説明

発光装置および電子機器

【課題】簡単な構成で、各色毎の発光輝度のバラツキが少ない発光装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】表示装置10は、TFT回路基板(対向基板)20と、このTFT回路基板20上に設けられ、発光色が赤色(R)の発光素子1R、緑色(G)の発光素子1Gおよび青色(B)の発光素子1Bとを有し、赤色の発光素子1Rにおいて、正孔輸送層4と発光層5Rとの界面に凹凸が形成され、緑色の発光素子1Gおよび青色の発光素子1Bにおいては、このような凹凸が形成されていない。これにより、ほぼ等しい電圧を印加したとき、各発光素子1R、1G、1Bの発光輝度がほぼ等しくなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子(発光装置)は、陰極と陽極との間に少なくとも蛍光性有機化合物を含む薄膜(発光層)を含む有機層を挟んだ構成を有しており、この薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。
この有機EL素子は、10V以下の低電圧で、100〜100000cd/m2程度の高輝度の面発光が可能であこと、また、発光材料の種類を選択することにより、青色から赤色までの発光が可能なこと等の特徴を有し、安価で大面積フルカラー表示を実現し得る素子として注目を集めている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、発光層を構成する発光材料は、各色に応じて、その特性が異なっており、各色に対応した有機EL素子において発光層を同一の構成とした場合、発光輝度にバラツキが生じるという問題がある。
かかる問題を解決するためには、発光輝度の低い有機EL素子に、他の有機EL素子より高い電圧を印加するよう構成することが考えられる。ところが、この場合、かかる構成を実現するための複雑な制御回路が必要となり、コストの増大を招く。
【0004】
【特許文献1】特開平11−54270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、簡単な構成で、各色毎の発光輝度のバラツキが少ない発光装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の発光装置は、複数の色に対応してそれぞれ設けられ、発光層と該発光層に接触するキャリア輸送層とを有する発光素子を備える発光装置であって、
所定の色の前記発光素子に対し、前記発光層と前記キャリア輸送層との界面の凹凸の程度を、他の色の前記発光素子の前記凹凸の程度と異ならせることにより、ほぼ等しい電圧を印加したとき、それらの発光輝度がほぼ等しくなるよう構成されていることを特徴とする。
これにより、簡単な構成で、各色毎の発光輝度のバラツキが少ない発光装置とすることができる。
【0007】
本発明の発光装置は、複数の色に対応してそれぞれ設けられ、発光層と該発光層に接触するキャリア輸送層とを有する発光素子を備える発光装置であって、
各色の前記発光素子に対し、それぞれ、前記発光層と前記キャリア輸送層との界面の凹凸の程度を調整することにより、ほぼ等しい電圧を印加したとき、それらの発光輝度がほぼ等しくなるよう構成されていることを特徴とする。
これにより、簡単な構成で、各色毎の発光輝度のバラツキが少ない発光装置とすることができる。
【0008】
本発明の発光装置では、前記界面に凹凸を形成することにより、前記発光素子の発光輝度が上昇することが好ましい。
これにより、各発光素子において、ほぼ等しい電圧を印加した際の発光輝度を調整することができる。
本発明の発光装置では、前記界面の凹凸は、赤色の前記発光素子において、他の色の前記発光素子より大きくなっていることが好ましい。
これにより、各発光素子の発光材料として、赤色の発光輝度が最も低く、赤色の発光輝度よりも緑色および青色の発光輝度が高く、かつ、緑色および青色の発光輝度がほぼ等しいものを組み合わせて用いる場合に、赤色の発光素子の発光輝度が上昇して、各発光素子において、ほぼ等しい電圧を印加した際の発光輝度をほぼ等しくすることができる。
本発明の発光装置では、前記界面の凹凸は、前記発光素子において、不規則に形成されていることが好ましい。
これにより、発光素子が発光する際の光の干渉を防止することができ、光学特性が低下(劣化)するのを好適に防止することができる。
【0009】
本発明の発光装置では、前記発光層の前記キャリア輸送層側の面または前記キャリア輸送層の前記発光層側の面の凸部は、その配設密度が1mmあたり70〜1×10個であることが好ましい。
これにより、発光素子が発光する際の光の干渉を防止することができ、光学特性が低下(劣化)するのを好適に防止することができる。
【0010】
本発明の発光装置では、前記発光層の前記キャリア輸送層側の面または前記キャリア輸送層の前記発光層側の面は、その表面粗さRa(JIS B 0601に規定)が1〜15μmであることが好ましい。
これにより、発光素子が発光する際の光の干渉を防止することができ、光学特性が低下(劣化)するのを好適に防止することができる。
【0011】
本発明の発光装置では、前記界面の凹凸は、粗面化処理により、前記発光層および前記キャリア輸送層のいずれか一方の前記界面となる面に凹凸を形成することにより得られたものであることが好ましい。
粗面化処理によれば、不規則な凹凸を確実に形成することができる。
本発明の発光装置では、前記粗面化処理は、ラビング処理または溶剤処理であることが好ましい。
これにより、不規則な凹凸を容易かつ確実に形成することができる。
本発明の発光装置では、前記粗面化処理が施された層は、重合性基を有する化合物を含む層を形成した後、前記化合物を重合させて得られたものであることが好ましい。
これにより、不規則な凹凸をより確実に形成することができる。
【0012】
本発明の発光装置では、前記粗面化処理は、ラビング処理であり、
前記粗面化処理が施された層は、前記化合物を重合させるのに先立って、前記重合性基を有する化合物を含む層に対して、前記ラビング処理を施すことにより得られたものであることが好ましい。
これにより、不規則な凹凸をより確実に形成することができる。
【0013】
本発明の発光装置では、前記粗面化処理は、溶剤処理であり、
前記粗面化処理が施された層は、前記化合物を重合させた後の前記重合性基を有する化合物を含む層に対して、前記溶剤処理を施すことにより得られたものであることが好ましい。
これにより、不規則な凹凸をより確実に形成することができる。
本発明の発光装置では、前記粗面化処理は、マスクを用いて目的とする箇所に選択的に施されていることが好ましい。
これにより、不規則な凹凸を目的とする領域に容易かつ確実に形成することができる。
【0014】
本発明の発光装置では、各色の前記発光素子が備える発光層は、その平面視での大きさがほぼ等しいことが好ましい。
これにより、表示装置の製造工程の簡略化および製造コストの削減を図ることができる。
本発明の発光装置では、前記キャリア輸送層は、正孔を輸送する機能を有する層であることが好ましい。
これにより、凹凸が形成された発光素子の発光効率をより向上させることができる。
本発明の電子機器は、本発明の発光装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の発光装置および電子機器について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、本発明の発光装置を適用したアクティブマトリクス型表示装置の実施形態について説明する。
図1は、本発明の発光装置を適用したアクティブマトリクス型表示装置の実施形態を示す縦断面図、図2は、図1に示すアクティブマトリクス型表示装置の製造方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図1および図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0016】
図1に示すアクティブマトリクス型表示装置(以下、単に「表示装置」と言う。)10は、TFT回路基板20と、このTFT回路基板20上に設けられ、発光色が赤色(R)の発光素子1R、緑色(G)の発光素子1Gおよび青色(B)の発光素子1Bとを有している。
TFT回路基板20は、基板21と、この基板21上に形成された回路部22とを有している。
基板21は、表示装置10を構成する各部の支持体となるものである。
また、本実施形態の表示装置10は、基板21側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、基板21は、実質的に透明(無色透明、着色透明、半透明)とされる。
【0017】
基板21は、硬質基板または可撓性基板のいずれで構成されていてもよい。
硬質基板としては、例えば、各種ガラス基板、各種セラミックス基板、各種半導体基板や、各種高硬度の樹脂基板を好適に用いることもできる。
一方、可撓性基板としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォンのようなポリエーテル系樹脂等を主材料として構成される基板を用いることができる。中でも、ポリイミド系樹脂は、熱膨張率や熱収縮率が小さいため、ポリイミド系樹脂を主材料とする基板は、熱収縮率を低く抑えることができる。また、ポリエステル系樹脂を主材料として構成される基板は、寸法安定性が良いという利点がある。
さらに、このような樹脂材料に充填材、繊維を入れて積層したり、前熱処理や架橋度を調整することにより、可撓性基板の収縮率を低下させて、寸法安定性を向上させることもできる。
基板21の平均厚さは、特に限定されないが、1〜30mm程度であるのが好ましく、5〜20mm程度であるのがより好ましい。
【0018】
回路部22は、基板21上に形成された下地保護層23と、下地保護層23上に形成された駆動用TFT(スイッチング素子)24と、第1層間絶縁層25と、第2層間絶縁層26とを有している。
駆動用TFT24は、半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
このような回路部22上に、各駆動用TFT24に対応して、それぞれ、発光素子1R、1G、1Bが設けられている。
【0019】
本実施形態では、各発光素子1R、1G、1Bの陽極3は、個別電極(画素電極)を構成し、各駆動用TFT24のドレイン電極245に配線(導通部)27により電気的に接続されている。
また、隣接する発光素子1R、1G、1Bの発光層5R、5G、5B同士は、隔壁部(バンク)31により区画され、平面視において、マトリクス状に配置されている(図2参照)。そして、図2中、2点鎖線で囲まれる部分(3つの発光素子1R、1G、1B)により1画素が構成されている。
【0020】
なお、発光層5R、5G、5Bの配置は、図2に示すものに限定されず、例えば、図3(a)、(b)に示すようなものであってもよい。
また、各発光層5R、5G、5Bは、いずれも、そのサイズ(平面視での大きさ)がほぼ等しく設定されている。これにより、隔壁部31の形成が容易となり、ひいては、表示装置10の製造工程の簡略化および製造コストの削減を図ることができる。
【0021】
以下、発光素子1R、1G、1Bについて詳述する。
図1に示すように、発光素子1R、1G、1Bは、それぞれ、個別の陽極3と、共通の陰極8と、各陽極3と陰極8との間に、それぞれ、陽極3側から順に、共通の正孔輸送層4、個別の発光層5R、5G、5Bおよび共通の電子輸送層6が介挿されて構成されている。
なお、以下では、発光素子1R、1G、1Bを総称して発光素子1と、発光層5R、5G、5Bを総称して発光層5と言うことがある。
【0022】
陽極(第2の電極)3は、正孔輸送層4に正孔を注入する電極である。
この陽極3の構成材料(陽極材料)としては、仕事関数が大きく、導電性に優れ、また透光性を有する材料を用いるのが好ましい。
このような陽極材料としては、例えば、ITO(酸化インジウムと酸化亜鉛との複合物)、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0023】
