機能を有する光学部品である。
【0273】
よって、図6(e)に示すようにレーザ光L0の水平方向の拡がりが、直方体状発光体41の光照射領域の水平方向の幅より小さい場合は、等距離配置用集光部23と直方体状発光体41の間に、すなわち、光照射面232として凹レンズ状曲面31を設ければ良い。
【0274】
なお、凹レンズ状曲面31に替えて、等距離配置用集光部23の他端に凹レンズ作用をもつ上述したGRINレンズを取り付けても良い。
【0275】
また、発光部の照射領域の形状に応じて、任意の軸を持つ凹面及び凸面を有するレンズ状曲面を一体化した複合レンズ状曲面、任意の軸を持つ凸面及び凸面を有するレンズ状曲面を一体化した複合レンズ状曲面、任意の軸を持つ凹面及び凹面を有するレンズ状曲面を一体化した複合レンズ状曲面などを採用しても良い。
【0276】
これにより、発光部の光照射領域の形状に応じて適切な複合レンズ状曲面を採用することで、発光部の発光効率を高めることができる。
【0277】
〔7.照明装置(車両用前照灯)の具体例について〕
次に、図7に基づき、本発明の一実施形態である照明装置140について説明する。
【0278】
図7に示す反射鏡90及び透明板91以外の構成は、図4に示す発光装置120Bの構成と同じなので、その説明は省略する。
【0279】
まず、反射鏡90は、直方体状発光体41から出射したインコヒーレント光L1(以下、単に「光」という)を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成するものである。すなわち、反射鏡90は、直方体状発光体41からの光を反射することにより、照明装置140の前方へ進む光線束を形成する。この反射鏡90は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された曲面形状(カップ形状)の部材であり、反射した光の進行方向に開口している。
【0280】
また、本実施形態では、反射鏡90は半球状であり、その中心が焦点位置となる。さらに、反射鏡90の開口部は、反射鏡90にて反射した光の進行方向に対して垂直な平面(反射鏡90の、照明装置140の外部に出射される光の進行方向に垂直な平面)で、かつ、反射鏡90の中心を含む開口面を有している。
【0281】
さらに、開口面の面積は、2000mmより小さく(開口面の直径(光学系直径)は、50mmより小さく)なっている。すなわち、反射鏡90にて反射した光が出射される方向(車両の真正面)から見たときの反射鏡90の大きさが2000mmより小さい。なお、ここでは、開口面の面積をが、2000mmよりも小さいとしたが、より好ましくは、1500mm(直径43.7mm)より小さくしても良い。
【0282】
例えば、従来のハロゲンランプをハイビーム用のヘッドランプとして用いた場合に、開口面の面積を2000mmよりも小さくすると、ハイビームとして規定された光度範囲を満たす光を出射できない場合が生じ得るという問題点がある。
【0283】
しかしながら、照明装置140では、後述するように、直方体状発光体41の輝度を、ハロゲンランプで実現できる最大輝度である25cd/mmより大きくできるため、開口面の面積を2000mmより小さくしても、ハイビームとして規定された光度範囲を満たす光を出射することができる。
【0284】
また、高輝度光源として輝度75cd/mm程度のHIDランプがあるが、HIDランプには瞬時点灯性に優れないという課題があり、ハイビーム用としてのヘッドランプには適さない。
【0285】
従って、照明装置140は、実用性を考慮した上で、従来の照明装置に比べて圧倒的に小さいハイビーム用の照明装置を実現することができる。
【0286】
また、たとえHIDランプをハイビーム用のヘッドランプとして使用した場合であっても、開口面の面積を1500mmより小さくすると、ハイビームとして規定された光度範囲を満たす光を出射することができない場合が生じ得るという問題点もある。
【0287】
しかしながら、照明装置140では、直方体状発光体41の輝度を、後述するように、HIDランプで実現できる、実用化レベルでの最大輝度である75cd/mmより大きくできるため、開口面の面積を1500mmより小さくしても、ハイビームとして規定された光度範囲を満たす光を出射することができる。
【0288】
次に、透明板91は、反射鏡90の開口部を覆う透明な樹脂板であり、直方体状発光体41を保持している。この透明板91を、LDチップ101からのレーザ光L0を遮断するとともに、直方体状発光体41においてレーザ光L0を変換することにより生成された白色光(インコヒーレント光L1)を透過する材質で形成することが好ましい。
【0289】