陽極3の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。陽極3の厚さが薄すぎると、陽極3としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陽極3が厚過ぎると、陽極材料の種類等によっては、光の透過率が著しく低下し、発光素子1R、1G、1Bの構成がボトムエミッション型の場合、実用に適さなくなるおそれがある。
なお、陽極材料には、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂材料を用いることもできる。
【0024】
一方、陰極(第1の電極)8は、電子輸送層6に電子を注入する電極である。
この陰極8の構成材料(陰極材料)としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
このような陰極材料としては、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
特に、陰極材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極材料として用いることにより、陰極8の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
【0025】
陰極8の平均厚さは、特に限定されないが、100nm〜3000nm程度であるのが好ましく、500〜2000nm程度であるのがより好ましい。陰極8の厚さが薄すぎると、陰極8の機能が充分に発揮されなくなるおそれがある。
なお、陰極8は、複数層の積層構造とすることができる。この場合、電子輸送層6に近い側の層を、より仕事関数が低い陰極材料で構成するのが好ましい。例えば、陰極8を2層の積層構成とする場合、電子輸送層6から遠い側の層をCaを主材料として構成し、電子輸送層6に近い側の層を、Al、Agまたはこれらを含む合金を主材料として構成することができる。
【0026】
また、かかる構成の陰極8では、電子輸送層6に近い側の層を、発光層5から発せられた光をTFT回路基板20側に反射させる光反射層として機能させることもできる。これにより、表示装置10(発光素子1R、1G、1B)の発光効率(光の取り出し効率)を向上させることができる。
また、陰極8と電子輸送層6との間には、例えば、水分や金属物質等が電子輸送層6や発光層5に拡散するのを防止することや、陰極8の機能を補完すること等を目的として、補助陰極を設けるようにしてもよい。
この場合、補助陰極の構成材料としては、周期律表の第1A族または第2A族に属する金属元素のフッ化物を主材料として構成されるものが好ましく、その具体例としては、例えば、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、BaF、CaF、SrF、MgF等が挙げられる。
補助陰極の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜10nm程度であるのが好ましく、0.1〜5nm程度であるのがより好ましい。
【0027】
正孔輸送層4は、陽極3から注入された正孔を発光層5まで輸送する機能を有するものである。
この正孔輸送層4の構成材料(正孔輸送材料)としては、各種の高分子材料や、各種の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
高分子の正孔輸送材料としては、例えば、ポリアリールアミンのようなアリールアミン骨格を有するもの、フルオレン−ビチオフェン共重合体のようなフルオレン骨格を有するもの、フルオレン−アリールアミン共重合体のようなアリールアミン骨格およびフルオレン骨格の双方を有するもの、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。
また、前記化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
【0028】
一方、低分子の正孔輸送材料としては、例えば、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−ビス(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、TPTE、4,4’,4’’ −トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(1−TNATA)のようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾールのようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、OZのようなオキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、m−MTDATAのようなトリフェニルメタン系化合物、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4,−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7,−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−ビス(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物等が挙げられる。
【0029】
このような正孔輸送層4の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。
なお、陽極3と正孔輸送層4との間には、例えば、陽極3からの正孔注入効率を向上させる正孔注入層を設けるようにしてもよい。
この正孔注入層の構成材料(正孔注入材料)としては、例えば、銅フタロシアニンや、4,4‘,4‘‘−トリス(N,N‐フェニル‐3‐メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)等が挙げられる。
【0030】
電子輸送層6は、陰極8から注入された電子を発光層5まで輸送する機能を有する層である。
電子輸送層6の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)、1,3,5−トリス[{3−(4−t−ブチルフェニル)−6−トリスフルオロメチル}キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ2)のようなベンゼン系化合物(スターバースト系化合物)、ナフタレンのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセンのようなクリセン系化合物、ペリレンのようなペリレン系化合物、アントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、BBOTのようなチオフェン系化合物、ブタジエンのようなブタジエン系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、キノリンのようなキノリン系化合物、ビスチリルのようなビスチリル系化合物、ピラジン、ジスチリルピラジンのようなピラジン系化合物、キノキサリンのようなキノキサリン系化合物、ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−パラ−ベンゾキノンのようなベンゾキノン系化合物、ナフトキノンのようなナフトキノン系化合物、アントラキノンのようなアントラキノン系化合物、オキサジアゾール、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、BMD、BND、BDD、BAPDのようなオキサジアゾール系化合物、トリアゾール、3,4,5−トリフェニル−1,2,4−トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、オキサゾール系化合物、アントロンのようなアントロン系化合物、フルオレノン、1,3,8−トリニトロ−フルオレノン(TNF)のようなフルオレノン系化合物、ジフェノキノン、MBDQのようなジフェノキノン系化合物、スチルベンキノン、MBSQのようなスチルベンキノン系化合物、アントラキノジメタン系化合物、チオピランジオキシド系化合物、フルオレニリデンメタン系化合物、ジフェニルジシアノエチレン系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする錯体のような各種金属錯体等が挙げられる。
その他、電子輸送層6の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、オキサジアゾール系高分子(ポリオキサジアゾール)、トリアゾール系高分子(ポリトリアゾール)等の高分子系の材料を用いることもできる。
【0031】
電子輸送層6の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100nm程度であるのが好ましく、20〜50nm程度であるのがより好ましい。
なお、電子輸送層6と陰極8との間には、例えば、陰極8からの電子注入効率を向上させる電子注入層を設けるようにしてもよい。
この電子注入層の構成材料(電子注入材料)としては、各種有機材料の他、例えば、各種の無機絶縁材料や、各種の無機半導体材料等が挙げられる。
【0032】
無機絶縁材料や無機半導体材料を主材料として電子注入層を構成することにより、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることや、耐久性の向上を図ることができる。
このような無機絶縁材料としては、例えば、アルカリ金属カルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物)、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらを主材料として電子注入層を構成することにより、電子注入性をより向上させることができる。
【0033】
アルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe、NaO等が挙げられる。
アルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSe等が挙げられる。
アルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaCl等が挙げられる。
アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF、BeF等が挙げられる。
【0034】
また、無機半導体材料としては、例えば、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、このような無機材料で電子注入層を構成する場合、この無機材料は、微結晶または非晶質であることが好ましい。これにより、電子注入層は、より均質なものとなるため、ダークスポット等の画素欠陥を減少させることができる。
【0035】
陽極3と陰極8との間に通電(電圧を印加)すると、正孔輸送層4中を正孔が、また、電子輸送層6中を電子が移動し、発光層5において正孔と電子とが再結合する。そして、発光層5ではエキシトン(励起子)が生成し、このエキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)する。
発光層5(5R、5G、5B)の構成材料(発光材料)としては、それぞれ、各種の高分子材料や、各種の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
【0036】
高分子の発光材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物、ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ[2,5−ビス(3、7−ジメチルオクチロキシ)−1,4−フェニレンビニレン]などのポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]のようなポリフルオレン系化合物、ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物、ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物等が挙げられる。