直方体状発光体41によってコヒーレントなレーザ光L0は、そのほとんどがインコヒーレント光L1に変換される。しかし、何らかの原因でレーザ光L0の一部が変換されない場合も考えられる。このような場合でも、透明板91によってレーザ光L0を遮断することにより、レーザ光L0が外部に漏れることを防止できる。なお、このような効果を期待せず、かつ透明板91以外の部材によって直方体状発光体41を保持する場合には、透明板91を省略することが可能である。
【0290】
〔8.発光装置の配光特性について〕
次に、1チップ1ストライプの半導体レーザ(発振波長は、405nm)であるLDチップ11を10個用いて発光装置(以下、試作例という)を試作し、実験を行った。それぞれのLDチップ11の光出力は、1.0W、動作電圧は、5V、電流は0.6Aである。
【0291】
また、導光照射部材として楕円錐台状集光部21を用い、発光部として円筒状発光体40(直径2mm、厚さ1mm)を採用した。
【0292】
各LDチップ11と楕円錐台状集光部21の光結合効率は90%程度である。
【0293】
この試作例にて、配光特性について調べたところ、円筒状発光体40からは1350lm程度の光束が放射された。
【0294】
また、このときの円筒状発光体40の輝度は、48.9Mcd/m(メガカンデラ毎平方メートル)程度であった。
【0295】
この実験結果より、光度(単位立体角当たりの光束)は、発光点から等方的に光が放射されるとして、単純計算で、LDチップ11の1個当たりの光束は、約135lmであるから、例えば、15個以上のLDチップ11を用いれば、円筒状発光体40は、約2000lmを超えることが可能であると分かる。
【0296】
また、20個のLDチップ11を用いれば、現実には光の放射は等方的ではないため正確な値の算出は困難であるが、発光点から等方的に光が放射されるとして、単純計算で、光度(単位立体角当たりの光束)=135×20(lm)/4π≒2700(lm)/4/3.14≒214(cd)程度であり、実効口径面積を3.14mm程度、光学系の透過率を0.7程度とすると、輝度≒214(cd)/0.7/3.14(mm)≒97.3(cd/mm)≒100(Mcd/m)程度となることが分かる。
【0297】
なお、LDチップ11の数を調整して同様な実験を行ったところ、円筒状発光体40及び直方体状発光体41のいずれも、実際に、2000lmを超える高光束、100Mcd/mを超える高輝度の実現が可能であることが分かった(このような高輝度・高光束の発光装置のことを以下、単に「レーザ照明」という)。
【0298】
〔9.発光装置と従来のランプとの配光特性の比較〕
次に、図8〜図9(c)に基づき、上述したレーザ照明と従来のランプとの配光特性の比較結果について説明する。
【0299】
図8は、自動車用のヘッドランプに必要なレンズ直径をランプの種類で比較した様子を示す図である。
【0300】
図8に示すように市販のハロゲンランプの輝度は、25Mcd/m程度であり、HIDランプの輝度は、80Mcd/m程度である。
【0301】
一方、上述したレーザ照明では、100Mcd/m程度の高輝度の実現が可能なので、図8に示すように、ハロゲンランプの4倍程度、HIDランプを超える高輝度を実現することができることが分かる。
【0302】
すなわち、円筒状発光体40(又は直方体状発光体41)が発生するインコヒーレント光L1の輝度は、80Mcd/m以上であることが好ましい。
【0303】
また、ハロゲンランプは、通常自動車のハイビーム用のヘッドランプに用いられているが、レーザ照明では、例えば、上述した円筒状発光体40(又は直方体状発光体41)を用いることによって、ハロゲンランプよりも口径面積サイズの小さい円筒状発光体40(又は直方体状発光体41)でもハロゲンランプの4倍程度の高輝度を実現できるので、ハイビーム用のヘッドランプの前方に設置するレンズの面積を1/4に縮小することが可能である。
【0304】
なお、ハロゲンランプの発光フィラメントのサイズは、横×縦×高さ=5mm×1.5mm×1.5mm程度である。
【0305】
次に、図9(a)は、ランプの種類でその性能を比較した図であり、図9(b)は、従来の自動車用ヘッドランプの外観構成の一例を示す図であり、図9(c)は、レーザ照明を用いた場合の自動車用ヘッドランプの外観構成の一例を示す図である。
【0306】
まず、図9(a)に示すように、市販の高出力白色LED(以下、煩雑なので「高出力」との記載は省略する場合がある)の光束は、1モジュールあたり400lm程度が上限であり、車載用のハロゲンランプの光束は、700〜1500lm程度(普通乗用車用のハロゲンランプで通常1000lm程度)であり、HIDランプの光束は、3200lm程度である。ただし、HIDランプはその構造・形状から3200lm全ての光束を全て前照灯の照射光に利用することが困難である。実効的には2000lm以下の光束しか利用できていないとされる。また、光学系の設計が困難であるという問題点がある。