【0037】
一方、低分子の発光材料としては、例えば、ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニルのようなベンゼン系化合物、ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセン、6−ニトロクリセンのようなクリセン系化合物、ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物、コロネンのようなコロネン系化合物、アントラセン、ビススチリルアントラセン、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)のようなピラン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物、ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物、2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物、ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物、ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、ペリノンのようなペリノン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アルダジン系化合物、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物、キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物、2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物、フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート) アルミニウム(III)(Almq)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン プラチナム(II)、トリス(1−フェニルイソキノリン) イリジウム(III)のような各種金属錯体等が挙げられる。
各発光層5R、5G、5Bの構成材料としては、これらの発光材料の中から、目的の発光色を発する材料を選択するようにすればよい。
【0038】
赤色の発光材料(発光層5Rの構成材料)としては、例えば、トリス(1−フェニルイソキノリン) イリジウム(III)、ポリ[2,5−ビス(3、7−ジメチルオクチロキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)−1,4−(1−シアノビニレン)フェニレン]、ポリ[2−メトキシ−5−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]等が挙げられる。
【0039】
緑色の発光材料(発光層5Gの構成材料)としては、例えば、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセン、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ジフェニレン−ビニレン−2−メトキシ−5−{2−エチルヘキシルオキシ}ベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−(2−エトキシルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]等が挙げられる。
【0040】
青色の発光材料(発光層5Bの構成材料)としては、例えば、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルオキシフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−{2−エトキシヘキシルオキシ}フェニレン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(エチルニルベンゼン)]等が挙げられる。
【0041】
なお、発光材料として低分子系のものを用いる場合、各発光層5R、5G、5Bのいずれも、低分子系の発光材料で構成するのが好ましく、高分子系のものを用いる場合、各発光層5R、5G、5Bのいずれも、高分子系の発光材料で構成するのが好ましい。
また、各発光層5の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。
そして、図示しない封止部材が、発光素子1全体を覆うように設けられ、これらを気密的に封止している。
【0042】
この封止部材は、酸素や水分を遮断する機能を有し、発光素子1を構成する各部(各層)の変質・劣化を防止して、発光素子1の信頼性や耐久性の向上を図ることができる。
封止部材の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。
また、封止部材は、平板状として、TFT回路基板20と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
【0043】
さて、本発明では、所定の色の発光素子に対し、発光層とキャリア輸送層との界面の凹凸の程度を、他の色の発光素子の凹凸の程度と異ならせることによって、ほぼ等しい電圧を印加したとき、それらの発光輝度がほぼ等しくなるよう構成したことに特徴を有する。
本実施形態では、図1に示すように、赤色の発光素子1Rにおいて、正孔輸送層(正孔を輸送する機能を有するキャリア輸送層)4と発光層5Rとの界面に凹凸が形成され、緑色の発光素子1Gおよび青色の発光素子1Bにおいては、このような凹凸が形成されていない。すなわち、正孔輸送層4と発光層5との界面の凹凸が、赤色の発光素子1Rにおいて、他の色の発光素子1G、1Bより大きくなっており、緑色の発光素子1Gおよび青色の発光素子1Bにおいて、ほぼ等しい(本実施形態では、緑色および青色において、凹凸が実質的に存在しない。)。これにより、ほぼ等しい電圧を印加したとき、各発光素子1R、1G、1Bの発光輝度がほぼ等しくなるように構成されている。
【0044】
ここで、正孔輸送層4と発光層5Rとの界面に凹凸が存在すると、これらの接触面積が増大することにより、発光層5Rへの正孔の注入効率が上昇し、その結果、発光層5Rの発光効率(発光輝度)が上昇する。したがって、発光材料として、赤色の発光輝度が最も低く、赤色の発光輝度より緑色および青色の発光輝度が高く、かつ、緑色および青色の発光輝度がほぼ等しいものを組み合わせて用いる場合に、本実施形態の構成を適用すれば、赤色の発光素子1Rの発光輝度が上昇することとなり、各発光素子1R、1G、1Bにおいて、ほぼ等しい電圧を印加した際の発光輝度をほぼ等しくする(調整する)ことができる。
【0045】
一般に、赤色の発光材料は、発光輝度が低いものが多い傾向にあるため、本発明の表示装置10では、本実施形態の構成を適用するのが好ましい。
なお、本実施形態では、赤色の発光素子1Rにおいて、正孔輸送層4と発光層5Rとの界面に凹凸を形成する場合について説明したが、このような場合に限定されず、各色(赤色、緑色および青色)の発光素子に対し、正孔輸送層4と発光層5との界面の凹凸の程度を調節するようにしてもよい。
【0046】
すなわち、例えば、発光材料として、赤色の発光輝度が低く、青色の発光輝度が高く、緑色の発光輝度が赤色と青色との間であるものを組み合わせて用いる場合、正孔輸送層4と発光層5との界面の凹凸の程度を、赤色の発光素子1Rで最も大きく、青色の発光素子1Bで最も小さく、緑色の発光素子1Gでこれらの間となるように設定するようにすればよい。
【0047】
前述したように、本実施形態では、正孔輸送層4と発光層5との界面に凹凸が形成される。すなわち、正孔輸送層4の発光層5R側の面または発光層5Rの正孔輸送層4側の面に凹凸が形成される。
ここでは、正孔輸送層4の発光層5R側の面すなわち正孔輸送層4の上面に凸部41が形成される場合を一例に説明する。
【0048】
凸部41は、図4に示すように、凸部41の配設密度および正孔輸送層4の上面の表面粗さRa(JIS B 0601に規定)の双方が異なることにより、不規則に存在している(形成されている)。これにより、発光素子1Rが発光する際の光の干渉を防止することができ、光学特性が低下(劣化)するのを好適に防止することができる。
この凸部41の配設密度は、特に限定されないが、1mmあたり、70〜1×10個程度であるのが好ましく、1×10〜4×10個程度であるのがより好ましい。
また、正孔輸送層4の上面の表面粗さRaも、特に限定されないが、1〜15μm程度であるのが好ましく、5〜10μm程度であるのがより好ましい。
【0049】
凸部41の配設密度および正孔輸送層4の上面の表面粗さRaの一方が、前記範囲を満足することにより、前述した効果がより向上し、双方が、前記範囲を満足することにより、前述した効果がさらに向上する。
なお、凹凸において、凸部41は、凸部41の配設密度および凸部41の表面粗さRaのいずれか一方が異なることにより、不規則に存在するものであってもよい。
また、凸部41の形状は、図1および図4中の紙面手前側から奥側に延在する直線状(リブ状)のものであってもよく、散点状に存在する山状のものであってもよい。
【0050】
なお、本実施形態では、正孔輸送層4と発光層5との界面を凹凸とする場合について説明したが、本発明では、発光層5と電子輸送層(電子を輸送する機能を有するキャリア輸送層)6との界面を凹凸にするようにしてもよく、正孔輸送層4と発光層5との界面および発光層5と電子輸送層6との界面の双方を凹凸にするようにしてもよい。発光層5と電子輸送層6との界面を凹凸とすると、電子輸送層6と発光層5との接触面積が増大することにより、発光層5への電子の注入効率が上昇し、その結果、やはり、発光効率(発光輝度)が上昇する。
【0051】
ただし、本発明者の検討では、各層4、5、6の構成材料にもよるが、発光層5と電子輸送層6との界面に凹凸を形成するよりも、正孔輸送層4と発光層5との界面に凹凸を形成すると、発光輝度がより向上する傾向を示すことが確認されている。
なお、発光材料の発光輝度、凸部を形成する層、凸部の配設密度および凸部が形成された層の表面粗さRaと発光輝度の上昇の程度との関係は、実験的に予め求めることができる。
【0052】
また、1つの発光素子の中でも、例えば、比較的素子の外周が暗く、内部が明るくなる場合には、正孔輸送層4の上面に形成する凹凸の配設密度を外周の方が高くなるように設定して、1つの発光素子での発光輝度の均一性を図るようにしてもよい。もしくは、内部の凹凸の配設密度を高く設定して、内部の発光輝度を外部に対してより高くするようにしてもよい。
【0053】
このように、本発明によれば、発光層5とキャリア輸送層(正孔輸送層4または電子輸送層6)との界面に凹凸を形成するという簡単な構成で、発光素子1の発光輝度を上昇させることができる。そして、各発光素子1R、1G、1Bにおいて、それらの界面の凹凸の程度を調整することにより、ほぼ等しい電圧を印加したとき、それらの発光輝度がほぼ等しくなるよう構成することができる。このため、各発光素子1R、1G、1Bを等しい発光輝度で発光させるのにも関わらず、各発光素子1R、1G、1Bに応じて印加電圧を変更するような複雑な制御回路の設計を省略することができる。
また、各色の発光素子において、ほぼ等しい印加電圧での発光輝度の均一化を図る方法の一つとして、発光輝度の低い発光層のサイズ(平面視での大きさ)をより大きく形成する構成が考えられるが、本発明によれば、かかる構成を採用する必要、すなわち、発光層5R、5G、5Bのサイズを、それぞれ個別に設定(設計)して製造する必要がない。
【0054】
このようなことから、発光素子1や表示装置10全体の構成が複雑化するのを防止して、その製造コストや製造時間の削減を図ることができる。
また、発光層5とキャリア輸送層(正孔輸送層4または電子輸送層6)との界面に凹凸を形成するため、発光サイトが広がり、局所的な発光材料の劣化が生じにくくなり、発光素子1(表示装置10)の長寿命化を図ることもできる。
【0055】
このような表示装置10は、例えば、次のようにして製造することができる。
以下、表示装置10の製造方法について説明する。
[1] まず、基板21を用意し、基板21上に、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料ガスとして、プラズマCVD法等により、平均厚さが約200〜500nmの酸化シリコンを主材料として構成される下地保護層23を形成する。
【0056】
[2] 次に、下地保護層23上に、駆動用TFT24を形成する。
まず、基板21を約350℃に加熱した状態で、下地保護層23上に、例えばプラズマCVD法等により、平均厚さが約30〜70nmのアモルファスシリコンを主材料として構成される半導体膜を形成する。
次いで、半導体膜に対して、レーザアニールまたは固相成長法等により結晶化処理を行い、アモルファスシリコンをポリシリコンに変化させる。
ここで、レーザアニール法では、例えば、エキシマレーザでビームの長寸が400mmのラインビームを用い、その出力強度は、例えば200mJ/cm程度に設定される。また、ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザ強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域毎に重なるようにラインビームを走査する。
【0057】
次いで、半導体膜をパターニングして島状とし、各島状の半導体膜241を覆うように、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料ガスとして、プラズマCVD法等により、平均厚さが約60〜150nmの酸化シリコンまたは窒化シリコン等を主材料として構成されるゲート絶縁層242を形成する。
次いで、ゲート絶縁層上に、例えば、スパッタ法等により、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属を主材料として構成される導電膜を形成した後、パターニングし、ゲート電極243を形成する。
次いで、この状態で、高濃度のリンイオンを打ち込んで、ゲート電極243に対して自己整合的にソース・ドレイン領域を形成する。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域となる。
【0058】
[3] 次に、駆動用TFT24に電気的に接続されるソース電極244およびドレイン電極245を形成する。
まず、ゲート電極243を覆うように、第1層間絶縁層25を形成した後、コンタクトホールを形成する。
次いで、コンタクトホール内にソース電極244およびドレイン電極245を形成する。
【0059】
[4] 次に、ドレイン電極245と陽極3とを電気的に接続する配線(中継電極)27を形成する。
まず、第1層間絶縁層25上に、第2層間絶縁層26を形成した後、コンタクトホールを形成する。
次いで、コンタクトホール内に配線27を形成する。
[5] 次に、第2層間絶縁層26上に、配線27に接触するように陽極(画素電極)3を形成する。
この陽極3は、ゲート電極243と同様にして形成することができる。
【0060】
[6] 次に、各陽極3を覆うように、正孔輸送層4を形成する。
この際、粗面化処理により、正孔輸送層4の上面(発光層5との界面となる面)の所定の箇所(発光素子1Rとすべき箇所)に、凹凸を形成する。
正孔輸送層4は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法等を用いた気相プロセスや、スピンコート法(パイロゾル法)、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等を用いた液相プロセス等で形成することができる。
なお、これらの方法は、正孔輸送層4の構成材料の熱安定性や、溶媒への溶解性等の物理的特性および/または化学的特性を考慮して選択される。
【0061】
粗面化処理としては、ラビング処理や、上面を溶剤により溶解(溶出)・除去する溶剤処理が好適に用いられ、正孔輸送層(固化層)4を形成した後、マスクを用いて選択的にラビング処理や溶剤処理を施すことにより、凹凸を形成することができる。かかる方法によれば、前述したような不規則な凹凸を目的とする領域(箇所)に容易かつ確実に形成することができる。
また、粗面化処理としてこれらの方法を用いる場合、正孔輸送材料として重合性基を有する化合物を用いて、次のようにして形成すると、上面に凹凸を有する正孔輸送層4をより確実に形成することができる。
【0062】
I:粗面化処理としてラビング処理を用いる場合
まず、重合性基を有する化合物を含む層を形成し、この層中に含まれる溶媒の一部を除去(乾燥)し、次いで、その上面の所定の箇所にラビング処理を施した後、残る溶媒を除去すること(乾燥)により固化させ、次いで、前記化合物を重合させる。
【0063】
II:粗面化処理として溶剤処理を用いる場合
まず、重合性基を有する化合物を含む層を形成し、この層中に含まれる溶媒を除去すること(乾燥)により固化させた後、前記化合物を重合させ、その上面の所定の箇所に溶剤処理を施して、不要成分(未反応の前記化合物)を溶解・除去する。
このような重合性基を有する正孔輸送材料としては、前述したような化合物に対して、光重合性または熱重合性を有する重合性基を導入したものが挙げられる。
【0064】
ここで、光重合性を有する重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基等の置換基を末端に備えるものが挙げられ、熱重合性を有する重合性基としては、例えば、エポキシ基等の置換基を末端に備えるものが挙げられる。
その他、重合性基を有する正孔輸送材料には、後に詳述する化合物も好適に用いることができる。
【0065】
化合物同士を加熱により重合させる場合、加熱温度は、特に限定されないが、50〜200℃程度であるのが好ましく、70〜150℃程度であるのがより好ましい。
加熱時間は、5〜90分程度であるのが好ましく、5〜60分程度であるのがより好ましい。
化合物同士を光照射により重合させる場合、照射する光としては、例えば、赤外線、可視光線、紫外線およびX線等が挙げられるが、紫外線を用いるのが特に好ましい。
【0066】
照射する紫外線の波長は、200〜420nm程度であるのが好ましく、250〜400nm程度であるのがより好ましい。
また、紫外線の照射強度は、10〜5000mW/cm程度であるのが好ましく、20〜1000mW/cm程度であるのがより好ましい。
さらに、紫外線の照射時間は、5〜300秒程度であるのが好ましく、10〜150秒程度であるのがより好ましい。
【0067】
なお、本実施形態では、正孔輸送層4を一括して形成する場合について説明したが、正孔輸送層4は、各発光素子1毎に、個別に形成するようにしてもよい。
この場合、上面に凹凸を有する正孔輸送層4は、例えば、正孔輸送材料を含む液状被膜を形成し、この液状被膜を、その中に含まれる溶媒(または分散媒)の沸点以上の温度で加熱し、溶媒の蒸発に伴ってクレータ状の凹凸を形成する方法、非晶質の正孔輸送材料で構成される層を形成し、この層を加熱することにより結晶化させ、上面に凹凸を形成する方法、マスクを用いた蒸着法等により形成することができる。
【0068】
また、本実施形態では、発光素子1を正孔輸送層4側から順次積層する場合について説明しているが、電子輸送層6側から形成するようにしてもよく、この場合、発光層5を以上と同様にして形成するようにすればよい。
さらに、発光層5と電子輸送層6との界面に凹凸を形成する場合には、発光層5または電子輸送層6を以上と同様にして形成するようにすればよい。
【0069】
[7] 次に、正孔輸送層4上に、各発光層5R、5G、5Bを形成する領域を区画するように、隔壁部31を形成する。
隔壁部31の構成材料は、耐熱性、撥液性、インク溶剤耐性、下地層との密着性等を考慮して選択される。このような材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂のような有機材料が挙げられる。
このような隔壁部31は、前述したような液相プロセス、特に、インクジェット法を用いることにより、寸法精度高く形成することができる。
【0070】
また、撥液性を示す隔壁部31は、例えば、フッ素系樹脂を用いて形成することや、隔壁部31の表面にフッ素プラズマ処理を施すこと等により得ることができる。
また、隔壁部31の開口の形状は、図2に示すように、正方形(四角形)の他、例えば、円形、楕円形、六角形等の多角形等、いかなるものであってもよい。
なお、隔壁部31の開口の形状を多角形とする場合には、角部は丸みを帯びているのが好ましい。これにより、発光層5を、液状材料を用いて形成する場合には、この液状材料を、隔壁部31の内側の空間の隅々にまで確実に供給することができる。
このような隔壁部31の高さは、発光層5の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されない。
【0071】
[8] 次に、正孔輸送層4上に、それぞれ、発光層5(5R、5G、5B)を形成する。
この発光層5は、前述したような気相プロセスや液相プロセスにより形成することができるが、中でも、インクジェット法(液滴吐出法)を用いた液相プロセスにより形成するのが好ましい。インクジェット法を用いることにより、発光層5の薄膜化を図ることができる。また、発光層形成用の液状材料を、隔壁部31の内側に選択的に供給することができるため、液状材料のムダを省くことができる。
【0072】
具体的には、発光層形成用の液状材料を、インクジェットプリント装置のヘッドから吐出し、各正孔輸送層4上に供給し、脱溶媒または脱分散媒する。
この脱溶媒または脱分散媒は、減圧雰囲気に放置する方法、熱処理(例えば50〜60℃程度)による方法、窒素ガスのような不活性ガスのフローによる方法等が挙げられる。さらに、追加の熱処理(150℃程度で短時間)で行うことにより、残存溶媒を除去する。
用いる液状材料は、前述したような発光材料を溶媒または分散媒に溶解または分散することにより調製される。
【0073】
また、液状材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の各種無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
なお、正孔輸送層4上に供給された液状材料は、流動性が高く(粘性が低く)、水平方向(面方向)に広がろうとするが、隔壁部31により囲まれているため、所定の領域以外に広がることが阻止され、発光層5(発光素子1)の輪郭形状が正確に規定される。
【0074】
[9] 次に、各発光層5および隔壁部31を覆うように、電子輸送層6を形成する。
この電子輸送層6も、前述したような気相プロセスや液相プロセスにより形成することができる。
[10] 次に、電子輸送層6上に陰極8を形成する。
この陰極8は、前述したような気相プロセス、液相プロセスや、導電性シート材(金属箔)の接合により形成することができる。
【0075】
[11] 次に、各発光素子1を箱状の封止部材で覆い、TFT回路基板20に各種硬化性樹脂(接着剤)で接合する。これにより、各発光素子1を封止部材により封止し、表示装置10を完成する。
硬化性樹脂には、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、反応性硬化樹脂、嫌気性硬化樹脂のいずれも使用可能である。
【0076】
次に、各層4〜6の構成材料として用いることができる重合性基を有する化合物の他の例について説明する。
このような化合物としては、例えば、下記一般式(A1)または下記一般式(A2)で表される化合物が挙げられ、このうち、各層4〜6の構成材料としては、それぞれ、正孔輸送能、発光能および電子輸送能を有するものを選択して用いられる。
【0077】
【化1】