【0307】
一方、実施例のレーザ照明では、2000lmを超える高光束の実現が可能なので、白色LEDの4〜5倍程度、ハロゲンランプを超えHIDランプに近い高光束(実効的にはHIDランプを超える高光束)を実現することができる。
【0308】
すなわち、円筒状発光体40が発生するインコヒーレント光L1の光束が1500lm以上、3200lm以下であることが好ましい。
【0309】
また、白色LEDは、通常自動車のロービーム用のヘッドランプに用いられているが、実施例のレーザ照明によれば、例えば、1灯で白色LEDの4〜5灯分の高光束を実現することができる。
【0310】
以上の検討結果から図9(a)が、従来のヘッドランプの大きさを示しているものとすると、実施例のレーザ照明によれば、例えば、図9(b)に示すように、ハイビーム用及びロービーム用のヘッドランプのそれぞれは、1灯ずつで済み、また、ハイビーム用及びロービーム用のヘッドランプの前方に設置されるレンズの面積もかなり小さくすることが可能である。
【0311】
また、図9(a)に示すように、レーザ照明では、継続使用による寿命が10000時間程度であり、白色LEDと同程度の長寿命となっている。
【0312】
よって、高輝度・高光束かつ長寿命を実現できる発光装置110、発光装置120A、発光装置120B、及び照明装置140などを提供することができる。
【0313】
なお、本発明は、以下のようにも表現できる。
【0314】
本発明の高輝度光源(発光装置)は、大きく分けて次の3点から構成される。
【0315】
(1)励起光源である固体素子光源。
【0316】
(2)蛍光体を含有する発光部。
【0317】
(3)励起光源が発する励起光を発光部に導く導光部材。
【0318】
すなわち、本発明の高輝度光源は、(複数であってもよい)励起光源(固体素子:半導体レーザ(LD)または発光ダイオード(LED))と、入光部よりも出光部の断面積が小さい導光・集光部材と、導光・集光部材の出光部に取り付けられた蛍光体発光部とから構成される。
【0319】
また、導光・集光部材の出光部と蛍光体発光部とは直接接していてもよく、離れていても良い。
【0320】
また、励起光源と導光・集光部材の入光部との間、導光・集光部材の出光部と蛍光体発光部との間に、空気とは屈折率の異なる透光部材や放熱部材が挿入されていてもよい。
【0321】
上記構成とすることによって、(複数の)励起光源からの励起光を効率よく蛍光体発光部に導光・集光できるため、高光束で高輝度な光源が実現できるようになる。
【0322】
また、本発明は、以下のようにも表現できる。
【0323】
本発明の発光装置は、前記励起光源は、半導体レーザであっても良い。
【0324】
また、本発明の発光装置は、前記励起光源は、複数のレーザ光出射端を持つ単一の半導体レーザで構成されており、前記励起光は、対応するレーザ光出射端から出射するレーザ光であっても良い。
【0325】
また、本発明の発光装置は、前記発光部は、酸窒化物系蛍光体を含んでいても良い。
【0326】
また、本発明の発光装置は、前記発光部が発生する光の輝度が80Mcd/m以上であっても良い。
【0327】
また、本発明の発光装置は、前記発光部が発生する光の光束が1500lm以上、3200lm以下であっても良い。
【0328】
以上によれば、発光部のサイズに対して励起光の照射範囲が大きくなってしまうことを抑制することができる。
【0329】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組合せて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0330】
本発明は、小型化の要請が高い発光装置、照明装置、灯具及び照明器具、特に車両用等のヘッドランプに適用することができる。
【符号の説明】
【0331】
10 レーザダイオード群(励起光源)
11 LDチップ(励起光源)
13 LEDパイロットランプ(励起光源)
20 導光照射部(導光照射部材)
21 楕円錐台状集光部(導光照射部材)
22A〜22C 円錐台状集光部(導光照射部材)
23 等距離配置用集光部(導光照射部材)
24 徳利状集光部(導光照射部材)
30 凸レンズ状曲面(他端)
31 凹レンズ状曲面(他端)
40 円筒状発光体(発光部)
41 直方体状発光体(発光部)
90 反射鏡
101 LDチップ(励起光源)
102 発光点(励起光源)
110,120A,120B 発光装置(照明装置,車両用前照灯)