[式中、2つのRは、それぞれ独立して、炭素数2〜8の直鎖アルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。2つのXは、下記一般式(B1)〜下記一般式(B3)で表される置換基のうちのいずれかを示す。ただし、2つのXは、同種の置換基であるが、その炭素数は、同一であっても異なっていてもよい。Yは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、または、置換もしくは無置換の複素環を少なくとも1つ含む基を表す。]
【0078】
【化2】

[式中、8つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。X、X、XおよびXは、下記一般式(B1)〜下記一般式(B3)で表される置換基のうちのいずれかを示す。ただし、これらX、X、XおよびXは、同種の置換基であるが、その炭素数は、同一であっても、異なっていてもよい。Yは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、または、置換もしくは無置換の複素環を少なくとも1つ含む基を表す。]
【0079】
【化3】

[これらの式中、nは、2〜8の整数を表す。nは、3〜8の整数を表し、mは、0〜3の整数を表す。Zは、水素原子またはメチル基を表し、Zは、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。]
【0080】
ここで、上記一般式(A1)で表される化合物(以下、「化合物(A1)」と言う。)において、重合性基Xは、置換基Xを表し、上記一般式(A2)で表される化合物(以下、「化合物(A2)」と言う。)において、重合性基Xは、置換基X、置換基X、置換基Xおよび置換基X(以下、これらのものを総称して「置換基X2〜5」と言うこともある。)を表す。
【0081】
また、化合物(A1)および化合物(A2)は、それぞれが備える重合性基Xにおいて重合していない状態でも優れたキャリア輸送能を発揮するが、それぞれの化合物同士を重合性基Xにおいて重合させた高分子は、より優れたキャリア輸送能を発揮するものとなる。
そのため、化合物(A1)または化合物(A2)を重合させた高分子を各層4〜6の主材料として用いることにより、各層4〜6は、それぞれ、より優れた特性(キャリア輸送能や発光能等)を発揮するものとなる。
【0082】
以下、これらの高分子の特徴について説明する。
これらの高分子(ポリマー)は、化合物(A1)または化合物(A2)(ジフェニルアミン誘導体)同士を、それぞれが有する重合性基Xにおいて重合反応させて得られたもの、すなわち、重合性基以外の主骨格(ジフェニルアミン骨格)同士を、重合性基を反応させて得られた化学構造(以下、この化学構造を「連結構造」という。)により連結してなるものである。
【0083】
まず、化合物(A1)により得られた高分子について説明する。
ここで、化合物(A1)同士を、置換基Xにおいて重合反応させて得られた高分子では、連結構造を介して前記主骨格が繰り返して結合する構成、すなわち、主骨格が所定の距離を離間して繰り返し存在している構成となっていることから、隣接する主骨格同士の相互作用が低減する。
【0084】
また、前記主骨格は、共役系の化学構造を有し、その特有な電子雲の広がりにより、高分子における円滑なキャリア輸送に寄与する。
このようなことから、この高分子は、優れたキャリア輸送能を発揮し、かかる高分子を主材料として得られた各層4〜6は、それぞれ、特性に優れたものとなる。
なお、このような高分子において、主骨格同士の離間距離が短くなり過ぎると、隣接する主骨格同士の相互作用が大きくなる傾向を示し、主骨格の離間距離が長くなり過ぎると、主骨格同士間におけるキャリアの受け渡しが困難となり、高分子のキャリア輸送能が低減する傾向を示す。
【0085】
かかる観点から、置換基Xの構造を設定するのが好ましく、置換基Xとして上記一般式(B1)または(B2)のものを選択した場合には、nが2〜8、特に3〜6の直鎖状の炭素−炭素結合のものが好ましく、上記一般式(B3)のものを選択した場合には、nが3〜8、および、mが0〜3の直鎖状の炭素−炭素結合のものが好ましく、特にnが4〜6、および、mが1または2の直鎖状の炭素−炭素結合のものが好ましい。
かかる関係を満足するより、主骨格同士の距離を適度に保つことが可能となり、高分子中において、隣接する主骨格同士の相互作用をより確実に低減することができるとともに、主骨格同士間におけるキャリアの受け渡しがより確実に行われることから、高分子のキャリア輸送能が優れたものとなる。
【0086】
ここで、置換基Xとして(B1)および(B2)のものを選択した場合には、その末端に、それぞれ、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基が存在する。(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基は、高い反応性および結合安定性を有することから、比較的容易に置換基X同士を重合反応させて、鎖長の長い高分子を形成することができる。
さらに、(メタ)アクリロイル基を用いて重合反応させることにより生じた連結構造中には、酸素原子と炭素原子との内に二重結合(π結合)が2つ存在することとなる。これにより、主骨格同士の距離が比較的長くなった場合においても、この2つのπ結合(共役系の結合)を介して、主骨格同士間におけるキャリアの受け渡しを確実に行うことができる。
【0087】
また、2つのπ結合と主骨格との間には直鎖状の炭素−炭素結合(アルキレン基)が存在することから、主骨格同士の相互作用の増強を防止することができる。
また、エポキシ基を用いて重合反応させることにより生じた連結構造中には、エーテル結合と、直鎖状の炭素−炭素結合(アルキレン基)とが存在することとなる。このような構造を有する連結構造中においては、電子の移動が抑制されることとなる。これにより、主骨格同士の距離が比較的短くなった場合においても、主骨格同士の相互作用が増強するのを防止または抑制することができる。
なお、例えば、ベンゼン環のように、π結合の中でも共役系の結合が多い構造が存在すると、この構造を介して隣接する主骨格同士が相互作用を及ぼすようになり、主骨格同士を離間することによる効果が相殺されてしまう。
【0088】
ところで、置換基Xとして(B3)のものを選択した場合には、置換基Xが、上記一般式(B3)に示すように、その末端に官能基として、スチレン基に置換基Zを導入したスチレン誘導体基を有していることから、連結構造中には、ベンゼン環が存在することとなる。
そのため、ベンゼン環と共役系の化学構造を有する主骨格とが接近しすぎる場合、例えば、ベンゼン環と主骨格とがエーテル結合により結合している場合や、nとmとの合計数が2の場合等では、このベンゼン環を介して隣接する主骨格同士が相互作用を及ぼすようになる。
【0089】
ところが、この高分子では、主骨格とこのベンゼン環との結合がnとmとの合計数が3以上、すなわち3つ以上のメチレン基とエーテル結合とを介して形成される。これにより、主骨格とベンゼン環との離間距離が好適な状態に保たれることとなる。その結果、隣接する主骨格同士が相互作用を及ぼしあうのを好適に抑制または防止にすることができる。
また、置換基Zは、水素原子、メチル基またはエチル基であるが、置換基Zは、nとmとの合計数、すなわちメチレン基の合計数に応じて選択するようにすればよい。
【0090】
例えば、前記合計数が小さい場合には、置換基Zとしては、メチル基もしくはエチル基を選択するようにすればよい。ここで、メチル基とエチル基が電子供与性の置換基であることから、置換基Zとして、メチル基およびエチル基を選択することにより、電子を主骨格側に偏らせることができる。その結果、ベンゼン環を介して隣接する主骨格同士が相互作用を及ぼすようになるのを好適に防止することができる。
【0091】
また、2つの置換基Xは、ほぼ同一の炭素数のものであるのが好ましく、同一の炭素数のものであるのがより好ましい。これにより、隣接する主骨格同士の離間距離をほぼ一定とすることができる。その結果、この高分子中において電子密度に偏りが生じるのを好適に防止することができる。これにより、高分子のキャリア輸送能を向上させることができる。
また、置換基Xは、ベンゼン環の2位から6位のいかなる位置に結合してもよいが、特に、3位、4位または5位のうちのいずれかに結合しているのが好ましい。これにより、隣接する主骨格同士の結合を置換基Xを介して行うことの効果をより顕著に発揮させることができる。すなわち、隣接する主骨格同士をより確実に離間させることができる。
【0092】
次に、置換基Rは、炭素数2〜8の直鎖アルキル基であるが、特に、炭素数3〜6の直鎖アルキル基であるのが好ましい。その結果、この置換基Rによる立体障害により、隣接する高分子同士が接近しすぎるのを阻止して、これらの距離を適度に保つことができる。その結果、形成される正孔輸送層4および発光層5中において、異なる高分子が有する主骨格同士の間での相互作用を確実に低減することができ、各層4〜6の特性を優れたものにすることができる。
【0093】
また、2つの置換基Rは、ほぼ同一の炭素数のものであるのが好ましく、同一の炭素数のものであるのがより好ましい。これにより、形成される各層4〜6中において、隣接する高分子同士の距離をほぼ一定の間隔に保つことができる。その結果、各層4〜6中における高分子の密度が均一なものとなる。
また、置換基Rは、ベンゼン環の2位から6位のいかなる位置に結合してもよいが、特に、4位に結合しているのが好ましい。これにより、置換基Rを導入することの効果をより顕著に発揮させることができる。すなわち、隣接する高分子同士が接近しすぎるのをより確実に阻止することができる。
【0094】
さらに、置換基Rは、水素原子、メチル基またはエチル基であり、置換基Rは、置換基Rの炭素数に応じて選択するようにすればよい。すなわち、置換基Rの炭素数が大きい場合には、置換基Rとしては、水素原子を選択し、置換基Rの炭素数が小さい場合には、置換基Rとしては、メチル基もしくはエチル基を選択するようにすればよい。
【0095】
ここで、この化合物(A1)において、基(結合基)Yの化学構造を適宜設定することにより、高分子のキャリア輸送能の特性を変化させることができる。
これは、キャリア輸送に寄与する主骨格における電子雲の広がり(電子の分布状態)が変化することに伴って、高分子において、例えば、その価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)の大きさ等が変化することに起因すると考えられる。
【0096】
化合物(A1)では、基Yに置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、または、置換もしくは無置換の複素環が少なくとも1つ含まれており、これらの芳香族炭化水素環および/または複素環の種類を適宜選択することにより、高分子におけるキャリア輸送能の特性を比較的容易に調整することができる。
例えば、基(結合基)Yとして、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環により構成されるものを選択することにより、得られる高分子が優れた正孔輸送能を発揮するものとなることから、このような基Yを有する化合物(A1)を前述した正孔輸送材料として用いることができる。
具体的には、無置換の芳香族炭化水素環により構成される構造としては、例えば、下記化学式(C1)〜(C17)で表されるものが挙げられる。
【0097】
【化4】

【0098】
また、基Yの総炭素数は、6〜30であるのが好ましく、10〜25であるのがより好ましく、10〜20であるのがさらに好ましい。
さらに、基Yにおいて、芳香族炭化水素環の数は、1〜5であるのが好ましく、2〜5であるのがより好ましく、2または3であるのがさらに好ましい。
これらのことを考慮すると、化合物(A1)において、基Yとしては、前記化学式(C1)で表されるビフェニレン基またはその誘導体が特に好ましい構造である。
かかる基を選択することにより、高分子の正孔輸送能がより優れたものとなり、形成される正孔輸送層4は、正孔輸送能により優れたものとなる。
【0099】
次に、基(結合基)Yとして、置換もしくは無置換の複素環により構成されるものを選択することにより、得られる高分子におけるキャリア輸送能の特性をより容易に調整することができる。
このような複素環としては、特に、窒素、酸素、硫黄、セレンおよびテルルのうちの少なくとも1種のヘテロ原子を含有するものを選択するのが好ましい。かかる種類のヘテロ原子を含有する複素環を選択することにより、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)の大きさ等を変化させることが特に容易となる。
また、複素環は、芳香族系および非芳香族系のいずれであってもよいが、芳香族系のものであるのが好ましい。これにより、主骨格の共役系の化学構造における電子密度の偏り、すなわち、π電子の局在化を好適に防止して、高分子のキャリア輸送能の低下を防止することができる。
【0100】
基Yは、同一または異なる複素環を1〜5つ含むものが好ましく、1〜3つ含むものがより好ましい。基Yにこのような数の複素環が存在すれば、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)の大きさ等を十分に変化させることができる。
また、基Yの総炭素数は、2〜75であるのが好ましく、2〜50であるのがより好ましい。基Yの総炭素数が多すぎると、置換基Xの種類によっては、化合物(A1)の溶媒に対する溶解度が低下する傾向を示すおそれがある。
【0101】
また、基Yの総炭素数をかかる範囲内とすることにより、主骨格における平面性が保たれることから、高分子におけるキャリア輸送能が低下するのを確実に防止することができる。
これらのことを考慮すると、無置換の複素環により構成される構造としては、例えば、下記化学式(D1)〜(D17)で表されるものが特に好ましい構造である。
【0102】
【化5−A】

【0103】
【化5−B】

[これらの式中、各Qは、それぞれ独立して、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表し、同一であっても、異なっていてもよい。各Qは、それぞれ独立して、SまたはOを表し、同一であっても、異なっていてもよい。Qは、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CH、CまたはPhを表す。)を表す。]
【0104】
さらに、基(結合基)Yとして、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環および置換もしくは無置換の複素環により構成されるものを選択することにより、前述したようなそれぞれの特性を相乗的に付与することができる。
このような基Yは、化合物(A1)中の各Nにそれぞれ、直接結合する芳香族炭化水素環と、これらの芳香族炭化水素環の間に存在する少なくとも1つの複素環とを含むものであるのが、特に好ましい。これにより、高分子中における電子密度に偏りが生じるのを確実に防止することができる。その結果、高分子のキャリア輸送能が均一なものとなる。
このことを考慮すると、無置換の芳香族炭化水素環および無置換の複素環により構成される構造としては、例えば、下記化学式(E1)〜(E3)で表されるものが特に好ましい構造である。
【0105】
【化6】

[これらの式中、各Qは、それぞれ独立して、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
【0106】
このように、基Yの化学構造を適宜設定することにより、例えば、基Yとして前記化学式(D2)、(D16)、(E1)および(E3)を選択して得られる高分子は、前記化学式(D17)を選択して得られる高分子に対して優れた正孔輸送能を発揮し、前記化学式(D8)および(E2)を選択して得られる高分子に対して特に優れた正孔輸送能を発揮するものとなる。
これとは逆に、基Yとして前記化学式(D8)、(D17)および(E2)を選択して得られる高分子は、前記化学式(D2)および(D16)を選択して得られる高分子に対して優れた電子輸送能を発揮し、前記化学式(E1)および(E3)を選択して得られる高分子に対して特に優れた電子輸送能を発揮するものとなる。
【0107】
これらのことから、例えば、基Yが前記化学式(D2)、(D16)、(E1)および(E3)のものを、正孔輸送材料として選択して用いた場合には、基Yが前記化学式(E2)、(D8)および(D17)のものを電子輸送材料として用いることができる。
なお、正孔輸送材料と電子輸送材料との組み合わせによっては、発光材料としても用いることもできる。
【0108】
例えば、正孔輸送材料として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)のようなポリ(チオフェン/スチレンスルホン酸)、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(α−NPD)のようなアリールアミン化合物等を用い、電子輸送材料として3,4,5−トリフェニル−1,2,4−トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、2−(4−t−ブチルフェニル)−5−(ビフェニル−4−イル)−1,3,5−オキサジアゾール(PBD)のようなオキサジアゾール化合物等を用いた場合には、基Yが前記化学式(D12)および(D14)のものを発光材料として用いることができる。
また、基Yに含まれる無置換の芳香族炭化水素環や無置換の複素環には、主骨格における平面性が大きく阻害されないような置換基が導入されていてもよい。このような置換基としては、例えば、メチル基またはエチル基のような比較的炭素数の少ないアルキル基やハロゲン基等が挙げられる。
【0109】
次に、化合物(A2)により得られた高分子について説明する。
以下、化合物(A1)により得られた高分子との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
化合物(A1)では、置換基Xと置換基Rとをそれぞれ2つ有し、置換基Rを4つ有するのに対して、化合物(A2)では、置換基X2〜5を4つ有し、置換基Rを8つ有する点が異なりそれ以外は、化合物(A2)は、化合物(A1)と同様である。
【0110】
置換基X2〜5としては、前述した置換基Xと同様の構造を有するものが選択され、化合物(A2)では、この置換基X2〜5を4つ有することから、2次元的なネットワークが形成されやすくなる。
置換基Xと置換基Xとは、ほぼ同一の炭素数のものであるのが好ましく、同一の炭素数のものであるのがより好ましい。これにより、この置換基X2〜5(置換基Xまたは置換基X)の重合反応により連結される主骨格同士の離間距離のばらつきを小さくすることができる。すなわち、高分子中における主骨格同士の離間距離のばらつきを小さくすることができる。その結果、この高分子中の電子密度に偏りが生じるのを好適に防止できる。これにより、高分子のキャリア輸送能を向上させることができる。
かかる観点から、置換基Xと置換基Xとも、ほぼ同一の炭素数のものであるのが好ましく、同一の炭素数のものであるのがより好ましい。これにより、前記効果がより向上し、高分子のキャリア輸送能をより向上させることができる。
【0111】
さらには、置換基X、置換基X、置換基Xおよび置換基Xを、好ましくは、ほぼ同一の炭素数、より好ましくは、同一の炭素数とすることにより、前記効果が特に顕著に発揮される。また、主骨格から突出している置換基X2〜5の長さがほぼ同一(特に同一)となることから、置換基X2〜5による立体障害が生じる可能性を低減させることができる。これにより、置換基X2〜5同士の重合反応を確実に行うことができる。すなわち、高分子の形成を確実に行うことができる。その結果、高分子のキャリア輸送能をさらに向上させることができる。
【0112】
置換基Rは、水素原子、メチル基またはエチル基であり、この置換基Rは、置換基X2〜5の炭素数に応じて選択するようにすればよい。例えば、置換基X2〜5の炭素数が大きい場合には、置換基Rとしては、水素原子を選択し、置換基X2〜5の炭素数が小さい場合には、置換基Rとしては、メチル基もしくはエチル基を選択するようにすればよい。
【0113】
ところで、置換基Xまたは置換基X2〜5(以下、これらを総称して「置換基X」という。)として、前記一般式(B1)〜前記一般式(B3)で表されるものに代えて、下記一般式(B4)で表されるものを選択することもできる。この場合、置換基Xにおいて重合反応させて高分子を得るには、置換基Xと置換基Xとの間に、化学式COClで表されるホスゲンおよび/またはその誘導体を介在させた状態で、重縮合反応させて下記一般式(B5)で表される化学構造を形成することにより行うことができる。
【0114】
【化7】