140 照明装置(発光装置,車両用前照灯)
130 LEDチップ(励起光源)
201 光入射面(一端)
202 光照射面(他端)
211 光入射面(一端)
212 光照射面(他端)
213 楕円錐台側面(光反射側面,囲繞構造)
221A〜221C 光入射面(一端)
222A〜222C 光出射面(他端)
223A〜223C 円錐台側面(光反射側面,囲繞構造)
231 光入射曲面(一端)
232 光照射面(他端)
233 楕円錐台側面(光反射側面,囲繞構造)
242 光照射面(他端)
243 徳利状側面(光反射側面,囲繞構造)
L0,LA,LB レーザ光(励起光)
L1 インコヒーレント光(光)
O 中心(光照射領域の中心)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を発生する励起光源と、
前記励起光源から発生した励起光が照射されることにより光を発生する発光部と、
一端に入射した前記励起光源から発生した励起光を他端に導光し、導光した励起光を前記発光部における所定の光照射領域に照射する導光照射部材とを備えており、
前記導光照射部材における前記他端の断面積は、前記一端の断面積よりも小さくなっていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記導光照射部材は、前記一端に入射した励起光を反射する光反射側面で囲まれた囲繞構造を有しており、前記一端に入射した前記励起光を、前記囲繞構造により前記他端に導光することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記励起光源及び前記導光照射部材のそれぞれが、複数存在している場合に、
前記複数の導光照射部材のそれぞれは、前記複数の励起光源から発生した各励起光のうち、前記一端に入射した励起光を前記他端に導光することを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記励起光源が、複数存在している場合に、
前記導光照射部材における前記一端は、前記複数の励起光源のそれぞれを前記光照射領域の中心から等距離の位置に配置することが可能な断面形状を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記複数の導光照射部材それぞれの一端は、前記光照射領域の中心から等距離となっていることを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項6】
前記導光照射部材の光反射側面は、前記他端の近傍で内側に凸な曲面となっていることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項7】
前記導光照射部材の他端が、前記光照射領域と接していることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項8】
前記導光照射部材の他端に、前記光照射領域に対する凹面を有する凹レンズ状曲面が形成されていることを特徴とする請求項1、2、4、6、又は、請求項7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記導光照射部材の他端に、前記光照射領域に対する凸面を有する凸レンズ状曲面が形成されていることを特徴とする請求項1、2、4、6、7、又は、請求項8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記導光照射部材は、空気よりも屈折率が高い材料で構成されており、
前記導光照射部材の外側面は、空気と接触しており、
前記導光照射部材の外側面における複数箇所を点接触で保持する保持部材を備えていることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の発光装置を備えていることを特徴とする照明装置。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の発光装置と、
前記発光部から発生した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する反射鏡とを備えることを特徴とする車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−165521(P2011−165521A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28176(P2010−28176)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】