[これらの式中、各nは、それぞれ独立して、2〜8の整数を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
【0115】
このような高分子は、前記一般式(B5)で表される化学構造、すなわち2つの直鎖状の炭素−炭素結合(アルキレン基)がカーボネート結合により連結する化学構造を介して前記主骨格が繰り返して存在する構成となっている。この化学構造の存在により、置換基Xとして、前記一般式(B1)〜前記一般式(B3)で表されるものを用いた場合と同様に、主骨格同士を所定の距離離間して存在させることができ、隣接する主骨格同士の相互作用が低減することとなる。
また、ホスゲンおよび/またはその誘導体としては、置換基Xの末端の水酸基と重縮合反応することにより、前記一般式(B5)で表される化学構造が形成されるものであれば、特に限定されないが、特に、ホスゲンおよび/または下記一般式(B6)で表される化合物を主成分とするものを用いるのが好ましい。
【0116】
【化8】

[式中、2つのZは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
【0117】
ここで、置換基X(水酸化アルキル基)とホスゲンおよび/またはその誘導体とが重縮合反応すると、副生成物が生成することとなる。このような重縮合反応において、ホスゲンおよび/または前記化合物(B6)を用いることにより、形成された各層4〜6中から前記副生成物を比較的容易に除去することができる。これにより、各層4〜6中において前記副生成物によりキャリア(正孔や電子)が捕捉されるのを確実に阻止することができる。その結果、各層4〜6の特性が低減することを好適に防止することができる。
【0118】
さて、以上のような化合物(A1)または化合物(A2)から得られた高分子には、必要に応じて架橋剤が添加されていてもよい。
すなわち、化合物(A1)または化合物(A2)が備える置換基X同士の重合反応を架橋剤を介して行うようにしてもよい。
このような架橋剤としては、例えば、アクリル系架橋剤やジビニルベンゼンのようなビニル化合物およびエポキシ架橋剤等が挙げられる。
【0119】
ここで、置換基Xとして、前記一般式(B1)〜前記一般式(B3)で表されるものを選択する場合、置換基X同士の重合反応を架橋剤を介在させた状態で行うことは、特に有効である。これにより、置換基Xとして、その炭素数が比較的小さいもの、換言すれば、その鎖長が比較的短いものを選択した場合においても、主骨格同士の離間距離が小さくなりすぎるのを好適に防止することができる。その結果、主骨格同士の離間距離が適切な大きさに保たれて、主骨格同士の相互作用が増強するのを確実に防止することができる。
置換基Xとして、前記一般式(B1)で表されるものを選択した場合、架橋剤としては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート架橋剤、エポキシ(メタ)アクリレート架橋剤およびポリウレタン(メタ)アクリレート架橋剤等のアクリル系架橋剤のうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0120】
なお、ポリエステル(メタ)アクリレート架橋剤としては、例えば、下記一般式(F1)〜(F3)で表される化合物が挙げられる。
エポキシ(メタ)アクリレート架橋剤としては、例えば、下記一般式(F4)〜(F8)で表される化合物が挙げられる。
ポリウレタン(メタ)アクリレート架橋剤としては、例えば、下記一般式(F9)で表される化合物が挙げられる。
【0121】
【化9−A】

【0122】
【化9−B】

[これらの式中、nは、4500以下の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。nは、0〜1500の整数を表す。各nは、それぞれ独立して、1〜10の整数を表し、同一であっても、異なっていてもよい。nは、1〜40の整数を表す。nは、1〜100の整数を表す。各Rは、それぞれ独立して、炭素数が1〜10のアルキレン基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Rは、炭素数が1〜100のアルキレン基を表す。各Aは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。各Aは、それぞれ独立して、ジイソシアネート化合物から2つのイソシアネート基を除いた基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
【0123】
また、前記一般式(B2)で表されるものを選択した場合、架橋剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系エポキシ架橋剤、ビスフェノール型エポキシ架橋剤、グリシジルエステル系エポキシ架橋剤、脂環式系エポキシ架橋剤、ウレタン変性エポキシ架橋剤、ケイ素含有エポキシ架橋剤、多官能性フェノール系エポキシ架橋剤およびグリシジルアミン系エポキシ架橋剤等のエポキシ架橋剤のうち、少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0124】
なお、(メタ)アクリル酸エステル系エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(G1)で表される化合物が挙げられる。
ビスフェノール型エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(G2)〜(G6)で表される化合物が挙げられる。
グリシジルエステル系エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(G7)〜(G8)で表される化合物が挙げられる。
【0125】
脂環式系エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(G9)〜(G12)で表される化合物が挙げられる。
ウレタン変性エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(G13)で表される化合物が挙げられる。
ケイ素含有エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(G14)で表される化合物が挙げられる。
多官能性フェノール系エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(G15)〜(G22)で表される化合物が挙げられる。
グリシジルアミン系エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(G23)〜(G25)で表される化合物が挙げられる。
【0126】
【化10−A】

【0127】
【化10−B】

【0128】
【化10−C】

【0129】
【化10−D】

[これらの式中、Aは、水素原子またはメチル基を表す。各nは、それぞれ独立して、0〜10の整数を表し、同一であっても、異なっていてもよい。各nは、それぞれ独立して、1〜20の整数を表し、同一であっても、異なっていてもよい。n10は、1〜30の整数を表す。n11は、0〜8の整数を表す。Aは、ジイソシアネート化合物から2つのイソシアネート基を取り除いた基を表し、各Aは、それぞれ独立して、ジオール化合物から2つの水酸基を取り除いた基を表し、同一であっても異なっていてもよい。]
【0130】
さらに、前記一般式(B3)で表されるものを選択した場合、架橋剤としては、例えば、下記一般式(H1)で表されるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートやジビニルベンゼンのようなビニル化合物のうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0131】
【化11】

[式中、n12は、5〜15の整数を表し、各Aは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
【0132】
<電子機器>
このような表示装置(本発明の発光装置)10は、各種の電子機器に組み込むことができる。
図5は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【0133】
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述のディスプレイ装置10で構成されている。
【0134】
図6は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述のディスプレイ装置10で構成されている。
【0135】
図7は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0136】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述のディスプレイ装置10で構成されている。
【0137】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0138】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0139】
なお、本発明の電子機器は、図5のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図6の携帯電話機、図7のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
以上、本発明の発光装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
【実施例】
【0140】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.化合物(1)の合成
まず、6−(p−アミノフェニル)ヘキサノール1molを酢酸150mLに溶解し、室温で無水酢酸を滴下後、撹拌した。反応終了後、析出した固体をろ過し、水洗後、乾燥した。
【0141】
次に、その得られた物質0.37mol、1−ブロモ−4−ヘキシルベンゼン0.66mol、炭酸カリウム1.1mol、銅粉、ヨウ素を混合し、200℃で加熱した。放冷後、イソアミルアルコール130mL、純水50mL、水酸化カリウム0.73molを加え撹拌後、乾燥した。
さらに、そこで得られた化合物130mmol、4,4’−ジヨードビフェニル62mmol、酢酸パラジウム1.3mmol、t−ブチルホスフィン5.2mmol、t−ブトキシナトリム260mmol、キシレン700mLを混合して、120℃で撹拌した。
その後、放冷し、結晶化した。
【0142】
次に、その化合物100mmolとアクリロイルクロライド200mmolをキシレン溶液中に加え加熱しながら撹拌後、放冷し結晶化して化合物を得た。
そして、質量スペクトル(MS)法、H−核磁気共鳴(H-NMR)スペクトル法、13C−核磁気共鳴(13C-NMR)スペクトル法、およびフーリエ変換赤外吸収(FT−IR)スペクトル法により、得られた化合物が、下記化合物(A)であることを確認した。
【0143】
【化12】

【0144】
2.表示装置の製造
以下の各実施例および比較例では、それぞれ、5個の表示装置を製造した。
(実施例1)
<1A> まず、平均厚さ5mmの透明なガラス基板を用意し、このガラス基板上に、前述したようにして回路部を形成した。
<2A> 次に、回路部上に、真空蒸着法により、平均厚さ100nmのITO膜を形成した後、フォトリソグラフィー法およびエッチング法により不要部分を除去して、陽極(画素電極)を得た。
【0145】
<3A> 次に、各陽極を覆うように、正孔輸送層を形成した。
まず、前記化合物(1)と、ラジカル重合開始剤(長瀬産業社製、「イルガキュア 651」)とを95:5(重量比)となるように溶解したジクロロエタン溶液を調整した。
次いで、このジクロロエタン溶液を、各陽極を覆うようにスピンコート法により塗布し、ジクロロエタン(溶媒)の一部を除去した。
【0146】
次いで、部分的に開口している厚さ0.1mmのステンレス板(マスク)を介して、赤色の発光層を形成する領域より若干大きい領域に、ラビング処理を施した後、固化して固化層を得た。
その後、この固化層に対して、大気中において、水銀ランプ(ウシオ電機社製、「UM−452型式」)からフィルターを介して、波長185nm、照射強度3mW/cmの紫外線を400秒間照射して、化合物(1)を架橋させた。
これにより、上面の所定の箇所に凹凸を有する平均厚さ50nmの正孔輸送層を得た。
なお、凸部の配設密度および上面の表面粗さRaは、それぞれ、1000個/mmおよび8μmであった。
【0147】
<4A> 次に、発光層を形成する領域を区画するように、ポリイミド(絶縁性の感光性樹脂)塗布した後、露光することにより、隔壁部を形成した。
<5A> 次に、隔壁部の内側に、以下に示す各色の発光層形成用材料を供給した後、乾燥して、平均厚さ50nmの発光層を得た。
【0148】
赤色の発光層形成用材料は、トリス(1−フェニルイソキノリン) イリジウム(III)をキシレンに溶解して調整した。
緑色の発光層形成用材料は、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセンをキシレンに溶解して調整した。
青色の発光層形成用材料は、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニルをキシレンに溶解して調整した。
【0149】
<6A> 次に、各発光層および隔壁部を覆うように、3,4,5−トリフェニル−1,2,4−トリアゾールを真空蒸着し、平均厚さ20nmの電子輸送層を形成した。
<7A> 次に、電子輸送層上に、AlLiを真空蒸着法し、平均厚さ300nmの陰極を形成した。
<8A> 次に、形成した各発光素子を覆うように、ポリカーボネート製の保護カバーを被せ、紫外線硬化性樹脂により固定、封止して、表示装置を完成した。
【0150】
(実施例2)
<1B> まず、平均厚さ5mmの透明なガラス基板を用意し、このガラス基板上に、前述したようにして回路部を形成した。
<2B> 次に、回路部上に、真空蒸着法により、平均厚さ100nmのITO膜を形成した後、フォトリソグラフィー法およびエッチング法により不要部分を除去して、陽極(画素電極)を得た。
【0151】
<3B> 次に、各陽極を覆うように、正孔輸送層を形成した。
まず、前記化合物(1)と、ラジカル重合開始剤(長瀬産業社製、「イルガキュア 651」)とを95:5(重量比)となるように溶解したジクロロエタン溶液を調整した。
次いで、このジクロロエタン溶液を、各陽極を覆うようにスピンコート法により塗布し、ジクロロエタン(溶媒)を除去することにより、固化して固化層を得た。
その後、この固化層に対して、大気中において、水銀ランプ(ウシオ電機社製、「UM−452型式」)からフィルターを介して、波長185nm、照射強度3mW/cmの紫外線を400秒間照射して、化合物(1)を架橋させた。
【0152】
次いで、部分的に開口している厚さ0.1mmのステンレス板(マスク)を介して、固化層の赤色の発光層を形成する領域より若干大きい領域に、キシレン(溶剤)を含浸させた布を接触させ、未反応の化合物(1)を溶解・除去(溶剤処理)した。
これにより、上面の所定の箇所に凹凸を有する平均厚さ50nmの正孔輸送層を得た。
なお、凸部の配設密度および上面の表面粗さRaは、それぞれ、3000個/mmおよび4μmであった。
【0153】
<4B> 次に、発光層を形成する領域を区画するように、ポリイミド(絶縁性の感光性樹脂)塗布した後、露光することにより、隔壁部を形成した。
<5B> 次に、隔壁部の内側に、以下に示す各色の発光層形成用材料を供給した後、乾燥して、平均厚さ50nmの発光層を得た。
赤色の発光層形成用材料は、ポリ[2,5−ビス(3、7−ジメチルオクチロキシ)−1,4−フェニレンビニレン]をキシレンに溶解して調整した。
緑色の発光層形成用材料は、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)を、キシレンに溶解して調整した。
青色の発光層形成用材料は、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]をキシレンに溶解して調整した。
【0154】
<6B> 次に、各発光層および隔壁部を覆うように、3,4,5−トリフェニル−1,2,4−トリアゾールを真空蒸着し、平均厚さ20nmの電子輸送層を形成した。
<7B> 次に、電子輸送層上に、AlLiを真空蒸着法し、平均厚さ300nmの陰極を形成した。
<8B> 次に、形成した各発光素子を覆うように、ポリカーボネート製の保護カバーを被せ、紫外線硬化性樹脂により固定、封止して、表示装置を完成した。
(比較例1)
ラビング処理を省略した以外は、前記実施例1と同様にして表示装置を製造した。
(比較例2)
溶剤処理を省略した以外は、前記実施例2と同様にして表示装置を製造した。
【0155】
3.評価
各実施例および各比較例の表示装置において、各色の発光素子をそれぞれ発光させ、各色毎に発光輝度を測定した。
その結果、各実施例の表示装置では、いずれも、各色の発光輝度がほぼ等しいものであった。
これに対して、各実施例の表示装置では、いずれも、赤色の発光輝度が緑色および青色の発光輝度に対して明らかに低いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明の発光装置を適用したアクティブマトリクス型表示装置の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すアクティブマトリクス型表示装置の発光層の配置を示す平面図である。
【図3】発光層の他の配置を示す平面図である。
【図4】図1に示すアクティブマトリクス型表示装置の赤色の発光素子の縦断面を拡大して示す図である。
【図5】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0157】
1、1R、1G、1B……発光素子 3……陽極 4……正孔輸送層 41……凸部 5、5R、5G、5B……発光層 6……電子輸送層 8……陰極 10……表示装置 20……TFT回路基板 21……基板 22……回路部 23……下地保護層 24……駆動用TFT 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 25……第1層間絶縁層 26……第2層間絶縁層 27……配線 31……隔壁部 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306…………シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色に対応してそれぞれ設けられ、発光層と該発光層に接触するキャリア輸送層とを有する発光素子を備える発光装置であって、
所定の色の前記発光素子に対し、前記発光層と前記キャリア輸送層との界面の凹凸の程度を、他の色の前記発光素子の前記凹凸の程度と異ならせることにより、ほぼ等しい電圧を印加したとき、それらの発光輝度がほぼ等しくなるよう構成されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
複数の色に対応してそれぞれ設けられ、発光層と該発光層に接触するキャリア輸送層とを有する発光素子を備える発光装置であって、
各色の前記発光素子に対し、それぞれ、前記発光層と前記キャリア輸送層との界面の凹凸の程度を調整することにより、ほぼ等しい電圧を印加したとき、それらの発光輝度がほぼ等しくなるよう構成されていることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
前記界面に凹凸を形成することにより、前記発光素子の発光輝度が上昇する請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記界面の凹凸は、赤色の前記発光素子において、他の色の前記発光素子より大きくなっている請求項1ないし3のいずれかに記載の発光装置。
【請求項5】
前記界面の凹凸は、前記発光素子において、不規則に形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光層の前記キャリア輸送層側の面または前記キャリア輸送層の前記発光層側の面の凸部は、その配設密度が1mmあたり70〜1×10個である請求項1ないし5のいずれかに記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光層の前記キャリア輸送層側の面または前記キャリア輸送層の前記発光層側の面は、その表面粗さRa(JIS B 0601に規定)が1〜15μmである請求項1ないし6のいずれかに記載の発光装置。
【請求項8】
前記界面の凹凸は、粗面化処理により、前記発光層および前記キャリア輸送層のいずれか一方の前記界面となる面に凹凸を形成することにより得られたものである請求項1ないし7のいずれかに記載の発光装置。
【請求項9】
前記粗面化処理は、ラビング処理または溶剤処理である請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記粗面化処理が施された層は、重合性基を有する化合物を含む層を形成した後、前記化合物を重合させて得られたものである請求項8または9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記粗面化処理は、ラビング処理であり、
前記粗面化処理が施された層は、前記化合物を重合させるのに先立って、前記重合性基を有する化合物を含む層に対して、前記ラビング処理を施すことにより得られたものである請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記粗面化処理は、溶剤処理であり、
前記粗面化処理が施された層は、前記化合物を重合させた後の前記重合性基を有する化合物を含む層に対して、前記溶剤処理を施すことにより得られたものである請求項10に記載の発光装置。
【請求項13】
前記粗面化処理は、マスクを用いて目的とする箇所に選択的に施されている請求項8ないし12のいずれかに記載の発光装置。
【請求項14】
各色の前記発光素子が備える発光層は、その平面視での大きさがほぼ等しい請求項1ないし13のいずれかに記載の発光装置。
【請求項15】
前記キャリア輸送層は、正孔を輸送する機能を有する層である請求項1ないし14のいずれかに記載の発光装置。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれかに記載の発光装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−351257(P2006−351257A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173263(P2005−173263)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】